JP5777424B2 - 地盤の掘削方法 - Google Patents

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Description

本発明は、地盤の掘削方法に関する。
地盤中に杭や柱列壁(地中壁)を構築する際の工法として提案されているものに、スパイラル状のスクリューを回転させ地盤を掘進させることで、掘削土を地上部に排出しながら掘削治具を地盤中に貫入させるというCFA(Continuous Flight Auger)工法がある。この工法は、例えば、大口径のオーガー(杭削孔機)で所定深度まで削孔して土砂を排出し、このオーガーを引き上げながら先端からコンクリートやモルタルを注入して打設し、その後、芯材となる鉄筋や型鋼をコンクリートやモルタルの中に挿入して場所打ち杭や柱列壁を構築するというものであり、現場造成で比較的簡単に杭や柱列壁等の杭体を構築できるという利点がある。このCFA工法では、削孔時に孔壁にかかる土圧をオーガーで支持しながら、土砂を、コンクリートやモルタルによって削孔内で置換して杭や柱列壁を構築し、排出された土砂を廃棄する。
このようなCFA工法においては、スクリューを回転させ、周辺地盤を巻き込み排土することから、周辺地盤を引き込んで緩みを生じさせてしまうことがある。このことから、従来のCFA工法は、支持性能が小さかったり支持性能のバラツキが大きかったりする工法であった。
このような問題に対し、従来、過度に周辺地盤を取り込まないように、回転数や掘進速度をモニタリングしながら、例えばスパイラル状のスクリュー1回転あたりでスクリュー1ピッチを貫入させるようにするなど、掘進時において排出する土砂の量を減少させることを期待して施工機械を制御する方法が提案されている(例えば特許文献3参照)。
特公平7−68838号公報 特許第2631303号公報 特表平11−509900号公報
しかしながら、従来のCFA工法によると、上述のように施工機械を制御したとしても、軟弱な地盤と硬い地盤が交互に堆積するような互層地盤においては、やはり支持性能が小さかったり支持性能のバラツキが大きかったりすることがあった。
例えば、掘削底が砂礫質の硬質な地盤で、上層のほぼ多数が緩い砂又はシルト質などの粘性土である場合に、スクリューの掘進速度と回転数の関係を、層の多くを占める緩い砂層やシルト質土などの粘性土における掘削条件に合わせて掘削すると、硬質な砂礫地盤にスクリュー先端が到達した直後から貫入し難くなる。このとき、スクリュー1回転あたりの貫入量は減少するので、これに呼応して施工機械が設定通りの作業条件を維持しようとして制御を行うと、過大な押込み力、回転トルクを発生させることになり、管理上の設定値(速度、回転数)を維持することが困難となり、周辺地盤を引き込んでしまい、スクリュー先端の地盤に緩みを生じさせてしまう結果、支持性能が小さかったり支持性能のバラツキが大きくなったりしていた。
そこで、本発明は、地盤の緩みを抑制して杭の支持力を向上させることができる地盤の掘削方法を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するべく本発明者は種々の検討を行った。排土のメカニズムは、スクリューの回転速度と貫入速度とのプロポーションで決まり、例えばスクリューが1回転で1ピッチ進むプロポーションであれば理論的には排土は無いが、実際にはこれよりも貫入速度が低いプロポーションで施工されている。さらに、上述のごとき従来技術の場合には、過大な押込み力や回転トルクを発生させてしまうことで、周辺地盤を引き込み、上方向へと排出(搬出)してしまう結果、スクリュー先端等の地盤に緩みを生じさせているという事象がある。このような点に着目してさらに検討を重ねた本発明者は、掘削時における土砂の現象を知見した。すなわち、地盤中でのスクリューの回転時、土砂には外周方向への慣性力が働く(図2参照)。また、スクリューによる回転時、土砂は、掘削孔の壁面からの力を受ける(図1参照)。これら力の合力は、土砂(土塊)を地表側へ排出しようとする力として機能する。このようにして地中の土砂(土塊)が地表側へ排出されると、これに伴って周辺地盤が引き込まれる(図3参照)。これらの現象についても検討を重ねた本発明者は、かかる課題の解決に結び付く知見を得るに至った。
