<射出成形機>
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る射出成形機1を視点を変えて示した斜視図、図3は射出成形機1の分解斜視図である。射出成形機1は射出装置2と型締装置3とを備える。型締装置3は金型4及び5に型締力を付与して型締めを行い、射出装置2は金型4及び5に射出材料(本実施形態の場合、溶融樹脂である。)を射出し、樹脂成形品を成形する。金型4は、その上面が溶融樹脂の注入口4bを有する平坦な注入面4aを構成している。金型5の下には、受け板6が配設されている。受け板6はリターンスプリング8を介してエジェクタプレート7に連結されている。これらは樹脂成形品の排出に関わる構成であるが、その詳細は割愛する。
<射出装置>
射出装置2は、射出シリンダ10と、射出用の駆動ユニット20と、材料供給ユニット30と、を備える。
<射出シリンダ>
射出シリンダ10は、溶融樹脂を射出するノズル部11をその先端部に備える。ノズル部11には加熱筒部12の先端が接続されている。加熱筒部12はその中心線上に加熱筒部12を貫通する樹脂通路を有して円筒状に形成され、この樹脂通路の上部にはプランジャ14が進退自在に挿入されている。加熱筒部12内には材料供給ユニット30から樹脂材料が供給される。樹脂材料は例えばペレット状をなしている。
加熱筒部12の周囲にはバンドヒータ13が設けられ、加熱筒部12の樹脂通路内の樹脂材料を加熱して溶融する。溶融した樹脂材料はプランジャ14の進退動作によってノズル部11から射出される。本実施形態ではプランジャ14の進退動作で射出する構成としたが、スクリューの回転動作により射出する構成としてもよい。
ノズル部11は、本実施形態の場合、射出シリンダ10の径方向(加熱筒部12の径方向)に突出したフランジ状をなしており、かつ、その外形が円柱形状となっている。すなわち、ノズル部11の周縁部は、射出シリンダ10の径方向に突出したフランジ部となっている。ノズル部11の先端面11aは平坦面をなし、その中心には加熱筒部12の樹脂通路と連通した射出口11bが形成されている。本実施形態の場合、この先端面11aは金型4の注入面4aに当接する当接面を構成している。
<射出用の駆動ユニット>
駆動ユニット20は、ユニットベース21を備える。ユニットベース21は、後述する上側の型締部40に立設された一対の支柱21aに支持されている。ユニットベース21には、減速機23bが取り付けられ、減速機23bにはモータ23aが取り付けられている。モータ23aは本実施形態の場合、ステッピングモータである。モータ23aの出力は減速機23bで減速され、減速機23bの出力軸に取り付けられたプーリ23cを回転させる。
ユニットベース21には、また、ボールネジ軸25aが回転自在に支持されており、その上端にはプーリ25cが取り付けられている。プーリ23cとプーリ25cとには無端ベルト24が巻きまわされ、モータ23aの出力がボールネジ軸25aに伝達されてボールネジ軸25aを回転させる。
ボールネジ軸25aにはボールナット25bが螺着しており、ボールナット25bにはプランジャガイド板26が連結されている。プランジャガイド板26には、一対の支柱21aが貫通しており、プランジャガイド板26は一対の支柱21aに案内されて上下方向に移動可能になっている。しかして、モータ23aがボールネジ軸25aを回転させると、その回転方向によってプランジャガイド板26が昇降する。プランジャガイド板26には、プランジャ14の上端部が係合し、プランジャガイド板26の昇降によりプランジャ14も昇降する。この昇降動作によって、プランジャ14が加熱筒部12内の樹脂通路を進退し、溶融樹脂の射出動作が行われることになる。
一対の支柱21aには、また、シリンダ支持部22が移動不能に支持されている。シリンダ支持部22にはセンサユニット27が取り付けられている。センサユニット27はプランジャガイド板26の昇降位置を検出するセンサを搭載しており、その検出結果を参照することでプランジャ14の進退動作を行うことができる。
シリンダ支持部22は、凹状のシリンダ取付部22aが形成されている。射出シリンダ10は、その加熱筒部12の上部がこのシリンダ取付部22aに装着され、ロックレバー22cの開閉によりシリンダ支持部22に対して着脱自在に支持される。シリンダ取付部22aには、供給筒用の取付孔22bが形成されている。この取付孔22bはシリンダ支持部22を貫通しており、材料供給ユニット30の供給筒31の先端部が挿入される。供給筒31の供給口31aと、加熱筒部12とは、シリンダ取付部22aにおいて連結され、樹脂材料が材料供給ユニット30から射出シリンダ10へ供給される。
<材料供給ユニット>
材料供給ユニット30は、供給筒31と、ホッパ32と、モータ33とを備える。供給筒31は、その中心線上に樹脂材料の供給通路を有する円筒体であり、その先端の供給口31aが上記の通り加熱筒部12の側部に接続されて連結される。ホッパ32は、樹脂材料を貯留する容器であり、本実施形態ではボトル状をなしている。ホッパ32内の樹脂材料は自重により供給筒31内の供給通路内に落下する。モータ33は、供給筒31内の供給通路に設けたスクリュ(不図示)を回転駆動するモータであり、スクリュの回転により樹脂材料を加熱筒部12に送出する。本実施形態の場合、モータ33はステッピングモータである。なお、樹脂材料の送出機構はスクリュを用いたものに限られず、例えば、プランジャを進退させる送出機構等、他の送出機構でもよい。
<型締装置>
型締装置3は、金型4及び5を挟む型締部40及び型締部50と、金型4を支持する金型支持部60と、型締部50を型締方向(型締部40に対して近接・離間する方向)に移動する駆動ユニット70と、型締部50をロックする位置ロック機構80と、型締部40を型締方向(型締部40に対して近接・離間する方向)に移動する複数の駆動ユニット90と、を備える。
