以下に、本発明にかかるレーザ加工装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す図面においては、理解の容易のため、各部材の縮尺が実際とは異なる場合がある。各図面間においても同様である。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかるレーザ加工装置100の構成を示す図である。レーザ加工装置100は、加工対象物11にレーザビーム2を照射して、保持テーブル12に保持された加工対象物11へのレーザ加工を行う装置である。レーザ加工装置100は、レーザ発振器1と、反射ミラー3と、加工ヘッド4と、アシストガス(加工ガス)供給源5と、ガス路6と、制御部7Aと、レーザビーム移動部8とを備えている。
レーザ発振器1は、パルス状のレーザビーム(パルスレーザビーム、以下レーザビームと呼ぶ場合がある)を発振してパルスレーザビーム2(以下、レーザビーム2と呼ぶ場合がある)として出力する。
反射ミラー3は、レーザ発振器1から出力されたレーザビーム2を加工ヘッド4側へ反射して偏向させる。すなわち、レーザ発振器1から出力されたレーザビーム2は、反射ミラー3を用いて加工ヘッド4に導かれる。なお、図1においては、反射ミラー3を1つのみ示しているが、実際には複数の反射ミラー3が用いられる。
加工ヘッド4は、内部に加工レンズ9を備え、またレーザビーム2の出射側にレーザビームノズル10を備えている。加工ヘッド4に導かれたレーザビーム2は、加工レンズ9で集光(収束)されてレーザビームノズル10から出射され、加工対象物11に照射される。
アシストガス(加工ガス)供給源5は、加工ヘッド4に送るアシストガス(加工ガス)を格納しており、アシストガス(加工ガス)をガス路6に送出する。ガス路6は、アシストガス供給源5から送られてくるアシストガスを、加工ヘッド4に導入する。これにより、加工ヘッド4にアシストガスが供給され、加工ヘッド4のレーザビームノズル10からアシストガスが送出される。加工ヘッド4から送出されたアシストガスは、加工対象物11上のレーザビーム2の照射位置に吹き付けられる。
レーザビーム移動部8は、加工ヘッド4および反射ミラー3を保持テーブル12の面方向(XY方向)において同期して移動させて、加工対象物11に照射するレーザビーム2を走査する。なお、加工対象物11の加工面の面方向は、保持テーブル12の面方向(XY方向)と平行な方向とされる。図2は、レーザビーム移動部8の一例を示す模式図である。レーザビーム移動部8は、たとえば加工ヘッド4および反射ミラー3に固定され、該加工ヘッド4および反射ミラー3を保持テーブル12の面方向(XY方向)において同期して移動させるXY移動機構8Aによって構成される。なお、図2においては、反射ミラー3の記載を省略している。
XY移動機構8Aは、加工対象物11上においてピアスを形成する所望のピアス加工位置(ピアス中心位置)まで加工ヘッド4および反射ミラー3を同期して移動させる。また、XY移動機構8Aは、ピアス中心位置まで移動させた加工ヘッド4および反射ミラー3を、保持テーブル12の面方向(XY方向)において、ピアス加工領域(ピアス中心位置の周辺領域)において周期的に移動(駆動)させてピアス加工を行う。
制御部7Aは、数値制御装置などであり、ピアス加工プログラムに基づいて、ピアス加工時におけるレーザ発振器1およびレーザビーム移動部8の動作を制御する。
図3は、実施の形態1にかかるレーザ加工装置100の制御部7Aの構成およびピアス加工時の処理を説明する図である。制御部7Aは、たとえば汎用のコンピュータなどであり、レーザ発振器1およびレーザビーム移動部8に所定の制御情報を送信することにより、該レーザ発振器1およびレーザビーム移動部8の動作を制御する。制御部7Aは、ピアス加工プログラム格納部21と、レーザビーム出力指令生成部22と、周期移動指令生成部23と、ピアス中心位置指令生成部24と、同期指令生成部25とを備えている。なお、制御部7Aは、汎用のコンピュータ以外にも、専用の装置により構成することも可能である。
ピアス加工プログラム格納部21は、ピアス加工に関する各種情報および手順が記述されたピアス加工プログラムを記憶する。各種情報には、加工対象物11の加工条件や加工位置などの情報が含まれ、レーザビーム条件、周期移動条件、ピアス中心座標情報が含まれている。
レーザビーム条件は、ピアス加工においてレーザ発振器1が発振して出力するレーザビーム2の発振周波数(レーザ周波数)、出力波形のデューティ比(レーザデューティ比)、レーザビームのレーザ出力(パワー)、ビーム径などの条件が含まれる。なお、ここでのレーザビームの発振周波数(レーザ周波数)は、後述する周波数の同期が行われていない非同期の状態である。
周期移動条件は、ピアス加工におけるレーザビームの周期的移動パターン、すなわち加工ヘッド4を所定のパターンで周期的に移動させるパターン、およびレーザビームの周期的移動の周波数が含まれる。
ピアス中心座標情報は、加工対象物11上においてピアスを形成する所望のピアス加工点の中心位置(ピアス中心位置)を示す情報であり、XY方向におけるピアス中心座標である。
そして、ピアス加工プログラム格納部21は、レーザビーム条件をレーザビーム出力指令生成部22へ、周期移動条件を周期移動指令生成部23へ、ピアス中心座標情報をピアス中心位置指令生成部24へ出力する。
