JP5740977B2 - 感光性ポリイミド前駆体及び感光性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
しかしながら、ポリイミド樹脂からなる膜(ポリイミド樹脂膜)には、次のような問題がある。すなわち、ポリイミド樹脂膜の熱膨張率は、一般に、20ppm/℃以上である。これに対して、金属基板の熱膨張率は、通常、20ppm/℃以下であり、シリコンウエハの熱膨張率は、約3〜4ppm/℃である。このように、金属配線や各種基板の熱膨張率は、一般にポリイミド樹脂膜のそれよりも小さい。
基板上にポリイミド樹脂膜を形成したとき、基板とポリイミド樹脂膜との間の熱膨張率の差が大きい場合においても、半導体素子の製造工程や使用時における加熱や発熱により、クラックの発生、配線の断絶、基板の反り等が生じるおそれがある。また、ポリイミド樹脂膜の残留応力が大きいと、同様の問題が生じやすい。特に、最近ではシリコンウエハの大型化(例えば、直径300mmの基板)に伴い、ポリイミド樹脂から形成されたパッシベーション膜に起因する応力によって、基板に反りが発生することが大きな問題となっている。
このように、ポリイミド樹脂膜を絶縁膜とする多層回路基板の製造も検討されている現在、極めて薄いシリコンウエハ(例えば、厚み50μm以下の基板)を用いた半導体素子において、基板の反りの低減は、極めて重要な課題の一つとなっている。
さらに、デバイス配線材料においては、従来のアルミ配線から銅配線への切り替えが進んでいるが、従来の感光性ポリイミドは一般的に銅との密着性に難点があり、改良が求められている。
(1)主鎖中に、式(a)
で表される繰り返し単位を有し、
その両末端に化学線官能基が導入された感光性ポリイミド前駆体であって、
前記式(a)で表されるテトラカルボン酸又はその酸無水物が、剛直構造の芳香族テトラカルボン酸又はその酸無水物を、前記テトラカルボン酸又はその酸無水物の全モル数に対し50〜100モル%含有するものであり、
前記式(b)で表される芳香族ジアミンが、式(2)
前記化学線官能基が、式(c)
(2)式(3)
(3)式(5)
(4)(A)(1)に記載の感光性ポリイミド前駆体、(B)光重合性官能基を有する感光助剤、(C)1H−テトラゾール誘導体、(D)光重合開始剤、及び(E)溶剤を含有する感光性樹脂組成物。
(5)(B)光重合性官能基を有する感光助剤が、式(7)
また、本発明の感光性ポリイミド前駆体を用いて、シリコンウエハ上に膜を形成した場合、特にシリコンウエハの片面にのみ膜を形成した場合であっても、シリコンウエハに生じる反りが小さい。
本発明の感光性樹脂組成物を用いることにより、熱膨張率と残留応力が小さく、現像時に難溶化層を形成せず、銅基板や銅配線等との密着性に優れ、破断強度と破断伸びが大きいポリイミド樹脂膜を形成することができる。
本発明の感光性ポリイミド前駆体は、
(α)主鎖中に、前記式(a)で表されるテトラカルボン酸又はその酸無水物と、前記式(b)で表される芳香族ジアミンとを重縮合させることによって得られる、前記式(1)で表される繰り返し単位を有し、その両末端に化学線官能基が導入された感光性ポリイミド前駆体であって、
(β)前記テトラカルボン酸又はその酸無水物が、剛直構造の芳香族テトラカルボン酸又はその酸無水物を、前記テトラカルボン酸又はその酸無水物全モル数に対し50〜100モル%含有するものであり、
(γ)前記芳香族ジアミンが、前記式(2)で表されるチオフェン含有芳香族ジアミンと、剛直構造の芳香族ジアミンとを、(式(2)で表されるチオフェン含有芳香族ジアミン)と(剛直構造の芳香族ジアミン)とのモル比で、3:97〜50:50の割合で含有するものであり、かつ、
(δ)前記化学線官能基が、前記式(c)で表される基、又は、式(d)で表される基であることを特徴とする。
本発明の感光性ポリイミド前駆体は、主鎖中に、前記式(a)で表されるテトラカルボン酸又はその酸無水物(以下、「テトラカルボン酸等(a)」ということがある。)と、前記式(b)で表される芳香族ジアミン(以下、「芳香族ジアミン(b)」ということがある。)とを重縮合させることによって得られる、前記式(1)で表される繰り返し単位を有する。
本発明において、テトラカルボン酸等(a)は、前記式(a)で表される化合物(又は化合物群)であり、剛直構造の芳香族テトラカルボン酸又はその酸無水物(以下、「剛直構造の芳香族テトラカルボン酸等」ということがある。)を、テトラカルボン酸等(a)の全モル数に対し50〜100モル%、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは85〜100モル%含有するものである。なお、本明細書においてテトラカルボン酸又はその酸無水物をまとめて「テトラカルボン酸等」ということがある。
