JP5741060B2 - 冷却帯診断方法、圧延材の冷却方法、冷却帯診断装置、圧延材の冷却装置 - Google Patents

冷却帯診断方法、圧延材の冷却方法、冷却帯診断装置、圧延材の冷却装置 Download PDF

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Description

本発明は、熱間圧延中の冷却装置や、デスケーリング装置等の冷却装置となる装置や、熱間圧延された鋼板などの圧延材を巻取温度などの目標温度に冷却する冷却装置などに対する診断又は冷却制御の技術に関する。
熱間圧延された鋼板の巻取温度制御(冷却制御)としては、例えば特許文献1や特許文献2に記載の技術がある。これらの特許文献に記載されているように、熱間圧延された鋼板は、複数のバンク(冷却帯)の列からなる冷却設備を通過する際に、目標温度に冷却される。
例えば、仕上圧延機の出側温度(冷却設備に対する入側温度)と通板速度に基づき、予め設定した温度計算モデル式を使用して注水量を推定する。そして、対象とする仮想切板(長手方向に一定長で仮想的に分割した圧延板部分)に対し、上記推定した注水量とするためのバンクを選択し、その選択したバンクで水冷するフィードフォワード制御によって、鋼板を目標の巻取温度とする。なお、仮想切板単位に冷却制御が実施される。
そして、圧延材に注水する冷却水の実際流量や、冷却水吐出指令から実際に冷却水が鋼板表面に到達(冷却開始)する時間を管理・把握することが冷却制御の精度の要の一つとなる。
特開2007−118027号公報 特開平8−252625号公報
しかしながら、各バンクで注水される実際の冷却水量が、制御で管理している設定流量と異なる場合には、目的とする冷却が得られないか必要以上に冷却してしまうことで、冷却制御の精度に悪影響がでる。
このとき、実測の巻取温度(冷却設備の出側温度)に基づき、選択するバンクや通板速度を変更するフィードバック制御も実施される場合がある。この場合には、上述のように一部のバンクでの実際の注水量が管理されている設定流量と異なっていても、目標温度に近い温度で巻き取り温度が実施可能となっている。このため、オンラインにおいてバンクの異常発見が、し難い。
ここで、各バンクでの注水量が設定流量となっているかどうかの診断は、従来、次のように実施されている。
すなわち、定期的に休止日などに設備動作チェックを行うことで実施する。または、各バンクを構成するヘッダのノズルのスプレー弁に対し、リミットスイッチなどを設けておき、その弁の実動作を検出したり、流量計を設置することで流量を検出したりして管理している。
しかしながら、定期的に休止日などに設備動作チェックを行うことは、作動を停止してつまりオフラインで実施することが必要であり、また故障検出が遅れるといった課題がある。
また、リミットスイッチや流量計を設置して管理することは、診断のためだけに複数の
センサや検出機などの機器類の設置が必要である。また、設置した各センサ等の機器類の保守点検が別途必要となるといった課題がある。
本発明は、上記のような点に着目したもので、診断のためだけにセンサ等の機器を必ずしも設置しなくても、冷却制御で使用する諸元を利用してオンラインで設備異常を把握することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、圧延材が複数列の冷却帯を通過する際に、上記複数列の冷却帯のうちから選択された1又は2以上の冷却帯での冷却水で水冷すると共に、上記選択されなかった残りの冷却帯で空冷されることで上記圧延材を目標温度に冷却する冷却装置における上記冷却帯を診断する冷却帯診断方法であって、
上記複数列の冷却帯を通過する前の実際の圧延材温度である入側温度Teと当該複数列の冷却帯を通過した後の実際の圧延材温度である出側温度Tdとをそれぞれ測定し、
