JP5755608B2 - 電解装置及びそれを用いた表面処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、異形中空断面形状を有するワークの内部表面を表面処理するのに適した電解装置及びこれを用いた表面処理方法に関する。
ワークの中空部の内部表面のみに表面処理するための表面処理装置が従来から多く提案されている。
例えば特許文献1は、円筒部材の内面処理装置として円筒部材の上下の開口部をふさぎ、内面に向けて液噴射管から処理液を噴射させ、液体の一部をオーバーフローさせるとともに、このオーバーフローの有無を検出するための液体検知センサーを有する技術を開示する。
特許文献2は、シリンダーブロックのシリンダー内面を陽極酸化する陽極酸化皮膜装置を開示する。
また、本出願人は先に中空体からなる電極をワークの中空部に配設し、この電極の中空部からワークの内面部に向け、且つ、当該電極の接線方向斜めに噴射する電解液吐出口を設けた陽極酸化処理装置を提案している(特許文献3)。
しかし、これら従来の表面処理装置はいずれも中空部の断面が円形状のワークを対象としたものであって、中空部内面に複数の凹凸部を有する異形断面形状からなるワークに対しては内面に均一に表面処理することができないものであった。
特許第4886555号公報 特開平11−117092号公報 特開2005−314751号公報
本発明は、中空部内面に複数の凹凸部を有するワークに対して内面に均一に表面処理するための電解装置及びその方法の提供を目的とする。
本発明に係る電解装置は、内部に複数の凹凸部を有する異形断面形状の上下に連通した中空部を備えたワークの電解装置であって、電解装置はワークの下部開口部をふさぐための載置部と、ワークの上部開口部をふさぐための押え部と、ワークの内部に配置するための電極とを有し、前記電極は中空断面形状からなりワークの各凹部に向けて電解液を噴射するための複数の噴射口を有し、前記載置部又は/及び押え部はワークの各凹部に対応して配置した複数の排水口を有することを特徴とする。
また、本発明に係るワークの中空内部表面の表面処理方法は、請求項1記載の電解装置を用いた表面処理方法であって、内部に複数の凹凸部を有する異形断面形状の上下に連通した中空部を備えたワークの下部開口部を前記載置部でふさぎ、ワークの上部開口部を押え部でふさぎ、前記電極とワークとを電解用の電源に接続し、電極の各噴射口からワークの各凹部に向けて電解液を噴射し、載置部又は/及び押え部に設けた排出口を介してワークの各凹部から電解液を排出しながら電解処理することを特徴とする。
ここで電解装置と表現したのは、電解液を用いて電解により表面処理する装置であることを意味し、アルミニウム及びその合金、マグネシウム及びその合金、チタン及びその合金等の電解液を用いて陽極酸化処理を目的とするもののみならず、メッキ液を電解液に用いた電気メッキを含む。
本発明が対象とするワークは、このワークの両端部間に連通した中空部を有し、中空部の内面から内側に向けて複数の凸部を有し、その結果として中空部内面に複数の凹凸部が形成された中空部の内面形状が異形断面形状になっているものを対象とする。
ワークの中空部の内面に複数の凹凸形状があると内部の中空電極から単に電解液を噴射させただけでは電解液がワークの中空部表面全体に均一に流れないからである。
よって、本発明においてワークの内面に有する凹凸部の大きさは凹部の底部から凸部の頂部までの高さ寸法をHとし、中空部の内面に複数有する凹部の底部に接する内接円の直径寸法をDとするとH/Dの値が0.05〜0.4の範囲をいう。
よってH/Dの値が0.05未満の凸部の両側又は周囲にできる凹部は本発明における凹部ではない。
本発明においては、ワークの内面に有する各凹部に向けてそれぞれ電解液を噴射させるとともにこの各凹部に対応して排水口を設けたので電解液が中空部の内面全体にわたって流れるので局部的ないわゆる電解ヤケを防止できる。
(a)は本発明に係る電解装置(陽極酸化装置)の構造例を示し、(b)はワークの中空部形状及び電解液の噴射口、排水口の配置例を示す。 比較例に用いた噴射口、排水口の配置例を示し、(a)は排水口が1つの場合、(b)は噴射口が1つの場合である。 膜厚の測定部位を示す。 電解条件と品質の評価結果を示す。
本発明に係る電解装置の構造例を図1に示す。
