JP5774756B2 - 固溶体型合金微粒子 - Google Patents

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Description

本発明は、固溶体型合金微粒子およびその製造方法に関する。
合金は、それを構成する金属元素単体とは異なる性質を示すため、新規な合金を作製することによって従来の金属では得られなかった特性(たとえば触媒特性)が期待できる。一方、金属微粒子は、比表面積が大きい、バルクとは異なる性質・構造を示す場合がある、といった理由から、様々な応用が期待される。これらの理由から、様々な合金微粒子が従来から研究されてきた。たとえば、銀とロジウムとを含む合金粒子の製造方法が開示されている(非特許文献1)。
日本化学会第88春季年会(2008年)、講演予稿集第1分冊、講演番号4L2−36
しかし、図18の相図に示すように、バルクにおいて、銀とロジウムとは原子レベルで固溶しない。銀とロジウムとの混合物を加熱して溶融させても、銀とロジウムとは分離するだけである。そのため、銀とロジウムとを含む融液を急冷しても、両者が固溶している合金を作製することは難しい。一方、非特許文献1の方法では溶液中において銀イオンとロジウムイオンとを還元して微粒子を作製している。しかし、非特許文献1の方法では、銀とロジウムとが原子レベルで固溶した微粒子を作製することは難しかった。しかし、銀とロジウムとが原子レベルで固溶しなければ、合金に特有の性質が発現する可能性は低い。図19に、金とロジウムとの相図を示す。図19の相図から明らかなように、金とロジウムからなる固溶体型の合金を作製することは難しい。
このような状況において、本発明は、複数の金属元素が原子レベルで混合されている合金微粒子、およびその製造方法を提供することを目的の1つとする。
上記目的を達成するため、本発明の合金微粒子は、複数の金属元素が原子レベルで混合されている、固溶体型の合金微粒子である。なお、「原子レベルで混合されている」とは、1つの観点では、0.105nmの空間分解能を持つSTEMによる元素マッピングにおいて各元素がランダムに存在することであり、他の観点では、XRDにおいて単一のピークパターンが確認されることである。
本発明の製造方法は、複数の金属元素からなる合金微粒子の製造方法である。この製造方法は、(i)前記複数の金属元素のイオンを含む溶液と還元剤を含む液体とを調製する工程と、(ii)前記溶液と、加熱された前記液体とを混合する工程とを含む。
本発明によれば、複数の金属元素が原子レベルで混合されている、固溶体型の合金微粒子が得られる。
図1は、本発明の製造方法の一工程の一例を示す。 図2は、本発明の製造方法の一工程の他の一例を示す。 図3は、実施例1で作製された合金微粒子の透過型電子顕微鏡像の一例を示す。 図4は、実施例1で作製された合金微粒子の透過型電子顕微鏡像の他の一例を示す。 図5は、実施例1で作製された合金微粒子のEDXスペクトルを示す。 図6は、実施例1で作製された合金微粒子のXRDパターンを示す。 図7は、実施例2〜4で作製された合金微粒子の透過型電子顕微鏡像を示す。 図8は、実施例2〜4で作製された合金微粒子のXRDパターンを示す。 図9は、実施例2〜4で作製された合金微粒子について、銀の含有率と格子定数との関係を示すグラフである。 図10は、実施例2〜4で作製された合金微粒子の吸収スペクトルを示す。 図11は、比較例1で作製された微粒子のXRDパターンを示す。 図12は、比較例2で作製された微粒子のXRDパターンを示す。 図13は、比較例3で作製された微粒子のXRDパターンを示す。 図14は、実施例5で作製された合金微粒子のXRDパターンを示す。 図15は、実施例5で作製された合金微粒子のEDXスペクトル、および電子顕微鏡写真を示す。 図16Aおよび図16Bは、実施例1で作製された合金微粒子について、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いた観察結果を示す。 図17Aおよび図17Bは、実施例5で作製された合金微粒子について、走査型透過電子顕微鏡を用いた観察結果を示す。 銀とロジウムの相図である。 金とロジウムの相図である。
以下、本発明の実施形態について例を挙げて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態および実施例に限定されない。以下の説明では、特定の数値や特定の材料を例示する場合があるが、本発明の効果が得られる限り、他の数値や他の材料を適用してもよい。
