JP5762140B2 - ゴルフボール - Google Patents

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Description

本発明は、ゴルフボールに関する。詳細には、本発明は、第一層と、第二層と、この第一層と第二層との間に位置する接着層とを備えたゴルフボールに関する。
ゴルファーは、ゴルフボールのスピン性能を重視する。バックスピンの速度が大きいと、ランが小さい。ゴルファーにとって、バックスピンのかかりやすいゴルフボールは、目標地点に静止させやすい。サイドスピンの速度が大きいと、ゴルフボールは曲がりやすい。ゴルファーにとって、サイドスピンのかかりやすいゴルフボールは、意図的に曲げやすい。スピン性能に優れたゴルフボールは、コントロール性能に優れている。上級ゴルファーは、特にショートアイアンでのショットにおけるコントロール性能を重視する。
ゴルファーにとって、ゴルフボールの耐久性も重要である。繰り返しの打撃によっても破損しないゴルフボールが、望まれている。さらに、ショートアイアンでショットされたときにカバーに傷及びシワが生じにくいゴルフボールが、望まれている。
コントロール性能の観点から、種々の構造のゴルフボールが提案されている。特開平11−137725号公報には、アイオノマー樹脂からなる内側カバーと、熱可塑性エラストマーからなる外側カバーとを備えたゴルフボールが開示されている。特開2001−54588公報には、45から61であるショアD硬度を有する内側カバーと、35から55であるショアD硬度を有する外側カバーとを備えたゴルフボールが開示されている。特開2006−34745公報には、アイオノマー樹脂からなる中間層と、熱可塑性ポリウレタンエラストマーからなるカバーとを備えたゴルフボールが開示されている。特開2006−289059公報には、スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーを含む中間層と、アイオノマー樹脂からなるカバーとを備えたゴルフボールが開示されている。
中間層(つまり内側カバー)とカバーとを備えたゴルフボールにおいて、この中間層とカバーとの不十分な密着は、ゴルフボールの破損を招く。不十分な密着は、カバーの傷及びシワも招く。不十分な密着はさらに、ゴルフクラブで打撃されたときのエネルギー伝達のロスを招く。このロスは、ゴルフボールの反発性能を阻害する。
上記4件の公報に開示されたゴルフボールでは、中間層とカバーとの間に接着層が存在する。特開平11−137725号公報に開示されたゴルフボールは、オレフィン系化合物とグリシジルメタクリレートとの共重合体からなる接着層を有する。特開2001−54588公報に開示されたゴルフボールは、ポリウレタン又は塩素化ポリオレフィンからなる接着層を有する。特開2006−34745公報に開示されたゴルフボールは、二液硬化型エポキシ樹脂からなる接着層を有する。特開2006−289059公報に開示されたゴルフボールは、カルボキシル基含有ポリウレタンとポリカルボジイミドとの反応生成物からなる接着層を有する。
特開平11−137725号公報 特開2001−54588公報 特開2006−34745公報 特開2006−289059公報
従来のゴルフボールにおける、中間層とカバーとの密着性は、不十分である。コントロール性能を付与する目的で軟質なカバーが用いられたゴルフボールでは、この密着性が特に不十分である。
本発明の目的は、第一層と第二層との密着性に優れたゴルフボールの提供にある。
本発明に係るゴルフボールは、
(1)第一層、
(2)その材質が上記第一層の材質とは異なる第二層、及び
(3)接着剤から形成されており、上記第一層と上記第二層との間に位置する接着層
を備える。接着剤の基材ポリマーは、ポリアミン化合物を含有する硬化剤によってビスフェノールA型エポキシ樹脂が硬化されて得られる二液硬化型エポキシ樹脂である。この接着剤のゲル分率は、40%以上80%以下である。
好ましくは、接着剤におけるビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ当量と硬化剤のアミン活性水素当量との比は、2.0/1.0以上13.0/1.0以下である。好ましくは、硬化剤のアミン活性水素当量は、100g/eq以上800g/eq以下である。
接着剤の揮発分が水を含んでもよい。好ましくは、揮発分の全量に対する水の量の比率は、90質量%以上である。
好ましくは、第一層と第二層との接着強度は、20N以上である。
第一層は、樹脂組成物から成形されうる。好ましくは、この樹脂組成物の基材ポリマーの主成分は、アイオノマー樹脂、ポリウレタン、スチレンブロック含有エラストマー及びポリアミドからなる群から選択された1又は2以上である。第二層は、樹脂組成物から成形されうる。好ましくは、この樹脂組成物の基材ポリマーの主成分は、アイオノマー樹脂、ポリウレタン、スチレンブロック含有エラストマー及びポリアミドからなる群から選択された1又は2以上である。第一層の基材ポリマーの主成分は、上記第二層の基材ポリマーの主成分と異なる。
ゴルフボールは、複数の層を備えた本体と、この本体の外側に位置するペイント層とを備え得る。この本体の最も外側の層は、前述の第二層である。好ましくは、第二層の基材ポリマーの主成分は、ポリウレタンである。好ましくは、第二層は、48以下であるショアD硬度と、0.6mm以下である厚みとを有する。
本発明に係るゴルフボールは、ゲル分率が40%以上80%以下である接着剤からなる接着層を備えている。この接着層は、第一層と第二層との密着性を高める。このゴルフボールは、耐久性及び反発性能に優れる。
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボールが示された一部切り欠き断面図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1に示されたゴルフボール2は、球状のコア4と、このコア4を覆う接着層6と、この接着層6を覆うカバー8とを備えている。このコア4は、球状のセンター10と、このセンター10を覆う中間層12とを備えている。カバー8の表面には、多数のディンプル14が形成されている。カバー8の表面のうちディンプル14以外の部分は、ランド16である。このゴルフボール2は、カバー8の外側にペイント層及びマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。コア4、接着層6及びカバー8により、本体が構成される。カバー8は、本体の最も外側の層である。ゴルフボール2が、センター10と中間層12との間に、樹脂組成物又はゴム組成物からなる他の層を有してもよい。
