JP5754707B2 - 松葉杖形歩行支援機械 - Google Patents

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Description

本発明は、松葉杖形歩行支援機械に係り、特には、上肢は健常であるが下肢に障害を有するために移動を行うことができない人が、日常生活空間内での自立移動を実現するための歩行支援機械に関する。
従来の歩行支援機械には、各関節にアクチュエータを配置した装着形のもの、少数のアクチュエータとリンク機構を用いたものなどがあるが、これらはいずれも個々の関節を外部の機械によって強制的に動かすものであり、関節に大きな負担を強いることが問題である。また、大腿をはじめ脚の多くの箇所にベルトなどで固定する必要があり、圧迫感が非常に大きい。さらに、各関節にアクチュエータを配置したものは、非常に高価である。さらに、これらの歩行支援機械は、使用者本人の残存能力、例えば上半身の力などを有効に活用できるものではない。また、歩行訓練機も実在するが、あくまでも訓練用であり、パーソナルユースには向かない。
また歩行補助機に関する提案がなされているが(非特許文献1参照)、この機械は、主に高齢者である歩行者の下肢の力を補助するものであり、下肢の力の衰えた高齢者を補助するために、歩行者の力の半分を補助することを想定しており、本発明のように下肢に障害を有するような人には不十分な機械であり、本発明とは相違している。
また歩行補助装置については、様々な提案がなされている(例えば、特許文献1から10及び非特許文献2から4参照)が、本発明の提案を開示するものではない。
出願人は、特許文献11「松葉杖形歩行支援機械」において、上肢は健常であるが下肢に障害を有するために移動を行うことができない人が日常生活空間内での自立移動を実現するための支援機械を提案している。しかし、特許文献11の歩行支援機械に関して、エネルギー消費の面及び乗り心地の面において、改善する要望が存在した。
特開2008−48754号公報 特開2008−17981号公報 特開2007−159971号公報 特開2007−20909号公報 特開2007−20672号公報 特開2007−14698号公報 特開2004−344303号公報 特開2008−23234号公報 特開2004−261622号公報 特開2002−191655号公報 特開2009−273565号公報
日本機械学会論文集C編、72-724, 2006-12,pp.3871-3877(題名「足裏から下肢全体を支援する歩行補助機の開発」) 日本機械学会福祉工学シンポジウム講演論文集、2005,No05-44.(題名「足関節と股関節が連動した新しい対麻痺者用歩行装具の動作解析」) 2002年度精密工学会春季大会学術講演会論文集、2002,pp.660.(題名「脊髄損傷者用歩行補助装具の開発及び計測」) 日本機械学会福祉工学シンポジウム講演論文集、2002,No2-34.(題名「電動椅子に代わる松葉杖を用いた直動移動装置の開発)
本発明は、上述した事情に鑑みなされたもので、上肢は健常であるが下肢に障害を有するために移動を行うことができない人が日常生活空間内での自立移動を実現するための福祉機械である、松葉杖形歩行支援機械のエネルギー消費の低減と乗り心地の向上を図ることを目的とする。
本発明のこれとは別の目的は、以下の項目である。
・従来機において、消費エネルギーが大きくなる要因として、直動アクチュエータの大きな加速度と速度があり、これを低減させること。
・従来機では、躓きを防止するために、離地直後に大きな収縮速度が要求されるので、これを改善すること。
・足首機構の導入による「けり動作」により、前方への大きな推進速度を得ること。
・直動アクチュエータの速度および加速度が大きいため、使用者の乗り心地が悪いので、直動アクチュエータの速度、加速度を小さくすること。
・足首機構の導入に伴い、アクチュエータを付加せずに、機構的に解決して、シンプル、安価、高信頼性な装置とすること。
本発明の歩行支援機械は、上述した目的を達成するために、使用者が松葉杖を自らの腕で操作した上で、本歩行支援機械を装着することにより、障害のある下肢の運動が創成されて歩行が実現される。本歩行支援機械は、「下肢の伸展→歩行面の蹴り出し→下肢の収縮→下肢の伸展→身体の支持」の一連の動作を実現する腰部と足部の間の相対運動を基本的に振り子運動に従って創成し、使用者の脚部をこれに受動的に追従させて歩行を実現することに特化した構成となっている。
より具体的には、本発明の第1の形態では、人の歩行を支援するための歩行支援機械(100)は、使用者が手で操作し且つ自身の体重を預けることができる、一対の松葉杖(1)と、伸縮可能な一対の伸縮リンク(3)と、伸縮リンク(3)の下端部に取り付けられていて且つその上に使用者の足を載せるための足底板(9)と、伸縮リンク(3)を伸縮させることが可能なアクチュエータ(6)と、歩行支援機械(100)を制御するための制御装置(30)とを具備する。各松葉杖(1)の上端部と各伸縮リンク(3)の上端部はそれぞれ、回転可能な対偶(2)を介して連結される。歩行支援機械は、伸縮リンク(3)が伸縮することにより、使用者の歩行を支援する。該歩行支援機械は、上部が伸縮リンク(3)に連結していて且つ下部が足底板(9)に連結する、腱リンク(40)を更に具備しており、腱リンク(40)は、伸縮自在である。
腱リンク(40)は、上部リンク(41)と、下部リンク(51)と、を具備しており、上部リンク(41)は、回転自在な対偶である上部連結部(43)を介して伸縮リンク(3)に連結しており、下部リンク(51)は、回転自在な対偶である下部連結部(53)を介して足底板(9)に連結しており、上部リンク(41)は、下部リンク(51)に対して摺動可能である。
上部リンク(41)及び下部リンク(51)の内の一方は、シリンダ(61)であり、上部リンク(41)及び下部リンク(51)の内の他方は、端部にピストン(63)が取り付けられたロッド(64)であり、ピストン及びロッドは、シリンダ(61)内に収容されても良い。これとは別に、上部リンク(41)及び下部リンク(51)の内の一方は、外シリンダ(71)であり、上部リンク(41)及び下部リンク(51)の内の他方は、外シリンダ(71)の内部に収容される内シリンダ(72)であり、外シリンダ(71)と内シリンダ(72)は、ワイヤ(73)又はロッド(83)で接続されても良い。
