JP5757497B2 - シガトキシン類ctx1bおよび54−デオキシ−ctx1bを認識するモノクローナル抗体およびそれを用いるシガトキシン類検出キット - Google Patents
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Description
本発明は、また上記のモノクローナル抗体を得るために用いられる化合物、該化合物がキャリアータンパク質に結合してなるコンジュゲート化合物にも関する。
しかしながら、この抗体はシガトキシンに結合するが、シガトキシン類と類似の構造を有する海産ポリエーテル系毒素であるオカダ酸とも強い交差結合活性を示し、その親和性の差は非常に小さい(非特許文献2参照)。
また、この抗体は、その他の海産ポリエーテル系毒素であるブレべトキシン、マイトトキシン、パリトキシンなどと交差反応を示すことが分かっているが、詳しいデータは発表されていない(非特許文献3参照)。
このホカマらの抗体を用いて、シガトキシン類に汚染された魚類を免疫的手法により検出するための試薬や、キット(Cigua Check (商標))などが開発されている。
また、他のグループも合成ハプテンJKLM環部のコンジュゲートを用いて動物の免疫を試み、シガトキシンを認識するポリクローナル抗体を作製しているが、モノクローナル抗体は得られていない(非特許文献5参照)。
モノクローナル抗体3D11のシガトキシンCTX3Cに対する解離定数(Kd)は、122 nMであった。また、シガトキシンに構造が類似した海産ポリエーテル系毒素とモノクローナル抗体3D11との交差結合活性を調べたところ、赤潮毒ブレベトキシン類と交差活性が確認されたが、その交差結合活性は、シガトキシンとの結合に比べると約350分の1以下の非常に弱いものであった。
また、本発明者らは、上記の2種のモノクローナル抗体(3D11および10C9)を組み合わせて、検出特性をより改善したサンドイッチ法によりシガトキシンCTX3Cを検出するキットを作製した(特許文献3および非特許文献6参照)。
よって、本発明は、A環部にジヒドロキシブテニル基を有するシガトキシン類を特異的に認識するモノクローナル抗体を提供する。
また、本発明は、上記のモノクローナル抗体を産生する受託番号FERM BP-11401として寄託されたハイブリドーマ3G8(受託番号FERM BP-11401として独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1-1-1中央第6、〒305-8566、日本)に寄託された。受託日:平成22年9月15日、本明細書ではこのハイブリドーマを抗体と同じ名称3G8と表示する。)である。
で表されるタンパク質コンジュゲートでもある。
本発明のモノクローナル抗体はシガトキシンCTX1Bおよび54-デオキシ-CTX1Bに対するKdが1〜100 nM程度である。
本発明のモノクローナル抗体は、単独で、それ自体公知の抗原抗体反応において用いてシガトキシン類を検出することができる。
あるいは、本発明のモノクローナル抗体が認識するシガトキシン類の部位とは異なる別の部位を認識するその他のモノクローナル抗体を、本発明のモノクローナル抗体と組み合わせて用いることにより、より高感度でシガトキシン類を検出することもできる。
したがって、本発明のモノクローナル抗体と、該モノクローナル抗体が認識するシガトキシン類の部位とは別の部位を認識するその他のモノクローナル抗体とを含むシガトキシン類検出キットも、本発明のひとつである。
モノクローナル抗体8H4は、本発明者らにより、M環部にヒドロキシ基を有するシガトキシン類のHIJKLM環部を合成ハプテンとして用いて、M環部にヒドロキシ基を有するシガトキシン類に特異的に結合し得るモノクローナル抗体として作製された(特開2006−193485号公報参照)。また、モノクローナル抗体3D11は、本発明者らにより、M環部にヒドロキシ基を有しないシガトキシン類のIJKLM環部を合成ハプテンとして用いて、M環部にヒドロキシ基を有しないシガトキシン類に特異的に結合し得るモノクローナル抗体として作製された(特開2003−55400号公報参照)。
モノクローナル抗体を標識する方法としては、公知の方法を用いることができ、また、市販の抗体標識用キットを用いることもできる。
従来、A環部にジヒドロキシブテニル基を有さないシガトキシン類のABCDE環部を含む化合物をキャリアータンパク質とコンジュゲートさせる方法としては、キャリアータンパク質の塩基性アミノ酸残基のアミノ基を、ABCDE環部を含む化合物のマレイミド誘導体と反応させる方法が知られていたが(特許第3845796号明細書を参照)、本発明においては、キャリアータンパク質の塩基性アミノ酸残基のアミノ基をチオール基に変換して反応させることにより、動物に目的抗体を産生させ得るタンパク質コンジュゲートを得ることができる。
