JP5749652B2 - 血清学的マーカーを用いた炎症性腸疾患(ibd)の予測方法 - Google Patents

血清学的マーカーを用いた炎症性腸疾患(ibd)の予測方法 Download PDF

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Description

発明の背景
本願は、あらゆる目的でそれらの内容の全体を参照することにより、本明細書に組み込まれる2008年11月11日出願の米国出願第61/113,537号及び2008年11月26日出願の米国出願第61/118,346号の優先権を主張するものである。
《発明の背景》
世界的に発生し、そして数百万の人々を苦しめている炎症性腸疾患(IBD)は、病因不明の3つの胃腸疾患:クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、及び分類不能大腸炎(indeterminate colitis)(IC)を表現するのに用いられる総称である。IBDは、過敏性腸症候群(IBS)と共に、米国人全体の半数が一生の間には罹る疾患であり、その費用はIBDでは26億ドル以上及びIBSでは80億ドル以上である。このような高額な医療費の一次決定因子は、消化器疾患を診断することの困難性にある。IBD及びIBSの費用は、これらの疾患を患う人達が米国の国内平均より年に少なくとも8日も多くの日数労働を休んでいる関係から、生産性の損失によっていっそう嵩んでいる。
炎症性腸疾患は、腹痛、慢性下痢、体重減少、及び痙攣(cramping)を含む多くの症状が過敏性腸症候群と共通していることから、確定診断が極めて困難である。米国内でIBDの罹患が疑われる500万人のうちIBDに罹患していると診断されるのはわずか100万人である。IBDとIBSとを明確に診断する困難性は、これらの疾患の早期の及び効果的な治療を阻んでいる。従って、IBSからIBDを明確に識別するための迅速かつ高感度の検査方法が必要である。
IBDの臨床的サブタイプを正確に診断する上で進展が図られてきたが、小児個体(pediatric individual)がクローン病、潰瘍性大腸炎、又は分類不能大腸炎に罹っていると診断するための現在の方法は比較的高価であり、そして労働集約的な臨床上の、X線検査、内視鏡検査、及び/又は組織学的技術を必要とする。これらの高価な技術は、先にIBDに罹っていると診断された又は罹っていることが強く示唆された個体に対しては正当化することができるが、小児個体が本当にIBDに罹患しているか否かを最初に決定するには高価ではなく、かつ高感度の代替技術が有利であろう。例えば、かかる高感度のスクリーニングアッセイは、IBD罹患個体をIBS罹患個体から迅速に識別することによってより早期かつより適切な治療的介入を促進し、そして患者及びその家族の疑いを最小にする安価な手段を医師に提供するであろう。高感度のスクリーニングアッセイは、IBDの臨床的サブタイプ間の識別にも用いることができ、又はそれに続く、IBD罹患と診断された小児個体がクローン病、潰瘍性大腸炎、又は分類不能大腸炎に罹っているかを決定するための高度に特異的なアッセイと組み合わせることができるであろう。
小児患者のIBDの診断はとりわけ難しい。過去には、一定の血清学的マーカーを決定して診断を行なう研究がなされてきた。例えば、Gupta et al. Inflamm Bowel Dis. 2004 May;10(3):240-4は、小児における従来の検査によって確立された臨床的診断を用いた炎症性腸疾患の血清学的検査のコンコーダンスを概説している。彼らは、pANCA、ASCA IgA、及びASCA IgGが潰瘍性大腸炎に対する感度、特異度(specificity)、陽性及び陰性の的中率(predictive value)でそれぞれ69.2%、95.1%、90.0%及び87.1%を有し、そしてクローン病でそれぞれ54.1%、96.8%、90.9%、及び80.8%を有することを見出した。これらのマーカーの特異度はその感度より優れ、そしてその感度はCDよりUCに対して良好であった(54.1%に対し69.2%)。とりわけCDに対する低い感度によって、これらのマーカーが炎症性腸疾患を評価する際に、従来の研究と代替することができるという可能性が排除されたことが結論付けられた。
別の小児の研究(Amre DK et al. Am J Gastroenterol. 2006 Mar;101(3):645-52参照)において、早期(初期)及び再発性合併症の発生を予測する血清学的マーカー又は小児CD患者の外科的処置(surgery)の要件が研究された。1996年と1998年との間に確認されたCD患者の小児コホートにおいて、血清抗サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cervisiae)(ASCA)(IgA及びIgG)及び核周辺抗好中球細胞質抗体(pANCA)が、診断の近くで分析された。ASCAと臨床的事象(clinical event)との間の関係が、調整されたCox比例ハザードモデリングを用いて研究された。マーカー測定による再発性臨床的事象の相対的比率が比較された。この研究により、診断の近くで測定された血清ASCAレベルは、小児CDにおける早期合併症の発生を決定することできることが示された。
前記のことを考慮すれば、とりわけ、IBD罹患の疑いがある小児患者に対するIBD血清学的分析が必要である。小児の疾患進行の極めて初期段階においてIBDを診断し、及びIBDを臨床的サブタイプ、例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎、又は分類不能大腸炎と分類するための改良された方法が必要である。本発明は、これらの要求を満たし、関連した利点も提供する。
発明の簡単な要約
一般に、血清学的検査は、容易であり実施しやすくそして臨床試験設定におけるルーチンとなっている。概して、これらの検査は個体の年齢に合わせたものとなっていない。しかしながら、個体の年齢に応じた、とりわけ、小児において、個体の症状を評価する必要がある。
1つの態様において、本発明は、小児個体由来の試料が炎症性腸疾患(IBD)と関連しているか否かを分類する方法であって、
(a)小児個体から前記試料を得ること;
(b)前記試料を転換して(transforming)1種又は2種以上のマーカーの存在又はレベルを測定すること、ここでマーカーは抗フラジェリン抗体を含むものとし;そして
(c)前記抗フラジェリン抗体を含む1種又は2種以上のマーカーの存在又はレベルに基づき統計的アルゴリズムを用いて前記試料をIBD試料又は非IBD試料と分類すること
を含む前記分類方法を提供する。
別の態様において、本発明は、小児個体由来の試料が炎症性腸疾患(IBD)と関連しているか否かを診断する方法であって、
(a)小児個体から前記試料を得ること;
(b)前記試料を転換して1種又は2種以上のマーカーの存在又はレベルを測定すること、ここでマーカーは抗フラジェリン抗体を含むものとし;そして
(c)前記抗フラジェリン抗体を含む1種又は2種以上のマーカーの存在又はレベルに基づき統計的アルゴリズムを用いて前記試料をIBD試料又は非IBD試料と分類すること
を含む前記診断方法を提供する。
これらの及び他の観点、目的及び態様は、以下の詳細な記載及び図面を読むとき、より明白になるであろう。
本発明の1つの態様による疾患分類システム(DCS)を示す。
8個の非終端ノード(A〜H)及び9個の終端ノード(I〜Q)を有するIBD又はその臨床的サブタイプ(例えば、CD又はUC)を分類するための分類及び回帰木(C&RT)の決定木構造(decision tree structure)を示す。
血清学的マーカーのパネルを用いたIBD診断及びCD/UC識別のために学習統計的分類子(learning statistical classifier)を組み合わせることにより導かれるアルゴリズムを説明するフローチャートを示す。
ニューラルネットワークモデルについて、入力変数として用いたC&RTモデルからのマーカー入力変数、出力従属変数(診断及び非IBD/IBD)、及び確率を示す。
個体の年齢に基づいたIBD血清学的マーカーの試料の分布を示す。
臨床的予測に対する開発(development)コホート及びマーカーの分布を示す。
診断予測(y軸)により階層化されたマーカー(x軸)のチャートを示す。
年齢(y軸)により階層化されたマーカー(x軸)のチャートを示す。
発明の詳細な記載
《I.定義》
本明細書中で用いる下記の用語は、他に断らない限り、その用語が本来有していると考えられる意味を持つ。
「分類すること(classifying)」という用語は、病状を伴う試料を「関連づけること(to associate)」又は「類別すること(to categorize)」を含む。或る場合には、「分類すること」は、統計的証拠、経験的証拠、又はその両方に基づく。或る態様において、分類の方法及びシステムは、既知の病状を伴う試料のいわゆる訓練用集合を用いる。方法及びシステムが確立されれば、その訓練データ集合は未知の試料の特徴が比較される基礎、モデル、又はテンプレートとして機能し、前記試料の未知の病状を分類する。或る場合には、試料を分類することは前記試料の病状を診断することに似ている。或る場合には、試料を分類することは、別の病状から前記試料の病状を識別することに似ている。
「炎症性腸疾患」又は「IBD」という用語は、限定的でなく、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、及び分類不能大腸炎(IC)を含む胃腸疾患をいう。炎症性腸疾患、例えば、CD、UC、及びICは、過敏性腸症候群(IBS)を含む、胃腸病学的消化管(gastroenterological tract)の他のすべての障害、症候群、及び異常と区別される。
「試料」という用語は、小児個体から得られるあらゆる生物学的検体を含む。本発明に用いるのに適当な試料として、限定的でなく、全血、血漿、血清、唾液、尿、便、涙、あらゆる他の体液、組織試料(例えば、生検)、及びそれらの細胞抽出物(例えば、赤血球細胞抽出物)を挙げることができる。好ましい態様において、試料は血清試料である。試料、例えば、血清、唾液、及び尿の使用が当業者に周知である(例えば、Hashida et al., J. Clin. Lab. Anal., 11:267-86 (1997)参照)。マーカーレベルの分析前に試料、例えば、血清試料を希釈することができることは当業者に理解されよう。
「マーカー」という用語は、あらゆる生化学的マーカー、血清学的マーカー、遺伝学的マーカー、又は小児個体由来の試料をIBD(例えば、CD又はUC)試料と分類するのに用いることができる他の臨床的若しくは超音波検査上の特徴を含む。本発明に用いるのに適当なマーカーの限定的でない例は以下に記載されるが、抗フラジェリン抗体(例えば、抗CBir−1)、抗好中球抗体(例えば、ANCA、pANCA、cANCA、NSNA、SAPPA等)、抗サッカロミセス・セレビシエ抗体(例えば、ASCA−IgA、ASCA−IgG、ASCA−IgM等)、抗菌抗体(例えば、抗OmpC抗体、抗フラジェリン抗体、抗I2抗体等)、ラクトフェリン、抗ラクトフェリン抗体、エラスターゼ、C反応性タンパク質(CRP)、カルプロテクチン、ヘモグロビン、NOD2/CARD15、及びそれらの組み合わせを含む。本発明に用いるのに適当な更なるマーカーがあることは当業者に公知であろう。
「個体」、「被験者」又は「患者」という用語は、一般に、ヒトだけでなく、例えば、他の霊長類、げっ歯類、イヌ科動物、ネコ科動物、ウマ科動物、ヒツジ、及びブタ等を含む他の動物も指す。
「実質的に同じアミノ酸配列」という用語は、本明細書中で用いる場合、天然に存在するアミノ酸配列と同一ではないがそれに類似するアミノ酸配列を含む。例えば、CBir−1タンパク質又はその断片と実質的に同じアミノ酸配列を有するアミノ酸配列、すなわち、ポリペプチドは、改変された(modified)ポリペプチドがCBir−1タンパク質の実質的に少なくとも1つの生物学的活性、例えば、免疫反応性を保持していることを条件に、天然に存在するアミノ酸配列に対する1種又は2種以上の改変、例えば、アミノ酸の付加、欠失、又は置換を有していることができる。アミノ酸配列同士の間の実質的な類似性の比較は、通常、約6〜100残基、好ましくは約10〜100残基、そしてより好ましくは約25〜35残基の配列を用いて行なわれる。本発明のポリペプチド又はその断片のとりわけ有効な改変は、例えば、安定性を増大させる改変である。1個又は2個以上のD−アミノ酸の取り込みはポリペプチド又はポリペプチド断片の安定性を増大させるのに有効な改変である。同様に、リシン残基の欠失又は置換は、ポリペプチド又はポリペプチド断片を分解から保護することにより安定性を増大させることができる。
「臨床的因子」という用語は、IBDと関連した小児個体の症状を含む。臨床的因子の例として、限定的でなく、下痢、腹痛、痙攣、発熱、貧血、体重減少、不安、うつ状態(depression)、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。或る態様において、IBDの診断は、統計的アルゴリズムを用いた小児個体の1種又は2種以上のマーカーの存在又はレベルを分析することと、前記小児個体が1種又は2種以上の臨床的因子を有しているか否かを決定することとの組み合わせに基づく。
「予後」という用語は、IBDの起こりうる経過及び結果又は当該疾患からの回復の見込みの予測を含む。或る態様において、統計的アルゴリズムを用いることにより小児個体のIBDの予後が提供される。例えば、予後は、外科的処置、IBDの臨床的サブタイプ(例えば、CD又はUC)の発現、1種又は2種以上の臨床的因子の発現、腸癌の発現、又は疾患からの回復であることができる。
「IBDと診断すること」という用語は、小児個体のIBDの有無を決定する本発明の方法、システム、及びコードの使用を含む。この用語は、小児個体の疾患活動性のレベルを評価する方法、システム、及びコードも含む。或る態様において、統計的アルゴリズムを用いて、Trueloveらによって開発された基準(Truelove et al., Br. Med. J., 12:1041-1048 (1955))に基づき、IBDの軽度、中等度、重度、又は劇症(fulminant)の型を診断する。他の態様において、統計的アルゴリズムを用いて、Hanauerらによって開発された基準(Hanauer et al., Am. J. Gastroenterol., 92:559-566 (1997))に基づき、IBDの軽度〜中等度、中等度〜重度、又は重度〜劇症の型を診断する。小児個体のIBDの重症度を評価する他の方法があることは当業者に公知であろう。
「IBDの進行又は退行をモニタリングすること」という用語は、小児個体の病状(例えば、IBDの存在又は重症度)を決定する本発明の方法、システム、及びコードの使用を含む。或る場合において、統計的アルゴリズム(例えば、学習統計的分類子システム)の結果を、より早い時点の同一個体について得られた結果と比較する。或る観点において、本発明の方法、システム、及びコードを用いて、例えば、試料の少なくとも1種のマーカーの存在又はレベルに基づき小児個体においてIBDが急速に又は徐々に進行する可能性を決定することによって、IBDの進行を予測することもできる。他の観点において、本発明の方法、システム、及びコードを用いて、例えば、試料の少なくとも1種のマーカーの存在又はレベルに基づき小児個体においてIBDが急速に又は徐々に退行する可能性を決定することによって、IBDの退行を予測することもできる。
「IBDを治療するのに有効な薬剤を受ける小児個体において薬効をモニタリングすること」という用語は、本発明の方法、システム、及びコードを用いて、IBD治療用の治療薬が投与された後の小児個体の病状(例えば、IBDの存在又は重症度)を決定することを含む。或る場合において、統計的アルゴリズム(例えば、学習統計的分類子システム)の結果を、治療薬の使用開始前の又は治療のより早い時点の同一個体について得られた結果と比較する。IBDの治療に有効な薬剤とは、本明細書中で用いる場合、小児個体の健康を改善するのに用いられるあらゆる化合物又は薬剤であり、限定的でなく、IBD薬、例えば、アミノサリチレート(例えば、メサラジン、スルファサラジン等)、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン)、チオプリン(例えば、アザチオプリン、6−メルカプトプリン等)、メトトレキサート、モノクローナル抗体(例えば、インフリキシマブ)、それらの遊離塩基、薬学的に許容することのできるそれらの塩、それらの誘導体、それらの類似体、及びそれらの組み合わせを含む。
「IBDに罹患した小児個体において治療を最適化すること」という用語は、本発明の方法、システム、及びコードを用いて、治療薬(例えば、IBD薬)が投与される前に小児個体についての治療過程を決定し又は治療薬が投与された後に小児個体についての治療過程を調整することにより治療薬の薬効を最適化することを含む。或る場合に、統計的アルゴリズム(例えば、学習統計的分類子システム)の結果を、治療過程の間のより早い時点の同一個体について得られた結果と比較する。このようにして、結果の比較は、治療過程の変更の必要性の指標、又は現在の治療過程の用量の増加又は減少の必要性の指標を提供する。
「治療過程」という用語は、IBDと関連した1つ又は2つ以上の症状(すなわち、臨床的因子)を軽減又は予防するために取られるあらゆる治療的アプローチを含む。この用語は、IBDに罹患した小児個体の健康を改善するのに有効なあらゆる化合物、薬剤、手順、又はレジメンを施すことを包含し、そして任意の前記治療薬(例えば、IBD薬)の他に外科的処置を含む。治療過程又は現在の治療過程の用量は、例えば、本発明の方法、システム、及びコードを用いて得られる統計的アルゴリズム(例えば、学習統計的分類子システム)の結果に基づき、変更することができることは当業者に理解されよう。
「治療有効量又は治療有効用量」という用語は、治療効果の必要がある被験者において治療効果を達成することができる薬剤の用量を含む。例えば、IBDを治療するのに有効な薬剤の治療有効量は、IBDと関連した1つ又は2つ以上の症状を予防又は軽減することができる量であることができる。正確な量は、公知の技術を用いて当業者によって確認することができる(例えば、Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3, 1992);Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999);Pickar, Dosage Calculations (1999);及びRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, 2003, Gennaro, Ed., Lippincott, Williams & Wilkins参照)。
「試料を転換すること」という用語は、本明細書中に定義したマーカーを抽出するための試料の物理的又は化学的変化を含む。マーカーを測定するための試料の抽出、操作、化学沈殿、ELISA、免疫抽出、物理的又は化学的改変はすべて転換を構成する。試料が転換工程前後で同一でない限り、その変化は転換である。
「小児個体」という用語は、約1月齢〜約18歳、とりわけ、約0歳〜約5歳(0〜5歳)、又は約1歳〜約16歳、又は約1歳〜約10歳、又は約1歳〜約5歳、6歳、7歳、若しくは8歳の個体、又は約0歳〜約1歳、2歳、3歳、4歳、5歳、6歳、7歳、8歳、9歳、10歳、11歳、12歳、13歳、14歳、15歳、16歳、17歳、18歳の個体を含む。
《II.態様の記載》
患者、例えば、炎症性腸疾患(IBD)に罹っている小児患者を診断することは、IBDと他の疾患又は障害との間の症状の類似性のゆえに困難であるということができる。本発明は、一定の診断マーカーとりわけ抗フラジェリン抗体(例えば、抗CBir−1抗体)の存在及びレベルを検出することによって、小児個体由来の生物学的試料をIBD(例えば、CD又はUC)試料と分類することの的確性(accuracy)を実質的に改善することができるという意外な発見に一部基づいている。「抗フラジェリン抗体」という用語は本明細書中で用いる場合、例えば、参考までに本明細書に引用するPCT特許公報第WO03/053220号及び米国特許第7,361,733号に記載のように細菌鞭毛(bacterial flagella)のタンパク質成分に対する抗体を含む。「フラジェリン」という用語は、抗フラジェリン抗体と免疫反応性である細菌鞭毛タンパク質を含む。微生物のフラジェリンは、中空の円筒内にそれら自体を配列してフィラメントを形成する細胞鞭毛に見出されるタンパク質である。
本発明に有用な他のマーカーとして、抗好中球抗体(例えば、ANCA、pANCA等)、抗サッカロミセス・セレビシエ抗体(例えば、ASCA−IgA、ASCA−IgG等)、及び/又は他の抗菌抗体(例えば、抗OmpC抗体、抗I2抗体等)を挙げることができる。或る観点において、本発明は、試料をIBD試料又は非IBD試料と分類するのに役立つ統計的アルゴリズムを用いる。他の観点において、本発明は、試料をCD試料、UC試料、又は非IBD試料と分類するのに役立つ統計的アルゴリズムを用いる。或る観点において、本明細書中に記載の統計的アルゴリズムは、先にIBD罹患と同定された小児個体においてUC試料からCD試料を識別するのに用いることができる。また、本明細書中に記載の統計的アルゴリズムは、先にIBD罹患とは診断されていない小児個体由来の試料がCD試料、UC試料、又は非IBD試料であるか否かを決定するのに用いることができる。
本発明において、小児試料中の抗フラジェリン抗体レベル(例えば、抗CBir−1)を測定する。小児個体由来の試料中に存在する抗フラジェリン抗体のレベルは、フラジェリンタンパク質又はその断片、例えば、その免疫反応性の断片を用いて測定することができる。試料中の抗フラジェリン抗体レベルを測定するのに有用である適当なフラジェリン抗原として、限定的でなく、フラジェリンタンパク質、例えば、CBir−1フラジェリン、フラジェリンX、フラジェリンA、フラジェリンB、それらの断片、及びそれらの組み合わせ、フラジェリンタンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するフラジェリンポリペプチド、又はその断片、例えば、その免疫反応性の断片を挙げることができる。フラジェリンポリペプチドは本明細書中で用いる場合、一般に、天然に存在するフラジェリンタンパク質と約50%を超える同一性の、好ましくは、約60%を超える同一性の、より好ましくは約70%を超える同一性の、さらにより好ましくは、約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%を超える同一性のアミノ酸配列を有するポリペプチドを表し、ここでアミノ酸同一性はシーケンスアラインメントプログラム、例えば、CLUSTALWを用いて決定される。かかるフラジェリン抗原は、例えば、細菌、例えば、ヘリコバクター・ビリス(Helicobacter Bilis)、ヘリコバクター・ムステラエ(Helicobacter mustelae)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、ブチリビブリオ・フィブリソルベンス(Butyrivibrio fibrisolvens)、及び盲腸に見出される細菌から精製することによって、フラジェリン抗原をコードする核酸の組換え発現によって、合成手段、例えば、液相若しくは固相ペプチド合成によって、又はファージディスプレイを用いることによって調製することができる。
