(I.序文)
患者が炎症性腸疾患(IBD)を有しているとの診断は、IBDと他の病気又は疾患の症状が類似するため、容易ではない。例えば、過敏性腸症候群(IBS)を有する患者が、腫脹、下痢、便秘及び腹痛等の軽度の徴候や症状を示した場合、IBD患者と区別するのは、困難である事がある。結果、IBD及びIBSの症状の類似性は、迅速且つ正確な診断を困難にし、病気の早期の効果的な治療の妨げとなっている。
本発明は、個体からの生物試料をIBD(例、CD又はUC)試料として分類する正確さは、抗好中球抗体(例、ANCA、pANCA、等)、抗サッカロミセス・セレビジエ(anti−Saccharomyces cerevisiae)抗体(例、ASCA−IgA、ASCA−IgG、等)、及び/又は抗菌抗体(例、抗OmpC抗体、抗フラジェリン抗体、抗I2抗体、等)等の特定の診断マーカーの存在又は値を検出することにより、大幅に改善されるかもしれないという驚くべき発見に一部基づく。ある態様において、本発明は、試料のIBD試料又は非IBD試料への分類工程の補助に、統計的アルゴリズムを用いる。他の態様において、本発明は、試料のCD試料、UC試料、又は非IBD試料への分類工程の補助に、統計的アルゴリズムを用いる。場合により、本明細書における統計的アルゴリズムは、過去にIBDに罹っていると認められた個体においてCD試料をUC試料から区別する事に用いられる。或いは、本明細書における統計的アルゴリズムは、過去にIBDと診断されていない個体からの試料がCD試料、UC試料、又は非IBD試料か否かを決定するのに用いられる。
重要なことは、本発明は、診断マーカーのパネルの存在或いは値に基づく学習統計的分類子システムの組み合わせを使用してのIBD又はそれの臨床的なサブタイプ(例、CD又はUC)の診断予測が、カットオフ値解析等の非アルゴリズムの技法よりはるかに優れている事を例示する。それどころか、IBDの診断は、より高い感度、陰性的中率、及び/又は精度を伴い行われ、IBDの存在は病気進行の初期段階において発見し得る。それに加え、本発明は、IBDの臨床的なサブタイプ間(例、CD又はUC)を高精度に区別するのに有用である。その結果、特に個体におけるIBDの細分化は、大変正確な方法で達成される。
(II.定義)
本明細書において、下記の用語は、他に特に規定がない限りそれらの意味を持つ。
「分類(classifying)」という用語は、病状を伴う試料を「関連付ける事(to associate)」又は「類別する事(to categorize)」を含有する。場合により、「分類」は統計上の証拠、実験的証拠、若しくはその両方に基づく。実施形態によっては、分類の方法とシステムは、既知の症状を有する試料、いわゆる訓練セットを用いる。それが確立された後、試料における原因不明の病状を分類するために、訓練データセットは、比較される未知試料の特徴に対する、基準、モデル、或いはテンプレートとしての機能を果たす。場合により、試料を分類する事は、試料の病状を診断する事に通ずる。また他の場合によっては、試料を分類する事は、他の病状から試料の病状を区別する事に通ずる。
「炎症性腸疾患」或いは「IBD」という用語は、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、及び不定性大腸炎(IC)を含む胃腸障害を示すが、これらに限定されない。CD、UC、及びIC等の炎症性腸疾患は、過敏性腸症候群(IBS)を含む、その他すべての消化器官の障害、症候群、及び異常と区別される。
「試料(sample)」という用語は、個体から得られるいかなる生物学的試料をも含む。本発明で使用されるのに好適な試料は、全血、血漿、血清、唾液、尿、糞便、涙液、その他の体液、組織試料(例、生検)、及びその細胞抽出物(例、赤血球抽出物(red blood cellular extract))を含むが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、試料とは血清試料である。血清、唾液、及び尿等の試料の使用は、当技術分野で周知(例えば、Hashidaら,J.Clin.Lab.Anal,11:267−86(1997)参照)。当業者は、マーカー値の解析前に、血清試料等の試料を希釈できる事を理解するだろう。
「マーカー(marker)」という用語は、個体からの試料をIBD(例、CD又はUC)試料として分類するために使用し得るいかなる生化学的マーカー、血清学的マーカー、遺伝子マーカー、或いは他の臨床学的又は超音波診断学的特徴を含む。本発明で用いられるのに適当なマーカーの非限定的な例は、下記に示され、抗好中球抗体(例、ANCA、pANCA、cANCA、NSNA、SAPPA、等)、抗サッカロミセス・セレビジエ抗体(例、ASCA−IgA、ASCA−IgG、ASCA−IgM、等)、抗菌抗体(例、抗OmpC抗体、抗フラジェリン(anti−flagellin)抗体、抗I2抗体、等)、ラクトフェリン(lactoferrin)、抗ラクトフェリン抗体、エラスターゼ(elastase)、C反応性タンパク質(CRP)、カルプロテクチン(calprotectin)、ヘモグロビン、NOD2/CARD15、及びそれらの組み合わせを含む。当業者は、本発明で使用されるのに適当な更なるマーカーを知り得るだろう。
「個体(individual)」、「対象(subject)」、又は「患者(patient)」という用語は、一般的にヒトを参照しているが、しかしまたその他の、例えば、その他の霊長類、齧歯類、イヌ科、ネコ科、ウマ科、ヒツジ、ブタ、などの動物も含む。
本明細書において、「実質的には同じアミノ酸配列(substantially the same amino acid sequence)」という用語は、自然発生アミノ酸配列と類似するが、同一ではないアミノ酸配列を含む。例えば、I2タンパク質と実質的には同じアミノ酸配列を有するアミノ酸配列、即ちポリペプチドは、自然発生I2タンパク質のアミノ酸配列に対して、アミノ酸挿入、欠如、或いは置換等の1つ又はそれ以上の改変がある。また、免疫活性等の少なくとも1つのI2の生物活性を実質的に得る、改変されたポリペプチドを提供した。アミノ酸配列の高類似性の比較は通常、約6〜100残基、好ましくは約10〜100残基、そして更に好ましくは約25〜35残基の配列で行われる。本発明のポリペプチドの特に有用な改変、又はそれの断片は、例えば、安定性の増大をもたらす改変である。1つ又はそれ以上のD−アミノ酸の取り込みは、ポリペプチド又はポリペプチド断片の安定性を増大するのに有用な改変である。同様に、リジン残基の欠如又は置換は、分解に対して、ポリペプチド又はポリペプチド断片を保護し安定性を高めることができる。
「臨床的因子(clinical factor)」という用語は、IBDと関連している個体の症状を含む。臨床的因子の例は、下痢、腹痛、痙攣、発熱、貧血、体重減少、不安、抑うつ、及びそれらの併発を含むがこれに限定されない。ある実施形態において、IBDの診断は、統計的アルゴリズムを用いて個体の少なくとも1つのマーカーの存在或いは値の解析及び個体が1つ又はそれ以上の臨床的因子を持っているか否かの決定の組み合わせに基づいている。
「予後(prognosis)」という用語は、IBDの見込まれる治療単位及び結果又は病気からの回復の可能性の予測を含む。ある実施形態において、統計的アルゴリズムの使用は、個体におけるIBDの予後を提供する。例えば、予後は、外科処置、IBDの臨床的なサブタイプ(例、CD又はUC)の発生、1つ又はそれ以上の臨床的因子の発生、腸癌の発生、又は病気からの回復となり得る。
「IBDを診断する(diagnosing IBD)」という用語は、個体におけるIBDの有無を決めるための本発明の方法、システム、及びコードの使用を含む。この用語は、個体における疾患活動性を評価するための方法、システム、及びコードも含む。ある実施形態において、統計的アルゴリズムは、Trueloveら,Br.Med.J.,12:1041−1048(1955)によって作成された基準に基づき、IBDの軽症、中等症、重症、又は劇症型の診断に用いられる。その他の実施形態において、統計的アルゴリズムは、Hanauerら,Am.J.Gastroenterol.,92:559−566(1997)によって作成された基準に基づき、IBDの軽症から中等症、中等症から重症、又は重症から劇症型の診断に用いられる。当業者は、個体におけるIBDの重症度の他の評価方法を知り得る。
本明細書において、用語、「IBDの進行又は回帰をモニタリングする(monitoring the progression or regression of IBD)」は、個体における病状(例、IBDの存在又は重症度)を決定するための本発明の方法、システム、及びコードの使用を含む。場合により、統計的アルゴリズム(例、学習統計的分類子システム)の結果は、早期の段階に同一個体から取得したそれらの結果と比較される。ある態様において、本発明の方法、システム、及びコードは、IBDの進行予測にも用いられ、例えば、試料において、少なくとも1つのマーカーの存在或いは値に基づき、個体における急速又は徐々にIBDが進行する可能性を決定する事による。他の態様において、本発明の方法、システム、及びコードは、IBDの退行予測にも用いられ、例えば、試料において、少なくとも1つのマーカーの存在或いは値に基づき、個体における急速又は徐々にIBDが回帰する可能性を決定する事による。
本明細書において、用語、「IBD治療に有用な薬剤を投与している個体の薬剤の有効性をモニタリングする(monitoring drug efficacy in an individual receiving a drug useful for treating IBD)」は、IBD治療のための治療薬が投与された後の個体の症状(例、IBDの存在又は重症度)を決定するための、本発明の方法、システム、及びコードの使用を含む。場合により、統計的アルゴリズム(例、学習統計的分類子システム)の結果は、その治療薬使用開始前又は治療の早期の段階の同一個体から取得された結果と比較される。本明細書において、IBD治療に有用な薬剤とは、個体の健康を改善するために使用されるいかなる化合物又は薬剤であり、IBD薬剤は、アミノサリチル酸(aminosalicylates)(例、メサラジン(mesalazine)、スルファサラジン(sulfasalazine)、等)、コルチコステロイド(corticosteroids)(例、プレドニゾン(prednisone))、チオプリン(thiopurines)(例、アザチオプリン(azathioprine)、6−メルカプトプリン(6−mercaptopurine)、等)、メトトレキサート(methotrexate)、モノクロナール抗体(例、インフリキシマブ(infliximab))、それらの遊離塩基、薬学的に許容されるそれらの塩、それらの誘導体、それらの類似体、及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
本明細書において、用語、「IBDを有する個体における最適療法(optimizing therapy in an individual having IBD)」は、治療薬の治療効力を最適化するために、治療薬(例、IBD薬剤)が投与される前の個体における治療過程の決定又は治療薬が投与された後の個体における治療過程を調整するための本発明の方法、システム、及びコードの使用を含む。場合により、統計的アルゴリズム(例、学習統計的分類子システム)の結果は、治療過程より以前に同一個体から取得された結果と比較される。それらの結果の比較は、治療過程変更の必要性の指標又は現在の治療過程における投与量の増量又は減量の必要性の指標を提供する。
「治療過程(course of therapy)」という用語は、IBDに関連する1つ又はそれ以上の症状(即ち、臨床的因子)を軽減又は予防するいかなる治療的なアプローチをも含む。この用語は、IBDに罹っている個体の健康を改善するために有用な化合物、薬剤、処置、又は処方の投与工程を包含し、上記の治療薬(例、IBD薬剤)の他に外科処置も含む。当業者は、治療過程若しくは現行治療過程の投与量の変更が可能な事を理解し、例えば、本発明の方法、システム、及びコードを使用し、得られた統計的アルゴリズム(例、学習統計的分類子システム)の結果に基づく。
「治療学的有効量(therapeutically effective amount or dose)」という用語は、治療を必要としている対象において治療効果を発揮しうる薬剤の投与工程を含む。例えば、IBD治療に有用な薬剤の治療学的有効量は、IBDに関連する1つ又はそれ以上の症状の予防又は軽減ができる量とされ得る事ができる。正確な量は、周知技術により当事者により確かめられる(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms(vols.1−3,1992);Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Pickar,Dosage Calculations(1999);及びRemington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,2003,Gennaro,Ed.,Lippincott,Williams & Wilkinsを参照されたい)。
(III.実施形態の説明)
本発明は、個体からの試料がIBD又はそれの臨床的なサブタイプと関連しているか否かを的確に分類するための方法、システム、及びコードを提供する。ある実施形態において、本発明は、統計的アルゴリズム(例、学習統計的分類子システム)及び/又は実験データ(例、IBDマーカーの存在或いは値)を用いて、個体からの試料をIBD試料として分類するのに有用である。本発明は、統計的アルゴリズム(例、学習統計的分類子システム)及び/又は実験データ(例、IBDマーカーの存在或いは値)を用いて、CDとUC間を区別するのにも有用である。それにより、本発明は、治療法決定の指針に有用な、IBD或いはそれの臨床的なサブタイプの正確な診断予測及び予後情報を提供する。
一態様において、本発明は、個体からの試料がIBDと関連しているか否かを分類するための方法を提供し、その方法は、以下を包含する:
(a)試料における、抗好中球抗体、抗サッカロミセス・セレビジエ抗体、抗菌抗体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された、少なくとも1つのマーカーの存在或いは値の決定工程;と
(b)少なくとも1つのマーカーの存在或いは値に基づいた統計的アルゴリズムを使用した、試料のIBD試料又は非IBD試料への分類工程。
関連する態様において、本発明は、個体からの試料がIBDの臨床的なサブタイプと関連しているか否かを分類する方法を提供し、その方法は、以下を包含する:
(a)試料における、抗好中球抗体、抗サッカロミセス・セレビジエ抗体、抗菌抗体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された、少なくとも1つのマーカーの存在或いは値の決定工程;と
(b)少なくとも1つのマーカーの存在或いは値に基づいた統計的アルゴリズムを使用した、試料のCD試料、UC試料又は非IBD試料への分類工程。
ある実施形態において、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のIBDマーカーの存在又は値は、個体の試料で決定される。場合によっては、抗好中球抗体は、抗好中球細胞質抗体(ANCA:anti−neutrophil cytoplasmic antibody)、核周辺型抗好中球細胞質抗体(pANCA:perinuclear anti−neutrophil cytoplasmic antibody)、細胞質性抗好中球細胞質抗体(cANCA:cytoplasmic anti−neutrophil cytoplasmic antibody)、好中球特異核抗体(NSNA:neutrophil−specific nuclear antibody)、斑状抗pan多形核抗体(SAPPA:speckling anti−pan polymorphonuclear antibody)、及びそれらの組み合わせを包含する。好ましくは、ANCA及び/又はpANCAの存在又は値が個体の試料で決定される。また他の場合には、抗サッカロミセス・セレビジエ抗体は、抗サッカロミセス・セレビジエ免疫グロブリンA(ASCA−IgA)、抗サッカロミセス・セレビジエ免疫グロブリンG(ASCA−IgG)、抗サッカロミセス・セレビジエ免疫グロブリンM(ASCA−IgM)、及びそれらの組み合わせを包含する。好ましくは、ASCA−IgA及び/又はASCA−IgGの存在又は値が個体の試料で決定される。また更に他の場合には、抗菌抗体は、抗外膜タンパク質C(抗OmpC:anti−outer membrane protein C)抗体、抗フラジェリン抗体、抗I2抗体、及びそれらの組み合わせを包含する。好ましくは、抗OmpC抗体及び/又は抗フラジェリン抗体の存在又は値が個体の試料で決定される。
他の実施形態において、抗好中球抗体、抗サッカロミセス・セレビジエ抗体、及び/又は抗菌抗体に加え、少なくとも1つのマーカーは、更に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のIBDマーカーを包含する。IBDマーカーの例は、限定されないが、ラクトフェリン、抗ラクトフェリン抗体、エラスターゼ、C反応性タンパク質(CRP)、カルプロテクチン、ヘモグロビン、NOD2/CARD15、及びそれらの組み合わせを含む。
少なくとも1つのマーカーの存在或いは値を検出又は決定するために用いる試料は、一般的に、全血、血漿、血清、唾液、尿、糞便(即ち、排泄物)、涙液、及びその他の体液、又は小腸又は結腸試料等の組織試料(即ち、生検)である。好ましくは、試料は血清、全血、血漿、糞便、尿、又は組織生検である。場合によっては、本発明の方法は、更に試料において少なくとも1つのマーカーの存在或いは値を検出又は決定する以前の個体からの試料の取得を包含する。
好適な実施形態において、本発明の方法は、血清、血漿、全血、又は糞便等の試料においてANCA、ASCA−IgA、ASCA−IgG、抗OmpC抗体、抗フラジェリン抗体、及びpANCAの存在又は値の決定工程を包含する。1つ又はそれ以上の上述したIBDマーカーから成るパネルが構成され、試料をIBD(例、CD又はUC)試料又は非IBD試料として分類するために用いられる。
