JP5767541B2 - ゴム材料のシミュレーション方法 - Google Patents

ゴム材料のシミュレーション方法 Download PDF

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Description

本発明は、ゴム材料のシミュレーション方法に関し、詳しくは実際のゴム材料から精度良くシミュレーション用のゴム材料モデルを設定して精度の良い計算結果を得るのに役立つ方法に関する。
タイヤなどのゴム材料には、補強性の観点より、カーボンブラックやシリカなどの充填剤が配合されている。ゴム材料中の充填剤の分散性は、大まかに、ゴム強度などに大きく影響することが判明しているが、その詳細はあまり明らかにされていない。このため、ゴム材料中の充填剤の分散状態を正確に観察し、その分散状態に基づいたモデルを用いてシミュレーションを行うことは重要である。
特開2007−131774号公報 特開2008−66057号公報 特開2010−108633号公報
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、実際のゴム材料から正確にゴム材料モデルを設定することを基本として、前記課題を解決しうるゴム材料のシミュレーション方法を提供することを目的とする。
本発明のうち請求項1記載の発明は、充填剤を含有するゴム材料のシミュレーション方法であって、走査型透過電子顕微鏡を用いて前記ゴム材料の電子線透過画像を取得する撮像工程と、前記撮像工程で得られた画像からトモグラフィー法によりゴム材料の3次元構造を構築する工程と、前記ゴム材料の3次元構造に基づいてゴム材料モデルを設定するモデル設定工程と、前記ゴム材料モデルに基づいて変形シミュレーションを行う工程とを含み、前記撮像工程は、前記ゴム材料を、前記走査型透過電子顕微鏡の電子線の光軸に対する角度を異ならせた複数の角度状態とし、それぞれの角度状態において、前記走査型透過電子顕微鏡の焦点を、前記ゴム材料を横切る電子線の方向に沿った見かけ厚さの中央領域に合わせて撮像するものであり、前記ゴム材料と前記走査型透過電子顕微鏡の透過電子の検出器との距離が8〜150cmであることを特徴とする。

また請求項記載の発明は、前記ゴム材料の厚さが200〜1500nmであることを特徴とする。
本発明のゴム材料のシミュレーション方法では、走査型透過電子顕微鏡を用いて前記ゴム材料の電子線透過画像を取得する撮像工程と、前記撮像工程で得られた画像からトモグラフィー法によりゴム材料の3次元構造を構築する工程と、前記ゴム材料の3次元構造に基づいてゴム材料モデルを設定するモデル設定工程とを含むことを特徴とする。
このような方法によれば、実際のゴム材料に基づいて正確なゴム材料モデルを得る事ができ、これに基づいて変形計算を行うことにより、正確なシミュレーション結果を得ることができる。特に請求項2の発明のように、撮像工程において、走査型透過電子顕微鏡の電子線の焦点を前記ゴム材料の厚さの中央領域に合わせることが望ましい。このような方法を採用することにより、鮮明な像が得られる焦点深度の領域をゴム材料の内部により広く確保することができる。従って、従来に比して、鮮明な像を得ることができ、ひいてはゴム材料の充填剤の分散状態をより正確にゴム材料モデルの構成に落とし込むことができる。
本実施形態のゴム材料の概略的な部分拡大断面図である。 本実施形態の処理手順を説明するフローチャートである。 本発明で用いられる走査型透過電子顕微鏡装置の一例を示する概略図である。 暗視野制限用の散乱角制限絞りの一例を示す概略図である。 試料を傾斜させる試料傾斜部の説明図である。 (a)、(b)は、撮像工程での焦点と試料との位置関係を示す側面図である。 撮像工程での焦点と試料との位置関係を示す側面図である。 本実施形態の方法で試料から得られたゴム材料の3次元像である。 (a)は2次元のゴム材料モデルの部分拡大図、(b)はさらにその要部拡大図である。 三次元のゴム材料モデルの一部分を模式的な拡大図である。 実験例1及び2について、サンプル上部及び下部でのスライス像である。 サンプルの上部及び下部を説明する側面図である。 シミュレーションの結果を示す応力−ひずみの関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本実施形態では、解析対象物が、図1に示されるように、マトリックスゴムとしてのゴム成分aと、充填剤bとを含む充填剤入りのゴム材料cであり、その変形計算がコンピュータ(図示省略)を用いてシミュレートされる。