歩行の進行方向である長手方向における足底板(9)の長さ(TH)に対して、伸縮リンク(3)と足底板(9)の連結点(A)から、足底板(9)の後端までの長手方向の長さ(AH)は、1/2より小さいことが好ましい。足底板が離地する瞬間の松葉杖と、松葉杖の前方の地面とのなす角度である、松葉杖角度(θoff)は、90度と105度との間にあることが好ましく、腱リンクの最大長さ(LH)と、使用者の身長(H)とは、LH=αHの関係にあり、αは、0.35と0.45との間の値をとることが好ましい。
上部リンク(41)は、ストッパ(42)を具備しており、下部リンク(51)は、停止部(54)を具備しており、上部リンク(41)が、下部リンク(51)に対して上昇するように摺動する場合に、ストッパ(42)が停止部(54)に当たることにより、上部リンク(41)の上昇は止まる。ストッパ(42)及び停止部(54)の内のいずれか一方は、緩衝機構(又は、ダンパ)を具備することが好ましい。
使用者が操作して歩行開始の意思を前記歩行支援機械(100)に伝えるための握り棒スイッチ(24)と、松葉杖(1)の接地を検知するための接触センサ(25)と、外乱を検知するための外乱検知センサ(26)と、使用者の腰部付近をあずけるためであって且つ伸縮リンク(3)を連結するように伸縮リンク(3)に取り付けられる腰帯(4)と、使用者の腰部付近を支えるためであって且つ伸縮リンク(3)に取り付けられる円形状のウェストハーネス(5)と、を更に具備する。伸縮リンク(3)は、足底板(9)の両側の側部に、回転可能であって且つブレーキ付きの、対偶(10)を介して接続しており、使用者の足は、足先固定帯(8)により、足底板(9)に固定されており、足底板(9)が地面に接触していないときに、足底板(9)が傾かないように拘束するように、足底板(9)と伸縮リンク(3)との間において取り付けられる足関節ばね(7)を更に具備することが好ましい。
上記の本発明の説明において、カッコ()内の記号又は数字は、以下に示す実施の形態との対応を示すために添付される。
本発明の歩行支援機械によれば以下の効果を発揮できる。
・提案した足首機構は、歩行動作中に松葉杖の接地点まわりの「けり動作」を創成するため、直動アクチュエータに要求される変位、速度および加速度が大幅に低減され、その結果として、アクチュエータの消費エネルギーを低減させる。
・足首機構の導入による「けり動作」により、前方への大きな推進速度を得る。
・直動アクチュエータの速度および加速度を小さくすることにより、使用者の乗り心地を改善する。
・離地直後における直動アクチュエータの大きな収縮速度を低減した上で、躓きを防止する。
・足首機構の導入に伴い、アクチュエータを付加せずに、機構的に解決して、シンプル、安価、高信頼性な装置とする。
・しかも今回発明した足首駆動機構は閉ループリンク機構とストッパからなる単純なものであり、新たにアクチュエータを配置する必要が無く、軽量、省スペースに実現可能である。
・上肢は健常であるが下肢に障害を有するために移動を行うことができない人が、本機械を使用することにより、主に腕等の上半身の能力を有効に使用して歩行を可能にし、日常生活空間内での自立移動を実現できる。
・このような歩行支援機械により、自らの能力を最大限に活かした下肢障害者の健康維持、増進および積極的な社会参加が促され、さらに少数のアクチュエータによる効率的な歩行を実現することができる。
・歩行支援機械は、手元などのスイッチによって動作開始・終了指令を行うことにより、使用者の指令を受信して作動するので、あくまで使用者の状況判断と意思に基いて、使用者にとって、より優しい装置を提供する。
・エネルギー効率の良い運動として振り子運動を利用するため、腰関節、膝関節等をその可動範囲を超えて強制的に動かすことがなく、腰関節、膝関節等に無理な負担をかけることがなく、上半身の筋肉に過度な負担を強いることがなく、使用者が疲労せずに長距離を移動できる。
・立位時に外乱により転倒することがない。
図1は、本発明の松葉杖形歩行支援機械を使用者が着用した場合の概念図を示すと共に歩行支援機械の基本構成を示す。 図2は、本発明の第一の実施の形態に係る松葉杖形歩行支援機械の構成の詳細を図解的に示す。 図3は、図2の松葉杖形歩行支援機械の腱リンクの第1の実施の形態のより詳しい構成を図解的に示しており、(a)は概念図を示し、(b)は、(a)におけるA−A断面を示す。 図4は、松葉杖形歩行支援機械100の制御装置30における情報と作動の流れを示す。 図5は、図4における歩行動作手順(ステップ5)の内容のより詳細な工程の流れを示す。 図6は、一歩分の制御について、直動アクチュエータの目標伸縮速度の時間変化を説明する図である。 図7は、一歩分の制御について、直動アクチュエータの目標伸縮速度の時間変化の別の形態を説明する図である。 図8は、従来の松葉杖形歩行支援機械の動きの状態を図解的に示す。 図9は、本発明の足首機構を有する松葉杖形歩行支援機械の定数および変数を示す図である。 図10は、本発明の松葉杖形歩行支援機械の動きの3つの状態(a)、(b)、(c)を図解的に示す。 図11は、図2の松葉杖形歩行支援機械の腱リンクの第2の実施の形態を図解的に示す。 図12は、図2の松葉杖形歩行支援機械の腱リンクの第3の実施の形態を図解的に示す。 図13は、図2の松葉杖形歩行支援機械の腱リンクの第4の実施の形態を図解的に示す。 図14は、従来の松葉杖形歩行支援機械による歩行実験における消費エネルギーの時間変化を示す。 図15は、本発明の松葉杖形歩行支援機械による歩行実験における消費エネルギーの時間変化を示す。
以下、図面に基づいて本発明の第1の実施の形態の装置を詳細に説明する。
図1及び図2は、本発明に係る松葉杖形歩行支援機械の一実施の形態を図解的に示しており、図1は、本発明の松葉杖形歩行支援機械100を使用者(又は、歩行者)が着用した場合の概念図を示すと共に歩行支援機械の基本構成を示し、図2は本発明の松葉杖形歩行支援機械100の構成の詳細を図解的に示す。