[合金微粒子の製造方法]
本発明の方法は、複数の金属元素からなる合金微粒子を製造する方法である。この製造方法によれば、複数の金属元素が原子レベルで混合されている、固溶体型の合金微粒子が得られる。この製造方法で得られる合金微粒子は、本発明の合金微粒子の1つの側面を構成する。
本発明の方法は、以下の工程(i)および(ii)を含む。以下では、合金微粒子を構成する複数の金属元素を「複数の金属元素(E)」という場合がある。
工程(i)では、複数の金属元素(E)のイオンを含む溶液と、還元剤を含む液体とを調製する。以下では、複数の金属元素(E)を含む溶液を、「金属イオン溶液」または「溶液11」という場合がある。また、還元剤を含む液体を、「液体12」という場合がある。
複数の金属元素(E)は、2種類の金属元素であってもよい。その場合には、二元合金微粒子が得られる。複数の金属元素(E)がロジウムを含む場合、ロジウム合金微粒子が得られる。
複数の金属元素(E)の一例は、銀(Ag)およびロジウム(Rh)である。複数の金属元素(E)の他の一例は、金(Au)およびロジウム(Rh)である。
金属イオン溶液は、複数の金属元素(E)を含有する少なくとも1種の化合物を溶媒に溶解させることによって調製できる。1つの化合物が、複数の金属元素(E)に含まれるすべての元素を含有していてもよい。また、1つの化合物が、複数の金属元素(E)に含まれる1つの元素のみを含有していてもよい。
複数の金属元素(E)が銀およびロジウムである場合、金属イオン溶液は、銀化合物およびロジウム化合物を溶媒に溶解させることによって調製できる。銀化合物の例には、酢酸銀(I)(AgCH3COO)や、硝酸銀(AgNO3)が含まれる。ロジウム化合物の例には、酢酸ロジウム(III)(Rh(CH3COO)3)、および酢酸ロジウム(II)(Rh(CH3COO)2)が含まれる。溶媒には、銀イオンおよびロジウムイオンを溶解させることができる溶媒が用いられる。溶媒の一例は、水である。
複数の金属元素(E)が金およびロジウムである場合、金属イオン溶液は、金化合物およびロジウム化合物を溶媒に溶解させることによって調製できる。金化合物の例には、塩化金酸(HAuCl4)が含まれる。ロジウム化合物の例には、上述したロジウム化合物および塩化ロジウム(III)(RhCl3)が含まれる。溶媒の一例は水である。
金属イオン溶液中における複数の金属元素のイオン(たとえば銀イオンや金イオン)の濃度は、0.1mmol/L〜1mol/Lの範囲(たとえば、0.1mmol/L〜5mmol/Lの範囲)にあってもよい。また、金属イオン溶液中におけるロジウムイオンの濃度は、0.1mmol/L〜1mol/Lの範囲(たとえば、0.1mmol/L〜5mmol/Lの範囲や、0.1mmol/L〜1mmol/Lの範囲)にあってもよい。
金属イオン溶液中における銀イオンの濃度CAg(mol/L)と、金属イオン溶液中におけるロジウムイオンの濃度CRh(mol/L)との比を変化させることによって、合金の組成を変化させることが可能である。CRh/[CRh+CAg]の値は、0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上、または0.9以上であってもよいし、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下、または0.1以下であってもよい。CRh/[CRh+CAg]=Xである金属イオン溶液を用いることによって、ロジウムの含有率がほぼ100X原子%である合金微粒子を作製できる。たとえば、CRh/[CRh+CAg]の値が0.5以上である金属イオン溶液を用いることによって、ロジウムの含有率が50原子%以上である合金微粒子を作製できる。複数の金属元素(E)が2種類の元素である場合、金属イオン溶液中における各元素のイオン濃度と合金の組成との関係は、上記の銀イオン濃度およびロジウムイオン濃度と合金の組成との関係と同じである。
次に、工程(ii)では、金属イオン溶液(溶液11)と、還元剤を含み加熱された液体(液体12)とを混合する。工程(ii)において、液体12だけでなく溶液11も加熱されていてもよい。
