実施例1である二次電池について説明する。図1は、二次電池の外観図であり、図2は、二次電池の内部構造を示す図である。図1および図2において、X軸、Y軸およびZ軸は、互いに直交する軸である。X軸、Y軸およびZ軸の関係は、他の図面においても同様である。
二次電池1としては、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池を用いることができる。二次電池1は、電池ケース10と、電池ケース10に収容された発電要素14とを有する。電池ケース10は、例えば、金属で形成することができ、ケース本体10aおよび蓋10bを有する。ケース本体10aは、発電要素14を組み込むための開口部を有しており、蓋10bは、ケース本体10aの開口部を塞いでいる。これにより、電池ケース10の内部は、密閉状態となる。蓋10bおよびケース本体10aは、例えば、溶接によって固定することができる。
正極端子11および負極端子12は、蓋10bに固定されている。正極端子11は、正極タブ15aを介して、発電要素14と接続されており、負極端子12は、負極タブ15bを介して、発電要素14と接続されている。また、蓋10bには、弁13が設けられている。弁13は、電池ケース10の内部でガスが発生したときに、電池ケース10の外部にガスを排出するために用いられる。具体的には、ガスの発生に伴って電池ケース10の内圧が弁13の作動圧に到達すると、弁13は、閉じ状態から開き状態に変化することにより、電池ケース10の外部にガスを排出させる。
図3は、発電要素14の展開図である。発電要素14は、正極板141と、負極板142と、セパレータ143とを有する。正極板141は、集電板141aと、集電板141aの表面に形成された正極活物質層141bとを有する。正極活物質層141bは、正極活物質、導電剤、バインダーなどを含んでいる。正極活物質層141bは、集電板141aの一部の領域に形成されており、集電板141aの残りの領域は露出している。
負極板142は、集電板142aと、集電板142aの表面に形成された負極活物質層142bとを有する。負極活物質層142bは、負極活物質、導電剤、バインダーなどを含んでいる。負極活物質層142bは、集電板142aの一部の領域に形成されており、集電板142aの残りの領域は露出している。正極活物質層141b、負極活物質層142bおよびセパレータ143には、電解液がしみ込んでいる。なお、電解液の代わりに、固体電解質を用いることもできる。
図3に示す順番で、正極板141、負極板142およびセパレータ143を積層し、この積層体を、図4に示す巻き軸AXLの周りで巻くことにより、発電要素14が構成される。具体的には、積層体を巻いた後に、電池ケース10に収容できるように、巻かれた積層体を変形させている。図4において、巻き軸AXLが延びる方向における発電要素14の一端では、正極板141の集電板141aだけが巻かれている。この集電板141aには、図2を用いて説明したように、正極タブ15aが固定される。巻き軸AXLが延びる方向における発電要素14の他端では、負極板142の集電板142aだけが巻かれており、この集電板142aには、負極タブ15bが固定される。
図2および図4に示す領域(反応領域という)Aは、正極活物質層141bおよび負極活物質層142bが互いに重なっている領域であり、二次電池1の充放電を行うときに、化学反応が行われる領域である。例えば、二次電池1としてのリチウムイオン二次電池では、反応領域Aでの化学反応によって、リチウムイオンが吸収されたり、放出されたりする。
上述した二次電池1を用いることにより、電池スタックを構成することができる。ここで、図5は、電池スタックの上面図であり、図6は、二次電池および拘束板の外観図である。
電池スタック100は、複数の二次電池1を有しており、複数の二次電池1は、X方向に並んで配置されている。ここで、二次電池1の数は、電池スタック100の要求出力等に基づいて、適宜設定することができる。X方向(複数の二次電池1の配列方向)における電池スタック100の両端には、一対のエンドプレート3が配置されている。一対のエンドプレート3には、X方向に延びる拘束バンド(連結部材に相当する)4が取り付けられている。拘束バンド4は、電池スタック100の側面に沿って配置されている。なお、拘束バンド4を設ける位置は、適宜設定することができ、例えば、電池スタック100の上面および下面のそれぞれに設けることができる。
エンドプレート3および拘束バンド4を用いることにより、複数の二次電池1に対して、拘束荷重Fを与えることができる。拘束荷重Fは、一対のエンドプレート3が互いに近づく方向に変位するときに発生する力であり、X方向における両側から各二次電池1を押さえつける力である。複数の二次電池1に対して拘束荷重Fを与える構造は、図5に示す構造に限るものではない。例えば、拘束バンド4を省略し、エンドプレート3を所定位置に固定させることで、二次電池1に拘束荷重Fを与えることができる。また、拘束バンド4の形状や、拘束バンド4を配置する位置を、適宜変更することができる。
電池スタック100の上面には、バスバー5が配置されており、バスバー5は、複数の二次電池1を電気的に接続するために用いられる。バスバー5は、隣り合って配置される2つの二次電池1のうち、一方の二次電池1の正極端子11と、他方の二次電池1の負極端子12とに接続されている。本実施例では、すべての二次電池1を電気的に直列に接続している。ただし、電池スタック100には、電気的に並列に接続された複数の二次電池1が含まれていてもよい。
隣り合って配置される2つの二次電池1の間には、拘束板6が配置されており、拘束板6は、二次電池1の所定領域に対して拘束荷重Fを与えるために用いられる。なお、図5に示すように、一方のエンドプレート3(図5の右側に位置するエンドプレート3)と二次電池1との間にも、拘束板6が配置されている。拘束板6は、例えば、樹脂といった絶縁性を有する材料で形成することができる。図6に示すように、拘束板6は、この拘束板6を挟む2つの二次電池1と接触する2つの側面61,62を有する。
第1側面61は、凹凸面で構成されており、接触領域R1,R2および非接触領域R3を有する。接触領域R1,R2は、二次電池1(電池ケース10)と接触する領域であり、電池ケース10における一部の領域R4,R5と接触する。非接触領域R3は、電池ケース10から離れており、電池ケース10と接触しない領域である。第2側面62は、平坦面で構成されており、ほぼすべての領域で二次電池1(電池ケース10)と接触する。なお、第2側面62は、第1側面61と同様の構成とすることもできる。
上述した拘束板6を用いることにより、二次電池1(電池ケース10)の領域R4,R5に対して拘束荷重Fを与えることができる。言い換えれば、拘束板6の非接触領域R3に対応した二次電池1(電池ケース10)の領域R6には、拘束荷重Fが加わらないようになっている。
本実施例のように、二次電池1(電池ケース10)の一部である領域R4,R5に拘束荷重Fを与えることにより、ハイレート劣化に伴って、二次電池1の内部抵抗が上昇してしまうのを抑制することができる。ここで、二次電池1の劣化には、摩耗劣化およびハイレート劣化がある。摩耗劣化とは、二次電池1を構成する材料が摩耗することによって、二次電池1の内部抵抗を上昇させる劣化である。ハイレート劣化とは、二次電池1の内部における塩濃度が偏ることによって、二次電池1の内部抵抗を上昇させる劣化である。所定値以上のレートにおいて、二次電池1の充電又は放電を行うことにより、ハイレート劣化が発生しやすい。
電池ケース10の領域R4,R5だけに拘束荷重Fを与えることにより、電池ケース10の領域R6における変形を許容することができる。すなわち、電池ケース10の領域R6は、二次電池1の充放電に応じて膨張したり、収縮したりしやすくなる。電池ケース10の領域R6が膨張したり、収縮したりすることにより、電池ケース10の内圧変化(特に、内圧上昇)を抑制することができる。例えば、電池ケース10の内圧が上昇し始めたときには、電池ケース10の領域R6が膨張することにより、電池ケース10の内圧が上昇するのを抑制することができる。このように、電池ケース10の内圧変化を抑制することにより、塩濃度の偏りを抑制でき、ハイレート劣化を抑制することができる。
領域R4,R5だけに拘束荷重Fを与えることにより、図7に示す発電要素14の領域E1,E2に拘束荷重Fを与えることができる。図7は、発電要素14の一部を示す断面図である。拘束領域E1は、図6に示す電池ケース10の領域R4と対向する領域であり、拘束領域E2は、図6に示す電池ケース10の領域R5と対向する領域である。図7に示すAは、反応領域Aである。
本実施例では、正極活物質層141bの幅が負極活物質層142bの幅よりも狭くなっているため、反応領域Aの幅は、正極活物質層141bの幅によって規定される。なお、負極活物質層142bの幅が正極活物質層141bの幅よりも狭いとき、反応領域Aの幅は、負極活物質層142bの幅によって規定される。図7に示すように、反応領域Aの両端は、拘束領域E1,E2と重なっており、拘束荷重Fを受ける。
本実施例の変形例としては、発電要素14をラミネートフィルムで覆った二次電池1を用いることができる。ここで、二次電池1の内部に配置される発電要素14は、正極板141、セパレータ143および負極板142が積層されることによって構成されており、発電要素14には、正極端子および負極端子が接続される。正極端子および負極端子は、ラミネートフィルムに挟まれた状態において、二次電池1の外部に突出している。