まず図1を参照すると、使用者が本発明の松葉杖形歩行支援機械100を着用した状態が示される。松葉杖形歩行支援機械100は、左右1本づつ計2本からなる松葉杖1と、やはり左右1本づつ計2本からなる伸縮リンク3とを具備する。使用者は、歩行支援機械100に支援されながら歩行することが出来る。使用者のこの様な歩行作業において、図1は、全体構成を、使用者と、歩行支援機械100のハードウェア(松葉杖1、伸縮リンク3等)と、歩行支援機械100の操作・制御系(制御装置、センサ類等)とに分けて、それぞれの機能、役割を説明している。使用者は、外乱はないか、歩行が可能か等の状況判断を行い、その判断に基づく使用者の意思を歩行支援機械100に伝達し、松葉杖1の操作を行う。操作・制御系は、使用者の意思を検出し、外乱等危険状態、歩行状態等を検出し、アクチュエータ6に動作を指令して、アクチュエータの軌道追従制御を行う。ハードウェアは、使用者の身体を支持しながら、必要に応じて危険回避運動を行い、更に危険のない状態で、本発明の振り子運動に基く歩行運動を創成する。
図2を参照すると、松葉杖形歩行支援機械100は、左右1本づつ計2本で対をなす松葉杖1と、やはり左右1本づつ計2本で対をなす伸縮リンク3とを具備する。松葉杖1は、使用者が使い易いものであるべきことを考慮して、通常の松葉杖であることが好ましいが、別の軽量な構造体であっても良い。使用者は、通常の松葉杖と同様に、歩行に際して、松葉杖1を手で保持しながら脇の下に固定し、松葉杖1を歩行方向に振り出して、体重を松葉杖1に掛けるように前に移動することにより前進するが、この際振り子運動を利用する。例えば、右手側の伸縮リンク3の上端部は、図2に示すように、右手側の松葉杖1の上端部と球対偶2を介して連結されており、球対偶2は、松葉杖1と伸縮リンク3を回転可能に連結する機能を有すると共に、使用者の脇の下への負担を生じさせないようにする。左手側の伸縮リンク3及び松葉杖1も右手側と同様に構成される。
伸縮リンク3の下端部には、図2に示すように、1つの足底板9がブレーキ付き球対偶10を介して取り付けられており、足底板9上に使用者は足部を固定し、足底板9は、歩行支援機械100が地面と接触する部分である。ブレーキ付き球対偶10は、伸縮リンク3と足底板9を回転可能に連結しており、足底板9が凹凸のある地面と安定に接触するために受動的な球対偶10が設置される。また、人やものとの衝突、風、揺れ等の外乱が作用した際に、球対偶10のブレーキを利かせることにより、足底板9と伸縮リンク3の相対運動を拘束し、使用者の安定性を確保する。ブレーキは、ソレノイド方式であることが好ましいが、空圧又は油圧シリンダ等を利用した既知なタイプであっても良い。足底板9には、1つの足先固定帯8が設けられており、足先固定帯8は、使用者の足部を足底板9に固定する。本実施の形態において、足先固定帯8は、図2に示すように、2本の足に対して1つづつ設けられるが、これとは別に2つ等別の数であっても良い。足底板9と伸縮リンク3とは、図2に示すように、弾力性のある左右それぞれ2つの足関節ばね7により連結されており、足底板9が地面と接触していないときに、足底板9が傾かないように拘束する。足関節ばね7の数は、左右各2つで計4つ以外の数であっても良い。
伸縮リンク3は、使用者の腰と足部の間の距離を変化させ、また使用者の自重を支える機能を有する。このため、歩行支援機械100は、左右の伸縮リンク3と、1つの腰帯4と、1つのウエストハーネス5と、各伸縮リンク3の概略中央に各1基づつ設けられた直動アクチュエータ(又は、単にアクチュエータと呼ぶ)6とを具備する。腰帯4は、図2に示すように、直動アクチュエータ6より上の位置に左右の伸縮リンク3を連結するように伸縮リンク3に取り付けられて、使用者の腰の前に位置するように配置されて、使用者が腰帯4に体重を預けることにより、腰関節が反り返らないように拘束する。ウエストハーネス5は、一般的に輪状の帯体であり、やはり左右の伸縮リンク3を結合するように取り付けられて、使用者の腰を囲むように支持可能であって、使用者の脚ではなく、歩行支援機械の伸縮リンク3によって使用者の体重を支えるように作用する。直動アクチュエータ6は、左右の伸縮リンク3にそれぞれ1基づつ設けられて、伸縮リンク3の運動を創成する。直動アクチュエータ6は、伸縮リンク3の長手方向の概略中央付近に具備されることが好ましく、伸縮リンク3の上部と下部を連結して、伸縮リンク3と一体となるように配置される。アクチュエータ6は、電動であることが好ましいが、空圧アクチュエータなどでも良い。電源(図示されない)は、バッテリ等既知の電源であっても良い。バッテリ等の電源は、使用者の腰又は背中に取り付けられることが好ましい。
左右の松葉杖1はそれぞれ、左右の杖部21を具備しており、杖部21には、使用者が手で掴むための握り棒22が設けられる。松葉杖1は更に、握り棒スイッチ24と、接触センサ25とを具備する。握り棒スイッチ24は、握り棒22に少なくとも1つ取り付けられており、使用者による歩行開始・終了などの意思の入力を行い、図2の例では、使用者が左右どちらでも操作できるように、左右の握り棒22に各1つずつ設けられている。接触センサ25は、左右の杖部21の下端にそれぞれ少なくとも1つ設けられており、使用者による松葉杖1の操作により、松葉杖1が地面と接触したことを検知する。詳しく後述されるように、握り棒スイッチ24の状態と接触センサ25の状態と合わせて、歩行動作の開始・終了などが判断される。
歩行支援機械100は、外乱検知センサ26を具備しており、外乱検知センサ26により外乱を検出する。外乱検出センサ26は、加速度センサ又はジャイロセンサであることが好ましく、使用者の体の一部に取り付けられることが好ましいが、それ以外の場所、例えば、松葉杖1に取り付けても良い。歩行支援機械100は、歩行支援機械100を制御する制御装置30を具備しており、制御装置30及び動力源(図示されない)は、使用者の体に取り付けられることが好ましいが、伸縮リンク3等、それ以外の場所に取り付けられたり、別置きであっても良い。
伸縮リンク3は、図2に示すように、上部伸縮リンク31と、下部伸縮リンク32とを具備しており、上部伸縮リンク31と下部伸縮リンク32との間にアクチュエータ6が配置される。歩行支援機械100は、左右一対(即ち、2式)の腱リンク40(又は、足首機構と言う)を更に具備する。腱リンク40は、図3に示すように、上部リンク41と、下部リンク51とを具備する。上部リンク41は、上部連結部43を介して上部伸縮リンク31に接続しており、下部リンク51は、下部連結部53を介して足底板9の後端91に接続する。上部連結部43及び下部連結部53は共に、球対偶であることが好ましい。上部リンク41は、下部リンク51に沿って上下方向に摺動(直線的運動)することが出来る。
