JP5742335B2 - 半導体装置 - Google Patents

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Description

本発明は、炭素のナノ構造体を有する半導体装置及びその製造方法に関する。
近年、グラフェンやカーボンナノチューブ等、炭素のナノ構造体を用いた電子デバイスが注目されている。炭素のナノ構造体を用いた電子デバイスとしては、例えば、チャネル領域をグラフェンやカーボンナノチューブにより形成したトランジスタや、銅の代わりにグラフェンやカーボンナノチューブを用いたLSI用配線が提案されている。
特開2006−329802号公報 特開平8−186278号公報
炭素のナノ構造体を用いた電子デバイスを実現するためには、ナノ構造体に対してN型又はP型の任意の導電型を付与する技術を確立することが重要である。このため、より簡便な方法により炭素のナノ構造体に所望の導電型を付与しうる技術が望まれていた。
本発明の目的は、導電型を容易に制御することができる炭素のナノ構造体を有する半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
実施形態の一観点によれば、グラフェンにより形成された電極と、前記電極上にインターカラントとを介して結合されたカーボンナノチューブとを有する半導体装置が提供される。
また、実施形態の他の観点によれば、グラフェンにより形成された電極と、前記電極に結合されたカーボンナノチューブとを有し、前記電極と前記カーボンナノチューブとの距離は、0.37nm以上、0.90nm以下である半導体装置が提供される。
また、実施形態の更に他の観点によれば、グラフェンにより形成された第1の電極と、前記第1の電極から離間して配置されたグラフェンにより形成された第2の電極と、第1のインターカラントを介して前記第1の電極に結合された第1導電型の一端部と、第2のインターカラントを介して前記第2の電極に結合された第2導電型の他端部とを有するカーボンナノチューブとを有する半導体装置が提供される。
開示の半導体装置及びその製造方法によれば、グラフェンとカーボンナノチューブとの間に挿入するインターカラントを適宜選択することにより、グラフェンと結合した部分のカーボンナノチューブに任意の導電型を付与することができる。
図1は、第1実施形態による半導体装置の斜視図である。 図2は、第1実施形態による半導体装置の断面図である。 図3は、カーボンナノチューブとグラフェンとの間にリチウムをインターカレートした場合におけるグラフェンのバンド構造とカーボンナノチューブのバンド構造を示す図である。 図4は、カーボンナノチューブとグラフェンとの間に臭素をインターカレートした場合におけるグラフェンのバンド構造とカーボンナノチューブのバンド構造を示す図である。 図5は、太陽光のスペクトルとシリコンの光吸収スペクトルを示すグラフである。 図6、シリコンの光吸収スペクトル及びカーボンナノチューブの光吸収スペクトルを示すグラフである。 図7は、カーボンナノチューブの直径とカーボンナノチューブの吸収端波長との関係を示すグラフである。 図8は、第2実施形態による半導体装置の製造方法を示す斜視図である。 図9は、第2実施形態による半導体装置の製造方法を示す斜視図である。 図10は、第2実施形態による半導体装置の製造方法を示す斜視図である。 図11は、第3実施形態による半導体装置の斜視図である。 図12は、第3実施形態による半導体装置の断面図である。 図13は、シリコンの光吸収スペクトル及びカーボンナノチューブの光吸収スペクトルを示すグラフである。 図14は、第3実施形態による半導体装置の製造方法を示す斜視図である。 図15は、第3実施形態による半導体装置の製造方法を示す斜視図である。 図16は、第3実施形態による半導体装置の製造方法を示す斜視図である。
[第1実施形態]
第1実施形態による半導体装置について図1乃至図4を用いて説明する。図1は、本実施形態による半導体装置の斜視図である。図2は、本実施形態による半導体装置の断面図である。図2(a)は、図1中のA−A′線断面図を示し、図2(b)は、図1中のB−B′線断面図を示す。図3は、カーボンナノチューブとグラフェンとの間にリチウムをインターカレートした場合におけるグラフェンのバンド構造とカーボンナノチューブのバンド構造を示す図である。図4は、カーボンナノチューブとグラフェンとの間に臭素をインターカレートした場合におけるグラフェンのバンド構造とカーボンナノチューブのバンド構造を示す図である。
本実施形態による半導体装置の構造について図1及び図2を用いて説明する。