場合により、少なくとも1つのマーカーの存在或いは値は、免疫測定法或いは免疫組織化学検査を使用し決定される。本発明の方法で使用されるのに好適な免疫測定法の非限定的な例は、酵素免疫測定法(ELISA:enzyme−linked immunosorbent assay)を含む。本発明の方法で使用されるのに好適な免疫組織化学検査の例は、限定されないが、直接蛍光抗体法(direct fluorescent antibody assays)、間接蛍光抗体(IFA:indirect fluorescent antibody)法、抗補体免疫蛍光法(anticomplement immunofluorescence assays)、並びにアビジン−ビオチン免疫蛍光法(avidin−biotin immunofluorescence assays)のような免疫蛍光法を含む。その他の免疫組織化学検査は、免疫ペルオキシダーゼ法(immunoperoxidase assays)を含む。
ある実施形態において、試料を分類するのに使用される統計的アルゴリズムは学習統計的分類子システムである。学習統計的分類子システムは、分類・回帰木(C&RT:classification and regression tree)、ランダムフォレスト(RF)、ブーストされた木(boosted tree)、ニューラルネットワーク(NN)、サポートベクターマシン、一般的なカイ二乗による相互作用の自動検出モデル、相互作用的な木(interactive tree)、多適応的回帰スプライン(multiadaptive regression spline)、機械学習分類子(machine learning classifier)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。好ましくは、学習統計的分類子システムは、木に基づく統計的アルゴリズム(例、C&RT、RF、等)及び/又はNN(例、ANN:人工ニューラルネットワーク、等)である。
場合により、統計的アルゴリズムは、単一の学習統計的分類子システムである。好ましくは、単一の学習統計的分類子システムは、C&RT又はRF等の木に基づく統計的アルゴリズムを包含する。非限定的な例として、単一の学習統計的分類子システムは、予測或いは確率値及び少なくとも1つのIBDマーカーの存在或いは値に基づき、試料をIBD(例、CD又はUC)試料又は非IBD試料に分類する事に用いられる。単一の学習統計的分類子システムの使用は、一般的に、少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率、及び/又は精度を伴い、その試料をIBD(例、CD又はUC)試料として分類する。
また他の場合において、統計的アルゴリズムは、少なくとも2つの学習統計的分類子システムの組み合わせである。好ましくは、学習統計的分類子システムの組み合わせは、C&RT又はRF及びNNを包含し、例えば、タンデム(tandem)又はパラレル(parallel)で用いる。非限定的な例として、C&RTは、最初に、少なくとも1つのマーカーの存在或いは値に基づく予測或いは確率値を生成するために用いられる。そしてNNは、その予測或いは確率値及び少なくとも1つのIBDマーカーの存在或いは値に基づき、試料をIBD(例、CD又はUC)試料或いは非IBD試料として分類するのに用いられる。優位に、本発明のハイブリッドC&RT/NN学習統計的分類子システムは、少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率、及び/又は精度を伴い、試料をIBD(例、CD又はUC)試料として分類する。
ある場合において、1つ又は複数の学習統計的分類子システムを用いて得られたデータは、処理アルゴリズムを用いて処理される。処理アルゴリズムは、例えば、多層パーセプトロン、バックプロパゲーションネットワーク、及びレーベンバーグマルカート法(Levenberg−Marquardt algorithm)からなる群から選択される。その他の場合、例えば、パラレル又はシリアル(serial)方式といった処理アルゴリズムの組み合わせが用いられる。
実施形態において、本発明の方法は、更にIBD分類結果の臨床医(胃腸科専門医或いは一般開業医等)への送信を含む。他の実施形態において、本発明の方法は更に、IBD又はそれの臨床的なサブタイプを有する個体の診断を確率の形で提供する。例えば、個体は、約0%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又はそれ以上のIBD又はそれの臨床的なサブタイプを有する可能性を持ち得る。更に別の実施形態においては、本発明の方法は、更にその個体におけるIBDの予後を提供する。例えば、予後は、外科処置、IBD(例、CD又はUC)の臨床的なサブタイプの発生、1つ又はそれ以上の症状の発生、腸癌の発生、又は病気からの回復となり得る。ある場合においては、試料をIBD試料として分類する方法は、更に試料を取得した個体の症状(即ち、臨床的因子)に基づく。症状或いは症状群は、例えば、下痢、腹痛、痙攣、発熱、貧血、体重減少、不安、抑うつ、及びそれらの併発となり得る。
ある実施形態において、個体がIBD又はそれの臨床的なサブタイプを有しているとの診断は、引き続き、IBD又はIBDのサブタイプ(例、CD又はUC)に関連した1つ或いはそれ以上の症状の治療に有用な薬剤の治療学的有効量の投与がなされる。好適なIBD薬剤は、それに限定されないが、アミノサリチル酸(例、メサラジン、スルファサラジン、等)、コルチコステロイド(例、プレドニゾン)、チオプリン(例、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、等)、メトトレキサート、モノクロナール抗体(例、インフリキシマブ)、それらの遊離塩基、それらの薬学的に許容される塩、それらの誘導体、それらの類似体、及びそれらの組み合わせを含む。
場合により、本発明の統計的アルゴリズムは、過去にIBDに罹っていると認められた個体においてCD試料をUC試料から区別する事に用いられる。また他の場合によっては、本発明の統計的アルゴリズムは、過去にIBDと診断されていない個体からの試料をCD試料、UC試料、又は非IBD試料として分類する事に用いられる。
他の態様において、本発明は、個体におけるIBDの進行又は回帰をモニタリングする方法を提供し、その方法は、以下を包含する:
(a)個体からの試料における、抗好中球抗体、抗サッカロミセス・セレビジエ抗体、抗菌抗体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された、少なくとも1つのマーカーの存在或いは値の決定工程;と
(b)少なくとも1つのマーカーの存在或いは値に基づいた統計的アルゴリズムを使用した、個体における、IBDの存在又は重症度の決定。
関連する態様において、本発明はIBD治療に有用な薬剤を投与している個体の薬剤の有効性をモニタリングする方法を提供し、その方法は、以下を包含する:
(a)個体からの試料における、抗好中球抗体、抗サッカロミセス・セレビジエ抗体、抗菌抗体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された、少なくとも1つのマーカーの存在或いは値の決定工程;と
(b)少なくとも1つのマーカーの存在或いは値に基づいた統計的アルゴリズムを使用した、個体における、IBDの存在又は重症度の決定。
上述されたように、本発明は一般的に、個体の試料内の、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のIBDマーカーの存在或いは値の決定工程に関係する。場合により、抗好中球抗体は、ANCA、pANCA、cANCA、NSNA、SAPPA、及びそれらの組み合わせを含む。好ましくは、個体の試料におけるANCA及び/又はpANCAの存在或いは値を決定する。また他の場合においては、抗サッカロミセス・セレビジエ抗体は、ASCA−IgA、ASCA−IgG、ASCA−IgM、及びそれらの組み合わせを包含する。好ましくは、個体の試料のASCA−IgA及び/又はASCA−IgGの存在或いは値を決定する。更なる場合において、その抗菌抗体は、抗OmpC抗体、抗フラジェリン抗体、抗I2抗体、及びそれらの組み合わせを包含する。好ましくは、個体の試料の抗OmpC抗体及び/又は抗フラジェリン抗体の存在或いは値を決定する。
抗好中球抗体、抗サッカロミセス・セレビジエ抗体、及び/又は抗菌抗体に加えて、少なくとも1つのマーカーは更に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のIBDマーカーを含む事ができ、それらは例えば、ラクトフェリン、抗ラクトフェリン抗体、エラスターゼ、C反応性タンパク質(CRP)、カルプロテクチン、ヘモグロビン、NOD2/CARD15、及びそれらの組み合わせである。
少なくとも1つのマーカーの存在或いは値を検出又は決定に使用される試料は、一般的に、全血、血漿、血清、唾液、尿、糞便(即ち、排出物)、涙液、及びその他の体液、若しくは小腸又は結腸の試料等の組織試料(即ち、生検)である。好ましくは、その試料は、血清、全血、血漿、糞便、尿、又は組織生検である。場合により、本発明の方法は、更に試料の少なくとも1つのマーカーの存在或いは値を検出又は決定する以前の個体からの試料の取得を包含する。
好適な実施形態において、本発明の方法は、血清、血漿、全血、又は糞便等の試料におけるANCA、ASCA−IgA、ASCA−IgG、抗OmpC抗体、抗フラジェリン抗体、及びpANCAの存在或いは値の決定工程を含む。上述された1つ又はそれ以上のIBDマーカーから構成されるパネルが組み立てられ、個体におけるIBD(例、CD又はUC)の存在又は重症度の決定に用いられる。
場合により、少なくとも1つのマーカーの存在或いは値は、免疫測定法若しくは免疫組織化学検査により決定される。本発明の方法で用いるのに好適な免疫測定法の非限定的な例は、ELISAを包含する。本発明の方法で用いるのに好適な免疫組織化学検査は、限定されないが、直接蛍光抗体法、IFA法、抗補体免疫蛍光法、及びアビジン−ビオチン免疫蛍光法等の免疫蛍光法を包含する。免疫組織化学検査のその他の技法は、免疫ペルオキシダーゼ法を含む。
ある実施形態において、IBDの存在又は重症度の決定に用いられる統計的アルゴリズムは、学習統計的分類子システムである。学習統計的分類子システムは、分類・回帰木(C&RT)、ランダムフォレスト(RF)、ブーストされた木、ニューラルネットワーク(NN)、サポートベクターマシン、一般的なカイ二乗による相互作用の自動検出モデル、相互作用的な木、多適応的回帰スプライン、機械学習分類子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。好ましくは、学習統計的分類子システムは、木に基づく統計的アルゴリズム(例、C&RT、RF、等)及び/又はNN(例、人工NN、等)である。
場合により、その統計的アルゴリズムは、単一の学習統計的分類子システムである。好ましくは、単一の学習統計的分類子システムは、木に基づく統計的アルゴリズム(例、C&RT、RF、等)である。また他の場合においては、統計的アルゴリズムは、少なくとも2つの学習統計的分類子システムの組み合わせである。好ましくは、学習統計的分類子システムの組み合わせは、C&RT又はRF及びNNを含み、例えば、タンデム又はパラレルに使用される。非限定的な例としては、C&RTが最初に、少なくとも1つのIBDマーカーの存在或いは値に基づいて予測又は確率値を生成するのに用いられる。そしてNNが、その予測又は確率値及び少なくとも1つのIBDマーカーの存在或いは値に基づいて、個体におけるIBDの存在又は重症度の決定に用いられる。
ある場合において、単一又は複数の学習統計的分類子システムから得られたデータは、処理アルゴリズムにより処理できる。処理アルゴリズムは、多層パーセプトロン、バックプロパゲーションネットワーク、及びレーベンバーグマルカート法からなる群から選択される。他の場合においては、例えば、パラレル又はシリアル方式により、処理アルゴリズムの組み合わせが用いられる。
実施形態によっては、本発明の方法は、更に工程(b)において決定されたIBDの存在又は重症度とその時以前のその個体におけるIBDの存在又は重症度の比較を含む。非限定的な例として、IBD治療に有用な薬剤を投与される個体におけるIBDの存在又は重症度は、治療薬使用開始前又は治療の早期の段階の同一個体におけるIBDの存在又は重症度と比較され得る。他の実施形態において、その方法は更に、IBDモニタリング結果の臨床医(胃腸科専門医又は一般開業医等)への送信が含まれる。
更に他の態様において、本発明は、少なくとも1つのマーカーの存在或いは値に基づいて、試料をIBD試料又は非IBD試料として分類する統計的に導出された結果を出すため、個体からの試料がIBDと関連しているか否かを分類する1つ又はそれ以上のプロセッサをコントロールするコードを含むコンピュータ読み取り可能記憶媒体を提供する。そのコードは、試料における、抗好中球抗体、抗サッカロミセス・セレビジエ抗体、抗菌抗体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1つのマーカーの存在或いは値を示唆するデータセットに統計処理を応用する指示を含む。
関連する態様において、本発明は、少なくとも1つのマーカーの存在或いは値に基づいて、試料をCD試料、UC試料又は非IBD試料として分類する統計的に導出された決定を出すため、個体からの試料がIBDと関連しているか否かを分類する1つ又はそれ以上のプロセッサをコントロールするコードを含むコンピュータ読み取り可能記憶媒体を提供する。そのコードは、試料における、抗好中球抗体、抗サッカロミセス・セレビジエ抗体、抗菌抗体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1つのマーカーの存在或いは値を示唆するデータセットに統計処理を応用する指示を含む。
一実施形態では、統計処理は、学習統計的分類子システムである。本発明において用いられる好適な学習統計的分類子システムの例は、前述されている。場合により、その統計処理は、例えば、C&RT又はRF等の単一の学習統計的分類子システムである。また他の場合によっては、統計処理は、少なくとも2つの学習統計的分類子システムの組み合わせである。非限定的な例として、学習統計的分類子システムの組み合わせは、C&RT又はRF及びNNを包含し、例えば、タンデムで使用される。ある場合においては、単一又は複数の学習統計的分類子システムから得られたデータは、処理アルゴリズムを用いて処理され得る。
更なる態様において、本発明は個体からの試料がIBDと関連しているか否かを分類するシステムを提供し、そのシステムは、以下を包含する:
(a)試料における、抗好中球抗体、抗サッカロミセス・セレビジエ抗体、抗菌抗体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された、少なくとも1つのマーカーの存在或いは値を示唆するデータセットを作成するために構成したデータ収集モジュール;
(b)少なくとも1つのマーカーの存在或いは値に基づいて試料をIBD試料又は非IBD試料として分類する統計的に導かれた決定を作成するデータセットに統計処理を応用する事により、データセットを処理するために構成したデータ処理モジュール;及び
(c)統計的に導かれた決定を表示するために構成したディスプレイモジュール。
関連する態様において、本発明は個体からの試料がIBDの臨床的なサブタイプと関連しているか否かを分類するシステムを提供し、そのシステムは、以下を包含する:
(a)試料における、抗好中球抗体、抗サッカロミセス・セレビジエ抗体、抗菌抗体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された、少なくとも1つのマーカーの存在或いは値を示唆するデータセットを作成するために構成したデータ収集モジュール;
(b)少なくとも1つのマーカーの存在或いは値に基づき、試料をCD試料、UC試料又は非IBD試料に分類する統計的に導かれた決定を作成するために、統計処理をデータセットに応用し、データセットの処理を構成するデータ処理モジュール;及び
(c)統計的に導かれた決定を表示するために構成したディスプレイモジュール。
一実施形態において、統計処理は、学習統計的分類子システムである。本発明で用いられるのに好適な統計的分類子システムの例は、前述されている。場合により、統計処理は、単一の学習統計的分類子システムである。また他の場合において、統計処理は、少なくとも2つの学習統計的分類子システムの組み合わせである。ある場合においては、1つ又は複数の学習統計的分類子システムから得られたデータは、処理アルゴリズムを用いて処理され得る。
(IV.IBDの臨床的なサブタイプ)
クローン病(CD)は、胃腸管のいかなる部位をも侵し得る慢性炎症疾患である。一般に、小腸の遠位部、即ち回腸、及び盲腸が侵される。その他の症例においても、小腸、結腸、又は肛門直腸部位に限られた病気である。CDは、たまに十二指腸及び胃、且つ更にまれに食道と口腔を侵す。
CDの変化に富んだ臨床所見は、一つには、病気における解剖学的局在の変化の結果である。CDにおける最も多い症状は、腹痛、下痢、そして再発熱である。CDは一般に、腸閉塞や瘻孔(罹患した腸ループ間の異常な導管)を伴う。CDは、眼、関節、及び皮膚の炎症、肝疾患、腎臓結石、及びアミロイド症などの合併症も伴う。更に、CDは腸癌のリスク増加に関連している。
いくつかの特性がCD病理学の特徴としてある。CDに関連する炎症は、経壁炎症として知られており、腸壁全層を侵す。例えば、肥厚や浮腫も、長期に亘る疾患として線維化を伴い、腸壁の至る所に現れやすい。CDの炎症の特徴は、正常な腸とは明確に区別できる、「スキップ病変」として知られている炎症組織部位の非連続性が挙げられる。更には、中間組織の線状潰瘍、浮腫、及び炎症は、CD特有の腸粘膜に現れる「敷石」像を引き起こす。
CDの特徴は、通常粘膜下層に認められる肉芽腫として知られている、非連続的な炎症細胞の凝集の存在である。一部のCDの症状では、非連続的な肉芽腫を示し、また他の症状では、びまん性肉芽腫反応又は非特異の経壁炎症を示す。結果的に、非連続的な肉芽腫の存在はCDの指標であり、また、たとえ肉芽腫が見られなくともCDと一致する。従って、肉芽腫の存在より、貫壁性又は非連続性炎症がCDの望ましい診断上指標である(Rubin and Farber,Pathology(Second Edition),Philadelphia,J.B.Lippincott Company(1994))。
