(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。まず、図1(a)を用いて、本実施形態に係るスマートシステムの概要を説明する。本実施形態のスマートシステムは、車両に搭載される車載システム10と、ユーザ91によって携帯される携帯機20とを備え、互いに双方向の通信を行い、その通信の結果に応じて、スマート駆動として車両のドアの解錠および車両駆動装置(例えばエンジン)始動のうち一方または両方を行う。
具体的には、車載システム10からLF帯域(100kHz程度)のリクエスト信号が無線送信され、このとき、ユーザ91が車両に近接しており、携帯機20がリクエスト信号の到達範囲内53に入っていれば、携帯機20はリクエスト信号を受信し、受信したリクエスト信号に含まれるリクエストデータが正規のデータであるか否かを判定し、正規のものであれば、RF帯域(例えば日本、北米、韓国及び中国では300MHz帯、欧州では400MHz帯)のアンサー信号を無線送信し、車載システム10はこのアンサー信号を受信し、受信したアンサー信号に含まれるアンサーデータが正規のデータであるか否かを判定し、正規のものであれば、車両のスマート駆動を実行する。
ただし、リクエストデータが正規のものでなかった場合、携帯機20はアンサー信号を送信せず、また、アンサーデータが正規のものでなかった場合、車載システム10はスマート駆動を禁止する。したがって、車載システム10と携帯機20が互いに正規のものでない限り、スマート駆動は実現しない。なお、車両から携帯機20への信号としてLF帯域信号が用いられるのは、LF帯域信号の受信可能範囲53を車両の近傍に限定して、携帯機20が車両から遠く離れているときにスマート駆動が実現してしまうことのないようにするためである。
このようなスマートシステムの技術に対して、携帯機20が車両から遠く離れていた状況においても、中継器を用いて携帯機20と車載システム10との通信を実現させ、スマート駆動を行わせるリレーステーションアタックが問題となる可能性がある。
リレーステーションアタックにおいては、図1(b)、(c)に示すように、RA中継器94をリクエスト信号の通信可能範囲53内に配置し、RA中継器95を携帯機20の近傍に配置し、車載システム10から送信されたリクエスト信号をRA中継器94が受信してRF帯域の信号に周波数アップコンバートしてRA中継器95に送信し、このRF帯域の信号をRA中継器95が受信してLF帯域の信号に周波数ダウンコンバートして携帯機20に送信するようになっている。なお、携帯機20から送信されたアンサー信号に関しては、図1(b)に示すように、中継器を介さず直接車載システム10に受信させる方法と、図1(c)に示すように、中継器96、97で中継して車載システム10に受信させる方法とがある。
本実施形態では、この図1(b)、(c)のようなリレーステーションアタックの有無を判別し、リレーステーションアタックがある場合にはスマート駆動を禁止する新規な技術を提案する。
図2に、リレーステーションアタックの有無を判別する作動の概要を示す。まず、車載システム10が、LF帯域内の所定の周波数(具体的には134kHz)を有するLFキャリア信号71(第1のキャリア信号の一例に相当する)を無線送信する。そして、携帯機20は、このLFキャリア信号71を受信すると、RF帯域内の周波数(具体的には312MHz)を有するRFキャリア信号72(第2のキャリア信号の一例に相当する)を、受信したLFキャリア信号71に乗算することで、LFキャリア信号71を変調する。変調後のキャリア変調信号は、RFキャリア信号72の周波数の両側に等間隔で離れたピーク73、74を有する信号となる。このピーク73、74間の間隔F2は、LFキャリア信号71の周波数F1の2倍となる。
携帯機20は、このキャリア変調信号を受信し、2つのピーク73、74間の間隔F2を検出すると共に、送信時のLFキャリア信号71の周波数F1を検出し、F1=(F2)/2であれば、リレーステーションアタックの介入がないと判定してスマート駆動を許可し、F1=(F2)/2でなければ、リレーステーションアタックの介入があると判定してスマート駆動を許可しないようになっている。
以下、このようなスマートシステムの構成および作動について詳細に説明する。図3は、本実施形態に係る車載システム10および携帯機20の構成図である。車載システム10は、スマート制御部1、LF送信アンテナ2、LF変調部3、RF受信アンテナ4、RF復調部5、LFキャリア発振器6、A/Dコンバータ7、センサ8、アクチュエータ9等を有している。
スマート制御部1は、CPU、RAM、ROM、I/O等を有するマイクロコンピュータとして実現可能であり、CPUがROMに記録されたプログラムを読み出し、RAMを作業領域として当該プログラムを実行することで、携帯機20との通信、リレーステーションアタックの有無の判別、スマート駆動等のためのスマート制御部1各種処理を実現する。
LF送信アンテナ2は、LF帯域の信号(LF電波)を無線送信するためのアンテナである。LF変調部3は、スマート制御部1から出力されたデータ信号をLF帯域の信号に変調してLF送信アンテナ2に出力する回路である。変調方式としては、ASK、FSK、PSK等使用可能であるが、ここではASK(Amplitude Shift Keying)変調方式を採用して以下説明する。
RF受信アンテナ4は、RF帯域の信号(RF電波)を無線受信するためのアンテナである。RF復調部5は、RF受信アンテナ4が受信したRF帯域の信号を復調してスマート制御部1に出力する等の処理を行う回路である。
ここで、RF復調部5の詳細について説明する。RF復調部5は、アンプ・フィルタ・D/C部51、BPSK復調部52、およびA/Dコンバータ53を有している。RF受信アンテナ4が受信したRF帯域の信号は、アンプ・フィルタ・D/C部51において増幅、周波数フィルタリング、IF帯域(中間周波数帯域、本実施形態では300kHz付近の帯域)への周波数ダウンコンバートが為されて、更にA/Dコンバータ53においてデジタル信号に変換される。このデジタル信号は、BPSK復調部52およびスマート制御部1の両方に入力される。BPSK復調部52では、A/Dコンバータ53から入力されたデジタル信号をBPSK復調し、その結果得たデータをスマート制御部1に入力する。このように、RF復調部5では、入力された信号を周波数ダウンコンバートした後BPSK復調しないままスマート制御部1に入力すると共に、RF受信アンテナ4から入力された信号を周波数ダウンコンバートした後BPSK復調してスマート制御部1に入力する。
LFキャリア発振器6は、LF帯域内の所定の周波数(具体的には134kHz)のキャリア信号をLF変調部3に出力する。LF変調部3は、スマート制御部1から入力されたデータ信号に対して、このキャリア信号を乗算することで、当該データ信号を変調する。
また、このLFキャリア発振器6が出力するキャリア信号は、A/Dコンバータ7にも入力され、A/Dコンバータ7は、このキャリア信号をデジタル信号に変換してスマート制御部1に入力する。
センサ8は、車両のドアのドアハンドル部分等に取り付けられ、ユーザがドアに手をかける動作を検出し、検出結果をスマート制御部1に出力するためのセンサであり、例えば、タッチセンサとして実現可能である。
アクチュエータ9は、スマート駆動の対象となるアクチュエータであり、車両のエンジンのスタータモータ(またはスタータモータを制御するエンジンECU)、車両のドアの施錠および解錠を行うドアロック機構(ドアロック機構を制御するドアECU)等から成る。
携帯機20は、LF受信アンテナ21、アンプ22、LF復調部23、RF送信アンテナ24、RF変調部25、RFキャリア発振器26、切替回路27、携帯側制御部28等を有している。
LF受信アンテナ21は、車載システム10から送信されたLF帯域の信号を受信するためのアンテナである。アンプ22は、LF受信アンテナ21が受信したLF帯域の信号を増幅する回路である。LF復調部23は、LF受信アンテナ21が受信してアンプ22が増幅したLF帯域の信号を復調し、復調後のデータを携帯側制御部28に出力する回路である。復調方式としてはASK、FSK、PSK等使用可能であるが、ここでは変調方式と同じASKを復調方式として採用する。
RF送信アンテナ24は、RF帯域の信号(RF電波)を無線送信するためのアンテナである。RF変調部25は、切替回路27から出力された信号をRF帯域の信号に変調してRF送信アンテナ24に出力する回路である。RFキャリア発振器26は、RF帯域域内の所定の周波数(具体的には312MHz)のRFキャリア信号(第2のキャリア信号の一例に相当する)を出力する。
このRF変調部25における変調としては、BPSK変調を採用する。RF変調部25は、RFキャリア発振器26が出力するRFキャリア信号を用いてBPSK変調を行う。このようなRF変調部25としては、DBM(Double Balanced Mixer)を用いることができる。
切替回路27は、携帯側制御部28から出力された信号をRF変調部25に出力するデータ出力状態と、アンプ22から出力された信号、すなわちLF送信アンテナから出力されたLFキャリアをRF変調部25に出力するLFキャリア出力状態と、を切り替える回路であり、携帯側制御部28の制御に従って作動する。
携帯側制御部28は、CPU、RAM、ROM、I/O等を備えたマイクロコンピュータとして実現されており、CPUがROMに記録されたプログラムを読み出し、RAMを作業領域として当該プログラムを実行することで、携帯側制御部28の各種処理が実現する。
以下、このような構成のスマートシステムの作動について詳細に説明する。図3に示すように、スマート制御部1は、第1FFT処理1a、第2FFT処理1b、データ出力処理1c、およびメイン処理1dを並列的に実行するようになっている。第1FFT処理1aは、A/Dコンバータ7から入力されたLFキャリア信号に対してFFT(高速フーリエ変換)処理を施すことで、LFキャリア信号の周波数毎の強度の分布を算出する。第2FFT処理1bは、A/Dコンバータ53から入力された信号に対してFFT(高速フーリエ変換)処理を施すことで、入力された信号の周波数毎の強度の分布を算出する。データ出力処理1cは、メイン処理1dの制御に従って、データ信号をLF変調部3に入力する。
メイン処理1dは、リレーステーションアタックの有無の判定、スマート駆動等を行うための処理である。図4に、このメイン処理1dのフローチャートを示す。また、図5に、携帯側制御部28が実行する処理のフローチャートを示す。また、図6に、LF帯域でやりとりされる信号とRF帯域でやりとりされる信号のタイミング図を示す。
まず、図1(a)に示すように、携帯機20を有するユーザ91が、車両に近づき、車載システム10の通信可能範囲53に携帯機20が入った場合の事例について説明する。携帯機20の携帯側制御部28は、図5のステップ205で、LF帯域の信号を取得するまで(すなわち携帯機20のLF復調部23が所定の強度以上の信号を受信するまで)待機している。このとき、切替回路27は、アンプ22から入力された信号をRF変調部25に出力せず、携帯側制御部28から入力された信号をRF変調部25に出力するデータ出力状態としている。
また、車載システム10のスマート制御部1は、メイン処理1dにおいて、ステップ105で、送信タイミングが訪れるまで待機する。送信タイミングとしては、定期的(例えば1秒周期)に訪れるポーリングタイミング、および、センサ6がユーザがドアに手をかける動作を検出したタイミングがある。
送信タイミングが訪れると、続いてステップ110に進み、所定のリクエストデータを作成し、このリクエストデータを出力するようデータ出力処理1cに指令する。するとデータ出力処理1cは、このリクエストデータをLF変調部3に出力する。これにより、LF変調部3が、LFキャリア発振器6からのLFキャリア信号を用いてリクエストデータを変調し、変調した結果の信号であるリクエスト信号41(図6参照)を、LF送信アンテナ2を用いて無線送信する。リクエスト信号の送信開始から送信完了までの時間(送信時間)は、数ミリ秒から50ミリ秒の範囲内のいずれかである。
このとき携帯機20では、LF受信アンテナ21がリクエスト信号41を受信し、アンプ22でこのリクエスト信号41が増幅される。増幅されたリクエスト信号41は、LF復調部23および切替回路27に入力されるが、切替回路27はデータ出力状態にあるので、リクエスト信号41は切替回路27からRF変調部25には入力されない。LF復調部23は、入力されたリクエスト信号41を復調してリクエストデータを取得し、取得したリクエストデータを携帯側制御部28に入力する。
携帯側制御部28は、リクエストデータの入力が始まると、ステップ210に進み、入力されたリクエストデータを取得する。そしてリクエストデータの取得が終了した時点t1(図6参照)で、ステップ215に進み、LFキャリア信号の出力を開始するため、切替回路27を切り替えて、携帯側制御部28から入力されたデータをRF変調部25に出力せず、アンプ22から入力された信号をRF変調部25に出力する受信信号出力状態とする。
また、メイン処理1dにおいてスマート制御部1は、データ出力処理1cがリクエストデータの出力を終了した時点t1において、ステップ115に進み、LFキャリアの出力を開始するための制御を行う。具体的には、データ出力処理1cに対して、出力時にレベルが一定となる直流信号となるような所定のデータ(例えば、1を表すビットが連続するデータ)を出力するよう指令する。
するとデータ出力処理1cは、指令にしたがって当該所定のデータの出力を開始する。これにより、スマート制御部1からLF変調部3には、直流信号が入力され始め、LF変調部3では、この直流信号とLFキャリア発振器6からのLFキャリア信号(第1のキャリア信号に相当する)が乗算されLF送信アンテナ2に出力され始めることで、LF送信アンテナ2から無変調波であるLFキャリア信号42が無線送信され始める。なお、データ出力処理1cおよびLF変調部3によるこのLFキャリア信号42の送信は、時刻t1から時刻t2までの期間(例えば、数ミリ秒)続ける。このLFキャリア信号42の送信時間(時刻t1から時刻t2までの期間)は、あらかじめ記憶媒体(例えばスマート制御部1のROM)に記録されている値に従って決まる。
そして、LF変調部3がLFキャリア信号を無線送信し始めてすぐに、メイン処理1dでは、ステップ120に進み、第1FFT処理1aに対して、FFT処理を開始するよう指令する。
すると、第1FFT処理1aにおいてスマート制御部1は、LFキャリア発振器6からA/Dコンバータ7に入力されてデジタル信号となったLFキャリア信号(第1のキャリア信号の一例に相当する)の取得およびFFTを開始する。このとき、まだLF変調部3ではLFキャリア信号の送信が継続中なので、第1FFT処理1aにおいて取得するLFキャリア信号(以下、ローカルキャリア信号という)は、無線送信に用いられているLFキャリア信号42と同じ信号であり、当然、周波数も同じである。
メイン処理1dでは続いてステップ125に進み、RF復調部5がRF帯域の信号を受信するまで待機する。なお、後述の通り、実際にはすぐに受信することになる。
一方、携帯機20では、切替回路27が受信信号出力状態になっているところに、上記LFキャリア信号42をLF受信アンテナ21が受信し、アンプ22が増幅して切替回路27に入力する。したがって、LF送信アンテナ2で受信されたLFキャリア信号が増幅されてRF変調部25に入力される。そして、RF変調部25は、RFキャリア発振器26からのRFキャリア信号(第2のキャリア信号の一例に相当する)を用いてLFキャリア信号をBPSK変調する。そして、変調された結果の信号であるキャリア変調信号をRF送信アンテナ24に出力することで、RF送信アンテナ24からRF帯域のキャリア変調信号が無線送信される。
このキャリア変調信号は、強度−周波数特性が図7(a)のようなピーク81を有するLFキャリア信号42に、RF送信アンテナ24からのRFキャリア信号を乗算したものだから、アンプ・フィルタ・D/C部51でダウンコンバートした後のキャリア変調信号の周波数毎の強度分布は、図7(b)に示すように、IF周波数(300kHz)を中心として互いに134kHz×2kHz=268kHzだけ離れたピーク82、83を有するようになる。したがって、このキャリア変調信号には、LFキャリア信号の情報(より具体的には、LFキャリア信号の周波数の情報)が含まれている。
なお、RF送信アンテナ24からキャリア変調信号が送信されている間に、携帯側制御部28では、ステップ215に続くステップ220で、取得したリクエストデータが正規なものか否かを判別するために、リクエストデータと、あらかじめ記憶媒体(例えば携帯側制御部28のROM)に記憶されている正規リクエストデータとを照合し、続いてステップ225で、取得したリクエストデータと正規リクエストデータが一致するか否かを、すなわち、取得したリクエストデータが正規のものであるか否かを、判定する。
本事例では、リクエストデータは正規の(すなわち、携帯機20に対応する)車載システム10から受信したものなので、ステップ225では、リクエストデータが正規のものであると判定し、ステップ230に進む。
なお、本事例と違い、正規でない車載システム10または他の通信機器から信号を携帯機20が受信した場合は、LF復調部23の復調によって得たリクエストデータは、正規のものでないので、ステップ225では、当該リクエストデータと正規リクエストデータとが一致せず、当該リクエストデータが正規のデータでないと判定する。その場合、アンサーデータを出力しないまま処理はステップ205に戻る。したがって、携帯機20から車載システム10にアンサー信号が無線送信されず、車載システム10においてスマート駆動も実行されない。
本事例の説明に戻り、ステップ225でリクエストデータが正規のものであると判定し、ステップ230に進んだ後について説明する。ステップ230では、切替回路27からRF変調部25へのLFキャリア信号42の出力が終了するまで待機する。
LFキャリア信号42の出力が終了したか否かは、ステップ210でリクエストデータの受信を完了した時点から、あらかじめ定められて記憶媒体(例え携帯側制御部28のROM)に記憶されたLFキャリア信号42の送信時間が経過したか否かで判定する。なお、このLFキャリア信号42の送信時間の情報は、携帯側制御部28でもスマート制御部1でも同じ値が記録されている。
あるいは、LFキャリア信号42の出力が終了したか否かについては、アンプ22から切替回路27に印加される電圧を検出し、その電圧が一定期間(例えば、134kHzのキャリア信号の1周期分の時間)ゼロとなったら、LFキャリア信号42の出力が終了したと判定するようになっていてもよい。
一方、車載システム10では、スマート制御部1のメイン処理1dにおいて、LFキャリア信号42の送信を開始した後、ステップ120を経てステップ125で、RF復調部5による無線受信があるまで待機するが、上述の通り、車載システム10がLFキャリア信号42の送信を開始してすぐ、携帯機20からキャリア変調信号43が送信される。そして、RF復調部5は、RF受信アンテナ4を介してこのキャリア変調信号43を受信し、アンプ・フィルタ・D/C部51で増幅、不要な信号のフィルタリング、およびIFへの周波数ダウンコンバートを行い、A/Dコンバータ53がA/D変換してスマート制御部1とBPSK復調部52に入力し、BPSK復調部52がBPSK復調してスマート制御部1に出力する。
このようにスマート制御部1に信号が入力されると、メイン処理1dにおいて処理はステップ130に進む。ステップ130では、スマート制御部1は、第2FFT処理1bに対して、FFT処理を開始するよう指令する。
すると、第2FFT処理1bにおいてスマート制御部1は、A/Dコンバータ53から入力されたデジタルのキャリア変調信号の取得およびFFTを開始する。このとき、まだLF変調部3ではLFキャリア信号の送信が継続中である。
その後、時刻t2において、LF変調部3でLFキャリア信号の送信が終了すると、ほぼ同時に携帯機20からのキャリア変調信号の送信も終了する。その時刻t2において、第1FFT処理1aにおけるローカルキャリア信号のFFTおよび第2FFT処理1bにおけるキャリア変調信号のFFTが完了する。これは、第1FFT処理1aがFFTのために使用するローカルキャリア信号の長さは、LF変調部3から送信されるLFキャリア信号42の長さ(数ミリ秒)と同じ所定のFFT時間に設定されており、また、第2FFT処理1bがFFTのために使用するローカルキャリア信号の長さは、携帯機20が送信するキャリア変調信号がの長さ(LFキャリア信号42の長さと同じ数ミリ秒)であり、かつ、上記所定のFFT時間と同じに設定されているからである。
第1FFT処理1aにおけるローカルキャリア信号のFFTが完了すると、FFTの結果得たローカルキャリア信号の周波数毎の信号強度分布が、第1FFT処理1aからメイン処理1dに渡される。また、第2FFT処理1bにおけるキャリア変調信号のFFTが完了すると、FFTの結果得たキャリア変調信号の周波数毎の信号強度分布が、第2FFT処理1bからメイン処理1dに渡される。
すると、メイン処理1dにおいてスマート制御部1は、ステップ135で、ローカルキャリア信号の周波数毎の信号強度分布に基づいて、ローカルキャリア信号の周波数であるローカルLF周波数F1を検出する。具体的には、当該信号強度分布において信号強度が最も高い周波数を、ローカルLF周波数F1として検出する。
更にステップ140で、キャリア変調信号の周波数毎の信号強度分布に基づいて、ピーク値(信号強度の極大値)となる周波数を複数個検出し、それらのうち、信号強度が最も高い2個のピーク値について、周波数の差を検出し、それをピーク周波数間隔F2として検出する。
続いてステップ145では、検出したローカルLF周波数F1と、ピーク周波数間隔F2について、F1=(F2)/2の関係が成り立っているか否かを判定する。
ここで、F1=(F2)/2の判定についてより詳しく説明する。F1=(F2)/2か否かの判定は、厳密に言えば、|F1−(F2)/2|≦δか否かの判定である。ただし、δは、F1と(F2)/2が実質的に同じとみなせる範囲の限界における誤差(以下、許容限界誤差という)である。
この許容限界誤差δは、リレーステーションアタックが介入しないときに発生すると想定されるLFキャリア周波数の最大のずれ量であるが、基本的にはδはほぼゼロである。その理由について、リレーステーションアタックが介在しない状況でF1と(F2)/2がずれる要因毎に説明する。