1つの態様において、本発明は、小児個体由来の試料が炎症性腸疾患(IBD)と関連しているか否かを分類する方法であって、
(a)小児個体から前記試料を得ること;
(b)前記試料を転換して1種又は2種以上のマーカーの存在又はレベルを測定すること、ここでマーカーは抗フラジェリン抗体を含むものとし;そして
(c)前記抗フラジェリン抗体を含む1種又は2種以上のマーカーの存在又はレベルに基づき統計的アルゴリズムを用いて前記試料をIBD試料又は非IBD試料と分類すること
を含む前記分類方法を提供する。
好ましい観点において、抗フラジェリン抗体は抗CBir−1抗体である。
別の態様において、本発明は、小児個体由来の試料が炎症性腸疾患(IBD)と関連しているか否かを診断する方法であって、
(a)小児個体から前記試料を得ること;
(b)前記試料を転換して1種又は2種以上のマーカーの存在又はレベルを測定すること、ここでマーカーは抗フラジェリン抗体を含むものとし;そして
(c)前記抗フラジェリン抗体を含む1種又は2種以上のマーカーの存在又はレベルに基づき統計的アルゴリズムを用いて前記試料をIBD試料又は非IBD試料と分類すること
を含む前記診断方法を提供する。
好ましい観点において、抗フラジェリン抗体は抗CBir−1抗体である。
個体由来の試料中に存在するいずれかの抗フラジェリン抗体は、本発明の方法に従って検出することができる。好ましい態様において、抗CBir−1抗体のレベルを測定する。他の態様において、抗フラジェリンX抗体、抗フラジェリンA抗体、及び/又は抗フラジェリンB抗体のレベルを測定する。個体由来の試料中に存在する抗フラジェリン抗体のレベルは、フラジェリンタンパク質又はその断片、例えば、その免疫反応性の断片を用いて測定することができる。試料中の抗フラジェリン抗体レベルを測定するのに有用な適当なフラジェリン抗原として、限定的でなく、フラジェリンタンパク質、例えば、Cbir−1フラジェリン、フラジェリンX、フラジェリンA、フラジェリンB、それらの断片、及びそれらの組み合わせ、フラジェリンタンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するフラジェリンポリペプチド、又はその断片、例えば、その免疫反応性の断片を挙げることができる。
或る態様において、フラジェリン抗原は、配列番号1(SEQ ID NO:1)に示した全長Cbir−1フラジェリン配列の少なくとも約5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、100個、105個、110個、115個、120個、125個、130個、135個、140個、145個、150個又はそれを超える個数の隣接アミノ酸(中間の長さをすべて含む)からなるポリペプチド断片を含むCBir−1フラジェリンである。典型的には、CBir−1フラジェリンポリペプチド断片は、全長CBir−1フラジェリン配列に結合する抗体及び/又は全長CBir−1フラジェリン配列と反応するT細胞と免疫学的に反応性である。好ましい態様において、ポリペプチド断片は配列番号1に示した配列のアミノ末端の保存領域(アミノ酸残基1〜147)である。他の態様において、ポリペプチド断片は配列番号1に示した配列のアミノ末端の保存領域に可変領域を加えた領域(アミノ酸残基1〜418)である。或る場合において、CBir−1フラジェリン抗原は、本明細書中に記載のCBir−1フラジェリンポリペプチド断片及びタグ、例えば、6つのヒスチジン(配列番号2(SEQ ID NO:2))又はグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)タグからなる融合タンパク質である。或る他の態様において、CBir−1フラジェリン抗原は、配列番号1のアミノ酸配列又はそれと実質的な同一性を有する(例えば、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、又は95%の同一性を有する)配列を含む。典型的なフラジェリンアミノ酸及び核酸配列(例えば、CBir−1フラジェリン、フラジェリンX、フラジェリンB等)は米国特許第7,361,733号に記載されている。
抗フラジェリン抗体の「増加した」レベルは、対照との比較上検出することができる所定の抗フラジェリン抗体(例えば、抗CBir−1抗体)レベルの増加を含むことを意図する。検出することができる増加は、対照において検出される所定の抗フラジェリン抗体のレベルより約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、又はそれを超える増加であることができる。所定の抗フラジェリン抗体のレベルの増加は、典型的には、当業者に公知の任意の方法又は技術、例えば、免疫測定法又は免疫組織化学的分析(immunohistochemical assay)を用いて測定する。好ましい態様によれば、免疫測定法は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)である。或る場合には、抗フラジェリン抗体の増加したレベル(例えば、抗CBir−1抗体の増加したレベル)は、ELISAを用いた場合に約5.0EU/mL、6.0EU/mL、7.0EU/mL、8.0EU/mL、9.0EU/mL、10.0EU/mL、11.0EU/mL、12.0EU/mL、13.0EU/mL、14.0EU/mL、15.0EU/mL、16.0EU/mL、17.0EU/mL、18.0EU/mL、19.0EU/mL、20.0EU/mL、21.0EU/mL、22.0EU/mL、23.0EU/mL、24.0EU/mL、25.0EU/mL、26.0EU/mL、27.0EU/mL、28.0EU/mL、29.0EU/mL、30.0EU/mL、31.0EU/mL、32.0EU/mL、33.0EU/mL、34.0EU/mL、35.0EU/mL、36.0EU/mL、37.0EU/mL、38.0EU/mL、39.0EU/mL、又は40.0EU/mL(又はその中のあらゆる範囲若しくは小部分)である基準値を超えたレベルを含む。好ましい態様において、抗フラジェリン抗体の増加したレベル、例えば、抗CBir−1抗体の増加したレベルは約21.0EU/mLである基準値を超えたレベルである。
或る態様において、抗フラジェリン抗体の増加したレベル(例えば、抗CBir−1抗体の増加したレベル)の存在は、CD発現の約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、21倍、22倍、23倍、24倍、25倍、26倍、27倍、28倍、29倍、30倍、31倍、32倍、33倍、34倍、35倍、36倍、37倍、38倍、39倍、又は40倍(又はその中のあらゆる範囲若しくは小部分)の増加したリスクと関係づけられる。
或る態様において、抗フラジェリン抗体は抗CBir−1抗体である。抗CBir−1抗体のレベルは非IBD試料と比較してIBD試料において、とりわけクローン病試料において増加が見られる。他の適当なマーカーとして、ANCA、pANCA、ASCA−IgA、ASCA−IgG、抗OmpC抗体、抗I2抗体、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。
或る場合には、本発明の方法は、1種又は2種以上のマーカー、例えば、ASCA−IgAを含む。或る場合には、非IBD試料と比較したIBD試料中のASCA−IgAレベルは正常、すなわち、同様か又は同じである。他の場合に、1種又は2種以上のマーカーはASCA−IgGであり、非IBD試料と比較したIBD試料中のASCA−IgGのレベルは正常である。或る場合に、小児試料についての唯一のマーカーは抗フラジェリン抗体(例えば、抗CBir−1抗体)である。
或る態様において、小児個体の試料において、少なくとも2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、又は11種以上のIBDマーカーの存在又はレベルを測定する。或る場合において、抗フラジェリン抗体に加えて、他のマーカーとして抗好中球抗体、例えば、抗好中球細胞質抗体(ANCA)、核周辺型抗好中球細胞質抗体(pANCA)、細胞質型抗好中球細胞質抗体(cANCA)、好中球特異的核抗体(neutrophil-specific nuclear antibody)(NSNA)、斑紋型抗pan多形核抗体(speckling anti-pan polymorphonuclear antibody)(SAPPA)、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。或る場合において、小児個体の試料中のANCA及び/又はpANCAの存在又はレベルを測定する。或る他の場合においては、抗サッカロミセス・セレビシエ抗体は、抗サッカロミセス・セレビシエ免疫グロブリンA(ASCA−IgA)、抗サッカロミセス・セレビシエ免疫グロブリンG(ASCA−IgG)、抗サッカロミセス・セレビシエ免疫グロブリンM(ASCA−IgM)、及びそれらの組み合わせを含む。或る場合において、小児個体の試料中のASCA−IgA及び/又はASCA−IgGの存在又はレベルを測定する。更なる場合において、他の抗菌抗体として、例えば、抗外膜タンパク質C(抗OmpC)抗体、他の抗フラジェリン抗体、抗I2抗体、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。或る場合において、小児個体の試料中の抗OmpC抗体及び/又は抗フラジェリン抗体の存在又はレベルを測定する。
他の態様において、少なくとも1種のマーカーは、抗フラジェリン抗体の他にさらに1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、又は11種以上のIBDマーカーを含み、他のマーカーは、限定的でなく、抗好中球抗体、抗サッカロミセス・セレビシエ抗体、及び/又は抗菌抗体を含む。さらなるIBDマーカーとして、限定的でなく、ラクトフェリン、抗ラクトフェリン抗体、エラスターゼ、C反応性タンパク質(CRP)、カルプロテクチン、ヘモグロビン、NOD2/CARD15、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。
少なくとも1種のマーカー、例えば、抗CBir−1の存在又はレベルを検出又は測定するのに用いられる試料は、典型的には、全血、血漿、血清、唾液、尿、便(すなわち、糞便)、涙、及びあらゆる他の体液、又は組織試料(すなわち、生検)、例えば、小腸若しくは結腸試料である。好ましくは、試料は血清、全血、血漿、便、尿、又は組織生検である。或る場合において、本発明の方法はさらに、試料中の少なくとも1種のマーカー(例えば、抗CBir−1)の存在又はレベルを検出又は測定する前に小児個体から試料を得ることを含む。
他の態様において、本発明の方法は試料、例えば、血清、血漿、全血、又は便中の抗フラジェリン抗体及び場合により1種又は2種以上の追加のマーカー、例えば、ANCA、ASCA−IgA、ASCA−IgG、抗OmpC抗体、及びpANCAの存在又はレベルを測定することを含む。前記の1種又は2種以上のIBDマーカーからなるパネルを構成し、そして小児試料をIBD(例えば、CD若しくはUC)試料又は非IBD試料と分類するために用いることができる。
或る場合において、免疫測定法又は免疫組織化学的分析を用いて少なくとも1種のマーカーの存在又はレベルを測定する。本発明の方法に用いるのに適当な限定的でない免疫測定法の例として、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を挙げることができる。本発明の方法に用いるのに適当な免疫組織化学的分析の例として、限定的でなく、免疫蛍光測定法、例えば、直接蛍光抗体法、間接蛍光抗体(IFA)法、抗補体免疫蛍光測定法(anticomplement immunofluorescence assay)、及びアビジン−ビオチン免疫蛍光測定法(avidin-biotin immunofluorescence assay)を挙げることができる。他の型の免疫組織化学的分析として免疫ペルオキシダーゼ法(immunoperoxidase assay)を挙げることができる。
重要なことには、本発明は、診断マーカーのパネルの存在又はレベルに基づく学習統計的分類子システムの組み合わせを用いたIBD又はその臨床的サブタイプ(例えば、CD又はUC)の診断予測が非アルゴリズム手法、例えば、カットオフ値解析よりはるかに優れていることを示している。実際に、実質的に高められた感度、陰性的中率、及び/又は総体的的確性(overall accuracy)によってIBDの診断を行なうことができ、そして疾患進行の初期段階でIBDの存在を検出することができる。さらに、本発明は、IBDの臨床的サブタイプ(例えば、CD又はUC)間を高い総体的的確性で識別するのに有用である。結果として、特定の個体のIBDの階層化が高く的確な方法で達成される。
本発明は、小児個体由来の試料がIBD又はその臨床的サブタイプと関連しているか否かを的確に分類する方法、システム、及びコードを提供する。或る態様において、本発明は、統計的アルゴリズム(例えば、学習統計的分類子システム)及び/又は経験的データ(empirical data)(例えば、IBDマーカーの存在又はレベル)を用いて小児個体由来の試料をIBD試料と分類するのに有用である。本発明は、統計的アルゴリズム(例えば、学習統計的分類子システム)及び/又は実験的データ(例えば、IBDマーカーの存在又はレベル)を用いてCD及びUCの間を識別するのにも有用である。従って、本発明は、IBD又はその臨床的サブタイプの的確な診断予測及び治療法決定を導くのに有用な予後情報を提供する。
或る態様において、試料を分類するのに用いられる統計的アルゴリズムは学習統計的分類子システムである。学習統計的分類子システムは、分類及び回帰木(C&RT)、ランダムフォレスト(RF)、ブースト型の木(boosted tree)、ニューラルネットワーク(NN)、サポートベクターマシーン、一般的なカイ二乗による相互作用の自動検出器モデル(chi-squared automatic interaction detector model)、多変量適応回帰スプライン(multiadaptive regression spline)、機械学習分類子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。好ましくは、学習統計的分類子システムは、木をベースとする統計的アルゴリズム(例えば、C&RT、RF等)及び/又はNN(例えば、人工NN等)である。
或る場合において、統計的アルゴリズムは単一の学習統計的分類子システムである。好ましくは、前記単一の学習統計的分類子システムは、木をベースとする統計的アルゴリズム、例えば、C&RT又はRFを含む。限定的でない例として、単一の学習統計的分類子システムを用いて少なくとも1種のIBDマーカーの存在又はレベル及び的中率又は確率値に基づいて試料をIBD(例えば、CD又はUC)試料又は非IBD試料と分類することができる。単一の学習統計的分類子システムの使用は、典型的には、少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率、及び/又は総体的的確性で試料をIBD(例えば、CD又はUC)試料と分類する。
或る他の場合において、統計的アルゴリズムは少なくとも2つの学習統計的分類子システムの組み合わせである。好ましくは、学習統計的分類子システムの組み合わせは、例えば直列(tandem)又は並列(parallel)に用いられる、C&RT又はRF及びNNを含む。限定的でない例として、最初にC&RTを用いて少なくとも1種のIBDマーカーの存在又はレベルに基づき的中率又は確率値を発生させることができ、そして次にNNを用いて少なくとも1種のIBDマーカーの存在又はレベル及び的中率又は確率値に基づき試料をIBD(例えば、CD又はUC)試料又は非IBD試料と分類することができる。有利には、本発明のハイブリッド型C&RT/NN学習統計的分類子システムは、少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率、及び/又は総体的的確性で試料をIBD(例えば、CD又はUC)試料と分類する。
或る場合において、1つ又は複数の学習統計的分類子システムを用いることによって得られるデータは、処理アルゴリズムを用いて処理することができる。かかる処理アルゴリズムは、例えば、多層パーセプトロン、バックプロパゲーションネットワーク、及びレーベンバーグ・マルカートアルゴリズム(Levenberg-Marquardt algorithm)からなる群から選択することができる。他の場合において、前記処理アルゴリズムの組み合わせは、例えば、直列又は並列に用いることができる。
或る態様において、本発明の方法はさらに、IBD分類結果を臨床医、例えば、消化器専門医又は一般医に送信することを含む。別の態様において、本発明の方法はさらに、小児個体がIBD又はその臨床的サブタイプに罹っている確率の形態での診断を提供する。例えば、小児個体は、IBD又はその臨床的サブタイプに罹っている確率約0%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又はそれを超える%を有していることがある。さらに別の態様において、本発明の方法はさらに、小児個体のIBDの予後を提供する。例えば、予後は、外科的処置、IBDの臨床的サブタイプ(例えば、CD又はUC)の発現、1種又は2種以上の症状の発現、腸癌の発現、又は疾患からの回復であることができる。或る場合において、試料をIBD試料と分類する方法はさらに、試料を得る小児個体の症状(すなわち、臨床的因子)に基づく。症状又は症状群は、例えば、下痢、腹痛、痙攣、発熱、貧血、体重減少、不安、うつ状態、及びそれらの組み合わせであることができる。
或る態様において、小児個体がIBD又はその臨床的サブタイプに罹っているという診断に続いて、IBD又はIBDサブタイプ(例えば、CD又はUC)と関連する1種又は2種以上の症状の治療に有効な薬剤の治療的有効量をその小児個体に投与する。適当なIBD薬剤として、限定的でなく、アミノサリチレート(例えば、メサラジン、スルファサラジン等)、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン)、チオプリン(例えば、アザチオプリン、6−メルカプトプリン等)、メトトレキサート、モノクローナル抗体(例えば、インフリキシマブ)、それらの遊離塩基、それらの薬学的に許容することのできる塩、それらの誘導体、それらの類似体、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。
或る場合において、本発明の統計的アルゴリズムを用いて、先にIBDに罹っていると同定された小児個体においてUC試料からCD試料を識別することができる。或る他の場合において、本発明の統計的アルゴリズムを用いて、先にIBDに罹っていると診断されなかった小児個体由来の試料をCD試料、UC試料、又は非IBD試料と分類することができる。
別の観点において、本発明は、小児個体のIBDの進行又は退行をモニタリングする方法であって、
(a)小児個体由来の試料中の抗フラジェリン抗体(例えば、抗CBir−1抗体)及び場合により抗好中球抗体、抗サッカロミセス・セレビシエ抗体、抗菌抗体及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の追加のマーカーの存在又はレベルを測定すること;及び
(b)前記抗フラジェリン抗体及び場合により少なくとも1種の追加のマーカーの存在又はレベルに基づき統計的アルゴリズムを用いて前記小児個体におけるIBDの存在又は重症度を決定すること
を含む方法を提供する。
関連する観点において、本発明は、IBDを治療するのに有効な薬剤を受ける小児個体における薬剤効果をモニタリングする方法であって、
(a)前記小児個体由来の試料中の抗フラジェリン抗体(例えば、抗CBir−1抗体)及び場合により抗好中球抗体、抗サッカロミセス・セレビシエ抗体、抗菌抗体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の追加のマーカーの存在又はレベルを測定すること;及び
(b)抗フラジェリン抗体及び場合により少なくとも1種の追加のマーカーの存在又はレベルに基づき統計的アルゴリズムを用いて小児個体におけるIBDの存在又は重症度を決定すること
を含む方法を提供する。
前記のように、本発明は、典型的には、小児個体の試料中の抗フラジェリン抗体及び場合により少なくとも1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、又は11種以上の追加のIBDマーカーの存在又はレベルを測定することを含む。或る場合において、抗好中球抗体は、ANCA、pANCA、cANCA、NSNA、SAPPA、及びそれらの組み合わせを含む。例えば、小児個体の試料中のANCA及び/又はpANCAの存在又はレベルを測定する。或る他の場合において、抗サッカロミセス・セレビシエ抗体は、ASCA−IgA、ASCA−IgG、ASCA−IgM、及びそれらの組み合わせを含む。例えば、小児個体の試料中のASCA−IgA及び/又はASCA−IgGの存在又はレベルを測定する。さらなる場合において、抗菌抗体は、抗OmpC抗体、他の抗フラジェリン抗体、抗I2抗体、及びそれらの組み合わせを含む。好ましくは、小児個体の試料中の抗OmpC抗体及び/又は抗フラジェリン抗体の存在又はレベルを測定する。
抗好中球抗体、抗サッカロミセス・セレビシエ抗体、及び/又は抗菌抗体のほかに、前記少なくとも1種のマーカーはさらに、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、又は11種以上のIBDマーカー、例えば、ラクトフェリン、抗ラクトフェリン抗体、エラスターゼ、C反応性タンパク質(CRP)、カルプロテクチン、ヘモグロビン、NOD2/CARD15、及びそれらの組み合わせを含んでいることができる。
少なくとも1種のマーカーの存在又はレベルを検出又は測定するのに用いられる試料は、典型的には、全血、血漿、血清、唾液、尿、便(すなわち、糞便)、涙、及びあらゆる他の体液、又は組織試料(すなわち、生検)、例えば、小腸若しくは結腸試料である。好ましくは、試料は、血清、全血、血漿、便、尿、又は組織生検である。或る場合において、本発明の方法はさらに、試料中の少なくとも1種のマーカーの存在又はレベルを検出又は測定する前に小児個体から試料を得ることを含む。