電解装置10はワークWの下部開口部をふさぐための載置部11と、このワークWの上部開口部をふさぐための押え部12を有し、この押え部12又は載置部11が相対的に上下動し、ワークの脱着が可能になっている。
なお、図1では載置部11に載せたワークWを押え部12で上部から押える構造例になっているがワークWの開口部が左右になるようにし載置部と押え部とで両側から挟み込むように配置してもよい。
載置部11とワークWの下部開口部端面との間にシール部材11aを配設し、押え部12とワークWの上部開口部端面との間にシール部材12aを配設することでワークの開口部から電解液がモレないようになっている。
本実施例では押え部12に貫通して中空体からなる電極14を配置し、電極14とワークWとの間に電源16により配線部材16a、16bを介して電圧が印加されるようになっている。
ワークWの形状は断面形状を図1(b)に示すように、上下方向に開口部が連通し、内面に4つの凸部21〜24を有し、その結果として凹部31〜34が4つ形成された例になっている。
凸部の数は2つ以上であれば制限がなく、本実施例ではワークの上部端部から下部端部にまたがって上下方向に凸部が形成された例になっているが、上下方向に部分的な凸部でもよい。
中空体の電極14からワークWの各凹部31〜34に向けてそれぞれ電解液が噴射するように4つの噴射口15a〜15dを有し、各凹部31〜34に対応して、この凹部から電解液が排水されるように4つの排水口13a〜13dが設けられている。
図1にて電解液の流れを模式的に矢印で示す。
排水口から排水された電解液は循環ポンプ及び温調器を介して電極側に送り込まれる。
次に図1の電解装置を用いてアルミニウム合金からなる図3に示したワークの内面に陽極酸化処理し、試験評価したので、以下説明する。
陽極酸化方法としては図1に示した電解液の噴射口及び排水口がそれぞれ4つのもの(実施例1〜4)と、比較例として図2(a)に示すように排水口が1つのもの、比較例2として図2(b)に示すように噴射口が1つのものを比較評価した。
なお、ワークWの凹部底面内接円の直径Dは約80mm、凸部の高さHは約15mmである。
ワークWを常法に従い脱脂等の前処理を行い、その後に陽極酸化処理した電解液は濃度200g/Lの硫酸水溶液を用い液温10℃に温調し、循環ポンプを用いて電解液を電極の噴射口から噴射させ排水口から排水及び循環させた。
陽極酸化後は70℃の純水湯洗を3分間行い、図3に示したa〜dの4ヶ所膜厚及び硬さを測定した。
電解条件(電流密度)、電解液の流量及び品質結果を図4の表に示す。
なお、膜厚はうず電流式膜厚計を用い、硬度は皮膜断面,荷重25gのマイクロビッカース硬度計で測定した。
表に示すように実施例1の電流密度1A/dmによる普通皮膜形成条件から実施例2〜4の電流密度27A/dm,40A/dmによる硬質皮膜形成状にわたって測定部位a〜d間で膜厚が均一であり、硬度も均一であった。
これに対して比較例1,2はいずれも皮膜にヤケが発生し、正常な皮膜が得られなかった。
10 電解装置
11 載置部
12 押え部
13 排水口
14 電極
15 噴射口
16 電源

Claims (2)

  1. 内部に複数の凹凸部を有する異形断面形状の上下に連通した中空部を備えたワークの電解装置であって、
    電解装置はワークの下部開口部をふさぐための載置部と、ワークの上部開口部をふさぐための押え部と、ワークの内部に配置するための電極とを有し、
    前記電極は中空断面形状からなりワークの各凹部に向けて電解液を噴射するための複数の噴射口を有し、前記載置部又は/及び押え部はワークの各凹部に対応して配置した複数の排水口を有することを特徴とする電解装置。
  2. 請求項1記載の電解装置を用いた表面処理方法であって、
    内部に複数の凹凸部を有する異形断面形状の上下に連通した中空部を備えたワークの下部開口部を前記載置部でふさぎ、
    ワークの上部開口部を押え部でふさぎ、
    前記電極とワークとを電解用の電源に接続し、
    電極の各噴射口からワークの各凹部に向けて電解液を噴射し、載置部又は/及び押え部に設けた排出口を介してワークの各凹部から電解液を排出しながら電解処理することを特徴とするワークの中空内部表面の表面処理方法。
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