図3に示す第1の実施の形態において、下部リンク51は、貫通溝を持つガイド部52と、停止部54とを具備する。上部リンク41は、ストッパ42を具備する。上部リンク41の上下動をより詳しく説明すると、ストッパ42がガイド部52に沿って摺動することが出来る。腱リンク40の上下動には限度が設けられている。即ち、上部リンク41が下部リンクに対して上昇すると、下部リンク51の停止部54がストッパ42に衝突(又は、当接)することにより、上部リンク41の上昇は停止する。ストッパ42又は停止部54にダンパ(緩衝機構とも言う)が備えられて、ストッパ42への停止部54の衝突を緩和することが好ましい。
図3(a)の例において、上部リンク41は、中空の円筒パイプであり、下端が開口しており、上端には上部連結部43が設置されている。上部リンク41の下側には、右から左(又は、左から右)に貫通する複数の孔44が設けられており、円棒状のストッパピン42が、これらの一対の孔44の1つに挿入されて、ストッパ42としての機能を果たしている(ストッパピン42を挿入する孔44を変えれば、上部リンク41の摺動ストローク(又は、腱リンクの最大長さ)を調整できる)。円筒パイプ状の上部リンク41内には、図3(a)におけるA−A断面を示す図3(b)に示されるような貫通溝を持つ下部リンク51が挿入されており、下部リンク51の下端には下部連結部53が配置されている。
図11に本発明の腱リンクの第2の実施の形態を示しており、この腱リンク60は、テレスコピックなシリンダを用いた形態である。図11(a)は、腱リンク60の縮んだ状態を示し、図11(b)は、腱リンク60の伸びた状態を示す。本実施の形態の腱リンク60の基本的構造は、従来のテレスコピックなシリンダを用いたものであり、上部リンク(又は、下部リンク)に相当するシリンダ61と、下部リンク(又は、上部リンク)に相当するロッド64とを具備する。腱リンク60において、エアシリンダのように、ロッド64にピストン63を固定してある。シリンダ61の底面はシリンダキャップ62により閉鎖されており、シリンダキャップ62の中央に設けられた孔65を介してロッド64は往復動する。シリンダ61の外側に雄ねじを、シリンダキャップ62に雌ねじを切りこれを噛み合わせることでシリンダキャップ62をシリンダ61に固定する。図11(b)に示すように、外側のシリンダキャップ62とピストン63が接触することでストッパとなる。ロッド64の長さを変更することで、腱リンク60の最大長さ(ストッパが作動する時の長さ)を調整する。本実施の形態において、ピストン63とシリンダ61の間の間隙がダンパとして作用する。腱リンク60と、伸縮リンク3及び足底板9との連結構造等は、基本的に第1の実施の形態と同様であるので、説明の重複を避けて省略する。
第2の実施の形態において、ピストン63をロッド64に固定する別の方法を図11(c)、(d)、(e)に示す。図11(c)は、多くのエアシリンダで用いられている止め輪66を用いる(ロッド64には溝67を設ける)方法であり、図11(d)は、ロッド64に雄ねじを切り、ピストン63に雌ねじを切り、ねじのかみ合いにより固定する方法であり、図11(e)は、ナット68により固定する方法である。(c)の止め輪66を使う方法の場合、溝67を複数切ることでピストン63の位置を調整することができ、腱リンク60の最大長さを調整しやすい。
図12に本発明の腱リンクの第3の実施の形態を示しており、この腱リンク70は、テレスコピックなシリンダとワイヤによるストッパを用いた形態である。図12(a)は、腱リンク70の縮んだ状態を示し、図12(b)は、腱リンク70の伸びた状態を示す。本実施の形態の腱リンク70の基本的構造は、従来のテレスコピックなシリンダを用いたものであるが、それぞれのシリンダをワイヤで連結する。腱リンク70は、上部リンク(又は、下部リンク)に相当する外シリンダ71と、下部リンク(又は、上部リンク)に相当する内シリンダ72とを具備しており、図12に示すように、内部にワイヤ73を配置しその両端をそれぞれの外及び内シリンダ71,72の底面に取り付ける。また、ワイヤ止めとしてワイヤストッパ74が、ワイヤ73両端に設けられる。ワイヤ73が張ることでストッパとなる構造であり、ワイヤ73の長さで腱リンク70の最大長さを調整する。腱リンク70と、伸縮リンク3及び足底板9との連結構造等は、基本的に第1の実施の形態と同様であるので、説明の重複を避けて省略する。
図13に本発明の腱リンクの第4の実施の形態を示しており、この腱リンク80は、テレスコピックなシリンダとロッドによるストッパを用いた形態である。図13(a)は、腱リンク80の縮んだ状態を示し、図13(b)は、腱リンク80の伸びた状態を示す。本実施の形態の腱リンク80の基本的構造は、従来のテレスコピックなシリンダを用いたものであるが、それぞれのシリンダを、第3の実施の形態のワイヤの代わりにロッド83で連結する。内部のロッド83の長さで腱リンク80の最大長さを調整する。その他の構成は、第3の実施の形態と同様であるので省略する。
これとは別に、スライダではなく、リンクの回転運動により腱リンクの長さを変化させる構造でも良い。この実施例においては、曲げあるいはせん断力を受けるのはリンクの軸なので強度を確保しやすい。この場合において、リンクの長さで腱リンクの最大長さを調整する。
更にこれとは別に、剛体リンクではなく、ワイヤを用いた柔軟リンクを用いた構造でも良い。この場合においては、スプールに巻き付いていたワイヤが全てほどけることでストッパとなる。曲げ・せん断力を受けるのはスプールの軸のみであり、強度を確保しやすい。ワイヤの長さで腱リンクの最大長さを調整する。
次に、歩行支援機械100に関して、効率的で快適な歩行を行うための条件(設計パラメータ)について説明する。使用者に対して作用する力を小さくすることにより、使用者にとってより心地良い歩行を可能にする条件から、アクチュエータの伸張段階の加速度(上昇時加速度)(図6参照):A1が0.5m/s以下であることが好ましい。足底板が離地する瞬間の松葉杖角度(図8,10(c)参照)θoffは、90度<=θoff<=105度であることが好ましく、92度<=θoff<=102度であることがより好ましい。また、腱リンクの最大長さ(図10参照):LH=αH(Hは使用者の身長)の関係にあり、0.35<=α<=0.45であることが好ましい。
