JP5747516B2 - シールドトンネル - Google Patents

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Description

本発明は、シールドトンネルに関するものであり、具体的には、各種施工条件に柔軟に対応し、浮き上がり防止を効率的に図ることが可能なシールドトンネルの技術に関する。
道路や鉄道線路等を小さい土被り厚でアンダーパスしたり、様々な地盤状況に幅広く対応してトンネル掘削を施工できるシールド工法は、軟弱地盤が多く施工条件に制約が多い都市土木の分野で特に適用範囲を広げている。こうしたシールド工法により、小土被りのトンネルを構築する場合、高い地下水位などによってトンネルに大きな浮力が作用する恐れがある。このため、こうした現象に対処する工法が従来より提案されてきた。
例えば、土被りを薄くしたシールドトンネルにおいて作用する浮力に対抗するため、浮力対抗手段として、各セグメントリングに、下方に延長する一以上のアンカーを貫通させて固定する技術(特許文献1)や、或いは、函体周囲のグラウト材との密着性を向上させるべく外側部にコッターを形成した、オープンシールド工法におけるコンクリート函体(特許文献2)等が提案されている。
特開平9−303082号公報 特開2002−180794号公報
しかしながら、例えばトンネル下部のセグメントにアンカーを固定する場合、アンカー長に関する示方基準をまず満たす必要があり、必ずしも経済的設計が行えない懸念がある。また、アンカー支持層が地盤中の深い地層となってしまう状況であれば、コストが更に増大し経済的な施工が難しい。また、コッターをトンネル側部に設ける場合、十分な浮き上がり防止効果をあげる為にコッター自体を大きくする必要があり、それに伴ってセグメント厚も増大せざるを得ず、自ずとコストが増大する。
或いは、地上部に盛土を施したり、トンネルのインバート部にコンクリート等を打設してカウンターウェイトとする技術も存在するが、地上部占有が困難な施工環境では適用できない、インバート部での作業はトンネル施工の妨げとなりやすい、そもそもトンネル内空に余裕が無い場合にインバート部に対する施工が出来ない、などといった課題があり、地上環境や地盤条件、トンネル内空など、各種施工条件に縛られることになる。
そこで本発明は、各種施工条件に柔軟に対応し、浮き上がり防止を効率的に図ることが可能なシールドトンネルの提供を目的とする。
上記課題を解決する本発明のシールドトンネルは、地中に突出する突出部材をセグメントに設けたシールドトンネルにおいて、前記突出部材が、シールドトンネルにおける内空中心の深度より下方のセグメントから斜め上方に向けて突出するよう設けられていることを特徴とする。このような技術によれば、突出部材上の土塊重量が、シールドトンネルの上載荷重に加味されることになる。よって、小土被りで地下水位が高いといった施工条件の為にシールドトンネルに大きな浮力が作用する状況であっても、その浮力に対抗する上載荷重を突出部材上の土塊重量に期待することが可能であり、施工条件に柔軟に対応して浮き上がり防止を図ることができる。
また、前記突出部材が、シールドトンネルにおける内空中心の深度より下方のセグメントに設けられていると、より多くの土塊を突出部材上で引き受けることになり、上述の浮き上がり防止効果を一層高めることができる。また、前記内空中心の深度に対応するシールドトンネルの外周位置から下方に伸ばす垂線と、前記突出部材およびシールドトンネル外周表面との間の領域の土塊も、突出部材上で引き受けることになり、更に浮き上がり防止効果を高めることにもつながる。
さらに、前記突出部材が、セグメントでの設置位置から斜め上方に向けて突出するよう設けられていると、セグメントにおける突出部材の設置位置に対応する地盤が、例えば、非常に堅い岩盤や礫、或いは既存構造物等を含むものであり、突出部材を地中に打ち込む、或いは突出部材を地中に構築することが困難であるといった状況であっても、こうした地盤を避けて突出部材の設置を行うことが可能となる。また、斜め上方に伸びる突出部材とシールドトンネル外周面との間の領域が下方に凸のくさび状となり、シールドトンネルが上方に移動しようとしても、周辺土塊をくさび状の領域に引き込んで締め固めることになり、浮力によるシールドトンネルの挙動を抑制する、いわゆるくさび効果も期待できる。