<型締部及び金型支持部>
図1乃至図3、図8及び図9を参照して型締部40について説明する。図8(A)は型締部40の平面図、図8(B)は型締部40の正面図、図9(A)は射出シリンダ10を装着した型締部40の正面図、図9(B)は射出シリンダ10を装着した型締部40の底面図である。
型締部40は、板状方形のプレート部41と、互いに離間して形成された筒状の取付部42と、を備える。本実施形態の場合、取付部42はプレート部41の4隅にそれぞれ形成されている。取付部42には後述する駆動ユニット90がそれぞれ取り付けられ、取付部42には駆動ユニット90から型締部40を型締方向に移動させる移動力が独立して付勢される。つまり、取付部42は被付勢部位として機能する。
プレート部41には支柱21aが取り付けられる取付孔41aが形成されている。また、プレート部41には、射出シリンダ10が装着される溝部43が形成されている。溝部43は平面視でU字型をなし、上部43aは相対的に幅が狭く、下部43bは相対的に幅が広く形成されている。上部43aの幅は射出シリンダ10の加熱筒部12の外径に合わせて設定され、加熱筒部12の下端部が装着される。下部43bの幅は射出シリンダ10のノズル部11の外径に合わせて設定され、ノズル部11が装着される。固定部材44は、射出シリンダ10の装着後に溝部43に嵌合し、溝部43の残りの部分を埋めて射出シリンダ10の脱落を防止する。
図9(A)に示すように、下部43bの上下の厚みはノズル部11の厚みよりも薄く設定されており、射出シリンダ10が型締部40に装着された状態では、ノズル部11が型締部40の底面から下方に突出した態様となる。このとき、バンドヒータ13の下端面は、射出シリンダ10の自重が作用して、型締部40の溝部43の周縁部に当接している。なお、バンドヒータ13は、射出成形時において高温状態となるため、バンドヒータ13と接触する型締部40の一部(具体的には溝部43の周縁部)は断熱部によって覆われている。これにより、バンドヒータ13から型締部40への熱伝達を低減することができる。
また、詳細は後述するが、型締め状態においては、上部43aの底面43a'はノズル部11の上面に当接する。型締部40に対して駆動ユニット90から型締力が作用すると、底面43a'を介してノズル部11に型締力が伝達し、ノズル部11の先端面11aが金型4の注入面4aに当接し、押圧する。これにより先端面11aと注入面4aとが密着してシールが形成される。シール性能は先端面11aと注入面4aの平滑度が高いほど向上する。
なお、本実施形態では、先端面11aと、注入面4aとがそれぞれ平坦面であるが、平坦面でもなくてもよく、曲面や凹凸面等、互いに密着し合う面形状であればよい。また、本実施形態では、ノズル部11に型締力が伝達するようにしたが、射出シリンダ10のノズル部11以外の部位でもよい。尤も、ノズル部11に型締力が伝達するようにすることで、ノズル部11のみが型締力に耐久できる強度を有すれば足り、射出シリンダ10全体が型締力に耐久できる強度を有することが必ずしも主要件とならない。
図10は型締時における金型4とノズル部11の配置関係の説明図である。ノズル部11の射出口11bは、金型4の注入口4b上に位置しており、射出口11bから注入口4bに溶融樹脂が射出される位置関係にある。ノズル部11の先端面11aは、注入口4bを覆う大きさを有しており、上記の型締力の伝達で注入口4bの周囲においては先端面11aと注入面4aとが密着してシールが形成される。よって、溶融樹脂の漏れが防止される。しかも、型締力を利用してノズル部11を金型4に押し付ける方式なので、従来必要とされたノズルの先端位置の調整作業は不要である。
本実施形態の場合、各取付部42が互いに離間していることから、駆動ユニット90を同期的に駆動することでより均一にノズル部11に型締力をかけ易くなる。特に、本実施形態では、各取付部42がプレート部41の4隅に位置し、ノズル部11はプレート部41の略中央に位置していることから、より均一にノズル部11に型締力をかけ易くなる。
なお、金型には成形時に生じるランナを排出する目的でランナロック部材を金型に着脱自在に装着し、ランナロック部材に溶融樹脂の注入口を設ける場合がある。図11(A)はその例を示し、ランナロック部材4cに注入口4bが形成されている。この構成の場合も、ノズル部11の先端面11aが注入口4bを覆う大きさを有していれば溶融樹脂の漏れを防ぐことができる。ランナロック部材4cと、金型本体との間で、ランナロック部材4cの輪郭部分に隙間が生じて溶融樹脂が漏れるような場合は、ノズル部11の先端面11aが該隙間をも覆う大きさを有するものとすることが望ましい。図11(B)はその例を示し、注入口4bが2つある。この場合は、ノズル部11の先端面11aが同図に示すように双方の注入口4bを覆う大きさを有するものとすることで、双方の注入口4bからの溶融樹脂の漏れを防止できる。
なお、本実施形態ではノズル部11を円柱形状としたが、角柱形状や三角柱形状でもよく、その外形は適宜選択可能である。先端面11aの大きさは、注入口4bを覆うだけでなく、注入面4a全体を覆うよう、注入面4aと同じか、それよりも大きくしてもよい。これは、金型4への型締力が注入面4a全体に分布する点で有利な場合がある。
次に、図1乃至図3を参照して金型支持部60について説明する。金型支持部60は、金型4を支持するための部材である。金型支持部60は、金型4と係合するコの字型をなし、ロックレバー61の開閉で金型4の保持及び解除を行う。金型支持部60はタイバ91が挿通する挿通部62に案内されて型締方向に移動可能である。但し、タイバ91には止め輪91bが設けられており、金型支持部60の最下位置はこの止め輪91bによって規定される。