本明細書において、「剛直構造」とは、運動性が低く、自身では湾曲し難い、棒状の剛直鎖からなる構造を意味する。剛直構造の芳香族テトラカルボン酸又はその酸無水物とは、(x)単環若しくは縮合環からなる芳香族環を有するテトラカルボン酸又はその酸無水物、及び(y)前記(x)の芳香族環が単結合で結合した構造を有するテトラカルボン酸又はその酸無水物をいう。(x)としては、例えば、ピロメリット酸やピロメリット酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸およびナフタレンテトラカルボン酸二無水物が、(y)としては、例えば、ビフェニルテトラカルボン酸やビフェニルテトラカルボン酸二無水物が、挙げられる。テトラカルボン酸等(a)中、剛直構造の芳香族テトラカルボン酸等の含有割合が50モル%より小さいと、形成されるポリイミド樹脂膜の破断強度や破断伸びも低下する。また、熱膨張率や残留応力が増大し、シリコンウエハの反りを抑制することが困難となる。
剛直構造の芳香族テトラカルボン酸等としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,5,8−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,6,7−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−テトラクロロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3”,4,4”−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2”,3,3”−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3”,4”−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−プロパン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ペリレン−2,3,8,9−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−4,5,10,11−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−5,6,11,12−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,2,7,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,2,6,7−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,2,9,10−テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物及びその水添加物;シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクタ−7−エン−2−エキソ,3−エキソ,5−エキソ,6−エキソテトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2−エキソ,3−エキソ,5−エキソ,6−エキソテトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物等の脂環式酸二無水物;ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物等の複素環誘導体酸二無水物;これらに対応するテトラカルボン酸等が挙げられる。
本発明において用いる芳香族ジアミン(b)は、前記式(2)で表されるチオフェン含有芳香族ジアミン(以下、「芳香族ジアミン(2)」ということがある。)と、剛直構造の芳香族ジアミンとを、(芳香族ジアミン(2))と(剛直構造の芳香族ジアミン)とのモル比で、3:97〜50:50、好ましくは3:97〜30:70の割合で含有するものである。
前記式(b)中、R2としての「2価の有機基」としては、例えば、前記式(2)で表されるチオフェン含有芳香族ジアミンの相当部分の他、剛直構造の芳香族ジアミンの剛直構造部分が挙げられる。剛直構造の芳香族ジアミンにおける「剛直構造」とは、棒状の剛直鎖を有する構造をいう。剛直構造の芳香族ジアミンは、剛直構造を有する点で、主鎖にエーテル結合やメチレン(−CH2−)基等の単結合を有する屈曲性のある芳香族ジアミンとは区別される。
これらの中でも、r1〜r10は、すべて水素原子であるのが好ましい。
芳香族ジアミン(2)は、例えば、下記に示す方法により製造することができる。
すなわち、式(f)で表される4−ニトロフェナシルハライドと硫化ナトリウム(水和物であっても良い。)とを、塩基の存在下で反応させて、式(g)で表されるジケトスルフィド誘導体を得た後、さらに、このものに式(h)で表されるグリオキサール類を反応させて、式(i)で表されるニトロベンゾイルチオフェン誘導体を得、このものを還元することにより目的物を得ることができる。
いずれの反応においても、反応は、0℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲で円滑に進行する。
反応終了後は、常法に従い目的物を単離することができる。
ここで、柔軟構造とは、前記剛直構造ではない意味である。
柔軟構造ジアミンを使用する場合、芳香族ジアミン(b)全体に対する柔軟構造ジアミンの割合は、通常30モル%以下、好ましくは20モル%である。