このゴルフボール2の直径は、40mmから45mmである。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下が好ましく、42.80mm以下がより好ましい。このゴルフボール2の質量は、40g以上50g以下である。大きな慣性が達成されるとの観点から、質量は44g以上が好ましく、45.00g以上がより好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が好ましい。
センター10は、ゴム組成物が架橋されることで得られる。好ましい基材ゴムとして、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体及び天然ゴムが挙げられる。反発性能の観点から、ポリブタジエンが好ましい。ポリブタジエンと他のゴムとが併用される場合は、ポリブタジエンが主成分とされることが好ましい。具体的には、基材ゴム全量に対するポリブタジエンの量の比率は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上が特に好ましい。シス−1,4結合の比率が40%以上であるポリブタジエンが好ましく、この比率が80%以上であるポリブタジエンが特に好ましい。
センター10のゴム組成物は、共架橋剤を含んでいる。反発性能の観点から好ましい共架橋剤は、炭素数が2から8であるα,β−不飽和カルボン酸の、1価又は2価の金属塩である。好ましい共架橋剤の具体例としては、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛及びメタクリル酸マグネシウムが挙げられる。高い反発性能が達成されるという理由から、アクリル酸亜鉛及びメタクリル酸亜鉛が特に好ましい。
ゴルフボール2の反発性能の観点から、共架橋剤の量は、基材ゴム100質量部に対して10質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましい。ソフトな打球感の観点から、この量は50質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましい。
好ましくは、センター10のゴム組成物は、共架橋剤と共に有機過酸化物を含む。有機過酸化物は、架橋開始剤として機能する。有機過酸化物は、ゴルフボール2の反発性能を高める。好適な有機過酸化物として、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びジ−t−ブチルパーオキサイドが例示される。特に汎用性の高い有機過酸化物は、ジクミルパーオキサイドである。
ゴルフボール2の反発性能の観点から、有機過酸化物の量は、基材ゴム100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上が特に好ましい。ソフトな打球感の観点から、この量は3.0質量部以下が好ましく、2.5質量部以下がより好ましく、2.0質量部以下が特に好ましい。
好ましくは、センター10のゴム組成物は、有機硫黄化合物を含む。好ましい有機硫黄化合物としては、ジフェニルジスルフィド、ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4−フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(4−シアノフェニル)ジスルフィドのようなモノ置換体;ビス(2,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2−クロロ−5−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2−シアノ−5−ブロモフェニル)ジスルフィドのようなジ置換体;ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2−シアノ−4−クロロ−6−ブロモフェニル)ジスルフィドのようなトリ置換体;ビス(2,3,5,6−テトラクロロフェニル)ジスルフィドのようなテトラ置換体;及びビス(2,3,4,5,6−ペンタクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,3,4,5,6−ペンタブロモフェニル)ジスルフィドのようなペンタ置換体が例示される。有機硫黄化合物は、反発性能に寄与する。特に好ましい有機硫黄化合物は、ジフェニルジスルフィド及びビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィドである。
ゴルフボール2の反発性能の観点から、機硫黄化合物の量は、基材ゴム100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上が特に好ましい。ソフトな打球感の観点から、この量は2.0質量部以下が好ましく、1.5質量部以下がより好ましく、1.0質量部以下が特に好ましい。
比重調整等の目的で、センター10のゴム組成物が充填剤を含んでもよい。好適な充填剤として、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムが例示される。このゴム組成物が、充填剤として、高比重金属からなる粉末を含んでもよい。高比重金属の具体例として、タングステン及びモリブデンが例示される。充填剤の量は、センター10の意図した比重が達成されるように適宜決定される。特に好ましい充填剤は、酸化亜鉛である。酸化亜鉛は、比重調整としての役割のみならず、架橋助剤としての役割をも果たす。センター10のゴム組成物に、硫黄、老化防止剤、着色剤、可塑剤、分散剤等の各種添加剤が、必要に応じて適量配合される。センター10に、架橋ゴム粉末又は合成樹脂粉末が配合されてもよい。