工程(ii)では、溶液11を加熱された液体12に滴下することによって溶液11と液体12とを混合してもよい。また、工程(ii)では、溶液11を加熱された液体12に噴霧することによって溶液11と液体12とを混合してもよい。たとえば、工程(ii)では、図1に示すように、加熱された液体12に溶液11を滴下することによって両者を混合してもよい。また、工程(ii)では、図2に示すように、加熱された液体12に溶液11を噴霧することによって両者を混合してもよい。金属イオン溶液中の金属イオンの濃度が高い場合には、溶液11を噴霧することによって液体12と溶液11とを混合することが好ましい場合がある。
工程(ii)において、溶液11と、複数の金属元素(E)のイオンのそれぞれが単独で還元される温度以上に加熱した液体12とを混合してもよい。さらに、工程(ii)において、溶液11と、複数の金属元素(E)のイオンのそれぞれが単独で還元される温度よりも20℃以上高い温度に加熱した液体12とを混合してもよい。これらの2つの場合において、還元剤は、エチレングリコールであってもよい。
溶液11および/または液体12の噴霧は、たとえば、霧吹き(スプレー)やインクジェットヘッドを用いて行うことができる。なお、噴霧される霧滴の粒径を変化させることによって、形成される合金微粒子の粒径を制御できる可能性がある。
液体12に含まれる還元剤は、アルコールであってもよい。液体12の溶媒は、還元剤として機能するアルコール(たとえばエチレングリコール)のみであってもよい。なお、液体12は、還元剤として機能するアルコールに加えて、還元剤として機能しないアルコールを含んでもよい。液体12を加熱することによって、アルコールの還元剤としての機能が高まる。工程(ii)において液体12を加熱すべき温度は、還元剤として液体12に含まれるアルコールの種類によって変化する。たとえば、エチレングリコールを用いる場合、銀イオンは100℃以下で還元され、ロジウムイオンは140℃近傍で還元されると考えられる。そのため、複数の金属元素(E)が銀およびロジウムであり、且つ、還元剤としてエチレングリコールを用いる場合には、液体12を140℃よりも高い温度に加熱する必要がある。
本発明の効果が得られる限り、還元剤として液体12に含まれるアルコールの種類に限定はない。還元剤として用いられるアルコールは、一価のアルコールであってもよいし、二価アルコールなどの多価アルコールであってもよい。還元剤として用いられるアルコールの好ましい一例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、およびトリエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコールである。以下では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、およびトリエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコールを、「エチレングリコール類」という場合がある。エチレングリコール類の沸点は190℃以上であるため、これらのアルコールを溶媒に用いることによって、高温で合金微粒子を作製できる。
なお、液体12に含まれるアルコール(還元剤として機能するアルコール)の代わりに、金属イオン(銀イオン、ロジウムイオン、金イオンなど)を還元する能力を有し且つ溶媒として用いることができる物質を用いてもよい。
溶液11および液体12から選ばれる少なくとも1つは、合金微粒子の凝集を防止する保護剤を含んでもよい。保護剤を用いることによって、粒径が小さい合金微粒子が得られやすくなる。具体的には、溶液11および液体12の両方またはいずれか一方は保護剤を含んでもよい。保護剤の例には、ポリマーや界面活性剤が含まれ、たとえば、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)(以下、「ポリビニルピロリドン」または「PVP」という場合がある)が挙げられる。溶液中の保護剤の濃度は、保護剤の種類に応じて選択される。保護剤がポリビニルピロリドンである場合、その構成単位(モノマー単位)の濃度が0.1mmol/L〜2mol/Lの範囲(たとえば1mmol/L〜10mmol/Lの範囲)になるようにポリビニルピロリドンを添加してもよい。
なお、溶液11および液体12の両方が保護剤を含まない場合には、合金微粒子が凝集して粒径が大きい粒子が得られやすくなる。