前記化学線官能基は、前記式(c)で表される基、又は前記式(d)で表される基である。前記式(c)、(d)中、A1、A2はそれぞれ独立して、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する基を表す。
中でも、本発明の感光性ポリイミド前駆体としては、式(3)
式(3)、(5)中、R1、R2は前記と同じ意味を表し、i、pは5〜10000の整数を表す。i、pは、樹脂強度(膜機械特性)とワニスのハンドリングのし易さ(ワニスの粘度)のバランスから、好ましくは20〜500、より好ましくは30〜300である。
Z1は、式(4)
式(4)中、R3〜R7は、それぞれ独立して、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基を表す。
jは0又は1であり、kは1〜3の整数である。kが2又は3のとき、下記式
Z2は、式(6)
式中、R8〜R12は、それぞれ独立して、前記R3〜R7と同様の光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基を表し、qは0又は1である。また、下記式
反応温度は、通常−20℃〜+80℃の範囲で、反応時間は0.5〜80時間の範囲である。
式(4−1)で表される化合物の具体例としては、o−アミノ安息香酸[トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル、o−アミノ安息香酸[トリス(アクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル、m−アミノ安息香酸[トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル、m−アミノ安息香酸[トリス(アクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル、p−アミノ安息香酸[トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル、p−アミノ安息香酸[トリス(アクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル、5−アミノ−イソフタル酸[トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール]ジエステル、5−アミノ−イソフタル酸[トリス(アクリロイル)ペンタエリスリトール]ジエステル、o−アミノ安息香酸[ペンタキス(メタクリロイル)ジペンタエリスリトール]エステル、o−アミノ安息香酸[ペンタキス(アクリロイル)ジペンタエリスリトール]エステル、m−アミノ安息香酸[ペンタキス(メタクリロイル)ジペンタエリスリトール]エステル、m−アミノ安息香酸[ペンタキス(アクリロイル)ジペンタエリスリトール]エステル、p−アミノ安息香酸[ペンタキス(メタクリロイル)ジペンタエリスリトール]エステル、p−アミノ安息香酸[ペンタキス(アクリロイル)ジペンタエリスリトール]エステル等が挙げられる。これらの中でも、p−アミノ安息香酸[トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール]エステルが、経済性、操作性、高感度、高解像度等の点で優れており、特に好ましい。
このようなアミノベンゼンカルボン酸エステル等のアミノベンゼン類は、特開平8−82931号公報に記載された方法に従って製造することができる。
また、式(5)で表される化合物は、テトラカルボン酸等(a)と芳香族ジアミン(b)とを常法により縮合反応させて得られたポリマーに、アミノベンゼンスルホン酸のような末端変性剤を後から加えて反応させることによっても製造することができる。これらの方法によれば、安定して高分子量の式(5)で表されるポリマー化合物を得ることができる。
なかでも、下記式(6−2)
モノマーの反応系への溶解性が低い場合は、モノマーが溶解できる温度まで昇温し、反応系内で溶解可能なオリゴマーとなるまで予備的な反応をさせるといった処理をすることもできる。ただし、本発明の感光性ポリイミド前駆体は、特定の合成法に限定されるものではない。
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)本発明の感光性ポリイミド前駆体、(B)光重合性官能基を有する感光助剤、(C)1H−テトラゾール誘導体、(D)光重合開始剤、及び(E)溶剤を含有することを特徴とする。
本発明の感光性樹脂組成物において用いる感光助剤は、光重合性官能基を有し、一般に光硬化モノマーとして使用されているものである。
例えば、特開平2004−285129公報に記載のもの、及び、式(7)
本発明においては、銅との密着性により優れる膜を形成できる観点から、前記式(7)で表されるチオフェンカルボン酸エステル誘導体を用いるのが特に好ましい。
R15、R16はそれぞれ独立して、水素原子;又は、メチル基、エチル基等のC1〜5アルキル基を表す。
本発明の感光性樹脂組成物には、(A)本発明の感光性ポリイミド前駆体、及び(B)光重合性官能基を有する感光助剤に加えて、さらに(C)1H−テトラゾール誘導体を含有する。
1H−テトラゾール誘導体を添加することにより、銅及び銅合金に対する腐食性を防止し、ひいては、形成されるポリイミド樹脂膜の基板に対する密着性の向上、感光性被膜の残膜防止等を図ることができる。