図1に示すように、グラフェンで形成される第1の電極10及びグラフェンで形成される第2の電極12上に、半導体型のカーボンナノチューブ14が配されている。カーボンナノチューブ14は、一端部が第1の電極10上に位置し、他端部が第2の電極12上に位置しており、第1の電極10と第2の電極12とを架橋するように配置されている。
グラフェンとは、炭素原子の六員環構造により形成されたシート状の物質である。グラフェンには、炭素1原子分の厚さの単層グラフェンと、単層グラフェンが積み重なって形成される多層グラフェンとがある。本実施形態で用いるグラフェンは、単層グラフェンでも多層グラフェンでもよい。
カーボンナノチューブとは、グラフェンが管状になったものである。カーボンナノチューブは、そのカイラリティにより金属の性質を有する金属型と半導体の性質を有する半導体型とに分けられる。カイラリティとは、炭素原子配列のねじれ度合いである。本実施形態には、半導体型のカーボンナノチューブが用いられる。
図1には、1本のカーボンナノチューブを用いた場合を示しているが、カーボンナノチューブの本数は、1本に限定されるものではなく、複数本のカーボンナノチューブを用いてもよい。また、複数本のカーボンナノチューブを用いる場合には、同じ直径のカーボンナノチューブを用いてもよいし、異なる直径のカーボンナノチューブを用いてもよい。
図2(a)に示すように、第1の電極10とカーボンナノチューブ14との間には、第1族の元素であるリチウム原子11がインターカレートされている。インターカレートとは、一般的に層状物質の層と層との間にイオンや分子等を挿入することである。また、インターカレートされた物質は、インターカラントと呼ばれる。本願発明者は、これを応用し、グラフェンとカーボンナノチューブの間に原子を挿入した。
第1の電極10とカーボンナノチューブ14との間にインターカレートする原子は、第1族の元素であれば、特に限定されるものではない。第1族の元素としては、例えば、カリウムやナトリウムが挙げられる。インターカレートする原子は、1種類である必要はなく、複数の第1族の元素の組み合わせでもよい。
第1の電極10とカーボンナノチューブ14との間にリチウム原子11をインターカレートしない場合、つまり、第1の電極10とカーボンナノチューブ14とが分子間力のみで結合している場合の距離は、0.335nmである。
これに対し、リチウム原子11をインターカレートした際の第1の電極10とカーボンナノチューブ14との間の距離は、0.37nm〜0.45nmとなり、リチウム原子11をインターカレートしない場合よりも大きくなる。この距離の差は、第1の電極10とカーボンナノチューブ14との間にリチウム原子11がインターカレートされたことを意味する。
図3は、グラフェンとカーボンナノチューブとの間にリチウム原子をインターカレートした場合におけるグラフェンのバンド構造及びカーボンナノチューブのバンド構造を示す図である。グラフェンのバンド構造及びカーボンナノチューブのバンド構造は、第一原理計算によって求められた。
第一原理計算とは、実験結果に基づかない計算方法である。計算対象となる系の各構成元素の原子番号及びその構造のみをパラメータとし、系の電子状態が計算される。
図3に示すように、グラフェンのバンド構造は、2つの直線で表され、カーボンナノチューブのバンド構造は、多数の曲線で表される。
グラフェンのバンドギャップは、ほぼ0であり金属のような性質を示す。
グラフェンとカーボンナノチューブとの間にリチウム原子をインターカレートした構造体のフェルミ準位は、カーボンナノチューブの真性フェルミ準位より高い。このことから、リチウム原子をインターカレートすることにより、カーボンナノチューブはN型半導体となる。即ち、本実施形態において、第1の電極10上のカーボンナノチューブ14は、N型半導体として機能する。
一方、第2の電極12とカーボンナノチューブ14との間には、図2(b)に示すように、第17族の元素である臭素原子13がインターカレートされている。
第2の電極12とカーボンナノチューブ14との間にインターカレートする原子は、第17族の元素であれば、特に限定されるものではない。第17族の元素としては、例えば、フッ素や塩素が挙げられる。インターカレートする原子は、1種類である必要はなく、複数の第17族の元素の組み合わせでもよい。
第2の電極12とカーボンナノチューブ14との間に臭素原子13をインターカレートしない場合、つまり、第2の電極12とカーボンナノチューブ14とが分子間力のみで結合している場合の距離は0.335nmである。