上記入側温度Teと上記出側温度Tdの差である温度降下量を、上記選択された各冷却帯の水冷時における冷却水の単位時間当たりの各設定流量がそれぞれ予め設定した一定値となっているとき且つ上記選択された冷却帯の組合せが異なる冷却の条件ごとにそれぞれ取得し、
上記温度降下量を複数取得すると、取得した温度降下量毎に、温度降下量とその温度降下量を求めたときに上記選択された冷却帯の情報とから、温度降下量に応じた抜熱量と上記各冷却帯での実際の抜熱量との平衡式を求め、求めた複数の平衡式から、上記複数列の冷却帯のうちの少なくとも一つの冷却帯における、水冷時における単位時間当たりの実際の冷却水流量である計算流量を求め、
上記求めた計算流量と上記設定した上記設定流量とから冷却帯の故障診断を行うことを特徴とする。
次に、請求項に記載した発明は、請求項に記載した構成に対し、上記平衡式は、下記(3)式から求めることを特徴とする。
Te −Td =(ΣΔQi/Vi)+ΔQe/Ve+ΔQd/Vd
・・・(3)
但し、ΔQi = Δqwi・Li(水冷時の場合)
ΔQi = ΔQAi (空冷時の場合)
ここで、
i :i番目の冷却帯を示す添え字(ただし、i:1〜n、nは冷却帯の総数)
ΔQi :i番目の冷却帯での水冷若しくは空冷による単位時間当たりの抜熱量
i :i番目の冷却帯での平均搬送速度
ΔQe :入側温度測定位置から複数列の冷却帯の入側までの単位時間当たりの抜熱量
Ve :入側温度測定位置から複数列の冷却帯の入側までの平均搬送速度
ΔQd :複数列の冷却帯の出側から出側温度測定位置までの単位時間当たりの抜熱量
Vd :複数列の冷却帯の出側から出側温度測定位置までの平均搬送速度
Δqwi:i番目の冷却帯での水冷熱伝達係数
i :i番目の冷却帯での上記計算流量
ΔQAi:i番目の冷却帯での単位時間当たりの空冷による抜熱量
である。
次に、請求項に記載した発明は、請求項又は請求項に記載した構成に対し、取得する上記温度降下量の数は、複数列の冷却帯の数以上であることを特徴とする。
次に、請求項に記載した発明は、圧延材を、複数列の冷却帯からなる冷却設備に通過させる際に、上記複数列の冷却帯のうちから選択された1又は2以上の冷却帯での冷却水で水冷して当該圧延材を目標温度に冷却する圧延材の冷却方法において、
上記請求項〜請求項のいずれか1項に記載の冷却帯診断方法で故障と診断された冷却帯を、上記選択対象から外すことを特徴とする。
次に、請求項に記載した発明は、圧延材が複数列の冷却帯を通過する際に、上記複数列の冷却帯のうちから選択された1又は2以上の冷却帯での冷却水で水冷すると共に、上記選択されなかった残りの冷却帯で空冷されることで上記圧延材を目標温度に冷却する冷却装置における、上記冷却帯を診断する冷却帯診断装置であって、
上記選択された各冷却帯の水冷時における冷却水の単位時間当たりの各設定流量がそれぞれ予め設定した一定値となっているときに、上記複数列の冷却帯を通過する前の実際の圧延材温度である入側温度Teと当該複数列の冷却帯を通過した後の実際の圧延材温度である出側温度Tdとを取得する実績温度取得部と、
上記実績温度取得部が温度を取得した圧延材部分の冷却に対して上記選択された冷却帯の組合せを取得する選択冷却帯取得部と、
上記選択冷却帯取得部の取得した冷却帯の組合せに基づき、冷却帯の組合せとして、予め設定した複数種類以上の異なる組合せを取得したと判定すると、上記組合せ毎に、上記入側温度Teと上記出側温度Tdの差である温度降下量とその温度降下量を求めたときに選択された冷却帯の情報とから、温度降下量に応じた抜熱量と上記各冷却帯での実際の抜熱量との平衡式を求め、求めた複数の平衡式から、上記複数列の冷却帯のうちの少なくとも一つの冷却帯における、水冷時における単位時間当たりの実際の冷却水流量である計算流量を求める計算流量演算部と、
上記計算流量演算部で求めた計算流量と上記設定流量とから冷却帯の故障診断を行う故障診断部と、
を備えることを特徴とする。