レーザビーム出力指令生成部22は、レーザビーム条件に基づいてレーザビーム出力指令(非同期)を生成して同期指令生成部25へ出力する。レーザビーム出力指令(非同期)は、レーザ発振器1に対してレーザビームの出力を指示する指令情報である。レーザビーム出力指令(非同期)は、レーザ発振器1が出力するレーザビームの発振周波数(レーザ周波数)、出力波形のデューティ比(レーザデューティ比)、レーザビームのレーザ出力(パワー)、ビーム径などの、ピアス加工プログラムに設定されたレーザビーム条件を含む。レーザビーム出力指令(非同期)は、レーザビームの周波数とレーザビームの周期的移動の周波数とが所定の倍率で同期されていない状態のレーザビーム出力指令である。
周期移動指令生成部23は、周期移動条件に基づいて周期移動指令を生成し、同期指令生成部25へ出力する。周期移動指令は、レーザビーム移動部8に対して加工ヘッド4の周期的な移動パターン(レーザビームの周期的移動パターン)を指示する指令情報である。加工ヘッド4を周期的に移動させることにより、加工対象物11に照射するレーザビーム2を周期的に移動(走査)することができる。すなわち、周期移動指令は、ピアス加工を行う際のレーザビームの周期的移動パターンを制御するための指令情報である。
ピアス中心位置指令生成部24は、ピアス中心座標情報に基づいてピアス中心位置指令を生成し、同期指令生成部25に出力する。ピアス中心位置指令は、レーザビーム移動部8に対して、加工対象物11上において加工ヘッド4を移動させてピアス加工を行うピアス加工点の中心位置(ピアス中心位置)を指示する指令情報である。
同期指令生成部25は、レーザビーム出力指令(非同期)、周期移動指令、ピアス中心位置指令に基づいて、レーザビーム出力指令(同期)とレーザビーム移動指令(同期)とを生成する。また、同期指令生成部25は、レーザビーム出力指令(同期)をレーザ発振器1へ、レーザビーム移動指令(同期)をレーザビーム移動部8へ出力する。
レーザビーム出力指令(同期)は、レーザビーム出力指令(非同期)および周期移動指令に基づいて生成される。レーザビーム出力指令(同期)は、上述したレーザビーム出力指令(非同期)と同様に、レーザ発振器1に対してレーザビームの出力を指示して制御する指令情報である。レーザビーム出力指令(同期)は、上述したレーザビーム出力指令(非同期)と同様に、レーザ発振器1が出力するレーザビームの出力波形のデューティ比(レーザデューティ比)、レーザビームのレーザ出力(パワー)、ビーム径などの、ピアス加工プログラムに設定されたレーザビーム条件を含む。
一方で、レーザビーム出力指令(同期)は、レーザビームの発振周波数(レーザ周波数)については、レーザビームの周波数とレーザビームの周期的移動とを所定の倍率で同期させた条件の発振周波数(レーザ周波数)条件を含む。具体的には、レーザビーム出力指令(同期)に含まれるレーザビームの発振周波数(レーザ周波数)は、レーザビーム移動指令(同期)に含まれるレーザビームの周期的移動の周波数の整数倍とされる。レーザビーム移動指令(同期)に含まれるレーザビームの周期的移動の周波数は、ピアス加工プログラムに設定された周波数である。
すなわち、レーザビーム出力指令(同期)とレーザビーム移動指令(同期)とは、レーザビーム出力指令(同期)におけるレーザ発振器1から出力されるパルスレーザビーム発振周波数(レーザ周波数)が、レーザビーム移動指令(同期)におけるレーザビームの周期的移動の周波数の整数倍となる条件で生成される。また、ここでは、レーザビーム移動指令(同期)に含まれるレーザビームの周期的移動の周波数は、ピアス加工プログラムに設定された周波数であるが、レーザビーム移動指令(同期)に含まれるレーザビームの周期的移動の周波数を調整した上で、レーザビームの発振周波数(レーザ周波数)をレーザビームの周期的移動の周波数の整数倍としてもかまわない。
レーザビーム移動指令(同期)は、周期移動指令およびピアス中心位置指令に基づいて生成される。レーザビーム移動指令(同期)は、レーザビーム移動部8に対して、加工対象物11上における加工ヘッド4のピアス加工点の中心位置(ピアス中心位置)への移動、および加工ヘッド4を周期的に移動させることによる加工対象物11に照射するレーザビーム2の周期的な移動(走査)を制御する指令情報である。レーザビーム移動指令(同期)は、周期移動指令およびピアス中心位置指令の内容を含み、ピアス加工を行うピアス加工点の中心位置(ピアス中心位置)の情報およびレーザビームの周期的移動パターン、すなわち加工ヘッド4の周期的な移動パターンの情報を含む。
レーザビーム移動部8は、レーザビーム移動指令(同期)に基づいて加工ヘッド4を移動させてレーザビーム2を周期的に走査する。レーザ発振器1は、レーザビーム出力指令(同期)に基づいて、レーザビーム移動部8によるレーザビームの走査に同期させてレーザビーム2を出力する。
つぎに、レーザ加工装置100によるピアス加工処理手順について説明する。レーザ加工装置100が加工対象物11の加工を開始すると、制御部7Aにおいて、ピアス加工プログラム格納部21が、レーザビーム条件をレーザビーム出力指令生成部22へ、周期移動条件を周期移動指令生成部23へ、ピアス中心座標情報をピアス中心位置指令生成部24へ出力する。