次に、機構の作動条件について説明する。まず、図9に示すようにパラメータ(機械の幾何学的定数および運動変数)を定める。sは直進対偶部に設けたアクチュエータの変位である。これが入力変位となる。直進対偶の速度(V)は、時間に対して図7に示すように変化させる。図10(a)に示した初期状態から、アクチュエータを伸展させると、図10(b)のように全体的に前方に傾斜し、腱リンクの長さqが最大値LHとなりストッパが機能する。この状態から、足底板は点Tまわりに回転を開始する。さらにアクチュエータを伸展させると、図10(c)のように松葉杖の角度θがθoffとなって、足底板が離地する。この状態からアクチュエータは減速を始め、足底板が地面と接触しないように収縮する。この後、足底板は接地していない間、ばねによって水平に近い状態に保たれる。最後に着地に備えて、脚長SAがLiniとなるようにアクチュエータが伸展する。重要なポイントは、足首機構による省エネ効果を得るためには、図10(c)の状態になる少し前に図10(b)の状態になることであり、そのようになるように、各種の設計パラメータを決定する必要がある。なお、図10(b)の状態から図10(c)の状態までに長い時間を経過してしまうと足首機構による省エネ効果がなくなる。
歩行支援機械の設計における、設計パラメータおよびその決定手順について説明する。運動パラメータとしては、図7(直進対偶の速度変化)における、アクチュエータ伸展中の加速度A1、 アクチュエータ収縮中の速度Vin、足底プレートの離地タイミングを表す松葉杖角度θoff、歩幅Lstep(図10(a))がある。機構パラメータ(定数)としては、直動アクチュエータの初期長さsiniあるいは脚の初期長さLini(図10(a))、腱リンクの最大長さLH(図10(b))、足底板におけるリンク(ラックのついているリンク、足側)および腱リンクの取り付け位置を表す長さ(THに対するAH:図9)、その他の長さの定数:SC, SB, BD, EA(図9)がある。
本発明の歩行支援機械の実機により様々な条件で実験を行い、その結果判明した重要なパラメータの決定手順あるいは方針について説明する。
(1)長さの次元をもつパラメータは、使用者の身長を基準として、定めることが好ましい。
(2)siniあるいはLiniは、後方に転倒しない条件により下限が定まり、加速度の最大値の条件により上限が定まるので、この範囲で設定する。上限値に近くした方が消費エネルギーは少なくなるが、加速度が大きくなる。
(3)LHは、腱リンクが無い場合に離地するタイミングにおける幾何学的関係より、その最大値が定まる。それよりも若干小さい値を選択するのが消費エネルギーの観点から良い。過度に小さくすると足首機構が作動する時間が長くなるので、逆に消費エネルギーが多くなる。
(4)THに対するAHは、AHがTHの1/2より小さくした方がアクチュエータの速度の最大値を抑えることができ、結果的に消費エネルギーが少なくなるので、このようにすることが望ましい。
(5)θoffおよびVinは、θoff:[95°,102°],Vin:[0.25, 0.35]m/sの範囲で、消費エネルギーおよび加速度を評価して適宜決定することがより好ましい。
本発明の歩行支援機械100において、松葉杖1の長さ、伸縮リンク3の長さ及び腱リンク40の長さは、使用者の身長等の身体的な特徴、使用者の好み等に合わせて、調整できることが好ましいので、松葉杖1、伸縮リンク3及び腱リンク40は、長さが調整できるように、伸縮機構を具備することが好ましい。伸縮機構は具体的には、ネジ機構、スライド機構等の当業者に既知な機構であっても良い。
次に、本実施の形態の歩行支援機械100の作動について説明する。
歩行動作は、先ず静止状態から歩行状態に移行し、着地(接地)して一歩目の歩行を終了して、次の二歩目の歩行に入り、二歩目の歩行においては、静止状態からの歩行動作を、一歩目の歩行と同様に、繰り返すように行われる。
本発明の第1の実施の形態における(上記の)歩行状態における作動について、図4を参照して説明する。図4は、松葉杖形歩行支援機械100の制御装置30における情報と動作の流れを示す。使用者は、静止して立っている状態(初期状態)から歩行を開始する(ステップ0(S0))。また初期状態において、球対偶10のブレーキは開放されており、伸縮リンク3、即ちアクチュエータ6の長さは、所定の初期長さに設定される。この初期長さは、使用者の身長等に基いて決定されることが好ましい。S0において、使用者は、歩行支援機械100の電源をONする。この際、制御装置30の電源もONされる。S0において、握り棒スイッチ24、接触センサ25(接地状態をONとする)等の各スイッチ類は、OFFに設定されており、各スイッチがONになるまで、すなわち、使用者が歩行を開始しようと動作するまで待つ状態である。使用者が歩行を開始しようとすると、先ずステップ1(S1)及びステップ6(S6)に進む。S1において、使用者は、歩行(又は、前進)するために、松葉杖1を操作して前に振り出す。この際、松葉杖1の先端に取り付けられている接触センサ25がOFFになり、そして松葉杖1が接地(又は、着地)すると、接触センサ25は、短時間でONとなる。S1においては、松葉杖1が操作されて、接触センサ25がONからOFFそしてONへと切り換えられた(作動した)かどうかを確認する段階である(松葉杖操作手順)。接触センサ25の作動が確認された場合には、次の処理(ステップ2(S2))に進み、作動が確認されない場合(ONのままの場合等)は、接触センサ25が作動するまで、すなわち、使用者が歩行を開始しようと松葉杖を操作するまでS1で待つ。
ステップ2(S2)は、使用者が握り棒スイッチ24をONしたかどうかを確認する手順である(開始指令手順)。このように使用者は、握り棒スイッチ24をONすることにより、歩行の意思を歩行支援機械100に伝える。握り棒スイッチ24がONになった場合には、次の処理(ステップ3(S3))に進む。握り棒スイッチ24がONにならない場合は、使用者が握り棒スイッチ24をONしていない状態であるので、S2で待機する。ここで、S1およびS2の判断は図4の順序の通りでも良いが、逆順でも良い。また、同時に並行して判断を行っても良い。
