JP5766535B2 - 墜落防止装置 - Google Patents
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Description
本発明は、上記した問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、安全器が下向きの荷重を受け止める力を大きくして、大きな下向きの荷重に対しても安全器が下方に移動することを抑制することである。
まず、第1の発明は、作業者が装備した安全帯を取り付けることによって、作業者の高層建造物からの墜落を防止する墜落防止装置である。この墜落防止装置は、高層建造物にこの高層建造物の高さ方向に連続して長尺に設けられ、作業者の体重を支えることができる剛性を備えた剛性レールと、剛性レールに結合され、この剛性レールを上下方向に走行することができる安全器と、を備えている。安全器は、安全帯を取り付けるための連結部材と、剛性レールを走行するためのローラー部材と、上記走行を停止させるためのブレーキ部材と、を備えている。連結部材は、この連結部材を上向きに引き上げる力がなくなったときに、下方向に所定量移動する構成とされている。ブレーキ部材は、連結部材の上記移動に連動して、ブレーキ部材が剛性レールを押圧する押圧位置に回動することで、安全器の走行を停止させる構成とされている。ブレーキ部材には、このブレーキ部材が上記押圧位置に位置して連結部材に下向きの荷重が加わったときに剛性レールに線状に食い込むように当接する尖端を備えた第1の尖端部と、上記連結部材に更なる下向きの荷重が加わってブレーキ部材が回動すると第1の尖端部よりも下側で剛性レールに線状に食い込むように当接する尖端を備えた第2の尖端部と、第2の尖端部の線状の尖端が剛性レールの表面に線状に食い込むときに第2の尖端部よりも下側で剛性レールの表面に面接触する面接触部と、が設けられており、前記面接触部により前記ブレーキ部材の回動が停止される。
この第1の発明によれば、ブレーキ部材は、作業者の滑落に伴う下向きの荷重に対して、第1の尖端部の線状の食い込みによる剛性レールの変形を利用して安全器の下方への移動を停止させる。また、連結部材にさらに大きな下向きの荷重がかかってブレーキ部材が回動すると、第2の尖端部が剛性レールに線状に食い込み、面接触部が剛性レールの表面に面接触により当接して安全器の下方への移動を引き止める力が増大し、安全器の下方への移動を抑制することができる。このとき、第2の尖端部および面接触部は剛性レールに上下方向に離間した箇所で接触する。これにより、第2の尖端部の食い込み箇所および面接触部の接触箇所が、剛性レールの上下に離間して分散し、上記下向きの荷重に対して安全器の下方への移動を引き止める力の総和を大きい状態に維持することができる。
この第2の発明によれば、面接触部から回動軸の中心までの最短の距離が第一の尖端部又は第二の尖端部から回動軸の中心までの距離よりも長く設定されることにより、第1の尖端部又は第2の尖端部の食い込み箇所および面接触部の接触箇所が剛性レールの上下に離間して分散し、上記下向きの荷重に対して安全器の下方への移動を引き止める力の総和を大きい状態に維持することができる。
この第3の発明によれば、各尖端部および接触部は、上記下向きの荷重を、剛性レールに上下方向および水平方向に広範囲に分散した複数箇所で当接して受け止める。このため、上記下向きの荷重を受け止めているときにかかる水平方向の荷重により安全器が回動して、各尖端部および接触部の剛性レールへの当接箇所のうち安全器の回動方向とは反対側の当接箇所が浮き上がっても、安全器の少なくとも回動方向側の複数の当接箇所により剛性レールの保持状態を維持して安全器の下方への移動を抑制することができる。
〈第1の実施形態〉
始めに、第1の実施形態に係る墜落防止装置1の構成について、図1ないし図6を用いて説明する。この墜落防止装置1は、図1に示すように、作業者Hが装備した安全帯H1を取り付けることによって、作業者Hの高層建造物Bからの墜落を防止するためのものである。
墜落防止装置1は、高層建造物Bにこの高層建造物Bの高さ方向(すなわち上下方向)に連続して長尺に設けられた剛性レール90と、この剛性レール90に嵌合し、安全帯H1が取り付けられた状態で剛性レール90を上下方向に走行する複数個の安全器10と、を備えている。剛性レール90および各安全器10は、作業者Hを支えることができる剛性および強度を備えるように形成されている。そして、墜落防止装置1は、安全器10を上向きに引き上げる力がなくなると、安全器10の走行を停止させる。これにより、墜落防止装置1は、作業者Hが高層建造物Bから滑落した際に作業者Hの墜落を阻止するようになっている。