前記ゴム成分aとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)又はアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。また、前記充填剤bとしては、特に限定されず、例えば、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸マグネシウム又は水酸化マグネシウム等が挙げられる。また、上記ゴム材料cには、硫黄、加硫促進剤などゴム工業において一般的に用いられている各種材料が適宜配合されてもよい。
図2には、本実施形態のシミュレーション方法を実施するためのフローチャートが示される。先ず、本実施形態では、走査型透過電子顕微鏡を用いて前記ゴム材料cの電子線透過画像を取得する撮像工程が行われる(ステップS1)
本発明において、走査型透過電子顕微鏡を含む装置には、例えば、図3で示されるものが使用される。該走査型透過電子顕微鏡装置100は、電子銃1と、該電子銃1から水平面と直角かつ下方に放出された一次電子線2を前記ゴム材料cからなる試料5上に集束させるための集束レンズ3と、試料5上をX方向、Y方向に走査するためのX方向走査コイル4X及びY方向走査コイル4Yとを含んでいる。
前記試料5は、試料ホルダー6に固定される。試料ホルダー6は、中央部に電子線の光軸Oに沿って、試料5を透過した透過電子7が通過する電子線通過孔8が設けられている。この試料ホルダー6は、試料ステージ9に装着される。試料5は、一定の厚さtを有する板状である。
前記試料ステージ9には、中央部に電子線光軸Oに沿って電子線通過孔8に連続する電子線通過孔10が設けられる。また、試料ステージ9の下流側には、透過電子7の通過を制限する散乱角制限絞り11が設けられる。
さらに、前記散乱角制限絞り11の下流側には、透過電子12を光に変換するシンチレーター13と、該変換された光を電子信号に変換する光電子増倍管14とが設けられ、これらによって、透過電子の検出器20が構成される。
なお、試料ステージ9、散乱角制限絞り11、シンチレーター13、光電子増倍管14は走査型透過電子顕微鏡装置本体100の試料室(図示せず)内に配置され、試料ホルダー6は試料ステージ9に対して着脱可能に装着されている。
このような走査型透過電子顕微鏡装置100の動作について述べる。先ず、オペレーターにより、試料5が固定された試料ホルダー6が、試料ステージ9上に装着される。
次に、電子銃1から放出された一次電子線2は、加速手段(図示せず)で加速され、集束レンズ3によって集束され、X方向、Y方向走査コイル4X、4Yによって試料5上を走査する。このような電子線による試料5上の走査により、試料5中で散乱し、又は散乱することなく試料5を透過した電子7が試料5の下面から出射する。
なお、電子線の加速電圧は、好ましくは100〜3000kVであるのが望ましい。前記加速電圧が下限未満であると電子線が試料を透過しないため、観察できないおそれがあるし、上限を超えると、試料5へのダメージが大きく観察できないおそれがある。
透過電子7は、試料5の内部状態、厚さ及び/又は原子種により、強度及び散乱角度が異なる。また、透過電子7の散乱角度は、電子線の加速電圧によっても変化する。例えば、透過電子7は、加速電圧が低くなると試料5で散乱される割合が多くなり、試料5の下面から出射する透過電子の電子線の光軸Oからの出射角度(散乱角度)が大きくなる。
また、試料5の下面から出射した透過電子7は、試料ホルダー6と試料ステージ9の電子線透過孔8、電子線通過孔10をそれぞれ通過した後、散乱角制限絞り11に達する。該散乱角制限絞り11は、特定の散乱角を有する透過電子のみが通過できるように、その中心部に開けられた孔の口径が制限される。
