JP5765841B2 - 核酸マイクロアレイの品質検査方法 - Google Patents

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Description

本発明は、核酸マイクロアレイの使用時に、全てのスポットにハイブリダイズしうる核酸である異常検出核酸を用いることで、核酸マイクロアレイ上に存在するスポットのうちハイブリダイズ結果の評価に用いるには不適当なスポットである異常スポットを検出する方法に関する。
比較ゲノムハイブリダイゼーション(Comparative Genomic Hybridization; CGH)法は、全染色体を対象にしてゲノムコピー数異常を短時間で検出できる技術である(非特許文献1)。しかし、このCGH法ではその検出解像度に問題があり、一般に5〜10Mb以上にわたる大きな領域で染色体異常が起こっていないと検出ができなかった(非特許化文献2)。
これに対して、数10kb〜数Mbレベルで起きたゲノム構造異常を検出できるツールとして新しく登場したのが、アレイCGH法である(非特許文献3、4)。
アレイCGH法は、従来のCGH法における染色体標本の代わりに、多数のクローン化したDNA断片をガラス等の基板上に高密度でアレイ化したマイクロアレイを使用して、CGH解析を行うものである。この手法により、ゲノムのコピー数等の異常を網羅的かつ高解像度で検出することができ、癌等の疾患の原因となっているゲノムの構造異常を同定することが可能になる。
A. Kallioniemi et al., Science, 258, 818−821 (1992). 稲澤譲治, 水口真希, 臨床検査, 49, 497−502 (2005). D. Pinkel et. al., Nat. Genet., 20, 207−211 (1998) 井本逸勢, 稲澤譲治, 細胞工学, 23, 355−361 (2004).
化学合成できないcDNAやBACクローン等の長鎖核酸をプローブとして用いた核酸マイクロアレイは、インクジェット方式やピンアレイ方式等によってプローブ核酸を基板上にスポッティングすることにより製造されている。このような方法で製造された核酸マイクロアレイは、スポッティングエラー等によるスポット量のバラツキが生じやすく、測定対象となる遺伝子に由来する蛍光シグナルに誤差が生じる場合があった。
一方、核酸マイクロアレイは、ある一定数ごとに核酸マイクロアレイを取り出し、標準試料などを用いて実際にハイブリダイゼーションを行い、その蛍光スポット形状や標識量値を検出することによって、品質検査が行われている。この品質検査は、主に核酸マイクロアレイを製造している製造者若しくは核酸マイクロアレイの供給者が行うものである。
別の品質検査方法としては、核酸マイクロアレイを染料等で染色する方法もある。例えば、Molecular Probe社のPARAGON (TM) DNAマイクロアレイ品質管理染色キット等が市販されている。この方法では、染色、スキャン、洗浄等の複雑な操作が必要となる問題がある。また、核酸マイクロアレイを染色後、核酸マイクロアレイを本来の目的で使用するために、核酸マイクロアレイから反応した染料を取り除く洗浄工程が必要であり、洗浄工程を行っても染料がアレイに残留する等の問題もある。
さらに、従来の核酸マイクロアレイに対する品質検査は、一般に抜きとり検査によって行われている。この方法では、すべての核酸マイクロアレイの検査を行っているわけではないので、使用者が使用する段階で不良品であることがわかる可能性がある。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、その目的は、核酸マイクロアレイ上のスポット量のバラツキ等によって生じる誤差を低減した核酸解析方法を提供することである。
また、本発明の別の目的は、従来の核酸マイクロアレイの品質検査方法より簡便な方法かつ確実に行うことができる核酸マイクロアレイの品質検査方法を提供することである。
さらに、標識異常検出核酸(標識補正核酸)を使用することで、各スポット単位で品質検査を行うことができる方法を見出し、これまでにない簡便な方法で品質検査が行える方法を新たに見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、前述の課題は、以下の手段により解決することができる。
〔1〕
プローブ核酸が固定化されたスポットを複数有する核酸マイクロアレイの品質検査方法であって、
前記核酸マイクロアレイにおける任意のスポット(X1m)は、標的配列(a)と相補的なプローブ配列(a’)と、該プローブ配列(a’)とは異なる配列(b’)とを含むプローブ核酸が固定化され、
以下の工程;
配列(b’)に結合可能な配列(b)を含み、標識された異常検出核酸(B)を該核酸マイクロアレイ上のスポット(X1m)に付与し、配列(b’)と配列(b)とをハイブリダイズする工程、
スポット(X1m)でハイブリダイズした異常検出核酸(B)の標識量値(Fc1m)を得る工程、
該標識量値(Fc1m)に基づいて、スポット(X1m)が、ハイブリダイゼーション能力が正常でない異常スポットであるか否か判定する工程を含む方法であって、
前記核酸マイクロアレイ上のスポット(X1i)と、それと同一の配列を有するプローブ核酸を含む品質検査用の核酸マイクロアレイ上のスポット(X2i)からなるスポット対がn対存在し、
スポット(X1i)及びスポット(X2i)からなるスポット対間において、スポット(X1i)における異常検出核酸(B)の標識量値(Fc1i)と、スポット(X2i)における異常検出核酸(B)の標識量値(Fc2i)との各比較値(Di)を、n対全てのスポット対について計算する工程、
n個の比較値(D1)〜(Dn)からそれらの代表値(A)を得る工程、及び
比較値(Dm)と代表値(A)との差の大きさによって、スポット(X1m)と、同一の配列を有するプローブ核酸が固定化されたスポット(X2m)とが異常スポット対であるか否か判定する工程
を含む方法。ここでnは2以上の整数である。iは整数を表し、1≦i≦nかつ1≦m≦nである。
〔2〕
〔1〕に記載の方法であって、
前記比較値(Di)が下記式(1)により算出されるものであり、
式(1) 比較値=Log{(標識量値(Fc1))/(標識量値(Fc2))}
代表値(A)が、n個の比較値(D1)〜(Dn)の平均値又はメディアン値であって、
比較値(Dm)と代表値(A)との差が、前記n個の比較値(D1)〜(Dn)の標準偏差値より大きい場合に、スポット(X1m)及びスポット(X2m)を含む該スポット対を異常スポット対と判定する、方法。
〔3〕
〔1〕に記載の方法であって、
前記比較値(Di)が下記式(1)により算出されるものであり、
式(1) 比較値=Log{(標識量値(Fc1))/(標識量値(Fc2))}
代表値(A)が、n個の比較値(D1)〜(Dn)の平均値又はメディアン値であって、
比較値(Dm)と代表値(A)との差が0.6以上の場合に、スポット(X1)及びスポット(X2)を含む該スポット対を異常スポット対と判定する、方法。
〔4〕
〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の方法であって、
同一の配列を有するプローブ核酸が固定化されているスポット対が複数存在し、
前記複数のスポット対のうち、前記核酸マイクロアレイ上のすべてのスポットが異常スポットと判断されても、少なくとも一つのスポットは異常スポットとして削除しない、方法。
〔5〕
〔4〕に記載の方法であって、
すべてのスポットが異常スポットと判断された場合に、異常スポットとして削除しないスポットが、前記複数のスポット対の比較値の中で代表値に最も近い比較値を示すスポット対に含まれる、方法。
〔6〕
〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の方法であって、
さらに、スポット(X1mとX2m)が異常スポット対であるか否か判定する前記工程において異常スポットと判定されたスポット(X1m)及び(X2m)以外のスポット(Xi)の標識量値(Fi)を下記式(2)により補正した補正標識量値(F’i)を得る工程を含む、方法。
式(2) 補正標識量値(F’i)=標識量値(Fi)×(標識量値(Fci)/標識量値(Fci))
(ただし、「標識量値(F1i)」とは、スポット(X1i)で前記標的配列(a)と相補的なプローブ配列(a’)とハイブリダイズした標的核酸(A)の標識量値のことである。)
〔7〕
〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の方法であって、スポットに固定化されるプローブ核酸がBAC DNA又はcDNAである、方法。
〔8〕
〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の方法であって、標識が蛍光によるものである、方法。
〔9〕
〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の方法であって、異常検出核酸(B)が、検体の核酸とは異なり、プローブ核酸上の配列に相補的な配列を持つ核酸である、方法。
〔10〕
〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の方法であって、異常検出核酸(B)が、正常細胞由来の核酸である、方法。
〔11〕
〔1〕〜〔10〕のいずれか一項に記載の方法であって、異常検出核酸(B)が、反復配列を含む核酸である、方法。
〔12〕
〔1〕〜〔11〕のいずれか一項に記載の方法であって、異常検出核酸(B)が、Cot−1DNAである、方法。
〔13〕
〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の方法であって、異常検出核酸(B)が、ベクター由来の核酸である、方法。
〔14〕
〔1〕〜〔13〕のいずれか一項に記載の方法であって、異常検出核酸(B)を、標的核酸1モルに対して、1モル以上使用する、方法。
〔15〕
〔1〕〜〔14〕のいずれか一項に記載の方法におけるデータ処理を行うためのプログラムであって、
スポット(X1i)及びスポット(X2i)からなるスポット対において、標識量値(Fc1i)と標識量値(Fc2i)との比較値(Di)を計算する手順、
n個の比較値(D1)〜(Dn)からそれらの代表値(A)を得る手順、
比較値(Dm)と代表値(A)との差の大きさによってスポット(X1m)が異常スポットであるか否か判定する手順、
を実行するためのプログラム。
本発明は、上記〔1〕〜〔15〕に係る発明であるが、以下、それ以外の事項(例えば、下記(1)〜(20))についても記載している。
(1)核酸マイクロアレイを用いて、標的配列(a)を有する標的核酸の量を調べる核酸解析方法であって、
前記核酸マイクロアレイは、プローブ核酸が固定化されたスポットを複数有し、
そのうちの任意のスポット(X1m)は、標的配列(a)と相補的なプローブ配列(a’)と、該プローブ配列(a’)とは異なる配列(b’)とを含むプローブ核酸が固定化され、ここでmは任意の整数を表し、
以下の工程;
配列(b’)に結合可能な配列(b)を含み、標識された異常検出核酸(B)を該核酸マイクロアレイ上のスポット(X1m)に付与し、配列(b’)と配列(b)とをハイブリダイズする工程、
スポット(X1m)において、ハイブリダイズした異常検出核酸(B)の標識量値(Fc1m)を得る工程、
該測定された標識量値(Fc1m)に基づいて、スポット(X1m)が、ハイブリダイゼーション能力が正常でない異常スポットであるか否か判定する工程を含む、方法。
(2)上記(1)に記載の方法であって、さらに、
標識された標的核酸(A)をスポット(X1m)に付与し、プローブ配列(a’)と標的配列(a)とをハイブリダイズする工程、及び
スポット(X1m)でハイブリダイズした標的核酸(A)の標識量値(F1)を得る工程、を含む、方法。
(3)上記(1)又は(2)に記載の方法であって、
配列(b’)と配列(b)とをハイブリダイズする工程と、プローブ配列(a’)と標的配列(a)とをハイブリダイズする工程と、を同時に行い、かつ、
異常検出核酸(B)の標識量値(Fc1m)を得る工程と、標的核酸(A)の標識量値(F1m)を得る工程と、を同時に行う、方法。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の方法であって、さらに、
スポット(X1m)と同一のアレイ上又は異なるアレイ上に存在するスポットであって、スポット(X1m)と同種のプローブ核酸を含むスポット(X2m)において、異常検出核酸(B)の標識量値(Fc2m)を得る工程を含み、
異常スポットであるか否かの判定を、標識量値(Fc1m)及び標識量値(Fc2m)の対比結果に基づいて行う、方法。
(5)上記(4)に記載の方法であって、
同一の核酸マイクロアレイ又は異なる核酸マイクロアレイ上に、同種のプローブ核酸を含む少なくとも2つのスポットからなるスポット対がn対存在し、
前記異常スポットであるか否か判定する工程が、
スポット(X1i)及びスポット(X2i)からなるスポット対において、標識量値(Fc1i)と標識量値(Fc2i)との各比較値(Di)を得る工程、
n個の比較値(D1)〜(Dn)からそれらの代表値(A)を得る工程、
比較値(Dm)と代表値(A)との差の大きさによってスポット(X1m)が異常スポットであるか否か判定する工程、を含む、方法。ここでnは2以上の整数である。iは整数を表し、1≦i≦nかつ1≦m≦nである。
(6)上記(5)に記載の方法であって、
前記比較値(Di)が下記式(1)により算出されるものであり、
式(1) 比較値(Di)=Log{(標識量値(Fc1i))/(標識量値(Fc2i))}
代表値(A)が、n個の比較値(D1)〜(Dn)の平均値又はメディアン値であって、
比較値(Dm)と代表値(A)との差が、前記n個の比較値(D1)〜(Dn)の標準偏差値より大きい場合に、スポット(X1i)及びスポット(X2i)を含む該スポット対を異常スポット対と判定する、方法。
(7)上記(5)に記載の方法であって、
前記比較値(Di)が下記式(1)により算出されるものであり、
式(1) 比較値=Log{(標識量値(Fc1i))/(標識量値(Fc2i))}
代表値(A)が、n個の比較値(D1)〜(Dn)の平均値又はメディアン値であって、
比較値(Dm)と代表値(A)との差が0.6以上の場合に、スポット(X1i)及びスポット(X2i)を含むスポット対を異常スポット対と判定する、方法。
(8)上記(5)〜(7)のいずれか一項に記載の方法であって、
同種のスポット対が複数存在し、
前記複数の同種のスポット対のうち、すべてのスポットが異常スポットと判断されても、少なくとも一つのスポットは異常スポットとして削除しない、方法。
(9)上記(8)に記載の方法であって、
すべてのスポットが異常スポットと判断された場合に、異常スポットとして削除しないスポットが、複数の同種のスポット対の比較値の中で代表値(A)に最も近い比較値を示すスポット対に含まれる、方法。
(10)上記(5)〜(9)のいずれか一項に記載の方法であって、
さらに、下記式(2)により標識量値(F2i)を補正した補正標識量値(F2’i)を得る工程を含む、方法。
式(2) 補正標識量値(F2’i)=標識量値(F2i)×(標識量値(Fc1i)/標識量値(Fc2i))
(11)プローブ核酸が固定化されたスポットを複数有する核酸マイクロアレイの品質検査方法であって、
前記核酸マイクロアレイにおける任意のスポット(X1m)は、標的配列(a)と相補的なプローブ配列(a’)と、該プローブ配列(a’)とは異なる配列(b’)とを含むプローブ核酸が固定化され、
以下の工程;
配列(b’)に結合可能な配列(b)を含み、標識された異常検出核酸(B)を該核酸マイクロアレイ上のスポット(X1m)に付与し、配列(b’)と配列(b)とをハイブリダイズする工程、ここでmは任意の整数を表し、
スポット(X1m)でハイブリダイズした異常検出核酸(B)の標識量値(Fc1m)を得る工程、
該標識量値(Fc1m)に基づいて、スポット(X1m)が、ハイブリダイゼーション能力が正常でない異常スポットであるか否か判定する工程を含む、方法。
(12)上記(1)〜(11)のいずれか一項に記載の方法であって、スポットに固定化されるプローブ核酸がBAC DNA又はcDNAである、方法。
(13)上記(1)〜(12)のいずれか一項に記載の方法であって、標識が蛍光によるものである、方法。
(14)上記(1)〜(13)のいずれか一項に記載の方法であって、異常検出核酸(B)が、検体の核酸とは異なり、プローブ核酸上の配列を持つ核酸である、方法。
(15)上記(1)〜(14)のいずれか一項に記載の方法であって、異常検出核酸(B)が、正常細胞由来の核酸である、方法。
(16)上記(1)〜(15)のいずれか一項に記載の方法であって、異常検出核酸(B)が反復配列を含む、方法。
(17)上記(1)〜(16)のいずれか一項に記載の方法であって、異常検出核酸(B)がCot−1 DNAである、方法。
(18)上記(1)〜(14)のいずれか一項に記載の方法であって、異常検出核酸(B)が、ベクター由来の核酸である、方法。
(19)上記(1)〜(18)のいずれか一項に記載の方法であって、異常検出核酸(B)を、標的核酸1モルに対して、1モル以上使用する、方法。
(20)上記(5)〜(19)のいずれか一項に記載の方法におけるデータ処理を行うためのプログラムであって、
スポット(X1i)及びスポット(X2i)からなるスポット対において、標識量値(Fc1i)と標識量値(Fc2i)との比較値(Di)を計算する手順、
n個の比較値(D1)〜(Dn)からそれらの代表値(A)を得る手順、
比較値(Dm)と代表値(A)との差の大きさによってスポット(X1m)が異常スポットであるか否か判定する手順、を実行するためのプログラム。(21)ハイブリダイゼーション用溶液、異常検出核酸(B)を含むハイブリダイゼーション用溶液、未標識核酸を含むハイブリダイゼーション用溶液、未標識核酸及び異常検出核酸(B)を含むハイブリダイゼーション用溶液の中から選ばれる一つと核酸マイクロアレイを含み、異常検出核酸(B)、補正核酸、未標識核酸の中から選ばれる少なくとも一つを含む、キット。
本発明に係る核酸解析方法では、異なるスポットにハイブリダイズした異常検出核酸の標識量値同士を比較し、その比較値を検討することによって、異常スポットを検出し核酸マイクロアレイ間のデータのバラツキを低減することが可能となった。このことにより、標的核酸の標識量値における誤差を低減し、より正確なデータが得られる。
さらに、本発明の品質検査方法によれば、例えば、核酸マイクロアレイの製造元が、標識異常検出核酸を用いて核酸マイクロアレイとハイブリダイゼーションさせ、その標識量値を使用者に対して提供し、使用者はそのデータと実験で使用した核酸マイクロアレイの標識標的核酸と共にハイブリダイゼーションさせた標識異常検出核酸の標識量値とを比較することで、どのスポットが品質検査上問題のあるスポットなのかを知ることができる。
