JP5767521B2 - 光半導体装置用リードフレーム及びその製造方法 - Google Patents
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Description
また、特性維持層として有機皮膜やシリコーン系皮膜を形成すると、発光素子搭載後のワイヤボンディング性の確保が難しい。また、ワイヤボンディング後にドライプロセスを利用して耐食性に優れる酸化膜等を被覆する手法も、特許文献5によって提案されているが、この方法では工程が煩雑になり、安価に製造することができない。
さらに、封止樹脂の外側に露出した箇所は、半田付けにより、配線基板に接続される。この際、光半導体装置を形成した際の熱によって銀の拡散が進行し、最表面の銀の酸化や硫化によって、半田付けができない場合がある。このため、光半導体装置を製造後に、製品の端子部分に新たに錫めっきなどの処理を行う、外挿めっきを行う必要がある。この方法では、製造工程が増えるために、光半導体装置を廉価で提供するのに障害となるだけでなく、外挿めっき時に光半導体装置を故障させてしまう可能性があり、改善が望まれていた。
そこで本発明者は、特許文献6に示すような錫または錫合金、インジウムまたはインジウム合金を活用する発明提案を行っている。これは、銀または銀合金上に最表層皮膜を形成後、固溶体を形成させて耐食性を高める方法である。この場合は、硫化試験前後における反射率の低下が非常に小さいために大変有効であるが、近年は被覆樹脂の改良により硫化進行速度が抑制されつつあり、反射率の低下する割合が従来の銀皮膜の半分程度であれば十分であるという要求が生まれつつある。そこで、従来の銀皮膜と比べて硫化速度が半分程度であり、かつ光半導体用リードフレームに要求される初期反射率70%以上、ワイヤボンディング性が従来の銀皮膜と同等、さらには半田濡れ性が良好で、安価に処理が可能であるような方法が望まれてきている。
(1)基体上に銀−インジウム合金、銀−錫合金、又は銀−インジウム−錫合金からなる反射層が形成されており、該反射層上にインジウム及び/又は錫の酸化物層が厚さ0.0004〜0.0008μmで最表層に形成されていることを特徴とする、光半導体装置用リードフレーム、
(2)前記基体と前記反射層との間に、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、銅、銅合金、パラジウム、パラジウム合金、ロジウム及びロジウム合金からなる群から選ばれた金属又は合金からなる中間層が少なくとも1層形成されていることを特徴とする、(1)記載の光半導体装置用リードフレーム、
(3)基体上に銀からなる反射層を湿式めっき法で形成し、該反射層上にインジウムまたは錫からなる耐食成分層を1層以上、湿式めっき法で形成後、光半導体装置を製造する工程を経た後に、該耐食成分層を該反射層内に拡散させ、該耐食成分の酸化物層を厚さ0.0004〜0.0008μmで最表層に形成させることを特徴とする、光半導体装置用リードフレームの製造方法、
(4)初期に形成された該耐食成分層の厚さは、0.0025〜0.008μmであることを特徴とする、(3)記載の光半導体装置用リードフレームの製造方法、及び
(5)前記基体と前記反射層との間に、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、銅、銅合金、パラジウム、パラジウム合金、ロジウム及びロジウム合金からなる群から選ばれた金属又は合金からなる中間層を少なくとも1層、湿式めっき法により形成することを特徴とする、(3)または(4)記載の光半導体装置用リードフレームの製造方法
を提供するものである。
また、本発明の製造方法によれば、各被覆層を湿式めっき法によって形成するので、厚さを容易に制御することができ、生産性に優れるので、所望の被覆層の厚さを有する光半導体装置用リードフレームを製造することができる。また、本発明の製造法によれば、初期の耐食成分被覆厚を制御することにより、従来の光半導体装置の製造工程中で最表面に該耐食成分層の酸化物層を必要なだけ形成させることができる。このため、別途に熱処理工程等の必要がなく、後処理により耐食層を形成する工程も不要なため、従来の製造工程のみで安価に製造できる。本発明の製造方法により、LED、フォトカプラ、フォトインタラプタなどに使用される光半導体装置用リードフレームとして好適な、光の波長が400nmから近赤外域の800nmにおける反射特性が良好で、さらには従来の銀皮膜の硫化速度が半分以下であり、反射率の長期安定性、ワイヤボンディング性に優れたリードフレームを製造することができる。