これに対し、臭素原子13をインターカレートした際の第1の電極12とカーボンナノチューブ14との間の距離は、0.37nm〜0.90nmとなり、臭素原子13をインターカレートしない場合よりも大きくなる。この距離の差は、第2の電極12とカーボンナノチューブ14との間に臭素原子13がインターカレートされたことを意味する。
図4は、グラフェンとカーボンナノチューブとの間に臭素原子をインターカレートした場合におけるグラフェンのバンド構造及びカーボンナノチューブのバンド構造を示すグラフである。グラフェンのバンド構造及びカーボンナノチューブのバンド構造は、第一原理計算によって求められた。
図4に示すように、グラフェンのバンド構造は、2つの直線で表され、カーボンナノチューブのバンド構造は、多数の曲線で表される。
グラフェンのバンドギャップは、ほぼ0であり金属のような性質を示す。
グラフェンとカーボンナノチューブとの間に臭素原子をインターカレートした構造体のフェルミ準位は、カーボンナノチューブの真性フェルミ準位より低い。このことから、臭素原子をインターカレートすることにより、カーボンナノチューブはP型半導体となる。即ち、本実施形態において、第2の電極12上のカーボンナノチューブ14は、P型半導体として機能する。
このように、本実施形態によれば、第1の電極10とカーボンナノチューブ14との間にリチウム原子11インターカレートするので、カーボンナノチューブ14の一端部をN型の半導体とすることができる。また、本実施形態によれば、第2の電極12とカーボンナノチューブ14との間に臭素原子13インターカレートするので、カーボンナノチューブ14の他端部をP型の半導体とすることができる。これにより、カーボンナノチューブ14にPN結合を形成することができる。
[第2実施形態]
第2実施形態による半導体装置について図5乃至図7を用いて説明する。図5は、太陽光のスペクトルとシリコンの光吸収スペクトルを示すグラフである。図6、シリコンの光吸収スペクトル及びカーボンナノチューブの光吸収スペクトルを示すグラフである。図7は、カーボンナノチューブの直径とカーボンナノチューブの吸収端波長との関係を示すグラフである。
本実施形態では、第1実施形態による半導体装置を太陽電池として用いる例について説明する。
本実施形態による半導体装置の構造は、図1に示す第1実施形態による半導体装置の構造と基本的に同じである。本実施形態による半導体装置が第1実施形態による半導体装置と異なる点は、カーボンナノチューブ14として、太陽光の波長域に応じた直径のカーボンナノチューブを用いている点である。
図5は、太陽光のスペクトルと、シリコンの光吸収スペクトルを示すグラフである。
図5に示すように、太陽光のスペクトルは、約300nm〜数1000nmの波長域に分布している。(1000nm以上の波長は省略)。それに対し、シリコンの光吸収スペクトルには、約400nm〜1000nmの波長域に分布している。
シリコンは、約1000nm以上の波長の太陽光を吸収することができない。これは、シリコンの吸収端波長が約1000nmであるからである。シリコンの吸収端波長は、シリコンのバンドギャップエネルギーから求められる。吸収端波長は、バンドギャップエネルギーに反比例する。つまり、シリコンの吸収端波長である約1000nm以上の波長の太陽光は、シリコンに吸収されずに透過する。
図6は、シリコンの光吸収スペクトル及びカーボンナノチューブの光吸収スペクトルを示すグラフである。カーボンナノチューブの吸光分析には、直径1.1nmのカーボンナノチューブを用いた。
図6に示すように、カーボンナノチューブは、約400nm〜2400nmの光を吸収する。シリコンと比較すると、カーボンナノチューブは、シリコンより長波長の光を吸収することができる。これは、カーボンナノチューブのバンドギャップエネルギーがシリコンのバンドギャップエネルギーより小さいからである。
図7は、カーボンナノチューブの直径とカーボンナノチューブの吸収端波長との関係を示すグラフである。カーボンナノチューブには、直径が変化するとその電気的性質が変化する。即ち、直径が変化すると、バンドギャップが変化するという性質がある。カーボンナノチューブの吸収端波長は、カーボンナノチューブの直径により決まる。
図7に示すように、カーボンナノチューブの直径が約0.1nm以上の範囲において、カーボンナノチューブの直径が増加すると、カーボンナノチューブの吸収端波長は直線的に増加する。例えば、直径約1nmのカーボンナノチューブの吸収端波長は約1700nmであるのに対し、直径1.5nmのカーボンナノチューブの吸収端波長は約2500nmである。
このように、直径約1nm以上のカーボンナノチューブを使用することにより、カーボンナノチューブはシリコンでは吸収できない長波長の太陽光を吸収することができる。
