以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は他の様々な形態に変形されることができ、本発明の範囲が以下で説明される実施形態に限定されるものではない。また、図面における要素の形状及びサイズなどは、より明確な説明のために誇張される場合があり、図面上において同じ符号で表示される要素は同じ要素を示す。
図1は、本発明の実施形態による線光源化されたLEDモジュールの平面図であり、図2は、図1のA−A'線に沿って切断した断面図である。図1及び2を参照すると、LEDモジュール100は、長く延長されたバー型のPCBのような回路基板150と、複数のLEDチップ110と、蛍光体膜120とを含む。図2に示したように、回路基板150は、LEDチップ110から放出された光を反射する反射面の内面を備える反射カップを有するように上部に溝150aが形成されており、この溝150a内には回路基板150の長手方向に沿って複数のLEDチップ110が線状に配列されている。特に、溝150aは、回路基板150の長手方向に沿って長く延長されている1つの溝であり、この1つの溝150a内に複数のLEDチップ110が一列に配列されている。この溝150aの側壁150bは、溝150aの底面から回路基板150の表面に向かうにつれ、溝150aの溝150aと平行な方向における開口の断面積が大きくなるように傾斜して形成され、反射面として機能をする。溝150aの側壁150bは、LEDチップ110から放出された光を側壁150bの傾きおよび形状に応じた出射方向に反射させることができる。具体的には、複数のLEDチップ110が線状に配列される方向と直交する短手方向への光の放射を抑え、短手方向への指向性を狭くすることができる。なお、本実施形態では、溝150a内に複数のLEDチップ110を一列に配列する場合を説明しているが、LEDチップ110の列は二列以上であってもよい。
蛍光体膜120は、溝150a全体を覆うようにLEDチップ110から間隔を置いて離れて回路基板150上に配置されている。従って、蛍光体膜120も長く延長された溝150aに沿って長く延長された形態で形成されている。蛍光体膜120と各々のLEDチップ110の光射出面との間には、各々のLEDチップ110から放出された光が混ざり合うことができる間隔が少なくとも設けられるとよい。本実施形態においては、LEDチップ110の光射出面から回路基板150の表面までの間隔が、各々のLEDチップ110から放出された光が混ざり合うことができる間隔である。したがって、回路基板150における溝150aの深さは、LEDチップ110から放出された光が混ざり合うことができる間隔に応じて定められてもよい。ここで、LEDチップ110から放出された光が混ざり合うこととは、隣り合うLEDチップ110から放出された光の光照射領域に重なりが生じることを指す。隣り合うLEDチップ110同士の間の距離に応じて、各々のLEDチップ110から放出された光が混ざり合うことができる間隔が変わるので、隣り合うLEDチップ110同士の間の距離に応じて、蛍光体膜120と各々のLEDチップ110の光射出面との間の距離が定められてよい。
この蛍光体膜120は、LEDチップ110から放出される光を異なる波長の光に変換する蛍光体を含有した透明樹脂膜であることができる。このようなLEDチップ110と蛍光体膜120により、LEDモジュール100は白色光を発する線光源となる。LEDチップ110と蛍光体膜120との間の空間は、空いたままにしてもよいが、LEDチップ110を封止するように透明樹脂で満たしてもよい。
蛍光体膜120は、溝150aの開口部よりも大きく、かつ、回路基板150の上面よりも小さいことが好ましい。蛍光体膜120が回路基板150の上面よりも大きい場合、蛍光体膜120が回路基板150から剥がれ易くなる。また、蛍光体膜120が回路基板150の上面と同じ大きさであると、蛍光体膜120が回路基板150の上面からはみ出さないように貼り合せるために、厳密な制御が必要となる。
複数のLEDチップ110は、一例として、青色LEDチップであり、蛍光体膜120は、この青色LEDチップから発光される青色光によって励起され、例えば黄色光を発する蛍光体を含有した透明樹脂であることができる。青色LEDチップから発光される青色光と、蛍光体膜120から発光される黄色光が混合され、白色光が出力されることができる。これにより、LEDモジュール100は白色光を発する線光源を形成する。他の実施例として、複数のLEDチップ110は、紫外線LEDチップであり、蛍光体膜120は、紫外線により励起され、赤色、緑色及び青色光を発する複数種の蛍光体の組合せ(赤色蛍光体、緑色蛍光体及び赤色蛍光体)を含有した透明樹脂であることができる。このような紫外線LEDチップと蛍光体膜120により、LEDモジュール100は白色光を発する線光源を形成することができる。
回路基板150は、例えば、バー型のPCBで形成されることができ、特に、熱放出の効果を高めるため金属PCB(metal PCB)で形成されることができる。溝150aは、回路基板150を例えばエッチングして形成することができる。回路基板150の溝150a内に配置されるLEDチップ110は、この溝150aの底上にダイボンディングされるが、例えば、ボンディングワイヤ112によって回路基板150の配線またはリードフレーム(未図示)と電気的に接続されることができる。他の実施例として、LEDチップ110は別途のワイヤボンディングなしに溝150aの底上にフリップチップボンディングされたものであることができる。なお、回路基板150には配線が形成されるので、回路基板150が金属PCBで形成される場合には、溝150aを含む回路基板150の表面に、絶縁膜が形成されていることが好ましい。
上述したLEDモジュール100は、反射カップを有するように形成された溝150a内に複数のLEDチップ110が一列に配列され、且つ蛍光体膜120がLEDチップから離れた状態で溝150a全体を覆うように一体に形成されることで、従来の点光源LEDモジュールとは異なり、蛍光体膜120の直上で均一な光特性の線光源を具現することができる。上述したLEDモジュール100は、回路基板150に直接形成した溝150aが反射カップとして機能するので、回路基板150から導光板までの距離を短くすることができる。従って、従来のエッジ型BLUに使用されるLEDモジュールが十分な光の混合のために導光板と一定の距離を維持しなければならないという問題を解消することができる。LEDモジュール100は蛍光体膜120の直上で均一な線光源特性を示すため、エッジ型BLUに適用する際に、LEDモジュール100と導光板との間の間隔が非常に狭くなることができ、これによって、LCDディスプレイにおいてベゼル幅を大幅に狭めることができるという長所を提供する。
反射カップを構成するLEDモジュール用樹脂成形部150の凹部開口面は、Rzが1μm以上、10μm以下である。これにより、LEDモジュール用樹脂成形部150に用いられる樹脂成型体1を量産した場合に、形状の揃った樹脂成型体1を効率よく製造できる。Rzが1μm未満では、トランスファモールド成型用金型を用いて樹脂成型体1を製造する場合に、樹脂成型体1の金型からの離型性が低下し、樹脂成型体1の変形や凝集破壊が発生する傾向がある。Rzが10μmを超えると、光が反射率が低下する傾向がみとめられる。したがって、Rzが1μm以上、10μm以下であることで、パッケージ成形体生産時の離型性の向上と樹脂成形体の高反射率を両立することができる。
LEDモジュール用樹脂成形部150に用いられる樹脂成型体1は、熱機械分析装置(TMA)を用い、温度範囲−50〜250℃、昇温速度5℃/分および試料サイズ長1〜5mmの条件で測定された前記樹脂硬化体のガラス転移温度が10℃以上であることが好ましい。これにより、LEDモジュール用樹脂成形部150の耐熱性が向上し、発光素子に起因する高温に晒されても、変色を伴う熱劣化が抑制される。その結果、使用初期の反射率を高水準で維持することができる。ガラス転移温度(Tg)は、より好ましくは20℃以上であり、さらに好ましくは50℃以上である。
また、前記樹脂成型体1の開口面120および凹部150aの内壁面150bは、460nmにおける光反射率が80%以上であり、かつ、樹脂成型体1を180℃で72時間加熱した後の開口面12cおよび内壁面13bにおける光反射率の保持率が90%以上であることが好ましい。このようなLEDモジュール用樹脂成形部150を用いることにより、樹脂成型体1をLEDモジュール用樹脂成形部150に用いた場合の信頼性が顕著に向上する。
また、樹脂硬化体の固体13C−核磁気共鳴スペクトル(以下「固体13CNMRスペクトル」とする)におけるピークトップが、−1ppm〜2ppmおよび13ppm〜18ppmの範囲に少なくとも1つ存在することがさらに好ましい。このような樹脂硬化体12は、表面実装型発光装置の信頼性をより一層向上させる。
上記した各実施形態において、発光素子から発せられる光を反射するための樹脂硬化体を与える樹脂材料としては、特に限定されないが、トランスファモールド成形を実施する観点からは、熱硬化性樹脂を用いるのが好ましい。熱硬化性樹脂としては、表面実装型発光装置の分野で使用されるものを特に限定なく使用できるが、たとえば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、アクリレート樹脂、ポリウレタンなどが挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
これらの熱硬化性樹脂の中でも、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂および変性シリコーン樹脂が好ましい。たとえば、エポキシ樹脂と当量の酸無水物との混合物100重量部に、硬化促進剤0.1〜2重量部、助触媒0.5〜3重量部、白色顔料5〜30重量部および無機フィラー30〜70重量部を添加することにより得られるエポキシ樹脂組成物を使用できる。さらに、この組成物を加熱することにより部分的に硬化させてBステージ化したエポキシ樹脂組成物も使用できる。
上記したエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂としては、たとえば、トリグリシジルイソシアヌレート、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどから得られるエポキシ樹脂が挙げられる。酸無水物としては、たとえば、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。硬化促進剤としては、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7)などが挙げられる。助触媒としては、たとえば、エチレングリコールなどが挙げられる。白色顔料としては、たとえば、酸化チタンなどが挙げられる。無機フィラーとしては、たとえば、シリカ粒子、ガラス繊維などが挙げられる。
また、発光素子の発熱などによる、樹脂硬化体の反りの発生、および変色を伴う熱劣化をさらに抑制する観点からは、(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物および(C)ヒドロシリル化触媒を含有する熱硬化性樹脂組成物が好ましく、上記(A)成分、(B)成分および(C)成分と共に、(D)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1個含有するシリコーン化合物、および(E)無機充填材を含有する熱硬化性樹脂組成物(X)がさらに好ましい。
熱硬化性樹脂組成物(X)は、線膨張係数が比較的低いため、リードに用いられる金属材料の線膨張係数との差が小さくなる。また、熱硬化性樹脂組成物(X)は、耐熱性が高く、変色を伴う熱劣化が起こり難いため、高温に晒されても光反射率が使用初期の高水準に維持される。
以下に、(A)〜(E)の各成分について詳しく説明する。
(A)成分はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物であれば特に限定されない。
(A)成分の骨格は、有機化合物としては、ポリシロキサン−有機ブロックコポリマーやポリシロキサン−有機グラフトコポリマーのようなシロキサン単位(Si−O−Si)を含むものではなく、構成元素としてC、H、N、O、S及びハロゲン以外の元素を含まない化合物がより好ましい。シロキサン単位を含むものの場合は、半導体のパッケージとリードフレームや封止樹脂との接着性が低くなりやすいという問題がある。
(A)成分は、有機重合体系の化合物と有機単量体系化合物とに分類できる。
有機重合体系の(A)成分としては、たとえば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、不飽和炭化水素系、ポリアクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)、ポリイミド系の骨格を有するものを挙げることができる。
これらのうち、ポリエーテル系重合体としては、たとえば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体などが挙げられる。さらに具体的な例を示すと、下記で示される重合体が挙げられる。
(式中、R1、R2は構成元素としてC、H、N、O、S、ハロゲン以外の元素を含まない炭素数1〜6の2価の有機基、n、m、lは1〜300の数を表す。)
その他の重合体としては、たとえば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸などの2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどのグリコールとの縮合またはラクトン類の開環重合で得られるポリエステル系重合体;エチレン−プロピレン系共重合体、ポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレンなどとの共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、イソプレンとブタジエン、アクリロニトリル、スチレンなどとの共重合体、ポリブタジエン、ブタジエンとスチレン、アクリロニトリルなどとの共重合体、ポリイソプレン、ポリブタジエン、イソプレンまたはブタジエンとアクリロニトリル、スチレンなどとの共重合体を水素添加して得られるポリオレフィン系(飽和炭化水素系)重合体;エチルアクリレート、ブチルアクリレートなどのモノマーをラジカル重合して得られるポリアクリル酸エステル、エチルアクリレート、ブチルアクリレートなどのアクリル酸エステルと酢酸ビニル、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、スチレンなどとのアクリル酸エステル系共重合体;前記有機重合体中でビニルモノマーを重合して得られるグラフト重合体;ポリサルファイド系重合体;ε−アミノカプロラクタムの開環重合によるナイロン6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の重縮合によるナイロン66、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の重縮合によるナイロン610、ε−アミノウンデカン酸の重縮合によるナイロン11、ε−アミノラウロラクタムの開環重合によるナイロン12、上記のナイロンのうち2成分以上の成分を有する共重合ナイロンなどのポリアミド系重合体;たとえば、ビスフェノールAと塩化カルボニルより重縮合して製造されたポリカルボネート系重合体;ジアリルフタレート系重合体;ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、アンモニアレゾール型フェノール樹脂、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂などのフェノール−ホルムアルデヒド系樹脂(フェノール系樹脂);などが挙げられる。
これらの重合体骨格に、炭素−炭素二重結合を有するアルケニル基を導入して(A)成分とすることができる。この場合、炭素−炭素二重結合を有するアルケニル基は分子内のどこに存在してもよいが、反応性の点から側鎖または末端に存在する方が好ましい。
アルケニル基を前記重合体骨格に導入する方法については、種々提案されているものを用いることができるが、重合後にアルケニル基を導入する方法と重合中にアルケニル基を導入する方法に大別することができる。
重合後にアルケニル基を導入する方法としては、たとえば、末端、主鎖または側鎖に水酸基、アルコキシド基、カルボキシル基、エポキシ基などの官能基を有する有機重合体に、その官能基に対して反応性を示す活性基とアルケニル基の両方を有する有機化合物を反応させることにより、末端、主鎖または側鎖にアルケニル基を導入することができる。
上記官能基に対して反応性を示す活性基とアルケニル基の両方を有する有機化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、アクリル酸クロライド、アクリル酸ブロマイドなどの炭素原子数3〜20の不飽和脂肪酸、酸ハライド、酸無水物などやアリルクロロホルメート(CH2=CHCH2OCOCl)、アリルブロモホルメート(CH2=CHCH2OCOBr)などのC3〜C20の不飽和脂肪族アルコール置換炭酸ハライド、アリルクロライド、アリルブロマイド、ビニル(クロロメチル)ベンゼン、アリル(クロロメチル)ベンゼン、アリル(ブロモメチル)ベンゼン、アリル(クロロメチル)エーテル、アリル(クロロメトキシ)ベンゼン、1−ブテニル(クロロメチル)エーテル、1−ヘキセニル(クロロメトキシ)ベンゼン、アリルオキシ(クロロメチル)ベンゼン、アリルイソシアネートなどが挙げられる。
また、エステル交換法を用いてアルケニル基を導入する方法がある。この方法はポリエステル樹脂やアクリル樹脂のエステル部分のアルコール残基を、エステル交換触媒を用いてアルケニル基含有アルコールまたはアルケニル基含有フェノール誘導体とエステル交換する方法である。アルコール残基とのエステル交換に用いるアルケニル基含有アルコール及びアルケニル基含有フェノール誘導体は、少なくとも1個のアルケニル基を有しかつ少なくとも1個の水酸基を有するアルコールまたはフェノール誘導体であれば良いが、水酸基を1個有する方が好ましい。触媒は使用してもしなくても良いが、チタン系および錫系の触媒が良い。