図1に示すように、第1の実施態様のリードフレームは、本発明における被覆形態を示しており、基体1上に銀−インジウム合金、銀−錫合金、銀−インジウム−錫合金のうちいずれかからなる反射層2が形成され、その反射層2上に、インジウム、錫、またはこれら両者の酸化物層3が全面に形成されている。本発明においては、可視光域の波長400〜800nmにおける反射特性に優れ、従来の銀皮膜よりも硫化速度が半分以下であり、かつ耐マイグレーション性、ワイヤボンディング性、半田付け性に優れた光半導体装置用リードフレームを提供することができる。
基体のうち、銅合金の例としては、CDA(Copper Development Association)規格合金の例として、C19400(Cu−Fe系合金材料:例えば、Cu−2.3Fe−0.03P−0.15Zn)、C26000(黄銅:Cu−30Zn)、C26800(黄銅:Cu−35Zn)、C52100(リン青銅:Cu−8Sn−P)、C77000(洋白:Cu−18Ni−27Zn)、が挙げられる。また、CDA規格合金のC14410(Cu−0.15Sn:古河電気工業(株)製EFTEC−3)、C18045(Cu−0.3Cr−0.25Sn−0.2Zn系合金:同社製EFTEC−64T)、C52180(Cu−8Sn−0.1Fe−0.05Ni−0.04P:同社製F5218)、C70250(Cu−3.0Ni−0.65Si−0.15Mg:同社製EFTEC−7025)なども好適な例として挙げられる。
また、基体のうち、鉄合金の例としては、日本工業規格(JIS G 4305:2005)規定のステンレス鋼(SUS301、SUS304、SUS401)や、Fe−Ni合金である42アロイ(Fe−42%Ni)などが挙げられる。
また、基体のうち、アルミニウム合金例としては、日本工業規格(JIS H 4000:2006 など)に規定されるA1100、A2014、A3003、A5052などが挙げられる。
図2に示すように、基体1と銀又は銀合金からなる反射層2との間に、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、銅、銅合金、パラジウム、パラジウム合金、ロジウム及びロジウム合金からなる群から選ばれた金属又は合金からなる中間層4が少なくとも1層以上形成されている。これにより、発光素子が発光する際に発生する熱によって基体を構成する材料が反射層へ拡散することによる反射率の低下をより一層防ぎ、反射率特性を長期にわたって安定させることができる。また、中間層4を設けることにより、基体と銀又は銀合金からなる反射層との密着性を向上させることができる。中間層4の厚さは、製造する際のプレスのしやすさをはじめとする生産性のほか、耐熱性(耐拡散性)やコストを考慮して決定される。中間層4の厚さの合計は、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、銅、銅合金の場合は0.2〜5.0μmであることが好ましく、さらには0.2〜2.0μmが好ましく、特に好ましくは0.5〜2.0μmである。また中間層6がパラジウム、パラジウム合金、ロジウム及びロジウム合金である場合は、耐熱性がさらに優れることと貴金属であるために使用量低減することが望ましいため、0.005〜0.2μm、さらに好ましくは0.005〜0.05μmである。なお、パラジウム、パラジウム合金、ロジウム及びロジウム合金を下地層として形成する場合、これら中間層が基材へ拡散するのを防止するため、ニッケルまたはニッケル合金を基材との間に1層以上設け、2層以上の構造として使用することが好ましい。
また図3−2は、図3−1で示された初期反射層12中に、耐食成分からなる層13が拡散し、最表層には該耐食皮膜成分の酸化物層3が形成されている。一方の反射層2は、初期反射層12に形成されていた銀と、耐食皮膜成分からなる合金層になっている状態を示しており、前記図1と同様に示す構成となっていることが分かる。
(前処理条件)
[電解脱脂]
脱脂液:NaOH 60g/リットル
脱脂条件:2.5 A/dm2、温度60℃、脱脂時間60秒
[酸洗]
酸洗液:10%硫酸
酸洗条件:30秒 浸漬、室温
[Agストライクめっき]被覆厚0.01μm
めっき液:KAg(CN)2 5g/リットル、KCN 60g/リットル、
めっき条件:電流密度 2A/dm2、めっき時間 4秒、温度 25℃
(中間層)
[Niめっき]
めっき液:Ni(SO3NH2)2・4H2O 500g/リットル、NiCl2 30g/リットル、H3BO3 30g/リットル