ゴルフボール2の反発性能の観点から、センター10の表面硬度は65以上が好ましく、75以上がより好ましく、80以上が特に好ましい。ゴルフボール2の打球感の観点から、この表面硬度は95以下が好ましく、90以下がより好ましく、85以下が特に好ましい。センター10の表面にJIS−C型のスプリング式硬度計が押し付けられることにより、表面硬度が測定される。測定には、この硬度計が取り付けられた自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。
センター10の直径は、25.0mm以上41.5mm以下が好ましい。センター10の質量は、25g以上42g以下が好ましい。センター10の架橋温度は、通常は140℃以上180℃以下である。センター10の架橋時間は、通常は10分以上60分以下である。センター10が2以上の層から形成されてもよい。センター10が、その表面にリブを備えてもよい。
中間層12(第一層)は、樹脂組成物からなる。この樹脂組成物の基材ポリマーは、アイオノマー樹脂である。アイオノマー樹脂は、高弾性である。後述されるように、このゴルフボール2のカバー8は極めて薄い。このゴルフボール2がドライバーで打撃されると、中間層12が大きく変形する。アイオノマー樹脂が用いられた中間層12は、ドライバーでのショットにおける飛行性能に寄与する。
好ましいアイオノマー樹脂として、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体が挙げられる。好ましい二元共重合体は、80質量%以上90質量%以下のα−オレフィンと、10質量%以上20質量%以下のα,β−不飽和カルボン酸とを含む。この二元共重合体は、反発性能に優れる。好ましい他のアイオノマー樹脂として、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数が2以上22以下のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体が挙げられる。好ましい三元共重合体は、70質量%以上85質量%以下のα−オレフィンと、5質量%以上30質量%以下のα,β−不飽和カルボン酸と、1質量%以上25質量%以下のα,β−不飽和カルボン酸エステルとを含む。この三元共重合体は、反発性能に優れる。この二元共重合体及び三元共重合体において、好ましいα−オレフィンはエチレン及びプロピレンであり、好ましいα,β−不飽和カルボン酸はアクリル酸及びメタクリル酸である。特に好ましいアイオノマー樹脂は、エチレンと、アクリル酸又はメタクリル酸との共重合体である。
この二元共重合体及び三元共重合体において、カルボキシル基の一部は金属イオンで中和されている。中和のための金属イオンとして、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及びネオジムイオンが例示される。中和が、2種以上の金属イオンでなされてもよい。ゴルフボール2の反発性能及び耐久性の観点から特に好適な金属イオンは、ナトリウムイオン、亜鉛イオン、リチウムイオン及びマグネシウムイオンである。
アイオノマー樹脂の具体例としては、三井デュポンポリケミカル社の商品名「ハイミラン1555」、「ハイミラン1557」、「ハイミラン1605」、「ハイミラン1706」、「ハイミラン1707」、「ハイミラン1856」、「ハイミラン1855」、「ハイミランAM7311」、「ハイミランAM7315」、「ハイミランAM7317」、「ハイミランAM7318」、「ハイミランMK7320」及び「ハイミランMK7329」;デュポン社の商品名「サーリン6120」、「サーリン6320」、「サーリン6910」、「サーリン7930」、「サーリン7940」、「サーリン8140」、「サーリン8150」、「サーリン8940」、「サーリン8945」、「サーリン9120」、「サーリン9150」、「サーリン9910」、「サーリン9945」、「サーリンAD8546」、「HPF1000」及び「HPF2000」;並びにエクソンモービル化学社の商品名「IOTEK7010」、「IOTEK7030」、「IOTEK7510」、「IOTEK7520」、「IOTEK8000」及び「IOTEK8030」が挙げられる。2種以上のアイオノマー樹脂が併用されてもよい。
中間層12の樹脂組成物が、アイオノマー樹脂に代えて、又はアイオノマー樹脂と共に、他の樹脂を含んでもよい。他の樹脂としては、スチレンブロック含有熱可塑性エラストマー、ポリアミド及びポリウレタンが例示される。アイオノマー樹脂と他の樹脂とが併用される場合は、飛行性能の観点から、アイオノマー樹脂が基材ポリマーの主成分とされることが好ましい。基材ポリマー全量に対するアイオノマー樹脂の量の比率は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、85%以上が特に好ましい。
アイオノマー樹脂以外の、中間層12に適した樹脂は、スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーである。スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントとしてのポリスチレンブロックと、ソフトセグメントとを備えている。典型的なソフトセグメントは、ジエンブロックである。ジエンブロックの化合物としては、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン及び2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンが例示される。ブタジエン及びイソプレンが好ましい。2以上の化合物が併用されてもよい。
スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーには、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、SBSの水添物、SISの水添物及びSIBSの水添物が含まれる。SBSの水添物としては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)が挙げられる。SISの水添物としては、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)が挙げられる。SIBSの水添物としては、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)が挙げられる。