潰瘍性大腸炎(UC)は、痙攣、腹痛、直腸出血、軽い下血、膿及び粘液を伴う慢性下痢が特徴の大腸の病気である。UCの症状は変化に富んでいる。増悪と寛解の傾向は、約70%のUC患者の臨床経過における典型であるが、一部のUC患者においては、寛解せず持続的な症状を呈する。UCにおける局所又は全身合併症は、関節炎、ぶどう膜炎等の眼の炎症、皮膚潰瘍、及び肝疾患を含む。なお、UC、特に長期に亘る、広範囲の疾患は結腸癌のリスク増加と関連している。
UCは、直腸の最遠位部からさまざまな近位部まで広がるびまん性疾患である。用語「左側大腸炎」は、脾湾曲部まで広がる結腸の遠位部に限局する炎症を示す。直腸又は結腸の右側(近位部)のみの障害は、UCにおいては珍しい。UCの炎症過程は結腸に限られ、例えば、小腸、胃、又は食道などは病変しない。更に、UCは、一般に腸壁の深層に危害を加えず、粘膜の表在性炎症として区別される。腺窩膿瘍(変性した腸陰窩が好中球で満たされたもの)はUCの典型である(Rubin and Farber、上記参照)。
斑点状の疾患で直腸の病変はあまり見られないCDと比較し、UCは、通常近位部においてより遠位部において、より重症な結腸の連続的な炎症を起こすという特徴を持っている。UCの炎症は、表在性且つ通常は粘膜層に限られ、好中球浸潤を伴う急性炎症及び腺窩膿瘍の特徴を持っている。その一方、CDは、必ずしもではないが多くの場合、腸壁全層で肉芽腫が発症する。回盲弁まで、又はそれより遠部の結腸の疾患は、UCを示す一方、回腸末端部への影響、敷石状所見、不連続に見られる潰瘍、又は瘻孔はCDを示唆する。
不定性大腸炎(IC)はCDとUC双方の特徴を持つ、IBDの臨床的なサブタイプである。そのような両方の病気の症状の重複は、ICを有する患者において、一時的に(例えば、病気の初期段階において)若しくは持続的に(例えば、その病気進行を通して)起こり得る。臨床的に、ICは直腸出血の有無を問わず、腹痛及び下痢の症状を特徴として有する。例えば、疾患を有する患者には、正常粘膜により隔てられた、非連続で多数の潰瘍形成を伴う大腸炎が認められる。組織学的に、貫壁性炎症を伴う重症潰瘍には傾向がある。直腸は一般的に発病せず、リンパ系の炎症細胞は凝集しない。筋細胞溶解(myocytolysis)による病巣と共に、深い割れ目のような亀裂が観察されるが、IC患者の杯細胞の維持と共に、介在粘膜からは一般的に軽度のうっ血が生じる。
(V.IBDマーカー)
多種にわたる炎症性腸疾患(IBD)マーカー(生化学的マーカー、血清学的マーカー、遺伝子マーカー、或いは他の臨床的又は超音波診断学的特徴等)は、IBDと決定付けるために本発明の統計的アルゴリズムで用いるのに好適である。例えば、個体からの試料をIBD試料として分類する事による。本明細書に記載されているIBDマーカーは、IBDの臨床的なサブタイプ間の区別に本発明の統計的アルゴリズムで用いるのにも好適である。例えば、個体からの試料をCD又はUC試料として分類する事による。本発明で使用されるのに好適なマーカーの例は、抗好中球抗体(例えば、ANCA、pANCA、cANCA、NSNA、SAPPA、等)、抗サッカロミセス・セレビジエ抗体(例、ASCA−IgA、ASCA−IgG、ASCA−IgM、等)、抗菌抗体(例えば、抗OmpC抗体、抗フラジェリン抗体、抗I2抗体、等)、ラクトフェリン、抗ラクトフェリン抗体、エラスターゼ、C反応性タンパク質(CRP)、カルプロテクチン、ヘモグロビン、NOD2/CARD15、及びそれらの組み合わせを包含するが、これらに限定されない。当業者は、本発明の統計的アルゴリズムで使用するのに適切な追加的なマーカーを理解するだろう。
試料におけるANCA値及び/又はpANCAの有無の決定は本発明において有用である。本明細書において、「抗好中球細胞質抗体」又は「ANCA」の用語は、好中球の細胞質及び/又は核成分に対する抗体を含む。ANCA活性は、好中球のANCA染色パターンから大きくいくつかに分類される。それらは、(1)核周囲を強調しない細胞質好中球染色(cANCA);(2)核の外側の周りの核周囲染色(pANCA);(3)核の内側の周りの核周囲染色(NSNA);及び(4)好中球全体に亘り斑状をつけるびまん性染色(SAPPA)である。場合により、pANCA染色は、デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)処理に対して感度が良い。用語、ANCAはさまざまな抗好中球反応性すべてを包含し、cANCA、pANCA、NSNA、及びSAPPAを含むが、それらに限定されない。同様に、用語、ANCAは免疫グロブリンイソタイプすべてを包含し、免疫グロブリンA及びGを含むが、それらに限定されない。
個体からの試料におけるANCA値は、例えば、酵素免疫測定法(ELISA)等の免疫測定法で、アルコール固定化好中球と共に、決定できる(例えば、実施例1参照)。pANCA等の特定の種類のANCAの有無は、例えば、間接蛍光抗体(IFA)法等の免疫組織化学検査により決定できる。好ましくは、試料におけるpANCAの有無は、DNase処理され固定された好中球の免疫蛍光法で決定する(例えば、実施例2参照)。固定された好中球に加えて、ANCA値の決定工程に好適なANCAに特異的な抗原は、未精製又は部分精製された好中球の抽出物;精製されたタンパク質、タンパク質断片、又はヒストンHI或いはそのANCA反応性断片等の合成ペプチド(例えば、米国特許第6,074,835号参照);ヒストンHIの様な抗原、ポーリン抗原、バクテロイデス抗原、又はそのANCA反応性断片(例えば、米国特許第6,033,864号参照);分泌小胞抗原又はそのANCA反応性断片(例えば、米国特許出願第08/804,106号参照);及び抗ANCAイディオタイプ抗体を含むが、これに限定されない。当業者は、ANCAに対し特異的な追加的な抗原の使用は本発明の範囲内と理解するであろう。
試料のASCA(例、ASCA−IgA及び/又はASCA−IgG)値の決定工程は、本発明においても有用である。本明細書において、用語、「抗サッカロミセス・セレビジエ免疫グロブリンA」又は「ASCA−IgA」は、サッカロミセス・セレビジエと特異的に反応する免疫グロブリンAイソタイプから成る抗体を包含する。同様に、用語、「抗サッカロミセス・セレビジエ免疫グロブリンG」又は「ASCA−IgG」は、サッカロミセス・セレビジエと特異的に反応する免疫グロブリンGイソタイプから成る抗体を包含する。
試料がASCA−IgA又はASCA−IgG陽性であるか否かの決定は、ASCAに対し特異的な抗原を用いて測定される。抗原は、ASCA−IgA及び/又はASCA−IgGが特異的に結合しているいかなる抗原又は抗原混合物がなり得る。ASCA抗体は、もともとサッカロミセス・セレビジエと結合する能力により特徴付けられていたが、当業者は、ASCAに特異的に結合する抗原は、サッカロミセス・セレビジエ又は抗原がASCA抗体に特異的に結合できる限り、他のさまざまな供給源から取得できる事を理解するだろう。その結果、試料におけるASCA−IgA及び/又はASCA−IgG値の決定工程に使用され得る、ASCAに対して特異的な抗原の典型的な供給源は、限定されないが、下記を含む。サッカロミセス属又はカンジダ属の細胞のような死酵母すべて;ホスホペプチドマンナン(PPM:phosphopeptidomannan)等の酵母細胞壁マンナン;オリゴマンノシド(oligomannosides)などのオリゴ糖;ネオ糖脂質(neoglycolipids);抗ASCAイディオタイプ抗体;等。サッカロミセス・セレビジエ株(Su1、Su2、CBS1315、或いはBM156)又はカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)株VW32等の酵母の異なる種及び株は、ASCA−IgA及び/又はASCA−IgGに対し特異的な抗原として用いられるのに好適である。ASCAに対し特異的な精製及び合成抗原は、試料におけるASCA−IgA及び/又はASCA−IgG値の決定工程に用いられるのにも好適である。精製抗原の例は、限定はしないが、オリゴマンノシド等の精製されたオリゴ糖抗原を包含する。合成抗原の例は、限定はしないが、合成オリゴマンノシドを包含し、例えば、米国特許公開第20030105060号に記載されている、D−Manβ(l−2)D−Manβ(l−2)D−Manβ(l−2)D−Man−OR、D−Manα(l−2)D−Manα(l−2)D−Manα(l−2)D−Man−OR、及びD−Manα(l−3)D−Manα(l−2)D−Manα(l−2)D−Man−ORであり、その中でRは水素原子、アルキル(C1〜C20)、又は任意の標識された連結基である。
酵母細胞壁マンナンの生成物、例えばPPMは、試料のASCA−IgA及び/又はASCA−IgG値の決定工程に用いられる。水溶性表面抗原等は、当技術分野で周知の適した抽出技術、例えば、オートクレーブにより調製できる。他の方法としては、市販されている物を調達する事ができる(例えば、Lindbergら,Gut,33:909−913(1992)参照)。PPMの酸安定性の部位は、本発明の統計的アルゴリズムにおいても有用である(Sendidら,Clin.Diag.Lab.Immunol.,3:219−226(1996))。試料のASCA値の決定工程に有用な、例となるPPMは、サッカロミセス・ウバルム株ATCC#38926から得られる。実施例3は、酵母細胞壁マンナンの生成法及びELISA法を用いての試料におけるASCA値の測定法を示す。
オリゴマンノシド等の精製したオリゴ糖抗原は、試料のASCA−IgA及び/又はASCA−IgG値の決定工程にもまた有用である。精製したオリゴマンノシド抗原は、好ましくはネオ糖脂質に変換される。例えば、Failleら,Eur.J.Microbiol.Infect.Dis.,11:438−446(1992)に記載されている。当業者は、オリゴマンノシド抗原のASCAとの反応性は、そのマンノシル鎖長(Froshら,ProcNatl.Acad.Sci.USA,82:1194−1198(1985))、アノマー配置(Fukazawaら,"Immunology of Fungal Disease," E.Kurstak(ed.),Marcel Dekker Inc.,New York,pp.37−62(1989);Nishikawaら,Microbiol.Immunol.,34:825−840(1990);Poulainら,Eur.J.Clin.Microbiol.,23:46−52(1993);Shibataら、Arch.Biochem.Biophys.,243:338−348(1985);Trinelら,Infect.Immun.,60:3845−3851(1992))、又はリンケージの位置(Kikuchiら,Planta,190:525−535(1993))を変化させることにより最適化され得る事を理解するだろう。
本発明の方法に使用するのに適当なオリゴマンノシドは、限定はしないが、マンノテトラオースMan(l−3)Man(l−2)Man(l−2)Manを有するオリゴマンノシドを含む。オリゴマンノシドは、例えば、Failleら(上記参照)に記載されるように、PPMから精製され得る。ASCAに対して特異的な典型的なネオ糖脂質は、それぞれのPPMからオリゴマンノシドを解放し、続いて解放されたオリゴマンノシドを4−ヘキサデシルアニリン(4−hexadecylaniline)等へ結合する事により構成され得る。
試料における抗OmpC抗体値の決定工程は、本発明においても有用である。本明細書において、「抗外膜タンパク質C抗体」又は「抗OmpC抗体」という用語は、例えば、PCT国際特許公開第WO01/89361号に記載されているように、細菌外膜ポーリンに対する抗体を含む。用語、「外膜タンパク質C」又は「OmpC」は、抗OmpC抗体と免疫反応する細菌のポーリンを含む。
個体からの試料に存在する抗OmpC抗体の値は、OmpCタンパク質又は免疫反応性断片等の断片を用いて決定できる。試料の抗OmpC抗体値を決定するのに有用な、好ましいOmpC抗原は、OmpCタンパク質、実質的にはOmpCタンパク質と同じアミノ酸配列を有するOmpCポリペプチド、又は、それの免疫反応性断片等の断片を包含するが、これらに限定されない。本明細書において、OmpCポリペプチドは、通常、アミノ酸配列を有するポリペプチドを示し、そのアミノ酸配列は、CLUSTALW等の配列アラインメントプログラムも用いてアミノ酸相同性を決定し、OmpCタンパク質とのアミノ酸配列同一性が約50%以上、好ましくは約60%以上の同一性、更に好ましくは約70%以上の同一性、また更に好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%以上の同一性を有する。抗原は、例えば、大腸菌(E.coli)等の腸内細菌からの精製により、Genbank Accession番号K00541等の核酸の組み換え発現により、液相又は固相ペプチド合成等の合成法により、或いはファージディスプレイ法を用いる事により作製できる。実施例4は、OmpCタンパク質生成及びELISA法を用いて試料における抗OmpC抗体値の解析を示す。
試料の抗I2抗体値の決定工程は、本発明においても有用である。本明細書において、「抗I2抗体」という用語は、例えば、米国特許第6,309,643号で記載されているように、細菌の転写制御因子と相同性を持つ微生物抗原に対する抗体を包含する。用語「I2」は、抗I2抗体と免疫反応する微生物抗原を含む。微生物I2タンパク質は、予測されたクロストリジウム・パステウリアナム(C.pasteurianum)由来のタンパク質4、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のRv3557c、及びアクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)由来の転写制御因子といくつか類似している低い相同性を示す100のアミノ酸のポリペプチドである。I2タンパク質の核酸及びタンパク質配列は、例えば、米国特許第6,309,643号に記載されている。
個体からの試料に存在する抗I2抗体値は、I2タンパク質又はそれの免疫反応性断片等の断片を用いて決定する事ができる。試料の抗I2抗体値の決定工程に有用な、好ましいI2抗原は、限定されないが、I2タンパク質、I2タンパク質と実質的には同じアミノ酸配列を有するI2ポリペプチド、又はそれの免疫反応性断片等の断片を含む。I2ポリペプチドは、クロストリジウム・パステウリアナムタンパク質4とより、I2タンパク質とより多くの配列類似性を示す。そして、I2ポリペプチドは、それのイソタイプ変異型及びホモログを包含する。本明細書において、I2ポリペプチドは、通常アミノ酸配列を有するポリペプチドを示し、そのアミノ酸配列は、CLUSTALW等の配列アラインメントプログラムを用いてアミノ酸相同性が決定され、自然発生I2タンパク質とのアミノ酸配列同一性が約50%以上、好ましくは約60%以上の同一性、更に好ましくは約70%以上の同一性、また更に好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%以上の同一性を有する。I2抗原は、例えば、微生物から精製する事により、I2抗原をコードする核酸の組み換え発現により、液相又は固相ペプチド合成等の合成法により、又はファージディスプレイ法の使用により作製され得る。実施例5は、組み換えI2タンパク質の製造法及びELISA法又は組織学的アッセイを用いての試料の抗I2抗体の解析を示す。
試料における抗フラジェリン抗体値の決定工程は、本発明においても有用である。本明細書において、「抗フラジェリン抗体」という用語は、例えば、PCT国際特許公開第WO03/053220号及び米国特許公開第20040043931号に記載されているように、細菌鞭毛のタンパク質成分に対する抗体を含む。用語、「フラジェリン」は、抗フラジェリン抗体と免疫反応する細菌鞭毛タンパク質を含む。細菌のフラジェリンは、フィラメント形成のため円筒に配置する細菌鞭毛に見られるタンパク質である。
個体からの試料に存在する抗フラジェリン抗体の値は、フラジェリンタンパク質又はそれの免疫反応性断片等の断片を用いて決定され得る。試料における抗フラジェリン抗体値の決定工程に有用な、好ましいフラジェリン抗原は、フラジェリンタンパク質(Cbir−1フラジェリン、フラジェリンX、フラジェリンA、フラジェリンB、それらの断片、及びそれらの組み合わせ等)、フラジェリンタンパク質と実質的には同じアミノ酸配列を有するフラジェリンポリペプチド、又はそれの免疫反応性断片等の断片を包含するが、これらに限定されない。本明細書において、フラジェリンポリペプチドは、通常、アミノ酸配列を有するポリペプチドを示し、そのアミノ酸配列は、CLUSTALW等の配列アラインメントプログラムを用いてアミノ酸相同性が決定され、自然発生フラジェリンタンパク質とのアミノ酸配列同一性が約50%以上、好ましくは約60%以上の同一性、更に好ましくは約70%以上の同一性、また更に好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%以上の同一性を有する。フラジェリン抗原は、例えば、バクテリア(ヘリコバクター・ビリス(Helicobacter Bilis)、ヘリコバクター・ムステラエ(Helicobacter mustelae)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、ブチリビブリオ・フィブリソルベンス(Butyrivibrio fibrisolvens)等及び盲腸に見られるバクテリアからの精製により、フラジェリン抗原をコードする核酸の組み換え発現により、液相又は固相ペプチド合成等の合成法により、又はファージディスプレイ法の使用により、作製され得る。
試料におけるラクトフェリンの存在或いは値の決定工程は、本発明においても有用である。場合により、ラクトフェリンの存在或いは値は、例えば、ハイブリダイゼーション法又は増幅による分析等の検査法により、mRNA発現レベルで検出される。また他の場合においては、ラクトフェリンの存在或いは値は、例えば、免疫測定法(例、ELISA)又は免疫組織化学検査により、タンパク質発現レベルで検出される。Calbiochem(San Diego,CA)から入手できるELISAキットは、血漿、尿、気管支肺胞洗浄、又は脳脊髄液の試料内のヒトラクトフェリンを測定するのに用いられる。同様に、U.S.Biological(Swampscott,MA)から入手できるELISAキットは、血漿試料内のラクトフェリン値の決定工程に用いられる。同じく、TECHLAB,Inc.(Blacksburg,VA)から入手できるELISAキットは、糞便試料内のラクトフェリン値の決定工程に用いられる。それに加えて、米国特許公開第20040137536号は、糞便試料内のラクトフェリン値の上昇の存在を決定するELISA法を示し、米国特許公開第20040033537号は、糞便、粘液、又は胆汁試料内の内因性ラクトフェリンの濃度決定のためのELISA法を示す。ある実施形態において、試料における抗ラクトフェリン抗体の存在或いは値は、その後、例えば、ラクトフェリンタンパク質またはそれの断片を用いて検出される。