上述したように、電池ケース10の変形を許容して、電池ケース10の内圧上昇を抑制することにより、ハイレート劣化を抑制することができる。ここで、拘束板6の領域R1,R2が変形したり、電池ケース10の領域R4,R5が変形したりすると、電池ケース10に加わる拘束荷重Fが低下してしまうことがある。特に、図6に示す構造では、電池ケース10の一部(領域R4,R5)だけに拘束荷重Fを与えているため、過度の衝撃や、過度の繰り返し荷重が電池スタック100に加わると、電池ケース10の一部(領域R4,R5)が変形してしまうことがある。
二次電池1として、リチウムイオン二次電池を用いたとき、拘束荷重Fが低下してしまうと、リチウムを析出させてしまうおそれがある。リチウムの析出によって、二次電池1の満充電容量が低下してしまう。一方、拘束荷重Fが低下すると、電池ケース10の変形が更に許容され、電池ケース10の内圧上昇が更に抑制されることになる。複数の二次電池1のうち、特定の二次電池1に対する拘束荷重Fが低下すると、特定の二次電池1では、他の二次電池1よりも内圧上昇が抑制されやすくなる。上述したように、二次電池1の内圧上昇およびハイレート劣化は、相関関係があるため、特定の二次電池1におけるハイレート劣化は、他の二次電池1におけるハイレート劣化よりも抑制されやすくなる。
したがって、特定の二次電池1におけるハイレート劣化が、他の二次電池1におけるハイレート劣化よりも抑制されているときには、特定の二次電池1に対する拘束荷重Fが低下していると判別することができる。ハイレート劣化は、二次電池1の抵抗として表すことができるため、電池スタック100を構成する複数の二次電池1における抵抗を比較することにより、拘束荷重Fが低下しているか否かを判別することができる。ここで、ハイレート劣化に伴う抵抗の上昇量を、ハイレート抵抗上昇量とよぶ。
本実施例では、電池ケース10の一部の領域(領域R4,R5)だけに拘束荷重Fを与えているが、これに限るものではない。具体的には、電池ケース10の全体(領域R4〜R6)に対して拘束荷重Fを与える構成であっても、本発明を適用することができる。この場合には、拘束板6の第1側面61に対して、電池ケース10の領域R4〜R6と接触する凸面を形成すればよい。
拘束荷重Fの低下(異常)を判別する処理について説明する。まず、拘束荷重Fの低下を判別する処理で用いられる電池システムの構成について説明する。
図8は、本実施例の電池システムの構成を示す図である。図8に示す電池システムは、車両に搭載することができる。車両としては、HV(Hybrid Vehicle)、PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)およびEV(Electric Vehicle)がある。HVは、車両を走行させるための動力源として、後述する電池スタックに加えて、内燃機関又は燃料電池といった他の動力源を備えている。PHVでは、HVにおいて、外部電源からの電力を用いて電池スタックを充電できる。EVは、車両の動力源として、電池スタックだけを備えている。
電池スタック(組電池)100は、直列に接続された複数の二次電池1を有する。二次電池1の数は、電池スタック100の要求出力などに基づいて、適宜設定することができる。電池スタック100には、並列に接続された複数の二次電池1を含めることもできる。監視ユニット201は、電池スタック100の端子間電圧を検出したり、各二次電池1の電圧Vbを検出したりする。監視ユニット201の検出結果は、コントローラ300に出力される。
電流センサ202は、電池スタック100に流れる電流Ibを検出し、検出結果をコントローラ300に出力する。ここで、放電電流Ibを正の値とし、充電電流Ibを負の値としている。温度センサ203は、電池スタック100の温度Tbを検出し、検出結果をコントローラ300に出力する。複数の温度センサ203を用いることにより、互いに異なる位置に配置された二次電池1の温度Tbを検出することができる。
コントローラ300は、メモリ300aを有しており、メモリ300aは、コントローラ300が所定処理(例えば、本実施例で説明する処理)を行うための各種の情報を記憶している。本実施例では、メモリ300aが、コントローラ300に内蔵されているが、コントローラ300の外部にメモリ300aを設けることもできる。
電池スタック100の正極端子には、システムメインリレーSMR−Bが接続されている。システムメインリレーSMR−Bは、コントローラ300からの制御信号を受けることにより、オンおよびオフの間で切り替わる。電池スタック100の負極端子には、システムメインリレーSMR−Gが接続されている。システムメインリレーSMR−Gは、コントローラ300からの制御信号を受けることにより、オンおよびオフの間で切り替わる。
システムメインリレーSMR−Gには、システムメインリレーSMR−Pおよび電流制限抵抗204が並列に接続されている。システムメインリレーSMR−Pおよび電流制限抵抗204は、直列に接続されている。システムメインリレーSMR−Pは、コントローラ300からの制御信号を受けることにより、オンおよびオフの間で切り替わる。電流制限抵抗204は、電池スタック100を負荷(具体的には、インバータ205)と接続するときに、突入電流が流れるのを抑制するために用いられる。
電池スタック100をインバータ205と接続するとき、コントローラ300は、まず、システムメインリレーSMR−Bをオフからオンに切り替えるとともに、システムメインリレーSMR−Pをオフからオンに切り替える。これにより、電流制限抵抗204に電流が流れることになる。
次に、コントローラ300は、システムメインリレーSMR−Gをオフからオンに切り替えた後に、システムメインリレーSMR−Pをオンからオフに切り替える。これにより、電池スタック100およびインバータ205の接続が完了し、電池システムは、起動状態(Ready-On)となる。コントローラ300には、イグニッションスイッチのオン/オフに関する情報が入力され、コントローラ300は、イグニッションスイッチがオフからオンに切り替わることに応じて、電池システムを起動する。
一方、イグニッションスイッチがオンからオフに切り替わったとき、コントローラ300は、システムメインリレーSMR−B,SMR−Gをオンからオフに切り替える。これにより、電池スタック100およびインバータ205の接続が遮断され、電池システムは、停止状態(Ready-Off)となる。
インバータ205は、電池スタック100からの直流電力を交流電力に変換し、交流電力をモータ・ジェネレータ206に出力する。モータ・ジェネレータ206としては、例えば、三相交流モータを用いることができる。モータ・ジェネレータ206は、インバータ205からの交流電力を受けて、車両を走行させるための運動エネルギを生成する。モータ・ジェネレータ206によって生成された運動エネルギは、車輪に伝達される。
車両を減速させたり、停止させたりするとき、モータ・ジェネレータ206は、車両の制動時に発生する運動エネルギを電気エネルギ(交流電力)に変換する。インバータ205は、モータ・ジェネレータ206が生成した交流電力を直流電力に変換し、直流電力を電池スタック100に出力する。これにより、電池スタック100は、回生電力を蓄えることができる。
本実施例では、電池スタック100をインバータ205に接続しているが、これに限るものではない。具体的には、電池スタック100を昇圧回路に接続し、昇圧回路をインバータ205に接続することができる。昇圧回路を用いることにより、電池スタック100の出力電圧を昇圧することができる。また、昇圧回路は、インバータ205から電池スタック100への出力電圧を降圧することができる。
次に、図9に示すフローチャートを用いて、拘束荷重Fの低下を判別する処理について説明する。図9に示す処理は、コントローラ300によって実行される。
ステップS101において、コントローラ300は、電池スタック100を構成する各二次電池1の抵抗Rを算出する。二次電池1の抵抗Rは、二次電池1の電流および電圧から算出することができる。具体的には、図10に示す座標系において、二次電池1に流れる電流と、この電流に対応した二次電池1の電圧との関係をプロットする。図10において、縦軸は電圧であり、横軸は電流である。二次電池1の電流は、電流センサ202を用いて取得することができ、二次電池1の電圧は、監視ユニット201を用いて取得することができる。次に、複数のプロットから近似直線Lを算出すれば、近似直線Lの傾きが二次電池1の抵抗Rとなる。
ここで、二次電池1の電流および電圧を取得するときには、二次電池1のSOC(State of Charge)が略一定であることが好ましい。SOCとは、二次電池1の満充電容量に対する、現在の充電容量の割合を示す。二次電池1のSOCが略一定であるときには、電流および電圧の関係が、図10に示すような直線関係となる。電流および電圧を取得している間に、二次電池1のSOCが変化してしまうと、電流および電圧の関係が直線関係にはならず、直線Lの傾き、言い換えれば、二次電池1の抵抗Rを特定し難くなってしまう。
ステップS102において、コントローラ300は、ステップS101の処理で算出した複数の二次電池1の抵抗Rに基づいて、抵抗の偏差量ΔRを算出する。例えば、複数の二次電池1における抵抗Rの平均値を算出し、この平均値と、各二次電池1の抵抗Rとの差を偏差量ΔRとすることができる。偏差量ΔRは、各二次電池1に対して算出される。なお、抵抗Rの差を算出することができればよく、上述した差ΔRの算出方法に限るものではない。例えば、複数の二次電池1における抵抗Rから、基準となる抵抗を特定し、基準抵抗と、各二次電池1の抵抗Rとの差を算出することもできる。