安全器10は、その各ローラー部材13を剛性レール90の裏面92に内接させ、その本体部14を剛性レール90に形成された溝部93(図4参照)から剛性レール90の角筒の外側に向けて突出させた構成となっている。これにより、安全器10は、剛性レール90に嵌合した状態で剛性レール90に沿って(すなわち、上下方向に)走行するようになる。
なお、本体部14には、図4に示すように、複数個(本実施形態では2個)の滑車14Bが嵌め込まれて、本体部14と各案内部94との間の摩擦が低減されている。
上記長孔12Aは、図2および図3に示すように、上下方向に長尺に形成されて、その内部に本体部14に固定された摺動軸14Aが位置するように構成されている。これにより、連結部材12は、連結部材12を上向きに引き上げる力がかかったときには上方向に、連結部材12を上向きに引き上げる力がなくなったときには下方向に、本体部14に対して相対的に摺動するようになっている。
ここで、上記摺動軸14Aは、ステンレス等の強度の高い金属に覆われた構成とされて、連結部材12の上記摺動に対する耐久性が高められている。
上記軸受け孔12Eは、ブレーキ部材11のジョイント11Dを介して連結部材12とブレーキ部材11とを連結している。これにより、上記連結部材12の上下方向の摺動をブレーキ部材11に伝えて、ブレーキ部材11を連結部材12の摺動と連動して作動させることができる。
貫通孔12Cには、上述した剛性レール90から離間する側かつ上側(図2および図3で見て右上側)の縁に隅部12Dが形成されている。隅部12Dは、上記ランヤードH2が当接した状態で収まる形状の曲面として形成されている。ここで、隅部12Dに対して下側に位置する隣接面は、上側を向いて傾いた(図2の鉛直線Vを参照。)平面状に形成されることが望ましい。
隅部12Dは、図3に示すように、安全帯H1および安全帯H1に連結された安全器10が上方に引き上げられる際に、安全器10のランヤードH2が安定して位置するように形成されている。これにより、隅部12Dは、安全帯H1および安全器10を上方に引き上げる際に、意に反して安全帯H1のランヤードH2が貫通孔12C内で位置ずれしてその連結部材12を引き上げる力が弱められることを抑制するようになっている。すなわち、貫通孔12Cに隅部12Dが形成されることにより、意に反して連結部材12が本体部14に対して摺動し、ブレーキ部材11が誤作動してしまうことを抑制することができる。
ここで、上述した長孔12Aおよび摺動軸14Aは、図2ないし図5に示すように、連結部材12に設けられたカバー12Bに覆われている。これにより、長孔12Aの上記隙間への異物の侵入を抑制して、ブレーキ部材11の作動が妨げられることを抑制することができる。
上記カバー12Bは、図4に示すように、連結部材12に複数(本実施形態では2つ、図2参照)のビス12Gおよびビス孔12Fを介して着脱可能に取り付けられている。これにより、カバー12Bを取り外して上述した摺動軸14Aのメンテナンスを行うことができる。
ブレーキ部材11には、面接触部11Bと、第1の尖端部11Aと、第2の尖端部11Gとがそれぞれ1対ずつ突出して形成されている。ここで、面接触部11Bが本発明における「接触部」に相当する。
ブレーキ部材11は、図2に示すように、連結部材12を上向きに引き上げる力がなくなったときに、上記各第1の尖端部11Aがその尖端で剛性レール90を押圧する押圧位置に回動するようになっている。すなわち、各第1の尖端部11Aは、ブレーキ部材11にかかる上述した付勢力により、剛性レール90の表面91をこの剛性レール90の長手方向に直交する向き(図4で見て左右方向)で線状に押圧するようになっている。言い換えると、上述した各第1の尖端部11Aは、上述した連結部材12の摺動に連動して、剛性レール90の表面91に食い込むように当接するようになっている。これにより、ブレーキ部材11は、連結部材12を上向きに引き上げる力がなくなったときに、安全器10の走行を停止させるようになっている。
なお、ブレーキ部材11は、図2および図3に示すように、上述した各状態においてその各面接触部11Bおよび各第2の尖端部11Gを剛性レール90に接触させないようになっている。