また、前記突出部材と、当該突出部材が挿通する前記セグメントの挿入口周りの内壁面とを固定するとともに、シールドトンネル内空側に所定長残した前記突出部材の先端部と、当該先端部に対向するセグメントの内壁面とを固定するとしてもよい。このような技術によれば、突出部材とセグメントとの固定がより強固なものとなり、より突出部材を長くして大きな上載荷重を突出部材に負担させることも容易となる。また、突出部材をトンネル内で適宜延伸するなどして、前記二つの固定箇所がセグメントを跨ぐよう配慮すれば、側方土圧に抗する支保機能を発現して断面力(モーメント)の集中を抑制しセグメントの変形あるいは欠損を防止する効果も期待できる。
また、前記シールドトンネルにおいて、前記突出部材が、セグメントでの設置位置から斜め下方に向けて突出するよう設けられているとしてもよい。このような技術によれば、セグメントにおける突出部材の設置位置に対応する地盤が、例えば、非常に堅い岩盤や礫、或いは障害物等を含むものであり、突出部材を地中に打ち込む、或いは突出部材を地中に構築することが困難であるといった状況であっても、こうした地盤を避けて突出部材の設置を行うことが可能となる。
なお、上述した本発明の各シールドトンネルにおいては、当初目的とする浮き上がり防止効果を奏するのは勿論であるが、突出部材上の土塊重量を上載荷重に加えることで結果的に、前記断面力の集中(セグメント底部外側引張モーメントと、その両側部に生じる内側引張モーメントが卓越した状態で、セグメントに変形あるいは欠損等が生じる)に対する抑制効果も奏することができる。すなわち、側方土圧が優越した状態のセグメントにおいて、突出部材上に生じるモーメントが前記両モーメントを低減させる方向に作用し、前記断面力の集中を抑制することとなるのである。
本発明によれば、各種施工条件に柔軟に対応し、浮き上がり防止を効率的に図ることが可能なシールドトンネルを提供できる。
本実施形態におけるシールドトンネルの適用例1を示す図である。 本実施形態におけるシールドトンネルの適用例2を示す図である。 本実施形態におけるシールドトンネルの適用例3を示す図である。 本実施形態におけるシールドトンネルの適用例4を示す図である。 本実施形態におけるシールドトンネルの適用例5を示す図である。 本実施形態における解析結果1を示す図である。 本実施形態における解析結果2を示す図である。 本実施形態における解析結果3を示す図である。 本実施形態における解析結果4を示す図である。 本実施形態における解析結果5を示す図である。
−−−適用例1−−−
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本実施形態におけるシールドトンネルの適用例1を示す図である。図1の斜視図にて示すように、地盤1に形成されるシールドトンネル10は、その施工中において、セグメント12がトンネル周方向に配置されたセグメントリング14を、トンネル進行方向に順次連結させた形態をとる。こうしたセグメント14の配置や連結の作業は、シールドマシンが具備するエレクター等により実行される。例えば、交通量の非常に多い都市部の道路や鉄道線路が地上2にあって安易に開削工法が採用できず、一方、地下には既に他の地下構造物が存在するといった施工条件の場合、既存地下構造物を避けた浅い深度にシールドトンネルを構築する必要がある。すなわち、小土被りのシールドトンネルの構築が要求される。このような施工条件では土被り部分の上載荷重が小さいので、地盤1での地下水位が高いとなれば、構築するシールドトンネルにかかる浮力は大きくなるため、浮き上がり防止の対策が必要となる。
そこで本実施形態におけるシールドトンネル10では、そのセグメント12において、地中に突出する突出部材20を設けている。図1に示した例では、セグメントリング1つおきで1つのセグメント12に突出部材20を設けているが、勿論、こうした形態に限定されない。例えば、全てのセグメントリング14毎に突出部材20を設けるとしてもよいし、或いはセグメントリング2つ以上の間隔で突出部材20を設けるとしてもよい。或いは、1つのセグメントリング14における、複数のセグメント12の各々に突出部材20を設けるとしてもよい。また、シールドトンネル10の両側に突出部材20を設ける例を図示しているが、地盤や障害物等の状況や浮き上がり力の偏心などに応じて1つの側面にのみ突出部材20を設けるとしてもよい。