ステップS103において、コントローラ300は、ステップS102の処理で算出した偏差量ΔRを閾値ΔRlimと比較する。具体的には、コントローラ300は、各二次電池1の偏差量ΔRが閾値ΔRlim以上であるか否かを判別する。閾値ΔRlimは、拘束荷重Fの低下に伴うハイレート抵抗上昇量の変化量や、抵抗Rの算出誤差などを考慮して、予め設定することができる。例えば、拘束荷重Fの低下量として、許容できない範囲の下限値を設定し、この下限値に対応したハイレート抵抗上昇量の変化量を考慮して、閾値ΔRlimを設定することができる。閾値ΔRlimに関する情報は、メモリ300aに記憶しておくことができる。
二次電池1の抵抗Rは、下記式(1)で表される。
上記式(1)において、ΔRhは、ハイレート抵抗上昇量を示し、ΔRaは、摩耗劣化に伴う抵抗上昇量(摩耗抵抗上昇量)を示す。R0は、二次電池1の初期抵抗を示し、予め求めておくことができる。初期抵抗とは、初期状態にある二次電池1の抵抗であり、初期状態としては、二次電池1を製造した直後の状態とすることができる。上記式(1)に示すように、二次電池1の抵抗Rは、初期抵抗R0に抵抗上昇量ΔRh,ΔRaを積算した値となり、抵抗Rには、抵抗上昇量ΔRh、ΔRaが含まれる。
特定の二次電池1に対する拘束荷重Fが低下して異常状態となったとき、異常状態にある二次電池1の抵抗Rerrと、正常状態にある二次電池1の抵抗Rnmlとは、下記式(2),(3)で表される。異常状態とは、電池ケース10や拘束板6の変形によって、拘束荷重Fが低下している状態であり、正常状態とは、異常状態が発生していない状態である。図11には、抵抗Rerr,Rnmlの関係を示している。
上記式(2),(3)から、偏差量ΔRは、下記式(4)で表される。
ここで、図10を用いて説明した方法によって、二次電池1の抵抗Rを算出したときには、ハイレート抵抗上昇量ΔRhと、摩耗抵抗上昇量ΔRaとを区別することができない。すなわち、抵抗上昇量ΔRh,ΔRaが混在する抵抗Rしか算出することができない。したがって、偏差量ΔRは、正常状態の二次電池1における抵抗上昇量ΔRh,ΔRaの総和と、異常状態の二次電池1における抵抗上昇量ΔRh,ΔRaの総和との差になる。
異常状態にある二次電池1のハイレート抵抗上昇量ΔRhは、正常状態にある二次電池1のハイレート抵抗上昇量ΔRhよりも小さくなるため、偏差量ΔRは、0よりも大きくなりやすい。ここで、異常状態および正常状態の二次電池1において、摩耗抵抗上昇量ΔRaが等しいと仮定すれば、偏差量ΔRは、正常状態にある二次電池1のハイレート抵抗上昇量ΔRhと、異常状態にある二次電池1のハイレート抵抗上昇量ΔRhとの差になる。この場合には、偏差量ΔRは、0よりも大きくなる。
偏差量ΔRが閾値ΔRlim以上であるときには、ハイレート抵抗上昇量ΔRhに差が発生している可能性があり、拘束荷重Fが低下している可能性がある。ここで、偏差量ΔRが閾値ΔRlim以上であるとき、コントローラ300は、ステップS104の処理を行う。一方、偏差量ΔRが閾値ΔRlimよりも小さいとき、コントローラ300は、図9に示す処理を終了する。ステップS103の処理は、すべての二次電池1に対して行われる。
ステップS104において、コントローラ300は、特定の二次電池1だけにおいて、偏差量ΔRが閾値ΔRlim以上である二次電池1の数が、所定数以下であるか否かを判別する。複数の二次電池1において、拘束荷重Fの低下が同時に発生することは考えにくいため、特定の二次電池1だけにおいて、偏差量ΔRが閾値ΔRlim以上であるときには、特定の二次電池1に対する拘束荷重Fが低下していると考えることができる。一方、複数の二次電池1において、偏差量ΔRが閾値ΔRlim以上であるときには、ハイレート抵抗上昇量ΔRhだけでなく、摩耗抵抗上昇量ΔRaにも差が発生していると考えることができる。この場合には、拘束荷重Fが低下している可能性が低いと考えられる。
ステップS104の処理で用いられる所定数は、上述した点を考慮して予め設定することができる。例えば、所定数を1に設定することができる。所定数に関する情報は、メモリ300aに記憶しておくことができる。偏差量ΔRが閾値ΔRlim以上である二次電池1の数が、所定数以下であるとき、コントローラ300は、ステップS105の処理を行う。一方、偏差量ΔRが閾値ΔRlim以上である二次電池1の数が、所定数よりも多いとき、コントローラ300は、図9に示す処理を終了する。
ステップS105において、コントローラ300は、偏差量ΔRが閾値ΔRlim以上である二次電池1において、拘束荷重Fが低下していると判別する。拘束荷重Fが低下していると判別したとき、コントローラ300は、ユーザなどに対して警告を行うことができる。警告の手段としては、音や表示を用いることができる。警告の内容は、拘束荷重Fが低下していること、又は、電池スタック100に異常が発生していることを、ユーザなどに認識させるものであればよく、適宜設定することができる。ここで、警告の内容を音でユーザなどに知らせたり、警告の内容をディスプレイに表示してユーザなどに知らせたりすることができる。
また、二次電池1としてのリチウムイオン二次電池では、拘束荷重Fの低下に応じて、リチウムが析出しやすくなってしまうため、拘束荷重Fの低下を判別したときには、リチウムの析出を抑制するために、例えば、二次電池1の入出力(充放電)を制限することができる。二次電池1の充放電を制御するときには、充電や放電に対応した上限電力を設定しておき、充電電力や放電電力が上限電力を超えないように、二次電池1の充放電が制御される。ここで、二次電池1の入出力を制限するときには、上限電力を低下させることができる。入出力の制限には、上限電力を0[kW]に設定することも含まれ、この場合には、二次電池1の充放電が行われないことになる。
本実施例によれば、二次電池1の抵抗Rに基づいて、拘束荷重Fが低下しているか否かを判別しているため、拘束荷重Fを測定するためのセンサを省略することができる。抵抗Rは、監視ユニット201による検出電圧と、電流センサ202による検出電圧とから算出されるが、監視ユニット201や電流センサ202は、二次電池1の充放電を制御するために用いられるため、拘束荷重Fを測定するための専用のセンサは、不要となる。
また、本実施例では、各二次電池1の抵抗Rを考慮することにより、各二次電池1に対して、拘束荷重Fが低下しているか否かを判別することができる。ここで、センサを用いて、各二次電池1に対する拘束荷重Fを測定しようとするときには、各二次電池1に対してセンサを配置しなければならず、センサの数が増加するとともに、コストが上昇してしまう。一方、二次電池1としてのリチウムイオン二次電池では、拘束荷重Fの低下に応じて、リチウムが析出するおそれがあるため、拘束荷重Fの低下を判別することにより、リチウムが析出しやすい状態を確認することができる。
なお、本実施例では、複数の二次電池1における抵抗Rを比較するだけで、拘束荷重Fが低下しているか否かを判別しているが、これに限るものではない。例えば、ハイレート劣化が発生しやすい条件を予め設定しておき、この条件を満たすときに、図9に示す処理を開始させることができる。ハイレート劣化が発生しやすい条件は、二次電池1の充放電状態に基づいて特定することができる。例えば、二次電池1を充電又は放電したときのレートが所定レート以上である場合を、ハイレート劣化が発生しやすい条件として設定することができる。
ハイレート劣化が発生しやすい条件では、二次電池1の抵抗R(ハイレート抵抗上昇量ΔRh)が上昇することになる。ここで、拘束荷重Fが低下している二次電池1では、拘束荷重Fが低下していない二次電池1よりも抵抗R(ハイレート抵抗上昇量ΔRh)が低くなるため、このときの抵抗Rの差に基づいて、拘束荷重Fの低下を判別することができる。
このように、ハイレート劣化が発生しやすい条件を確認した上で、図9に示す処理を行うことにより、拘束荷重Fの低下を判別する精度を向上させることができる。本実施例では、抵抗上昇量ΔRh,ΔRaを含む抵抗Rに基づいて、拘束荷重Fの低下を判別しているため、ハイレート抵抗上昇量ΔRhが上昇する条件を事前に確認しておくことにより、抵抗Rの差が、ハイレート抵抗上昇量ΔRhの差に依存することを確認することができる。これにより、ハイレート抵抗上昇量ΔRhの差に基づいて、拘束荷重Fの低下を判別することと実質的に等しくなり、拘束荷重Fの低下を判別する精度を向上させることができる。
本発明の実施例2について説明する。実施例1では、複数の二次電池1における抵抗Rを比較することにより、拘束荷重Fが低下しているか否かを判別しているが、本実施例では、各二次電池1のハイレート抵抗上昇量ΔRhを推定し、複数の二次電池1におけるハイレート抵抗上昇量ΔRhを比較することにより、拘束荷重Fが低下しているか否かを判別する。
以下、本実施例について、具体的に説明する。なお、本実施例でも、図8に示す電池システムが用いられる。また、本実施例において、実施例1で説明した部材については、同一の符号を用い、詳細な説明は省略する。
ハイレート抵抗上昇量ΔRhに基づいて、拘束荷重Fの低下(異常)を判別する処理について、図12に示すフローチャートを用いて説明する。図12に示す処理は、コントローラ300によって実行される。
ステップS201において、コントローラ300は、各二次電池1におけるハイレート抵抗上昇量ΔRhを算出(推定)する。ハイレート抵抗上昇量ΔRhは、以下に説明するように、電池モデルを用いて推定することができる。
ここで、ハイレート抵抗上昇量ΔRhは、二次電池1の温度やSOC(又は電圧)に依存するため、複数の二次電池1における温度やSOCが等しいときに、ハイレート抵抗上昇量ΔRhを取得することが好ましい。複数の二次電池1における電圧を均等化させる処理を行っておけば、複数の二次電池1におけるSOCのバラツキを抑制することができる。均等化処理では、電圧が高い側における二次電池1を放電させることにより、複数の二次電池1における電圧を揃えることができる。