このことによって、使用者は核酸マイクロアレイのスポットごとの品質検査を容易に行うことができる。さらに、この品質検査法は、実験のために使用している標識異常検出核酸の標識量値を品質検査に対して流用しているので、品質検査のために特別な試薬を必要とせず、品質検査のための特別な工程も追加することなく、極僅かな工程の追加(その多くは、コンピュータプログラムで対応可能)のみで行うことができる。
本発明に係る核酸マイクロアレイ解析方法の実施形態を示す模式図である。 本発明に係る核酸マイクロアレイ解析方法の実施形態を示す模式図である。 本発明に係る品質管理方法の実施形態を示す模式図である。 比較例1(異常スポットを削除しなかった場合)で得られたLog Ratio(Female/Male)値をプロットした図である。 比較例1(異常スポットを削除しなかった場合)で得られたFemale/Maleの値をプロットした図である。 実施例1において、異常スポットが全体の3%となるように異常スポットを削除した場合に、得られたLog Ratio(Female/Male)値をプロットした図である。 実施例1において、異常スポットが全体の5%となるように異常スポットを削除した場合に、得られたLog Ratio(Female/Male)値をプロットした図である。 実施例1において、異常スポットが全体の10%となるように異常スポットを削除した場合に、得られたLog Ratio(Female/Male)値をプロットした図である。 実施例1において、比較値と代表値との差が0.6以上のものを異常スポットとして削除した場合に、得られたLog Ratio(Female/Male)値をプロットした図である。 異常スポット削除率と常染色体部位の分散値(STDEV)との関係を示した図である。 実施例1において、異常スポットが全体の3%となるように異常スポットを削除した場合に、得られたRatio(Female/Male)値をプロットした図である。 実施例2において、核酸マイクロアレイ1と2のLog Ratio(Cot−1/Cot−1)をプロットした図である。 図12のプロットから品質管理上問題となるスポット対(Log Ratio(Cot−1/Cot−1)値の平均値と各スポット対のLog Ratio(Cot−1/Cot−1)値との差が0.6)を削除した結果を示す図である。 実施例2において、核酸マイクロアレイ2と3のスポット対間で計算したLog Ratio(Female/Male) 値をプロットした図である。 図14のプロットから核酸マイクロアレイ1と2、核酸マイクロアレイ1と3との間で計算した品質検査上問題のあるスポット対を削除した結果を示す図である。 図14の一部拡大図である。 図15の一部拡大図である。 実施例3において、削除対象とするスポット対の一例を示す図である。 実施例4において、異常スポットを削除していない場合のLog Ratio(Female/Male)値をプロットした図である。 実施例4において、同一アレイ内及び異なるアレイ間で異常スポットを削除した場合の結果を示す図である。 実施例5(標識異常検出核酸(標識補正核酸)として正常細胞由来の核酸を使用した場合)において、異常スポットを削除していない場合のLog Ratio(Female/Male)値をプロットした図である。 図21のプロットから、異常スポットを削除した結果を示す図である。 図22のプロットから、さらに異常スポットを削除した結果を示す図である。 実施例6(標識異常検出核酸(標識補正核酸)としてベクター由来の核酸を使用した場合)において、異常スポットを削除していない場合のLog Ratio(Female/Male)値をプロットした図である。 図24のプロットから、異常スポットを削除した結果を示す図である。 図25のプロットから、さらに異常スポットを削除した結果を示す図である。
(原理の説明)
以下、本発明の好適な実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
図1及び2に本実施形態に係る核酸解析方法を説明するための模式図を示す。
まず、図1に示すように試料核酸及び異常検出核酸を含むハイブリダイゼーション用溶液を調製する。
本実施形態においては、2種類の検体(検体(A1)及び検体(A2))について核酸解析を行う。すなわち、試料核酸は、検体(A1)から試料核酸(A1)を、検体(A2)から試料核酸(A2)をそれぞれ調製する。試料核酸の調製方法の詳細は後述する。これらの試料核酸(A1)及び(A2)には、何らかの標的核酸(a)が含まれているものとする。
また、標的核酸(a)の配列とは異なる配列(b)を含む異常検出核酸(B)を用意する。配列(b)は、核酸マイクロアレイ上に存在する実質的にすべてのスポットに固定化されているプローブ核酸に結合可能な配列であることが好ましい。このような配列としては、繰り返し配列(反復配列)を含む配列が挙げられる。異常検出核酸(B)は正常細胞由来の核酸であることが好ましく、ベクター由来の核酸又はCot−1 DNAであることが最も好ましい。
これらの試料核酸(A1)、(A2)及び異常検出核酸(B)に対し、後述する標識化合物を用いて標識を行い、必要に応じて後述する精製を行った後、標識された試料核酸(A1)、(A2)(標識試料核酸(A1)、(A2))及び標識された異常検出核酸(B)(標識異常検出核酸(B))をそれぞれ含むハイブリダイゼーション用溶液(A1)、(A2)を得る。
核酸マイクロアレイは、同種のアレイを各ハイブリダイゼーション用溶液に対して1つずつ用意する。すなわち、本実施形態における核酸解析はいわゆる単色法によるものである。検体(A1)の解析を行うための核酸マイクロアレイをアレイ(A1)、検体(A2)の解析を行うための核酸マイクロアレイをアレイ(A2)とする。
このアレイ(A1)及び(A2)は、プローブ核酸が固定化されたスポットを複数有している。なお、アレイ(A1)及び(A2)は同種のプローブ核酸が同様に配列されたものである。また、アレイ(A1)及び(A2)のスポットのうち、任意のスポット(X1)は、標的配列(a)と相補的なプローブ配列(a’)を含むプローブ核酸が固定化されている。また、任意のスポット(X1)を含むすべてのスポットには、標的配列(a’)とは異なる配列(b’)を含むプローブ核酸が固定化されている。配列(b’)は、前記異常検出核酸(B)に含まれる配列(b)と結合可能であるものとする。
次に、標識試料核酸(A1)、(A2)をアレイ(A1)及び(A2)にそれぞれ添加し、標識異常検出核酸(B)をアレイ(A1)及び(A2)の両方に添加し、標的配列(a)とプローブ配列(a’)、及び配列(b)と配列(b’)とをハイブリダイズする。
添加する方法は特に限定されないが、アレイ(A1)への標識試料核酸(A1)及び標識異常検出核酸(B)の添加を同時に行い、アレイ(A2)への標識試料核酸(A2)及び標識異常検出核酸(B)の添加を同時に行うことが好ましい。
本実施形態においては、図1に示すように、予め作製した標識試料核酸(A1)と標識異常検出核酸(B)とを含むハイブリダイゼーション用溶液(A1)、標識試料核酸(A2)と標識された異常検出核酸(B)とを含むハイブリダイゼーション用溶液(AB)を、アレイ(A1)及び(A2)にそれぞれ添加する。
ハイブリダイズは、市販のハイブリダイザーを用いて行うことができる。ハイブリダイゼーションにおける温度は、25〜50℃の範囲で行うことが好ましく、30〜45℃の範囲で行うことがより好ましく、37〜42℃の範囲で行うことがさらに好ましい。
また、ハイブリダイゼーションの時間は、8〜96時間とすることが好ましく、12〜72時間とすることがより好ましく、16〜48時間とすることがさらに好ましい。
ハイブリダイズ後、適宜洗浄等を行う。洗浄は、SSC溶液(Saline−sodium citrate solution;クエン酸緩衝液)、ホルムアミド/SSC溶液、SSC/SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)溶液などを用いて行なうことができる。
ハイブリダイズは、標的核酸とプローブ核酸とがストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが好ましい。具体的なハイブリダイズの条件としては、例えば、37℃で16時間ハイブリダイゼーション反応を行った後、洗浄条件として、(1)2×SSCの溶液を5mL、室温、30秒間、(2)50%ホルムアミド/2×SSC(pH7.0)溶液を5mL、50℃、15分間、(3)2×SSC/0.1%SDS(pH7.0)溶液を5mL、50℃、30分間、(4)2×SSCの溶液を5mL、室温、5分間の洗浄を行うことが挙げられる。
ハイブリダイズ及び洗浄後、アレイ(A1)及び(A2)のスポットごとに、標識試料核酸(A1)に含まれる標識標的核酸由来の標識量、標識試料核酸(A2)に含まれる標識標的核酸由来の標識量、標識異常検出核酸(B)由来の標識量を読み取る。
各標識量値は、例えば、標識異常検出核酸(B)の標識として蛍光化合物を使用した場合は、蛍光スキャナーなどを使用して蛍光値を測定することによって得られる。
ここで、アレイ(A1)と(A2)はそれぞれ少なくともn個のスポットを有する。nは整数を表す。以下、アレイ(A1)、(A2)上に存在するスポットをそれぞれスポット(X1i)及びスポット(X2i)とする。iは整数を表し、1≦i≦nである。
アレイ(A1)上のスポット(X1i)から読み取った標識試料核酸(A1)由来の標識量値を(F1i)とし、標識異常検出核酸(B)由来の標識量値を(Fc1i)とする。
一方、アレイ(A2)上のスポット(X2i)から読み取った標識試料核酸(A2)由来の標識量値を(F2i)とし、標識異常検出核酸(B)由来の標識量値を(Fc2i)とする。
次に、標識異常検出核酸(B)の標識量値(Fc1i)と標識量値(Fc2i)の比較を行い、異常スポットを検出する。
本実施形態では、アレイ(A1)、(A2)上のスポット(X1i)、(X2i)が同種のスポットであり、スポット対を構成する。
ここで異常スポットとは、核酸マイクロアレイ上に存在するスポットのうちハイブリダイゼーション能力が正常ではなく、ハイブリダイズ結果の評価に用いるには不適切なスポットであり、試料核酸中に含まれる標的配列(a)の検出には不適当なスポットをいう。主に核酸マイクロアレイの製造時においてプローブ核酸の量が不均一にスポットに固定化されていることに起因するものと考えられる。ハイブリダイズした異常検出核酸の量を複数のスポット間で比較すると、本来はその値は一定であることが期待され、量に差がある場合は当該複数のスポットの少なくとも何れかが異常なスポットであることがわかる。そして該複数のスポットにおける量の代表値等と比較して異常に量が多いか少ないスポットを異常スポットと推定できる。
標識量値(Fc1i)と標識量値(Fc2i)の比較は、アレイ(A1)及びアレイ(A2)上にある同種のスポットからなるスポット対間で行う。同種のスポットとは、実質的に同一のプローブ核酸が固定化されているスポットをいう。
具体的には、アレイ(A1)上の同種のスポット(X1i)と、これと同種のスポットであるアレイ(A2)上のスポット(X2i)のスポット対間において、その標識量値(Fc1i)と標識量値(Fc2i)の下記式(1)により比較値(Di)を計算し、これをアレイ上のすべてのスポット対で行う(図2(a))。すなわち、アレイ(A1)及び(A2)上にn対(nは2以上の整数)のスポット対があるとすると、n個の比較値が得られることになる。
式(1) 異常検出核酸(B)の比較値(Di)=Log{(標識量値(Fc1i))/(標識量値(Fc2i))}
なお、本発明で言う比較値とは、スポット対間の標識量値を比較することによって得られた数値を意味する。上記本実施形態では、比較値として、標識量値(Fc1i)と標識量値(Fc2i)の比のLog値を使用しているが、比較値を得る方法は、標識量値(Fc1i)と標識量値(Fc2i)とを数値によって比較し、両者の差が定量的に数値化できる方法であればいかなるものでもかまわない。他の比較値としては、例えば、標識量値(Fc1i)と標識量値(Fc2i)の比、標識量値(Fc1i)と標識量値(Fc2i)の差等を使用することができる。
次に得られたn個の比較値(D1)〜(Dn)からそれらの代表値(A)を計算する。代表値としては、例えば、平均値又はメディアン値(中央値)をあげることができる。メディアン値とは、ある数値の集合を順番に並べた時、その集合体の数の半分の位置に相当する数値である。さらに、統計的に算出された代表値などを使用することができる。
さらに、上記で得られた比較値(Di)の代表値(A)からのずれの大きさによって、異常スポットの判定を行う。
例えば、予め閾値を設定しておき、比較値(Di)と代表値(A)との差が閾値以上である場合に、そのスポット対が異常スポットであると判定することができる。閾値としては、例えば0.6等とすることができる。また、比較値(Di)と代表値(A)との差が、n個の比較値(D1)〜(Dn)における標準偏差値より大きい場合を異常スポットとしても良い。
図2(b)に、上記式(1)により算出された比較値(D)(Log比)のプロットを模式的に表した図を示す。図2(b)においては、中間値を0とした場合の比較値(D)のプロットを示している。
アレイ(A1)及び(A2)においては、実質的に同一のプローブに対して、同一の標識異常検出核酸(B)をハイブリダイゼーションしているので、スポット対を構成しているスポット間のプローブ核酸の固定量が同じであれば、標識異常検出核酸(B)のハイブリダイゼーション量はそれぞれのスポット間で同一となり、そのLog比はゼロとなることから、X軸上にすべての点が集まるはずである。
しかし、実際には、スポット間のプローブ核酸量にはバラツキがあるため、図2(b)に示したように、X軸から離れた点が現れることがある。
これは、両アレイ間で標識異常検出核酸のハイブリダイゼーション量が異なっていることを示し、標識異常検出核酸(B)のハイブリダイゼーションがスポット間で実質的に同一であるとすると、このことは、プローブ核酸のスポット量が核酸マイクロアレイ間で異なっている可能性が非常に高いことを示している。
なお、異常スポットとして判定する際、全体のスポット対又は興味の対象としているスポットのスポット対の総数に対する異常スポットの数を限定することで、異常スポットとなる範囲を決定してもよい。
すなわち、この場合は以下の手順で異常スポットを判定する。
まず、全体のスポット対若しくは興味の対象としているスポット対に対して標識量値の代表値を計算し、その代表値から各スポットの標識量値との差を計算する。
次に、このずれをその大きなもの順に並べ、全体のスポット対若しくは興味の対象としているスポットのスポット対の数に対して、ずれの大きいものから順番に、ある特定の割合以上のものを異常スポットとすることができる。
本発明では、この割合が30%より小さい数に相当するスポット数を異常スポットとすることができる。
また、ずれを大きなもの順に並べ、全体のスポット対若しくは興味の対象としているスポットのスポット対の総数に対して、ずれの大きいものから順番に10%より小さい割合に相当する数を異常スポットとすることがより好ましい。
また、ずれを大きなものから順に並べ、全体のスポット対若しくは興味の対象としているスポットのスポット対の数に対して、ずれの大きいものから順番に5%より小さい割合に相当する数を異常スポットとすることがさらにより好ましい。
また、ずれを大きなものから順に並べ、全体のスポット対若しくは興味の対象としているスポットのスポット対の数に対して、ずれの大きいものから順番に3%より小さい割合に相当する数を異常スポットとすることが最も好ましい。
その他、異常スポットの判定は、全スポット対あるいは特定のスポット領域に対して、フーリエ変換を行い、その高周波成分を異常スポットとすることにより行うこともできる。
次に、異常スポットと判定されたスポットを削除する。
すなわち、異常スポットと判定されたスポット(X1m)及び(X2m)を含むスポット対における標的核酸の標識量値(F1m)及び(F2m)を、以降の標的核酸の標識量値のデータ処理には使用しないようにする。mは任意の整数を表す。
次に、アレイ(A1)の標識標的核酸の標識量値(F1i)及びアレイ(A2)の標識標的核酸の標識量値(F2i)から下記式(3)によりLog比を計算する(図2(c))。
なお、前述のように異常スポットと判定されたスポットを含むスポット対における標的核酸の標識量値(F1i)及び(F2i)については、この計算に含めない。
式(3) 標識標的核酸の比較値(Di)
=Log{(標識量値(F1i))/(標識量値(F2i))}
図2(d)に、上記式(3)により算出された比較値(D)(Log比)のプロットを模式的に表した図を示す。
図2(d)において、異常スポットと判定されたスポット対における標識標的核酸の比較値(Dm)を点線の円で示している。図2(d)に示すように、異常スポットと判定されたスポット対における標識標的核酸の比較値(Dm)のプロットは、本来あるべき位置とずれた位置に現れることが多い。すなわち、図2(d)に示す模式図のパターンでは、異常スポットと判定されたスポット対は、本来X軸上にプロットされるべき(つまり、Log比(F2/F1)=ゼロ)であると予測される。
さらに、異常スポットと判定されたスポット(X1m)及び(X2m)以外のスポットについて、標識標的核酸の標識量値(F1)及び(F2)を補正する。
具体的には、下記式(2)により標識量値(F2i)の補正標識量値(F2’ i)を得る。
式(2) 補正標識量値(F2’ i)=標識量値(F2i)×(標識量値(Fc1i)/標識量値(Fc2i))
これを核酸マイクロアレイ上のすべてのスポット、若しくは、興味の対象とするスポットについて計算することで補正を行う。
図2(e)に、補正後の標識標的核酸の標識量値(F1)及び(F2’)のLog比のプロットを模式的に表した図を示す。補正を行うことにより、図2(d)と比較して、さらにデータのバラツキが減少する。
なお、本発明においては、このような標識量値(F1)及び(F2)の補正は必ずしも行う必要はないが、標的核酸の量をより正確に調べる上ではかかる補正を行うことが好ましい。
以上の実施形態では、異常スポットを判定した後、標識標的核酸の標識量値の補正を行っているが、この順番は、逆に行ってもかまわない。
(品質検査方法の説明)
次に、本発明に係る品質検査方法の実施形態について説明する。
図3は、本実施形態に係る品質検査方法の手順を模式的に表した図である。
図3に示すように、まず、品質検査用の核酸マイクロアレイ(A0)を用意し、標識された異常検出核酸(B)を含むハイブリダイゼーション用溶液を核酸マイクロアレイ(A0)に付与し、標識された異常検出核酸(B)とプローブ核酸とをハイブリダイズする。
次に、ハイブリダイズした核酸マイクロアレイ(A0)から、スポットごとにその標識量値Fc0を得る。標識量値(Fc0)は、例えば、標識された異常検出核酸(B)の標識として蛍光化合物を使用した場合は、蛍光スキャナーなどを使用して蛍光値を測定することによって得られる。
