JP5739176B2 - 反射防止機能付導電性フィルム - Google Patents
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Description
太陽電池には一般的にガラスを基板材料とするリジットタイプのものとフィルムを基板材料とするフレキシブルタイプがあるが、時計あるいは携帯電話や携帯端末のような移動体通信機器の補助電源として、最近ではフレキシブルタイプの太陽電池が多く活用されるようになってきた。特に近年、新たな変換素子を用いた太陽電池の開発が盛んとなりフレキシブルタイプの研究も盛んになっている。このフレキシブルタイプの太陽電池の部材としてポリエステルフィルムが用いられるようになってきている(特許文献1など)。
例えば特許文献2にはフレキシブルかつ軽量であり、有害物質をほとんど使っていない材料からなる大型の色素増感太陽電池の構成が開示されており、さらに基板と接着剤層との間に反射効率を高める目的で白色化熱可塑性フィルムや金属蒸着を有した熱可塑性フィルムなどの反射シートを設けることが記載されている。また、特許文献3は金属酸化物半導体の光触媒効果による基板などの有機物の分解を防ぐために、基板および透明導電層を合わせた部分の光線透過率が400nm以下の波長において80%以下である色素増感型太陽電池に関する発明であり、入射する光を有効に取り入れるために、光電極に用いる基材の透明導電層が積層されていない側の表面に反射防止層を設けてもよいことが記載されている。
(ポリエステル)
本発明において、導電層を支える支持体として二軸配向ポリエステルフィルムを用いる。この二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、芳香族二塩基酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルである。
特にポリエチレン−2,6−ナフタレートは機械的強度の大きさ、熱収縮率の小ささ、加熱時のオリゴマー発生量の少なさなどの点で最も好ましい。
本発明における二軸配向ポリエステルフィルムの面内屈折率の平均は、好ましくは1.63〜1.78である。二軸配向ポリエステルフィルムの面内屈折率の平均が下限値に満たないと十分にポリマーが配向しておらず十分な熱寸法安定性が得られないことがある。他方、該面内屈折率の平均が上限値を越えるとフィルムの十分な靭性が得られず、取り扱いが困難となることがある。かかる面内屈折率特性は後述の延伸条件を用いて二軸方向にフィルム延伸を行うことで得ることができる。
本発明の反射防止機能付導電性フィルムにおいて、反射防止層は二軸配向ポリエステルフィルムと透明導電層の間に設けられ、各層はじかに積層される。本発明の反射防止層は、ポリエステル基材フィルムと透明導電層との界面反射による反射損失を低減し、太陽電池などに用いた場合に光電変換素子への入射光量を多くする目的で設けられ、同時に反射防止機能付導電性フィルムとしてのガスバリア性を高める目的で設けられる。さらに本発明の反射防止層は耐溶剤性に優れる特徴を有するものである。
これら反射防止層の構成成分の中でも最も好ましくは無機成分のみの構成であり、特に優れた耐溶剤性が得られ、また耐熱性、ガスバリア性の点でも優れている。
反射防止層の形成に先立って、ポリエステルフィルム上にコロナ放電処理、プラズマ処理、スパッタエッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、プライマ処理、易接着処理などの前処理を施してもよい。
また反射防止層の層数は特に限定されないが、経済性・生産性の点から3層以下が好ましく、より好ましくは1層である。
太陽電池の作成プロセスにおいて加熱工程が含まれる場合があり、例えば色素増感太陽電池においては酸化チタンの焼結が挙げられ、有機薄膜太陽電池においては有機半導体の結晶化が挙げられる。またこれら太陽電池に共通する加熱工程として集電電極の焼結や封止プロセスなどがある。これらのプロセス過程において反射防止層は安定で、上に積層している透明導電層の特性を維持することが好ましい。反射防止層の軟化温度はより好ましくは110℃以上であり、耐熱性評価方法の測定温度を110℃に変更して測定される。
上記軟化温度で表わされる反射防止層の耐熱特性は、反射防止層が無機成分のみで形成されているか、反射防止層中に有機成分を含む場合は有機成分量が35重量%以下であることによって達成される。
本発明の反射防止機能付導電性フィルムにおいて、透明導電層は反射防止層上にじかに設けられる。かかる透明導電層としては、例えば導電性の金属酸化物、金属の薄膜、炭素繊維などを用いることができる。導電性の金属酸化物として、ガリウムドープ酸化亜鉛、アルミドープ酸化亜鉛、ゲルマニウムドープ酸化亜鉛、ホウ素ドープ酸化亜鉛、チタンドープ酸化亜鉛、フッ素ドープ酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛複合酸化物(IZO)が挙げられる。また金属の薄膜として、例えば白金、金、銀、銅、アルミニウムなどが用いられる。