式(II)の化合物は、以下に記載する方法1により得ることができる。
A. 式(II)の化合物の製造
上記の式(II)の化合物を、下記の方法1により合成した。
方法1
Fmoc-グリシン(32.1 mg, 108.1μmol)のCH2Cl2 (1.1 mL)溶液に、室温でDMAP (9.89 mg, 81.0μmol)とDCC (22.3 mg, 108.1μmol)を加えた。反応溶液を室温で5分間攪拌後、化合物5(5.0 mg, 5.4μmol)のCH2Cl2 (1.0 mL)溶液を加えた。さらに反応溶液を14時間撹拌後、リン酸緩衝液(pH=7)を加えた。酢酸エチルで抽出したのち、分離した有機相をMgSO4で乾燥した。溶媒を留去後、残渣をシリカゲルカラム(CH2Cl2/EtOAc 1:0〜1:9)で精製し化合物6を得た(6.5 mg、収率:100%)。
ESI-FT-MS : C77H73NO12Naについて算出 (M+Na+): 1226.5025, 実測値: 1226.5024.
ESI-FT-MS : 化合物7:C55H57NO12Naについて算出(M+Na+):946.3773, 実測値:946.3774.
化合物8: C55H55NO12 Naについて算出(M+Na+): 944.3616, 実測値: 944.3621.
ESI-FT-MS : C44H49NO12Naについて算出 (M+Na+): 806.3147, 実測値: 806.3152.
ESI-FT-MS : C36H44N2O13Naについて算出 (M+Na+): 735.2736, 実測値: 735.2739.
化合物12のPBS溶液(9.0 mL, 1.70 mg/mL)に対して、室温でTCEP (1.8 mg, 6.4μmol)のPBS (100μL)溶液を加えた。室温で2時間静置したのち、TCEP (1.8 mg, 6.4μmol)のPBS (100μL)溶液を再び加え、さらに室温で2時間静置したのちTCEP (1.8 mg, 6.4μmol)のPBS (100μL)溶液をもう一度加えた。室温で12時間静置したのち、4℃でPBS (1 L)に対して透析した。2時間ごとに2回PBS (1 L)を交換し、12時間後に透析膜から溶液を取り出して上記化合物13を得た。
上記のようにして得られたBSAコンジュゲートを、MALDI-TOF-MSで分析した。BSAコンジュゲートの平均分子量は約77400であった(BSAの分子量は約66400)。上記の式(II)の化合物に由来する部分であるハプテン部分の分子量が802であるので、BSAコンジュゲートには平均14個のハプテンが連結されていることがわかる。
上記のようにして得られた式(II)の化合物とKLHとのコンジュゲート(300μg)に、アジュバントとしてのAbISCOTM-100 (ISCONOVA社製,150μL)およびPBSを加えて溶液量を1.2 mLとした。このようにして調製した溶液を抗原液として、Balb/cマウス(5匹)に2週間毎に3回、腹腔内投与した(1回の投与につき200μL/マウス)。3回目の投与から1週間後にマウスの血清を採取し、上記の式(II)の化合物とBSAとのコンジュゲートを抗原として用いて下記のELISA (enzyme-linked immunosorbent assay)法で血清の抗体価を決定した。
96ウェルELISA用プレート(COSTAR社製3590)の各ウェルに50μLのBSAコンジュゲート(2μg/mL)を入れ、室温で2時間放置後、4℃で一晩放置して、プレートにBSAコンジュゲートを吸着させた。プレートをPBS-Tween [5% Tween-20 (ポリオキシエチレン (20)ソルビタンモノラウレート(ICI社製、Tween-20相当品BIO-RAD社製170-6531)を含むPBS]で3回洗浄し、吸着しなかったBSAコンジュゲートを除去した。ウェルに抗血清(またはハイブリドーマ培養上清、精製抗体溶液)を加え、室温で1時間放置後、PBS-Tweenで3回洗浄した。50μLの酵素標識二次抗体(ヤギ抗マウスIgG-西洋わさびペルオキシターゼ)(BIO-RAD社製、170-6516、PBS-Tweenで1000倍希釈した溶液)を各ウェルに入れ、室温で1時間放置後、PBS-Tweenでそれぞれ3回洗浄した。100μLの基質溶液[基質溶液の組成:1,2-フェニレンジアミン4.0 mg、過酸化水素水10μL、0.1 Mクエン酸バッファー(pH 5.0) 10 mL]を加え、数分間呈色反応を進行させた後、2規定硫酸(50μL)で反応を停止した。マイクロプレート吸光度測定装置(BIO-RAD社製、モデル680)を用いて、490 nmの吸光度を測定した。
