JP5758236B2 - 鉄筋コンクリート製構造物 - Google Patents

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Description

本発明は、変形性能に優れた鉄筋コンクリート製の構造物に関するものである。
鉄筋コンクリート製の構造物は地震などの交番載荷荷重を受けることにより、下端には大きな曲げモーメントが作用する。この際、大きな荷重が付与されることにより曲げひび割れが発生し、軸方向鉄筋が降伏し、構造物の下端部分は塑性変形する。このため、構造物にかぶりコンクリートの剥落が始まる。さらに、軸方向鉄筋の座屈が生じ始めるとコアコンクリートの圧縮破壊が生じる。このような繰り返しの載荷を受けると、構造物は、かぶりコンクリートのひび割れや剥脱が進行することにより耐力が低下していく。したがって、構造物の耐震性を向上させるためには、塑性変形する箇所には高い変形性能を必要とする。
従来技術では、帯鉄筋や中間帯鉄筋を多く配筋することにより、軸方向鉄筋の拘束効果およびコアコンクリートの拘束効果を向上させ、軸方向鉄筋の座屈を抑え込むことにより変形性能を向上させてきた(例えば特許文献1)。
また、鉄筋の座屈を防止する方法として、部材基部周りに鋼材などを配置することで座屈を抑制していた(例えば特許文献2)。
特開2000−179090号公報 特許第4055295号公報
しかし、帯鉄筋および中間帯鉄筋の配筋によって軸方向鉄筋およびコアコンクリートの拘束効果をあげることによって十分な変形性能を確保するには、非常に密な配筋が必要となり、配筋作業が煩雑である。また配筋が密であるため、コンクリート打設時の充填性に問題がある。また、部材基部周りに鋼材等を配置することにより座屈を抑制する方法を採用する場合、鉄筋が座屈する可能性のある範囲を特定することが困難であり、構造物中の大きな範囲に座屈防止の鋼材を配置する必要がある。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、軸方向鉄筋の座屈を抑え、帯鉄筋および中間帯鉄筋の量を削減し、コンクリートの充填性を高め、鉄筋コンクリートに高い変形性能を付与することが可能な鉄筋コンクリート製の構造物を提供する。
前述した目的を達成するため、第1の発明は、鉄筋コンクリート製の構造物であって、前記構造物の一部には、内部に帯鉄筋が埋設されたプレキャスト型枠が埋設され、前記プレキャスト型枠の外面が前記構造物の外縁部に露出し、前記プレキャスト型枠の軸方向には外縁コンクリート部が積層され、前記プレキャスト型枠で、前記外縁コンクリート部が挟み込まれ、前記プレキャスト型枠の圧縮強度は、前記構造物を構成するコンクリートであって前記プレキャスト型枠の軸方向に隣接する前記外縁コンクリート部の圧縮強度よりも高いことを特徴とする鉄筋コンクリート製構造物である。ここで、鉄筋コンクリート製の構造物とは、柱、梁、壁、床等であって、地震時に塑性ヒンジとなる箇所を有するものである。
前記プレキャスト型枠は、前記構造物の下端から塑性ヒンジ部範囲に少なくとも一層形成され、前記構造物に荷重が付与された際に、略剛体である前記プレキャスト型枠よりも略剛体である前記外縁コンクリート部が先に圧縮破壊し、前記プレキャスト型枠には、前記外縁コンクリート部の圧縮強度以上の圧縮応力が付与されることを防止可能であることが望ましい。
前記プレキャスト型枠および外縁コンクリート部は、繊維補強コンクリートによって形成されてもよい。
前記構造物の下端に隙間を設け外側に横拘束プレキャスト部材を配置し、前記横拘束プレキャスト部材は、帯鉄筋が埋設されたコンクリートから形成されてもよい。
前記帯鉄筋の代わりに、軸方向に対して垂直に緊張材を配置しプレストレスを与えてもよい。
前記帯鉄筋の外側に当接させて配置した保持部材と、前記保持部材に取り付けられたアンカー筋と、を具備し、前記アンカー筋は、前記構造物の中核を構成するコアコンクリート部に定着させ、前記プレキャスト型枠に埋設されてもよい。