かかる知見に基づく本発明は、スパイラル状のスクリューを備えた掘削ロッドを用いて地盤を掘削する方法において、当該掘削ロッドによって排出される土砂と置き換えられる置換材を、当該掘削ロッドによる掘削時に該掘削ロッドから吐出するというものである。
掘削ロッドの回転に伴い地盤から土砂が排土され、周辺地盤が掘削ロッドによって引き込まれると上述したような地盤の緩みが生じやすくなる。この点、本発明では、掘削ロッドの回転に伴い排土されて周辺地盤が引き込まれる際、置換材を吐出し、引き込まれてしまう土砂を当該置換材にて置換する。これによれば、掘進時にスクリューを回転させることに伴う地盤の緩みを抑制することができる。
かかる掘削方法においては置換材として、掘削時に掘削抵抗を低減させるために用いられる掘削水よりも粘性の高い高粘性材を用いることが好ましい。
また、本発明では、掘削ロッドによる掘削開始から、該掘削ロッドが孔底に到達するまでの間のいずれかのタイミングで置換材の吐出を開始することとする。このようなタイミングで置換材の吐出を開始すれば、掘削ロッドの回転に伴い引き込まれる周辺地盤を当該置換材にて置換することができる。
上記のいずれかのタイミングで置換材の吐出を開始する場合、より具体的には、孔底(と設定した深度)から、スクリューの最大径Dの5倍未満の高さ上方の地点を基準地点としたとき、該基準地点よりも深い位置で置換材の吐出を開始することが好ましい。これによれば、掘削ロッドの回転に伴い引き込まれる周辺地盤を置換材によってより効果的に置換することができる。
かかる地盤の掘削方法においては、掘削ロッドが孔底に到達したと同時に置換材の吐出を開始することが好ましい。
また、本発明にかかる地盤の掘削方法においては、地盤の種類に応じて置換材の吐出量を増減させることが好ましい。掘削中に生じる地盤中での応力解放に伴い変形をしやすい土質、たとえば、緩く堆積した砂質土地盤などでは、掘削と同時にスクリュー内に取り込まれる量が多く、排出される土砂が増える傾向があるため、この土砂排出量に応じて置換すべき置換材の吐出量を増やすことが好適である。逆に、応力解放によって変形を生じにくい地盤、たとえば、粘性土などでは、排出される量が少なくなるため、置換材の吐出量を減らすことが好適である。
また、本発明にかかる地盤の掘削方法においては、掘削ロッドの形状に応じて置換材の吐出量を規定することが好ましい。上述したように、地盤中でのスクリューの回転時、土砂には外周方向への慣性力が働く。このとき、掘削孔の壁面に接する面積の大きさと土塊の体積の大きさの比率は、スパイラル状のスクリューの軸径rと外径Rおよびスパイラルのピッチの違いによって様々に変化することから、掘削ロッドにおけるこれら寸法形状とスクリューの回転数(回転速度)に応じて土砂(土塊)に働く慣性力の大きさが異なる。よって、掘削ロッドの形状に応じた置換材の吐出量を規定することが好適である。
また、本発明にかかる地盤の掘削方法においては、掘削ロッドの引き上げ時にも置換材を当該掘削ロッドから吐出することが好ましい。
さらに、本発明にかかる掘削方法においては、スクリューの回転数と掘削ロッドによる削孔速度を管理し、スクリューの1回転あたりの貫入速度から排出される土砂の対象体積V0を計算し、該対象体積V0の土砂に代えて置換するための置換材の体積をα・V0(ただしαは置換材投入率)から求め、地盤の種類によって設定される置換材投入率αを任意に設定することで、土砂の代わりに排出される置換材の量を最適化して行うことが好ましい。これによれば、余分な排土を減らしてより効率的に掘削すること、吐出時の掘削液の吐出圧力が過剰に大きくなるのを避けることが可能となる。
この場合、置換材投入率αを、スクリューの1回転あたりの排出土砂の体積V0に対して、土砂が砂質土の場合は100%〜300%、礫質土の場合は100%〜150%、粘性土の場合は50%〜100%、岩盤の場合は50%〜100%の範囲内で設定することが好ましい。
また、掘削ロッドの引き上げ時、置換材投入率αを、スクリューの1回転あたりの排出土砂の体積V0に対して、土砂が砂質土の場合には30〜70%、礫質土の場合には20〜50%、粘性土の場合には0〜40%、岩盤の場合には0〜40%の範囲内で設定し、掘削ロッドの引き上げと同時に置換すべき土砂の体積V1の他に追加で投入する置換材の体積を求めることが好ましい。
本発明によれば、地盤の緩みを抑制して杭の支持力を向上させることができる。