ゴルフボール2の反発性能の観点から、スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーにおけるスチレン成分の含有率は10質量%以上が好ましく、12質量%以上がより好ましく、15質量%以上が特に好ましい。ゴルフボール2の打球感の観点から、この含有率は50質量%以下が好ましく、47質量%以下がより好ましく、45質量%以下が特に好ましい。
本発明において、スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーには、SBS、SIS、SIBS、SEBS、SEPS及びSEEPS並びにこれらの水添物からなる群から選択された1種又は2種以上と、オレフィンとのアロイが含まれる。このアロイ中のオレフィン成分は、他の基材ポリマーとの相溶性向上に寄与すると推測される。このアロイが用いられることにより、ゴルフボール2の反発性能が向上する。好ましくは、炭素数が2以上10以下のオレフィンが用いられる。好適なオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン及びペンテンが例示される。エチレン及びプロピレンが特に好ましい。
ポリマーアロイの具体例としては、三菱化学社の商品名「ラバロンT3221C」、「ラバロンT3339C」、「ラバロンSJ4400N」、「ラバロンSJ5400N」、「ラバロンSJ6400N」、「ラバロンSJ7400N」、「ラバロンSJ8400N」、「ラバロンSJ9400N」及び「ラバロンSR04」が挙げられる。スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーの他の具体例としては、ダイセル化学工業社の商品名「エポフレンドA1010」及びクラレ社の商品名「セプトンHG−252」が挙げられる。
中間層12の樹脂組成物に、比重調整等の目的で充填剤が配合されてもよい。好適な充填剤として、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムが例示される。充填剤として、高比重金属からなる粉末が配合されてもよい。高比重金属の具体例として、タングステン及びモリブデンが挙げられる。充填剤の配合量は、中間層12の意図した比重が達成されるように適宜決定される。中間層12に、着色剤、架橋ゴム粉末又は合成樹脂粉末が配合されてもよい。
ドライバーでのショットにおける飛行性能の観点から、中間層12の硬度Hmは55以上が好ましく、58以上がより好ましく、60以上が特に好ましい。打球感の観点から、この硬度Hmは72以下が好ましく、70以下がより好ましく、68以下が特に好ましい。
本発明では、「ASTM−D 2240−68」の規定に準拠して、中間層12の硬度Hm及びカバー8の硬度Hcが測定される。測定には、ショアD型のスプリング式硬度計が取り付けられた自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。測定には、熱プレスで成形された、中間層12(又はカバー8)と同一の材料からなる、厚みが約2mmであるシートが用いられる。測定に先立ち、シートは23℃の温度下に2週間保管される。測定時には、3枚のシートが重ね合わされる。
ドライバーでのショットにおける飛行性能の観点から、中間層12の厚みTmは、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、0.7mm以上が特に好ましい。打球感の観点から、厚みTmは2.5mm以下が好ましく、2.0mm以下がより好ましい。厚みTmは、ランド16の直下において測定される。
中間層12の、接着層6又はカバー8との密着の観点から、中間層12の表面に処理が施され、その粗度が高められることが好ましい。処理の具体例としては、ブラッシング、研磨等が挙げられる。
カバー8(第二層)は、樹脂組成物からなる。この樹脂組成物の基材ポリマーは、熱可塑性ポリウレタンエラストマーである。熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、軟質である。熱可塑性ポリウレタンエラストマーからなるカバー8を備えたゴルフボール2がショートアイアンで打撃されたときのスピン速度は、大きい。熱可塑性ポリウレタンエラストマーからなるカバー8は、ショートアイアンでのショットにおけるコントロール性能に寄与する。熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、カバー8の耐擦傷性能にも寄与する。
熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ハードセグメントとしてのポリウレタン成分と、ソフトセグメントとしてのポリエステル成分又はポリエーテル成分とを含む。ポリウレタン成分の硬化剤としては、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート及び脂肪族ジイソシアネートが例示される。
脂環式ジイソシアネートとしては、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びトランス−1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)が例示される。汎用性及び加工性の観点から、H12MDIが好ましい。芳香族ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びトルエンジイソシアネート(TDI)が例示される。脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が例示される。2種以上のジイソシアネートが併用されてもよい。
好ましい硬化剤は、脂環式ジイソシアネートである。脂環式ジイソシアネートは主鎖に二重結合を有さないので、カバー8の黄変が抑制される。しかも、脂環式ジイソシアネートは強度に優れるので、カバー8の傷つきが抑制される。
熱可塑性ポリウレタンエラストマーの具体例としては、BASFジャパン社の商品名「エラストランXNY80A」、「エラストランXNY85A」、「エラストランXNY90A」、「エラストランXNY97A」、「エラストランXNY585」及び「エラストランXKP016N」;並びに大日精化工業社の商品名「レザミンP4585LS」及び「レザミンPS62490」が挙げられる。カバー8の小さな硬度が達成されうるとの観点から、「エラストランXNY80A」、「エラストランXNY85A」及び「エラストランXNY90A」が特に好ましい。