本発明の感光性樹脂組成物には、(A)本発明の感光性ポリイミド前駆体、(B)光重合性官能基を有する感光助剤、及び(C)1H−テトラゾール誘導体に加えて、さらに(D)光重合開始剤を含有する。
光重合開始剤としては、従来公知の光重合開始剤を使用することができる。具体的には、特開平2004−285129公報に記載のものや、3,3′−ビスメトキシカルボニル−4,4′−ビス−t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4′−ビスメトキシカルボニル−4,3′−ビス−t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4′−ビスメトキシカルボニル−3,3′−ビス−t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等が挙げられる。
光重合開始剤は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の感光性樹脂組成物に用いる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のイミド類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒類;γ−ブチロラクロン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル等のエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジクロロメタン、1,2−ジクロルエタン、1,4−ジクロルブタン、トリクロルエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;等が挙げられる。
これらの溶剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
なかでも、溶解性に優れるため、極性溶剤が好ましく、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドがより好ましい。
先ず、本発明の組成物を、シリコンウエハ、セラミック基板、アルミニウム基板等の適当な支持体表面に塗布する。
塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等の方法が挙げられる。塗布量に関しては特に制約はないが、塗布後、60〜100℃で1〜60分間でプリベークして塗膜を乾燥後の露光膜厚が通常1〜50μm、好ましくは2〜20μm、より好ましくは3〜15μmとなるように調整するのが好ましい。次いで、所望のパターン形状に化学線を照射する。化学線としては、X線、電子線、紫外線、可視光線等が使用できるが、200〜500nmの範囲の波長のものが好ましい。
(合成例1)2,5−ビス(4−アミノベンゾイル)チオフェンの合成
・融点(mp):190〜192℃
・1H−NMRスペクトルデータ(核磁気共鳴装置:日本電子社製、JNM.ECM型500Mを使用):7.75ppm(d−d)4Hベンゼン環、7.72ppm(s)2Hチオフェン環、6.79ppm(d−d)4Hベンゼン環、6.30ppm(s)4Hアミノ基
反応器に、芳香族ジアミンとして、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビスベンゾオキサゾール27.28g(0.0652モル)、2,5−ビス(4−アミノベンゾイル)チオフェン0.65g(0.002モル)、並びに、溶剤として、N,N−ジメチルアセトアミド 100g、及び、N−メチル−2−ピロリドン 100gを投入し、混合溶液とした。この溶液に、氷冷攪拌下、ピロメリット酸二無水物15.26g(0.07モル)を粉体のまま添加した。全容を氷冷下で2時間攪拌した後、反応温度を30℃に昇温し、2時間反応させた。反応液がほぼ均一になった時点で、反応液を10℃に冷却し、次いで、p−アミノ安息香酸〔トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール〕エステル2.57g(0.0056モル)を添加した。10℃で2時間、次いで、25℃で12時間反応させ、感光性ポリイミド前駆体1を含む溶液を樹脂濃度16重量%で得た。得られた感光性ポリイミド前駆体1の末端変性率は8%であった。
実施例1において、芳香族ジアミンを、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビスベンゾオキサゾール26.71g(0.0638モル)、2,5−ビス(4−アミノベンゾイル)チオフェン1.1g(0.0034モル)に変更した以外は、実施例1と同様にして感光性ポリイミド前駆体2を含む溶液を得た。
感光性ポリイミド前駆体2の末端変性率は8%であった。
実施例1において、芳香族ジアミンを、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビスベンゾオキサゾール25.87g(0.0618モル)、2,5−ビス(4−アミノベンゾイル)チオフェン0.866g(0.0027モル)、1,3−ジアミノプロピル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン1.392g(0.0056モル)に変更した以外は、実施例1と同様にして感光性ポリイミド前駆体3を含む溶液を得た。