本発明の実施形態における掘削ロッドの一例を、土砂(土塊)が受ける合力とともに示す図である。 図1に示した掘削ロッドの平面図である。 土砂の排出に伴い引き込まれる周辺地盤の状況を矢印を用いて示す図である。 掘削ロッドの概略構成を、スクリュー1回転あたりの排出対象となる土砂の体積の求め方とともに示す図である。 掘削ロッドの概略構成を、吐出される硬化材の量の求め方とともに示す図である。 (I)〜(IV)該掘削ロッドにより孔底まで掘削するまでの工程を順に示す図であり、(III)の(a)は掘削ロッドの正面図、(b)は平面図である。 (V)〜(IX)掘削ロッドにより孔底を均し、硬化材を吐出しながら引き抜き、杭体の芯材を掘削孔内に挿入する工程を順に示す図である。
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
図1等に本発明にかかる地盤Gの掘削方法の実施形態を示す。本実施形態では、以下に示す掘削ロッド1を用いて地盤Gを掘削し、杭体(杭や柱列壁など)11を構築する。
図1、図4において、符号1はオーガーモータ(図示省略)により回転駆動されて地盤Gを掘削する掘削ロッドである。本実施形態にかかる掘削ロッド1は、スクリュー2、拡大爪4、掘削ビット5等を備える。この掘削ロッド1の周面には螺旋状の羽根2aが取り付けられており、下端部に掘削ビット5が設けられている。本実施形態では、地盤Gの上方から見た場合に、右ねじ状のスクリュー2を有する掘削ロッド1が時計回りに回転する場合を「正回転」と呼ぶ。掘削ロッド1が正回転するとき、羽根2aが共に正回転することにより推進力を得て該掘削ロッド1は地盤Gを掘進する。
掘削ロッド1は例えば鋼管軸部6によって中空構造とされ、液体等を通じるための配管を兼ねている。本実施形態の掘削ロッド1の先端には、硬化材10を吐出するためのノズル7が形成されている(図1等参照)。また、鋼管軸部6の上端には、別の掘削ロッドを例えば図示しない差込ピンを介して接合するためのジョイント8が形成されている(図6等参照)。なお、掘削ロッド1が先行掘削する際、必要に応じてエアーや水、掘削液などが噴出されるが、本実施形態では硬化材10を吐出させることとしている。
スクリュー2は、鋼管軸部6の外周に螺旋状に形成された羽根2aを備えている(図1等参照)。本実施形態で用いる掘削ロッド1は、右ねじ状に形成される羽根2aと羽根2aとの間隔(スパイラルピッチ)Sが一定とされているものである(図4参照)。さらに、本実施形態で用いる掘削ロッド1は、螺旋状に形成される羽根2aの外径が一定の大きさD(半径はR)とされているものである(図4参照)。
また、掘削ロッド1の先端側におけるスクリュー2の所定範囲において、羽根を二重螺旋構造としてもよい。二重螺旋構造のスクリュー2によれば、掘削時(特に掘削開始時)、掘削ロッド1が曲がらずに掘進しやすくなる。このような形態の一例としては、羽根2aと同ピッチの二重螺旋羽根が、掘削ロッド1の先端から半周分形成されたものを挙げることができる。
閉塞板3の設置位置は特に限定されるものではないが、掘削ロッド1のロッド径をDとした場合(D=2R)、掘削ロッド1の先端から0〜6Dの範囲内に配置されていることが好ましく、先端から2D〜4Dの範囲内に配置されていることがより好ましい。この理由を概説すれば以下のとおりである。すなわち、本実施形態の掘削装置による掘削を行なった場合、地盤G中の硬い層(支持層)を掘削する際に閉塞板3の影響で掘削ロッド1を貫入させづらくなることが生じ得る。そこで、地盤Gの支持層内に閉塞板3を過度に貫入することを避けることが望ましく、この観点からの閉塞板3の好適な設置位置は先端から2D〜4Dの範囲内である。これは、地盤G中の固い層(支持層)に掘削ロッド1の先端部付近を根入れすることで、先端支持力度を大きくする設計のときに効果がある。
拡大爪4は、掘削ロッド1の先端部に配置された掘削ビット5の外側へ配置され、スクリュー2による地盤Gの掘削径よりも大きい径を掘削する拡大掘削部材として機能する。本実施形態の拡大爪4は、特別な機構(例えば、掘削ロッド1を逆転させることで地盤(土砂)の抵抗により収容されている拡大爪4を突出させる機構や、油圧等を利用してシリンダー等のアクチュエーターを作動させ機械的に収容してある拡大爪4を突出させる機構など)が不要であり、尚かつ当該爪の開閉の確認も不要なことからメンテナンスやコストの面で有利な固定式であり、掘削ロッド1の回転に伴い、スクリュー2の羽根2aの外径Dよりも径の大きい溝部を掘削孔20の孔壁20aに形成する。