或る態様において、本発明の方法は、抗フラジェリン抗体、例えば、抗CBir−1抗体の存在又はレベルを測定することを含む。或る観点において、本方法は場合により、試料、例えば、血清、血漿、全血、又は便中の以下のANCA、ASCA−IgA、ASCA−IgG、抗OmpC抗体、及びpANCAの1種又は2種以上の存在を測定することを含む。前記1種又は2種以上のIBDマーカーからなるパネルを構成し、そして小児個体におけるIBD(例えば、CD又はUC)の存在又は重症度を決定するために用いることができる。
或る場合において、免疫測定法又は免疫組織化学的分析を用いて少なくとも1種のマーカーの存在又はレベルを測定する。本発明の方法に用いるのに適当な免疫測定法の限定的でない例としてELISAを挙げることができる。本発明の方法に用いるのに適当な免疫組織化学的分析の例として、限定的でなく、免疫蛍光測定法、例えば、直接蛍光抗体法、IFA法、抗補体免疫蛍光測定法、及びアビジン−ビオチン免疫蛍光測定法を挙げることができる。他の型の免疫組織化学的分析として免疫ペルオキシダーゼ法を挙げることができる。
或る態様において、IBDの存在又は重症度を決定するのに用いられる統計的アルゴリズムは学習統計的分類子システムである。学習統計的分類子システムは、分類及び回帰木(C&RT)、ランダムフォレスト(RF)、ブースト型の木、ニューラルネットワーク(NN)、サポートベクターマシーン、一般的なカイ二乗による相互作用の自動検出器モデル、多変量適応回帰スプライン、機械学習分類子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。好ましくは、学習統計的分類子システムは、木をベースとする統計的アルゴリズム(例えば、C&RT、RF等)及び/又はNN(例えば、人工NN等)である。
或る場合において、統計的アルゴリズムは単一の学習統計的分類子システムである。好ましくは、前記単一の学習統計的分類子システムは、木をベースとする統計的アルゴリズム(例えば、C&RT又はRF等)である。或る他の場合において、統計的アルゴリズムは少なくとも2種の学習統計的分類子システムの組み合わせである。好ましくは、学習統計的分類子システムの組み合わせは、例えば直列又は並列に用いられる、C&RT又はRF及びNNを含む。限定的でない例として、最初にC&RTを用いて少なくとも1種のIBDマーカーの存在又はレベルに基づき的中率又は確率値を発生させることができ、そして次にNNを用いて少なくとも1種のIBDマーカーの存在又はレベル及び的中率又は確率値に基づき小児個体におけるIBDの存在又は重症度を決定することができる。
或る場合において、1つ又は複数の学習統計的分類子システムを用いることから得られるデータは、処理アルゴリズムを用いて処理することができる。かかる処理アルゴリズムは、例えば、多層パーセプトロン、バックプロパゲーションネットワーク、及びレーベンバーグ・マルカートアルゴリズムからなる群から選択することができる。他の場合において、かかる処理アルゴリズムの組み合わせは、例えば、直列又は並列に用いることができる。
或る態様において、本発明の方法はさらに、工程(b)において決定された小児個体のIBDの存在又は重症度を、より早い時点における当該小児個体のIBDの存在又は重症度と比較することを含む。限定的でない例として、IBDを治療するのに有効な治療剤を受けた小児個体について決定されたIBDの存在又は重症度は、治療剤の使用開始前に又は治療のより早い時点で同一個体について決定されたIBDの存在又は重症度と比較することができる。或る他の態様において、本方法はさらに、IBDのモニタリング結果を臨床医、例えば、消化器専門医又は一般医に送信することを含んでいることができる。
さらに別の観点において、本発明は、小児個体由来の試料がIBDと関連しているか否かを分類する1つ又は2つ以上のプロセッサを制御するためのコードを含むコンピュータ可読媒体を提供し、前記コードは、抗好中球抗体、抗サッカロミセス・セレビシエ抗体、抗菌抗体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のマーカーの試料中の存在又はレベルを示すデータ集合に統計処理を適用して少なくとも1種のマーカーの存在又はレベルに基づいて試料をIBD試料又は非IBD試料と分類する統計的に導かれた決定を生成する命令を含む。
関連する観点において、本発明は、小児個体由来の試料がIBDの臨床的サブタイプと関連しているか否かを分類する1つ又は2つ以上のプロセッサを制御するためのコードを含むコンピュータ可読媒体を提供し、前記コードは、抗好中球抗体、抗サッカロミセス・セレビシエ抗体、抗菌抗体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のマーカーの試料中の存在又はレベルを示すデータ集合に統計処理を適用して少なくとも1種のマーカーの存在又はレベルに基づいて試料をCD試料、UC試料、又は非IBD試料と分類する統計的に導かれた決定を生成する命令を含む。
1つの態様において、統計処理は学習統計的分類子システムである。本発明に用いるのに適当な学習統計的分類子システムの例は前記の通りである。或る場合において、統計処理は単一の学習統計的分類子システム、例えば、C&RT又はRFである。或る他の場合において、統計処理は少なくとも2つの学習統計的分類子システムの組み合わせである。限定的でない例として、学習統計的分類子システムの組み合わせは、例えば直列に用いられる、C&RT又はRF及びNNを含む。或る場合において、1つ又は複数の学習統計的分類子システムを用いることによって得られるデータは、処理アルゴリズムを用いて処理することができる。
さらなる観点において、本発明は、小児個体由来の試料がIBDと関連しているか否かを分類するためのシステムであって、
(a)抗フラジェリン抗体及び場合により抗好中球抗体、抗サッカロミセス・セレビシエ抗体、抗菌抗体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の追加のマーカーの試料中の存在又はレベルを示すデータ集合を生成するように構成されたデータ取得モジュール;
(b)前記データ集合に統計処理を適用することによって前記データ集合を処理して、抗フラジェリン抗体及び場合により少なくとも1種の追加のマーカーの存在又はレベルに基づいて試料をIBD試料又は非IBD試料と分類する統計的に導かれた決定を生成するように構成されたデータ処理モジュール;及び
(c)前記統計的に導かれた決定を表示するように構成された表示モジュール
を含む前記システムを提供する。
関連する観点において、本発明は、小児個体由来の試料がIBDの臨床的サブタイプと関連しているか否かを分類するためのシステムであって、
(a)抗フラジェリン抗体及び場合により抗好中球抗体、抗サッカロミセス・セレビシエ抗体、抗菌抗体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の追加のマーカーの試料中の存在又はレベルを示すデータ集合を生成するように構成されたデータ取得モジュール;
(b)前記データ集合に統計処理を適用することによって前記データ集合を処理して、抗フラジェリン抗体及び場合により少なくとも1種の追加のマーカーの存在又はレベルに基づいて試料をCD試料、UC試料、又は非IBD試料と分類する統計的に導かれた決定を生成するように構成されたデータ処理モジュール;及び
(c)前記統計的に導出された決定を表示するように構成された表示モジュール
を含む前記システムを提供する。
1つの態様において、統計処理は学習統計的分類子システムである。本発明に用いるのに適当な学習統計的分類子システムの例は前記の通りである。或る場合において、統計処理は単一の学習統計的分類子システムである。或る他の場合において、統計処理は少なくとも2つの学習統計的分類子システムの組み合わせである。或る場合において、1つ又は複数の学習統計的分類子システムを用いることによって得られるデータは、処理アルゴリズムを用いて処理することができる。
《III.IBDの臨床的サブタイプ》
クローン病(CD)は、消化管のあらゆる部分を含むことがある慢性炎症の疾患である。一般に、小腸の遠位部、すなわち、回腸、及び盲腸が冒される。他の場合に、疾患は小腸、結腸、又は肛門直腸の部位に限定される。CDは、十二指腸及び胃に影響を及ぼすことがあり、そしてよりまれには食道及び口腔に影響を及ぼすことがある。
CDのさまざまな臨床症状は、部分的に、疾患の種々の解剖学的局在の結果である。CDの最も多い症状は、腹痛、下痢、及び再発性の発熱である。CDは、一般に、腸閉塞又は腸瘻、腸の罹患したループ(diseased loop)間の異常な通路と関連する。CDは、合併症、例えば、眼、関節、及び皮膚の炎症、肝臓疾患、腎結石、及びアミロイドーシスも含む。さらに、CDは腸癌の増加したリスクと関連する。
いくつかの特徴がCDの病態に特有である。貫壁性炎症(transmural inflammation)として知られるCDと関連した炎症は、腸壁のすべての層に影響を及ぼす。肥厚及び浮腫も、例えば、典型的には、腸壁の全体にわたって現れ、疾患の長期にわたる形態においては線維症が存在する。CDに特有の炎症は、「飛び石病変(skip lesions)」として知られる炎症を起こした組織の部分(segment)同士が外見上正常な腸によって隔てられていることにおいて非連続的である。さらに、介在する組織の炎症、線状潰瘍形成(linear ulceration)、及び浮腫は、CDに特有である腸管粘膜の「敷石(cobblestone)」的外観に至る。
CDの特徴は、粘膜下組織(submucosa)に通常見出される肉芽腫として知られる炎症細胞の孤立性の集合(discrete aggregation)の存在である。或るCDの場合は典型的な孤立性の肉芽腫を示すが、他の場合は広範性の肉芽腫性反応(diffuse granulomatous reaction)又は非特異的な貫壁性炎症を示す。結果として、孤立性の肉芽腫の存在はCDを示すが、肉芽腫がないこともこの疾患と一致する。従って、肉芽腫の存在よりはむしろ、貫壁性炎症又は非連続性炎症がCDの好ましい診断指標である(Rubin and Farber, Pathology (Second Edition), Philadelphia, J.B. Lippincott Company (1994))。
潰瘍性大腸炎(UC)は、痙攣、腹痛、直腸出血、血液の穏やかな漏出(loose discharge)、膿、及び粘液を伴う慢性下痢によって特徴付けられる大腸の疾患である。UCの症状は広く変化する。再燃(exacerbation)及び緩解(remission)のパターンは、UC患者の約70%についての臨床経過を代表するが、緩解のない持続的な症状がUCに罹患した一部の患者に存在する。UCの局部的及び全身的な合併症は、関節炎、眼の炎症、例えば、ブドウ膜炎、皮膚潰瘍、及び肝臓疾患を含む。さらに、UC、及び当該疾患の長期にわたる広範囲の形態は結腸癌の増加したリスクと関連する。
UCは、通常、直腸の最も遠位の部分から近位にさまざまな距離にわたり広がるびまん性疾患である。「左側結腸炎(left-sided colitis)」という用語は、脾臓の弯曲部まで広がる結腸の遠位部を含む炎症を表す。直腸の回避(sparing)又は結腸の右側(近位部分)単独の関与はUCにおいてまれである。UCの炎症過程は結腸に限られ、そして例えば、小腸、胃、又は食道には影響を及ぼさない。さらに、UCは、通常腸壁のより深い層を回避する粘膜の表在性炎症によって区別される。変性した腸陰窩が好中球で満たされる陰窩膿瘍もUCに特有である(Rubin and Farber、前記参照)。
直腸の頻繁な回避を伴う斑状疾患であるCDと比べて、UCは、通常近位より遠位でより重症である結腸の連続性の炎症によって特徴付けられる。UCの炎症は、通常粘膜層に限られことにおいて表在性であり、そして好中球及び陰窩膿瘍を伴う急性炎症浸潤によって特徴付けられる。対照的に、CDは、常にではないがしばしば存在する肉芽腫を伴い、腸壁の全層を冒す。回盲弁又はそれに遠位の結腸で終わる疾患はUCを示し、一方、回腸末端部の関与、敷石様の外観、孤立性の潰瘍、又は瘻孔はCDを示唆する。
分類不能大腸炎(IC)は、CD及びUCの両方の特徴を含むIBDの臨床的サブタイプである。両方の疾患の症状のこのようなオーバーラップは、ICに罹患した患者において一時的に(例えば、疾患の初期段階において)又は持続的に(例えば、疾患の進行の間を通してずっと)生ずることがある。臨床的には、ICは直腸出血を伴う又は伴わない腹痛及び下痢により特徴付けられる。例えば、正常の粘膜によって分離される断続的な(intermittent)多数の潰瘍形成を伴う大腸炎が当該疾患に罹患した患者に見出される。組織学的には、貫壁性炎症を伴う重症の潰瘍形成のパターンがある。直腸は、典型的には疾患を有さず、そしてリンパ球様(lymphoid)炎症細胞は集合を示さない。筋細胞溶解(myocytolysis)の病巣に伴って深いスリット様の亀裂が観察されるが、ICに罹患した患者において、介在性粘膜は、典型的には、杯細胞の維持を伴い最小限のうっ血を生ずる。
《IV.IBDマーカー》
種々の炎症性腸疾患(IBD)マーカー、例えば、生化学的マーカー、血清学的マーカー、遺伝学的マーカー、又は他の臨床上若しくは超音波検査上の特徴は、例えば小児個体由来の試料をIBD試料と分類することによる、IBDの決定のために本発明の統計的アルゴリズムに用いるのに適している。本明細書中に記載のIBDマーカーは、例えば小児個体由来の試料をCD試料又はUC試料と分類することによって、IBDの臨床的サブタイプ間を識別するために本発明の統計的アルゴリズムに用いるのにも適している。本発明に用いるのに適当なマーカーの例として、限定的でなく、抗フラジェリン抗体(例えば、抗CBir−1抗体)、抗好中球抗体(例えば、ANCA、pANCA、cANCA、NSNA、SAPPA等)、抗サッカロミセス・セレビシエ抗体(例えば、ASCA−IgA、ASCA−IgG、ASCA−IgM等)、抗菌抗体(例えば、抗OmpC抗体、他の抗フラジェリン抗体、抗I2抗体等)、ラクトフェリン、抗ラクトフェリン抗体、エラスターゼ、C反応性タンパク質(CRP)、カルプロテクチン、ヘモグロビン、NOD2/CARD15、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。本発明の統計的アルゴリズムに用いるのに適当なさらなるマーカーがあることは当業者に公知であろう。
小児個体由来の試料中の抗CBir−1抗体のレベルは、例えば、免疫測定法、例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いて測定することができる。ある態様において、フラジェリン抗原は、配列番号1に示した全長CBir−1フラジェリン配列の少なくとも約5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、100個、105個、110個、115個、120個、125個、130個、135個、140個、145個、150個又はそれを超える個数の隣接アミノ酸(中間の長さをすべて含む)からなるポリペプチド断片を含むCBir−1フラジェリンである。概して、CBir−1フラジェリンポリペプチド断片は、全長CBir−1フラジェリン配列と結合する抗体及び/又は全長CBir−1フラジェリン配列と反応するT細胞と免疫学的に反応性である。好ましい態様において、ポリペプチド断片は配列番号1に示した配列のアミノ末端の保存領域(アミノ酸残基1〜147)である。他の態様において、ポリペプチド断片は配列番号1に示した配列のアミノ末端の保存領域に可変領域を加えた領域(アミノ酸残基1〜418)である。或る場合において、CBir−1フラジェリン抗原は、本明細書中に記載のCBir−1フラジェリンポリペプチド断片及びタグ、例えば、6つのヒスチジン(配列番号2)又はグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)タグからなる融合タンパク質である。
抗フラジェリン抗体の「増加した」レベルは、対照との比較上検出することができる所定の抗フラジェリン抗体(例えば、抗CBir−1抗体)レベルの増加を含むことを意図する。検出することができる増加は、対照において検出される所定の抗フラジェリン抗体のレベルより約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、又はそれを超える増加であることができる。所定の抗フラジェリン抗体のレベルの増加は、典型的には、当該技術分野で公知のあらゆる方法又は技術、例えば、免疫測定法又は免疫組織化学的分析を用いて測定される。
試料中のANCAレベル及び/又はpANCAの有無の測定は、本発明において有用である。「抗好中球細胞質抗体」又は「ANCA」という用語は、好中球の細胞質及び/又は核の成分に対する抗体を含む。ANCA活性は、好中球のANCA染色パターン:(1)核周囲にハイライトを有しない細胞質の好中球染色(cANCA);(2)核の外側縁の周囲の核周囲染色(pANCA);(3)核の内側縁の周囲の核周囲染色(NSNA);及び(4)好中球全体にわたり斑紋を有する広範性(diffuse)染色(SAPPA)、に基づいていくつかの広いカテゴリーに分けることができる。或る場合には、pANCA染色はDNase処理に対して鋭敏である。ANCAという用語は、限定的でなく、cANCA、pANCA、NSNA、及びSAPPA、を含むすべての種類の抗好中球活性を包含する。同様に、ANCAという用語は、限定的でなく、免疫グロブリンA及びG、を含むすべての免疫グロブリンアイソタイプを包含する。
小児個体由来の試料中のANCAレベルは、例えば、アルコール固定された好中球を用いた酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)のような免疫測定法を用いて測定することができる(例えば、実施例1参照)。ANCAの特定のカテゴリー、例えば、pANCAの有無は、例えば、免疫組織化学的分析、例えば、間接蛍光抗体(IFA)法を用いて測定することができる。好ましくは、試料中のpANCAの有無は、DNase処理され、固定された好中球による免疫蛍光測定法を用いて測定される(例えば、実施例2参照)。固定された好中球のほかに、ANCAレベルを測定するのに適当なANCAに特異的な抗原として、限定的でなく、精製されていない又は部分的に精製された好中球抽出物;精製されたタンパク質、タンパク質断片、又は合成ペプチド、例えば、ヒストンH1又はそのANCA反応性断片(例えば、米国特許第6,074,835号参照);ヒストンH1様抗原、ポリン抗原、バクテロイデス抗原、又はそのANCA反応性断片(例えば、米国特許第6,033,864号参照);分泌小胞抗原又はそのANCA反応性断片(例えば、米国特許出願第08/804,106号);及び抗ANCAイディオタイプ抗原を挙げることができる。ANCAに特異的なさらなる抗原の使用は本発明の範囲内であることが当業者に理解されよう。
試料中のASCA(例えば、ASCA−IgA及び/又はASCA−IgG)レベルの測定も本発明に有用である。「抗サッカロミセス・セレビシエ免疫グロブリンA」又は「ASCA−IgA」という用語は、サッカロミセス・セレビシエと特異的に反応する免疫グロブリンAアイソタイプの抗体を含む。同様に、「抗サッカロミセス・セレビシエ免疫グロブリンG」又は「ASCA−IgG」という用語は、サッカロミセス・セレビシエと特異的に反応する免疫グロブリンGアイソタイプの抗体を含む。
試料がASCA−IgA又はASCA−IgGに対し陽性であるか否かの測定は、ASCAに対して特異的な抗原を用いて行なう。かかる抗原は、ASCA−IgA及び/又はASCA−IgGによって特異的に結合するあらゆる抗原又は抗原の混合物であることができる。ASCA抗体は、最初、そのサッカロミセス・セレビシエとの結合能によって特徴付けられたが、ASCAによって特異的に結合する抗原は当該抗原がASCA抗体と特異的に結合することができる限りサッカロミセス・セレビシエから又は種々の他の供給源から得ることができることは当業者に理解されよう。従って、試料中のASCA−IgA及び/又はASCA−IgGのレベルを測定するために用いることができる、ASCAに対して特異的な抗原の典型的な供給源として、限定的でなく、死滅した(killed)酵母細胞、例えば、サッカロミセス又はカンジダの細胞の全体;酵母細胞壁マンナン、例えば、ホスホペプチドマンナン(PPM);オリゴ糖、例えば、オリゴマンノシド;ネオ糖脂質;抗ASCAイディオタイプ抗体;等を挙げることができる。異なる種及び株の酵母、例えば、サッカロミセス・セレビシエ株Su1、Su2、CBS1315、若しくはBM156、又はカンジダ・アルビカンス株VW32は、ASCA−IgA及び/又はASCA−IgGに特異的な抗原として用いるのに適する。ASCAに特異的な精製された又は合成の抗原も、試料中のASCA−IgA及び/又はASCA−IgGのレベルの測定に用いるのに適する。精製された抗原の例として、限定的でなく、精製されたオリゴ糖抗原、例えば、オリゴマンノシドを挙げることができる。合成抗原の例として、限定的でなく、合成オリゴマンノシド、例えば、米国特許公報第20030105060号に記載のもの、例えば、式中のRが水素原子、C〜C20アルキル基、又は場合により標識された連結基である、D−Manβ(1−2)D−Manβ(1−2)D−Manβ(1−2)D−Man−OR、D−Manα(1−2)D−Manα(1−2)D−Manα(1−2)D−Man−OR、及びD−Manα(1−3)D−Manα(1−2)D−Manα(1−2)D−Man−ORを挙げることができる。
酵母細胞壁マンナン、例えば、PPMの調製物は、試料中のASCA−IgA及び/又はASCA−IgGのレベルを測定するのに用いることができる。かかる水溶性の表面抗原は、当該技術分野で公知の任意の適切な抽出法によって、例えば、オートクレーブ法(autoclaving)によって調製することができ、又は商業的に入手することができる(例えば、Lindberg et al., Gut, 33:909-913 (1992)参照)。PPMの酸安定性画分も本発明の統計的アルゴリズムにおいて有用である(Sendid et al., Clin. Diag. Lab. Immunol., 3:219-226 (1996))。試料中のASCAレベルを測定するのに有用な代表的PPMは、S.ウヴァラム(S. uvarum)株ATCC#38926から得られる。実施例3は、酵母細胞壁マンナンの調製及びELISA分析を用いた試料中のASCAレベルの分析を記載する。