アルケニル基含有アルコールとしては、たとえば、ビニルアルコール、アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、6−ヘプテン−1−オール、7−オクテン−1−オール、8−ノネン−1−オール、9−デセン−1−オール、2−(アリルオキシ)エタノール、ネオペンチルグリコールモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、トリメチロールエタントリアリルエーテル、ペンタエリストールテトラアリルエーテル、1,2,6−ヘキサントリオールトリアリルエーテル、ソルビタントリアリルエーテルなどが挙げられる。また、アルケニル基含有フェノール誘導体としては、たとえば、下記に示すものが挙げられる。
これらの中でも、入手の容易さから、アリルアルコール、ビニルアルコール、3−ブテン−1−オール、2−(アリルオキシ)エタノール、および下記で示されるものが好ましい。
さらに、上記アルコール又はフェノール誘導体の酢酸エステルなどのエステル化物とポリエステル樹脂やアクリル樹脂のエステル部分とを、エステル交換触媒を用いてエステル交換しながら、生成するポリエステル樹脂やアクリル樹脂のエステル部分のアルコール残基の酢酸エステルなどの低分子量エステル化物を減圧脱揮などで系外に留去する方法でアルケニル基を導入する方法もある。
また、リビング重合によりメチル(メタ)アクリレートなどの重合を行った後、リビング末端にアルケニル基を有する化合物を結合させることにより、重合反応を停止させる方法により末端にアルケニル基を導入することもできる。
重合中にアルケニル基を導入する方法としては、たとえば、ラジカル重合法で本発明に用いる(A)成分の有機重合体骨格を製造する場合に、ラジカル反応性の低いアルケニル基を有するラジカル連鎖移動剤を用いることにより、有機重合体骨格の側鎖や末端にアルケニル基を導入することができる。このようなラジカル連鎖移動剤としては、たとえば、アリルメタクリレート、アリルアクリレートなどの、分子中にラジカル反応性の低いアルケニル基を有するビニルモノマー、アリルメルカプタンなどが挙げられる。
(A)成分の分子量は特に限定されないが、100〜100,000の任意のものが好適に使用でき、アルケニル基含有有機重合体であれば500〜20,000のものが特に好ましい。分子量が300未満では、可とう性の付与などの有機重合体の利用による特徴が発現し難く、分子量が100,000を超えると、アルケニル基とSiH基との反応による架橋の効果が発現し難い。
有機単量体系の(A)成分としては、たとえば、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレンなどの芳香族炭化水素系:直鎖系、脂環系などの脂肪族炭化水素系:複素環系の化合物およびこれらの混合物などが挙げられる。
(A)成分において、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよい。SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合としては、特に限定されないが、下記一般式(I)で示される基が反応性の点から好適である。また、原料の入手の容易さからは、下記に示される基が特に好ましい。
(式中R1は水素原子またはメチル基を表す。)
(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては、下記一般式(II)で示される脂環式の基が、樹脂硬化体の耐熱性が高いという点から好適である。また、原料の入手の容易さからは、下記で示される脂環式の基が特に好ましい。
(式中R2は水素原子あるいはメチル基を表す。)
SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合は、(A)成分の骨格部分に直接結合していてもよく、2価以上の置換基を介して共有結合していても良い。2価以上の置換基としては炭素数0〜10の置換基であれば特に限定されないが、構成元素としてC、H、N、O、S、およびハロゲン以外の元素を含まないものが好ましい。これらの置換基の例としては、下記で示されるものが挙げられる。また、これらの2価以上の置換基の2つ以上が共有結合によりつながって1つの2価以上の置換基を構成していてもよい。
以上のような骨格部分に共有結合する基の例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2−ヒドロキシ−3−(アリルオキシ)プロピル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、2−(アリルオキシ)フェニル基、3−(アリルオキシ)フェニル基、4−(アリルオキシ)フェニル基、2−(アリルオキシ)エチル基、2,2−ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3−アリルオキシ−2,2−ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、下記で示される各基などが挙げられる。
有機重合体系の(A)成分の具体例としては、1,2−ポリブタジエン(1,2比率10〜100%のもの、好ましくは1,2比率50〜100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイド、下記に示される重合体などが挙げられる。
(式中、R1はHまたはCH3、R2、R3は構成元素としてC、H、N、O、S、ハロゲン以外の元素を含まない炭素数1〜6の2価の有機基、X、Yは炭素数0〜10の2価の置換基、n、m、lは1〜300の数を表す。)
(式中、R1はHまたはCH3、R4、R5は炭素数1〜6の2価の有機基、X、Yは炭素数0〜10の2価の置換基、n、m、lは1〜300の数を表す。)
(式中、R1はHまたはCH3、R6、R7は炭素数1〜20の2価の有機基、X、Yは炭素数0〜10の2価の置換基、n、m、lは1〜300の数を表す。)
(式中、R1はHまたはCH3、R8、R9は炭素数1〜6の2価の有機基、X、Yは炭素数0〜10の2価の置換基、n、m、lは1〜300の数を表す。)
(式中、R1はHまたはCH3、R10、R11、R12は炭素数1〜6の2価の有機基、X、Yは炭素数0〜10の2価の置換基、n、m、l、pは1〜300の数を表す。)などが挙げられる。
有機単量体系の(A)成分の具体的な例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ジビニルベンゼン類(純度50〜100%のもの、好ましくは純度80〜100%のもの)、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、およびそれらのオリゴマー、下記に示されるような、従来公知のエポキシ樹脂のグリシジル基の一部または全部をアリル基に置き換えた化合物などが挙げられる。
(A)成分としては、上記のように骨格部分とアルケニル基とに分けて表現しがたい、低分子量化合物も用いることができる。これらの低分子量化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、オクタジエン、デカジエンなどの脂肪族鎖状ポリエン化合物系、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、ノルボルナジエンなどの脂肪族環状ポリエン化合物系、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセンなどの置換脂肪族環状オレフィン化合物系などが挙げられる。
(A)成分としては、耐熱性をより向上させ得るという観点からは、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を、(A)成分1gあたり0.001mol以上含有するものが好ましく、(A)成分1gあたり0.005mol以上含有するものがより好ましく、(A)成分1gあたり0.008mol以上含有するものがさらに好ましい。
(A)成分において、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合の数は、平均して1分子当たり少なくとも2個あればよいが、力学強度をより向上したい場合には2を越えることが好ましく、3個以上であることがより好ましい。(A)成分のSiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合の数が1分子内当たり1個以下の場合は、(A)成分と(B)成分とが反応しても、グラフト構造のみが生成するだけで、架橋構造は生成しない。
(A)成分としては、反応性が良好であるという観点からは、1分子中にビニル基を1個以上含有していることが好ましく、1分子中にビニル基を2個以上含有していることがより好ましい。また貯蔵安定性が良好となりやすいという観点からは、1分子中にビニル基を6個以下含有していることが好ましく、1分子中にビニル基を4個以下含有していることがより好ましい。
(A)成分の分子量は、力学的耐熱性が高いという観点および原料液の糸引き性が少なく成形性、取扱い性が良好であるという観点、(E)成分および(F)成分などの粉体との均一な混合が容易という観点、および硬化性樹脂組成物タブレットとした際の成形性が良好であるという観点からは、好ましくは900未満、より好ましくは700未満、さらに好ましくは500未満である。
(A)成分の粘度は、他の成分との均一な混合、および良好な作業性を得るためには、23℃において、好ましくは1000ポイズ未満、より好ましくは300ポイズ未満、さらに好ましくは30ポイズ未満である。粘度はE型粘度計によって測定することができる。
(A)成分としては、耐光性がより高いという観点から、フェノール性水酸基および/またはフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物の含有量が少ないものが好ましく、フェノール性水酸基および/およびフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物を含まないものが好ましい。本発明におけるフェノール性水酸基とは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などに例示される芳香族炭化水素核に直接結合した水酸基であり、フェノール性水酸基の誘導体とは上述のフェノール性水酸基の水素原子をメチル基、エチル基などのアルキル基、ビニル基、アリル基などのアルケニル基、アセトキシ基などのアシル基などにより置換された基を示す。
また、特に耐光性が良好であるという観点からは、(A)成分における芳香環の成分重量比が50重量%以下であるものが好ましく、40重量%以下のものがより好ましく、30重量%以下のものがさらに好ましい。最も好ましいのは芳香族炭化水素環を含まないものである。
得られる樹脂硬化体の着色が少なく、耐光性が高いという観点からは、(A)成分としてはビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、ビニルノルボルネン、トリアリルイソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが好ましく、トリアリルイソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが特に好ましい。
(A)成分としては、耐熱性および耐光性が特に高いという観点からは、下記一般式(III)で表される化合物が好ましい。
(式中3つのR1は同一または異なって、炭素数1〜50の一価の有機基を示す。)
上記一般式(III)のR1は、得られる樹脂硬化体の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、好ましくは炭素数1〜20の一価の有機基であり、より好ましくは炭素数1〜10の一価の有機基であり、さらに好ましくは炭素数1〜4の一価の有機基である。これらの好ましいR1の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、下記に例示される各一価基などが挙げられる。
上記一般式(III)のR1としては、樹脂成型体とリードまたは樹脂成型体と封止剤との接着性が良好になりうるか、または得られる樹脂成型体の力学強度が高くなり得るという観点からは、3つのR1のうち少なくとも1つがエポキシ基を一つ以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることが好ましく、下記で表されるエポキシ基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることがより好ましい。
これらの好ましいR1の例としては、グリシジル基、に示される各基などが挙げられる。
上記一般式(III)のR1は、得られる樹脂硬化体の耐熱性が良好になりうるという観点からは、好ましくは、2個以下の酸素原子を含みかつ構成元素としてC、H、Oのみを含む炭素数1〜50の一価の有機基であり、より好ましくは、炭素数1〜50の一価の炭化水素基である。これらの好ましいR1の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、下記に示される各基などが挙げられる。
上記一般式(III)のR1としては、反応性が良好になるという観点からは、3つのR1のうち少なくとも1つが、下記で表される基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることが好ましい。
また、3つのR1のうち少なくとも1つが、下記一般式(IV)で表わされる基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることがより好ましい。また、3つのR1のうち少なくとも2つが下記一般式(V)で表される有機化合物であることがさらに好ましい。
(式中R2は水素原子またはメチル基を示す。)
(式中R3は直接結合または炭素数1〜48の二価の有機基を表し、R4は水素原子またはメチル基を表す。)
上記一般式(V)のR3は、直接結合または炭素数1〜48の二価の有機基であるが、得られる樹脂成型体の耐熱性をより向上させるという観点からは、好ましくは直接結合または炭素数1〜20の二価の有機基であり、より好ましくは直接結合または炭素数1〜10の二価の有機基であり、さらに好ましくは直接結合または炭素数1〜4の二価の有機基である。これらの好ましいR3の例としては、下記に示される各基が挙げられる。
上記一般式(V)のR3としては、得られる樹脂硬化体の耐熱性をさらに向上させるという観点からは、好ましくは、直接結合しているかまたは2つ以下の酸素原子を含みかつ構成元素としてC、H、Oのみを含む炭素数1〜48の二価の有機基であり、より好ましくは直接結合または炭素数1〜48の二価の炭化水素基である。これらの好ましいR3の例としては、下記に示される各基などが挙げられる。
上記一般式(V)のR4は、水素原子またはメチル基であるが、反応性が良好であるという観点からは、水素原子が好ましい。
ただし、上記のような一般式(III)で表される有機化合物の好ましい例においても、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有することは必要である。耐熱性をより向上させるという観点からは、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に3個以上含有する有機化合物であることがより好ましい。
以上のような一般式(III)で表される有機化合物の好ましい具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、下記に示される各化合物などが挙げられる。
別形態の(A)成分の好ましい具体例としては、(A)成分の例として上記したような、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物から選ばれた1種以上の化合物と、SiH基を有する化合物(β)(以下「(β)成分」とする)との反応物が挙げられる。このような反応物は、(B)成分と良好な相溶性を有すると共に、その揮発性が低いことから、得られる樹脂成型体からのアウトガスの問題が生じ難いという利点を有している。
(β)成分は、SiH基を有する化合物であり、SiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサンもその例である。具体的には、たとえば、下記に示される各化合物などが挙げられる。
ここで、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物との相溶性が良くなりやすいという観点から、下記一般式(VI)で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサンが好ましい。
(式中、R1は炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)
一般式(VI)で表される化合物中の置換基R1は、好ましくはC、H、O以外の構成元素を含まない基であり、より好ましくは炭化水素基であり、さらに好ましくはメチル基である。また、入手容易性などから、一般式(VI)で表わされる化合物は、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
(β)成分のその他の例として、ビスジメチルシリルベンゼンなどのSiH基を有する化合物をあげることができる。
上記したような各種(β)成分は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
本発明では、上記したように、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分とをヒドロシリル化反応することにより得られる化合物を、(A)成分として使用できる。尚、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分とをヒドロシリル化反応させると、本発明の(A)成分となり得る化合物とそれ以外の複数の化合物を含む混合物が得られることがある。このような混合物から(A)成分となり得る化合物を分離することなく、そのまま用いて、本発明の硬化性樹脂組成物を作製することもできる。
ここでは、このヒドロシリル化反応について詳細に説明する。
