JP5750527B1 - 水循環装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】水深が深い場所においても安定して上昇流を発生させることができ、海底など水圧の高い場所にも設置可能であり、環境の影響を受けにくく動作安定性に優れた水循環装置を提供する。【解決手段】外部から水を取り入れる取水用流路と、取水用流路の下流側に設けられた揚水用流路と、揚水用流路内に気体を供給する気体供給手段と、揚水用流路の下流側に設けられた逆流防止機構とを有する水循環装置。また、上記気体供給手段として、水中に含まれる不純物を除去する不純物除去手段と、不純物除去手段により処理された水を電気分解する電気分解手段とを備えている水循環装置。【選択図】図1

Description

本発明は、水循環装置に関し、より詳しくは、海底や水深が大きい湖沼など水圧の高い場所で利用可能な水循環装置に関する。
気体を水に混合させて比重の軽い気泡混合水を発生させ、この気泡混合水が揚水管内を上昇することにより水の流れを発生させる水循環装置が知られている。例えば、特許文献1には、外部に接続した空気配管を通じて揚水管下部に圧縮空気を送り込むことにより揚水を行うエアリフトポンプが開示されている。
特開平8−4700号公報
しかしながら、水面付近に設置される水循環装置は、天候や強風、波浪など環境の影響を受けやすく、海や湖などの自然環境下に水循環装置を設置することは難しかった。
そこで本発明の課題は、水深が深い場所においても安定して上昇流を発生させることができ、海底や水深が大きい湖沼など水圧の高い場所にも設置可能であり、水面付近や水上における急激な環境変化の影響を受けにくく、動作安定性に優れた水循環装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係る第1の水循環装置は、一の直管部が外部から水を取り入れる取水用流路であり他の直管部が前記取水用流路の下流側に設けられた揚水用流路であるU字管部と、前記揚水用流路内に気体を供給する気体供給手段と、前記揚水用流路の下流側に設けられた逆流防止機構とを有することを特徴とするものからなる。
また、本発明に係る第2の水循環装置は、外部から水を取り入れる取水用流路と、前記取水用流路の下流側に設けられた揚水用流路と、前記揚水用流路内に気体を供給する気体供給手段と、前記揚水用流路の下流側に設けられた逆流防止機構とを有する水循環装置であって、内管の外側に外管を配置してなる二重管部を備えており、前記取水用流路が前記内管の内側に形成された内側流路からなり、前記揚水用流路が前記外管と前記内管との間に形成された外側流路からなることを特徴とするものからなる。
このような本発明に係る水循環装置によれば、気体供給手段によって揚水用流路内に気体が供給されることにより、水と気体とが混合されて比重の軽い気泡混合水が発生し、取水用流路の下流側に設けられた揚水用流路内に上昇流が生じる。すると、取水用流路内の水が揚水用流路内へ流れ込むこととなり、取水用流路内には揚水用流路へ向けた流れが生じる。その結果、取水用流路より取り込まれた外部の水が揚水用流路内へ流入し、気体供給手段によって供給された気体とともに揚水用流路より再び水循環装置の外部へ放出される、という循環的な水の流れが発生する。
上記揚水用流路の下流側には、水の逆流を防止する逆流防止機構を設ける。逆流防止機構としては、例えば、S字管からなるトラップや逆止弁などが挙げられるが、設置費用および設置容易性の観点からは、逆流防止機構としてS字管を設けることが好ましい。また、逆止弁としては、例えば、リフト式逆止弁、ディスク式逆止弁、ダイヤフラム式逆止弁、ボール式逆止弁、インライン式逆止弁、スイング式逆止弁などが挙げられる。
上記水循環装置は、気体供給手段として、水中に含まれる不純物を除去する不純物除去手段と、該不純物除去手段により処理された水を電気分解する電気分解手段とを備えていることが好ましい。このような構成によれば、電気分解手段により水を電気分解して気体を発生させ、揚水用流路内へ直接気体を供給することができるので、水圧に抗して外部から揚水用流路へ気体を供給するためのポンプや配管等の設備が不要となり、水深に関わらず安定して気体を供給することができる。また、電気分解手段および不純物除去手段はU字管内に設けられていることが、水循環装置外部の環境の変化から保護され、水循環装置の動作安定性の向上が図られる点で好ましい。