次に、請求項に記載した発明は、請求項の構成に対し、上記平衡式は、下記(2)式から求めることを特徴とする。
Te−Td =(ΣΔQi/Vi)+ΔQe/Ve+ΔQd/Vd
・・・(4)
但し、ΔQi = Δqwi・Li(水冷時の場合)
ΔQi = ΔQAi (空冷時の場合)
ここで、
i :i番目の冷却帯を示す添え字(ただし、i:1〜n、nは冷却帯の総数)
ΔQi :i番目の冷却帯での水冷若しくは空冷による単位時間当たりの抜熱量
i :i番目の冷却帯での平均搬送速度
ΔQe :入側温度測定位置から複数列の冷却帯の入側までの単位時間当たりの抜熱量
Ve :入側温度測定位置から複数列の冷却帯の入側までの平均搬送速度
ΔQd :複数列の冷却帯の出側から出側温度測定位置までの単位時間当たりの抜熱量
Vd :複数列の冷却帯の出側から出側温度測定位置までの平均搬送速度
Δqwi:i番目の冷却帯での水冷熱伝達係数
i :i番目の冷却帯での上記計算流量
ΔQAi:i番目の冷却帯での単位時間当たりの空冷による抜熱量
である。
次に、請求項に記載した発明は、請求項5又は請求項6に記載した構成に対し、上記計算流量演算部は、異なる冷却帯の組合せを上記複数列の冷却帯の数以上取得したと判定すると、複数列の冷却帯の各計算流量を求めることを特徴とする。
次に、請求項に記載した発明は、圧延材を、複数列の冷却帯からなる冷却設備に通過させる際に、上記複数の冷却帯のうちから選択された1又は2以上の冷却帯での冷却水で水冷して当該圧延材を目標温度に冷却する圧延材の冷却装置において、
上記請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の冷却帯診断装置で故障と診断された冷却帯を、上記選択対象から外すことを特徴とする。
本発明によれば、通常取得する冷却設備に対する入側・出側の実績温度と冷却制御指令の情報を利用して、オンラインで冷却設備を構成する冷却帯(バンク)の異常を診断して把握することが可能となる。この結果、より早期に故障診断が可能になると共に、当該冷却帯(バンク)の故障診断のための動作点検の簡素化を図ることが出来る。
このとき、請求項又は請求項に係る発明によれば、全ての冷却帯(バンク)の故障診断を実施することが出来る。
また、請求項又は請求項に係る発明によれば、設定流量と実際の流量とが異なる可能性のある冷却帯を使用しないことで、より目標とする注水量での冷却がフィードフォワードで実施可能となる結果、目標温度とするために発生する圧延材の搬送速度の変動をより低減できたり、より精度良く冷却制御を実施することが可能となる。
本発明に基づく実施形態に係る冷却装置の構成を示す概念図である。 冷却帯診断部の構成を示す図である。 計算流量演算部の処理を示すフローチャート図である。
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の冷却装置の構成を示す概念図である。
本実施形態では、圧延材として鋼板を例にして説明する。ただし、圧延材は鋼板に限定されず、アルミ板などからなり、且つ熱間圧延後の帯状の圧延材であってもよい。
(構成)
冷却装置は、図1に示すように、冷却設備1とその冷却設備1の各バンクを制御する冷却コントローラ2とを備える。
上記冷却設備1は、熱間圧延機、例えば仕上圧延機の最終スタンドFnと、鋼板3を巻き取る巻取機4との間に配置される。そして、上記最終スタンドFnで圧延された鋼板3は、ランナウトテーブル(不図示)で搬送されながら、上記冷却設備1で冷却されて目標とする巻取温度となり、連続して上記巻取機4に巻き取られる。
上記冷却設備1には、注水可能な多数のノズルを持った冷却水ヘッダが複数配置され、選択された冷却水ヘッダのノズルからの冷却水で、搬送されてくる鋼板3の水冷を行う。上記多数の冷却水ヘッダは、鋼板搬送方向に沿って複数に区分され、区分毎に冷却帯であるバンクを構成する。すなわち、冷却設備1には鋼板搬送方向に沿って複数列のバンクが配置されている。また、バンク毎に各ヘッダに冷却水を供給する制御弁をそれぞれ設け、バンク毎に各冷却水ヘッダへの冷却水供給を制御可能となっている。