複数の二次電池1における温度やSOCが互いに異なるときには、温度やSOCの違いを考慮して、ハイレート抵抗上昇量ΔRhを補正することができる。例えば、ハイレート抵抗上昇量ΔRhおよび二次電池1の温度の対応関係を、実験などによって予め求めておけば、この対応関係を用いて、二次電池1の温度が所定温度にあるときのハイレート抵抗上昇量ΔRhに補正することができる。これにより、二次電池1の温度を揃えた状態において、ハイレート抵抗上昇量ΔRhを比較することができる。なお、二次電池1のSOCについても、上述した方法と同様の方法によって、ハイレート抵抗上昇量ΔRhを補正することができる。
ステップS202において、コントローラ300は、ステップS201の処理で算出した複数の二次電池1におけるハイレート抵抗上昇量ΔRhに基づいて、ハイレート抵抗上昇量ΔRhの偏差量Δ(ΔRh)を算出する。例えば、複数の二次電池1におけるハイレート抵抗上昇量ΔRhの平均値を算出し、この平均値と、各二次電池1のハイレート抵抗上昇量ΔRhとの差を偏差量Δ(ΔRh)とすることができる。偏差量Δ(ΔRh)は、各二次電池1に対して算出される。
なお、ハイレート抵抗上昇量ΔRhの差を算出することができればよく、上述した差Δ(ΔRh)の算出方法に限るものではない。例えば、複数の二次電池1におけるハイレート抵抗上昇量ΔRhから、基準となるハイレート抵抗上昇量ΔRhを特定し、基準となるハイレート抵抗上昇量ΔRhと、各二次電池1のハイレート抵抗上昇量ΔRhとの差を算出することもできる。
正常状態の二次電池1および異常状態の二次電池1が、電池スタック100に含まれているとき、偏差量Δ(ΔRh)は、下記式(5)で表すことができる。下記式(5)において、ΔRhnmlは、正常状態の二次電池1におけるハイレート抵抗上昇量を示し、ΔRherrは、異常状態の二次電池1におけるハイレート抵抗上昇量を示す。
図13に示すように、電池ケース10や拘束板6の変形によって拘束荷重Fが低下すると、ハイレート抵抗上昇量ΔRherrは、ハイレート抵抗上昇量ΔRhnmlよりも低下する。そして、拘束荷重Fが低下するほど、ハイレート抵抗上昇量ΔRhnmlに対して、ハイレート抵抗上昇量ΔRherrが低下しやすくなり、偏差量Δ(ΔRh)が広がる。
ステップS203において、コントローラ300は、ステップS202の処理で算出した偏差量Δ(ΔRh)を閾値Δ(ΔRh)limと比較する。具体的には、コントローラ300は、各二次電池1の偏差量Δ(ΔRh)が閾値Δ(ΔRh)lim以上であるか否かを判別する。閾値Δ(ΔRh)limは、拘束荷重Fの低下に伴うハイレート抵抗上昇量ΔRhの変化量や、ハイレート抵抗上昇量ΔRhの推定誤差などを考慮して、予め設定することができる。例えば、拘束荷重Fの低下量として、許容できない範囲の下限値を設定し、この下限値に対応したハイレート抵抗上昇量の変化量を考慮して、閾値Δ(ΔRh)limを設定することができる。閾値Δ(ΔRh)limに関する情報は、メモリ300aに記憶しておくことができる。
ステップS203の処理は、すべての二次電池1に対して行われる。偏差量Δ(ΔRh)が閾値Δ(ΔRh)lim以上であるとき、ステップS204において、コントローラ300は、拘束荷重Fが低下していると判別する。拘束荷重Fが低下しているとき、実施例1で説明したように、コントローラ300は、ユーザなどに対して警告を行うことができる。一方、偏差量Δ(ΔRh)が閾値Δ(ΔRh)limよりも小さいとき、コントローラ300は、拘束荷重Fが低下していないと判別し、図12に示す処理を終了する。
実施例1で説明したように、拘束荷重Fおよびハイレート抵抗上昇量ΔRhは相関関係があるため、複数の二次電池1におけるハイレート抵抗上昇量ΔRhを比較することにより、拘束荷重Fが低下しているか否かを判別することができる。ここで、本実施例では、ハイレート抵抗上昇量ΔRhを比較しているため、抵抗Rを比較する場合に比べて、拘束荷重Fの低下を判別するときの精度を向上させることができる。拘束荷重Fの低下は、ハイレート抵抗上昇量ΔRhに影響を与えるため、ハイレート抵抗上昇量ΔRhに着目することにより、拘束荷重Fの低下を判別するときの精度を向上させることができる。
次に、ハイレート抵抗上昇量ΔRhを算出する方法について説明する。まず、本実施例で用いられる電池モデルについて説明する。
図14は、二次電池1の構成を示す概略図である。ここでは、二次電池1の一例として、リチウムイオン二次電池を用いている。図14において、図1から図4で説明した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を用いている。図14に示す座標軸xは、電極の厚み方向における位置を示す。
負極142および正極141のそれぞれは、球状の活物質142b,141bの集合体で構成されている。二次電池1を放電するとき、負極142の活物質142bの界面上では、リチウムイオンLi+および電子e-を放出する化学反応が行われる。また、正極141の活物質141bの界面上では、リチウムイオンLi+および電子e-を吸収する化学反応が行われる。負極142および正極141の間でのリチウムイオンLi+の授受によって、二次電池1の充放電が行われ、充電電流Ib(<0)または放電電流Ib(>0)が生じる。
二次電池1の放電時において、負極142から放出されたリチウムイオンは、拡散および泳動によって正極141に移動して、正極141に吸収される。このとき、電解液内におけるリチウムイオンの拡散に遅れが生じると、負極142内の電解液では、リチウムイオン濃度(すなわち電解液の塩濃度)が増加する。一方、正極141内の電解液では、リチウムイオン濃度が減少する。この様子を図15に示す。図15に示した平均塩濃度とは、二次電池1の全体において、電解液の塩濃度が均一になったときの値である。例えば、二次電池1の長時間の放置によって、電解液の塩濃度を均一にすることができる。
図16は、電解液塩濃度および反応抵抗の関係を示す。反応抵抗は、活物質142b,141bの界面において反応電流が発生したときに、等価的に電気抵抗として作用する抵抗であり、言い換えれば、電極表面におけるリチウムイオンの出入りに関する抵抗成分である。反応抵抗は、電荷移動抵抗とも呼ばれる。
図16に示す特性によれば、反応抵抗は、電解液塩濃度の関数であることが分かる。特に、電解液塩濃度が閾値Cthよりも高い領域では、電解液塩濃度の変化に対して反応抵抗の変化は緩やかである。また、電解液塩濃度が閾値Cthよりも低い領域では、電解液塩濃度の変化に対して反応抵抗の変化が急である。すなわち、電解液塩濃度が閾値Cthよりも低い領域では、電解液塩濃度が閾値Cthよりも高い領域と比較して、電解液塩濃度に対する反応抵抗の変化率が大きい。
図15および図16を考慮すると、放電時に正極141内での電解液塩濃度が減少した場合であっても、正極141内の電解液塩濃度が閾値Cthよりも高いときには、反応抵抗の低下はほとんど生じないことが分かる。一方、正極141内の電解液塩濃度が閾値Cthよりも低いときには、正極141内での電解液塩濃度の低下は、反応抵抗の増加を招くことが分かる。
このような反応抵抗の増加の要因として、例えば、図17Aに示すように、電解液の平均塩濃度が低下することによって、正極141内の電解液塩濃度が閾値Cthよりも低くなることが考えられる。また、例えば、図17Bに示すように、放電が繰り返されて累積的に正極141内の電解液塩濃度が低下することによって、正極141内の電解液塩濃度が閾値Cthよりも低くなることが考えられる。
放電時に正極141内の電解液塩濃度が低下することによって、反応抵抗が上昇する場合を例示したが、充電時にも、負極142内の電解液塩濃度が低下することによって、反応抵抗が上昇する。
反応抵抗と、電極142,141での電子e-の移動に対する純電気的な抵抗(純抵抗)とを併せたものが、二次電池1をマクロに見た場合の電池抵抗(内部抵抗)における直流抵抗成分に相当する。
本実施例に用いられる基礎的な電池モデル式は、以下の式(6)〜(16)からなる基礎方程式で表される。図18は、電池モデル式で用いられる変数および定数の一覧表を示す。
以下に説明するモデル式中の変数および定数に関して、添字eは電解液中の値であることを示し、sは活物質中の値であることを示す。添字jは、正極および負極を区別するものであり、jが1であるときには正極における値を示し、jが2であるときには負極における値を示す。正極および負極における変数又は定数を包括的に表記する場合には、添字jを省略する。また、時間の関数であることを示す(t)の表記、電池温度の依存性を示す(T)の表記、あるいは、局所SOCθの依存性を示す(θ)等について、明細書中では表記を省略することもある。変数又は定数に付された記号♯は、平均値を表わす。
上記式(6),(7)は、電極(活物質)における電気化学反応を示す式であり、バトラー・ボルマーの式と呼ばれる。
電解液中のリチウムイオン濃度保存則に関する式として、下記式(8)が成立する。活物質内のリチウム濃度保存則に関する式として、下記式(9)の拡散方程式と、下記式(10),(11)に示す境界条件式が適用される。下記式(10)は、活物質の中心部における境界条件を示し、下記式(11)は、活物質の電解液との界面(以下、単に「界面」ともいう)における境界条件を示す。
活物質界面における局所的なリチウム濃度分布である局所SOCθjは、下記式(12)で定義される。下記式(12)中のcsejは、下記式(13)に示されるように、正極および負極の活物質界面におけるリチウム濃度を示している。csj,maxは、活物質内での限界リチウム濃度を示している。