次に、図1乃至図3を参照して型締部50について説明する。型締部50は、受け板6及び金型5が搭載される搭載部51を備え、ロックレバー53の開閉で受け板6及び金型5の保持及び開放を行う。型締部50は、また、搭載部51から窪んでエジェクタプレート7やリターンスプリング8を収容する収容部52を備える。型締部50は更に、タイバ91が挿通する挿通部54を備え、タイバ91に案内されて型締方向に移動可能となっている。
<型締部(下側)の移動機構>
図1乃至図3を参照して、駆動ユニット70は、駆動源として、ベース9に支持されたモータ71を備える。モータ71は本実施形態の場合、ステッピングモータである。モータ71には、ベース9に支持された減速機73が接続されており、モータ71の出力を減速する。減速機73の出力軸にはプーリ74が取り付けられている。プーリ75は、プーリ74の上方で、ベース9上に立設された不図示の支柱により回転自在に支持されている。プーリ74とプーリ75とには無端ベルト76が巻きまわされており、モータ71を回転駆動することで無端ベルト76が走行する。
無端ベルト76の一部と型締部50とは連結部77により連結されている。したがって、モータ71を回転することで、その回転方向によって型締部50を型締方向に移動することができる。駆動ユニット70は、型締部50を金型4と金型5とが離間する最下方の位置(型開き位置)と、金型4と金型5との型締めを開始する最上方の位置(型締開始位置)と、の間で移動する。本実施形態の場合、駆動ユニット70は型締めは行わないため、モータ71としては、その出力が比較的小さいもので足りる。
センサ72は、型締部50の位置を検出する。本実施形態の場合、センサ72はモータ71に取り付けられ、その回転量を検出するエンコーダであり、センサ72が検出した回転量から型締部50の位置を演算する構成であるが、型締部50の位置が検出できれば他の種類のセンサでもよい。
<型締部(下側)の位置ロック機構>
図1乃至図3及び図4乃至図6を参照して位置ロック機構80の構成について説明する。図4乃至図6は位置ロック機構80の説明図である。型締部50は、上記の通り、駆動ユニット70によって型締開始位置へ移動されるが、駆動ユニット70は型締め時に型締部50からの型締力を受けない構成になっている。位置ロック機構80は、型締時において、型締部50が型締力に抗して移動しないように型締部50を支持する機構である。
位置ロック機構80は、中心軸81aを介して型締部50の底部に回転自在に支持された回転板81を備える。回転板81には、複数のロックブロック82がそれぞれ固定される取付孔81cと、ベース9に立設された複数のロック支柱83がそれぞれ挿通する開口部81bと、を備える。ロックブロック82とロック支柱83とは同数である。型締部50の底部には、ロック支柱83との干渉を避け、ロック支柱83が進入可能な挿入孔55が、各ロック支柱83に対応して形成されている。
位置ロック機構80は型締部50の側部に支持されたモータ84を備える。モータ84は本実施形態の場合、ステッピングモータである。モータ84の出力軸にはピニオンギア84aが取り付けられている。回転板81の周縁にはピニオンギア84aと噛合するギア81dが形成されている。このため、モータ84を回転すると、中心軸81a回りに回転板81が回転する。
センサ85(図4において不図示)は、回転板81の回転量を検出する。本実施形態の場合、センサ85はモータ84に取り付けられ、その回転量を検出するエンコーダであり、センサ85が検出した回転量から回転板81の回転量を演算する構成であるが、回転板81の回転量が検出できれば他の種類のセンサでもよい。
係る構成からなる位置ロック機構80では、回転板81は、その回転により、ロック支柱83と同軸上に開口部81bが位置する位置(図4)と、ロック支柱83と同軸上にロックブロック82が位置する位置(図6)と、に位置する。
図4の位置の場合、ロック支柱83と、回転板81及び型締部50と、が干渉しないので、型締部50を型締方向に移動可能となる。したがって、型締部50を型開き位置と型締開始位置との間で移動する場合は、回転板81を図4の位置とする。図6の位置の場合、ロックブロック82を介して型締部50がロック支柱83によって、その下方への移動が規制され、位置がロックされた状態となる。したがって、型締時には、回転板81を図6の位置とする。
図5は図4の位置と図6の位置との中間の位置に回転板81が位置している状態を示している。以上のように、型締部50を、型開き位置→型締開始位置→(型締)→型開き位置と、移動する場合、回転板81は、図4の位置→図6の位置→(型締)→図4の位置に位置させることになる。
型締部50の位置ロック機構としては他の構成例も採用可能である。図19乃至図21はその一例を示す。同図の例は、複数のアーム部181を回動自在に型締部50の底部に固定し、アーム部181と連結された旋回円板182を回転させることで、アーム部181のフック181aがタイバ191に設けた切り欠き191aに係合(図20)、係合解除(図19)するようにした構成である。型締部50のロックは、フック181aと切り欠き191aとの係合によってタイバ191で型締部50を支持することで行う構成である。
<型締部(上側)の移動機構>
図1乃至図3及び図7を参照して型締部40を移動する駆動ユニット90の構成について説明する。図7は駆動ユニット90の説明図であり、取付部42を一部破断してその内部機構を示した図である。各駆動ユニット90は、ベース9に型締方向に立設され、その先端(上端)にネジ91aが形成されたボールネジ軸であるタイバ91を備える。取付部42には、駆動ユニット90の駆動源であるモータ92が搭載されている。モータ92は本実施形態の場合、ステッピングモータである。
