もっとも、特許文献1に示されるトングは、各種の架線に対応することができるように、固定部の鉤爪部の内面で形成される半円の内径寸法が最も大きな架線の外径寸法となっているため、最も大きな外径寸法の架線以外の架線では、絶縁操作棒を回転させて可動部を固定部に遠近させる際に、可動部と固定部の鉤爪部の先端との間隔を、保持しようとする架線の外径寸法より一旦拡げる必要が生ずるので、架線の着脱作業が煩雑化、長時間化することが考えられる。そして、可動部と固定部とで架線を強固に挟んで保持するためには、可動部が固定部に遠近するように絶縁操作棒を所要回数にわたって回転させる必要もある。
また、トングの固定部と可動部とで架線を強固に挟んで長期にわたって保持する必要がある間接活線作業は実際には多くなく、他の間接活線作業工具でコネクタ等を架線に装着する際に、架線が揺れないように架線を支えるために補助的に使用されたり、架線を一時的に保持するために使用されたりすることの方が多い。すなわち、架線を相対的に緩く保持することができ、架線を保持した状態で架線から簡単に外れなければ良い場合が多い。
そして、特許文献2に示される電気接続器具でも、フック部の円弧状の内面で形成される半円の内径寸法を相対的に大きな高圧架空線の外径寸法に合せているので、高圧架空線以外の架線をフック部と押え部とで挟んで保持するためには、フック部と押え部との間隔を架線の外径寸法より一旦拡げる必要が生ずることから、特許文献1に示されるトングと同様に、架線の着脱作業が煩雑化、長時間化することが考えられる。そして、押え部とフック部とで架線を強固に挟んで保持するためには、可動部が固定部に遠近するように締付ボルトを所要回数にわたって回転させる必要もある。
そこで、本発明は、架線の揺れを抑えたり、架線を一時的に保持したりする等の、比較的緩く又は非長期的に架線を保持すれば良いという、比較的簡易な架線保持作業に好適な、簡便な作業で架線を保持することができると共に、架線から簡単に外れることがない構成の架線保持用先端工具を提供することを目的とする。
この発明に係る架線保持用先端工具は、操作棒の先端に装着されて使用される架線保持用先端工具であって、基部と、この基部から突出した複数の架線保持部とを有し、前記複数の架線保持部は直線状に並んでいると共に、前記基部と前記架線保持部とで架線を収容する架線保持空間が形成され、前記基部は、前記架線保持部側に、前記操作棒の軸線に対して垂直の方向に延びる凹部が形成され、前記架線保持部は、前記基部の凹部の縁部分から立ち上がって、前記凹部を覆う方向に延出した形状を成すと共に、前記基部側に向かって延出した爪部を有し、前記爪部の延出方向の先端面と前記基部の凹部の縁部分のうち前記架線保持部と対峙する面との間に、前記架線保持空間と連通した開口部が形成されていることを特徴としている(請求項1)。操作棒は、例えばホットスティックや共用操作棒等と称される間接活線作業用の工具である。複数の架線保持部は、2つであっても3つ以上であってもよい。架線保持部の開口部の寸法は、架線の径寸法よりも大きなものとなっている。
これにより、基部の凹部の内側面と架線保持部の内側面とで形成される架線保持空間内に架線を収容することで架線を保持することができ、架線を保持するための操作も、架線保持用先端工具を動かして、架線を架線保持部の開口部から架線保持空間内に入り込ませるだけで足りる。そして、架線が架線保持部の凹部と対峙する内側面に当接した状態では、架線保持空間内の架線が安易に架線保持部の開口部から外部に抜け出ることは架線保持部の爪部により抑止される。また、架線が基部の凹部内にある状態では、架線保持空間にある架線が安易に架線保持部の開口部から外部に抜け出ることは基部の凹部の内側面のうちの立面により抑止される。
更に、この発明に係る架線保持用先端工具では、前記複数の架線保持部のうち隣接する架線保持部は、前記架線を間に配置することができるように隙間が設けられていると共に、前記複数の架線保持部は、前記架線を配置する隙間を境にして前記架線保持部を2分した場合に、一方の架線保持部の開口部の開口方向と他方の架線保持部の開口部の開口方向とが逆の方向に向いていることを特徴としている(請求項2)。架線を配置する隙間を境にして架線保持部を2分した場合の、一方の架線保持部の数と他方の架線保持部の数は、1対1、2対2等の同数の他、1対2、1対3等の異なる数であってもよい。