品質検査用の標識量値を算出するための核酸マイクロアレイではない、すなわち、実際の試料をハイブリダイゼーションする核酸マイクロアレイ(図では、核酸マイクロアレイ1〜N(Nは2以上の整数))に対しては、標識された異常検出核酸(標識補正核酸)を用いた図1と図2の方法で標識試料核酸と標識された異常検出核酸とを用いることによってハイブリダイゼーションを行い、そこから得られた標識された異常検出核酸の標識量値と、品質検査用の核酸マイクロアレイ、すなわち、図3では、核酸マイクロアレイ0から得られた標識された異常検出核酸由来の標識量値とを比較することで、正常にスポットされていると仮定している核酸マイクロアレイ0のスポット量との違いを数値データとして得ることが出来、この数値データがあらかじめ決められた範囲を超えたものを品質検査上の規格外のスポットとして、以降のデータ処理や結果の判断に使用しないようにすることができる。
規格値は、核酸マイクロアレイの製造者若しくは核酸マイクロアレイの供給者が決めることが好ましいが、使用者が決めてもかまわない。なお、品質検査を行うことは、核酸マイクロアレイ上のすべてのスポットに対して行うことが望ましいが、興味あるスポットを対象として行うこともできる。また、核酸マイクロアレイ0の標識量値は、数枚の核酸マイクロアレイを試験して得られた数値を用いても良い。この際の、数値を算出する方法としては、代表値、例えば、平均値などを用いたり、代表値から大きくはずれた標識量値を省き、残った標識量値の間で、代表値、例えば、平均値を計算したりするなどの方法で行うことができる。
また、使用者が独自に品質検査用の標識された異常検出核酸の標識量値を決めることもできる。例えば、核酸マイクロアレイ1からnを使用すると仮定して、核酸マイクロアレイ1から得られた標識された異常検出核酸の標識量値を品質検査用の基準値とし、その値と核酸マイクロアレイ2からnから得られた、それぞれの標識された異常検出核酸の標識量とを比較することで品質検査を行うこともできる。
また、品質検査を行った後に、図1や図2の様に、実際の試料に対して使用する核酸マイクロアレイ、すなわち、核酸マイクロアレイ1〜nの間で、マイクロアレイ実験を行い、それらの核酸マイクロアレイ間で異常スポットを検出し、検出した異常スポットを削除若しくは明示することもできる。
例えば、核酸マイクロアレイ1に対して、正常細胞由来の標識試料核酸と標識された異常検出核酸をハイブリダイゼーションさせ、核酸マイクロアレイ2に対して、異常細胞由来の標識試料核酸と標識された異常検出核酸をハイブリダイゼーションさせ、それぞれの核酸マイクロアレイから得られた標識された異常検出核酸の標識量値(蛍光値)と、核酸マイクロアレイ0から得られた標識された異常検出核酸の標識量値(蛍光値)とを比較、すなわち、核酸マイクロアレイ0と核酸マイクロアレイ1の間、及び核酸マイクロアレイ0と核酸マイクロアレイ2との間の標識された異常検出核酸の標識量値を比較することで、品質検査上問題のあるスポットを最初に削除することができる。
次に、核酸マイクロアレイ1と核酸マイクロアレイ2との標識された異常検出核酸から得られた標識量値を比較することで異常スポットを検出若しくは明示することができる。この様にすることで、仮に、実際の試料に対して使用する核酸マイクロアレイ、すなわち、核酸マイクロアレイ1〜nの間で、ある特定のスポットに対するプローブ核酸のスポット量が、これらの核酸マイクロアレイ間で工場出荷時の規定のスポット量とずれており、そのずれたスポットに対するスポット量がほぼ同一の場合には、例え、核酸マイクロアレイ1〜nの間で標識された異常検出核酸の標識量値の比較による異常スポットの検出を行ったとしても、異常スポットとして検出されない可能性があるが、本発明の方法によれば、この様な場合でも、工場出荷時の標識された異常検出核酸の標識量値とのずれで、異常スポットを検出することができる。なお、核酸マイクロアレイ0、核酸マイクロアレイ1からnで使用する標識された異常検出核酸は同一ロットで調製されたものであることが好ましい。
なお、本発明でいうところの品質検査とは、核酸マイクロアレイ上の各スポットが正しくスポットされたと考えられる核酸マイクロアレイと、品質検査対象の核酸マイクロアレイ、例えば、使用者が使用する核酸マイクロアレイとを比較したとき、この核酸マイクロアレイが製造者の意図とする性能を有しているかどうかを検査することを言う。
本発明では、使用者が核酸マイクロアレイを使用する段階で、核酸マイクロアレイの検査を行うことが出来ること、すなわち、すべての核酸マイクロアレイで品質検査ができること、核酸マイクロアレイのスポットごとに品質検査を行うことが出来ることが最大の特徴である。この様にすることで、従来、抜き打ち検査では発見できなかった、抜き出されなかった核酸マイクロアレイを検査することができる。
また、従来、核酸マイクロアレイ上に結合したプローブ核酸に対して、染色作用のある標識化合物で染色する方法により、スポットごとに検査が可能であり、かつ、すべての核酸マイクロアレイの検査が可能であったが、この方法では、染色反応、洗浄反応、乾燥工程、標識量値の読み取り、染色化合物のプローブ核酸からの除去、洗浄、乾燥と、非常に多くのプロセスを必要とし、さらに、染色化合物の核酸マイクロアレイ上への残存による標識試料核酸の標識量値への影響や、洗浄工程を繰り返すことによるプローブ核酸の核酸マイクロアレイからの脱離による核酸マイクロアレイの性能低下など、種々の問題点があった。
しかし、本発明の品質検査方法では、使用時に品質検査を行うことが出来るので、あらかじめ標識化合物でプローブ核酸を染色しておく必要が無く、さらに、洗浄や乾燥は試料核酸と共に行われるので品質検査用の洗浄、乾燥も必要もなく、スポットごとに、かつ、すべての核酸マイクロアレイの検査を行うことができる。さらに、品質検査に使用した標識された異常検出核酸は、異常スポットの検出に用いることや、標識補正核酸として用いて標識試料核酸の標識量値の補正に用いることもできる。
図3に示したように、核酸マイクロアレイ0に対して、標識された異常検出核酸のみをハイブリダイゼーションしてもよいが、このハイブリダイゼーション時に、標識された異常検出核酸とは異なる別の核酸と共にハイブリダイゼーション反応を行ってもかまわない。例えば、標識試料核酸をハイブリダイゼーションしても良い。また、標識試料核酸の中でも、正常細胞由来の標識試料核酸を同時にハイブリダイゼーションさせることもできる。この様にすることで、例えば、品質検査用の標識された異常検出核酸の標識量値と共に、正常細胞由来の標識試料核酸の標識量値を得ることができる。これらの標識量値は、使用者にデジタルデータとして供給することもでき、この様にすることで、使用者は、品質検査を行えるだけではなく、異常細胞由来の試料核酸さえ準備すれば、正常細胞由来の標識試料核酸を準備する必要が無く、直ちに核酸マイクロアレイ実験が行えるようになる。これにより、操作工程の大幅な短縮化が可能であると共に、核酸マイクロアレイの使用量が減り、さらに、試薬の使用量が減ることから、実験コストが大幅に低下する。
また、抜き打ち検査とともに、本発明の品質検査法とを併用することもできる。すなわち、例えば、核酸マイクロアレイの製造者(製造者は核酸マイクロアレイの供給者を含むものとする)が一定数ごとに核酸マイクロアレイの抜き打ち検査を行い、ここで合格したロットと品質検査用の標識試料核酸の標識量値とともに製造出荷し、各使用者が本発明の方法によって、核酸マイクロアレイ実験を行うと共に品質検査を行うことができる。
(同種のプローブを含む場合)
異常スポットは、例えば、同一プローブを複数個スポットしている場合、そのすべてを異常スポットと判断した場合には、そのすべてを削除しても良く、部分的に削除しても良い。しかし、すべてを異常スポットとして削除すると、そのプローブに関する情報が全く得られなくなってしまう。そこで、すべてのスポットが異常スポットと判断されても、少なくとも一つのスポットは異常スポットとして削除しないことが好ましく、その場合、異常スポットとして削除しないスポットが、複数の同種のスポット対の比較値の中で代表値に最も近い比較値を示すスポット対に含まれることが好ましい。またすべてを削除した場合は、使用者に対して、異常スポットのすべてを削除したことを知らせることができるようにすることが好ましい。例えば、コンピュータ上のソフトウェアによって、本発明の計算を自動的に行うことができるが、ソフトウェアによって画面上に、異常スポットの一覧を文字としても、また画像としても表示させることもでき、さらに、その中ですべての異常スポットを削除した場合や同一プローブをスポットしたスポット間の多くのスポット対を異常スポットとして削除した場合には、特に強調して画面上に若しくは紙面上に表示させることが望ましい。また、同一プローブをスポットしたスポット間の多くのスポット対を異常スポットとして削除した場合やそのすべてを削除した場合には、そのスポット対だけ敷居値、例えば、計算した標識された異常検出核酸(標識補正核酸)から計算された標識量値同士のLog比に対する敷居値を変えることができるようにしておくことも好ましい。例えば、特定の種類のプローブ核酸がスポットされたスポット対だけ敷居値を下げること、すなわち、異常スポットの数を減らすことで、そのスポットから情報を得ることができるようにすることができる。
異常スポットを検出するための比較を行うスポット対の組み合わせは、最も好ましくは、同一のプローブ核酸がスポットされており、核酸マイクロアレイ内のスポット位置が同一のものであるものが好ましい。スポット位置が同一のものとは、例えば、スポットが同一のColumn番号、同一のRow番号である。しかし、本発明では、同一のプローブ核酸がスポットされていれば、特にスポット位置にこだわる必要はない。例えば、同一のプローブ核酸がスポットされていれば、例えばこのことは、スポット対が、異なるCoulmn番号、異なるRow番号同士であってもよいことを示している。また、同一のプローブ核酸がスポットされていれば、二枚の核酸マイクロアレイ間のハイブリダイゼーション条件が異なっていてもかまわない。さらに、異常スポットとして検出されない濃度範囲において、意図的にプローブ核酸の濃度を変えてスポットしても良い。本発明で言うところの“そのスポットに対応する”とは、これらの様なスポットの組み合わせのことを言う。
また、使用する核酸マイクロアレイは、必ずしも全く同じスポット配置同士である必要性はない。すなわち、同一のプローブ核酸がスポットされているのならば、それぞれの種類のプローブ核酸がどのような配置でスポットされていてもかまわない。すなわち、異なった配置を持つ核酸マイクロアレイ同士でも、同一のプローブ核酸対が存在していれば、それらの間で比較することができる。
また本発明では、全スポットに対して計算を行い、異常スポットを見出すこともできるが、注目している領域若しくはスポット群に対して計算を行うこともできる。すなわち、多くの核酸マイクロアレイのスポットは、その生産性の観点から個別に設計された核酸マイクロアレイを個々に生産するよりも、その生産効率の向上などを目的として、予め想定されたプローブをスポットしておくことで大量生産を行うことが行われる。その様な場合には、使用者が必要としないプローブも含まれる可能性があり、その様な箇所に対して異常スポットを検出する対象にしてしまうことで、異常スポットの多くがその様な箇所に集中してしまったり、反対に、興味のある領域に対して異常スポットが集中してしまったりすることも考えられる。その様な場合も考えられるので、本発明では、核酸マイクロアレイ上に搭載されている全スポットを計算対象とする必要はなく、部分的な領域を計算対象とすることもできる。
本発明で使用する標識された異常検出核酸は、同一ロットのものであることが好ましい。これは例えば、2つの核酸マイクロアレイ間で比較を行う場合、標識された異常検出核酸の濃度や標識効率が異なっていると、正しく補正できないからである。但し、これらの濃度や、標識効率などの標識された異常検出核酸(標識補正核酸)の物性値が異なっていても、どう異なっているかがわかっているのならばこの限りではない。
本発明では、標識試料核酸、標識された異常検出核酸の標識量値に対して、代表値を計算して以降の処理に用いることができる。例えば、それらの蛍光値の平均値を用いることができる。また本発明では、標識試料核酸、標識された異常検出核酸(標識補正核酸)の標識量値を数値変換した値に対する代表値を用いることができる。例えば、2つの標識試料核酸の蛍光値同士を除したものや、その除したものの対数値、さらに、標識補正核酸による補正を行った後の標識試料核酸の蛍光値などに対する平均値などを用いることができる。
本発明は、単色法(一色法)でも使用可能であるし、二色法あるいはそれ以上の多色法でも使用可能である。
例えば、単色法の場合、核酸マイクロアレイAに対して、標識試料核酸A1と標識された異常検出核酸とをハイブリダイゼーションさせ、核酸マイクロアレイBに対して、標識試料核酸B1と標識された異常検出核酸とをハイブリダイゼーションさせ、標識された異常検出核酸同士の標識量値から異常スポットを検出することが可能である。
例えば、二色法の場合、核酸マイクロアレイAに対して、標識試料核酸A1、標識試料核酸A2と標識された異常検出核酸とをハイブリダイゼーションさせ、核酸マイクロアレイBに対して、標識試料核酸B1、標識試料核酸B2と標識された異常検出核酸とをハイブリダイゼーションさせ、標識された異常検出核酸同士の標識量値から異常スポットを検出することが可能である。
それ以上の、多色法の場合も同様に行うことができる。
本発明では、検出した異常スポットを削除若しくは明示することができる。削除とは、異常スポットを検出した時点から、使用者がデータを解釈するまでの間で、異常スポット由来のデータを削除する工程を行うことであり、少なくとも使用者がデータを解釈する時点で異常スポット由来のデータが削除されているものを言う。内部的に削除対象の異常スポットに関するデータが存在していたとしても、例えば、核酸マイクロアレイの結果をグラフ化して表示する場合、グラフ上に削除対象のデータが存在しなければ良い。また、コンピュータ上で削除するスポットを取り扱う際には、一般的に、変数に保存して取り扱うことが多いが、変数からデータを削除しても良く、また、別の変数に削除の位置、例えば、index番号などを記憶させておくこと、すなわち、変数からデータを削除せずに、index番号などを頼りに削除スポットを取り扱っても良い。
明示とは、使用者に対して何らかの方法を用いて、異常スポット由来のデータであることを使用者に対して知らせる行為のことを言い、その手段に関してはいかなるものであってもかまわない。例えば、コンピュータに接続されたディスプレイやプロジェクターによって映し出されたスクリーン上に、異常スポット由来のデータであることを示しても良いし、紙に異常スポット由来のデータであることを印刷してもかまわない。
また、明示には、異常スポット以外のスポット(正常スポットと呼ぶことにする)とは異なった記号、例えば、正常スポットを○で示し、異常スポットを●で示すことができる。さらに、品質検査によって問題とされたスポット(この場合も本発明では異常スポットと呼ぶことがある。)を、異常スポットと同じ記号で示すこともできるし、正常スポット、異常スポットと異なる記号で示すこと、例えば、△で示すこともできる。さらに、異常スポット若しくは品質検査で問題とされたスポットの少なくとも一方若しくは両方を表示しないこと、すなわち、正常スポットのみ表示することで、これらを正常スポットと区別することができることから、本発明ではこの様な場合でも明示しているという。
以下、本実施形態において用いる各部材、材料、処理等の詳細について説明する。
<核酸マイクロアレイ>
本発明でいう核酸マイクロアレイとは、固体基板上にプローブ核酸を高密度に結合させたものをいう。基板に用いる固体材料としては、一般的に使用されるスライドガラスなどのガラス素材のほか、プラスチック材料など、プローブ核酸が結合可能な材料であれば良く、特に限定されない。基板形状は、平面状、突起状物の頂上、粒子状、細管の内部などとすることができ、特に限定しない。さらに、ゲル状物質の内部にプローブ核酸を封じ込めた形態のものも使用することができる。
また、核酸マイクロアレイは、スポッターなどによって製造されたDNAマイクロアレイや半導体技術によって製造されたDNAチップも含む。
さらに、一枚の基板上に、複数個の核酸マイクロアレイを設けた多検体核酸マイクロアレイに対しても、その一つ一つを核酸マイクロアレイと呼んでいる。このようなアレイは、ハイブリダイゼーションを行う際に、互いに試料核酸を含むハイブリダイゼーション用溶液が混合しないように工夫されていることが望ましい。
なお、本発明における核酸解析方法では、市販品の核酸マイクロアレイを使用してもよい。
<プローブ核酸>
プローブ核酸は、核酸マイクロアレイの基板上に固定化されている核酸をいう。本発明におけるプローブ核酸は、標的配列(a)と相補的なプローブ配列(a’)、及び、配列(b)に結合可能な配列(b’)を含んでおり、標的配列(a)を含む標的核酸及び配列(b)を含む異常検出核酸(B)とハイブリダイゼーションすることが可能である。
プローブ核酸と標的核酸(A)とは、完全なハイブリダイゼーションでもよく、部分的なハイブリダイゼーションでもよい。少なくとも標的核酸の塩基数の50%以上がハイブリダイゼーションしていることが好ましい。
プローブ核酸は、化学合成した核酸、cDNA、BAC(Bacterial Artificial Chromosomes)、YAC(Yeast Artificial Chromosomes)、PAC(P1−derived Artificial Chromosomes)などを使用することができ、BAC DNA又はcDNAであることが好ましい。さらに、DNAやRNAなどの天然型の核酸を化学修飾した核酸をプローブ核酸として使用しても良い。例えば、PNA(Peptide Nucleic Acid)、BNA(Bridged Nucleic Acid)、メチルホスホネート型DNA、ホスホロチオエート型DNA、ホスホロアミデート型DNA、ボラノホスフェート型DNAなどを用いることができる。また、キメラ型核酸を用いることもできる。例えば、核酸内にDNA部分とRNA部分とが混合したものや天然型核酸と修飾型核酸とが混合したものを使用することができる。
プローブ核酸を固体基板上に結合させる方法は、GeneChip(R)を代表とする光脱離基を結合させたアミダイトモノマーを用い、マスクを使用して、一ヌクレオチドずつ化学合成する方法やインクジェット方式でアミダイトモノマーを固体基板上にスポットし、望んだ配列を化学合成する方法、電極上で溶液のpHを変化させそのpH変化を利用して保護基を脱離することにより基板上で核酸を合成する方法、あらかじめ化学合成した核酸を精製し基板上にスポットする方法、スポッターを用いてcDNAをスポットする方法などを用いることができる。スポット方式も、インクジェット方式、ピンアレイ方式などを用いることができる。
<プローブ核酸の固定化>