このような不純物除去手段および電気分解手段を備えた水循環装置によれば、電気分解手段により電気分解される水はあらかじめ不純物除去手段により処理されているので、長期間にわたって安定した運転を行うことができる。ここで、不純物とは、水に含まれている成分のうち電気分解処理を妨げるもの全般を指し、例えば、小型魚類等の生物の死骸およびその破片、微生物、沈殿物、析出物質、塵芥等が挙げられる。不純物除去手段は、すべての不純物を完全に水から除去する必要はなく、電気分解処理が実施できる程度にこれら不純物のいずれかを水から除去できればよい。また、水循環装置には不純物除去手段として複数の手段が備えられていてもよく、例えば、微生物除去手段と沈殿物除去手段とが備えられている構成を採用することができる。
上記不純物除去手段の構成はとくに限定されず、例えば、不純物除去手段として濾過部材を備えている構成を採用することができる。濾過部材の材料としては、例えば、素焼のセラミックスなどを用いることができる。このような部材は安価で製造可能であるため、不純物の除去に要するコストを低く抑えることができ、低コストで電気分解処理の安定化を図ることができる。
なお、気体供給手段の構成は上記のみに限定されるものではなく、例えば、気体供給手段として、送気管を通じて揚水用流路内に気体を供給する送気手段を備えた構成を採用することもできる。揚水用流路内に供給される気体は、例えば、空気であってもよいし、油田、炭田または天然ガス田から発生する気体(天然ガスやガス状炭化水素など)であってもよい。このような構成によれば、任意の気体(例えば、空気など)を揚水用流路内に直接供給することができ、しかも送気手段によって気体の供給量を容易に調節できるため、運転条件を柔軟に変更可能な水循環装置を低コストで実現できる。特に、送気手段を地上に設置することにより、保守性の向上を図ることができる。なお、送気手段は、気体のみを送出するように構成されていてもよいし、気体だけでなく、送気管を通じて揚水用流路内へ液体を供給可能であるように構成されていてもよい。また、送気管には、気体の逆流を防止する弁が設けられていることが好ましい。
上記水循環装置においては、例えば、一の直管部が取水用流路であり他の直管部が揚水用流路であるU字管部を有している構成を採用することができる。このようなU字管部を水中に立設し、揚水用流路内に気体を供給する気体供給手段を設けることにより、U字管の一方の直管部(すなわち、取水用流路)から取り込まれた水が、U字管の曲管部を介して他方の直管部(すなわち、揚水用流路)より再び外部へ放出される、という循環的な水の流れを発生させることができる。
上記水循環装置には、複数のU字管が備えられていてもよい。例えば、水循環装置の構成として、複数のU字管が、所定の間隔を維持するように配列された状態にて水中に立設され、気体供給手段(例えば、不純物除去手段および電気分解手段)により、それぞれのU字管の揚水用流路内に気体が供給される構成を採用することができる。このような構成によれば、隣接するU字管同士が所定の間隔を維持するように配列されることにより複数のU字管からなるU字管群が自立可能となるため、U字管を水中に立設させるための支持部材を簡素化でき、水循環装置の設置コストの削減を図ることができる。なお、気体供給手段の構成はとくに限定されず、例えば、各U字管に個別に気体供給手段が備えられている構成や、一の気体供給手段により複数のU字管の揚水用流路内に気体が供給される構成を採用することができる。
また、別の態様として、上記水循環装置においては、内管の外側に外管を配置してなる二重管部を備えており、取水用流路が内管の内側に形成された内側流路からなり、揚水用流路が外管と内管との間に形成された外側流路からなる構成を採用することもできる。このような構成によれば、外部から二重管部の内側流路(すなわち、取水用流路)へ取り込まれた水が二重管部の底部から外側流路(すなわち、揚水用流路)へ流れ込んだ後、気体供給手段から供給される気体の作用によって外側流路を上昇し外部へ放出される、という循環的な水の流れを発生させることができる。また、二重管部の外形は通常略直管状であり、対応する形状の孔を水底に穿設することで装置を容易に立設することができるため、比較的深度の浅い水域や流れの強い水域への設置に適している。