これにより、基部の架線を配置する隙間に、基部と交差するかたちで架線を載せた後、基部と架線とが交差する部位を回転中心として、架線保持用先端工具を回転させることで、一方の架線保持部と基部の凹部とで形成される一方の架線保持空間と、他方の架線保持部と基部の凹部とで形成される他方の架線保持空間との双方に、架線が収容された状態となって架線が保持される。そして、一方の架線保持部の開口部の開口方向と、他方の架線保持部の開口部の開口方向とが逆の方向となるので、架線が相対的に水平方向に変位しても架線が架線保持空間から抜け出るのを抑止することがより確実になる。
更にまた、この発明に係る架線保持用先端工具では、前記凹部に前記架線と当接する架線当接面を有する架線当接部材が装着されており、前記架線当接部材は、弾性機構により前記架線保持部側に押圧されていると共に、前記架線当接部材が前記架線により押圧されていない状態では、前記架線当接部材の架線当接面が前記架線保持部の開口部の下縁と一致していることを特徴としている(請求項3)。弾性機構は、例えば板バネ又はコイルスプリングである。
これにより、架線保持空間内に架線を収容した状態で架線保持用先端工具を上方に持ち上げると、架線が架線当接部材を下方に押して弾性機構が収縮し、架線当接部材の架線当接面が架線保持部の開口部の下縁よりも低くなって段差が形成され、架線が相対的に開口部側に変位することになってもこの段差に引き掛かるので、架線保持用先端工具を上方に持ち上げる作業中に架線が架線保持用先端工具の架線保持空間から抜け出るのを抑止することができる。一方で、架線が架線当接部材を押していない状態では、架線当接部材の架線当接面と架線保持部の開口部の下縁とは段差なく連なった状態にあるので、架線保持用先端工具を動かして架線を相対的に水平方向に変位させる動作で、架線を架線保持部の開口部から架線保持空間の外に出すことができる。
そして、この発明に係る架線保持用先端工具では、前記基部の凹部に前記操作棒の軸線と交差する方向に延びるガイド用凹部が形成され、前記架線当接部材に前記ガイド用凹部に装着される突起部が形成されていることを特徴としている(請求項4)。
これにより、基部の凹部に形成されたガイド用凹部に架線当接部材の突起部が装着されているので、架線当接部材が架線保持部材側に遠近する方向に動く際に、架線当接部材が基部の凹部から外れる方向にずれたり、がたついたりすることがなくなる。
以上のように、この発明の架線保持用先端工具によれば、基部の凹部の内側面と架線保持部の内側面とで形成される架線保持空間内に架線を収容することで架線を保持することが可能である。そして、この発明の架線保持用先端工具によれば、架線を保持するための作業も、架線保持用先端工具を動かして、架線を架線保持部の開口部から架線保持空間内に入り込ませるだけでよいので、架線を保持する作業の簡便化を図ることが可能である。更に、この発明の架線保持用先端工具によれば、架線が架線保持部の内側面のうち架線保持部の凹部の開口側と対峙する内側面に当接した状態とすることで、架線が相対的に水平方向に変位しても架線保持部の爪部で規制することができるので、架線保持空間内の架線が架線保持部の開口部から外部に抜け出るのを抑止することが可能となる。更にまた、この発明の架線保持用先端工具によれば、架線が基部の凹部内にある状態とすることで、架線が相対的に水平方向に変位するのを基部の凹部の内側面のうちの立面で規制することができるので、架線保持空間内の架線が架線保持部の開口部から外部に抜け出るのを抑止することが可能となる。