核酸マイクロアレイの固体基板上にプローブ核酸を固定化するには、固体基板上にプローブ核酸を化学的に結合させることにより行うことができる。結合とは、共有結合、イオン結合、静電的相互作用、ファンデルワールス結合、ホスト−ゲスト結合、金属結合などを含む。また、プローブ核酸を固体基板上に結合する場合、リンカーを介して結合してもかまわない。
<スポット対>
本発明におけるスポット対とは、同種のプローブ核酸をスポットしたスポットの関係のことをいう。複数枚の核酸マイクロアレイに適用する場合には、同種のプローブのスポットで、一般的に、ブロック番号、Column番号、Row番号が同じであるスポットのことを主として言う。なお、この場合、同一のプローブがスポットされていれば、必ずしも同一のブロック番号、Column番号、Row番号である必要性はない。
<相補的>
本発明で言うところの相補的とは、それぞれの核酸に属している核酸塩基が互いに水素結合を解して相互作用していることを言い、例えば、A(アデニン)に対して、T(チミン)が2本の水素結合によって相互作用していることなどを言う。また、相補的とは、核酸の塩基対のすべてが互いに相互作用していることと共に、50%以上の塩基対が相互作用していれば、本発明では相補的と呼ぶことにしている。
<検体>
本発明でいう検体とは、核酸マイクロアレイを用いて、核酸の発現量や存在量、コピー数等の測定を行う対象となる細胞等をいう。
検体としては、例えば、正常細胞又は異常細胞を用いることができる。
正常細胞とは、実質的に変異を受けていない細胞のこという。これに対し、異常細胞とは、正常細胞の遺伝子に何らかの変異を受けた遺伝子を持つ細胞のことである。
例えば、癌を発症していない健常者から入手した細胞を正常細胞とし、癌を発症した患者から入手した細胞を異常細胞とすることができる。また、癌を発症した患者でも、癌ではない正常な部位から得た細胞も、正常細胞とすることができる。また、薬品などの試薬を添加することで細胞内の遺伝子を変化させた細胞を異常細胞とし、薬品を添加していない細胞を正常細胞とすることもできる。
また、検体として、LCM(Laser Capture Microdissection)処理を行ったものを用いることもできる。
<試料核酸>
検体から抽出した核酸のことである。例えば、正常細胞から抽出した核酸、異常細胞(例えば、がん細胞)から抽出した核酸を試料核酸として使用することができる。
<試料核酸の調製(精製及び断片化等)>
検体から試料核酸を調製する際には、精製処理を行い、タンパクや脂質等の細胞溶解物を除去する必要がある。精製を行わないと、蛍光等による標識の際に、様々な副反応が生じると共に、タンパクや脂質等細胞溶解物がバックグラウンドノイズに大きな影響を与え、核酸マイクロアレイの性能を著しく低下させるからである。
精製の方法は、シリカやセルロース誘導体などの核酸吸着性膜を担持したカートリッジを用いた方法、エタノール沈殿やイソプロパノール沈殿、フェノール−クロロホルム抽出、イオン交換樹脂やオクタデシル基などの疎水性置換基を結合したシリカ担体やサイズ排除効果を示す樹脂を使用した固相抽出カートリッジ、クロマトグラフィーなどによる方法を用いることができる。
精製処理は下記の断片化処理後に行っても良い。
検体から抽出した試料核酸に対し、断片化処理を行ってもよい。断片化処理としては、酵素処理、超音波処理、機械的破砕処理、化学的処理等が挙げられる。
試料核酸に対し、サブトラクション法による処理を行っても良い。サブトラクション法とは、対象遺伝子のコピー数や発現に差がある場合、遺伝子の中に存在する違いを、引き算の要領で差し引きし、効率的に遺伝子を単離する方法である。サブトラクション法としては、例えば、PCR−Select法、RDA(representational difference analysis)法、DsDD(Duplex−specific Direct Digestion)法等を用いることができる。
サブトラクション法による処理を行うことによって、核酸マイクロアレイの精度を上げることもできる。特に、検体としてがん細胞を用いる場合、がん組織の中には、がん細胞と共に多量の正常細胞が含まれているため、核酸マイクロアレイの性能が著しく低下する場合があるが、サブトラクション法によって、その性能低下をある程度防ぐことができる。
<標識試料核酸>
標識標的核酸とは、試料核酸に対して何らかの標識化合物によって標識した試料核酸をいう。標識後の精製処理を行ったものも行っていないものも本発明では標識試料核酸と言う。
<未精製標識試料核酸>
未精製標識試料核酸とは、試料核酸を標識した後の精製処理を行わずに得た標識試料核酸のことである。この精製処理とは、標識処理を行った後の未反応の標識化合物や酵素などを取り除く処理のことであり、試料核酸を調製するための精製処理は含めない。
精製を行わないので、この未精製標識試料核酸には、標識工程において添加した種々の未反応化合物、例えば、プライマー、酵素、ヌクレオチド、バッファー中に含まれるイオンなどが含まれている。
さらに、未精製標識試料核酸に対して、共存する酵素を失活させる目的で、加熱やEDTA添加などの処理を行った後の核酸も未精製標識試料核酸というものとする。
<精製標識試料核酸>
精製標識標的核酸とは、未精製標識標的核酸に対して、試料核酸の標識後の精製処理を行うことによって得た試料核酸のことを言う。
<異常検出核酸>
異常検出核酸は、全てのスポットにおいて、少なくともプローブ核酸の一部にハイブリダイズしうる配列を有し、対象としているスポットにおけるハイブリダイズ能力の異常、具体的には該スポットに固定化されているプローブ核酸の量に起因する異常を検知し、更には異常スポット間のプローブ核酸量のスポット量を検出するために使用する核酸のことである。そのため、異常検出核酸は、核酸マイクロアレイ上の異常検出を行う全スポットに固定化されているプローブ核酸とハイブリダイゼーション可能であればよく、どの様な配列、鎖長でも良い。ここで、全スポットとは、同一溶液の検体又は標準が反応する可能性がある全スポットを表し、通常は単一の核酸マイクロアレイ上のスポット全てのことであるが、これに限定されない。
異常検出核酸としては、たとえば、反復配列やベクター、大腸菌のゲノムなど、アレイを作製する上で、全てのスポットに存在すると考えられる配列を有する核酸であれば使用出来る。
また、ハイブリダイゼーションが可能であれば、どの様な核酸でも良く、DNAやRNAの様な天然型の核酸や、DNAやRNAなどの天然型の核酸を化学修飾した核酸を使用しても良い。例えば、PNA(Peptide Nucleic Acid)、BNA(Bridged Nucleic Acid)、メチルホスホネート型DNA、ホスホロチオエート型DNA、ホスホロアミデート型DNA、ボラノホスフェート型DNAなどを用いることが出来る。また、キメラ型核酸を用いることも出来る。例えば、核酸内にDNA部分とRNA部分とが混合したものや天然型核酸と修飾型核酸とが混合したものを使用することが出来る。
異常検出核酸は、検体の核酸とは異なり、プローブ核酸上の配列を持つ核酸であることがより好ましく、例えばプローブとしたライブラリそのものの核酸や、ベクター、プローブとしたライブラリのクローニングベクターなどの配列を有する核酸を用いることが特に好ましい。
ベクターとしては、プラスミド、BAC、YAC、PAC、コスミド、ウィルスなど種種のベクターが挙げられる。異常検出核酸としては、アレイを作製するときに用いたベクターの核酸や、そのベクターと同じ配列をもつ核酸であれば何を用いても構わない。
また、異常検出核酸として、固定化したプローブに用いたライブラリの核酸配列か、或いは正常細胞由来の核酸を使用することもできる。正常細胞由来の核酸は、予め核酸配列に異常が無いことが既知である配列であることが好ましい。例えば、試料核酸が正常細胞と異常細胞の場合、一つ目の核酸マイクロアレイ(A1)に対して、異常細胞由来の標識試料核酸と正常細胞由来の標識された異常検出核酸、二つ目の核酸マイクロアレイ(A2)に対して、正常細胞由来の標識試料核酸と正常細胞由来の標識された異常検出核酸とを付与する態様である。この態様では、正常細胞由来の標識された異常検出核酸の標識量値から異常スポットを検出することができる。
異常検出核酸として、反復配列を用いることも好ましい。反復配列とは、リピート配列ともいい、ある塩基数ごとに制限酵素認識部位のように繰り返し出現する配列であり、短い塩基配列のパターンが何度も繰り返す配列、例えば、poly d(AT)やpoly d(GC)などや、一単位が数千塩基対に及ぶ長い配列が何度も繰り返す配列などをあげることが出来、ヒト等の高等生物中にはゲノム中に高頻度で出現することが知られている。本発明においては、例えばインビトロジェン社で販売されているCot−1 DNAを好適に用いることが出来る。
例えば、マンマリアンBAC−DNAを用いた核酸マイクロアレイの場合には、Cot−1 DNAを用いることが好ましい。Cot−1 DNAは、通常、核酸マイクロアレイ測定時にマンマリアンから得られた検体の反復配列をブロックするために使用される核酸であり、マンマリアンBACプローブを用いた核酸マイクロアレイの場合、通常そのプローブには反復配列が実質的に多くのBACプローブに含まれている。
例えば、プローブに繰り返し配列(反復配列)を有するBAC−DNAを用いた核酸マイクロアレイの場合、Cot−1 DNAを添加し、標的核酸及びプローブ核酸上に存在するその反復配列にあらかじめ非特異的にハイブリダイゼーションし、ブロックすることで、ターゲット核酸側に存在する反復配列がプローブ核酸側に存在するプローブ核酸と非特異的にハイブリダイゼーションする事を防止し、特異的なハイブリダイゼーションに由来する蛍光値を選択的に検出できるようにしている。本発明では、そのCot−1 DNAの少なくとも一部を標識化して(好ましくは未標識Cot−1 DNAとともに)用いることによって、特異的なハイブリダイゼーションの検出感度を高め、かつスポット差を低減させることが可能であることを見出した。
また、プローブ核酸中に共通に存在する核酸配列部分に実質的に相補的な核酸配列を有する、合成オリゴヌクレオチドを異常検出核酸として用いることもできる。
本発明では、試料核酸に対して、異常検出核酸の使用量をモル比で1以上用いることが好ましい。モル比を1以上用いることによって、核酸マイクロアレイの性能が向上するからである。
異常検出核酸の大きさは、5bp以上であることが好ましく、10bp以上であることがより好ましく、20bp以上であることが更に好ましく、50bp以上であることが特に好ましい。また1Mbp以下であることが好ましく、500kb以下であることがより好ましく、2kb以下であることが更に好ましく、500bp以下であることが特に好ましい。
異常検出核酸の使用量は、標的核酸1モルに対して、0.5モル以上であることが好ましく、1モル以上用いることがより好ましく、3モル以上用いることがより好ましく、更に8モル以上用いることが最も好ましい。
なお、異常検出核酸の使用量の上限は、標的核酸1モルに対して、1014モルが好ましく、1010モルがより好ましい。
異常検出核酸(B)は、互いに比較に使用する核酸マイクロアレイ間で、その濃度などの物性値が十分に分かっていれば、その濃度などの物性値が異なってもよいが、より好ましくは、同一濃度、同一ロットのものが良い。
<標識異常検出核酸(B)>
標識異常検出核酸とは、異常検出核酸に対して標識化合物を結合させた異常検出核酸のことを言い、標識後の精製処理を行ったものも精製処理を行っていないものでも本発明では標識された異常検出核酸と言う。
<未精製標識異常検出核核酸・精製標識異常検出核核酸>
前述の未精製標識試料核酸・精製標識試料核酸と同様、未精製標識異常検出核酸とは、標識された異常検出核酸に対して精製処理を行わない標識異常検出核酸のことであり、精製標識異常検出核酸とは、標識された異常検出核酸に対して精製処理を行うことによって得た、標識異常検出核酸のことである。
<未標識核酸>
未標識核酸とは、標識されていない核酸のことをいう。
種々核酸を含むハイブリダイゼーション用溶液には、未標識核酸を添加してもよい。
未標識核酸としては、例えば、繰り返し配列(反復配列)をブロックするためのCot−1 DNAや核酸マイクロアレイのバックグラウンドノイズを低減させる作用を主として有するtRNA(トランスファーRNA)、変性サケ精子DNAやpolyA、polydA、等を用いることができる。本発明では、Cot−1 DNAを好適に用いることができる。
<標識>
標識とは、検出可能な物質を標的核酸に対して結合することを意味する。検出可能な物質としては、特に限定されず、例えば、蛍光物質、酵素、放射性同位元素、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を起こす化合物等を挙げることができる。中でも、蛍光物質を使用することが好ましい。
蛍光物質としては、特に限定されないが、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、Cy3, Cy5, Cy7、緑色蛍光タンパク質(GFP, Green Fluorescent Protein)、青色蛍光タンパク(BFP,)、黄色蛍光タンパク(YFP)、赤色蛍光タンパク(RFP)、Alexa、Acridine、DAPI、Ethidium bromide、SYBR Green、Texas Red、希土類蛍光ラベル剤 (4, 4’−bis(1’’, 1’’, 1’’, 2’’, 2’’, 3’’, 3’’−heptafluoro−4’’, 6’’−hexanedion−6’’−yl)−chlorosulfo−o−terphenyl(BHHCT))、エチジウムブロマイド、アクリジンオレンジ、TAMRA、ROXなどを用いることができる。
さらに、標識のための物質として、ジゴキシゲニン(Digoxigein:DIG)、ビオチンなども利用することもできる。ビオチンを利用した例としては、プローブに結合させたビオチンに、アビジンを結合させ、ここにビオチンを結合させたアルカリ性ホスファターゼを結合させ、アルカリ性ホスファターゼの基質であるニトロブルーテトラゾリウムと5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸を加えると紫色の発色が見られ検出に使用することができる。
また、非酵素的な標識も利用することもできる。例えば、ULS arrayCGH LabelingKit(Kreatech BiotechnoLogy BV社)などがある。
標識法は、直接標識法、間接標識法いずれの標識法を本発明では用いても良い。直接標識法とは、例えば、標的核酸を一本鎖とし、ここに短鎖核酸をハイブリダイゼーションさせ、蛍光色素を結合させたヌクレオチド誘導体をヌクレオチドとともに混合しておき、一段階で標識標的核酸を合成する方法である。間接標識法とは、標的核酸を一本鎖とし、ここに短鎖核酸をハイブリダイゼーションさせ、蛍光色素が結合できる置換基を持ったヌクレオチド誘導体、例えば、アミノアリル基を持ったヌクレオチド誘導体と天然型のヌクレオチドとともに混合しておき、この置換基を持った標的核酸を合成し、次に、アミノアリル基を介して標識化合物を結合させ、標識標的核酸を得る方法である。本発明では、その簡便さから、直接標識法を用いるほうが好ましい。
本発明では、標識化合物を標的核酸に導入する方法として、ランダムプライマー法(プライマーエクステンション法)、ニックトランスレーション法、PCR(Polymerase Chain Reaction)法、末端標識法などを用いることができる。特に、本発明ではランダムプライマー法を好適に用いることができる。
なお、未精製の標識試料核酸や未精製の標識異常検出核酸を含む溶液中には、酵素などがそのまま残存しており、調製後、溶液中に残存する酵素の活性を失活させておくことが好ましい。これは、例えば、未精製標識試料核酸をCy3、未精製標識異常検出核酸をCy5で標識した場合、両者を混合する時、溶液中に酵素が残存していると、残存した酵素によって未精製標識試料核酸がCy5、未精製標識異常検出核酸がCy3で更に標識される可能性があるからである。
酵素の失活方法としては、酵素の失活が可能な方法であればどのような方法でもかまわないが、EDTAを添加する方法、50℃以上の加熱処理を行うことのいずれか一方若しくは両方を行うことが好ましい。加熱温度は、50℃以上が好ましく、60℃以上が更に好ましい。加熱時間は、1分以上あれば良く、最も好ましくは、65℃以上で5分間以上の加熱処理を行うことが好ましい。
<標識量値>
本発明でいう標識量値とは、標識核酸がプローブ核酸とハイブリダイゼーションし、そこから読み取られた標識化合物から発せられる標識値のことを言う。より具体的には、例えば、標識標的核酸や標識異常検出核酸(標識補正核酸)が核酸マイクロアレイ上に結合しているプローブ核酸とハイブリダイゼーション反応を行った後、未反応の標識標的核酸や標識補正核酸、更に、所定の洗浄条件で脱離する、主として部分的にしかハイブリダイゼーションしなかった標識標的核酸や標識異常検出核酸(標識補正核酸)などを除去した後、核酸マイクロアレイを乾燥させ、蛍光スキャナーなどで読み取った蛍光値などをあげることができる。
また、標識量値は、数学的な処理を行った後の数値も標識量値とすることができる。例えば、蛍光スキャナーGenePix (R)などでは、一つのスポットをいくつもの領域に分けて、例えば、10μm四方ごとにデータを取り込み、それらの代表値、例えば、平均値やメディアン値などを出力している。この様に、一般的には、読取装置で読み取った標識量値は、多くのピクセルからの標識量値に対して数学的な処理を行った後の値であり、本発明では、この様な場合も標識量値と言うものとする。
<ハイブリダイゼーション調製溶液>
本発明でいうハイブリダイゼーション調製溶液とは、ハイブリダイゼーションを好適に行う役割を持った溶液のことである。ハイブリダイゼーション調製溶液には、緩衝液を含むことが好ましいが、必ず必要というわけではない。ハイブリダイゼーション調製溶液として、例えば、核酸マイクロアレイの場合、核酸濃度を高める作用を持った硫酸デキストラン、核酸の融解温度を下げる作用を持ったホルムアミド、その溶液のpHを一定に保つための緩衝液からなるバッファーの混合物を例として挙げることができる。
また、ハイブリダイゼーション調製溶液の組成として、排除体積を有する化合物、融解温度を低下させる化合物、溶液を一定のpHに維持する化合物の中の少なくとも二種の組み合わせからなる溶液を用いることが好ましい。
排除体積効果を持つ物質として、ポリエチレングリコール(PEG、特開2000−325099号公報)やデキストラン硫酸等を使用することができる。
融解温度を低下させる化合物として、ホルムアミド、グリセロール、ホルムアルデヒド、DMSO、DMF、GuSCN、ヨウ素などを使用することができる。