レーザビーム出力指令生成部22は、ピアス加工プログラム格納部21からレーザビーム条件が入力されると、該レーザビーム条件に基づいてレーザビーム出力指令(非同期)を生成して同期指令生成部25へ出力する。レーザビーム出力指令(非同期)は、レーザ発振器1が発振して出力するレーザビームの発振周波数(レーザ周波数)、出力波形のデューティ比(レーザデューティ比)、レーザビームのレーザ出力(パワー)、レーザビーム径などの、ピアス加工プログラムに設定されたレーザビーム条件を含む。
周期移動指令生成部23は、ピアス加工プログラム格納部21から周期移動条件が入力されると、該周期移動条件に基づいて周期移動指令を生成し、同期指令生成部25へ出力する。周期移動指令には、レーザビームの周期的移動パターン、すなわち加工ヘッド4の周期的移動パターンが含まれる。
ピアス中心位置指令生成部24は、ピアス加工プログラム格納部21からピアス中心座標情報が入力されると、該ピアス中心座標情報に基づいてピアス中心位置指令を生成し、同期指令生成部25に出力する。
つぎに、同期指令生成部25は、レーザビーム出力指令(非同期)、周期移動指令、ピアス中心位置指令が入力されると、これらの指令に基づいてレーザビーム出力指令(同期)とレーザビーム移動指令(同期)とを生成する。
同期指令生成部25は、レーザビーム出力指令(非同期)および周期移動指令に基づいて、レーザ発振器1に対してレーザビームの出力を制御する指令情報であるレーザビーム出力指令(同期)を生成する。同期指令生成部25は、レーザ発振器1が出力するレーザビームの出力波形のデューティ比(レーザデューティ比)、レーザビームのレーザ出力(パワー)などの、ピアス加工プログラムに設定されたレーザビーム条件をレーザビーム出力指令(同期)に含める。
一方で、同期指令生成部25は、レーザビームの発振周波数(レーザ周波数)については、レーザビームの周波数とレーザビームの周期的移動の周波数を所定の倍率で同期させた条件の発振周波数(レーザ周波数)条件をレーザビーム出力指令(同期)に含める。すなわち、同期指令生成部25は、レーザ発振器1が出力するレーザビームの発振周波数(レーザ周波数)を、レーザビーム移動指令(同期)に含まれるレーザビームの周期的移動の周波数の整数倍となる条件の周波数に変更・設定してレーザビーム出力指令(同期)に含める。レーザビーム移動指令(同期)に含まれるレーザビームの周期的移動の周波数は、ピアス加工プログラムによって設定された周波数である。また、上記の整数は、2以上の整数であればよい。
なお、上記においては、レーザビーム条件およびレーザビーム出力指令(非同期)において、レーザ発振器1が出力するレーザビームの発振周波数(レーザ周波数)としてピアス加工プログラムによって設定された周波数を含めているが、レーザビーム条件およびレーザビーム出力指令(非同期)にピアス加工プログラムによって設定された周波数を含めない構成としてもよい。この場合は、同期指令生成部25は、レーザビーム条件およびレーザビーム出力指令(非同期)にピアス加工プログラムによって設定された周波数を変更してレーザビーム出力指令(同期)に含めるのではなく、上述した条件のレーザビームの発振周波数(レーザ周波数)を同期指令生成部25で新規に生成すればよい。
また、同期指令生成部25は、周期移動指令およびピアス中心位置指令に基づいてレーザビーム移動指令(同期)を生成する。すなわち、同期指令生成部25は、周期移動指令およびピアス中心位置指令の内容を含むレーザビーム移動指令(同期)を生成する。
そして、同期指令生成部25は、レーザビーム出力指令(同期)をレーザ発振器1へ、レーザビーム移動指令(同期)をレーザビーム移動部8へ出力する。
レーザビーム移動部8は、同期指令生成部25からレーザビーム移動指令(同期)が入力されると、該レーザビーム移動指令(同期)に基づいて加工ヘッド4を加工対象物11上におけるピアス加工点の中心位置(ピアス中心位置)へ移動させる。そして、レーザビーム移動部8は、レーザビーム移動指令(同期)に基づいて加工ヘッド4を所定の周期的移動パターンで周期的に移動させることにより、加工対象物11に照射するレーザビーム2を所定の周期的移動パターンで周期的に移動(走査)させる。
そして、レーザ発振器1は、同期指令生成部25からレーザビーム出力指令(同期)が入力されると、該レーザビーム出力指令(同期)に基づいてレーザビームをレーザビーム移動部8によるレーザビーム2の走査に同期させて出力する。レーザ発振器1から出力されたレーザビーム2は、反射ミラー3などを用いて加工ヘッド4に導かれる。加工ヘッド4に導かれたレーザビーム2は、加工レンズ9で集光され、レーザビームノズル10を通って加工対象物11に照射される。また、レーザビーム2の照射に合わせて、加工ヘッド4のレーザビームノズル10からアシストガスが加工対象物11上のレーザビーム2の照射位置に吹き付けられる。
レーザ発振器1が出力するレーザビームの発振周波数(レーザ周波数)を、レーザビーム移動指令(同期)に含まれるレーザビームの周期的移動の周波数の整数倍に同期して、レーザビーム2を所定の周期的移動パターンで周期的に移動(走査)させることにより、レーザビームの周期的移動経路においてレーザビーム2の照射領域が確実に分散して固定され、照射されるレーザビーム2を有効利用して効率良くピアス加工を行うことができる。
図4は、実施の形態1にかかるレーザ加工装置100におけるピアス加工でのレーザビームの周期的移動パターン、ビーム照射領域、レーザビーム出力の例を説明する図である。図5は、実施の形態1にかかるレーザ加工装置100におけるピアス加工でのレーザビームの周期的移動パターン、ビーム照射領域の例を説明する図である。