本実施形態による半導体装置の架橋部であるカーボンナノチューブ14は、図3及び図4を用いて上述した第一原理計算結果と同様に、第1の電極10上ではN型半導体となり、第2の電極12上ではP型半導体となっている。カーボンナノチューブ14はPN接合を形成しているので、カーボンナノチューブ14は太陽光を吸収して電流を発生させることができる。
このように、本実施形態による半導体装置は、太陽電池として用いることができる。また、本実施形態による半導体装置は、シリコンを用いた太陽電池より長波長の太陽光を吸収することができる。
本実施形態による半導体装置を太陽電池として用いる際には、シリコンを用いた太陽電池の代替として用いるだけでなく、シリコンを用いた太陽電池と併せて用いてもよい。
本実施形態による半導体装置を単独で用いる場合には、半導体装置の架橋部であるカーボンナノチューブ14に、例えば、直径0.7nm〜2.0nmのカーボンナノチューブを用いる。本実施形態による半導体装置とシリコンを用いた太陽電池とを併用する場合には、半導体装置の架橋部であるカーボンナノチューブ14に、例えば、直径1.1nm〜2.0nmのカーボンナノチューブを用いる。
次に、本実施形態による半導体装置の製造方法について図8乃至図10を用いて説明する。図8乃至図10は、本実施形態による半導体装置の製造方法を示す斜視図である。
まず、基板100を用意する。基板100には、例えば、表面に酸化シリコンを有するシリコン基板を用いる。
次に、基板100上に、例えば、真空蒸着法により、例えば、厚さ10nm〜500nmのニッケル膜102を形成する(図8参照)。ニッケル膜102は、グラフェンを形成する際に触媒として作用する。
次に、ニッケル膜102上に、例えば、化学気相成長(CVD)法によりグラフェン104を形成する(図8参照)。その際の温度は、例えば、800℃〜1000℃とする。
次に、ニッケル膜102上に形成されたグラフェン104を別の基板106に転写する。基板106には、例えば、酸化シリコン基板を用いる。
基板106は、後述する電極10,12とカーボンナノチューブ14との間にリチウム原子11及び臭素原子13をそれぞれインターカレートする際の温度より高い耐熱温度を有する基板であれば、特に限定されるものではなく、任意の基板を用いることができる。
次に、例えば、電子線リソグラフィにより、グラフェン104をパターニングする。これにより、第1の電極10及び第2の電極12が形成される。第1の電極10と第2の電極12との間隔は、例えば、0.02μm〜10μmである(図9参照)。
次に、カーボンナノチューブを別途合成する。その中から半導体型で、例えば、直径1.1nm、長さ0.04μm〜20μm以上のものを選択する。これを、カーボンナノチューブ14とする。
次に、第1の電極10上及び第2の電極12上に、例えば、印刷技術により、カーボンナノチューブ14を配する。これにより、第1の電極10と第2の電極12とが、カーボンナノチューブ14により架橋される(図10参照)。
次に、第2の電極12上及び第2の電極12上のカーボンナノチューブ14上に、例えば、フォトレジストを用いてマスクを形成する。
次に、第1の電極10及びカーボンナノチューブ14を、例えば、200℃に加熱し、気化したリチウムを含む雰囲気下に、例えば、1時間暴露する。これにより、第1の電極10とカーボンナノチューブ14との間にリチウム原子11がインターカレートされる。
次に、フォトレジスト剥離液によりマスクを除去する。
次に、第1の電極10上及び第1の電極10上のカーボンナノチューブ14上に、例えば、フォトレジストを用いてマスクを形成する。
次に、第2の電極12及びカーボンナノチューブ14を、例えば、200℃に加熱し、気化した臭素を含む雰囲気下に、例えば、1時間暴露する。これにより、第2の電極12とカーボンナノチューブ14との間に臭素原子13がインターカレートされる。
次に、フォトレジスト剥離液によりマスクを除去する。
こうして、本実施形態による半導体装置を完成する。
このように、本実施形態によれば、第1の電極10とカーボンナノチューブ14との間にリチウム原子11インターカレートするので、カーボンナノチューブ14の一端部をN型の半導体とすることができる。また、本実施形態によれば、第2の電極12とカーボンナノチューブ14との間に臭素原子13インターカレートするので、カーボンナノチューブ14の他端部をP型の半導体とすることができる。これにより、カーボンナノチューブ14にPN結合を形成することができ、本実施形態による半導体装置を太陽電池として用いることができる。