緩衝液としては、pHを一定に保つことができるものであれば、どの様な緩衝液をも用いることができるが、生化学用に一般的に使用されているものが好ましい。例えば、SSCやグッド緩衝液を用いることが好ましい。グッド緩衝液としては、Bis−Tris(N,N−bis (2−hydoroxyethyl) iminotris (hydroxymethyl) methane)、MES(2−Morpholinoethanesulfonic acid)、HEPES(2−[4−(2−Hydroxyethyl) −1−piperazinyl] ethanesulfonic acid)、PIPES(Piperaxine−1,4−bis (2−ethanesulfonic acid))、ACES(N−(2−Acetamino)−2−aminoethanesulfonic acid)、CAPS(N−Cyclohexyl−3−aminopropanesulfonic acid)、TES(N−Tris (hydroxymethyl) methyl−2−aminoethanesulfonic acid)等が挙げられる。
<ハイブリダイゼーション用溶液>
本発明で言うハイブリダイゼーション用溶液とは、未標識核酸やその他の試薬を混入した溶液のことであり、標識標的核酸や標識異常検出核酸が核酸マイクロアレイ上のプローブ核酸とのハイブリダイゼーションを好適にする性質を持った溶液のことであり、プローブ核酸と標識標的核酸や標識異常検出核酸との配列の一致度が高いハイブリダイゼーションを促進し、その一方で、配列の一致度が低いハイブリダイゼーションを抑制する働きを持った溶液のことである。例えば、核酸マイクロアレイ用のハイブリダイゼーション用溶液の一般的な組成として、6×SSC、5×デンハルト溶液、0.2%SDS、ヒトCot−1 DNA、polyA、yeast tRNAのハイブリダイゼーション用溶液が用いられる(細胞工学別冊ゲノムサイエンスシリーズ1 DNAマイクロアレイと最新PCR法、村松正明、那波宏之監修)。また、例えば、核酸マイクロアレイの場合には、ホルムアミド、デキストラン硫酸、20×SSC、Cot−1 DNA、yeast tRNA、20%SDSを含むハイブリダイゼーション用溶液が用いられる(井本逸勢、稲澤譲治、細胞工学 Vol.123, p355, 2004)。
また、核酸マイクロアレイのノイズなどを改善する化合物も含むことができる。その様な作用がある物質として、変性サケ精子DNAやpoly(A)、 poly(dA)、tRNA、ヒトCot−1 DNA、マウスCot−1 DNAなどを用いることができる。
この他に本発明では、特開2005−087109号後方に記載されているように、ハイブリダイゼーション用溶液の組成の一つとして、リン脂質、デンハルト溶液(フィコール、ポリビニルピロリドン、ウシ血清アルブミンを主成分とする溶液)、4級アンモニウム塩であるベタイン(Biochemistry 32, 137−144(1993))、TMAC(tetramethyl ammonium chloride)(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 1585−1588 (1985)) 、市販されているハイブリダイゼーション用溶液、例えば、ExpressHyb (Clontech)、PerfectHyb (東洋紡績株式会社)、ULTRAhyb(Ambion)などを用いることもできる。
界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、また、ノニオン性界面活性剤を用いることもできる。アニオン性界面活性剤として、ドデシル硫酸ナトリウムを用いるのが好ましい。他に、N−ラウリルサルコシド、ラウリル硫酸リチウムなどが用いられている。ノニオン性界面活性剤としては、Tween(登録商標)やTritonX(登録商標)などが知られており、本発明では、これらの界面活性剤を使用することができる。
<ハイブリダイゼーション用溶液の濃縮>
標識標的核酸を含まず、それ以外の核酸を含んだハイブリダイゼーション用溶液は、濃縮を行っておくことが望ましい。すなわち、この種々核酸を含むハイブリダイゼーション用溶液には、標識異常検出核酸、未標識核酸や界面活性剤などが添加され、更に、標識標的核酸などを混合した後のハイブリダイゼーション用溶液は、その溶液量増加のために、標識標的核酸、標識異常検出核酸(標識補正核酸)、未標識核酸などの濃度が低下し、核酸マイクロアレイの性能が低下する可能性があるからである。そこで、本発明では、標識標的核酸を含む核酸と混合する前の種々核酸を含むハイブリダイゼーション用溶液の濃縮を行っておくほうが好ましい。この濃縮操作は、使用者が行っても良いが、製造者が濃縮を行うことによって予め調製した溶液をキットなどに添付しておくことが望ましい。すなわち、あらかじめ、製造者が調製しておくことにより、使用者は濃縮を行う必要がなく、標識標的核酸さえ準備しておけば、本ハイブリダイゼーション用溶液と混合するだけで、核酸マイクロアレイに使用することができるからである。また、このハイブリダイゼーション用溶液に、標識異常検出核酸が入っている場合には、標識異常検出核酸(標識補正核酸)の濃度や種類、ロット番号などを統一しておくほうが好ましく、製造者がこれらの揃った溶液を供給することで、使用者は、精度の高い核酸マイクロアレイ実験が容易に行えるからである。
<精製>
本発明で言うところの精製とは、抽出、分離、分取と同異義語の意味で使用している。
また、そのための手段として、シリカやセルロース誘導体などの核酸吸着性膜を担持したカートリッジを用いた方法、エタノール沈殿やイソプロパノール沈殿、フェノール−クロロホルム抽出、イオン交換樹脂やオクタデシル基などの疎水性置換基を結合したシリカ担体やサイズ排除効果を示す樹脂を使用した固相抽出カートリッジ、クロマトグラフィーなどによる方法を含むことができる。また、本発明では、溶媒置換も広い意味で精製と呼んでいる。そのためエタノール沈殿やイソプロパノール沈殿も本発明では、精製と呼んでいる。
<単色法>
本発明での単色法とは、別名、一色法と呼ばれる方法で、一つの核酸マイクロアレイに対して、一種類の標識化合物で標識した実質的に一種類の標識標的核酸、及び標識標的核酸とは異なる標識化合物で標識した実質的に一種類の標識異常検出核酸(標識補正核酸)を用い、更に、もう一つの核酸マイクロアレイに対して、一種類の標識化合物で標識した実質的に一種類の前記とは別の標識標的核酸、及び標識標的核酸とは異なる標識化合物で標識した実質的に一種類の前記と同一の標識異常検出核酸(標識補正核酸)を用い、一つ目の核酸マイクロアレイから得られた標識標的核酸の標識量値と二つ目の核酸マイクロアレイから得られた標識標的核酸の標識量値を比較する方法のことである。また、それぞれの核酸マイクロアレイから得られた標識補正核酸の標識量値を用いて標識標的核酸の標識量値を補正した標識量値同士で比較検討する方法のことも単色法と呼んでいる。
この様に本発明では、一つの核酸マイクロアレイに対して、互いに比較の対象とする試料に対する標識化合物の数が一種類のものを単色法と呼んでいる。すなわち、前記の例の場合、標識標的核酸と標識補正核酸との二種類の標識化合物を用いているが、比較に直接的に関与しているのは標識標的核酸のみであるので、本発明では、標識標的核酸と標識補正核酸の二種の標識化合物を用いていても、単色法と呼んでいる。
<二色法>
本発明での二色法とは、一つの核酸マイクロアレイに対して、一種類の標識化合物で標識した実質的に一種類の標識標的核酸、それとは異なる標識化合物で標識した実質的に一種類のそれとは異なる標的核酸から調製された標識標的核酸及び前記2種の標識標的核酸とは異なる標識化合物で標識した実質的に一種類の標識異常検出核酸を用い、標識標的核酸同士の比較により結果を得る方法であるが、その際に、標識異常検出核酸(標識補正核酸)を用いた異常スポットの削除を行うことができる。すなわち、更にもう一枚の核酸マイクロアレイを準備し、少なくとも標識異常検出核酸をハイブリダイゼーションさせておき、この標識異常検出核酸の標識量値と、前記の核酸マイクロアレイから得られた標識異常検出核酸の標識量とを比較することで、異常スポットを検出し、前記の核酸マイクロアレイから異常スポットに相当するスポットを削除又は明示することができる。
<標識量値を読み取る方法>
核酸マイクロアレイにおける標識量値を読み取る方法としては、種々の方法を用いることができる。標識化合物として蛍光物質を用いた場合は、蛍光スキャナーが最も好適に用いられる。蛍光スキャナーとしては、例えば、FLA−8000(富士フイルム株式会社)やGenePix (R) 4000B(Axon Instruments)などがある。
<データの提供>
本発明では、あらかじめ標識標的核酸、標識異常検出核酸(標識補正核酸)を核酸マイクロアレイに対してハイブリダイゼーションさせ、それらの標識量値を電子データとして提供することもできる。例えば、核酸マイクロアレイの場合には、標的核酸として、正常細胞由来の標識標的核酸の標識量値、異常検出核酸として標識Cot−1 DNAや標識されたベクター由来の核酸の標識量値を、電子データによって提供することが可能である。
これらのデータを利用することで、使用者は、比較する細胞を準備することなく、比較される細胞、例えば、異常細胞のみを準備すれば良く、更に、標識工程などの工程も、従来、二種類の標識工程を行う必要があったが、一種類の標識工程のみを行えば良く、工程が短縮化し、時間の節約や使用試薬量の低減を行うことができる。なお、標識異常検出核酸は、両者共通のものを使用することが望ましい。更には、標識異常検出核酸の電子データと、その標識異常検出核酸をキットに同梱することが好ましい。
(プログラム)
核酸マイクロアレイ測定を実施し得られたデータを処理する際、効率よくデータ処理を行うため、プログラムを用いたデータ処理を実施することが可能である。特に、核酸マイクロアレイが多数のスポットを有し、多数の比較値(D)を計算する場合等に有効である。
すなわち、本発明のプログラムの好ましい態様は、
スポット(X1i)及びスポット(X2i)からなるスポット対において、標識量値(Fc1i)と標識量値(Fc2i)との比較値(Di)を計算する手順、
n個の比較値(D1)〜(Dn)からそれらの代表値(A)を得る手順、
比較値(Dm)と代表値(A)との差の大きさによってスポット(X1m)が異常スポットであるか否か判定する手順、を実行するためのプログラムである。
該プログラムは、通常コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録した形態で提供される。該記録媒体は、コンピュータが読み取り可能なものであれば特に限定されない。本発明の記録媒体は、可搬型又は固定型の両方の媒体が含まれ、例えば、コンパクトディスク(CD)、フレキシブルディスク(FD)、デジタルビデオディスク(DVD)、ハードディスク、半導体メモリ等を挙げることができる。
本発明のプログラムは、上記記録媒体に記録されて流通させることも、コンピュータの記録装置に記録しておき、ネットワークを通じて他のコンピュータに転送する形態で流通させることもできる。
(核酸解析キット)
本発明の核酸解析キットは、プローブ核酸が固定化されているスポットを複数有する核酸マイクロアレイと、前記核酸マイクロアレイ上に固定化されたプローブ核酸に含まれる配列(b’)に結合可能な配列(b)を含む異常検出核酸とを含む。異常検出核酸は、予め標識されていても、ユーザーが使用時に標識を行ってもよい。また、該異常検出核酸は、イオン強度を調整する成分、界面活性剤等を含むハイブリダイゼーション溶液として提供されることも好ましい。
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
以降、実施例1、3〜6は、それぞれ、参考例1、3〜6に読み替えるものとする。
なお、以下の実施例において、Cy3−Femaleとは、Female DNAに対して、Cy3で標識したものを示す。同様に、Cy5−Femaleとは、Female DNA(あるいはmale)に対して、Cy5で標識したものを示す。また、Cy3−MaleやCy5−Cot−1 DNAも同様に、それぞれの標識化合物で標識した核酸であることを示す。
[比較例1] 異常スポットを削除しなかった場合の核酸マイクロアレイの解析結果
<未精製標識試料核酸の調製>
1.7mLマイクロチューブ(プラチナチューブ、ビーエム機器株式会社)に、Human Genomic DNA Female (Promega社, カタログ番号G152)を3μL(0.75μg)、水(Distilled Water DNAse, RNase Free, GIBCO)を8μL、アレイCGH用のラベリングシステム(BioPrime (R) Array CGH Genomic Labeling System(invitrogen))の2.5xRandom Primers Solution (invitrogen)を20μL入れ、ブロックインキュベータ(BI−535A、株式会社アステック)内にて、95℃で5分間熱処理を行った。5分後、マイクロチューブをブロックインキュベータから取り出し、37℃に設定したブロックインキュベータの中へ入れ、15分間静置した。
BioPrime(R) Array CGH Genomic Labeling Systemの10xdCTP Nucleotide Mix (invitrogen)を5μL、Cy3−dCTP Bulk Pack 250nmol(GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社)を3μL、BioPrime (R) Array CGH Genomic Labeling SystemのExo−Klenow Fragment (invitrogen)を1μL添加し、37℃で2時間BLOCK INCUBATOR BI−535A上にて、標識化反応と同時に増幅反応を行った。2時間後、マイクロチューブをインキュベータから取り出し、65℃に設定したBLOCK INCUBATOR BI−535Aにて、加熱処理を行い、反応溶液中に含まれているExo−Klenow Fragmentを失活させた。
上記操作をHuman Genomic DNA Male (Promega社, カタログ番号G147)に対しても行い、以上の操作にて、二種の未精製標識試料核酸を得た。なお、Male DNAに対しても、標識化合物として、Cy3−dCTP(GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社)を用いた。
<未精製標識異常検出核酸の調製>
1.7mLマイクロチューブ(プラチナチューブ、ビーエム機器株式会社)にCot−1 DNA (インビトロジェン社、カタログ番号15279−011)を6μg(6μL)、水を5μL、2.5xRandom Primers Solutionを20μL入れ、BLOCK INCUBATOR BI−535A上にて、95℃で5分間熱処理を行った。5分後、マイクロチューブを取り出し、37℃に設定したBLOCK INCUBATOR BI−535Aの中に入れ、15分間静置した。10xdCTP Nucleotide Mixを5μL、Cy5−dCTP Bulk Pack 250nmol(GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社)を3μL、Exo−Klenow Fragmentを1μL添加し、37℃で2時間BLOCK INCUBATOR BI−535Aにて、標識化反応と共に増幅反応を行った。2時間後、マイクロチューブをインキュベータから取り出し、65℃に設定したBLOCK INCUBATOR BI−535A上にて、15分間加熱処理を行い、反応溶液中に含まれているExo−Klenow Fragmentを失活させた。
<標識異常検出核酸Cot−1 DNAを含むハイブリダイゼーション用溶液の調製>
未精製標識異常検出(補正)核酸Cy5−Cot−1 DNAを20μL、未標識核酸Cot−1 DNA 62μL(62μg、invitrogen)を1.7mLマイクロチューブに入れ、3M酢酸ナトリウム(pH5.2)を8μL、−20℃のエタノールを360μL添加し、混合後、10分間−80℃で放置した。その後、TOMY製遠心機MX−300を用いて、15000rpmで30分間、4℃で遠心を行った。遠心後、沈殿物が遠心チューブの底にたまるので、その沈殿物を吸い込まないように注意しながら、上清を除去した。次に、遠心チューブのフタを開けたまま10分間放置し、残存するエタノールを除去した。10分後、ホルムアミドを40%、SSC、デキストラン硫酸を0.075mg/μLに調製したハイブリダイゼーション調製溶液を52μL、10%SDSを8μL添加し、30分間静置した。
30分後、攪拌することで沈殿物を溶解し、その後、十分に攪拌した。
<標識試料核酸、標識異常検出核酸を含むハイブリダイゼーション用溶液の調製>
<未精製標識試料核酸の調製>で調製したFemale DNAの未精製標識試料核酸を20μL、<標識異常検出(補正)核酸Cot−1 DNAを含むハイブリダイゼーション用溶液の調製>で調製した溶液を60μL、1.7mLマイクロチューブの中に入れ、十分にVortex処理を行うことで、攪拌を行った。また同様に、<未精製標識試料核酸の調製>で調製したMale DNAの未精製標識試料核酸を20μL、<標識異常検出核酸Cot−1 DNAを含むハイブリダイゼーション調製溶液の調製>で調製した溶液を60μL、1.7mLマイクロチューブの中に入れ、十分にVortex処理を行うことで、攪拌を行った。
<核酸マイクロアレイの前処理>
使用した核酸マイクロアレイは、BACクローン(RPCI,RP11 BACライブラリ)から調製したプローブDNA800種をそれぞれ2つずつガラス基板上にスポットした、合計1600個のスポットを有している。以下核酸マイクロアレイの作製方法。まず、BACクローンを大量培養後、イオン交換カラム(QIAGEN社、Plasmid Midi Kit 100 Cat.No.12145)を用いて抽出・精製しBAC DNAを得た。その後、BAC DNAを4塩基認識酵素、RsaI、DpnI、HaeIIIで消化した後、アダプターを加えてライゲーションをおこなう。次に、アダプターの一方のオリゴヌクレオチドと同一配列を有するプライマーを用いて、PCR法により増幅することによりプローブDNAが得られる。プローブDNAの長さは1000〜3000bp程度である。プローブDNAのガラス基板へのスポットはGENESHOT(日本ガイシ株式会社、名古屋)を使用した。
ブロッキング溶液(松浪硝子工業株式会社)を約200mL、ガラス容器に入れ、そこへ核酸マイクロアレイを入れ、20分間SLIDE WASHER, SW−4(十慈フィールド株式会社)を用いて、スライドガラスを上下に移動させながら、ブロッキング反応を行った。20分後、核酸マイクロアレイをブロッキング溶液から取り出し、水200mLを入れた容器の中に入れた。3分間、SLIDE WASHERを用いて洗浄し、3分後、再び新しい水を200mL入れた容器の中に入れ、SLIDE WASHERを用いて洗浄した。3分後、エタノールを200mL入れた容器の中に移し、再びSLIDE WASHERを用いて洗浄した。3分後、核酸マイクロアレイを取り出し、卓上遠心機スピンドライヤーmini2350(トミー工業株式会社)を用いて遠心を行い、核酸マイクロアレイを乾燥させた。