取付部42の内部では、タイバ91のネジ91aと螺合するボールナット95が、ベアリング96を介して取付部42の内壁に回転自在に支持されている。取付部42の内部には、また、減速機94が配設されている。減速機94はモータ92の出力軸に取り付けられたピニオン92aの出力を減速してボールナット95を回転させる。
このような構成によってモータ92を回転するとボールナット95が回転し、タイバ91のネジ91aとボールナット95との螺合により、ボールナット95がタイバ91に沿って移動する。こうして、モータ92の回転により、型締部40はタイバ91に案内されて型締方向に移動することになる。
なお、本実施形態では、駆動ユニット90としてボールネジ機構を採用したが、軸(タイバ)に沿って型締部を移動させる機構はこれに限られず、種々の機構が利用可能である。
型締部40は、駆動ユニット90によって、型締めが完了する最下位置(型締位置)と、型締力が完全に解除される、最上方の位置(退避位置)との間で移動される。本実施形態では、型締部40の、型締位置と退避位置との間の移動距離は数ミリ程度である場合を想定している。
センサ93は、型締部40の位置、特に個々の取付部42の位置(移動量)を検出する。本実施形態の場合、センサ93はモータ92に取り付けられ、その回転量を検出するエンコーダであり、センサ93が検出した回転量から取付部42の位置(移動量)を演算する構成であるが、取付部42の位置が検出できれば他の種類のセンサでもよい。
本実施形態の場合、モータ92がステッピングモータであるため、駆動パルスによって取付部42の移動量は推定移動量として演算可能であるが、脱調する場合があるため、センサ93によって実移動量を検出するようにしている。
<制御部の構成>
次に、図12を参照して制御系の構成について説明する。制御部100は、CPU101、記憶部102及びI/F(インタフェース)103を備える。CPU101は、センサの検出結果を取得し、記憶部102に記憶されたプログラムにしたがって、モータやヒータ等の制御を行う。ここで、図12のセンサは例えば、センサ93のほか、上述した各センサが含まれる。モータにはモータ92のほか、上述した各モータが含まれる。ヒータにはバンドヒータ13が含まれる。
各モータの制御は、モータ毎のドライバ130により個別に行う。CPU101はドライバ130に対してトルク指令値(例えば電流指令値)と、移動量の指令値(例えば駆動パルス数)を指示し、ドライバ130は指示されたこれらの制御内容を実現する。なお、図示しないが、ヒータにもドライバが、また、センサには信号処理回路等がそれぞれ設けることができる。
記憶部102には、例えば、ROM、RAM、ハードディスク等が含まれる。I/F103はCPU101と、外部のデバイスとのインタフェースである。入力部110は、例えば、キーボード、マウス等である。作業者は入力部110を介して制御部100に動作指令を行うことができる。表示部120は、例えば、LCD等のディスプレイであり、射出成形機の状況等を表示する。
<射出成形機の動作例>
図13乃至図18を参照して射出成形機1の動作例について説明する。図13乃至図18は射出成形機1の動作説明図である。ここでは、1回の成形動作について説明する。
図13は、射出成形機1が型締装置3による型締力が金型4及び金型5に付与されない型開き状態にあることを示している。型締部50は型開き位置に位置し、回転板81は上記の図4の位置にある。型締部40は退避位置にあり、金型支持部60は止め輪91bによって規制された最下位置にある。金型4と金型5とは上下に分離している。
図14は、図13の状態から駆動ユニット70を駆動し、型締部50を型締部40に近接する方向に移動している途中の状態を示している。型締部50及び金型5は、その移動途中で金型支持部60及び金型4と接触し、図4に示すようにこれらが搭載された状態となる。駆動ユニット70は、型締部50の移動を継続し、図15に示す型締開始位置まで移動する。図15の状態において、ノズル部11の先端面11aと金型4の注入面4aとは僅かに離間しているか、互いに押圧しない程度で接触している。
型締部50を型締開始位置まで移動したので、型締部50を位置ロック機構80でロックする。つまり、図16に示すように回転板81を上記の図6の位置に回転させ、ロック支柱83と同軸上にロックブロック82を位置させる。これにより、型締部50が型締力に抗して下方に下がらないようになる。
次に、型締めを開始する。つまり、図17に示すように、各駆動ユニット90を駆動して型締部40を型締部50に近接する方向に、型締位置まで移動する。これにより、型締装置3からの型締力が金型4及び金型5に付与された状態(型締め状態)となる。具体的には、射出シリンダ10は、ノズル部11の周縁部(フランジ部)が型締部40の溝部43の周縁部で押圧されることにより、ノズル部11の先端面11aが金型4の注入面4aに密着する。そして、この状態で、型締部40から射出シリンダ10を介して金型4と金型5との間に型締力が付与されることになる。なお、このとき、バンドヒータ13の挿入部10a側の段差部の下端面は、型締部40の溝部43の周縁部に当接しておらず、金型4と型締部40(溝部43の周縁部)との間でノズル部11の周縁部が挟持される。これにより、射出シリンダ10の型締め及び型開き方向(図17の上下方向)への移動が実質的に規制された状態となる。