典型的な一例では、液体12は、保護剤をアルコール(たとえばエチレングリコール類)に溶解することによって得られる溶液(保護剤のアルコール溶液)である。たとえば、ポリビニルピロリドンが溶解されたエチレングリコール溶液を液体12として用いることができる。以下では、保護剤が溶解された液体12を、「還元剤溶液」という場合がある。
一例では、還元剤がエチレングリコールであり、複数の金属元素(E)が銀およびロジウムであり、工程(ii)において、溶液11と、145℃以上に加熱された液体12とを混合する。また、他の一例では、還元剤がエチレングリコールであり、複数の金属元素(E)が金およびロジウムであり、工程(ii)において、溶液11と、145℃以上に加熱された液体12とを混合する。これらの例では、液体12が、ポリビニルピロリドンが溶解されたエチレングリコール溶液であってもよい。また、溶液11は、銀イオンとロジウムイオンとを含む水溶液、または、金イオンとロジウムイオンとを含む水溶液であってもよい。
本発明の製造方法では、液体12がアルコール以外の還元剤(たとえば水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)やヒドラジン)を、本質的にまたは実質的に含まないものであってもよい。ただし、本発明の効果が得られる限り、還元剤として水素化ホウ素ナトリウムなどを用いてもよい。
液体12に含まれるアルコールがエチレングリコールである場合、工程(ii)において液体12を145℃以上の温度に加熱してもよく、150℃以上や160℃以上の温度に加熱してもよい。ただし、本発明の効果が得られる限り、工程(ii)における液体12の加熱温度はより低い温度であってもよい。工程(ii)おける液体12の加熱温度は、200℃以下であってもよく、たとえば150℃以下であってもよい。
工程(ii)において溶液11と液体12とを混合する際に、液体12の温度が過度に下がらないようにする。たとえば、アルコールがエチレングリコールである場合、液体12の温度が145℃以上、150℃以上、または160℃以上の温度を維持するように、溶液11と液体12とを混合する。液体12の温度が過度に低下することを防止する方法の一例は、溶液11を少量ずつ加えることである。溶液11を少量ずつ加える方法としては、溶液11を滴下する方法や、溶液11を噴霧する方法が挙げられる。また、溶液11をある程度加熱してから加えてもよい。
一例では、1秒間に液体12に加えられる溶液11の質量を、液体12の質量の300分の1以下(たとえば3000分の1以下)としてもよい。
本発明の製造方法によれば、複数の金属元素(E)が原子レベルで混在している、固溶体型の合金微粒子が得られる。たとえば、銀とロジウムとが原子レベルで混合されている固溶体型の銀−ロジウム合金微粒子が得られる。バルクの状態では銀とロジウムとが原子レベルで固溶することはない。しかし、粒径が数十nm以下の微粒子は、バルクとは異なる構造や性質を示すため、銀とロジウムとが原子レベルで固溶することが可能であると考えられる。また、本発明によれば、金とロジウムとが原子レベルで混合されている、固溶体型の金−ロジウム合金微粒子が得られる。
なお、複数の金属元素(E)が、相図では液相においても固溶しない複数の金属元素であっても、本発明の製造方法によれば、複数の金属元素(E)が原子レベルで固溶した合金微粒子を得ることが可能である。この場合、金属イオン溶液は、バルクでは固溶しない組成比に対応する濃度比にある複数の金属元素のイオンを含む溶液であってもよい。この製造方法によれば、バルクでは液相においても固溶しない組成比にある複数の金属元素(バルクでは液相においていずれの組成比でも固溶しない複数の金属元素を含む)が原子レベルで固溶している合金微粒子が得られる。本発明の製造方法は、様々な合金微粒子の製造に用いることができる。
[合金微粒子]
本発明の合金微粒子は、複数の金属元素(E)が固溶している合金微粒子である。より具体的には、本発明の合金微粒子は、複数の金属元素(E)が原子レベルで混合されている固溶体型の合金微粒子である。複数の金属元素(E)が原子レベルで混合されている固溶体型の合金微粒子であることは、後述する実施例で用いた測定などによって確認できる。本発明の合金微粒子の例には、ロジウムを含有するロジウム合金微粒子が含まれる。たとえば、本発明の合金微粒子の例には、銀−ロジウム合金微粒子や、金−ロジウム合金微粒子が含まれる。