また、本実施形態によれば、カーボンナノチューブの直径を適宜選択することにより、カーボンナノチューブはシリコンより長波長の光を吸収することができる。これにより、本実施形態による半導体装置は吸収効率のよい太陽電池となる。
[第3実施形態]
第3実施形態による半導体装置について図11乃至図13を用いて説明する。図11は、本実施形態による半導体装置を示す斜視図である。図12は、本実施形態による半導体装置の断面図である。図12(a)は、図11中のA−A′線断面図を示し、図12(b)は、図11中のB−B′線断面図を示す。図13は、シリコンの光吸収スペクトル及びカーボンナノチューブの光吸収スペクトルを示すグラフである。図1に示す第1実施形態による半導体装置と同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
本実施形態による半導体装置の構造について図11及び図12を用いて説明する。
図11に示すように、グラフェンで形成される第1の電極10及びグラフェンで形成される第2の電極12上に、直径の異なる3本のカーボンナノチューブ16,18,20が配されている。本実施形態で用いるカーボンナノチューブは、半導体型である。カーボンナノチューブ16,18,20は、一端部が第1の電極10上に位置し、他端部が第2の電極12上に位置しており、第1の電極10と第2の電極12とを架橋するように配されている。カーボンナノチューブ16の直径は、1.1nmである。カーボンナノチューブ18の直径は、1.4nmである。カーボンナノチューブ20の直径は、2.0nmである。
図12(a)に示すように、第1の電極10とカーボンナノチューブ16,18,20との間には、第1族の元素であるリチウム原子11がインターカレートされている。
第1の電極10とカーボンナノチューブ16,18,20との間にインターカレートする原子は、第1族の元素であれば、特に限定されるものではない。第1族の元素としては、例えば、カリウムやナトリウムが挙げられる。インターカレートする原子は、1種類である必要はなく、複数の第1族の元素の組み合わせでもよい。
図12(b)に示すように、第2の電極12とカーボンナノチューブ16,18,20との間には、第17族の元素である臭素原子13がインターカレートされている。
第2の電極12とカーボンナノチューブ16,18,20との間にインターカレートする原子は、第17族の元素であれば、特に限定されるものではない。第17族の元素としては、例えば、フッ素や塩素が挙げられる。インターカレートする原子は、1種類である必要はなく、複数の第17族の元素の組み合わせでもよい。
また、本実施形態によるカーボンナノチューブ16,18,20は、図3及び図4を用いて上述した第一原理計算結果と同様に、第1の電極10上ではN型半導体となり、第2の電極12上ではP型半導体となっている。カーボンナノチューブ16,18,20はそれぞれPN接合を形成している。
本実施形態では、第1実施形態による半導体装置を太陽電池として用いる例について図13を用いて説明する
図13は、シリコンの光吸収スペクトル及びカーボンナノチューブの光吸収スペクトルを示すグラフである。図13におけるカーボンナノチューブ(1種類)とは、直径1.1nmのカーボンナノチューブのみを用いた場合を示している。図11におけるカーボンナノチューブ(3種類)とは、直径1.1nm,1.4nm,2.0nmと直径の異なる3種類のカーボンナノチューブを用いた場合を示している。
図13に示すように、シリコンの光吸収スペクトルは、約400nm〜1000nmの波長域に分布している。カーボンナノチューブ(1種類)の光吸収スペクトルは、約400nm〜2400nmの波長域に分布している。カーボンナノチューブ(3種類)は、カーボンナノチューブ(1種類)より長波長の光を吸収する(2400nm以上の波長は省略)。また、カーボンナノチューブ(3種類)の吸収曲線は、カーボンナノチューブ(1種類)の吸収曲線より安定して高い吸収率を示す。
カーボンナノチューブ(1種類)の吸収曲線には、吸収率の高いところと、低いところがある。これは、カーボンナノチューブが1次元物質であるために、バンド構造が離散化するからである。離散化したバンド構造により強い吸収を示すところと、そうでないところとが生じる。1次元物質とは、ある動作を行うのが直線方向のみの物質のことである。
本実施形態による半導体装置では、直径の異なる3種類のカーボンナノチューブを用いている。直径の異なる3種類のカーボンナノチューブを用いることにより、カーボンナノチューブ(3種類)の吸収曲線は、カーボンナノチューブ(1種類)の吸収曲線より高い吸収率を示し、且つ、なだらかな曲線になる。カーボンナノチューブは、その直径が変わるとそのバンド構造が変化するという性質を有する。バンド構造が変化すると、吸収スペクトルのピークがずれる。異なるピークを有するカーボンナノチューブの吸収曲線が重ね合わさることにより、カーボンナノチューブ(3種類)の吸収曲線は、安定して高い吸収率を示す。