精製されたオリゴ糖抗原、例えば、オリゴマンノシドも、試料中のASCA−IgA及び/又はASCA−IgGのレベルを測定するのに有用であることができる。精製オリゴマンノシド抗原は、好ましくは、例えば、Faille et al., Eur. J. Microbiol. Infect. Dis., 11:438-446 (1992)に記載のように、ネオ糖脂質に転換される。かかるオリゴマンノシド抗原のASCAとの反応性は、マンノシルの鎖長を変えることによって(Frosh et al., Proc Natl. Acad. Sci. USA, 82:1194-1198 (1985));アノマー配置を変えることによって(Fukazawa et al., In “Immunology of Fungal Disease,” E. Kurstak (ed.), Marcel Dekker Inc., New York, pp. 37-62 (1989);Nishikawa et al., Microbiol. Immunol., 34:825-840 (1990);Poulain et al., Eur. J. Clin. Microbiol., 23:46-52 (1993);Shibata et al., Arch. Biochem. Biophys., 243:338-348 (1985);Trinel et al., Infect. Immun., 60:3845-3851 (1992));又は結合の位置を変えることによって(Kikuchi et al., Planta, 190:525-535 (1993))、最適化することができることは当業者に理解されるところである。
本発明の方法に用いるのに適当なオリゴマンノシドとして、これに限定されないが、マンノテトラオースMan(1−3)Man(1−2)Man(1−2)Manを有するオリゴマンノシドを挙げることができる。かかるオリゴマンノシドは、例えば、前出のFaille et al.に記載のようにPPMから精製することができる。ASCAに特異的である典型的なネオ糖脂質は、そのそれぞれのPPMからオリゴマンノシドを放出させ、そしてそれに続いて放出されたオリゴマンノシドを4−ヘキサデシルアニリン等に結合することによって構成することができる。
試料中の抗OmpC抗体レベルの測定も本発明において有用である。「抗外膜タンパク質C抗体」又は「抗OmpC抗体」という用語は、本明細書中で用いる場合、例えば、PCT特許公報第WO01/89361号に記載の細菌性外膜ポリンに対する抗体を含む。「外膜タンパク質C」又は「OmpC」という用語は、抗OmpC抗体と免疫反応性である細菌性ポリンを含む。
小児個体由来の試料中に存在する抗OmpC抗体のレベルは、OmpCタンパク質又はその断片、例えば、その免疫反応性の断片を用いて測定することができる。試料中の抗OmpC抗体レベルの測定に有用である適当なOmpC抗原として、限定的でなく、OmpCタンパク質、OmpCタンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するOmpCポリペプチド、又はそれらの断片、例えば、それらの免疫反応性断片を挙げることができる。OmpCポリペプチドは、本明細書中で用いる場合、一般に、OmpCタンパク質と約50%を超える同一性、好ましくは、約60%を超える同一性、より好ましくは、約70%を超える同一性、さらにより好ましくは、約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%を超えるアミノ酸配列同一性を持ったアミノ酸配列を有するポリペプチドプチドを表し、アミノ酸同一性はシーケンスアラインメントプログラム、例えば、CLUSTALWを用いて決定される。かかる抗原は、例えば、腸内細菌、例えば、E.Coliからの精製によって、核酸、例えば、GenBank Accession No.K00541の組換え発現によって、合成手段、例えば、液相若しくは固相ペプチド合成によって、又はファージディスプレイによって調製することができる。実施例4は、OmpCタンパク質の調製及びELISA法を用いた試料中の抗OmpC抗体レベルの分析を説明する。
試料中の抗I2抗体レベルの測定も本発明に有用である。「抗I2抗体」という用語は、本明細書中で用いる場合、例えば、米国特許第6,309,643号に記載のように細菌性の転写制御因子に対する相同性を共有する細菌性抗原に対する抗体を含む。「I2」という用語は、抗I2抗体と免疫反応性である細菌性抗原を含む。微生物のI2タンパク質は、C.パスツーリアナム(C. pasteurianum)由来の予測タンパク質(predicted protein)4とある程度類似性の弱い相同性を共有するアミノ酸100個のポリペプチド、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)由来のRv3557c、及びアクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)由来の転写制御因子である。I2タンパク質の核酸及びタンパク質配列は、例えば、米国特許第6,309,643号に記載されている。
小児個体由来の試料中に存在する抗I2抗体のレベルは、I2タンパク質又はその断片、例えば、その免疫反応性の断片を用いて測定することができる。試料中の抗I2抗体レベルを測定するのに有用である適当なI2抗原として、限定的でなく、I2タンパク質、I2タンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するI2ポリペプチド、又はその断片、例えば、その免疫反応性の断片を挙げることができる。かかるI2ポリペプチドは、C.パスツーリアナムのタンパク質4よりI2タンパク質に対してより大きい配列類似性を示し、そしてそのアイソタイプ変異体及び類似体を含む。I2ポリペプチドは、本明細書中で用いる場合、概して、天然に存在するI2タンパク質と約50%を超える同一性、好ましくは、約60%を超える同一性、より好ましくは、約70%を超える同一性、さらにより好ましくは、約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%を超えるアミノ酸配列同一性を持ったアミノ酸配列を有するポリペプチドプチドを表し、前記アミノ酸同一性はシーケンスアラインメントプログラム、例えば、CLUSTALWを用いて決定される。かかるI2抗原は、例えば、微生物からの精製によって、I2抗原をコードする核酸の組換え発現によって、合成手段、例えば、液相若しくは固相ペプチド合成によって、又はファージディスプレイを用いることによって調製することができる。実施例5は、組換えI2タンパク質の調製及びELISA分析又は組織学的分析を用いた試料中の抗I2抗体レベルの分析を記載する。
試料中のラクトフェリンの存在又はレベルの測定も本発明に有用である。或る場合において、ラクトフェリンの存在又はレベルは、分析、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ又は増幅をベースとする分析を用いてmRNA発現のレベルで検出される。或る他の場合において、ラクトフェリンの存在又はレベルは、例えば、免疫測定法(例えば、ELISA)又は免疫組織化学的分析を用いて、タンパク質発現のレベルで検出される。Calbiochem(San Diego,CA)から入手することができるELISAキットを用いて血漿、尿、気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage)、又は脳脊髄液試料中のヒトラクトフェリンを検出することができる。同様に、U.S.Biological(Swampscott,MA)から入手することができるELISAキットを用いて、血漿試料中のラクトフェリンレベルを測定することができる。同様に、TECHLAB社(Blacksburg,VA)から入手することができるELISAキットを用いて、便試料中のラクトフェリンレベルを測定することができる。さらに、米国特許公報第20040137536号は、便試料中の増加したラクトフェリンレベルの存在を測定するためのELISA分析を記載し、そして米国特許公報第20040033537号は、便、粘液、又は胆汁試料中の内在性ラクトフェリンの濃度を測定するためのELISA分析を記載している。或る態様において、次に、例えば、ラクトフェリンタンパク質又はその断片を用いて、試料中の抗ラクトフェリン抗体の存在又はレベルを検出することができる。
試料中のC反応性タンパク質(CRP)の存在又はレベルの測定も本発明に有用である。或る場合において、CRPの存在又はレベルは、分析、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ又は増幅をベースとする分析を用いてmRNA発現のレベルで検出される。或る他の場合において、CRPの存在又はレベルは、例えば、免疫測定法(例えば、ELISA)又は免疫組織化学的分析を用いて、タンパク質発現のレベルで検出される。例えば、Alpco Diagnostics(Salem,NH)から入手することができるサンドイッチ比色定量(sandwich colorimetric)ELISA分析を用いて、血清、血漿、尿、又は便試料中のCRPのレベルを測定することができる。同様に、Biomeda社(Foster City,CA)から入手することができるELISAキットを用いて試料中のCRPレベルを検出することができる。試料中のCRPレベルを測定するための他の方法は、例えば、米国特許第6,838,250号及び第6,406,862号;並びに米国特許公報第20060024682号及び第20060019410号に記載されている。
さらに、潜血(hemoccult)、便潜血は、しばしば胃腸疾患を示しており、そして胃腸出血をモニタリングするための種々のキットが開発されてきた。例えば、Beckman Coulterの製品であるHemoccult SENSAは、胃腸出血、鉄欠乏、消化性潰瘍、潰瘍性大腸炎に対する、及び或る場合には、結腸直腸癌のスクリーニングにおける、診断補助となる。この特定の分析は、青色を生ずる過酸化水素によるグアヤクの酸化に基づく。便試料中の血液を検出するための同様の比色定量分析は、Helena Laboratories(Beaumont,TX)から商業的に入手することができる。ヘモグロビン又はヘム活性の存在又はレベルを測定することにより便試料中の潜血を検出するための他の方法は、例えば、米国特許第4,277,250号、第4,920,045号、第5,081,040号、及び第5,310,684号に記載されている。
カルプロテクチンは、体内のすべての細胞、組織、及び液体中に見出されるカルシウム及び亜鉛結合性タンパク質である。カルプロテクチンは、好中球の顆粒球及びマクロファージ中の主要なタンパク質であり、そしてこれらの細胞の細胞質画分中の全タンパク質の60%もの割合を占める。従って、カルプロテクチンは好中球の代謝回転の代用のマーカーである。便中のカルプロテクチン濃度は、腸管粘膜の好中球浸潤の強度及び炎症の重症度と相関する。カルプロテクチンは少量(50〜100mg)の糞便試料を用いてELISAにより測定することができる(例えば、Johne et al., Scand J Gastroenterol., 36:291-296 (2001)参照)。
試料中のNOD2/CARD15遺伝子中の多型の存在の測定も本発明に有用である。例えば、NOD2遺伝子の多型、例えば、R703Wタンパク質変異体を生ずるC2107Tヌクレオチド変異体は、個体由来の試料において同定することができる(例えば、米国特許公報第20030190639号参照)。別の態様において、NOD2mRNAレベルは、IBDの分類を補助する本発明の診断マーカーとして用いることができる。
《V.分析》
当該技術分野で公知の任意の種類の分析、方法、及びキットを用いて、試料中の1種又は2種以上のマーカーの存在又はレベルを測定して当該試料がIBD又はその臨床的サブタイプと関連しているか否かを分類することができる。
本発明は、小児個体から得られる試料中の少なくとも1種のマーカーの存在又はレベルを測定することに部分的に依存している。「少なくとも1種のマーカーの存在を測定すること」という用語は、本明細書中で用いる場合、当業者に公知の任意の定量又は定性分析を用いることによって着目した各マーカーの存在を測定することを含む。或る場合において、特定の形質、変数(variable)、又は生化学的若しくは血清学的物質(例えば、タンパク質又は抗体)の有無を測定する定量分析は、着目した各マーカーを検出するのに適している。或る他の場合において、RNA、タンパク質、抗体、又は活性の有無を測定する定量分析は、着目した各マーカーを検出するのに適している。「少なくとも1種のマーカーのレベルを測定すること」という用語は、本明細書中で用いる場合、当業者に公知の任意の直接的又は間接的な定量分析を用いることにより着目した各マーカーのレベルを測定することを含む。或る場合において、例えば、RNA、タンパク質、抗体、又は活性の相対量又は絶対量を測定する定量分析は、着目した各マーカーのレベルを測定するのに適している。マーカーのレベルを測定するのに有用なあらゆる分析がマーカーの有無を測定するのにも有用であることは当業者に理解されよう。
「抗体」という用語は、本明細書中で用いる場合、ポリクローナル又はモノクローナル及び任意のアイソタイプであることができる免疫グロブリン分子の集団、又は免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な断片を含む。かかる免疫学的に活性な断片は、抗原と特異的に結合する抗体分子の一部を構成するH鎖及びL鎖可変領域を含む。例えば、Fab、Fab’又はF(ab’)として当該技術分野で公知の免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な断片は、抗体という用語の意味の範疇に含まれる。
フローサイトメトリーを用いて試料中の1種又は2種以上のマーカーの存在又はレベルを測定することができる。ビーズベースの免疫測定法を含む前記フローサイトメトリー分析を用いて、例えば、カンジダ・アルビカンス及びHIVタンパク質に対する血清抗体の検出について記載されている方法(例えば、Bishop et al., J. Immunol. Methods, 210:79-87 (1997);McHugh et al., J. Immunol. Methods, 116:213 (1989);Scillian et al., Blood, 73:2041 (1989)参照)と同じ方法により抗体マーカーレベルを、測定することができる。
マーカーに特異的な組換え抗原を発現させるファージディスプレイ法も、試料中の1種又は2種以上のマーカーの存在又はレベルを測定するのに用いることができる。例えば抗体マーカーに特異的な抗原を発現するファージ粒子を、所望により、抗体、例えば、抗ファージモノクローナル抗体を用いてマルチウェルプレートに固定することができる(Felici et al., “Phage-Displayed Peptides as Tools for Characterization of Human Sera” in Abelson (Ed.), Methods in Enzymol., 267, San Diego: Academic Press, Inc. (1996))。
競合免疫測定法及び非競合免疫測定法を含む種々の免疫測定法を用いて、試料中の1種又は2種以上のマーカーの存在又はレベルを測定することができる(例えば、Self et al., Curr. Opin. Biotechnol., 7:60-65 (1996)参照)。免疫測定法という用語は、限定的でなく、酵素免疫測定法(EIA)、例えば、酵素増幅免疫測定法(EMIT)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、抗原捕捉ELISA、サンドイッチELISA、IgM抗体捕捉ELISA(MAC ELISA)、及び微粒子酵素免疫測定法(MEIA);キャピラリー電気泳動免疫測定法(CEIA);放射免疫測定法(RIA);免疫放射定量測定法(IRMA);蛍光偏光免疫測定法(FPIA);及び化学発光測定法(CL)を含む技術を包含する。所望により、前記免疫測定法は自動化することができる。免疫測定法は、レーザ励起蛍光法と併せて用いることもできる(例えば、Schmalzing et al., Electrophoresis, 18:2184-2193 (1997); Bao, J. Chromatogr. B. Biomed. Sci., 699:463-480 (1997)参照)。リポソームイムノアッセイ、例えば、フローインジェクションリポソームイムノアッセイ及びリポソーム免疫センサーも本発明に用いるのに適している(例えば、Rongen et al., J. Immunol. Methods, 204:105-133 (1997)参照)。さらに、タンパク質/抗体複合体の形成がマーカー濃度の関数としてピークレートシグナルに変換される光散乱の増大を生ずる比濁分析は本発明に用いるのに適している。比濁分析はBeckman Coulter(Brea,CA;キット#449430)から商業的に入手することができそしてベーリング・ネフェロメーター・アナライザー(Behring Nephelometer Analyzer)を用いて実施することができる(Fink et al., J. Clin. Chem. Clin. Biol. Chem., 27:261-276 (1989))。
抗原捕捉ELISAは、試料中の1種又は2種以上のマーカーの存在又はレベルを測定するのに有用であることができる。例えば、抗原捕捉ELISAにおいて、着目したマーカーに対する抗体を固相に結合させ、そしてマーカーが前記抗体によって結合されるように試料を添加する。結合しないタンパク質を洗浄によって除去した後、結合したマーカーの量を、例えば、ラジオイムノアッセイを用いて定量化することができる(例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, (1988)参照)。サンドイッチELISAも本発明に用いるのに適していることができる。例えば、二抗体サンドイッチ分析において、一次抗体を固体支持体に結合させ、そして着目したマーカーを前記一次抗体に結合させる。マーカーの量は、マーカーに結合する二次抗体の量を測定することにより定量化することができる。抗体は、種々の固体支持体、例えば、磁性又はクロマトグラフィーマトリックス粒子、アッセイプレート(例えば、マイクロタイターウェル)の表面、固体基体材料又は膜(例えば、プラスチック、ナイロン、紙)の小片(pieces)等、上に固定化することができる。アッセイストリップは、固体支持体上のアレイ内にその抗体又は複数種の抗体をコーティングすることによって調製することができる。次いで、このストリップを試験試料中に浸漬し、そして洗浄工程及び検出工程を通して迅速に処理して、測定可能なシグナル、例えば、着色スポットを生成することができる。
例えば、ヨウ素125(125I)標識された二次抗体(Harlow and Lane、前記参照)、を用いたラジオイムノアッセイも、試料中の1種又は2種以上のマーカーの存在又はレベルを測定するのに適している。化学発光マーカーで標識された二次抗体も本発明に用いるのに適していることができる。化学発光二次抗体を用いた化学発光測定法は、マーカーレベルの非放射性の鋭敏な検出に適している。かかる二次抗体は種々の供給源、例えば、Amersham Lifesciences社(Arlington Heights,IL)から商業的に入手することができる。
前記免疫測定法は、試料中の1種又は2種以上のマーカーの存在又はレベルを測定するのにとりわけ有効である。限定的でない例として、固定化好中球ELISAは、試料がANCAに陽性であるか否かを測定し又は試料中のANCAレベルを測定するのに有効である。同様に、酵母細胞壁ホスホペプチドマンナンを用いたELISAは、試料がASCA−IgA及び/又はASCA−IgGに陽性であるか否かを測定し、又は試料中のASCA−IgA及び/又はASCA−IgGのレベルを測定するのに有効である。OmpCタンパク質又はその断片を用いたELISAは、試料が抗OmpC抗体に陽性であるか否かを測定し、又は試料中の抗OmpC抗体レベルを測定するのに有効である。I2タンパク質又はその断片を用いたELISAは、試料が抗I2抗体に陽性であるか否かを測定し、又は試料中の抗I2抗体レベルを測定するのに有効である。フラジェリンタンパク質又はその断片を用いたELISAは、試料が抗フラジェリン抗体に陽性であるか否かを測定し、又は試料中の抗フラジェリン抗体レベルを測定するのに有用である。さらに、前記免疫測定法は、試料中の他のマーカーの存在又はレベルを測定するのにとりわけ有効である。
着目したマーカーへの抗体の特異的な免疫学的結合は直接的又は間接的に検出することができる。直接的な標識として、抗体に付けられる蛍光又は発光(luminescent)タグ、金属、色素、放射性核種等を挙げることができる。ヨウ素125(125I)で標識された抗体は、試料中の1種又は2種以上のマーカーのレベルを測定するのに用いることができる。マーカーに特異的な化学発光抗体を用いた化学発光測定法は、マーカーレベルの非放射性の鋭敏な検出に適している。蛍光色素で標識された抗体も、試料中の1種又は2種以上のマーカーのレベルを検出するのに適している。蛍光色素の例として、限定的でなく、DAPI、フルオレセイン、ヘキスト(Hoechst)33258、R−フィコシアニン、B−フィコエリトリン、R−フィコエリトリン、ローダミン、テキサスレッド(Texas red)、及びリサミン(lissamine)を挙げることができる。蛍光色素に結合される二次抗体は商業的に入手することができ、例えば、ヤギF(ab’)抗ヒトIgG−FITCは、Tago Immunologicals(Burlingame,CA)から入手することができる。
間接的な標識として、当該技術分野で周知の種々の酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、β−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ等を挙げることができる。西洋ワサビペルオキシダーゼ検出系は、例えば、450nmにおいて検出可能な可溶性生成物を過酸化水素の存在下に生ずる色素生産性基質テトラメチルベンジジン(TMB)と共に用いることができる。アルカリホスファターゼ検出系は、例えば、405nmにおいて容易に検出可能な可溶性生成物を生ずる、色素生産性基質p−ニトロフェニルホスフェートと共に用いることができる。同様に、β−ガラクトシダーゼ検出系は、410nmにおいて検出可能な可溶性生成物を生ずる、色素生産性基質o−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(ONPG)と共に用いることができる。ウレアーゼ検出系は、基質、例えば、尿素−ブロモクレゾールパープル(Sigma Immunochemicals;St.Louis,MO)と共に用いることができる。酵素に結合される有用な二次抗体は多くの商業的供給源から入手することができ、例えば、ヤギF(ab’)抗ヒトIgG−アルカリホスファターゼは、Jackson ImmunoResearch(West Grove,PA.)から購入することができる。