本発明の合金微粒子は、本発明の製造方法によって製造できる。本発明の製造方法について説明した事項は、本発明の合金微粒子に適用できるため、重複する説明を省略する場合がある。また、本発明の合金微粒子について説明した事項は、本発明の製造方法に適用できる。
1つの観点では、本発明の合金微粒子は、分解能が0.105nmである走査型透過電子顕微鏡を用いた元素マッピングによって、相分離していないことが確認できるものである。
また、本発明の合金微粒子(たとえば二元合金微粒子)は、合金微粒子内の任意の場所において一辺が1nmの立方体を選択したときに、その立方体の中に複数の金属元素(E)のすべてが含まれるものであってもよい。
1つの観点では、本発明の合金微粒子は、X線回折法によって、相分離していないことが確認できるものである。
本発明のロジウム合金微粒子(たとえば銀−ロジウム合金微粒子や金−ロジウム合金微粒子)では、ロジウムの含有率が、10原子%以上、20原子%以上、30原子%以上、40原子%以上、50原子%以上、60原子%以上、70原子%以上、80原子%以上、または90原子%以上であってもよく、90原子%以下、80原子%以下、70原子%以下、60原子%以下、50原子%以下、40原子%以下、30原子%以下、20原子%以下、または10原子%以下であってもよい。
複数の金属元素(E)が原子レベルで固溶している限り、本発明の合金微粒子の粒径に限定はない。本発明の合金微粒子(たとえば銀−ロジウム合金微粒子や金−ロジウム合金微粒子)は、平均粒径が30nm以下や20nm以下や10nm以下であってもよく、平均粒径が3nm以上であってもよい。なお、平均粒径は、実施例で説明する方法で算出できる。
本発明の合金微粒子は、複数の金属元素(E)が、液相においても固溶しない複数の金属元素であってもよい。
なお、本発明の合金微粒子は、その特性が本質的に変わらない限り微量の不純物を含んでもよい。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例および比較例において、EDXの測定には、日本電子株式会社(JEOL Ltd.)製の電子顕微鏡(JEM 2010EFE)、および、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製の走査型透過電子顕微鏡(HD−2700)を用いた。XRDの測定には、ブルカー・エイエックスエス株式会社(Bruker AXS)製のX線回折装置(D8 ADVANCE)、および、SPring−8のBL02B2を用いた。走査型透過電子顕微鏡には、0.105nmの分解能を有する、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の走査型透過電子顕微鏡(HD−2700)を用いた。元素マッピングはEDXを用いて行った。以下の実施例において、元素マッピングのデータは走査型透過電子顕微鏡(HD−2700)によって取得した。以下の実施例における元素マッピングは、STEMを用いて2次元に電子線を走査して画像をスキャニングし、その際にSTEMに搭載されたEDXで検出された元素をSTEMの動作と照らし合わせて二次元表記したものである。
[実施例1]
実施例1では、溶液11を滴下することによって銀−ロジウム合金微粒子を作製した。
まず、エチレングリコール(100ml)に、ポリビニルピロリドン(0.1mmol)を溶解させることによって還元剤溶液(液体12)を得た。また、酢酸銀(0.005mmol)と酢酸ロジウム(III)(0.005mmol)とを純水20mlに溶解させることによって金属イオン溶液(溶液11)を得た。
次に、還元剤溶液を加熱し、還元剤溶液の温度が160℃に到達したところで、シリンジによって金属イオン溶液を還元剤溶液に滴下した。このとき、還元剤溶液の温度が160℃以上に保たれるように還元剤溶液を滴下した。次に、金属イオン溶液が滴下された還元剤溶液を遠心分離することによって反応生成物(微粒子)を分離した。
実施例1の微粒子の透過型電子顕微鏡像および粒度分布を図3に示す。図3に示すように、粒径が揃った微粒子が得られた。実施例1の微粒子の平均粒径は、12.5nm±2.6nmであった。平均粒径は、透過型電子顕微鏡写真(TEM写真)中の粒子(少なくとも300個)の粒径を実測し、その平均を算出するという方法で算出した。実施例1の微粒子の1つの透過型電子顕微鏡写真を図4に示す。図4の粒子全体に均一な格子縞が観察されるため、図4の微粒子は単結晶であると考えられる。