カーボンナノチューブ(3種類)が長波長の光を吸収するのは、直径の大きなカーボンナノチューブを用いたからである。図7に示したように、直径2.0nmのカーボンナノチューブは、約3300nmまでの波長の光を吸収することができる。
このように、直径の異なる3種類のカーボンナノチューブを用いることにより、1種類のカーボンナノチューブを用いる場合より吸収帯域を広げることができる。また、直径の異なる3種類のカーボンナノチューブを用いることにより、吸収効率が高くなる。
本実施形態による半導体装置の架橋部であるカーボンナノチューブ16,18,20は図3及び図4を用いて上述した第一原理計算結果と同様に、第1の電極10上ではN型半導体となり、第2の電極12上ではP型半導体となっている。カーボンナノチューブ16,18,20はそれぞれPN接合を形成するので、カーボンナノチューブ16,18,20はそれぞれ太陽光を吸収して電流を発生させることができる。
このように、本実施形態による半導体装置は、太陽電池として用いることができる。
また、異なる直径のカーボンナノチューブを複数種類用いることにより、太陽光の吸収効率がよくなる。
本実施形態による半導体装置を太陽電池として用いる際には、シリコンを用いた太陽電池の代替として用いるだけでなく、シリコンを用いた太陽電池と併せて用いてもよい。
本実施形態による半導体装置を単独で用いる場合には、半導体装置の架橋部であるカーボンナノチューブ16,18,20に、例えば、直径0.7nm〜2.0nmのカーボンナノチューブを用いる。本実施形態による半導体装置とシリコンを用いた太陽電池とを併用する場合には、半導体装置の架橋部であるカーボンナノチューブ16,18,20に、例えば、直径1.1nm〜2.0nmのカーボンナノチューブを用いる。
次に、本実施形態による半導体装置の製造方法について図14乃至図16を用いて説明する。図14乃至図16は、本実施形態による半導体装置の製造方法を示す斜視図である。
まず、基板100を用意する。基板100には、例えば、シリコン基板を用いる。
次に、基板100上に、例えば、真空蒸着法により、例えば、厚さ10nm〜500nmのニッケル膜102を形成する(図14参照)。ニッケル膜102は、グラフェンを形成する際に触媒として作用する。
次に、ニッケル膜102上に、例えば、化学気相成長(CVD)法によりグラフェン104を形成する(図14参照)。その際の温度は、例えば、800℃〜1000℃とする。
次に、ニッケル膜102上に形成されたグラフェン104を別の基板106に転写する。基板106には、例えば、酸化シリコン基板を用いる。
基板106は、後述する電極10,12とカーボンナノチューブ16,18,20との間にリチウム原子11及び臭素原子13をそれぞれインターカレートする際の温度より高い耐熱温度を有する基板であれば、特に限定されるものではなく、任意の基板を用いることができる。
次に、例えば、電子線リソグラフィにより、グラフェン104をパターニングする。これにより、第1の電極10及び第2の電極12が形成される。第1の電極10と第2の電極12との間隔は、例えば、0.02μm〜10μmである(図15参照)。
次に、カーボンナノチューブを別途合成する。その中から半導体型で、例えば、直径1.1nm、長さ0.04μm〜20μm以上のものを選択する。これを、カーボンナノチューブ16とする。また、半導体型で、直径1.4nm、長さ0.04μm〜20μm以上のものを選択する。これを、カーボンナノチューブ18とする。また、半導体型で、直径2.0nm、長さ0.04μm〜20μm以上のものを選択する。これを、カーボンナノチューブ20とする。
次に、第1の電極10上及び第2の電極12上に、例えば、印刷技術により、カーボンナノチューブ16,18,20を配する。これにより、第1の電極10と第2の電極12とが、カーボンナノチューブ16,18,20により架橋される(図16参照)。
次に、第2の電極12上及び第2の電極12上のカーボンナノチューブ16,18,20上に、例えば、フォトレジストを用いてマスクを形成する。
次に、第1の電極10及びカーボンナノチューブ16,18,20を、例えば、200℃に加熱し、気化したリチウムを含む雰囲気下に、例えば、1時間暴露する。これにより、第1の電極10とカーボンナノチューブ16,18,20との間にリチウム原子11がインターカレートされる。