試料におけるC反応性タンパク質(CRP)の存在或いは値の決定工程は、本発明においても有用である。場合により、CRPの存在或いは値は、例えば、ハイブリダイゼーション法又は増幅による分析等の検査法により、mRNA発現レベルで検出される。また他の場合においては、CRPの存在或いは値は、例えば、免疫測定法(例、ELISA)又は免疫組織化学検査により、タンパク質発現レベルで検出される。例えば、Alpco Diagnostics(Salem,NH)から入手できる、サンドイッチ比色定量ELISA法は、血清、血漿、尿、又は糞便試料内のCRP値の決定工程に用いられる。同様に、Biomeda Corporation(Foster City,CA)から入手できる、ELISAキットは、試料内のCRP値の検出に用いられる。他のCRP値の決定方法は、例えば、米国特許第6,838,250号及び同6,406,862号且つ米国特許公開第20060024682号及び同20060019410号等に記載されている。
また、潜血、糞便潜血は、多くの場合、胃腸疾患を示し、さまざまなキットが胃腸出血の測定のため開発されてきた。例えば、Beckman Coulter製のHemoccult SENSAは、胃腸出血、鉄欠乏、消化性潰瘍、潰瘍性大腸炎の診断補助キットであり、場合により結腸直腸癌のスクリーニングに使用される。この特定の検査はグアヤク脂が過酸化水素により酸化し、青変する事に基づく。類似する比色分析は、糞便試料の血液検出のための物がHelena Laboratories(Beaumont,TX)から市販されている。他のヘモグロビン或いはヘム活性の存在又値から決定する大便試料の潜血検出法は、例えば、米国特許第4,277,250号、同4,920,045号、同5,081,040号、及び同5,310,684号に記載されている。
カルプロテクチンは、生体のすべての細胞、組織、体液に存在するカルシウム及び亜鉛結合タンパク質である。カルプロテクチンは、好中性顆粒球及びマクロファージの主要タンパク質であり、それらの細胞の細胞画分の総タンパク量の60%をも占める。従って、カルプロテクチンは、好中球の代謝回転の代理マーカーである。糞便内のカルプロテクチン濃度は、腸粘膜の好中球浸潤度及び炎症の重症度と相関している。カルプロテクチンは、少量の(50〜100mg)糞試料を使用し、ELISAで測定する事ができる(例えば、Johneら,Scand J. Gastroenterol.,36:291−296(2001)参照)。
試料におけるNOD2/CARD15遺伝子多型の存在の決定は、本発明においても有用である。例えば、R703Wタンパク質変異体をもたらすC2107Tヌクレオチド変異等のNOD2遺伝子多型は、個体からの試料において識別され得る(例えば、米国特許公開第20030190639号参照)。また別の実施形態においては、NOD2mRNAレベルはIBD分類に役立つ本発明の診断マーカーとして使用され得る。
(VI.試験)
試料がIBD又はそれの臨床的なサブタイプと関連しているか否かを分類するために、当技術分野で周知のさまざまな検査、技術、そしてキットが、試料における1つ又はそれ以上のマーカーの存在或いは値の決定工程に用いられる。
本発明は、一部分において、個体から取得した試料の少なくとも1つのマーカーの存在或いは値の決定工程に依存している。本明細書において、「少なくとも1つのマーカーの存在を決定する」という用語は、当業者の知り得るいかなる定量又は定性法を用いて、関心のある各マーカーの存在を決定する事を含む。場合により、特有の形質、変化、生化学物質又は血清物質(例、タンパク質又は抗体)の有無を決定する定性法は、関心のある各マーカーの検出に好適である。また他の場合において、RNA、タンパク質、抗体、又は活性の有無を決定する定量法は、関心のある各マーカーの検出に好適である。本明細書において、「少なくとも1つのマーカーの値を決定する」という用語は、当業者の知り得るいかなる直接又は間接定量法を用いて、関心のある各マーカーの値を決定する事を含む。場合により、例えば、RNA、タンパク質、抗体、又は活性の相対又は絶対量を決定する定量法は、関心のある各マーカーの値の決定工程に好適である。当業者は、マーカー値の決定工程に有用ないかなるアッセイも、マーカーの存在又は不在の決定にもまた有用であることを理解するだろう。
本明細書において、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子群(ポリクロナール又はモノクロナール及びそのいかなるイソタイプがある)、又は免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な断片を包含する。免疫学的に活性な断片は、特異的に抗原と結合する抗体分子の部位を成す重鎖及び軽鎖可変領域を含む。例えば、Fab、Fab’、又はF(ab’)2として当技術分野で周知の免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な断片は、抗体という用語の意義の範囲内であり、包含される。
フローサイトメトリーは、試料における1つ又はそれ以上のマーカーの存在或いは値の決定工程に用いられる。ビーズをベースとする免疫測定法を含むフローサイトメトリー法は、以下のような決定に用いられる。それらは例えば、カンジダ・アルビカンス及びHIVタンパク質に対する血清抗体の検出に記載されたものと同様の方法による抗体マーカー値の決定工程である(例えば、Bishopら,J.Immunol.Methods,210:79−87(1997);McHughら,J.Immunol.Methods,116:213(1989);Scillianら,Blood,73:2041(1989)を参照されたい)。
マーカーに特異的なリコンビナント抗原発現のためのファージディスプレイ法は、試料における1つ又はそれ以上のマーカーの存在或いは値の決定工程にも用いられる。例えば抗体マーカー等に特異的な抗原を発現するファージ粒子は、必要に応じて、抗ファージモノクロナール抗体等の抗体を用いて、マルチウェルプレートにアンカーされる(Feliciら,"Phage−Displayed Peptides as Tools for Characterization of Human Sera"in Abelson(Ed.),Methods in Enzymol.,267,San Diego: Academic Press,Inc.(1996))。
さまざまな免疫測定法は、競合及び非競合免疫測定法を含み、試料における1つ又はそれ以上のマーカーの存在或いは値の決定工程に用いられる(例えば、Selfら,Curr.Opin.Biotechnol.,7:60−65(1996)を参照されたい)。免疫測定法という用語は、酵素増加免疫測定技法(EMIT:enzyme multiplied immunoassay technique)、エライザ法(ELISA)、抗原捕捉ELISA法、サンドイッチELISA法、IgM抗体捕捉ELISA(MAC ELISA)法、及び微粒子酵素免疫測定法(MEIA:microparticle enzyme immunoassay)等の酵素免疫測定法(EIA);キャピラリー電気泳動イムノアッセイ(CEIA:capillary electrophoresis immunoassays);ラジオイムノアッセイ(RIA:radioimmunoassays);免疫放射定量測定法(IRMA:immunoradiometric assays);蛍光偏光免疫測定法(FPIA:fluorescence polarization immunoassays);及び化学発光法(CL:chemiluminescence assays)を包含するが、これらに限定されない。必要に応じて免疫測定法は、自動化され得る。免疫測定法は、レーザー誘起蛍光法(laser induced fluorescence)とも併用できる(例えば、Schmalzingら,Electrophoresis,18:2184−2193(1997);Bao,J.Chromatogr.B.Biomed.Sci.,699:463−480(1997)参照)。フローインジェクションリポソーム免疫測定法及びリポソーム免疫センサー等のリポソーム免疫測定法は、本発明において用いるのにも好適である。(例えば、Rongenら,J.Immunol.Methods,204:105−133(1997)参照)。それに加えて、ネフェロメトリー法は、タンパク質/抗体複合体の形成が散乱光の増大をもたらし、マーカー濃度に応じてピーク速度信号に変換される。ネフェロメトリー法は、本発明で用いられるのに好適である。ネフェロメトリー法は、Beckman Coulter(Brea,CA;Kit#449430)から市販のものを入手でき、Behring Nephelometer Analyzer(Finkら,J.Clin.Chem.Clin.Biol.Chem.,27:261−276(1989))により、実施できる。
抗原捕捉ELISA法は、試料における1つ又はそれ以上のマーカーの存在或いは値の決定工程に用いられる。例えば、抗原捕捉ELISA法において、関心のあるマーカーに対する抗体は固相に固定され、試料を添加するとマーカーは抗体と結合する。洗浄により固定化されていないタンパク質を除去した後、マーカー固定化量を定量する。例えばラジオイムノアッセイ(例えば、HarlowとLane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York,1988参照)である。サンドイッチELISA法は、本発明で用いられるのにも好適である。例えば、2抗体サンドイッチアッセイにおいて、一次抗体が固定相に固定され、関心のあるマーカーが一次抗体に結合する。マーカー量は、マーカーに結合した二次抗体の量を測定する事により定量される。抗体は、磁性の又はクロマトグラフの基質粒子、アッセイプレートの表面(例、マイクロタイターウェル)、固相基板物質或いは膜の断片(例、プラスチック、ナイロン、紙)又は同等物質のさまざまな固定相に固定化され得る。アッセイストリップは、アレイの固定相に単一又は複数の抗体を塗布する事により、準備される。そしてストリップは試験試料に浸され、素早く洗浄処理され、着色部位等の測定可能なシグナルを生成する検出工程に進む事ができる。
例えば、ヨウ素−125(125I)標識された二次抗体(HarlowとLane,上記参照)を用いたラジオイムノアッセイは、試料における1つ又はそれ以上のマーカーの存在或いは値の決定工程にも好適である。化学発光マーカーにより標識された二次抗体は、本発明での使用にも好適である。化学発光した二次抗体を用いた化学発光法は、感度が良く、マーカー値の非放射性の検出に好適である。二次抗体は、例えば、Amersham Lifesciences,Inc.(Arlington Heights,IL)等のさまざまな供給源から市販の物を入手できる。
前述された免疫測定法は、試料における1つ又はそれ以上のマーカーの存在或いは値を決定するのに特に有用である。非限定的な例としては、固定好中球ELISA法が、試料がANCA陽性か否かの決定工程又は試料のANCA値の決定工程に有用である。同様に、酵母細胞壁ホスホペプチドマンナンを用いたELISAは、試料がASCA−IgA及び/又はASCA−IgG陽性か否かの決定工程、又は試料のASCA−IgA及び/又はASCA−IgG値の決定工程に有用である。OmpCタンパク質又はそれの断片を用いたELISAは、試料が抗OmpC抗体陽性か否かの決定工程、又は試料の抗OmpC抗体値の決定工程に有用である。I2タンパク質又はそれの断片を用いたELISAは、試料が抗I2抗体陽性か否かの決定工程、又は試料の抗I2抗体値の決定工程に有用である。フラジェリンタンパク質又はそれの断片を用いたELISAは、抗フラジェリン抗体陽性か否かの決定工程、又は試料の抗フラジェリン抗体値の決定工程に有用である。それに加え、前述された免疫測定法は、試料における他のマーカーの存在或いは値を決定するのに特に有用である。
関心のあるマーカーへの抗体の特異な免疫学的結合は、直接又は間接的に検出される。直接標識は、抗体と結合する蛍光又は発光タグ、金属、染料、及び同等物を含む。ヨウ素−125(125I)標識された抗体は、試料の1つ又はそれ以上のマーカーの値の決定工程に用いられる。マーカーに特異的な化学発光抗体を用いた化学発光法は、高感度、非放射性のマーカー値の検出に好適である。蛍光色素で標識された抗体は、試料の1つ又はそれ以上のマーカーの値の決定工程にも好適である。蛍光色素の例は、DAPI、フルオレセイン(fluorescein)、ヘキスト33258(Hoechst33258)、R−フィコシアニン(R−phycocyanin)、B−フィコエリスリン(B−phycoerythrin)、R−フィコエリスリン(R−phycoerythrin)、ローダミン(rhodamine)、テキサスレッド(Texas red)、及びリッサミン(lissamine)を包含するが、これらに限定されない。蛍光色素に結合している二次抗体は市販の物を入手できる。例えば、ヤギF(ab’)2抗ヒトIgG−FITCは、Tago Immunologicals(Burlingame,CA)から入手できる。
間接標識は、当技術分野で周知の多種の酵素を含み、それらは、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP:horseradish peroxidase)、アルカリホスファターゼ(AP:alkaline phosphatase)、β−ガラクトシダーゼ(β−galactosidase)、ウレアーゼ(urease)等である。西洋ワサビペルオキシダーゼ検出システムは、例えば、過酸化水素の存在中、450nmで測定可能な可溶性生成物を産出する発色基質テトラメチルベンジジン(TMB:tetramethylbenzidine)と共に用いられる。アルカリホスファターゼ検出システムは、例えば、405nmで容易に測定可能な可溶性生成物を産出する発色基質p−ニトロフェニルリン酸(p−nitrophenyl phosphate)と共に用いられる。同様に、β−ガラクトシダーゼ検出システムは、410nmで測定可能な可溶性生成物を産出する発色基質o−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(ONPG:o−nitrophenyl−β−D−galactopyranoside)と共に用いられる。ウレアーゼ検出システムは、尿素及ブロモクレゾールパープル(urea−bromocresol purple)(Sigma Immunochemicals;St.Louis,MO)等の基質と用いられる。酵素と結合している有用な二次抗体は、多くの市販の供給源から入手できる。例えば、ヤギF(ab’)2抗ヒトIgG−アルカリホスファターゼは、Jackson ImmunoResearch(West Grove,Pa.)から購入できる。
直接又は間接標識からのシグナルは、ある一定の波長光の存在下、例えば、発色基質の着色検出用の分光光度計、125I検出のためのガンマ線測定器等の放射線検出用の放射線測定器、又は蛍光測定用の蛍光光度計を用いて解析され得る。酵素結合抗体の検出には、メーカーの取扱説明書に従い、EMAX Microplate Reader(Molecular Devices;Menlo Park,CA)等の分光光度計を使用した、マーカー値量の定量的解析がある。必要に応じて本発明のアッセイは、自動化又はロボット制御され、複数試料からのシグナルは同時に検出され得る。
定量的ウエスタンブロット法は、試料における1つ又はそれ以上のマーカーの存在或いは値を検出又は決定工程にも用いられる。ウエスタンブロット法は、濃度測定又はホスホイメージングスキャニング等の周知の方法により定量できる。非限定的な例として、タンパク質試料は、10%SDS−PAGEレムリ(Laemmli)ゲルで電気泳動される。一次マウスモノクロナール抗体は、ブロットと反応し、抗体結合は、予備スロットブロット実験において直線になる事が確認される。抗体と結合したヤギ抗マウス西洋ワサビペルオキシダーゼ(BioRad)は二次抗体として用いられ、例えば、メーカーの取扱説明書に従いルネッサンス(Renaissance)ケミルミネッセンスキット(New England Nuclear;Boston,MA)等の化学発光を用いてシグナル検出が実施される。ブロットのオートラジオグラフは、走査濃度計(Molecular Dynamics;Sunnyvale,CA)を用いて解析され、陽性コントロールに対し標準化される。例えば、実効値対陽性コントロールの比率(濃度指標:densitometric index)等の形式で、数値は記録される。それらの方法は当技術分野で周知であり、例えば、ParraらのJ.Vasc.Surg.,28:669−675(1998)に記載されている。
その他にも、さまざまな免疫組織化学検査技術が、試料における1つ又はそれ以上のマーカーの存在或いは値の決定工程に用いられる。免疫組織化学検査という用語は、蛍光顕微鏡又は光学顕微鏡を用いて、関心のあるマーカーと反応する抗体に対して蛍光色素又は酵素結合(即ち、コンジュゲート)等の視覚的検出を使用する技術を包含し、限定されないが、直接蛍光抗体法、間接蛍光抗体法(IFA)、抗補体免疫蛍光法、アビジン−ビオチン免疫蛍光法、及び免疫ペルオキシダーゼ法を含む。IFA法は、例えば、試料がANCAに陽性か否か、試料のANCA値、試料がpANCA陽性か否か、試料のpANCA値、及び/又はANCA染色パターン(例、cANCA、pANCA、NSNA、及び/又はSAPPA染色パターン)の決定に有用である。試料のANCA濃度は定量化できる。例えば、滴定終点又は既知の参照基準と比較された可視蛍光強度測定によりなし得る。