さらに、スクリュー2の先端に取り付けられる拡大爪4は、硬化材10を吐出するノズル7の近傍に配置されていることが好ましい。本実施形態の拡大爪4は、連続螺旋である羽根2aの先端部外周箇所に設置されている。このように、ノズル7の近傍であって、掘削回転時に該ノズル7に先行する位置(本実施形態の場合、羽根2aの先端部外周箇所)に拡大爪4を設置することで、回転を伴いながら掘削ロッド1を引き抜きつつ(引き上げつつ)硬化材10を充填する際に、周辺地盤Gを掘削した直後に硬化材10が充填されることで、地盤Gの崩壊を防ぎ、強度、形状ともに品質の高い杭体を築造することが可能となる。
また、拡大爪4が上述のように1箇所設置された場合には、築造される溝部の体積は拡大爪4が複数個ある場合に比べ小さくなるため、充填する時間当たりの硬化材10の量が少なくなり、充填速度の設定範囲が小さい領域から大きい領域まで使えることから施工時の制御がしやすくなり、状況に応じた施工が行いやすくなる。
また、溝部に硬化材10を注入し硬化させて節部12を築造するにあたり、当該節部12を所定のピッチにて築造する際、拡大爪4が複数個ある場合には、節部12が二重ないしは複数の螺旋状になり、それぞれの螺旋の軌跡が重ならないように施工するには掘削ロッド1の引き抜き速度を更に早く設定する必要性があるため、地盤Gの堆積状態が複雑で、軟硬互層となる地盤の場合などには特に施工機械の制御が困難となる場合がある。この点、拡大爪4の取り付け位置、個数を好ましい形態とした本実施形態によれば、これらの問題を回避し、より品質の高い杭体11を築造することが可能となる(図7参照)。
また、掘削ロッド1の形状は、掘削孔20の孔底20bが平坦となるように掘削するものでもよいし、孔底20bに凹凸を付すように掘削するものでもよい。例えば掘削孔20の孔底20bが逆椀形(中央が上方へ盛り上がるドーム形)となるように掘削し、杭体11の底面を同様に逆椀型とした場合、孔底20bに接触する杭体11の底面積を増やし、杭体11の底面に対して径方向への摩擦力を作用させることができる。あるいは、特に図示しないが、杭体11の底面を、例えば杭軸中心側から外周側に対して傾斜した逆三角錐型とする等、杭体11の中心部付近が下側に凸となるように形成することもできる。このような形状とすることで、杭体11に軸力が作用した場合に、杭体先端部の応力度の作用において中心方向(圧縮方向)の作用がより顕著化するため、引張り強度が圧縮強度に比べて総じて小さい硬化材10を用いて杭体11を築造する際に特に好ましい。
上述のように孔底20bに凹凸を付すにあたっては、特殊な形状ないし配列の掘削ビット(例えば、外周寄りのものほど回転軸方向先端側に位置するように配置された複数の掘削ビット)5を利用することが可能であるが、拡大爪4をスクリュー2の先端2bよりもさらに先端側に(例えば先端側斜めに)突出させ、掘削孔20の孔底20bを径方向外周寄りの部分ほどさらに深底に形成できるようにすることも好ましい(図6等参照)。このような掘削ロッド1を用いて掘削した場合、掘削孔20の孔底20bを逆椀形(ドーム形)あるいはこれに近似した形状に形成し、杭体11の底面を同様の形状とすることができる。
続いて、上述の掘削ロッド1を用いて地盤Gを掘削する様子を示す(図6、図7等参照)。
まず、オーガーモータにより掘削ロッド1を正回転させ、地表から地盤Gを掘削する(図6(I)〜(II)参照)。このとき、掘削ビット5とともに回転する拡大爪4により、掘削孔20の孔壁20aに螺旋状の溝部が形成される(図6(II)、(III)参照)。掘削ロッド1が所定深さまで掘進したら、ジョイント8を介して別の掘削ロッド1を継ぎ足し、さらに深くまで掘削する(図6(III) 、(IV)参照)。
ここで、掘削ロッド1の掘進時、拡大爪4が、羽根2aの外径Rよりも大きい範囲で地盤Gを掘削し、掘削孔20の孔壁20aの一部を節状に欠損させた状態とする(当該欠損した部分を以下では欠損部ともいい、図中、符号22で示す)。
掘削ロッド1の先端が所定深度にまで達したら、当該掘削ロッド1を深さ一定に維持しながら少なくとも1回転させる(空転)。これにより、掘削ロッド1の先端(掘削ビット5等)で、掘削孔20の孔底20bが周方向に平均化した状態となるように平滑化されるので、杭体11の荷重を掘削孔20の孔底20b全体に対してより均一に作用させることが可能な状態となる(図6(IV)参照)。