特に、請求項2に記載の架線保持用先端工具によれば、基部の架線を配置する隙間に、基部と交差するかたちで架線を載せた後、基部と架線とが交差する部位を回転中心として、架線保持用先端工具を回転させることで、一方の架線保持部と基部の凹部とで形成される一方の架線保持空間と、他方の架線保持部と基部の凹部とで形成される他方の架線保持空間との双方に、架線が収容された状態とすることができるので、架線の保持をより確実に行うことが可能となる。しかも、請求項2に記載の架線保持用先端工具によれば、架線が保持された際に、一方の架線保持部の開口部の開口方向と、他方の架線保持部の開口部の開口方向とが逆の方向となるので、架線が相対的に水平方向に変位しても架線保持用先端工具の架線保持空間から外部に抜け出るのを確実に防止することが可能である。
特に、請求項3に記載の架線保持用先端工具によれば、架線保持空間内に架線を収容した状態で架線保持用先端工具を上方に持ち上げると、架線が架線当接部材を下方に押して弾性機構が収縮し、架線当接部材の架線当接面が架線保持部の開口部の下縁よりも低くなって段差が形成され、架線は相対的に水平方向に変位しようとしてもこの段差に引き掛かるので、架線保持用先端工具を上方に持ち上げる作業中に架線が架線保持用先端工具の架線保持空間から抜け出るのを抑止することができる。一方で、請求項3に記載の架線保持用先端工具によれば、架線が架線当接部材を押していない状態では、架線当接部材の架線当接面と架線保持部の開口部の下縁の上面とは段差なく連なった状態にあるので、架線保持用先端工具を動かして架線を相対的に水平方向に変位させる動作で、架線を架線保持部の開口部から架線保持空間の外に出すことができる。
特に、請求項4に記載の架線保持用先端工具によれば、基部の凹部に形成されたガイド用凹部に架線当接部材の突起部が装着されているので、架線当接部材が架線保持部材側に遠近する方向に動く際に、架線当接部材が基部の凹部から外れる方向にずれたり、がたついたりすることを防止することが可能である。
以下、この発明の実施形態について添付図面に基づいて説明する。この発明の架線保持用先端工具1は、架線200の揺れ防止や架線200の一時的な保持等、架線200を強固に把持して保持するまでもなく、相対的に緩く架線200を保持する際や、簡便に架線200を保持したい場合に使用されるものであり、間接活線工具の共用操作棒の先端に装着して使用されるものである。尚、架線保持用先端工具1は、例えば公称断面が200mm2、58mm2、25mm2である架線200の保持に対応したものとなっている。
図1において、架線保持用先端工具1が装着される共用操作棒100の一例が示されている。この共用操作棒100は、公知のものであるが、以下に説明する。
図1に示される共用操作棒100は、直線状に延びる操作棒本体101と、この操作棒本体101の一方端に設けられた接続部102と、接続部102に接続された架線保持用先端工具1等の先端工具をロックするための固定部103とで構成されている。
操作棒本体101は、絶縁素材で形成された長尺の円筒状のもので、その中間部位には、間接活線作業において感電事故を防止するべく、作業者が握ってよい位置と握ってはいけない位置とを区別するための安全限界ツバ104が外嵌されている。また、この安全限界ツバ104よりも接続部102側には、雨水の流下を防止するための水切りツバ105が外嵌されている。そして、操作棒本体101の接続部102側とは反対側端から安全限界ツバ104までの範囲が作業員の手で握るグリップ部106となっている。
接続部102は、下記する架線保持用先端工具1のアダプタ2と接続することができるもので、頭部107と、この頭部107の頂面に配された突起部108と、頭部107の側面から対称な位置となるように突出した側方突起部109、109とを有して構成されている。このうち、突起部108は、頭部107の内部に収納されたコイルスプリング等の弾性機構(図示せず。)により外方に向けて付勢されて、頭部107の頂面から突出したり頭部107の頂面内に没入したりすることが可能となっている。