カバー8の樹脂組成物が、熱可塑性ポリウレタンエラストマーに代えて、又は熱可塑性ポリウレタンエラストマーと共に、他の樹脂を含んでもよい。他の樹脂としては、熱硬化性ポリウレタン、スチレンブロック含有熱可塑性エラストマー、ポリアミド及びアイオノマー樹脂が例示される。熱可塑性ポリウレタンエラストマーと他の樹脂とが併用される場合は、コントロール性能の観点から、熱可塑性ポリウレタンエラストマーが基材ポリマーの主成分とされる。基材ポリマー全量に対する熱可塑性ポリウレタンエラストマーの量の比率は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、85%以上が特に好ましい。
カバー8には、必要に応じ、二酸化チタンのような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等が、適量配合される。比重調整の目的で、カバー8にタングステン、モリブデン等の高比重金属の粉末が配合されてもよい。
カバー8の硬度Hcは、48以下である。このカバー8は、軟質である。軟質なカバー8が採用されることにより、ショートアイアンでのショットにおける良好なコントロール性能が達成されうる。コントロール性能の観点から、硬度Hcは47以下が好ましく、38以下が特に好ましい。ドライバーでのショットにおける飛行性能の観点から、硬度Hcは15以上が好ましく、20以上がより好ましく、26以上が特に好ましい。
後述されるように、接着層6は、カバー8の中間層12への密着性を高める。この接着層6の効果は、カバー8の硬度Hcと中間層12の硬度Hmとの差(Hm−Hc)が18以上であるゴルフボール2において、顕著である。この効果は、差(Hm−Hc)が27以上であるゴルフボール2において、特に顕著である。
カバー8の厚みTcは、0.6mm以下が好ましい。前述のように、カバー8は低硬度である。低硬度なカバー8は、ゴルフボール2の反発係数の面では不利である。ドライバーでのショットでは、ゴルフボール2の中間層12及びセンター10も大きく変形する。厚みTcが0.6mm以下に設定されることにより、カバー8が低硬度であっても、ドライバーでのショットにおける反発係数にカバー8が大幅な悪影響を与えることがない。中間層12にアイオノマー樹脂が用いられることで、ドライバーでのショットにおける優れた飛行性能が達成されうる。厚みTcは、ランド16の直下において測定される。
飛行性能の観点から、厚みTcは0.5mm以下がより好ましく、0.4mm以下が特に好ましい。カバー8の成形容易の観点から、厚みTcは0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上が特に好ましい。後述されるように、接着層6は、カバー8の中間層12への密着性を高める。この接着層6の効果は、カバー8の厚みTcが小さなゴルフボール2いおいて特に顕著である。
このゴルフボール2では、中間層12(第一層)の材質が、カバー8(第二層)の材質と異なっている。本発明において「材質が異なる」とは、第一層のポリマー組成物が第二層のポリマー組成物と同一ではないことを意味する。典型的には、第一層の基材ポリマーの主成分は、第二層の基材ポリマーの主成分と異なる。
カバー8が中間層12の上に直接に積層されると、カバー8の材質が中間層12の材質と異なっていることに起因して、カバー8が中間層12と堅固には密着しない。本発明に係るゴルフボール2では、中間層12とカバー8との間に接着層6が存在している。この接着層6は、中間層12と堅固に密着し、カバー8とも堅固に密着する。この接着層6は、中間層12とカバー8との密着性を高める。ゴルフボール2は、繰り返し打撃されても破損しにくい。このゴルフボール2がショートアイアンで打撃されても、カバー8に傷及びシワが生じにくい。このゴルフボール2では、ゴルフクラブで打撃されたときのエネルギー伝達のロスが小さい。このゴルフボール2は、反発性能に優れる。
接着層6は、中間層12の表面に接着剤が塗布され、この接着剤が乾燥することで形成されている。この接着剤の基材ポリマーは、二液硬化型エポキシ樹脂である。この二液硬化型エポキシ樹脂は、ポリアミン化合物を含有する硬化剤によってビスフェノールA型エポキシ樹脂が硬化されて得られる。この二液硬化型エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が用いられているので、柔軟性、耐薬品性、耐熱性及び強靭性に優れる。
接着剤は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び溶媒を含む主剤と、ポリアミン化合物及び溶媒を含む硬化剤とが混合されることで得られる。主剤及び硬化剤における溶媒として、キシレン及びトルエンのような有機溶媒並びに水があげられる。
ポリアミン化合物の具体例としては、ポリアミドアミン及びその変性物が挙げられる。ポリアミドアミンは、複数のアミノ基と、1個以上のアミド基とを有する。このアミノ基が、エポキシ基と反応し得る。ポリアミドアミンは、重合脂肪酸とポリアミンとの縮合反応によって得られる。典型的な重合脂肪酸は、リノール酸、リノレイン酸等の不飽和脂肪酸を多く含む天然脂肪酸類が触媒存在下で加熱されて合成されることで得られる。不飽和脂肪酸の具体例としては、トール油、大豆油、亜麻仁油及び魚油が挙げられる。ダイマー分が90質量%以上であり、トリマー分が10質量%以下であり、且つ水素添加された重合脂肪酸が好ましい。好ましいポリアミンとしては、ポリエチレンジアミン、ポリオキシアルキレンジアミン及びそれらの誘導体が例示される。
この接着剤のゲル分率は、40%以上である。ゲル分率が40%以上である接着剤から形成される接着層6は、揮発分が残存しにくいので、ほとんど気泡を含まない。この接着層6は、中間層12と堅固に密着し、カバー8とも堅固に密着する。この観点から、ゲル分率は45%以上がより好ましく、50%以上が特に好ましい。
この接着剤のゲル分率は、80%以下である。ゲル分率が80%以下である接着剤は、中間層12の基材ポリマーと十分に反応し、かつカバー8の基材ポリマーとも十分に反応する。この接着層6は、中間層12と堅固に密着し、カバー8とも堅固に密着する。この観点から、ゲル分率は76%以下がより好ましく、70%以上が特に好ましい。