ブロッキング後、沸騰水に核酸マイクロアレイを2分間浸し、ついで、−20℃の70%エタノールに2分間、−20℃の85%エタノールに2分間、−20℃の100%エタノールに2分間浸し、その後、スピンドライヤーで1分間の遠心を行うことで核酸マイクロアレイを乾燥させた。なお、上記の操作は、二枚の核酸マイクロアレイを同時に処理することで行った。
<ハイブリダイゼーション>
<標識試料核酸、標識異常検出核酸を含むハイブリダイゼーション用溶液の調製>で調製した二種の試料溶液を、BLOCK INCUBATOR BI−535A上にて、それぞれ75℃で16分間熱処理を行った。その後、42℃で30分以上熱処理を行った。それぞれの溶液を、ハイブリダイザーを用いてハイブリダイゼーションを行った。
ハイブリダイザーは、HYBRIMASTER HS−300(アロカ株式会社)を用いた。ハイブリダイゼーション温度は、37℃、ハイブリダイゼーション時間は、16時間行った。ハイブリダイゼーションの間、ローラーで攪拌するように設定した。Cy3−Female DNAとCy5−Cot−1 DNAを含むハイブリダイゼーション用溶液を、それぞれの核酸マイクロアレイ上に滴下し、ハイブリダイザーのスタートボタンを押した。洗浄条件は、(1)2×SSCの溶液を5mL、室温、30秒間、(2)50%ホルムアミド/2×SSC(pH7.0)溶液を5mL、50℃、15分間、(3)2×SSC/0.1%SDS(pH7.0)溶液を5mL、50℃、30分間、(4)2×SSCの溶液を5mL、室温、5分間に設定し、洗浄中は、ローラーを用いて攪拌するように設定した。ハイブリダイザーによるハイブリダイゼーションを行った後、マイクロアレイをハイブリダイザーから取り出し、2×SSCを入れた50mLのスミロンチューブの中にマイクロアレイを入れ、数分後、マイクロアレイを取り出して、スピンドライヤー−Mini Model2350で1分間の遠心を行うことで核酸マイクロアレイを乾燥させた。
<データ取り込み>
洗浄した二枚のマイクロアレイは、GenePix (R) 4000B(Axon Instruments)を用いて、スキャニングを行った。
<データ処理>
下記の式を用いて、データ処理を行った。
未精製標識試料核酸Cy3−Female由来の蛍光値をFF、未精製標識試料核酸Cy3−Male由来の蛍光値をFM、Female側の標識異常検出(補正)核酸の蛍光値をFc1、Male側の標識異常検出(補正)核酸の蛍光値をFc2とすると、補正後のCy3−Male DNAの標識量値FM’を以下の式により計算した。
FM’=FM×Fc1/Fc2
さらに以下の式により、Log Ratio(Female/Male)を計算した。
Log Ratio(Female/Male)=Log(FF/FM’)
なお、アレイ間で比較するスポット対は、同一のBlock Number、同一のColumn Number、同一のRow Numberを用い、核酸マイクロアレイ上に配置されているすべてのスポットについてLog Ratio(Female/Male)を計算した。
また、Ratio(Female/Male)の値{Ratio(Female/Male)は、Female側のスポットの蛍光値とMale側のスポットの蛍光値の比}も下記の式を用いて同様に計算した。
Ratio(Female/Male)=FF/FM’
次に同種のプローブ核酸をスポットした2つのスポットのLog Ratio又はRatio(Female/Male)の平均値を計算した。
なお、ノーマライゼーション法として、グローバルノーマライゼーションを行った。
<結果>
図4にLog Ratio値、図5にFemale/Maleの値を、染色体番号順にプロットした図を示す。なお、図4,5におけるプロットは、同種のプローブをスポットした2つのスポットの平均値である。○が常染色体に相当する部分を、●がX染色体に相当する部分を示している(以下の図についても同様。)
[実施例1] 異常スポットを削除した場合の核酸マイクロアレイの解析結果
比較例1の結果に対して、以下の方法によって異常スポットを数値計算により検出した。
Cy3−Femaleをハイブリダイゼーションした核酸マイクロアレイから得られたCy5−Cot−1 DNA由来の蛍光値をFc1、Cy3−Maleをハイブリダイゼーションした核酸マイクロアレイから得られたCy5−Cot−1 DNA由来の蛍光値をFc2とし、比較値(D)として、それらのLog比{Log Ratio(Cot−1/Cot−1)}を以下の式に従って計算した。
Log Ratio(Cot−1/Cot−1)=Log(Fc2/Fc1)
なお、Cy3−Femaleをハイブリダイゼーションした核酸マイクロアレイとCy3−Maleをハイブリダイゼーションしたそれぞれの核酸マイクロアレイの同一Block Number、同一Column
Number及び同一Row Numberを持つスポット対同士で比較値(D)を計算し、核酸マイクロアレイ上にスポットされたすべてのスポットについて比較値(D)を計算した。
次に、上記で計算した比較値(D)の中間値(M)として平均値を計算し、中間値がゼロになるように、すべての比較値(D)を補正した。
次に、中間値(M)と比較値(D)との差を計算した後、その計算値に対して、絶対値ABS{Log Ratio(Cot−1/Cot−1)}を全スポット対に対して計算した。中間値をゼロに補正しているので、この値の数値の大きいものほど中間値からの差が大きいことを示しており、この差の大きいものから順番に、全スポット対の数、すなわち本実施例では1600個に対して、3%、5%、10%の個数、すなわち、それぞれ48個、80個、160個のスポット対を異常スポットとした。また、この値が0.6を超えるものすべてのスポット対を異常スポットとした。
異常スポットの検出後、異常スポットに対応する比較例1で計算したLog Ratio(Female/Male)の値を削除した。
なお、上記の異常スポットの削除の際、同種のプローブ核酸がスポットされた2つスポットが両方とも異常スポットとして検出された場合は、その両方を削除せず、ABS{ Log Ratio(Cot−1/Cot−1)}の値の大きいLog Ratio(Female/Male)の値を削除し、小さいLog Ratio(Female/Male)の値は削除しなかった。
例えば、異常スポットの削除の個数が全スポットの10%の場合には、2つの同一のプローブ核酸をスポットしたスポットの両方が異常スポットとして検出された例が幾つか見られたが、この場合には、それらの2つのうちの比較値(D)がより中間値から遠いほうを異常スポットとした。
さらに具体的には、同一のプローブ核酸をスポットした110番目と111番目の両方のスポット対が異常スポットとして検出されたが、110番の比較値(D)が1.45に対して、111番目が0.413となり、本来は両方を異常スポットとするところであるが、より比較値(D)が中間値から遠い110番目のスポットの方のみを削除した。110番目のLog Ratio(Female/Male)値が−0.467に対して、111番目が−0.191となり、これらの値はより0に近い方が正解なので、比較値(D)が中間値から近いほうを残すことの有効性をこの結果は示している。
次に、比較例1と同様に、同種のプローブ核酸をスポットした2つのスポットのLog Ratio(Female/Male)の平均値を計算した。
<結果>
以上の結果を図6〜11に示す。
図6は、全体のスポット対1600個のうち、比較値と中間値との差が大きいものから上位3%(48個)に相当する比較値を持つスポット対を異常スポットとして削除した場合のプロットを示す。
図7は、同様に大きいものから上位5%(80個)に相当する比較値を持つスポット対を異常スポットとして削除した場合のプロットを示す。
図8は、同様に大きいものから上位10%(160個)に相当する比較値を持つスポット対を異常スポットとして削除した場合のプロットを示す。
図4と、図6〜8とを比較すると、Log Ratioが±0.25の範囲外のスポットが図4では多数確認されたが、図6〜8では数点程度にまで減少している。
また、常染色体部分のバラツキ(理論上はX軸上にすべての点が集まる)が、異常スポットを削除することによって減少していることがわかる。
さらに、異常スポットを5%、10%削除した図7と8では、常染色体とX染色体部分との分離が良くなった。すなわち、異常スポットを削除していない図4では、常染色体部分の○のLog Ratioの部分とX染色体部分の●の部分とが多くのスポット対から計算された比較値が重なっているのに対して、異常スポットを3%削除した図6の結果では、1点のみが重なっているだけで、更に、図7と図8の5%以上の異常スポットを削除した場合には、X染色体部位のLog Ratio値下限と常染色体部位のLog Ratio値の上限とが十分に離れている。
これらの結果は、仮に、X染色体部分が増幅若しくは欠失部分に相当すると仮定すると、異常スポットを削除することによって、診断精度の高い核酸マイクロアレイが得られることを示している。
図9には、比較値と中間値の差によって異常スポットを削除する際に、閾値を予め設定してその範囲外のものを異常スポットとする方法を用いた場合を示す(つまり、この場合は異常スポットの数が実験ごとに異なる。)。ここでは、中間値と比較値との差が0.6以上の比較値を持つスポット対を異常スポットとして判定した。図4と比較すると、常染色体部分のバラツキが小さくなり、常染色体とX染色体との分離が良くなっていることがわかる。
さらに、図10に、異常スポット削除率と常染色体部位の分散値(STDEV)との関係を示す。異常スポットを削除しなかった場合には、STDEVが約0.13となり、異常スポットを削除したものは、0.9〜1.2と小さくなった。
これらの結果は、異常スポットを削除することによってデータのバラツキが減少し、より精度の高い核酸マイクロアレイの結果が得られることを示している。
また、図11に、全体スポットのうち3%のスポットを異常スポットとして削除した場合のRatio(Female/Male)値をプロットしたものを示す。
図5と比較すると異常スポットを削除することで常染色体部分とX染色体部分とがよりはっきりと分離していることがわかる。
[実施例2] 標識異常検出核酸を用いた核酸マイクロアレイの品質検査
本実施例では、核酸マイクロアレイ1を製造者が所有し、核酸マイクロアレイ2と3とを使用者が所有していると仮定する。
<未精製標識試料核酸の調製>
比較例1の<未精製標識試料核酸の調製>と同様の方法で、Cy3−Female DNAとCy3−Male DNAとを調製した。
<未精製標識異常検出(補正)核酸の調製>
比較例1の<未精製標識異常検出(補正)核酸の調製>と同様の方法で、Cy5−Cot−1 DNAを調製した。なお、核酸マイクロアレイ1〜3にハイブリダイゼーションする標識異常検出(補正)核酸Cy5−Cot−1 DNAはすべて同一の調製ロットから小分けしたものを使用した。
<標識異常検出(補正)核酸Cy5−Cot−1 DNAを含むハイブリダイゼーション用溶液の調製>
比較例1の<標識異常検出(補正)核酸Cot−1 DNAを含むハイブリダイゼーション用溶液の調製>と同様の方法で調製した。
<標識試料核酸、標識異常検出(補正)核酸を含むハイブリダイゼーション用溶液の調製>
比較例1の<標識試料核酸、標識異常検出(補正)核酸を含むハイブリダイゼーション用溶液の調製>と同様の方法で調製した。ただし、標識異常検出(補正)核酸を含むハイブリダイゼーション用溶液は、標識異常検出(補正)核酸Cy5−Cot−1 DNAを含むハイブリダイゼーション用溶液に未精製標識試料核酸の代わりに20μLの水を添加し、混合することで調製した。
<核酸マイクロアレイの前処理>
比較例1の<核酸マイクロアレイの前処理>と同様の方法で前処理を行った。なお、ここでは、576種のBACプローブDNAを3個ずつスポットした核酸マイクロアレイを用いた。
<ハイブリダイゼーション>
比較例1の<ハイブリダイゼーション>と同様の方法でハイブリダイゼーションを行った。ただし、核酸マイクロアレイ1に対しては、Cy5−Cot−1を含むハイブリダイゼーション用溶液をハイブリダイゼーションさせた。核酸マイクロアレイ2に対しては、Cy5−Cot−1 DNAとCy3−Female DNAとを含むハイブリダイゼーション用溶液をハイブリダイゼーションさせた。核酸マイクロアレイ3に対しては、Cy5−Cot−1 DNAとCy3−Male DNAとを含むハイブリダイゼーション用溶液をハイブリダイゼーションさせた。
<データ取り込み>
比較例1の<データ取り込み>と同様の方法でデータの取り込みを行った。
<データ処理及び結果>
核酸マイクロアレイ1のCy5−Cot−1 DNA由来の蛍光値をFc1、核酸マイクロアレイ2のCy5−Cot−1 DNA由来の蛍光値をFc2、核酸マイクロアレイ3のCy5−Cot−1 DNA由来の蛍光値をFc3とし、核酸マイクロアレイ1と2との間、核酸マイクロアレイ1と3との間で、同一Block Number、同一Column Number、同一Row Numberから構成されるスポット対間で下記の式を用いて、比較値{Log Ratio(Cot−1/Cot−1)}を計算した。
核酸マイクロアレイ1と2の間に対するLog Ratio(Cot−1/Cot−1)=Log(Fc1/Fc2)
核酸マイクロアレイ1と3の間に対するLog Ratio(Cot−1/Cot−1)=Log(Fc1/Fc3)
次に、それぞれのアレイ間のLog Ratio(Cot−1/Cot−1)の平均値を計算し、その平均値がゼロになるようにすべてのLog Ratio(Cot−1/Cot−1)を補正した。次に、すべてのスポット対に対して、個々のスポット対と平均値との差の絶対値を計算することで、Log Ratio(Cot−1/Cot−1)差を得た。その結果を図示したものが図12である。
図12は核酸マイクロアレイ1と2に対して、上記の様に計算して得られたLog Ratio(Cot−1/Cot−1)差を染色体順に図示したものである。(なお、核酸マイクロアレイ1と3の間に対して、上記の様に計算して得られたLog Ratio(Cot−1/Cot−1)差も同様に計算したが、図示していない。)
本実施例では、Log Ratio(Cot−1/Cot−1)差が0.6以上のものを品質管理上問題となるスポットと定義し、その値以上のLog Ratio(Cot−1/Cot−1)差を持つ、スポット対を構成している核酸マイクロアレイ2若しくは核酸マイクロアレイ3のスポットを削除した。
図13は、図12の結果から0.6以上のLog Ratio(Cot−1/Cot−1)差を持つスポット対を削除した結果を示したものである。その結果、約20個のスポットが品質検査上問題となるスポットであった。核酸マイクロアレイ1と3との間でも図示しなかったが同様の計算を行った。
次に、核酸マイクロアレイ2と3との間で比較を行った。まず、核酸マイクロアレイ2と3との間で標識異常検出核酸を標識補正核酸として用いて、以下の式を用いることにより核酸マイクロアレイ3にハイブリダイゼーションさせたCy3−Male側の蛍光値の補正を行った。なお、核酸マイクロアレイ2のCy5−Cot−1 DNAの蛍光値をFc2、核酸マイクロアレイ2のCy3−Female DNAの蛍光値をF2、核酸マイクロアレイ3のCy5−Cot−1 DNAの蛍光値をFc3、核酸マイクロアレイ3のCy3−Male DNAの蛍光値をF3とした。
補正後のCy3−Maleの蛍光値=F3×Fc2/Fc3
上記の数式を用いて、核酸マイクロアレイ上の同一Block Number、同一Column Number、同一Row Numberから構成されるすべてのスポット対に対して計算を行った。
次に、Cy3−Female DNAの蛍光値と上記で得られた補正後のCy3−Male DNAの蛍光値とを用いて、以下の式により核酸マイクロアレイ2と3との間で形成可能なすべてのスポット対間でLog Ratio(Female/Male)を計算した。
Log Ratio(Female/Male)=Log(Cy3−Female DNAの蛍光値/Cy3−Male DNAの補正後蛍光値)
上記によって計算したLog Ratio(Female/Male)を染色体順に図示した結果を、図14に示した。この結果でも、常染色体とX染色体とが十分に分離しており、良好な結果といえる。
次に、核酸マイクロアレイ1と2、核酸マイクロアレイ1と3との間で得られた品質管理上問題となるスポット対を構成しているLog Ratio(Female/Male)を持つスポット対を削除した。なお、ある上記アレイ間のスポット対に対して、どちらか一方のアレイ間にしか品質管理上問題となるスポット対が存在しなかったとしても削除対象とした。
図15は、図14の結果から核酸マイクロアレイ1と2、核酸マイクロアレイ1と3との間で計算した品質検査上問題のあるスポット対を削除したものである。図14と比べて、更に常染色体部分のバラツキが低減した。例えば、図14の0.2以上のLog Ratio(Female/Male)が17個あったが、図15では、7個にまで減っており、これらのことはより精度の高い核酸マイクロアレイであることを示している。
更に、核酸マイクロアレイ2と3との間で検出した異常スポットを削除する方法とを併用した結果を図17に示した。Cy3−Female側のCy5−Cot−1 DNAの標識値をFc2、Cy3−Male DNA側のCy5−Cot−1 DNAの標識値をFc3とすると、核酸マイクロアレイ2と3との間で、同一Block Number、同一Column Number、同一Row Numberから構成されるスポット対間でLog Ratio(Cot−1/Cot−1)を用いた下記の計算式により、核酸マイクロアレイ上のすべてのスポット対間で計算を行った。
Log Ratio(Cot−1/Cot−1)=Log(Fc2/Fc1)
次に、計算したすべてのスポット対間のLog Ratio(Cot−1/Cot−1)からその平均値を算出し、計算によって算出した平均値がゼロになるように、上記の計算したすべてのスポット対間のLog Ratio(Cot−1/Cot−1)を補正した。次に、補正後のLog Ratio(Cot−1/Cot−1)に対して、絶対値を計算し、その値が0.6以上のものを異常スポットとし、対応するスポット対に由来するLog Ratio(Female/Male)の計算結果を、図16の結果から削除した。その結果を図示したのが図17である。
なお、図16は、図14の中から1100番から1300番を拡大表示したものであり、図17も図16と同一の領域を図示したものである。図16と図17とを比べると、丸で囲んだ部分、つまり、この部分は、常染色体部分であるので、ゼロに近づくほどノイズが小さく性能の高い核酸マイクロアレイであることを示しており、図16と比較して、図17の方がよりLog Ratio(Female/Male)値がX軸から離れたスポット対が減っており、以上の結果は、本実施例の方法によって、バラツキが低減され、より精度の高い核酸マイクロアレイの結果が得られることを示している。