続いて、安全帯H1のランヤードH2から連結部材12に作業者Hの落下による大きな下向きの荷重が伝えられると、図5に示すように、この下向きの荷重により連結部材12がさらに下方向に摺動する。この摺動により、上記押圧位置(図2参照)に位置したブレーキ部材11は、その回動軸11Cを中心としてその各尖端部11A、11Gおよび各面接触部11Bを上向きに動かす向き(図5で見て時計回り)に回動し、各第1の尖端部11Aを剛性レール90の表面91に対して強く押圧させる。
ここで、各第1の尖端部11Aは、剛性レール90よりも硬度が大きくなるように形成されて、上記押圧に対して剛性レール90にその長手方向に直交する向き(図4で見て左右方向)に線状に食い込むようになっている。これにより、各第1の尖端部11Aは、作業者Hの落下による下向きの荷重により剛性レール90の表面91をわずかに切削するようになっている。すなわち、ブレーキ部材11は、作業者Hの落下による荷重に対して、各第1の尖端部11Aによる剛性レール90の切削を用いて安全器10の下方への移動を停止させるようになっている。
各面接触部11Bは、図5に示すように、剛性レール90の表面91に各第2の尖端部11Gよりも下側で面接触するように構成されている。これにより、各面接触部11Bは、各尖端部11Aによる剛性レール90の変形の影響を受けることなく、剛性レール90の表面91に面接触することができる。さらに、各第2の尖端部11Gの食い込み箇所および各面接触部11Bの接触箇所が、剛性レール90の上下に離間して分散し、上述した下向きの荷重に対して安全器10の下方への移動を引き止める力の総和を大きい状態に維持することができる。
なお、各面接触部11Bから上述した回動軸11Cの中心までの最短の距離Lは、各尖端部11A、11Gの各尖端から回動軸11Cの中心までの距離W1、W2よりも長く設定されている。
ここで、ブレーキ部材11には、図2ないし図6に示すように、その回動軸11Cとジョイント11Dとの間にストッパー11Fが上側に突出して設けられている。このストッパー11Fは、その上端部が平板状に形成されて(図4参照)その板面を本体部14の底面に沿う向き(図5で見て右上方向)に向けており、上側に隣接した安全器10の本体部14に下側から当接して、この安全器10を受け止めるようになっている(図5参照)。これにより、図5に示すように、複数個の安全器10が上下に並んだ場合に、上側の安全器10の連結部材12が下側の安全器10の連結部材12によって押し上げられないようにして、上側の安全器10の停止状態が下側の安全器10により解除されることを抑制することができる。
続いて、第2の実施形態に係る墜落防止装置2の構成について、図7ないし図10を用いて説明する。第2の実施形態の墜落防止装置2は、第1の実施形態における安全器10の代わりに安全器20を用いたものである。したがって、上記第1の実施形態に係る安全器10の各構成と共通する構成については、その各構成に付した符号においてその十の位の数字を「2」に置き換えた符号を付して対応させ、その詳細な説明を省略する。また、第2の実施形態における剛性レールの各構成は、第1の実施形態における剛性レール90の各構成と共通しているので、この剛性レール90の各構成と同じ符号を付して対応させ、その詳細な説明を省略する。
ここで、図9に示すように、各接触爪21Bの尖端からブレーキ部材21の回動軸21Cの中心までの距離lは、各尖端部21A、21Gの各尖端から回動軸21Cの中心までの距離W1、W2よりも長く設定されている。また、ブレーキ部材21は、作業者Hの落下による下向きの荷重により各尖端部21Aを剛性レール90の表面91に食い込ませる際に、同時に上記表面91に上述した各接触爪21Bおよび1対の第2の尖端部21Gを強く押圧させるようになっている。このため、各接触爪21Bおよび各第2の尖端部21Gは、上記押圧により剛性レール90にその長手方向に直交する向き(図10で見て左右方向)に線状に食い込むようになっている。すなわち、ブレーキ部材21は、安全器20が停止しているときに加わる下向きの荷重を、各第2の尖端部21Gおよび各接触爪21Bの両方を剛性レール90に追加して食い込ませることで受け止めて安全器20の下方への移動を停止させる。これにより、安全器20の下方への移動を引き止める力をより大きくすることができる。