血清を10% FBS含有PBSを用いて300倍から38400倍まで順次2倍希釈した希釈系列サンプルを作製した。上記のようにしてBSAコンジュゲートを吸着させたELISAプレート(COSTAR 社製3590)に希釈系列サンプルを50μLずつ入れ、室温で1時間放置後、上記の方法で490 nmの吸光度を測定した(図1参照)。5匹のマウスについて、血清希釈度の対数と吸光度をプロットした結果を図1に示す。図1より、血清中の抗体が血清濃度依存的にBSAコンジュゲートと結合することがわかる。
上記のようにして得られたKLHコンジュゲート(100μg)にAbISCOTM-100 (ISCONOVA社製、50μL)およびPBSを加えて溶液量を0.4 mLとし、抗原液を作製した。3回目の免疫から3週間後に、5匹の中で最も高い抗体価を示したマウスの腹腔内に、先に調製した抗原液を追加免疫し(200μL)、3日後に脾臓を摘出した。脾臓に付着している組織や臓器の断片をピンセットで取り除いた後、無血清培地 [RPMI 1640培地(GIBCO社製、11875-085) 1000 mLにペニシリン・ストレプトマイシン(GIBCO社製、15140-122) 10 mLを加えたもの] 15 mL入りのシャーレに移し、ピンセットで脾臓内の細胞を浮遊させた。脾臓細胞浮遊液を濾過後、50 mL遠心管に移した。さらに、無血清培地15 mLを加え、よくピペッティングして濾過し全量を30 mLとした。800 rpmで5分間、室温で遠心分離し、上清を除去、タッピングした。
抗体の精製およびサブクラスの決定
上記のようにして作製したハイブリドーマ3G8の培養上清を、抗マウスIgG+IgMアフィニティーカラム(NGK Industries, Ltd.社製)で精製した(結合用バッファー:リン酸バッファーpH 7.0、溶出用バッファー:0.2 M Gly-HCl pH 2.5)。抗体のサブクラスを、マウスモノクローナル抗体アイソタイピングキットIsoStrip (Roche Applied Science社製、11493027001)を用いて決定した。その結果、抗体3G8のサブクラスはIgG1κであった。
次に、精製した抗体についてハプテンとの解離常数(Kd)を求めた。ELISA用プレートに順次2倍希釈した競争阻害剤(以下に示す化合物14)(10%MeOH含有PBS溶液各30μL)の溶液を調製した。これに抗体溶液(30μL)を加え、室温で2時間放置した。抗体と阻害剤の混合液50μLを、BSAコンジュゲート(1.25μg/mL)を吸着した96ウェルELISA用プレート(COSTAR社製3590)に加え、室温で15分間放置した。プレートをPBS-Tweenで3回洗浄した後、50μLの酵素標識二次抗体(ヤギ抗マウスIgG-西洋わさびペルオキシターゼ)(BIO-RAD社製、170-6516、PBS-Tweenで1000倍希釈)を各ウェルに入れ、室温で1時間放置後、PBS-Tweenで3回洗浄した。100μLの基質溶液[基質溶液の組成:1,2-フェニレンジアミン4.0 mg、過酸化水素水10μL、0.1 Mクエン酸バッファー(pH 5.0) 10 mL]を加え、数分間呈色反応を進行させた後、2規定硫酸(50μL)で反応を停止させた。マイクロプレート吸光度測定装置(BIO-RAD社製、モデル680)を用いて、490 nmの吸光度を測定し、滴定曲線を得た。Friguetらの方法[Journal of Immunological Method, 第77巻(1985年)、第305頁]を参考に、Klotzプロットを作製して得た直線の傾きから阻害剤のKdを求めたところ、Kd = 1.5 nMとなり、モノクローナル抗体3G8はハプテン化合物14に強く結合することがわかる。
8H4抗体の酵素標識(サンドイッチ法に用いる8H4-HRPの合成)
受託番号FERM BP-11400として寄託されたハイブリドーマ8H4により産生される抗体8H4(M環部にOH基を有するシガトキシン類を認識するモノクローナル抗体、特開2006−193485号公報を参照)を、HRP-Antibody All-in-OneTM Conjugationキット(solulink社製)を同社説明書に従って用いて、HRP標識した。8H4抗体(100μg)を用いて8H4-HRP溶液約150μLが得られた。この溶液を500μLチューブに入れ、4℃で保存した。
