JP5747237B2 - 無機固体電解質を用いた液体およびポリマーフリーのリチウム−空気電池 - Google Patents
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Description
リチウム-空気電池は、酸素正極とリチウム負極との組み合わせにより、正極反応:2Li++O2+2e-→Li2O2、負極反応:2Li−2e-→2Li+、トータルでは、反応2Li+O2→Li2O2に従い、3600Wh/kgのエネルギー密度(=容量1200Ah/kg×操作電圧3.0V)を理論的に供給することができる(非特許文献1)。ここで、当該理論エネルギー密度(3600Wh/kg)は、必要とするリチウムおよび酸素の全質量に基づいて算出されたものである。もしも空気から供給される無尽蔵の酸素が直接利用できるならば、リチウム-空気電池はより高いエネルギー密度を有することになる。
リチウムイオン二次電池の安全性を飛躍的に向上させる技術として、有機電解液のかわりに不燃性の無機固体電解質を用いた全固体リチウムイオン電池の研究が行われている。近年ではLi1+xAlxTi2-x(PO4)3(LATP)やLi1+xAlxGe2-x(PO4)3(LAGP)、Li7La3Zr2O12(LLZ)などのリチウムイオン伝導性が比較的高い固体電解質が開発されている(非特許文献30〜33)。リチウム-空気電池においても、このような固体電解質を用いることにより、全固体型のリチウム-空気電池を構成することができれば、より安全な電池とすることができると期待される。
しかしながら、大容量蓄電池の電極としては本来、このような薄膜型の電極ではなく、粉末成型体であるバルク形状の電極が望ましい。
また、全固体電池においては、イオンの伝導性を良好に保つために、電極と固体電解質とが密接に接合される必要がある。
したがって、大容量蓄電型の全固体型リチウム-空気電池を構築するためには、固体電解質と密接に接合し、イオンの伝導性を良好に保つことができる、バルク形状の空気極を開発する必要があった。
LISICON型、NASICON型、garnet型、perovskite型などの構造を有するリチウムイオン伝導性無機固体電解質が挙げられる。
また、本発明の全固体型リチウム-空気電池においては、固体電解質層は負極及び空気極と直接接するため、固体電解質は、各種材料に対して化学的に安定であり、負極のリチウムの酸化・還元電位から空気極の酸素の酸化・還元電位まで電気化学的にも安定であることが必要である。
このような観点から、固体電解質としては、Tiを含まない無機固体電解質、中でも、LAGPやLLZなどが好ましい。
このようなバルク形状の空気極としては、固体電解質粉末と触媒と導電助剤ないしは固体電解質粉末と導電性触媒を混合、成型し、焼成することにより作製された電極が好ましい。触媒は、固体電解質粉末と導電助剤を混合、成型し、焼成した後、触媒成分溶液を含浸させるなどの手段により電極に担持させてもよい。固体電解質粉末としては、固体電解質層を構成する固体電解質と同様のリチウムイオン伝導性固体電解質が用いられる。固体電解質層を構成する固体電解質と同じものを使用することが好ましい。
このようなバルク形状の電極においては、導電性が確保されているとともに、空気極触媒が固体電解質と密接に接合し、電極内部のリチウムイオンの伝導性が良好に保たれており、当該電極を固定用治具等により固体電解質層に密着させて配置することにより、電極と固体電解質層間のリチウムイオンの伝導性をも良好に保つことができる。
このような観点から、本発明の電池の空気極に用いる導電助剤、導電性触媒としては、炭素材料が望ましい。
固体電解質の焼結は、好ましくは空気中で行われるが、電極材料として炭素材料を用いる場合は、バルク電極の焼結は不活性雰囲気で行うことが好ましい。
固体電解質粉末と触媒と導電助剤の混合比は100:x:y(0≦x≦10、1≦y≦50)、固体電解質粉末と導電性触媒の混合比は100:z(1≦z≦50)が好ましい。
また、アセチレンブラック、グラファイト、気相成長炭素繊維(VGCF)等、それ自体は空気極触媒としての活性が乏しい炭素材料は、導電助剤として用いることができる。
本発明の空気極に用いられる触媒としては、上述の炭素材料からなる触媒をはじめとして、金属酸化物触媒等の公知の空気極触媒が使用される。触媒が上記高温での焼結処理により不活性化される恐れがある場合は、導電助剤を固体電解質粉末と混合、成型し、高温焼成した後に、触媒活性成分の溶液を電極に含浸させる等の手法により、触媒活性成分を担持させることができる。例えば、VGCFや、アセチレンブラックなどの導電助剤を、固体電解質粉末と混合、成型し、高温焼成した後に、酸化マンガンなどの触媒活性成分の溶液を電極に含浸させることにより、触媒活性成分として酸化マンガン触媒が担持された導電助剤と固体電解質とからなるバルク形状の電極を作成することができる。