また、各尖端部21A、21Gおよび各接触爪21Bは、剛性レール90の長手方向に交わる向きに並んで安全器20の幅方向(図4で見て左右方向)に対称に配設されている(図示省略)。そして、各尖端部21A、21Gおよび各接触爪21Bは、上述した下向きの荷重を、剛性レール90に上下方向および水平方向に広範囲に分散した複数箇所で当接して受け止めるようになっている。これにより、上記下向きの荷重を受け止めているときにかかる水平方向の荷重により安全器20が回動して、各尖端部21A、21Gおよび各接触爪21Bの剛性レール90への当接箇所のうち安全器20の回動方向とは反対側の当接箇所が浮き上がっても、安全器20の少なくとも回動方向側の複数の当接箇所により剛性レール90の保持状態を維持して安全器20の下方への移動を抑制することができる。
また、ブレーキ部材の構成は上記実施形態の構成に限定されず、例えば各尖端部および接触部を追加して設けることができる。また、剛性レールおよびローラー部材の構成は上記実施形態の構成に限定されず、安全器を走行させるための構成およびその具体的な形状は適宜設定することができる。また、墜落防止装置の構成は上記実施形態の構成に限定されず、安全器の各部材を連結および連動させる構成および剛性レールの具体的な取り付け構造は適宜設定することができる。
10 安全器
11 ブレーキ部材
11A 第1の尖端部
11B 面接触部(接触部)
11C 回動軸
11D ジョイント
11E バネ
11F ストッパー
11G 第2の尖端部
12 連結部材
12A 長孔
12B カバー
12C 貫通孔
12D 隅部
12E 軸受け孔
12F ビス孔
12G ビス
13 ローラー部材
13A 車軸
14 本体部
14A 摺動軸
14B 滑車
2 墜落防止装置
20 安全器
21 ブレーキ部材
21A 第1の尖端部
21B 接触爪(接触部)
21C 回動軸
21D ジョイント
21E バネ
21F ストッパー
21G 第2の尖端部
22 連結部材
22A 長孔
22B カバー
22C 貫通孔
22D 隅部
22E 軸受け孔
22F ビス孔
22G ビス
22H 第2貫通孔
23 ローラー部材
23A 車軸
24 本体部
24A 摺動軸
24B 滑車
90 剛性レール
91 表面
92 裏面
93 溝部
94 案内部
95 レールジョイント
B 高層建造物
H 作業者
H1 安全帯
H2 ランヤード
H3 ランヤード
L 距離
l 距離
V 鉛直線
W1 距離
W2 距離
Claims (3)
- 作業者が装備した安全帯を取り付けることによって、前記作業者の高層建造物からの墜落を防止する墜落防止装置であって、
前記高層建造物に当該高層建造物の高さ方向に連続して長尺に設けられ、前記作業者の体重を支えることができる剛性を備えた剛性レールと、
前記剛性レールに結合され、当該剛性レールを上下方向に走行することができる安全器と、を備え、
前記安全器は、前記安全帯を取り付けるための連結部材と、前記剛性レールを走行するためのローラー部材と、前記走行を停止させるためのブレーキ部材と、を備え、
前記連結部材は、当該連結部材を上向きに引き上げる力がなくなったときに、下方向に所定量移動する構成とされ、
前記ブレーキ部材は、前記連結部材の前記移動に連動して、前記ブレーキ部材が前記剛性レールを押圧する押圧位置に回動することで、前記安全器の前記走行を停止させる構成とされ、
前記ブレーキ部材には、当該ブレーキ部材が前記押圧位置に位置して前記連結部材に下向きの荷重が加わったときに前記剛性レールに線状に食い込むように当接する尖端を備えた第1の尖端部と、前記連結部材に更なる下向きの荷重が加わって前記ブレーキ部材が回動すると前記第1の尖端部よりも下側で前記剛性レールに線状に食い込むように当接する尖端を備えた第2の尖端部と、当該第2の尖端部の線状の尖端が前記剛性レールの表面に線状に食い込むときに前記第2の尖端部よりも下側で前記剛性レールの表面に面接触する面接触部と、が設けられており、前記面接触部により前記ブレーキ部材の回動が停止されることを特徴とする墜落防止装置。 - 請求項1に記載の墜落防止装置であって、
前記面接触部から回動軸の中心までの最短の距離は、前記第一の尖端部又は前記第二の尖端部から回動軸の中心までの距離よりも長く設定されていることを特徴とする墜落防止装置。 - 請求項1または請求項2に記載の墜落防止装置であって、
前記ブレーキ部材は、前記連結部材を挟み込むように当該連結部材の両側にそれぞれ設けられ、前記各尖端部および前記面接触部は、前記剛性レールの長手方向に交わる向きに並んだ複数箇所で当該剛性レールに当接することを特徴とする墜落防止装置。
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