上記水循環装置には、流体の運動エネルギーを回転エネルギーへ変換するタービンを設けることができる。タービンの設置場所は特に限定されず、例えば、タービンが取水用流路内に設けられている構成を採用することができる。このような構成にすれば、流路内に設置されたタービンは水循環装置外部の環境変化から保護されることとなり、タービンの動作安定性が確保される。また、水循環装置には、タービンの回転を動力とする発電手段を設け、水循環装置によって生じた水の流れを利用して電力を発生させることができる。このような場合、発電手段は、耐水圧性および防水性に優れていることが好ましい。発電手段の耐水圧性を向上させるための構成としては、例えば、発電手段の発電部が、非伝導性の液体(例えば、油など)により液浸状態にて保護されている構成を採用することができる。なお、発電手段は流路内に設けられていてもよいし、発電手段の一部が流路外に設けられていてもよい。また、発電手段やタービンと接続する電気配線等は、実施の形態に応じて適宜配設することが可能であり、例えば、電気配線等が流路内に配設されている構成、配線等が流路外に配設されている構成、配線の一部が流路内に配設され、配線の他の部分が流路外に配設される構成、のいずれも採用可能である。
本発明に係る水循環装置によれば、取水用流路の下流側に揚水用流路を設け、当該揚水用流路に気体を供給するという比較的簡素な構造により、循環流を安定して継続的に発生させることができる。とくに、気体供給手段として不純物除去手段および電気分解手段を備えることにより、外部から気体を供給するための設備が不要となり、水深に関わらず電気分解により気体を安定して揚水用流路内へ供給することができる。
また、流路内にタービンを設けることにより、天候などの環境変化による影響を受けることなく、流路内の水流を利用してエネルギーを発生させることができる。
本発明の第一実施態様に係る水循環装置の模式縦断面図である。 図1の水循環装置に設けられた不純物除去手段を示す拡大縦断面図である。 本発明の第二実施態様に係る水循環装置の模式縦断面図である。 複数のU字管が所定の間隔を維持するように配列された構成の一例を示す模式図である。 本発明の第三実施態様に係る水循環装置の模式縦断面図である。 本発明の第四実施態様に係る水循環装置の模式縦断面図である。 本発明の第五実施態様に係る水循環装置の模式縦断面図である。
以下に、本発明の望ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第一実施態様に係る水循環装置を示している。図1の水循環装置1において、U字管2は支持部材3により支持されて水20中に立設されている。U字管2の直管部はそれぞれ取水用流路4および揚水用流路5として構成されており、取水用流路4と揚水用流路5とはU字管2の曲管部6を介して連通されている。揚水用流路5の下方には電気分解手段7を内蔵した不純物除去手段8が設けられており、電気分解手段7には電源9から耐水性のケーブル10を介して電力が供給される。揚水用流路5の下流側には、水の逆流を防止するための逆流防止機構21(例えば、後述するS字管や逆止弁など)が設けられている。また、U字管2の取水用流路4には、取水用流路4内の水流により回転するタービン11を備えた発電手段12が設けられており、発電手段12により得られた電力を耐水性のケーブル13を通して回収し、電源9へ送信することができる。電源9にはさらに外部からのケーブル14が接続され、必要に応じて外部から電源9へ電力を供給したり、水循環装置1に備えられた電気分解手段7や発電手段12等の機器を監視制御することが可能である。なお、図1に示した水循環装置1では、発電手段12が取水用流路4内に格納された構成が例示されているが、発電手段12の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、発電手段12を構成する機器の一部がU字管2の外部に配置されていてもよい。また、電気分解手段7、不純物除去手段8、発電手段12等の設置台数は図示された構成のみに限定されるものではなく、必要に応じて台数を増減してもよい。