次に、架線保持用先端工具1のアダプタ2は、実施例1と実施例2とで共通の構成であるので、主に図2(a)及び図7を用いてアダプタ2について説明する。アダプタ2は、接続部102の頭部107を挿入可能な孔部を有する有底の筒状の部材であり、側面には、図4、図8に示されるように、2つのスリット21、21が略対称となる位置に形成されている。各スリット21は、例えば前記孔部の開口端から孔部の軸方向に沿って側面の途中まで延びた後に、前記孔部の径方向の両側に向かって延びる略T字状の形状をなしている。すなわち、この場合のスリット21は、前記孔部の軸方向に延びる縦スリット部分21aと、前記孔部の径方向に延びる横スリット部分21bとを有しており、更に横スリット部分21bの延出方向側には前記孔部の開口端側に若干延びた延長スリット部分21cを有している。
このような共用操作棒100の接続部102の構成と架線保持用先端工具1のアダプタ2の構成とすることにより、架線保持用先端工具1は共用操作棒100の接続部102に対して以下の手順にて接続される。
まず、架線保持用先端工具1のアダプタ2の前述した有底の孔部に接続部102の頭部107を挿入する。その際、頭部107の側方突起部109、109がアダプタ2のスリット21のうち縦スリット部分21aと一致するように、接続部102の頭部107の向きを調整する。架線保持用先端工具1のアダプタ2の孔部に接続部102の頭部107を挿入し続けると、頭部107の突起部108が孔部の底面に当接し、更に架線保持用先端工具1のアダプタ2の孔部に接続部102の頭部107を挿入し続けることで、頭部107の突起部108は弾性機構の付勢力に抗して頭部107内に没入していき、最終的には頭部107の頂面が直接にアダプタ2の孔部の底面に当接する。このとき、頭部107の側方突起部109はアダプタ2のスリット21の縦スリット部分21aと横スリット部分21bとが交差する部位にある。そこで、接続部102を回転させて側方突起部109がアダプタ2のスリット21の横スリット部分21b内を移動するようにする。そして、アダプタ2のスリット21の横スリット部分21bと延長スリット部分21cとが交差する箇所まで側方突起部109が達すると、頭部107の突起部108が弾性機構の付勢力によりアダプタ2の孔部の底面を押す作用が働き、側方突起部109がアダプタ2のスリット21の延長スリット部分21cの延出方向端側に移動することで、接続部102の頭部107はアダプタ2の孔部の軸方向に沿ってこの孔部の開口端に向かって移動するが、側方突起部109がアダプタ2のスリット21の延長スリット部分21cの延出方向端に突当することで、側方突起部109のそれ以上の移動が規制される。これにより、架線保持用先端工具1は共用操作棒100の接続部102に接続される。
次に、架線保持用先端工具1の実施例1におけるアダプタ2の上部の構成について、図2から図6を用いて説明する。実施例1の架線保持用先端工具1は、アダプタ2の上部に、基部3と、この基部3から突出した複数(この実施例1では2つ)の架線保持部4とを有している。
このうち、基部3は、直方体のプレート状のものであって、その下面がアダプタ2の上面に固定されている。そして、基部3のアダプタ2とは反対側になる上面には凹部31が形成されている。この凹部31は、図2(c)及び図3に示されるように、共用操作棒100の操作棒本体101の軸線に対して垂直の方向に沿って延びる直線状のもので、架線保持部4側に開口していると共に基部3の両端側でも開口している。凹部31の深度は、図5に示されるように、架線200の直径寸法よりも小さく、且つ架線200が凹部31と基部3の他の部位とで形成される段差に当たったときに段差を乗り越えることができない寸法、例えば、架線200の半径寸法より若干小さな寸法となっている。
架線保持部4、4は、凹部31の延びる方向に沿って直線状に並んでいるもので、一方の架線保持部4は、凹部31の一方の縁部分から立ち上がって、凹部31を覆う方向に延出した形状を成すもので、この実施例では凹部31の一方の縁部分から共用操作棒100の操作棒本体101の軸線と平行となるように直線状に延びた後、凹部31を覆う方向に円弧状に湾曲しつつ延びたものとなっている。但し、図示しないが、共用操作棒100の操作棒本体101の軸線と平行となるように直線状に延びた後、凹部31を覆う方向に直角に曲がって直線状に延びた逆L字形状としてもよい。