[実施例3] 同一のプローブをスポットしたスポットで、すべてのスポットが異常スポットと判断された場合、少なくとも一つのスポットを残しておく場合
<未精製標識試料核酸の調製>
比較例1の<未精製標識試料核酸の調製>と同様の方法で、Cy3−Sample AとCy3−Sample
Bとを調製した。なお、SampleAは、性別は女で7番染色体に欠失を持つ患者検体を不死化して培養した細胞から採取したDNA、SampleBは、性別は女で遺伝子変異のない人の血液から採取したDNAである。
<未精製標識異常検出核酸(標識補正核酸)の調製>
比較例1の<未精製標識異常検出(補正)核酸の調製>と同様の方法で、Cy5−Cot−1 DNAを調製した。なお、核酸マイクロアレイ1、2にハイブリダイゼーションする標識異常検出(補正)核酸Cy5−Cot−1 DNAはすべて同一の調製ロットから小分けしたものを使用した。
<標識異常検出(補正)核酸Cy5−Cot−1 DNAを含むハイブリダイゼーション用溶液の調製>
比較例1の<標識異常検出核酸(標識補正核酸)Cot−1 DNAを含むハイブリダイゼーション用溶液の調製>と同様の方法で調製した。
<標識試料核酸、標識異常検出(補正)核酸を含むハイブリダイゼーション用溶液の調製>
比較例1の<標識試料核酸、標識異常検出(補正)核酸を含むハイブリダイゼーション用溶液の調製>と同様の方法で調製した。
<核酸マイクロアレイの前処理>
比較例1の<核酸マイクロアレイの前処理>と同様の方法で前処理を行った。なお、ここでは、632種のBACプローブDNAを3個ずつスポットした核酸マイクロアレイを2枚用いた。
<ハイブリダイゼーション>
比較例1の<ハイブリダイゼーション>と同様の方法でハイブリダイゼーションを行った。
<データ取り込み>
比較例1の<データ取り込み>と同様の方法でデータの取り込みを行った。
<データ処理及び結果>
核酸マイクロアレイ1のCy3−Sample A由来の蛍光値をF1、Cy5−Cot−1 DNA由来の蛍光値をFc1、核酸マイクロアレイ2のCy3−Sample B由来の蛍光値をF2、Cy5−Cot−1 DNA由来の蛍光値をFc2とし、以下の式を用いて、補正後のCy3−Sample Bの蛍光値を得た。
補正後のCy3−Sample Bの蛍光値(F2’)=F2×Fc1/Fc2
この数式を用いて、核酸マイクロアレイ1と核酸マイクロアレイ2との間で、同一Block Number、同一Column Number、同一Row Numberから構成されるすべてのスポット対間について、補正後のCy3−Sample Bの蛍光値を得た。
次に、上記計算によって得た補正後のCy3−Sample Bの蛍光値を用いて、核酸マイクロアレイ上のすべてのスポット対間の比較値、すなわち、以下の数式を用いて、Log Ratio(Sample A/Sample B)を得た。
Log Ratio(Sample A/Sample B)=Log2(F1/F2’)
次に、計算したLog Ratio(Sample A/Sample B)の平均値を計算し、その平均値がゼロとなるように、すべてのLog Ratio(Sample A/Sample B)値を補正した。
次に核酸マイクロアレイ1と2との間で、同一Block Number、同一Column Number、同一Row Numberから構成されるスポット対間で下記の式を用いて、核酸マイクロアレイ1と2間でアレイ上の全スポット対に対して、Log Ratio(Cot−1/Cot−1)を計算した。
核酸マイクロアレイ1と2の間に対するLog Ratio(Cot−1/Cot−1)=Log(Fc1/Fc2)
このLog Ratio(Cot−1/Cot−1)値が0.6以上のものを異常スポットとした。
次に、削除対象とするスポット対の一例を図18に示した。染色体IDが834から836番(0番からはじまっている数字)は同一のプローブ核酸をスポットしたスポット対であるが、そのLog Ratio(Cot−1/Cot−1)値は、すべて0.6以上であり、すべてが削除対象の異常スポットであった。
これらの中で、少なくとも一つのスポット対を残す方法の一例として、本実施例では、Log Ratio(Cot−1/Cot−1)値の最も小さな値を残すことを行っており、上記の例では、染色体IDが834番を本実施例では残している。
これらのLog Ratio(Cot−1/Cot−1)値を持つLog Ratio(Sample A/Sample B)値は、染色体IDの若いもの順に0.058、0.201、0.169となり、本染色体番号に対する部位は欠失も増幅もない部分、すなわちLog Ratio(Sample A/Sample B)値がゼロに近ければ近いほど正解に近いことを示しており、本実施列で選択した834番は、3つの中でLog Ratio(Sample A/Sample B)値が最も小さな値を示しており、本実施例で行った最も低いLog Ratio(Cot−1/Cot−1)値を持つLog Ratio(Sample A/Sample B)値のみ残し、それ以外の異常スポットと判定されたスポット対を削除する方法が好ましいことをこれらの結果は示している。
以下、ID番号が、1536から1538番、1704から1706番、1863から1865番も同様に、最も中間値に近いLog Ratio(Cot−1/Cot−1)値を残すことで、そのプローブ核酸に由来する情報が消失してしまうことを防いでいる。
[実施例4] 同一アレイ内及び異なるアレイ間で異常スポットを削除した場合の解析結果
<未精製標識試料核酸の調製>
比較例1の<未精製標識試料核酸の調製>と同様の方法で、Cy3−Sample A DNAとCy3−Sample B DNAとを調製した。なお、Sample A DNAは、欠失部位を持つ患者検体から採取したもの、Sample B DNAは、正常人から採取した検体を用いた。
<未精製標識異常検出(補正)核酸の調製>
比較例1の<未精製標識異常検出(補正)核酸の調製>と同様の方法で、Cy5−Cot−1 DNAを調製した。なお、核酸マイクロアレイ1、2にハイブリダイゼーションする標識異常検出(補正)核酸Cy5−Cot−1 DNAはすべて同一の調製ロットから小分けしたものを使用した。
<標識異常検出(補正)核酸Cy5−Cot−1 DNAを含むハイブリダイゼーション用溶液の調製>
比較例1の<標識異常検出核酸(標識補正核酸)Cot−1 DNAを含むハイブリダイゼーション用溶液の調製>と同様の方法で調製した。
<標識試料核酸、標識異常検出(補正)核酸を含むハイブリダイゼーション用溶液の調製>
比較例1の<標識試料核酸、標識異常検出(補正)核酸を含むハイブリダイゼーション用溶液の調製>と同様の方法で調製した。
<核酸マイクロアレイの前処理>
比較例1の<核酸マイクロアレイの前処理>と同様の方法で前処理を行った。なお、ここでは、662種のBACプローブDNAを3個ずつスポットした核酸マイクロアレイを2枚用いた。
<ハイブリダイゼーション>
比較例1の<ハイブリダイゼーション>と同様の方法でハイブリダイゼーションを行った。
<データ取り込み>
比較例1の<データ取り込み>と同様の方法でデータの取り込みを行った。
<データ処理及び結果>
一枚目の核酸マイクロアレイに対して、同一プローブ核酸をスポットしたスポット間で考えられる組み合わせから構成されたスポット対間で、Cy5−Cot−1 DNAに由来する蛍光値を用いて、Log Ratio(Cot−1/Cot−1)を計算した。例えば、本実施例の場合は同一プローブ核酸をスポットしたスポットの数が3個であるので、スポットA,B,Cとすると、下記の式を用いてLog Ratio(Cot−1/Cot−1)を計算した。なお、蛍光値はバックグラウンド蛍光値を差し引いたものを用いた。
スポットAとB間 Log Ratio(Cot−1 A/Cot−1 B)
スポットAとC間 Log Ratio(Cot−1 A/Cot−1 C)
スポットBとC間 Log Ratio(Cot−1 B/Cot−1 C)
次に、核酸マイクロアレイ上に存在するすべてのスポット対間に対して、上記の式によってLog Ratio(Cot−1/Cot−1)値を計算し、次にその平均値がゼロになるようにすべての計算値を補正し、更にそれらの値の絶対値を計算した。
上記計算式によって計算したLog Ratio(Cot−1/Cot−1)の値が0.6以上のものを削除対象スポット(本実施例では、核酸マイクロアレイ内での異常スポット削除と、核酸マイクロアレイ間での異常スポット削除とが混同しないように、あえて前者を削除対象スポットと呼んだ。)とした。例えば、スポットAとBの間のLog Ratio(Cot−1 A/Cot−1 B)の値、スポットAとCとの間のLog Ratio(Cot−1 A/Cot−1 C)の値の両方ともが0.6以上の場合には、スポットAを削除対象スポットとした。また、スポットAとBとの間のLog Ratio(Cot−1 A/Cot−1 B)の値のみが0.6以上の場合には、残る組み合わせの中で最も大きなLog Ratio(Cot−1/Cot−1)の値をとるスポット間とを考慮して、削除対象スポットを決定した。例えば、スポットAとCとの間のLog Ratio(Cot−1 A/Cot−1 B)の値が次に大きな値であった場合には、スポットAを削除対象スポットとした。また、すべての考えられるスポット間の組み合わせのLog Ratio(Cot−1/Cot−1)値が0.6以上の場合には、全スポットを削除対象スポットとした。さらに、削除対象スポットに由来するCy3−Sample側の蛍光値を削除した。
もう一枚の核酸マイクロアレイに対しても同様の工程によって、削除対象スポットを決定し、削除した。
次に、核酸マイクロアレイ1のCy3−Sample A DNA由来の蛍光値をF1、Cy5−Cot−1 DNA由来の蛍光値をFc1、核酸マイクロアレイ2のCy3−Sample B DNA由来の蛍光値をF2、Cy5−Cot−1 DNA由来の蛍光値をFc2とし、以下の式を用いて、補正後のCy3−Sample B DNAの蛍光値を得た。
補正後のCy3−Sample B DNAの蛍光値(F2’)=F2×Fc1/Fc2
この数式を用いて、核酸マイクロアレイ1と核酸マイクロアレイ2との間で、同一Block Number、同一Column Number、同一Row Numberから構成されるすべてのスポット対間について、補正後のCy3−Sample B DNAの蛍光値を得た。
次に、上記計算によって得た補正後のCy3−Sample B DNAの蛍光値を用いて、核酸マイクロアレイ上のすべてのスポット対間の比較値、すなわち、以下の数式を用いて、Log Ratio(Sample A/Sample B)を得た。
Log Ratio(Sample A/Sample B)=Log2(F1/F2’)
次に、計算したLog Ratio(Sample A/Sample B)の平均値を計算し、その平均値がゼロとなるように、すべてのLog Ratio(Sample A/Sample B)値を補正した。
X軸に染色体番号を、Y軸に上記式によって計算したLog Ratio(Sample A/Sample B)値をプロットしたのが、図19である。なお、図19は、同種のプローブがスポットされた3スポットにおける比較値の平均値をプロットしたものを示している。また、○が常染色体、●がX染色体に相当する部分を示している(以下の図でも同様。)。
次に、核酸マイクロアレイ1と2との間で、同一Block Number、同一Column Number、同一Row Numberから構成されるスポット対間で下記の式を用いて、核酸マイクロアレイ1と2間でアレイ上の全スポット対に対して、Log Ratio(Cot−1/Cot−1)を計算した。
核酸マイクロアレイ1と2の間に対するLog Ratio(Cot−1/Cot−1)=Log(Fc1/Fc2)
次に、上記計算結果から得たLog Ratio(Cot−1/Cot−1)の平均値を計算し、その平均値がゼロとなるように、すべてのLog Ratio(Cot−1/Cot−1)値を補正した。この値が0.6を超えるスポット対を異常スポットとした。また、削除対象スポットをどちらかの核酸マイクロアレイ若しくはその両方に持つスポットに由来するスポット対も異常スポットとした。
次に、これらの異常スポットに由来するLog Ratio(Sample A/Sample B)値を削除した。
X軸に染色体番号を、Y軸に方法によって異常スポットを削除したLog Ratio(Sample A/Sample B)値をプロットしたのが、図20である。
図19は図20と比較して、○でプロットした常染色体部分(この部分はゼロに近づくほど良い)のバラツキが多いように見える。
また、図19の分散度(STDEV)の値が0.134に対して、図20の分散度が0.126となり、明らかに、異常スポットを削除することによって、データのバラツキが減少している。
以上の結果は、本実施例の方法によって、バラツキが低減され、より精度の高い核酸マイクロアレイの結果が得られることを示している。
[実施例5] 標識異常検出核酸として正常細胞由来の核酸を使用した場合の解析結果
<DNAの制限酵素による切断>
1.5μgの試料核酸(正常であることが既知の正常試料核酸(female))を1.5mLマイクロチューブ(プラチナチューブ、ビーエム機器株式会社)に入れ、制限酵素DpnII用バッファーを5μL、制限酵素DpnIIを1.5μL(20U)加え、更に水を添加することで全量を50μLにした。このマイクロチューブを37℃に設定したブロックインキュベータBI−535A(株式会社アステック)に入れ、2時間酵素反応を行った。2時間後、ブロックインキュベータからマイクロチューブを取り出した。
<制限酵素処理したDNAの精製>
精製は、NucleoSpinキット(日本ジェネティクス株式会社)を用いて行った。制限酵素により断片化したDNAの全量50μLに対して、100μLのNTバッファーを添加し、混合後、軽くスピンダウンを行った。この溶液をNucleoSpinのカートリッジに全量添加し、微量高速冷却遠心機MX−300(株式会社トミー精工)に入れ、11000rpmで1分間遠心を行った。通過液を捨て、カートリッジに洗浄液NT−3バッファーを600μL添加し、再び、MX−300を用いて11000rpmで1分間遠心処理を行った。通過液を捨て、もう一度、MX−300を用いて11000rpmで2分間、カラム中に残留している溶液を完全に除去するために遠心を行った。カートリッジを遠心機から取り出し、水を46μLカートリッジに添加し、1分間のインキュベーションを行った後、11000rpmで1分間遠心を行った。
<標識化DNAの調製>
標識は、BioPrime Array CGH Genomic Labeling System(invitrogen社)を用いた。制限酵素処理をし、精製を行ったDNA 21μLを1.5mLマイクロチューブにいれ、そこへ、BioPrimeキットに付属の10xdCTP nucleotide mixを20μL入れ、95℃に加熱したブロックインキュベータ上で5分間過熱した。5分後、マイクロチューブをブロックインキュベータから取り出し、氷上にて急冷した。10分間急冷した後、BioPrimeキット付属の10xdCTP nucleotide mixを5μL、1mMCy dCTP (GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社)を3μL、BioPrimeキット付属のExo−Klenowを1μL添加し、軽く攪拌、スピンダウンを行った後、37℃に加熱したブロックインキュベータ上で2時間標識化反応を行った。
<標識化DNAの精製>
精製は、制限酵素処理したDNAの精製と同様の方法で行った。ただし、DNAの脱着溶液として、水60μLを使用した。
上記工程は、試料核酸を2種(検体試料と正常試料、即ちSample AとB)及び補正核酸に対して行った。ただし、試料核酸に対しては、Cy3で標識し、異常検出(補正)核酸に対しては、Cy5で標識した。なお、本実施例では、試料核酸(Sample AとB)を標識した試料が標識試料核酸、正常試料核酸(female)を標識した試料が標識異常検出(補正)核酸に相当する。
<精製標識化DNAを含むハイブリダイゼーション用溶液の調製>
試料核酸及び異常検出(補正)核酸由来の精製した標識化DNAをそれぞれ28μLずつ1.5mLマイクロチューブに入れ、そこへ、ヒトCot−1 DNAを65μL、3M 酢酸ナトリウム(pH5.2)を12μL、−20℃のエタノールを310μL添加し、軽く攪拌した後、−80℃で10分間静置し、MX−300を用いて、15000rpm、4℃で30分間遠心を行った。遠心後、マイクロチューブを取り出し、沈殿物をとらない様に上清を捨てた後、マイクロチューブ及び沈殿物中のエタノールを蒸発させるために10分間マイクロチューブのフタを空けたまま、暗所に置いた。次に、マイクロチューブに、ハイブリバッファーMM#1を63μL、100mg/μLの酵母tRNAを9μL、20% SDSを18μL添加し、30分間暗所で静置した。30分後、沈殿物が完全に溶けるまで攪拌を行った。
この様にすることで、検体試料由来の標識試料核酸と異常検出(補正)核酸由来の標識異常検出核酸(標識補正核酸)との混合物、正常試料由来の標識試料核酸と異常検出(補正)核酸由来の標識異常検出(補正)核酸との混合物の2種の精製標識化DNAを含むハイブリダイゼーション用溶液を得た。
<核酸マイクロアレイの前処理>
核酸マイクロアレイの前処理は、比較例1の<核酸マイクロアレイの前処理>と同様の方法で行った。なお、核酸マイクロアレイとしては、BACクローンから調製したプローブDNAを日本ガイシ株式会社にてスポットした、662種のプローブDNAを3スポットずつスポットした、合計1986個のスポット数を持つ、核酸マイクロアレイを用いた。
<プレハイブリダイゼーション>
精製標識化DNAを含むハイブリダイゼーション用溶液を75℃で8分間加熱し、42℃で30分間加熱することでプレハイブリダイゼーションを行った。
<ハイブリダイザーを用いたハイブリダイゼーション>
ハイブリダイザーは、HYBRIMASTER HS−300(アロカ株式会社)を用いた。ハイブリダイザーに核酸マイクロアレイを設置後、プレハイブリダイゼーションした溶液を核酸マイクロアレイ上に塗布した。ハイブリダイゼーション温度は、42℃、ハイブリダイゼーション時間は、48時間行った。ハイブリダイゼーションの間、ローラーで攪拌するように設定した。Cy3−Sample A DNAとCy3−Sample B DNAを含むハイブリダイゼーション用溶液を、それぞれの核酸マイクロアレイ上に滴下し、ハイブリダイザーのスタートボタンを押した。洗浄条件は、(1)2×SSCの溶液を5mL、室温、30秒間、(2)50%ホルムアミド/2×SSC(pH7.0)溶液を5mL、50℃、15分間、(3)2×SSC/0.1%SDS(pH7.0)溶液を5mL、50℃、30分間、(4)2×SSCの溶液を5mL、室温、5分間に設定し、洗浄中は、ローラーを用いて攪拌するように設定した。ハイブリダイザーによるハイブリダイゼーションを行い、スピンドライヤー−Mini