電源9より電気分解手段7へ電力が供給されると、不純物除去手段8によって不純物が除去された水が電気分解手段7により分解され、気泡15が発生する。気泡15が揚水用流路5内に供給されると、揚水用流路5内の水は気泡15が混合されて比重が軽くなり、上昇流が生じる。その結果、取水用流路4の水がU字管2の曲管部6を介して揚水用流路5下部へ供給されることとなり、図1の矢印に示すような循環流が発生する。また、揚水用流路5の下流側に設けられた逆流防止機構21により、揚水用流路5内における水の逆流が防止されている。
なお、図1の水循環装置1では、電気分解手段7により発生した気泡15は水20中に放出されているが、水循環装置の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、揚水用流路5の開口端に気泡15を回収する回収手段が設けられた構成を採用することもできる。
タービン11の構成はとくに限定されず、例えば、回転子として単一のスクリューが設けられた構成や、複数の羽根(ブレード)からなる回転子が設けられた構成など、様々な構成の中から最適なものを適宜採用することができる。
発電手段12は、耐水圧性および防水性に優れていることが好ましい。このような発電手段の構成としては、例えば、油浸式などの液浸構造により発電手段12の発電部が保護されている構成が挙げられる。
U字管2の素材はとくに限定されず、設置される環境に応じて金属や樹脂などを適宜採用することができる。U字管2の素材として水よりも比重の軽い樹脂を用いる場合は、支持部材3の代わりにU字管2を水底に繋止するアンカーなどを用いて水循環装置1を水中に設置してもよい。また、浮力を利用して水中におけるU字管2の転倒を防止し、水循環装置1の設置作業の容易化を図ることも可能である。
図2は、図1に示した不純物除去手段8の拡大縦断面図である。図2において、不純物除去手段8は素焼のセラミックスからなる濾過部材16を備えている。濾過部材16内には中空部17が設けられており、中空部17内には陽極18および陰極19が交互に配列されてなる電気分解手段7が内蔵されている。陽極18および陰極19には耐水性のケーブル10を通じて電源9から電力が供給される。なお、図2には電源9として直流電源を用いた態様が例示されているが、電源として交流電源を用いた構成を採用することも可能である。
濾過部材16は多孔質材料である素焼のセラミックスで構成されているので、外側から濾過部材16を通って中空部17へ到達する水は濾過部材16により濾過され、不純物が除去される。中空部17へ到達した水は陽極18および陰極19により電気分解されて気泡となり、多孔質である濾過部材16を通じて外へ放出される。そして、気泡が放出されて中空部17内の水が減少すると、濾過部材16の外側の水が濾過部材16を通って中空部17へ供給されることとなり、不純物が除去された水の電気分解が継続的に行われることとなる。なお、水循環装置1の組立作業時に濾過部材16にあらかじめ水を浸透させておき、中空部17内に電気分解用の水が充填された状態にて水循環装置1の運転を開始することが好ましい。
図3は、本発明の第二実施態様に係る水循環装置を示しており、とくに、海中に設置された水循環装置の一例を示している。図3において、U字管2を有する水循環装置31は海30の中に立設されており、U字管2の直管部はそれぞれ取水用流路4および揚水用流路5として構成されている。U字管2の揚水用流路5の下部には電気分解手段7が内蔵されたイオン除去手段32が設けられており、イオン除去手段32により処理された水が電気分解手段7へ供給される。イオン除去手段32は、電気分解処理が安定して実施可能な程度にナトリウムイオン、塩化物イオン等を海水から除去し、電気分解時における塩素ガス等の発生を抑制する。また、電気分解手段7には耐水性のケーブル10を通じて電源9より電力が供給される。さらに、揚水用流路5の下流側には、逆流防止機構として、一端が外部へ開口するS字管22が設けられており、当該開口端は、外部からの水の侵入をより確実に防止するという観点から、側方(略水平方向)に開口されている。なお、その他の構成は図1に示した水循環装置1と同様であるので、図1と同一の符号を付すことにより説明を省略する。
水循環装置31には複数の異なる不純物除去手段が設けられていてもよく、例えば、イオン除去手段32により処理された水が、さらに図2に示した濾過部材16を通して電気分解手段7へ供給される構成を採用することもできる。