(要因1)LFキャリア信号の出力開始時(LFキャリア発振器6への電源印加直後)、LFキャリア発振器6からのLFキャリア信号が、出力開始時(LFキャリア発振器6への電源印加直後)に安定せず周波数が時間的に変動する場合がある。これが、F1と(F2)/2がずれる要因となる可能性がある。この要因に対しては、第1FFT処理1aおよび第2FFT処理1bにおいて、ある程度長いFFT時間(数ミリ秒)における信号データを取得しFFTに使用するので、強度がピークとなる周波数は、安定後の正しい値を得る。すなわち、FFTした結果、サイドローブ(すその)は出るがピークは正しくなる。
(要因2)RFキャリア発振器26からのRFキャリア信号の周波数が時間的に変動することも、F1と(F2)/2がずれる要因となる可能性がある。しかし、これに対しても、要因1と同じ考え方ができ、要因2によってF1と(F2)/2がずれる可能性はほとんどない。しかも、F2は、キャリア変調信号の2つのピーク間の周波差であるから、RFキャリア信号の周波数変動によってそれら2つのピーク自体がずれても、RFキャリア信号の周波数変動によってピーク間の周波数差はずれないので、要因2によってF1と(F2)/2がずれる可能性はほとんどない。
(要因3)携帯機20が車載システム10に対して移動する場合、ドップラー効果によって、車載システム10から送信するLFキャリア信号の周波数に対し、携帯機20で受信するLFキャリア信号の周波数がずれる。これが、F1と(F2)/2がずれる要因となる可能性がある。しかし、LFキャリア信号の周波数を100kHzと仮定し、車載システム10に対する携帯機20の移動速度を10km/hと仮定した場合、周波数のずれは1mHzと非常に小さく、無視できる程度である。したがって、要因3によってF1と(F2)/2がずれる可能性はほとんどない。一方、ドップラー効果によってRF周波数が変化することも考えられる。しかし、RFキャリア信号の周波数を300MHz、LFキャリア信号の周波数を100kHz(すなわちF2=200kHz)と仮定し、車載システム10に対する携帯機20の移動速度を10km/hと仮定した場合、周波数のずれは2mHzと非常に小さく、無視できる程度である。したがって、要因3によってF1と(F2)/2がずれる可能性はほとんどない
以上の通りなので、リレーステーションアタックが介在しない場合は、F1と(F2)/2のずれはほぼゼロである。従って、上述のδは、ゼロにしてもよい。あるいは、F1、F2を計算するスマート制御部1における周波数の分解能をNヘルツとすれば、δはN/2ヘルツとしてもよい。このδについては、F1と(F2)/2のずれを計算する他の実施例でも同じである。
本事例では、RA中継器が車載システム10と携帯機20の間の通信に介入していないので、ピーク周波数間隔F2は、車載システム10から送信されたLFキャリア信号(第1のキャリア信号の一例に相当する)の周波数F1の2倍になっている。したがって、F1=(F2)/2の関係が成り立つと判定され、処理はステップ150に進む。ステップ145からステップ150に進むことは、スマート駆動を(アンサー信号が正規であるという条件付きで)許可することに相当する。
ステップ150では、リレーステーションアタックの介入がないと判定する。具体的には、所定のRAフラグの値をオフにセットする。なお、この所定のRAフラグは、車載システム10の起動時の初期値はオフとなっている。続いてステップ155では、RF復調部5のBPSK復調部52からアンサーデータを取得するまで待機する。
一方、携帯機20では、携帯側制御部28は、キャリア変調信号の送信が完了するタイミングで、ステップ230においてLFキャリア信号の切替回路27からRF変調部25への出力が終了したと判定し、ステップ235に処理を進める。
そしてステップ235では、切替回路27をデータ出力状態に切り替え、所定のアンサーデータを作成し、作成したアンサーデータを切替回路27に出力する。これにより、切替回路27は、当該アンサーデータをRF変調部25に出力し、RF変調部25は、RFキャリア発振器26からのRFキャリア信号で当該アンサーデータをBPSK変調し、変調後の信号(すなわち、アンサー信号44)を、RF送信アンテナ24から無線送信し、処理をステップ205に戻す。アンサー信号44の送信時間は、数ミリ秒から100ミリ秒の範囲内のいずれかである。
一方、車載システム10では、上記のように携帯機20から送信されたアンサー信号44が、RF受信アンテナ4を介してRF復調部5によって受信される。そしてRF復調部5では、アンプ・フィルタ・D/C部51が、このアンサー信号44を増幅、不要な周波数のフィルタリング、ダウンコンバートを行い、A/Dコンバータ53が、A/D変換処理を施し、BPSK復調部52がBPSK復調する。これにより、アンサー信号44に含まれるアンサーデータが、BPSK復調部52からスマート制御部1に対して入力される。
するとスマート制御部1は、メイン処理1dにおいて、ステップ155で、当該アンサーデータを取得し、ステップ160で、取得したアンサーデータが正規なものか否かを判別するために、アンサーデータと、あらかじめ記憶媒体(例えばスマート制御部1のROM)に記憶されている正規アンサーデータとを照合し、続いてステップ165で、取得したアンサーデータと正規アンサーデータが一致するか否かを、すなわち、取得したアンサーデータが正規のものであるか否かを、判定する。
本事例では、アンサーデータは正規の(すなわち、車載システム10に対応する)携帯機20から受信したものなので、ステップ165では、アンサーデータが正規のものであると判定し、ステップ170に進み、スマート駆動を実行する。これにより、ユーザががドアを開けて車内に入り、エンジンを始動させることができる。ステップ170の後、図4の処理は終了する。
なお、本事例と違い、正規でない車載システム10または他の通信機器から信号を車載システム10が受信した場合は、RF復調部5の復調によって得たアンサーデータは、正規のものでないので、ステップ165では、当該アンサーデータと正規アンサーデータとが一致せず、当該アンサーデータが正規のデータでないと判定する。その場合、ステップ170を迂回して、スマート駆動を行わずに禁止し、処理をステップ105に戻す。
以上のように、車載システム10から携帯機20にLFキャリア信号(第1のキャリア信号の一例に相当する)を送信し、携帯機20がこのLFキャリア信号をRFキャリア信号(第2のキャリア信号の一例に相当する)で変調し、キャリア変調信号として車載システム10に返す場合、本事例のようにリレーステーションアタックの介入がない場合は、車載システム10から送信するLFキャリア信号の周波数と、携帯機20が受信するキャリア変調信号に含まれるLFのキャリア信号41の周波数は同じはずである。したがって、F1=(F2)/2の関係が成り立ち、スマート制御部1は、スマート駆動を許可することができる。
ここで、図1(b)、(c)のように、リレーステーションアタックが介入した事例について、リレーステーションアタックが介入していない事例との違いを中心に説明する。本事例においては、携帯機20を携帯するユーザ91は、リクエスト信号の到達範囲内53の範囲内に入っていないが、車両または車両内の物を窃盗しようと企てるグループが、RA中継器94をリクエスト信号の通信可能範囲53内に配置し、RA中継器95を携帯機20の近傍に配置する。これにより、車載システム10から送信されたリクエスト信号が、RA中継器94、95で中継され、携帯機20に届くようになる。
この場合、車載システム10からリクエスト信号が無線送信され、LFキャリア信号42が無線送信され始めるまで(メイン処理1dの処理で言えばステップ125まで)は、リレーステーションアタックの介入がない場合の事例と同じである。
しかし、リレーステーションアタックが介入する本事例では、送信されたLFキャリア信号42は、中継器94でRF帯域に周波数アップコンバートされ、更に中継器95でLF帯域に周波数ダウンコンバートされる。このとき、中継器94でアップコンバートに用いられるRFキャリア発振器と、中継器95でダウンコンバートに用いられるRFキャリア発振器とは、個体間のばらつきにより、出力する信号の周波数が僅かに異なる場合がほとんとである。したがって、中継器94、95でアップコンバートおよびダウンコンバートされた後のLFキャリア信号42の周波数が、アップコンバート前の周波数に対して僅かに(例えば、RFキャリア周波数312MHzの30万分の1より小さい1kHz)ずれてしまう。
一方、携帯機20では、リクエスト信号41を受信(図5のステップ205、210参照)した後、リレーステーションアタックの介入により周波数がずれてしまったLFキャリア信号42を受信し、切替回路27およびRF変調部25を経て、このキャリア信号42を変調してキャリア変調信号として無線送信し(図5のステップ215参照)、また、リクエストデータが正規のものであると判定し(ステップ225参照)、キャリア変調信号の送信後に(ステップ230参照)アンサー信号44を無線送信する(ステップ235参照)。
そのようにして携帯機20から無線送信されてアンプ・フィルタ・D/C部51で周波数ダウンコンバートした後のキャリア変調信号43は、図7(c)に示すように、強度が最も高い2つのピーク間84、85間の周波数間隔が、134kHz×2=268kHzからずれてしまう。ずれ量については、例えば、リレーステーションアタックの介入によりLFキャリア信号42が1kHzずれた場合、キャリア変調信号のピーク間の周波数間隔は268kHzに対して2kHzずれることになる。
なお、図7(c)におけるキャリア変調信号43のピーク85付近には、図8(a)に示すように、ピーク85以外にも、ピーク85aが存在する。このピーク85aは、RA中継器94でLFキャリア信号42をアップコンバートしたときにフィルタリングできなかった不要部分であり、ピーク84、85よりも強度が低くなる。同様に、図7(c)におけるキャリア変調信号43のピーク84付近には、図8(b)に示すように、ピーク84以外にも、ピーク84aが存在する。このピーク84aは、RA中継器94でLFキャリア信号42をアップコンバートしたときにフィルタリングできなかった不要部分であり、ピーク84、85よりも強度が低くなる。
したがって、スマート制御部1は、ステップ135で検出したローカルLF周波数F1と、ステップ145で検出したピーク周波数間隔F2とを用いて、ステップ145でF1と(F2)/2が同じであるか否か比較するが、リレーステーションアタックが介入している本事例では、同じでないと判定し、処理をステップ175に進める。処理をステップ145からステップ175に進めることは、スマート駆動を許可せず禁止することに相当する。
ステップ175では、リレーステーションアタックの介入があると判定する。具体的には、上述したRAフラグの値をオンにセットする。ステップ175の後、処理はステップ105に戻る。なお、スマート制御部1は、RAフラグの値がオンになったことに基づいて、車両外に警告報知を行うため、車両のホーンを吹鳴させる等の制御を行うようになっていてもよい。
このように、リレーステーションアタックが介入すると、RA中継器94、95でLFキャリア信号42のアップコンバートおよびダウンコンバートを行う際に、RA中継器94、95に内蔵のキャリア発振器が用いられる。これらRA中継器94、95に内蔵のキャリア発振器は、個体間のばらつきにより、互いに周波数が一致することはほとんどない。したがって、リレーステーションアタックが介入すると、車載システム10から送信するLFキャリア信号42の周波数に対し、携帯機20で受信するLFキャリア信号42の周波数が、ずれてしまう。
したがって、周波数がずれた状態のLFキャリア信号42が変調されたキャリア変調信号43を車載システム10が受信し、そのキャリア変調信号43に含まれるLFキャリア信号42の周波数を、ローカルキャリア信号の周波数と比較しても、同じとはならない。
本実施携帯においては、このような特性を利用して、ローカルキャリア信号の周波数と、キャリア変調信号に含まれるLFキャリア信号42の周波数とが一致している場合には、リレーステーションアタックの介入がないと判定してスマート駆動を許可し、一致しない場合には、リレーステーションアタックの介入があると判定してスマート駆動を許可しない。このようにすることで、リレーステーションアタックの遅延時間にかかわらず、リレーステーションアタックの介入の有無を判定することができる。
また、車載システム10は、LFキャリア信号42を出力したキャリア発振器6から出力されるキャリア信号を用いて、リクエストデータを変調し、変調後の信号をリクエスト信号として無線送信する。このようになっていることで、リクエスト信号を生成するためのキャリア発振器と、LFキャリア信号42を出力するためのキャリア発振器とを、1つにまとめることができるので、車載システム10の部品点数を少なくすることができる。
また、携帯機20において、LFキャリア信号42を変調するために用いたRFキャリア信号の発振器と、アンサーデータを変調してアンサー信号とするために用いるキャリア信号の発振器とは、同じ発振器26である。このようになっていることで、アンサー信号44を生成するためのキャリア発振器と、キャリア変調信号43を出力するためのキャリア発振器とを、1つにまとめることができるので、携帯機20の部品点数を少なくすることができる。
また、車載システム10は、リクエストデータを変調して生成したリクエスト信号を無線送信し、リクエスト信号を無線送信し終えた後に、LFキャリア信号42の無線送信を開始し、LFキャリア信号42の無線送信の開始と共に、LFキャリア信号42をローカルキャリア信号として取得し始め、携帯機20は、リクエスト信号を無線受信し、リクエスト信号41を無線受信し終えた後に、LFキャリア信号42の受信と、LFキャリア信号42の変調と、キャリア変調信号の無線送信と、を開始し、その後、リクエスト信号41に含まれるリクエストデータが正規のデータであるか否かを判定し、正規のデータであることに基づいて、キャリア変調信号43の無線送信の終了後に、アンサー信号44を無線送信し、車載システム10は、キャリア変調信号43を受信し、取得したローカルキャリア信号の周波数と、受信したキャリア変調信号43に含まれるLFキャリア信号42の周波数とが一致しているか否か判定し、一致していると判定した場合は、スマート駆動を許可し、一致していないと判定した場合は、スマート駆動を許可しない。
このように、車載システム10が、リクエストデータを含むリクエスト信号41、LFキャリア信号42の順に無線送信したとき、携帯機20が、リクエストデータの認証の前に、LFキャリア信号42に基づくキャリア変調信号を送信し始める。したがって、リクエストデータの認証の後にキャリア変調信号43を送信し始める場合に比べ、アンサー信号44の無線送信終了までにかかる時間が短くて済む。すなわち、車載システム10と携帯機20の間の通信のレスポンスが向上する。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、第1実施形態との違いを中心に説明する。本実施形態における車載システム10および携帯機20の構成は、第1実施形態と同じである。本実施形態が第1実施形態と異なるのは、LFキャリア信号、キャリア変調信号、リクエスト信号、アンサー信号の送信タイミング、ならびに、それら送信タイミングを実現するためのスマート制御部1のメイン処理1dの内容および携帯側制御部28の処理の内容である。
図9に、本実施形態におけるメイン処理1dのフローチャートを示し、図10に、本実施形態における携帯側制御部28の処理のフローチャートを示す。また、図11に、LF帯域でやりとりされる信号とRF帯域でやりとりされる信号(LFキャリア信号45、リクエスト信号46、キャリア変調信号47、アンサー信号48)のタイミング図を示す。本実施形態では、図11に示すように、車載システム10が、まず先にLFキャリア信号45を送信し、その後に、リクエスト信号を送信する点が、第1実施形態と異なる。以下、本実施形態のスマートシステムの作動について、第1実施形態との違いを中心に説明する。
まず、図1(a)に示すように、携帯機20を有するユーザ91が、車両に近づき、車載システム10の通信可能範囲53に携帯機20が入った場合の事例について説明する。携帯機20の携帯側制御部28は、携帯機20が信号を受信するまで(すなわち携帯機20のLF復調部23が所定の強度以上の信号を受信するまで)は、図10のステップ250で、LF帯域の信号を取得するまで待機している。このとき切替回路27は、第1実施形態と同様、データ出力状態としている。
また、車載システム10のスマート制御部1は、メイン処理1dにおいて、ステップ305で、第1実施形態のステップ105と同様に、送信タイミングが訪れるまで待機する。
送信タイミングが訪れると、続いてステップ310に進み、第1実施形態のステップ115と同じ方法で、LFキャリアの出力を開始するための制御をデータ出力処理1cに対して行う。これにより、第1実施形態と同様、LFキャリア発振器6から出力されたLFキャリア信号45(第1のキャリア信号の一例に相当する)が、LF送信アンテナ2から無線送信され始める。なお、このLFキャリア信号45の送信は、時刻t3から時刻t4までのあらかじめ決められた期間(例えば、数ミリ秒)続ける。
そして、LF変調部3がLFキャリア信号を無線送信し始めてすぐに、メイン処理1dでは、ステップ315に進み、第1FFT処理1aに対して、FFT処理を開始するよう指令する。すると、第1FFT処理1aにおいてスマート制御部1は、LFキャリア発振器6からA/Dコンバータ7に入力されてデジタル信号となったLFキャリア信号(第1のキャリア信号の一例に相当する)の取得およびFFTを開始する。このとき、まだLF変調部3ではLFキャリア信号の送信が継続中なので、第1FFT処理1aにおいて取得するLFキャリア信号(以下、ローカルキャリア信号という)は、無線送信に用いられているLFキャリア信号45と同じ信号であり、当然、周波数も同じである。メイン処理1dでは続いてステップ320に進み、RF復調部5がRF帯域の信号を受信するまで待機する。なお、後述の通り、実際にはすぐに受信することになる。
一方、携帯機20では、LF受信アンテナ21、アンプ22、LF復調部23がこのLFキャリア信号45を受信し始めると、携帯側制御部28が、ステップ250からステップ255に処理を進め、LFキャリア信号の出力を開始するため、切替回路27を受信信号出力状態に切り替える。すると、上記LFキャリア信号45をLF受信アンテナ21が受信し、アンプ22が増幅して切替回路27に入力し始める。したがって、LF送信アンテナ2で受信されたLFキャリア信号45が増幅されてRF変調部25に入力される。そして、RF変調部25は、RFキャリア発振器26からのRFキャリア信号(第2のキャリア信号の一例に相当する)を用いてLFキャリア信号45をBPSK変調する。そして、変調された結果の信号であるキャリア変調信号45をRF送信アンテナ24に出力することで、RF送信アンテナ24からRF帯域のキャリア変調信号47が無線送信される。
このキャリア変調信号47は、第1実施形態のキャリア変調信号と同様、周波数毎の強度分布が、互いに134kHz×2kHz=268kHzだけ離れたピークを有するようになる。したがって、このキャリア変調信号47には、LFキャリア信号45の情報(より具体的には、LFキャリア信号45の周波数の情報)が含まれている。
なお、RF送信アンテナ24からキャリア変調信号47が送信されている間、携帯側制御部28は、ステップ255で、切替回路27からRF変調部25へのLFキャリア信号45の出力が終了するまで待機する。LFキャリア信号45の出力が終了したか否かの判定方法は、第1実施形態のステップ230と同じである。
一方、車載システム10では、スマート制御部1のメイン処理1dにおいて、LFキャリア信号45の送信を開始した後、ステップ310を経てステップ320で、RF復調部5による無線受信があるまで待機するが、上述の通り、車載システム10がLFキャリア信号45の送信を開始してすぐ、携帯機20からキャリア変調信号47が送信される。そして、RF復調部5は、RF受信アンテナ4を介してこのキャリア変調信号47を受信し、アンプ・フィルタ・D/C部51で増幅、不要な信号のフィルタリング、およびIFへの周波数ダウンコンバートを行い、A/Dコンバータ53がA/D変換してスマート制御部1とBPSK復調部52に入力し、BPSK復調部52がBPSK復調してスマート制御部1に出力する。
このようにスマート制御部1に信号が入力されると、メイン処理1dにおいて処理はステップ325に進む。ステップ325では、スマート制御部1は、第2FFT処理1bに対して、FFT処理を開始するよう指令する。すると、第2FFT処理1bにおいてスマート制御部1は、A/Dコンバータ53から入力されたデジタルのキャリア変調信号の取得およびFFTを開始する。このとき、まだLF変調部3ではLFキャリア信号45の送信が継続中である。
その後、時刻t4において、第1実施形態と同じ理由で、第1FFT処理1aにおけるローカルキャリア信号のFFTおよび第2FFT処理1bにおけるキャリア変調信号のFFTが完了する。そして、ローカルキャリア信号の周波数毎の信号強度分布が、第1FFT処理1aからメイン処理1dに渡され、キャリア変調信号の周波数毎の信号強度分布が、第2FFT処理1bからメイン処理1dに渡される。
また、LF変調部3でLFキャリア信号の送信が終了した時刻t4において、メイン処理1dは、ステップ330で、ローカルキャリア信号の周波数毎の信号強度分布に基づいて、ローカルキャリア信号の周波数であるローカルLF周波数F1を、第1実施形態のステップ135と同じ方法で検出する。
更にステップ335で、キャリア変調信号47の周波数毎の信号強度分布に基づいて、ピーク値(信号強度の極大値)となる周波数を複数個検出し、それらのうち、信号強度が最も高い2個のピーク値について、周波数の差を検出し、それをピーク周波数間隔F2として検出する。
続いてステップ340では、検出したローカルLF周波数F1と、ピーク周波数間隔F2について、F1=(F2)/2の関係が成り立っているか否かを判定する。この判定方法も、第1実施形態のステップ145と同じである。