ステップ6(S6)において、加速度センサ/ジャイロなどの外乱検知センサ26の信号を分析して、外乱の有無および対応の必要性を判断する(外乱検出手順)。外乱とは、人や物との衝突、風、揺れ等である。従って、使用者が外乱を受けた場合、外乱検知センサ26が、加速度センサであれば使用者に作用した加速度を検出可能であり、ジャイロであれば、使用者に作用した角速度が検出可能であるので、外乱が検出可能である。ここでS6は、S1およびS2と並行処理するものとする。外乱への対応が必要と判断された場合には、ステップ7(S7)に進み、対応すべき外乱がない、即ち外乱への対応が不要と判断された場合(NO)には、ステップ3(S3)に進む。
ステップ7(S7)において、外乱が検出され、外乱に対する対応が必要と判断された状態であるので、ブレーキ付き球対偶10のブレーキを作動させて固定する。これにより、足底板9が伸縮リンク3に対して固定されるので、歩行動作は、実施不能になり、使用者は、静止状態を維持する。ブレーキが固定された後に、ブレーキ固定信号を出して、ステップ4(S4)に進む。
ステップ3(S3)において、使用者の誤った操作あるいは何らかの外的要因による影響を排除して使用者が歩行開始の意思を有することを正確に判断するために、接触センサ25および握り棒スイッチ24が所定の時間、継続的にONになっているかどうかを確認する(待ち時間手順)。この待ち時間の間、接触センサ25あるいは握り棒スイッチ24がOFFとなった場合にはS1に戻る。この待ち時間の間、継続的に接触センサ25および握り棒スイッチ24がONであった場合には、通常歩行開始OKの信号を出してステップ4(S4)に進む。
ステップ4(S4)において、通常歩行開始OKの信号とブレーキ固定信号の有無を比較して、通常歩行が可能かどうかを判断する(状態確認手順)。S4において、ブレーキ固定信号が入っていない場合には通常歩行開始信号を出し、通常歩行制御の処理(歩行手順)、即ちステップ5(S5)に進む。ブレーキ固定信号が入っている場合には、外乱継続確認の信号を出して外乱対応制御の処理、即ちステップ11(S11)に進む。
ステップ11(S11)において、外乱が継続しているかどうかを確認し、外乱が継続していればブレーキ固定状態を維持し、外乱検知センサ26により、外乱が継続していないことが検知されて、かつ使用者が安定な状態にあることの安全確認が終わった段階で、ステップ12(S12)に進む。S11において、外乱の種類・大きさに応じて用意されている外乱補償運動、例えば、アクチュエータを所定長さに設定して、固定する等のアクチュエータ6の制御に対応したアクチュエータの制御プログラムを実行しても良い。
外乱が継続せず、外乱が収まり、安全が確認されると、ステップ12(S12)に進み、固定されていたブレーキ付き球対偶10のブレーキを開放する。これにより、足底板9は、伸縮リンク3に対して自由に回転する状態になる。S12でブレーキが開放されると、再度最初の状態、即ちS1及びS6に進む。安全の確認は、外乱が作用していないことの確認と、使用者が松葉杖を接地させる等により安全な状態にあることの確認により行われる。
ステップ5(S5)において、通常歩行に対応した、振り子運動に基づくアクチュエータ6の速度制御プログラムを一歩分の制御が終了するまで実行する(歩行手順)。この一歩分の制御について、図5及び図6(「直動アクチュエータの目標伸縮速度の時間変化」)を参照して次に説明する。S4の終了時において、歩行支援機械100は、図10(a)に示す状態にある。S4において、歩行を開始する準備が整っているので、図5のステップ51(S51)において、アクチュエータが作動を開始し、次のステップ52(S52)のアクチュエータの伸長段階に入る。アクチュエータ6が伸張すると、伸縮リンク3も伸張し、上部伸縮リンク31が上昇し、上部伸縮リンク31に接続する上部リンク41も上昇する。これにより、腱リンク40において、上部リンク41のストッパ42が、下部リンク51のガイド部52に沿って摺動し、上部リンク41は上昇する(腱リンク伸張段階:ステップ53(S53))。そして、上部リンク41のストッパ42が下部リンク51の停止部54に当たるまで上昇する。この状態を図10(b)に示す。その後ステップ54(S54)において、上部リンク41のストッパ42が下部リンクの停止部54に当たって、上部リンク41の上昇は止まる(腱リンク伸張停止)。この時点でもアクチュエータは伸長を続け、この時点から足底板9がつま先まわりに回転を始める(ステップ55:S55)。図10(c)によりS55の段階を示す。上記の工程は、図5(b)において、S52伸張段階に含まれる、腱リンク伸張段階(S53)、腱リンク伸張停止段階(S54)、足底板のつま先まわりの回転段階(S54)として説明される。
S51(アクチュエータ作動開始段階)において、直動アクチュエータ6が作動する。次のステップ52(S52)の伸張段階以降については、図6を共に参照して説明する。先ずステップ52(S52)のアクチュエータ伸張段階において、直動アクチュエータ6は、等加速度運動(加速度A1)するように制御されるので、足底板9及び歩行者の体は、徐々に速度が増大しながら上昇する。
図6において、縦軸はアクチュエータ6の速度(V)を示しており、正(+)方向は、アクチュエータ6が伸張する方向であり、負(−)方向は、アクチュエータ6が収縮する方向であり、図6の横軸は、時間(t)を表わす。S5において、通常歩行開始信号が制御装置30からアクチュエータ6に伝えられた時点が、歩行開始時刻であるt0(t=0)であり、アクチュエータ速度(V)は0である。t0において、(即ち、図5のステップ51(S51)のアクチュエータ作動開始段階において)、アクチュエータ6は、伸張を開始する。本実施の形態において、アクチュエータ6の伸張速度(V)は、加速度A1が一定の状態で、時間(t)に比例して増大する。この際加速度A1は、歩行者への衝撃を抑えるために、0.5m/sec2以下であることが好ましい。伸張速度(V)が、増大して、所定の第1の伸張速度(Voff)に到達したことを検知すると(時刻t1)、アクチュエータ6の伸張速度の増加を漸減する指令が制御装置30からアクチュエータ6に送られる。時刻t0からt1までを伸張段階(ステップ52(S52))と呼ぶ。この際、急激にアクチュエータ速度を直線的に変化させるのではなく、図6に示すように、時刻t1後も少しの時間の間、アクチュエータ6の速度を増大させた後、曲線的に速度を減少させるように制御するので、使用者にショックを与えることがない。