水循環装置31は電気分解手段7によって水を電気分解することにより揚水用流路5内に気体を発生させるので、気体を揚水用流路5の下方へ送出するためのポンプや配管等の設備が不要となり、海底などの深い場所でも水圧によらず安定した循環流を発生させることができる。また、水循環装置31は海底に立設されているので、海面付近の波浪や強風の影響を受けることが無く、長期間にわたって安定した運転を行うことができる。
図4は、複数のU字管を有する水循環装置の一例を示している。図4において、水循環装置41は複数のU字管2を有しており、隣接するU字管2同士は連結部材42により所定の間隔を維持するように配列されている。このような複数のU字管2からなるU字管群は自立可能であるため、安定して水底に設置することができ、水循環装置41の設置作業が容易化される。なお、図示は省略するが、U字管2の揚水用流路下流側には、図1や図3と同様、水の逆流を防止するための逆流防止機構(例えば、S字管など)が設けられている。また、水循環装置41には、U字管2の立設を補助する支持部材がさらに設けられていてもよい。
電源9の電力は、耐水性のケーブル10を通じて各U字管2の揚水用流路5下部に設けられた電気分解手段(図示略)に供給される。また、各U字管2の取水用流路4内には発電手段(図示略)が設けられており、発電手段により得られた電力を耐水性のケーブル13を介して回収し、電源9に送信することが可能である。なお、電源9にはさらに外部からのケーブル14が接続されており、必要に応じて外部から電源9へ電力を供給したり、水循環装置41に備えられた電気分解手段や発電手段等の機器を監視制御することができる。
図5は、本発明の第三実施態様に係る水循環装置を示している。図5において、水循環装置50は、一の直管部が取水用流路4として、他の直管部が揚水用流路5としてそれぞれ構成されているU字管2を有しており、送気管51を通じて揚水用流路下部に気体を供給する送気手段52(例えば、送気ポンプ)を気体供給手段として備えている。送気管51には、気体の逆流を防止するための弁53が複数設けられており、送気手段52は、気体だけでなく、送気管51を通じて揚水用流路5下部へ液体を供給可能であるように構成されている。U字管2の取水用流路4には、取水用流路4内の水流により回転するタービン11を備えた発電手段12が設けられており、水循環装置50には、発電手段12により得られた電力を耐水性のケーブル13を通して回収するための電源54が備えられている。電源54および送気手段52にはさらに外部からのケーブル14が接続されており、必要に応じて外部から電源54や送気手段52へ電力を供給したり、電源54から送気手段52へ電力を供給したり、送気手段52や発電手段12等の機器を監視制御したりすることが可能である。なお、その他の構成は図1に示した水循環装置1と同様であるので、図1と同一の符号を付すことにより説明を省略する。
このような水循環装置50によれば、任意の気体(例えば、空気など)を揚水用流路5下部に直接供給することができ、しかも送気手段52によって気体の供給量を容易に調節できるため、運転条件を柔軟に変更可能な水循環装置50を低コストで実現できる。なお、図5の水循環装置50においては、電源54および送気手段52は地上に設置されており、保守性および操作性の向上が図られている。
図6は、本発明の第四実施態様に係る水循環装置を示しており、とくに、海中に設置された水循環装置の別の例を示している。図6において、U字管2を有する水循環装置60は海30の中に立設されており、U字管2の直管部はそれぞれ取水用流路4および揚水用流路5として構成されている。U字管2の揚水用流路5の下部には気体供給手段としての電気分解手段61が設けられており、この電気分解手段61がU字管2内の海水を電気分解して揚水用流路5内に気体を発生させることにより、図6に矢印として示すような循環流がU字管2内に発生する。また、水循環装置60は、U字管2内に資源回収管62が備えられた二重管構造を有しており、資源回収管62は、一端がU字管2の底部である資源滞留部63に開口し、他端がU字管2の外部に設けられた資源回収手段64に連通している。資源回収管62内には揚水用流路5の下部と同様に電気分解手段61が設けられており、この電気分解手段61が資源回収管62内の海水を電気分解して資源回収管62内に気体を発生させることにより、図6に矢印として示すように、資源回収管62内に、資源滞留部63側から資源回収手段64側へ流れる海水の流れが生じる。また、揚水用流路5下部および資源回収管62内に設けられている電気分解手段61、ならびに資源回収手段64には、耐水性のケーブル10を通じて電源9より電力が供給される。そして、揚水用流路5の下流側には、水の逆流を防止するための逆流防止機構21が設けられている。なお、その他の構成は図3に示した水循環装置31と同様であるので、図3と同一の符号を付すことにより説明を省略する。