直接的又は間接的な標識からのシグナルは、例えば、色素生産性基質由来の色を検出する分光光度計を用いて;放射線を検出するために放射線測定器、例えば、125Iの検出用ガンマカウンターを用いて;又は一定の波長の光の存在下に蛍光を検出する蛍光光度計を用いて、分析することができる。酵素結合抗体の検出には、製造業者の使用説明書に従い、分光光度計、例えば、EMAX Microplate Reader(Molecular Devices;Menlo Park,CA)を用いて、マーカーレベルの量の定量分析を行なうことができる。所望により、本発明の分析は自動化し又はロボット制御により実施することができ、そして多数の試料からのシグナルを同時に検出することができる。
試料中の1種又は2種以上のマーカーの存在又はレベルを検出又は測定するために定量的ウエスタンブロット法も用いることができる。ウエスタンブロットは、周知の方法、例えば、走査デンシトメトリー又はホスホアイメージング(phosphorimaging)によって定量化することができる。限定的でない例として、タンパク質試料を10%SDS−PAGEレムリゲル(Laemmli gel)上で電気泳動する。一次マウスモノクローナル抗体をブロットと反応させ、そして予備的スロットブロット(slot blot)試験を用いて抗体結合が直線的であることを確認することができる。二次抗体としてヤギ抗マウス西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗体(BioRad)を用い、そして例えば、製造業者の使用説明書に従ってルネッサンス(Renaissance)化学ルミネセンスキット(New England Nuclear;Boston,MA)を用いて、化学ルミネセンスを用いたシグナル検出を行なう。ブロットのオートラジオグラフは、走査型デンシトメーター(scanning densitometer)(Molecular Dynamics;Sunnyvale,CA)を用いて分析し、そしてポジティブコントロールに対して基準化する。数値は、例えば、ポジティブコントロールに対する実測値の間の比(デンシトメトリックインデックス)として報告される。かかる方法は、例えば、Parra et al., J. Vasc. Surg., 28:669-675 (1998)に記載されているように当該技術分野で周知である。
これとは別に、種々の免疫組織化学的分析法を用いて試料中の1種又は2種以上のマーカーの存在又はレベルを測定することができる。免疫組織化学的分析という用語は、着目したマーカーと反応する抗体に結合される(すなわち、コンジュゲートされる(conjugated))蛍光色素又は酵素の蛍光顕微鏡検査法又は光学顕微鏡検査法を用いた視覚的検出を利用する方法を包含し、そして限定的でなく、直接蛍光抗体分析、間接蛍光抗体(IFA)分析、抗補体免疫蛍光法、アビジン−ビオチン免疫蛍光測定法、及び免疫ペルオキシダーゼ分析を含む。IFA分析は、例えば、試料がANCAに陽性であるか否か、試料中のANCAのレベル、試料がpANCAに陽性であるか否か、試料中のpANCAのレベル、及び/又はANCA染色パターン(例えば、cANCA、pANCA、NSNA、及び/又はSAPPA染色パターン)を測定するのに有効である。試料中のANCAの濃度は、例えば、終点滴定(endpoint titration)により又は公知の標準品と比較した蛍光の視覚的強度を測定することにより、定量化することができる。
これとは別に、着目したマーカーの存在又はレベルは、精製したマーカーの量を検出又は定量化することによって測定することができる。マーカーの精製は、例えば、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)単独により、又は質量分析(例えば、MALDI/MS、MALDI−TOF/MS、タンデムMS等)との組み合わせにより、達成することができる。着目したマーカーの定性又は定量検出も、限定的でなく、ブラッドフォード測定法(Bradford assay)、クーマシーブルー染色法、銀染色法、放射標識されたタンパク質の分析、及び質量分析を含む周知の方法によって測定することができる。
複数のマーカーの分析は、別々に又は1つの試験試料と同時に行なうことができる。マーカーの個別又は連続の分析に適した装置として、臨床検査分析装置、例えば、ElecSys(Roche)、AxSym(Abbott)、Access(Beckman)、ADVIA(商標)、CENTAUR(商標)(Bayer)、及びNICHOLS ADVANTAGE(商標)(Nichols Institute)免疫測定装置を挙げることができる。好ましい装置又はタンパク質チップは、単一表面上で複数のマーカーの同時分析を行なう。とりわけ有用な物理フォーマットは、複数の異なるマーカーの検出に対する複数の個々に離れたアドレス可能な(addressable)位置を有する表面を含む。かかるフォーマットは、プロテインマイクロアレイ、又は「プロテインチップ」(例えば、Ng et al., J. Cell Mol. Med., 6:329-340 (2002)参照)及び特定のキャピラリー装置(例えば、米国特許第6,019,944号参照)を含む。これらの態様において、個々に離れた表面位置のそれぞれがその各位置において検出のための1種又は2種以上のマーカーを固相化する抗体を含んでいることができる。表面は、これとは別に、表面の個々に離れた位置に固相化された1つ又は2つ以上の分離した粒子(例えば、微小粒子又はナノ粒子)を含んでいることができ、前記微小粒子は検出用の1種又は2種以上のマーカーを固相化する抗体を含んでいる。
着目した種々のマーカーの存在又はレベルを測定するための前記分析に加えて、ルーチン技術を用いたマーカーmRNAレベルの分析、例えば、ノーザン分析、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、又はマーカーコード配列の一部に対して相補的な核酸配列へのハイブリダイゼーションに基づく任意の他の方法(例えば、スロットブロットハイブリダイゼーション)も本発明の範囲内にある。適用することができるPCR増幅技術は、例えば、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. New York (1999), Chapter 7 and Supplement 47;Theophilus et al., “PCR Mutation Detection Protocols,” Humana Press, (2002);及びInnis et al., PCR Protocols, San Diego, Academic Press, Inc. (1990)に記載されている。一般的な核酸ハイブリダイゼーション法は、Anderson, “Nucleic Acid Hybridization,” BIOS Scientific Publishers, 1999に記載されている。複数の転写された核酸配列(例えば、mRNA又はcDNA)の増幅又はハイブリダイゼーションも、マイクロアレイ中に配置されたmRNA又はcDNA配列から実施することができる。マイクロアレイ法は、一般に、“Microarrays Methods and Applications: Nuts & Bolts,” DNA Press, 2003;及びBaldi et al., “DNA Microarrays and Gene Expression: From Experiments to Data Analysis and Modeling,” Cambridge University Press, 2002に記載されている。
マーカー、例えば、遺伝子マーカーの遺伝子型の分析は、限定的でなく、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)をベースとする分析、配列分析、及び電気泳動分析を含む当該技術分野で公知の技術を用いて実施することができる。PCRをベースとする分析の限定的でない例として、Applied Biosystemsから入手することができるTaqman(商標)対立遺伝子識別分析を挙げることができる。配列解析の限定的でない例として、マキサムーギルバート配列決定法(Maxam-Gilbert sequencing)、サンガー配列決定法、キャピラリーアレイDNA配列決定法、熱サイクル配列決定法(thermal cycle sequencing)(Sears et al., Biotechniques, 13:626-633 (1992))、固相配列決定法(Zimmerman et al., Methods Mol. Cell Biol., 3:39-42 (1992))、質量分析を用いた配列決定法、例えば、マトリックス補助レーザ脱離/イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI−TOF/MS;Fu et al., Nature Biotech., 16:381-384 (1998))、及びハイブリダイゼーションによる配列決定法(Chee et al., Science, 274:610-614 (1996);Drmanac et al., Science, 260:1649-1652 (1993);Drmanac et al., Nature Biotech., 16:54-58 (1998))を挙げることができる。電気泳動分析の限定的でない例として、スラブゲル電気泳動法、例えば、アガロース又はポリアクリルアミドゲル電気泳動法、キャピラリー電気泳動法、及び変性勾配ゲル電気泳動法を挙げることができる。マーカー中の多型部位(polymorphic site)における小児個体の遺伝子型を同定する他の方法として、例えば、Third Wave Technologies社からのINVADER(商標)分析、制限酵素断片長多型(RFLP)分析、アレル特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、ヘテロ二重鎖移動度分析、及び一本鎖高次構造多型(SSCP)分析を挙げることができる。
着目したいくつかのマーカーは、複数の試料の効率的処理のために1つの試験にまとめることができる。さらに、当業者であれば、同一の患者に由来する複数の試料(例えば、連続的な時点等)を試験することの有益性を認めるであろう。かかる一連の試料の試験は、経時的なマーカーレベルの変化の同定を可能とすることができる。マーカーレベルの増減だけでなく、マーカーレベルの変化の有無も、IBDを分類し、又はIBDの臨床的サブタイプ間を識別するのに有用な情報を提供することができる。
前記1種又は2種以上のマーカーからなるパネルは、試料をIBD又はその臨床的サブタイプと関連していると分類する本発明のアプローチに関する関連情報を提供するように構成することができる。かかるパネルは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、25個、30個、35個、40個、又はそれを超える個数の個別のマーカーを用いて構成することができる。単一のマーカー又はマーカーのサブセットの分析も、種々の臨床的環境において当業者によって実施することができる。これらは、限定的でなく、外来診療(ambulatory)、応急手当て、救命救急診療、集中治療、モニター装置、入院患者、外来患者、診療所(physician office)、内科診療所(medical clinic)、及び健康診断の環境を含む。
マーカーの分析は、さらに種々の物理フォーマットにより実施することができるであろう。例えば、マイクロタイタープレートを用いて又は自動化により多量の試験試料の処理を促進することができるであろう。また、タイムリーに治療及び診断を促進する単一の試料フォーマットを開発することができるであろう。
《VI.統計的アルゴリズム》
或る観点において、本発明は、試料をIBD試料又は非IBD試料と分類する統計的アルゴリズム又は統計処理を用いて試料がIBDと関連しているか否かを分類する方法、システム、及びコードを提供する。他の観点において、本発明は、試料をCD試料、UC試料、又は非IBD試料と分類する統計的アルゴリズム又は統計処理を用いて試料がIBDの臨床的サブタイプと関連しているか否かを分類する(すなわち、CDとUCとの間を識別する)方法、システム、及びコードを提供する。好ましくは、複数の統計的アルゴリズム又は統計処理は、独立して、1つ又は2つ以上の学習統計的分類子システムを含む。本明細書中に記載のように、学習統計的分類子システムの組み合わせは、有利には、試料がIBD又はその臨床的サブタイプと関連しているか否かを分類するための改善された感度、特異度、陰性的中率、陽性的中率、及び/又は総体的的確性を提供する。
「統計的アルゴリズム」又は「統計処理」という用語は、変数間の相関関係を決定するために用いられるあらゆる種々の統計解析を含む。本発明において、変数は着目した少なくとも1種のマーカーの存在又はレベルである。本明細書に記載の統計的アルゴリズムを用いていくつものマーカーを解析することができる。例えば、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種、13種、14種、15種、16種、17種、18種、19種、20種、25種、30種、35種、40種、45種、50種、又はそれを超える種類のマーカーの存在又はレベルを統計的アルゴリズムに含めることができる。1つの態様において、ロジスティック回帰を用いる。別の態様において、直線回帰を用いる。或る場合において、本発明の統計的アルゴリズムは、変数として所定の母集団内の特定マーカーの変位値測定値(quantile measurement)を用いることができる。変位値は、データのサンプルを(できるだけ)等しい観察数を含む群に分割する「カットポイント」の集合である。例えば、四分位数は、(できるだけ)等しい観察数を含む4つの群にデータのサンプルを分割する数値である。下位四分位数は、順番に並べたデータの集合を通じて4分の1上がった(quarter way up)データ値であり;上位四分位数は、順番に並べたデータの集合を通じて4分の1下がった(quarter way down)データ値である。五分位数は(できるだけ)等しい観察数を含む5つの群にデータのサンプルを分割する値である。本発明は、アルゴリズムの変数として(連続変数を用いた場合と同様に)マーカーレベルの百分位数範囲(例えば、三分位数、四分位数、五分位数等)、又はそれらの累積的指標(例えば、マーカーレベルの四分位数の合計等)の使用も含んでいることができる。
好ましくは、本発明の統計的アルゴリズムは1種又は2種以上の学習統計的分類子システムを含む。「学習統計的分類子システム」という用語は、本明細書中で用いる場合、複合データの集合(例えば、着目したマーカーのパネル)に適用し、そしてかかるデータの集合に基づいて判断を行なうことができる機械学習アルゴリズム技術を含む。或る態様において、単一の学習統計的分類子システム、例えば、分類木(例えば、ランダムフォレスト)を用いる。他の態様において、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、又は11種以上の学習統計的分類子システムの組み合わせを、好ましくは直列に用いる。学習統計的分類子システムの例として、限定的でなく、帰納学習(例えば、決定/分類木、例えば、ランダムフォレスト、分類及び回帰木(C&RT)、ブースト型の木等)、Probably Approximately Correct(PAC)学習、コネクショニスト学習(例えば、ニューラルネットワーク(NN)、人工ニューラルネットワーク(ANN)、ニューロファジーネットワーク(NFN)、ネットワーク構造、パーセプトロン、例えば、多層パーセプトロン、多層フィードフォワードネットワーク、ニューラルネットワークのアプリケーション、信念ネットワーク(belief network)におけるベイジアン学習等)、強化学習(例えば、既知環境における受動的学習(passive learning)、例えば、単純学習(naive learning)、適応型動的(adaptive dynamic)学習、及び時間差学習、未知環境における受動的学習、未知環境における能動的学習、行動−価値関数学習、強化学習のアプリケーション等)、及び遺伝的アルゴリズム及び進化的プログラミングを用いた学習統計的分類子システムを挙げることができる。他の学習統計的分類子システムとして、サポート・ベクター・マシーン(例えば、カーネル法)、多変量適応回帰スプライン(MARS)、レーベンバーグ・マルカートアルゴリズム、ガウス・ニュートンアルゴリズム、ガウス混合(mixtures of Gaussians)、勾配降下アルゴリズム、及び学習ベクトル量子化(LVQ)を挙げることができる。
ランダムフォレストは、Leo Breiman及びAdele Cutlerによって開発されたアルゴリズムを用いて構築される学習統計的分類子システムである。ランダムフォレストは多数の個別の決定木を用いそして小児個体の木によって決定されるクラスのモード(すなわち、最頻値(most frequently occurring))を選択することによってクラスを決定する。ランダムフォレスト解析は、例えば、Salford Systems(San Diego,CA)から入手することができるRandomForestsソフトウェアを用いて実施することができる。例えば、ランダムフォレストの説明については、Breiman, Machine Learning, 45:5-32 (2001);及びhttp://stat-www.berkeley.edu/users/breiman/RandomForests/cc_home.htmを参照されたい。
分類及び回帰木は、適当な古典的回帰モデルに対するコンピュータ集約型の代替を表すものであり、そして典型的には、1種又は2種以上の予測変数に基づいて着目したカテゴリー的又は連続的な応答に対する最良の可能なモデルを決定するのに用いられる。分類及び回帰木解析は、例えば、Salford Systemsから入手することができるC&RTソフトウェア又はStatSoft社(Tulsa,OK)から入手することができるStatisticaデータ解析ソフトウェアを用いて実施することができる。分類及び回帰木の説明は、例えば、Breiman et al. “Classification and Regression Trees,” Chapman and Hall, New York (1984);及びSteinberg et al., “CART: Tree-Structured Non-Parametric Data Analysis,” Salford Systems, San Diego, (1995)に見出される。
ニューラルネットワークは、計算に対するコネクショニストアプローチに基づく情報処理のための数理又は計算モデルを用いる人工ニューロンの相互接続されたグループである。典型的には、ニューラルネットワークは、ネットワークを通じて流れる外部又は内部情報に基づいてその構造を変える適応システムである。ニューラルネットワークの具体例として、フィードフォワードニューラルネットワーク、例えば、パーセプトロン、単層パーセプトロン、多層パーセプトロン、バックプロパゲーションネットワーク、ADALINEネットワーク、MADALINEネットワーク、Learnmatrixネットワーク、動径基底関数(RBF)ネットワーク、及び自己組織化マップ又はコホーネン自己組織化ネットワーク;リカレントニューラルネットワーク、例えば、シンプルリカレントネットワーク及びホップフィールドネットワーク;確率的ニューラルネットワーク、例えば、ボルツマンマシン;モジュール型ニューラルネットワーク、例えば、機械の委員会(committee of machines)及び連合的(associative)ニューラルネットワーク;及び他の型のネットワーク、例えば、即時訓練型(instantaneously trained)ニューラルネットワーク、スパイキング(spiking)ニューラルネットワーク、動的ニューラルネットワーク、及びカスケーディング(cascading)ニューラルネットワークを挙げることができる。ニューラルネットワーク解析は、例えば、StatSoft社から入手することができるStatisticaデータ解析ソフトウェアを用いて実施することができる。ニューラルネットワークの説明については、例えば、Freeman et al., In “Neural Networks:Algorithms, Applications and Programming Techniques,” Addison-Wesley Publishing Company (1991);Zadeh, Information and Control, 8:338-353 (1965);Zadeh, “IEEE Trans. on Systems, Man and Cybernetics,” 3:28-44 (1973);Gersho et al., In “Vector Quantization and Signal Compression,” Kluywer Academic Publishers, Boston, Dordrecht, London (1992);及びHassoun, “Fundamentals of Artificial Neural Networks,” MIT Press, Cambridge, Massachusetts, London (1995)を参照されたい。
サポートベクターマシーンは、分類及び回帰について用いられる関連した教師あり学習技術の集合でありそして例えば、Cristianini et al., “An Introduction to Support Vector Machines and Other Kernel-Based Learning Methods,” Cambridge University Press (2000)に記載されている。サポートベクターマシーン解析は、例えば、Thorsten Joachims(コーネル大学)によって開発されたSVMlightソフトウェアを用いて又はChih−Chung Chang及びChih−Jen Lin(国立台湾大学)によって開発されたLIBSVMソフトウェアを用いて実施することができる。
本明細書中に記載した学習統計的分類子システムは、健常者及びIBD患者由来の試料(たとえば、血清学的試料)のコホートを用いて訓練及び試験することができる。例えば、医師によって、そして好ましくは胃腸科専門医によって生検、大腸内視鏡検査(colonoscopy)、又は例えば、米国特許第6,218,129号に記載の免疫測定法を用いてIBDに罹患していると診断された患者由来の試料は、本発明の学習統計的分類子システムの訓練及び試験に用いるのに適している。IBD罹患と診断された患者由来の試料は、例えば、米国特許第5,750,355号及び第5,830,675号に記載のような免疫測定法を用いてクローン病又は潰瘍性大腸炎に分類することもできる。健常者由来の試料は、IBD試料と同定されなかった試料を含んでいることができる。本発明の学習統計的分類子システムの訓練及び試験に用いることができる患者試料のコホートを得るためのさらなる技術及び診断基準があることは当業者に公知であろう。