本事例では、RA中継器が車載システム10と携帯機20の間の通信に介入していないので、ピーク周波数間隔F2は、車載システム10から送信されたLFキャリア信号45(第1のキャリア信号の一例に相当する)の周波数F1の2倍になっている。したがって、F1=(F2)/2の関係が成り立つと判定され、処理はステップ345に進む。ステップ340からステップ345に進むことは、スマート駆動を(アンサー信号48が正規であるという条件付きで)許可することに相当する。
ステップ345では、第1実施形態のステップ150と同じ方法で、リレーステーションアタックの介入がないと判定する。続いてステップ350では、所定のリクエストデータを作成し、このリクエストデータを出力するようデータ出力処理1cに指令する。するとデータ出力処理1cは、このリクエストデータをLF変調部3に出力する。これにより、LF変調部3が、LFキャリア発振器6からのLFキャリア信号を用いてリクエストデータを変調し、変調した結果の信号であるリクエスト信号41(図6参照)を、LF送信アンテナ2を用いて無線送信する。リクエスト信号46の送信開始時刻t4から送信完了時刻t5までの時間(送信時間)は、数ミリ秒から50ミリ秒の範囲内のいずれかである。続いてステップ355では、アンサーデータをRF復調部5から取得するまで待つ。
一方、携帯機20では、携帯側制御部28が、ステップ255で、切替回路27からRF変調部25へのLFキャリア信号45の出力が終了するまで待機し、出力が終了すると、切替回路27をデータ出力状態に切り替えた上でステップ260に進み、LF復調部23からリクエストデータが入力され始めるまで待ち、入力され始めると、ステップ260に進み、リクエストデータを取得する。
リクエストデータの取得が完了すると、続いてステップ265に進み、取得したリクエストデータが正規なものか否かを判別するために、リクエストデータと、あらかじめ記憶媒体に記憶されている正規リクエストデータとを照合し、続いてステップ270で、取得したリクエストデータと正規リクエストデータが一致するか否かを、すなわち、取得したリクエストデータが正規のものであるか否かを、判定する。
本事例では、リクエストデータは正規の車載システム10から受信したものなので、ステップ270では、リクエストデータが正規のものであると判定し、ステップ275に進む。
なお、本事例と違い、正規でない車載システム10または他の通信機器から信号を携帯機20が受信した場合は、ステップ270では、当該リクエストデータが正規のデータでないと判定する。その場合、アンサーデータを出力しないまま処理はステップ250に戻る。したがって、携帯機20から車載システム10にアンサー信号が無線送信されず、車載システム10においてスマート駆動も実行されない。
本事例の説明に戻り、そしてステップ275では、所定のアンサーデータを切替回路27に出力する。これにより、RF変調部25は、RFキャリア発振器26からのRFキャリア信号で当該アンサーデータをBPSK変調し、変調後の信号(すなわち、アンサー信号48)を、RF送信アンテナ24から無線送信し、処理をステップ250に戻す。アンサー信号48の送信時間は、数ミリ秒から100ミリ秒の範囲内のいずれかである。
一方、車載システム10では、上記のように携帯機20から送信されたアンサー信号48が、RF復調部5によって無線受信され、増幅、不要な周波数のフィルタリング、ダウンコンバート、A/D変換、BPSK復調されて、スマート制御部1に対して入力される。
するとスマート制御部1は、メイン処理1dのステップ355で、当該アンサーデータを取得してステップ360に進む。ステップ360、365、370の処理内容については、第1実施形態のステップ160、165、170の処理内容と同様である。つまり、取得したアンサーデータが正規なもであればスマート駆動を行って図9の処理を終了し、正規なものでなければスマート駆動を行わずに禁止して処理をステップ305に戻す。
以上のように、車載システム10から携帯機20にLFキャリア信号(第1のキャリア信号の一例に相当する)を送信し、携帯機20がこのLFキャリア信号をRFキャリア信号(第2のキャリア信号の一例に相当する)で変調し、キャリア変調信号として車載システム10に返す場合、本事例のようにリレーステーションアタックの介入がない場合は、車載システム10から送信するLFキャリア信号の周波数と、携帯機20が受信するキャリア変調信号に含まれるLFキャリア信号45の周波数は同じはずである。したがって、F1=(F2)/2の関係が成り立ち、スマート制御部1は、スマート駆動を許可することができる。
ここで、図1(b)、(c)のように、リレーステーションアタックが介入した事例(介入の方法は第1実施形態と同じ)について、リレーステーションアタックが介入していない事例との違いを中心に説明する。
本事例においては、車載システム10から送信されたLFキャリア信号45(図9のステップ310参照)は、中継器94でRF帯域に周波数アップコンバートされ、更に中継器95でLF帯域に周波数ダウンコンバートされる。このとき、第1実施形態で説明した通り、中継器94、95でアップコンバートおよびダウンコンバートされた後のLFキャリア信号45の周波数が、アップコンバート前の周波数に対して僅かにずれてしまう。
一方、携帯機20では、周波数がずれてしまったLFキャリア信号45を受信し、切替回路27およびRF変調部25を経て、このキャリア信号45を変調してキャリア変調信号47として無線送信し(図10ののステップ255参照)、その後、リクエストデータを取得し(ステップ265)、リクエストデータが正規のものであると判定し(ステップ270)、アンサー信号48を無線送信する(ステップ275)。
そのようにして携帯機20から無線送信されてアンプ・フィルタ・D/C部51で周波数ダウンコンバートした後のキャリア変調信号47は、第1実施形態において図7(c)で示したように、強度が最も高い2つのピーク間84、85間の周波数間隔が、134kHz×2=268kHzからずれてしまう。
したがって、スマート制御部1は、ステップ330で検出したローカルLF周波数F1と、ステップ335で検出したピーク周波数間隔F2とを用いて、ステップ340でF1と(F2)/2が同じであるか否か比較するが、リレーステーションアタックが介入している本事例では、同じでないと判定し、処理をステップ375に進める。処理をステップ340からステップ375に進めることは、スマート駆動を許可せず禁止することに相当する。
ステップ375では、リレーステーションアタックの介入があると判定する。具体的には、上述したRAフラグの値をオンにセットする。ステップ375の後、処理はステップ105に戻る。なお、スマート制御部1は、RAフラグの値がオンになったことに基づいて、車両外に警告報知を行うため、車両のホーンを吹鳴させる等の制御を行うようになっていてもよい。
このように、リレーステーションアタックが介入すると、車載システム10から送信するLFキャリア信号45の周波数に対し、携帯機20で受信するLFキャリア信号45の周波数が、ずれてしまう。したがって、周波数がずれた状態のLFキャリア信号45が変調されたキャリア変調信号47を車載システム10が受信し、そのキャリア変調信号に含まれるLFキャリア信号45の周波数を、ローカルキャリア信号の周波数と比較しても、同じとはならない。
本実施携帯においては、このような特性を利用して、ローカルキャリア信号の周波数と、キャリア変調信号47に含まれるLFキャリア信号45の周波数とが一致している場合には、リレーステーションアタックの介入がないと判定してスマート駆動を許可し、一致しない場合には、リレーステーションアタックの介入があると判定してスマート駆動を許可しない。このようにすることで、リレーステーションアタックの遅延時間にかかわらず、リレーステーションアタックの介入の有無を判定することができる。
また、車載システム10は、LFキャリア信号45を出力したキャリア発振器6から出力されるキャリア信号を用いて、リクエストデータを変調し、変調後の信号をリクエスト信号として無線送信する。このようになっていることで、リクエスト信号を生成するためのキャリア発振器と、LFキャリア信号45を出力するためのキャリア発振器とを、1つにまとめることができるので、車載システム10の部品点数を少なくすることができる。
また、携帯機20において、LFキャリア信号45を変調するために用いたRFキャリア信号の発振器と、アンサーデータを変調してアンサー信号48とするために用いるキャリア信号の発振器とは、同じ発振器26である。このようになっていることで、アンサー信号48を生成するためのキャリア発振器と、キャリア変調信号47を出力するためのキャリア発振器とを、1つにまとめることができるので、携帯機20の部品点数を少なくすることができる。
また、本実施形態の車載システム10は、まずLFキャリア信号45の無線送信を開始し、LFキャリア信号45の無線送信の開始と共に、LFキャリア信号45をローカルキャリア信号として取得し始め、携帯機20は、LFキャリア信号45の受信と、LFキャリア信号45の変調と、キャリア変調信号47の無線送信と、を開始し、車載システム10は、キャリア変調信号47を受信し、取得したローカルキャリア信号の周波数と、受信したキャリア変調信号47に含まれるLFキャリア信号45の周波数とが一致しているか否か判定し、一致していると判定した場合は、スマート駆動を許可し、一致していないと判定した場合は、スマート駆動を許可しない。
そして車載システム10は、スマート駆動を許可する場合は、LFキャリア信号45の無線送信を終了した後に、リクエスト信号46を無線送信し、携帯機20は、リクエスト信号46を無線受信したことに基づいて、アンサー信号48を無線送信し、車載システム10は、アンサー信号を無線受信したことに基づいて、スマート駆動を実行する。
このように、リクエスト信号46の送信前にLFキャリア信号45を送信することで、通信の最初に車載システム10から送信するバースト信号を、LFキャリア信号45が兼ねることができる。なお、バースト信号は、携帯機20のLF復調部23が安定して復調を行うために、車載システム10から携帯機20に送信する信号の先頭に付与される無辺長信号であり、スマートシステムにおいては、バースト信号を車載システム10から携帯機20に送信することが従来から行われている。
本実施形態のように、LFキャリア信号45がバースト信号としても機能すれば、例えば、第1実施形態において、リクエスト信号41の前にバースト信号を無線送信する場合と比べれば、全体としての通信時間が短縮し、車載システム10と携帯機20の間の通信のレスポンスが向上する。
また、車載システム10は、スマート駆動を許可しない場合は、LFキャリア信号45の無線送信を終了した後に、リクエスト信号46を無線送信しない。また、リクエスト信号46が送信されないので、携帯機20からはアンサー信号48も送信されない。したがって、スマート駆動を許可しない場合に、無駄なリクエスト信号46およびアンサー信号48の送信を行う必要がなく、その分電力消費を抑えられる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について、第1実施形態との違いを中心に説明する。本実施形態における車載システム10および携帯機20の構成は、第1実施形態と同じである。本実施形態が第1実施形態と異なるのは、キャリア変調信号、アンサー信号の送信タイミング、ならびに、それら送信タイミングを実現するための携帯側制御部28の処理内容である。
図12に、本実施形態における携帯側制御部28の処理のフローチャートを示す。また、図13に、LF帯域でやりとりされる信号とRF帯域でやりとりされる信号(リクエスト信号41、LFキャリア信号42、キャリア変調信号49、アンサー信号44)のタイミング図を示す。なお、本実施形態における車載システム10の作動は、キャリア信号49を受信し始めるタイミングが第1実施形態よりも遅いこと以外は、第1実施形態と同じである。したがって、メイン処理1dのフローチャートは、図4と同じになる。
以下、本実施形態のスマートシステムの作動について、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。まず、図1(a)に示すように、携帯機20を有するユーザ91が、車両に近づき、車載システム10の通信可能範囲53に携帯機20が入った場合の事例について説明する。
携帯機20の携帯側制御部28は、携帯機20が信号を受信するまで(すなわち携帯機20のLF復調部23が所定の強度以上の信号を受信するまで)は、図12のステップ405で、LF帯域の信号を取得するまで待機している。このとき切替回路27は、第1実施形態と同様、データ出力状態としている。また、車載システム10のスマート制御部1は、メイン処理1dにおいて、ステップ105で、送信タイミングが訪れるまで待機する。
送信タイミングが訪れると、続いてステップ110に進み、所定のリクエストデータを作成し、このリクエストデータを出力するようデータ出力処理1cに指令する。これにより、LF変調部3が、LFキャリア発振器6からのLFキャリア信号を用いてリクエストデータを変調し、変調した結果の信号であるリクエスト信号41(図13参照)を、LF送信アンテナ2を用いて無線送信する。リクエスト信号の送信開始から送信完了までの時間(送信時間)は、数ミリ秒から50ミリ秒の範囲内のいずれかである。
このとき携帯機20では、リクエスト信号41がLF受信アンテナ21で受信され、アンプ22を経てLF復調部23および切替回路27に入力されるが、切替回路27はデータ出力状態にあるので、リクエスト信号41は切替回路27からRF変調部25には入力されない。
LF復調部23は、入力されたリクエスト信号41を復調してリクエストデータを取得し、取得したリクエストデータを携帯側制御部28に入力する。携帯側制御部28は、リクエストデータの入力が始まると、ステップ410に進み、入力されたリクエストデータを取得する。そしてリクエストデータの取得が終了した時点t1(図13参照)で、ステップ415に進み、取得したリクエストデータが正規なものか否かを判別するために、当該リクエストデータと、あらかじめ記憶媒体に記憶されている正規リクエストデータとを照合し、続いてステップ420で、取得したリクエストデータと正規リクエストデータが一致するか否かを、すなわち、取得したリクエストデータが正規のものであるか否かを、判定する。
本事例では、リクエストデータは正規の車載システム10から受信したものなので、ステップ420では、リクエストデータが正規のものであると判定し、ステップ425に進む。
なお、本事例と違い、正規でない車載システム10または他の通信機器から信号を携帯機20が受信した場合は、LF復調部23の復調によって得たリクエストデータは、正規のものでないので、ステップ420では、当該リクエストデータと正規リクエストデータとが一致せず、当該リクエストデータが正規のデータでないと判定する。その場合、アンサーデータを出力しないまま処理はステップ405に戻る。したがって、携帯機20から車載システム10にアンサー信号が無線送信されず、車載システム10においてスマート駆動も実行されない。
本事例の説明に戻る。メイン処理1dにおいてスマート制御部1は、データ出力処理1cがリクエストデータの出力を終了した時点t1において、ステップ115に進み、LFキャリアの出力を開始するための制御を、第1実施形態と同様に行う。これにより、LF変調部3は、LF送信アンテナ2を用いて無変調波であるLFキャリア信号42を無線送信し始める。
なお、データ出力処理1cおよびLF変調部3によるこのLFキャリア信号42の送信は、時刻t1から時刻t2までの期間(例えば、数ミリ秒)続ける。この時刻t1から時刻t2までの期間は、第1実施形態では、第1FFT処理1aおよび第2FFT処理1bのFFT時間と同じ長さであったが、本実施形態では、当該FFT時間よりも、後述する期間Dだけ長い。
そして、LF変調部3がLFキャリア信号を無線送信し始めてすぐに、メイン処理1dでは、ステップ120に進み、第1FFT処理1aに対して、FFT処理を開始するよう指令する。すると、第1FFT処理1aにおいてスマート制御部1は、LFキャリア発振器6からA/Dコンバータ7に入力されてデジタル信号となったLFキャリア信号(第1のキャリア信号の一例に相当する)の取得およびFFTを開始する。メイン処理1dでは続いてステップ125に進み、RF復調部5がRF帯域の信号を受信するまで待機する。
一方、携帯機20において、携帯側制御部28は、既に説明した通り、ステップ420でリクエストデータが正規のものであると判定し、ステップ425に処理を進める。ステップ425に処理を進めた時点は、リクエスト信号41を取得し終えた時刻t1よりも遅い時刻t6である。
この時刻t1から時刻t6までの期間Dは、リクエストデータの認証処理時間である。つまり、この期間Dは、リクエストデータが正規のデータであるか否かの判定を行うのに要する時間である。
ステップ425では、LFキャリア信号の出力を開始するため、切替回路27を切り替えて受信信号出力状態とする。これにより、時刻t1から既にLF受信アンテナ21において受信されてアンプ22を介して切替回路27に入力されていたLFキャリア信号42が、時刻t6において、切替回路27からRF変調部25に入力され始める。そして、RF変調部25は、RFキャリア発振器26からのRFキャリア信号(第2のキャリア信号の一例に相当する)を用いてLFキャリア信号42をBPSK変調する。そして、変調された結果の信号であるキャリア変調信号49をRF送信アンテナ24に出力することで、RF送信アンテナ24からRF帯域のキャリア変調信号49が無線送信される。このキャリア変調信号49には、第1実施形態で説明した通り、LFキャリア信号42の情報(より具体的には、LFキャリア信号42の周波数の情報)が含まれている。
そして、ステップ425では、切替回路27からRF変調部25へのLFキャリア信号42の出力が終了するまで待機する。LFキャリア信号42の出力が終了したか否かは、ステップ425で切替回路27を受信信号出力状態に切り替えた時点から、あらかじめ定められて記憶媒体(例え携帯側制御部28のROM)に記憶されたキャリア変調信号49の送信時間が経過したか否かで判定する。なお、このキャリア変調信号49の送信時間は、LFキャリア信号42の送信時間よりも期間Dだけ短く設定されている。
あるいは、LFキャリア信号42の出力が終了したか否かについては、アンプ22から切替回路27に印加される電圧を検出し、その電圧が一定期間(例えば、134kHzのキャリア信号の1周期分の時間)ゼロとなったら、LFキャリア信号42の出力が終了したと判定するようになっていてもよい。
一方、車載システム10では、スマート制御部1のメイン処理1dにおいて、LFキャリア信号42の送信を開始した後、ステップ120を経てステップ125で、RF復調部5による無線受信があるまで待機しており、上述の通り、時刻t6において、携帯機20からキャリア変調信号49が送信される。そして、RF復調部5は、RF受信アンテナ4を介してこのキャリア変調信号49を受信し、アンプ・フィルタ・D/C部51で増幅、不要な信号のフィルタリング、およびIFへの周波数ダウンコンバートを行い、A/Dコンバータ53がA/D変換してスマート制御部1とBPSK復調部52に入力し、BPSK復調部52がBPSK復調してスマート制御部1に出力する。
このようにスマート制御部1に信号が入力されると、メイン処理1dにおいて処理はステップ130に進む。ステップ130では、スマート制御部1は、第2FFT処理1bに対して、FFT処理を開始するよう指令する。
すると、第2FFT処理1bにおいてスマート制御部1は、A/Dコンバータ53から入力されたデジタルのキャリア変調信号の取得およびFFTを開始する。このとき、まだLF変調部3ではLFキャリア信号の送信が継続中である。
その後、時刻t2において、LF変調部3でLFキャリア信号42の送信が終了するが、その時刻t2の前に、第1FFT処理1aにおけるローカルキャリア信号のFFTが完了する。これは、本実施形態では、FFT時間よりも期間Dの方が短く、かつ、FFT時間よりも時刻t1からt2までの期間の方が長いからである。第1FFT処理1aにおけるローカルキャリア信号のFFTが完了すると、FFTの結果得たローカルキャリア信号の周波数毎の信号強度分布が、第1FFT処理1aからメイン処理1dに渡される。
その後、時刻t2において、LF変調部3でLFキャリア信号の送信が終了する。その時点t2において、第2FFT処理1bにおけるキャリア変調信号のFFTが完了する。これは、FFT時間が時刻t6から時刻t2までの期間と同じ長さだからである。第2FFT処理1bにおけるキャリア変調信号のFFTが完了すると、FFTの結果得たキャリア変調信号の周波数毎の信号強度分布が、第2FFT処理1bからメイン処理1dに渡される。
また、LF変調部3でLFキャリア信号の送信が終了した時刻t2において、携帯機20では、切替回路27からRF変調部25へのLFキャリア信号42の出力が終了するので、携帯側制御部28は、処理をステップ430に進める。
そして、ステップ430で、切替回路27をデータ出力状態に切り替え、所定のアンサーデータを作成し、作成したアンサーデータを切替回路27に出力する。これにより、切替回路27は、当該アンサーデータをRF変調部25に出力し、RF変調部25は、RFキャリア発振器26からのRFキャリア信号で当該アンサーデータをBPSK変調し、変調後の信号(すなわち、アンサー信号44)を、RF送信アンテナ24から無線送信し、処理をステップ205に戻す。アンサー信号44の送信時間は、数ミリ秒から100ミリ秒の範囲内のいずれかである。
一方、車載システム10においては、LF変調部3でLFキャリア信号の送信が終了した時刻t2以降の作動(メイン処理1dについては、ステップ135以降の処理)は、第1実施形態における説明と同じである。
ここで、図1(b)、(c)のように、リレーステーションアタックが介入した事例について、リレーステーションアタックが介入していない事例との違いを中心に説明する。本事例においては、携帯機20を携帯するユーザ91は、リクエスト信号の到達範囲内53の範囲内に入っていないが、車両または車両内の物を窃盗しようと企てるグループが、RA中継器94をリクエスト信号の通信可能範囲53内に配置し、RA中継器95を携帯機20の近傍に配置する。これにより、車載システム10から送信されたリクエスト信号が、RA中継器94、95で中継され、携帯機20に届くようになる。