また、仕上出側温度計5が、上記最終スタンドFnの出側に配置されている。仕上出側温度計5は、熱間圧延後の鋼板温度を測定する。
また、巻取温度計6が巻取機4の入側に配置されている。巻取温度計6は巻取機4に巻き取られる鋼板3の温度を測定する。
冷却コントローラ2は、冷却制御部2Aと冷却帯診断部2Bとを備える。冷却コントローラ2の冷却帯診断部2Bは、上記バンクを診断する冷却帯診断装置を構成する。
上記冷却制御部2Aは、少なくとも搬送速度と上記仕上出側温度計5が測定した出側温度とに基づき、注水するバンクを選択し、その選択したバンクによる水冷と、選択しないバンクによる空冷による冷却制御を行うことで、鋼板3を目標巻取温度に冷却制御する。この冷却制御は、鋼板3を長手方向に一定長で仮想的に分割した材料部分である各仮想切板毎に実施される。この冷却制御部2Aの冷却制御方式は、注水するバンクを選択し、その選択したバンクにより水冷する方式であれば、他の冷却制御方式であっても良い。
上記冷却制御部2Aでの処理の一例を挙げると、例えば、上記仕上出側温度計5が温度測定した仮想切板のランナウトテーブル上での温度推移を計算すると共に、上記仮想切板の位置をトラッキングし、その仮想切板位置と温度状態量に基づき、予め設定したサンプリング周期で上記仮想切板位置の巻取温度を予測し、その予測値によって、注水するバンクを選択し、選択されたバンクでは、予め設定した設定流量の注水を行うフィードフォワ
ード制御を実施する。
ここで、本実施形態の冷却装置では、各バンクでの注水量の単位時間当たりの設定流量をそれぞれ一定値にして冷却制御を実施する場合とする。各バンクでの上記設定流量を変更する場合には、次の冷却帯診断部2Bは、各バンクでの各注水量がそれぞれ予め設定した診断用の各設定流量となっているときの仮想切板の冷却時の温度測定値を採用する。
上記冷却帯診断部2Bは、実績温度取得部2Baと、選択冷却帯取得部2Bbと、計算流量演算部2Bcと、故障診断部2Bdとを備える。
なお、上記冷却制御部2Aにおける、各仮想切板のトラッキング情報によって各仮想切板の位置はそれぞれ特定出来る。また、各仮想切板の各バンク位置などでの搬送速度についても所定の精度で推定することが可能である。また、鋼板3の搬送速度は、最終スタンドFnのロール周速度や巻取機4の巻取軸の回転数などに基づき取得できる。
実績温度取得部2Baは、同一の仮想切板に対して、仕上出側温度計5及び巻取温度計6がそれぞれ測定した温度を、入側温度Te及び出側温度Tdとして取得する。具体的には、実績温度取得部2Baは、冷却制御部2Aから、各仮想切板毎の入側温度Te及び出側温度Tdを取得する。
選択冷却帯取得部2Bbは、上記実績温度取得部2Baが温度を取得した圧延材部分である仮想切板の冷却の際に選択されたバンクの組合せを取得する。具体的には、選択冷却帯取得部2Bbは、冷却制御部2Aからバンクの組合せを取得する。この実績温度取得部2Ba及び選択冷却帯取得部2Bbは、一つの処理部として構成して処理を実施するようにすればよい。
上記計算流量演算部2Bcは、上記選択冷却帯取得部2Bbの取得したバンクの組合せに基づき、予め設定した複数種類以上の異なる組合せを取得したと判定すると、上記選択されたバンクの組合せが異なるときに対応して上記実績温度取得部2Baで測定された入側温度Teと出側温度Tdとの組をそれぞれ下記(5)式で示される関数のパラメータに設定することで表される連立方程式を演算して、少なくとも一つのバンクにおける、水冷時における単位時間当たりの実際の冷却水流量である計算流量を求める。
計算流量演算部2Bcの処理の一例を、図3に示すフローチャートに基づき説明する。