図4および図5に示す例では、レーザ発振器1がレーザビーム出力指令(同期)に基づいて出力するレーザビーム2のデューティ比を20%としている。また、ピアス中心31からのビーム中心軌跡32の半径を、パルスレーザビーム2のビーム径より大きな円としている。また、レーザビームの周期的移動の周波数をレーザビームの周波数(レーザ周波数)の1/3とした場合について示している。なお、ピアス中心31は、加工されるピアスの中心である。ビーム中心軌跡32は、デューティ比を100%と仮定した場合にレーザビーム2の中心がたどる軌跡であり、レーザビームの周期的移動パターンに対応する。
図4では、ピアス加工の流れと、ビーム中心軌跡32におけるピアス中心31を中心としたビーム中心33のピアス中心周りの角度(以下、ピアス中心周りの角度と呼ぶ場合がある)に対するレーザビーム出力を示している。また、図5では、ピアス加工におけるレーザビーム2の周期的移動での1周期におけるビーム中心のビーム照射領域34とビーム径のビーム照射領域35を示している。図4および図5においては、ビーム中心33を黒丸印で、ビーム中心のビーム照射領域34を細長い黒塗り印で示している。ビーム中心のビーム照射領域34は、レーザビーム2のビーム強度がガウス分布している場合に一番密度が高い領域を示している。ビーム径のビーム照射領域35は、実際にレーザビーム2が加工対象物11に照射される範囲である。
レーザビーム移動指令(同期)に基づいて加工ヘッド4が周期的に移動することにより、レーザビーム2が周期的に移動する。そして、ビーム中心33は、レーザビーム移動指令(同期)に基づき、ビーム中心軌跡32上を所定の方向に回転する。すなわち、ビーム中心33はレーザビームの移動方向36の方向に沿って左回り方向に回転する。
ここで、図4(a)をピアス加工開始時におけるピアス加工開始位置とする(ピアス中心周りの角度:0[deg])。レーザビーム2の出力は、図4(g)に示すように0[deg]〜24[deg]の間にONとなり、レーザビーム2が照射される。したがって、ピアス中心周りの角度が24[deg]の時は、ビーム中心のビーム照射領域34とビーム中心33とは、図4(b)に示される位置となる。
つぎに、ピアス中心周りの角度が24[deg]を超えて120[deg]までの間は、図4(g)に示すようにレーザビーム2の出力がOFFとなるため、レーザビーム2は照射されない。
つぎに、図4(g)に示すようにピアス中心周りの角度が120[deg]の時にレーザビーム2の出力がONとなり、図4(c)に示すようにレーザビーム2が照射される。そして、レーザビーム2の出力は、図4(g)に示すように120[deg]を超えて144[deg]までの間にONとなり、レーザビーム2が照射される。したがって、ピアス中心周りの角度が144[deg]の時は、ビーム中心のビーム照射領域34とビーム中心33とは、図4(d)に示される位置となる。
つぎに、ピアス中心周りの角度が144[deg]を超えて240[deg]までの間は、図4(g)に示すようにレーザビーム2の出力がOFFとなるため、レーザビーム2は照射されない。
つぎに、図4(g)に示すようにピアス中心周りの角度が240[deg]の時にレーザビーム2の出力がONとなり、図4(e)に示すようにレーザビーム2が照射される。そして、レーザビーム2の出力は、図4(g)に示すように240[deg]を超えて264[deg]までの間にONとされ、レーザビーム2が照射される。したがって、ピアス中心周りの角度が264[deg]の時は、ビーム中心のビーム照射領域34とビーム中心33とは、図4(f)に示される位置となる。
つぎに、ピアス中心周りの角度が264[deg]を超えて360[deg](0[deg])までの間は、図4(g)に示すようにレーザビーム2の出力がOFFとなるため、レーザビーム2は照射されない。
以上の工程をレーザビームの周期的な移動(走査)の1周期として、上記の工程が複数周期繰り返される。これにより、ビーム中心軌跡32上においてレーザビーム2の照射領域が分散して固定される。そして、レーザビームの周期的移動の各周期において特定領域にのみレーザビーム2が照射されるため、照射されるレーザビーム2を有効利用して効率良くピアス加工を行うことができる。すなわち、ピアス加工において、レーザビーム2の照射領域を確実に分散・固定することにより、より大きなレーザビーム出力を投入しても、ピアス加工が不安定になることがない。
そして、レーザビームの周期的な移動(走査)の初期段階の周期では、加工対象物11の表面において、ビーム中心軌跡32上におけるビーム径のビーム照射領域35に3つの小さいピアス穴が分散して形成される。その後の周期では該小さいピアス穴内にレーザビーム2が照射され、該レーザビーム2が小さいピアス穴内で乱反射することにより小さいピアス穴の周囲の材料が溶融していく。このため、照射されるレーザビーム2を有効利用して効率良くピアス加工を行うことができ、ピアス加工時間を短縮することができる。そして、最終的には、3つの小さいピアス穴が溶融して広がり、連結して1つの大きなピアス穴が形成される。
なお、上記においては、レーザ発振器1が出力するレーザビームの発振周波数(レーザ周波数)を、レーザビーム移動指令(同期)に含まれるレーザビームの周期的移動の周波数の3倍(整数倍)とした。たとえばレーザビームの発振周波数(レーザ周波数)を、レーザビームの周期的移動の周波数の3.01倍とした場合においてもレーザビーム2の照射領域がピアス中心31を中心としてビーム中心軌跡32上を移動することになり、レーザビーム2の照射点の分散箇所をほぼ固定することができる。このため、上記と同程度のピアス加工時間で安定してピアス穴が形成できるという効果が得られる。