他方の架線保持部4は、凹部31の前記架線保持部4が形成された一方の縁部分とは反対側となる他方の縁部分から立ち上がって、凹部31を覆う方向に延出した形状を成すもので、この実施例では凹部31の他方の縁部分から共用操作棒100の操作棒本体101の軸線と平行となるように直線状に延びた後、凹部31を覆う方向に円弧状に湾曲しつつ延びたものとなっている。すなわち、他方の架線保持部4が凹部31を覆うように延びる方向は、一方の架線保持部4が凹部31を覆うように延びる方向と180度逆の方向となっている。尚、他方の架線保持部4について、共用操作棒100の操作棒本体101の軸線と平行となるように直線状に延びた後、凹部31を覆う方向に直角に曲がって直線状に延びた逆L字形状としてもよいことは、一方の架線保持部4と同様である。
更に、各架線保持部4は、その先端部分において、基部3側に向かって延出した爪部41を有している。爪部41は、架線保持部4の他の部分が円弧状に湾曲しつつ延びる形状をしている場合には、爪部41も、架線保持部4の円弧の軌道に沿うように円弧状に延びたものとなり、これに伴い架線保持部4の全体形状は略半円形状となっている。架線保持部4の略半円形状の内側面の曲率は、公称断面が200mm2、58mm2、25mm2の全ての架線200に対応できるようにする場合には、公称断面が最大である200mm2の架線200の曲率であり、公称断面が200mm2、58mm2、25mm2の架線200に対し個別に保持する場合には、いずれかの架線200の曲率に合せたものとなっている。尚、爪部41は、図示しないが、架線保持部4が逆L字状を成す場合には、基部3に真下に向けて直線状に延びたものとなり、これに伴い架線保持部4の全体形状は略コ字形状となる。
これにより、図2(a)に示されるように、基部3の凹部31の内側面と架線保持部4(爪部41を含む。)の内側面とで架線200を保持するための架線保持空間Sが形成される。
各架線保持部4は、図2(a)、図3に示す爪部41の延出方向の先端面と基部3の凹部31の縁部分のうち架線保持部4と対峙する面との間に、架線保持空間Sと連通した開口部42が形成されている。開口部42の上下方向の開口寸法L1(図2(a)に示す。)は、公称断面が200mm2、58mm2、25mm2の全ての架線200に対応できるようにする場合には、公称断面が最大である200mm2の架線200の直径寸法よりも所要の寸法ほど大きくなっており、公称断面が200mm2、58mm2、25mm2の架線200に対し個別に保持する場合には、いずれかの架線200の直径寸法よりも所要の寸法ほど大きくなっている。
また、一方の架線保持部4と他方の架線保持部4との間には、図4に示されるように、隙間5が設けられており、隙間5の寸法L2は、架線200をその間に配置することができる寸法となっている。すなわち、隙間5の寸法L2は、公称断面が200mm2、58mm2、25mm2の全ての架線200に対応できるようにする場合には、公称断面が最大である200mm2の架線200の直径寸法よりも大きくなっており、公称断面が200mm2、58mm2、25mm2の架線200に対し個別に保持する場合には、いずれかの架線200の直径寸法よりも大きくなっている。
そして、この隙間5を境にして架線保持部4、4を2分した場合に、一方の架線保持部4の開口部42の開口方向と他方の架線保持部4の開口部42の開口方向とは逆の方向に向いている。尚、図示しないが、架線保持部4が3つの場合には、架線200を配置する隙間5を境にして3つの架線保持部4を1つの架線保持部4と2つの架線保持部4とに2分した場合でも、一方の架線保持部4の開口部42の開口方向と他方の架線保持部4の開口部42の開口方向とは逆の方向に向いたものとなる。