本発明によれば、プレキャスト型枠の圧縮強度は外縁コンクリート部の圧縮強度より大きいため、荷重が増加すると外縁コンクリート部のみが圧縮破壊する。さらに荷重が増加し、変形が大きくなっても、プレキャスト型枠には外縁コンクリート部の圧縮強度以上の圧縮応力が作用することがない。したがって、軸方向鉄筋の座屈を抑制し、高い変形能力を得ることができる。
また、プレキャスト型枠には帯鉄筋が埋設されているため、帯鉄筋単体よりも、剛性および耐力が高い。したがって、構造物内部に配置されている軸方向鉄筋の座屈変形を、外縁コンクリート部より剛性が高いプレキャスト型枠が拘束する。プレキャスト型枠は前述したとおり、圧縮破壊していないことにより、この効果が発揮できる。
また、柱状体の下端には、大きな曲げモーメントが作用し、弾性限界を超え、曲げモーメントは一定になり、塑性変形が開始する。このときの曲げモーメントを一般的に全塑性モーメントという。全塑性モーメントを持つ断面を塑性ヒンジという。柱状体の塑性ヒンジ部に、少なくとも一層プレキャスト型枠を配置することによって、本発明による構造の変形性能を十分に発揮することができる。
また、プレキャスト型枠によって、座屈を抑制することが可能であるために、従来構造において座屈抑制の目的で必要であった中間帯鉄筋を省略または縮減することができる。同様に、従来構造において座屈抑制の目的で必要であった帯鉄筋量を削減することができる。したがって、配筋作業の省力化が可能であるとともに、密な配筋が不要になることから、コンクリート打設時のコンクリートの充填性を高めることができる。
また、柱状体は、軸方向鉄筋等とコンクリートによって形成されるコアコンクリート部の外縁に、強度の異なる略剛体であるプレキャスト型枠と外縁コンクリート部との積層構造を配置する構造であるため、従来の鉄筋コンクリート製構造物と同等以上の剛性を確保することができる。
また、プレキャスト型枠が繊維補強コンクリートによって形成されることで、プレキャスト型枠の剛性および耐力が向上するため、軸方向鉄筋の座屈抑制効果を高めることができる。また、外縁コンクリート部が繊維補強コンクリートによって形成されることによって、荷重の増加によって発生する外縁コンクリート部の剥落を遅らせることができる。
柱状体には、軸方向鉄筋降伏後に、外縁コンクリート部の圧縮破壊が生じ、次に外縁コンクリート部の剥落が生じる過程を経て、最大耐力に達する。最大耐力に達したのちに、コアコンクリート部の圧縮破壊および軸方向鉄筋の座屈が生じる。外縁コンクリート部が大きく剥落することにより軸方向鉄筋の座屈が生じるため、外縁コンクリート部を繊維補強コンクリートによって形成することにより、座屈の発生を遅延させるため、さらに構造物の変形性能を向上させることができる。
また、プレキャスト型枠と横拘束プレキャスト部材を併用することによって鉄筋コンクリート製の柱状構造物の座屈が生じる範囲を限定し、座屈を効果的に防止することができる。外縁コンクリート部の圧縮強度で頭打ちとなるために、プレキャスト型枠は曲げ応力によって圧縮破壊しない。一方、柱状体の軸方向について、横拘束プレキャスト部材が拘束している位置の外縁コンクリート部に対しては圧縮破壊を許容するため、横拘束プレキャスト部材が拘束している位置の柱状体に配置されている軸方向鉄筋が座屈する可能性がある。
したがって柱状体の座屈が生じる可能性がある範囲を特定することができる。また、横拘束プレキャスト部材と柱状体の間に隙間を設けるため、横拘束プレキャスト部材に対して、柱状体の曲げ圧縮応力や曲げ引張応力が伝達しにくい。横拘束プレキャスト部材によって外縁コンクリートの圧縮破壊による剥離を抑制し、柱状体の圧縮破壊による軸方向鉄筋のはらみ出しを拘束するため、座屈がさらに抑制される。
また、帯鉄筋の代わりに、軸方向に対して垂直に緊張材を配置しプレストレスを与えることによってプレキャスト型枠の剛性および耐力がさらに向上する。したがって軸方向鉄筋の座屈抑制効果をさらに高めることができる。