このような散乱角制限絞り11としては、上記の態様の他、図4に示されるように、孔の中心部に遮蔽板17を配置して透過電子7の通過を制限する遮蔽板付き散乱角制限絞り16が採用されても良い。一般に、散乱角制限絞り11を使用した場合、電子線透過像は明視野像を形成し、遮蔽板付き散乱角制限絞り16を使用した場合、暗視野像を形成する。
散乱角制限絞り11を通過した透過電子12は、シンチレーター13に衝突して光に変換された後、光電子増倍管14によって電気信号に変換される。この電気信号は、図示しない増幅手段で増幅され、A/D変換器を介して表示手段(ともに図示せず)に送られる。表示手段では、送られてきた信号を輝度変調し、試料5の内部構造を反映した電子線透過像を表示し、走査位置に応じた複数の像を取得できる。
なお、試料5とシンチレーター13との距離L1(カメラ長)は、好ましくは8〜150cmであるのが良い。前記距離L1が8cm未満又は150cmを超えると、像が不鮮明になるおそれがある。
また 本発明では、前記撮像工程は、ゴム材料cを、前記走査型透過電子顕微鏡装置100の電子線の光軸Oに対する角度を異ならせた複数の角度状態で撮像する。このために、前記走査型透過電子顕微鏡装置100には、試料5を電子線に対して傾斜(回転)させる試料傾斜部が設けられている。
前記試料傾斜部は、図5に示されるように、試料5を水平面Hに対して角度θ(θ≠0)だけ傾斜させて保持することができる。傾斜した試料5に電子線eが照射され、試料5を透過した電子線は透過電子線e′となる。コンピュータ装置等から試料傾斜部に制御信号が出力されることで、試料5が所定角度に傾けられる。
例えば、オペレータによって、測定開始角度まで試料5が傾けられ、その状態で電子線透過像が取得される。ここで、最初の角度θはオペレーターが適宜設定でき、本実施形態では+70度に設定される。電子線透過像が取得された後、オペレーターが設定した測定終了角度まで、予め定められた角度の単位で試料5の傾斜及び画像の取得のステップが繰り返される。これにより、回転シリーズ像(複数の画像)が得られる。
ここで、試料5を傾斜させる角度の単位(試料傾斜部の傾斜ステップ毎に傾ける角度)は、好ましくは0.5〜4度、より好ましくは1〜2度であるのが望ましい。前記角度の単位が0.5度未満であると、撮影時間が長くなり試料5がダメージを受けるおそれがあり、逆に、前記角度の単位が4度を超えると、再構成後のスライス像(後述)が不鮮明になるおそれがある。
また、試料5の前記角度θは特に限定されないが、サンプルをロッドの形状に加工した理論上の理想としては−180度〜+180度の全範囲で測定することが好ましいが、装置上の制限より、好ましくは−90度〜+90度、より好ましくは−70度〜+70度の範囲で測定するのが望ましい。
さらに、本実施形態の撮像工程では、図6(a)に拡大して示されるように、前記撮像工程において、走査型透過電子顕微鏡装置100の焦点Fを、試料5(ゴム材料)の厚さの中央領域Cに合わせている。
従来の撮像工程では、図7に示されるように、電子線eの焦点Fが試料5の上面5aに合わせられる。しかしながら、このような方法では、試料5の下面5bでは、鮮明な像が得られないという問題がある。例えば、試料5の実厚さt=1000nm、電子線顕微鏡の焦点が合う距離G=600nm(焦点深度f=1200nm)の場合、試料5の表面5aに焦点Fを合わせると、試料5の下面側400nmの領域Bでは鮮明な像を得ることができない。特に、サンプルの厚さtが大きくなるとこのような問題が生じやすい。
これに対して、本実施形態のように、試料5(ゴム材料)の厚さの中央領域Cに焦点Fを位置させることによって、鮮明な像が得られる範囲、即ち、焦点深度fの領域を試料5の内部により広く確保することができる(この例ではf=tとなっている)。