このヒドロシリル化反応において、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分との混合比率は、特に限定されないが、反応中のゲル化が抑制できるという点においては、一般に、前者におけるSiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合の総数(X)と後者におけるSiH基の総数(Y)との比が、好ましくはX/Y≧2、より好ましくはX/Y≧3である。また(A)成分の(B)成分に対する相溶性がよくなりやすいという観点からは、好ましくは10≧X/Y、より好ましくは5≧X/Yである。
このヒドロシリル化反応においては、適当な触媒を用いてもよい。触媒としては、たとえば、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラックなどの担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトンなどとの錯体、白金−オレフィン錯体(たとえば、Pt(CH2=CH2)2(PPh3)2、Pt(CH2=CH2)2Cl2)、白金−ビニルシロキサン錯体(たとえば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt[(MeViSiO)4]m)、白金−ホスフィン錯体(たとえば、Pt(PPh3)4、Pt(PBu3)4)、白金−ホスファイト錯体(たとえば、Pt[P(OPh)3]4、Pt[P(OBu)3]4)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、ラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体などが挙げられる。
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl2O3、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4などが挙げられる。
これらの触媒の中では、触媒活性の観点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体などが好ましい。また、これらの触媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、コストが比較的低く抑えられた硬化性樹脂組成物を得るためには、(β)成分のSiH基1モルに対して、好ましくは10−8〜10−1モル、より好ましくは10−6〜10−2モルである。
また、上記触媒と共に助触媒を使用できる。助触媒の具体例としては、トリフェニルホスフィンなどのリン系化合物、ジメチルマレートなどの1,2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチンなどのアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄などの硫黄系化合物、トリエチルアミンなどのアミン系化合物などが挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対して、好ましくは10−2〜102モル、より好ましくは10−1モル〜10モルである。
ヒドロシリル化反応において、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(β)成分および触媒の混合の方法としては、各種方法をとることができるが、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物に触媒を混合し、得られた混合物と(β)成分とを混合する方法が好ましい。SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分とを混合し、得られた混合物に触媒を混合する方法では、反応の制御が困難になるおそれがある。また、(β)成分と触媒とを混合し、得られた混合物とSiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物とを混合する方法をとる場合は、触媒の存在下で(β)成分が混入している水分に対して反応性を有するため、最終的に得られる化合物が変質するおそれがある。
反応温度は種々設定できるが、好ましくは30℃〜200℃、より好ましくは50℃〜150℃である。反応温度が低いと、十分に反応させるための反応時間が長くなり、反応温度が高いと実用的でない。反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階または連続的に温度を変化させてもよい。
反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。
ヒドロシリル化反応には溶剤を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶剤、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系溶剤を好適に用いることができる。溶剤は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。これらの溶剤の中でも、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、クロロホルムが好ましい。使用する溶剤量も適宜設定できる。
その他、反応性を制御する目的などのために種々の添加剤を用いてもよい。
SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分とを反応させた後に、溶剤および/または、未反応の、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物および/または(β)成分を除去することもできる。これらは揮発分であり、これらを除去することにより、得られる(A)成分が揮発分を含まなくなる。その結果、(A)成分と(B)成分との硬化の場合に、揮発分の揮発によるボイド、クラックの問題が生じにくい。除去する方法としては、たとえば、減圧脱揮の他、活性炭、ケイ酸アルミニウム、シリカゲルなどによる処理などが挙げられる。減圧脱揮する場合には低温で処理することが好ましい。この場合の温度の上限は好ましくは100℃であり、より好ましくは60℃である。高温で処理すると増粘などの変質を伴いやすい。
以上のような、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分とのヒドロシリル化反応物である(A)成分の例としては、ビスフェノールAジアリルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ビニルシクロヘキセンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジビニルベンゼンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジシクロペンタジエンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、トリアリルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ビニルノルボルネンとビスジメチルシリルベンゼンとの反応物などが挙げられる。
(A)成分はその他の反応性基を有していてもよい。この場合の反応性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基などが挙げられる。これらの官能基を有している場合には、得られる硬化性樹脂組成物の接着性が高くなりやすく、得られる樹脂硬化体の強度が高くなりやすい。接着性がより高くなりうるという観点からは、これらの官能基のうちエポキシ基が好ましい。また、得られる樹脂硬化体の耐熱性が高くなりやすいという観点からは、反応性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
(A)成分は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
次に、(B)成分について詳細に説明する。(B)成分は、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物である。
(B)成分としては、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物であれば特に制限がなく、たとえば、国際公開WO96/15194に記載される化合物で、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するものなどが使用できる。
これらのうち、入手性の面からは、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状オルガノポリシロキサンが好ましく、(A)成分との相溶性が良いという観点からは、さらに、下記一般式(VI)で表される、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状オルガノポリシロキサンが好ましい。
(式中、R1は炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)
一般式(VI)で表される化合物中の置換基R1は、好ましくはC、H、Oから構成されるものであり、より好ましくは炭化水素基であり、さらに好ましくはメチル基である。また、一般式(VI)で表される化合物としては、入手容易性の観点からは、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
(B)成分の分子量は特に限定されないが、より流動性を発現しやすく、(E)成分および(F)成分などの粉体と均一に混合しやすいという観点からは、低分子量のものが好ましく用いられる。この場合、分子量は、好ましくは50〜100,000、より好ましくは50〜1,000、さらに好ましくは50〜700である。
(B)成分としては、他の成分、特に(E)成分および(F)成分などの粉体との均一な混合を容易にするため、更に詳しくは均一な混合のために融点以上に加熱して液体化させる必要がないことから、23℃において液体であることが好ましく、その粘度は、23℃において、好ましくは50Pa秒以下、より好ましくは20Pa秒以下、さらに好ましくは5Pa秒以下である。粘度はE型粘度計によって測定することができる。
(B)成分は、一種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
(B)成分の好ましい具体例としては、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機化合物(α)(以下「α成分」とする)と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する化合物(β)とを、ヒドロシリル化反応して得ることができる化合物が挙げられる。このような化合物は、(A)成分と良好な相溶性を有すると共に、その揮発性が低いことから、得られる硬化性樹脂組成物からのアウトガスの問題が生じ難いという利点を有している。
ここで(α)成分は、上記した(A)成分である、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と同じもの(以下「(α1)成分」とする)も用いることができる。(α1)成分を用いると、得られる樹脂硬化体の架橋密度が高くなり、力学強度が高い樹脂硬化体となりやすい。
それ以外にも、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機化合物(α2)(以下「α2成分」とする)も用いることができる。(α2)成分を用いると得られる樹脂硬化体が低弾性となりやすい。
(α2)成分としては、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機化合物であれば特に限定されないが、(B)成分の(A)成分に対する相溶性がよくなるという点においては、ポリシロキサン−有機ブロックコポリマーやポリシロキサン−有機グラフトコポリマーのようなシロキサン単位(Si−O−Si)を含む化合物ではなく、構成元素としてC、H、N、O、S、およびハロゲンのみを含む化合物であることが好ましい。なお、(α2)成分において、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよい。
(α2)成分である化合物は、重合体系化合物と単量体系化合物とに分類できる。
重合体系化合物としては、たとえば、ポリシロキサン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、不飽和炭化水素系、ポリアクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)、ポリイミド系の化合物などが挙げられる。
単量体系化合物としては、たとえば、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレンなどの芳香族炭化水素系:直鎖系、脂環系などの脂肪族炭化水素系:複素環系の化合物;シリコン系の化合物;これらの混合物;などが挙げられる。
(α2)成分における、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては特に限定されないが、たとえば、下記一般式(I)で表わされる基が反応性の点から好適である。また、原料の入手の容易さからは、下記で示される基が特に好ましい。
(式中R1は水素原子またはメチル基を表す。)
また、(α2)成分における、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては、下記一般式(II)で示される脂環式の基が、樹脂硬化体の耐熱性が高いという点から好適である。また、原料の入手の容易さからは、下記で示される脂環式の基が特に好ましい。
(式中R2は水素原子またはメチル基を表す。)
SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合は、(α2)成分の骨格部分に直接結合していてもよく、2価以上の置換基を介して共有結合していても良い。2価以上の置換基としては、炭素数0〜10の置換基であれば特に限定されないが、(B)成分の(A)成分に対する相溶性がよくなりやすいという点においては、構成元素としてC、H、N、O、S、およびハロゲンのみを含むものが好ましい。これらの置換基の例としては、下記で示される2価以上の基が挙げられる。また、これらの2価以上の置換基の2つ以上が共有結合によりつながって1つの2価以上の置換基を構成していてもよい。
以上のような骨格部分に共有結合する基の例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2−ヒドロキシ−3−(アリルオキシ)プロピル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、2−(アリルオキシ)フェニル基、3−(アリルオキシ)フェニル基、4−(アリルオキシ)フェニル基、2−(アリルオキシ)エチル基、2、2−ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3−アリルオキシ−2、2−ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、下記で示される各基などが挙げられる。
(α2)成分の具体例としては、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−ウンデセン、出光石油化学社製リニアレン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3,3−トリメチル−1−ブテン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテンなどの鎖状脂肪族炭化水素系化合物類、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、メチレンシクロヘキサン、ノルボルニレン、エチリデンシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、カンフェン、カレン、αピネン、βピネンなどの環状脂肪族炭化水素系化合物類、スチレン、αメチルスチレン、インデン、フェニルアセチレン、4−エチニルトルエン、アリルベンゼン、4−フェニル−1−ブテンなどの芳香族炭化水素系化合物、アルキルアリルエーテル、アリルフェニルエーテルなどのアリルエーテル類、グリセリンモノアリルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどの脂肪族系化合物類、1,2−ジメトキシ−4−アリルベンゼン、o−アリルフェノールなどの芳香族系化合物類、モノアリルジベンジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートなどの置換イソシアヌレート類、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェニルシランなどのシリコン化合物などが挙げられる。
さらに、(α2)成分の具体例として、片末端アリル化ポリエチレンオキサイド、片末端アリル化ポリプロピレンオキサイドなどのポリエーテル系樹脂、片末端アリル化ポリイソブチレンなどの炭化水素系樹脂、片末端アリル化ポリブチルアクリレート、片末端アリル化ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂などの、片末端にビニル基を有するポリマーまたはオリゴマー類などが挙げられる。
(α2)成分の構造は線状でも枝分かれ状でもよく、分子量は特に制約はなく種々のものを使用できる。分子量分布も特に制限されないが、硬化性樹脂組成物の粘度が低くなり、成形性が良好となりやすいという点においては、分子量分布は好ましくは3以下であり、より好ましくは2以下であり、さらに好ましくは1.5以下である。本明細書において、分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。ただし、GPCカラムとしてポリスチレン架橋ゲルを充填したもの(shodex GPC K−804、K−802.5;昭和電工(株)製)を、GPC溶媒としてクロロホルムを用いた。