ゲル分率が40%以上80%以下である接着剤から形成された接着層6は、カバー8が薄いゴルフボール2において、特に効果を発揮する。ゲル分率が40%以上80%以下である接着剤から形成された接着層6は、カバー8が軟質であるゴルフボール2において、特に効果を発揮する。
ゲル分率の測定では、主剤と硬化剤とが混合された直後に、接着剤がPB−137Tリン酸亜鉛処理鋼板に塗布される。この鋼板のサイズは、「150mm×70mm」である。この鋼板の厚みは、0.8mmである。この鋼板を、40℃の環境下に24時間保持し、接着剤からなる塗膜を形成する。鋼板と塗膜とから、試験片が得られる。この試験片の質量を測定し、この測定値から鋼板の質量を減じることで、塗膜の質量M1を算出する。この試験片をアセトンに浸漬し、24時間静置する。この試験片を105℃の環境下に1時間保持する。この試験片を23℃まで冷却する。この試験片の質量を測定し、この測定値から鋼板の質量を減じることで、塗膜の質量M2を算出する。ゲル分率Gは、下記の数式によって算出される。
G = (M2 / M1) ・ 100
この接着剤におけるビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ当量と硬化剤のアミン活性水素当量との比は、2.0/1.0以上13.0/1.0以下が好ましい。この比が2.0/1.0以上である接着剤では、ゲル分率が小さすぎない。従って、接着層6が中間層12及びカバー8と堅固に密着する。この観点から、この比は2.6/1.0以上がより好ましく、4.0/1.0以上が特に好ましい。この比が13.0/1.0以下である接着剤では、ゲル分率が大きすぎない。従って、接着層6が中間層12及びカバー8と堅固に密着する。この観点から、この比は12.2/1.0以下がより好ましく、10.0/1.0以下が特に好ましい。
硬化剤のアミン活性水素当量は、100g/eq以上800g/eq以下が好ましい。この当量が100g/eq以上である接着剤では、ゲル分率が大きすぎない。従って、接着層6が中間層12及びカバー8と堅固に密着する。この観点から、この当量は200g/eq以上がより好ましく、300g/eq以上が特に好ましい。この当量が800g/eq以下である接着剤では、ゲル分率が小さすぎない。従って、接着層6が中間層12及びカバー8と堅固に密着する。この観点から、この当量は600g/eq以下がより好ましく、500g/eq以下が特に好ましい。
接着剤は、揮発分として水を含んでいる。揮発分との用語は、水及び有機溶媒の両方を意味する。揮発分の全量に対する水の量の比率Pwは、90質量%以上が好ましい。この比率Pwが90%以上である接着剤では、ゲル分率の制御が容易である。この観点から、この比率Pwは95%以上がより好ましく、99%以上が特に好ましい。この比率Pwが100%であってもよい。環境の観点から、揮発分の全量に対する有機溶媒の量の比率Poは10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、1%以下が特に好ましい。
接着層6が、着色剤(典型的には二酸化チタン)、酸化防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤等の添加剤を含んでもよい。添加剤は、主剤に添加されてもよく、硬化剤に添加されてもよい。
前述の通り、接着層6は、接着剤が中間層12の表面に塗布されることで得られる。スプレーガン方式、静電塗装方式及びディッピング方式により、塗布がなされうる。作業性の観点から、スプレーガン方式による塗布が好ましい。塗布後に溶媒が揮発し、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とポリアミン化合物とが反応して、接着層6が形成される。
ゴルフボール2の耐久性の観点から、接着層6の厚みは0.001mm以上が好ましく、0.002mm以上が特に好ましい。厚みは、0.1mm以下が好ましい。厚みは、ゴルフボール2の断面がマイクロスコープで観察されることで測定される。粗面処理により中間層12の表面が凹凸を備える場合は、凸部の直上で厚みが測定される。測定は、ディンプル14の直下を避けて行われる。
第一層と第二層との接着強度は、20N以上が好ましい。接着強度が20N以上であるゴルフボール2は、耐久性に優れる。この観点から、接着強度は22.0N以上がより好ましく、22.3N以上が特に好ましい。
接着強度の測定では、ゴルフボール2から第一層、接着層及び第二層からなる試験片が切り出される。この試験片のサイズは、「10mm×50mm」である。この試験片の先端近傍にて、第二層を第一層から剥離させる。第一層を第一チャックに固定し、第二層を第二チャックに固定する。第一チャックに対して第二チャックを相対的に移動させ、第二層から第一層を剥離させる。この剥離のときの力を、測定する。測定には、島津製作所の「オートグラフAG−IS」が用いられる。引張り速度は、50mm/minである。
ゴルフボール2の圧縮変形量CDは、2.0mm以上3.0mm以下が好ましい。圧縮変形量CDが2.0mm以上であるゴルフボール2は、打球感に優れる。この観点から、圧縮変形量CDは2.1mm以上がより好ましく、2.2mm以上が特に好ましい。圧縮変形量CDが3.0mm以下であるゴルフボール2は、反発性能に優れる。この観点から、圧縮変形量CDは2.8mm以下がより好ましく、2.6mm以下が特に好ましい。
圧縮変形量の測定では、ゴルフボールが金属製の剛板の上に置かれる。この球体に向かって、金属製の円柱が降下する。この円柱の底面と剛板との間に挟まれた球体は、変形する。球体に98Nの初荷重がかかった状態から1274Nの終荷重がかかった状態までの円柱の移動距離が、測定される。
センターと、樹脂組成物からなりセンターを覆う包囲層と、樹脂組成物からなり包囲層を覆う中間層と、樹脂組成物からなり中間層を覆うカバーとを有するゴルフボールにおいても、接着層は有効である。このゴルフボールでは、包囲層と中間層との間に接着層が存在してもよく、中間層とカバーとの間に接着層が存在してもよい。
第一層の材質と第二層の材質の好ましい組み合わせが、以下に示される。
(1)第一層の主成分:アイオノマー樹脂
第二層の主成分:ポリウレタン