この場合、車載システム10からリクエスト信号が無線送信され、LFキャリア信号42が無線送信され始めるまで(メイン処理1dの処理で言えばステップ125まで)は、リレーステーションアタックの介入がない場合の事例と同じである。また、携帯機20でリクエスト信号を受信し、受信したリクエスト信号中のリクエストデータが正規のデータであると判定するまで(携帯側制御部28の処理で言えばステップ425に進むまで)は、リレーステーションアタックの介入がない場合の事例と同じである。
しかし、リレーステーションアタックが介入する本事例では、送信されたLFキャリア信号42は、中継器94でRF帯域に周波数アップコンバートされ、更に中継器95でLF帯域に周波数ダウンコンバートされることで、LFキャリア信号42の周波数が、アップコンバート前の周波数に対して僅かにずれてしまう。
一方、携帯側制御部28がステップ425に進んだ段階で、携帯機20は、リレーステーションアタックの介入により周波数がずれてしまったLFキャリア信号42を受信し、切替回路27およびRF変調部25を経て、このキャリア信号42を変調してキャリア変調信号として無線送信する。
そのようにして携帯機20から無線送信されてアンプ・フィルタ・D/C部51で周波数ダウンコンバートした後のキャリア変調信号49は、強度が最も高い2つのピーク間の周波数間隔が、134kHz×2=268kHzからずれてしまう。
したがって、スマート制御部1は、ステップ135で検出したローカルLF周波数F1と、ステップ145で検出したピーク周波数間隔F2とを用いて、ステップ145でF1と(F2)/2が同じであるか否か比較するが、リレーステーションアタックが介入している本事例では、同じでないと判定し、処理をステップ175に進める。処理をステップ145からステップ175に進めることは、スマート駆動を許可せず禁止することに相当する。
ステップ175では、リレーステーションアタックの介入があると判定する。具体的には、上述したRAフラグの値をオンにセットする。ステップ175の後、処理はステップ105に戻る。なお、スマート制御部1は、RAフラグの値がオンになったことに基づいて、車両外に警告報知を行うため、車両のホーンを吹鳴させる等の制御を行うようになっていてもよい。
このようになっていることで、本実施形態は、第1実施形態と同様の効果を発揮する。ただし、本実施形態では、図12、図13に示すように、LFキャリア信号42を含んだキャリア変調信号49を送信し始めるタイミング(ステップ425、t6)よりも先に、受信したリクエストデータの認証を行い(ステップ410〜420、時刻t1〜t6)、認証が終了し、正規のリクエストデータであると判定した場合に限り、初めて、キャリア変調信号49を送信し始める。
つまり、携帯機20は、リクエスト信号41を無線受信し、リクエスト信号41を無線受信し終えた後に、リクエスト信号41に含まれるリクエストデータが正規のデータであるか否かを判定し、正規のデータであると判定したことに基づいて、LFキャリア信号42の変調と、キャリア変調信号43の無線送信とを開始し、正規のデータでないと判定したことに基づいて、キャリア変調信号43の無線送信を行わず、かつ、アンサー信号44の無線送信も行わない。したがって、リクエストデータが正規のものでないと判定した場合は、キャリア変調信号43を送信しなくて済むので、無駄な電力の節約になる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について、第1実施形態との違いを中心に説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して、RF帯域の通信の変調方式および復調方式が異なっており、また、スマート制御部1における、キャリア変調信号からLFキャリア信号の周波数の情報を取得する方法も異なっている。
図14に、本実施形態のスマートシステムにおける、車載システム10および携帯機20の構成図を示す。車載システム10のハードウェア構成が第1実施形態と異なるのは、RF復調部5のみである。
具体的には、RF復調部5は、第1実施形態と同じアンプ・フィルタ・D/C部51に加え、FM復調部54およびAGC回路55を有している。また、本実施形態においては、RF復調部5はBPSK復調部52を有していない。
FM復調部54は、アンプ・フィルタ・D/C部51から入力された信号をFM復調し、その結果得た信号をスマート制御部1およびAGC回路55に入力する。AGC回路55は、FM復調部54から入力された信号の平均信号レベルを所定の目標レベルに維持するよう増幅し、増幅された信号をスマート制御部1に入力する。
また、スマート制御部1のソフトウェア構成も、第1実施形態とは異なる。具体的には、本実施形態では、第1FFT処理1aおよび第2FFT処理1bが存在しない。また、メイン処理1dの処理内容も、第1実施形態とは異なる。図15に、本実施形態におけるメイン処理1dの処理内容を示す。なお、データ出力処理1cの処理内容は第1実施形態と同じである。
携帯機20のハードウェア構成が第1実施形態と異なるのは、RF変調部25がFM変調部29に置き換わっていることのみである。FM変調部29は、切替回路27から出力された信号をRF帯域の信号にFM変調してRF送信アンテナ24に出力する回路である。なお、本実施形態における携帯側制御部28の処理のフローチャートは、第1実施形態で示した図5と同じである。
以下、本実施形態のスマートシステムの作動について、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。まず、図1(a)に示すように、携帯機20を有するユーザ91が、車両に近づき、車載システム10の通信可能範囲53に携帯機20が入った場合の事例について説明する。
携帯機20の携帯側制御部28は、図5のステップ205で、LF帯域の信号を取得するまで待機している。このとき、切替回路27は、データ出力状態(携帯側制御部28から切替回路27に入力された信号をFM変調部29に出力し、アンプ22から切替回路27に入力された信号を切替回路27に入力しない状態)となっている。また、車載システム10のスマート制御部1は、メイン処理1dにおいて、ステップ605で、第1実施形態のステップ105と同じ方法で、送信タイミングが訪れるまで待機する。
送信タイミングが訪れると、続いてステップ610に進み、第1実施形態のステップ110と同じ方法で、リクエストデータを出力するようデータ出力処理1cに指令する。これにより、LF変調部3が、リクエスト信号41(図6参照)を、LF送信アンテナ2を用いて無線送信する。リクエスト信号の送信開始から送信完了までの時間(送信時間)は、数ミリ秒から50ミリ秒の範囲内のいずれかである。
このとき携帯機20では、LF受信アンテナ21がリクエスト信号41を受信し、アンプ22でこのリクエスト信号41が増幅される。増幅されたリクエスト信号41は、LF復調部23および切替回路27に入力されるが、切替回路27はデータ出力状態にあるので、リクエスト信号41は切替回路27からFM変調部29には入力されない。LF復調部23は、入力されたリクエスト信号41を復調してリクエストデータを取得し、取得したリクエストデータを携帯側制御部28に入力する。
携帯側制御部28は、リクエストデータの入力が始まると、ステップ210に進み、入力されたリクエストデータを取得する。そしてリクエストデータの取得が終了した時点t1(図6参照)で、ステップ215に進み、LFキャリア信号の出力を開始するため、切替回路27を切り替えて、受信信号出力状態(携帯側制御部28から切替回路27に入力された信号をFM変調部29に出力せず、アンプ22から切替回路27に入力された信号を切替回路27に入力する状態)とする。
また、メイン処理1dにおいてスマート制御部1は、データ出力処理1cがリクエストデータの出力を終了した時点t1において、ステップ615に進み、LFキャリアの出力を開始するための制御を、第1実施形態のステップ115と同じ方法で行う。これにより、LF送信アンテナ2から無変調波であるLFキャリア信号42が無線送信され始める。なお、データ出力処理1cおよびLF変調部3によるこのLFキャリア信号42の送信は、時刻t1から時刻t2までの期間(例えば、数ミリ秒)続ける。このLFキャリア信号42の送信時間(時刻t1から時刻t2までの期間)は、あらかじめ記憶媒体に記録されている値に従って決まる。
そして、LF変調部3がLFキャリア信号を無線送信し始めてすぐに、メイン処理1dでは、ステップ620に進み、LFキャリア発振器6からA/Dコンバータ7に入力されてデジタル信号となったLFキャリア信号(第1のキャリア信号の一例に相当する)の取得を開始する。このとき、まだLF変調部3ではLFキャリア信号の送信が継続中なので、A/Dコンバータ7から取得するLFキャリア信号(ローカルキャリア信号)は、無線送信に用いられているLFキャリア信号42と同じ信号であり、当然、周波数も同じである。メイン処理1dでは続いてステップ625に進み、RF復調部5がRF帯域の信号を受信するまで待機する。
一方、携帯機20では、切替回路27が受信信号出力状態になっているので、LF送信アンテナ2で受信されたLFキャリア信号42がアンプ22で増幅されてFM変調部29に入力される。そして、FM変調部29は、RFキャリア発振器26からのRFキャリア信号(第2のキャリア信号の一例に相当する)を用いてLFキャリア信号42をFM変調する。そして、変調された結果の信号であるキャリア変調信号をRF送信アンテナ24に出力することで、RF送信アンテナ24からRF帯域のキャリア変調信号が無線送信される。このキャリア変調信号は、LFキャリア信号42がFM変調されたのだから、LFキャリア信号42の情報(より具体的には、LFキャリア信号42の周波数の情報)が含まれている。
なお、RF送信アンテナ24からキャリア変調信号が送信されている間に、携帯側制御部28では、ステップ215に続くステップ220、225で、第1実施形態と同様、取得したリクエストデータが正規なものか否かを判定する。本事例では、リクエストデータは正規の車載システム10から受信したものなので、ステップ225では、リクエストデータが正規のものであると判定し、ステップ230に進む。なお、本事例と違い、正規でない車載システム10または他の通信機器から信号を携帯機20が受信した場合の携帯側制御部28の作動は、第1実施形態と同じである。
ステップ225でリクエストデータが正規のものであると判定し、ステップ230に進むと、切替回路27からFM変調部29へのLFキャリア信号42の出力が終了するまで待機する。LFキャリア信号42の出力が終了したか否かは、第1実施形態と同じ方法で判定する。
一方、車載システム10では、スマート制御部1のメイン処理1dにおいて、LFキャリア信号42の送信を開始した後、ステップ620を経てステップ625で、RF復調部5による無線受信があるまで待機するが、上述の通り、車載システム10がLFキャリア信号42の送信を開始してすぐ、携帯機20からキャリア変調信号43が送信される。そして、RF復調部5は、RF受信アンテナ4を介してこのキャリア変調信号43を受信し、アンプ・フィルタ・D/C部51で増幅、不要な信号のフィルタリング、およびIFへの周波数ダウンコンバートを行い、FM復調部54でFM復調する。そして、FM復調された結果、LFキャリア信号42が復元され、そのLFキャリア信号42がスマート制御部1およびAGC回路55に入力される。そして、AGC回路55からは、平均信号レベルが所定レベルになるよう増幅されたLFキャリア信号42(AGC後のLFキャリア信号42)が、スマート制御部1に入力され始める。
このようにスマート制御部1に信号が入力されると、メイン処理1dにおいて処理はステップ630に進む。ステップ630では、スマート制御部1は、AGC後のLFキャリア信号42を取得し始める。このとき、まだLF変調部3ではLFキャリア信号の送信が継続中である。
その後、時刻t2において、LF変調部3でLFキャリア信号42の送信が終了すると、ほぼ同時に携帯機20からのキャリア変調信号43の送信も終了する。その時刻t2において、スマート制御部1におけるローカルキャリア信号の取得が終了すると共に、AGC後のLFキャリア信号42の取得も終了する。これは、ステップ620および635におけるローカルキャリア信号およびAGC後のLFキャリア信号42の信号取得時間の長さが、LF変調部3から送信されるLFキャリア信号42の長さ(数ミリ秒)と同じに設定されているからである。
ローカルキャリア信号とAGC後のLFキャリア信号42の取得が完了すると、ステップ635で、ローカルキャリア信号をAGC後のLFキャリア信号42に乗算する。そしてステップ640で、乗算後の信号のうち、不要な周波数成分を除去するため、ローパスフィルタ処理する。例えば、乗算後の信号のうち、LFキャリア信号42の周波数より低い周波数の成分のみを残し、LFキャリア信号42の周波数より高い周波数の成分を除去するようなローパスフィルタ処理を行う。
本事例では、ローカルキャリア信号と、AGC後のLFキャリア信号42は、共に同じ周波数のキャリア信号であるから、乗算およびローパスフィルタ処理の結果、図16(a)に示すように、直流信号61(すなわち、レベルが経時変化しない信号)を得る。
続いてステップ645では、乗算およびローパスフィルタ処理の結果得た信号が、直流信号であるか否かを判定する。本事例では、結果の信号は上述の通りなので、直流信号であると判定し、処理をステップ650に進める。ステップ645からステップ650に進むことは、スマート駆動を(アンサー信号が正規であるという条件付きで)許可することに相当する。
ここで、乗算およびローパスフィルタ処理の結果得た信号(以下、乗算信号という)が直流信号であるか否かの判定についてより詳しく説明する。まず、この判定における誤差要因とその影響について説明する。
(要因1)LFキャリア信号の出力開始時(LFキャリア発振器6への電源印加直後)、LFキャリア発振器6からのLFキャリア信号が、出力開始時(LFキャリア発振器6への電源印加直後)に安定せず周波数が時間的に変動する場合がある。これが、リレーステーションアタックの介入がないのに乗算信号が直流でなくなる要因となる可能性がある。この要因に対しては、スマート制御部1において、LFキャリア発振器6からのLFキャリア信号が安定した時間におけるローカルキャリア信号およびAGC後のLFキャリア信号42を用いて乗算およびローパスフィルタ処理を行えば、乗算信号が直流でなくなる要因とはならない。
(要因2)RFキャリア発振器26からのRFキャリア信号の周波数が時間的に変動することは、リレーステーションアタックの介入がないのに乗算信号が直流でなくなる要因とはならない。なぜなら、FM復調によってLFキャリア信号42を復元することができるので、RFキャリア信号の周波数は、乗算信号に影響を与えないからである。
(要因3)携帯機20が車載システム10に対して移動する場合、ドップラー効果によって、車載システム10から送信するLFキャリア信号の周波数に対し、携帯機20で受信するLFキャリア信号の周波数がずれる。これが、リレーステーションアタックの介入がないのに乗算信号が直流でなくなる要因となる可能性がある。しかし、LFキャリア信号の周波数を100kHzと仮定し、車載システム10に対する携帯機20の移動速度を10km/hと仮定した場合、周波数のずれは1mHzと非常に小さく、無視できる程度である。したがって、要因3は無視できる。
次に、直流であるか否かの判定アルゴリズムの例について説明する。リレーステーションアタックによって、ローカルキャリア信号とAGC後のLFキャリア信号42との間に発生すると想定される周波数ずれの最小値をMヘルツ(例えば100Hz)とすると、Nヘルツ以上の正弦波を見極めるために、1/2波長、つまり1/2N秒(例えば5ミリ秒)の時間を信号取得時間とする。このようにすることで、信号取得時間内にNヘルツ以上の正弦波の最大値又は最小値を必ず取得できるため、振幅変化が得られやすく、直流信号との差を見極めやすい。
そして、信号取得期間における乗算信号の振幅の平均値をPとし、最大値をMaxとし、最小値をMinとすると、|P−Max|がゼロである場合に直流信号であると判定し、|P−Max|がゼロでない場合に直流信号でないと判定してもよい。あるいは、|P−Min|がゼロである場合に直流信号であると判定し、|P−Min|がゼロでない場合に直流信号でないと判定してもよい。あるいは、|P−Max|がゼロであり且つ|P−Min|がゼロである場合に直流信号であると判定し、それ以外のときに直流信号でないと判定してもよい。
なお、上記要因1〜3について説明した通り、リレーステーションアタックなしのときにローカルキャリア信号とAGC後のLFキャリア信号42との間に周波数ずれが発生する可能性はほぼゼロなので、乗算信号の振幅が別の要因で変化する場合はあるかないかを検討する。これは、外来ノイズ、基板ノイズの影響を無視すると、振幅の精度に依存する。例えば、スマート制御部1で乗算信号を得る場合、ローカルキャリア信号とAGC後のLFキャリア信号42をA/D変換して得るため、A/D変換の精度による。例えば振幅5Vp−pを12bit精度でA/D変換すると、信号レベルの分解能は理想的には5/212=1.2mVとなるため、|P−Max|および|P−Min|の演算制度は1.2mVとなる。(有効精度の考えは除く)。
一方、携帯機20では、携帯側制御部28は、キャリア変調信号43の送信が完了するタイミング(時刻t2)で、ステップ230においてLFキャリア信号の切替回路27からFM変調部29への出力が終了したと判定し、ステップ235に処理を進め、第1実施形態と同じアンサー信号出力処理を行う。これにより、FM変調部29がRF送信アンテナ24を用いてアンサー信号を無線送信し、処理をステップ205に戻す。
一方車載システム10においては、ステップ650以降のメイン処理1dの処理内容およびスマート制御部1の作動は、第1実施形態と同じである。なお、ステップ650、655、660、665、670の処理は、それぞれ、図4の150、155、160、165、170と同じである。
ここで、図1(b)、(c)のように、リレーステーションアタックが介入した事例について、リレーステーションアタックが介入していない事例との違いを中心に説明する。本事例においては、携帯機20を携帯するユーザ91は、リクエスト信号の到達範囲内53の範囲内に入っていないが、車両または車両内の物を窃盗しようと企てるグループが、RA中継器94をリクエスト信号の通信可能範囲53内に配置し、RA中継器95を携帯機20の近傍に配置する。これにより、車載システム10から送信されたリクエスト信号が、RA中継器94、95で中継され、携帯機20に届くようになる。
この場合、車載システム10からリクエスト信号が無線送信され、LFキャリア信号42が無線送信され始めるまで(メイン処理1dの処理で言えばステップ625まで)は、リレーステーションアタックの介入がない場合の事例と同じである。
しかし、リレーステーションアタックが介入する本事例では、送信されたLFキャリア信号42は、中継器94でRF帯域に周波数アップコンバートされ、更に中継器95でLF帯域に周波数ダウンコンバートされることで、LFキャリア信号42の周波数が、アップコンバート前の周波数に対して僅かにずれてしまう。
一方、携帯機20では、リクエスト信号41を受信(図5のステップ205、210参照)した後、リレーステーションアタックの介入により周波数がずれてしまったLFキャリア信号42を受信し、切替回路27およびFM変調部29を経て、このキャリア信号42をFM変調してRF帯域域のキャリア変調信号として無線送信し(図5のステップ215参照)、また、リクエストデータが正規のものであると判定し(ステップ225参照)、キャリア変調信号の送信後に(ステップ230参照)アンサー信号44を無線送信する(ステップ235参照)。
そのようにして携帯機20から無線送信されて車載システム10のRF復調部5でFM復調およびAGC処理された後のLFキャリア信号42は、LF変調部3から送信したときのLFキャリア信号42に対して、周波数ずれが生じてしまっている。
したがって、メイン処理1dにおいてローカルキャリア信号とAGC後のLFキャリア信号42とを乗算し、ローパスフィルタ処理を施した結果の信号は、図16(b)に示すように、その周波数ずれ量に相当する周波数のキャリア信号62となる。
したがって、スマート制御部1は、ステップ645で、ローパスフィルタ処理後の信号が直流でないと判定し、処理をステップ675に進める。処理をステップ645からステップ675に進めることは、スマート駆動を許可せず禁止することに相当する。
ステップ675では、リレーステーションアタックの介入があると判定する。具体的には、上述したRAフラグの値をオンにセットする。ステップ675の後、処理はステップ605に戻る。なお、スマート制御部1は、RAフラグの値がオンになったことに基づいて、車両外に警告報知を行うため、車両のホーンを吹鳴させる等の制御を行うようになっていてもよい。
このように、リレーステーションアタックが介入すると、RA中継器94、95でLFキャリア信号42のアップコンバートおよびダウンコンバートを行う際に、RA中継器94、95に内蔵のキャリア発振器が用いられる。これらRA中継器94、95に内蔵のキャリア発振器は、個体間のばらつきにより、互いに周波数が一致することはほとんどない。したがって、リレーステーションアタックが介入すると、車載システム10から送信するLFキャリア信号42の周波数に対し、携帯機20で受信するLFキャリア信号42の周波数が、ずれてしまう。
したがって、周波数がずれた状態のLFキャリア信号42が変調されたキャリア変調信号43を車載システム10が受信し、そのキャリア変調信号43に含まれるLFキャリア信号42の周波数を、ローカルキャリア信号の周波数と比較しても、同じとはならない。