(α2)成分がTgを有する場合、Tgについても特に限定はなく種々のものが用いられるが、得られる樹脂硬化体が強靭となりやすいという点においては、Tgは、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは50℃以下であり、さらに好ましくは0℃以下である。好ましい樹脂の例としては、ポリブチルアクリレート樹脂などが挙げられる。逆に得られる樹脂硬化体の耐熱性が高くなるという点においては、Tgは、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは120℃以上であり、さらに好ましくは150℃以上であり、最も好ましくは170℃以上である。Tgは動的粘弾性測定においてtanδが極大を示す温度として求めることができる。
(α2)成分は、得られる樹脂硬化体の耐熱性が高くなるという観点からは、炭化水素化合物であることが好ましい。この場合、好ましい炭素数は7〜10である。
(α2)成分は、その他の反応性基を有していてもよい。この場合の反応性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基などが挙げられる。これらの官能基を有している場合には、得られる硬化性樹脂組成物の接着性が高くなりやすく、得られる樹脂硬化体の強度が高くなりやすい。接着性がより高くなりうるという点からは、これらの官能基のうちエポキシ基が好ましい。また、得られる樹脂硬化体の耐熱性が高くなりやすいという点においては、反応性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。具体的にはモノアリルジグリシジルイソシアヌレート、アリルグリシジルエーテル、アリロキシエチルメタクリレート、アリロキシエチルアクリレート、ビニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
上記のような(α1)成分は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。また、(α2)成分も、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
次に(β)成分について、詳細に説明する。(β)成分は、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する化合物であり、鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサンもその例である。具体的には、たとえば、下記に示される各化合物が挙げられる。
ここで、(α)成分との相溶性が良くなりやすいという観点から、下記一般式(VI)で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサンが好ましい。下記一般式(VI)で表される化合物中の置換基R1は、好ましくはC、H、Oから構成される基であり、より好ましくは炭化水素基であり、さらに好ましくはメチル基である。また、入手容易性などから、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
(式中、R1は炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)
(β)成分のその他の例として、ビスジメチルシリルベンゼンなどのSiH基を有する化合物が挙げられる。
上記した各種(β)成分は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。。
上記したように、本発明においては、(α)成分と(β)成分とをヒドロシリル化反応させることにより得られる化合物を(B)成分として使用できる。尚、(α)成分と(β)成分とをヒドロシリル化反応すると、本発明の(B)成分として使用できる化合物と共に、他の1種以上の化合物を含む混合物が得られることがある。このような混合物は、そこから(B)成分として使用できる化合物を分離することなく、そのまま(B)成分として用いて本発明の硬化性樹脂組成物を作製することもできる。
(α)成分と(β)成分とのヒドロシリル化反応は、具体的には次の通りである。(α)成分と(β)成分の混合比率は、特に限定されないが、得られる(B)成分と(A)成分とのヒドロシリル化による樹脂硬化体の強度を考えた場合、(B)成分のSiH基が多い方が好ましいため、一般に混在する(α)成分中のSiH基に対する反応性を有する炭素−炭素二重結合の総数(X)と、混在する(β)成分中のSiH基の総数(Y)との比(Y/X)が、好ましくはY/X≧2であり、より好ましくはY/X≧3である。また(B)成分の(A)成分に対する相溶性がよくなりやすいという観点からは、好ましくは10≧Y/Xであり、より好ましくは5≧Y/Xである。
(α)成分と(β)成分とのヒドロシリル化反応においては、適当な触媒を用いてもよい。触媒としては、たとえば、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラックなどの担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトンなどとの錯体、白金−オレフィン錯体(たとえば、Pt(CH2=CH2)2(PPh3)2、Pt(CH2=CH2)2Cl2)、白金−ビニルシロキサン錯体(たとえば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt[(MeViSiO)4]m)、白金−ホスフィン錯体(たとえば、Pt(PPh3)4、Pt(PBu3)4)、白金−ホスファイト錯体(たとえば、Pt[P(OPh)3]4、Pt[P(OBu)3]4)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び第3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、ラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体などが挙げられる。
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl2O3、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、などが挙げられる。
これらの中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体などが好ましい。
上記した各種の触媒は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつコストが比較的に低く抑えられた硬化性樹脂組成物を得るためには、好ましくは10−8モル〜10−1モル、より好ましくは10−6モル〜10−2モルである。
また、上記触媒と共に助触媒を使用できる。助触媒の具体例としては、トリフェニルホスフィンなどのリン系化合物、ジメチルマレートなどの1,2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチンなどのアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄などの硫黄系化合物、トリエチルアミンなどのアミン系化合物などが挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対して、好ましくは10−2モル〜102モル、より好ましくは10−1モル〜10モルである。
反応させる場合の(α)成分、(β)成分および触媒の混合の方法としては、各種方法をとることができるが、(α)成分に触媒を混合し、得られた混合物を(β)成分に混合する方法が好ましい。(α)成分と(β)成分との混合物に触媒を混合する方法をとる場合は、反応の制御が困難になるおそれがある。(β)成分と触媒との混合物に(α)成分を混合する方法をとる場合は、触媒の存在下で(β)成分が混入している水分に対して反応性を有するため、得られる最終生成物が変質するおそれがある。
反応温度としては種々設定できるが、好ましくは30℃〜200℃、より好ましくは50℃〜150℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなり、反応温度が高いと実用的でない。反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階または連続的に温度を変化させてもよい。
反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。
(α)成分と(β)成分とのヒドロシリル化反応に溶剤を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶剤、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系溶剤を好適に用いることができる。溶剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これらの溶剤の中でも、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、クロロホルムが好ましい。溶剤の使用量も適宜設定できる。
その他、反応性を制御する目的などのために種々の添加剤を用いてもよい。
(α)成分と(β)成分とを反応させた後に、溶剤および/または未反応の(α)成分および/または(β)成分を除去することもできる。これらは揮発分であり、これらを除去することにより、揮発分を有しない(B)成分が得られる。その結果、(A)成分と(B)成分とを硬化させる場合に揮発分の揮発によるボイド、クラックの問題が生じにくい。除去する方法としては、たとえば、減圧脱揮の他、活性炭、ケイ酸アルミニウム、シリカゲルなどによる処理などが挙げられる。減圧脱揮する場合には低温で処理することが好ましい。この場合の温度の上限は、好ましくは100℃、より好ましくは60℃である。高温で処理すると増粘などの変質を伴いやすい。
以上のような、(α)成分と(β)成分のヒドロシリル化反応物である(B)成分の具体例としては、ビスフェノールAジアリルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ビニルシクロヘキセンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジビニルベンゼンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジシクロペンタジエンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、トリアリルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、アリルグリシジルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、αメチルスチレンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ビニルノルボルネンとビスジメチルシリルベンゼンとの反応物などが挙げられる。
(A)成分と(B)成分とを混合する場合、(A)成分と(B)成分の組合せとしては、上記に例示した(A)成分から選ばれる少なくとも1種と、上記に例示した(B)成分から選ばれる少なくとも1種と、の各種組み合わせが挙げられる。
(A)成分と(B)成分との混合比率は、必要な強度を失わない限りは特に限定されないが、(B)成分中のSiH基の数(Y)の、(A)成分中の炭素−炭素二重結合の数(X)に対する比(Y/X、モル比)が、好ましくは0.3≦Y/X≦3、より好ましくは0.5≦Y/X≦2、さらに好ましくは0.7≦Y/X≦1.5である。好ましい範囲からはずれた場合には、十分な強度が得られなかったり、熱劣化しやすくなる場合がある。
本発明の(C)成分はヒドロシリル化触媒である。ヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが、たとえば、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラックなどの担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトンなどとの錯体、白金−オレフィン錯体(たとえば、Pt(CH2=CH2)2(PPh3)2、Pt(CH2=CH2)2Cl2)、白金−ビニルシロキサン錯体(たとえば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt[(MeViSiO)4]m)、白金−ホスフィン錯体(たとえば、Pt(PPh3)4、Pt(PBu3)4)、白金−ホスファイト錯体(たとえば、Pt[P(OPh)3]4、Pt[P(OBu)3]4)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号および3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、ラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体などが挙げられる。
また、白金化合物以外の触媒としては、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl2O3、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、などが挙げられる。
これらの触媒の中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体などが好ましい。また、これらの触媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性樹脂組成物のコストを比較的低く抑えるためには、(B)成分のSiH基1モルに対して、好ましくは10−8モル〜10−1モル、より好ましくは10−6モル〜10−2モルである。
また、上記触媒と共に助触媒を使用できる。助触媒の具体例としては、トリフェニルホスフィンなどのリン系化合物、ジメチルマレートなどの1,2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチンなどのアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄などの硫黄系化合物、トリエチルアミンなどのアミン系化合物などが挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対して、好ましくは10−2モル〜102モルであり、より好ましくは10−1モル〜10モルである。
本発明の(D)成分は、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1個含有するシリコーン化合物である。(D)成分を用いることにより、(E)成分の無機充填材と混合した場合に、より小さな線膨張係数を有する樹脂硬化体を与える熱硬化性樹脂組成物(X)とすることができる。
(D)成分のシリコーン化合物は、実質的にその骨格がSi−O−Si結合で形成されている化合物であり、直鎖状、環状、分枝状、部分ネットワークを有するものなど種々のものが用いられる。このような骨格には、種々の置換基が結合していてもよい。
骨格に結合する置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、オクチル基などのアルキル基、フェニル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基などのアリール基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基などのアルコキシ基、水酸基などの基が挙げられる。これらのうち、耐熱性が高くなりやすいという点においては、メチル基、フェニル基、水酸基、メトキシ基が好ましく、メチル基、フェニル基がより好ましい。また、SiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する置換基としては、ビニル基、アリル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシプロピル基、メタクリロキシプロピル基などが挙げられる。これらの中でも、反応性がよいという点においては、ビニル基が好ましい。
(D)成分は、次の式で表わされる化合物であってもよい。
Rn(CH2=CH)mSiO(4−n−m)/2
(式中、Rは水酸基、メチル基あるいはフェニル基から選ばれる基であり、n、mは0≦n<4、0<m≦4、0<n+m≦4を満たす数)
(D)成分の具体例としては、末端基または側鎖基としてビニル基を有するポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、これらのシロキサンから選ばれる2種または3種のランダムまたはブロック共重合体、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサンなどが挙げられる。(D)成分は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
これらの内、本発明の効果がより得られやすいという点においては、ビニル基を末端に有する直鎖状ポリシロキサンが好ましく、ビニル基を両末端に有する直鎖状ポリシロキサンがより好ましく、両末端にビニル基を有する直鎖状ポリメチルフェニルシロキサンがさらに好ましく、両末端にビニル基を有する直鎖状ポリメチルフェニルシロキサンであって、全置換基に対するフェニル基の量が20モル%以上であるシロキサンであることが特に好ましい。
(D)成分の分子量は、重量平均分子量(Mw)として、好ましくは1,000以上、1,000,000以下であり、より好ましくは5,000以上、100,000以下であり、さらに好ましくは10,000以上、100,000以下である。分子量が高い場合には、得られる樹脂硬化体が低応力となりやすい。分子量が大きい場合には、(A)成分との相溶性が得られにくくなる。
(D)成分の使用量は、(A)成分と(B)成分との合計量に対して、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上である。