アクチュエータの伸張速度(V)の減少段階において、図6に示すように、時間に比例して伸張速度(V)を減少させる。図6に示すように、時刻t=t3でアクチュエータの速度(V)は0になる。時刻t1とt3の間の時刻t2において、使用者は、離地する(足底板9が地面から離れる)。つまり本実施の形態において、時刻t2において離地するように、アクチュエータ6は制御される。ここまでのアクチュエータの伸張する作動により、松葉杖1と地面の間になす松葉杖角度(θ)は、減少する方向に移行する。松葉杖1が地面に概略直角になった状態(θ=θoff)では、使用者の体重は松葉杖1に殆どが掛かる状態になるので、使用者の離地が達成される(図10(c)参照)。時刻t1からt2までを離地段階(ステップ56(S56))と呼ぶ。時刻(t3)後に、アクチュエータ6は、収縮を開始する。本実施の形態におけるこの収縮において、アクチュエータ6の収縮速度(V)は、図6に示すように、t3までの伸張速度の時間(t)に対する伸張速度の変化率と同じ変化率で、時間比例して増大する。アクチュエータ6の収縮速度(V)が、所定の収縮速度(Vin)に達したことが検知されると、収縮速度(V)は、一定(Vin)に保持される。この収縮速度(V)の移行時において、収縮速度(V)は、直線的に変化するのではなく、使用者へのショックを防止するように、図6に示されるように曲線的に変化する。
図6において、アクチュエータ6の収縮速度(V)一定(Vin)の状態が保持された後に、時刻t5において、収縮速度(V)が、時間に比例して減少するように制御される。時刻t5は、歩行状態を真横から見た場合に、使用者と松葉杖1とが概略重なった状態になる時刻である。この状態が、時刻t5に生じること、即ち時刻t5については、松葉杖1の長さ、伸縮リンク3の長さ、アクチュエータ6の速度変化、経過時間等のデータから、制御装置30が算出する。時刻t2からt5までを移動段階(ステップ57(S57))と呼ぶ。時刻t5の後、アクチュエータ6は、時間比例して減少する収縮速度(V)で収縮し、時刻t6で速度0に到達する。その後、アクチュエータ6は、再度伸張する。この際の伸張速度(V)は、図6に示すように、t6までの収縮速度の時間(t)に対する伸張速度の変化率と同じ変化率で、やはり時間に比例して増大する。伸張速度(V)が所定の第2の伸張速度(Vout)に到達したことを検知して(時刻t7において)、伸張速度(V)は一定(Vout)に保持される。この間、伸縮リンク3は、一定の速度(Vout)で伸張し続けるので、使用者(即ち、足底板9)は、時刻t8において接地(又は、着地)する。時刻t5からt8までを接地段階(ステップ58(S58))と呼ぶ。接地後、アクチュエータ6の収縮速度(V)は、時間比例して減少し、t9で収縮速度(V)は0になる。この時点(t9)で、伸縮リンクの長さが、時刻t0の長さ(初期長さ)に戻るように、アクチュエータ6は制御される。時刻t8からt9までを長さ調整段階(ステップ59(S59))と呼ぶ。時刻t9において、使用者は、一歩前進した状態である。
ステップ5(S5)の終了状態(時刻t9)において、使用者と歩行支援機械100、即ち、松葉杖1との位置関係は、使用者の自然静止状態(即ち、S0の状態)とは、違っているので、図4において、ステップ21(S21)に進み、使用者は、松葉杖1を操作して、前に出して、自然静止状態を形成する(歩行準備手順)。その後、更に前進する場合は、上記の同じ作業を反復する。歩行を終了する場合は、握り棒スイッチを操作して、歩行終了信号を歩行支援機械100に送る。
上記の様な本実施の形態における歩行支援機械100の作動によって、使用者は、本発明による歩行の基本的構成をなす振り子運動により一歩の歩行を行う。上記のアクチュエータ6の制御において、時間に対する伸張及び収縮速度の特定の定常状態から次の定常状態への移行は、使用者へのショックを和らげるように、図6に示すように、全て曲線的に実施されることが好ましい。S58の接地段階において、伸縮リンク3が一定の速度(Vout)で伸張し続ける工程が設けられているが、図7に示すようにこの工程が省略されても良い。
次に、腱リンク(足首機構)のある場合(本発明の歩行支援機械を使用した場合)と、ない場合(特願2008−125963の従来の歩行支援機械を使用した場合)について、消費エネルギー及び使用者に作用する加速度についての比較を実際の実験を行って確認したので、これについて説明する。足首機構(腱リンク)のない場合の消費エネルギー(E)について図14に示し、足首機構のある場合の消費エネルギー(E)について図15に示す。足首機構のない場合の歩幅(Lstep)は、歩き易い歩幅を選び、0.60mとし、上昇時加速度A1=0.5m/s2(図6参照)、移動時速度(図6参照):Vin=0.4m/s、松葉杖角度(図8参照):θoff=96度とした。この場合に一歩当たりの消費エネルギーは160J/stepであった。一方、足首機構(腱リンク)のある場合においては、歩幅(Lstep)(図10(a)参照)は、0.70mとし、伸縮リンク初期長さ(図10(a)参照):Lini=1.33m、上昇時加速度(図6参照):A1=0.36m/s、移動時速度(図6参照):Vin=0.4m/s、松葉杖角度(図10(c)参照):θoff=97.5度とした。この場合に一歩当たりの消費エネルギーは91J/stepであった。実験の結果、足首機構を設けることにより、消費エネルギーを43%、加速度を28%それぞれ低減できていることが分かる。
本発明の各実施の形態の歩行支援機械の主要な効果は以下の通りである。
・従来機において、消費エネルギーが大きくなる要因として、直動アクチュエータの大きな加速度と速度があり、これを低減させるので、消費エネルギーを減少する。
・従来機では、躓きを防止するために、離地直後に大きな収縮速度が要求されるので、これを改善する。
・足首機構の導入による「けり動作」により、前方への大きな推進速度を得る。
・直動アクチュエータの速度および加速度が大きいため、使用者の乗り心地が悪いので、直動アクチュエータの速度、加速度を小さくすることにより、使用者の乗り心地を改善する。
・足首機構の導入に伴い、アクチュエータを付加せずに、機構的に解決して、シンプル、安価、高信頼性な装置とする。
上記の説明において、動力源は、バッテリとして説明されたが、燃料電池等の別の既知な動力源が使用されても良い。またアクチュエータ6は、電動モータ駆動と記載されるが、リニアモータ、空圧又は油圧式往復動シリンダ等のこれとは別の装置であっても良い。