COSTAR社製ELISAプレート(3590)に、上記のようにして得られたモノクローナル抗体3G8のPBS溶液(10μg/mL)をウェルあたり50μL入れ、4℃で一晩放置した。溶液を捨て、1%スキムミルク含有PBSを加えて(400μL/ウェル)室温で1時間静置した。溶液を捨て、PBS-Tweenで3回洗浄後、シガトキシンCTX1B(化合物4)の希釈溶液を入れ(50μL/ウェル)、室温で1時間静置した。溶液を捨て、PBS-Tweenで3回洗浄した後、上記のHRP標識モノクローナル抗体8H4の溶液(20μg/mL、50μL)を添加し、室温で1時間静置した。溶液を捨て、PBS-Tweenで3回洗浄した後、100μLの基質溶液[基質溶液の組成:1,2-フェニレンジアミン4.0 mg、過酸化水素水10μL、0.1Mクエン酸バッファー(pH 5.0) 10 mL]を加え、数分間呈色反応を進行させた後、2規定硫酸(50μL)で反応を停止した。マイクロプレート吸光度測定装置(BIO-RAD社製、モデル680)を用いて、490 nmの吸光度を測定した。測定結果を図2に示す。
Claims (9)
- 次の式(I):
で表されるタンパク質コンジュゲートでマウスを免疫して得られる、A環部にジヒドロキシブテニル基を有するシガトキシン類を特異的に認識するモノクローナル抗体を産生する、受託番号FERM BP-11401として2010年9月15日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(郵便番号305-8566、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されたハイブリドーマ3G8。 - A環部にジヒドロキシブテニル基を有するシガトキシン類が、シガトキシンCTX1Bまたは54-デオキシ-CTX1Bである請求項1に記載のハイブリドーマ3G8。
- 請求項1または2に記載のハイブリドーマ3G8により産生される、A環部にジヒドロキシブテニル基を有するシガトキシン類を特異的に認識するモノクローナル抗体。
- 請求項3に記載のモノクローナル抗体と、受託番号FERM BP-11400として2004年12月22日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(郵便番号305-8566、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されたハイブリドーマ8H4または受託番号FERM BP-8293として平成14年(2002年)3月5日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(郵便番号305-8566、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されたハイブリドーマ3D11により産生されるモノクローナル抗体とを含む、シガトキシン類検出キット。
- 請求項3に記載のモノクローナル抗体、または受託番号FERM BP-11400として2004年12月22日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(郵便番号305-8566、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されたハイブリドーマ8H4により産生されるモノクローナル抗体もしくは受託番号FERM BP-8293として平成14年(2002年)3月5日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(郵便番号305-8566、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されたハイブリドーマ3D11により産生されるモノクローナル抗体が標識されている請求項4に記載のシガトキシン類検出キット。
- 標識が酵素標識である請求項5に記載のシガトキシン類検出キット。
- 次の式(II):
- 請求項7に記載の化合物がキャリアータンパク質と結合してなる、次の式(I)
で表されるタンパク質コンジュゲート。 - キャリアータンパク質が、ウシ血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニンまたは卵アルブミンである請求項8に記載のタンパク質コンジュゲート。
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