電解液中の電荷保存則に関する式として、下記式(14)が成立し、活物質中の電荷保存則に関する式として、下記式(15)が成立する。活物質界面での電気化学反応式として、電流密度I(t)と、反応電流密度jj Liとの関係を示す下記式(16)が成立する。
上記式(6)〜(16)の基礎方程式で表される電池モデル式は、以下に説明するように、簡易化することができる。電池モデル式の簡易化により、演算負荷を低減したり、演算時間を短縮したりすることができる。
負極142および正極141のそれぞれにおける電気化学反応を一様なものと仮定する。すなわち、各電極142,141において、x方向における反応が均一に生じるものと仮定する。また、各電極142,141に含まれる複数の活物質142b,141bでの反応が均一と仮定するので、各電極142,141の活物質142b,141bを、1個の活物質モデルとして取り扱う。これにより、図14に示す二次電池の構造は、図19に示す構造にモデリングすることができる。
図19に示す電池モデルでは、活物質モデル141b(j=1)および活物質モデル142b(j=2)の表面における電極反応をモデリングすることができる。また、図19に示す電池モデルでは、活物質モデル141b,142bの内部におけるリチウムの拡散(径方向)と、電解液中のリチウムイオンの拡散(濃度分布)とをモデリングすることができる。さらに、図19に示す電池モデルの各部位において、電位分布や温度分布をモデリングすることができる。
図20に示すように、各活物質モデル141b,142bの内部におけるリチウム濃度csは、活物質モデル141b,142bの半径方向の座標r(r:各点の中心からの距離、rs:活物質の半径)上での関数として表すことができる。ここで、活物質モデル141b,142bの周方向における位置依存性は、無いものと仮定している。図20に示す活物質モデル141b,142bは、界面での電気化学反応に伴う、活物質の内部におけるリチウム拡散現象を推定するために用いられる。活物質モデル141b,142bの径方向にN分割(N:2以上の自然数)された各領域(k=1〜N)について、リチウム濃度cs,k(t)が、後述する拡散方程式に従って推定される。
図19に示す電池モデルによれば、基礎方程式(6)〜(11),(13)は、下記式(6’)〜(11’),(13’)で表すことができる。
上記式(8’)では、電解液の濃度を時間に対して不変と仮定することによって、cej(t)が一定値であると仮定する。また、活物質モデル141b,142bに対しては、拡散方程式(9)〜(11)が極座標方向の分布のみを考慮して、拡散方程式(9’)〜(11’)に変形される。上記式(13’)において、活物質の界面におけるリチウム濃度csejは、図20に示したN分割領域のうちの最外周の領域におけるリチウム濃度csi(t)に対応する。
電界液中の電荷保存則に関する上記式(14)は、上記式(8’)を用いて、下記式(17)に簡易化される。すなわち、電解液の電位φejは、xの二次関数として近似される。過電圧ηj♯の算出に用いる電解液中の平均電位φej♯は、下記式(17)を電極厚さLjで積分した下記式(18)によって求められる。
負極142については、下記式(17)に基づいて、下記式(19)が成立する。このため、電解液平均電位φe2♯と、負極142およびセパレータ143の境界における電解液電位との電位差は、下記式(20)で表される。正極141については、電解液平均電位φe1♯と、正極141およびセパレータ143の境界における電解液電位との電位差は、下記式(21)で表される。
活物質中の電荷保存則に関する上記式(15)についても、下記式(22)に簡易化することができる。すなわち、活物質の電位φsjについても、xの二次関数として近似される。過電圧ηj♯の算出に用いる活物質中の平均電位φsj♯は、下記式(22)を電極厚さLjで積分した下記式(23)によって求められる。このため、正極141に関して、活物質平均電位φs1♯と、活物質モデル141bおよび集電板141aの境界における活物質電位との電位差は、下記式(24)で示される。同様に、負極142については、下記式(25)が成立する。
図21は、二次電池1の端子電圧V(t)と、上述したように求めた各平均電位との関係を示す。図21において、セパレータ143では、反応電流密度jj Liが0であるため、セパレータ143での電圧降下は、電流密度I(t)に比例し、Ls/κs eff・I(t)となる。
また、各電極中における電気化学反応を一様と仮定したことにより、極板の単位面積当たりの電流密度I(t)と反応電流密度(リチウム生成量)jj Liとの間には、下記式(26)が成立する。
図21に示す電位関係および上記式(26)に基づいて、電池電圧V(t)については、下記式(27)が成立する。下記式(27)は、図21に示す式(28)の電位関係式を前提とする。
次に、平均過電圧η♯(t)を算出する。jj Liを一定にするとともに、バトラー・ボルマーの関係式において、充放電効率を同一として、αajおよびαcjを0.5とすると、下記式(29)が成立する。下記式(29)を逆変換することにより、平均過電圧η♯(t)は、下記式(30)により求められる。
図21を用いて平均電位φs1、φs2を求め、求めた値を上記式(27)に代入する。また、上記式(30)から求めた平均過電圧η1♯(t)、η2♯(t)を上記式(28)に代入する。この結果、上記式(6’)、(26)および上記式(7’)に基づいて、電気化学反応モデル式に従った電圧−電流関係モデル式(M1a)が導出される。
リチウム濃度保存則(拡散方程式)である上記式(9’)および境界条件式(10’),(11’)によって、活物質モデル141b,142bについての活物質拡散モデル式(M2a)が求められる。
モデル式(M1a)の右辺第1項は、活物質表面での反応物質(リチウム)濃度により決定される開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)を示し、右辺第2項は、過電圧(η1♯−η2♯)を示し、右辺第3項は、二次電池に電流が流れることによる電圧降下を示す。すなわち、二次電池10の直流純抵抗が,式(M2a)中のRd(T)で表わされる。
式(M2a)において、反応物質であるリチウムの拡散速度を規定するパラメータとして用いられる拡散係数Ds1、Ds2は温度依存性を有する。したがって、拡散係数Ds1、Ds2は、例えば、図22に示すマップを用いて設定することができる。図22に示すマップは、予め取得しておくことができる。図22において、横軸の電池温度Tは、温度センサ203を用いて取得された温度である。図22に示すように、拡散係数Ds1、Ds2は、電池温度の低下に応じて低下する。言い換えれば、拡散係数Ds1、Ds2は、電池温度の上昇に応じて上昇する。
拡散係数Ds1、Ds2について、温度の依存性だけでなく、局所SOCθの依存性を考慮してもよい。この場合、電池温度T、局所SOCθおよび拡散係数Ds1、Ds2の関係を示すマップを予め用意しておけばよい。
式(M1a)に含まれる開放電圧U1は、図23Aに示すように、局所SOCθの上昇に応じて低下する。また、開放電圧U2は、図23Bに示すように、局所SOCθの上昇に応じて上昇する。図23Aおよび図23Bに示すマップを予め用意しておけば、局所SOCθに対応した開放電圧U1,U2を特定することができる。
式(M1a)に含まれる交換電流密度i01、i02は、局所SOCθおよび電池温度Tの依存性を有する。したがって、交換電流密度i01、i02、局所SOCθおよび電池温度Tの関係を示すマップを予め用意しておけば、局所SOCθおよび電池温度Tから、交換電流密度i01、i02を特定することができる。
直流純抵抗Rdは、温度の依存性を有する。したがって、直流純抵抗Rdおよび電池温度Tの関係を示すマップを予め用意しておけば、電池温度Tから直流純抵抗Rdを特定することができる。なお、上述したマップについては、二次電池1に関する周知の交流インピーダンス測定等の実験結果に基づいて作成することができる。
図19に示す電池モデルは、さらに簡略化することができる。具体的には、電極142,141の活物質として、共通の活物質モデルを用いることができる。図19に示す活物質モデル141b,142bを、1つの活物質モデルとして扱うことにより、下記式(31)に示すような式の置き換えができる。下記式(31)では、正極141および負極142の区別を示す添字jが省略される。
モデル式(M1a)、(M2a)は、下記式(M1b)、(M2b)で表すことができる。また、1つの活物質モデルを用いた電池モデルでは、電流密度I(t)および反応電流密度jj Liの関係式として、上記式(26)の代わりに、下記式(26’)が適用される。
上記式(M1a)中のarcsinh項を一次近似(線形近似)することにより、下記式(M1c)が得られる。このように線形近似することにより、演算負荷を低減したり、演算時間を短縮したりすることができる。
上記式(M1c)では、線形近似の結果、右辺第2項も、電流密度I(t)および反応抵抗Rrの積で示される。反応抵抗Rrは、上記式(32)に示されるように、局所SOCθおよび電池温度Tに依存する交換電流密度i01,i02から算出される。したがって、上記式(M1c)を用いるときには、局所SOCθ、電池温度Tおよび交換電流密度i01,i02の関係を示すマップを予め用意しておけばよい。上記式(M1c)および上記式(32)によれば、上記式(33)が得られる。
上記式(M1b)における右辺第2項のarcsinh項を線形近似すれば、下記式(M1d)が得られる。
上記式(M1b)は、下記式(M1e)として表すことができる。
上記式(M1e)に含まれる抵抗変化率grは、下記式(34)で示される。