また、(A)成分、(B)成分および(D)成分の混合比率は、必要な強度を失わない限りは特に限定されないが、(B)成分中のSiH基の数(Y)の、(A)成分および(D)成分中のSiH基に対して反応性を有する炭素−炭素二重結合の数(X)に対する比が、好ましくは0.3≦Y/X≦3、より好ましくは0.5≦Y/X≦2、さらに好ましくは0.7≦Y/X≦1.5である。好ましい範囲からはずれた場合には、十分な強度が得られなかったり、熱劣化しやすくなったりする場合がある。
本発明の(E)成分は無機充填材である。(E)成分は、得られる樹脂硬化体の強度や硬度を高くしたり、線膨張率を低減化したりする効果を有する。
(E)成分の無機充填材としては、従来のエポキシ系などの封止材の充填材として一般に使用および/または提案されている各種無機充填材が用いられるが、たとえば、石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカなどのシリカ系無機充填材、アルミナ、ジルコン、窒化ケイ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、マイカ、黒鉛、カーボンブラック、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、無機バルーン、銀粉などが挙げられる。無機充填材としては、半導体素子へダメージを与え難いという観点からは、低放射線性であることが好ましい。
無機充填材は適宜表面処理してもよい。表面処理としては、カップリング剤による処理、アルキル化処理、トリメチルシリル化処理、シリコーン処理などが挙げられる。
この場合のカップリング剤の例としては、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
好ましいシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランなどのエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシランなどのメタクリル基またはアクリル基を有するアルコキシシラン類などが挙げられる。
その他にも、無機化合物を添加する方法が挙げられる。たとえば、本発明の硬化性樹脂組成物に無機化合物を添加して、硬化性樹脂組成物中または硬化性樹脂組成物の部分反応物中で反応させ、硬化性樹脂組成物中で無機充填材を生成させる方法が挙げられる。このような無機化合物としては、アルコキシシラン、アシロキシシラン、ハロゲン化シランなどの加水分解性シランモノマーまたはオリゴマー、チタン、アルミニウムなどの金属のアルコキシド、アシロキシド、ハロゲン化物などが挙げられる。
以上のような無機充填材のうち、硬化反応を阻害し難く、線膨張係数の低減化効果が大きく、リードまたはリードフレームとの接着性が高くなりやすいという観点からは、シリカ系無機充填材が好ましい。さらに、成形性、電気特性などの物性バランスがよいという観点からは、溶融シリカが好ましく、樹脂硬化体の熱伝導性が高くなり易く、放熱性の高い樹脂成型体設計が可能になるという観点からは、結晶性シリカが好ましい。より放熱性が高くなり易いという観点からは、アルミナが好ましい。また、樹脂成型体に用いられる樹脂の光反射率が高く、得られる発光装置における光取りだし効率が高くなりやすいという観点からは、酸化チタンが好ましい。その他、補強効果が高く、樹脂成型体の強度が高くなり易いという観点からは、ガラス繊維、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウムが好ましい。
無機充填材の平均粒径や粒径分布としては、エポキシ系などの従来の封止材の充填材として使用および/または提案されているものをはじめ、特に限定なく各種のものが用いられるが、通常用いられる平均粒径は0.1μm〜120μmであり、流動性が良好になりやすいという観点から好ましくは0.5μm〜60μm、より好ましくは0.5μm〜15μmである。
無機充填材の比表面積についても、エポキシ系などの従来の封止材の充填材として使用および/または提案されているものをはじめ、各種設定できる。
無機充填材の形状としては、破砕状、片状、球状、棒状など、各種のものが用いられる。アスペクト比も種々のものが用いられる。得られる樹脂硬化体の強度が高くなりやすいという観点からは、アスペクト比が10以上のものが好ましい。また、樹脂のなど方性収縮の観点からは、繊維状よりは粉末状が好ましい。高充填時にも成形時の流れ性がよくなり易いという観点からは、球状のものが好ましい。
上記した各種の無機充填材は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
(E)成分の使用量は特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物(X)全体に占める(E)成分の合計の量が70重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましい。(E)成分の量が少ないと、強度や硬度を向上させる効果、線膨張率を低減化する効果などが得られにくくなる。
(E)成分の無機充填材の混合の順序としては、各種方法をとることができるが、熱硬化性樹脂組成物(X)の中間原料の貯蔵安定性が良好になりやすいという観点からは、(A)成分に(C)成分および無機充填材を混合したものと、(B)成分とを混合する方法が好ましい。(B)成分に(C)成分および/または無機充填材を混合したものに(A)成分を混合する方法をとる場合は、(C)成分の存在下および/または非存在下において(B)成分が環境中の水分および/または無機充填材との反応性を有するため、貯蔵中などに変質することもある。また、反応成分である(A)成分、(B)成分および(C)成分がよく混合されて安定した成形物が得られやすいという観点からは、(A)成分、(B)成分および(C)成分を混合したものと、無機充填材と、を混合することが好ましい。
(E)成分の無機充填材を混合する手段としては、従来エポキシ樹脂などに用いられおよび/または提案されている種々の手段を用いることができる。たとえば、2本ロール、3本ロール、遊星式撹拌脱泡装置、ホモジナイザー、ディゾルバー、プラネタリーミキサーなどの撹拌機、プラストミルなどの溶融混練機などが挙げられる。これらのうち、高充填であっても無機充填材の十分な分散性が得られやすいという観点からは、3本ロール、溶融混練機が好ましい。無機充填材の混合は、常温で行ってもよいし加熱して行ってもよい。また、常圧下に行ってもよいし減圧状態で行ってもよい。高充填であっても無機充填材の十分な分散性が得られやすいという観点からは、加熱状態で混合することが好ましく、無機充填材表面の塗れ性を向上させ、十分な分散性が得られやすいという観点からは、減圧状態で混合することが好ましい。
熱硬化性樹脂組成物(X)は、(F)成分を含有することが望ましい。(F)成分は白色顔料であり、得られる樹脂硬化体の光線反射率を高める効果を有する。
(F)成分としては種々のものを用いることができ、たとえば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化ニオブ、窒化ホウ素、チタン酸バリウム、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、無機中空粒子が挙げられる。無機中空粒子は、例えば珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス、シラス等が挙げられる。中でも、取り扱いの容易性や入手性、コストの観点から酸化チタンまたは酸化亜鉛が好ましい。
(F)成分の酸化チタンとしては種々のものを用いることができ、アナターゼ型であってもルチル型であってもよいが、光触媒作用がなく熱硬化性樹脂組成物(X)が安定になりやすいという点ではルチル型であることが好ましい。
(F)成分の平均粒径としては特に限定されず、種々のものが用いられるが、得られる樹脂硬化体の光反射率が高くなりやすく、また熱硬化性樹脂組成物(X)のタブレットがより硬くなるという観点からは、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.25μm以下である。熱硬化性樹脂組成物(X)のタブレットについては後述する。一方、熱硬化性樹脂組成物(X)の流動性が高いという観点からは、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上である。
平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布計を用いて測定することができる。
(F)成分の酸化チタンの製造方法としても硫酸法、塩素法などいずれの方法により製造されたものも使用できる。
(F)成分は表面処理が施されていても良い。(F)成分の表面処理では、(F)成分の表面に無機化合物および有機化合物から選ばれる少なくとも1種を被覆する。無機化合物としては、たとえば、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、ジルコニウム化合物、スズ化合物、チタニウム化合物、アンチモン化合物などが挙げられ、また、有機化合物としては、多価アルコール、アルカノールアミン又はその誘導体、有機シロキサンなどの有機ケイ素化合物、高級脂肪酸およびその金属塩、有機金属化合物などが挙げられる。
(F)成分表面への無機化合物や有機化合物の被覆は、湿式法や乾式法の公知の方法を用いて、たとえば酸化チタンを乾式粉砕する際、湿式粉砕する際またはスラリー化する際に行うことができる。他にも、液相法、気相法など、種々の方法が挙げられる。
これらのなかでは、得られる樹脂硬化体の光反射率が高く、耐熱性および耐光性が良好になる観点から、有機シロキサンで処理されていることが好ましい。また、有機シロキサン処理された酸化チタンを含有させることにより、光取り出し効率が高く、長期間使用しても光取り出し効率が低下しない優良な発光装置を得ることができる。
ここで、有機シロキサン処理剤としては種々のものを使用でき、たとえば、シランカップリング剤や、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシラザンなどが挙げられる。シランカップリング剤としては各種シラン類を使用でき、たとえば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルハイドロジェンシロキサン、それらの2種以上の共重合体などのポリシロキサン類、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンなどのシクロシロキサン類、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシランなどのクロロシラン類、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランなどのエポキシ官能基を有するシラン類、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシランなどのメタクリル基またはアクリル基を有するシラン類、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシランなどのビニル基を有するシラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのメルカプトシラン類、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−[ビス(β−ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するシラン類、イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基を有するシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシランなどのアルキル基を有するシラン類、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシランなどのその他のシラン類などが挙げられる。これらの有機シロキサン処理剤の中でも、炭素−炭素二重結合を含まないものが好ましい。炭素−炭素二重結合を含むと、耐熱性が低下しやすくなる。また、有機シロキサン以外の表面処理剤を併用することも可能である。このような表面処理剤としては、Al、Zr、Znなどが挙げられる。
また、(F)成分は、無機化合物により表面処理されていてもよい。無機化合物による表面処理方法としては特に限定されず、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、ジルコニウム化合物などを用いる、種々の表面処理方法が挙げられる。表面処理の方法としても各種方法を適用することができ、湿式法、乾式法、液相法、気相法など、種々の方法が例示できる。酸化チタンは、耐久性を向上させ、媒体との親和性を向上させ、さらには粒子形状の崩れを防止するなどの目的で無機化合物、有機化合物で表面処理する場合がある。(F)成分を無機化合物で表面処理することにより、熱硬化性樹脂組成物(X)に含まれる各成分との親和性が向上し、(F)成分の熱硬化性樹脂組成物(X)に対する分散性が良くなり、樹脂硬化体の強度が向上すると考えられる。
(F)成分の使用量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物(X)全体に占める(F)成分の量が10重量%以上であることが好ましく、15重量%以上であることがより好ましく、20重量%以上であることがさらに好ましい。10重量%未満であると、得られる樹脂硬化体の光線反射率が低下することがある。
(E)成分および(F)成分の合計量は特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物(X)全体に占める(E)成分および(F)成分の合計量が85重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましい。
(E)成分および(F)成分の合計量が少ないと、強度や硬度を高くする効果や、線膨張率を低減化する効果が得られにくくなる。
(F)成分の混合の順序としては、各種方法をとることができるが、好ましい態様は、既に説明した(E)と同様である。また、(F)成分と(E)成分とは同時に添加してもよい。
(F)成分を混合する手段としては、(E)成分を混合する手段と同様の手段を用いることかできる。
熱硬化性樹脂組成物(X)は、(G)成分を含有することが望ましい。
(G)成分は金属石鹸であり、熱硬化性樹脂組成物(X)の離型性をはじめとする成形性を改良するために添加される。
(G)成分としては、従来使用されている各種金属石鹸があげられる。ここでいう金属石鹸とは、一般に長鎖脂肪酸と金属イオンが結合したものであり、脂肪酸に基づく無極性または低極性の部分と、金属との結合部分に基づく極性の部分を一分子中に併せて持っていれば本発明で使用できる。長鎖脂肪酸としては、たとえば、炭素数1〜18の飽和脂肪酸、炭素数3〜18の不飽和脂肪酸、脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。これらの中では、入手性が容易であり、工業的実現性が高いという観点からは、炭素数1〜18の飽和脂肪酸が好ましく、さらに、離型性の効果が高いという観点からは、炭素数6〜18の飽和脂肪酸がより好ましい。金属イオンとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、コバルト、アルミニウム、ストロンチウムなどのイオンが挙げられる。
金属石鹸をより具体的に例示すれば、ステアリン酸リチウム、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム、ラウリン酸リチウム、オレイン酸リチウム、2−エチルヘキサン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、12−ヒドロキシステアリン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、オレイン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸マグネシウム、オレイン酸マグネシウム、2−エチルヘキサン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、オレイン酸カルシウム、2−エチルヘキサン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、12−ヒドロキシステアリン酸バリウム、ラウリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、12−ヒドロキシステアリン酸鉛、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸アルミニウム、オレイン酸マンガン、リシノール酸バリウムなどが挙げられる。これらの金属石鹸の中では、入手性が容易であり、安全性が高く、工業的実現性が高いという観点から、ステアリン酸金属塩類が好ましく、特に経済性の観点からは、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸亜鉛からなる群から選択される1つ以上のものが最も好ましい。
金属石鹸の添加量は特に制限はないが、熱硬化性樹脂組成物(X)全体100重量部に対して、好ましくは0.01重量部〜5重量部、より好ましくは0.025重量部〜4重量部、さらに好ましくは0.05重量部〜4重量部である。添加量が多すぎる場合は、得られる樹脂硬化体の物性が低下し、添加量が少なすぎる場合は、金型離型性が得られないことがある。
熱硬化性樹脂組成物(X)には種々の添加剤を添加することができる。添加剤としては、表面実装型発光装置用の樹脂硬化体に用いられる各種の添加剤をいずれも使用でき、たとえば、硬化遅延剤、接着性改良剤、老化防止剤、ラジカル禁止剤、紫外線吸収剤、溶剤、発光素子のための添加剤、離型剤などが挙げられる。
硬化遅延剤は、たとえば、熱硬化性樹脂組成物(X)の保存安定性を改良する目的または製造過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で使用することができる。硬化遅延剤としては、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物などが挙げられる。
脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノールなどのプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、ジメチルマレートなどのマレイン酸エステル類などが挙げられる。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類などが挙げられる。有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイドなどが挙げられる。窒素含有化合物としては、アンモニア、1〜3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジンなどが挙げられる。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズなどが挙げられる。有機過酸化物としては、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチルなどが挙げられる。
これらの硬化遅延剤のうち、遅延活性が良好で原料入手性がよいという観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが好ましい。また、これらの硬化遅延剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
硬化遅延剤の添加量は種々設定できるが、使用するヒドロシリル化触媒1molに対して、好ましくは10−1モル〜103モル、より好ましくは1モル〜50モルである。
接着性改良剤としては、たとえば、一般に用いられている接着剤、種々のカップリング剤、エポキシ化合物、フェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジンエステル樹脂、テルペン−フェノール樹脂、α−メチルスチレン−ビニルトルエン共重合体、ポリエチルメチルスチレン、芳香族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
カップリング剤としてはたとえばシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤などが挙げられる。カップリング剤の例や好ましい例は、上記したものと同じである。これらのカップリング剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
カップリング剤の添加量は種々設定できるが、(A)成分と(B)成分との合計量100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜50重量部、より好ましくは0.5重量部〜25重量部である。添加量が少ないと、接着性改良効果が表れず、添加量が多いと、得られる樹脂硬化体の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
エポキシ化合物としては、たとえば、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5,5−スピロ−(3,4−エポキシシクロヘキサン)−1,3−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートなどが挙げられる。これらのエポキシ化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
エポキシ化合物の添加量は、(A)成分と(B)成分との合計量100重量部に対して、好ましくは1重量部〜50重量部、より好ましくは3重量部〜25重量部である。添加量が少ないと、接着性改良効果が表れず、添加量が多いと、樹脂硬化体の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
また、本発明においては、上記したカップリング剤やエポキシ化合物の効果を高めるために、さらにシラノール縮合触媒を用いることができる。これにより、接着性の向上および/または安定化が可能である。このようなシラノール縮合触媒としては特に限定されないが、ほう素系化合物、アルミニウム系化合物およびチタン系化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
シラノール縮合触媒となるアルミニウム系化合物としては、アルミニウムトリイソプロポキシド、sec−ブトキシアルミニウムジイソフロポキシド、アルミニウムトリsec−ブトキシドなどのアルミニウムアルコキシド類:、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミキレートM(川研ファインケミカル製、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)などのアルミニウムキレート類などが挙げられる。取扱い性の観点からは、アルミニウムキレート類がより好ましい。シラノール縮合触媒となるチタン系化合物としては、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどのテトラアルコキシチタン類:チタンテトラアセチルアセトナートなどのチタンキレート類:オキシ酢酸やエチレングリコールなどの残基を有する一般的なチタネートカップリング剤が挙げられる。
シラノール縮合触媒となるほう素系化合物としては、ほう酸エステルが挙げられる。ほう酸エステルとしては下記一般式(VII)、(VIII)で示されるものを好適に用いることが出来る。
B(OR1)3 (VII)
B(OCOR1)3 (VIII)
(式中R1は炭素数1〜48の有機基を表す。)
ほう酸エステルの具体例として、ほう酸トリ−2−エチルヘキシル、ほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリノルマルオクチル、ほう酸トリフェニル、トリメチレンボレート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリ−sec−ブチル、ほう酸トリ−tert−ブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピル、ほう酸トリアリル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリメチル、ほう素メトキシエトキサイドなどが挙げられる。これらほう酸エステルは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いても良い。混合は事前に行っても良く、また樹脂硬化体の作製時に混合しても良い。
これらほう酸エステルのうち、容易に入手でき、工業的実用性が高いという観点からは、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリノルマルブチルが好ましく、なかでもほう酸トリメチルがより好ましい。
硬化時の揮発性を抑制できるという観点からは、ほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリノルマルオクチル、ほう酸トリフェニル、トリメチレンボレート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリ−sec−ブチル、ほう酸トリ−tert−ブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピル、ほう酸トリアリル、ほう素メトキシエトキサイドが好ましく、なかでもほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリ−tert−ブチル、ほう酸トリフェニル、ほう酸トリノルマルブチルがより好ましい。
揮発性の抑制、および作業性がよいという観点からは、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピルが好ましく、なかでもほう酸トリノルマルブチルがより好ましい。また、高温下での着色性が低いという観点からは、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチルが好ましく、なかでもほう酸トリメチルがより好ましい。
シラノール縮合触媒の使用量は種々設定できるが、カップリング剤および/またはエポキシ化合物100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜50重量部、より好ましくは1重量部〜30重量部である。添加量が少ないと、接着性改良効果が表れず、添加量が多いと、樹脂硬化体の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
これらのシラノール縮合触媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
また、本発明においては接着性改良効果をさらに高めるために、さらにシラノール源化合物を用いることができる。これにより、接着性の向上および/または安定化が可能である。このようなシラノール源化合物としては、たとえば、トリフェニルシラノール、ジフェニルジヒドロキシシランなどのシラノール化合物、ジフェニルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン類などが挙げられる。これらのシラノール源化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
シラノール源化合物の使用量は種々設定できるが、カップリング剤および/またはエポキシ化合物100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜50重量部、より好ましくは1重量部〜30重量部である。添加量が少ないと、接着性改良効果が表れず、添加量が多いと、得られる樹脂硬化体の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
本発明においてはカップリング剤やエポキシ化合物の効果を高めるために、カルボン酸類および酸無水物類から選ばれる少なくとも1種を使用できる。これにより、接着性の向上および/または安定化が可能である。このようなカルボン酸類および酸無水物類としては特に限定されないが、下記に示される各カルボン酸、
2−エチルヘキサン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、メチルシクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルハイミック酸、ノルボルネンジカルボン酸、水素化メチルナジック酸、マレイン酸、アセチレンジカルボン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、桂皮酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、およびそれらの単独あるいは複合酸無水物が挙げられる。これらのカルボン酸類および/または酸無水物類は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらのカルボン酸類および酸無水物類のうち、ヒドロシリル化反応性を有し、樹脂硬化体からの染み出しの可能性が少なく、得られる樹脂硬化体の物性を損ない難いという観点からは、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有するものが好ましい。好ましいカルボン酸類および/または酸無水物類としては、たとえば、下記に示されるカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、これらの単独酸無水物、これらの複合酸無水物などが挙げられる。
カルボン酸類および/または酸無水物類の使用量は種々設定できるが、カップリング剤および/またはエポキシ化合物100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜50重量部、より好ましくは1重量部〜10重量部である。添加量が少ないと、接着性改良効果が表れず、添加量が多いと、樹脂硬化体の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
本発明の硬化性樹脂組成物には、上記のシラン化合物を使用することができる。シラン化合物は、リードとの密着性向上に寄与し、樹脂硬化体とリードとの界面からの水分の浸入の防止に効果的である。このようなシラン化合物の具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシランなどが挙げられ、中でも特にジメチルジメトキシシランが好ましい。
老化防止剤としては、ヒンダートフェノール系など一般に用いられている老化防止剤の他、クエン酸やリン酸、硫黄系老化防止剤などが挙げられる。
ヒンダートフェノール系老化防止剤としては、チバスペシャリティーケミカルズ社から入手できるイルガノックス1010をはじめとして、各種のものが用いられる。
硫黄系老化防止剤としては、メルカプタン類、メルカプタンの塩類、スルフィドカルボン酸エステル類や、ヒンダードフェノール系スルフィド類を含むスルフィド類、ポリスルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、スルホニウム化合物、チオアルデヒド類、チオケトン類、メルカプタール類、メルカプトール類、モノチオ酸類、ポリチオ酸類、チオアミド類、スルホキシド類などが挙げられる。
これらの老化防止剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
ラジカル禁止剤としては、たとえば、2,6−ジ−tert−ブチル−3−メチルフェノール(BHT)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、テトラキス(メチレン−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンなどのフェノール系ラジカル禁止剤や、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−第二ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミンなどのアミン系ラジカル禁止剤などが挙げられる。これらのラジカル禁止剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
紫外線吸収剤としては、たとえば、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケートなどが挙げられる。紫外線吸収剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
熱硬化性樹脂組成物(X)は溶剤に溶解して用いることも可能である。使用できる溶剤は特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶剤、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系溶剤を好適に用いることができる。これらの中でも、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、クロロホルムが好ましい。これらの溶剤は1種を単独でまたは2種以上を混合して使用できる。
溶剤の使用量は適宜設定できるが、用いる熱硬化性樹脂組成物(X)1gに対して、好ましくは0.1mL〜10mLである。使用量が少ないと、低粘度化などの溶媒を用いることの効果が得られにくく、また、使用量が多いと、材料に溶剤が残留して熱クラックなどの問題となり易く、またコスト的にも不利になり工業的利用価値が低下する。
発光素子のための添加剤は、たとえば、発光素子の種々の特性を改善するために用いられる。添加剤としては、たとえば、発光素子からの光を吸収してより長波長の蛍光を出す、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体などの蛍光体、特定の波長を吸収するブルーイング剤などの着色剤、光を拡散させるための酸化チタン、酸化アルミニウム、メラミン樹脂、CTUグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などのような拡散材、アルミノシリケートなどの金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ボロンなどの金属窒化物などの熱伝導性充填材などが挙げられる。これらの添加剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。また、これらの添加剤は、均一に含有させても良いし、含有量に傾斜を付けて含有させてもよい。
離型剤は、熱硬化性樹脂組成物(X)の成形時の離型性を改良するために用いられる。離型剤としては、既に説明した(G)成分や、ワックス類などが挙げられる。ワックス類としては、天然ワックス、合成ワックス、酸化または非酸化のポリオレフィン、ポリエチレンワックスなどが挙げられる。尚、離型剤を添加しなくても十分な離型性が得られる場合には離型剤は用いない方がよい。
熱硬化性樹脂組成物(X)には、その他、着色剤、難燃剤、難燃助剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、アンチモン−ビスマスなどのイオントラップ剤、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、熱安定化剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、熱伝導性付与剤、物性調整剤などを本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。
