JP5717183B2 - 試料イオン化方法 - Google Patents
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Description
上記紫外線を照射することで、下記化学反応により生じるオキソニウムイオン(H3O+)によりイオン化することを特徴とする(1)記載の試料イオン化方法。
本発明の試料イオン化方法は、質量分析のための測定試料に対して、大気圧下でアルゴンガスと水とを供給するとともに紫外線を照射することで、上記測定試料をイオン化することを特徴とするものである。以下、図面を参照しつつ、説明する。
図1は、本発明の試料イオン化方法を適用することができる質量分析機器用イオン化装置1の装置の模式図である。この質量分析機器用イオン化装置1は、イオン化装置本体1aの内部に測定試料を固定化するための基板2と、測定試料22をイオン化するためのイオン化ガスを供給する供給部3(以下、「イオン化ガス供給部3」という。)を備え、さらに、質量分析機器にイオン化した測定試料を導出する導入口6(以下、「質量分析機器導入口6」という。)及び気相マトリックス貯蔵部5を備える。イオン化ガス供給部3は、ガス導入管44により、アルゴンガス−水混合ガス供給部4と連通している。
本発明の試料イオン化方法は、測定試料をイオン化するためのイオン化ガスの原料として、アルゴンガスと水を使用することを特徴とする。図1に示した質量分析機器用イオン化装置1において、アルゴンガス−水の混合ガスは、アルゴン−水混合ガス供給部4から、イオン化ガス供給部3に供給される。本発明の試料イオン化方法は、他の質量分析法のイオン化反応に使用されているヘリウム、ネオン他の不活性ガスに比較して、きわめて廉価なガスであるアルゴンガスと水を使用している。すなわち、本発明の試料イオン化方法は、ヘリウムガス等を使用するぺニングイオン化等のイオン化方法に比較してきわめて廉価な不活性ガスであるアルゴンと取り扱いにきわめて優れた水を使用して、測定試料をイオン化できるという点にそのメリットを有しているものである。
上記イオン化ガス供給部3に送られたアルゴンガス−水の混合ガスは、イオン化ガス供給部3の外筒31の内部において、紫外線の照射を受ける。紫外線の照射に使用することができる紫外線の波長は、上記混合ガス中のアルゴンガスを励起ガスとすることができる波長であれば、特に制限されるものではない。例えば近紫外線の波長である150〜280nmが好ましい。一般に、紫外線の波長が短いものは波長の有するエネルギーが大きいものであるが、紫外線の波長が150nm以上であるとアルゴンガス−水の混合ガス中のアルゴンガスを適度に励起し、励起アルゴンガスとすることができるため好ましく、紫外線の波長が280nm以下であるとアルゴンガスを励起する際のエネルギー効率の観点より好ましい。なお、上記200〜280nmの波長を有する紫外線は、UV−Cに分類される紫外線である。
次に、本発明の試料イオン化方法は、上記測定試料にアルゴンガスと水とを供給するとともに紫外線を照射した後、上記測定試料をイオン化することを特徴とする。
本発明の試料イオン化方法においては、基板2上に固定化された測定試料22を基板2より脱離させる。本発明の試料イオン化方法は、測定試料22を脱離させてから、イオン化ガスによる測定試料のイオン化をすることによって、測定試料のイオン効率を向上させる点に特徴を有するものである。すなわち、基板2からの測定試料22の脱離は、測定試料22が固定化され、展開されている基板2を加熱することによって行う。基板2の加熱手段は、特に制限されるものではないが、基板2をヒータや電熱線21により加熱して行うことができる。基板2の加熱により、基板2に固定化されている測定試料22は、測定試料ガス22aとなる。測定試料ガス22aは基板2と質量分析機器導入口6付近に存在することとなる。そして、上記測定試料ガス22aは、質量分析機器導入口6付近において、測定試料22をイオン化するためのイオン化ガスとの反応場となる領域を形成する。