上記式(34)において、Ranは、初期状態における二次電池1の抵抗であり、Raは、使用後(充放電後)における二次電池1の抵抗である。ここで、抵抗Ranは、初期状態における二次電池1の抵抗に限るものではない。抵抗Ranは、抵抗Raの変化に対して基準となる値(固定値)であればよい。例えば、二次電池1を製造した直後における抵抗と、二次電池1の劣化が最大であるときの抵抗(推定値)との間の値(任意)を、抵抗Ranとして設定することができる。
抵抗は、二次電池1の使用に伴う経年的な劣化に応じて変化するため、抵抗Raは、抵抗Ranよりも高くなる。したがって、抵抗変化率grは、1よりも大きな値となる。
上記式(M1e)は、一次近似(線形近似)することにより、下記式(M1f)で表される。
図24は、コントローラ300の内部構成を示す概略図である。電池状態推定部310は、拡散推定部311と、開放電圧推定部312と、電流推定部313と、パラメータ設定部314と、境界条件設定部315とを含む。図24に示す構成において、電池状態推定部310は、上記式(M1f)および上記式(M2b)を用いることにより、電流密度I(t)を算出する。
本実施例では、上記式(M1f)を用いて電流密度I(t)を算出しているが、これに限るものではない。具体的には、上記式(M1a)〜上記式(M1e)のいずれかと、上記式(M2a)又は上記式(M2b)との任意の組み合わせに基づいて、電流密度I(t)を算出することができる。本実施例では、抵抗変化率grを用いているため、上記式(M1a)〜上記式(M1d)を用いるときには、これらの式のうち、arcsinh項又は、arcsinh項を一次近似(直線近似)した項において、電流密度I(t)に抵抗変化率grを乗算するものとする。
拡散推定部311は、上記式(M2b)を用い、境界条件設定部315で設定された境界条件に基づいて、活物質内部でのリチウム濃度分布を算出する。境界条件は、上記式(10’)又は上記式(11’)に基づいて設定される。拡散推定部311は、上記式(12)を用い、算出したリチウム濃度分布に基づいて局所SOCθを算出する。拡散推定部311は、局所SOCθに関する情報を開放電圧推定部312に出力する。
開放電圧推定部312は、拡散推定部311が算出した局所SOCθに基づいて、各電極142,141の開放電圧U1,U2を特定する。具体的には、開放電圧推定部312は、図23Aおよび図23Bに示すマップを用いることにより、開放電圧U1,U2を特定することができる。開放電圧推定部312は、開放電圧U1,U2に基づいて、二次電池1の開放電圧を算出することができる。二次電池1の開放電圧は、開放電圧U1から開放電圧U2を減算することによって得られる。
パラメータ設定部314は、電池温度Tbおよび局所SOCθに応じて、電池モデル式で用いられるパラメータを設定する。電池温度Tbとしては、温度センサ203による検出温度Tbを用いる。局所SOCθは、拡散推定部311から取得される。パラメータ設定部314で設定されるパラメータとしては、上記式(M2b)中の拡散定数Ds、上記式(M1f)中の電流密度i0および直流抵抗Rdがある。
電流推定部313は、下記式(M3a)を用いて、電流密度I(t)を算出(推定)する。下記式(M3a)は、上記式(M1f)を変形した式である。下記式(M3a)において、開放電圧U(θ,t)は、開放電圧推定部312で推定された開放電圧U(θ)である。電圧V(t)は、監視ユニット201を用いて取得した電池電圧Vbである。Rd(t)およびi0(θ,T,t)は、パラメータ設定部314で設定された値である。下記式(M3a)中のgrは、抵抗変化率算出部316が算出した抵抗変化率grである。
なお、上記式(M1a)〜上記式(M1e)のいずれかの式を用いる場合であっても、上述した式(M3a)と同様の方法によって、電流密度I(t)を算出することができる。
境界条件設定部315は、上記式(26)又は上記式(26’)を用いて、電流推定部313によって算出された電流密度I(t)から反応電流密度(リチウム生成量)jj Liを算出する。そして、境界条件設定部315は、上記式(11’)を用いて、上記式(M2b)における境界条件を更新する。抵抗変化率算出部316は、上記式(34)で表される抵抗変化率grを算出する。
抵抗Raは、局所SOCθおよび電池温度Tbの変化に応じて変化する。したがって、初期状態にある二次電池1を用いた実験を行うことにより、抵抗Ra、局所SOCθおよび電池温度Tbの関係を示すマップを予め取得しておくことができる。このマップは、メモリ300aに記憶することができる。抵抗Raは、局所SOCθや電池温度Tbの変化だけでなく、二次電池1の使用(充放電)に伴う経年劣化によっても変化する。
抵抗変化率算出部321は、下記式(35)を用いて、抵抗変化率grを算出する。抵抗変化率算出部321は、算出した抵抗変化率grに関する情報を、電流推定部313、判別部322および抵抗上昇量推定部324に出力する。
上記式(35)において、開放電圧U(θ)は、開放電圧推定部312によって推定された値であり、V(t)は、監視ユニット201から得られた電池電圧Vbである。Ranは、電池温度Tbおよび局所SOCθを特定することにより、電池温度Tb、局所SOCθおよび抵抗Raの関係を示すマップから特定される値である。電流密度I(t)は、電流センサ202による測定電流Ibを単位極板面積で除算した値である。
判別部322は、タイマ322aを備えており、ハイレート劣化が解消されたか否かを判別する。判別部322は、二次電池1を放置している間の計測時間が、予め定められた放置時間trestを超えているか否かを判別し、計測時間が放置時間trestを超えているときには、ハイレート劣化が解消されていると判別する。判別部322には、イグニッションスイッチのオン/オフに関する情報が入力され、イグニッションスイッチがオンからオフに切り替わったときに、判別部322は、二次電池1が放置されていると判別する。
記憶部323は、ハイレート劣化が解消されているときの抵抗変化率gr(以下、gr(t0)という)を記憶する。抵抗変化率gr(t0)は、抵抗変化率算出部321によって算出された値である。すなわち、抵抗変化率算出部321によって算出された抵抗変化率grのうち、ハイレート劣化が解消されていると判別されたタイミングにおける抵抗変化率grが記憶部323に記憶される。
抵抗上昇量推定部324は、ハイレート抵抗上昇量ΔRhを算出(推定)する。電流推定部313で推定された電流密度(推定電流密度という)I(t)と、電流センサ202の測定電流Ibから得られる電流密度(測定電流密度という)I(t)との間に誤差が発生したときに、ハイレート劣化を観測できる。推定電流密度I(t)および測定電流密度I(t)は、同一のタイミングで得られる電流密度である。ハイレート劣化の観測方法に関して、以下に説明する。
上述した電池モデルでは、すべての電流が活物質141b,142bを流れて電気化学反応に関与するとの前提で導出されている。しかしながら、実際には、特に低温時等において、電解液および活物質の界面に電気二重層キャパシタが生じることにより、電池電流が、電気化学反応に関与する電気化学反応電流成分と、キャパシタを流れるキャパシタ電流成分とに分流されることがある。この場合には、キャパシタ電流成分を電気化学反応電流成分と分離するように、電池モデル式を構成するのが好ましい。
上述した基礎的な電池モデルでは、電極142,141の表面におけるリチウムイオンの反応、電極142,141の活物質142b,141bにおけるリチウムイオンの拡散、および電解液でのリチウムイオンの拡散がモデル化されている。これに対し、電池状態推定部310に適用される簡易化された電池モデルは、基礎的な電池モデルにおいて、電極厚さ方向の反応は一様であるとする仮定と、電極142,141でのリチウムイオンの濃度は一定であるとする仮定の下で構成されている。
電解液中のリチウムイオンの濃度、すなわち電解液の塩濃度が十分に高い場合には、簡易化された電池モデルでの上記仮定を満足することはできる。電解液の塩濃度が十分に高い場合には、充放電によって電極内の電解液の塩濃度が変化したとしても、この塩濃度の変化が反応抵抗に及ぼす影響が小さい。したがって、電流密度I(t)を精度良く推定することができる。
一方、簡易化された電池モデルでの上記仮定は、電極内の電解液の塩濃度が低い場合に生じる反応抵抗の上昇が考慮されていない。この反応抵抗の上昇を、ハイレート抵抗上昇という。このため、簡易化された電池モデルによって推定された電流密度I(t)と、電流センサ202による検出電流Ibに対応する電流密度との間には、誤差が生じる。
この点を考慮すると、電流密度の誤差に基づいて、ハイレート劣化(指標)を推定することができる。例えば、電解液の塩濃度(リチウムイオン濃度)の拡散方程式を簡易化することにより、電極内の電解液における塩濃度変化は、下記式(36),(37)によって推定することができる。
上記式(36),(37)において、Δceは、負極内における電解液の塩濃度と、正極内における電解液の塩濃度との差である(図15参照)。Deffは、電解液の有効拡散係数であり、εeは、電解液の体積分率であり、t+ 0はリチウムイオンの輸率であり、Fはファラデー定数である。Δtは、電流密度の推定処理を行う時間間隔(時間刻み)であり、Δxは拡散距離(図15参照)である。Tは電池温度であり、I(t)は電流密度である。
例えば、二次電池1を放電するとき、塩濃度差Δceは、図15に示すように、負極での塩濃度の増加量と、正極での塩濃度の減少量との合計となる。塩濃度の増加量および減少量は、平均塩濃度に対する変化量である。
上記式(36),(37)によって推定された電極間での電解液の塩濃度差Δceと、電流推定誤差(Im−Ir)(Imは推定電流密度、Irは測定電流密度)との相関を図25に示す。図25によれば、塩濃度差Δceが大きくなるときに、電流推定誤差が大きくなる傾向がある。