上記の実施の形態は本発明の一例であり、本発明は、該実施の形態により制限されるものではなく、請求項に記載される事項によってのみ規定されており、上記以外の実施の形態も実施可能である。
1 松葉杖
2 (球)対偶
3 伸縮リンク
4 腰帯
5 ウェストハーネス
6 (直動)アクチュエータ
7 足関節バネ
8 足先固定帯
9 足底板
10 (ブレーキ付き球)対偶
21 杖部
24 握り棒スイッチ
25 接触センサ
26 外乱検知センサ
30 制御装置
31 上部伸縮リンク
32 下部伸縮リンク
40 腱リンク
41 上部リンク
42 ストッパ
43 上部連結部
44 孔
51 下部リンク
52 ガイド部
53 下部連結部
54 停止部
60 腱リンク
61 シリンダ
62 シリンダキャップ
63 ピストン
64 ロッド
65 孔
66 止め輪
67 溝
68 ナット
70 腱リンク
71 外シリンダ
72 内シリンダ
73 ワイヤ
80 腱リンク
83 ロッド
91 足底板の後端
100 歩行支援機械

Claims (10)

  1. 人の歩行を支援するための歩行支援機械(100)であって、
    使用者が手で操作し且つ自身の体重を預けることができる、一対の松葉杖(1)と、
    伸縮可能な一対の伸縮リンク(3)と、
    前記伸縮リンク(3)の下端部に取り付けられていて且つその上に使用者の足を載せるための、足底板(9)と、
    前記伸縮リンク(3)を伸縮させることが可能なアクチュエータ(6)と、
    前記歩行支援機械(100)を制御するための制御装置(30)と、
    を具備する歩行支援機械(100)において、
    各前記松葉杖(1)の上端部と各前記伸縮リンク(3)の上端部がそれぞれ、回転可能な対偶(2)を介して連結されており、
    前記伸縮リンク(3)が伸縮することにより、使用者の歩行を支援しており、
    該歩行支援機械は、上部が前記伸縮リンク(3)に連結していて且つ下部が前記足底板(9)に連結する、腱リンク(40)を具備しており、
    前記腱リンク(40)は、伸縮自在である、ことを特徴とする歩行支援機械。
  2. 前記腱リンク(40)は、上部リンク(41)と、下部リンク(51)と、を具備しており、
    前記上部リンク(41)は、回転自在な対偶である上部連結部(43)を介して前記伸縮リンク(3)に連結しており、
    前記下部リンク(51)は、回転自在な対偶である下部連結部(53)を介して前記足底板(9)に連結しており、
    前記上部リンク(41)は、前記下部リンク(51)に対して摺動可能である、ことを特徴とする請求項1に記載の歩行支援機械。
  3. 前記上部リンク(41)及び前記下部リンク(51)の内の一方は、シリンダ(61)であり、
    前記上部リンク(41)及び前記下部リンク(51)の内の他方は、端部にピストン(63)が取り付けられたロッド(64)であり、
    前記ピストン(63)及びロッド(64)は、前記シリンダ(61)内に収容される、ことを特徴とする請求項2に記載の歩行支援機械。
  4. 前記上部リンク(41)及び前記下部リンク(51)の内の一方は、外シリンダ(71)であり、
    前記上部リンク(41)及び前記下部リンク(51)の内の他方は、前記外シリンダ(71)の内部に収容される内シリンダ(72)であり、
    前記外シリンダ(71)と前記内シリンダ(72)は、ワイヤ(73)又はロッド(83)で接続する、ことを特徴とする請求項2に記載の歩行支援機械。
  5. 歩行の進行方向である長手方向における前記足底板(9)の長さ(TH)に対して、前記伸縮リンク(3)と前記足底板(9)の連結点から、前記足底板(9)の後端までの長手方向の長さ(AH)は、1/2より小さい、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の歩行支援機械。
  6. 足底板が離地する瞬間の前記松葉杖と、松葉杖の前方の地面とのなす角度である、松葉杖角度(θoff)は、90度と105度との間にある、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の歩行支援機械。
  7. 前記腱リンクの最大長さ(LH)と、使用者の身長(H)とは、LH=αHの関係にあり、αは、0.35と0.45との間の値をとる、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の歩行支援機械。
  8. 前記上部リンク(41)は、ストッパ(42)を具備しており、前記下部リンク(51)は、停止部(54)を具備しており、
    前記上部リンク(41)が、前記下部リンク(51)に対して上昇するように摺動する場合に、前記ストッパ(42)が前記停止部(54)に当たることにより、前記上部リンク(41)の上昇は止まる、ことを特徴とする請求項からのいずれか一項に記載の歩行支援機械。
  9. 前記ストッパ(42)及び前記停止部(54)の内のいずれか一方は、緩衝機構を具備する、ことを特徴とする請求項に記載の歩行支援機械。
  10. 使用者が操作して歩行開始の意思を前記歩行支援機械(100)に伝えるための握り棒スイッチ(24)と、
    前記松葉杖(1)の接地を検知するための接触センサ(25)と、
    外乱を検知するための外乱検知センサ(26)と、
    使用者の腰部付近をあずけるためであって且つ前記伸縮リンク(3)を連結するように前記伸縮リンク(3)に取り付けられる腰帯(4)と、
    使用者の腰部付近を支えるためであって且つ前記伸縮リンク(3)に取り付けられる円形状のウェストハーネス(5)と、を更に具備しており、
    前記伸縮リンク(3)は、前記足底板(9)の両側の側部に、回転可能であって且つブレーキ付きの、対偶(10)を介して接続しており、
    使用者の足は、足先固定帯(8)により、前記足底板(9)に固定されており、
    前記足底板(9)が地面に接触していないときに、前記足底板(9)が傾かないように拘束するように、前記足底板(9)と前記伸縮リンク(3)との間において取り付けられる足関節ばね(7)を更に具備することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の歩行支援機械。
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