換言すると、上記においては、レーザビーム移動指令(同期)に含まれるレーザビームの周期的移動の周波数を、レーザ発振器1が出力するレーザビームの発振周波数(レーザ周波数)の1/3倍(整数分の1倍)とした。たとえばレーザビームの周期的移動の周波数をレーザビームの発振周波数(レーザ周波数)の1/3.01倍とした場合においてもレーザビーム2の照射領域がピアス中心31を中心としてビーム中心軌跡32上を移動することになり、レーザビーム2の照射点の分散箇所をほぼ固定することができる。このため、上記と同程度のピアス加工時間で安定してピアス穴が形成できるという効果が得られる。
また、上記においては、レーザ発振器1が出力するレーザビーム2のデューティ比を20%とした場合について示したが、デューティ比はこれに限定されず、加工対象物11の材料、加工深さ等の諸条件により適宜選択されればよい。ただし、デューティ比が50%を超える場合にはレーザビーム2による入熱過多による異常加工が発生するおそれがある。このため、デューティ比は50%以下とすることが好ましい。
また、加工対象物11の材料としては、レーザ加工によりピアス加工が可能な材料であれば特に限定されない。すなわち、加工対象物11の材料としては、たとえば鉄や銅やステンレスなどの金属であってもよく、ガラスやセラミックなどの絶縁体であってもよく、アクリルやエポキシなどの樹脂であってもよく、SiやGaAsなどの半導体であってもよく、さらにガラスエポキシ基板などの複合材であってもよい。
上述したように、実施の形態1においては、レーザ発振器1が出力するパルスレーザビームの発振周波数(レーザ周波数)を、レーザビームの周期的移動の周波数の整数倍に同期させる。これにより、レーザビームの周期的移動経路においてレーザビーム2の照射領域が確実に分散して固定され、照射されるレーザビーム2を有効利用して効率良くピアス加工を行うことができる。このため、レーザビーム2の照射領域を分散させない場合に異常加工が生じる高いレーザ出力(パワー)のレーザビーム2の照射においても、加工対象物11における入熱過多による異常加工を避けることができる。すなわち、実施の形態1においては、レーザビーム2の照射領域をレーザビームの周期的移動経路において任意に分散して固定することができ、ピアス加工時間を短縮するとともに安定してピアス加工を行うことができる。
したがって、実施の形態1によれば、高速かつ安定したピアス加工が可能となる。
実施の形態2.
上述した実施の形態1では、同期指令生成部25への入力をレーザビーム出力指令(非同期)、周期移動指令、ピアス中心位置指令の3つの情報とした。実施の形態2では、同期指令生成部25への入力をレーザビーム出力指令(非同期)、レーザビーム位置情報の2つの情報とする形態について説明する。図6は、実施の形態2にかかるレーザ加工装置の制御部7Bの構成およびピアス加工時の処理を説明する図である。なお、実施の形態2にかかるレーザ加工装置は、基本的に実施の形態1にかかるレーザ加工装置と同じ構成を有し、同じ動作を実施可能である。
実施の形態2では、レーザ加工装置が加工対象物11の加工を開始すると、制御部7Bにおいて、実施の形態1の場合と同様にしてレーザビーム出力指令(非同期)、周期移動指令、ピアス中心位置指令が生成される。そして、レーザビーム出力指令(非同期)は、同期指令生成部25に入力される。一方、図6に示すようにピアス中心位置指令に周期移動指令が加算されたレーザビーム移動指令(非同期)が、直接レーザビーム移動部8に入力される。
加工ヘッド4の近傍には位置センサ(図示せず)が設けられており、加工ヘッド4の現在位置(実際の位置)をフィードバック情報としてレーザビーム移動部8が取得する。そして、レーザビーム移動部8は、加工ヘッド4の現在位置(実際の位置)から、レーザビーム2の現在位置(実際の位置)をレーザビーム位置情報として取得する。レーザビーム移動部8は、取得したレーザビーム位置情報を同期指令生成部25に出力する。
同期指令生成部25は、レーザビーム移動部8からレーザビーム位置情報が入力されると、レーザビーム出力指令(非同期)とレーザビーム位置情報とに基づいてレーザビーム出力指令(同期)を生成し、レーザ発振器1に出力する。
同期指令生成部25は、レーザ発振器1が出力するレーザビームの出力波形のデューティ比(レーザデューティ比)、レーザビームのレーザ出力(パワー)などの、ピアス加工プログラムに設定されたレーザビーム条件をレーザビーム出力指令(同期)に含める。
一方で、同期指令生成部25は、レーザビームの発振周波数(レーザ周波数)については、レーザビームの周波数とレーザビームの周期的移動の周波数を所定の倍率で同期させた条件の発振周波数(レーザ周波数)条件をレーザビーム出力指令(同期)に含める。すなわち、同期指令生成部25は、レーザ発振器1が出力するレーザビームの発振周波数(レーザ周波数)を、レーザビーム位置情報から得られるレーザビームの周期的移動の周波数の整数倍となる条件の周波数に変更・設定してレーザビーム出力指令(同期)に含める。