本実施携帯においては、このような特性を利用して、ローカルキャリア信号の周波数と、キャリア変調信号43に含まれるLFキャリア信号42の周波数とが一致している場合には、リレーステーションアタックの介入がないと判定してスマート駆動を許可し、一致しない場合には、リレーステーションアタックの介入があると判定してスマート駆動を許可しない。このようにすることで、リレーステーションアタックの遅延時間にかかわらず、リレーステーションアタックの介入の有無を判定することができる。その他、本実施形態のスマートシステムは、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について、第4実施形態との違いを中心に説明する。本実施形態における車載システム10および携帯機20の構成は、第4実施形態と同じである。本実施形態が第4実施形態と異なるのは、LFキャリア信号、キャリア変調信号、リクエスト信号、アンサー信号の送信タイミング、ならびに、それら送信タイミングを実現するためのスマート制御部1のメイン処理1dの内容および携帯側制御部28の処理の内容である。
図17に、本実施形態におけるメイン処理1dのフローチャートを示す。また、本実施形態における携帯側制御部28の処理のフローチャートは、図10と同じである。また、LF帯域でやりとりされる信号とRF帯域でやりとりされる信号(LFキャリア信号45、リクエスト信号46、キャリア変調信号47、アンサー信号48)のタイミング図は、図11と同じである。本実施形態では、図11に示すように、車載システム10が、まず先にLFキャリア信号45を送信し、その後に、リクエスト信号を送信する点が、第4実施形態と異なる。以下、本実施形態のスマートシステムの作動について、第4実施形態との違いを中心に説明する。
まず、図1(a)に示すように、携帯機20を有するユーザ91が、車両に近づき、車載システム10の通信可能範囲53に携帯機20が入った場合の事例について説明する。携帯機20の携帯側制御部28は、携帯機20が信号を受信するまで(すなわち携帯機20のLF復調部23が所定の強度以上の信号を受信するまで)は、図10のステップ250で、LF帯域の信号を取得するまで待機している。このとき切替回路27は、第4実施形態と同様、データ出力状態としている。
また、車載システム10のスマート制御部1は、メイン処理1dにおいて、ステップ705で、第4実施形態のステップ605と同様に、送信タイミングが訪れるまで待機する。
送信タイミングが訪れると、続いてステップ710に進み、第4実施形態のステップ615と同じ方法で、LFキャリアの出力を開始するための制御をデータ出力処理1cに対して行う。これにより、第4実施形態と同様、LFキャリア発振器6から出力されたLFキャリア信号45(第1のキャリア信号の一例に相当する)が、LF送信アンテナ2から無線送信され始める。なお、このLFキャリア信号45の送信は、時刻t3から時刻t4までのあらかじめ決められた期間(例えば、数ミリ秒)続ける。
そして、LF変調部3がLFキャリア信号を無線送信し始めてすぐに、メイン処理1dでは、ステップ715に進み、LFキャリア発振器6からA/Dコンバータ7に入力されてデジタル信号となったLFキャリア信号(第1のキャリア信号の一例に相当する)の取得を開始する。このとき、まだLF変調部3ではLFキャリア信号の送信が継続中なので、A/Dコンバータ7から取得するローカルキャリア信号は、無線送信に用いられているLFキャリア信号45と同じ信号であり、当然、周波数も同じである。メイン処理1dでは続いてステップ720に進み、RF復調部5がRF帯域の信号を受信するまで待機する。
一方、携帯機20では、LF受信アンテナ21、アンプ22、LF復調部23がこのLFキャリア信号45を受信し始めると、携帯側制御部28が、ステップ250からステップ255に処理を進め、LFキャリア信号の出力を開始するため、切替回路27を受信信号出力状態に切り替える。すると、LF送信アンテナ2で受信されたLFキャリア信号45がアンプ22で増幅されてFM変調部29に入力される。そして、FM変調部29は、RFキャリア発振器26からのRFキャリア信号(第2のキャリア信号の一例に相当する)を用いてLFキャリア信号45をFM変調する。そして、変調された結果の信号であるキャリア変調信号45をRF送信アンテナ24に出力することで、RF送信アンテナ24からRF帯域のキャリア変調信号47が無線送信される。このキャリア変調信号47は、第4実施形態のキャリア変調信号と同様、LFキャリア信号45の情報(より具体的には、LFキャリア信号45の周波数の情報)が含まれている。
なお、RF送信アンテナ24からキャリア変調信号47が送信されている間、携帯側制御部28は、ステップ255で、切替回路27からRF変調部25へのLFキャリア信号45の出力が終了するまで待機する。LFキャリア信号45の出力が終了したか否かの判定方法は、第4実施形態のステップ230と同じである。
一方、車載システム10では、スマート制御部1のメイン処理1dにおいて、LFキャリア信号45の送信を開始した後、ステップ710を経てステップ720で、RF復調部5による無線受信があるまで待機するが、上述の通り、車載システム10がLFキャリア信号45の送信を開始してすぐ、携帯機20からキャリア変調信号47が送信される。そして、RF復調部5は、RF受信アンテナ4を介してこのキャリア変調信号43を受信し、アンプ・フィルタ・D/C部51で増幅、不要な信号のフィルタリング、およびIFへの周波数ダウンコンバートを行い、FM復調部54がFM復調してLFキャリア信号45を復元し、復元されたLFキャリア信号45がAGC回路55を経てスマート制御部1に入力され始める。
このようにスマート制御部1に信号が入力されると、メイン処理1dにおいて処理はステップ725に進む。ステップ725では、スマート制御部1は、AGC後のLFキャリア信号42を取得し始める。このとき、まだLF変調部3ではLFキャリア信号45の送信が継続中である。
その後、時刻t4において、第4実施形態と同じ理由で、ローカルキャリア信号とAGC後のLFキャリア信号45の取得が完了する。また、LF変調部3でLFキャリア信号45の送信が終了した時刻t4において、メイン処理1dは、ステップ725から730に進み、ローカルキャリア信号をAGC後のLFキャリア信号42に乗算する。そしてステップ735で、第4実施形態のステップ630と同様の方法で、乗算後の信号のうち、不要な周波数成分を除去するため、ローパスフィルタ処理する。
本事例では、ローカルキャリア信号と、AGC後のLFキャリア信号45は、共に同じ周波数のキャリア信号であるから、乗算およびローパスフィルタ処理の結果直流信号(すなわち、レベルが経時変化しない信号)を得る。
続いてステップ740では、乗算およびローパスフィルタ処理の結果得た信号が、直流信号であるか否かを判定する。本事例では、結果の信号は上述の通りなので、直流信号であると判定し、処理をステップ745に進める。ステップ740からステップ745に進むことは、スマート駆動を(アンサー信号48が正規であるという条件付きで)許可することに相当する。
ステップ745では、第4実施形態のステップ650と同じ方法で、リレーステーションアタックの介入がないと判定する。続いてステップ750では、第4実施形態のステップ610と同じ方法で、リクエストデータを出力するようデータ出力処理1cに指令する。すると、リクエストデータがLFキャリア発振器6からのLFキャリア信号によってリクエスト信号46(図6参照)に変調され、LF変調部3がこのリクエスト信号46を、LF送信アンテナ2を用いて無線送信する。リクエスト信号46の送信開始時刻t4から送信完了時刻t5までの時間(送信時間)は、数ミリ秒から50ミリ秒の範囲内のいずれかである。続いてステップ755では、アンサーデータをRF復調部5から取得するまで待つ。
一方、携帯機20では、携帯側制御部28が、ステップ255で、切替回路27からRF変調部25へのLFキャリア信号45の出力が終了するまで待機し、出力が終了すると、切替回路27をデータ出力状態に切り替えた上でステップ260に進み、LF復調部23からリクエストデータが入力され始めるまで待ち、入力され始めると、ステップ260に進み、リクエストデータを取得する。
リクエストデータの取得が完了すると、続いてステップ265に進み、取得したリクエストデータが正規なものか否かを判別するために、リクエストデータと、あらかじめ記憶媒体に記憶されている正規リクエストデータとを照合し、続いてステップ270で、取得したリクエストデータと正規リクエストデータが一致するか否かを、すなわち、取得したリクエストデータが正規のものであるか否かを、判定する。
本事例では、リクエストデータは正規の車載システム10から受信したものなので、ステップ270では、リクエストデータが正規のものであると判定し、ステップ275に進む。なお、本事例と違い、正規でない車載システム10または他の通信機器から信号を携帯機20が受信した場合の作動は、第4実施形態と同様である。
ステップ275では、所定のアンサーデータを切替回路27に出力する。これにより、FM変調部29は、RFキャリア発振器26からのRFキャリア信号で当該アンサーデータをFM変調し、変調後の信号(すなわち、アンサー信号48)を、RF送信アンテナ24から無線送信し、処理をステップ250に戻す。アンサー信号48の送信時間は、数ミリ秒から100ミリ秒の範囲内のいずれかである。
一方、車載システム10では、上記のように携帯機20から送信されたアンサー信号48が、RF復調部5によって無線受信され、増幅、不要な周波数のフィルタリング、ダウンコンバート、A/D変換、FM復調されて、FM復調部54からスマート制御部1に対して入力される。
するとスマート制御部1は、メイン処理1dのステップ755で、当該アンサーデータを取得してステップ760に進む。ステップ760、765、770の処理内容については、第4実施形態のステップ660、665、670の処理内容と同様である。つまり、取得したアンサーデータが正規なもであればスマート駆動を行って図17の処理を終了し、正規なものでなければスマート駆動を行わずに禁止して処理をステップ705に戻す。
以上のように、車載システム10から携帯機20にLFキャリア信号(第1のキャリア信号の一例に相当する)を送信し、携帯機20がこのLFキャリア信号をRFキャリア信号(第2のキャリア信号の一例に相当する)で変調し、キャリア変調信号として車載システム10に返す場合、本事例のようにリレーステーションアタックの介入がない場合は、車載システム10から送信するLFキャリア信号の周波数と、携帯機20が受信するキャリア変調信号に含まれるLFキャリア信号45の周波数は同じはずである。したがって、ローパスフィルタ処理後の信号は直流になり、スマート制御部1は、スマート駆動を許可することができる。
ここで、図1(b)、(c)のように、リレーステーションアタックが介入した事例(介入の方法は第1実施形態と同じ)について、リレーステーションアタックが介入していない事例との違いを中心に説明する。
本事例においては、車載システム10から送信されたLFキャリア信号45(図17のステップ710参照)は、中継器94でRF帯域に周波数アップコンバートされ、更に中継器95でLF帯域に周波数ダウンコンバートされる。このとき、第4実施形態で説明した通り、中継器94、95でアップコンバートおよびダウンコンバートされた後のLFキャリア信号45の周波数が、アップコンバート前の周波数に対して僅かにずれてしまう。
一方、携帯機20では、周波数がずれてしまったLFキャリア信号45を受信し、切替回路27およびFM変調部29を経て、このキャリア信号45をFM変調してキャリア変調信号47として無線送信し(図10ののステップ255参照)、その後、リクエストデータを取得し(ステップ265)、リクエストデータが正規のものであると判定し(ステップ270)、アンサー信号48を無線送信する(ステップ275)。
そのようにして携帯機20から無線送信されて車載システム10のRF復調部5でFM復調およびAGC処理された後のLFキャリア信号45は、LF変調部3から送信したときのLFキャリア信号45に対して、周波数ずれが生じてしまっている。
したがって、メイン処理1dにおいてローカルキャリア信号とAGC後のLFキャリア信号45とを乗算し、ローパスフィルタ処理を施した結果の信号は、その周波数ずれ量に相当する周波数のキャリア信号となる。
したがって、スマート制御部1は、ステップ740で、ローパスフィルタ処理後の信号が直流でないと判定し、処理をステップ775に進める。処理をステップ740からステップ775に進めることは、スマート駆動を許可せず禁止することに相当する。
ステップ775では、リレーステーションアタックの介入があると判定する。具体的には、上述したRAフラグの値をオンにセットする。ステップ375の後、処理はステップ105に戻る。なお、スマート制御部1は、RAフラグの値がオンになったことに基づいて、車両外に警告報知を行うため、車両のホーンを吹鳴させる等の制御を行うようになっていてもよい。
このように、リレーステーションアタックが介入すると、RA中継器94、95でLFキャリア信号45のアップコンバートおよびダウンコンバートを行う際に、RA中継器94、95に内蔵のキャリア発振器が用いられる。これらRA中継器94、95に内蔵のキャリア発振器は、個体間のばらつきにより、互いに周波数が一致することはほとんどない。したがって、リレーステーションアタックが介入すると、車載システム10から送信するLFキャリア信号45の周波数に対し、携帯機20で受信するLFキャリア信号45の周波数が、ずれてしまう。
したがって、周波数がずれた状態のLFキャリア信号45が変調されたキャリア変調信号47を車載システム10が受信し、そのキャリア変調信号43に含まれるLFキャリア信号45の周波数を、ローカルキャリア信号の周波数と比較しても、同じとはならない。
本実施携帯においては、このような特性を利用して、ローカルキャリア信号の周波数と、キャリア変調信号47に含まれるLFキャリア信号45の周波数とが一致している場合には、リレーステーションアタックの介入がないと判定してスマート駆動を許可し、一致しない場合には、リレーステーションアタックの介入があると判定してスマート駆動を許可しない。このようにすることで、リレーステーションアタックの遅延時間にかかわらず、リレーステーションアタックの介入の有無を判定することができる。その他、本実施形態のスマートシステムは、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態の車載システム10は、まずLFキャリア信号45の無線送信を開始し、LFキャリア信号45の無線送信の開始と共に、LFキャリア信号45をローカルキャリア信号として取得し始め、携帯機20は、LFキャリア信号45の受信と、LFキャリア信号45の変調と、キャリア変調信号47の無線送信と、を開始し、車載システム10は、キャリア変調信号47を受信し、取得したローカルキャリア信号の周波数と、受信したキャリア変調信号47に含まれるLFキャリア信号45の周波数とが一致しているか否か判定し、一致していると判定した場合は、スマート駆動を許可し、一致していないと判定した場合は、スマート駆動を許可しない。
そして車載システム10は、スマート駆動を許可する場合は、LFキャリア信号45の無線送信を終了した後に、リクエスト信号46を無線送信し、携帯機20は、リクエスト信号46を無線受信したことに基づいて、アンサー信号48を無線送信し、車載システム10は、アンサー信号を無線受信したことに基づいて、スマート駆動を実行する。
このように、リクエスト信号46の送信前にLFキャリア信号45を送信することで、通信の最初に車載システム10から送信するバースト信号を、LFキャリア信号45が兼ねることができる。なお、バースト信号は、携帯機20のLF復調部23が安定して復調を行うために、車載システム10から携帯機20に送信する信号の先頭に付与される無辺長信号であり、スマートシステムにおいては、バースト信号を車載システム10から携帯機20に送信することが従来から行われている。
本実施形態のように、LFキャリア信号45がバースト信号としても機能すれば、例えば、第4実施形態において、リクエスト信号41の前にバースト信号を無線送信する場合と比べれば、全体としての通信時間が短縮し、車載システム10と携帯機20の間の通信のレスポンスが向上する。
また、車載システム10は、スマート駆動を許可しない場合は、LFキャリア信号45の無線送信を終了した後に、リクエスト信号46を無線送信しない。また、リクエスト信号46が送信されないので、携帯機20からはアンサー信号48も送信されない。したがって、スマート駆動を許可しない場合に、無駄なリクエスト信号46およびアンサー信号48の送信を行う必要がなく、その分電力消費を抑えられる。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について、第4実施形態との違いを中心に説明する。本実施形態における車載システム10および携帯機20の構成は、第4実施形態と同じである。本実施形態が第4実施形態と異なるのは、キャリア変調信号、アンサー信号の送信タイミング、ならびに、それら送信タイミングを実現するための携帯側制御部28の処理内容である。
なお、本実施形態における車載システム10の作動は、キャリア信号49を受信し始めるタイミングが第4実施形態よりも遅いこと以外は、第4実施形態と同じである。したがって、メイン処理1dのフローチャートは、図15と同じになる。
また、本実施形態における携帯側制御部28の処理のフローチャートは、図12と同じである。また、LF帯域でやりとりされる信号とRF帯域でやりとりされる信号(リクエスト信号41、LFキャリア信号42、キャリア変調信号49、アンサー信号44)のタイミング図は、図13と同じである。
以下、本実施形態のスマートシステムの作動について、第4実施形態と異なる部分を中心に説明する。まず、図1(a)に示すように、携帯機20を有するユーザ91が、車両に近づき、車載システム10の通信可能範囲53に携帯機20が入った場合の事例について説明する。
携帯機20の携帯側制御部28は、携帯機20が信号を受信するまで(すなわち携帯機20のLF復調部23が所定の強度以上の信号を受信するまで)は、図12のステップ405で、LF帯域の信号を取得するまで待機している。このとき切替回路27は、第4実施形態と同様、データ出力状態としている。また、車載システム10のスマート制御部1は、メイン処理1dにおいて、ステップ605で、送信タイミングが訪れるまで待機する。
送信タイミングが訪れると、続いてステップ610に進み、所定のリクエストデータを作成し、このリクエストデータを出力するようデータ出力処理1cに指令する。これにより、LF変調部3が、LFキャリア発振器6からのLFキャリア信号を用いてリクエストデータを変調し、変調した結果の信号であるリクエスト信号41(図13参照)を、LF送信アンテナ2を用いて無線送信する。リクエスト信号の送信開始から送信完了までの時間(送信時間)は、数ミリ秒から50ミリ秒の範囲内のいずれかである。
このとき携帯機20では、リクエスト信号41がLF受信アンテナ21で受信され、アンプ22を経てLF復調部23および切替回路27に入力されるが、切替回路27はデータ出力状態にあるので、リクエスト信号41は切替回路27からFM変調部29には入力されない。
LF復調部23は、入力されたリクエスト信号41を復調してリクエストデータを取得し、取得したリクエストデータを携帯側制御部28に入力する。携帯側制御部28は、リクエストデータの入力が始まると、ステップ410に進み、入力されたリクエストデータを取得する。そしてリクエストデータの取得が終了した時点t1(図13参照)で、ステップ415、420で、第4実施形態と同じ方法で、取得したリクエストデータが正規なものか否かを判定する。
本事例では、リクエストデータは正規の車載システム10から受信したものなので、ステップ420では、リクエストデータが正規のものであると判定し、ステップ425に進む。なお、本事例と違い、正規でない車載システム10または他の通信機器から信号を携帯機20が受信した場合の作動は、第4実施形態と同じである。
一方、車載システム10においては、スマート制御部1は、データ出力処理1cにてリクエストデータの出力を終了した時点t1において、メイン処理1dのステップ615に進み、LFキャリアの出力を開始するための制御を、第4実施形態と同様に行う。これにより、LF変調部3は、LF送信アンテナ2を用いて無変調波であるLFキャリア信号42を無線送信し始める。
なお、データ出力処理1cおよびLF変調部3によるこのLFキャリア信号42の送信は、時刻t1から時刻t2までの期間(例えば、数ミリ秒)続ける。この時刻t1から時刻t2までの期間は、第4実施形態では、ローカルキャリア信号およびAGC後のLFキャリア信号42の信号取得時間と同じ長さであったが、本実施形態では、当該信号取得時間よりも、図13の期間Dだけ長い。
そして、LF変調部3がLFキャリア信号を無線送信し始めてすぐに、メイン処理1dでは、ステップ620に進み、LFキャリア発振器6からA/Dコンバータ7に入力されてデジタル信号となったLFキャリア信号(第1のキャリア信号の一例に相当する)の取得を開始する。このとき、まだLF変調部3ではLFキャリア信号の無線送信が継続中なので、A/Dコンバータ7から取得するローカルキャリア信号は、無線送信に用いられているLFキャリア信号42と同じ信号であり、当然、周波数も同じである。メイン処理1dでは続いてステップ625に進み、RF復調部5がRF帯域の信号を受信するまで待機する。
一方、携帯機20において、携帯側制御部28は、既に説明した通り、ステップ420でリクエストデータが正規のものであると判定し、ステップ425に処理を進める。ステップ425に処理を進めた時点は、LFキャリア信号42を取得し終えた時刻t1よりも遅い時刻t6である。
この時刻t1から時刻t6までの期間Dは、リクエストデータの認証処理時間である。つまり、この期間Dは、リクエストデータが正規のデータであるか否かの判定を行うのに要する時間である。
ステップ425では、LFキャリア信号の出力を開始するため、切替回路27を切り替えて受信信号出力状態とする。これにより、時刻t1から既にLF受信アンテナ21において受信されてアンプ22を介して切替回路27に入力されていたLFキャリア信号42が、時刻t6において、切替回路27からFM変調部29に入力され始める。そして、FM変調部29は、RFキャリア発振器26からのRFキャリア信号(第2のキャリア信号の一例に相当する)を用いてLFキャリア信号42をFM変調する。そして、変調された結果の信号であるキャリア変調信号49をRF送信アンテナ24に出力することで、RF送信アンテナ24からRF帯域のキャリア変調信号49が無線送信される。このキャリア変調信号49には、第4実施形態で説明した通り、LFキャリア信号42の情報(より具体的には、LFキャリア信号42の周波数の情報)が含まれている。