感光性ポリイミド前駆体3の末端変性率は8%であった。
実施例1において、酸無水物を、3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物20.60g(0.07モル)に、芳香族ジアミンを、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビスベンゾオキサゾール25.87g(0.0618モル)、及び2,5−ビス(4−アミノベンゾイル)チオフェン1.74g(0.0054モル)に変更した以外は、実施例1と同様にして感光性ポリイミド前駆体4を含む溶液を得た。
感光性ポリイミド前駆体4の末端変性率は8%であった。
実施例1において、酸無水物を、3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物20.60g(0.07モル)に、芳香族ジアミンを2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビスベンゾオキサゾール23.02g(0.055モル)、及び2,5−ビス(4−アミノベンゾイル)チオフェン3.864g(0.012モル)に変更した以外は、実施例1と同様にして感光性ポリイミド前駆体5を含む溶液を得た。
感光性ポリイミド前駆体5の末端変性率は8%であった。
実施例1において、酸無水物を、3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物20.60g(0.07モル)に、芳香族ジアミンを2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビスベンゾオキサゾール20.25g(0.048モル)、及び2,5−ビス(4−アミノベンゾイル)チオフェン6.06g(0.0188モル)に変更した以外は、実施例1と同様にして感光性ポリイミド前駆体6を含む溶液を得た。
感光性ポリイミド前駆体6の末端変性率は8%であった。
実施例1において、酸無水物を3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物20.60g(0.07モル)に、芳香族ジアミンを3,6−(4−アミノフェニル)ピリダジン17.10g(0.0652モル)、2,5−ビス(4−アミノベンゾイル)チオフェン0.65g(0.002モル)に変更した以外は、実施例1と同様にして感光性ポリイミド前駆体7を含む溶液を得た。
感光性ポリイミド前駆体7の末端変性率は8%であった。
実施例1において、芳香族ジアミンを4,4’−ジアミノベンズアニリド14.82g(0.0652モル)、2,5−ビス(4−アミノベンゾイル)チオフェン0.65g(0.002モル)に変更した以外は、実施例1と同様にして感光性ポリイミド前駆体8を含む溶液を得た。
感光性ポリイミド前駆体8の末端変性率は8%であった。
実施例1において、芳香族ジアミンを、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビスベンゾオキサゾール28.12g(0.0672モル)のみに変更した以外は、実施例1と同様にして感光性ポリイミド前駆体9を含む溶液を得た。
感光性ポリイミド前駆体9の末端変性率は8%であった。
実施例1において、芳香族ジアミンを、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビスベンゾオキサゾール27.28g(0.0652モル)と1,3−ジアミノプロピル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン0.5g(0.0020モル)とに変更した以外は、実施例1と同様にして感光性ポリイミド前駆体10を含む溶液を得た。
感光性ポリイミド前駆体10の末端変性率は8%であった。
実施例1において、酸無水物を、3,3’−4、4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物20.60g(0.07モル)、芳香族ジアミンを、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビスベンゾオキサゾール28.12g(0.0672モル)のみに変更した以外は、実施例1と同様にして感光性ポリイミド前駆体11を含む溶液を得た。
感光性ポリイミド前駆体11の末端変性率は8%であった。
実施例1〜8及び比較例1〜3で得られた感光性ポリイミド前駆体1〜11を含む溶液のそれぞれを、6インチのシリコンウエハ(厚み625μm、シラン系カップリング剤処理品)上にスピナーで塗布し、オーブン中で60℃で30分間乾燥した。次いでイナートオーブン中、50℃で60分保持し、5℃/1分で昇温し、200℃で60分保持し、さらに5℃/1分で昇温し、400℃で60分保持し、その後室温に戻して4時間保持し、ポリイミド樹脂膜を作製した。
・PMDA:ピロメリット酸二無水物