図6(a)には、試料5の上面5a及び下面5bが、水平面に対して直交、即ち、電子線eの光軸Oに対して直交する態様が示されている。この場合の試料5の厚さは、前記上面5a及び下面5bにそれぞれ直交する向きの実厚さtに等しい。また、前記中央領域Cは、試料5の前記厚さの完全な中心位置である必要はないが、好ましくは、厚さの中心位置を中心として該厚さの30%の領域とするのが好ましく、より好ましくは20%、さらに好ましくは10%の領域とするのが望ましい。
図6(b)には、試料5の上面5a及び下面5bが、水平面に対して傾斜、即ち、電子線eの光軸Oに対して非直交する態様を示している。この場合の試料5の厚さは、試料5を横切る電子線eの光軸方向に沿った見かけ厚さt’として定められる。そして、前記中央領域Cは、この見かけ厚さt’を基準に定められる。見かけ厚さt’は、試料5の厚さtと、傾斜の角度θとを用いてt/cosθで容易に計算される。このように、試料5の実際の厚さ方向が、電子線の光軸Oと直交しない場合には、見かけの厚さt’に基づいて、中央領域Cを定めることによって、試料5がどのように傾けられていても鮮明な電子透過像を得ることができる。
また、焦点Fは、走査型透過電子顕微鏡装置100の焦点調節機構を用いて行うことができ、集束レンズ3及び/又は試料ステージ9などを調節することによって行うことができる。
なお、試料5の厚さtは特に限定されない。即ち、厚さtは、慣例に従い、200nm未満でも良いし、また200nm以上でも良い。本実施形態によれば、いずれの厚さの試料でも充填剤の分散状態を良好に観察できる。前記厚さtは、好ましくは200〜1500nm、より好ましくは500〜1000nmである。1500nmまで観察可能になることにより、200nm以上のサンプルの充填剤の凝集構造の観察精度が高まり、充填剤の正確な分散状態を解析することができる。
次に、本実施形態では、前記撮像工程で得られた画像からトモグラフィー法によりゴム材料の3次元構造を構築する工程が行われる(ステップS2)。即ち、撮像工程において、充填剤を含有するゴム材料の試料5について、走査型透過電子顕微鏡を用いて集束された電子線を試料5に照射かつ走査して複数の電子線透過像を取得し、この際、試料5を所定の角度単位で電子線に対して傾斜させて、各角度ごとに電子線透過像を取得しておくことにより、トモグラフィー法を用いて、取得した電子線透過像を3次元構造として再構築し、ゴム材料中の充填剤の分散状態の立体画像が生成される。このような3次元構造の一例は、図8に示されており、数値データとして、コンピュータ上に記憶される。
次に、本実施形態では、上記3次元構造からゴム材料cのスライス画像を取得する工程が行われる(ステップS3)。このようなスライス画像は、既に試料5(ゴム材料c)の3次元構造が得られているため、断面の位置を指定することによって、容易にコンピュータから出力することができる。
次に、本実施形態では、上記ゴム材料cのスライス画像から、ゴム材料モデルを設定する工程が行われる(ステップS4)。この工程では、前記スライス画像に画像処理を行うことにより、前記スライス画像の全ての領域を、少なくともゴム部分と充填剤部分との2つに区分する工程を含む。このような画像処理は、既に公知であり、予め画像の明度や輝度などの情報に対して閾値を設定することで、前記コンピュータが、スライス画像の各領域を、ゴム部分と充填剤部分とに自動的に識別する。
次に、画像処理にて、スライス画像が、ゴム部分及び充填剤部分に区分された後、このスライス画像に基づいてゴム材料モデルが設定される(ステップS4)。
図9(a)には、本実施形態のゴム材料モデル5aの一部分が視覚化して示される。また、図9(b)には、その部分拡大図を示す。図9(b)に拡大して示されるように、本実施形態では、x軸及びy軸に同一のピッチPで配された縦線L1及び横線L2の格子GDからなる規則格子で区分されており、該縦線L1及び横線L2で区分される正方形が、それぞれ一つの基本要素ebを構成している。より具体的には、基本要素ebは、縦線L1及び横線L2の各交点に配置される節点nを4隅に有する正方形要素(四辺形要素)である。
本実施形態のゴム材料モデル5aは、ゴム部分aを模しているゴムモデル21と、充填剤bを模している充填剤モデル22とを含んで構成される。