同期指令生成部25は、レーザビーム位置情報を演算することによりレーザビームの周期的移動の周波数を取得する。すなわち、同期指令生成部25は、レーザビーム位置情報を時系列に沿って分析することにより、レーザビームの周期的移動パターン、レーザビームの周期的移動の周波数を得られる。
レーザ発振器1は、同期指令生成部25からレーザビーム出力指令(同期)が入力されると、該レーザビーム出力指令(同期)に基づいてレーザビームをレーザビーム移動部8によるレーザビーム2の走査に同期させて出力し、レーザビームの出力をオンオフさせる。
また、同期指令生成部25は、レーザビーム位置情報に基づいて、レーザ発振器1内でレーザビーム2の出射をオン/オフするタイミングを判断し、レーザビーム2の出射をオン/オフするタイミング情報をレーザビーム出力指令(同期)に含めてレーザ発振器1に出力してもよい。レーザビーム2の出射をオン/オフするタイミングは、複数回繰り返される周期において、レーザビームの周期的な移動経路でのレーザビーム2の照射領域が各周期で同じ位置になるタイミングである。
レーザビーム2の照射領域は、レーザビームの周期的移動の周波数とレーザビームの周波数とレーザビームの周期的移動パターンとにより、レーザビームの周期的移動経路において分散して固定されるが、レーザビーム2の出射をオン/オフするタイミングをレーザビーム位置情報に基づいて調整することにより、より精密なレーザビーム2の照射領域の位置制御が可能である。
以降は実施の形態1の場合と同様であり、レーザ発振器1から出力されたレーザビーム2は、反射ミラー3などを用いて加工ヘッド4に導かれる。加工ヘッド4に導かれたレーザビーム2は、加工レンズ9で集光され、レーザビームノズル10を通って加工対象物11に照射される。また、レーザビーム2の照射に合わせて、加工ヘッド4のレーザビームノズル10からアシストガスが加工対象物11上のレーザビーム2の照射位置に吹き付けられる。
このような処理を行うことにより、実際のレーザビーム位置を用いてレーザビーム出力指令(同期)を生成できるため、レーザビーム2の周波数やデューティ比を連続的に変化させた場合でもレーザビーム照射領域の位置制御精度を向上できる。
また、同期指令生成部25の処理をレーザ加工機搭載の数値演算装置で行うことも可能であるが、別途高速な処理を行える装置基板を用いて演算処理周期をより短くしてもよい。また、レーザビーム移動部8の目標追従応答を考慮してレーザビーム出力指令(同期)をレーザ発振器1に与えることにより、たとえば図7に示すようにレーザビームの周波数やデューティ比、ピーク出力(パワー)を連続的に変化させる場合においても、レーザビーム照射領域の位置制御精度を向上できる。図7は、連続的に変化するレーザビーム条件の一例を示す図である。図7(a)は、連続的に変化させたレーザビームの周波数条件の一例を示す図である。図7(b)は、連続的に変化させたレーザビームのデューティ比の一例を示す図である。図7(c)は、連続的に変化させたレーザビームのピーク出力(パワー)の一例を示す図である。
なお、同期指令生成部25はレーザ発振器1に設けられてもよい。同期指令生成部25がレーザ発振器1に設けられることにより、レーザビーム出力指令(同期)が生成されてからレーザ発振器1が該レーザビーム出力指令(同期)に従ってレーザビーム2を出力するまでのタイムラグを低減することができる。
図8は、実施の形態1および実施の形態2にかかる制御部としての機能を実現するコンピュータ装置200の構成の一例を模式的に示すブロック図である。図8に示されるように、コンピュータ装置200は、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置201、キーボードなどの入力装置202、演算を行うCPU203、ROM(Read Only Memory)などの不揮発性メモリ204、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリ205、表示装置201に表示する表示画面を記憶する表示用メモリ206、フラッシュメモリなどの着脱可能な外部メモリとのインタフェースである外部メモリインタフェース207、外部機器との間で通信を行う通信インタフェース208などがバス209を介して接続された構成を有する。なお、表示装置201および表示用メモリ206が含まれない構成などとしてもよい。
そして、不揮発性メモリ204に格納されて上記制御部としての機能の処理手順が記述されたプログラムが揮発性メモリ205にロードされ、CPU203によって実行される。このプログラムは、ハードディスク、CD(Compact Disk)−ROM(Read Only Memory)、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile DiskまたはDigital Video Disk)などのコンピュータ装置で読取可能な記録媒体に記録され、または、このプログラムは、インターネットなどのネットワーク(通信回線)を介して配布することもできる。この場合には、通信インタフェース208を介して接続された情報処理端末からプログラムが不揮発性メモリ204上に格納される。
上述したように、実施の形態2によれば、高速かつ安定したピアス加工が可能となり、特に、レーザビームの周波数やデューティ比、ピーク出力(パワー)を連続的に変化させる場合においても、レーザビームの照射範囲を任意に分散させることができ、高速かつ安定したピアス加工が可能となる。
実施の形態3.