さらに、熱硬化性樹脂組成物(X)には、特性を改質するなどの目的で、種々の熱可塑性樹脂を添加することも可能である。熱可塑性樹脂としては種々のものを用いることができるが、たとえば、メチルメタクリレートの単独重合体、メチルメタクリレートと他モノマーとのランダム、ブロックまたはグラフト重合体などのポリメチルメタクリレート系樹脂(たとえば日立化成社製オプトレッツなど)、ブチルアクリレートの単独重合体、ブチルアクリレートと他モノマーとのランダム、ブロックまたはグラフト重合体などのポリブチルアクリレート系樹脂などに代表されるアクリル系樹脂;ビスフェノールA、3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノールなどをモノマー構造として含有するポリカーボネート樹脂などのポリカーボネート系樹脂(たとえば帝人社製APECなど);ノルボルネン誘導体、ビニルモノマーなどを単独重合または共重合した樹脂、ノルボルネン誘導体を開環メタセシス重合させた樹脂、その水素添加物などのシクロオレフィン系樹脂(たとえば、三井化学社製APEL、日本ゼオン社製ZEONOR、ZEONEX、JSR社製ARTONなど);エチレンとマレイミドの共重合体などのオレフィン−マレイミド系樹脂(たとえば東ソー社製TI−PASなど);ビスフェノールA、ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンなどのビスフェノール類やジエチレングリコールなどのジオール類とテレフタル酸、イソフタル酸などのフタル酸類や脂肪族ジカルボン酸類を重縮合させたポリエステルなどのポリエステル系樹脂(たとえば鐘紡社製O−PETなど);ポリエーテルスルホン樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリビニルアセタール樹脂;ポリエチレン樹脂;ポリプロピレン樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリアミド樹脂;シリコーン樹脂;フッ素樹脂などの他、天然ゴム、EPDMといったゴム状樹脂が例示されるがこれに限定されるものではない。
熱可塑性樹脂は、分子中にSiH基に対する反応性を有する炭素−炭素二重結合および/またはSiH基を有していてもよい。得られる樹脂硬化体がより強靭となりやすいという観点からは、分子中にSiH基に対する反応性を有する炭素−炭素二重結合および/またはSiH基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
熱可塑性樹脂は、その他の架橋性基を有していてもよい。この場合の架橋性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基などが挙げられる。得られる樹脂硬化体の耐熱性が高くなりやすいという観点からは、架橋性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
熱可塑製樹脂の分子量は、特に限定はないが、(A)成分や(B)成分との相溶性が良好となりやすいという観点からは、数平均分子量が好ましくは10000以下、より好ましくは5000以下である。逆に、得られる樹脂硬化体が強靭となりやすいという観点からは、数平均分子量が好ましくは10000以上、より好ましくは100000以上である。分子量分布も特に限定はないが、熱硬化性樹脂組成物(X)の粘度が低くなり成形性が良好となりやすいという観点からは、分子量分布は好ましくは3以下、より好ましくは2以下、さらに好ましくは1.5以下である。 熱可塑性樹脂の使用量は特に限定はないが、好ましくは熱硬化性樹脂組成物(X)全体の5重量%〜50重量%、より好ましくは10重量%〜30重量%である。添加量が少ないと、得られる樹脂硬化体が脆くなりやすく、添加量が多いと、耐熱性(高温での弾性率)が低くなりやすい。
熱可塑性樹脂は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
熱可塑性樹脂は、(A)成分および/または(B)成分に溶かして均一な状態として混合してもよいし、粉砕して粒子状態で混合してもよいし、溶剤に溶かして混合するなどして分散状態としてもよい。得られる樹脂硬化体がより透明になりやすいという観点からは、(A)成分および/または(B)成分に溶かして均一な状態として混合することが好ましい。この場合も、熱可塑性樹脂を(A)成分および/または(B)成分に直接溶解させてもよいし、溶剤などを用いて均一に混合してもよいし、その後溶媒を除いて均一な分散状態および/または混合状態としてもよい。
熱可塑性樹脂を分散させて用いる場合は、平均粒子径は種々設定できるが、好ましくは10nm〜10μmである。粒子径分布はあってもよく、単一分散でも複数のピーク粒径を持っていてもよいが、熱硬化性樹脂組成物(X)の粘度が低く成形性が良好となりやすいという観点からは、粒子径の変動係数が10%以下であることが好ましい。
さらに、熱硬化性樹脂組成物(X)には、それ以外の熱硬化性樹脂の粒子を混合しても良い。熱硬化性樹脂粒子は、熱硬化性樹脂を硬化させて粉砕することにより得ることができる。熱硬化性樹脂粒子を熱硬化性樹脂組成物(X)中に分散させて用いる場合は、平均粒子径は種々設定できるが、好ましくは10nm〜10μmである。粒子径分布はあってもよく、単一分散であっても複数のピーク粒径を持っていてもよいが、熱硬化性樹脂組成物(X)の粘度が低く成形性が良好となりやすいという観点からは、粒子径の変動係数が10%以下であることが好ましい。
熱硬化性樹脂組成物(X)は、たとえば、上記した(A)〜(E)の必須成分、ならびに(F)〜(G)およびその他の任意成分を、上記した方法に従って混合することにより、調製できる。こうして得られる熱硬化性樹脂組成物(X)は、そのまま液状物またはペースト状物として使用できる。さらに、熱硬化性樹脂組成物(X)は、各成分および添加剤などを混合した後、加熱などにより部分的に反応(Bステージ化)させてから使用してもよい。Bステージ化することにより粘度調整が可能であり、トランスファー成形性を調整することもできる。また、硬化収縮をより抑制する効果もある。
熱硬化性樹脂組成物(X)は、トランスファー成形などによる成形性が良好であるという観点からは、150℃以下の温度で流動性を有することが好ましい。
また、熱硬化性樹脂組成物(X)の硬化性は任意に設定できるが、成形サイクルが短くできるという観点からは、120℃におけるゲル化時間が120秒以内であることが好ましく、60秒以内であることがより好ましい。また、150℃におけるゲル化時間が60秒以内であることが好ましく、30秒以内であることがより好ましい。また、100℃におけるゲル化時間が180秒以内であることが好ましく、120秒以内であることがより好ましい。
この場合のゲル化時間は、以下のようにして調べられる。設定温度に調整したホットプレート上に厚み50μmのアルミ箔を置き、その上に熱硬化性樹脂組成物(X)100mgを置いてゲル化するまでの時間を測定してゲル化時間とする。
熱硬化性樹脂組成物(X)を用いて樹脂成型体を製造する工程において、熱硬化性樹脂組成物(X)中へのボイドの発生および熱硬化性樹脂組成物(X)からのアウトガスによる工程上の問題が生じ難いという観点からは、硬化中の重量減少は、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下である。なお、硬化中の重量減少は、熱重量分析装置を用いて、試料(熱硬化性樹脂組成物(X))10mgを室温から150℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して、減少した重量の初期重量に対する割合として求めることができる。
また、電子材料などとして用いた場合に、シリコーン汚染の問題を起こし難いという観点からは、揮発成分中のSi原子の含有量が1%以下であることが好ましい。
熱硬化性樹脂組成物(X)は次の理由からN元素が含まれていることが望ましい。電気・電子部品は一般に難燃性が求められており、従来はハロゲン系難燃剤が主に使用されていたが、環境負荷低減のために非ハロゲン系難燃剤にシフトしている。またRoHS対応などの電機業界の規制の面からも環境に配慮した難燃剤が望まれており、特開2010−77333および特表2007−514828あるいは特開2002−128969ならびに特開2002−60385明細書中に記載された含窒素化合物は非ハロゲン系難燃剤の有力なひとつである。そのため本発明のパッケージにおいても特に樹脂成分中に窒素原子を含有することが好ましい。特に窒素系難燃剤としての主要骨格であるイソシアヌレート骨格が組み込まれた骨格が特に好ましい。
また、特開平5−148423および特開2004−67948あるいは特開2009−117809ならびに特開2010−77333明細書中に記載された窒素化合物はヒドロシリル化硬化反応における、反応遅延剤としても作用し、十分な貯蔵安定性を確保すると同時に硬化を完全に促進させることが可能になる(特許文献5〜7)。このような点からも樹脂成分中に窒素原子を含有することが好ましい。また樹脂骨格とは別に従来知られているヒドロシリル化反応の反応制御剤であるトリブチルアミンやテトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾールなどの窒素含有化合物が共存していてもかまわない。
製品中のN含有量を求める方法については特に制限はないが、14Nあるいは14N-固体NMRによる測定により、樹脂骨格に組み込まれたN原子あるいは窒素含有有機化合物のN原子を検出することができる。
製品中のN含有量は特に制限はないが、1000ppm以上含むことが好ましい。なおフィラー成分として窒化ホウ素、窒化アルミなどの含窒素無機フィラーを含んでも全く問題なく、有機成分自身にNを含むことによる難燃効果、含窒素無機フィラーによる難燃効果を両方引き出してもかまわない。
また、熱硬化性樹脂組成物(X)を硬化させて得られる樹脂硬化体のTgは、耐熱性が良好であるという観点からは、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは150℃以上である。Tgは、動的粘弾性測定装置(商品名:DVA−200、アイティー計測制御株式会社製)および3mm×5mm×30mmの角柱状試験片を用い、所定の測定条件(引張りモード、測定周波数10Hz、歪0.1%、静/動力比1.5、昇温側度5℃/分)で動的粘弾性測定を行い、測定結果におけるtanδのピーク温度として求められる。
また、リードフレームなどにイオンマイグレーションなどの問題が生じ難く、信頼性が高くなるという観点からは、樹脂硬化体からの抽出イオン含有量は、好ましくは10ppm未満、より好ましくは5ppm未満、さらに好ましくは1ppm未満である。
この場合、抽出イオン含有量は以下のようにして調べられる。裁断した樹脂硬化体1gを超純水50mlとともにテフロン(登録商標)製容器に入れて密閉し、121℃、2気圧、20時間の条件で処理する。得られた抽出液をICP質量分析装置(商品名:HP−4500、横河アナリティカルシステムズ社製)によって分析し、得られたNaおよびKの含有量の値を、試料である樹脂硬化体中の濃度に換算して求める。一方、同じ抽出液をイオンクロマト法(ダイオネクス社製DX−500使用、カラム:AS12−SC)によって分析し、得られたClおよびBrの含有量の値を、試料である樹脂硬化体中の濃度に換算して求める。以上のように得られたNa、K、Cl、Brの樹脂硬化体中の含有量を合計して抽出イオン含有量とする。
樹脂硬化体の線膨張係数は、特に制約はないが、リードフレームなどの金属やセラミックなどとの接着性が良好になりやすいという観点からは、23℃から150℃までの平均線膨張係数は好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。
また、熱硬化性樹脂組成物(X)は、硬化後の420nm、440nm、460nmにおける分光反射率が80R%以上であり、180℃72時間の耐熱試験後の分光反射率の保持率(耐熱試験後の分光反射率/初期の分光反射率×100)が90%以上であることが望ましい。分光反射率は、発光素子の光取りだし効率が高くなりやすいという観点からは、420〜700nmの波長帯域において75%以上が好ましく、80%以上であることがより好ましい。
樹脂硬化体の分光反射率は、微小面分光色差計(日本電色工業社製VSS400)を用いて波長400nm〜700nm(20nm間隔)における分光反射率として測定される。ここで各波長における測定値は、樹脂成型体の凹部開口面の任意の4箇所(測定面積0.1mmφ)の測定値の平均値を採用した。
耐熱試験(たとえば、180℃のオーブンで72時間加熱する試験)後の分光反射率の初期の分光反射率に対する保持率を下記計算式によって求めた。
保持率(%)=[(耐熱試験後の分光反射率)/(初期の分光反射率)]×100
保持率は、電子材料として用いた場合に信頼性が高いといった観点からは、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。
熱硬化性樹脂組成物(X)を硬化して得た成形体表面の波長470nmにおける光線反射率は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上である。
表面の光線反射率は以下のように測定することができる。
PETフィルムを離型フィルムとして用い、所定の温度条件でプレス成形にてボイドのない0.5mm厚の成形体を作成する。得られた成形体に必要に応じて所定の後硬化を実施する。得られた成形体について積分球を設置した分光光度計を用いて470nmの全反射を測定することにより、光線反射率を求めることができる。
熱硬化性樹脂組成物(X)は、発光素子用のリードフレームの片面に成形してパッケージとした場合の、樹脂硬化体の反りが±1.0mm以下であることが望ましい。
この場合の反りはJIS C 6481に記載の最大反りの測定方法に基づいて測定される。発光装置を一辺の中央で垂直に吊り下げ、その辺に平行に直定規を当てる。直定規は発光装置の凹面に当て、直定規と発光装置の基材面との最大の隔たりを金属製直尺で1.0mmの単位まで測定する。発光装置の凹面に樹脂が成形されている場合は、直定規と発光装置に成形された樹脂面との最大の隔たりを金属製直尺で1.0mmの単位まで測定し、その値から樹脂の厚み分を引いた値を、1.0mmの単位に四捨五入する。
他の辺についても順次測定し、最も大きな隔たりを反りとする。尚、反りの測定に用いる発光装置は、実施例の(成型方法)で示した発光装置を用いた。
熱硬化性樹脂組成物(X)は、(A)〜(E)成分に加えて、少なくとも(F)成分を含有する場合は、タブレットとすることができる。ここで言うタブレットとは、室温において一定した形状を保持し、経時的な形状の変化が実質的になく、また互いに接触させたときに互着や一体化することのない固体のことを意味する。タブレットの形状は、特に限定されず、円柱状、角柱状、円盤状、球状などの形状を含むが、トランスファー成形に一般的な円柱状が好ましい。
具体的には、タブレットは、少なくとも一方が23℃における粘度が50Pa秒以下の液体である(A)成分および(B)成分、(A)成分および(B)成分を硬化させるための(C)成分、共に粉体である(E)成分および(F)成分、更には、(D)成分を含有することを特徴とする。このようなタブレットは、高温で(A)成分および(B)成分が粘度低下することによって熱硬化性樹脂組成物(X)全体が流動可能となり、さらに加熱を続けると硬化反応が進行して所望の形状に成形することが可能である。
成形方法としては、特に限定されず、熱硬化性樹脂組成物の成形に一般的であるトランスファー成形や圧縮成形などの成形方法を用いることができる。これらの成形方法を用いる場合、原料である硬化性樹脂組成物がペースト状や粘土状であると、一定した形状を保持できず、互着や一体化、変形したりするため、計量や搬送、成形機への供給が非常に困難となる。一方、タブレット形状であると、計量や搬送、成形機への供給が容易となり、自動化も可能となって生産性が大幅に向上する。
タブレットに占める(E)成分および(F)成分の合計の割合(以下「充填率」と言うことがある)は、好ましくは70〜95重量%である。充填率における(E)成分と(F)成分の配分については特に限定されず、自由に設定できる。充填率が70重量%未満であると、得られる樹脂硬化体の熱膨張率が大きくなって樹脂成型体の寸法変化が問題となることや、得られる熱硬化性樹脂組成物(X)が硬いペースト状や粘土状となりタブレット化ができなくなる問題がある。充填率が95重量%を超えると、熱硬化性樹脂組成物(X)の高温での粘度が高くなりすぎて成形性が低下することや、得られるタブレットが脆くなりすぎる。
熱硬化性樹脂組成物(X)において、(A)成分および(B)成分の少なくとも一方が常温で液体であると、充填率が低い場合には、ペースト状や粘土状となりやすい。この場合、タブレットにはならないが高温での成形性は良好となりやすい傾向がある。一方、充填率が高い場合には、流動させる成分が少ないため、フレーク状や粉状になりやすい。これらは圧縮することでタブレット状に押し固めることが可能であるが、高温での流動性に乏しく成形性が低下しやすい傾向がある。これまで、充填率を単純に増加させていくだけでは、タブレット化と成形性を両立させることが困難であった。
しかしながら、熱硬化性樹脂組成物(X)では、(E)成分および(F)成分を合計した粉体のうち、12μm以下の粒子の占める割合を40体積%以上とすることで、タブレット化と成形性を両立できることを見出した。
この理由としては推測ではあるが次のように考えられる。液体と粒子の混合系において、液体成分は粒子の表面を被覆していると考えられ、全ての粒子を被覆した余分の液体成分が変形に寄与していると思われる。そのため、充填率が同じであっても、小粒子の割合が多いほど総表面積が大きくなって被覆に費やされる液体成分が増加し、変形しにくくなっていると考えられる。液体の粘度は高温になると顕著に低下するため、高温では小粒子の割合に対する流動性の変化が小さいが、低温では粘度が高いために、小粒子が多いとペースト状や粘土状のように流動することができずにフレーク状や粉状になることが考えられる。
言い換えると、粒子中の小粒子の割合を増やすことで、硬化性樹脂組成物の高温での流動性を維持したまま、常温での状態を固くすることができることになる。このことは、常温で固体のエポキシ樹脂やシリコーン系樹脂を用いた文献(特開2008−112977号公報や、特開2009−155415号公報)、また、粒子の粒度分布まで言及せず平均粒径のみを記載している特許文献3からは想到できない。