本発明の試料イオン化方法においては、質量分析機器導入口6付近に存在する測定試料ガス22aとイオン化ガスとを反応させる。かかるイオン化ガスは、アルゴンと水の混合ガスに紫外線を照射することにより発生させる。
本発明の試料イオン化方法においては、測定試料ガスとイオン化ガスが反応することにより測定試料がイオン化される。上記で説明したように基板から脱離した試料は、測定試料ガスとなって基板上の領域の空間に移動し存在している。この測定試料ガスが存在する基板上の領域の空間にイオン化ガスである水クラスターイオンが供給されることにより測定試料ガスは、イオン化ガスと反応してイオン化される。このように、本発明の試料イオン化方法においては、第一段階として、測定試料を測定試料ガスとして基板より完全に脱離させてから、第二段階として、イオン化ガスとの反応によりイオン化させるという二段階の反応により測定試料のイオン化を図っている。
本発明の試料イオン化方法において、イオン化の対象となる測定試料は、特に制限されるものではなく、有機化学、生物化学、環境化学等の分野におけるあらゆる化合物を測定試料として対象とすることができる。特に、従来の試料イオン化方法、又は真空下での試料イオン化方法では、イオン化が困難である有機過酸化物、ホウ素、窒素、硫黄等を含有する金属錯体をも容易にイオン化することができる。例えば、有機過酸化物としては、ラウロイルパーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、オレイン酸メチルパーオキシド等の有機過酸化物、クメンパーオキシド(CHP)、ジイソブチルパーオキサイド(DBH)、パラメタンパーオキサイド(PMH)等の合成有機過酸化物を挙げることができる。
本発明の試料イオン化方法により、イオン化された測定試料は、質量分析機器の導入口6を通じて、質量分析機器に送入され、質量分析機器による質量分析が行われる。質量分析機器としては、特に制限されるものでなく、公知の質量分析機器を使用することができる。例えば、四重極質量分析計、磁場偏光分析計、イオントラップ分析計、飛行時間分析計、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴分析計、加速器質量分析計等を例示することができる。すなわち、本発明の試料イオン化方法は、従来から使用されているすべて質量分析機器に適用が可能である。
図1に示した質量分析機器用イオン化装置を用い、大気圧下でアルゴンガスと水とを供給するともに紫外線を照射することにより、水クラスターイオン(nH2O+H)+が発生することを確認した。紫外線の照射は水銀ランプにより行い、紫外線の照射波長を254nmとし、適宜混合ガス中の水の供給量を変化させて行った。なお、比較のため上記アルゴンガスに換えて、ヘリウムガス、窒素ガスをそれぞれ用いて、水クラスターイオン(nH2O+H)+の発生を試みた。水クラスターイオン(nH2O+H)+の発生の確認結果を図5に示す。
水クラスターイオン(nH2O+H)+の形成における水の影響を確認するために、混合ガス供給部の水を水とエタノールの混合物とした。そして、この混合物中のエタノールと水の割合を変化させ、大気圧下でアルゴンガスと水とエタノールの混合物を供給し、紫外線を照射することにより、エタノール・水クラスターイオンの発生を確認した。確認結果を図6に示す。
測定試料をステアリン酸メチルとし、溶媒であるベンゼンに溶解させ、0.001質量%のステアリン酸メチルのベンゼン溶液をそれぞれ作製した。これらのステアリン酸メチルの溶液をマイクロシリンジにて0.1μl採取し、上記マイクロシリンジの針から基板に注入した。基板のヒータの加熱温度をステアリン酸メチルのガス化温度である215℃よりも高い220℃に設定して、基板を加熱した。その後、イオン化ガス供給部にアルゴンガスと水との混合ガス(アルゴンガス:水=1:1)を供給するとともに、低圧水銀ランプ(エドモンド株式会社製、商品名「ミニチュアUVペンシルランプ」)により紫外線を照射し、イオン化ガスを発生させた。
