JP5739206B2 - 果実の追熟方法 - Google Patents

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Description

この発明は、簡便な手法により、果実の追熟期間を調整し短縮することが可能な方法に関するものである。
セイヨウナシ、キウイ、メロン、パパイヤ、マンゴーをはじめとするクリマクテリック型果実(climacteric fruits)では、種子が成熟し、糖がデンプン等の状態で果肉内に蓄積されると、果実の成熟がいったん休止され、所定時間を経た後、デンプンの分解によるグルコースやフルクトースの生成、細胞壁を接着しているペクチンの分解による果肉の軟化、誘引物質である芳香物質の生成等が開始する。この現象を後熟という。このため、クリマクテリック型果実は一般的に後熟前に収穫され、必要に応じて集荷、輸送等がなされた後に、追熟が施される。
この追熟とは、果実をいったん樹から切り離した後に食べごろに達するまで熟成させることをいい、未熟なときに収穫された果実が、呼吸の上昇、エチレン排出等とともに酵素活動が盛んになった結果、軟化の進行、糖、酸及び香の変化を伴って可食に達する現象によるものである。
このような追熟を要する果実では、収穫してすぐの時期においては、糖に比べてはるかに多くのデンプンが果肉に含まれるが、このデンプンは、時間の経過とともに徐々に水溶性の糖に変化し、果実が完熟すると、全てのデンプンが水溶性の糖に変化する。
また、メロンには水溶性の食物繊維であるペクチンが多く含まれ、それが滑らかな舌触りや優れた食味を与えるが、収穫後にメロンを追熟させると、細胞中の不溶性のプロトペクチンが、可溶性のペクチン酸等に分解し、果肉が柔らかくなる。
収穫後のクリマクテリック型果実は、単に室温で放置することによっても追熟することが可能であるが、これら果実の追熟を促進するためには、従来、エチレン処理等が施されている。また、貯蔵室内の酸素濃度を調整して、追熟期間を調整することが可能な冷蔵庫も知られている(特許文献1)。
特願2005−337445
これに対して、本発明は、より簡便な手法により、追熟期間を調整し短縮することが可能な方法を提供すべく図ったものである。
本発明者は、鋭意検討の結果、樹に着生しているときには完熟せず追熟により食べごろになるクリマクテリック型果実に対して、特定の波長の光を照射することにより、これら果実の追熟期間を短縮することに成功し、この知見に基づき本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明に係る追熟方法は、収穫後のクリマクテリック型果実に、青色光を照射することを特徴とする。例えば後熟が開始する前に収穫したクリマクテリック型果実に、青色光を照射することにより、追熟を促進することができるとともに、単に室温で放置するよりも、熟成度を高めることができる。
前記クリマクテリック型果実としては特に限定されず、例えば、セイヨウナシ、キウイ、メロン、パパイヤ、マンゴー等が挙げられるが、なかでも、メロンが好適である。
収穫後のクリマクテリック型果実に、青色光を照射する工程を備えていることを特徴とする果実の生産方法もまた、本発明の1つである。
このような構成の本発明によれば、単に青色光を照射するという極めて簡便な手法により、クリマクテリック型果実の追熟を促進することができるとともに、単に室温で放置するよりも、その熟成度を高めることができる。
光照射試験1における糖度測定結果を示すグラフ。 光照射試験1における硬度測定結果を示すグラフ。 光照射試験1で追熟したマスクメロンの果肉を撮影した写真。 光照射試験1における官能評価結果を示すチャート。 光照射試験2における糖度測定結果を示すグラフ。 光照射試験2における硬度測定結果を示すグラフ。 光照射試験2で追熟したマスクメロンの果肉を撮影した写真。 光照射試験2における官能評価結果を示すチャート。
以下に本発明を詳述する。
本発明は、クリマクテリック型果実の追熟方法に関するものであり、収穫後のクリマクテリック型果実に、青色光を照射することを特徴とするものである。
本発明における追熟対象であるクリマクテリック型果実としては特に限定されず、例えば、セイヨウナシ、キウイ、メロン、パパイヤ、マンゴー等が挙げられる。本発明に係る追熟方法は、これらのなかでも、メロンに好適である。
前記クリマクテリック型果実は、その後の輸送時等における取扱の容易さを考慮すれば、後熟が開始する前に収穫したものであることが好ましい。
前記クリマクテリック型果実に照射する青色光は、具体的には430〜490nm程度の波長領域にピーク波長を有する光である。
前記青色光の光強度としては特に限定されず、0.5〜500μmolm−2−1程度の範囲内で適宜選択すればよいが、10〜20μmolm−2−1程度の極めて微弱な光であっても、充分な追熟効果が確認される。