このような架線保持用先端工具1の構成に基づき、架線保持用先端工具1の架線200への取り付け作業について、図4を用いて説明する。まず、架線保持用先端工具1を共用操作棒100に装着し、図4(a)に示されるように、共用操作棒100を持ち上げて、架線保持用先端工具1の架線保持部4、4間の隙間5に架線200が配置された状態とする。次に、架線保持部4の開口部42が架線200の側面に向かうように(図4(a)では時計回りに)、架線200と基部3とが交差した部位の中心点Pを回転中心として回転させる。これにより、架線200は、図4(b)に示されるように、基部3と架線保持部4、4とで形成される架線保持空間Sに開口部42から入り、架線200は保持された状態となる。架線200から架線保持用先端工具1を取り外す作業では、図4(b)に示されるように、架線保持部4の開口部42が架線200の側面から離れるように(図4(a)では反時計回りに)、架線200と基部3とが交差した部位の中心点Pを回転中心として回転させる。これにより、架線200は、図4(a)に示されるように、基部3と架線保持部4、4とで形成される架線保持空間Sから開口部42を経て外部に出るので、架線200に対する保持が解除される。よって、架線保持用先端工具1で架線200を保持したり、架線200の保持を解除したりする作業を簡易に行うことができる。
そして、架線保持用先端工具1の架線保持部4で架線200を保持した状態で、共用操作棒100を持って架線保持用先端工具1を上下動させても、架線200が架線保持空間Sから抜け出ることが凹部31と爪部41とによって抑止されている。
すなわち、図5に示されるように、共用操作棒100を持って架線保持用先端工具1を持ち上げる場合には、架線200は相対的に凹部31の底面に当接する位置まで変位するため、架線200が相対的に開口部42側に変位しようとしても凹部31の内側面のうちの立面に当たるので、架線200が架線保持空間Sから開口部42を経て外部に抜け出ることが抑止される。
また、図5に示されるように、共用操作棒100を持って架線保持用先端工具1を引き下げる場合や、架線保持用先端工具1を架線200に単に引き掛けた場合には、架線200は相対的に架線保持部4の基部3と対峙する内側面に当接する位置まで変位し或いは架線200は架線保持部4の基部3と対峙する内側面に当接した状態となるため、架線200が相対的に開口部42側に変位しようとしても架線保持部4の爪部41に当たるので、架線200が架線保持空間Sから開口部42を経て外部に抜け出ることが抑止される。
しかるに、共用操作棒100を持って架線保持用先端工具1を上下動させるときに架線200から架線保持用先端工具1が外れるのを作業員は留意しなくても良くなるので、架線200の揺れ防止のためや架線200に一時的に保持したりする際の間接活線作業のうちの架線が保持された後の作業でも作業の簡便化を図ることができる。
架線保持用先端工具1の実施例2におけるアダプタ2の上部の構成について、図7から図12を用いて説明する。但し、実施例1に示される架線保持用先端工具1と同一の構成については同一の符号を付して、その説明を簡略化する。
実施例2の架線保持用先端工具1も、アダプタ2の上部に、凹部31が形成された基部3と、この基部3から突出した複数(この実施例2でも2つ)の架線保持部4とを備えたもので、架線保持部4の先端に爪部41を有し、更に架線保持部4は寸法L1の開口部42が形成されていると共に架線保持部4、4の間に寸法L2の隙間5を有する点でも、実施例1の架線保持用先端工具1と同様である。そして、実施例2の架線保持用先端工具1の架線200への取り付け作業も実施例1と同様である。
その一方で、実施例2の架線保持用先端工具1では、図7に示されるように、基部3の凹部31に架線当接部材6と弾性機構7とが装着されたものとなっている。これに伴い、凹部31の深度は、実施例1の基部3の凹部31よりも深いことが好ましい。
架線当接部材6は、肉厚の薄い直方体の板状の形状をなし、その長手方向寸法は凹部31の長手方向寸法と一致し、その短手方向寸法は凹部31内を円滑に上下動することができるように凹部31の短手方向寸法より若干小さくなっている。そして、架線当接部材6の上面である架線当接面と、架線当接部材6の下面たる架線当接面と反対側に位置する面とは、ともに平坦な面となっている。