図4に示した微粒子について、エネルギー分散型X線分析(EDX)によって得られたスペクトルを図5に示す。図5の結果は、銀とロジウムとが1つの粒子内にほぼ1対1で存在していることを示しており、実施例1の微粒子が、原子レベルで銀とロジウムとが固溶している合金微粒子であることが確認された。
実施例1の微粒子のXRDパターン(X線回折パターン)を図6に示す。図6に示すフィッティングカーブは、実施例1の合金微粒子がfcc構造であると仮定した場合のカーブである。このフィッティングカーブは測定値とよく一致しており、実施例1の合金微粒子がfcc構造を有することを示している。また、実施例1の微粒子の各ピークは、バルクの銀のピークとバルクのロジウムのピークとの間に位置している。この結果も、実施例1の微粒子が、原子レベルで銀とロジウムとが固溶している合金微粒子であることを示している。
[実施例2]
実施例2では、溶液11を噴霧することによって銀とロジウムとの原子比が約50:50である合金微粒子を作製した。
まず、エチレングリコール(200ml)に、ポリビニルピロリドン(1.0mmol)を溶解させることによって還元剤溶液(液体12)を得た。また、酢酸銀(0.05mmol)と酢酸ロジウム(III)(0.05mmol)とを純水20mlに溶解させることによって金属イオン溶液(溶液11)を得た。
次に、還元剤溶液を加熱し、還元剤溶液の温度が160℃に到達したところで、スプレーによって金属イオン溶液を還元剤溶液に噴霧した。このとき、還元剤溶液の温度が160℃以上に保たれるように還元剤溶液を噴霧した。次に、金属イオン溶液が添加された還元剤溶液を遠心分離することによって反応生成物(微粒子)を分離した。
[実施例3]
実施例3では、溶液11を噴霧することによって銀とロジウムとの原子比が約75:25である合金微粒子を作製した。
まず、エチレングリコール(200ml)に、ポリビニルピロリドン(1.0mmol)を溶解させることによって還元剤溶液(液体12)を得た。また、酢酸銀(0.075mmol)と酢酸ロジウム(III)(0.025mmol)とを純水20mlに溶解させることによって金属イオン溶液(溶液11)を得た。
次に、還元剤溶液を加熱し、還元剤溶液の温度が160℃に到達したところで、スプレーによって金属イオン溶液を還元剤溶液に噴霧した。このとき、還元剤溶液の温度が160℃以上に保たれるように還元剤溶液を噴霧した。次に、金属イオン溶液が添加された還元剤溶液を遠心分離することによって反応生成物(微粒子)を分離した。
[実施例4]
実施例4では、溶液11を噴霧することによって銀とロジウムとの原子比が約25:75である合金微粒子を作製した。
まず、エチレングリコール(200ml)に、ポリビニルピロリドン(1.0mmol)を溶解させることによって還元剤溶液(液体12)を得た。また、酢酸銀(0.025mmol)と酢酸ロジウム(III)(0.075mmol)とを純水20mlに溶解させることによって金属イオン溶液(溶液11)を得た。
次に、還元剤溶液を加熱し、還元剤溶液の温度が160℃に到達したところで、スプレーによって金属イオン溶液を還元剤溶液に噴霧した。このとき、還元剤溶液の温度が160℃以上に保たれるように還元剤溶液を噴霧した。次に、金属イオン溶液が添加された還元剤溶液を遠心分離することによって反応生成物(微粒子)を分離した。
実施例2〜4の微粒子の透過型電子顕微鏡像を図7に示す。図7に示すように、同じ条件下では、銀の割合が増えるほど粒径が大きくなった。
実施例2〜4の微粒子のXRDパターンを図8に示す。なお、図8には、銀微粒子およびロジウム微粒子の結果も示す。図8の結果は、実施例2〜4の微粒子が固溶体型の合金であること、および、実施例2〜4の微粒子がすべてfcc構造を有することを示している。X線回折測定の結果から見積もられた格子定数を図9に示す。図9に示すように、銀の含有率が増加するにつれて格子定数が連続的に増加した。
実施例2〜4の微粒子の吸収スペクトルの測定結果を図10に示す。なお、図10には、銀微粒子およびロジウム微粒子の吸収スペクトルも示す。銀微粒子の吸収スペクトルは、表面プラズマ吸収に基づく吸収ピークを400nm近傍に有する。一方、実施例2〜4の微粒子では、ロジウムの含有率が増えるにつれて吸収ピークが短波長側にシフトするとともにブロードになる。この結果も、原子レベルで固溶している銀−ロジウム合金微粒子が得られたことを示唆している。
以上の結果から、実施例1〜4の微粒子は、銀とロジウムとが原子レベルで混合されている、固溶体型の合金微粒子であることが確認された。