「感度」という用語は、本明細書中で用いる場合、試料が陽性、例えば、IBD又はその臨床的サブタイプに罹患しているものである場合に、本発明の診断方法、システム、又はコードが陽性の結果を与える確率をいう。感度は、真陽性及び偽陰性の合計で真陽性結果を割った数値として計算される。感度は、本質的に、本発明の方法、システム、又はコードがIBD又はその臨床的サブタイプに罹患した者を、前記疾患に罹患していない者からどれだけよく正確に同定するかの尺度である。統計的アルゴリズムは、IBD又はその臨床的サブタイプ(例えば、CD又はUC)を分類する感度が少なくとも約60%であり、そして、例えば、少なくとも約65%、70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%であることができるように選択することができる。
「特異度」という用語は、試料が陽性でない、例えば、IBD又はその臨床的サブタイプに罹患していないものである場合に、本発明の診断方法、システム、又はコードが陰性の結果を与える確率をいう。特異度は、真陰性及び偽陽性の合計で真陰性結果を割った数値として計算される。特異度は、本質的に、本発明の方法、システム、又はコードがIBD又はその臨床的サブタイプに罹患していない者を、前記疾患に罹患している者からどれだけよく除外するかの尺度である。統計的アルゴリズムは、IBD又はその臨床的サブタイプ(例えば、CD又はUC)を分類する特異度が少なくとも約70%、例えば、少なくとも約75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%であるように選択することができる。
「陰性的中率」又は「NPV」という用語は、本明細書中で用いる場合、IBD又はその臨床的サブタイプに罹患していないと同定された小児個体が実際に当該疾患に罹患していない確率をいう。陰性的中率は、真陰性及び偽陰性の合計で真陰性を割った数値として計算することができる。陰性的中率は、診断方法、システム、又はコードの特性だけでなく解析される母集団内の疾患の有病率によっても決定される。統計的アルゴリズムは、或る疾患の有病率を有する母集団における陰性的中率が約70%〜約90%の範囲内であり、そして、例えば、少なくとも約70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%であることができるように選択することができる。
「陽性的中率」又は「PPV」という用語は、IBD又はその臨床的サブタイプに罹患していると同定された小児個体が実際に当該疾患に罹患している確率をいう。陽性的中率は、真陽性及び偽陽性の合計で真陽性を割った数値として計算することができる。陽性的中率は、診断方法、システム、又はコードの特性だけでなく解析される母集団内の疾患の有病率によっても決定される。統計的アルゴリズムは、或る疾患の有病率を有する母集団における陽性的中率が約80%〜約99%の範囲であり、そして、例えば、少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%であることができるように選択することができる。
陰性的中率及び陽性的中率を含む的中率は、解析される母集団内の疾患の有病率に影響される。本発明の方法、システム、及びコードにおいて、特定のIBD有病率の臨床的母集団について望ましい臨床的パラメータを生成するように統計的アルゴリズムを選択することができる。例えば、学習統計的分類子システムは、例えば、臨床医の診療室、例えば、胃腸科専門医の診療室又は一般開業医の診療室で見ることができる、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、又は70%までのIBD有病率に対して選択することができる。
「全体的一致」又は「総体的的確性」という用語は、本明細書中で用いる場合、本発明の方法、システム、又はコードが病状を分類する場合の的確性をいう。総体的的確性は、試料結果の総数で真陽性及び真陰性を割った合計として計算され、そして解析される母集団内の疾患の有病率によって影響される。例えば、統計的アルゴリズムは、或る疾患の有病率を有する患者母集団における総体的的確性が少なくとも約60%であり、そして、例えば、少なくとも約65%、70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%であることができるように選択することができる。
《VII.疾患分類システム》
図1は、本発明の1つの態様による疾患分類システム(DCS)(100)を表す。図1に示すように、DCSは、プロセッサ(115)及びメモリモジュール(110)を備えた、DCSインテリジェンスモジュール(105)、例えば、コンピュータを含む。インテリジェンスモジュールは、1つ又は2つ以上の直接接続(direct connection)(例えば、USB、Firewire、又は他のインターフェース)及び1つ又は2つ以上のネットワーク接続(例えば、モデム又は他のネットワークインターフェース機器を含む)を通じて情報を送信及び受信するための通信モジュール(図示せず)も含む。メモリモジュールは、内部メモリ装置及び1つ又は2つ以上の外部メモリ装置を含んでいることができる。インテリジェンスモジュールは、ディスプレイモジュール(125)、例えば、モニター又はプリンターも含んでいる。1つの観点において、インテリジェンスモジュールは、データ、例えば、直接接続を介して又はネットワーク(140)を通じて、データ収集モジュール、例えば、試験システム(150)からの患者試験結果、を受け取る。例えば、試験システムは、1つ又は2つ以上の患者試料(155)についてマルチアナライト(multianalyte)試験を行いそしてその試験結果をインテリジェンスモジュールに自動的に提供するように構成することができる。データは、ユーザーによる直接入力を介してインテリジェンスモジュールに提供することもでき、又はポータブル媒体、例えば、コンパクトディスク(CD)又はデジタル多用途ディスク(DVD)からダウンロードすることができる。試験システムは、インテリジェンスモジュールに直結させて、インテリジェンスモジュールと統合させることができ、又はネットワークを通じてインテリジェンスモジュールとリモート結合させることができる。インテリジェンスモジュールは、周知であるようなネットワークを通じて1つ又は2つ以上のクライアントシステム(130)へ及びそこからデータ通信することもできる。例えば、要求中の医師又はヘルスケア提供者は、クライアントシステム(130)を用いて、研究室又は病院に置かれている(resident)ことができるインテリジェンスモジュールからレポートを取得及び閲覧することができる。
ネットワークは、LAN(ローカルエリアネットワーク)、WAN(ワイドエリアネットワーク)、ワイヤレスネットワーク、地点間ネットワーク、スター型ネットワーク、トークンリングネットワーク、ハブネットワーク、又は他の構成であることができる。現在用いられているネットワークの最も一般的な型は、TCP/IP(伝送制御プロトコール及びインターネットプロトコール)ネットワーク、例えば、大文字の「I」を用いて「Internet」と頻繁に呼ばれるネットワークのグローバルインターネットワークであり、本明細書中の多くの例に用いられるが、本発明で使用することができるネットワークは、現在のところTCP/IPが好ましいプロトコールであるがこれに限定されないことを理解されたい。
図1に示したシステムのいくつかの要素は、本明細書において詳細に説明することを必要としない通常の周知である要素を含んでいることができる。例えば、インテリジェンスモジュールは、デスクトップパーソナルコンピュータ、ワークステーション、メインフレーム、ラップトップ等として実装されていることができる。各クライアントシステムは、デスクトップパーソナルコンピュータ、ワークステーション、ラップトップ、PDA、携帯電話、又はあらゆるWAP対応装置、又はInternet若しくは他のネットワークに直接又は間接的にインターフェースで接続することができる他のあらゆる計算装置を含んでいることができる。クライアントシステムは、典型的には、HTTPクライアント、例えば、ブラウジングプログラム、例えば、MicrosoftのInternet Explorer(商標)ブラウザ、NetscapeのNavigator(商標)ブラウザ、Operaのブラウザ、又は携帯電話、PDA若しくは他のワイヤレス装置の場合にはWAP対応ブラウザ等を実行して、クライアントシステムのユーザーがネットワークを通じてインテリジェンスモジュールからユーザーに利用可能な情報及びページにアクセス、処理、及び閲覧することができるようにする。それぞれのクライアントシステムは、典型的には、インテリジェンスモジュールによって提供されるページ、フォーム、及び他の情報と共に、ディスプレイ(例えば、モニター画面、LCDディスプレイ等)(135)上のブラウザによって提供されるグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)と接触するために、1つ又は2つ以上のユーザーインターフェース機器、例えば、キーボード、マウス、タッチスクリーン、ペン等も含んでいる。前記のように、本発明は、ネットワークの特定のグローバルインターネットワークを含むInternetを用いて使用するのに適している。しかしながら、Internetの代わりに他のネットワーク、例えば、イントラネット、エクストラネット、バーチャル私設ネットワーク(VPN)、非TCP/IPベースネットワーク、あらゆるLAN又はWAN等を用いることができるのは理解されよう。
1つの態様によれば、各クライアントシステム及びその要素の全ては、中央処理装置、例えば、Intel Pentiumプロセッサ等を用いて実行されるコンピュータコードを含むアプリケーション、例えば、ブラウザを用いてオペレータ設定可能である。同様に、インテリジェンスモジュール及びその要素の全ては、中央処理装置(115)、例えば、Intel Pentiumプロセッサ等、又は複数のプロセッサユニットを用いて実行されるコンピュータコードを含むアプリケーションを用いてオペレータ設定可能とすることができる。本明細書に記載のデータ及び試験結果を処理するインテリジェンスモジュールを操作及び設定するためのコンピュータコードは、好ましくは、ダウンロードされそしてハードディスクに記憶されるが、そのプログラムコード全体又はその一部は、任意の他の周知であるような揮発性又は不揮発性のメモリ媒体又は装置、例えば、ROM又はRAMに記憶させることもでき、又はプログラムコードを記憶させることができる任意の他のコンピュータ可読媒体(160)、例えば、コンパクトディスク(CD)媒体、デジタル多用途ディスク(DVD)媒体、フロッピーディスク、ROM、RAM等に与えることもできる。
本発明の種々の観点及び態様を実行するためのコンピュータコードは、コンピュータシステム、例えば、C、C++、C#、HTML、Java、JavaScriptにおいて実行することができる任意のプログラミング言語、又は任意の他のスクリプト言語、例えば、VBScriptで実行することができる。さらに、プログラムコード全体又はその一部は、Internetを通じて、又は任意の周知である通信媒体及びプロトコール(例えば、TCP/IP、HTTP、HTTPS、Ethernet等)を用いて任意の他の周知である通常のネットワーク接続(例えば、エクストラネット、VPN,LAN等)を通じて、ソフトウェアソース(例えば、サーバー)から伝送及びダウンロードすることができるキャリアシグナル(carrier signal)として具現化することができる。
1つの態様によれば、インテリジェンスモジュールは、患者試験結果を解析して患者試料がIBD又はその臨床的サブタイプと関連しているか否かを決定するための疾患分類処理を実行する。データは、インテリジェンスモジュールと結合されたセパレート型の記憶又はデータベースシステム又はメモリ(110)内の1つ又は2つ以上のデータテーブル又は他の論理データ構造に記憶させることができる。患者試料についての試験データを含むデータ集合に、統計処理を適用する。1つの観点において、例えば、試験データは、患者試料の少なくとも1種のマーカーの存在又はレベルを示すデータを含む。統計処理は、当該少なくとも1種のマーカーの存在又はレベルに基づいて患者試料をIBD(例えば、CD又はUC)試料又は非IBD試料と分類する統計的に導き出された決定を生成する。統計的に導き出された決定は、インテリジェンスモジュールと関連づけられた又は結合されたディスプレイ装置上に表示することができ、又は前記決定は、セパレートシステム、例えば、クライアントシステム(130)に提供されそしてそこで表示させることができる。表示された結果は、医師が妥当な診断を行なうことを可能とする。
《VIII.治療及び治療モニタリング》
小児個体由来の試料がIBD(例えば、CD又はUC)試料と分類された後は、本発明の方法、システム、及びコードはさらにその小児個体にIBD又はIBDサブタイプと関連した1種又は2種以上の症状を治療するのに有効な薬剤の治療的有効量を投与することを含んでいることができる。治療のために、IBD薬は、単独で投与することができ、又は1種若しくは2種以上の追加のIBD薬及び/又はIBD薬と関連した副作用を軽減する1種若しくは2種以上の薬剤と組み合わせて同時投与することができる。
IBD薬は必要に応じて適当な薬学的賦形剤と共に投与することができ、そして任意の許容された投与方法によって実施することができる。このように、投与は、例えば、静脈内、局所的、皮下、経皮的(transcutaneous)、経皮的(transdermal)、筋肉内、経口、バッカル(buccal)、舌下、歯肉、口蓋、関節内(intra-joint)、非経口、細動脈内(intra-arteriole)、皮内、心室内(intraventricular)、頭蓋内、腹腔内、病巣内、鼻腔内、直腸内、腟内、又は吸入によるものであることができる。「同時投与する」とは、第二薬剤(例えば、別のIBD薬、IBD薬の副作用を軽減するのに有効な薬剤等)の投与と同時に、その直前に、又はその直後にIBD薬を投与することを意味する。
治療的有効量のIBD薬は、繰り返して、例えば、少なくとも2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、又は9回以上にわたり投与することができ、又はその用量を持続点滴によって投与することができる。投与は、固体、半固体、凍結乾燥粉末、又は液体の剤形、例えば、錠剤、丸剤、ペレット剤、カプセル剤、散剤、水剤、懸濁液、乳濁液、坐剤、停留かん腸、クリーム、軟膏、ローション、ゲル、エアロゾル、フォーム等の形態を、好ましくは、正確な用量の単一の投与に適した単位剤形において、とることができる。
「単位剤形」という用語は、本明細書中で用いる場合、ヒト対象者及び他の動物に対する単位用量として適当な物理的に分離した単位を含み、各単位は望ましい作用発現、忍容性(tolerability)、及び/又は治療効果を生ずるように計算されたIBD薬の所定量を、適当な薬学的賦形剤と共に含む(例えば、アンプル)。さらに、より濃縮された剤形を製造することができ、次にその剤形からより希釈された単位剤形を調製することができる。このように、より濃縮された剤形は、IBD薬の量より実質的に多い量、例えば、少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、又はそれを超える倍数の量を含む。
前記のような剤形を製造する方法は、当業者に公知である(例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18TH ED., Mack Publishing Co., Easton, PA (1990)参照)。剤形は、典型的には、通常の薬学的担体又は賦形剤を含みそしてさらに他の薬剤、担体、アジュバント、希釈剤、組織透過促進剤(tissue permeation enhancer)、及び可溶化剤等を含んでいることができる。適切な賦形剤は、当該技術分野で周知の方法によって特定の剤形及び投与経路に合わせることができる(例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICALSCIENCES参照、前出)。
適当な賦形剤の例として、限定的でなく、ラクトース、デキストロース、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、生理食塩水、シロップ、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリアクリル酸、例えば、Carbopol、例えば、Carbopol 941、Carbopol 980、Carbopol 981等を挙げることができる。剤形はさらに、潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱油;湿潤剤;乳化剤;懸濁剤;保存剤、例えば、メチル−、エチル−、及びプロピル−ヒドロキシ−ベンゾエート(すなわち、パラベン);pH調整剤、例えば、無機及び有機の酸及び塩基;甘味料;及び香味料を含んでいることができる。剤形は、生分解性ポリマビーズ、デキストラン、及びシクロデキストリン包接錯体も含んでいることができる。
経口投与について、治療的に有効な投与は、錠剤、カプセル剤、乳濁液、懸濁液、水剤、シロップ剤、噴霧剤、ロゼンジ、散剤、及び徐放性製剤の形態であることができる。経口投与に適した賦形剤として、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカン、セルロース、グルコース、ゼラチン、ショ糖、及び炭酸マグネシウム等を挙げることができる。
或る態様において、治療的に有効な投与は、丸剤、錠剤、又はカプセル剤の形態をとり、そしてこのように、剤形はIBD薬と共に以下のいずれかを含んでいることができる:希釈剤、例えば、ラクトース、ショ糖、リン酸二カルシウム等;崩壊剤、例えば、デンプン又はその誘導体;潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム等;及び結合剤、例えば、デンプン、アカシアガム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロース及びその誘導体。IBD薬は、坐剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)担体中に配置された(disposed)坐剤に製剤化することもできる。
液体剤形は、担体、例えば、水性生理食塩水(例えば、塩化ナトリウム0.9%w/v)、水性デキストロース、グリセロール、エタノール等の中にIBD薬及び場合により1種又は2種以上の薬学的に許容することのできるアジュバントを溶解又は分散させて、例えば、経口、局所、又は静脈内投与のための、溶液又は懸濁液を形成することにより製造することができる。IBD薬は、停留かん腸に製剤化することもできる。
局所的投与について、治療的に有効な投与は、乳濁液、ローション、ゲル、フォーム、クリーム、ゼリー、水剤、懸濁液、軟膏、及び経皮パッチの形態であることができる。吸入による投与について、IBD薬は乾燥粉末として又はネブライザーを介する液体の形態で送ることができる。非経口的投与について、治療的に有効な投与は、滅菌した注射用溶液及び滅菌包装された散剤の形態であることができる。好ましくは、注射用溶液は、pH約4.5〜約7.5で製剤化される。
治療的に有効な投与は、凍結乾燥された形態で提供することもできる。かかる剤形は、投与前の再構成のために、緩衝剤、例えば、炭酸水素塩を含んでいることができ、又は例えば、水による再調製用の凍結乾燥の剤形中に緩衝剤を含んでいることができる。凍結乾燥の剤形はさらに、適当な血管収縮剤、例えば、エピネフリンを含んでいることができる。凍結乾燥の剤形は、場合により、再構成される剤形を直ちに小児個体に投与することができるように再構成用の緩衝剤と一緒に包装された、シリンジにより提供することができる。
IBD又はその臨床的サブタイプの処置のための治療用途において、IBD薬は、初回投与量一日当たり約0.001mg/kg〜約1000mg/kgで投与することができる。一日量範囲で約0.01mg/kg〜約500mg/kg、約0.1mg/kg〜約200mg/kg、約1mg/kg〜約100mg/kg、又は約10mg/kg〜約50mg/kgを用いることができる。しかしながら、投与量は、小児個体、IBD症状の重症度、及び用いられるIBD薬の要件に基づいて変化させることができる。例えば、本明細書に記載の方法に従ってIBD罹患と分類された小児個体のIBD症状の重症度を考慮して投与量を経験的に決定することができる。本発明に照らせば、小児個体に投与される用量は、その小児個体において経時的に有利な治療反応を与えるのに充分な量であるべきである。投与量の大きさは、小児個体における特定のIBD薬の投与に伴う任意の有害な副作用の存在、性質、及び程度によって決定することもできる。特定の状況に対して適正な用量の決定は、医師の技能の範囲内である。一般に、治療は、IBD薬の最適用量より少ない低用量から開始される。その後、状況に応じて最適な効果が達成されるまで用量は少しずつ増やされる。便宜のために、望ましい場合には、一日量全体をその一日間でいくつかの部分に分けて投与することができる。
「IBD薬」という用語は、本明細書中で用いる場合、IBDに関連した1種又は2種以上の症状を治療するのに有効な薬学的に許容することのできるすべての形態の薬剤を含む。例えば、IBD薬は、ラセミ又は異性体混合物、又はイオン交換樹脂に結合された固体錯体(solid complex)等であることができる。さらに、IBD薬は溶媒和型であることができる。この用語はまた、記載されたIBD薬の薬学的に許容することのできるすべての塩、誘導体、及び類似体だけでなく、それらの組み合わせも含むように意図される。例えば、IBD薬の薬学的に許容することのできる塩として、限定的でなく、酒石酸塩、コハク酸塩、タルタレート(tartarate)、バイタルタレート(bitartarate)、ジヒドロクロリド、サリチル酸塩、ヘミコハク酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、塩酸塩、カルバミン酸塩、カルバメート、硫酸塩、硝酸塩、及びそれらの安息香酸塩型だけでなく、それらの組み合わせ等も挙げることができる。任意の型のIBD薬、例えば、IBD薬の薬学的に許容することのできる塩、IBD薬の遊離塩基、又はそれらの混合物が本発明の方法に用いるのに適している。
IBD又はその臨床的サブタイプと関連した1種又は2種以上の症状を治療するのに有効である適当な薬剤として、限定的でなく、アミノサリチレート(例えば、メサラジン、スルファサラジン等)、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン)、チオプリン(例えば、アザチオプリン、6−メルカプトプリン等)、メトトレキサート、モノクローナル抗体(例えば、インフリキシマブ)、それらの遊離塩基、それらの薬学的に許容することのできる塩、それらの誘導体、それらの類似体、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。本発明に用いるのに適当なさらなるIBD薬があることは当業者に公知であろう(例えば、Sands, Surg. Clin. North Am., 86:1045-1064 (2006);Danese et al., Mini Rev. Med. Chem., 6:771-784 (2006);Domenech, Digestion, 73 (Suppl. 1):67-76 (2006);Nakamura et al., World J. Gastroenterol., 12:4628-4635 (2006);及びGionchetti et al., World J. Gastroenterol., 12:3306-3313 (2006)参照)。