また、地盤Gの所定深度にて掘削ロッド1を回転(空転)させると、拡大爪4により、スクリュー2の羽根2aの外径Rよりも径の大きい環状の拡径部21が形成される(図6(V)参照)。本実施形態では、孔底20b付近にこのような拡径部21を形成し、当該拡径部21に硬化材10を注入して硬化させるようにしている。こうした場合、当該硬化した部分が、杭体11と孔壁20aとの摩擦力(周面摩擦力)を増大させる節部12の一部として機能しうる。また、拡径部21を形成することで、杭体11の底面積を増やして地盤Gによる支持領域を増加させることができる。
なお、例えば孔底20b付近において掘削ロッド1の1回転あたりの引き上げ高さを、拡大爪4の鉛直方向高さより小さくすることも好ましい。こうした場合、掘削孔20の孔底20b付近に、拡大爪4の鉛直方向高さ(厚み)よりも高さの大きい(太い)、掘削ロッド1の回転軸の軸方向に連続する拡径部(軸方向に所定の厚みを有する拡径部)21を形成することができる。このようにして軸方向に厚みを有するように形成された拡径部21は、底部から作用する力と拡径部21周辺に作用する力により、圧縮応力度及びせん断応力度が設計値に対して極限状態に近くなるが、軸方向の厚みを有するため、発生する圧縮応力度ならびにせん断応力度は設計値を十分下回ることとなり、杭体11の健全性が飛躍的に向上する。
地盤Gの所定深度にて掘削ロッド1を回転(空転)させて孔底20bを均したら、掘削ロッド1を引き抜く(引き上げる)工程へと移行する。この引き抜き工程においてはノズル7から硬化材10を吐出しながら掘削ロッド1を引き抜くことができる。ここで、掘削ロッド1を引き抜いた後にできるスペースと掘削ロッド1を回転(空転)して排出されるスペース以上に硬化材10を充填すると、充填材に圧力が作用することから周辺地盤の緩みを効率よく止めることができる。また、掘削水を用いて掘削する場合には、孔壁20aの崩落をより抑えるといった観点からこのように硬化材10を吐出しながら掘削ロッド1を引き抜くことが好ましい。本実施形態では、ノズル7を開けて硬化材10を吐出し、スペースに充填しながら掘削ロッド1を引き抜く(図7(VI)等参照)。
また、本実施形態では、掘削ロッド1の引き抜き工程において、当該掘削ロッド1を正回転させながら引き抜くようにしている。このように掘削ロッド1を正回転させながら引き抜くと、スクリュー2上の土砂に対して排土方向へ揚送する力を与えながら掘削ロッド1を引き上げることになる。したがって、特に別の機構を追加せずとも、スクリュー2上の土砂を孔底20bに落とさないようにしながら掘削ロッド1を引き抜くことができる。
また、このように掘削ロッド1を正回転させながら引き抜くと、拡大爪4が孔壁20aに螺旋状の溝部を掘る。ノズル7から吐出された硬化材10はこの溝部に入り込み、その状態で硬化して、杭体11の周囲に螺旋状の節部12を築造する(図7(VII)等参照)。節部12は拡大爪4の形状に因り種々の形態をとり得るが、例えば本実施形態では断面が略矩形である櫛状の突起のような節部12を築造することができる。
掘削孔20から掘削ロッド1を引き抜いたら、杭体11の芯材(例えば鉄筋カゴ、鋼管、既製杭等の芯材)13を掘削孔20内に挿入する(図7(VIII)参照)。挿入後、硬化材10が硬化すると、掘削孔20内に杭体11が形成される(図7(IX)参照)。なお、図7(VIII)の一部および(図7(IX)においては硬化材10の外周ではなく断面を示している。
ところで、上述の実施形態においては、引き抜き工程においてノズル7から硬化材10を吐出しながら掘削ロッド1を引き抜くと説明したが、これのみならず、掘削ロッド1による掘削開始から、該掘削ロッド1が孔底20bに到達するまでの間のいずれかのタイミングで硬化材10の吐出を開始することが好ましい。ここでいうタイミングには、掘削ロッド1による掘削開始と同時に吐出を開始すること、あるいは掘削ロッド1が孔底20bに到達したと同時に吐出を開始することを含めてよい。これらのいずれかのタイミングで硬化材10の吐出を開始すれば、掘削ロッド1の回転に伴い引き込まれる周辺地盤の土砂を当該硬化材10によって置換し、硬化材10をいわば置換材として機能させることができる(図5参照)。一般に、掘削ロッド1の回転に伴い地盤Gから土砂が排土され、周辺地盤が掘削ロッド1によって引き込まれると地盤Gの緩みが生じる場合がある。この点を鑑み、本実施形態では、掘削ロッド1の回転に伴い排土されて周辺地盤が引き込まれる際、置換材としての硬化材10を吐出し、引き込まれてしまう土砂を当該硬化材10にて置換することとし、掘進時にスクリュー2を回転させることに伴う地盤Gの緩みを抑制することができる。また、この際には、スクリュー2の回転数と掘削ロッド1による削孔速度を管理し、スクリュー2の1回転あたりの貫入速度から排出される土砂の対象体積を計算し、さらに、地盤Gの種類によって設定される置換材投入率αを任意に設定することで、土砂の代わりに排出される硬化材10の量を最適化して余分な排土を行なわずに効率よく掘削できるようにすることが好ましい。