前記充填剤モデル22は、理解しやすいように、図9(a)において着色されて表示される。該充填剤モデル22は、前記充填剤bを有限個の基本要素eb…を用いて離散化することにより設定されている。
また、前記ゴムモデル21は、ゴム材料cのゴム部分aが有限個の基本要素ebで離散化されて設定される。
このような要素分割は、例えば、前記コンピュータを用いて、画像処理が施されたスライス画像上に前記規則格子を設定し、基本要素eb毎に、ゴムa又はフィラーbのいずれがより多くの面積を占めているかが計算される。そして、その計算結果に基づいて、各基本要素ebが、ゴムモデル21又は充填剤モデル22のいずれに属するかが、コンピュータにより決定される。このように、本実施形態のゴム材料モデル5aは、規則格子で区分される基本要素ebのみを用いることにより、短時間で作成できるとともに、精度良く撮影されたゴム材料5の3次元構造のスライス画像に基づいて作成されるため、解析対象物に非常に近いものとして設定される。
前記基本要素ebは、シミュレーションによる数値解析に必要な情報が定義される。数値解析とは、例えば有限要素法等の数値解析法を意味する。解析に必要な情報としては、各基本要素ebを構成する節点nの番号や該節点nの座標値が少なくとも含まれる。さらに、各基本要素ebには、各々が代表する部分の材料特性(物性値)などが定義される。即ち、ゴムモデル21及び充填剤モデル22の各基本要素ebには、それぞれ充填剤及びゴムの物性に応じた材料定数が定義される。そして、これらの情報は、いずれもコンピュータに入力されかつ記憶される。
次に、本実施形態では、設定されたゴム材料モデル5aを用いて変形シミュレーションが行われる(ステップS6)。変形シミュレーションでは、予め定めた条件に従って、例えば公知の均質化法(漸近展開均質化法)などを用いて行われる。
なお、上記の実施形態では、二次元のゴム材料モデル5aを例に挙げて説明したが、本発明は、図10に示されるように、三次元のゴム材料モデル5cであっても同様の手順で行うことができるのは言うまでもない。この場合、スライス画像を用いることなく、ゴム材料cの3次元構造から直接モデル化を行うことができる。また、この実施形態の三次元のモデル5cは、直方体の基本要素ebで分割されているが、このような要素に限定されるものではない。
以上、本発明について詳述したが、本発明は上記の実施形態に限定されることなく種々の態様に変形して実施しうるのは言うまでもない。
本発明の効果を確認するために、以下の実験が行われた。ただし、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
実験で使用された各種薬品及び装置は、次の通りである。即ち、下記に示す配合に従い、バンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を排出温度160℃の条件下で4分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、100℃の条件下で2分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。更に、得られた未加硫ゴム組成物を175℃で30分間加硫することにより、加硫ゴムを得た。
[ゴム配合](単位は質量部)
SBR 100
シリカ 53.2
シランカップリング剤 4.4
硫黄 0.5
加硫促進剤A 1
加硫促進剤B 1
[薬品]
SBR:住友化学(株)製のSBR1502
シリカ:ローディアジャパン(株)製の115Gr
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi69
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤A:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS
加硫促進剤B:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD
[装置]
ミクロトーム:LEICA社製のウルトラミクロトームEM VC6