図9は、レーザビーム移動指令(同期)におけるレーザビームの周期的移動パターンとレーザビーム照射領域との他の例を説明する図である。上述した実施の形態1では、レーザビーム2の照射点(照射領域)を3箇所、周期移動指令を図4および図5に示したビーム中心軌跡32のような円状とした。
ここで、レーザビーム2の照射点(照射領域)を3箇所にする場合には、レーザビーム移動指令(同期)におけるレーザビームの周期的移動パターンを、たとえば図9(a)に示すようにビーム中心軌跡32が三角形を描くようなパターンにしてもよい。
また、レーザビーム2の照射点(照射領域)は3箇所に限定されない。すなわち、上述した実施の形態1および実施の形態2で示した方法でピアス加工が実施できれば、レーザビーム2の照射点(照射領域)は、2箇所以上であれば特に限定されない。
たとえばレーザビーム2の照射点(照射領域)を5箇所とする場合には、レーザビーム移動指令(同期)におけるレーザビームの周期的移動パターンを、図9(b)に示すようにビーム中心軌跡32が円を描くようなパターンにしてもよく、また図9(c)に示すようにビーム中心軌跡32が5つの頂点を有する星形状の頂点同士をつなぐようなパターンにしてもよい。
実施の形態4.
図10は、実施の形態4にかかるレーザビーム移動部8を説明する図である。上述した実施の形態1では、レーザビーム移動部8を構成するXY移動機構8Aにより加工ヘッド4および反射ミラー3を保持テーブル12の面方向(XY方向)において移動させて、加工対象物11に照射するレーザビーム2を走査する場合について示した。実施の形態4では、図10に示すようにXY移動機構8Aに対して駆動範囲は狭いが高速で加工ヘッド4および反射ミラー3を保持テーブル12の面方向(XY方向)において駆動可能な微動XY移動機構8Bを用いてレーザビーム2を移動(走査)させる場合について説明する。なお、実施の形態4にかかるレーザ加工装置は、微動XY移動機構8Bをさらに備えること以外は、実施の形態1にかかるレーザ加工装置と同様の構成を備える。
加工ヘッド4の内部には、加工レンズ9の他に、加工レンズ9で集光されたレーザビーム2の中心軸がレーザビームノズル10の中心に位置するように、加工ヘッド4に入射されて加工レンズ9に入射するレーザビーム2の光路を調整するミラー等の加工ヘッド内光路調整光学部材(図示せず)が設けられている。図10においては、図示の関係上、加工ヘッド内光路調整光学部材と加工レンズ9とをまとめて加工ヘッド内光学部材41として示している。
微動XY移動機構8Bは、加工ヘッド内光路調整光学部材と加工レンズ9と反射ミラー3とレーザビームノズル10とに固定され、これらの部材を保持テーブル12の面方向(XY方向)において同期させて移動させる。なお、図10においては、反射ミラー3の記載を省略している。そして、微動XY移動機構8Bは、加工ヘッド4が加工対象物11上におけるピアス加工点の中心位置(ピアス中心位置)へ移動した後に、加工対象物11に照射するレーザビーム2を周期的に移動(走査)させる役割を担う。
すなわち、レーザビーム移動部8は、同期指令生成部25からレーザビーム移動指令(同期)が入力されると、該レーザビーム移動指令(同期)に基づいてXY移動機構8Aにより加工ヘッド4を加工対象物11上におけるピアス加工点の中心位置(ピアス中心位置)へ移動させる。
つぎに、レーザビーム移動部8は、レーザビーム移動指令(同期)に基づいて微動XY移動機構8Bにより加工ヘッド内光路調整光学部材と加工レンズ9と反射ミラー3とレーザビームノズル10とを同期させてXY方向において所定の周期的移動パターンで周期的に移動させることにより、加工対象物11に照射するレーザビーム2を周期的に移動(走査)させる。
このような処理を行うことにより、レーザ発振器1から出力されるレーザビーム2の発振周波数(レーザ周波数)が200Hz以上の高周波数の場合でも、実施の形態1の場合と同様にレーザビーム2の照射範囲を任意に分散・固定させることができ、高速かつ安定したピアス加工が可能となる。
また、加工ヘッド4全体ではなく、微動XY移動機構8Bにより加工ヘッド4内の一部を周期的に移動させるため、XY移動機構8Aにより加工ヘッド4全体を移動させることによりレーザビーム2を周期的に移動(走査)させる場合に比べて消費電力を削減できる。
したがって、実施の形態4によれば、レーザ発振器1から出力されるレーザビーム2の発振周波数(レーザ周波数)が高周波数の場合でも実施の形態1と同様に高速かつ安定したピアス加工が可能となる。また、消費電力を削減して、安価なピアス加工が可能となる。
実施の形態5.