また、この型締め状態においては、ノズル部11の先端面11aと金型4の注入面4aとが互いに押圧しあって、溶融樹脂の漏れを防ぐシールが形成されることになる。これは、ノズル部11の先端面11aが、注入口4bを有する金型4の注入面4aに当接されてその注入口4bを覆うようになっているためである。すなわち、本実施形態では、型締め状態では金型4の注入口4bをノズル部11で実質的に覆うようにしてノズルの位置の調整作業を不要としながら溶融樹脂の漏れを防ぐシール構造を実現している。
続いて、駆動ユニット90の駆動によって型締部40を型締位置に位置させた状態で、駆動ユニット20を駆動し、プランジャ14を移動し、ノズル部11から金型4へ溶融樹脂を射出する。その後、逆の手順で図13の状態の戻り、成形品を取り出して1回の成形動作が終了する。
<パーティング面の圧力分布制御>
次に、金型4と金型5とのパーティング面の圧力分布制御について説明する。型締時の金型4と金型5とのパーティング面の圧力分布は成形品の品質に影響を与える。パーティング面の圧力分布は均一であることを基本とするが、金型や成形品の仕様次第で、不均一とする場合もある。
本実施形態の場合、4つの駆動ユニット90によりノズル部11を介して金型4を押圧し、型締めする構成である。したがって、駆動ユニット90毎に型締力を制御することでパーティング面の圧力分布を制御できる。図22はパーティング面の圧力分布制御の説明図であり、金型4と金型5とのパーティング面PSと、ノズル部11との配置関係を示す。
本実施形態の場合、駆動ユニット90は型締部40の4隅に配置され、ノズル部11及び金型4及び5はその略中央下方に位置している。よって、パーティング面PSを図22のように仮想的に4分割した領域R1乃至領域R4毎にいずれかの駆動ユニット90が対応して、パーティング面PSの圧力分布を制御することが可能となる。以下、領域R1に対応する駆動ユニット90(及びその構成要素のモータ92等)を示すときは、駆動ユニット90(R1)、モータ92(R1)等と表記する。
一方、各駆動ユニット90のモータ92を同じ制御量で駆動しても、駆動機構間の誤差や金型の取り付け誤差等により、パーティング面PSの圧力分布は一定とならない場合がある。図23はパーティング面の圧力分布に影響を与える誤差の例を示す図である。
同図は、水平面HLに対して、型締部40及びノズル11、金型支持部60及び金型4、金型5が取付誤差によって傾いている例を極端に誇張して表現したものである。このまま各モータ92のトルクを均一にして型締めを行った場合、パーティング面の圧力分布が均一とならないのは明白である。本実施形態では、駆動機構間の誤差や金型の取り付け誤差が解消されるように、事前に制御量の補正値を設定する。
<補正値の設定>
駆動機構間の誤差や金型の取り付け誤差等が存在する場合、型締めを行っていくとパーティング面の圧力が局所的に順次高まっていく。その傾向を把握することで、補正値を設定することができる。
本実施形態では、まず、比較的低いトルクで各モータ92を駆動し、型締部40を退避位置から型締位置へ向けて移動する制御(移動制御)を行う。そして、センサ93が検出した取付部42の移動量(モータの回転量)と、型締部40の移動制御における指令移動量との差分が規定値を超えた取付部42について、これに対応する駆動ユニット90、つまり、その取付部42に搭載されている駆動ユニット90のモータ92に対する制御量に関する制御情報を保存する。
センサ93が検出した取付部42の移動量と、型締部40の移動制御における指令移動量との差分が規定値を超えた場合とは、動かそうとしているのに動かない場合、つまり、パーティング面の圧力が局所的に高まっている状態である。本実施形態の場合、モータ92がステッピングモータであることから、モータ92が脱調している状態である。
そして、モータ92が脱調したときの制御量を比較することで補正値を設定する。例えば、モータ92(R1)→モータ92(R2)→モータ92(R3)→モータ92(R4)の順で脱調したとすると、この順でトルクが小さくなるように、或いは、移動量(回転量)が大きくなるように、制御量の補正値を設定する。
モータ92が脱調したときに制御情報として保存する制御量としては、本実施形態の場合、取付部42の位置(移動量:モータ92の回転量)又はモータ92のトルクである。以下、取付部42の位置を制御情報として保存する場合の例を図24を参照して、モータ92のトルクを制御情報として保存する場合の例を図25を参照して説明する。
<補正処理例:位置基準>
図24はCPU101が実行する補正処理の例を示すフローチャートである。この補正処理は、実際に成形を行う前に行うものであり、射出成形機1を図16の状態にしてから開始する。
S1では、全てのモータ92に共通の出力トルクの制御量を設定する。この場合のトルクは、型締部40が型締位置に到達する前にいずれかのモータ92が脱調するよう、比較的低いトルクとすることが好ましい。
S2では、型締部40が退避位置から型締部50に近接する方向に移動するよう、各々のモータ92の駆動をドライバ130に指示する。ドライバ130にはS1で設定したトルクの制御量を指示する。モータ92の回転速度は全モータに共通のものを指示する。
S3では、駆動ユニット90毎に、センサ93が検出した取付部42の移動量(モータ92の回転量)と、S2で開始した移動制御における指令移動量との差分が予め定めた規定値を超えたか否かを判定する。つまり、実際の移動量と制御上の移動量とにズレが生じているかを判定する。本実施形態の場合、この判定はモータ92が脱調しているか否かの判定である。
いずれかの駆動ユニット90について、差分が規定値を超えた場合はS4へ進み、いずれの駆動ユニット90についても差分が規定値を超えなかった場合は、移動制御を継続する。なお、全駆動ユニット90について、同時に差分が規定値を超えた場合はパーティング面の圧力分布が均一であることになる。