そして、ステップ425では、切替回路27からRF変調部25へのLFキャリア信号42の出力が終了するまで待機する。LFキャリア信号42の出力が終了したか否かは、ステップ425で切替回路27を受信信号出力状態に切り替えた時点から、あらかじめ定められて記憶媒体に記憶されたキャリア変調信号49の送信時間が経過したか否かで判定する。なお、このキャリア変調信号49の送信時間は、LFキャリア信号42の送信時間よりも期間Dだけ短く設定されている。
あるいは、LFキャリア信号42の出力が終了したか否かについては、アンプ22から切替回路27に印加される電圧を検出し、その電圧が一定期間(例えば、134kHzのキャリア信号の1周期分の時間)ゼロとなったら、LFキャリア信号42の出力が終了したと判定するようになっていてもよい。
一方、車載システム10では、スマート制御部1のメイン処理1dにおいて、LFキャリア信号42の送信を開始した後、ステップ620を経てステップ625で、RF復調部5による無線受信があるまで待機しており、上述の通り、時刻t6において、携帯機20からキャリア変調信号49が送信される。そして、RF復調部5は、RF受信アンテナ4を介してこのキャリア変調信号49を受信し、アンプ・フィルタ・D/C部51で増幅、不要な信号のフィルタリング、およびIFへの周波数ダウンコンバートを行い、アンプ・フィルタ・D/C部51で増幅、不要な信号のフィルタリング、およびIFへの周波数ダウンコンバートを行い、FM復調部54でFM復調する。そして、FM復調された結果、LFキャリア信号42が復元され、そのLFキャリア信号42がスマート制御部1およびAGC回路55に入力される。そして、AGC回路55からは、平均信号レベルが所定レベルになるよう増幅されたLFキャリア信号42(AGC後のLFキャリア信号42)が、スマート制御部1に入力され始める。
このようにスマート制御部1に信号が入力されると、メイン処理1dにおいて処理はステップ630に進む。ステップ630では、スマート制御部1は、AGC後のLFキャリア信号42を取得し始める。このとき、まだLF変調部3ではLFキャリア信号の送信が継続中である。
その後、時刻t2において、LF変調部3でLFキャリア信号42の送信が終了するが、その時刻t2の前に、スマート制御部1によるローカルキャリア信号の取得が完了する。これは、本実施形態では、ローカルキャリア信号の信号取得時間よりも期間Dの方が短く、かつ、当該信号取得時間よりも時刻t1からt2までの期間の方が長いからである。
その後、時刻t2において、LF変調部3でLFキャリア信号の送信が終了する。その時点t2において、スマート制御部1によるAGC後のLFキャリア信号45の取得が完了する。これは、AGC後のLFキャリア信号45の信号取得時間が時刻t6から時刻t2までの期間と同じ長さだからである。
ローカルキャリア信号とAGC後のLFキャリア信号45の取得が完了すると、ステップ635で、ローカルキャリア信号を、AGC後のLFキャリア信号45に乗算する。そしてステップ640で、乗算後の信号のうち、不要な高周波数成分を除去するため、第4実施形態と同様にローパスフィルタ処理する。
本事例では、ローカルキャリア信号と、AGC後のLFキャリア信号45は、共に同じ周波数のキャリア信号であるから、乗算およびローパスフィルタ処理の結果、直流信号を得る。
続いてステップ645では、乗算およびローパスフィルタ処理の結果得た信号が、直流信号であるか否かを判定する。本事例では、結果の信号は上述の通りなので、直流信号であると判定し、処理をステップ650に進める。ステップ645からステップ650に進むことは、スマート駆動を(アンサー信号が正規であるという条件付きで)許可することに相当する。
一方、携帯機20では、携帯側制御部28は、キャリア変調信号49の送信が完了するタイミング(時刻t2)で、ステップ425から430に処理を進め、第4実施形態のステップ235と同じアンサー信号出力処理を行う。これにより、FM変調部29がRF送信アンテナ24を用いてアンサー信号を無線送信し、処理をステップ405に戻す。
一方車載システム10においては、ステップ650以降のメイン処理1dの処理内容およびスマート制御部1の作動は、第4実施形態と同じである。
ここで、図1(b)、(c)のように、リレーステーションアタックが介入した事例について、リレーステーションアタックが介入していない事例との違いを中心に説明する。本事例においては、携帯機20を携帯するユーザ91は、リクエスト信号の到達範囲内53の範囲内に入っていないが、車両または車両内の物を窃盗しようと企てるグループが、RA中継器94をリクエスト信号の通信可能範囲53内に配置し、RA中継器95を携帯機20の近傍に配置する。これにより、車載システム10から送信されたリクエスト信号が、RA中継器94、95で中継され、携帯機20に届くようになる。
この場合、車載システム10からリクエスト信号が無線送信され、LFキャリア信号42が無線送信され始めるまで(メイン処理1dの処理で言えばステップ625まで)は、リレーステーションアタックの介入がない場合の事例と同じである。
しかし、リレーステーションアタックが介入する本事例では、送信されたLFキャリア信号42は、中継器94でRF帯域に周波数アップコンバートされ、更に中継器95でLF帯域に周波数ダウンコンバートされることで、LFキャリア信号42の周波数が、アップコンバート前の周波数に対して僅かにずれてしまう。
一方、携帯機20では、リクエスト信号41を受信(図12のステップ405、410参照)した後、リレーステーションアタックの介入により周波数がずれてしまったLFキャリア信号42を受信し、切替回路27およびFM変調部29を経て、このキャリア信号42をFM変調してRF帯域域のキャリア変調信号49として無線送信し(図12のステップ425参照)、また、リクエストデータが正規のものであると判定し(ステップ225参照)、キャリア変調信号の送信後に(ステップ230参照)アンサー信号44を無線送信する(ステップ235参照)。
そのようにして携帯機20から無線送信されて車載システム10のRF復調部5でFM復調およびAGC処理された後のLFキャリア信号42は、LF変調部3から送信したときのLFキャリア信号42に対して、周波数ずれが生じてしまっている。
したがって、メイン処理1dにおいてローカルキャリア信号とAGC後のLFキャリア信号42とを乗算し、ローパスフィルタ処理を施した結果の信号は、その周波数ずれ量に相当する周波数のキャリア信号となる。
したがって、スマート制御部1は、ステップ645で、ローパスフィルタ処理後の信号が直流でないと判定し、処理をステップ675に進める。処理をステップ645からステップ675に進めることは、スマート駆動を許可せず禁止することに相当する。
ステップ675では、リレーステーションアタックの介入があると判定する。具体的には、上述したRAフラグの値をオンにセットする。ステップ675の後、処理はステップ605に戻る。なお、スマート制御部1は、RAフラグの値がオンになったことに基づいて、車両外に警告報知を行うため、車両のホーンを吹鳴させる等の制御を行うようになっていてもよい。
このように、リレーステーションアタックが介入すると、RA中継器94、95でLFキャリア信号42のアップコンバートおよびダウンコンバートを行う際に、RA中継器94、95に内蔵のキャリア発振器が用いられる。これらRA中継器94、95に内蔵のキャリア発振器は、個体間のばらつきにより、互いに周波数が一致することはほとんどない。したがって、リレーステーションアタックが介入すると、車載システム10から送信するLFキャリア信号42の周波数に対し、携帯機20で受信するLFキャリア信号42の周波数が、ずれてしまう。
したがって、周波数がずれた状態のLFキャリア信号42が変調されたキャリア変調信号49を車載システム10が受信し、そのキャリア変調信号49に含まれるLFキャリア信号42の周波数を、ローカルキャリア信号の周波数と比較しても、同じとはならない。
本実施携帯においては、このような特性を利用して、ローカルキャリア信号の周波数と、キャリア変調信号49に含まれるLFキャリア信号42の周波数とが一致している場合には、リレーステーションアタックの介入がないと判定してスマート駆動を許可し、一致しない場合には、リレーステーションアタックの介入があると判定してスマート駆動を許可しない。このようにすることで、リレーステーションアタックの遅延時間にかかわらず、リレーステーションアタックの介入の有無を判定することができる。その他、本実施形態のスマートシステムは、第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
ただし、本実施形態では、図12、図13に示すように、LFキャリア信号42を含んだキャリア変調信号49を送信し始めるタイミング(ステップ425、t6)よりも先に、受信したリクエストデータの認証を行い(ステップ410〜420、時刻t1〜t6)、認証が終了し、正規のリクエストデータであると判定した場合に限り、初めて、キャリア変調信号49を送信し始める。
つまり、携帯機20は、リクエスト信号41を無線受信し、リクエスト信号41を無線受信し終えた後に、リクエスト信号41に含まれるリクエストデータが正規のデータであるか否かを判定し、正規のデータであると判定したことに基づいて、LFキャリア信号42の変調と、キャリア変調信号49の無線送信とを開始し、正規のデータでないと判定したことに基づいて、キャリア変調信号49の無線送信を行わず、かつ、アンサー信号44の無線送信も行わない。したがって、リクエストデータが正規のものでないと判定した場合は、キャリア変調信号49を送信しなくて済むので、無駄な電力の節約になる。
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について説明する。図18に、リレーステーションアタックの有無を判別する作動の概要を示す。まず、車載システム10が、LF帯域域内の所定の周波数(具体的には134kHz)を有するLFキャリア信号71(第1のキャリア信号の一例に相当する)および所定のリクエスト信号を無線送信する。そして、携帯機20は、このLFキャリア信号71およびリクエスト信号を受信すると、所定のアンサーデータをスペクトラム変調方式で拡散変調し、拡散変調後の信号にLFキャリア信号71を加算し、加算後の信号を、RF帯域内の周波数(具体的には312MHz)を有するRFキャリア信号(第2のキャリア信号の一例に相当する)と乗算することで、加算後の信号を変調する。変調後の信号であるキャリア変調信号は、RFキャリア信号72の周波数の両側に等間隔で離れたピーク77、78と、拡散されたアンサーデータの信号のRFキャリア信号が乗算された結果のアンサー信号76を有する信号となる。このピーク77、78間の間隔F2は、LFキャリア信号71の周波数F1の2倍となる。
携帯機20は、このキャリア変調信号を受信し、2つのピーク77、78間の間隔F2を検出すると共に、送信時のLFキャリア信号71の周波数F1を検出し、F1=(F2)/2であれば、リレーステーションアタックの介入がないと判定してスマート駆動を許可し、F1=(F2)/2でなければ、リレーステーションアタックの介入があると判定してスマート駆動を許可しないようになっている。
以下、このようなスマートシステムの構成および作動について、第1実施形態と比較しながら説明する。図19は、本実施形態に係る車載システム10および携帯機20の構成図である。車載システム10のハードウェア構成は、第1実施形態と同じで、スマート制御部1、LF送信アンテナ2、LF変調部3、RF受信アンテナ4、RF復調部5、LFキャリア発振器6、A/Dコンバータ7、センサ8、アクチュエータ9等を有している。
また、本実施形態のスマート制御部1は、第1実施形態の第1FFT処理1a、第2FFT処理1b、データ出力処理1c、メイン処理1dに加え、同期・逆拡散処理1eを実行するようになっている。同期・逆拡散処理1eも、他の処理と並列的に実行される。
同期・逆拡散処理1eは、BPSK復調部52からスマート制御部1に入力された信号に対して、スペクトラム拡散方式の1つである直接拡散方式(DSSS)を用いた同期捕捉および逆拡散処理を行う処理である。
携帯機20は、第1実施形態と同様、LF受信アンテナ21、アンプ22、LF復調部23、RF送信アンテナ24、RF変調部25、RFキャリア発振器26、携帯側制御部28を有している。そして、第1実施形態の切替回路27に代えて、AGC回路30、オンオフ回路31、および加算部32を有している。
AGC回路30は、アンプ22が出力した信号の平均信号レベルを所定の目標レベルに維持するよう増幅し、増幅された信号をオンオフ回路31に入力する。オンオフ回路31は、AGC回路30から入力された信号を加算部32に入力するオン状態と、AGC回路30から入力された信号を加算部32に入力するオフ状態とを、切り替える回路であり、携帯側制御部28の制御に従って切り替えを行う。
加算部32は、携帯側制御部28が出力した信号(DSSSで拡散変調された信号)に対し、オンオフ回路31が出力した信号を加算し、加算結果の信号をRF変調部25に入力する。RF変調部25は、加算部32から入力された信号に対し、RFキャリア発振器26からのRFキャリア信号を用いてBPSK変調し、RF送信アンテナ24を用いてBPSK変調後の信号を無線送信する。
以下、このような構成のスマートシステムの作動について、第1実施形態と比較して説明する。図20に、スマート制御部1のメイン処理1dのフローチャートを示し、図21に、携帯側制御部28が実行する処理のフローチャートを示す。また、図22に、LF帯域でやりとりされる信号とRF帯域でやりとりされる信号のタイミング図を示す。
まず、図1(a)に示すように、携帯機20を有するユーザ91が、車両に近づき、車載システム10の通信可能範囲53に携帯機20が入った場合の事例について説明する。携帯機20の携帯側制御部28は、図21のステップ450で、LF帯域の信号を取得するまで(すなわち携帯機20のLF復調部23が所定の強度以上の信号を受信するまで)待機している。このとき、オンオフ回路31は、AGC回路30から入力された信号を加算部32に出力しないオフ状態としている。
また、車載システム10のスマート制御部1は、メイン処理1dにおいて、ステップ805で、第1実施形態のステップ105と同様、送信タイミングが訪れるまで待機する。送信タイミングが訪れると、続いてステップ810に進み、所定のリクエストデータを出力するようデータ出力処理1cに指令する。すると、第1実施形態と同じ作動により、リクエストデータを含むリクエスト信号34(図22参照)が、LF送信アンテナ2から無線送信される。リクエスト信号の送信開始から送信完了までの時間(送信時間)は、数ミリ秒から50ミリ秒の範囲内のいずれかである。
このとき携帯機20では、LF受信アンテナ21がリクエスト信号34を受信し、アンプ22でこのリクエスト信号34が増幅される。増幅されたリクエスト信号34は、LF復調部23および(AGC回路30を経て)オンオフ回路31に入力されるが、オンオフ回路31はオフ状態にあるので、リクエスト信号34はオンオフ回路31からRF変調部25には入力されない。LF復調部23は、入力されたリクエスト信号34を復調してリクエストデータを取得し、取得したリクエストデータを携帯側制御部28に入力する。
携帯側制御部28は、リクエストデータの入力が始まると、ステップ455に進み、入力されたリクエストデータを取得する。そしてリクエストデータの取得が終了した時点t1(図22参照)で、ステップ460、465で、第1実施形態のステップ220、225と同じ方法で、取得したリクエストデータが正規なものか否かを判定する。
本事例では、リクエストデータは正規の車載システム10から受信したものなので、ステップ465では、リクエストデータが正規のものであると判定し、ステップ470に進む。
なお、本事例と違い、正規でない車載システム10または他の通信機器から信号を携帯機20が受信した場合は、ステップ465では、当該リクエストデータが正規のデータでないと判定する。その場合、アンサーデータを出力しないまま処理はステップ450に戻る。したがって、携帯機20から車載システム10にアンサー信号が無線送信されず、車載システム10においてスマート駆動も実行されない。
本事例の説明に戻る。メイン処理1dにおいてスマート制御部1は、データ出力処理1cがリクエストデータの出力を終了した時点t1において、ステップ815に進み、LFキャリアの出力を開始するための制御を、第1実施形態のステップ115と同じ方法で行う。これにより、LF変調部3は、LF送信アンテナ2を用いて無変調波であるLFキャリア信号35を無線送信し始める。
なお、データ出力処理1cおよびLF変調部3によるこのLFキャリア信号35の送信は、時刻t1から時刻t2までの期間(例えば、十数ミリ秒)続ける。この時刻t1から時刻t2までの期間は、第1実施形態では、第1FFT処理1aおよび第2FFT処理1bのFFT時間と同じ長さであったが、本実施形態では、当該FFT時間よりも、後述する期間DDだけ長い。
そして、LF変調部3がLFキャリア信号を無線送信し始めてすぐに、メイン処理1dでは、ステップ820に進み、第1FFT処理1aに対して、FFT処理を開始するよう指令する。すると、第1FFT処理1aにおいてスマート制御部1は、LFキャリア発振器6からA/Dコンバータ7に入力されてデジタル信号となったLFキャリア信号(第1のキャリア信号の一例に相当する)の取得およびFFTを開始する。メイン処理1dでは続いてステップ825に進み、RF復調部5がRF帯域の信号を受信するまで待機する。
一方、携帯機20において、携帯側制御部28は、既に説明した通り、ステップ465でリクエストデータが正規のものであると判定し、ステップ470に処理を進める。ステップ470に処理を進めた時点は、リクエスト信号34を取得し終えた時刻t1よりも遅い時刻t7である。
この時刻t1から時刻t7までの期間は、リクエストデータの認証処理時間38である。つまり、この期間38は、リクエストデータが正規のデータであるか否かの判定を行うのに要する時間である。
ステップ470では、所定のアンサーデータを作成し、作成したアンサーデータを直接拡散方式で拡散変調する。この拡散変調には、所定の拡散符号を使用する。続いてステップ475では、アンサーデータを拡散変調することによって得た拡散変調データの最初の2ビットを、加算部32に出力する。これにより、拡散変調データの最初の2ビットが、加算部32からRF変調部25に入力される。RF変調部25は、RFキャリア発振器26からのRFキャリア信号で当該最初の2ビットのデータをBPSK変調し、変調後の信号を、RF送信アンテナ24から無線送信する。このようにして無線送信された信号は、スマート制御部1で同期捕捉に用いられるデータを含む同期捕捉用信号37aである。
ステップ475で同期捕捉用信号を送信し終えた時点t8で、携帯側制御部28は、処理をステップ480に進める。同期捕捉用信号37aの送信開始時点t7から送信終了時点t8までの期間を、同期捕捉用時間39という。
一方、車載システム10では、時刻t7において、RF復調部5がRF帯域の同期捕捉用信号37aを受信したことに基づいて、スマート制御部1がメイン処理1dのステップ830に進み、同期・逆拡散処理1eに同期捕捉を開始させる。すると同期・逆拡散処理1eは、アンプ・フィルタ・D/C部51、A/Dコンバータ53、BPSK復調部52を介してBPSK復調された同期捕捉用信号37aを取得し、取得した同期捕捉用信号37aを用いて同期捕捉を行う。この同期捕捉によって、拡散変調における拡散符号の使用タイミングが決定される。
一方、携帯側制御部28は、時刻t8にステップ480に進み、オンオフ回路31をオン状態に切り替える。これにより、オンオフ回路31から出力される信号と、携帯側制御部28から出力される信号が、加算部32において重畳(加算)されて重畳信号としてRF変調部25に出力される。
ステップ480でオンオフ回路31がオン状態に切り替えられた時点t8では、まだ車載システム10からLFキャリア信号35が無線送信され続けているので、オンオフ回路31がオン状態になると、AGC回路30で平均レベルが目標レベルに調整されたLFキャリア信号35が、オンオフ回路31を介して加算部32に入力され始める。
続いてステップ485では、拡散変調データのうち、最初の2ビットに続く残りのデータを出力する。これにより、加算部32では、平均レベルが所定レベルに調整されたLFキャリア信号に、拡散変調データの残りのデータの信号が加算され、加算後の重畳信号が、RF変調部25でBPSK変調される。そして、BPSK変調後の合成信号が、RF送信アンテナ24から無線送信され始める。
このようにして、時刻t8においてRF送信アンテナ24から送信され始める信号は、LFキャリア信号35がBPSK変調されたキャリア変調信号36と、拡散変調データの残りのデータがBPSK変調された信号37bとが合成された合成信号である。なお、この信号37bと、ステップ475で送信した同期捕捉用信号37aとが、全体としてアンサー信号37を構成する。
一方、車載システム10では、キャリア変調信号36と信号37bの合成信号が無線送信され始める時点t8において、RF復調部5がRF受信アンテナ4を介してこの合成信号36、37bを受信し、アンプ・フィルタ・D/C部51で増幅、不要な信号のフィルタリング、およびIFへの周波数ダウンコンバートを行い、A/Dコンバータ53がA/D変換してスマート制御部1とBPSK復調部52に入力し、BPSK復調部52がBPSK復調してスマート制御部1に出力し始める。
また、BPSK復調部52からスマート制御部1に入力された信号に対しては、同期・逆拡散処理1eにおいてスマート制御部1が、携帯側制御部28と同じ拡散符号を、上述の同期捕捉によって決まったタイミングで使用して、入力された信号を直接拡散方式で逆拡散する。
逆拡散された場合、携帯側制御部28において拡散変調されたアンサーデータは復元されるが、キャリア変調信号は、拡散符号によって周波数空間に広く拡散されてしまって除去可能なノイズとなる。したがって、合成信号36、37bからも問題なく逆拡散でアンサーデータを復元することができる。
メイン処理1dにおいては、この時点t8において、処理がステップ835に進む。ステップ835では、第1実施形態のステップ130と同様、第2FFT処理1bに対して、FFT処理を開始するよう指令する。