(2)第一層の主成分:ポリウレタン
第二層の主成分:アイオノマー樹脂

(3)第一層の主成分:アイオノマー樹脂
第二層の主成分:スチレンブロック含有熱可塑性エラストマー

(4)第一層の主成分:スチレンブロック含有熱可塑性エラストマー
第二層の主成分:アイオノマー樹脂

(5)第一層の主成分:アイオノマー樹脂
第二層の主成分:ポリアミド

(6)第一層の主成分:ポリアミド
第二層の主成分:アイオノマー樹脂

(7)第一層の主成分:ポリウレタン
第二層の主成分:スチレンブロック含有熱可塑性エラストマー

(8)第一層の主成分:スチレンブロック含有熱可塑性エラストマー
第二層の主成分:ポリウレタン

(9)第一層の主成分:ポリウレタン
第二層の主成分:ポリアミド

(10)第一層の主成分:ポリアミド
第二層の主成分:ポリウレタン

(11)第一層の主成分:スチレンブロック含有熱可塑性エラストマー
第二層の主成分:ポリアミド

(12)第一層の主成分:ポリアミド
第二層の主成分:スチレンブロック含有熱可塑性エラストマー
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
100質量部のポリブタジエン(JSR社の商品名「BR−730」)、37.0質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド(住友精化社)及び0.8質量部のジクミルパーオキサイド(日油社)を混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物を共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、170℃の温度下で20分間加熱して、直径が39.7mmであるセンターを得た。ゴルフボールの質量が45.6gとなるように、硫酸バリウムの量を調整した。
二軸押出機で、下記表2に示されるタイプ(A)の樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物を射出成形法にてセンターの周りに被覆し、中間層を得た。この中間層の厚みTmは1.0mmであった。
下記表3に示される接着剤(a)を調製した。この接着剤を中間層の表面にスプレーガンで塗布し、23℃雰囲気下で12時間保持して、接着層を得た。この接着層の厚みは、0.003mmであった。
二軸押出機で、下記表2に示されるタイプ(B)の樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物から、圧縮成形法にて、ハーフシェルを得た。このハーフシェル2枚で、センター、中間層及び接着層からなる球体を被覆し、共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入して、圧縮成形法にてカバーを得た。カバーの厚みTcは、0.5mmであった。このカバーの周りにペイント層を形成して、実施例1のゴルフボールを得た。
[実施例2から6及び比較例1から7]
実施例1と同様の製造方法で、下記の表4から6に示される仕様を備えたゴルフボールを得た。
[ドライバーでのショット]
ツルテンパー社のスイングマシンに、メタルヘッドを備えたドライバー(W#1)を装着した。ヘッド速度が45m/secである条件で、ゴルフボールを打撃した。打撃直後のスピン速度と、飛距離(発射地点から静止地点までの距離)とを測定した。10回の測定の平均値が、下記の表4から6に示されている。
[サンドウエッジでのショット]
上記スイングマシンに、サンドウエッジ(SW)を装着した。ヘッド速度が21m/secである条件で、ゴルフボールを打撃した。打撃直後のスピン速度を測定した。10回の測定の平均値が、下記の表4から6に示されている。
[初速の測定]
ゴルフボールを、23℃の環境下に保持した。上記スイングマシンに、メタルヘッドを備えたドライバーを装着した。ヘッド速度が45m/secである条件で、ゴルフボールを繰り返し打撃した。10回目の打撃時に、ボールの速度を測定した。この結果が、指数として、下記の表4から6に示されている。
[破壊テスト耐久性の評価]
ゴルフボールを、23℃の環境下に保持した。上記スイングマシンに、メタルヘッドを備えたドライバーを装着した。ヘッド速度が45m/secである条件で、ゴルフボールを繰り返し打撃して、破壊させた。破壊するまでの打撃回数が、指数として、下記の表4から6に示されている。
Figure 0005762140
Figure 0005762140
Figure 0005762140
上記表3において、接着剤(a)から(e)には、神東塗料社の水系エポキシ接着剤の主剤(エポキシ当量:1405g/eq)を用いた。接着剤(f)には、神東塗料社の有機溶剤系エポキシ接着剤の主剤(エポキシ当量:1633g/eq)を用いた。硬化剤の詳細は、以下の通りである。
接着剤(a):神東塗料社の水系アミン硬化剤(活性水素当量:348g/eq)
接着剤(b):神東塗料社の水系アミン硬化剤(活性水素当量:115g/eq)
接着剤(c):神東塗料社の水系アミン硬化剤(活性水素当量:536g/eq)
接着剤(d):神東塗料社の水系アミン硬化剤(活性水素当量:89g/eq)
接着剤(e):神東塗料社の水系アミン硬化剤(活性水素当量:810g/eq)
接着剤(f):神東塗料社の有機溶剤系アミン硬化剤(活性水素当量:1345g/e q)
上記表3示された接着剤(a)から(f)の他に、下記の接着剤(g)及び(h)を調製した。
[接着剤(g)]
100質量部のカルボキシル基含有ポリウレタン水溶液と、10質量部のポリカルボジイミド水分散液との混合物
カルボキシル基含有ポリウレタン水溶液:三井武田ケミカル社の商品名「W-615」
ポリカルボジイミド水分散液:三井武田ケミカル社の商品名「カルボジライトE-03A」
[接着剤(h)]
主剤:ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールとの混合物
水酸基価:82mgKOH/g
硬化剤:ヘキサメチレンジイソシアネート
当量比:NCO/OH=1.2/1.0
Figure 0005762140
Figure 0005762140
Figure 0005762140
表4から6から明らかなように、実施例のゴルフボールは諸性能に優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
本発明に係るゴルフボールは、ゴルフ競技での使用や、ドライビングレンジにおけるプラクティスに適している。
2・・・ゴルフボール
4・・・コア
6・・・接着層
8・・・カバー
10・・・センター
12・・・中間層
14・・・ディンプル
16・・・ランド