シールドトンネル10に元来かかっている上載荷重(シールドトンネル直上の土塊重量に由来)に、突出部材上の土塊5(図1〜図5の、パターンaからパターンgの各断面図参照)の土塊重量を加えることで、シールドトンネル10にかかる前記浮力に対抗しうるよう、突出部材20における地盤1での突出長を設計することになる。突出部材上の土塊重量は、例えば、突出部材20の突出長さと、地表2から突出部材20までの深度と、突出部材20が土塊を負担する範囲幅との乗算値たる土塊体積に、土塊密度を乗算して算定することになる。
ただし実際には、土粒子同士の噛み合いにより、突出部材直上の土塊重量のみが突出部材20に作用するわけではなく、或る程度広がった範囲の土塊重量が突出部材20に作用する。これを土のアーチアクション(アーチ作用)と呼ぶ。突出部材20に作用する土塊重量についてアーチアクションを考慮する場合、各種設計指針等を用い、土の性状に応じてその作用を考慮し土塊重量を割り増せばよい。
また、図1の側面図にて例示するように、トンネル軸方向について、各セグメントの突出部材20の間にすきまがあいている状態でも、上述のアーチアクションを考慮することにより、それぞれの突出部材20に作用する土塊として、直上の土塊5に加えて、斜め上方の土塊9も考慮に含まれることになるため、各突出部材20に作用するそれぞれの土塊群が重なり合い、工学的には突出部材間にすきまがあいていない状態と同様の効果を奏することになる。更にこのことから、土の性状によっては、トンネル軸方向について、突出部材20を設けるセグメントを1リング飛ばし、或いは2リング飛ばしとするなど、適宜な間隔をもって突出部材20を設けることも可能である。
上述の突出部材20は、例えば鋼管、H型鋼、鋼棒、板状鋼材、或いは鉄筋コンクリート柱、など適宜な剛性を備える様々な部材を採用できる。こうした突出部材20は、シールドトンネル10の内空11に予め搬入されており、セグメント12に設けられた挿入口13から地盤1に向けて前記突出長だけ圧入されることになる。この圧入作業は、例えば、突出部材20を把持しつつ送り動作を行う油圧ジャッキ等を用いて実行する。地盤1への前記突出長の圧入が完了した突出部材20は、シールドトンネル内空側に所定長の先端部21が残されている。この先端部21の根元とセグメント12の内壁面との間は、適宜な固化剤の打設や、プレート材や鉄筋等を介した溶接、或いはパッキンやシールリング等を介したボルト締結などいった各種既存の固定手段30により水密に固定される。この固定により、突出部材20は、セグメント12を支点とした片持ち梁となる。
このような技術によれば、突出部材上の土塊重量が、シールドトンネル10の上載荷重に加味されることになる。よって、小土被りで地下水位が高いといった施工条件であっても、地下水位による浮力に対抗する上載荷重を突出部材上の土塊重量に期待することが可能であり、施工条件に柔軟に対応して浮き上がり防止を図ることができる。
なお、上述したシールドトンネル10においては、当初目的とする浮き上がり防止効果を奏するのは勿論であるが、突出部材上の土塊重量によるモーメントが、側方土圧の優越状態で生じるセグメント底部ならびにその両側部のモーメントを低減させる為、これによりセグメントにおけるモーメントの集中に対し有効な抑制手段ともなる。
より詳細に述べると、小土被りのトンネルでは、上下方向の土圧よりも側方土圧が優越することで、トンネル底部にトンネルの外側を開こうとするモーメント(外側引張モーメント)が、また、その両側部にトンネルの内側を開こうとするモーメント(内側引張モーメント)が、集中的に作用するおそれがある。一方、突出部材上の土塊重量によるモーメントに着目すると、例えば図1の断面図(パターンa)のトンネル断面に向かって右側の突出部材20Rでは、トンネル右側断面を時計回りに回そうとする方向に、左側の突出部材20Lではトンネル左側断面を反時計回りに回そうとする方向にそれぞれモーメントが作用する。この場合、トンネル底部ではトンネルの外側を閉じようとする力が作用し、一方、その両側部ではトンネルの内側を閉じようとする力が作用することになり、前述のモーメントの集中が低減され、ひいては、浮き上がり防止のための突出部材20を設けることで前記モーメントの集中に伴うセグメントの変形あるいは欠損等を防止することも可能となる。