Model2350で1分間の遠心を行うことで核酸マイクロアレイを乾燥させた。
<データ取り込み>
比較例1の<データ取り込み>と同様の方法でデータの取り込みを行った。
<データ処理及び結果>
核酸マイクロアレイ1のCy3−Sample A由来の蛍光値と核酸マイクロアレイ2のCy3−Sample B由来の蛍光値との間で、同一Block Number、同一Column Number、同一Row Numberから構成されるスポット対間で下記の式を用いて、核酸マイクロアレイ1と2の間でアレイ上の全スポット対に対して、Log Ratio(Sample A/Sample B)を計算した。X軸に染色体番号を、Y軸にこのLog Ratio(Sample A/Sample B)値をプロットしたのが、図21である。
すなわち、いかなる補正も行っていない場合の結果を示した。
核酸マイクロアレイ1のCy3−Sample A DNA由来の蛍光値をF1、Cy5−Female DNA由来の蛍光値をFc1、核酸マイクロアレイ2のCy3−Sample B DNA由来の蛍光値をF2、Cy5−Female DNA由来の蛍光値をFc2とし、以下の式を用いて、補正後のCy3−Sample B DNAの蛍光値を得た。
補正後のCy3−Sample B DNAの蛍光値(F2’)=F2×Fc1/Fc2
この数式を用いて、核酸マイクロアレイ1と核酸マイクロアレイ2との間で、同一Block Number、同一Column Number、同一Row Numberから構成されるすべてのスポット対間について、補正後のCy3−Sample B DNAの蛍光値を得た。
次に、上記計算によって得た補正後のCy3−Male DNAの蛍光値を用いて、核酸マイクロアレイ上のすべてのスポット対間の比較値、すなわち、以下の数式を用いて、Log Ratio(Sample A/Sample B)を得た。
Log Ratio(Sample A/Sample B)=Log2(F1/F2’)
次に、計算したLog Ratio(Sample A/Sample B)の平均値を計算し、その平均値がゼロとなるように、すべてのLog Ratio(Sample A/Sample B)値を補正した。
X軸に染色体番号を、Y軸に同一プローブ核酸をスポットしたスポット対間で平均値を計算したLog Ratio(Sample A/Sample B)値をプロットしたのが図22である。
次に核酸マイクロアレイ1と2との間で、同一Block Number、同一Column Number、同一Row Numberから構成されるスポット対間で下記の式を用いて、核酸マイクロアレイ1と2間でアレイ上の全スポット対に対して、Log Ratio(Cot−1/Cot−1)を計算した。
核酸マイクロアレイ1と2の間に対するLog Ratio(Cot−1/Cot−1)=Log(Fc1/Fc2)
次に、上記計算結果から得たLog Ratio(Cot−1/Cot−1)の平均値を計算し、その平均値がゼロとなるように、すべてのLog Ratio(female/female)値を補正した。
上記結果から得た補正Log Ratio(Cot−1/Cot−1)値が0.6を超える補正Log Ratio(female/female)値を持つスポット対から構成されたLog Ratio(Sample A/Sample B)値を異常スポットとし、図22のグラフ上から削除した結果が図23である。
図21と図22とを比較すると、標識異常検出(補正)核酸を用いた標識値の補正により、データのバラツキが大幅に減少していることがわかる。
さらに、図22と図23とを比較すると、標識異常検出(補正)核酸を用いた異常スポットの削除法により、更にデータのバラツキが低減していることがわかる。
以上の結果は、本実施例の方法によって、バラツキが低減され、より精度の高い核酸マイクロアレイの結果が得られることを示している。
[実施例6] 標識異常検出核酸としてベクター由来の核酸を用いた場合の解析結果
<未精製標識試料核酸の調整>
比較例1の<未精製標識試料核酸の調整>と同様の方法で行った。
<異常検出核酸の調整>
RPCI‐11 vectorより1クローンを選択し、LB培地に100mg/mLになるようにクロラムフェニコールを添加し、BE−43FL(タイテック社製培養器)を用いて、37℃で一晩培養した。これをQIAgen社のQIAamp miniprep kitを用いてBACを抽出した。抽出したBACをニッポンジーン社の制限酵素NotI用いて消化し、アガロース電気泳動に供した。7kb付近の断片を切り出し、MN社のNucleospinカラムを用いてアガロース中から精製した。これをインビトロジェン社T4 DNA ligaseを用いて、4℃で一晩ligationを実施し、pBAC10Lを取得した。
pBAC10Lをインビトロジェン社DH−10Bケミカルコンピテントセルに加え、氷上で30分静置後、42℃で30秒加湿し、再度氷上に2分静置した。これにSOC培地600μL添加し、100mg/mLクロラムフェニコール入りLB培地に植菌した。これを37℃で一晩培養後、QIAprep spin miniprep kitを用いてBAC DNAを抽出しベクター由来の異常検出核酸を取得した。
<未精製標識異常検出核酸の調整>
1.7mLマイクロチューブ(プラチナチューブ、ビーエム機器株式会社)に、<異常検出核酸の調整>で調整したベクター由来の異常検出核酸を6μg(6μL)、水を5μL、2.5xRandom Primers Solutionを20μL入れ、BLOCK INCUBATOR BI−535A上にて、95℃で5分間熱処理を行った。5分後、マイクロチューブを取り出し、37℃に設定したBLOCK INCUBATOR BI−535Aの中に入れ、15分間静置した。10xdCTP Nucleotide Mixを5μL、Cy5−dCTP Bulk Pack 250nmol(GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社)を3μL、Exo−Klenow Fragmentを1μL添加し、37℃で2時間BLOCK INCUBATOR BI−535Aにて、標識化反応と共に増幅反応を行った。2時間後、マイクロチューブをインキュベータから取り出し、65℃に設定したBLOCK INCUBATOR BI−535A上にて、15分間加熱処理を行い、反応溶液中に含まれているExo−Klenow Fragmentを失活させた。
<標識異常検出核酸を含むハイブリダイゼーション用溶液の調整>
上記<未精製標識異常検出核酸の調整>で調整した未精製標識異常検出核酸Cy5−ベクターDNAを20μL、未標識Cot−1 DNA 62μL(62μg、invitrogen)を1.7mLマイクロチューブに入れ、3M酢酸ナトリウム(pH5.2)を8μL、−20℃のエタノールを360μL添加し、混合後、10分間−80℃で放置した。その後、TOMY製遠心機MX−300を用いて、15000rpmで30分間、4℃で遠心を行った。遠心後、沈殿物が遠心チューブの底にたまるので、その沈殿物を吸い込まないように注意しながら、上清を除去した。次に、遠心チューブのフタを開けたまま10分間放置し、残存するエタノールを除去した。10分後、ホルムアミドを40%、SSC、デキストラン硫酸を0.075mg/μLに調製したハイブリダイゼーション調製溶液を52μL、10%SDSを8μL添加し、30分間静置した。30分後、攪拌することで沈殿物を溶解し、その後、十分に攪拌した。
<標識試料核酸、標識異常検出核酸を含むハイブリダイゼーション用溶液の調整>
上記<未精製標識試料核酸の調製>で調製したFemale DNAの未精製標識試料核酸を20μL、<標識異常検出核酸を含むハイブリダイゼーション用溶液の調製>で調製した溶液を60μL、1.7mLマイクロチューブの中に入れ、十分にVortex処理を行うことで、攪拌を行った。また同様に、<未精製標識試料核酸の調製>で調製したMale DNAの未精製標識試料核酸を20μL、上記<標識異常検出核酸Cot−1 DNAを含むハイブリダイゼーション調製溶液の調製>で調製した溶液を60μL、1.7mLマイクロチューブの中に入れ、十分にVortex処理を行うことで、攪拌を行った。
<CGHアレイの前処理>
CGHアレイの前処理は、比較例1の<核酸マイクロアレイの前処理>と同様の方法で行った。なお、CGHアレイとしては、BACクローンから調製したプローブDNAを日本ガイシ株式会社にてスポットした、712種のプローブDNAを各3セット、合計2136個のスポットを持つ、核酸マイクロアレイを用いた。
<ハイブリダイゼーション>
比較例1の<ハイブリダイゼーション>と同様の方法で行った。
<データ取り込み>
比較例1の<データ取り込み>と同様の方法で行った。
<データ処理及び結果>
CGHアレイ1のCy3−Male由来の蛍光値とCGHアレイ2のCy3−Female由来の蛍光値とに基づき、CGHアレイ1と2上の全スポット対について、Log Ratio(Female/Male)を計算した。
具体的には、以下の数式を用いた。
Log Ratio(Female/Male)=Log[(Cy3−Female由来の蛍光値)/(Cy3−male由来の蛍光値)]
各スポット対は、同一Block Number、同一Column Number、同一Row Numberを有する、CGHアレイ1上のスポット及びCGHアレイ2上のスポットである。
X軸に染色体番号を、Y軸にこのLog Ratio(Female/Male)値をプロットしたのが、図24である。すなわち、いかなる補正も行っていない場合の結果を示した。
CGHアレイ1のCy3−Male由来の蛍光値をF1、Cy5−ベクターDNA由来の蛍光値をFc1、CGHアレイ2のCy3−FemaleDNA由来の蛍光値をF2、Cy5−ベクターDNA由来の蛍光値をFc2とし、以下の式を用いて、補正後のCy3−FemaleDNAの蛍光値を得た。
補正後のCy3−FemaleDNAの蛍光値(F2’)=F2×Fc1÷Fc2
この数式を用いて、CGHアレイ1とCGHアレイ2上のすべてのスポット対間について、補正後のCy3−FemaleDNAの蛍光値を得た。
次に、CGHアレイ上のすべてのスポット対間の比較値、すなわち、上記計算によって得た補正後のCy3−Male DNAの蛍光値を用いて、以下の数式からLog Ratio(Female/Male)を得た。
Log Ratio(Female/Male)=Log(F1÷F2’)
次に、計算したLog Ratio(Female/Male)の平均値を計算し、その平均値がゼロとなるように、すべてのLog Ratio(Female/Male)値を補正した。
X軸に染色体番号を、Y軸に補正後のLog Ratio(Female/Male)値をプロットしたのが図25である。
次にCGHアレイ1と2間でアレイ上の全スポット対に対して、下式を用いてLog Ratio(ベクターDNA/ベクターDNA)を計算した。各スポット対は、同一Block Number、同一Column Number、同一Row Numberを有する、CGHアレイ1上のスポット及びCGHアレイ2上のスポットである。
CGHアレイ1と2の間に対するLog Ratio(ベクターDNA/ベクターDNA)=Log(Fc1÷Fc2)
次に、上記計算結果から得たLog Ratio(Cot−1/Cot−1)の平均値を計算し、その平均値がゼロとなるように、すべてのLog Ratio(ベクターDNA/ベクターDNA)値を補正した。
上記結果から得た補正Log Ratio(ベクターDNA/ベクターDNA)値が0.6を超えるスポット対を異常スポットとし、該異常スポットのLog Ratio(Female/Male)値を図25のグラフ上から削除した結果が図26である。
図24と図25とを比較すると、標識異常検出核酸を用いた標識値の補正により、データのバラツキが大幅に減少していることがわかる。
さらに、図25と図26とを比較すると、標識異常検出(補正)核酸を用いた異常スポットの削除法により、更にデータのバラツキが低減していることがわかる。
以上の結果は、本実施例の方法によって、バラツキが低減され、より精度の高いCGHアレイの結果が得られることを示している。

Claims (15)

  1. プローブ核酸が固定化されたスポットを複数有する核酸マイクロアレイの品質検査方法であって、
    前記核酸マイクロアレイにおける任意のスポット(X1m)は、標的配列(a)と相補的なプローブ配列(a’)と、該プローブ配列(a’)とは異なる配列(b’)とを含むプローブ核酸が固定化され、
    以下の工程;
    配列(b’)に結合可能な配列(b)を含み、標識された異常検出核酸(B)を該核酸マイクロアレイ上のスポット(X1m)に付与し、配列(b’)と配列(b)とをハイブリダイズする工程、
    スポット(X1m)でハイブリダイズした異常検出核酸(B)の標識量値(Fc1m)を得る工程、
    該標識量値(Fc1m)に基づいて、スポット(X1m)が、ハイブリダイゼーション能力が正常でない異常スポットであるか否か判定する工程を含む方法であって、
    前記核酸マイクロアレイ上のスポット(X1i)と、それと同一の配列を有するプローブ核酸を含む品質検査用の核酸マイクロアレイ上のスポット(X2i)からなるスポット対がn対存在し、
    スポット(X1i)及びスポット(X2i)からなるスポット対間において、スポット(X1i)における異常検出核酸(B)の標識量値(Fc1i)と、スポット(X2i)における異常検出核酸(B)の標識量値(Fc2i)との各比較値(Di)を、n対全てのスポット対について計算する工程、
    n個の比較値(D1)〜(Dn)からそれらの代表値(A)を得る工程、及び
    比較値(Dm)と代表値(A)との差の大きさによって、スポット(X1m)と、同一の配列を有するプローブ核酸が固定化されたスポット(X2m)とが異常スポット対であるか否か判定する工程
    を含む方法。ここでnは2以上の整数である。iは整数を表し、1≦i≦nかつ1≦m≦nである。
  2. 請求項1に記載の方法であって、
    前記比較値(Di)が下記式(1)により算出されるものであり、
    式(1) 比較値=Log{(標識量値(Fc1))/(標識量値(Fc2))}
    代表値(A)が、n個の比較値(D1)〜(Dn)の平均値又はメディアン値であって、
    比較値(Dm)と代表値(A)との差が、前記n個の比較値(D1)〜(Dn)の標準偏差値より大きい場合に、スポット(X1m)及びスポット(X2m)を含む該スポット対を異常スポット対と判定する、方法。
  3. 請求項1に記載の方法であって、
    前記比較値(Di)が下記式(1)により算出されるものであり、
    式(1) 比較値=Log{(標識量値(Fc1))/(標識量値(Fc2))}
    代表値(A)が、n個の比較値(D1)〜(Dn)の平均値又はメディアン値であって、
    比較値(Dm)と代表値(A)との差が0.6以上の場合に、スポット(X1)及びスポット(X2)を含む該スポット対を異常スポット対と判定する、方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、
    同一の配列を有するプローブ核酸が固定化されているスポット対が複数存在し、
    前記複数のスポット対のうち、前記核酸マイクロアレイ上のすべてのスポットが異常スポットと判断されても、少なくとも一つのスポットは異常スポットとして削除しない、方法。
  5. 請求項4に記載の方法であって、
    すべてのスポットが異常スポットと判断された場合に、異常スポットとして削除しないスポットが、前記複数のスポット対の比較値の中で代表値に最も近い比較値を示すスポット対に含まれる、方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法であって、
    さらに、スポット(X1mとX2m)が異常スポット対であるか否か判定する前記工程において異常スポットと判定されたスポット(X1m)及び(X2m)以外のスポット(Xi)の標識量値(Fi)を下記式(2)により補正した補正標識量値(F’i)を得る工程を含む、方法。
    式(2) 補正標識量値(F’i)=標識量値(Fi)×(標識量値(Fci)/標識量値(Fci))
    (ただし、「標識量値(F1i)」とは、スポット(X1i)で前記標的配列(a)と相補的なプローブ配列(a’)とハイブリダイズした標的核酸(A)の標識量値のことである。)
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法であって、スポットに固定化されるプローブ核酸がBAC DNA又はcDNAである、方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法であって、標識が蛍光によるものである、方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法であって、異常検出核酸(B)が、検体の核酸とは異なり、プローブ核酸上の配列に相補的な配列を持つ核酸である、方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法であって、異常検出核酸(B)が、正常細胞由来の核酸である、方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法であって、異常検出核酸(B)が、反復配列を含む核酸である、方法。
  12. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法であって、異常検出核酸(B)が、Cot−1DNAである、方法。
  13. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法であって、異常検出核酸(B)が、ベクター由来の核酸である、方法。
  14. 請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法であって、異常検出核酸(B)を、標的核酸1モルに対して、1モル以上使用する、方法。
  15. 請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法におけるデータ処理を行うためのプログラムであって、
    スポット(X1i)及びスポット(X2i)からなるスポット対において、標識量値(Fc1i)と標識量値(Fc2i)との比較値(Di)を計算する手順、
    n個の比較値(D1)〜(Dn)からそれらの代表値(A)を得る手順、
    比較値(Dm)と代表値(A)との差の大きさによってスポット(X1m)が異常スポットであるか否か判定する手順、
    を実行するためのプログラム。
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