本実施形態では、樹脂成型体を製造するための成形方法として、トランスファモールド成形を利用したが、これに限定されず、射出成形、RIM成形、キャスティング成形、プレス成形、コンプレッション成形など、熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂に一般に用いられる各種成形方法が用いられる。これらの内、成形サイクルが短く成形性が良好であるという点においてはトランスファー成形が好ましい。成形条件も任意に設定可能であり、たとえば成形温度についても任意であるが、硬化が速く成形サイクルが短く成形性が良好になりやすいという点においては100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上の温度が好ましい。上記のような各種方法によって成形した後、必要に応じて後硬化(アフターキュア)することも任意である。後硬化した方が耐熱性を高め易い。
成形は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階または連続的に温度を変化させてもよい。一定の温度で行うより多段階的あるいは連続的に温度を上昇させながら反応させた方が歪のない均一な樹脂硬化体が得られやすいという点において好ましい。また、一定温度で行う方が成形サイクルを短くできるという点において好ましい。
硬化時間も種々設定できるが、高温短時間で反応させるより、比較的低温長時間で反応させた方が歪のない均一な樹脂硬化体が得られやすいという点において好ましい。逆に、高温短時間で反応させる方が成形サイクルを短くできるという点において好ましい。
成形時の圧力も必要に応じ種々設定でき、常圧、高圧、または減圧状態で成形することもできる。ボイドの発生を抑制したり、充填性をよくしたり、場合によって発生する揮発分を除きやすいという点においては、減圧状態で硬化させることが好ましい。成形体へのクラックを防止できるという点においては、加圧状態で硬化させることが好ましい。
樹脂成型体としては、上記した各種の樹脂成型体を使用できる。また、発光素子としては、従来から用いられている発光素子をいずれも使用でき、たとえば、発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)などが挙げられる。前記発光ダイオードには、たとえば、青色LEDチップ、紫外線LEDチップ、赤色LEDチップ、緑色LEDチップ、黄緑色LEDチップなどがあり、PN接合構造またはNPN接合構造を有するチップ、2つの電極が水平型または垂直型に配置されるチップなどを含む。受光素子は、たとえば、ワイヤボンディング、フリップチップボンディングなどの公知の接続方法により、複数のリードと通電可能に接続される。通電可能な接続とは、たとえば、発光素子が2つの電極を有し、複数のリードが第1リードと第2リードとを有している場合、発光素子の一方の電極を第1リードのインナーリード部に接続し、発光素子の他方の電極を第2リードのインナーリード部に接続することである。
発光素子を封止する透明性樹脂としては、従来から表面実装型発光装置に用いられている封止用の透明性樹脂をいずれも使用でき、たとえば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、イミド樹脂などが挙げられる。また、樹脂成型体に含まれる樹脂硬化体との接着性、透明性および耐光性の観点からは、特開2002−80733号公報および特開2002−88244号公報で提案されているような、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する脂肪族系有機化合物、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する化合物、およびヒドロシリル化触媒を含有する熱硬化性樹脂組成物を封止剤として用いるのが好ましい。
また、透明性樹脂に代えて、樹脂成型体の発光素子を実装した後の凹部に、レンズを装着してもよい。レンズとしては特に限定されず、表面実装型発光素子の分野で一般に使用されるレンズをいずれも使用でき、また、透明性樹脂をレンズの形に成形して用いても良い。一方、透明性樹脂による封止およびレンズの装着を行わずに、ガラスなどでカバーしてハーメチック封止をすることも可能である。
発光装置の形状についても限定されず、表面実装型発光装置の分野で用いられる各種形状を採用できるが、金属製リードフレームの片面に樹脂硬化体が付着しているMAPタイプが好ましい。MAPタイプを用いることにより、特に本発明の硬化が得られ易い。
本発明の発光装置は、従来公知の各種の用途に用いることができる。具体的には、たとえば、液晶表示装置などのバックライト、照明、センサー光源、車両用計器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライトなどが挙げられる。
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本実施例において、十点平均粗さ(Rz)、ガラス転移温度(Tg)、分光反射率および固体13CNMRスペクトルは次のようにして測定した。
〔十点平均粗さ(Rz)〕
樹脂成型体の凹部が開口する面の十点平均粗さ(Rz)を、輪郭形状測定器(サーフコム500DX、株式会社東京精密製)を用いて、JISB0633:01/ISO04288:96に基づき、触針R:2μmの条件で測定した。
〔ガラス転移温度(Tg)〕
ELP社製手術用メスを用いて、樹脂成型体から、長手方向2〜5mm×幅方向0.5〜1mm×厚み0.5〜1mmの寸法を有する樹脂試料を切り出した。この試料を熱機械分析装置(TMA、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、型式:TMA/SS6100)。に投入し、窒素ガスフロー下、室温から250℃の範囲を昇降温速度5℃/分、圧縮加重29.4mNで膨張率の変化を測定し、ガラス転移温度を算出した。
〔分光反射率〕
微小面分光色差計(商品名:VSS400、日本電色工業株式会社製)を用い、波長400nm〜700nm(20nm間隔)における分光反射率を測定した。ここでは、各波長において、樹脂成型体の凹部開口面の任意の4箇所(測定面積0.1mmφ)で測定を行ない、得られた測定値の平均値をその波長における分光反射率とした。
また、耐熱試験(180℃のオーブンで72時間加熱する試験)後の分光反射率(B)の、初期の分光反射率(A)に対する保持率(%)は、下記式により算出した。
保持率(%)=(B/A)×100
〔固体13CNMRスペクトル〕
樹脂成型体から樹脂試料0.5gを切り出し、乳鉢ですり潰して、3.2mmφの固体NMR試料管に詰めた。この試料管をVARIAN NMR装置(600MHz)に装填し、マジックアングルスピニング速度20kHzで13C CP/MAS NMR測定を実施し、試料の固体13CNMRスペクトルを求めた。
(合成例1)
5Lの四つ口フラスコに、攪拌装置、滴下漏斗および冷却管をセットした。このフラスコにトルエン1800gおよび1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン1440gを入れ、120℃のオイルバス中で加熱および攪拌した。これに、トリアリルイソシアヌレート200g、トルエン200gおよび白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3重量%含有)1.44mlの混合液を50分かけて滴下した。得られた溶液をそのまま6時間加温および攪拌した後、未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエンを減圧留去した。得られた化合物は、1H−NMRの測定により、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応した下記に示す構造を有するものであることがわかった。
(合成例2)
2Lオートクレーブにトルエン720gおよび1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン240gを入れ、気相部を窒素で置換した後、ジャケット温50℃で加熱および攪拌した。これに、アリルグリシジルエーテル171g、トルエン171gおよび白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3重量%含有)0.049gの混合液を90分かけて滴下した。滴下終了後にジャケット温を60℃に上げてさらに40分間反応させ、1H−NMRでアリル基の反応率が95%以上であることを確認した。
得られた反応混合物に、トリアリルイソシアヌレート17gおよびトルエン17gの混合液を滴下した後、ジャケット温を105℃に上げて、さらにトリアリルイソシアヌレート66g、トルエン66gおよび白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3重量%含有)0.033gの混合液を30分かけて滴下した。滴下終了から4時間後に1H−NMRでアリル基の反応率が95%以上であることを確認し、冷却により反応を終了した。
1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの未反応率は0.8%だった。未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとトルエンとアリルグリシジルエーテルの副生物(アリルグリシジルエーテルのビニル基の内転移物(シス体およびトランス体))が合計5,000ppm以下となるまで減圧留去し、無色透明の液体を得た。1H−NMRの測定により、このものは1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がアリルグリシジルエーテル及びトリアリルイソシアヌレートと反応したものであり平均的に下記に示す構造を有するものであることがわかった。下記[化46]において、a+b=3、c+d=3、e+f=3、a+c+e=3.5、b+d+f=5.5である。
(配合例1)
表1の内容に従って各成分を配合して、熱硬化性樹脂組成物A〜Dを調製した。
(実施例1)
上記配合例で得られた表1に示す組成物C 50重量部、下記(D)成分27重量部、下記(E)成分557重量部、および下記(F)成分239重量部を均一に混合し、熱硬化性樹脂組成物を調製した。なお、前記各成分の比率で、トータル100gになるように秤取り、均一に混合した。以下の実施例および比較例でも同様である。この熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物(Xa)である。
(D)成分:両末端ビニル基含有直鎖状メチルフェニルシリコーン(商品名:PDV2331、Gelest社製、全置換基に対するフェニル基の量は22〜25モル%)
(E)成分:球状シリカ(商品名:MSR-2212-TN、株式会社龍森製、比重2.2、平均粒径24.8μm、12μm以下の粒子の割合:28%)
(F)成分:酸化チタン(商品名:タイペークPC-3、石原産業株式会社製、ルチル型、比重4.2、塩素法、表面有機:Al、Si、ポリメチルハイドロジェンシロキサン、平均粒径0.21μm、12μm以下の粒子の割合:100%)
トランスファー成形は、アピックヤマダ株式会社製G−Lineマニュアルプレスを用いた実施した。型締力30ton、注入圧力7.7MPa、注入速度3mm/sとした。白色コンパウンド5.0gを計量、円柱状に賦形し、シリンダー内へ装填し、金型表面にはスプレー式フッ素系離型剤(ダイキン工業社製:ダイフリーGA−7500)を塗布して成形した。成形条件は、170℃/3分、7.8〜13.7MPa。成形後180℃/1hで後キュアした。なお、トランスファー成形に用いた金型において、上金型の上側合わせ面には、上側凹部の底面のRzを6.0μmに調整した。
さらに、上記成型後に、180℃で1時間のキュアを行った。樹脂成型体を上金型から脱型する際に、樹脂成型体の変形や界面剥離による破壊は発生しなかった。
得られた樹脂成型体について、十点平均粗さ(Rz)、ガラス転移温度(Tg)、分光反射率および固体13CNMRスペクトルを調べた。結果を表2に示す。
(実施例2)
上記配合例で得られた表1に示す組成物D 5.25重量部、下記(D)成分2.81重量部、下記(E)成分58.23重量部、下記(F)成分33.51重量部、および下記(G)成分0.20重量部を混合し、熱硬化性樹脂組成物を調製した。この熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物(Xb)である。
(D)成分:両末端ビニル基含有直鎖状メチルフェニルシリコーン(PDV-2331)
(E)成分:シリカ(MSR-2212-TN)
(F)成分:酸化亜鉛[堺化学工業社製、酸化亜鉛1種、比重5.6、平均粒径0.6μm]
(G)成分:ステアリン酸カルシウム
上記で得られる熱硬化性樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして、樹脂成型体を作製した。樹脂成型体を上金型から脱型する際に、樹脂成型体の変形や界面剥離による破壊は発生しなかった。得られた樹脂成型体について、十点平均粗さ(Rz)、ガラス転移温度(Tg)、分光反射率および固体13CNMRスペクトルを調べた。結果を表2に示す。
(比較例1)
メチルトリクロロシラン100重量部、トルエン200重量部を1Lのフラスコに入れ、氷冷下で水8重量部およびイソプロピルアルコール60重量部の混合液を、内温を−5〜0℃とし、5〜20時間かけて液中滴下した。その後、反応混合物を加熱して還流温度で20分間撹拌した。それから室温まで冷却し、水12重量部を30℃以下、30分間で滴下し、20分間撹拌した。更に水25重量部を滴下後、40〜45℃で60分間撹拌した。その後水200重量部を加えて有機層を分離した。この有機層を中性になるまで洗浄し、その後共沸脱水、濾過、減圧ストリップをすることにより、下記式で示される無色透明の固体(融点76℃)36.0質量部の熱硬化性オルガノポリシロキサンを得た。
(CH3)1.0Si(OC3H7)0.06(OH)0.11O1.4
上記で得られた熱硬化性オルガノポリシロキサン100重量部、二酸化チタン(白色顔料、ルチル型、平均粒径0.3μm,商品名:PFC−104、石原産業株式会社製)100重量部、無機充填材(球状溶融シリカ、平均粒径20μm、商品名:MSR−200、株式会社龍森製)560重量部、無機充填材(球状溶融シリカ、平均粒径0.5μm,商品名:アドマファインS0−25R、アドマテック株式会社)40重量部および硬化触媒(安息香酸亜鉛、和光純薬工業株式会社製)3重量部を連続混練ニーダーにて均一に溶融混合し、冷却および粉砕してシリコーン系熱硬化性樹脂組成物を調製した。
上記で得られたシリコーン系熱硬化性樹脂組成物を用い、かつ、上金型に形成される上側凹部底面のRzを調整しない以外は、実施例1と同様にして、樹脂成型体を作製した。樹脂成型体を上金型から脱型する際に、樹脂成型体の変形や破壊が発生した。得られた樹脂成型体について、十点平均粗さ(Rz)、ガラス転移温度(Tg)、分光反射率および固体13CNMRスペクトルを調べた。結果を表2に示す。
(比較例2)
市販の白色LED電球(商品名:Everreds、パナソニック株式会社製)から、発光装置を取り出し、樹脂成型体の十点平均粗さ(Rz)、ガラス転移温度(Tg)、分光反射率および固体13CNMRスペクトルを調べた。結果を表2に示す。
実施例2と、比較例3および4との比較から、樹脂成型体における凹部開口面のRzが1μm〜10μmになるように調整することにより、樹脂成型体を上金型から脱型する際に、樹脂成型体の変形や界面剥離による破壊の発生が顕著に抑制され、不良品率が大幅に低下することが明らかである。
また、表2における実施例1および2と、比較例1および2との比較から、熱硬化性樹脂組成物(X)を用いることにより、分光反射率、耐熱性および反射保持率が顕著に向上することが分かる。また、比較例1は、良好な分光反射率を示すが、ガラス転移温度が−2℃と低いため、金型からの離型時に強度が十分でなく、LEDパッケージの個片化に伴う切削加工をする際、機械的強度が不十分となり、樹脂成形部の欠けなど製品として十分な品質を満たさなくなる。
(実施例3〜10、比較例3〜4)
熱硬化性樹脂組成物(X)を、精密ホットプレス(新東工業株式会社製、CYPF−10)を用いて、表面ラフネスの異なる金型入子[(十点平均粗さ(Rz)=0.9、2.5、5.8、10.6、15.6(μm)]を上型に装着し、十点平均粗さ(Rz)=0.9の金型を下型に装着した上下プレス板で、170℃×硬化時間2分、離型速度0.2mm/s、サンプル形状:φ30×厚み1mmとなるようにプレス成形した。その後、金型をオープンした際の成形物の剥離モードを評価した。
このとき、樹脂成形体にクラックや破壊等の欠陥が無く金型界面から剥離した場合をAF:界面剥離(Adhesive Failure)、樹脂成形体が金型に張り付く等でクラックや破壊が生じた場合をCF:凝集破壊(cohesive Failure)とした。
平板サンプルが取得できた場合、成型体表面ラフネスRz(μm)と成型体表面の分光反射率(%)(@460nm、N=5平均)を計測し、表面外観を観察した。表面状態(凸凹)を肉眼で観察し評価した。表面光沢があり平滑なものを○、やや表面光沢あり平滑なもの△、表面光沢が低く凸凹が肉眼で観測できるものを×とした。
また固体13CNMRスペクトルを調べた。
表4および表5から、実施例3〜6および実施例7〜10で用いた熱硬化性樹脂成形体(Xa,Xb)は、十点平均粗さが異なる(Rz=0.9〜15.6)金型を用いて成形した際、優れた離型性と機械的強度およびを示した。
また、成形体表面ラフネス(Rz)が10以上になると(比較例3、比較例4)、実施例3〜6および7〜10で得られた成形体と比較し、成形体表面の分光反射率が約2%低下した。さらに、目視による観察で、光沢度は低下し肉眼で表面の凸凹が観測された。
このように成形体表面ラフネスを規定することで優れた表面反射率を有する樹脂成形体が得られる条件が明らかとなった。
(参考例1〜10)
実施例3〜10、比較例3〜4と同様の条件で、すなわち熱硬化性樹脂組成物(Xc、Xd)を、精密ホットプレス(新東工業株式会社製、CYPF−10)を用いて、表面ラフネスの異なる金型入子[(十点平均粗さ(Rz)=0.9、2.5、5.8、10.6、15.6(μm)]を上型に装着し、十点平均粗さ(Rz)=0.9の金型を下型に装着した上下プレス板で、170℃×硬化時間2分、離型速度0.2mm/s、サンプル形状:φ30×厚み1mmとなるようにプレス成形した。その後、金型をオープンした際の成形物の剥離モードを評価し、また固体13CNMRスペクトルを評価した。
表6および表7に示されるように、金型ラフネスによらず、熱硬化性樹脂組成物(Xc、Xd)いずれの成形物も凝集破壊(CF)となり、離型性に劣りかつ樹脂強度も低く、満足な成形体を得ることができなかった。