めっき条件:電流密度 5A/dm2、温度 50℃
[Coめっき]
めっき液:Co(SO3NH2)2・4H2O 500g/リットル、CoCl2 30g/リットル、H3BO3 30g/リットル
めっき条件:電流密度 5A/dm2、温度 50℃
[Cuめっき]
めっき液:CuSO4・5H2O 250g/リットル、H2SO4 50g/リットル、NaCl 0.1g/リットル
めっき条件:電流密度 6A/dm2、温度 40℃
[Pdめっき]
めっき液:Pd(NH3)2Cl2 45g/リットル、NH4OH 90ミリリットル/リットル、(NH4)2SO4 50g/リットル
めっき条件:電流密度 1A/dm2、温度 30℃
[Rhめっき]
めっき液:RHODEX(商品名、日本エレクトロプレイティングエンジニヤース(株)製)
めっき条件:1.3A/dm2、温度 50℃
[Agめっき]
めっき液:AgCN 50g/リットル、KCN 100g/リットル、K2CO3 30g/リットル
めっき条件:電流密度 1A/dm2、温度 30℃
(従来例2の反射層)
[Rhめっき]
めっき液:RHODEX(商品名、日本エレクトロプレイティングエンジニヤース(株)製)
めっき条件:1.3A/dm2、温度 50℃
[Inめっき]
めっき液:InCl3 45 g/リットル、KCN 150g/リットル、KOH 35g/リットル、デキストリン 35g/リットル
めっき条件:電流密度 2A/dm2、温度 20℃
[Snめっき]
めっき液:SnSO4 80g/リットル、H2SO4 80g/リットル
めっき条件:電流密度 2A/dm2、温度 30℃
(従来例3の最表層)
[Auめっき]
めっき液:KAu(CN)2 14.6g/リットル、C6H8O7 150g/リットル、K2C6H4O7 180g/リットル
めっき条件:電流密度 1A/dm2、温度 40℃
(1)反射率:分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ製、商品名:U−4100)において、全反射率を400nm〜800nmにかけて連続測定を実施した。このうち、400nm、600nm、および800nmにおける反射率(%)を表2に示す。ここで、波長400nm〜800nmの反射率が70%以上を実用レベルと判断した。なお、連続測定の結果から、各波長間で反射率が急落することはないことを確認している。
(2)硫化速度:硫化試験(JIS H 8502記載)、H2S 3ppm、24h後の反射率変化について評価を実施し、その代表値として波長600nmにおける反射率を示した。その後、その反射率が初期の反射率に対する低下の割合を算出し、「硫化速度=(波長600nmにおける初期の反射率−硫化試験後の反射率)/24時間」として示した。その結果を表2に示す。ここで、従来例1の最表層が銀皮膜のみの場合の反射率低下速度(硫化速度=2.92%/時間)を基準とし、その半分以下である「1.46%/時間」以下であることが必須条件とすることで、従来銀皮膜品と比較して硫化速度が半分以下であり、長期信頼性に優れると判断した。
(3)ワイヤボンディング試験(ワイヤボンディング性):下記のワイヤボンディング条件において、10点テスト後に接合強度測定を行い、その(強度−3σ)の値が29.4mN以上のものを「優」と判定して表に「◎」印を付し、29.4mN未満であるがエラー無く接合可能なものを「良」と判定して表に「○」印を付し、1点でもエラーが発生したりまったく接合しなかったりしたものを「不可」と判定して表に「×」印を付して、それぞれ表2に示した。
ワイヤボンダ:SWB−FA−CUB−10、(株)新川製
ワイヤ:25μm 金ワイヤ
ボンディング温度:150℃
キャピラリ:1570−15−437GM
1st条件:10msec.、45Bit、45g
2nd条件:10msec.、100Bit、130g
実用レベルとしては「○」以上の評価結果として判断した。
(4)半田濡れ試験(半田濡れ性):上記硫化試験を24時間実施後に、ソルダーチェッカー(SAT−5100(商品名、(株)レスカ製))を用いて半田濡れ時間を評価した。測定条件詳細は以下の条件とし、半田濡れ時間が3秒未満であると「優」であると判定し、「◎」印を付し、3秒以上10秒以下であるものを「良」であると判定し、「○」印を付し、10秒浸漬しても接合しなかったものを「不可」と判定し「×」印を付して、それぞれ表2に示した。
半田の種類:Sn−3Ag−0.5Cu
温度:250℃
試験片サイズ:10mm×30mm
フラックス:イソプロピルアルコール−25%ロジン
浸漬速度:25mm/sec.