その他にも、精製したマーカー量を検出若しくは定量する事により、関心のあるマーカーの存在或いは値は決定され得る。マーカーの精製は、例えば、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC:high pressure liquid chromatography)単独又は質量分析と組み合わせる事により達成できる(例、MALDI/MS、MALDI−TOF/MS、タンデムMS等)。関心のあるマーカーの定性的又は定量的検出は、周知の方法においても決定され、周知の方法はブラッドフォード(Bradford)法、クマシー・ブルー(Coomassie blue)染色、銀染色、放射能標識されたタンパク質の検査方法、及び質量分析を包含するが、これらに限定されない。
複数のマーカーの解析は、1つの試験試料に対して、単独或いは同時に実施される。マーカーの単独又は連続測定を目的とした好適な装置は、ElecSys(Roche)、AxSym(Abbott)、Access(Beckman)、ADVIA(登録商標)、CENTAUR(登録商標)(Bayer)、及びNICHOLS ADVANTAGE(登録商標)(Nichols Institute)免疫測定装置等を含む。好ましい装置又はタンパク質チップは、単一の表面上の複数のマーカーを同時測定する。特に有用な物理フォーマットは、複数の異なるマーカー検出のために複数の散在した特定可能な位置を有する面を構成する。フォーマットは、タンパク質マイクロアレイ又は「タンパク質チップ」(例えば、Ngら,J.Cell MoI.Med.,6:329−340(2002)参照)及び特定のキャピラリー装置(例えば、米国特許第6,019,944号参照)を含む。それらの実施形態において、各散在した表面位置は、各位置における検出のための1つ又はそれ以上のマーカーを固定化する抗体を構成してもよい。或いは表面は、表面の散在した位置に固定化された1つ又はそれ以上の拡散した粒子(例、微粒子又はナノ粒子)を構成し、又、微粒子は検出のため1つ又はそれ以上のマーカーを固定するための抗体を構成してもよい。
前述された多種の関心のあるマーカーの存在或いは値を決定するアッセイに加えて、ノーザン解析、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、或いはマーカーコード配列(例、スロットブロットハイブリダイゼーション)の一部を補完する核酸配列のハイブリダイゼーションに基づく他の方法等、習慣的な技法を用いてのマーカーmRNA値の解析も、本発明の範囲内である。適用できるPCR増幅法は、例えば、Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,Inc.New York(1999),Chapter7 and Supplement 47;Theophilusら,"PCR Mutation Detection Protocols,"Humana Press,(2002);及びInnisら,PCR Protocols,San Diego,Academic Press,Inc.(1990)に記載されている。一般的な核酸ハイブリダイゼーション法は、Andersonによる"Nucleic Acid Hybridization,"(BIOS Scientific Publishers,1999)に記載されている。複数の転写された核酸配列(例、mRNA又はcDNA)の増幅又はハイブリダイゼーションは、マイクロアレイにより配列されたmRNA又はcDNA配列でも実施される。マイクロアレイ解析は、Hardimanによる"Microarray Methods and Applications:Nuts&Bolts,"(DNA Press,2003);及びBaldiらによる"DNA Microarrays and Gene Expression:From Experiments to Data Analysis and Modeling,"(Cambridge University Press,2002)で広く示されている。
遺伝子マーカー等のマーカーの遺伝子型解析は、当技術分野で周知の技術を用いて実施され、限定されないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による解析、配列分析、及び電気泳動を含む。PCRによる解析の非限定的な例は、Applied Biosystemsから入手できるTaqman(登録商標)対立遺伝子識別アッセイ(allelic discrimination assay)を含む。配列解析の非限定的な例は、マクサム・ギルバート法(Maxam−Gilbert sequencing)、サンガー法(Sanger sequencing)、キャピラリーアレイDNAシークエンサー、サーマルサイクルシークエンス法(Searsら,Biotechniques,13:626−633(1992))、固相法(Zimmermanら,Methods Mol.Cell Biol.,3:39−42(1992))、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF/MS;Fuら,Nature Biotech.,16:381−384(1998))等の質量分析による配列決定、及びハイブリダイゼーションによる配列決定(Cheeら,Science,274:610−614(1996);Drmanacら,Science、260:1649−1652 1993);Drmanacら,Nature Biotech.,16:54−58(1998))を含む。電気泳動の非限定的な例は、アガロース又はポリアクリルアミドゲル電気泳動等のスラブゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、及び変性勾配ゲル電気泳動を包含する。マーカーの多型部位において個体の遺伝子型決定する他の方法は、例えば、Third Wave Technologies,Inc.のINVADER(登録商標)アッセイ、制限酵素断片長多型(RFLP:restriction fragment length polymorphism)解析、アレル特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション法、ヘテロ二本鎖の移動度に基づく解析(heteroduplex mobility assay)、及び一本鎖高次構造多型(SSCP:single strand conformational polymorphism)解析を含む。
関心のあるいくつかのマーカーは、複数試料を効果的に処理するために一回の検査に組み合わせられる。更に、当業者は、同一対象からの得た複数試料の検査(例、時系列において等)の価値を認知する。連続試料検査等は、マーカーレベルの経時的な変化の識別を可能にする。マーカー値の増減、及びマーカー値の不変はまた、IBDの分類又はIBDの臨床的なサブタイプ間の区別にも有用な情報を提供する事ができる。
上述された1つ又はそれ以上のマーカーから成るパネルは、試料がIBD又はそれの臨床的なサブタイプに関連していると分類するための本発明の方法に関係する必要な情報を提供するために組み立てられてもよい。パネルは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40又はそれ以上の個体マーカーを用いて組み立ててもよい。単一マーカー又はサブセットマーカーの解析は、さまざまな臨床条件においても当業者により実施され得る。臨床条件は、限定されないが、外来環境、応急手当て、救命救急診療環境、集中治療環境、モニタリングユニット、入院患者、外来患者、診療所、内科診療所、及び精密検査の条件を含む。
マーカー解析は、さまざまな物理フォーマットでも実施され得る。例えば、マイクロタイタープレートの使用又は自動化は、多数の試験試料の処理を円滑にするためになされる。その他にも、単一試料のフォーマットは、時宜に即した治療及び診断を容易にするために開発され得る。
(VII.統計的アルゴリズム)
ある態様において、本発明は、統計的アルゴリズムを用いて試料がIBDと関連しているか否かを分類する方法、システム、及びコード又は試料をIBD試料又は非IBD試料として分類する一連の過程を提供する。他の態様において、本発明は、統計的アルゴリズムを用いて試料がIBDの臨床的なサブタイプと関連しているか否かを分類する(即ち、CD又はUC間の区別)方法、システム、及びコード又は試料をCD試料、UC試料、又は非IBD試料として分類する一連の過程を提供する。好ましくは、統計的アルゴリズム又は一連の過程は、1つ又はそれ以上の学習統計的分類子システムを独立して構成する。本明細書で記載の通り、学習統計的分類子システムの組み合わせは、有利に、試料がIBD又はそれの臨床的なサブタイプと関連しているか否かの分類の感度、特異度、陰性的中率、陽性的中率、及び/又は精度向上を提供する。
用語、「統計的アルゴリズム」又は「統計処理」は、変化の関係を決定するのに用いられるいかなる多種の統計的解析をも含む。本発明において変化とは、関心のある少なくとも1つのマーカーの存在或いは値である。あらゆるマーカーが本明細書で記載されている統計的アルゴリズムを用いて解析され得る。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、又はそれ以上のマーカーの存在或いは値が統計的アルゴリズムに含まれる。一実施形態においてはロジスティック回帰が使用される。他の実施形態においては線形回帰が使用される。場合によっては、本発明の統計的アルゴリズムは、変化として、一定の集団内で特定のマーカーのクォンタイル法を用いる。クォンタイルとは、試料データを(可能な限り)同数の所見結果を含むグループに分割した、一連の「カットポイント」である。例えば、四分位数は、試料データを(可能な限り)同数の所見結果を含む4つのグループに分割した値である。下位四分位点は、順序付けされたデータセットの中で4分の1上位のデータ値である。上位四分位点は、順序付けされたデータセットの中で4分の1下位のデータ値である。五分位数は、試料データを(可能な限り)同数の所見結果を含む5つのグループに分割した値である。本発明は、マーカー値(例、三分位数、四分位数、五分位数等)のパーセンタイルの範囲、或いはアルゴリズムにおける変化(連続変化と同時に)のそれらの累計指数(例、合計マーカー値の四分位数等)の活用も包含する。
好ましくは、本発明の統計的アルゴリズムは、1つ又はそれ以上の学習統計的分類子システムを構成する。本明細書において、「学習統計的分類子システム」という用語は、データセット等に基づき、複合データセット(例、関心のあるマーカーからなるパネル)への適応及び決定を下せる機械学習アルゴリズムの技法を含む。ある実施形態において、分類木(例、ランダムフォレスト)等の単一学習統計的分類子システムが用いられる。他の実施形態において、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上の学習統計的分類子システムの組み合わせが使用され、好ましくはタンデムに用いられる。学習統計的分類子システムの例は、限定されないが、帰納的学習(例、ランダムフォレスト、分類・回帰木(C&RT)、ブーストされた木、等の決定・分類木)、確率的近似学習(PAC:Probably Approximately Correct learning)法、コネクショニスト学習(例、ニューラルネットワーク(NN)、人工ニューラルネットワーク(ANN)、ニューロファジィネットワーク(NFN)、ネットワーク構造、多層パーセプトロン等のパーセプトロン、多層フィードフォワード型ネットワーク、ニューラルネットワークの応用、ベイジアン(Bayesian)学習概要ネットワーク、等)、強化学習(例、ナイーブ学習、適応動的学習、及びTD(temporal difference)学習等の既知環境での受動的な学習、未知環境での受動的な学習、未知環境での能動学習、行動価値関数の学習、強化学習の応用等)、及び遺伝的アルゴリズム且つ進化的プログラムを用いるそれらを含む。他の学習統計的分類子システムは、サポートベクターマシン(例、カーネル(Kernel)法、多変量適応的回帰スプライン(MARS:multivariate adaptive regression splines)、レーベンバーグ マルカート法、ガウスニュートン(Gauss−Newton)法、混合ガウス(Gaussians)、勾配降下アルゴリズム、及び学習ベクトル量子化(LVQ:learning vector quantization)を含む。
ランダムフォレストは、Leo Breiman及びAdele Cutlerにより開発されたアルゴリズムを用いて構築された学習統計的分類子システムである。ランダムフォレストは、多数の単一決定木を用い、単木で決定された分類の方法(即ち、最も頻出する)を選択する事により、クラスを決定する。ランダムフォレスト解析は、Salford Systems(San Diego、CA)から入手できるRandomForests Softwareを用いて実施される。ランダムフォレストの説明に関しては、例えば、Breiman,Machine Laerning,45:5−32(2001)及びhttp://stat−www.berkeley.edu/users/breiman/RandomForests/cc_home.htm,を参照されたい。
分類・回帰木は、古典的回帰モデルにフィッティングするコンピュータを駆使した代替案を示し、一般的には、1つ又はそれ以上予測判断材料に基づき関心の分類別又は連続応答のための最良のモデル決定に用いられる。分類・回帰木解析は、例えば、Salford Systemsから入手できるC&RTソフトウェア又はStatSoft,Inc.(Tulsa,OK)から入手できるStatisticaデータ解析ソフトウェアを用いて実施され得る。分類・回帰木の説明は、例えば、Breimanらによる"Classification and Regression Trees,"ChapmanとHall,New York(1984);及びSteinbergらによる"CART:Tree−Structured Non−Parametric Data Analysis,"Salford Systems,San Diego,(1995)に示されている。
ニューラルネットワークは、計算結果に対するコネクショニストアプローチに基づく情報処理のための数理又は計算モデルを用いて相互結合した人口ニューロン群である。通常、ニューラルネットワークは、そのネットワークを流れる外部又は内部情報に基づくそれらの構造を変化させる適応システムである。ニューラルネットワークの具体例は、パーセプトロン、単層パーセプトロン、多層パーセプトロン、バックプロパゲーションネットワーク、ADALINEネットワーク、MADALINEネットワーク、ラーンマトリックス(Learnmatrix)ネットワーク、動径基底関数(RBF:radial basis function)ネットワーク、及び自己組織化マップ又はコホネン(Kohonen)自己組織化ネットワーク等のフィードフォワード型ニューラルネットワーク;単純リカレントネットワーク及びホップフィールド(Hopfield)ネットワーク等のリカレントニューラルネットワーク;ボルツマン(Boltzmann)マシン等の確率的ニューラルネットワーク;コミティマシン(committee of machines)及び関連するニューラルネットワーク等のモジュラーニューラルネットワーク;及び瞬間的に訓練される(instantaneously trained)ニューラルネットワーク、スパイキングニューラルネットワーク、動的ニューラルネットワーク、及びカスケーディングニューラルネットワーク等の他のネットワークタイプを含む。ニューラルネットワーク解析は、例えば、StatSoft,Inc.から入手できるStatisticaデータ解析ソフトウェアを用いて実施され得る。ニューラルネットワークの説明に関しては、例えば、Freemanらの"Neural Networks:Algorithms,Applications and Programming Techniques,"Addison−Wesley Publishing Company(1991);Zadeh,Information and Control,8:338−353(1965);Zadeh,"IEEE Trans.on Systems,Man and Cybernetics,"3:28−44(1973);Gershoらの"Vector Quantization and Signal Compression,"Kluywer Academic Publishers,Boston,Dordrecht,London(1992);及びHassoun,"Fundamentals of Artificial Neural Networks,"MIT Press,Cambridge,Massachusetts,London(1995)を参照されたい。
サポートベクターマシンは、分類と回帰に用いられる一連の関連教師付き学習法である。例えば、Cristianiniらの"An Introduction to Support Vector Machines and Other Kernel−Based Learning Methods,"Cambridge University Press(2000)に記載されている。サポートベクターマシン法は、例えば、Thorsten Joachims(Cornell University)により開発されたSVMlightソフトウェアを用いて、又はChih−Chung ChangとChih−Jen Lin(National Taiwan University)により開発されたLIBSVMソフトウェアを用いて、実行され得る。
本明細書で述べられている学習統計的分類子システムは、健常人及びIBD患者からの試料(例えば、血清試料)のコホートを用いて訓練又は試験され得る。例えば、米国特許第6,218,129号に記載があるように、医師、好ましくは胃腸科専門医により、生検、大腸内視鏡検査、又は免疫測定法を用いて、IBDを有すると診断された患者からの試料は、本発明の学習統計的分類子システムの訓練及び試験に用いられるのに好適である。IBDを有すると診断された患者からの試料は、例えば、米国特許第5,750,355号及び同5,830,675号に記載がある様に、免疫測定法を用いてクローン病又は潰瘍性大腸炎にも階層化され得る。健常者からの試料とは、IBD試料と識別されなかった試料を含み得る。当業者は、本発明の学習統計的分類子システムの訓練及び試験に用いられるであろう患者試料のコホートを立ち上げるための追加的な技術及び診断基準を知るであろう。