〈1〉金属リチウム含有負極(アノード)/固体電解質層/空気極(カソード)という構造を有することを特徴とする、リチウム-空気電池又は充・放電可能なリチウム-空気電池であって、
空気極として、固体電解質の粉末と、触媒及び導電助剤、導電性触媒、または、導電助剤を混合、成型し、300℃〜1250℃で焼結させ、固体電解質の粉末と導電助剤のみを用いた場合には、当該焼結後、触媒活性成分を担持することにより作製されたバルク状の空気極を用いることを特徴とする、リチウム-空気電池又は充・放電可能なリチウム-空気電池。
〈2〉リチウムイオン電池或いはリチウムイオン二次電池に用いられる負極材料を用いた負極を備えた、〈1〉に記載のリチウム-空気電池又は充・放電可能なリチウム-空気電池。
〈3〉固体電解質として、液体およびポリマー材料を含有しない無機固体電解質を用いた、〈1〉または〈2〉に記載のリチウム-空気電池又は充・放電可能なリチウム-空気電池。
〈4〉固体電解質が、負極のリチウムの酸化・還元電位から空気極の酸素の酸化・還元電位まで電気化学的に安定であることを特徴とする、〈1〉から〈3〉のいずれかに記載のリチウム-空気電池又は充・放電可能なリチウム-空気電池。
〈5〉空気極に用いられる導電助剤、または、導電性触媒が炭素材料からなることを特徴とする、〈1〉から〈4〉のいずれかに記載のリチウム-空気電池又は充・放電可能なリチウム-空気電池。
〈6〉固体電解質の粉末と、触媒及び導電助剤、導電性触媒、または、導電助剤を混合、成型し、300℃〜1250℃で焼結させ、固体電解質の粉末と導電助剤のみを用いた場合には、当該焼結後、触媒活性成分を担持することにより作製された、リチウム-空気電池又は充・放電可能なリチウム-空気電池用のバルク状の空気極。
〈7〉固体電解質の粉末と、触媒及び導電助剤、導電性触媒、または、導電助剤を混合、成型し、300℃〜1250℃で焼結させ、固体電解質の粉末と導電助剤のみを用いた場合には、当該焼結後、触媒活性成分を担持することを特徴とする、リチウム-空気電池又は充・放電可能なリチウム-空気電池用のバルク状の空気極の製造方法。
本発明の電池は、また、空気極として、固体電解質粉末と触媒と導電助剤、固体電解質粉末と導電性触媒、ないしは固体電解質粉末と導電助剤を混合、成型後、焼結し、固体電解質の粉末と導電助剤のみを用いた場合には、当該焼結後、触媒活性成分を担持することにより作製された、バルク型の構造を有する空気電極を用いることにより、バルク構造の内部におけるリチウムイオン伝導性と導電性を確保し、これにより、安全性と大容量を兼ね備えたリチウム-空気電池を提供するという課題を解決した。
本発明は、また、バルク形状の空気極において固体電解質粉末とともに炭素材料を電極材料として用いることにより、高温焼結時に電極材料間で望ましくない反応が生じることを回避し、また、高温焼結時に活性が低下するおそれのある触媒活性成分は、電極の高温焼結後に低温で担持させることにより、高温焼結時の活性低下の問題を回避することを可能とした。
固体電解質上に空気極を設ける方法として、本発明者らは、先に、固体電解質表面に鉛筆で描くことにより形成されるグラファイト被膜を空気極として用いる方法を提案した(特願2011−044912号)が、この方法では電極量を増加させることが難しいため、電池の総容量を増加させるのは困難である。また、このようにして形成された空気極は、こすれば消えるものであり、この点は用途によってはメリットとなるが、電極としては脆弱なものである。これに対して、本発明のバルク形状の空気極では、粉末から電極を作製するため、電極量を容易に増加させることができ、また、冷間静水圧加圧による加圧成型(CIP)を経ることで電極の強度を高めることが可能である。
固体電解質ペレットは、固体電解質粉末を成型し、900℃〜1250℃で焼結させることによって作製する。空気極は固体電解質と炭素を混合したものを溶媒中に分散させた後に、固体電解質ペレット上に堆積させる。堆積後に静水圧加圧による圧着過程を経ることで滑落しにくい空気極を作製することも可能である。その後700℃〜1250℃、Ar雰囲気中で焼成を行う。次に空気極とは逆側にリチウム金属と銅集電体を圧着し、180〜250℃で熱処理を行うことでリチウム金属を融着させる。得られた全固体リチウム-空気電池は空気穴を有するラミネートフィルムで封止し、空気極とアルミニウム集電体を接触させ樹脂板で加圧固定する。電池の作製は、露点が-50℃以下のAr雰囲気中で行い、電池の充放電試験は、通常の生活環境下で行う。
固体電解質にLAGPを用いて、図1に示すとおりの全固体型リチウム-空気電池を以下のとおり構築し、充放電試験を行った。