すると、第2FFT処理1bにおいてスマート制御部1は、A/Dコンバータ53から入力されたデジタルの合成信号36、37bの取得およびFFTを開始する。続いてスマート制御部1は、メイン処理1dのステップ840に進み、アンサーデータの取得を開始する。具体的には、同期・逆拡散処理1eによって逆拡散されて得られるアンサーデータを順次取得し始める。このとき、まだLF変調部3ではLFキャリア信号の送信が継続中である。
その後、時間が経過し、時刻t2よりも前の時点において、第1FFT処理1aにおけるローカルキャリア信号のFFTが完了する。これは、本実施形態では、FFT時間よりも期間DD(認証処理時間38と同期捕捉用時間39の総和の期間)の方が短く、かつ、FFT時間よりも時刻t1からt2までの期間の方が長いからである。第1FFT処理1aにおけるローカルキャリア信号のFFTが完了すると、FFTの結果得たローカルキャリア信号の周波数毎の信号強度分布が、第1FFT処理1aからメイン処理1dに渡される。
この時点で、メイン処理1dにおいて処理がステップ845に進み、ローカルキャリア信号の周波数毎の信号強度分布に基づいて、第スマート制御部1実施形態のステップ135と同じ方法で、ローカルLF周波数F1を検出する。
その後、時刻t2になると、LF変調部3からのLFキャリア信号35が終了し、ほぼ同時に、携帯機20のオンオフ回路31から加算部32へのLFキャリア信号35の出力も終了する。すると、携帯機20のRF変調部25ではキャリア変調信号36の無線送信が終了し、信号37bの無線送信のみが継続されるようになる。
その時点t2において、第2FFT処理1bにおける合成信号36、37bのFFTが完了する。これは、FFT時間が時刻t8から時刻t2までの期間と同じ長さだからである。第2FFT処理1bにおける合成信号36、37bのFFTが完了すると、FFTの結果得た合成信号36、37bの周波数毎の信号強度分布が、第2FFT処理1bからメイン処理1dに渡される。
この時点で、メイン処理1dにおいて処理がステップ850に進み、合成信号36、37bの周波数毎の信号強度分布に基づいて、所定のサーチ周波数範囲内でピーク値(信号強度の極大値)となる周波数を複数個検出し、それらのうち、信号強度が最も高い2個のピーク値について、周波数の差を検出し、それをピーク周波数間隔F2として検出する。
この処理について、以下詳細に説明する。第2FFT処理1bによってFFT処理される合成信号36、37bは、図23(a)のような周波数特性となっていてもよいし、図23(b)のような周波数特性となっていてもよい。
図23(a)、(b)とも、キャリア変調信号36の2つのピークに相当する成分77、78と、拡散変調データ(拡散変調されたアンサーデータ)の強度に相当する広帯域の成分76が、合成信号を構成する。正しいピーク周波数間隔F2を算出するためには、周波数サーチ範囲S内で最も強度の高い2つのピークが、ピーク77、78になる必要がある。
また、図23(a)、(b)周波数範囲Sが、上述の周波数サーチ範囲に相当する。図23(a)の例においては、拡散変調データ成分76の第2高調波を含む所定幅(例えば3kHz幅から10kHz幅までのいずれか)の範囲が周波数サーチ範囲Sとなる。
また、図23(b)の例においては、拡散変調データ成分76の第3高調波を含む所定長さ(例えば3kHz幅から10kHz幅までのいずれか)の範囲が周波数サーチ範囲Sとなる。ただし、この周波数サーチ範囲Sは、第1高調波も第3高調波も含まない範囲とする。
図23(a)の例では、拡散変調データ成分76の第2高調波(山の部分)の位置にピーク77、78が位置する。この場合、ピーク77、78の強度は、第2高調波の強度よりも高くならないと、信号強度が最も高い2個のピーク値とならない。このように、拡散変調データ成分とピーク77、78との強度の関係を実現するため、携帯機20のAGC回路30の目標レベルをあらかじめ設定しておく必要がある。
図23(b)の例では、拡散変調データ成分76の第3高調波(谷の部分)の位置にピーク77、78が位置する。この場合、ピーク77、78の強度は、周波数サーチ範囲SにおいてIF周波数(本例では300kHz)に最も近い他のピークの強度(第2高調波の強度よりも低い)よりも高ければよいので、AGC回路30の目標レベルを図23(a)の場合よりも低くすることができ、その分消費電力低減となる利点がある。また、仮にリレーステーションアタックによってLFキャリア信号の周波数が非常に大きく変化した結果、ピーク77、78が周波数サーチ範囲から外れた場合も、周波数サーチ範囲SにおいてIF周波数に最も近いピーク間の距離が間隔F2になるので、リレーステーションアタックの介入があると判定できる。
図23(b)のように、第2高調波の位置にキャリア変調信号のピークを位置させるためには、拡散変調における拡散符号のチップレートを、LFキャリア信号の周波数と同じ134kcps(=1055bps×127chip、例として拡散符号を127chipとした場合)とすればよい。このようにすると、RFデータの第2高調波の位置、すなわちヌル点にLFキャリアが存在し、AGC回路30の目標レベルを下げることができる。さらに、外来ノイズが重畳した場合においても、誤る可能性が低くなる。
なお、図23(a)のように、第3高調波の位置にキャリア変調信号のピークを位置させるためには、拡散変調における拡散符号のチップレートを、90.9kHz(=716bps×127chip)とすればよい。
ステップ850に続いては、ステップ855に進み、検出したローカルLF周波数F1と、ピーク周波数間隔F2について、F1=(F2)/2の関係が成り立っているか否かを、第1実施形態のステップ145と同じ方法で判定する。
本事例では、RA中継器が車載システム10と携帯機20の間の通信に介入していないので、ピーク周波数間隔F2は、図24に示すように、車載システム10から送信されたLFキャリア信号86(図24(a)参照)の周波数F1の2倍になっている(図24(b)のピーク77、78参照)。したがって、F1=(F2)/2の関係が成り立つと判定され、処理はステップ860に進む。ステップ855からステップ860に進むことは、スマート駆動を(アンサー信号が正規であるという条件付きで)許可することに相当する。
ステップ860では、第1実施形態のステップ150と同じ方法で、リレーステーションアタックの介入がないと判定する。続いてステップ865では、同期・逆拡散処理1eからすべてのアンサーデータを取得するまで待機する。
携帯機20が信号37bの無線送信を完了した時点で、同期・逆拡散処理1eからすべてのアンサーデータを取得することができ、その時点で、ステップ865、870において、第1実施形態のステップ160、165と同じ方法で、取得したアンサーデータが正規なものか否かを判定する。
本事例では、アンサーデータは正規の(すなわち、車載システム10に対応する)携帯機20から受信したものなので、ステップ870では、アンサーデータが正規のものであると判定し、ステップ875に進み、スマート駆動を実行する。これにより、ユーザががドアを開けて車内に入り、エンジンを始動させることができる。ステップ875の後、図20の処理は終了する。
なお、本事例と違い、正規でない車載システム10または他の通信機器から信号を車載システム10が受信した場合は、ステップ870では、当該アンサーデータが正規のデータでないと判定する。その場合、ステップ875を迂回して、スマート駆動を行わずに禁止し、処理をステップ805に戻す。
以上のように、車載システム10から携帯機20にLFキャリア信号(第1のキャリア信号の一例に相当する)を送信し、携帯機20がこのLFキャリア信号をRFキャリア信号(第2のキャリア信号の一例に相当する)で変調し、キャリア変調信号として車載システム10に返す場合、本事例のようにリレーステーションアタックの介入がない場合は、車載システム10から送信するLFキャリア信号の周波数と、携帯機20が受信するキャリア変調信号に含まれるLFのキャリア信号41の周波数は同じはずである。したがって、F1=(F2)/2の関係が成り立ち、スマート制御部1は、スマート駆動を許可することができる。
ここで、図1(b)、(c)のように、リレーステーションアタックが介入した事例について、リレーステーションアタックが介入していない事例との違いを中心に説明する。本事例においては、携帯機20を携帯するユーザ91は、リクエスト信号の到達範囲内53の範囲内に入っていないが、車両または車両内の物を窃盗しようと企てるグループが、RA中継器94をリクエスト信号の通信可能範囲53内に配置し、RA中継器95を携帯機20の近傍に配置する。これにより、車載システム10から送信されたリクエスト信号が、RA中継器94、95で中継され、携帯機20に届くようになる。
この場合、車載システム10からリクエスト信号34が無線送信され、LFキャリア信号35が無線送信され始めるまで(メイン処理1dの処理で言えばステップ825まで)は、リレーステーションアタックの介入がない場合の事例と同じである。
しかし、リレーステーションアタックが介入する本事例では、送信されたLFキャリア信号35は、中継器94でRF帯域に周波数アップコンバートされ、更に中継器95でLF帯域に周波数ダウンコンバートされることで、ダウンコンバートされた後のLFキャリア信号35の周波数が、アップコンバート前の周波数に対して僅かにずれてしまう。
一方、携帯機20では、リクエスト信号34を受信(図21のステップ450、455参照)した後、リレーステーションアタックの介入により周波数がずれてしまったLFキャリア信号35を受信し、AGC回路30、オンオフ回路31、加算部32を経て、このLFキャリア信号42を変調したキャリア変調信号36を含む合成信号を無線送信する(図21のステップ475参照)。
そのようにして携帯機20から無線送信されてアンプ・フィルタ・D/C部51で周波数ダウンコンバートした後の合成信号は、図24(c)に示すように、強度が最も高い2つのピーク間88、89間の周波数間隔が、134kHz×2=268kHzからずれてしまう。
なお、図24(c)における合成信号のピーク88付近には、図25(a)に示すように、ピーク88以外にも、ピーク88aが存在する。このピーク85aは、RA中継器94でLFキャリア信号35をアップコンバートしたときにフィルタリングできなかった不要部分であり、ピーク88、89よりも強度が低くなる。同様に、図24(c)におけるピーク89付近には、図25(b)に示すように、ピーク89以外にも、ピーク89aが存在する。このピーク89aは、RA中継器94でLFキャリア信号35をアップコンバートしたときにフィルタリングできなかった不要部分であり、ピーク88、89よりも強度が低くなる。
したがって、スマート制御部1は、ステップ845で検出したローカルLF周波数F1と、ステップ850で検出したピーク周波数間隔F2とを用いて、ステップ855でF1と(F2)/2が同じであるか否か比較するが、リレーステーションアタックが介入している本事例では、同じでないと判定し、処理をステップ880に進める。処理をステップ855からステップ880に進めることは、スマート駆動を許可せず禁止することに相当する。
ステップ880では、リレーステーションアタックの介入があると判定する。具体的には、上述したRAフラグの値をオンにセットする。ステップ880の後、処理はステップ805に戻る。なお、スマート制御部1は、RAフラグの値がオンになったことに基づいて、車両外に警告報知を行うため、車両のホーンを吹鳴させる等の制御を行うようになっていてもよい。
このように、リレーステーションアタックが介入すると、RA中継器94、95でLFキャリア信号35のアップコンバートおよびダウンコンバートを行う際に、RA中継器94、95に内蔵のキャリア発振器が用いられる。これらRA中継器94、95に内蔵のキャリア発振器は、個体間のばらつきにより、互いに周波数が一致することはほとんどない。したがって、リレーステーションアタックが介入すると、車載システム10から送信するLFキャリア信号35の周波数に対し、携帯機20で受信するLFキャリア信号35の周波数が、ずれてしまう。
したがって、周波数がずれた状態のLFキャリア信号35が変調された合成信号(キャリア変調信号36を含む)を車載システム10が受信し、その合成信号に含まれるLFキャリア信号35の周波数を、ローカルキャリア信号の周波数と比較しても、同じとはならない。
本実施携帯においては、このような特性を利用して、ローカルキャリア信号の周波数と、合成信号に含まれるLFキャリア信号35の周波数とが一致している場合には、リレーステーションアタックの介入がないと判定してスマート駆動を許可し、一致しない場合には、リレーステーションアタックの介入があると判定してスマート駆動を許可しない。このようにすることで、リレーステーションアタックの遅延時間にかかわらず、リレーステーションアタックの介入の有無を判定することができる。
また、本実施形態においては、携帯機20は、LFキャリア信号の平均レベルを所定の目標レベルに維持するゲインコントロール(増幅制御)と、ゲインコントロールされたLFキャリア信号を所定のアンサーデータに基づく拡散変調データに加算して重畳信号とする処理と、重畳信号をBPSK変調して、キャリア変調信号36およびアンサー信号37を含む合成信号とする処理と、合成信号の無線送信と、を行い、車載システム10は、合成信号中のキャリア変調信号36を無線受信し、取得したローカルキャリア信号の周波数F1と、受信したキャリア変調信号36に含まれるLFキャリア信号35の周波数(F2/2)とが一致しているか否か判定し、一致していると判定した場合は、スマート駆動を許可し、一致していないと判定した場合は、スマート駆動を許可しない。
このように、車載システム10が、リクエスト信号34およびLFキャリア信号35の順に無線送信したとき、携帯機20が、アンサーデータに基づくデータとLFキャリア信号とを加算した重畳信号を変調して合成信号として無線送信する。このようにすることで、携帯機20側においてアンサーデータとLFキャリア信号35とを同時に無線送信することができるので、車載システム10と携帯機20の間の通信のレスポンスが向上する。また重畳の際、LFキャリア信号35が所定の目標レベルに保たれるので、車載システム10と携帯機20の距離によっては車載システム10でLFキャリア信号35の周波数が特定困難になるという事態が発生する可能性を低減することができる。
また、車載システム10は、アンサーデータを拡散変調する際のチップレートの値を、LFキャリア信号の周波数の値と同じにしている。このようにすることで、拡散変調データの第2高調波の位置、すなわちヌル点にLFキャリア信号が位置するので、そうでない場合に比べ、ゲインコントロール時の所定の目標レベルを低くしても、車載システム10でLFキャリア信号の周波数を特定することができる。
また、携帯機20は、リクエスト信号を無線受信し、リクエスト信号34を無線受信し終えた後に、拡散変調データのうち最初の同期捕捉用データを、LFキャリア信号35と重畳することなく、変調してアンサー信号37の最初の一部(本実施形態では2ビット)として無線送信し、車載システム10は、アンサー信号37の当該最初の一部を受信し、受信した最初の一部に基づいて同期捕捉を行い、その後、合成信号中のキャリア変調信号36を無線受信し、取得したローカルキャリア信号の周波数と、受信したキャリア変調信号36に含まれるLFキャリア信号の周波数とが一致しているか否か判定し、一致していると判定した場合は、スマート駆動を許可し、一致していないと判定した場合は、スマート駆動を許可しない。
一般的に、スペクトラム拡散方式の同期捕捉より逆拡散の方がS/N性能が良いので、同期捕捉のためのデータにLFキャリア信号を重畳しないことで、ゲインコントロール時の目標レベルを高く設定することができる。
また、携帯側制御部28は、ステップ460で、リクエストデータが正規のデータでないと判定した場合、アンサーデータの出力も、オンオフ回路31のオンも行わないので、キャリア変調信号66もアンサー信号67も無線送信することがなく、その分、電力の節約になる。
ここで、携帯機20のLF変調部3における目標レベルについて説明する。AGC回路30から出力されるLFキャリア信号のレベルは下記の最小値と最大値の範囲内に入ることが望ましい。
まず、最小値について説明する。車載システム10において第2FFT処理1bでFFT処理される合成信号は、アンサー信号37とキャリア変調信号36が重畳している合成信号から、キャリア変調信号36のピークを抽出することができる程度に、目標レベルを大きくしなければならない。
例えば、LF送信アンテナ2bでFFT処理を行った後に、最も強度の大きい2つの周波数特性の幅F2の1/2を、LFキャリア周波数とするなら、携帯側制御部28から出力される拡散変調データ(アンサーデータが拡散変調されたもの)のレベルよりも目標レベルが大きければよい。その意味で、目標レベルの最小値は、拡散変調データの最大レベルである。
なお、本実施形態とは異なり、携帯側制御部28において、アンサーデータが電圧信号として拡散変調部に出力され、拡散変調部がアンサーデータを拡散変調して拡散変調データとし、加算部32に出力するようになっている構成では、目標レベルの最小値は、拡散アンサーデータの最大レベルよりも14dB低い強度となる。これは、拡散変調によって電力ピークが14dB低くなるからである。ただし、条件としては、アンサーデータは100kcps、FFTの分解能は100Hzであるとする。
次に、最大値について説明する。拡散変調データとLFキャリア信号が重畳している重畳信号を逆拡散してLFキャリアを除去し、アンサーデータを復調できる程度に、目標レベルは小さくなくてはいけない。
本実施形態のように、同期捕捉用信号37aにLFキャリア信号が重畳されない場合は、目標レベルの最大値としては、拡散変調データの最大レベルよりも20dB高いレベルとなる。それとは違い、同期捕捉用信号37aにLFキャリア信号が重畳される場合では、目標レベルの最大値としては、拡散変調データの最大レベルよりも0dBから10dB程度高いレベルとなる。これは、同期捕捉より逆拡散の方がS/N性能が良いからである。ただし、条件としては、RFデータは100kbps、FFTの分解能は100Hzである。なお、目標レベルの最大値の具体的な値は、スマートシステムのS/N性能から決まるため、スマートシステムの作り方によって変化する。
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態について、第6実施形態と比較しながら説明する。図26は、本実施形態に係る車載システム10および携帯機20の構成図である。車載システム10のハードウェア構成は、RF復調部5を除いて第6実施形態のハードウェア構成(図14参照)と同じで、スマート制御部1、LF送信アンテナ2、LF変調部3、RF受信アンテナ4、RF復調部5、LFキャリア発振器6、A/Dコンバータ7、センサ8、アクチュエータ9等を有している。
RF復調部5は、第6実施形態と同じく、アンプ・フィルタ・D/C部51、FM復調部54、およびAGC回路55を有している。ただし、ハイパスフィルタ56およびローパスフィルタ57を有し、FM復調部54とAGC回路55の間にハイパスフィルタ56を介在させている点、および、FM復調部54とスマート制御部1の間にローパスフィルタ57を介在させている点が、第6実施形態と異なる。
ハイパスフィルタ56は、FM復調部54からハイパスフィルタ56に入力された信号のうち、所定の基準周波数よりも高い周波数成分のみをAGC回路55に出力する回路である。ローパスフィルタ57は、FM復調部54からローパスフィルタ57に入力された信号のうち、所定の基準周波数よりも低い周波数成分のみをスマート制御部1に出力する回路である。
携帯機20は、第6実施形態と同様、LF受信アンテナ21、アンプ22、LF復調部23、RF送信アンテナ24、FM変調部29、RFキャリア発振器26、携帯側制御部28を有している。そして、第1実施形態の切替回路27に代えて、AGC回路30、オンオフ回路31、および加算部32を有している。
AGC回路30は、アンプ22が出力した信号の平均信号レベルを所定の目標レベルに維持するよう増幅し、増幅された信号をオンオフ回路31に入力する。オンオフ回路31は、AGC回路30から入力された信号を加算部32に入力するオン状態と、AGC回路30から入力された信号を加算部32に入力するオフ状態とを、切り替える回路であり、携帯側制御部28の制御に従って切り替えを行う。
加算部32は、携帯側制御部28が出力した信号(例えばアンサー信号)に対し、オンオフ回路31が出力した信号を加算し、加算結果の信号をFM変調部29に入力する。FM変調部29は、加算部32から入力された信号に対し、RFキャリア発振器26からのRFキャリア信号を用いてFM変調し、RF送信アンテナ24を用いてFM変調後の信号を無線送信する。
以下、このような構成のスマートシステムの作動について、第6実施形態と比較して説明する。図27に、スマート制御部1のメイン処理1dのフローチャートを示し、図28に、携帯側制御部28が実行する処理のフローチャートを示す。また、図29に、LF帯域でやりとりされる信号とRF帯域でやりとりされる信号のタイミング図を示す。
まず、図1(a)に示すように、携帯機20を有するユーザ91が、車両に近づき、車載システム10の通信可能範囲53に携帯機20が入った場合の事例について説明する。携帯機20の携帯側制御部28は、図28のステップ450で、LF帯域の信号を取得するまで(すなわち携帯機20のLF復調部23が所定の強度以上の信号を受信するまで)待機している。このとき、オンオフ回路31は、AGC回路30から入力された信号を加算部32に出力しないオフ状態としている。
また、車載システム10のスマート制御部1は、メイン処理1dにおいて、ステップ905で、第6実施形態のステップ605と同様、送信タイミングが訪れるまで待機する。送信タイミングが訪れると、続いてステップ910に進み、所定のリクエストデータを出力するようデータ出力処理1cに指令する。すると、第6実施形態と同じ作動により、リクエストデータを含むリクエスト信号64(図29参照)が、LF送信アンテナ2から無線送信される。リクエスト信号64の送信開始から送信完了までの時間(送信時間)は、数ミリ秒から50ミリ秒の範囲内のいずれかである。