まずステップS10にて、上記選択冷却帯取得部2Bbの取得したバンクの組合せに基づき、予め設定した複数種類以上の異なる組合せを取得したと判定する。本実施形態では、冷却設備1に設定したバンク数と同じ数であるn個の異なるバンクの組合せを取得したか否かを判定する。条件を満足する場合には、ステップS20に移行する。条件を満足しない場合には、ステップS10の処理を予め設定した制御時間毎に実施する。異なるバンクの組合せの判定は、例えば、バンクの組合せを、バンク列の行列として表し、異なる行列の数によって判定する。例えばバンク数が13とした場合であって、第4,6,9番目のバンクを選択したい場合には、例えば下記のような行列とする(選択して冷却指令を行ったバンクを「1」とした。)。
(0,0,0,1,0,1,0,0,1,0,0,0,0)
ステップS20では、実績温度取得部2Ba及び選択冷却帯取得部2Bbが取得した、「選択されたバンク(水冷のバンク)と入側温度Te及び出側温度Tdの組」を、パラメータとして、バンク数分の下記(5)式の関数を規定することで連立方程式を設定する。ここで、バンク数をnとする。
Te−Td =(ΣΔQi/Vi)+ΔQe/Ve+ΔQd/Vd
・・・(5)
但し、ΔQi = Δqwi・Li(水冷時の場合)
ΔQi = ΔQAi (空冷時の場合)
ここで、
i :i番目のバンクを示す添え字(ただし、i:1〜n、nはバンクの総数)
ΔQi :i番目のバンクでの水冷若しくは空冷による単位時間当たりの抜熱量
i :i番目のバンクでの平均搬送速度
ΔQe :入側温度測定位置から複数列のバンクの入側までの単位時間当たりの抜熱量
Ve :入側温度測定位置から複数列のバンクの入側までの平均搬送速度
ΔQd :複数列のバンクの出側から出側温度測定位置までの単位時間当たりの抜熱量
Vd :複数列のバンクの出側から出側温度測定位置までの平均搬送速度
Δqwi:i番目のバンクでの水冷熱伝達係数
i :i番目のバンクでの上記計算流量
ΔQAi:i番目のバンクでの単位時間当たりの空冷による抜熱量
である。
なお、上記(5)式において、対象とする仮想切板に対する仕上出側温度計5の測定位置から巻取温度計6の測定位置までの間における速度変化が予め設定した許容速度以下の場合には、下記(6)式を使用しても良い。
Te−Td =((ΣΔQi)+ΔQe+ΔQd)/V ・・・(6)
但し、Vは、仕上出側温度計5の測定位置から巻取温度計6の測定位置までの間の平均搬送速度とする。
ステップS30では、ステップS30でパラメータが設定された連立方程式を演算して、各バンクでの水冷時の実際の注水量である計算流量Li(i=1〜n)を求める。
次に、上記(5)式について説明する。
圧延材を構成する材料の冷却は、その冷却水量、材料速度、材料温度、材質等によって左右される。このため、下記(7)式の平衡式が成立する。
材料の温度降下量=(冷却水による抜熱)+(空冷による抜熱) ・・・(7)
入側温度Teを測定する仕上出側温度計5の測定位置から、出側温度Tdを測定する巻取温度計6での測定位置までの間における上記材料の温度降下量は、「Te−Td」となり、上記(5)式の辺となる。
また、仕上出側温度計5の測定位置から巻取温度計6の測定位置までの間での、総抜熱は、各バンクでの抜熱(ΣΔQi/Vi)と、仕上出側温度計5の測定位置から複数列のバンクの入側までの間(図1中S1)の空冷による抜熱量(ΔQe/Ve)と、複数列のバンクの出側から巻取温度計6の測定位置までの間(図1中S2)の空冷による抜熱量(ΔQd/Vd)となる。
以上のことから上記(5)式が成立することが分かる。
また、上記(5)式における空冷による、単位時間当たりの抜熱量ΔQe、ΔQd、ΔQAi(i:1〜n)は、予め実験や理論によって求めておいて、設定しておけばよい。この単位時間当たりの抜熱量ΔQe、ΔQd、ΔQAiは、例えば、抜熱位置の温度雰囲気、