また、図1の断面図パターンbで示すように、突出部材20をシールドトンネル10の内空11を横断するよう配置し、内空11での突出部材20とセグメント12の内壁面との間を固定手段30により固定した場合、突出部材20が支保工として作用し、前記モーメントの集中に対する有効な対策となりうる。
−−−適用例2−−−
続いて、前記突出部材20がシールドトンネル10の内空中心の深度より下方に設置される例について説明する。図2は本実施形態におけるシールドトンネルの適用例2を示す図である。この場合、シールドトンネル10において、前記突出部材20が、シールドトンネル10における内空中心cの深度より下方のセグメント12に設けられている。このように、内空中心cの深度より下方のセグメント12に突出部材20を設けることで、上記の適用例1の場合より増えた深度分の土塊6の重量が上載荷重に加わることに加えて、前記内空中心cの深度に対応するシールドトンネル10の外周位置dから下方に伸ばす垂線と、前記突出部材20およびシールドトンネル外周表面との間の領域7の土塊重量も、突出部材20に加わることになる。
従ってこのような技術によれば、より多くの土塊重量を突出部材上で引き受けることになり、上述の浮き上がり防止効果を、上記適用例1の場合よりも一層高めることができる。突出部材上の土塊重量がより大きくなることで、結果的に上下方向の土圧を増大させることになり、当然ながら上述したモーメントの集中に対する抑制効果も更に高まることになる。図2の断面図(パターンd)で示す、突出部材20がシールドトンネル10の内空11を横断する形態であれば、前記モーメントの集中に対する更に有効な対策となりうる。
ここで、本実施形態の技術が発現する浮き上がり防止やモーメントの集中抑制の効果について、無対策の場合と比較して説明しておく。図6は本実施形態における解析結果1を示す図であり、図7は本実施形態における解析結果2、図8は本実施形態における解析結果3を示す図である。各図にて示すように、前提となる解析諸元は、シールド外径10700mm、桁高350mm、土被り3.5m、地盤反力係数Kv=10000KN/mとしている。また、突出部材20にかかる荷重は全土圧であるが、突出部材20の下方から作用する揚圧力とこれに対応する水圧についてはキャンセルされる為、本解析にて突出部材20にかける荷重は有効土圧とした。
図6に示すように、無対策の場合、シールドトンネル10に生じる曲げモーメントは、トンネル底部における前記外側引張モーメントの最大値が−89.8KN・m、その両側部における前記内側引張モーメントの最大値が74.4KN・m、となった。図中における曲げモーメントの正負は、正はトンネルの内側面を開こうとする曲げモーメント、負はトンネルの外側面を開こうとする曲げモーメントを意味する。
これに対し、図7にて示すように、断面形状が100mm×100mmで長さ1250mmの角パイプ(鋼材厚6mm)を突出部材20としてシールドトンネル10に設置した場合、シールドトンネル10に生じる曲げモーメントは、トンネル底部における前記外側引張モーメントの最大値が−62.9KN・m(無対策に比べ約30%低減)、その両側部における前記内側引張モーメントの最大値が56.7KN・m(無対策に比べ約24%低減)、となった。
また、図8にて示すように、図6の場合と同様の角パイプを突出部材20としてシールドトンネル10の内空11を横断するよう設置した場合、シールドトンネル10に生じる曲げモーメントは、トンネル底部における前記外側引張モーメントの最大値が−26.0KN・m(無対策に比べ約71%低減)、その両側部における前記内側引張モーメントの最大値が30.3KN・m(無対策に比べ約59%低減)、となった。