図11は、実施の形態5にかかるレーザビーム移動部8を説明する図である。上述した実施の形態1では、レーザビーム移動部8を構成するXY移動機構8Aにより加工ヘッド4および反射ミラー3を保持テーブル12の面方向(XY方向)において移動させて、加工対象物11に照射するレーザビーム2を周期的に走査する場合について示した。実施の形態5では、図11に示すように電磁アクチュエータであるレンズ駆動アクチュエータ51を加工ヘッド4内に設けた場合について説明する。なお、実施の形態5にかかるレーザ加工装置は、レーザビーム移動部8としてレンズ駆動アクチュエータ51をさらに備えること以外は、実施の形態1にかかるレーザ加工装置と同様の構成を備える。
レンズ駆動アクチュエータ51は、加工レンズ9のみを駆動することによりレーザビーム2を保持テーブル12の面方向(XY方向)において移動させて、レーザビームノズル10の中心であるレーザビームノズル中心52に対してレーザビーム中心53をXY方向において偏心させることが可能である。これにより、加工対象物11に照射するレーザビーム2を所定の周期的移動パターンで周期的に移動(走査)させることができる。すなわち、レンズ駆動アクチュエータ51は、加工ヘッド4が加工対象物11上におけるピアス加工点の中心位置(ピアス中心位置)へ移動した後に、加工対象物11に照射するレーザビーム2を周期的に移動(走査)させる役割を担う。
レーザビーム移動部8は、同期指令生成部25からレーザビーム移動指令(同期)が入力されると、該レーザビーム移動指令(同期)に基づいてXY移動機構8Aにより加工ヘッド4を加工対象物11上におけるピアス加工点の中心位置(ピアス中心位置)へ移動させる。
つぎに、レーザビーム移動部8は、レーザビーム移動指令(同期)に基づいてレンズ駆動アクチュエータ51により加工レンズ9を保持テーブル12の面方向(XY方向)において所定の周期的移動パターンで周期的に移動させることにより、加工対象物11に照射するレーザビーム2を周期的に移動(走査)させる。この場合は、反射ミラー3を加工レンズ9と同期させてXY方向において移動させる必要はなく、加工レンズ9のみを駆動すればよい。また、レーザビーム2の照射に合わせて、加工ヘッド4のレーザビームノズル10からアシストガス(加工ガス)54が加工対象物11上のレーザビーム2の照射位置に吹き付けられる。このような処理を行うことにより、実施の形態1の場合と同様にレーザビーム2の照射範囲を任意に分散・固定させることができ、高速かつ安定したピアス加工が可能となる。
また、レンズ駆動アクチュエータ51により加工レンズ9をXY方向において駆動することによりレーザビーム中心53がレーザビームノズル中心52からレーザビームの移動方向55にずれるため、アシストガス54はレーザビームノズル中心52からも加工対象物11に向けて吹き付けられる。レーザビーム2の照射によって生じた加工対象物11の溶融物は、溶融直後にアシストガス54により吹き飛ばされ、レーザビーム2の移動方向と逆方向に飛散する。このため、レーザビーム2の移動方向に位置する照射予定領域への溶融物の飛散を避けることが可能となり、加工が安定しやすくなる。
つぎに、実施の形態5にかかるレーザ加工装置を用いてピアス加工を行ったピアス加工試験結果について説明する。ピアス加工試験の加工対象物としては、厚さ12mmの軟鋼材を用いた。まず、標準サンプルについてピアス加工試験を行った。標準サンプルについては、ピアス穴の径程度のビーム径のレーザビームを1箇所のレーザビーム照射領域に照射してピアス加工を行った。
つぎに、実施の形態5にかかるサンプルとして、上述した実施の形態5にかかるレーザ加工装置を用いてレーザビーム照射領域を3箇所〜8箇所に分散・固定し、レーザビーム出力(パワー)を標準サンプルの場合の1.5倍としてピアス加工を行った。そして、実施の形態5にかかるサンプルでは、これ以外の条件は標準サンプルと同じにしてピアス加工を行った。
図12は、実施の形態5にかかるレーザ加工装置を用いてピアス加工を行ったピアス加工試験における加工時間を示す特性図である。図13は、実施の形態5にかかるレーザ加工装置を用いてピアス加工を行ったピアス加工試験における加工時間の分散を示す特性図である。
図12および図13における横軸は、レーザビームの周波数とレーザビームの周期的移動の周波数(駆動周波数)とにより決まる照射領域数である。また、横軸における5(星)は、図9(c)に示すレーザビームの周期的移動パターンである。また、他の実施の形態5にかかるサンプルでは、レーザビームの周期的移動パターンを、図9(b)に示すようにビーム中心軌跡32が円を描くようなパターンにした。図12における縦軸は、所定の大きさおよび深さのピアスが形成されるまでの各試験サンプルの加工時間である。図12の縦軸では、標準サンプルである照射領域を1箇所とした場合の加工時間を基準(100%)としている。図13における縦軸は、ピアス加工の安定性を評価するピアス加工時間の分散であり、この値が小さいほど毎回同じ時間でピアス加工がなされ、加工が安定していることになる。図13の縦軸では、標準サンプルである照射領域を1箇所とした場合の加工時間の分散を基準(100%)としている。
図12から分かるように、実施の形態5にかかるサンプルでは、レーザビームの照射領域を複数箇所にして固定することにより、12%〜18%の加工時間短縮効果が得られた。また、図13から分かるように、実施の形態5にかかるサンプルでは、レーザビームの照射領域を複数箇所にして固定することにより、15%〜81%分散が小さく、加工がより安定するという結果が得られた。
したがって、これらの試験結果より、実施の形態5にかかるレーザ加工装置を用いてピアス加工を行うことにより、高速かつ安定したピアス加工が実現可能であるといえる。
なお、上述した実施の形態にかかる技術は、任意に組み合わせて実施することができる。