Claims (7)

  1. 第一層と、
    その材質が上記第一層の材質とは異なる第二層と、
    接着剤から形成されており、上記第一層と上記第二層との間に位置する接着層と
    を備えており、
    上記接着剤の基材ポリマーが、ポリアミン化合物を含有する硬化剤によってビスフェノールA型エポキシ樹脂が硬化されて得られる二液硬化型エポキシ樹脂であり、
    上記接着剤の、下記の(1)から(6)のステップで測定されたゲル分率が、45%以76%以下であるゴルフボール。
    (1)主剤と硬化剤とを混合して得た直後の接着剤を、PB−137Tリン酸亜鉛処理鋼板(サイズ:150mm×70mm、厚み:0.8mm)に塗布するステップ
    (2)この鋼板を、40℃の環境下に24時間保持し、接着剤からなる塗膜を形成して、鋼板と塗膜とから試験片を得るステップ
    (3)この試験片の質量を測定し、この測定値から鋼板の質量を減じることで、塗膜の質量M1を算出するステップ
    (4)この試験片をアセトンに浸漬して24時間静置した後、この試験片を105℃の環境下に1時間保持し、さらにこの試験片を23℃まで冷却するステップ
    (5)この試験片の質量を測定し、この測定値から鋼板の質量を減じることで、塗膜の質量M2を算出するステップ
    (6)下記の数式によってゲル分率を算出するステップ
    G = (M2 / M1) ・ 100
  2. 上記接着剤における上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ当量と上記硬化剤のアミン活性水素当量との比が、2.0/1.0以上13.0/1.0以下である請求項1に記載のゴルフボール。
  3. 上記硬化剤のアミン活性水素当量が100g/eq以上800g/eq以下である請求項2に記載のゴルフボール。
  4. 上記接着剤の揮発分が水を含んでおり、揮発分の全量に対する水の量の比率が90質量%以上である請求項1から3のいずれかに記載のゴルフボール。
  5. 上記第一層と上記第二層との、下記の(1)から(3)のステップで測定された接着強度が20N以上である請求項1から4のいずれかに記載のゴルフボール。
    (1)ゴルフボールから第一層、接着層及び第二層からなる試験片(サイズ:10mm×50mm)を切り出すステップ
    (2)この試験片の先端近傍にて、第一層を第一チャックに固定し、第二層を第二チャックに固定するステップ
    (3)第一チャックに対して第二チャックを、引張り速度が50mm/minである条件で相対的に移動させ、第二層から第一層を剥離させて、この剥離のときの力を、島津製作所の「オートグラフAG−IS」にて測定するステップ
  6. 上記第一層が樹脂組成物からなり、この樹脂組成物の基材ポリマーの主成分がアイオノマー樹脂、ポリウレタン、スチレンブロック含有エラストマー及びポリアミドからなる群から選択された1又は2以上であり、
    上記第二層が樹脂組成物からなり、この樹脂組成物の基材ポリマーの主成分がアイオノマー樹脂、ポリウレタン、スチレンブロック含有エラストマー及びポリアミドからなる群から選択された1又は2以上であり、
    上記第一層の基材ポリマーの主成分が、上記第二層の基材ポリマーの主成分と異なっている請求項1から5のいずれかに記載のゴルフボール。
  7. 複数の層を備えた本体と、この本体の外側に位置するペイント層とを備えており、
    上記本体の最も外側の層が上記第二層であり、
    上記第二層の基材ポリマーの主成分がポリウレタンであり、
    上記第二層が、48以下であるショアD硬度と、0.6mm以下である厚みとを有する請求項6に記載のゴルフボール。
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