いずれにしても、無対策の場合と比較し、シールドトンネル10に作用する曲げモーメントは大きく低減され、浮き上がり防止の効果は勿論のこと、十分なモーメントの集中抑制効果を発現することが期待できる。
−−−適用例3−−−
続いて、突出部材20を斜め上方に向けて突出するよう設置する例について説明する。図3は、本実施形態におけるシールドトンネルの適用例3を示す図である。この場合、前記シールドトンネル10において、前記突出部材20が、セグメント12での設置位置gから斜め上方に向けて突出するよう設けられている。例えば、セグメント12における突出部材の設置位置gに対応する地盤1が、例えば、非常に堅い岩盤や礫、或いは既存構造物等を含むものである時、突出部材20を地中に打ち込む、或いは突出部材20を地中に構築することは困難となる。しかしこのような状況であっても、本適用例の技術を採用すれば、岩石や既存構造物等を避けて突出部材20の設置を行うことが可能となる。
しかも、斜め上方に伸びる突出部材20とシールドトンネル外周面との間の領域が下方に凸のくさび状となり、シールドトンネル10が上方に移動しようとしても、周辺土塊をくさび状の領域に引き込んで締め固めることになり、浮力によるシールドトンネル10の挙動を抑制する、いわゆるくさび効果も期待できる。
また、内空中心cの深度より下方のセグメント12において、上記形態にて突出部材20を設けることで、前記適用例1の場合より増えた深度分の土塊6の重量が上載荷重に加わることに加えて、前記領域7の土塊重量も、突出部材20に加わることになる。
このような技術によれば、より多くの土塊を突出部材上で引き受けることになり、上述の浮き上がり防止効果やモーメントの集中抑制効果を、上記適用例1の場合よりも一層高めることができる上に、上記のくさび効果も期待でき、シールドトンネル10を更に安定した構造とすることができる。
ここで、本実施形態の技術が発現する浮き上がり防止やモーメントの集中抑制の効果について、無対策の場合と比較して説明しておく。図6は本実施形態における解析結果1を示す図であり、図9は本実施形態における解析結果4を示す図である。解析諸元は上述の適用例と同様である。
図9に示すように、断面形状が100mm×100mmで長さ1250mmの角パイプ(鋼材厚6mm)を突出部材20としてシールドトンネル10において斜め上方に向けて設置した場合、トンネル底部における前記外側引張モーメントの最大値が−61.4KN・m(無対策に比べ約32%低減)、その両側部における前記内側引張モーメントの最大値が47.4KN・m(無対策に比べ約36%低減)、となった。
解析結果から明らかなように、やはり、無対策の場合と比較し、シールドトンネル10に作用する曲げモーメントは大きく低減され、浮き上がり防止の効果は勿論のこと、十分なモーメントの集中抑制効果を発現することが期待できる。
−−−適用例4−−−
続いて、突出部材20を斜め下方に向けて設置した例について説明する。図4は本実施形態におけるシールドトンネルの適用例4を示す図である。この場合、シールドトンネル10において、前記突出部材20が、セグメント12での設置位置gから斜め下方に向けて突出するよう設けられている。例えば、セグメント12における突出部材の設置位置gに対応する地盤1が、例えば、非常に堅い岩盤や礫、或いは既存構造物等を含むものである時、突出部材20を地中に打ち込む、或いは突出部材20を地中に構築することは困難となる。しかしこのような状況であっても、本適用例の技術を採用すれば、岩石や既存構造物等を避けて突出部材20の設置を行うことが可能となる。
また、内空中心cの深度より下方のセグメント12において、上記形態にて突出部材20を設けることで、前記適用例1の場合より増えた深度分の土塊6の重量が上載荷重に加わることに加えて、前記領域7の土塊重量も、突出部材20に加わることになる。つまり、土塊5〜7について、その土塊重量を上載荷重に付加することが出来る為、更に多くの土塊を突出部材上で引き受けることになり、従って、上述の浮き上がり防止効果を上記適用例1、2の場合よりも、更に高めることができる。
ここで、本実施形態の技術が発現する浮き上がり防止やモーメントの集中抑制の効果について、無対策の場合と比較して説明しておく。図6は本実施形態における解析結果1を示す図であり、図10は本実施形態における解析結果5を示す図である。解析諸元は上述の適用例と同様である。