次に、フォトレジスト剥離液によりマスクを除去する。
次に、第1の電極10上及び第1の電極10上のカーボンナノチューブ16,18,20上に、例えば、フォトレジストを用いてマスクを形成する。
次に、第2の電極12及びカーボンナノチューブ16,18,20を、例えば、200℃に加熱し、気化した臭素を含む雰囲気下に、例えば、1時間暴露する。これにより、第2の電極12とカーボンナノチューブ16,18,20との間に臭素13原子がインターカレートされる。
次に、フォトレジスト剥離液によりマスクを除去する。
こうして、本実施形態による半導体装置を完成する。
このように、本実施形態によれば、直径の異なる複数のカーボンナノチューブを用いるので、更に吸収効率のよい太陽電池を形成することができる。
[変形実施形態]
上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、グラフェンを形成するための触媒としてニッケルを用いたが、グラフェンを成長させる触媒であれば、特に限定されるものではない。例えば、鉄や銅やコバルトでもよい。
また、上記実施形態では、触媒であるニッケル膜102上にグラフェン104を形成し、その後、グラフェン104をパターニングして第1の電極10及び第2の電極12を形成した。しかし、予めニッケル膜102をパターニングすることにより、ニッケル膜102上に直接第1の電極10及び第2の電極12を形成してもよい。
また、上記実施形態では、第1の電極10と第2の電極12との架橋に1種類カーボンナノチューブ又は3種類の異なる直径のカーボンナノチューブを用いたが、2種類又は4種類以上の異なる直径のカーボンナノチューブを用いてもよい。
カーボンナノチューブの直径や種類は、例えば、必要とされる吸収帯域等に応じて適宜選択することができる。
また、上記実施形態では、2つの電極10、12上にインターカラントを介してカーボンナノチューブを架橋するように配したが、1つの電極上にインターカラントを介してカーボンナノチューブを配してもよい。その際、インターカラントを適宜選択することにより、カーボンナノチューブを、N型の導電型又はP型の導電型にすることができる。
また、上記実施形態では、半導体装置は基板106上に形成された。しかし、カーボンナノチューブ及び電極10,12の材料であるグラフェンは高強度で柔軟な材料であるので、基板のような平面上以外に、例えば、曲面上或いは凹凸面上に形成することができる。
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
グラフェンにより形成された電極と、
前記電極に結合されたカーボンナノチューブとを有し、
前記電極と前記カーボンナノチューブとの距離は、0.37nm以上、0.90nm以下である
ことを特徴とする半導体装置。
(付記2)
グラフェンにより形成された電極と、
前記電極上にインターカラントとを介して結合されたカーボンナノチューブと
を有することを特徴とする半導体装置。
(付記3)
付記2記載の半導体装置において、
前記インターカラントは、リチウム、ナトリウム及びカリウムを含む群から選択される少なくとも1つの原子を含み、
前記カーボンナノチューブはN型の導電型を有する
ことを特徴とする半導体装置。
(付記4)
付記1又は2記載の半導体装置において、
前記インターカラントは、フッ素、塩素及び臭素を含む群から選択される少なくとも1つの原子を含み、
前記カーボンナノチューブはP型の導電型を有する
ことを特徴とする半導体装置。
(付記5)
付記1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記カーボンナノチューブの直径が0.7nmから2.0nmである
ことを特徴とする半導体装置。
(付記6)
グラフェンにより形成された第1の電極と、
前記第1の電極から離間して配置されたグラフェンにより形成された第2の電極と、
第1のインターカラントを介して前記第1の電極に結合された第1導電型の一端部と、第2のインターカラントを介して前記第2の電極に結合された第2導電型の他端部とを有するカーボンナノチューブと
を有することを特徴とする半導体装置。
(付記7)
付記6記載の半導体装置において、
前記第1のインターカラントは、リチウム、ナトリウム及びカリウムを含む群から選択される少なくとも1つの原子であり、
前記第1の導電型はN型である
ことを特徴とする半導体装置。
(付記8)
付記6記載の半導体装置において、
前記第2のインターカラントは、フッ素、塩素及び臭素を含む群から選択される少なくとも1つの原子であり、
前記第1の導電型はP型である
ことを特徴とする半導体装置。
(付記9)