・s−BPDA:3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
・NPN:2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビスベンゾオキサゾール
・DABT:2,5−ビス(4−アミノベンゾイル)チオフェン
・Siジアミン:1,3−ジアミノプロピル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン
・DAPPZ:3,6−(4−アミノフェニル)ピリダジン
・DABA:4,4’−ジアミノベンズアニリド
・TMEA:p−アミノ安息香酸〔トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール〕エステル
・測定条件:試験片形状=幅4mm、長さ25mm、測定長10mm、
・測定様式:引張り荷重=2g、
・測定温度:1サイクル=室温→300℃→20℃
2サイクル=20℃→200℃
昇温2サイクル目の20〜200℃での平均膨張率の変化を記載した。
・昇温速度:5℃/分
・測定雰囲気:窒素ガス中
実施例1〜8及び比較例1〜3で得られた感光性ポリイミド前駆体1〜11の100重量部に対して、感光助剤として、トリエチレングリコールジアクリレート:「3EG−A」及び2,5−チオフェンジカルボン酸ジ(2−アクリロイルオキシエチル)エステル「TCDAE」、光重合開始剤として、N−フェニルグリシン:「NPG」、及び「BT−2」(有機過酸ベンゾフェノン誘導体;チッソ株式会社製)、並びに1H−テトラゾールを、下記第2表に示す量(重量部)配合し、さらに、溶剤(ジメチルアセトアミド(DMAc):N−メチルピロリドン(NMP)=1:1重量比の混合溶剤)を加えて樹脂濃度13重量%に調整し、均一溶液(感光性樹脂組成物1〜12)とした。
実施例9〜17及び比較例4〜6で得られた感光性樹脂組成物1〜12を、それぞれ、銅基板ウエハ(4インチシリコン基板上にスパッタプロセスで銅を製膜した基板にγ―APSカップリング剤で処理したもの)上にスピナーで塗布し、60℃で30分間オーブンで乾燥した(プリベーク後膜厚10μm)。得られた感光性ポリアミド酸樹脂膜に、PL−A501F(キャノン社製)により露光エネルギー500mj/cm2でパターンマスクを介して露光した。次いで、現像液(CPN:NMP:H2O=63:30:7重量比)に2分間浸漬し、イソプロピルアルコールに60秒間浸漬してリンスした後、窒素ガスでブローして解像パターンを乾燥後、基板をイナートオーブン中で、前記と同一の加熱条件で熱イミド化した。なお、CPNはシクロペンタノンである。
パターンをSEM観察(倍率:1000倍)して、L/S=20μmのパターンが綺麗に解像していること(難溶化層の有無確認)を確認し、難容化層がある場合を「あり」、難溶化層がない場合を「なし」と評価した。
シリコン基板(シランカップリング剤処理済み)に各感光性樹脂組成物をスピンコートした。次いで60℃で30分間乾燥後、シリコン基板全面に露光量500mj/cm2で照射し、次いで現像、リンス、乾燥処理を行った。この基板を前記熱イミド化条件で加熱処理して感光性ポリイミド樹脂膜を得た。この膜を50%フッ酸を用い、シリコンウエハから剥離し、蒸留水で十分洗浄後、130℃で3時間真空乾燥し、感光性ポリイミド樹脂膜を得た。得られた膜の厚みは、約5μmであった。この膜の熱膨脹率を測定した(測定装置、測定条件等は前記に同じ)。
シリコンウエハ上に銅膜をスパッタプロセスで製膜して得た銅基板上に、感光性樹脂組成物1〜11をそれぞれ塗布し、前記と同様にしてポリイミド樹脂膜を作製した。
基板とポリイミド樹脂膜との密着性をクロスカット剥離試験で評価した。製膜直後及びプレッシャークッカーテスト(121℃、2.1気圧、90℃、100時間)後にクロスカット剥離試験を行い剥離が無い場合(0/25)を○、1点でも剥離がある場合を×と評価した。
さらに、感光助剤にチオフェンカルボン酸エステル誘導体を配合することで(実施例9〜16)、難溶化層の生成を抑制し、現像時の時間短縮、パターン表面の平坦化など優れた効果と同時に銅基板上でのパターン形成(現像密着性の向上)に効果が見られた。
Claims (5)
- 主鎖中に、式(a)
で表される繰り返し単位を有し、
その両末端に化学線官能基が導入された感光性ポリイミド前駆体であって、
前記式(a)で表されるテトラカルボン酸又はその酸無水物が、ピロメリット酸、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸、及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群より選ばれる剛直構造の芳香族テトラカルボン酸又はその酸無水物を、前記テトラカルボン酸又はその酸無水物全モル数に対し70〜100モル%含有するものであり、
前記式(b)で表される芳香族ジアミンが、式(2)
前記化学線官能基が、式(c)
- (A)請求項1に記載の感光性ポリイミド前駆体、(B)光重合性官能基を有する感光助剤、(C)1H−テトラゾール誘導体、(D)光重合開始剤、及び(E)溶剤を含有する感光性樹脂組成物。
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