S4では、S3で差分が規定値を超えたと判定された駆動ユニット90のモータ92に対する指令移動量(又はセンサ92の検出結果)を、脱調が生じたときの取付部42の位置を示す位置情報として記憶部102に、そのモータ92と対応づけて保存する。また、全モータ92の駆動を停止する。
S5では、4つ全てのモータ92について位置情報が保存されているか否かを判定する。該当する場合はS8へ進み、該当しない場合はS6へ進む。S6では全モータ92を駆動して、型締部40を退避位置に戻す。
続くS7では、モータ92のうち、位置情報が保存されているモータ92による、次回移動の移動について、退避位置からの取付部42の移動量、つまり、そのモータ92の回転量を設定する。これは、位置情報で示されている位置の僅かに手前まで取付部42を移動させ、それ以上は移動させないように制御するための設定である。つまり、既に脱調したモータ92に対しては、以降の退避位置からの移動においては、脱調しないように、脱調した位置の手前で回転を停止するのである(トルクはS1で設定したものを出力させる)。
S7の処理の後は、S1に戻って同様の処理を繰り返す。このようにすると、例えば、取付誤差等によって、設計上は本来均一であるはずのパーティング面の圧力分布が、領域R1→領域R2→領域R3→領域R4の順で高くなる場合、1回目の移動でモータ92(R4)が脱調し、2回目の移動でモータ92(R3)が脱調し、3回目の移動でモータ92(R2)が脱調し、4回目の移動でモータ92(R1)が脱調することになる。なお、パーティング面の圧力分布が上述した場合と逆の順番(領域R4→領域R3→領域R2→領域R1)で高くなる場合は、上述した脱調の順番も逆になる。
S8では、記憶部102に保存された各位置情報の差を演算する。モータ92(R1)に対応する位置情報をP(R1)、モータ92(R2)に対応する位置情報をP(R2)等と表記し、位置情報P(R1)と位置情報P(R2)との差(絶対値)をD(R1−R2)等と表記する(総称するときはDとする)と、D(R1−R2)、D(R1−R3)、D(R1−R4)、D(R2−R3)、D(R2−R4)、D(R3−R4)の6つの差の値が得られる。
S9では、S8で演算したD値が予め定めた補正可能値を超えているか否かに基づいて、補正可能か否かを判定する。全てのD値が補正可能値以下の場合は、補正可能としてS11へ進み、1つでも補正可能値を超えているD値があれば、補正不能としてS10へ進む。S10では警告を行う。つまり、パーティング面の圧力分布が制御量の補正で解消できない程度に不均一の場合は補正値は設定せず、警告を行う。警告は表示部120にメッセージを表示することにより行うことができる。なお、音声出力装置を設けて音声で警告してもよい。
また、位置基準で傾き補正値を測定する場合は、1軸ごとに退避位置に退避してから測定しなくても補正量を求めることができる。具体的には、それぞれのモータを同時に同じトルク、同じ移動量で動作させ、それぞれが脱調するまで動作させ、それぞれが脱調した位置で補正する。補正可能かどうかの判定として4軸中どれかの軸が脱調したら、それ以外の軸は補正可能量以上動作できないように制限し、他の軸が補正可能量まで動作してしまったら警告を表示することができる。
S11では、S8で演算したD値が予め定めた補正必要値を超えているか否かに基づいて、補正値を設定するか否かを判定する。D値が微小であれば補正値は設定しない。全てのD値が補正必要値以下の場合は、補正不要として処理を終了し、1つでも補正必要値を超えているD値があれば、S12へ進む。
S12では、モータ92毎に補正値を設定する。本実施形態の場合、補正値はモータ92の駆動条件を共通にして型締めを行った場合に、型締部40、50間の圧力分布が均一となるように設定する。
補正値やその設定の方法は、型締時の制御量の補正の対象や補正の仕方により異なるが、本実施形態の場合、補正値はトルクの制御量、つまり、制御電流値とする。そして、本実施形態の場合、実際の型締時のトルクの制御量は、補正後の制御量=基準値×補正値とする。このため、いずれか1つのモータ92を基準としてその補正値を1に設定し、他のモータ92の補正値を位置情報に基づき設定する。その際、D値が補正必要値を超えていない場合は、そのモータ92については補正値は1とすればよい。
モータ92(R1)の補正値をAM(R1)、モータ92(R2)の補正値をAM(R2)等と表記すると、例えば、モータ92(R1)を基準とした場合、
AM(R1)=1
AM(R2)=P(R2)/P(R1)
AM(R3)=P(R3)/P(R1)
AM(R4)=P(R4)/P(R1)
と設定することができる。設定した補正値は記憶部102に記憶する。
<補正処理例:トルク基準>
次に、モータ92が脱調したときに制御情報として保存する制御量として、モータ92のトルクを制御情報として保存する場合の補正処理の例を図25を参照して説明する。
図25はCPU101が実行する補正処理の例を示すフローチャートである。この補正処理は、実際に成形を行う前に行うものであり、射出成形機1を図16の状態にしてから開始する。
S21では、各モータ92の出力トルクの制御量を設定する。この段階では全てのモータ92について、共通の出力トルクを設定する。この場合のトルクは、型締部40が型締位置に到達する前にいずれかのモータ92が脱調するよう、比較的低いトルクとすることが好ましい。
S22では、型締部40が退避位置から型締部50に近接する方向に移動するよう、各々のモータ92の駆動をドライバ130に指示する。ドライバ130には1回目はS21で設定したトルクの制御量を指示するが、2回目以降は後述するS27で設定したトルクの制御量を指示する。モータ92の回転速度は全モータに共通のものを指示する。