[比較例1]
比較例1では、予め溶液11を液体12に加えた後、室温(約20℃)近傍にある混合液の温度を140℃に上げることによって微粒子を作製した。
まず、エチレングリコール(100ml)に、ポリビニルピロリドン(10mmol)を溶解させることによって還元剤溶液(液体12)を得た。また、酢酸銀(0.5mmol)と酢酸ロジウム(III)(0.5mmol)とを純水10mlに溶解させることによって金属イオン溶液(溶液11)を得た。
次に、還元剤溶液に金属イオン溶液を添加し、その後、混合液を攪拌しながら140℃まで加熱した。そして、混合液の温度を140℃に保ったままで混合液を1時間攪拌した。次に、反応後の混合液を遠心分離することによって反応生成物(微粒子)を分離した。
比較例1の微粒子のXRDパターンを図11に示す。図11には、フィッティング成分1および2でフィッティングしたカーブも示す。フィッティング成分1は、格子定数が4.08オングストロームで粒径が9.7nmの成分である。フィッティング成分2は、格子定数が3.73オングストロームで粒径が1.1nmの成分である。フィッティング成分1の格子定数はバルクの銀の格子定数(4.086オングストローム)に近く、フィッティング成分2の格子定数はバルクのロジウムの格子定数(3.803オングストローム)に近い。図11の結果から、比較例1の微粒子は、銀をコアとするコアシェル型の微粒子か、または、銀とロジウムとが相分離している微粒子のいずれかであると考えられる。
[比較例2]
まず、エチレングリコール(100ml)に、ポリビニルピロリドン(0.15mmol)を溶解させることによって還元剤溶液(液体12)を得た。また、酢酸銀(0.03mmol)と酢酸ロジウム(III)(0.03mmol)とを純水20mlに溶解させることによって金属イオン溶液(溶液11)を得た。
次に、還元剤溶液を加熱し、還元剤溶液の温度が140℃に到達したところで、シリンジによって金属イオン溶液を還元剤溶液に滴下した。このとき、還元剤溶液の温度が140℃に保たれるように還元剤溶液を滴下した。次に、金属イオン溶液が滴下された還元剤溶液を遠心分離することによって反応生成物(微粒子)を分離した。
比較例2の微粒子のXRDパターンを図12に示す。図12には、フィッティング成分1および2でフィッティングしたカーブも示す。フィッティング成分1は、格子定数が4.04オングストロームで粒径が5.3nmの成分である。フィッティング成分2は、格子定数が3.89オングストロームで粒径が3.5nmの成分である。比較例2の微粒子のXRDパターンにおいて、ピークは単一のfcc構造のものではなく、2成分からなる。フィッティング成分1の格子定数は銀の格子定数に近く、フィッティング成分2の格子定数はバルクのロジウムの格子定数に近い。そのため、比較例2の微粒子では、銀とロジウムとが相分離していると考えられる。
[比較例3]
まず、エチレングリコール(100ml)に、ポリビニルピロリドン(0.1mmol)を溶解させることによって還元剤溶液(液体12)を得た。また、酢酸銀(0.005mmol)と酢酸ロジウム(III)(0.005mmol)とを純水20mlに溶解させることによって金属イオン溶液(溶液11)を得た。
次に、室温(約20℃)の還元剤溶液に、シリンジによって室温の金属イオン溶液を還元剤溶液に滴下した。次に、金属イオン溶液が滴下された還元剤溶液を撹拌しながら、160℃で1時間還流加熱した。加熱後の溶液を遠心分離することによって、反応生成物(微粒子)を分離した。得られた微粒子のX線回折パターンを図13に示す。図13のフィッティング成分1は、格子定数が4.070オングストロームで粒径が5.4nmの成分である。フィッティング成分2は、格子定数が3.842オングストロームで粒径が1.6nmの成分である。図13のX線回折パターンから、比較例3の微粒子では、銀とロジウムとが相分離していると考えられる。
[実施例5]
実施例5では、溶液11を滴下することによって金−ロジウム合金微粒子を作製した。
まず、エチレングリコール(200ml)に、ポリビニルピロリドン(1.0mmol)を溶解させることによって還元剤溶液(液体12)を得た。また、塩化金酸(0.05mmol)と塩化ロジウム(III)(0.05mmol)とを純水20mlに溶解させることによって金属イオン溶液(溶液11)を得た。