本明細書において、「感度(sensitivity)」という用語は、試料が陽性の場合(即ち、IBD又はそれの臨床的なサブタイプを患っている場合)、本発明の診断方法、システム、又はコードが陽性結果を出す確率を言う。感度は、真陽性結果数を真陽性と偽陰性の総数で割り計算される。感度とは基本的に、いかに良く本発明の方法、システム、及びコードが、IBD又はそれの臨床的なサブタイプを有していない個体から、IBD又はそれの臨床的なサブタイプを有する個体を正確に鑑別するかの基準である。統計的アルゴリズムは以下の様な時に選択される。IBD又はそれの臨床的なサブタイプ(例、CD又はUC)分類の感度が少なくとも約60%、そして、例えば、少なくとも約65%、70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%。好適な実施形態において、学習統計的分類子システムの組み合わせを用いると、IBD又はそれの臨床的なサブタイプ分類の感度は少なくとも約90%である(実施例6参照)。
「特異度(specificity)」という用語は、本発明の方法、システム、及びコードが、その試料が陽性でない場合(例えば、IBD又はそれの臨床的なサブタイプを有していない場合)に陰性の結果を出す確率を言う。特異度は、真陰性結果数を真陰性及び偽陽性の総数で割り計算される。特異度とは基本的に、いかに良く本発明の方法、システム、及びコードが、IBD又はそれの臨床的なサブタイプを有する個体から、IBD又はそれの臨床的なサブタイプを有していない個体を除外するかの基準である。統計的アルゴリズムは、以下の様な時に選択される。IBD又はそれの臨床的なサブタイプ(例、CD又はUC)分類の特異度が少なくとも約70%、例えば、少なくとも約75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%。好適な実施形態において、学習統計的分類子システムの組み合わせを用いると、IBD又はそれの臨床的なサブタイプ分類の特異度は少なくとも約90%である(実施例6参照)。
本明細書において、「陰性的中率(negative predictive value)」又は「NPV」という用語は、IBD又はそれの臨床的なサブタイプを有していないと識別された個体が実際にその疾患を有していない確率を言う。陰性的中率は、真陰性数を真陰性及び偽陰性の総数で割り計算される。陰性的中率は、診断方法、システム、コードの特性の他にも解析される個体群における疾患有病率により決定する。統計的アルゴリズムは、罹患率がわかる個体群の陰性的中率が約70%から約99%の範囲及び、例えば、少なくとも約70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の時選択される。好適な実施形態において、学習統計的分類子システムの組み合わせを用いると、IBD又はそれの臨床的なサブタイプ分類の陰性的中率は、少なくとも約78%である(実施例6参照)。
「陽性的中率(positive predictive value)」又は「PPV」という用語は、IBD又はそれの臨床的なサブタイプを有すると識別された個体が実際にその疾患を有する確率を言う。陽性的中率は、真陽性数を真陽性及び偽陽性の総数で割り計算される。陽性的中率は、診断方法、システム、コードの特性の他にも解析される個体群における疾患有病率において決定する。統計的アルゴリズムは、罹患率がわかる個体群の陽性的中率が約80%〜約99%の範囲内及び例えば、少なくとも約80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%。好適な実施形態において、学習統計的分類子システムの組み合わせを用いると、IBD又はそれの臨床的なサブタイプ分類の陽性的中率は、少なくとも約86%である(実施例6参照)。
予測値は、陰性及び陽性的中率を含み、解析される個体群における疾患の有病率に影響される。本発明の方法、システム、及びコードにおいて、統計的アルゴリズムは、特定のIBD罹患率を有する臨床群に対する望ましい臨床的指標を設定するために選択され得る。例えば、学習統計的分類子システムは、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、又は70%までのIBD罹患率に対して選択され得る。そしてこれらは例えば、胃腸科専門医の診療所や一般開業医の診療所等を含む臨床医の診療所において見られる。
本明細書において、用語「包括的な合意(overall agreement)」又は「精度(overall accuracy)」は、症状を分類する本発明の方法、システム、及びコードの正確さを言う。精度は、真陽性及び真陰性の総数を試料結果の全体数で割り計算され、解析される個体群の疾患の有病率の影響を受ける。例えば、その統計的アルゴリズムは、罹患率がわかる患者集団の精度が少なくとも約60%、及び例えば、少なくとも約65%、70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の時に選択され得る。好適な実施形態において、学習統計的分類子システムの組み合わせが用いられる場合、IBD又はそれの臨床的なサブタイプ分類の精度は少なくとも約90%(例、92%)である。
(VIII.疾患分類システム(DCS:Disease Classification System))
図1は、本発明の一実施形態に関する疾患分類システム(DCS)(100)を図示している。本明細書に開示されるように、DCSはコンピュータ等のプロセッサ(115)及びメモリーモジュール(110)を有するDCSインテリジェンスモジュール(105)である。インテリジェンスモジュールは、1つ又はそれ以上の直接接続(例、USB、Firewire、又は他のインターフェース)及び1つ又はそれ以上のネットワーク接続(例、モデム又は他のネットワークインターフェース機器を含む)上で情報を送受信する通信モジュールも(図示せず)を含む。メモリーモジュールは、内部メモリデバイス及び1つ又はそれ以上の外部メモリデバイスを含めてもよい。インテリジェンスモジュールは、モニター又はプリンター等のディスプレイモジュール(125)も含む。一態様において、インテリジェンスモジュールは、直接接続を通じて又はネットワーク(140)上で、検査システム(150)等のデータ収集モジュールからの患者の検査結果などのデータを受信する。例えば、検査システムは、1つ又はそれ以上の患者試料(155)に対し複数検体検査を行い、インテリジェンスモジュールに検査結果を自動的に提供する事を構成しても良い。データは、ユーザーの直接入力によりインテリジェンスモジュールに提供する事もでき、またコンパクトディスク(CD)或いはデジタル多用途ディスク(DVD)等の携帯記憶媒体からダウンロードする事も可能である。検査システムは、インテリジェンスモジュールに直接的につなぎ、インテリジェンスモジュールと統合される。若しくは、ネットワーク上でインテリジェンスモジュールに遠隔的につながれてもよい。インテリジェンスモジュールは、周知の通り、ネットワーク上で1つ又はそれ以上のクライアントシステム(130)へ又はからデータも伝えられる。例えば、要求している医者又は医療サービス提供者は、クライアントシステム(130)を用いて研究所又は病院に置いておけるであろうインテリジェンスモジュールからのレポートを取得及び閲覧しても良い。
ネットワークは、LAN(ローカルエリアネットワーク)、WAN(ワイドエリアネットワーク)、ワイヤレスネットワーク、ポイントツーポイントネットワーク、スター型ネットワーク、トークンリングネットワーク、ハブネットワーク、又は他の構成がある。現在使用されている最も一般的なネットワークは、ネットワークのグローバルな相互接続ネットワーク等のTCP/IP(伝送制御プロトコル/インターネットプロトコル:Transfer Control Protocol and Internet Protocol)ネットワークである。ネットワークのグローバルな相互接続ネットワークは、しばしば「インターネット:Internet」と大文字の「I」のInternetとして称されており、本明細書の多くの実施例で使用されるが、本発明が用いるネットワークは、TCP/IPが現在好適なプロトコルとされるが、これに限定されない事を理解しなくてはならない。
図1に示されているシステムにおけるいくつかの要素は、慣習で、周知の要素であり、本明細書において詳細を説明する必要性がない。例えば、インテリジェンスモジュールは、デスクトップ型パソコン、ワークステーション、メインフレーム、ラップトップ等として実施される。各クライアントシステムは、デスクトップ型パソコン、ワークステーション、ラップトップ、PDA、携帯電話、又はいかなるWAP可能な装置又は他のいかなるインターネット又は他のネットワーク接続に直接的に又は間接的にインターフェース可能なコンピュータデバイスを含み得る。クライアントシステムとは一般的に、HTTPクライアント(例えば、Microsoft’s Internet Explorer(登録商標)ブラウザー、Netscape’s Navigator(登録商標)ブラウザー、Opera’sブラウザー、又は携帯電話、PDA又は他のワイヤレス装置の場合にはWAP可能なブラウザー等のブラウジングプログラム)を実行し、クライアントシステムのユーザーがネットワーク上でインテリジェンスモジュールから入手可能な情報及びページへのアクセス、処理、及び参照する事を許可する。各クライアントシステムは、インテリジェンスモジュールから提供されたページ、フォーム及び他の情報と併せて、ディスプレイ(例えば、モニタースクリーン、LCDディスプレイ等)(135)上にブラウザーにより提供されたグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)と相互に作用するためのキーボード、マウス、タッチスクリーン、ペン又は同等物等の1つ又はそれ以上のユーザーインターフェース機器も含む。前述されたように、本発明は、ネットワークの特定のグローバル相互接続ネットワークを含むInternetでの使用に好適である。しかしながら、Internetに代わる他のネットワークを用いられる事を理解しなければならず、他のネットワークとは、イントラネット、エクストラネット、仮想プライベートネットワーク(VPN)、非TCP/IPベースネットワーク、いかなるLAN又はWAN、または同等物をいう。
一実施形態によると、各クライアントシステム及びそのすべての要素は、Intel Pentium(登録商標)プロセッサ及び同等物等の中央処理装置を使用するコンピュータの実行を含むブラウザー等のアプリケーションを用いてオペレータ設定可能である。同様に、インテリジェンスモジュール及びそのすべての要素は、Intel Pentium(登録商標)プロセッサ及び同等物等の中央処理装置(115)、又は複数プロセッサを使用するコンピュータコードの実行を含む単一又は複数のアプリケーションを用いてオペレータ設定可能である。本明細書に記載されているデータと検査結果を処理するインテリジェンスモジュールを操作及び構成するためのコンピュータコードは、好ましくはハードディスクにダウンロード及び格納されるが、プログラムコード全体、若しくはそれの一部は、他のいかなる周知の揮発性又は非揮発性記憶媒体又は装置、例えばROM又はRAM、にも格納される。また上記プログラムコード全体、若しくはそれの一部は、コンパクトディスク(CD)媒体、デジタル多用途ディスク(DVD)媒体、フロッピー(登録商標)ディスク、ROM、RAM、及び同等物等のプログラムコードの格納が可能なコンピュータ読み取り可能記憶媒体(160)にも提供される。
本発明のさまざまな実施例及び実施形態を実行するコンピュータコードは、例えば、C、C++、C#、HTML、Java(登録商標)、JavaScript(登録商標)、又はVBScript等の他のスクリプト言語等での、コンピュータシステムを遂行し得るいかなるプログラミング言語により実行され得る。加えて、プログラムコード全体、若しくはそれの一部は、周知の通り通信媒体及びプロトコル(例、TCP/IP、HTTP、HTTPS、Ethernet(登録商標)、等)を用いて、Internet又は周知の他の従来ネットワーク接続(例、エクストラネット、VPN、LAN、等)上でソフトウェアソース(例、サーバー)から送信又はダウンロードされるキャリア信号として統合されてもよい。
一実施形態によると、インテリジェンスモジュールは、患者試料がIBD又はそれの臨床的なサブタイプと関連しているか否か決定するために患者検査結果を解析する疾患分類作業を実行する。データは、メモリー(110)に構築されている1つ又はそれ以上のデータ表又は他の論理データに格納されるか、又はインテリジェンスモジュールに結合している別個の記憶装置若しくはデータベースシステムに格納されてもよい。統計処理は、患者試料における検査データを含むデータセットに適用される。一態様において、例えば、検査データは、患者試料における少なくとも1つのマーカーの存在或いは値を示すデータが含まれる。統計処理は、少なくとも1つのマーカーの存在或いは値に基づいて、患者試料をIBD(例、CD又はUC)試料又は非IBD試料として分類する統計的に導出された決定を生む。統計的に導出された決定は、インテリジェンスモジュールと関連又は連結したディスプレイ装置上に表示され、また、この決定は、例えばクライアントシステム(130)等の個別のシステムに提供及び表示されてもよい。表示された結果は、医師による道理に基づいた診断を可能にする。
(IX.治療及び治療モニタリング)
個体からの試料がIBD(例、CD又はUC)試料と分類された時点で、本発明の方法、システム、及びコードは、IBD又はIBDサブタイプに関連する1つ又はそれ以上の症状の治療に有用な薬剤の治療学的有効量の個体への投与工程を更に構成し得る。治療への応用として、IBD薬剤は、単独投与若しくは1つ又はそれ以上の追加的なIBD薬剤及び/又は1つ又はそれ以上のIBD薬剤に関連する副作用を軽減する薬剤の組み合わせで併用投与され得る。
IBD薬剤は、必要に応じて好適な医薬品賦形剤と共に投与され、一般に認められた投与方法のいずれかにより行われる。従って、投与は、例えば、静脈内、局所、皮下、経皮的、経皮、筋肉内、経口、口腔内、舌下、歯肉、口蓋、関節内、非経口、細動脈内、皮内、脳室内、脳蓋内、腹腔内、病巣内、経鼻、直腸、膣内、又は吸入による方法がある。「併用投与」により、とはIBD薬剤を第2の薬剤(例、他のIBD薬剤、IBD薬剤の副作用を軽減するのに有用な薬剤、等)の投与と同時に、又は第2の薬剤投与の直前又は直後に投与する事を意味する。
IBD薬剤の治療学的有効量は、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8又はそれ以上の回数反復投与、又はその投与量は持続注入により投与されてもよい。投薬は、固体、半固体、凍結乾燥粉末又は液体の剤形を取り、それらは例えば、錠剤、丸剤、顆粒剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、坐剤、滞留浣腸剤、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、ゲル剤、エアゾール剤、発泡剤、又は同等の剤形であり、好ましくは正確な投与量の単一投与に好適な単位剤形である。
本明細書において、用語「単位剤形(unit dosage form)」は、対象及び他の哺乳類における単一投薬として好適な物理的に散在する単位を含む。各単位は、好適な医薬品賦形剤(例、アンプル)と関連して、望ましい発現、忍容性、及び/又は治療効果を発揮するために計算された規定量のIBD薬剤を含有する。それに加え、より低濃度の単位剤形が生産されるであろうより高濃度の剤形が調剤されてもよい。従って、より高濃度の剤形は、実質的に、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10倍又はそれ以上のIBD薬剤量を含有している。
当業者は剤形の調剤方法を知るであろう(例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,18TH ED.,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1990))。剤形とは一般的に、従来の製剤キャリア又は賦形剤そして他の薬剤、キャリア、アジュバンド、希釈剤、組織透過促進剤、可溶化剤、及び同等物の剤形を追加的に包含する。適切な賦形剤は、当技術分野で周知の方法で特定の剤形及び投薬方法に合わせて調剤され得る(例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,上記参照)。
好適な賦形剤の例は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギン酸、トラガカン、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、生理食塩水、シロップ、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びカルボポール(Carbopol)(例えば、Carbopol941、Carbopol980、Carbopol981、等)等のポリアクリル酸を含むが、これらに限定されない。剤形は更に、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱油潤滑剤等の湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、メチル−、エチル−、及びプロピル−ヒドロキシル−ベンゾアート(即ち、パラベン)等の保存剤、無機及び有機酸や塩基等のpH調整剤、甘味剤、及び着香剤を含む。剤形は、生分解ポリマー粒子、デキストラン、及びシクロデキストリン包接化合物を構成してもよい。
経口投与用には、治療学的有効投与は、錠剤、カプセル剤、乳剤、懸濁剤、液剤、シロップ剤、スプレー剤、トローチ剤、散剤、及び徐放性製剤とし得る。経口投与に好適な賦形剤は、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、セルロース、ブドウ糖、ゼラチン、スクロース、炭酸マグネシウム、及び同等の医薬品グレードのものを包含する。