(1)固体電解質ペレットの作製
固体電解質Li1.575Al0.5Ge1.5(PO4)3(LAGP)の粉末を350MPaの圧力で1軸成型した後、100MPaの静水圧加圧を行い、900℃で6時間焼成することによって厚さ1mm、直径13mm、リチウムイオン伝導度1.4x10-4S/cmの固体電解質ペレットを作製した。
(2)空気極の作製
固体電解質Li1.575Al0.5Ge1.5(PO4)3の粉末(平均粒径1μm)とマイクロフェーズ社製の多層カーボンナノチューブ(LLCNT)を100:5の比率で混合したものをエタノール中に分散させた後に、固体電解質ペレット上に直径7mmの円形状にドロップキャストした。その後700℃で10分間、Ar雰囲気中で焼成を行った。
なお、ドロップキャストによる堆積後に100MPaの静水圧加圧による圧着過程を経ることで滑落しにくい空気極を作製することも可能である。
(3)負極の配置及び電池の組み立て
次に空気極とは逆側に直径10mmのリチウム金属と銅集電体を圧着し、220℃で熱処理を行うことでリチウム金属を融着させた。得られた全固体リチウム-空気電池は空気穴を有するラミネートフィルムで封止し、空気極とアルミニウム集電体を接触させ樹脂板で加圧固定した。電池の作製は、露点が-60℃以下のAr雰囲気中で行った。
(4)充放電試験
作製した電池の充放電試験は、充放電測定システムを用いて、通常の生活環境下で行った。
電池の放電は、炭素の重量当りの電流密度10mA/gで、開回路電圧から電池電圧が2.5Vに低下するまで測定を行った。また、充電は、同電流密度で、電池電圧が5Vに増加するまで行った。充放電容量は炭素の重量あたりの値(mAh/g)で表す。
図2に初回の放電および充電曲線を示す。図2より、LAGPを用いて作製した全固体リチウム-空気電池は2.5〜3Vの領域で放電できることがわかった。また、その放電容量は4000mAh/gを超える大容量であった(従来のリチウムイオン電池の正極容量は150mAh/g程度である)。放電後は約4Vで充電でき、その充電容量は3000mAh/gであった。
Claims (6)
- 金属リチウム含有負極(アノード)/固体電解質層/空気極(カソード)という構造を有することを特徴とする、リチウム-空気電池又は充・放電可能なリチウム-空気電池であって、
固体電解質層として、液体およびポリマー材料を含有しない無機固体電解質層を用い、空気極として、液体およびポリマー材料を含有しない無機固体電解質の粉末と、触媒及び導電助剤、導電性触媒、または、導電助剤を混合し、当該固体電解質層上で膜状に成型して、300℃〜1250℃で焼結させ、固体電解質の粉末と導電助剤のみを用いた場合には、当該焼結後、触媒活性成分を担持することにより作製された、無機固体電解質層と密接に接合したバルク状の空気極を用いることを特徴とする、リチウム-空気電池又は充・放電可能なリチウム-空気電池。 - リチウムイオン電池或いはリチウムイオン二次電池に用いられる負極材料を用いた負極を備えた、請求項1に記載のリチウム-空気電池又は充・放電可能なリチウム-空気電池。
- 固体電解質が、負極のリチウムの酸化・還元電位から空気極の酸素の酸化・還元電位まで電気化学的に安定であることを特徴とする、請求項1または2に記載のリチウム-空気電池又は充・放電可能なリチウム-空気電池。
- 空気極に用いられる導電助剤、または、導電性触媒が炭素材料からなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のリチウム-空気電池又は充・放電可能なリチウム-空気電池。
- 液体およびポリマー材料を含有しない無機固体電解質の粉末と、触媒及び導電助剤、導電性触媒、または、導電助剤を混合し、液体およびポリマー材料を含有しない無機固体電解質層上で膜状に成型して、300℃〜1250℃で焼結させ、固体電解質の粉末と導電助剤のみを用いた場合には、当該焼結後、触媒活性成分を担持することにより作製された、無機固体電解質層と密接に接合したリチウム-空気電池又は充・放電可能なリチウム-空気電池用のバルク状の空気極。
- 液体およびポリマー材料を含有しない無機固体電解質の粉末と、触媒及び導電助剤、導電性触媒、または、導電助剤を混合し、液体およびポリマー材料を含有しない無機固体電解質層上で膜状に成型して、300℃〜1250℃で焼結させ、固体電解質の粉末と導電助剤のみを用いた場合には、当該焼結後、触媒活性成分を担持することを特徴とする、無機固体電解質層と密接に接合したリチウム-空気電池又は充・放電可能なリチウム-空気電池用のバルク状の空気極の製造方法。
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