また、アンカー筋を柱状体の中核を構成するコアコンクリート部に定着させ、プレキャスト型枠に埋設させることにより、プレキャスト型枠の曲げ剛性および曲げ耐力が向上し、軸方向鉄筋の座屈抑制効果をさらに高めることができる。
本発明によれば、軸方向鉄筋の座屈を抑え、帯鉄筋および中間帯鉄筋の量を削減し、コンクリートの充填性を高め、鉄筋コンクリートに高い変形性能を付与することが可能な鉄筋コンクリート製の構造物を提供することができる。
構造物を示す図であり、(a)は全体側面図、(b)はプレキャスト型枠から形成される層の断面図、(c)は外縁コンクリート部の断面図。 横拘束プレキャスト部材を有する場合の構造物を示す縦断面図。 アンカー筋および保持部材を有する場合のプレキャスト型枠から形成される層の断面図。 同じ帯鉄筋量で構成した場合の本発明による構造と従来構造の変形性能の差異を示す図。
以下、本発明の実施の形態にかかる変形性能に優れた鉄筋コンクリート製の構造物について説明する。図1は構造物を示す図であり図1(a)は全体側面図、図1(b)はプレキャスト型枠から形成される層の断面図、図1(c)は外縁コンクリート部の断面図である。構造物1は、主に基礎5と、基礎5上に形成される柱状体3から構成される。構造物である柱状体3は座屈変形を生じ得る長柱構造物であり、主に鉄筋コンクリートから形成される。また、柱状体3の下端部近傍にはプレキャスト型枠7が少なくとも一層埋設され、プレキャスト型枠7の外面は柱状体3の外縁部に露出する。
柱状体3は、プレキャスト型枠7の内側に、柱状体3の中核であり、主に軸方向鉄筋13と、配力筋17およびコンクリートから形成されるコアコンクリート部15を有する。コアコンクリート部15の外側で、プレキャスト型枠7の軸方向に隣接する柱状体3の外縁部には、コンクリートによって外縁コンクリート部9が形成される。
プレキャスト型枠7には帯鉄筋11が埋設される。また、プレキャスト型枠7を形成するコンクリートの圧縮強度は外縁コンクリート部9を形成するコンクリートの圧縮強度より高い。荷重が付与された際にプレキャスト型枠7よりも、外縁コンクリート部9が先に圧縮破壊され、外縁コンクリート部9の圧縮強度以上の圧縮応力がプレキャスト型枠7に付与されることが防止可能であればよい。プレキャスト型枠7としては、例えば50N/mm程度以上の設計基準強度であればよく、外縁コンクリート部9としては、例えば24N/mm程度の設計基準強度であればよい。
つまり、柱状体3の外縁部は強度の異なる略剛体であるプレキャスト型枠7と、外縁コンクリート部9との積層によって構成される。
また、柱状体3の下端には、大きな曲げモーメントが作用し、弾性限界を超え、曲げモーメントは一定になり、塑性変形が開始する。このときの曲げモーメントを一般的に全塑性モーメントという。全塑性モーメントを持つ断面を塑性ヒンジという。このように塑性変形する箇所を塑性ヒンジ部と称し、図1(a)において範囲Lで示す。プレキャスト型枠7は、柱状体3の下端から塑性ヒンジ部Lに少なくとも一層形成される。なお、塑性ヒンジ部Lは、柱状体3の外径(曲げモーメントが付与される方向の厚み)をDとした場合に、下端から概ね1D以下の範囲となる。
プレキャスト型枠7はコアコンクリート部15の外形を包囲する形状である。例えば、柱状体3の断面が矩形であるならば、プレキャスト型枠7の断面も矩形であり、中央部に柱状体3の断面と略同一の矩形の中空部分を有する。前述したとおり、プレキャスト型枠7には帯鉄筋11が埋設され、コンクリートによって形成される。
構造物1は,まず基礎の配筋を行い、基礎部のコンクリートを打設する。そして軸方向鉄筋および帯鉄筋を配筋し、プレキャスト型枠7を所定の位置に配置する。軸方向鉄筋および帯鉄筋とプレキャスト型枠の配置順序は,施工方法により適宜順番を逆にする。その後に通常の型枠を組み立て、コアコンクリートおよび外縁コンクリート部9を形成するコンクリートを打設する。