小児個体由来の試料がIBD(例えば、CD又はUC)試料と分類された後は、所定の治療方式の効果を評価するために周期的な時間間隔で小児個体をモニターすることもできる。例えば、所定のマーカーのレベルは、処置、例えば、薬剤の治療効果に基づいて変化する。患者をモニターして反応を評価し、そして個別のアプローチによる所定の薬剤又は処置の効果を理解する。さらに、患者は薬剤に反応しないこともあるが、マーカーは変化することがあり、このことは、これらの患者がそのマーカーレベルにより同定することができる(反応を示さない)特別な集団に属することを示唆する。これらの患者には、現在の治療を中止し、そして代わりの治療を処方することができる。
《IX.実施例》
以下の実施例は、限定的な意図でなく、特許請求の範囲に記載の発明を説明するために提供するものである。
《実施例1.ANCAレベルの測定》
この実施例は、ELISA分析を用いた試料中のANCAレベルの分析を説明する。
固定化好中球酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いて、Saxon et al., J. Allergy Clin. Immunol., 86:202-210 (1990)に記載のようにANCAを検出した。簡潔には、フィコール−ハイパック遠心法により精製されたヒト末梢血由来の好中球ウェル当たり2.5×10個でマイクロタイタープレートをコーティングし、そして100%メタノールで10分間処理して細胞を固定化した。リン酸緩衝生理食塩水中0.25%ウシ血清アルブミン(BSA)を用いて加湿チャンバー内で室温において60分間細胞をインキュベートして非特異的抗体結合をブロックした。次いで、ウシ血清/リン酸緩衝生理食塩水のブロッキング緩衝液に対照及びコード化血清を1:100希釈で添加し、そして加湿チャンバー内で室温において60分間インキュベートした。アルカリホスファターゼ標識ヤギF(ab’)抗ヒト免疫グロブリンG抗体(γ鎖特異的;Jackson Immunoresearch Labs社;West Grove,Pa.)を1:1000希釈で添加して好中球結合抗体を標識し、そして室温で60分間インキュベートした。p−ニトロフェノールホスフェート基質の溶液を添加し、そしてポジティブコントロールのウェルにおける405nmの吸光度がブランクウェルにおける吸光度より大きな、0.8〜1.0光学濃度単位まで発色を進行させた。
規定のELISA単位(EU)値を有するキャリブレーターと共に20の検証済みの(verified)ネガティブコントロール試料のパネルを用いた。各ELISA実行に対してベースとなるポジティブ/ネガティブカットオフ値は、キャリブレーター(Calibrator)の光学濃度(OD)から20のネガティブのパネルの平均値(OD)(標準偏差2つ分を加算(plus 2 standard deviations))を引いた値にキャリブレーターのEU値を乗じた値と規定した。従って、ANCA反応性に対するベースカットオフ値は約10〜20EUであり、ベースカットオフ値より大きい平均EU値を有する患者試料はいずれも、ANCA反応性に対してELISA陽性とした。同様に、平均EU値を有する患者試料がベースカットオフ値以下である場合は、ANCA反応性について陰性であると決定する。
《実施例2.pANCAの存在の測定》
本実施例は、例えば、米国特許第5,750,355号及び第5,830,675号に記載のように蛍光免疫測定法を用いて試料中のpANCAの有無を分析することを説明する。とりわけ、pANCAの存在は、DNaseを用いた好中球の処理後の陽性値の欠如(例えば、検出可能な抗体マーカー及び/又は対照と比較した場合の特異的な細胞の染色パターンの欠如)について測定することによって検出される。
以下のプロトコールに従って、試料、例えば、血清から単離された好中球をガラススライド上に固相化する:
1.充分な容積の1Xハンクス平衡塩類溶液(HBSS)中に好中球を再懸濁させて細胞約2.5×10個/mLを達成する。
2.Cytospin3遠心分離機(Shandon社;Pittsburgh,PA)を500rpmで5分間用いて、再懸濁させた好中球0.01mLを各スライドに付与する。
3.試料を覆うのに充分な容積の100%エタノール中でスライドを10分間インキュベートすることによりスライドに好中球を固定化する。空気乾燥させる。スライドは−20℃で保存することができる。
次いで、以下のようにDNaseを用いて、固相化された固定化好中球を処理する:
1.トリス−HCl(pH7.9)40mM、塩化ナトリウム10mM、塩化マグネシウム6mM、及び塩化カルシウム10mMを含む緩衝液1mL当たりにPromega RQ1(商標)DNase(Promega;Madison,WI)3単位を混合することによりDNase溶液を調製する。
2.リン酸緩衝生理食塩水(pH7.0〜7.4)約100mLを用いて、前記プロトコールを用いて調製したスライドを5分間リンスする。各スライド当たりDNase溶液0.05mL中で37℃において約30分間、固相化された好中球をインキュベートする。リン酸緩衝生理食塩水100〜250mLを用いて室温においてスライドを3回洗浄する。本明細書中に記載のように実施したDNase反応は、核又は細胞の好中球の形態に有意な変化を起こすことなく細胞のDNAの実質的に完全な消化を生じさせる。
次いで、DNase処理した固定化好中球について以下のプロトコールに従って蛍光免疫測定を実施する:
1.DNaseで処理したスライド及び処理していないスライドに、リン酸緩衝生理食塩水中の1:20希釈のヒト血清0.05mLを添加する。ブランクとしてクリーンなスライドにリン酸緩衝生理食塩水0.05mLを添加する。容積損失を最小にするのに充分な湿度において室温で約0.5〜1.0時間インキュベートする。
2.リン酸緩衝生理食塩水100〜250mLを含む容器に浸漬することによって血清を洗い流す。
3.リン酸緩衝生理食塩水中に5分間スライドを浸漬する。軽く吸い取って乾かす。
4.希釈度1:1000の抗体:リン酸緩衝生理食塩水の、ヤギF(ab’)抗ヒトIgG(μ)−FITC(Tago Immunologicals;Burlingame,CA)0.05mLを各スライドに添加する。容積損失を最小にするのに充分な湿度において室温で30分間インキュベートする。
5.リン酸緩衝生理食塩水100〜250mLを用いて抗体を洗い流す。リン酸緩衝生理食塩水100〜250mL中に5分間スライドを浸漬し、次いで空気乾燥させる。
6.蛍光顕微鏡により40Xで蛍光パターンを読む。
7.望ましい場合には、リン酸緩衝生理食塩水を用いて室温で充分にスライドをリンスし、そして室温で10秒間染色することによりヨウ化プロピジウム染色試薬によってDNAを染色することができる。リン酸緩衝生理食塩水100〜250mLを用いて室温においてスライドを3回洗浄し、そしてカバーガラスを乗せる。
前記蛍光免疫測定法を用いて、例えば、DNase処理後に廃棄される(abolished)対照の好中球(すなわち、DNase処理されなかった固定化好中球)におけるpANCA反応の存在によって、又はDNase処理後に細胞質になる(become cytoplasmic)対照の好中球におけるpANCA反応の存在によって、DNase処理された固定化好中球中のpANCAの存在を測定することができる。
《実施例3.ASCAレベルの測定》
本実施例は、酵母細胞ウェル(well)マンナンの調製及びELISA分析を用いた試料中のASCAレベルの分析を説明する。
Faille et al., Eur. J. Clin. Microbiol. Infect. Dis., 11:438-446 (1992)及びKocourek et al., J. Bacteriol., 100:1175-1181 (1969)に記載のように、酵母細胞壁マンナンを調製した。簡潔には、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(#38926)から酵母サッカロミセス・ウヴァラム(Saccharomyces uvarum)の凍結乾燥ペレットを入手した。Sambrook et al., In “Molecular Cloning,” Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)に従って調製した、2xYT培地10mL中に酵母を再構成した。S.ウヴァラムを30℃で2〜3日間増殖させた。最終的なS.ウヴァラム培養物を2xYT寒天板に接種し、そして続いて30℃で2〜3日間増殖させた。単一コロニーを用いて2xYT培地500mLに接種し、そして30℃で2〜3日間増殖させた。蒸留水1リットル当たりグルコース20g、バクト酵母エキス2g、MgSO0.25g、及び28%HPO2.0mLを添加することにより発酵培地(pH4.5)を調製した。培養液500mLを用いて発酵培地50リットルに接種し、そして培養物を37℃で3〜4日間発酵させた。
各細胞ペースト100gに0.02Mクエン酸緩衝液(クエン酸ナトリウム5.88g/L;pH7.0±0.1)50mLを添加することにより、S.ウヴァラムのマンナン抽出物を調製した。細胞/クエン酸塩混合物を125℃で90分間オートクレーブし、そして冷却に付した。5000rpmで10分間遠心分離した後、その上清を取り出し、そして保持した。次いで、0.02Mクエン酸緩衝液75mLを用いて細胞を洗浄し、そして細胞/クエン酸塩混合物を再度125℃で90分間オートクレーブした。この細胞/クエン酸塩混合物を5000rpmで10分間遠心分離し、そしてその上清を保持した。
銅/マンナン複合体を沈殿させるために、一緒にした上清に攪拌しながら等しい容積のフェーリング溶液を添加した。完全フェーリング溶液は、使用直前にフェーリング溶液Aをフェーリング溶液Bと1:1の比率で混合することにより調製した。銅複合体を沈殿させ、そしてその沈殿から液体を静かにデカンタした。次いで、この銅/マンナン沈殿複合体を酵母ペースト100g当たり3N HCl6〜8mL中に溶解させた。
得られた溶液を強攪拌下に8:1のメタノール:酢酸100mL中に注ぎ、そして数時間にわたり沈殿を沈降させた。その上清をデカンタして廃棄し、次いで上澄が無色になるまで、約2〜3回、洗浄過程を繰り返した。沈殿物を焼結ガラス漏斗上に集め、メタノールで洗浄し、そして一晩空気乾燥させた。場合によっては、5000rpmで10分間の遠心分離により沈殿物を集めた後、メタノールで洗浄し、そして一晩空気乾燥させた。乾燥させたマンナン粉末を、約2g/mLの濃度まで蒸留水に溶解させた。
S.ウヴァラムマンナンELISAを用いてASCAを検出した。以下のようにS.ウヴァラムマンナンELISAプレートを抗原で飽和させた。前記のように調製した精製S.ウヴァラムマンナンを、リン酸緩衝生理食塩水/0.2%アジ化ナトリウムで100μg/mLの濃度に希釈した。マルチチャンネル・ピペッターを用いて、Costar96穴ハイバインディングプレート(カタログ番号3590;Costar社、Cambridge,Mass.)の1ウェル当たり100μg/mLのS.ウヴァラムマンナン100μLを添加した。最低12時間にわたり、4℃において抗原でプレートをコーティングした。プレートの各ロットを、使用前に先のロットと比較した。プレートは1ヶ月間まで2〜8℃で保存した。
ASCA−IgA又はASCA−IgG反応性について、患者血清を2連で分析した。前記のように抗原で飽和されたマイクロタイタープレートを、リン酸緩衝生理食塩水/0.05%ツイーン20と共に室温で45分間インキュベートして非特異的な抗体結合を阻害した。次いで、ASCA−IgAの分析の場合は1:80の希釈率でそしてASCA−IgGの分析の場合は1:800の希釈率で患者血清を添加し、そして室温で1時間インキュベートした。PBS/0.05%ツイーン20でウェルを3回洗浄した。次いで、1:1000希釈のアルカリホスファターゼ標識ヤギ抗ヒトIgA(Jackson Immunoresearch;West Grove,Pa.)又は1:1000希釈のアルカリホスファターゼ標識ヤギ抗ヒトIgGF(ab’)(Pierce;Rockford,Ill.)を添加し、そして室温で1時間このマイクロタイタープレートをインキュベートした。ジエタノールアミン中のp−ニトロフェノールホスフェート基質緩衝液の溶液を添加し、そして10分間にわたり発色を進行させた。自動EMAXプレートリーダー(Molecular Devices;Sunnyvale,Calif.)を用いて405nmにおける吸光度を分析した。
ASCA−IgA及びASCA−IgGに対するベースカットオフ値を決定するために、固定EU値を有するシングルポイントキャリブレーターを用いた。患者試料のOD値を当該キャリブレーターのOD値と比較し、そしてキャリブレーターに割り当てられた値(calibrator assigned values)を掛けた。ASCA−IgA ELISAのベースカットオフ値は20EUであった。ASCA−IgGのベースカットオフ値は40EUであった。
《実施例4.抗OmpC抗体レベルの測定》
本実施例は、OmpCタンパク質の調製及びELISAアッセイ分析を用いた試料中の抗OmpC抗体レベルの分析を説明する。
以下のプロトコールは、スフェロプラスト溶解を用いたOmpCタンパク質の精製を表す。100μg/mLストレプトマイシン補充Luria Bertani培地(LB−Strep;Teknova;Half Moon Bay,Calif.)10〜20mL中にグリセロールストックからOmpF/OmpA変異体E.Coliを接種し、そして対数期まで37℃で約8時間激しく(vigorously)培養し、その後25℃で15時間にわたりLB−Strep中で1リットルまで増やした。遠心分離によって細胞を収穫した。必要により、氷冷20mMトリス−Cl(pH7.5)100mLで2回、細胞を洗浄した。続いて、氷冷のスフェロプラスト形成性緩衝液(20mMトリス−Cl、pH7.5;20%ショ糖;0.1M EDTA、pH8.0;1mg/mLリゾチーム)中に細胞を再懸濁させ、その後、時折混合を反転させながら約1時間、氷上で再懸濁させた細胞をインキュベートした。必要により、スフェロプラストを遠心分離し、そして小容積のスフェロプラスト形成性緩衝液(SFB)中に再懸濁させた。場合により、溶解効率を高めるために再懸濁の前にスフェロプラストペレットを凍結させた。溶解の効率を有意に低下させるスフェロプラストの破裂及び染色体DNAの放出を避けるために、低張緩衝液の使用は避けた。
1mg/mLのDNaseIを含む氷冷10mMトリス−Cl(pH7.5)中でスフェロプラスト調製物を14倍に希釈し、そして激しくボルテックスした。試料を泡立て又は過熱することなく、1秒間のパルス「オンタイム(On time)」により、設定値4において50%出力で4×30秒間、氷上で調製物を超音波処理した。遠心分離によって細胞片をペレット化し、そしてその上清を取り出し2回遠心処理することにより清澄化した。ペレットのいずれの部分も回収することなく上清を取り出し、そして超遠心チューブに入れた。この超遠心チューブをその頂部から1.5mmまで20mMトリス−Cl(pH7.5)で充填した。Beckman SW 60スウィング型ローターにより4℃において1時間100,000×gで超遠心分離することにより膜調製物(membrane preparation)をペレット化した。1mL容ピペットチップを用い、そしてペレット近くで液を噴出させた後に遠心管当たり約10分間上下にピペット操作して20mMトリス−Cl(pH7.5)中にペレットを均質化させることによってペレットを再懸濁させた。1%SDS含有20mMトリス−Cl(pH7.5)中で1時間、37℃において回転下に物質を抽出した。その調製物を超遠心チューブに移し、そして膜を100,000×gでペレット化した。前記のように20mMトリス−Cl(pH7.5)中にペレットを均質化させることによりペレットを再懸濁させた。場合により、膜調製物は4℃で一晩放置した。
3%SDS及び0.5M NaClを含む20mMトリス−Cl(pH7.5)中で37℃において回転下に1時間OmpCを抽出した。物質を超遠心チューブに移し、そして100,000×gの遠心分離によって膜をペレット化した。次いで、抽出されたOmpCを含む上清を、10,000容積を超える容積に対して透析を行ない高い塩分を除去した。0.2%Tritonに対する洗浄剤交換によりSDSを除去した。50mMトリス−Clに対するさらなる透析によりTritonを除去した。三量体の形態でポリンとして機能する精製されたOmpCを、SDS−PAGEによって分析した。室温での電気泳動により、約100kDa、約70kDa、及び約30kDaのバンドのラダーを生じた。65〜70℃で10〜15分間の加熱により複合体は部分的に解離し、そして二量体及び単量体(すなわち、約70kDa及び約30kDaのバンド)のみが生じた。5分間の煮沸により38kDaの単量体が生じた。
本質的に以下のようにしてOmpC直接ELISA分析を行なった。ホウ酸緩衝生理食塩水(pH8.5)中0.25μg/mLのOmpC100μL/ウェルを用いて、4℃で一晩プレート(USA Scientific;Ocala,Fla.)をコーティングした。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中0.05%Tween20による3回の洗浄後、PBS(pH7.4)中0.5%ウシ血清アルブミン(BSA−PBS)150μL/ウェルを用いて室温で30分間プレートをブロックした。次いで、ブロッキング溶液を、1:100希釈のクローン病又は正常対照の血清100μL/ウェルと交換した。次いで、室温で2時間プレートをインキュベートし、そして前記のように洗浄した。BSA−PBS中1:1000の希釈率のアルカリホスファターゼ標識ヤギ抗ヒトIgA(α鎖特異的)、又はIgG(γ鎖特異的)(Jackson ImmunoResearch;West Grove,Pa.)をプレートに添加した。室温で2時間このプレートをインキュベートした後、0.05%Tween20/PBSで3回洗浄し、続けてトリス緩衝規定生理食塩水(pH7.5)でさらに3回洗浄した。基質溶液(2.5mM MgCl、0.01Mトリス(pH8.6)中1.5mg/mLのp−ニトロフェノールリン酸二ナトリウム(Aresco;Solon,Ohio))を100μL/ウェルで添加し、そして1時間、発色させた。次いで、405nmでプレートを分析した。IgA OmpC陽性反応性は、試験試料と同時に分析した対照(正常)血清について得られた平均の反応性から標準偏差2つ分(two standard deviations)以上より大きい反応性と定義した。
《実施例5.抗I2抗体レベルの測定》
本実施例は、組換えI2タンパク質の調製及びELISA分析又は組織学的分析を用いた試料中の抗I2抗体レベルの分析を説明する。
全長I2をコードした核酸配列をGST発現ベクターpGEX中にクローニングした。E.Coli中での発現後、タンパク質をGSTカラム上で精製した。精製したタンパク質は、銀染色により予想された分子量を有していることが示され、そしてウェスタンブロット分析において抗GST反応性を有していた。
希釈した患者又は健常者の血清を用いてGST−I2融合ポリペプチドによりELISA分析を実施した。GST単独に対する反応性を減算した後の反応性を測定した。種々の希釈率のクローン病(CD)血清及び健常個体由来の血清をGST−I2融合ポリペプチドに対するIgG反応性について測定した。1:100〜1:1000の希釈率で、正常の血清と比較して有意に高い抗I2ポリペプチド反応性がCD血清について見られた。これらの結果は、I2タンパク質が正常の血清と比べてCD血清と特異的に反応性であることを示す。
本質的に以下のようにして直接ELISA分析により、GST−I2融合ポリペプチドに結合するヒトIgA及びIgG抗体を検出した。GST−I2融合ポリペプチド(ホウ酸緩衝生理食塩水(pH8.5)中5μg/mL)100μL/ウェルを用いて、4℃で一晩、プレート(Immulon3;;DYNEX Technologies;Chantilly,Va.)をコーティングした。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中0.05%Tween20で3回洗浄した後、PBS(pH7.4)中0.5%ウシ血清アルブミン(BSA−PBS)150μL/ウェルを用いて室温で30分間プレートをブロックした。次いで、ブロッキング溶液を、1:100希釈のCD血清、潰瘍性大腸炎(UC)血清、又は正常の対照血清100μL/ウェルと交換した。次いで、室温で2時間プレートをインキュベートし、そして前記のように洗浄した。アルカリホスファターゼ標識二次抗体(ヤギ抗ヒトIgA(α鎖特異的);Jackson ImmunoResearch;West Grove,Pa.)をBSA−PBS中1:1000の希釈率でIgAプレートに添加した。IgG反応性に対しては、アルカリホスファターゼ標識二次抗体(ヤギ抗ヒトIgG(γ鎖特異的);Jackson ImmunoResearch)を添加した。室温で2時間プレートをインキュベートした後、0.05%Tween20/PBSで3回洗浄し、続いてトリス緩衝規定生理食塩水(pH7.5)でさらに3回洗浄した。基質溶液(2.5mM MgCl、0.01Mトリス(pH8.6)中1.5mg/mLのp−ニトロフェノールリン酸二ナトリウム(Aresco;Solon,Ohio))を100μL/ウェルで添加し、そして1時間、発色させた。次いで、405nmでプレートを分析した。正常な母集団の平均値より標準偏差2つ分大きいカットオフを用いたところ、10のCD値のうち9つは陽性であり、一方、正常の血清試料はいずれも陽性ではなかった。さらに、10のCD患者試料のうち7つは0.3より大きいOD405値を示し、一方、UC患者又は健常者の試料はいずれもこの測定による陽性を示さなかった。これらの結果は、I2ポリペプチドに対する免疫反応性、とりわけ、IgA免疫反応性を用いてCDを診断することができることを示している。
組織学的分析に対し、抗原として精製GST−I2融合タンパク質を用いてウサギ抗I2抗体を調製した。アガロース支持体(Pierce;Rockford,Ill.)に結合したGSTへの付着(adherence)によってGST結合性抗体を除去し、そしてウサギ血清を、ELISA分析による抗I2免疫反応性に対して検証した。CD、UC、及び正常対照に由来するパラフィン包埋生検材料からスライドを調製した。ヘマトキシリン及びエオシン染色を行なった後、I2特異的抗血清と一緒にインキュベートした。ペルオキシダーゼ標識された抗ウサギ二次抗体(Pierce;Rockford,Ill.)を用いて抗体の結合を検出した。分析は、バックグランドに対するシグナル及びCDと対照母集団との間の差異が最大となるように最適化した。