S23では、駆動ユニット90毎に、センサ93が検出した取付部42の移動量(モータ92の回転量)と、S22で開始した移動制御における指令移動量との差分が予め定めた規定値を超えたか否かを判定する。図24のS3と同様であり、モータ92が脱調しているか否かの判定である。いずれかの駆動ユニット90について、差分が規定値を超えた場合はS24へ進み、いずれの駆動ユニット90についても差分が規定値を超えなかった場合は、移動制御を継続する。
S24では、S23で差分が規定値を超えたと判定された駆動ユニット90のモータ92に対する出力トルクの制御量を、脱調が生じたときのトルクの制御量を示すトルク情報として記憶部102に、そのモータ92と対応づけて保存する。また、全モータ92の駆動を停止する。
S25では、4つ全てのモータ92についてトルク情報が保存されているか否かを判定する。該当する場合はS28へ進み、該当しない場合はS26へ進む。S26では全モータ92を駆動して、型締部40を退避位置に戻す。
続くS27では、モータ92のうち、今回の移動で脱調し、トルク情報が保存されたモータ92については、次回移動時のトルクの制御量を増大して設定し、その他のモータ92については現状のトルクの制御量を再び設定する。
これは、今回の移動で脱調したモータ92については、次回移動時には脱調が生じないようにするためである。増大量は予め定めた値とする。なお、今回脱調したモータ92が次回も脱調する場合はある。そのときは、再びトルク情報が保存(更新)され、トルクの制御量がこのS27の処理で再び増大されていき、脱調しなくなるまでこの処理が繰り返されることになる。
S27の処理の後は、S22に戻って同様の処理を繰り返す。このようにすると、例えば、取付誤差等によって、設計上は本来均一であるはずのパーティング面の圧力分布が、領域R1→領域R2→領域R3→領域R4の順で高くなる場合、モータ92(R4)が最初に脱調し、モータ92(R3)が次に脱調し、モータ92(R2)が次に脱調し、最後にモータ92(R1)が脱調することになる。なお、パーティング面の圧力分布が上述した場合と逆の順番(領域R4→領域R3→領域R2→領域R1)で高くなる場合は、上述した脱調の順番も逆になる。
S28以下の処理は、図24のS8以下の処理と同様である。まず、S28では、記憶部102に保存された各トルク情報の差を演算する。モータ92(R1)に対応するトルク情報をT(R1)、モータ92(R2)に対応するトルク情報をT(R2)等と表記し、トルク情報T(R1)とトルク情報T(R2)との差(絶対値)をD(T1−T2)等と表記する(総称するときはDとする)と、D(T1−T2)、D(T1−T3)、D(T1−T4)、D(T2−T3)、D(T2−T4)、D(T3−T4)の6つの差の値が得られる。
S29では、S28で演算したD値が予め定めた補正可能値を超えているか否かに基づいて、補正可能か否かを判定する。全てのD値が補正可能値以下の場合は、補正可能としてS31へ進み、1つでも補正可能値を超えているD値があれば、補正不能としてS30へ進む。S30では警告を行う。図24のS10と同様である。
S31では、S28で演算したD値が予め定めた補正必要値を超えているか否かに基づいて、補正値を設定するか否かを判定する。D値が微小であれば補正値は設定しない。全てのD値が補正必要値以下の場合は、補正不要として処理を終了し、1つでも補正必要値を超えているD値があれば、S32へ進む。
S32では、モータ92毎に補正値を設定する。本例の場合も、補正値はモータ92の駆動条件を共通にして型締めを行った場合に、型締部40、50間の圧力分布が均一となるように設定する。
そして、本例の場合も、補正値やその設定の方法は図24の処理例の場合と同様とした。補正値はトルクの制御量、つまり、制御電流値とする。そして、補正後の制御量=基準値×補正値とする。いずれか1つのモータ92を基準としてその補正値を1に設定し、他のモータ92の補正値を位置情報に基づき設定する。その際、D値が補正必要値を超えていない場合は、そのモータ92については補正値は1とすればよい。
モータ92(R1)の補正値をAM(R1)、モータ92(R2)の補正値をAM(R2)等と表記すると、例えば、モータ92(R1)を基準とした場合、図24の例と同様に、
AM(R1)=1
AM(R2)=T(R2)/T(R1)
AM(R3)=T(R3)/T(R1)
AM(R4)=T(R4)/T(R1)
と設定することができる。設定した補正値は記憶部102に記憶する。
<補正処理の実行時期>
図24及び図25で例示した補正処理は、各回の型締処理毎に実行して補正値を設定してもよい。この場合、特に、型締処理毎に成形条件、成形環境が変化する場合に適している。また、複数回の型締処理を一単位として単位毎に補正処理を実行し、その複数回の型締処理では同じ補正値に基づく制御量で型締力を制御してもよい。例えば、材料の変更の前後、成形条件の変更の前後、金型の変更の前後で補正処理を1回行うようにしてもよい。
<型締力の制御例1>
次に、上記の補正値を利用した型締時の型締力の制御の例について説明する。図26はCPU101が実行する型締力制御処理の例を示すフローチャートである。この処理は、実際に成形を行う際に行う型締力の制御であり射出成形機1が図16の状態になってから開始される。
S41では、各モータ92の制御量の基準値を記憶部102から読み込む。基準値は、型締時に各モータ92を制御するための基準となる値であり、予め記憶部102に記憶される。基準値には、モータ92の出力トルクの制御量も含まれる。パーティング面の圧力分布を均一にする場合には、全てのモータ92の出力トルクの基準値は共通となる。また、パーティング面の圧力分布を不均一にする場合には、モータ92毎に出力トルクの基準値は異なる。いずれの場合も、この基準値の設定によって、パーティング面の圧力分布を目的とする圧力分布とすることができる。