このとき携帯機20では、LF受信アンテナ21がリクエスト信号64を受信し、アンプ22でこのリクエスト信号64が増幅される。増幅されたリクエスト信号64は、LF復調部23および(AGC回路30を経て)オンオフ回路31に入力されるが、オンオフ回路31はオフ状態にあるので、リクエスト信号64はオンオフ回路31からFM変調部29には入力されない。LF復調部23は、入力されたリクエスト信号64を復調してリクエストデータを取得し、取得したリクエストデータを携帯側制御部28に入力する。
携帯側制御部28は、リクエストデータの入力が始まると、ステップ510に進み、入力されたリクエストデータを取得する。そしてリクエストデータの取得が終了した時点t1(図29参照)で、ステップ515、520で、第6実施形態のステップ460、465と同じ方法で、取得したリクエストデータが正規なものか否かを判定する。
本事例では、リクエストデータは正規の車載システム10から受信したものなので、ステップ520では、リクエストデータが正規のものであると判定し、ステップ525に進む。
なお、本事例と違い、正規でない車載システム10または他の通信機器から信号を携帯機20が受信した場合は、ステップ520では、当該リクエストデータが正規のデータでないと判定する。その場合、アンサーデータを出力しないまま処理はステップ505に戻る。したがって、携帯機20から車載システム10にアンサー信号が無線送信されず、車載システム10においてスマート駆動も実行されない。
本事例の説明に戻る。メイン処理1dにおいてスマート制御部1は、データ出力処理1cがリクエストデータの出力を終了した時点t1において、ステップ915に進み、LFキャリアの出力を開始するための制御を、第6実施形態のステップ615と同じ方法で行う。これにより、LF変調部3は、LF送信アンテナ2を用いて無変調波であるLFキャリア信号65を無線送信し始める。
なお、データ出力処理1cおよびLF変調部3によるこのLFキャリア信号65の送信は、時刻t1から時刻t2までの期間(例えば、十数ミリ秒)続ける。この時刻t1から時刻t2までの期間は、ローカルキャリア信号およびAGC回路55でAGC後のLFキャリア信号の信号取得時間と比べて、図29の期間68だけ長い。
そして、LF変調部3がLFキャリア信号を無線送信し始めてすぐに、メイン処理1dでは、ステップ920に進み、LFキャリア発振器6からA/Dコンバータ7に入力されてデジタル信号となったLFキャリア信号(第1のキャリア信号の一例に相当する)の取得を開始する。このとき、まだLF変調部3ではLFキャリア信号64の無線送信が継続中なので、A/Dコンバータ7から取得するローカルキャリア信号は、無線送信に用いられているLFキャリア信号64と同じ信号であり、当然、周波数も同じである。メイン処理1dでは続いてステップ825に進み、RF復調部5がRF帯域の信号を受信するまで待機する。
一方、携帯機20において、携帯側制御部28は、既に説明した通り、ステップ520でリクエストデータが正規のものであると判定し、ステップ525に処理を進める。ステップ525に処理を進めた時点は、リクエスト信号64を取得し終えた時刻t1よりも遅い時刻t7である。
この時刻t1から時刻t7までの期間は、リクエストデータの認証処理時間68である。つまり、この期間68は、リクエストデータが正規のデータであるか否かの判定を行うのに要する時間である。
ステップ525では、所定のアンサーデータを作成し、作成したアンサーデータ加算部32に出力開始する。続いてステップ530では、アンサーデータの出力開始とほぼ同じ時点t7で、オンオフ回路31をオン状態に切り替える。これにより、オンオフ回路31から出力される信号と、携帯側制御部28から出力される信号が、加算部32において重畳(加算)されて重畳信号としてFM変調部29に出力される。
ステップ525でオンオフ回路31がオン状態に切り替えられた時点t7では、まだ車載システム10からLFキャリア信号65が無線送信され続けているので、オンオフ回路31がオン状態になると、AGC回路30で平均レベルが目標レベルに調整されたLFキャリア信号65が、オンオフ回路31を介して加算部32に入力され始める。加算部32では、このLFキャリア信号65に、アンサーデータの信号が加算され、加算後の重畳信号が、FM変調部29でFM変調される。そして、FM変調後の合成信号が、RF送信アンテナ24から無線送信され始める。
このようにして、時刻t7においてRF送信アンテナ24から送信され始める信号は、LFキャリア信号65がFM変調されたキャリア変調信号66と、アンサーデータがFM変調されたアンサー信号67とが合成された合成信号である。
一方、車載システム10では、キャリア変調信号66とアンサー信号67の合成信号が無線送信され始める時点t7において、RF復調部5がRF受信アンテナ4を介してこの合成信号66、67を受信し、アンプ・フィルタ・D/C部51で増幅、不要な信号のフィルタリング、およびIFへの周波数ダウンコンバートを行い、FM復調部54がFM復調して合成信号66、67から重畳信号(LFキャリア信号64にアンサーデータが加算された信号)を復元する。
そして、ローパスフィルタ57は、この重畳信号のうち、基準周波数以下の成分のみをスマート制御部1に出力する。ローパスフィルタ57の基準周波数としては、重畳信号中のLFキャリア信号64の周波数よりも小さく、重畳信号中のアンサーデータの信号の周波数よりも大きくするという制限がある。また、基準周波数は、リレーステーションアタックによって変化すると想定されるLFキャリア信号64の最低の周波数よりも低くするという制限もある。したがって、ローパスフィルタ57は、重畳信号からアンサーデータの信号のみを取り出してスマート制御部1に出力することができる。
例えば、アンサーデータの信号のビットレートが1kbpsの場合、基準周波数は例えば1kHzより高くしてもよい。また、LFキャリア信号の周波数が134kHzの場合、基準周波数は例えば100kHzより低くしてもよい。例えば、50kHzを基準周波数としてもよい。
または、ハイパスフィルタ56FM復調部54からの重畳信号のうち、基準周波数以上の成分のみをスマート制御部1に出力する。ハイパスフィルタ56の基準周波数については、ローパスフィルタ57の基準周波数と同様の制限がある。したがって、ハイパスフィルタ56は、重畳信号からLFキャリア信号65のみを取り出してAGC回路55に出力することができる。
そして、AGC回路55からは、平均信号レベルが所定レベルになるよう増幅されたLFキャリア信号65(AGC後のLFキャリア信号65)が、スマート制御部1に入力され始める。
このようにスマート制御部1に信号が入力されると、メイン処理1dにおいて処理はステップ930に進む。ステップ930では、スマート制御部1は、AGC後のLFキャリア信号65を取得し始める。この時点t7では、まだLF変調部3ではLFキャリア信号65の送信が継続中である。
続いてステップ935に進み、アンサーデータの取得を開始する。具体的には、ローパスフィルタ57から入力され始めたアンサーデータを順次取得し始める。この時点t7では、まだLF変調部3ではLFキャリア信号65の送信が継続中である。
その後、時刻t2よりも前の時点において、スマート制御部1によるローカルキャリア信号の取得が完了する。これは、本実施形態では、ローカルキャリア信号の信号取得時間よりも期間68の方が短く、かつ、当該信号取得時間よりも時刻t1からt2までの期間の方が長いからである。
その後、時刻t2において、LF変調部3でLFキャリア信号の送信が終了し、ほぼ同時に、携帯機20のオンオフ回路31から加算部32へのLFキャリア信号65の出力も終了する。すると、携帯機20のRF変調部25ではキャリア変調信号66の無線送信が終了し、アンサー信号37の無線送信のみが継続されるようになる。
その時点t2において、スマート制御部1によるAGC後のLFキャリア信号65の取得が完了する。これは、AGC後のLFキャリア信号55の信号取得時間が時刻t7から時刻t2までの期間と同じ長さだからである。
この時点で、メイン処理1dにおいて処理がステップ940に進み、ローカルキャリア信号を、AGC後のLFキャリア信号65に乗算する。そしてステップ945で、乗算後の信号のうち、不要な高周波数成分を除去するため、第6実施形態と同様にローパスフィルタ処理する。
本事例では、ローカルキャリア信号と、AGC後のLFキャリア信号65は、共に同じ周波数のキャリア信号であるから、乗算およびローパスフィルタ処理の結果、直流信号を得る。
続いてステップ950では、乗算およびローパスフィルタ処理の結果得た信号が、直流信号であるか否かを判定する。本事例では、結果の信号は上述の通りなので、直流信号であると判定し、処理をステップ955に進める。ステップ950からステップ955に進むことは、スマート駆動を(アンサー信号が正規であるという条件付きで)許可することに相当する。
ステップ955では、第6実施形態のステップ650と同じ方法で、リレーステーションアタックの介入がないと判定する。続いてステップ960では、ローパスフィルタ57からすべてのアンサーデータを取得するまで待機する。
一方、携帯側制御部28では、ステップ530に続くステップ535で、アンサーデータの出力完了まで待つ。そして、出力が完了すると、処理をステップ505に戻す。携帯機20が信号の無線送信を完了した時点で、スマート制御部1は、ローパスフィルタ57からすべてのアンサーデータを取得することができ、その時点で、ステップ960、965において、第6実施形態のステップ865、870と同じ方法で、取得したアンサーデータが正規なものか否かを判定する。
本事例では、アンサーデータは正規の(すなわち、車載システム10に対応する)携帯機20から受信したものなので、ステップ965では、アンサーデータが正規のものであると判定し、ステップ970に進み、スマート駆動を実行する。これにより、ユーザががドアを開けて車内に入り、エンジンを始動させることができる。ステップ970の後、図27の処理は終了する。
なお、本事例と違い、正規でない車載システム10または他の通信機器から信号を車載システム10が受信した場合は、ステップ965では、当該アンサーデータが正規のデータでないと判定する。その場合、ステップ970を迂回して、スマート駆動を行わずに禁止し、処理をステップ905に戻す。
以上のように、車載システム10から携帯機20にLFキャリア信号(第1のキャリア信号の一例に相当する)を送信し、携帯機20がこのLFキャリア信号をRFキャリア信号(第2のキャリア信号の一例に相当する)で変調し、キャリア変調信号として車載システム10に返す場合、本事例のようにリレーステーションアタックの介入がない場合は、車載システム10から送信するLFキャリア信号65の周波数と、携帯機20が受信するキャリア変調信号66に含まれるLFキャリア信号65の周波数は同じはずである。したがって、スマート制御部1は、ステップ950で直流であると判定し、スマート駆動を許可することができる。
ここで、図1(b)、(c)のように、リレーステーションアタックが介入した事例について、リレーステーションアタックが介入していない事例との違いを中心に説明する。本事例においては、携帯機20を携帯するユーザ91は、リクエスト信号の到達範囲内53の範囲内に入っていないが、車両または車両内の物を窃盗しようと企てるグループが、RA中継器94をリクエスト信号の通信可能範囲53内に配置し、RA中継器95を携帯機20の近傍に配置する。これにより、車載システム10から送信されたリクエスト信号が、RA中継器94、95で中継され、携帯機20に届くようになる。
この場合、車載システム10からリクエスト信号64が無線送信され、LFキャリア信号65が無線送信され始めるまで(メイン処理1dの処理で言えばステップ925まで)は、リレーステーションアタックの介入がない場合の事例と同じである。
しかし、リレーステーションアタックが介入する本事例では、送信されたLFキャリア信号65は、中継器94でRF帯域に周波数アップコンバートされ、更に中継器95でLF帯域に周波数ダウンコンバートされることで、ダウンコンバートされた後のLFキャリア信号65の周波数が、アップコンバート前の周波数に対して僅かにずれてしまう。
一方、携帯機20では、リクエスト信号64を受信(図28のステップ505、510参照)した後、リレーステーションアタックの介入により周波数がずれてしまったLFキャリア信号65を受信し、AGC回路30、オンオフ回路31、加算部32を経て、このLFキャリア信号65を変調したキャリア変調信号66を含む合成信号を無線送信する(図28のステップ530参照)する。
そのようにして携帯機20から無線送信されて車載システム10のRF復調部5でFM復調およびAGC処理された後のLFキャリア信号65は、LF変調部3から送信したときのLFキャリア信号65に対して、周波数ずれが生じてしまっている。
したがって、メイン処理1dにおいてローカルキャリア信号とAGC後のLFキャリア信号65とを乗算し、ローパスフィルタ処理を施した結果の信号は、その周波数ずれ量に相当する周波数のキャリア信号となる。
したがって、スマート制御部1は、ステップ950で、ローパスフィルタ処理後の信号が直流でないと判定し、処理をステップ975に進める。処理をステップ950からステップ975に進めることは、スマート駆動を許可せず禁止することに相当する。
ステップ975では、リレーステーションアタックの介入があると判定する。具体的には、上述したRAフラグの値をオンにセットする。ステップ975の後、処理はステップ905に戻る。なお、スマート制御部1は、RAフラグの値がオンになったことに基づいて、車両外に警告報知を行うため、車両のホーンを吹鳴させる等の制御を行うようになっていてもよい。
このように、リレーステーションアタックが介入すると、RA中継器94、95でLFキャリア信号65のアップコンバートおよびダウンコンバートを行う際に、RA中継器94、95に内蔵のキャリア発振器が用いられる。これらRA中継器94、95に内蔵のキャリア発振器は、個体間のばらつきにより、互いに周波数が一致することはほとんどない。したがって、リレーステーションアタックが介入すると、車載システム10から送信するLFキャリア信号65の周波数に対し、携帯機20で受信するLFキャリア信号65の周波数が、ずれてしまう。
したがって、周波数がずれた状態のLFキャリア信号65が変調されたキャリア変調信号66を車載システム10が受信し、そのキャリア変調信号66に含まれるLFキャリア信号65の周波数を、ローカルキャリア信号の周波数と比較しても、同じとはならない。
本実施携帯においては、このような特性を利用して、ローカルキャリア信号の周波数と、キャリア変調信号66に含まれるLFキャリア信号65の周波数とが一致している場合には、リレーステーションアタックの介入がないと判定してスマート駆動を許可し、一致しない場合には、リレーステーションアタックの介入があると判定してスマート駆動を許可しない。このようにすることで、リレーステーションアタックの遅延時間にかかわらず、リレーステーションアタックの介入の有無を判定することができる。
また、本実施形態においては、携帯機20は、LFキャリア信号の平均レベルを所定の目標レベルに維持するゲインコントロール(増幅制御)と、ゲインコントロールされたLFキャリア信号を所定のアンサーデータ(アンサーデータに基づくデータの一例に相当する)に加算して重畳信号とする処理と、重畳信号をFM変調して、キャリア変調信号66およびアンサー信号67を含む合成信号とする処理と、合成信号の無線送信と、を行い、車載システム10は、合成信号中のキャリア変調信号66を無線受信してFM復調し、取得したローカルキャリア信号の周波数と、受信したキャリア変調信号66に含まれるLFキャリア信号65の周波数とが一致しているか否か判定し、一致していると判定した場合は、スマート駆動を許可し、一致していないと判定した場合は、スマート駆動を許可しない。
このように、車載システム10が、リクエスト信号64およびLFキャリア信号35の順に無線送信したとき、携帯機20が、アンサーデータに基づくデータとLFキャリア信号とを加算した重畳信号を変調して合成信号として無線送信する。このようにすることで、携帯機20側においてアンサーデータとLFキャリア信号65とを同時に無線送信することができるので、車載システム10と携帯機20の間の通信のレスポンスが向上する。また重畳の際、LFキャリア信号65が所定の目標レベルに保たれるので、車載システム10と携帯機20の距離によっては車載システム10でLFキャリア信号65の周波数が特定困難になるという事態が発生する可能性を低減することができる。
また、携帯側制御部28は、ステップ520で、リクエストデータが正規のデータでないと判定した場合、アンサーデータの出力も、オンオフ回路31のオンも行わないので、キャリア変調信号66もアンサー信号67も無線送信することがなく、その分、電力の節約になる。
(第9実施形態)
次に、本発明の第9実施形態について説明する。上記第1〜第8実施形態では、車載システム10からリクエストデータおよびLFキャリア信号を送信し、それに応じて携帯機20からキャリア変調信号およびアンサーデータを返信することで、スマート駆動を実現している。しかし、必ずしもこのようになっておらずともよく、例えば、図30に示すような通信手順を実行した後、スマート駆動を実現するようになっていてもよい。
図3の手順においては、まず、車両の周辺に携帯機20がいるかの確認を行う段階Aにおいて、まずスマート制御部1がLF変調部3にLFデータを出力することで、LF変調部3が、このLFデータを含む第1の車載側信号13(長さ数ミリ秒)を無線送信する。携帯機20では、LF受信アンテナ21、アンプ22、LF復調部23によってこの第1の車載側信号13を無線受信し、携帯側制御部28がこの第1の車載側信号13に含まれるLFデータを取得する。そして携帯側制御部28は、このLFデータを取得したことに基づいて、RF変調部25(またはFM変調部29)にRFデータを出力する。これにより、RF変調部25(またはFM変調部29)が、このRFデータを含む第1の携帯側信号14(長さ数ミリ秒)を無線送信する。車載システム10では、RF復調部5によってこの第1の携帯側信号14を無線受信し、スマート制御部1がこの第1の携帯側信号14に含まれるRFデータを取得する。
次に、車載システム10と携帯機20が相互に正規のものであるか否か、および、リレーステーションアタックがあるか否かを判定するための段階Bにおいて、車載システム10は、上記第1の携帯側信号14を受信したことに基づいて、第1〜第8実施形態に示したように、リクエスト信号(リクエストデータを含む)とLFキャリア信号とを含む第2の車載側信号15を無線送信し、携帯機20は、その第2の車載側信号15を無線受信したことに基づいて、アンサー信号(アンサーデータを含む)とキャリア変調信号(LFキャリア信号が変調された信号)とを含む第2の携帯側信号16を無線送信する。そして車載システム10は、この第2の携帯側信号16を受信し、受信した第2の携帯側信号16に基づいて、リレーステーションアタックが介入しているか否か、および、携帯機20が正規の携帯であるか否かを判定する。
次に、暗号による認証を行う段階Cにおいて、車載システム10のスマート制御部1は、携帯機20が正規の携帯であると判定したことに基づいて、スマート制御部1がLF変調部3に暗号認証用のLFデータを出力することで、LF変調部3が、このLFデータを含む第3の車載側信号17(長さ数十ミリ秒)を無線送信する。このLFデータには、リレーステーションアタックが介入しているか否かを示すRAデータ17aを含めている。
携帯機20では、LF受信アンテナ21、アンプ22、LF復調部23によってこの第3の車載側信号17を無線受信し、携帯側制御部28がこの第3の車載側信号17に含まれる暗号認証用のLFデータを取得する。
そして携帯側制御部28は、このLFデータを取得すると、RAデータ17aに基づいて、リレーステーションアタックの介入があるか否かを判定し、介入がないと判定した場合(RAデータがリレーステーションアタックの介入がないことを示している場合)は、LFデータを用いて所定の認証処理を行い、認証に成功すると、RF変調部25(またはFM変調部29)に認証用のRFデータを出力する。これにより、RF変調部25(またはFM変調部29)が、このRFデータを含む第3の携帯側信号18(長さ数ミリ秒)を無線送信する。車載システム10では、RF復調部5によってこの第3の携帯側信号18を無線受信し、スマート制御部1がこの第3の携帯側信号18に含まれるRFデータを用いて認証を行い、認証に成功すると、スマート駆動を実行する。
しかし、携帯側制御部28が、RAデータ17aに基づいて、リレーステーションアタックの介入があるか否かを判定し、介入があると判定した場合(RAデータがリレーステーションアタックの介入があることを示している場合)は、携帯機20が有する報知装置(発光装置、音出力装置、振動装置等、図示せず)を作動させることで、リレーステーションアタックの介入があることをユーザに報知し、上述の第3の携帯側信号18を送信しない。これにより、スマート駆動を防止できると共に、携帯機20のユーザにリレーステーションアタックの介入を知らせることができる。また、認証のための段階CにRAデータ17aの送信を組み込むことで、リレーステーションアタックの介入をユーザに知らせるための通信回数を増やさずに済む。
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。例えば、以下のような形態も許容される。
(1)上記実施携帯では、RF帯域域の変調方式として、BPSK、FM等を例示したが、変調方式としては、PSK、PM、ASK、AM、FSK、FM方式のどれを採用しても良い。
(2)また、上記第1〜第6実施形態において、携帯側制御部28は、送信するアンサーデータをスペクトラム拡散法式(例えば直接拡散方式)で拡散変調し、スマート制御部1は、受信した信号を逆拡散してアンサーデータを復元するようになっていてもよい。
(3)また、上記実施形態では、リクエストデータが正規のデータであるか否かの処理に要する時間が、LFキャリア信号の取得時間よりも短く、また、LFキャリア信号のFFT時間よりも短くなっている。しかし、リクエストデータが正規のデータであるか否かの処理に要する時間が、LFキャリア信号の取得時間よりも長くなっていてもよいし、また、LFキャリア信号のFFT時間よりも長くなっていてもよい。