浸漬時間:10秒
浸漬深さ:10mm
実用レベルとしては「○」以上の評価結果として判断した。
表2に示される結果から明らかなように、例えばC18045、C19400等の銅又は銅合金上に銀−インジウム合金、銀−錫合金、銀−インジウム−錫合金のうちいずれかからなる反射層が形成されており、該反射層上にインジウムまたは錫または両者の酸化物層が厚さ0.0004〜0.0008μmで最表層に形成されているものは、400nmから800nmにおける反射率が、硫化試験前の状態で全領域が70%以上を維持するとともに、硫化試験後においても従来銀皮膜の硫化速度の半分以下となっていることが分かる。また、ワイヤボンディング性及び半田濡れ性も優れている様子が分かる。
なお、発明例1においては、酸化物層厚が薄い下限値であるため、硫化速度がやや速くワイヤボンディング性及び半田濡れ性が「可」のレベルとなっている。
また、耐食皮膜成分として金を施した従来例3では、酸化膜が最表層に形成されておらず、かつ加熱により下層の銀が最表層に到達してしまい、硫化変色を起こした。このため、波長600nmにおいて反射率が低下し、硫化速度は本発明例ほど効果を奏していないことが分かる。また従来例3では、硫化変色によりワイヤボンディング性および半田濡れ性を確保することができなかった。
さらに、反射層としてロジウムめっきを施し、耐食皮膜と最表層を設けなかった従来例2では、反射率は初期及び硫化試験後において400nm〜800nmの全領域で反射率70%以上を確保でき、長期信頼性に優れることが分かるが、ワイヤボンディング性に劣り、半田濡れ性が確保できないことがわかった。
酸化膜が本発明における上限値を上回る厚さの比較例2では、初期の反射率が波長400nmにおいて70%を下回り、反射層の反射率を十分生かせないことがわかる。また、酸化膜が厚く形成されているため硫化速度は優れているが、逆にワイヤボンディング性及び半田濡れ性が確保できなくなってしまった。
2 反射層
3 耐食皮膜成分からなる酸化物層
4 中間層
5 光半導体チップ
6 ワイヤボンディング
7 モールド樹脂
8 封止樹脂
9 プレス破面での基材露出部
12 初期反射層
13 耐食成分層
Claims (5)
- 基体上に銀−インジウム合金、銀−錫合金、又は銀−インジウム−錫合金からなる反射層が形成されており、該反射層上にインジウム及び/又は錫の酸化物層が厚さ0.0004〜0.0008μmで最表層に形成されていることを特徴とする、光半導体装置用リードフレーム。
- 前記基体と前記反射層との間に、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、銅、銅合金、パラジウム、パラジウム合金、ロジウム及びロジウム合金からなる群から選ばれた金属又は合金からなる中間層が少なくとも1層形成されていることを特徴とする、請求項1記載の光半導体装置用リードフレーム。
- 基体上に銀からなる反射層を湿式めっき法で形成し、該反射層上にインジウムまたは錫からなる耐食成分層を1層以上、湿式めっき法で形成後、光半導体装置を製造する工程を経た後に、該耐食成分層を該反射層内に拡散させ、該耐食成分の酸化物層を厚さ0.0004〜0.0008μmで最表層に形成させることを特徴とする、光半導体装置用リードフレームの製造方法。
- 初期に形成された該耐食成分層の厚さは、0.0025〜0.008μmであることを特徴とする、請求項3記載の光半導体装置用リードフレームの製造方法。
- 前記基体と前記反射層との間に、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、銅、銅合金、パラジウム、パラジウム合金、ロジウム及びロジウム合金からなる群から選ばれた金属又は合金からなる中間層を少なくとも1層、湿式めっき法により形成することを特徴とする、請求項3または4記載の光半導体装置用リードフレームの製造方法。
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