付記6乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記カーボンナノチューブの直径が0.7nmから2.0nmである
ことを特徴とする半導体装置。
(付記10)
付記6乃至9のいずれか1項に記載の半導体装置において、
複数の前記カーボンナノチューブを有する
ことを特徴とする半導体装置。
(付記11)
付記10記載の半導体装置において、
複数の前記カーボンナノチューブは、直径の異なるカーボンナノチューブを含む
ことを特徴とする半導体装置。
(付記12)
グラフェンにより電極を形成する工程と、
カーボンナノチューブを形成する工程と、
前記電極上に、前記カーボンナノチューブを配する工程と、
前記電極と前記カーボンナノチューブとの間に原子をインターカレートする工程とを有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記13)
付記12記載の半導体装置の製造方法において、
前記電極と前記カーボンナノチューブとの間に、リチウム、ナトリウム及びカリウムを含む群から選択される少なくとも1つの原子をインターカレートし、前記カーボンナノチューブをN型の導電型にする
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記14)
付記12記載の半導体装置の製造方法において、
前記電極と前記カーボンナノチューブとの間に、フッ素、塩素及び臭素含む群から選択される少なくとも1つの原子をインターカレートし、前記カーボンナノチューブをP型の導電型にする
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記15)
グラフェンにより第1の電極を形成する工程と、
グラフェンにより第2の電極を形成する工程と、
前記第1の電極上及び前記第2の電極上にカーボンナノチューブを配する工程と、
前記第1の電極と前記カーボンナノチューブとの間にリチウム、ナトリウム及びカリウムを含む群から選択される少なくとも1つの原子をインターカレートし、前記カーボンナノチューブの一端部をN型半導体にする工程と、
前記第2の電極と前記カーボンナノチューブとの間にフッ素、塩素及び臭素含む群から選択される少なくとも1つの原子をインターカレートし、前記カーボンナノチューブの他端部をP型半導体にする工程とを有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
10…第1の電極
12…第2の電極
14…カーボンナノチューブ
16…カーボンナノチューブ
18…カーボンナノチューブ
20…カーボンナノチューブ
100…基板
102…ニッケル膜
104…グラフェン
106…基板

Claims (6)

  1. グラフェンにより形成された電極と、
    前記電極上に、第1族又は第17族に属する元素であるインターカラントを介して結合されたカーボンナノチューブと
    を有することを特徴とする半導体装置。
  2. グラフェンにより形成された第1の電極と、
    前記第1の電極から離間して配置されたグラフェンにより形成された第2の電極と、
    第1族又は第17族に属する元素である第1のインターカラントを介して前記第1の電極に結合された第1導電型の一端部と、第1族又は第17族に属する元素である第2のインターカラントを介して前記第2の電極に結合された第2導電型の他端部とを有するカーボンナノチューブと
    を有することを特徴とする半導体装置。
  3. 請求項2記載の半導体装置において、
    前記第1のインターカラントは、リチウム、ナトリウム及びカリウムを含む群から選択される少なくとも1つの原子であり、
    前記第1の導電型はN型である
    ことを特徴とする半導体装置。
  4. 請求項2記載の半導体装置において、
    前記第2のインターカラントは、フッ素、塩素及び臭素を含む群から選択される少なくとも1つの原子であり、
    前記第1の導電型はP型である
    ことを特徴とする半導体装置。
  5. 請求項2乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置において、
    複数の前記カーボンナノチューブを有する
    ことを特徴とする半導体装置。
  6. 請求項5記載の半導体装置において、
    複数の前記カーボンナノチューブは、直径の異なるカーボンナノチューブを含む
    ことを特徴とする半導体装置。
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