上記水循環装置60によれば、資源滞留部63と資源回収手段64とを連通する資源回収管62内に、資源滞留部63側から資源回収手段64側へ流れる海水の流れを発生させることができるので、電気分解によって生じた副生物などを二次資源として資源滞留部63付近に一旦貯留し、資源回収手段64内に適宜回収することができる。資源回収手段64に貯留された二次資源は、水循環装置60の外部に設けられた資源処理手段(図示略)へ適宜送出され、分離、回収または処分などの処理がなされる。具体的な回収処理としては、例えば、海水中のナトリウムイオンを水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムとして回収する処理方法などが挙げられる。
また、回収可能な資源はU字管底部の資源滞留部63に滞留する副生物のみに限定されるものではなく、例えば、電気分解により生じた気体の一部を回収し再利用することも可能である。
なお、資源滞留部63付近に滞留する資源をU字管2外へ排出する方法は、図6に示した構成のみに限定されるものではない。例えば、資源が滞留しやすい資源滞留部63がU字管2の底部以外の場所に設けられた構成や、資源回収管62が複数設けられた構成、資源回収管62内に水の流れを生じさせる手段として、電気分解手段61のかわりにスクリューやポンプ等を設けた構成などを採用することができる。また、資源回収手段64を設けることなく、資源滞留部63付近に滞留する資源などを資源回収管62を介して直接U字管2外へ排出することも可能である。さらに、資源回収管62内を流れる流体等のうち、上昇流を発生させる気泡15などをU字管2内へ再放出することもできる。
図7は、本発明の第五実施態様に係る水循環装置を示しており、とくに、内管の外側に外管を配置してなる二重管部を備えた水循環装置の例を示している。図7の水循環装置70は、内管23の外側に外管24を配置してなる二重管部27を備えている。水循環装置70においては、取水用流路4は内管23の内側に形成された内側流路からなり、揚水用流路5は外管24と内管23との間に形成された外側流路からなる。内管23の下流側端部は外管24内に開口しており、取水用流路4と揚水用流路5は二重管部27の底部28を介して連通されている。揚水用流路5の下流側には逆流防止機構としてのS字管22が設けられており、S字管22の下流側端部には、一端が外部に開口している複数のチューブ26が、連通孔25を介して連通接続されている。なお、その他の構成は図1に示した水循環装置1と同様であるので、図1と同一の符号を付すことにより説明を省略する。
図7において、電源9より電気分解手段7へ電力が供給されると、不純物除去手段8によって不純物が除去された水が電気分解手段7により分解され、気泡15が発生する。気泡15が揚水用流路5内に供給されると、揚水用流路5内の水は気泡15が混合されて比重が軽くなり、上昇流が生じる。その結果、取水用流路4の水が二重管部27の底部28を介して揚水用流路5下部へ供給されることとなり、図7の矢印に示すような循環流が発生する。また、揚水用流路5の下流側に設けられた逆流防止機構としてのS字管22により、揚水用流路5内での水の逆流が防止されている。
S字管22の下流側端部には、複数のチューブ26が吹き流しのように取り付けられており、各チューブ26は、孔25を介してS字管22の内部と連通している。チューブ26は柔軟性の高い素材からなることが好ましく、とくに、水圧によって流路が閉塞される程度の柔軟性を備えた素材を用いることが好ましい。このような構成によれば、チューブ26を介した外部からの水の侵入を抑制することができ、しかも、S字管22の気泡混合水はチューブ26を通じて水循環装置70の外へ容易に出てゆくことができるため、水の逆流を効果的に防止することができる。なお、チューブの厚みは必ずしも一定でなくてもよく、外部からの水の侵入をより確実に防止するという観点からは、開口端に近づくにつれて厚みが徐々に薄くなる構成を採用することが好ましい。
