JP5779398B2 - ゼオライト触媒の活性化方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1及び2には、銅、コバルト、あるいは銀と、リンで修飾したZSM−5型ゼオライトを触媒として用いた、炭素数3〜10のパラフィンを主体とする炭化水素の接触分解反応による、低級オレフィンの製造方法が記載されている。
また、特許文献3には、アルカリ金属イオン及び/又はアルカリ土類金属イオン型のZSM−5型ゼオライトに、銀等の周期表IB族の元素を含有させた触媒を用いた、ナフサを原料とする、エチレン・プロピレン等の製造方法が記載されている。
他に、特許文献4には、実質的にプロトンを含まず、銀等の周期表IB族の元素を含有させた触媒を用いた、ブテンを原料とする、エチレン・プロピレンの製造方法が記載されている。
例えば、特許文献5には、ZSM−5型ゼオライトを希土類及びリンで修飾した触媒を用いた、n−ブタンを原料とする、低級オレフィンの製造方法が記載されている。
他に、特許文献6には、希土類、リン、及びマンガン及び/又はジルコニウムで修飾したZSM−5型ゼオライトを、窒素とスチームで処理した後に、接触分解反応を行った実施例が記載されている。
しかしながら、反応温度600℃以上という極めて過酷な反応条件にもかかわらず、原料炭化水素の転化率は20〜60%程度であり、十分な活性が得られていない。
にしたがって記載したが、以下の記述においては、国際純正・応用化学連合(IUPAC)の周期表「IUPAC Periodic Table of the Elements,October 3th,2005」にしたがって記載する。そのため、例えば上述の銀等の「IB族」は、IUPACの周期表では、「11族」となる。
本発明は、炭化水素類の接触分解反応等に用いるゼオライト触媒の活性を向上させる方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、下記(1)〜(4)に関する。
(1)周期表第11族元素及びリンを含有するゼオライト触媒を500℃以上とし、分子状酸素の共存下で水蒸気による処理を行う、ゼオライト触媒の活性化方法。
(2)前記周期表第11族元素が銀である、上記(1)に記載のゼオライト触媒の活性化方法。
(3)前記ゼオライト触媒がペンタシル型ゼオライトである、上記(1)又は(2)に記載のゼオライト触媒の活性化方法。
(4)前記ゼオライト触媒がMFI型及び/又はMEL型である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のゼオライト触媒の活性化方法。
その理由としては、ゼオライト中に含有させた第11族元素とリンが、酸化性雰囲気での水蒸気との相互により、新たな活性点を構築するためと推測される。
本発明の方法で活性化されるゼオライト触媒(以下、単に「触媒」ともいう)は、周期表第11族元素及びリンを含有するゼオライト触媒である。なお、本発明において、「ゼオライト」とは、多孔質結晶性アルミノケイ酸塩及びメタロケイ酸塩のことを示す(「ゼオライトの科学と工学(小野嘉夫ら編、講談社サイエンティフィク社刊、2000年刊行)」の2頁、3〜4行参照)。
ゼオライト触媒としては、A型、ペンタシル型、モルデナイト、ベータ、X型及びY型、UTD−1、CIT−5、ITQ−7、ITQ−4、MCM−22、チェルトネライト等が挙げられる。
これらのゼオライト触媒の中でも、触媒活性の観点から、ペンタシル型ゼオライトが好ましい。
MFI型ゼオライトとしては、ZSM−5、及びZSM−5と類似の構造を有するZSM−8、ゼータ1、ゼータ3、Nu−4、Nu−5、TZ−1、TPZ−1等が挙げられる。
MEL型ゼオライトとしては、ZSM−11、及びZSM−11と類似の構造を有するものが挙げられる。これらの中でも、ZSM−5が好ましい。
なお、これらのゼオライトは、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
なお、本発明において、ゼオライト触媒のSiO2/Al2O3比は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置(SIナノテクノロジー社製、SPS5100型)を用い、JIS K 0116に準じて分析した値である。
11族元素のゼオライト触媒への導入は、11族元素を含む各種化合物(硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、乳酸塩等)を用いたイオン交換法、含浸法あるいは水熱合成法等により行うことができる。
11族元素の含有量は、触媒全量に対して、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.2〜10質量%、更に好ましくは0.3〜2質量%、より更に好ましくは0.5〜1.2質量%である。0.1質量%以上であれば、触媒活性の向上効果が十分に得られる。また、20質量%以下であれば、逆に触媒活性が低下することもない。