S42では、S41で読み込んだ基準値のうち、モータ92の出力トルクの基準値を、記憶部102に記憶してある補正値を読み出して、モータ92毎に補正する。これにより、駆動機構間の誤差や金型の取り付け誤差が解消されるようにモータに対する制御量を補正することができる。すなわち、実際のパーティング面の圧力分布が、基準値により決定される圧力分布となるように制御量が補正されることになる。
S43では、S41で読み出した基準値及びS42で補正した基準値に基づくモータ92の駆動指令をドライバ130に出力し、型締部40を退避位置から型締位置へ移動させる。型締部40が型締位置へ移動すると、射出シリンダ10による溶融樹脂の射出が開始される。本実施形態では、1度に全量射出せずに2回に分ける場合を想定している。
S44では、射出シリンダ10による溶融樹脂の一次射出が終了したか否かを判定する。該当する場合はS45へ進み、該当しない場合は待ちとなる。
S45ではガス抜きを行う。ガス抜きとは金型4及び5のキャビティ内の、特に端部内に存在して溶融樹脂の流入を妨げるガスを外部に開放して、溶融樹脂の充填を促進する処理である。ガス抜きは、ガス抜きの対象となる部位において金型4及び5を開くことにより行う。開くといっても、μmレベルのものである。
ガス抜きは、モータ92のうちの一部のモータ92に対する制御量を変更することにより、パーティング面の圧力を局所的に変更することにより行う。パーティング面の圧力を局所的に変更する方式を採用することで、金型4、5への加工を必要とせずにガス抜きを行うことができる。ガス抜きが必要な部位は事前の試験等で特定しておく。記憶部102にはガス抜き時に制御量を変更するモータ92と変更量とを予め記憶しておき、この情報に基づいてガス抜きを実行する。
例えば、図22において領域R1にガス抜きの対象部位が存在している場合には、モータ92(R1)の出力トルクを下げることでガス抜きを行う。また、例えば、図22において領域R1とR2の境界付近にガス抜きの対象部位が存在している場合には、モータ92(R1)及びモータ92(R2)の出力トルクを下げることでガス抜きを行う。
図27はガス抜きの説明図である。同図の例では、金型4、5に型締力F1、F2を作用させて型締めを行い、ガス抜き時にはF2を下げてF2'としてガス抜きを行っている。同図の隙間は極めて誇張した表現であることはいうまでもない。
なお、本実施形態ではガス抜きを目的として、型締時に型締部40及び50間の圧力を局所的に変更する場合を例示したが、型締時に他の目的により、型締部40及び50間の圧力を局所的に変更してもよいことはいうまでもない。
このガス抜きの間に、溶融樹脂の射出が再開され、終了(完了)する。S46では射出が終了したか否かを判定する。該当する場合はS47へ進み、該当しない場合は待ちとなる。なお、本実施形態のように、ガス抜きの間に射出を行うことがガス抜きの効率上好ましいが、ガス抜き後に射出を行うようにしてもよい。
S47では保圧を行う。このとき、S45のガス抜きのために変更した制御量は元に戻す場合もあるし、戻さずにそのままとする場合もある。S48では型締部40が退避位置に戻るようにモータ92を制御して1単位の処理を終了する。
<型締力の制御例2>
上記の型締力の制御例1では、金型4及び5への射出終了までに前記ガス抜きを開始する制御としたが、金型4及び5への射出終了後にガス抜きを行う制御としてもよい。図28はCPU101が実行する型締力制御処理の他の例を示すフローチャートである。この処理は、実際に成形を行う際に行う型締力の制御であり射出成形機1が図16の状態になってから開始される。図28中、上記の型締力の制御例1と同じ処理については同じ符号を付して説明を割愛し、異なる処理について説明する。
本制御例では、S43で型締部40を退避位置から型締位置へ移動させた後、S51で射出シリンダ10による溶融樹脂の射出(全量)が終了したか否かを判定する。該当する場合はS52へ進み、該当しない場合は待ちとなる。
S52及びS53は射出終了後の保圧処理である。本実施形態ではこの保圧中にガス抜きを行う。S52ではガス抜きを行う。図26のS45と同様の処理である。ガス抜きが完了すると(例えば規定時間経過すると)、S53へ進み、S52のガス抜きのために変更した制御量を元に戻す。つまり、型締部40、50間の圧力をガス抜き前の状態に戻して、金型4及び5間の面圧分布を射出終了時の面圧分布に戻す。そして、規定時間が経過するとS48へ進み、型締部40が退避位置に戻るようにモータ92を制御して1単位の処理を終了する。なお、本制御例では、S53において、ガス抜きのために変更した制御量を元に戻したが、戻さずにガス抜き状態のまま保圧を終了する制御も採用可能である。
<他の実施形態>
上記実施形態では、モータ92等の各モータをステッピングモータとしたが他の電動モータでもよい。また、型締装置3はモータ以外の駆動源を有する構成であってもよい。
上記実施形態では、型締部40では金型4を支持せず、金型支持部60で支持する構成としたが、型締部40で金型4を支持する構成としてもよい。
上記実施形態では、型締部40と型締部50の双方が型締方向に移動する構成としたが、いずれか一方のみが移動する構成としてもよい。但し、本実施形態の構成の方が、型締部の移動に必要な時間を短縮可能である。
上記実施形態では、タイバ91を有する駆動ユニット90を4つ設けた構成としたが、2〜3つ、或いは、5つ以上でもよい。尤も、型締部40を付勢するバランスの点で、本実施形態のように4つとするか、3つとするのが好適である。
上記実施形態では、射出成形機1を竪型成形機として構成したが、横型成形機として構成してもよい。また、金型は2プレートや3プレートでも、ホットランナー方式でも構わない。