したがって、塩濃度差Δceが大きいときの電流推定誤差(Im−Ir)の値を、ハイレート劣化として利用することができる。ここで、塩濃度差Δceが大きいという条件としては、例えば、塩濃度差Δceの値が、予め設定された所定値以上であるという条件、または、塩濃度差Δceの値が、予め設定された所定範囲内に存在するという条件がある。本実施例では、推定電流密度Imおよび測定電流密度Irの差分を用いているが、これに限るものではなく、推定電流密度Imおよび測定電流密度Irの比を用いることもできる。
塩濃度差Δceが大きい領域において電流推定誤差(Im−Ir)が発生するのは、電極内での電解液の塩濃度が低下することによって発生する電池抵抗の上昇分が、実際の二次電池1と電池モデルとで異なるからであると考えられる。一方、電池抵抗の上昇を含む電圧変化量ΔVは、実際の二次電池1と電池モデルとで等しい。実際に発現する電池抵抗をRrとし、電池モデルにおける電池抵抗をRmとすると、下記式(38)が成り立つ。
本実施例では、上記式(38)に関連して、下記式(39)を定義する。
ΔV(t1)は、二次電池1の電圧降下量を示す。Ir(t1)は、電流センサ202による検出電流Ibから得られた電流密度であり、Rr(t1)は、検出電流Ibが得られたときの電池抵抗である。Im(t1)は、電流推定部313によって推定された電流密度I(t)であり、Rm(t1)は、電流推定部313によって推定された電流密度I(t)に対応する電池抵抗である。Im(t0)は、二次電池1を放置することによってハイレート劣化が解消したときの電流密度であり、Rm(t0)は、電流密度Im(t0)に対応する電池抵抗である。
上記式(39)において、下記式(40)の関係が成り立つ。
上記式(39)において、電池抵抗Rm(t1)には、ハイレート抵抗上昇量が含まれる可能性があり、電池抵抗Rm(t1)は、ハイレート劣化が発生していないときの電池抵抗Rm(t0)よりも高くなる。
上記式(M1f)によれば、上記式(39)は、下記式(41)で表すことができる。
上記式(41)において、ハイレート劣化に影響を与えない成分に関する値(I×Rd)は省略する。また、温度T(t0)を温度T(t1)と仮定する。このように仮定すると、上記式(41)は、下記式(42)で表される。
上記式(42)は、下記式(43)に変形することができる。
上記式(43)によれば、抵抗変化率gr(t1),gr(t0)を算出しておき、電流推定部313によって電流密度I(t1)を推定すれば、ハイレート劣化が発生していないときの電流密度I(t0)を推定することができる。
ハイレート抵抗上昇量ΔRhは、下記式(44)で示すように、ハイレート劣化による電池抵抗Rhrと、摩耗劣化による電池抵抗Rmrとの差分に相当する。
上記式(44)の両辺に電池電流Irを掛ければ、下記式(45)に示すように、ハイレート劣化による電圧降下量ΔVhrを算出することができる。
推定電流密度Imから算出される推定抵抗Rmについて、ハイレート劣化の影響が小さく、無視できるものと仮定すると、抵抗Rmrは、推定抵抗Rmと見なすことができる。このため、上記式(44),(45)は、下記式(46),(47)で表される。
一方、ハイレート劣化は、推定電流Imおよび測定電流Irの誤差として観察できるため、ハイレート劣化に伴う電圧降下量ΔVhmは、下記式(48)で表される。
上記式(48)において、ΔIは、電流推定誤差である。
測定値としての電圧降下量ΔVhrと、推定値としての電圧降下量ΔVhmとが等しいと仮定すると、上記式(46)〜(48)から下記式(49)が得られる。
上記式(49)から下記式(50)が得られる。
また、上記式(39)を用いれば、ハイレート抵抗上昇量ΔRh(t1)を、下記式(51)で表すことができる。
上記式(51)に含まれる補正係数ξは、下記式(52)で表される。
上記式(52)によれば、抵抗変化率gr(t1), gr(t0)と、電流推定部313によって推定された電流密度Im(t1)とに基づいて、ハイレート劣化が発生していないときの電流密度Im(t0)を算出することができる。ここで、抵抗変化率gr(t0)としては、記憶部323に記憶された抵抗変化率gr(t0)が用いられる。
電流密度Im(t0)を算出すれば、上記式(39)に基づいて、電池抵抗Rm(t0)を算出(推定)することができる。すなわち、電圧降下量ΔV(t1)を電流密度Im(t0)で除算すれば、電池抵抗Rm(t0)を算出することができる。電流密度Im(t0)および電池抵抗Rm(t0)を算出できれば、上記式(51)を用いて、ハイレート抵抗上昇量ΔRh(t1)を算出することができる。
一方、下記式(53)に示すように、ハイレート抵抗上昇率γを定義することができる。ハイレート抵抗上昇率γは、ハイレート劣化を評価するために用いることができる。
ハイレート抵抗上昇率γを用いてハイレート劣化を評価する方法としては、例えば、許容値γlimを設定しておき、ハイレート抵抗上昇率γが許容値γlimを超えているときに、ハイレート劣化が発生していると判定することができる。許容値γlimは、ハイレート抵抗上昇量ΔRh(t1)と、ハイレート劣化が発生していないときの電池抵抗Rm(t0)とに基づいて設定される。電池抵抗Rm(t0)は、摩耗劣化による抵抗に相当する。ここで、二次電池1の寿命を考慮して、摩耗劣化による抵抗と、ハイレート抵抗上昇量ΔRh(t1)とを予め決めておけば、許容値γlimを設定することができる。
また、ハイレート抵抗上昇率γが許容値γlimを超えているときには、ハイレート劣化が発生していると判定することができる。ハイレート劣化が発生しているときには、上述したように、二次電池1の入出力を制限することができる。
一方、解消値γaを設定しておくことにより、ハイレート劣化が解消されているか否かを判別することもできる。解消値γaは、許容値γlimよりも低い値であり、予め定めておくことができる。
上記式(53)に示すように、ハイレート抵抗上昇率γを定義することにより、電流密度Im(t1),Ir(t1)を取得するだけで、ハイレート抵抗上昇率γを算出することができ、ハイレート抵抗上昇量ΔRhを算出する場合と比べて、演算負荷を低減することができる。
次に、電池状態推定部310の処理について、図26に示すフローチャートを用いて説明する。図26に示す処理は、所定の周期で実行される。
電池状態量推定部310は、ステップS301において、監視ユニット201の出力に基づいて電池電圧Vbを取得し、ステップS302において、温度センサ203の出力に基づいて電池温度Tbを取得する。
ステップS303において、電池状態推定部310(拡散推定部311)は、上記式(M2b)を用いた前回の演算時におけるリチウム濃度分布に基づき、局所SOCθを算出する。ステップS304において、電池状態推定部310(開放電圧推定部312)は、ステップS303で得られた局所SOCθから、開放電圧U(θ)を算出する。
ステップS305において、電池状態推定部310(電流推定部313)は、上記式(M1f)を用いて、電流密度Im(t)を算出(推定)する。推定電流密度Im(t)は、電池電圧Vbと、ステップS303で得られた開放電圧U(θ)と、パラメータ設定部314で設定されたパラメータ値とを、上記式(M3a)に代入することによって得られる。
推定電流密度Im(t)(Im(t1)と同じ)が得られれば、上記式(39)を用いて、推定抵抗Rm(t1)を算出することができる。ここで、抵抗変化率算出部321は、上記式(35)を用いることにより、抵抗変化率grを算出する。
具体的には、上記式(35)において、開放電圧U(θ)として、開放電圧推定部312が推定した値を用い、電圧V(t)として、監視ユニット201から取得した電池電圧Vbを用いることができる。また、電池温度Tb、局所SOCθおよび抵抗Ranの関係を示すマップを用いることにより、電池温度Tbおよび局所SOCθから抵抗Ranを特定することができる。電流密度I(t)としては、電流センサ202による検出電流Ibから特定される電流密度I(t)を用いることができる。
ステップS306において、電池状態推定部310(境界条件設定部315)は、ステップS305で得られた推定電流密度I(t)から反応電流密度(リチウム生成量)jj Liを算出する。また、電池状態推定部310(境界条件設定部315)は、算出した反応電流密度を用いて、上記式(M2b)の活物質界面における境界条件(活物質界面)を設定する。
ステップS307において、電池状態推定部310(拡散推定部311)は、上記式(M2b)を用いて、活物質モデルの内部におけるリチウムイオン濃度分布を算出し、各領域におけるリチウムイオン濃度の推定値を更新する。ここで、最外周の分割領域におけるリチウムイオン濃度(更新値)は、図26に示す処理を次回行うときに、ステップS303における局所SOCθの算出に用いられる。
次に、判別部322の処理(一部)について、図27に示すフローチャートを用いて説明する。図27に示す処理は、ハイレート劣化が解消されているか否かを判定する処理である。
ステップS401において、イグニッションスイッチがオンからオフに切り替わると、判別部322は、ステップS402の処理を行う。ステップS402において、判別部322は、タイマ322aを用いた時間t1の計測を行う。時間t1の計測は、イグニッションスイッチがオンからオフに切り替わったタイミングから、イグニッションスイッチがオフからオンに切り替わるタイミングまで行われる。
ステップS403において、判別部322は、イグニッションスイッチがオフからオンに切り替わったか否かを判別する。イグニッションスイッチがオフからオンに切り替わっていなければ、ステップS402の処理を継続して行う。イグニッションスイッチがオフからオンに切り替わると、判別部322は、ステップS404の処理を行う。