核磁気共鳴装置NMRの基準物質であるジメチルスルホオキシド(DMSO)を溶媒とし、この溶媒に1,4−ビス(1−メチル−1−イミダゾール−5−イル)ベンゼンを溶解させた溶液を測定試料とした以外は、実施例1と同様にして、測定試料のイオン化、質量分析を行った。なお、実施例3においては、測定試料の濃度を0.1質量%とした。質量分析測定結果を図8に示す。
測定試料をt−ブチルペルオキシラウレート(PBL)とした以外は、実施例1と同様にして、測定試料のイオン化、質量分析を行った。なお、実施例4においては、測定試料の濃度を0.1質量%とし、アルゴン−水混合ガス中の水の量を変化させ、測定試料のイオン化、質量分析を行った。質量分析測定結果を図9に示す。なお、図9において(a)は、アルゴン−水混合ガス中の水の量が少ない場合であり、(b)は、アルゴン−水混合ガス中の水の量を増加させた場合である。
測定試料をt−ブチルペルオキシラウレートとし、基板の裏面より、種々の付加試薬を供給した以外は、実施例1と同様にして、測定試料のイオン化、質量分析を行った。基板の裏面より、供給する付加試薬としては、エタノール(実施例5)、アセトン(実施例6)、ピリジン(実施例7)及びトリメチルアミン(実施例8)を使用した。また、実施例5〜8においては、測定試料の濃度を0.1質量%とした。質量分析測定結果を図10に示す。
なお、イオンガス供給部に使用する上記アルゴンガスに換えて、ヘリウムガス、窒素ガスをそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして測定試料のイオン化をし、質量分析を行った。
イオンガス供給部に使用する混合ガス中に水を含ませないものとし、アルゴンガスのみを供給した以外は実施例1と同様にして測定試料のイオン化をし、質量分析を行った。以上、実施例及び比較例における測定試料のイオン化条件及び質量分析結果を下記表1にまとめて示す。
1a 質量分析機器用イオン化装置本体
2 基板
21 電熱線
22 測定試料
22a 測定試料ガス
3 イオン化ガス供給部
31 外筒
32 低圧水銀ランプ
33 アルゴンガス−水導入口
34 内筒
4 アルゴンガス−水混合ガス供給部
41 アルゴンガス貯蔵部
42 水貯蔵部
43 導入管コック
44 ガス導入管
5 気相マトリックス貯蔵部
51 付加試薬
6 質量分析機器導入口
Claims (11)
- 前記紫外線を紫外線ランプにより照射することを特徴とする請求項1記載の試料イオン化方法。
- 前記水が生成される化学反応の抑制は、前記紫外線の照射量を制御してなされることを特徴とする請求項3記載の試料イオン化方法。
- 前記紫外線の照射量の制御は、前記紫外線ランプの紫外線発光面の一部を外筒によって覆うことによって行うことを特徴とする請求項4記載の試料イオン化方法。
- 前記外筒の長さは、前記紫外線の照射量に応じて選択可能としたことを特徴とする請求項5記載の試料イオン化方法。
- 前記測定試料が薄層クロマトグラフィー板上に展開されており、所定の展開箇所から前記測定試料を脱離させた後に、当該脱離箇所に対して、大気圧下でアルゴンガスと水とを供給するとともに紫外線を照射することを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の試料イオン化方法。
- 前記所定の展開箇所を局所的に加熱して前記測定試料を脱離させることを特徴とする請求項7記載の試料イオン化方法。
- 前記測定試料の展開方向に沿って、前記薄層クロマトグラフィー板を加熱箇所に対して相対移動させることにより、異なる展開箇所における前記イオン化を行うことを特徴とする請求項8記載の試料イオン化方法。
- 前記測定試料が核磁気共鳴測定に用いられる有機溶媒に溶解した試料である場合に請求項1から9いずれか1項記載の試料イオン化方法を用いることを特徴とする質量分析方法。
- 前記測定試料が有機過酸化物である場合に請求項1から9いずれか1項記載の試料イオン化方法を用いることを特徴とする質量分析方法。
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