以上についてより詳しく説明する。羽根2aと羽根2aとの間隔(スパイラルピッチ)がS、羽根2aの半径(外径Dの半分)がR、鋼管軸部6の半径がrである場合、スクリュー2の1回転あたりの排出(排土)対象とされる体積V0は、
0=π(R2−r2)・S
ただし、
R:掘削ロッド1(スクリュー2)の外径(m)
r:掘削ロッド1(鋼管軸部6)の軸径(m)
S:掘削ロッド1のスクリュー2の羽根ピッチ(m)
で求めることができる。
このようにして求められる体積V0に対し、吐出される硬化材10の体積Vは、
V=α・V0
で求めることができる。ただし、αは、地盤Gの種類、地盤Gの非排水せん断強度などの固さの指標、掘削ロッド1による掘進速度、掘削ロッド1の回転速度等によって定まる係数(本明細書では置換材投入率という)である(図5参照)。一例を挙げれば、砂質土の場合、土砂を十分に置換して地盤Gの緩みを抑制するという観点からすれば、硬化材(置換材)10の吐出量が、スクリュー2の1回転あたりの排出土砂の体積V0の少なくとも100%となるように係数αを設定することが好ましい。もちろん、吐出される硬化材10の体積Vを、排出土砂の体積V0よりも多くする過供給の状態とすることもできる。ただし、過供給とするとそのぶん大きなトルクが必要になり、制御が難しくなるので、機器の保守や余分な動力の抑制といった観点からは、硬化材10の吐出圧力を過剰に大きくなるのを避けるように設定することが望ましい。
ちなみに、地盤G中でのスクリュー2の回転時、土砂には外周方向への慣性力が働くが、この慣性力はスクリュー2の回転数(回転速度)によっても変化するため、これに応じて土砂の排出量は変化する。また、土砂自身が、水、空気、土粒子の3気相から構成されており、たとえば、水位以下に堆積する飽和した砂地盤では、撹拌されることで流体に近い挙動を示すといったこともあるため、土砂の排出量や硬化材10の吐出量を一義的に決めることは困難である。この点、本実施形態では、このような事象を背景にして誤差も考慮し、置換材投入率αに幅をもたせることとしている。
また、硬化材10の吐出タイミングは、掘削開始の直後から掘削ロッド1が孔底20bに到達するまでの間のいずれかのタイミングであれば種々のタイミングを採りうるが、より好ましくは、掘削孔20の孔底20bと設定された深度から、スクリュー2の最大径Dの5倍未満を差し引いた深度よりも深い位置(掘削孔20の孔底20bと設定された地点からみて、スクリュー2の最大径Dの5倍未満の高さぶん上方の地点を基準地点としたとき、該基準地点よりも深い位置)で硬化材10の吐出を開始することである。一般に、杭に軸力が作用するとき、杭先端付近の地盤での応力のつり合いは、杭先端から上方の5D(この場合のDは杭径)の範囲で収束することが知られており、この範囲において、周辺地盤の緩みを抑えることが最も効率よく杭の先端支持性能を確保することになる。また、吐出される硬化材10の体積Vを排出土砂の体積V0よりも多くする過供給の状態としながら掘削ロッド1の引き上げ工程を行うと更に周辺地盤の緩みを抑えることが可能となる。
以上についてより詳しく説明する。引き上げられた高さがHであり、掘削ロッド1の羽根2aの半径(外径Dの半分)がRである場合、単位時間当たりの排出(排土)対象とされる体積V1は、
1=π・R2・H
ただし、
R:掘削ロッド(スクリュー)の外径(m)
H:単位時間当たりに引き上げられた高さ(m)H=F・Δt
F:掘削速度(m/min)
Δt:引き上げに要した時間(min)
で求めることができる。
