JP5773409B2 - 質量分析機器用試料イオン化装置 - Google Patents
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上記脱離後の測定試料をイオン化するためのイオン化手段と、を備える質量分析機器用試料イオン化装置。
上記他端側の円周部には一対の切り欠き凹部が形成されており、この一対の切り欠き凹部を跨ぐように上記薄層クロマトグラフィー基板が配置されている(1)から(3)いずれか記載の質量分析機器用試料イオン化装置。
上記脱離後の測定試料に対する紫外線照射手段と、
上記脱離後の測定試料に対してアルゴンガスと水を供給する湿アルゴンガス供給手段と、
を備える(1)から(5)いずれか記載の質量分析機器用試料イオン化装置。
上記脱離後の測定試料に対して、放電による励起アルゴンガスを供給する励起アルゴンガス供給手段と、を備える(1)から(5)いずれか記載の質量分析機器用試料イオン化装置。
本発明の質量分析機器用試料イオン化装置は、薄層クロマトグラフィー基板上の所定の展開箇所に熱風を当てることで上記所定の展開箇所から測定試料を脱離させる熱風加熱手段と、上記脱離後の測定試料をイオン化するためのイオン化手段とを備えることを特徴とするものである。以下、図面を参照しつつ、質量分析機器用試料イオン化装置について説明する。
本発明の質量分析機器用試料イオン化装置Dは、熱風加熱手段1によって加熱され、かつ測定試料を固定化して展開するための基板として、薄層クロマトグラフィー基板11を備える。
薄層クロマトグラフィー基板(Thin−Layer Chromatography、以下、「TLC基板」ということがある。)は、ガラス板の上にシリカゲル、アルミナ、ポリアミド樹脂等の吸着性のある物質を所定量塗布して、基板上にこれらの薄層を形成させたものである。なお、薄層クロマトグラフィー(TLC)基板は、質量分析対象となる測定試料との吸着性等に応じて適宜採択することができる。
加熱保温手段15により加熱され熱風となり、薄層クロマトグラフィー(TLC)基板11に展開されている当該展開箇所にあてられる。この熱風が薄層クロマトグラフィー(TLC)基板11に展開されている当該展開箇所にあたることによって、当該展開箇所に存在する測定試料12がガス化し測定試料ガス12aとなる。そして、測定試料12は、薄層クロマトグラフィー(TLC)基板11から完全に脱離することとなる。測定試料ガス12aは、質量分析機器導入口18付近の領域に存在する。なお、脱離用ガス17に使用されるガスとしては、特に制限されるものではないが、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の不活性ガスを使用することが好ましい。
図1に示すように、本発明の質量分析機器用イオン化装置Dに使用することができるイオン化手段2は、上記熱風加熱手段1の上方に設置され、熱風加熱手段1より発生した測定試料ガス12aと反応するイオン化ガスを供給するものである。イオン化手段2は、上記熱風加熱手段1により薄層クロマトグラフィー(TLC)基板11に展開されている測定試料12より発生した測定試料ガス12aを大気圧下でイオン化することができるものであれば、特に制限されるものではない。また、イオン化手段2に採用されているイオン化方法についても特に制限されるものではない。
図1に示したイオン化手段2は紫外線照射手段3を備える。紫外線照射手段3による紫外線照射に使用することができる紫外線の波長は、湿アルゴンガス中のアルゴンガスを励起ガスとすることができる波長であれば、特に制限されるものではない。例えば、近紫外線の波長である150〜280nmが好ましい。一般に、紫外線の波長が短いものは波長の有するエネルギーが大きいものであるが、紫外線の波長が150nm以上であるとアルゴンガス−水の混合ガス中のアルゴンガスを適度に励起し、励起アルゴンガスとすることができるため好ましく、紫外線の波長が280nm以下であるとアルゴンガスを励起する際のエネルギー効率の観点より好ましい。なお、上記200〜280nmの波長を有する紫外線は、UV−Cに分類される紫外線である。
湿アルゴンガス供給手段4は、アルゴンガスと水を成分とする湿アルゴンガスを供給する。イオン化手段2において、湿アルゴンガスは、湿アルゴンガス供給手段4から、紫外線照射手段3に供給される。
導入管44を通じて、紫外線照射手段3の湿アルゴンガス導入口33を通じて紫外線照射手段3に送られる。