弾性機構7は、架線当接部材6を架線保持部4側に押すためのものであり、例えば図7(a)に示されるように、上板部と、下板部と、上板部と下板部とを連接する連接板部とで成るZ字状の板バネ71が用いられる。板バネ71は、この実施例2にあっては、上板部、下板部の長手方向寸法及び短手方向寸法が、架線当接部材6の長手方向寸法及び短手方向寸法と一致している。但し、この板バネ71の形状は特に限定されない。また、弾性機構7として、図7(b)に示されるように、圧縮バネであるコイルスプリング72を用いるようにしてもよい。この場合、コイルスプリング72は、架線当接部材6の長手方向に沿って複数(例えば4つ)配置されたものとなると共に、一端が凹部31の底面に接続され、他端が架線当接部材6の架線当接面とは反対側の面に接続されたものとなる。尚、弾性機構7が架線200で押されていない状態では、架線当接部材6の架線当接面が架線保持部4の開口部42の下縁(凹部31の縁部)の上面と連なった状態となるように、弾性機構7の付勢力は調整されている。
このような架線保持用先端工具1の構成とすることで、共用操作棒100を持って架線保持用先端工具1を上下動しても、架線200が架線保持空間Sから抜け出ることが凹部31と爪部41とによって抑止される一方で、必要に応じて架線200を架線保持部4の開口部42から簡易に取り出すこともできる。以下、弾性機構7として板バネ71を用いた場合で説明する。
図9に示されるように、共用操作棒100を持って架線保持用先端工具1を持ち上げる場合には、架線200は、相対的に下方に変位するので、架線当接部材6の架線当接面を押し、ひいては板バネ71の上板部を押すので、板バネ71を凹部31の底面側に収縮させる。これにより、架線当接部材6の架線当接面が架線保持部4の開口部42の下縁よりも低くなるため、段差が生じ、架線200が相対的に開口部42側に変位しようとしても凹部31の内側面のうちの立面(段差)に当たるので、架線200が架線保持空間Sから開口部42を経て外部に抜け出ることが抑止される。
また、図10に示されるように、共用操作棒100を持って架線保持用先端工具1を引き下げる場合や、架線保持用先端工具1を架線200に単に引き掛けた場合には、架線200は相対的に架線保持部4の基部3と対峙する内側面に当接する位置まで変位し或いは架線200は架線保持部4の基部3と対峙する内側面に当接した状態となるため、架線200が相対的に開口部42側に変位しようとしても架線保持部4の爪部41に当たるので、架線200が架線保持空間Sから開口部42を経て外部に抜け出ることが抑止される。
そして、図11に示されるように、架線200が架線当接部材6の架線当接面を押さずに接しているのみの状態では、架線当接部材6の架線当接面が架線保持部4の開口部42の下縁(凹部31の縁部)の上面と連なった状態となるので、架線保持用先端工具1を水平方向に移動させるだけで、架線保持空間S内の架線200を、架線当接部材6の架線当接面から開口部42の下縁の上面に接しつつ変位させて、架線保持部4の開口部42から外部に出すことができる。
しかるに、実施例2でも、共用操作棒100を持って架線保持用先端工具1を上下動させるときに架線200から架線保持用先端工具1が外れるのを作業員は留意しなくても良く、更には、架線200の架線保持用先端工具1からの取り出しも簡易に行うことができるので、架線200の揺れ防止のためや架線200に一時的に保持したりする際の間接活線作業のうちの架線が保持された後の作業でも作業の簡便化を図ることができる。
最後に、基部3の凹部31は、図12(b)に示されるように、架線保持部4を有しない部位において共用操作棒100の操作棒本体101の軸方向と交差する方向に延びるガイド用凹部311を形成すると共に、架線当接部材6に凹部31のガイド用凹部311に対応する位置に側方に突出した突起部61を形成しても良い。
これにより、ガイド用凹部311に突起部61が装着された状態で、架線当接部材6が凹部31内を上下動するので、弾性機構7が架線当接部材6を押す付勢力が均一でなくても、架線当接部材6がガタツキを生ずることがなく、また、架線当接部材6が凹部31から外れるのを防止することもできる。