また、掘削ロッド1を引き上げると同時に投入する置換材(硬化材10)は、上記体積V1以上であることが必要であるが、置換材の投入量は引き上げと同時に置換すべき体積V1の他、追加で投入する置換材量を、スクリュー2の1回転あたりの排出土砂の体積V0に対して、対象地盤Gが砂質土の場合には30〜70%、礫質土の場合には20〜50%、粘性土の場合には0〜40%、岩盤の場合には0〜40%とすることが好ましい。このような置換材量の吐出量を設定することで、引き上げ工程において掘削ロッド1を回転しながら施工を行っても、回転に伴い排出される地盤は縮減し、周辺地盤の緩みを抑えることが可能となる。同時に、掘削ロッドを回転しながら引き上げると周辺地盤との摩擦抵抗力は小さくなることが容易に想像でき、施工機の省力化を図ることが可能となる。
ここで、硬化材10の具体例を示せば、セメントミルク、生コンクリート、モルタル等の硬化体(水硬性材料)を挙げることができる。ただし、これらは好適例にすぎず、このほかにも、掘削時に掘削抵抗を低減させるために用いられる掘削水よりも粘性の高い高粘性材(例えば、泥水やスラリー状液といった高粘性の掘削水など)を硬化材(置換材)として用いることもできる。
上述した本実施形態の掘削方法によれば、掘削ロッド1の回転に伴い排土されて周辺地盤が引き込まれる際、硬化材10等の置換材を吐出し、引き込まれてしまう土砂を当該置換材にて置換することができる。これによれば、掘進時にスクリュー2を回転させることに伴う地盤Gの緩みを抑制し、杭の支持力を向上させることができる。
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述した実施形態では、羽根2aと羽根2aとの間隔(スパイラルピッチ)Sが一定であり、尚かつ羽根2aの外径Dが一定の大きさとされている掘削ロッド1を用いたが使用可能な掘削ロッド1がこれに限定されることはなく、この他、スパイラルピッチが一定でない形態の掘削ロッド1、あるいは、螺旋状の羽根2aの外径Dが一定でない形態の掘削ロッド1などを適用した場合にも、上述した実施形態と同様の作用効果を奏することは可能である。
また、上述した実施形態では、連続した螺旋状の羽根2aで構成されたスクリュー2を例示したがこれも好適な一例にすぎない。この他の形態として、羽根2aは、一部が途切れた不連続な形状となっていてもよい。
また、上述した実施形態では、引き抜き工程にて、掘削ロッド1を連続して回転させながら引き抜くようにした形態を例示したが、これとは異なり、掘削ロッド1を不連続で回転させながら引き抜くようにしてもよい。このようにして掘削ロッド1が断続的に回転することにより、掘削孔20の孔壁20aには不連続な拡径部21が掘削される。したがって、これによれば、螺旋状であるが不連続である複数の節部が築造された杭体11を構築することができる。このような節部を築造することによっても、掘削ロッド1の周囲において地盤Gに対する大きな抵抗力を実現することができる。
また、上述した実施形態では、拡大掘削部材として機能する固定式の拡大爪4が設けられていたが、例えば、径方向へ開いた拡開位置および収容された退避位置との間で開閉可能な拡大爪を採用することもできる。開閉可能な拡大爪を採用し、掘削ロッド1の掘進時に爪を退避させた状態とすれば、地盤G(孔壁20a)を乱す量が少なく、掘削抵抗も少ない。
また、上述した実施形態においては引き抜き工程において掘削ロッド1を正回転させながら引き抜くようにしたが、当該掘削ロッド1を無回転のまま掘削孔2から引き抜くこともできる。こうした場合、置換材の投入量は引き上げに伴い生じる空隙の体積V1と同等か、直径のばらつきを考慮した適切な割増し量を増分しに設定することで、拡大爪4によって孔壁20aに直線状の溝部が掘削され、杭体11には同様に直線状の節部12が築造される。
本発明者は、杭の築造工程における周辺地盤の緩みの影響を調査すべく、掘削ロッド1の先端に搖動可能な油圧制御による反力盤を設置し、掘削後にこの反力盤を地中に押し付けることで先端地盤の緩みの程度を調査した。そして、掘削時に所定の深度区間における掘削ロッド1の回転総数を変化させ、掘削条件の違いによる周辺地盤の緩みの影響を調査した。その結果、安定的に杭の先端支持力を発揮させるための条件として、以下の条件を満足する必要があることが分かった。
まず、掘削に伴い単位時間Δtあたり掘削ロッド1が貫入した体積Vと、掘削ロッド1のプロポーションから決まる掘進された体積Voの比率を充填率λ=V/Voとすると、充填率λ>0.7となる領域で、杭の先反力としての地盤反力が確保されることが分かった。ここで、
V=πR2・F・Δt
ただし、
R:掘削ロッドの外径(m)
F:掘削速度(m/min)
Δt:単位当たりの掘削時間(min)
また、