また、上記イオン化手段は、放電による励起アルゴンガスを供給する励起アルゴンガス供給手段であっても良い。励起アルゴン供給手段において採用される放電手段としては、励起アルゴンガスを大気圧下で発生することができる放電手段であれば特に制限されるものではない。例えば、コロナ放電、グロー放電、アーク放電、無声放電、暗放電等の公知の放電手段を例示することができる。また、アルゴンガスのイオン化方法について特に制限されるものではないが、大気圧化においてアルゴンガスを励起アルゴンとする必要があることからペニングイオン化反応によるアルゴンガスのイオン化が好ましい。
本発明の質量分析機器用試料イオン装置Dは、熱風加熱手段1により、薄層クロマトグラフィー(TLC)基板から脱離した測定試料をイオン化手段2により供給されるイオン化ガスと反応させて測定試料のイオン化を行うことができる。
熱風加熱手段1により、薄層クロマトグラフィー(TLC)基板11から脱離した測定試料12と、イオン化手段2より供給されるイオン化ガスが反応することにより測定試料がイオン化される。すなわち、上記説明したように薄層クロマトグラフィー(TLC)基板11から脱離した測定試料12は、測定試料ガス12aとなって基板上の領域の空間に移動して存在している。この測定試料ガス12aが存在する基板上の領域の空間にイオン化ガスが供給されることにより、測定試料ガスとイオン化ガスが反応し、測定試料はイオン化される。
質量分析機器用試料イオン化装置において、イオン化することができる測定試料は、特に制限されるものではなく、有機化学、生物化学、環境化学等の分野におけるあらゆる化合物を測定試料として対象とすることができる。特に、従来の試料イオン化方法、又は真空下での試料イオン化方法では、イオン化が困難である有機過酸化物、ホウ素、窒素、硫黄等を含有する金属錯体をも容易にイオン化することができる。例えば、有機過酸化物としては、ラウロイルパーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、オレイン酸メチルパーオキシド等の有機過酸化物、クメンパーオキシド(CHP)、ジイソブチルパーオキサイド(DBH)、パラメタンパーオキサイド(PMH)等の合成有機過酸化物を挙げることができる。
本発明の質量分析機器用イオン化装置によりイオン化された測定試料は、質量分析機器の導入口を通じて、質量分析機器に送入され、質量分析機器による質量分析が行われる。質量分析機器用試料イオン化装置に接続可能な質量分析機器としては、特に制限されるものでなく、公知の質量分析機器を使用することができる。例えば、四重極質量分析計、磁場偏光分析計、イオントラップ分析計、飛行時間分析計、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴分析計、加速器質量分析計等を例示することができる。すなわち、本発明の質量分析機器用試料イオン化装置は、従来から使用されているすべての質量分析機器に適用が可能である。
図1に示した質量分析機器用試料イオン化装置を用い、大気圧下でアルゴンガスと水との混合ガスである湿アルゴンガスを湿アルゴンガス供給手段より供給するともに、紫外線供給手段より紫外線を照射することにより、イオン化手段からイオン化ガスである水クラスターイオンが発生することを確認した。なお、紫外線照射手段としては、低圧水銀ランプを使用し、紫外線の照射波長を254nmとし、適宜湿アルゴンガス中の水の供給量を湿アルゴンガス供給手段のコックを調整することによって行った。なお、比較のため湿アルゴンガス供給手段のアルゴンガスに換えてヘリウムガス、窒素ガスをそれぞれ用いて、水クラスターイオンの発生を試みた。水クラスターイオンの発生の確認結果を図5に示す。
水クラスターイオンの形成における水の影響を確認するために、湿アルゴンガス供給手段の水貯蔵部に水とエタノールの混合物を供給した。そして、水貯蔵部のエタノールと水の割合を変化させ、大気圧下でアルゴンガスと水とエタノールの混合物を供給し、紫外線照射手段より、紫外線を照射することにより、エタノール・水クラスターイオンの発生を確認した。確認結果を図6に示す。
測定試料をステアリン酸メチルとし、溶媒であるベンゼンに溶解させ、0.1質量%、
0.01質量%、0.001質量%のステアリン酸メチルのベンゼン溶液をそれぞれ作製した。これらのステアリン酸メチルの溶液をマイクロシリンジにて0.1μl採取し、上記マイクロシリンジの針から薄層クロマトグラフィー(TLC)基板に一次元的に順次に注入し展開した。質量分析機器用試料イオン化装置の熱風加熱手段の加熱温度をステアリン酸メチルのガス化温度である215℃よりも高い220℃に設定して上記基板を加熱した。