また、図7において、水循環装置70は、二重管部27の底部28が水底に設けられた孔に嵌合されることによって水中に立設されている。このような構成によれば、実質的に水底に孔を設けるだけで装置を水中に固定することができ、また、支持部材を追加することによって装置をより確実に固定することもできる。従って、図7の水循環装置70は、孔の穿設が容易な比較的深度の浅い水域や、装置の確実な固定が要求される流れの強い水域への設置にとくに適している。
本発明の水循環装置は、外部から水を取り入れる取水用流路と、取水用流路の下流側に設けられた揚水用流路と、揚水用流路内に気体を供給する気体供給手段と、揚水用流路の下流側に設けられた逆流防止機構とを有するものである。この水循環装置は、外部から水を取り入れる取水部の位置が波浪限界以深であることが好ましい。また、気体供給手段としては、例えば、水の電気分解手段を挙げることができる。この電気分解手段によって発生させた気泡が揚水用流路内を上昇流として流れることで、当該揚水用流路内における水の密度が減少し、取水用流路内における水の密度が相対的に高くなる。すなわち、揚水用流路内においては水の見かけの重量が相対的に減少し、取水用流路内においては水の見かけの重量が相対的に増大することとなる。その結果、取水用流路内に下降流が発生し、その流れのエネルギーなどをさまざまな用途に活用することが可能となる。しかも、このような水の電気分解手段を気体供給手段として備えた水循環装置は、上方からの高エネルギーによる高圧気体の強制的な圧送を必要としないため、高圧気体などを水中へ圧送するための燃料や、高エネルギー重機を使用することなく運転することが可能である。
本発明の水循環装置は、海底に設置して運転することが可能である。例えば、波浪や強力な潮流の力の及ばない海中深度数10mから数1000mまでに解放型U字管を沈めて、U字管の一方の直管部(揚水用流路)で気泡浮上を誘導し連続的な流れを作り、U字管内に管内流を発生させることができる。このような水循環装置は天候、波浪、潮浪などの顕著な影響のない水中に設置することができ、しかも、領海内の水深0m近辺から6000m近辺までの幅広い海域に設置することが可能である。
流路を構成する配管の素材はとくに限定されず、金属や樹脂などを適宜使用することができる。例えば、電気分解処理などにより水のpH値が酸性またはアルカリ性に偏る可能性がある場合は、耐酸性および耐アルカリ性を有する樹脂を素材として用いることにより、配管の腐食を防止することができる。また、配管の素材として樹脂を用いることにより、水循環装置を軽量化しつつ、浮力を利用して水中における装置の転倒を防止し、水循環装置の設置作業の容易化を図ることができる。
また、上述のとおり、U字管は複数設置することができる。各U字管は接触や絡み合いが起こらない間隔で敷設されていればよいので、水循環装置の規模はとくに限定されず、随時、随意、適度な本数の敷設が可能である。とくに、隣り合ったU字管同士を所定の間隔を維持するように配列することにより、複数のU字管からなるU字管群を自立可能に構成することができるため、装置の設置作業の容易化を図ることができる。同様に、二重管構造を採用する場合においても、複数の二重管を所定の間隔を維持するように配列することにより、複数の二重管からなる二重管群を自立可能に構成することが可能である。
さらに、上記水循環装置には、タービンを備えた発電手段を設けることができる。例えば、スクリュー型またはタービン型の羽根が回転子に直結され、外方に永久磁石による界磁を配置した発電機構(発電部)を非伝導性の液体(例えば、油など)により液浸状態に保全し外部水圧と同圧とした発電手段を設けることができる。このような構造によれば、液浸構造によって発電機構が保護されているので、深海底の高水圧等による圧壊が防止される。なお、上記の羽根(回転翼)などの必ずしも金属でなくてもよい部品は、軽量化および防錆性の観点から、樹脂で形成されていることが好ましい。加えて、このような発電手段により発生させた電力を、水循環装置に備えられた電気分解手段等の機器に供給したり、別途設置した蓄電池に蓄えたり、地上等に設置された外部の装置に供給して様々な用途に活用したりすることも可能である。また、天候や波浪などの顕著な影響のない水底付近に水循環装置を設置することにより、タービンの電磁コイルなどの振動を未然に防止し、維持管理作業の容易化を図ることができる。