プレキャスト型枠7および外縁コンクリート部9は、繊維補強コンクリートによって形成されてもよい。繊維補強コンクリートを用いることで、コンクリートの崩落を防止することができる。
次に、横拘束プレキャスト部材を有する場合の構造物について説明する。図2に、横拘束プレキャスト部材を有する場合の構造物を示す縦断面図を示す。構造物1´は主に柱状体3と基礎5から構成される。柱状体3の下端に隙間19を設け、外側に横拘束プレキャスト部材23を配置する。横拘束プレキャスト部材23には帯鉄筋(図示を省略)が埋設され、コンクリートによって形成される。横拘束プレキャスト型枠23は、柱状体3を包囲する形状であり、柱状体3の断面と略同一の中空部分を有する。柱状体3の下端部近傍には、前述したプレキャスト型枠7が埋設されている。横拘束プレキャスト部材23の圧縮強度はプレキャスト型枠7の圧縮強度と同程度か、プレキャスト型枠の圧縮強度より低くてよい。
なお、帯鉄筋11の代わりとして、柱状体3の軸方向に対して垂直に位置するように緊張材をプレキャスト型枠7に埋設し、プレストレスを与えてもよい。緊張材は、プレキャスト型枠7の内部の内部であって、コアコンクリート部を包囲する向きに配置される。したがって、緊張材は柱状体3の垂直方向にそれぞれ配置される。なお、緊張材としては、例えばPC鋼材が使用できる。緊張材には、あらかじめプレストレス力が付与される。すなわち、柱状体3の略垂直方向には、それぞれプレストレス力が付与される。柱状体3の垂直方向には、それぞれプレストレス力が付与されることにより、軸方向鉄筋のはらみ出しを抑制し、より高い座屈抑制効果を得ることができる。
プレキャスト型枠にアンカー筋および保持部材を取り付けてもよい。図3にアンカー筋および保持部材を有する場合のプレキャスト型枠から形成される層の断面図を示す。プレキャスト型枠7aに埋設される帯鉄筋11aの外側には、アンカー筋25を保持する保持部材27が当接される。保持部材27は帯鉄筋11aとともに、プレキャスト型枠7aに埋設される。アンカー筋25は、コアコンクリート部15に埋設し、定着させる。
アンカー筋25は、帯鉄筋11aが外側にはらみ出ることを防止し、軸方向鉄筋13の座屈を抑制することを目的として設置される。アンカー筋25は、コアコンクリート部15に定着しやすい異形鉄筋やスタッドジベル等によって形成される。アンカー筋25は複数配置され、互いに一定間隔をあけ、略平行に配置される。
図4は同じ帯鉄筋量で構成した場合の、本発明による構造物1と従来構造の変形性能の差異を示すグラフである。縦軸には荷重を、横軸には変位を示し、グラフ中に、本発明による構造(実線)と、従来構造(破線)との変形性能の差異を示す。グラフ中の点Aにおいて構造物にひび割れが発生し、点Bにおいて軸方向鉄筋の降伏が生じる。点Bにおける軸方向鉄筋降伏後に、荷重および変位が増加していくと、従来構造は最大耐力に達する(点C)。点Bから点Cの間に構造物のかぶりコンクリートは圧縮破壊し、かぶりコンクリートは剥落する。
かぶりコンクリートが大きく剥落することで、点C以降に軸方向鉄筋は座屈し、コアコンクリートも圧縮破壊する。繰り返し大きな荷重を受けることにより、構造物の損傷が進行し、耐力が低下していく。一方、本発明による構造物1の最大耐力は、構造物1の外縁部の圧縮破壊および外縁コンクリート部9の剥落を遅らせることによって、従来構造と比較して、同一の荷重であっても大きな変位において最大耐力に達する(点D)。したがって、構造物1は従来構造と同じ帯鉄筋量を用いて設計した場合、高い変形性能を示す。
このように、本発明の実施の形態にかかる構造物1および構造物1´によれば、軸方向鉄筋の座屈を抑え、帯鉄筋および中間帯鉄筋の量を削減し、コンクリートの充填性を高め、鉄筋コンクリートに高い変形性能を付与することが可能な鉄筋コンクリート製の構造物を提供することができる。