《実施例6.IBD予測のための組み合わせ的統計的アルゴリズム》
本実施例は、血清学的マーカーのパネルを用いて試料がIBD又はその臨床的サブタイプと関連しているか否かを分類する学習統計的分類子システムを組み合わせることから導かれる診断的アルゴリズムを説明する。
この研究では健常者及び罹患患者に由来する血清学的試料の大きなコホートを用いそしてパネルの種々の抗菌抗体マーカーのレベル及び/又は存在を測定してIBDに罹患した患者を同定し、及びUCとCDとの間を選択的に識別するパネルの診断能力を評価した。或るIBD有病率を有する約2,000例の試料を試験した。血清学的マーカーのパネルは、ANCA、ASCA−IgA、ASCA−IgG、抗OmpC抗体、抗フラジェリン抗体(例えば、抗Cbir−1抗体)、及びpANCAを含んでいた。ANCA、ASCA−IgA、ASCA−IgG、抗OmpC抗体、及び抗フラジェリン抗体のレベルはELISAによって測定した。間接免疫蛍光顕微鏡法を用いて試料がpANCAに対して陽性又は陰性のいずれであるかを測定した。
この研究において、パネルの血清学的マーカーのレベル及び/又は存在に基づいてIBD、CD、又はUCを予測する異なる学習統計的分類子システムのハイブリッドを用いた新規なアプローチを開発した。これらの学習統計的分類子システムは、例えば、複合データに適用することができ、そして通常の統計的分類子の制約なしに、提供されたデータに厳密に基づいて決定を行なうことができる、フィードフォワード・バック・プロパゲーションを備えた多層パーセプトロンのような多変量統計的手法を用いる。とりわけ、2つ以上の学習統計的分類子システムを用いてマーカーを解析することにより複数の判別機能を用いる組み合わせ的アプローチを作って、IBDを診断し、及びUCとCDとの間を識別する感度及び特異度をさらに改善した。最高の的確性で実行されるモデルは、決定/分類木とニューラルネットワークとの組み合わせから導かれるアルゴリズムを用いた。
6種のマーカー(すなわち、ANCAレベル、ASCA−IgAレベル、ASCA−IgGレベル、抗OmpC抗体レベル、抗フラジェリン抗体レベル、及びpANCA陽性又はpANCA陰性;「予測変数」)それぞれからの結果及び患者試料のコホートからの診断(0=正常、1=CD、2=UC;「従属変数1」)を、Statistica Data Mineバージョン7.1(StatSoft社;Tulsa,OK)の分類及び回帰木(C&RT)ソフトウェアモジュールにインプットした。データは訓練用と試験用とに分けた。
訓練用データ集合からのデータを用いて、6種のマーカー全てに関するデフォルト設定(すなわち、標準C&RT)を用いたRT派生モデルを形成した。C&RT法は、ノード及びノードを接続する同等物からなる最適な決定木構造を構築する。「ノード」又は「非終端ノード」又は「非終端ノード値」という用語は、本明細書中で用いる場合、木の決定点(decision point)をいう。「終端ノード」又は「終端ノード値」という用語は、枝又は最終決定を伴わないノンリーフノードをいう。図2は、8個の非終端ノード(A〜H)及び9個の終端ノード(I〜Q)を有するIBD又はその臨床的サブタイプ(例えば、CD又はUC)を診断するC&RT構造の例を提供する。C&RT解析は、各予測に対する確率値も引き出す。これらの確率値は直接にノード値と関連づけられる。ノード値は、各試料の確率値から導かれる。
次いで、NNソフトウェアからIntelligent Problem Solver(IPS)を選択した。終端ノード又は確率値のいずれかを含む、訓練用試料集合からの入力変数を選択した。データに縦列を加えて非IBD(0)又はIBD(1)を同定する別の従属変数を生成した。この縦列は、「診断変数」(0=正常、1=CD、及び2=UC)とは別にNNを訓練するために用いることができる。出力従属変数として診断及びIBD/非IBDを用いた。
図3は、健常者及び罹患患者に由来する血清学的試料のコホートを用いて形成された前記アルゴリズムモデルの要約を提供する。次いで、これらのモデルは、新規患者由来の試料を解析して1種又は2種以上のマーカーの存在又はレベルに基づいてIBDを診断し又はCDとUCとを識別するのに用いることができる。
図3に関して、健常者及び罹患患者から得られた血清学的試料の大きなコホートからのデータベース(300)を用いて、パネルの抗菌抗体マーカーのレベル及び/又は存在を測定して、IBD罹患患者を同定し、そしてUCとCDとの間を選択的に識別するのに用いることができるモデルを作成した。具体的には、各試料について、患者試料のコホートからの6つの入力予測変数(すなわち、前記の6種のIBDマーカー)及び1つの従属変数(すなわち、診断)を、Statistica Data Minerバージョン7.1のC&RTソフトウェアモジュールを用いて処理した。C&RT法から、診断予測、終端ノード値(305)、及び確率値を得た。各試料について終端ノード及び確率値を選択及び保存し、そしてC&RTモデルとして用いるために対応する木(310)を保存してこのアルゴリズムを用いて新規患者由来のデータを処理した。次いで、NNソフトウェアからIntelligent Problem Solverプログラム(320)を用いて、7つ又は9つの入力予測変数(すなわち、前記6つのIBDマーカーに終端ノードを加えたもの、又は3つの確率値を加えたもの)及び従属変数(315)を処理した。1,000のネットワークを作りそしてベスト100のネットワーク(325)を選択及び検証した。これら100のネットワークを、種々の試料を含む試験(330)データベースを用いて検証した。最後に、IBDを診断し及び/又はCDとUCとの間を識別する最高の感度、特異度、陽性的中率、及び/又は陰性的中率を有するものとして最良のNNモデル(335)を選択した。
このアルゴリズムを用いて新規患者由来のデータを処理してIBD、CD、又はUCを予測し及び/又は患者がIBD、CD,又はUCに罹患している確率(例えば、IBDに罹患している確率が約0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又はそれを超える数値)を提供するのに用いるためにこのNNモデルを保存した。本質的には、患者試料のコホートから形成されたC&RT及びNNモデルを直列に用いて、患者由来の試料中の1種又は2種以上のマーカーの存在又はレベルに基づき新規患者のIBDを診断し又はCDとUCとの間を識別する。
図4は、マーカー入力変数、出力従属変数(診断及び非IBD/IBD)、及びNNモデルに対する入力変数として用いられるC&RTモデルからの確率を示す。診断データから縦列7(非IBD/IBD)を形成して、その診断とは別に予測される第二の出力を生成した。
《実施例7.アルゴリズム的アプローチによるIBD血清学的マーカーの解析は炎症性腸疾患、クローン病及び潰瘍性大腸炎を検出する的確性を改善する。》
血清学的試験は、医師が炎症性腸疾患(IBD)の診断を行い及び疾患をクローン病(CD)又は潰瘍性大腸炎(UC)と分類するのを補助することができる。IBDに対する血清学的試験として、例えば、ASCA(IgA及びIgG)、抗OmpC、抗CBir1及びpANCAの分析を挙げることができる。本実施例に記載のIBD血清学的マーカー解析に対する1つのアルゴリズム的アプローチは、統計的分類子からなる高性能なコンピュータを用いた解析とそれに続くニューラルネットワークである。本実施例において、分析結果はカットオフ値との比較をせずに、むしろアルゴリズムによって疾患及び非疾患のパターンを検出する。本実施例では、863例の健常及び胃腸の対照、633例のCD、及び556例のUCからなる既知の診断を有する2,052例の血清試料のコホートを用いる。
《実施例8.個体の年齢に基づくIBD血清学的マーカーの解析》
本実施例において、145,627例の同定されていない試験結果のデータベースを臨床的洞察のためにマイニングした。13の正規化されたテーブルを含むリレーショナル臨床データベース(PrOS)のクエリーを行ない、そしてオープンソースソフトウェアパッケージRを用いて連続的な密度プロットを形成した。年齢分布は二峰性であった。分離したピークが年齢15〜20歳について観察され、そして次に、より広いプラトーが年齢20〜55歳について見られた。臨床データベースにおける個々のマーカー値の分布は、訓練/検証コホート(N=2,052)に用いられた分布より正規分布していた。大部分のマーカー分布は臨床データベースでより低かったが、これは多くの試料が健常者又は非IBD患者に由来するためと考えることができる。顕著な例外は抗CBir1であり、訓練/検証の場合より臨床的データベースにおいて高い分布を示した。臨床データベースにおける性別分布は患者の年齢と共に変化した。分布は成人で女性に偏っており(63%/37%)、年齢6〜16歳の年長児童で等しく(51%/49%)、そして幼児で男性に偏っていた(44%/56%)。小児の場合(年齢0〜5歳)の診断基準には有意な差があった。小児患者の高レベルの抗CBir1は、小児のクローン病を予測するアルゴリズムによって用いられる重要な要素である。ASCA IgA及びASCA IgGのような他のマーカーの高いレベルは、クローン病罹患と診断された小児においては一般に観察されなかった。これらの年齢に基づく差異がアルゴリズムにより明確に「表現」されなかった20%の小児ケースについて、本アルゴリズムがその訓練データの多様性に基づいて前記の差異を自動的に発見して利用したことは注目すべきことである。この臨床データの解析は、臨床的生成(clinical production)データとIBD診断試験を開発するのに最初に用いられた訓練/検証データとの間の類似性及び関係を明らかにするのに有益な手段である。
本実施例において、以下のマーカーを使用した:ASCA IgA(ELISA);ASCA IgG(ELISA);抗CBir1(ELISA);抗OmpC IgA(ELISA);ANCA(ELISA);DNAse(感度)及びIFA(核周囲パターン)。
13の正規化されたテーブルを含むリレーショナル臨床データベース(PrOS)のクエリーを行ない、そしてオープンソースソフトウェアパッケージRを用いて連続的な密度プロットを形成した。この研究における診断の分布を表1に示す。
Figure 0005749652
表示した訓練/検証診断は医師の診断によるものであり(当初の研究);表示した臨床的診断予測はPrometheus Serology7によるものである。
《A.方法》
表2〜6は年齢及び性別分布を示す。実際に、年齢分布は二峰性であった(図5)。分離したピークが年齢15〜20歳について観察され、そして次に、より広いプラトーが年齢20〜55歳について見られた。性別分布は患者の年齢と共に変化した。分布は成人で女性に偏っており、年長児童で等しく、そして幼児で男性に偏っていた。全ての年齢群にわたって有病率はUC予測に対しCD予測の方がより高く、最大の差が年齢0〜5歳群において観察された。
Figure 0005749652
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《B.結果》
図6は、臨床的予測に対する開発コホート及びマーカーの分布を示す。概して、データは、マーカー分布が訓練/検証の場合より生成臨床データベースの場合の方が低かったことを示す。例外は抗CBir1であり、臨床データベースの場合の方が高かった。個々のマーカー値の分布は対数正規分布(対数変換後に正規分布)であり、訓練/検証コホートに用いられたデータより臨床データの方が正規分布していた。
《C.小児マーカーI》
図7は、診断予測により階層化されたマーカーのチャートを示す。4つの横列1)全て;2)非IBD;3)CD及び4)UCが設けられている。5つの縦列は、マーカー1)ANCA;2)OmpC;3)ASCAA;4)ASCAG及び5)CBir1を示す。診断予測を行なうのに用いられるマーカーは年齢により変化する。例えば、CD診断(第3横列)において、抗CBir1(第5縦列)は小児において増加する(点線対実線)。
《D.小児マーカーII》
図8は、年齢により階層化されたマーカーのチャートを示す。4つの横列1)全て;2)0〜5歳;3)6〜16歳及び4)17歳以上が設けられている。5つの縦列は、マーカー1)ANCA;2)OmpC;3)ASCAA;4)ASCAG及び5)CBir1を示す。成人の場合に、CD診断予測はASCAA及び抗CBir1の両方のレベル増加と関連している(実線矢印)。小児の場合には、CD診断予測は抗CBir1のレベル増加と関連しているがASCAAとは関連していない(破線)。
《E.単一の増加したマーカー》
唯一の増加したマーカーを有していた患者試料を以下に示す。
Figure 0005749652
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とりわけ、抗CBir1だけが増加した試料の割合が高く、一方で全ての他のマーカーでは増加がなかった。このことは強調された年齢0〜5歳の群でなおさらに顕著であった。高い割合の小児試料は、抗CBir1を単独の増加マーカーとする。
《F.結論》
実質的な(n=145,627)臨床データベースを用いてPROMETHEUS IBD Serology 7の遡及的(retrospective)分析を行い、以下の結論に至った。
年齢分布は二峰性であった。分離したピークが年齢15〜20歳について観察され、そして次に、より広いプラトーが年齢20〜55歳について見られた。性別分布は患者の年齢と共に変化した。分布は成人で女性に偏っており、年長児童で等しく、そして幼児で男性に偏っていた。大部分のマーカー分布は、訓練/検証の場合より臨床データベースの場合の方が低かった。例外は抗CBir1であり、臨床データベースの場合の方が高かった。
個別のマーカー値の分布は対数正規分布であり;臨床データは、対数変換後に、訓練/検証コホートに用いられたデータよりも正規分布していた。診断予測を行なうのに用いられたマーカーは年齢により変化する。成人において、クローン病診断予測はASCAA及び抗CBir1の両方の増加したレベルと関連している。小児の場合には、クローン病診断予測は抗CBir1の増加したレベルと関連しているがASCAAとは関連していない。小児及び青年(adolescent)試料の高い割合は、唯一の増加したマーカーとしての抗CBir1により特徴付けられる。全ての年齢群にわたって有病率は炎症性大腸炎に対し、クローン病予測の方が高く、最大の差は0〜5歳の年齢群で観察された。
《実施例9.血清学的試験を用いた炎症性腸疾患(IBD)の予測:多施設(multi-center)臨床研究からの結果》
Prometheus IBD Serology 7試験を開発し、そして全体の大きさが2,052例の患者試料であるコホートを用いて検証した。この解析において、幅広いさまざまな一般的な臨床胃腸病学サイトからの追加の1,574例の試料を加えることにより開発コホートを拡大した。この拡大した開発コホートを用いて、スマートアルゴリズム法(すなわち、拡大したコホートを用いた再訓練及び再検証)を再適用し、以下の知見を得た。
方法:S7開発コホート(N=2,052)に1,574例の患者試料(平均年齢及び範囲)(米国内の種々の施設からの試料)の集合を追加して全体を3,626例の試料とした開発コホートであって、非IBD(1971例:54%)、クローン病(1007例;28%)及び潰瘍性大腸炎(648例;18%)を含むコホートを用いた。訓練及び検証用集合の中に、開発コホートの50の独立したランダム分割を生じさせた。これらの50の分割のそれぞれについて、訓練用集合にスマートアルゴリズム法を適用し、そして検証用集合を用いて性能値(performance value)を計算した。50の独立した分割についての平均値及び標準偏差を報告する。
結果:多施設拡大型開発コホート(N=3,626)において、観察された平均の性能値は、IBD特異度80%、CD感度70%、及びUC感度51%である。これらの値の標準偏差は特異度1.8%、CD感度2.6%、及びUC感度3.6%であった。
これらのデータは、3,626例の患者試料を用いて実施した拡大型多施設臨床研究におけるPrometheus IBD Serology 7診断試験の臨床的有用性を示す。これらの知見は、より小さいコホートに基づいて前に報告したデータと一致する。
《実施例10.血清学的試験を用いた炎症性腸疾患(IBD)の予測:血清学的マーカーの遡及研究及び繰返し試験結果における診断予測の一致性》
IBDの診断における血清学的マーカーの役割は、科学文献に十分に報告されてきた。一定の血清学的マーカーの経時的な挙動及び診断予測一致性のレベルへのそれらのマーカーの影響をより良く理解するために、マーカー濃度及び診断予測の臨床データベースをクエリーを行なった。
方法:試験結果の臨床データベースをフィルターにかけ、経時的に2回又は3回以上試験を受けた患者の一致性のパターンを調べた。このデータベースは163,618例の特有の患者を含んでいた。その中の3,647例(2.2%)では、2回又は3回以上の試験が実施された。このサブセットのさらなる分解により、2回の試験結果を有する患者3,477例(2.1%)、3回の試験結果を有する患者155例(0.1%)、及び4回又は5回以上の試験結果を有する患者15例(<0.1%)を同定した。
これらの繰返し試料を個別のマーカー濃度及び短期間(<30日間)、中期間(30〜90日間)、及び長期間(90日間〜2年間)の診断予測の一致性について調査した。
結果:最初の試験と2回目の試験との間の日数の中央値は104日間であった。740例の短期間繰返し試験(20.3%)、993例の中期間繰返し試験(25.6%)、及び1974例の長期間繰返し試験(54.1%)があった。個別のマーカーの経時的な相関を下記表8に示す。診断予測の調査において、短期間(<30日間、N=740)での一致性は82.0%であり、中期間(30〜90日間、N=933)での一致性は74.2%であり、そして長期間(90日間以上、N=1974)での一致性は72.0%であった。
結論:最初の報告と2回目の報告との一致は高いように見える。試験を30日以内に繰り返した場合が最も高い一致であり;間隔が長くなるほど治療介入及び/又は疾患の進行により一致性が低下することがある。血清学的マーカー濃度への疾患の進行及び治療介入の経時的な影響を評価するさらなる予期的研究が必要である。
Figure 0005749652
本明細書中に引用された全ての刊行物及び特許出願は、個別の刊行物又は特許出願それぞれが参考までに引用されるものであると明確に及び個々に示されたかのようにして参考までに本明細書中に引用する。前記の発明は、明確に理解されることを目的として説明及び実施例によって多少とも詳細に記載してきたが、特許請求の範囲に記載した発明の精神又は範囲から逸脱することなく一定の変化及び修正をなすことができるということは、本発明の教示に照らし当業者には容易に明らかとなるであろう。

Figure 0005749652

Claims (14)

  1. 小児被験者由来の試料が炎症性腸疾患(IBD)と関連しているか否かを分類する方法であって、
    (a)前記試料を転換して2種以上のマーカーの存在又はレベルを測定すること、ここでマーカーは抗フラジェリン抗体及びASCA−IgAを含むものとし;そして
    (b)前記抗フラジェリン抗体及び前記ASCA−IgAを含む2種以上のマーカーの存在又はレベルに基づき前記試料からパターンを形成すること;そして
    (c)統計的アルゴリズムを用いて前記試料をIBD試料又は非IBD試料と分類することを含み、
    前記統計的アルゴリズムが前記2種以上のマーカーのパターンをIBDパターン又は非IBDパターンとして認識し、前記IBDパターンがクローン病(CDパターン及び潰瘍性大腸炎(UCパターンを含み、前記非IBDパターンが健常パターン及び胃腸の対象パターンを含み、
    前記IBD試料がクローン病試料であり、前記クローン病試料中の前記ASCA−IgAのレベルが、非IBD試料と比較して増加しない、前記分類方法。
  2. 前記抗フラジェリン抗体が抗CBir−1抗体である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記抗CBir−1抗体のレベルが非IBD試料と比べIBD試料で増加する、請求項2に記載の方法。
  4. 2種以上のマーカーがANCA、pANCA、ASCAIgG、抗OmpC抗体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1又は複数のマーカーを更に含む、請求項1に記載の方法。
  5. 2種以上のマーカーがASCA−IgGを更に含む、請求項1に記載の方法。
  6. 非IBD試料と比較して、IBD試料中の前記ASCA−IgGのレベルが同じである、請求項5に記載の方法。
  7. 小児被験者由来の試料が炎症性腸疾患(IBD)と関連しているか否かを診断するためのデータ取得方法であって、
    (a)前記試料を転換して2種以上のマーカーの存在又はレベルを測定すること、ここでマーカーは抗フラジェリン抗体及びASCA−IgAを含むものとし;そして
    (b)前記抗フラジェリン抗体及び前記ASCA−IgAを含む2種以上のマーカーの存在又はレベルに基づき前記試料からパターンを形成すること;そして
    (c)統計的アルゴリズムを用いて前記試料をIBD試料又は非IBD試料と分類することを含み、
    前記統計的アルゴリズムが前記2種以上のマーカーのパターンをIBDパターン又は非IBDパターンとして認識し、前記IBDパターンがクローン病(CDパターン及び潰瘍性大腸炎(UCパターンを含み、前記非IBDパターンが健常パターン及び胃腸の対象パターンを含み、
    前記IBD試料がクローン病試料であり、前記クローン病試料中の前記ASCA−IgAのレベルが、非IBD試料と比較して増加しない、前記データ取得方法。
  8. 前記抗フラジェリン抗体が抗CBir−1抗体である、請求項7に記載の方法。
  9. 前記抗CBir−1抗体のレベルが非IBD試料と比べIBD試料で増加する、請求項8に記載の方法。
  10. 2種以上のマーカーがANCA、pANCA、ASCA−IgG、抗OmpC抗体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1又は複数のマーカーを更に含む、請求項7に記載の方法。
  11. 2種以上のマーカーがASCA−IgGを更に含む、請求項7に記載の方法。
  12. 非IBD試料と比較して、IBD試料中の前記ASCA−IgGのレベルが同じである、請求項11に記載の方法。
  13. 前記統計的アルゴリズムが単一の学習統計的分類子システム、又は少なくとも2種以上の学習統計的分類子システムの組み合わせである、請求項1又は7に記載の方法。
  14. 前記少なくとも2種以上の学習統計的分類子システムがランダムフォレストである、請求項13に記載の方法。
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