鋼板3の比熱、入側温度Teの範囲によって設定する。対象とする抜熱位置の温度雰囲気、鋼板3の比熱、入側温度Teの範囲の変化が小さい場合には、一定の値に設定すればよい。温度雰囲気、比熱範囲、入側温度Teの範囲毎に予めマップ形式でデータを持っていて、上記入側温度Teによって決定するようにしても良い。また、抜熱位置の温度雰囲気、鋼板3の比熱、入側温度Teの範囲がそれぞれ予め設定した範囲となっているときに、上記「選択されたバンク(水冷のバンク)と入側温度Te及び出側温度Td」を取得するようにしても良い。
また、各バンクの水冷熱伝達係数Δqwiについても、抜熱位置の温度雰囲気、鋼板3
の比熱、冷却水の温度によって予め実験や理論から求めておけばよい。なお、冷却水による抜熱は冷却水量に比例する。
このように、上記(5)式において、各バンクでの上記計算流量Liだけを不定の変数
とした連立方程式となる。このため、バンク数nだけの方程式があれば、各バンクでの実際の流量である計算流量Li(i:1〜n)を求める事が出来る。
次に、故障診断部2Bdは、各バンクに設定されている上記設定流量と上記算流量演算部2Bcで求めた計算流量とから、各バンクの故障診断を行う。
本実施形態では、各バンク毎に次の判定処理を実施する。
例えば、対象とするバンクにおける、計算流量と設定流量との誤差が、予め設定した閾値(±20%など)以上の判定した場合には、異常バンクと判定する。
例えば、下記のように判定しても良い。
「計算流量>設定流量の120%」か否かを判定する。条件を満足する場合には、流量調整弁が故障と判定する。応答が早い方向に温度差がずれている場合には、この条件を使用することが好ましい。
また、「計算流量<設定流量の90%」か否かを判定する。条件を満足する場合には、ノズル詰まり若しくは応答遅れの故障と判定する。
上記120%及び90%は例示であり、設計仕様や上記式の精度などに基づき決定すればよい。
なお、「計算流量>設定流量の150%」などと計算流量が設定流量よりも大幅に大きい場合には、当該バンクの流量調整弁が故障であると共に、他の空冷状態のはずのバンクの不良のおそれがあると判定する。例えば、当該バンクで注水可能の最大流量以上の計算流量の場合には、他のバンクの故障推定を行う。他のバンクの故障の判定は、そのバンクの診断によって決定可能である。
他のバンクの故障の影響によっても、当該バンクが異常と判定される場合もある。しかし、異常判定されたバンクが1つだけの場合には、そのバンクのみ異常と診断することが可能である。また、2以上のバンクで異常と判定された場合には、その異常判定されたバンクのいずれかが異常と診断することが出来る。2以上のバンクで異常と判定された場合には、各バンクの異常理由から真に異常のバンクを判定しても良いし、その全てのバンクを異常と診断しても良い。
上記冷却帯診断部2Bで求めた異常バンク、その推定故障理由とともに表示部7に表示すると共に、そのバンク異常情報を上記冷却制御部2Aに出力する。
上記冷却制御部2Aは、上記冷却帯診断部2Bで異常と判定されたバンクを選択対象のバンクから外して上述の処理を実施する。
以上のように、本実施形態の冷却装置では、通常取得する冷却設備1に対する入側・出側の実績温度と冷却制御指令の情報を利用して、オンラインで冷却設備1を構成する冷却帯(バンク)の異常を診断して把握することが可能となる。この結果、より早期に故障診断が可能になると共に、当該冷却帯(バンク)の故障診断のための動作点検の簡素化を図ることが出来る。
また、異常判定されたバンクを使用しないことで、より目標とする注水量での冷却制御がフィードフォワードによってより安定して実施可能となる。この結果、目標温度とするために発生する鋼板3の搬送速度の変動をより低減できたり、より精度良く冷却制御を実施することが可能となる。
ここで、冷却設備1によっては、バンク列の途中に中間温度計を設置して鋼板3の温度を測定する場合もある。この場合には、例えばバンク列を2つのグループに分けて、各グ
ループ毎に上記バンクの異常診断を実施するようにしても良い。