本発明によれば、プレキャスト型枠7の圧縮強度は外縁コンクリート部9の圧縮強度より大きいため、荷重が増加すると外縁コンクリート部9のみが圧縮破壊する。さらに荷重が増加し、変形が大きくなっても、プレキャスト型枠7には外縁コンクリート部9の圧縮強度以上の圧縮応力が作用することがない。
また、プレキャスト型枠7には帯鉄筋11が埋設されているため、帯鉄筋単体よりも、剛性および耐力が高い。したがって、構造物1および構造物1´内部に配置されている軸方向鉄筋13の座屈変形を、剛性が外縁コンクリート部9より高いプレキャスト型枠7が拘束する。プレキャスト型枠7は前述したとおり、圧縮破壊していないことにより、この効果が発揮できる。
また、柱状体3の塑性ヒンジ部Lに少なくとも一層プレキャスト型枠を配置することによって、構造物1および構造物1´の変形性能を十分に発揮することができる。
また、プレキャスト型枠7によって、座屈を抑制することが可能であるために、従来構造において座屈抑制の目的で必要であった中間帯鉄筋を省略または縮減することができる。同様に、従来構造において座屈抑制の目的で必要であった帯鉄筋量を削減することができる。したがって、配筋作業の省力化が可能であるとともに、密な配筋が不要になることから、コンクリート打設時のコンクリートの充填性を高めることができる。
また、柱状体3は、軸方向鉄筋13等とコンクリートによって形成されるコアコンクリート部15の外縁に、強度の異なる略剛体であるプレキャスト型枠7と外縁コンクリート部9との積層構造を配置する構造であるため、構造物1および構造物1´は、従来の鉄筋コンクリート製構造物と同等以上の剛性を確保することができる。
また、プレキャスト型枠7は、繊維補強コンクリートによって形成されることによってプレキャスト型枠7の剛性および耐力が向上するため、軸方向鉄筋13の座屈抑制効果をさらに高めることができる。また、外縁コンクリート部9が繊維補強コンクリートによって形成されることによって、荷重の増加によって発生する外縁コンクリート部9の剥落を遅らせることができる。外縁コンクリート部9が大きく剥落することにより軸方向鉄筋の座屈が生じるため、外縁コンクリート部9を繊維補強コンクリートによって形成することにより、座屈の発生を遅延させるため、さらに構造物1および構造物1´の変形性能を向上させることができる。
また、プレキャスト型枠7と横拘束プレキャスト部材23を併用することによって柱状体3の座屈が生じる範囲を限定し、座屈を効果的に防止することができる。外縁コンクリート部9の圧縮強度で頭打ちとなるため、プレキャスト型枠7は曲げ応力によって圧縮破壊しない。一方、柱状体3の軸方向について、横拘束プレキャスト部材23が拘束している位置の外縁コンクリート部9に対しては圧縮破壊を許容するため、横拘束プレキャスト部材23が拘束している位置の柱状体3に配置されている軸方向鉄筋13が座屈する可能性がある。
したがって、柱状体3の座屈が生じる可能性がある範囲を特定することができる。また、横拘束プレキャスト部材23と柱状体3の間に隙間19を設けるため、横拘束プレキャスト部材23には、柱状体3の曲げ圧縮応力や曲げ引張応力が伝達しにくい。横拘束プレキャスト部材23によって外縁コンクリートの圧縮破壊による剥離を抑制し、柱状体3の圧縮破壊による軸方向鉄筋13のはらみ出しを拘束するため、座屈がさらに抑制される。
また、帯鉄筋11の代わりに、軸方向に対して垂直に緊張材を配置しプレストレスを与えることによって、プレキャスト型枠7の剛性および耐力がさらに高くなる。
また、構造物1または構造物1´のプレキャスト型枠7aに保持部材27を埋設し、アンカー筋25をコアコンクリート部15に埋設し、定着させることで、柱状体3の軸方向と垂直方向断面に配置する中間帯鉄筋の配置を省略することができる。また、保持部材27とアンカー筋25を有することにより、プレキャスト型枠7aの剛性および耐力はさらに高くなる。