ステップS404において、判別部322は、ステップS402の処理で得られた計測時間t1が放置時間trestを超えているか否かを判別する。放置時間trestとは、ハイレート劣化が解消されるまでの時間であり、予め設定しておくことができる。ハイレート劣化は、リチウム塩濃度の偏りによって発生するため、リチウム塩濃度の偏りが緩和される時間を実験などによって予め決めれば、この時間が放置時間trestとなる。放置時間trestに関する情報は、予めメモリ300aに格納しておくことができ、判別部322は、メモリ300aから放置時間trestに関する情報を取得することができる。
計測時間t1が放置時間trestよりも短いとき、判別部322は、本処理を終了する。一方、計測時間t1が放置時間trestよりも長いとき、判別部322は、ステップS405において、ハイレート劣化が解消されたものと判別する。判別部322がハイレート劣化の解消を判別したときには、以下に説明するように、抵抗変化率grの学習処理が行われる。
図28は、抵抗変化率grの学習処理を説明するフローチャートである。図28に示す処理は、イグニッションスイッチがオフからオンに切り替わったときに、判別部322によって行われる。
ステップS501において、判別部322は、イグニッションスイッチがオフからオンに切り替わったタイミングから、タイマ322aを用いた時間t2の計測を行う。ステップS502において、判別部322は、ステップS501で取得した計測時間t2が許容時間taを超えていないか否かを判別する。許容時間taとは、ハイレート劣化の影響を無視できる時間であり、予め設定することができる。イグニッションスイッチがオンになった直後の時間帯では、ハイレート劣化が発生しにくい状況にあるため、この時間帯を許容時間taとして設定する。許容時間taに関する情報は、予めメモリ300aに格納しておくことができ、判別部322は、許容時間taに関する情報をメモリ300aから読み出すことができる。
計測時間t2が許容時間taよりも短いとき、判別部322は、ステップS503において、抵抗変化率算出部321によって算出された抵抗変化率grを記憶部323に記憶する。判別部322は、抵抗変化率算出部321から抵抗変化率grを取得しており、計測時間t2が許容時間taよりも短いときには、抵抗変化率算出部321から取得した抵抗変化率grを記憶部323に記憶する。
計測時間t2が許容時間taよりも長いとき、判別部322は、抵抗変化率を記憶部323には記憶させずに、本処理を終了する。計測時間t2が許容時間taよりも長いとき、抵抗変化率算出部321によって算出された抵抗変化率grは、抵抗上昇量推定部324に出力される。
抵抗上昇量推定部324は、記憶部323に記憶された抵抗変化率gr(t0)と、抵抗変化率算出部321から得られた抵抗変化率gr(t1)とを上記式(52)に代入することにより、補正係数ξを算出する。また、抵抗上昇量推定部324は、上記式(52)を用いて、補正係数ξおよび推定電流密度Im(t1)から推定電流密度Im(t0)を算出する。推定電流密度Im(t0)を算出すれば、上記式(39)から、推定抵抗Rm(t0)を算出することができる。
抵抗上昇量推定部324は、上記式(51)を用いて、ハイレート抵抗上昇量ΔRh(t1)を算出する。具体的には、上記式(51)に対して、測定電流密度Ir(t1)、推定電流密度Im(t1)、補正係数ξおよび推定抵抗Rm(t0)を代入することにより、ハイレート抵抗上昇量ΔRh(t1)を算出することができる。
本実施例では、Imを推定電流密度とし、Irを測定電流密度としたが、これに限るものではない。推定された電流密度に電極表面積を乗算して得られる電流をImとし、測定電流をIrとすることもできる。
本実施例では、抵抗変化率gr(t1)、gr(t0)を用いて補正係数ξを算出しているが、これに限るものではない。下記式(54)に示すように、抵抗変化率および容量維持率を用いて補正係数ξを算出することもできる。
容量維持率は、劣化状態にある単極の容量を、初期状態にある単極の容量で除算した値である。二次電池が劣化したとき、単極の容量は、初期状態の容量よりも減少する。
正極の容量維持率k1は、下記式(55)で表される。
ここで、Q1_iniは、二次電池1が初期状態にあるときの正極141の容量であり、実験などによって予め特定しておくことができる。ΔQ1は、正極141の容量が劣化に伴って減少する量である。容量維持率k1は、劣化後の満充電容量を、初期状態の満充電容量と比較することによって算出することができる。
負極の容量維持率k2は、下記式(56)で表される。
ここで、Q2_iniは、二次電池1が初期状態にあるときの負極142の容量であり、実験などによって予め特定しておくことができる。ΔQ2は、負極142の容量が劣化に伴って減少する量である。容量維持率k2は、劣化後の満充電容量を、初期状態の満充電容量と比較することによって算出することができる。
上記式(54)に示す容量維持率kについては、正極141および負極142の少なくとも一方における容量維持率を考慮することができる。
本実施例では、計測時間t1が放置時間trestよりも長いときに、ハイレート劣化が解消していると判定しているが、これに限るものではない。例えば、ハイレート抵抗上昇量ΔRhやリチウム塩濃度の偏り量に基づいて、ハイレート劣化が解消しているか否かを判別することができる。ここで、ハイレート劣化の解消を判別するときには、計測時間t1、ハイレート抵抗上昇量ΔRhおよびリチウム塩濃度の偏り量のうち、少なくとも1つのパラメータを用いることができる。
ハイレート抵抗上昇量ΔRhを用いるときには、ハイレート抵抗上昇量ΔRhが、予め定められた解消値よりも小さいときに、ハイレート劣化が解消されていると判別することができる。一方、リチウム塩濃度の偏り量は、上記式(36)に示す塩濃度差Δceによって特定することができる。ここで、塩濃度差Δceが、予め定めた解消値よりも小さいとき、ハイレート劣化が解消されていると判別することができる。
上述した基礎的な電池モデルは、電極142,141の厚さ方向における反応が一様であるとする仮定と、電極142,141におけるリチウムイオンの濃度が一定であるとする仮定の下で構成されている。基礎的な電池モデルの代わりに、電極142,141の間におけるリチウムイオン濃度の差による過電圧Δφe(t)を考慮した電池モデルを用いることもできる。
上記式(14)において、直流抵抗による電圧降下と、リチウムイオン濃度の差による過電圧とが独立していると仮定する。この場合には、下記式(57)に示すように、電極142,141の間におけるリチウムイオン濃度の差による過電圧Δφej(x、t)と、電極142,141の間におけるリチウムイオン濃度の差ΔCej(x、t)との関係が得られる。
上記式(57)から、過電圧Δφe(t)を求めると、下記式(58)となる。
上記式(58)において、Ce,iniは、二次電池1が初期状態にあるときのリチウムイオンの濃度を示す。
上記式(58)を一次近似(線形近似)すると、下記式(59)が得られる。
上記式(59)に示す濃度差は、上記式(36)、(37)から求めることができ、下記式(36’a)、(37’)で表すことができる。
上記式(36’a)は、電極142,141の間におけるリチウムイオン濃度の差に関する式であるため、上記式(37’)に示すように、上記式(37)に示す係数α、βとは異なる係数αe、βeを定義する。
時間変化Δtがn回進むと、上記式(36’a)は、下記式(36’b)で表すことができる。
上記式(59)に、上記式(36’b)に示す濃度差ΔCeを代入すれば、過電圧Δφe(t)を求めることができる。
一方、上記式(M1b)において、過電圧Δφe(t)を考慮すると、下記式(M1g)で表すことができる。
同様に、上記式(M1e)において、過電圧Δφe(t)を考慮すると、下記式(M1h)で表すことができる。
上記式(M1h)を一次近似(線形近似)すると、下記式(M1i)が得られる。
過電圧Δφe(t)を考慮した電池モデルでは、上記式(M1i)を用いて電流密度I(t)を算出することができる。すなわち、上記式(M1f)を用いて電流密度I(t)を算出する過程において、上記式(59)および上記式(36’b)から算出される過電圧Δφe(t)を考慮すればよい。
また、過電圧Δφe(t)を考慮した電池モデルでは、補正係数ξを以下のように求めることができる。
上記式(M1i)を用いて、時間t0,t1における電圧降下量ΔV(t0),ΔV(t1)をそれぞれ求めると、下記式(60),(61)で表される。時間t0は、ハイレート劣化が解消したときの時間であり、時間t1は、電流などを検出したときの時間である。
上記式(60),(61)および上記式(52)を用いれば、補正係数ξは、下記式(62)で表すことができる。
また、抵抗変化率grおよび容量維持率kを用いれば、補正係数ξは、下記式(63)で表すことができる。
上記式(62),(63)は、下記式(64)に示す関係を有する。
補正係数ξは、上記式(62),(63)に基づいて算出することができるが、上記式(62),(63)に示す一部のパラメータを、仮定した値として設定すれば、補正係数ξの算出を簡素化することができる。例えば、温度T(t0)が温度T(t1)と等しいと仮定したり、直流純抵抗Rd(T,t0)が直流純抵抗Rd(T,t1)と等しいと仮定したりすることができる。また、交換電流密度i0(θ,T,t0)が交換電流密度i0(θ,T,t1)と等しいと仮定したり、過電圧Δφe(t0)が過電圧Δφe(t1)と等しいと仮定したりすることができる。