図10に示すように、断面形状が100mm×100mmで長さ1250mmの角パイプ(鋼材厚6mm)を突出部材20としてシールドトンネル10において斜め下方に向けて設置した場合、トンネル底部における前記外側引張モーメントの最大値が−67.5KN・m(無対策に比べ約25%低減)、その両側部における前記内側引張モーメントの最大値が56.6KN・m(無対策に比べ約24%低減)、となった。
解析結果から明らかなように、やはり、無対策の場合と比較し、シールドトンネル10に作用する曲げモーメントは大きく低減され、浮き上がり防止の効果は勿論のこと、十分なモーメントの集中抑制効果を発現することが期待できる。
−−−適用例5−−−
続いて、突出部材20とセグメント12との固定形態について説明する。図5は本実施形態におけるシールドトンネルの適用例5を示す図である。この場合、シールドトンネル内空11における、前記突出部材20と当該突出部材20が設置された前記セグメント12Aとを固定し、前記突出部材20の先端部21と当該先端部21に対向するセグメント12Bとを固定する。このような固定形態を採用すれば、突出部材20とセグメントリング14との固定がより強固なものとなり、したがって、“片持ち梁”である突出部材20の構造が強化され、より大きな上載荷重を突出部材20に負担させることも容易となる。
また、図5で例示しているように、突出部材20を前記内空11で適宜延伸するなどして、前記二つの固定箇所がセグメント12A、12Bを跨ぐよう配慮すれば、両セグメント間を固定し側方土圧に抗する支保機能を発現して、モーメントの集中を抑制する効果も更に期待できる。
以上、本実施形態によれば、各種施工条件に柔軟に対応し、浮き上がり防止を効率的に図ることが可能なシールドトンネルを提供できる。
以上、本発明の実施の形態について、その実施の形態に基づき具体的に説明したが、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
1 地盤
2 地上
5〜7、9 土塊
10 シールドトンネル
11 シールドトンネルの内空
12 セグメント
13 セグメントに設けられた挿入口
14 セグメントリング
20 突出部材
21 突出部材の先端部
30 固定手段

Claims (5)

  1. 地中に突出する突出部材をセグメントに設けたシールドトンネルにおいて、
    前記突出部材が、シールドトンネルにおける内空中心の深度より下方のセグメントから斜め上方に向けて突出するよう設けられていることを特徴とするシールドトンネル。
  2. 前記突出部材と、当該突出部材が挿通する前記セグメントの挿入口周りの内壁面とを固定するとともに、シールドトンネル内空側に所定長残した前記突出部材の先端部と、当該先端部に対向するセグメントの内壁面とを固定したことを特徴とする請求項1に記載のシールドトンネル。
  3. 地中に突出する突出部材をセグメントに設けたシールドトンネルにおいて、
    前記突出部材と、当該突出部材が挿通する前記セグメントの挿入口周りの内壁面とを固定するとともに、シールドトンネル内空側に所定長残した前記突出部材の先端部と、当該先端部に対向するセグメントの内壁面とを固定されてなり、
    前記突出部材が、セグメントでの設置位置から斜め上方に向けて突出するよう設けられることを特徴とするシールドトンネル。
  4. 地中に突出する突出部材をセグメントに設けたシールドトンネルにおいて、
    前記突出部材と、当該突出部材が挿通する前記セグメントの挿入口周りの内壁面とを固定するとともに、シールドトンネル内空側に所定長残した前記突出部材の先端部と、当該先端部に対向するセグメントの内壁面とを固定されてなり、
    前記突出部材が、セグメントでの設置位置から斜め下方に向けて突出するよう設けられることを特徴とするシールドトンネル。
  5. 前記突出部材が、シールドトンネルにおける内空中心の深度より下方のセグメントに設けられていることを特徴とする請求項4に記載のシールドトンネル。
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