以上添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、各実施形態は互いに組み合わせることができることはもちろんのこと、各構成の形状や設置範囲、設置個数等は、適宜設定することができる。
また、鉄筋コンクリート製構造物としては、柱状体の例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、柱以外にも、梁、壁、床や、ボックスカルバート等にも適用可能である。いずれの構造物を対象とする場合であっても、プレキャスト型枠をそれぞれの構造物の塑性ヒンジ部に形成すればよい。例えば、柱、梁、壁、床の場合には、下端(端部)から所定の範囲(構造物の曲げモーメントが付与される方向の厚みと略導等の距離以下の範囲)が塑性ヒンジ部となる。また、構造物がボックスカルバート(例えば略矩形のボックスカルバートの本体内部に十字に仕切りが形成されるもの)である場合には、本体の各コーナー部および仕切りとの交差部から、それぞれ本体の厚み程度の範囲と、仕切りの本体との交差部および仕切り同士の交差部からそれぞれ本体の厚み程度の範囲が、それぞれ塑性ヒンジとなる
1、1´………構造物
3………柱状体
5………基礎
7、7a………プレキャスト型枠
9………外縁コンクリート部
11、11a………帯鉄筋
13………軸方向鉄筋
15………コアコンクリート部
17………配力筋
19………隙間
23………横拘束プレキャスト部材
25………アンカー筋
27………保持部材

Claims (6)

  1. 鉄筋コンクリート製の構造物であって、
    前記構造物の一部には、内部に帯鉄筋が埋設されたプレキャスト型枠が埋設され、
    前記プレキャスト型枠の外面が前記構造物の外縁部に露出し、
    前記プレキャスト型枠の軸方向には外縁コンクリート部が積層され、前記プレキャスト型枠で、前記外縁コンクリート部が挟み込まれ、
    前記プレキャスト型枠の圧縮強度は、前記構造物を構成するコンクリートであって前記プレキャスト型枠の軸方向に隣接する前記外縁コンクリート部の圧縮強度よりも高いことを特徴とする鉄筋コンクリート製構造物。
  2. 前記プレキャスト型枠は、前記構造物の下端から塑性ヒンジ部範囲に少なくとも一層形成され、
    前記構造物に荷重が付与された際に、略剛体である前記プレキャスト型枠よりも略剛体である前記外縁コンクリート部が先に圧縮破壊し、前記プレキャスト型枠には、前記外縁コンクリート部の圧縮強度以上の圧縮応力が付与されることを防止可能であることを特徴とする請求項1記載の鉄筋コンクリート製構造物。
  3. 前記プレキャスト型枠および外縁コンクリート部は、繊維補強コンクリートによって形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鉄筋コンクリート製構造物。
  4. 前記構造物の下端に隙間を設け外側に横拘束プレキャスト部材を配置し、
    前記横拘束プレキャスト部材は、鉄筋が埋設されたコンクリートから形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の鉄筋コンクリート製構造物。
  5. 前記帯鉄筋の代わりに、軸方向に対して垂直に緊張材を配置しプレストレスを与えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の鉄筋コンクリート製構造物。
  6. 前記帯鉄筋の外側に当接させて配置した保持部材と、
    前記保持部材に取り付けられたアンカー筋と、
    を具備し、
    前記アンカー筋は、前記構造物の中核を構成するコアコンクリート部に定着させ、前記プレキャスト型枠に埋設されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の鉄筋コンクリート製構造物。
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