また、前記青色光の光源としては特に限定されないが、LEDが好適に用いられる。LEDが放出する光の波長は半導体のバンドギャップによって定まるので、所期の単一色を得ることができる。しかしながら、本発明で用いられる光源は、青色光を照射することが可能であればLEDに限定されず、例えば、430〜490nm程度の波長領域の光を選択的に透過させるカットシートを介して、クリマクテリック型果実に太陽光を照射するように構成してもよい。なお、本発明においては、クリマクテリック型果実に青色光を単独で照射してもよいが、追熟効果が阻害されない範囲であれば、他の光を併用又は他の光が混入してもよい。
上述の光照射工程を備えたクリマクテリック型果実の生産方法もまた、本発明の1つである。本発明に係る生産方法において、前記光照射工程以外の工程としては、一般的なクリマクテリック型果実の各生産工程を用いることができる。例えば、本発明の生産対象がメロンである場合は、常法に従い路地トンネル栽培やハウス栽培により生育したメロンを、着果節の葉の枯れ込み等を目安として、後熟が進行する前に収穫し、収穫後のメロンに青色光を照射する。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施
例のみに限定されるものではない。
<光照射試験1>
収穫期に達した静岡県磐田産のマスクメロンを、室温(18℃)、湿度66%の環境下において、以下の3通りの光照射条件のもとで、4、7又は10日間保持した。なお、当該マスクメロンの室温・暗所放置下における通常の追熟期間は7日間である。
本実験における光照射条件は以下のとおりである。
条件1:暗黒(D)
条件2:赤色光(R)(ピーク波長660nm)連続照射
条件3:青色光(B)(ピーク波長450nm)連続照射
条件2〜3における光源としてはLEDを使用し、各照射光の強度はいずれも約10〜20μmolm−2−1とした。
各設定期間経過後、マスクメロンを切断し、糖度及び硬度を評価した。糖度としてはブリックス(Brix)計を用いてBrix%を測定し、硬度としてはテクスチャーアナライザーを用いて破断力(N)を測定した。得られた結果は、糖度を図1のグラフに、硬度を図2のグラフに示した。なお、糖度は暗黒(D)下に放置したものの値を1とする相対値で表した。また、切断したマスクメロンを撮影した写真を図3に示した。
図1及び図2に示す結果より、青色光(B)を照射したマスクメロンにおいて最も早く糖度が上昇し、また、最も早く硬度が低下したことが確認された。この結果より、青色光には強い追熟促進効果があることが分かる。このことは、図3の写真からも裏付けられており、当該写真から、青色光(B)を照射したマスクメロンは光照射試験開始4日目(適熟日3日前)にして既に、完熟状態に近いことが分かる。
更に、各光照射条件下で追熟したマスクメロンに対して官能評価(被験者数6人)を行い、その結果を図4のチャートに示した。なお、図4のチャート中、各評価項目の評価基準は下記表1に記載のとおりであり、いずれの評価事項も基本的には数値が大きいほど良好である。
図4に示す結果より、青色光(B)を照射したマスクメロンが最も早く食べごろに達し、次いで、赤色光(R)を照射したマスクメロン、暗黒(D)下に放置したマスクメロンの順に食べごろに達したことが分かる。従って、官能評価によっても青色光には強い追熟促進効果があることが確認された。
<光照射試験2>
静岡県磐田産のマスクメロンを、通常より25日早く未熟な状態で収穫し、室温(14℃)、湿度70%の環境下において、上記の条件1(暗黒(D)下放置)と条件3(青色光(B)照射)のもとで、14日間保持した。その後当該マスクメロンを切断し、切断したマスクメロンを冷蔵庫(4℃、暗所)内で8日間保持した。
試験開始後14日目のマスクメロンと、その後更に8日間冷蔵庫内で保持したマスクメロンに対して、光照射試験1と同様にして糖度及び硬度の評価を行った。得られた結果は、糖度を図5のグラフに、硬度を図6のグラフに示した。また、試験開始後14日目に切断したマスクメロンを撮影した写真を図7に示した。
図5及び図6に示す結果より、暗黒(D)下に放置したマスクメロンに比べて、青色光(B)を照射したマスクメロンは、糖度が高く、硬度が低いことが分かった、このことから、青色光には優れた追熟促進効果があることが確認された。なお、図7の写真からも、青色光(B)を照射したマスクメロンの方が、暗黒(D)下に放置したマスクメロンより、熟成度が高いことが分かる。また、切断後8日間冷蔵庫内に保持しても、熟成度合の差は解消されなかった。
更に、14日間光照射後のマスクメロンに対して光照射試験1と同様にして官能評価を行い(但し−5〜5の数値範囲で評価した。)、その結果を図8のチャートに示した。図8に示す結果より、暗黒(D)下に放置したマスクメロンが未熟なままであったのに対して、青色光(B)を照射したマスクメロンは、未熟な状態で収穫したのに関わらず食するに充分な程度には熟成したことが確認された。

Claims (2)

  1. 収穫後のクリマクテリック型果実に、青色光を照射することを特徴とする果実の追熟方法であって、
    前記クリマクテリック型果実が、メロンであることを特徴とする果実の追熟方法。
  2. 収穫後のクリマクテリック型果実に、青色光を照射する工程を備え、
    前記クリマクテリック型果実が、メロンであることを特徴とする果実の生産方法。
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