ある実施形態において、その治療学的有効投与は、丸剤、錠剤、又はカプセル剤の形を取り、剤形は、IBD薬剤に加えて以下の物を含有する。ラクトース、スクロース、第二リン酸カルシウム、及び同等物の希釈剤、デンプン又はそれの誘導体等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム及び同等物の滑剤、デンプン、アカシアガム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロース及びそれらの誘導体等の結合体。IBD薬剤は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)キャリア処理された坐薬として調合し得る。
液体の剤形は、例えば、経口、局所、又は静脈内投与のため、IBD薬剤を溶解又は分散させて調製できる。そして随時、液体の剤形は、液相又は懸濁液を形成するための、キャリアにおける1つ又はそれ以上の薬学的に好ましいアジュバンド、例えば水性生理食塩水(例、0.9%w/v塩化ナトリウム)、水性デキストロース、グリセロール、エタノール、及び同等のアジュバンドにて調製できる。IBD薬剤は、滞留浣腸剤としても調合し得る。
局所投与用には、治療学的有効投与は、乳剤、ローション剤、ゲル剤、発泡剤、クリーム剤、ゼリー剤、液剤、懸濁剤、軟膏剤、および経皮パッチとされ得る。吸入による投与において、IBD薬剤は、噴霧器により乾燥粉末又は液状の薬剤として注入される。非経口投与において、その治療学的有効投与は、無菌注射用液剤及び無菌包装散剤とされる。好ましくは、注射剤のpH約4.5から7.5で調整される。
治療学的有効投与は、凍結乾燥末としても提供される。その様な剤形は、例えば、投与前に再調整する緩衝液、例えば重炭酸塩、を含み、また、緩衝液は水などと再調整する凍結乾燥剤形に含まれる。凍結乾燥剤形は、更に好適な血管収縮剤、例えば、エピネフリンを含む。凍結乾燥剤形は、注射器により提供され、随時、再調整のための緩衝液と組み合わせて包装され、再調整された剤形は速やかに個体へ投与し得る。
IBD又はそれの臨床的なサブタイプ治療のための治療上の使用において、IBD薬剤は、初期量として一日当たり約0.001mg/kgから約1000mg/kg投与される。1日用量として約0.01mg/kgから約500mg/kg、約0.1mg/kgから約200mg/kg、約1mg/kgから約100mg/kg、又は約10mg/kgから約50mg/kgの範囲で使用し得る。しかしながら投薬量は、個体における必要量、IBD症状の重症度、及び使用するIBD薬剤により異なる。例えば投薬量は、本明細書記載の方法に従い、IBDを有すると分類された個体において、IBD症状の重症度を考慮し実験的に決定し得る。個体に投与される量は、本発明と照らし合わし、個体において、経時的に有益な治療効果を与える十分量でなくてはならない。投与量は、個体における特定のIBD薬剤投与の存在、性質、及び副作用の程度によっても決定し得る。特定の状況下での適切な投薬量の決定は、実行者の技術の範囲である。一般的に治療は、IBD薬剤の至適用量より少ない、比較的少量から始める。その後、投薬量は、その条件下で最適の薬効に達するまで、少量ずつ増量される。便宜上、必要に応じて、1日投与量の総量は分割され、その日の1回分量ずつが投与される。
本明細書において、「IBD薬剤」という用語は、IBDに関連する1つ又はそれ以上症状の治療に有用な薬剤の薬学的に好ましい形状すべてを含む。例えば、そのIBD薬剤は、ラセミ又は異性体混合物、イオン交換樹脂と結合している固体の複合体、等にある。更に、IBD薬剤は溶媒の形としてあり得る。IBD薬剤という用語は、本明細書で開示されたIBD薬剤の薬学的に許容される塩、誘導体、及び類似体の他に、それらの組み合わせもすべて含む事を意図している。例えば、その薬学的に好ましいIBD薬剤の塩とは、タルトラート(tartrate)、コハク酸、タルタラート(tartarate)、重酒石、二塩酸、サリチル酸、ヘミコハク酸、クエン酸、マレイン酸、塩酸、カルバミン酸、硫酸、硝酸、及び安息香酸の塩、そしてそれらの組み合わせ及び同等物を包含するが、これらに限定されない。いかなるIBD薬剤も本発明の方法で用いられるのに好適である。例えば、IBD薬剤の薬学的に許容される塩、IBD薬剤の遊離塩基、又はそれらの混合物である。
IBD又はそれの臨床的なサブタイプに関連する1つ又はそれ以上の症状の治療に有用な好適な薬剤は、アミノサリチル酸(例、メサラジン、スルファサラジン、等)、コルチコステロイド(例、プレドニゾン)、チオプリン(例、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、等)、メトトレキサート、モノクロナール抗体(例、インフリキシマブ)、それらの遊離塩基、薬学的に許容されるそれらの塩、それらの誘導体、それらの類似体及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。当業者は、本発明で用いるのに好適な追加的なIBD薬剤を理解するであろう(例えば、Sands,Surg.Clin.North Am.,86:1045−1064(2006);Daneseら,Mini Rev.Med.Chem.,6:771−784(2006);Domenech,Digestion,73(Suppl.l):67−76(2006);Nakamuraら,World J.Gastroenterol.,12:4628−4635(2006);及びGionchettiら,World J.Gastroenterol.,12:3306−3313(2006))。
固体からの試料がIBD(例、CD又はUC)試料として分類されると、個体は、特定の治療処方の有効性を評価するために、定期的な間隔で観察される。例えば、特定のマーカー値は、薬剤などの治療法の治療効果に応じて変化する。患者は、個人に合わせた対処法への反応評価及び特定の薬剤又は治療の効果を理解するために観察される。更に、患者は、薬剤に反応を示さないがマーカーに変化が現れる場合、それらの患者は彼らのマーカー値により分類され得る特別な集団(反応的ではない)に属することが示唆される。それらの患者は、現行の治療を中止し、処方された代替の治療がなされる。
(X.実施例)
以下の実施例は、本発明の実施形態を例示する目的で提供するものであり、本発明は下記の実施例に限定されない。
実施例1.ANCA値の測定
この実施例は、ELISA法を用いた試料のANCA値の解析を例示する。
固定好中球ELISAは、Saxonらが、J.Allergy Clin.Immunol.,86:202−210(1990)で示したように、ANCAの検出に使用された。つまり、マイクロタイタープレートに、細胞を固定化するため、フィコール・ハイパック(Ficoll−hypaque)遠心分離法で精製された、ヒト末梢血からの好中球を各ウェル2.5×105を塗布し、10分間100%メタノール処理した。細胞を、非特異的抗体結合からブロックするため、0.25%ウシ血清アルブミン(Bovine serum albumin)/リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate−buffered saline)(BSA/PBS)で60分、室温、加湿のもとインキュベートした。次に、コントロール及び符号化された血清は、ウシ血清/PBSブロッキングバッファー(BS/PBSブロッキングバッファー)で1:100希釈され、室温、加湿で60分インキュベートした。ヤギF(ab’)2抗ヒト免疫グロブリンG抗体アルカリホスファターゼコンジュゲート(γ鎖特異的;Jackson Immunoresearch Labs,Inc.;West Grove,Pa.)が、好中球結合抗体を標識するために1:1000希釈で加えられ、60分、室温でインキュベートした。p−ニトロフェノールリン酸基質(p−nitrophenol phosphate subtrate)を加え、吸光度405nmで陽性コントロールのウェルがブランクウェルの吸光度より0.8から1.0(OD値)以上になるまで発色させた。
20の検証された陰性コントロール試料のパネルが定義づけされたELISAユニット(EU)値のキャリブレーターと共に用いられた。各ELISA検査の基準となるポジティブ/ネガティブカットオフは、キャリブレーターの吸光度(OD)から20のネガティブのパネル(+2標準偏差)の平均(OD)値を引き、キャリブレーターのEU値をかけた値と定義づけされた。ANCA反応性の基準カットオフ値は、従って、約10から20EUで、平均EU値がカットオフ以上である患者の試料は、ANCA反応性においてELISA陽性である。同様に、平均EU値がカットオフ値以下に患者の試料はANCA反応性において陰性と決定した。
実施例2.pANCAの存在の測定
この実施形態は、例えば、米国特許第5,750,355号及び同5,830,675号に記載されているように、免疫蛍光法でのpANCAの有無の解析を例示する。特に、pANCAの存在は、デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)で好中球を処理し、ポジティブ値の欠如の測定により検出される(例えば、検出可能な抗体及び/又は特定の細胞染色パターンの欠如をコントロールと比較する)。
血清等の試料から単離された好中球は、以下のプロトコールに沿ってガラス面に固定化される。
1.約2.5×106細胞/mlになるように十分量の1倍ハンクス緩衝液(HBSS:Hanks’ Balanced Salt Solution)で好中球を再懸濁する。
2.各スライドに再懸濁された好中球0.01mlを塗布するため、サイトスピン(Cytospin)3遠心(Shandon,Inc.;Pittsburgh,PA)で5分間、500rpmで遠心する。
3.試料を覆うのに十分量の100%メタノールで10分間スライドをインキュベートし、好中球をスライドに固定する。空気乾燥させる。そのスライドは−20℃で保存してもよい。
固定された、固定化好中球は、その後、下記のように、DNaseで処理される。
1.40mM塩酸トリス(TRIS−HCl)(pH7.9)、10mM塩化ナトリウム、6mM塩化マグネシウム及び10mM塩化カルシウムを含有するバッファー1ml当たり3単位のプロメガ(Promega)RQ1(登録商標)(Promega;Madison,WI)を混合し、DNase溶液を用意する。
2.上記プロトコールで準備されたスライドを、約100mlのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.0〜7.4)で5分間すすぐ。各スライドにつきDNase溶液0.05mlで固定化された好中球を約30分間、37℃でインキュベートする。約100から250mlリン酸緩衝生理食塩水で3回スライドを洗浄する(室温)。本明細書で示されたDNaseの反応は、有意に核又は細胞の好中球形態を変化させることなく、実質的に細胞DNAの完全な分解をもたらす。
次に、下記プロトコールに従い、DNase処理され、固定化された好中球の免疫蛍光測定を実施する。
1.リン酸緩衝生理食塩水で1:20希釈したヒト血清0.05mlをDnase処理されたスライドと処理されていないスライドに添加する。ブランクとして、PBS0.05mlを他の物質が混じっていないスライドに添加する。約0.5から1.0時間、室温、容積減少を最小限にするのに十分な湿度でインキュベートする。
2.100から250mlのリン酸緩衝生理食塩水が入った容器内に浸し、血清を洗い流す。
3.リン酸緩衝生理食塩水にスライドを5分間浸す。軽くふき取る。
4.リン酸緩衝生理食塩水で1:1000希釈した抗体、ヤギF(ab’)2抗ヒトIgG(μ)−FITC(Tago Immunologicals;Burlingame,CA)0.05mlを各スライドに加える。30分間、室温、容積減少を最小限にするため十分な湿度でインキュベートする。
5.100から250mlのリン酸緩衝生理食塩水で抗体を洗い流す。100から250mlのPBSにスライドを5分間浸し、空気乾燥させる。
6.蛍光パターンを蛍光顕微鏡、倍率40倍にて観察する。
7.必要に応じ、いかなるDNAもヨウ化プロピジウム(propidium iodide)で染色できる。室温でスライドをPBSでよく洗い、10秒間染色する。100から250mlのリン酸緩衝生理食塩水でスライドを室温で3回洗浄し、カバースリップを載せる。
上述された免疫蛍光法は、DNase処理され、固定化された好中球にpANCAの存在を決定するのに使用できる。例えば、DNase処理により排除されたコントロール好中球(即ち、DNase処理されていない固定化好中球)においてのpANCA反応の存在又はDNase処理により細胞質性になるコントロール好中球においてのpANCA反応の存在による。
実施例3.ASCA値の測定
この実施形態は、ELISA法により試料の酵母細胞壁マンナンの調製とASCA値の解析を例示する。
酵母細胞壁マンナンは、Failleら,Eur.J.Clin.Microbiol.Infect.Dis.,11:438−446(1992)及びKocourekら,J.Bacteriol.100:1175−1181(1969)に記載の通りに、準備された。つまり、酵母サッカロミセス・ウバルム(Saccharomyces uvarum)の凍結乾燥されたペレットを、American Type Culture Collection(ATCC)#38926から入手した。酵母は、Sambrookらの"Molecular Cloning,"Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)に従って、10ml2×YT培地で再調整された。30℃で2、3日、サッカロミセス・ウバルムを培養した。2×YT寒天培地に接種し、続いて30℃、2、3日、末端サッカロミセス・ウバルム培養物を培養した。単一コロニーは、500ml2×YT培地に接種するのに用いられ、30℃、2、3日で培養した。発酵培地(pH4.5)は、蒸留水1リットル当たり、ブドウ糖20g、バクト酵母エキス2g、MgSO40.25g及び28%H3PO42.0mlを加え作製された。発酵培地50リットルを培養するため、500mlの培養物が使用され、その培養物は37℃で3、4日発酵された。
サッカロミセス・ウバルムマンナンエキスは、各100gの細胞ペーストに、0.02Mクエン酸バッファー50ml(5.88g/lクエン酸ナトリウム;pH7.0±0.1)を加え、作製された。細胞/クエン酸の混合物を125℃で90分間オートクレーブし、冷まし、10分間、5000rpmで遠心後、上清を取り除き、保存した。細胞は、0.02Mクエン酸バッファー及び細胞/クエン酸の混合物75mlで洗浄され、再び125℃で90分間オートクレーブした。細胞/クエン酸の混合物を、10分間、5000rpmで遠心され、上清を保存した。
銅/マンナン複合体を沈殿させるため、同量のフェーリング(Fehling’s)液を、攪拌しながら、結合した上清に加えた。完全なフェーリング液は、使用する直前にフェーリング液Aとフェーリング液Bを1:1の割合で混和し、作製した。銅複合体は、安定にされ、溶液を沈殿物から静かに移した。銅/マンナン沈殿物の複合体を、100g酵母ペースト当たり6〜8mlの3NHClに溶解した。
出来上がった溶液を、激しく攪拌しながら8:1の割合でメタノールと酢酸を混和した溶液100mlに注入し、沈殿物を数時間かけ安定にした。上清は静かに移され、廃棄され、その後上清が無色になるまで、おおよそ2から3回、洗浄工程が繰り返された。沈殿物は、焼結ガラス製漏斗に回収され、メタノールで洗浄後、一晩空気乾燥した。場合により、その沈殿物は、メタノールで洗浄、一晩空気乾燥する前に5000rpmでの遠心にて回収した。乾燥したマンナン粉を、約2g/mlの濃度になるよう、蒸留水で溶解した。
ASCA検出に、サッカロミセス・ウバルムマンナンELISAを使用した。サッカロミセス・ウバルムマンナンELISAプレートを下記の通りに抗原で飽和させた。上述されたように精製されたサッカロミセス・ウバルムマンナンは、100μg/mlにPBS/0.2%アジ化ナトリウムで希釈された。マルチチャンネルピペットを使用し、100μg/mlサッカロミセス・ウバルムマンナンを、コースター96穴高結合プレート(Costar 96−well hi−binding plate;catalog#3590; CostarCorp.Cambridge,Mass.)の各ウェルに100μlずつ添加した。抗原は、4℃で最低でも12時間プレートに吸着させた。各プレートのロットは使用前に過去のロットと比較した。プレートは2〜8℃で1ヶ月まで保存された。
患者血清を、ASCA−IgA又はASCA−IgG反応性を再現実験により解析した。前述した抗原で飽和されたマイクロタイタープレートは、非特異的抗体結合を抑制するため、室温で45分間、PBS/0.05%Tween−20にてインキュベートした。患者血清は、ASCA−IgA解析用に1:80、ASCA−IgG解析用に1:800希釈した物を加え、室温にて1時間インキュベートした。ウェルをPBS/0.05%Tween−20で3回洗浄した。そして、1:1000ヤギ抗ヒトIgAアルカリホスファターゼコンジュゲート(Jackson Immunoresearch;West Grove,Pa.)又は1:1000ヤギ抗ヒトIgGF(ab’)2アルカリホスファターゼコンジュゲート(Pierce;Rockford,III)を添加し、マイクロタイタープレートを室温で1時間インキュベートした。ジエタノールアミン基質バッファー中のp−ニトロフェノールリン酸溶液が加えられ、10分間発色させた。吸光度405nmにて自動EMAXプレートリーダー(Molecular Devices;Sunnyvale,Calif)で解析した。
ASCA−IgA及びASCA−IgGのカットオフ値の決定工程に、一定のEU値を持つシングルポイントキャリブレーターが使用された。患者試料のOD値はキャリブレーターのOD値と比較され、そのキャリブレーターの割り当てられた値で掛けた。ASCA−IgA ELISAのカットオフ値は20EUであった。ASCA−IgGのカットオフ値は40EUであった。
実施例4.抗OmpC抗体値の測定
この実施形態は、OmpCタンパク質の生成とELISA法での試料の抗OmpC抗体値解析を例示する。