気体供給手段として水の電気分解手段を用いる場合、電気分解の電気エネルギー供給手段としては、水面上からの電気配線、陸地からの電気配線、上述の発電機構などの様々な手段から好適なものを選ぶことができる。電気エネルギー供給手段は一つであってもよいし、複数の手段を適宜組み合わせて利用してもよい。
上述の通り、上記水循環装置においては、流路や発電機構の回転翼などの主要部材を樹脂で構成することができる。このような構成によれば、軽量化の達成、加工容易性の向上、浮力の利用による設置作業の容易化などが実現できるだけでなく、防錆剤などの薬品を使用する必要がなくなるため、環境汚染の防止を図ることもできる。
上記水循環装置の設置作業は、基本的に、U字管や二重管等を備えた装置を水底付近に立設するだけで完了するので、気候の穏やかな時期に天候を十分確認した上で、十分な計画に基づいて装置を静置し水中に佇立させればよく、水中作業や海底工事などの作業による汚染や、重油、廃油、生活廃棄物、薬品などの汚染物質による汚染などのおそれがない。また、装置の維持費用についても、清掃、点検、健全運用確認などの費用が主であり、陸上に大規模な設備(例えば、大重量のコンプレッサーなど)を設置した場合のような、設備の運搬、撤去、運転、保守、整備、廃燃料処理などの費用が発生することがない。従って、このような水循環装置は低コストで安全に運転することができ、撤去の際の原状復帰作業も軽微で済む。
特に、水を電気分解して発生させた気泡を利用して動作する水循環装置は、設置時だけでなく運転時においても環境負荷が小さいため、環境汚染防止の制限が厳しい環境にも好適に設置できる。
また、上記水循環装置は電気分解により酸素を継続的に水中へ供給可能であることから、例えば、観賞魚用または養殖魚用の水槽内に設置し、水槽内の水を循環させつつ水槽内へ酸素を供給することも可能である。
本発明に係る水循環装置はあらゆる用途に利用可能であり、とくに海底など水深の深い場所に設置される水循環装置として好適なものである。
1、31、41、50、60、70 水循環装置
2 U字管
3 支持部材
4 取水用流路
5 揚水用流路
6 曲管部
7、61 電気分解手段
8 不純物除去手段
9、54 電源
10、13、14、55 ケーブル
11 タービン
12 発電手段
15 気泡
16 濾過部材
17 中空部
18 陽極
19 陰極
20 水
21 逆流防止機構
22 S字管
23 内管
24 外管
25 連通孔
26 チューブ
27 二重管部
28 底部
30 海水
42 連結部材
51 送気管
52 流体ポンプ
53 弁
62 資源回収管
63 資源滞留部
64 資源回収手段

Claims (7)

  1. 一の直管部が外部から水を取り入れる取水用流路であり他の直管部が前記取水用流路の下流側に設けられた揚水用流路であるU字管部と、前記揚水用流路内に気体を供給する気体供給手段と、前記揚水用流路の下流側に設けられた逆流防止機構とを有する水循環装置。
  2. 前記U字管部を複数有しており、該複数のU字管部は、所定の間隔を維持するように配列された状態にて水中に立設されている、請求項に記載の水循環装置。
  3. 外部から水を取り入れる取水用流路と、前記取水用流路の下流側に設けられた揚水用流路と、前記揚水用流路内に気体を供給する気体供給手段と、前記揚水用流路の下流側に設けられた逆流防止機構とを有する水循環装置であって、内管の外側に外管を配置してなる二重管部を備えており、前記取水用流路が前記内管の内側に形成された内側流路からなり、前記揚水用流路が前記外管と前記内管との間に形成された外側流路からなることを特徴とする水循環装置。
  4. 前記気体供給手段として、水中に含まれる不純物を除去する不純物除去手段と、該不純物除去手段により処理された水を電気分解する電気分解手段とを備えている、請求項1〜3のいずれかに記載の水循環装置。
  5. 前記不純物除去手段として濾過部材を備えている、請求項に記載の水循環装置。
  6. 前記気体が油田、炭田または天然ガス田から発生する気体である、請求項1〜5のいずれかに記載の水循環装置。
  7. 前記取水用流路内にタービンが設けられている、請求項1〜6のいずれかに記載の水循環装置。
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