リンのゼオライト触媒への導入は、リン酸及び/又はリン酸のアンモニウム塩等の水溶液に、ゼオライトを含浸する方法、又はゼオライト上にこれらの水溶液を噴霧する方法等により行うことができる。
リンの含有量は、触媒全量に対して、好ましくは0.2〜10質量%、より好ましくは0.5〜7質量%、更に好ましくは1〜5質量%、より更に好ましくは1.5〜4質量%である。0.2質量%以上であれば、耐久性を十分に向上させることができ、10質量%以下であれば、触媒活性を十分に保持することができる。
11族元素及びリンをゼオライト触媒に含有させる順序は、特に限定されず、別々に含有させてもよく、同時に含有させてもよいが、ゼオライト触媒に11族元素を含有させた後に、リンを含有させることが好ましい。
また、本発明で用いるゼオライト触媒の製造方法は、特に限定されず、例えば、実施例に記載の方法が挙げられる。
本発明の触媒の形状は、特に限定されず、粉末や成型品等のいずれの形状のものでもよい。
本発明では、上述した11族元素とリンを含有するゼオライト触媒を500℃以上とし、分子状酸素の共存下で水蒸気による処理を行う。
本発明において、水蒸気による処理を行う際、ゼオライト触媒の温度は、500℃以上であるが、好ましくは550〜800℃、より好ましくは600〜780℃、更に好ましくは620〜750℃である。500℃未満では、ゼオライト触媒の活性向上の効果が得られないため好ましくない。また、800℃以下とすることで、触媒の一部が壊れやすくなる現象を抑えることができる。
なお、担持成分の安定化の観点から、上述の水蒸気による処理を行う前に、分子状酸素と共に窒素等の不活性ガスを流通させながら、ゼオライト触媒の温度を500℃以上となるように昇温することが好ましい。
なお、水蒸気による処理を行う際に、本発明の効果を損なわない範囲で、二酸化炭素等の空気中に含まれるガス等のその他のガスが含まれていてもよい。
また、水蒸気による処理を行う際のゼオライト触媒に対する水蒸気の流通量は、特に制約はないが、ゼオライト触媒100質量部に対し1時間あたり、好ましくは100〜1000質量部、より好ましくは200〜800質量部、更に好ましくは350〜600質量部である。100質量部以上であれば、触媒活性を向上させることができ、1000質量部以下であれば、耐久性を十分に保持することができる。
以上の条件で触媒を処理することにより、高活性な触媒とすることができる。
上記接触分解反応における反応の様式は、特に限定されないが、固定床、移動床、流動床等の形式の反応器を使用し、上記の触媒を充填した触媒層へ炭化水素原料を供給することにより接触分解反応を行うことができる。
具体的な炭化水素類としては、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等のパラフィン類、ブテン類、ペンテン類、ヘキセン類等のオレフィン類、シクロヘキサン等のナフテン類、ナフサ、軽油等の軽質炭化水素留分等が挙げられる。
なお、原料として用いる炭化水素類は、窒素、水素、ヘリウム、水蒸気等で希釈されていてもよい。
なお、反応の際の圧力は、常圧、減圧又は加圧のいずれでも実施できるが、常圧もしくは加圧することが好ましい。
なお、触媒として用いたゼオライトのSiO2/Al2O3比、リン及び銀の含有量は、ICP発光分光分析装置(SIIナノテクノロジー社製、SPS5100型分光装置)を用い、JIS K 0116に準拠して、測定・定量した。
ゼオライトとして粉末状のプロトン型ZSM−5ゼオライト(ICP発光分光分析法で測定したSiO2/Al2O3比=60、比表面積420m2/g、粒子径150μm以下)100質量部を、硝酸銀水溶液(1.575質量部の硝酸銀を脱イオン水1500質量部に溶解させたもの)に含浸し、40℃で2時間攪拌した。生成したスラリーを減圧下、40〜60℃で攪拌しながら約2時間かけて水分を蒸発させ、白色の粉末を得た。得られた粉末を空気中、120℃で8時間乾燥した後、マッフル炉内で4時間かけて600℃まで昇温し、600℃で5時間焼成した。得られた固体を粉砕し、さらにリン酸水素二アンモニウム水溶液(リン酸水素二アンモニウム17.1質量部を脱イオン水1500質量部に溶解させたもの)に含浸し、同様な操作で、乾燥・焼成し、白色の固体を得た。それを圧縮成型して、乳鉢で粉砕し、16〜36メッシュのふるいを用いて整粒し、直径約0.8mmの粒状の成型体を得た(以下、「触媒A」ともいう)。得られた成型体(触媒A)は、リン:3.6質量%、銀:0.8質量%を含んでいた(ICP発光分光分析法で定量)。また、触媒Aの比表面積は380m2/gであった。