次に、還元剤溶液を加熱し、還元剤溶液の温度が160℃に到達したところで、スプレーによって金属イオン溶液を還元剤溶液に噴霧した。このとき、還元剤溶液の温度が160℃以上に保たれるように還元剤溶液を噴霧した。次に、金属イオン溶液が噴霧された還元剤溶液を遠心分離することによって、反応生成物(実施例5の微粒子)を分離した。
実施例5の微粒子のX線回折パターンを図14に示す。また、実施例5の微粒子のEDXスペクトルを図15に示す。図15には、測定された微粒子の電子顕微鏡写真も示す。実施例5のXRDパターンが単一のfccパターンであること加えて、格子定数の値が、金ナノ粒子の格子定数とロジウムナノ粒子の格子定数との間にあることから、金とロジウムとが原子レベルで固溶していることがわかる。また、EDXスペクトルより、一つの粒子内に金とロジウムの両元素が存在することも確認された。
[STEMによる観察]
実施例1の銀−ロジウム合金微粒子について、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて観察した。実施例1の微粒子について得られたデータを図16Aおよび図16Bに示す。図16Aのa)は暗視野のSTEM像を示し、図16Aのb)〜d)は元素マッピングのデータを示し、図16Bは線分析の結果を示す。なお、図16Aの各画像中のスケールバーは、10nmを示す。図16Aから、どの粒子においても同様に固溶体が形成されていることがわかる。また、図16Bから、一つの粒子内において局所的に各元素が存在するのではなく、粒子全体を通して両元素が均一に分布していることがわかる。すなわち、図16Aおよび図16Bのデータは、実施例1の微粒子中において、銀とロジウムとが原子レベルで固溶していることを示している。
実施例5の微粒子について、STEMを用いて観察した。得られたデータを図17Aおよび図17Bに示す。図17Aのa)は暗視野のSTEM像を示し、図17Aのb)〜d)は元素マッピングのデータを示し、図17Bは線分析の結果を示す。なお、図17Aの各画像中のスケールバーは、10nmを示す。図17Aから、どの粒子においても同様に固溶体が形成されていることがわかる。また、図17Bから、一つの粒子内において局所的に各元素が存在するのではなく、粒子全体を通して両元素が均一に分布していることがわかる。すなわち、図17Aおよび図17Bのデータは、実施例5の微粒子中において、金とロジウムとが原子レベルで固溶していることを示している。
以上の実施例に示されるように、本発明の製造方法によれば、銀とロジウムとが原子レベルで固溶している銀−ロジウム合金微粒子、および金とロジウムとが原子レベルで固溶している金−ロジウム合金微粒子が得られた。これらの元素が原子レベルで混在していることをデータで示した例は、これまで皆無であった。本発明者らは、これらの元素が原子レベルで混在していることをデータで初めて示した。
本発明によれば、複数の金属元素が原子レベルで混在している、固溶体型の合金微粒子が得られる。この合金微粒子は、様々な分野(たとえば触媒)に利用できる。たとえば、銀−ロジウム合金微粒子は、有機合成の触媒や、燃料電池の電極触媒や、NOxの還元触媒として利用できる。また、銀−ロジウム合金微粒子は、水素吸蔵特性を示すと考えられることから、水素吸蔵特性を利用して様々なデバイスに適用できると考えられる。原子レベルで固溶している銀−ロジウム合金微粒子は、パラジウムに類似した特性を示すことが期待される。同様に、様々な元素を組み合わせて合金を作製することによって、様々な特性を有する合金が得られる。

Claims (4)

  1. 複数の金属元素が混合されている、固溶体型の合金微粒子であって、
    前記複数の金属元素が、銀とロジウム、または、金とロジウムであり、
    単一の格子定数を有する面心立方構造からなる結晶構造を有し、
    前記複数の金属元素が銀とロジウムである場合には、前記格子定数の値が銀の格子定数とロジウムの格子定数との間にあり、
    前記複数の金属元素が金とロジウムである場合には、前記格子定数の値が金の格子定数とロジウムの格子定数との間にある、合金微粒子
  2. 前記複数の金属元素が、銀とロジウムである、請求項1に記載の合金微粒子。
  3. 前記複数の金属元素が、金とロジウムである、請求項1に記載の合金微粒子。
  4. 平均粒径が20nm以下である、請求項1に記載の合金微粒子。
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