また、上記実施形態では、全てのバンクについて一度に故障診断している。これに代えて、総バンクのうちの1又は2以上のバンク毎に故障診断しても良い。
例えば、診断対象とするバンクを3つとし、その診断対象のバンクの選択・非選択状態が同じ場合であって、各バンクの選択・非選択状態が異なる3つのときの「入側温度Teと出側温度Tdとの組」を取得して、3つの連立方程式を解くことで、当該3つの診断対象のバンクを判定しても良い。
ここで、上記実施形態では、熱間圧延された鋼板などの圧延材を巻取温度などの目標温度に冷却する冷却装置を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、熱間圧延中の冷却装置や、デスケーリング装置等の冷却装置となる装置など、圧延材が複数列のバンク(冷却帯)を通過する構成となっている設備であれば、本発明は適用可能である。
1 冷却設備
2 冷却コントローラ
2A 冷却制御部
2B 冷却帯診断部
2Ba 実績温度取得部
2Bb 選択冷却帯取得部
2Bc 計算流量演算部
2Bd 故障診断部
3 鋼板
4 巻取機
5 仕上出側温度計
6 巻取温度計
7 表示部
Li 計算流量
Td 出側温度
Te 入側温度

Claims (8)

  1. 圧延材が複数列の冷却帯を通過する際に、上記複数列の冷却帯のうちから選択された1又は2以上の冷却帯での冷却水で水冷すると共に、上記選択されなかった残りの冷却帯で空冷されることで上記圧延材を目標温度に冷却する冷却装置における上記冷却帯を診断する冷却帯診断方法であって、
    上記複数列の冷却帯を通過する前の実際の圧延材温度である入側温度Teと当該複数列の冷却帯を通過した後の実際の圧延材温度である出側温度Tdとをそれぞれ測定し、
    上記入側温度Teと上記出側温度Tdの差である温度降下量を、上記選択された各冷却帯の水冷時における冷却水の単位時間当たりの各設定流量がそれぞれ予め設定した一定値となっているとき且つ上記選択された冷却帯の組合せが異なる冷却の条件ごとにそれぞれ取得し、
    上記温度降下量を複数取得すると、取得した温度降下量毎に、温度降下量とその温度降下量を求めたときに上記選択された冷却帯の情報とから、温度降下量に応じた抜熱量と上記各冷却帯での実際の抜熱量との平衡式を求め、求めた複数の平衡式から、上記複数列の冷却帯のうちの少なくとも一つの冷却帯における、水冷時における単位時間当たりの実際の冷却水流量である計算流量を求め、
    上記求めた計算流量と上記設定した上記設定流量とから冷却帯の故障診断を行うことを特徴とする冷却帯診断方法。
  2. 上記平衡式は、下記(1)式から求めることを特徴とする請求項に記載した冷却帯診断方法。
    Te−Td =(ΣΔQi/Vi)+ΔQe/Ve+ΔQd/Vd
    ・・・(1)
    但し、ΔQi = Δqwi・Li(水冷時の場合)
    ΔQi = ΔQAi (空冷時の場合)
    ここで、
    i :i番目の冷却帯を示す添え字(ただし、i:1〜n、nは冷却帯の総数)
    ΔQi :i番目の冷却帯での水冷若しくは空冷による単位時間当たりの抜熱量
    i :i番目の冷却帯での平均搬送速度
    ΔQe :入側温度測定位置から複数列の冷却帯の入側までの単位時間当たりの抜熱量
    Ve :入側温度測定位置から複数列の冷却帯の入側までの平均搬送速度
    ΔQd :複数列の冷却帯の出側から出側温度測定位置までの単位時間当たりの抜熱量
    Vd :複数列の冷却帯の出側から出側温度測定位置までの平均搬送速度
    Δqwi:i番目の冷却帯での水冷熱伝達係数
    i :i番目の冷却帯での上記計算流量
    ΔQAi:i番目の冷却帯での単位時間当たりの空冷による抜熱量
    である。
  3. 取得する上記温度降下量の数は、複数列の冷却帯の数以上であることを特徴とする請求項又は請求項に記載した冷却帯診断方法。
