JP5767042B2 - 金属または合金の製造装置 - Google Patents
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Description
例えば、Nd−Fe−B系磁石用合金は、単ロール法により鋳造条件を最適化することで、所望の配向、大きさを有するデンドライトを成長させた結晶組織としている。(特許文献1)また、単ロール法では、ロール面側の結晶組織とフリー面側の結晶組織に大きな差が出るとの理由から双ロール法により行うことが提案されている。(特許文献2)さらに、結晶を一方向に揃えることを目的に単ロール法で急冷固化したリボンにロール圧延を行うことが提案されている。(特許文献3)
金属または合金の結晶組織は、同じ金属または同じ組成の合金であっても鋳造の条件により大きく異なる。鋳造の条件としては、例えば、ロール法による場合、溶湯の温度、注湯量、注湯方法、ロールの材質、回転速度等が挙げられる。したがって、所望する結晶組織を有する金属または合金を得ようとする場合、これらのパラメーターを制御して最適な条件を見出すことが必要であり、工業的に量産しようとする場合には最適な条件で安定して操業可能な設備設計が求められる。
したがって、特許文献2および3の装置および方法により微細な結晶や特定方向に配向した結晶を含有する金属または合金を一定の品質で製造することは著しく困難であった。
11:第1のチャンバー
12:第2のチャンバー
11a,12a;シャッター
13:溶解炉
14:タンディッシュ
15:回転ロール
16:粉砕板
17a:薄帯状の合金
17b:粉砕された合金
18a,18b,18:収納容器
19:ふた
20:冷却ロールシステム
21:第一の冷却ロール
22:第二の冷却ロール
23:台座
24:第一のロール架台
25:第一の軸受け
26:第二のロール架台
27:第二の軸受け
28:架台固定具
29:フレーム
30:第一のガイド
31:第二のガイド
本発明の製造装置は、溶解炉、タンディッシュ、第一の冷却ロール及び第二の冷却ロールを少なくとも備えるものである。
前記溶解炉としては、原料を溶融するための抵抗加熱もしくは高周波加熱等の加熱手段を有し、坩堝等を用いた通常の加熱容器に、例えば、所定軸において前記加熱容器が傾倒し、内部の原料溶融物を流出させることができる傾倒手段を有する溶解炉が使用できる。前記溶解炉は、原料溶融物を一定流量で流出させうることが好ましい。
前記タンディッシュは、溶解炉から供給される原料溶融物を整流し、一定の流速、流量で第一の冷却ロール上へ供給する機能を有する。このタンディッシュとしては、溶解炉から供給される原料溶融物が流通し、第一の冷却ロールに供給されるまでの間に原料溶融物の流れを第一の冷却ロールの幅方向に広げる底面部と、この底面部の両側からの原料溶融物の流出を防止する側面部とを備えた形状のタンディッシュの他、底部に1つもしくは複数の流通口を有し、かつ上部が開放された形状の容器であって、溶解炉から供給される原料溶融物を一旦貯留した後、底部の流通口より流通するタンディッシュ等が挙げられる。タンディッシュは、第二の冷却ロールと同様に第一の冷却ロールに対し、任意の位置に配置できる。タンディッシュを配置する位置を変更することで、第一の冷却ロールへの原料溶融物の供給条件および第一の冷却ロールにおける冷却・凝固の条件を制御することが可能である。
前記冷却手段は、例えば、回転可能な管であり、管壁内部又は管壁外側に、冷媒が流通する冷却機構を備えた管状冷却器等が挙げられる。該管状冷却器の内壁には、管の一端から他端に対して複数のフィンを設け、金属または合金が混合され、一様に容器内壁に接するようにすることが好ましい。
前記冷却手段は、上述の冷却器に限定されるものではなく、例えば、冷却ガス(不活性ガス)を直接金属または合金に供給して冷却する装置、強制冷却手段を備えていない自然冷却しうる装置であっても良い。
本発明の装置の外へ金属または合金を搬出する出口に、更に他のチャンバーを設けることもできる。該他のチャンバーには、前記出口を連通・遮断しうる連通・遮断手段と、チャンバー内部を不活性ガス雰囲気及び減圧下に保持しうる装置を設けることができる。前記他のチャンバーを設けることにより、本発明の装置内に大気を導入することなく、得られた金属または合金を装置外へ搬出することができる。
まず、溶解炉にて希土類金属含有合金原料を溶融する。希土類金属含有合金原料は、用途に応じて公知の組成に基づいて適宜選択することができる。合金原料は、各種金属の混合物であっても、また母合金であっても良い。溶融条件は公知の条件に基づいて合金組成等に応じて適宜選択することができる。
次いで、溶解炉から出湯する原料溶融物は、タンディッシュを介して第一の冷却ロールに連続的に供給され、第一の冷却ロール上で冷却・凝固することにより中間凝固物を得る。例えば、原料溶融物を薄帯状又は薄片状に固化することによって中間凝固物を得ることができる。
第一の冷却ロールによる冷却・凝固の条件は、目的の希土類金属含有合金に応じて公知の条件等を勘案して適宜選択できる。通常、冷却速度100〜10000℃/秒程度で実施できる。
圧延の条件は、目的の希土類含有合金に応じて公知の条件等を勘案して適宜選択できる。中間凝固物の全体が固化した状態(もしくは粒界のみが液相の状態)であれば、第二の冷却ロールにより第一の冷却ロールとの間で圧延を行うことで微細な結晶組織や特定方向に配向した結晶組織を有する合金が得られる。この場合、第一の冷却ロール上での中間凝固物の厚みに対し、適宜、第二の冷却ロールの位置と第一の冷却ロールと第二の冷却ロール間の間隔を適宜選択することで、圧延時の中間凝固物の温度、圧下率が決まり、所望の結晶組織有する合金を得ることができる。
破砕して得られる合金の表面温度は、通常、700℃以上、好ましくは900℃以上程度である。
希土類金属含有合金の製造は、すべての工程を不活性ガス雰囲気中で行う。前記方法によると常温程度まで冷却された合金を、酸化の原因となる大気中に一度も暴露せずに得ることができる。