硝酸銀水溶液に代えて、オキシ硝酸ジルコニル水溶液(21.4質量部のオキシ硝酸ジルコニルを脱イオン水1500質量部に溶解させたもの)を用いた以外は、製造例1と同様にして、リン及びジルコニウムを含有する、直径約0.8mmの粒状の成形体を得た(以下、「触媒B」ともいう)。得られた成形体(触媒B)は、リン:3.6質量%、ジルコニウム:5.3質量%を含んでいた(ICP発光分光分析法で定量)。また、触媒Aの比表面積は390m2/gであった。
製造例1で調製した触媒A15gを内径46mmの石英管に充填し、石英管内に触媒層を形成した。さらに、触媒層の下部には石英砂を充填した。この石英管に、窒素を200cm3/min(0℃、1気圧換算、以下同じ)、エアー(酸素濃度21%、窒素バランス、以下同じ)を369cm3/minで流しながら触媒層の温度を700℃まで昇温し、その後、窒素の供給を停止し、エアーを29cm3/min、及び水蒸気を70.0g/hの流量(分子状酸素:水蒸気モル比=0.4:99.6)で5時間連続的に供給し、分子状酸素の共存下での水蒸気による処理を行い、触媒Aの活性化処理を行った。
原料の導入と同時に、反応器出口に接続したガスクロマトグラフィーを用いて出口組成を分析し、原料転化率及び生成物収率を式1及び2により算出した(以下同じ)。原料転化率及び生成物収率の結果を表1に示す。
・生成物収率(質量%)=(各成分質量/供給原料質量)× 100 (式2)
エアー29cm3/minに代えて、窒素29cm3/minとした以外は、実施例1と同様にして、製造例1で調製した触媒Aの前処理を行った。
この前処理をした触媒Aを0.5g用い、実施例1と同じ条件にて、n−ヘキサンのパルス分解反応を行った。原料転化率及び生成物収率の結果を表1に示す。
窒素の供給を停止後、水蒸気を用いずに、エアー29cm3/minのみを流して処理を行った以外は、実施例1と同様にして、製造例1で調製した触媒Aの前処理を行った。
この前処理を行った触媒Aを0.5g用い、実施例1と同じ条件にて、n−ヘキサンのパルス分解反応を行った。原料転化率及び生成物収率の結果を表1に示す。
触媒Aに代えて、製造例2で調製した触媒Bを用いた以外は、実施例1と同様にして、触媒Bの活性化処理を行った。この活性化処理をした触媒Bを0.5g用い、実施例1と同じ条件にて、n−ヘキサンのパルス分解反応を行った。原料転化率及び生成物収率の結果を表1に示す。
一方、比較例1〜3は、原料転化率及び生成物収率が共に、実施例1に比べて劣る結果となった。そのため、触媒の活性化処理が不十分であることがわかる。
Claims (12)
- 周期表第11族元素及びリンを担持するゼオライト触媒を500℃以上とし、分子状酸素の共存下で水蒸気による処理を行う、炭化水素類の接触分解反応用ゼオライト触媒の活性化方法。
- 周期表第11族元素の担持量が、前記ゼオライト触媒全量に対して、0.1〜20質量%である、請求項1に記載の炭化水素類の接触分解反応用ゼオライト触媒の活性化方法。
- 前記周期表第11族元素が銀である、請求項1又は2に記載の炭化水素類の接触分解反応用ゼオライト触媒の活性化方法。
- リンの担持量が、前記ゼオライト触媒全量に対して、0.2〜10質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の炭化水素類の接触分解反応用ゼオライト触媒の活性化方法。
- 前記ゼオライト触媒のSiO 2 /Al 2 O 3 比が、20〜800である、請求項1〜4のいずれかに記載の炭化水素類の接触分解反応用ゼオライト触媒の活性化方法。
- 前記ゼオライト触媒の比表面積が、100〜500m 2 /gである、請求項1〜5のいずれかに記載の炭化水素類の接触分解反応用ゼオライト触媒の活性化方法。
- 前記ゼオライト触媒がペンタシル型ゼオライトである、請求項1〜6のいずれかに記載の炭化水素類の接触分解反応用ゼオライト触媒の活性化方法。
- 前記ゼオライト触媒がMFI型ゼオライト及び/又はMEL型ゼオライトである、請求項1〜7のいずれかに記載の炭化水素類の接触分解反応用ゼオライト触媒の活性化方法。
- 分子状酸素の共存下で水蒸気による処理を行う際の前記ゼオライト触媒の温度が、550〜800℃である、請求項1〜8のいずれかに記載の炭化水素類の接触分解反応用ゼオライト触媒の活性化方法。
- 分子状酸素の共存下で水蒸気による処理を行う際の分子状酸素と水蒸気のモル比(分子状酸素:水蒸気)が、0.1:99.9〜90:10である、請求項1〜9のいずれかに記載の炭化水素類の接触分解反応用ゼオライト触媒の活性化方法。
- 分子状酸素の共存下で水蒸気による処理を行う際の処理時間が、1〜100時間である、請求項1〜10のいずれかに記載の炭化水素類の接触分解反応用ゼオライト触媒の活性化方法。
- 分子状酸素の共存下で水蒸気による処理を行う際の水蒸気の流通量が、前記ゼオライト触媒100質量部に対し1時間あたり、100〜1000質量部である、請求項1〜11のいずれかに記載の炭化水素類の接触分解反応用ゼオライト触媒の活性化方法。
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