Vo=π(R2−r2)・S・U・Δt
ただし、
R:掘削ロッド(スクリュー)の外径(m)
r:掘削ロッド(スクリュー)の軸径(m)
S:掘削ロッド(スクリュー)の羽根ピッチ(m)
U:掘削ロッド(スクリュー)の回転数(rpm)
Δt:単位当たりの掘削時間(min)
ここで、前述しているように、掘削ロッド1が掘進する際の下向きの掘削速度Fは、地盤Gの固さに応じて変動するため、互層地盤においては、上記の充填率λを常に一定にしながら施工することは難しい。また、排土のメカニズムは、前述のとおりスクリュー2の回転速度と貫入速度とのプロポーションが支配的となって決定されるが、本発明者らは、土塊に働く慣性力と周辺地盤との摩擦抵抗力から生じる合力によって定まる点にも着目した。ここで、土塊と周辺地盤との間に生じる摩擦抵抗力は、土の非排水せん断強さと、土を構成する土粒子骨格の種類によって決まる。しかしながら、堆積している地盤は深度方向に対して均一ではないことと、土圧の分布は深度に依存して可変することから、掘削ロッド1のスクリュー2が回転することに伴い周辺の地盤がスクリュー2内に取り込まれる土砂の量を正確に把握することは困難である。しかしながら、杭先端から限られた範囲の地盤に着目すれば、先端地盤の種類を砂質土、礫質土、岩、粘性土に分類し、排土される土砂の量に代わる置換材を適切に投入することで、築造された杭の先端支持性能が向上することを確認した。
本発明は、地盤中に杭や柱列壁(地中壁)等の杭体を構築する等のため地盤を掘削する場合に適用して好適なものである。
1…掘削ロッド、2…スクリュー、10…硬化材(置換材)、20…掘削孔、20b…孔底、G…地盤

Claims (9)

  1. スパイラル状のスクリューを備えた掘削ロッドを用いて地盤を掘削する方法において、
    前記スクリューの回転数と前記掘削ロッドによる削孔速度を管理し、前記スクリューの1回転あたりの貫入速度から排出される土砂の対象体積V 0 を計算し、該対象体積V 0 の土砂に代えて置換するための前記置換材の体積をα・V 0 (ただしαは置換材投入率)から求め、地盤の種類によって設定される置換材投入率αを任意に設定することで、土砂の代わりに排出される前記置換材の量を最適化するとともに、
    前記置換材投入率αを、前記スクリューの1回転あたりの排出土砂の体積V 0 に対して、前記土砂が砂質土の場合は100%〜300%、礫質土の場合は100%〜150%、粘性土の場合は50%〜100%、岩盤の場合は50%〜100%の範囲内で設定し、
    当該掘削ロッドによって排出される土砂と置き換えられる置換材を、当該掘削ロッドによる掘削時に該掘削ロッドから吐出する、
    地盤の掘削方法。
  2. 前記置換材として、掘削時に掘削抵抗を低減させるために用いられる掘削水よりも粘性の高い硬化材を用いる、請求項1に記載の地盤の掘削方法。
  3. 前記掘削ロッドによる掘削開始から、該掘削ロッドが孔底に到達するまでの間のいずれかのタイミングで前記置換材の吐出を開始する、請求項1または2に記載の地盤の掘削方法。
  4. 掘削孔の孔底と設定された深度から、前記スクリューの最大径Dの5倍未満の高さ上方の地点を基準地点としたとき、該基準地点よりも深い位置で前記置換材の吐出を開始する、請求項3に記載の地盤の掘削方法。
  5. 前記掘削ロッドが前記孔底に到達したと同時に前記置換材の吐出を開始する、請求項4に記載の地盤の掘削方法。
  6. 前記地盤の種類に応じて前記置換材の吐出量を増減させる、請求項1から5のいずれか一項に記載の地盤の掘削方法。
  7. 前記掘削ロッドの形状に応じて前記置換材の吐出量を規定する、請求項1から6のいずれか一項に記載の地盤の掘削方法。
  8. 前記掘削ロッドの引き上げ時にも前記置換材を当該掘削ロッドから吐出する、請求項1から7のいずれか一項に記載の地盤の掘削方法。
  9. 前記掘削ロッドの引き上げ時、前記置換材投入率αを、前記スクリューの1回転あたりの排出土砂の体積V0に対して、前記土砂が砂質土の場合には30〜70%、礫質土の場合には20〜50%、粘性土の場合には0〜40%、岩盤の場合には0〜40%の範囲内で設定し、前記掘削ロッドの引き上げと同時に置換すべき土砂の体積V1の他に追加で投入する置換材の体積を求める、請求項に記載の地盤の掘削方法。
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