測定試料をジメチルスルホオキシド(DMSO、実施例2)、重クロロホルム(CDCl3、実施例3)、ジメチルスルホキシド−テトラヒドロフラン(DMSO−THF、実施例4)を測定試料用溶媒とし、(R)−1−フェニルノン−4−ニル−3−オール(実施例2)、(E)((3−メチル−4−(プロ−2−ニル−1−ニロキシ)ブチル−2−エン−1−ニル)オキシ)ベンゼン(実施例3)、(E)−(4−((4−ブロモブチル−2−エン−1−ニル)オキシ)ブタ−1,2−ジエン−1−ニル)ベンゼン(実施例4)をそれぞれ溶解させた溶液を測定試料とした以外は、実施例1と同様にして各測定試料のイオン化及び質量分析を行った。なお、実施例2〜4においては、上記各測定試料の濃度を0.1質量%とした。質量分析測定結果を図8に示す。
測定試料を分子内中にリン(P)、ホウ素(B)、窒素(N)を含む化合物とした以外は、実施例1と同様にして、測定試料のイオン化、質量分析を行った。なお、実施例5〜7においては、各測定試料の濃度を0.1質量%とした。質量分析測定結果を図9に示す。なお、実施例5〜7において使用した測定資料は、(R)−1−フェニルノン−4−ニル−3−オール(実施例5)、ヒドロ(トリス(3,5−ジメチルピラゾール−1−ニル)ボレート(実施例6)、1−(8−ヒドロキシキノリイン−5−ニル)ピロリジン−2,5−ジオン(実施例7)である。
測定試料をt−ブチルペルオキシラウレート(t−PBL)とし、基板にガス化した種々の付加試薬を供給した以外は、実施例1と同様にして、測定試料のイオン化、質量分析を行った。熱風加熱手段から供給する付加試薬としては、エタノール(実施例8)、アセトン(実施例9)、ピリジン(実施例10)及びトリメチルアミン(実施例11)を使用した。また、実施例8〜11においては、測定試料の濃度を0.1質量%とした。質量分析測定結果を図10に示す。
なお、イオンガス供給部に使用する上記アルゴンガスに換えて、ヘリウムガス、窒素ガスをそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして測定試料のイオン化をし、質量分析を行った。
湿アルゴンガス供給手段に使用する混合ガス中に水を含ませないものとし、アルゴンガスのみを供給した以外は実施例1と同様にして測定試料のイオン化をし、質量分析を行った。以上、実施例及び比較例における測定試料のイオン化条件及び質量分析結果を下記表1にまとめて示す。
1 熱風加熱手段
11 薄層クロマトグラフィー(TLC)基板
12 測定試料
12a 測定試料ガス
13 薄層板移動手段
14 薄層板移動手段
15 加熱保温手段
16 筒状体
17 脱離用ガス
18 質量分析機器導入口
2 イオン化手段
3 紫外線照射手段
31 外筒
32 低圧水銀ランプ
33 湿アルゴンガス導入口
4 湿アルゴンガス供給手段
41 アルゴンガス貯蔵部
42 水貯蔵部
43 導入管コック
44 ガス導入管
5 熱風加熱手段
51 薄層クロマトグラフィー(TLC)基板
52 測定試料
52a 測定試料ガス
53 脱離用ガス
54 加熱保温手段
55 温度検出部
55a 温度検出部(表面)
55b 温度検出部(裏面)
56 薄層板移動手段
57 薄層板移動手段
58 質量分析機器導入口
Claims (7)
- 薄層クロマトグラフィー基板上の所定の展開箇所に熱風を当てることで前記所定の展開箇所から測定試料を脱離させる熱風加熱手段と、
前記脱離後の測定試料を大気圧下においてイオン化するためのイオン化手段と、を備える質量分析機器用試料イオン化装置。 - 前記熱風加熱手段は、前記薄層クロマトグラフィー基板上の前記展開箇所の表裏同時を加熱可能である請求項1記載の質量分析機器用試料イオン化装置。
- 前記熱風の温度調整を行う温調手段をさらに備える請求項1又は2記載の質量分析機器用試料イオン化装置。
- 前記熱風加熱手段は、全体として筒状体をなし、筒内の一端側から他端側に向けて脱離用ガスを供給可能であり、
前記他端側の円周部には一対の切り欠き凹部が形成されており、この一対の切り欠き凹部を跨ぐように前記薄層クロマトグラフィー基板が配置されている請求項1から3いずれか1項記載の質量分析機器用試料イオン化装置。 - 前記測定試料の展開方向に沿って、前記薄層クロマトグラフィー基板を加熱箇所に対して相対移動させる薄層板移動手段をさらに備える請求項1から4いずれか1項記載の質量分析機器用試料イオン化装置。
- 前記イオン化手段は、
前記脱離後の測定試料に対する紫外線照射手段と、
前記脱離後の測定試料に対してアルゴンガスと水を供給する湿アルゴンガス供給手段と、
を備える請求項1から5いずれか1項記載の質量分析機器用試料イオン化装置。 - 前記イオン化手段は、
前記脱離後の測定試料に対して、放電による励起アルゴンガスを供給する励起アルゴンガス供給手段と、を備える請求項1から5いずれか1項記載の質量分析機器用試料イオン化装置。
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