下記のプロトコールは、スフェロプラスト溶解を利用し、OmpCタンパク質の精製法を示す。OmpF/OmpA突然変異体E.coliは、グリセロールストックから100μg/mlストレプトマイシン(LB−Strep;Teknova;Half Moon Bay,Calif.)を含む10から20mlのLB培地(Luria Bertani broth)に接種され、対数期になるまで37℃で、約8時間培養し、LB−Strepで1リットルに増量し、25℃で、15時間培養した。細胞を、遠心分離により採取した。必要であれば、100mlの氷冷20mMTris−ClpH7.5で細胞を2回洗浄した。細胞は冷されたスフェロプラスト形成バッファー(spheroplast forming buffer)(20mM Tris−Cl、pH7.5;20%スクロース;0.1MEDTA、pH8.0;1mg/mlリゾチーム(lysozyme))に再懸濁し、その後再懸濁された細胞は約1時間、随時転倒混和しながら氷上でインキュベートした。必要に応じて、スフェロプラストを遠心し、少量のスフェロプラスト形成バッファー(SFB)に再懸濁した。スフェロプラストペレットは、溶解効率を高めるため再懸濁の前に随時凍結した。有意に溶解の効率を下げる、スフェロプラストの破裂及び染色体DNAの放出を避けるため、低張緩衝剤の使用を避けた。
スフェロプラスト調製物は、1mg/mlDNaseIを含む氷冷10mMTris−Cl、pH7.5で14倍希釈し、激しく攪拌した。調整物は、氷上で4×30秒、出力50%、設定4で1秒ごとに超音波分解しながら、試料が泡発又は過熱されないようにする。細胞残屑は、遠心分離でペレット状にし、その上清は2回の遠心で取り除かれ、精製した。ペレットを回収しないように上清を取り除き、超遠心チューブに移された。遠心チューブは、筒先から1.5mmの所まで、20mMTris−Cl、pH7.5にて充填した。膜調製物を、4℃、1時間、100,000×g超遠心分離、Beckman SW60スウィング型ローターでペレットにした。ペレットは、20mMTris−Cl、pH7.5に均質化する事により再懸濁した。再懸濁は、各チューブ、約10分間ピペットで上下にピペッティングする前に、1mlピペットチップを用い、ペレットにしっかりと20mMTris−Cl、pH7.5を浴びせる事により実施された。物質は、1%SDSを含有する20mMTris−Cl、pH7.5で、37℃、1時間、ローターで回転させながら抽出された。調製物は超遠心分離チューブに移され、膜は100,000×gでペレットにした。ペレットは、上述のように、20mMTris−Cl、pH7.5で均質化し、再懸濁した。膜調製物は、随時、4℃にて一晩放置した。
OmpCは、3%SDS及び0.5MNaClを含有する20mMTris−Cl、pH7.5で、37℃、1時間、ローターで回しながら抽出された。物質は、超遠心チューブに移され、その膜は100,000×gにてペレットにした。抽出されたOmpCを含む上清は、高塩類含有物を排除するため、10,000倍量以上で透析された。SDSは、0.2%Tritonで洗浄し、取り除かれた。Tritonは、50mMTris−Clによる更なる透析により、取り除かれた。三量体としてポーリンの機能を果たす精製されたOmpCは、SDS−PAGEにより解析された。室温にて電気泳動され、約100kDa、70kDa、及び30kDaの梯子状のバンドをもたらした。65〜70℃で10〜15分間加熱し、複合物を部分分離し、ダイマーとモノマーをもたらした(即ち、約70kDaと30kDaのバンド)。5分間沸騰し、38kDaのモノマーにした。
原則的に下記の通り、OmpC直接ELISA法を実施した。プレート(USA Scientific;Ocala,FIa.)は、各ウェルに100μlずつpH8.5のホウ酸バッファーにて0.25μg/mlにしたOmpCを塗布し、4℃で一晩放置した。0.05%Tween20/PBSで3回洗浄後、プレートを、各ウェルpH7.4の150μlPBSで0.5%BSAに調製した溶液(BSA−PBS)でブロッキングし、室温で30分置いた。ブロッキング溶液は、各ウェル100μずつの1:100希釈されたクローン病又は正常対照血清に置換された。プレートを、前述の通り、室温で2時間インキュベートし、洗浄した。プレートに、ヤギ抗ヒトIgAアルカリホスファターゼコンジュゲート(α鎖特異的)、又はIgG(γ鎖特異的)(Jackson ImmunoResearch;West Grove,Pa.)をBSA−PBSにて1:1000希釈したものを添加した。プレートを、室温で2時間インキュベートし、0.05%Tween20/PBSで3回洗浄し、更にpH7.5のトリス緩衝生理食塩水で3回洗浄した。基質溶液(2.5mMMgCl2、0.01MTris、pH8.6で1.5mg/mlリン酸p−ニトロフェノール二ナトリウム(Aresco;Solon,Ohio)に調製)を各ウェル100μlずつ添加し、1時間発色させた。プレートを、405nmにて測定した。IgAOmpC陽性の反応性とは、検査試料測定時に測定したコントロール(正常)血清の平均反応性より、2SD(標準偏差)以上の測定値と定義づけされた。
実施例5.抗I2値の測定
この実施形態は、試料のリコンビナントI2タンパク質の作製とELISA法或いは組織学的検査を用いての抗I2値の解析法を例示する。
全長I2をコードする核酸配列は、GST発現ベクターpGEXに複製された。大腸菌(E.coli)での発現後、タンパク質は、GSTカラムで精製された。精製されたタンパク質は、銀染色において予期された分子量として示され、ウエスタンブロット法の解析において、抗GST反応を示した。
ELISA解析は、希釈された患者又は正常血清を用いて、GST−I2融合ポリペプチドと実施した。反応性は、GST単独への反応性を引いた後決定した。クローン病(CD)血清及び正常個体からの血清のさまざまな希釈系列が、GST−I2融合ポリペプチドに対するIgG反応性の測定をされた。1:100から1:1000の希釈にて、正常血清と比較しCD血清が有意に高い抗I2ポリペプチド反応性を示した。
GST−I2融合ポリペプチドに結合したヒトIgA及びIgG抗体は下記のように直接ELISA法により検出された。プレート(Immulon 3;DYNEX Technologies;Chantilly,Va.)に、各ウェルに100μlずつ、GST−I2融合ポリペプチド(ホウ酸バッファー、pH8.5にて5μg/mlに調液)を添加し、4℃で一晩放置した。PBS/0.05%Tween20で3回洗浄後、プレートは各ウェル150μlずつ0.5%BSAに調製した溶液(BSA−PBS(pH7.4))を添加、室温で30分間ブロッキングした。ブロッキング溶液はその後、各ウェル100μずつ、1:100希釈されたCD血清、潰瘍性大腸炎(UC)血清、又は正常対照血清と置換した。プレートを上述のように室温で2時間インキュベートし、洗浄した。BSA−PBSにて1:1000希釈した二次抗体アルカリホスファターゼ−コンジュゲート(ヤギ抗ヒトIgA(α鎖特異的);Jackson ImmunoResearch;West Grove,Pa.)をIgAプレートに加えた。IgG反応のため、アルカリホスファターゼ−コンジュゲート二次抗体(ヤギ抗ヒトIgG(γ鎖特異的);Jackson ImmunoResearch)を加えた。プレートを室温で2時間インキュベートし、Tween20/PBS(0.05%)で3回洗浄後、更にトリス緩衝生理食塩水、pH7.5で3回洗浄した。基質溶液(2.5mMMgCl2、0.01MTris、pH8.6で1.5mg/mlリン酸p−ニトロフェノール二ナトリウム(Aresco;Solon,Ohio)に調製)を、各ウェル100μずつ加え、1時間発色させた。プレートを、405nmにて測定した。正規母集団の平均値から2SD上の値をカットオフとして用いると、CD値の10中9は陽性、一方正常血清試料はいずれも陽性でなかった。更に、この測定方法で、CD患者の10中7人は、OD405で0.3以上、一方UC若しくは正常試料では、いずれも陽性ではなかった。これらの結果は、I2ポリペプチドに対する免疫活性、特に、IgA免疫活性、がCD診断に使用できる事を示唆している。
組織学的解析において、ウサギ抗I2抗体が、精製されたGST−I2融合タンパク質をその免疫原として、生産された。GST結合抗体は、アガロース担体と結合したGSTへの付着により、取り除かれ(Pierce;Rockford,III)、ELISA解析によりウサギ血清の抗I2免疫活性を検証した。スライドを、CD、UC、及び正常対照からのパラフィン包埋された生検標本から準備した。ヘマトキシリン及びエオシン染色を実施し、続けてI2特異抗血清とインキュベーションした。抗体の結合は、ペルオキシダーゼ標識された抗ウサギ二次抗体(Pierce;Rockford,III)で検出された。アッセイは、バックグラウンドに対するシグナルとCD及びコントロール集団間の区別を最大限にするため最適化された。
実施例6.IBD予測のための組み合わせ統計的アルゴリズム
この実施形態は、血清学的マーカーのパネルを用いて、試料がIBD又はそれの臨床的なサブタイプと関連しているか否かを分類する学習統計的分類子システムの組み合わせから導出された診断アルゴリズムを例示する。
健常者及び疾患患者からの血清試料の大規模コホートが、今回の実験に用いられ、さまざまな抗細菌抗体マーカーパネルの値及び/又は存在が、IBDに罹っている患者を識別するため及びUCとCD間を選択的に区別するためのパネルの診断能力を評定するために、測定された。約2,000のIBD有病率60%〜64%の試料が検査された。血清学的マーカーのパネルは、ANCA、ASCA−IgA、ASCA−IgG、抗OmpC抗体、抗フラジェリン抗体(例、抗Cbir−1抗体)、及びpANCAを含む。ANCA、ASCA−IgA、ASCA−IgG、抗OmpC抗体、及び抗フラジェリン抗体の値は、ELISAで決定した。間接免疫蛍光顕微鏡法は、試料がpANCA陽性又は陰性の決定に用いられた。
この実験において、血清学的マーカーパネルの値及び/又は存在に基づく新しいアプローチを展開し、それは、IBD、CD又はUCと予測する、異なる学習統計的分類子システムの掛け合わせを用いる。それらの学習統計的分類子システムは、正規の統計的分類子の制約無く、現存するデータに厳密に基づき複合データに適合及び決断できる多変量統計法の方法、例えば、フィードフォワードバックプロパゲーションを伴う多層パーセプトロン等を用いる。特に、1つ以上の学習統計的分類子システムでマーカーを解析する多数の判別方法を利用する組み合わせ方法は、IBDを診断及びUC及びCD間の区別の感度及び特異度を更に向上させるために構築された。極めて正確に実施するモデルは、決定・分類木及びニューラルネットワークの組み合わせから導出されたアルゴリズムを用いた。
各6つのマーカー(即ち、ANCA値、ASCA−IgA値、ASCA−IgG値、抗OmpC抗体値、抗フラジェリン抗体値、及びpANCA−陽性又はpANCA−陰性;「予測」)の結果及び587の患者試料のコホートからの診断(0=正常、1=CD、2=UC;「従属変数1」)は、Statistica Data Miner Version 7.1(StatSoft,Inc.;Tulsa,OK)の分類・回帰木(C&RT)ソフトウェアモジュールに入力された。データは、71%の訓練試料及び29%の試験試料を含む訓練と試験に分けられた。異なる試料が、訓練と試験に用いられた。
訓練データセットからのデータは、すべての6つと初期設定(即ち、標準C&RT)を用いてRT−由来モデルを形成するのに用いられた。C&RT法は、ノードを接続するノード及び同等物から構成される最適決定木構造を確立する。本明細書において、用語、「ノード」又は「非終端ノード」或いは「非終端ノード値」は、その木の決定点である。用語「終端ノード」又は「終端ノード値」は、枝又は最終決定無しの非リーフノード(non−leaf node)である。図2は、8個の非終端ノード(A−H)及び9個の終端ノード(I−Q)を有するIBD又はそれの臨床的なサブタイプ(例、CD又はUC)を診断するためのC&RT構造を提供する。C&RT解析は、各予測からも確率値を導き出す。それらの確率値は、ノード値に直接的に関係する。ノード値は、各試料に対する確率値から導かれる。
C&RT解析は、試験試料セットを用いて確認された。表1は、試験試料のC&RT解析の結果を表す。
C&RTのデータは、更なる予測解析を容易にする各試料と関連する終端ノード及び確率を提供した(表2)。
0(正常)、1(CD)、2(UC)の終端ノード及び確率値は、ニューラルネットワーク(NN)解析への入力に用いられた変数と共に保存された。表3は、NNにおける診断を予測するのに用いられたマーカー変数及び終端ノードを表す。
IPS(IPS:Intelligent Problem Solver)がその後NNソフトウェアから選択された。訓練試料セットからの入力変数が、終端ノード又は確率値のいずれかを含み選択された。列が、非IBD(0)又はIBD(1)を区別する他の従属変数を生成するデータに加えられ、「診断変数」(0=正常、1=CD、及び2=UC)とは独立してNNの訓練に用いる事ができる。診断及びIBD/非IBDは、従属変数の出力に用いられた。次に、訓練試料セット及び終端ノード又は確率入力を用いて1,000の多層パーセプトロンNNモデルが作成された。最良の100のモデルが選択され、試験試料セットで確証された。その結果、分析精度が、マイクロソフトエクセル(Microsoft Excel)を用いてNNプログラムより生成された混同行列から計算された。
異なる統計的解析によるIBD予測及びカットオフ解析の精度の比較は、表4に提示されている。IBDの最良総合予測は、C&RT/NNハイブリッドアルゴリズム的解析により観察される。
図3は、健常者及び疾患患者からの血清試料のコホートを用いて生成された上記のアルゴリズム的モデルの要約を提供する。それらのモデルは、1つ又はそれ以上のマーカーの存在或いは値に基づいて、IBD診断又はCD及びUC間の区別をするために初診の患者からの試料の解析に用いる事ができる。
図3を参照にして、健常者及び疾患患者由来の血清試料の大規模コホートからのデータベース(300)は、IBDを有する患者の特定及びUCとCD間の選択的見分けが可能なモデルを作成する抗細菌抗体マーカーのパネルの値及び/又は存在の測定に用いられた。具体的には、試料ごとに、患者試料のコホートからの6つの入力予測(即ち、上述された6つのIBDマーカー)及び1従属変数(即ち、診断)は、Statistica Data Miner Version 7.1のC&RTソフトウェアモジュールを用いて処理された。診断予測、終端ノード値(305)、及び確率値は、C&RT法により求めた。各試料における終端ノード及び確率値が、選択及び保存され、対応する木(310)が、このアルゴリズムを用いて初診の患者からのデータを処理するためのC&RTモデルとして用いられるために保存された。次に、7又は9つの入力予測(即ち、上述された6つのIBDマーカー足す終端ノード、又は足す3つの確率値)及び従属変数(315)は、NNソフトウェアからのIPSプログラム(320)を使用して処理された。1,000のネットワークが作成され、最良の100のネットワーク(325)が選択及び認証された。それらの100のネットワークは、異なる試料を含む試験(330)データベースと確認された。最後に、最良のNNモデル(335)には、IBDの診断及び/又はCD及びUC間の区別における最高感度、特異度、陽性的中率、及び/又は陰性的中率を有する1つが選択された。
このNNモデルは、IBD、CD又はUCの予測及び/又は患者がIBD、CD又はUCを有する確率を提供(例、IBDを有する確率が約0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又はそれ以上)するためにこのアルゴリズムを用いて初診患者からのデータ処理用に保存された。基本的に、患者試料のコホートから生成されたC&RT及びNNモデルは、初診の患者において、その患者からの試料における1つ又はそれ以上のマーカーの存在或いは値に基づき、IBDの診断又はCD及びUC間の区別とタンデムに用いられる。
図4は、NNモデルの入力変数として用いられたC&RTモデルからの、マーカー入力変数、出力従属変数(診断及び非IBD/IBD)、及び確率を表している。行7(非IBD/IBD)は、診断とは独立して予測される第2の出力を生成するための診断データから作成された。
実施例7.炎症性腸疾患、クローン病及び潰瘍性大腸炎の検出精度を改善するアルゴリズム的アプローチによるIBD血清学的マーカーの解析
血清検査は、炎症性腸疾患(IBD)の診断において、及びクローン病(CD)又は潰瘍性大腸炎(UC)の病気を分類する上において、医師の役に立つ。IBDのための血清学的検査は、例えば、ASCA(IgA及びIgG)、抗OmpC、抗CBirl及びpANCAの検査を包む。この実施形態において説明されているIBD血清学的マーカー解析への1つのアルゴリズム的アプローチは、統計的分類子から構成される高性能なコンピュータ−支援解析で、ニューラルネットワークが続く。この実施形態において、分析結果は、カットオフ値と比較はされず、疾病及び非疾病傾向がそのアルゴリズムにより検出される。この実施形態は、370の健常者、366の炎症性腸症候群、646のCD及び431のUCから構成された既知の診断の1813の血清試料のコホートを用いる。このコホートにおけるIBDの総有病率は59%であった。この試料のコホートは、パターン認識においてアルゴリズムを訓練するために使用された。得られたアルゴリズムは、その後、異なる試料集団で確認された。そのアルゴリズムの作成に使用された試料は、検証には使用していない。検証コホートはIBD有病率59%で、207の健常者、188のCD及び105のUC試料(総計=500の試料)から構成された。検証に使用されたすべてのCD及びUC試料は、病気が確認された対象から得た。そのアルゴリズムの精度は、92%であった。追加的なアルゴリズムの遂行特性は以下の通りである:
陽性及び陰性的中率(PPV、NPV)は有病率とともに変化することから、それらの値は、207の健常者、18のCD及び18のUC試料(総計=243の試料)から成るIBD有病率15%の第2の検証コホートに対して決定した。IBD、UC及びCDに対する陽性的中率は、それぞれ75%、73%及び74%で;IBD、UC及びCDに対する陰性的中率は、それぞれ99%、99%及び100%であった。ここで示されているように、血清学的データのアルゴリズム解析は、IBDの正確な検出及びIBDのCD及びUCへの分類工程をもたらす。
本明細書に引用されているすべての刊行物及び特許出願は、各個別の刊行物及び特許出願が、本明細書に参照により援用されている事が具体的且つ個別に示されていると同程度に、本明細書に参照により援用されている。以上、本発明は、明確に理解される目的において図面及び実施例によりいくつか詳細を開示しているが、当業者は本発明の教示に照らし、本発明の主旨及び特許請求の範囲を逸脱する事無く修正及び変更を行える事は明らかである。