前記第一の冷却ロール上で生成した結晶核から成長したデンドライトと第二の冷却ロール上で生成した結晶核から成長したデンドライトが合金中心部に等軸晶をほとんど生成することなく、両デンドライトが接合する結晶組織有するNd−Fe−B系磁石用合金の場合、従来の合金と比較して、厚み、デンドライト間隔、元素分布の均一化した結晶組織有する合金が得られ、このような合金を用いてNd−Fe−B系磁石を作製すると焼結時に異常粒成長が生じることなく磁石が得られるため、保磁力が向上する。したがって、Dy、Tb等の重希土類元素の使用量を大幅に削減できる。
前記合金全体が微細な等軸晶からなる結晶組織有するNd−Fe−B系磁石用合金を用いてNd−Fe−B系磁石を作製すると微細な結晶粒からなる磁石が得られるため、保磁力が向上する。したがって、Dy、Tb等の重希土類元素の使用量を大幅に削減できる。 前記圧延を行うことにより微細な結晶組織有するNd−Fe−B系磁石用合金を用いてNd−Fe−B系磁石を作製すると微細な結晶粒からなる磁石が得られるため、保磁力が向上する。したがって、Dy、Tb等の重希土類元素の使用量を大幅に削減できる。
前述の本発明の装置を用いて、Nd−Fe−B系磁石用合金を製造した。
ネオジム33.00質量%、硼素1.00質量%、アルミニウム0.05質量%、残部鉄で、合計重量が60kgとなるようにそれぞれの原料を秤量し、溶解炉13で溶解した後、1550℃で出湯し、第一の冷却ロール21上にタンディッシュ14を介して供給し連続的に凝固させた。タンディッシュ14は第一の冷却ロール21の頂上から第一の冷却ロール21の回転方向に対して後方45°に配置した。第一の冷却ロール21はロール径が300mmで、周速度1.57m/秒とした。予備実験として、第2の冷却ロール22を第一の冷却ロールに隣接させず(使用せず)に鋳造を行ったところ得られる合金(本発明の中間凝固物に相当)の厚みは0.8mmであった。次いで、第二の冷却ロール22を、第一の冷却ロール21の頂上に隣接するように配置し、第一の冷却ロール21と第二の冷却ロール22の間隔は0.8mmとした。両ロール間にかかった最大荷重は1.1tであった。得られた合金の断面を光学顕微鏡により観察した。顕微鏡観察像を図3に示す。
実験例1において、タンディッシュ14を第一の冷却ロール21の頂上から第一の冷却ロール21の回転方向に対して後方10°に配置し、第一の冷却ロール21と第二の冷却ロール22の間隔を0.2mmとした以外は実験例1と同様にして行った。両ロール間にかかった最大荷重は2.3tであった。中間凝固物の厚みは0.5mmであった。得られた合金の断面を光学顕微鏡により観察した。顕微鏡観察像を図4に示す。
実験例1において、第一の冷却ロール21と第二の冷却ロール22の間隔を0.2mmとし、両ロール間にかかった最大荷重は4.9tであった以外は実験例1と同様にして行った。中間凝固物の厚みは0.5mmであった。得られた合金の断面を光学顕微鏡により観察した。顕微鏡観察像を図5に示す。
実験例2の合金は、粒径が0.01〜2μm程度の結晶粒を有する結晶組織を有していた。
実験例3の合金は、粒径が0.01〜5μm程度の結晶粒を有する結晶組織を有していた。
Claims (9)
- 金属または合金原料を溶解し、原料溶融物とする溶解炉と、該原料溶融物を第一の冷却ロールに供給するためのタンディッシュと、該タンディッシュから供給される原料溶融物の冷却・凝固を行い、中間凝固物を得るための第一の冷却ロールと、該中間凝固物を冷却・凝固および/または圧延し、金属または合金を得るための第二の冷却ロールを備えた金属または合金の製造装置であって、第一の冷却ロールと第二の冷却ロールは互いに隣接し、第二の冷却ロールは、第一の冷却ロールに対して回転軸が略平行となるように、回転軸方向に対して上下方向及び左右方向に可動式に配置された金属または合金の製造装置。
- 第一の冷却ロールと第二の冷却ロールの間隔が0(0を含まない)〜3mmに調整可能であることを特徴とする請求項1記載の金属または合金の製造装置。
- 第一の冷却ロール上のタンディッシュより原料溶融物が供給される位置から、第一の冷却ロールの回転方向に対し、第一の冷却ロール上で0(0を含まない)〜180°の位置に第二の冷却ロールが隣接するように配置可能であることを特徴とする請求項1または2記載の金属または合金の製造装置。
- タンディッシュが第一の冷却ロールの頂上もしくは回転方向に対し回転軸の後方かつ、回転軸の上方で第一の冷却ロールに隣接するように配置されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属または合金の製造装置。
- 第二の冷却ロールは第一の冷却ロールの回転方向に対し回転軸の前方かつ、回転軸の上方に配置されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属または合金の製造装置。
- 得られた金属または合金を破砕するための破砕機または破砕板を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属または合金の製造装置。
- 得られた金属または合金を所望する温度に昇温または保持する加熱・保持手段を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属または合金の製造装置。
- 得られた金属または合金を所望する温度に冷却する冷却手段を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の金属または合金の製造装置。
- 第一の冷却ロールと第二の冷却ロール間の耐荷重が100t以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の金属または合金の製造装置。
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