電子顕微鏡:日本電子(株)製の透過型電子顕微鏡JEM2100F
次に、得られた加硫ゴムをミクロトームを用いて厚さ500nmのサンプル(切片)が作製された。
次に、得られたサンプルをメッシュに載せ、電子顕微鏡のサンプル室内にセットし、カメラ長150cm、電子線照射の加速電圧を200kVに設定した。STEMモードにて、様々な回転角度(−60度〜+60度)で電子線を走査し、各STEM像を取得した。
撮像工程において、実験例1では、焦点が、サンプルの厚さの中心位置に合わせられた。また、実験例2では、焦点が、サンプルの上面に合わせられた。そして、各々、サンプルを1度ずつの単位で傾斜させて上記回転角度範囲におけるSTEM像が取得された。また、得られたすべてのSTEM像をコンピュータトモグラフィー法により再構成することで、各断面のスライス像を取得し、ゴム成分を黒色、シリカを白色として、サンプルの3次元像を取得した。これが図8に示されている。
図11には、実験例1及び2で得られた3次元構造図の上部A1及び下部A2のスライス像が示されている。図12に示されるように、サンプルの上部A1及び下部A2は、それぞれ、サンプルの上面及び下面からそれぞれサンプル内側40nmの距離zの位置である。図11から明らかなように、焦点がサンプルの上面に合わせられた実験例2では、サンプルの下部のスライス画像が不鮮明になっていたが、焦点がサンプルの中心に合わせられた実験例1では、サンプルの下面のスライス画像についても鮮明な像が得られた。
次に、実験例1の下部のスライス画像を基にして、比較例及び実施例の2種類の2次元のゴム材料モデルが設定された。実施例は、前記スライス画像を正方形の基本要素で分割したものである。比較例は、実施例とシリカの配合率を同一としながら、シリカをランダムに分散配置したものとした。
そして、これら実施例及び比較例のゴム材料モデルについて、引張変形のシミュレーションが行われた。また、比較のために、上記実際の加硫ゴムについても、同様の条件で引っ張り試験が行われた(実験)。引張変形シミュレーションでは、特開2010−205165号公報と同様に、均質化法を用いて巨視領域20mm×20mmに、100mm/minの速度で引張変形を与え、最大変形量を3mm(最大ひずみ15%)とした。
テストの結果は、図13に示される。実施例は、実際の加硫ゴムとの相関性が高いが、比較例では、実際の加硫ゴムの結果との差が大きいことが確認できる。
1 電子銃
2 一次電子線
3 集束レンズ
4X X方向走査コイル
4Y Y方向走査コイル
5 試料
5a、5b、5c ゴム材料モデル
6 試料ホルダー
7、12、15 透過電子
8、10 電子線通過孔
9 試料ステージ
11、16 散乱角制限絞り
13 シンチレーター
14 光電子増倍管
17 遮蔽板
21 ゴムモデル
22 充填剤モデル
23 細分化領域
100 走査型透過電子顕微鏡装置

Claims (2)

  1. 充填剤を含有するゴム材料のシミュレーション方法であって、
    走査型透過電子顕微鏡を用いて前記ゴム材料の電子線透過画像を取得する撮像工程と、
    前記撮像工程で得られた画像からトモグラフィー法によりゴム材料の3次元構造を構築する工程と、
    前記ゴム材料の3次元構造に基づいてゴム材料モデルを設定するモデル設定工程と、
    前記ゴム材料モデルに基づいて変形シミュレーションを行う工程とを含み、
    前記撮像工程は、前記ゴム材料を、前記走査型透過電子顕微鏡の電子線の光軸に対する角度を異ならせた複数の角度状態とし、
    それぞれの角度状態において、前記走査型透過電子顕微鏡の焦点を、前記ゴム材料を横切る電子線の方向に沿った見かけ厚さの中央領域に合わせて撮像するものであり、
    前記ゴム材料と前記走査型透過電子顕微鏡の透過電子の検出器との距離が8〜150cmであることを特徴とするゴム材料のシミュレーション方法。
  2. 前記ゴム材料の厚さが200〜1500nmである請求項1記載のゴム材料のシミュレーション方法。
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