  4. 圧延材を、複数列の冷却帯からなる冷却設備に通過させる際に、上記複数列の冷却帯のうちから選択された1又は2以上の冷却帯での冷却水で水冷して当該圧延材を目標温度に冷却する圧延材の冷却方法において、
    上記請求項〜請求項のいずれか1項に記載の冷却帯診断方法で故障と診断された冷却帯を、上記選択対象から外すことを特徴とする圧延材の冷却方法。
  5. 圧延材が複数列の冷却帯を通過する際に、上記複数列の冷却帯のうちから選択された1又は2以上の冷却帯での冷却水で水冷すると共に、上記選択されなかった残りの冷却帯で空冷されることで上記圧延材を目標温度に冷却する冷却装置における、上記冷却帯を診断する冷却帯診断装置であって、
    上記選択された各冷却帯の水冷時における冷却水の単位時間当たりの各設定流量がそれぞれ予め設定した一定値となっているときに、上記複数列の冷却帯を通過する前の実際の圧延材温度である入側温度Teと当該複数列の冷却帯を通過した後の実際の圧延材温度である出側温度Tdとを取得する実績温度取得部と、
    上記実績温度取得部が温度を取得した圧延材部分の冷却に対して上記選択された冷却帯の組合せを取得する選択冷却帯取得部と、
    上記選択冷却帯取得部の取得した冷却帯の組合せに基づき、冷却帯の組合せとして、予め設定した複数種類以上の異なる組合せを取得したと判定すると、上記組合せ毎に、上記入側温度Teと上記出側温度Tdの差である温度降下量とその温度降下量を求めたときに選択された冷却帯の情報とから、温度降下量に応じた抜熱量と上記各冷却帯での実際の抜熱量との平衡式を求め、求めた複数の平衡式から、上記複数列の冷却帯のうちの少なくとも一つの冷却帯における、水冷時における単位時間当たりの実際の冷却水流量である計算流量を求める計算流量演算部と、
    上記計算流量演算部で求めた計算流量と上記設定流量とから冷却帯の故障診断を行う故障診断部と、
    を備えることを特徴とする冷却帯診断装置。
  6. 上記平衡式は、下記(2)式から求めることを特徴とする請求項に記載した冷却帯診断装置。
    Te−Td =(ΣΔQi/Vi)+ΔQe/Ve+ΔQd/Vd
    ・・・(2)
    但し、ΔQi = Δqwi・Li(水冷時の場合)
    ΔQi = ΔQAi (空冷時の場合)
    ここで、
    i :i番目の冷却帯を示す添え字(ただし、i:1〜n、nは冷却帯の総数)
    ΔQi :i番目の冷却帯での水冷若しくは空冷による単位時間当たりの抜熱量
    i :i番目の冷却帯での平均搬送速度
    ΔQe :入側温度測定位置から複数列の冷却帯の入側までの単位時間当たりの抜熱量
    Ve :入側温度測定位置から複数列の冷却帯の入側までの平均搬送速度
    ΔQd :複数列の冷却帯の出側から出側温度測定位置までの単位時間当たりの抜熱量
    Vd :複数列の冷却帯の出側から出側温度測定位置までの平均搬送速度
    Δqwi:i番目の冷却帯での水冷熱伝達係数
    i :i番目の冷却帯での上記計算流量
    ΔQAi:i番目の冷却帯での単位時間当たりの空冷による抜熱量
    である。
  7. 上記計算流量演算部は、異なる冷却帯の組合せを上記複数列の冷却帯の数以上取得したと判定すると、複数列の冷却帯の各計算流量を求めることを特徴とする請求項又は請求項に記載した冷却帯診断装置。
  8. 圧延材を、複数列の冷却帯からなる冷却設備に通過させる際に、上記複数列の冷却帯のうちから選択された1又は2以上の冷却帯での冷却水で水冷して当該圧延材を目標温度に冷却する圧延材の冷却装置において、
    上記請求項〜請求項のいずれか1項に記載の冷却帯診断装置で故障と診断された冷却帯を、上記選択対象から外すことを特徴とする圧延材の冷却装置。
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