透明導電層は2種以上を積層したり、複合化させたものでもよい。これらのなかでもITOまたはIZOが、光線透過率が高く低抵抗であるため特に好ましい。
透明導電層を反射防止層上に積層する方法として、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーテイング法などのドライコーティング法を用いることができ、また例えばグラビア方式、リバース方式、ダイ方式などのウェットコーティング法を用いてもよい。
本発明の反射防止機能付導電性フィルムは、上述の二軸配向ポリエステルフィルム、反射防止層および透明導電層がかかる順に直接積層された積層フィルムである。本発明の反射防止機能付導電性フィルムの水蒸気透過率は0.5g/m2/day以下であることが好ましい。色素増感太陽電池および有機薄膜太陽電池は水分により劣化することが知られており、水分をバリアすることが必要である。通常は太陽電池の最外層にガスバリアフィルムを設けるが、特に端面等から水蒸気が侵入する可能性が高いため、光電変換素子の近傍にガスバリア性を有する層を設けることが好ましく、本発明は無機成分を多量に含む反射防止層を有することにより、ガスバリア性にも優れるものである。
本発明の反射防止機能付導電性フィルムは太陽電池の部材として用いることが好ましく、特に色素増感太陽電池もしくは有機薄膜太陽電池の部材として用いることが好ましく、特にこれら太陽電池の電極に好適に用いられる。
ポリエステルの固有粘度([η]dl/g)は、35℃のo−クロロフェノール溶液で測定した。
マイクロメーター(アンリツ(株)製K−402B型)を用い、ポリエステルフィルム長手方向(連続製膜方向、MD方向)および幅方向(TD方向)に各々10cm間隔で測定を行い、全部で300ヶ所のフィルム厚みを測定した。得られた300ヶ所のフィルム厚みの平均値を算出してポリエステルフィルム厚みとした。
200℃に温度設定されたオーブンの中に無緊張状態で10分間フィルムを保持し、フィルム長手方向および幅方向について各々の加熱処理前後での寸法変化を熱収縮率として下式により算出し、長手方向と幅方向の熱収縮率を求めた。ただし、L0は熱処理前の標点間距離、Lは熱処理後の漂点間距離である。
熱収縮率(%)=((L0−L)/L0)×100
得られた積層フィルムの小片をエポキシ樹脂(リファインテック(株)製エポマウント)中に包埋し、Reichert−Jung社製Microtome2050を用いて包埋樹脂ごと50nm厚さにスライスし、透過型電子顕微鏡(LEM−2000)にて加速電圧100KV、倍率10万倍にて観察し、塗膜層の厚みを測定した。
反射防止層を剥離もしくは削りだし、5〜10mgサンプリングした後、セイコーインスツルメント製SSC/5200 TG/DTAを用い室温から100℃まで昇温したのち、30分保持後500℃まで20℃/minで昇温し30分保持した。100℃の重量を100%とした場合の重量残留分を無機成分比率とした。
Metricon社製のレーザー屈折率計プリズムカプラ、モデル2010を用い、633nmの波長を用いて測定を行った。反射防止層の屈折率は反射防止層用塗液の乾固物の測定値を用いた。
反射防止層の上に、サイズ7.6cm×2.6cm、厚み1mmのガラス板および所定の重りをのせて50kg/m2の荷重をかけ、100℃にあらかじめ加熱したオーブン中に投入し、15分間保持した。その後オーブンから取り出し、ガラス板への張り付きが無く、反射防止層の変形も無い場合、100℃での耐熱性を合格とした。
Zygo社製 非接触三次元表面構造解析顕微鏡(NewView5022)を用いて測定倍率25倍、測定面積283μm×213μm(=0.0603mm2)の条件で測定し、該粗さ計に内蔵された表面解析ソフトにより中心面平均表面粗さRaを以下の式(1)より求めた。
得られた積層フィルムを3×4cmに切り出し、積層面の裏面側(ポリエステルフィルム面側)を鑢で軽くこすり、透明度が無い程度まで白濁させ、さらに裏面を黒く塗りつぶすことで裏面反射を抑制したフィルム片を作成した。このサンプルを積層面側(透明導電層面側)を分光光度計(島津製作所製UV−3101PC)に積分球を取り付け、BaSO4白板を100%とした時の反射率を波長400〜700nmにわたって測定した。得られたチャートより2nm間隔で反射率を読み取り、上記の範囲内で平均値を求めた。
4探針式表面抵抗率測定装置(三菱化学(株)製、ロレスタGP)を用いて透明導電層の任意の5点を測定し、その平均値を用いた。
ILLINOIS INSTRUMWNTS,INC社Model 7002の蒸気透過率測定装置を用い、40℃、90%、面積50cm2での水蒸気透過率を評価した。
積層フィルムを3−メトキシプロピオニトリル中に室温で1週間浸漬した。浸漬後の積層フィルムにおいて以下の2項目ともに満たす場合を「合格」とした。なお、試料として、5cm×5cmの大きさに切り出したフィルムを用いた。
(i) 処理前後での試料の表面抵抗の変化が30%以下
(ii) 顕微鏡観察において変化がない
<フィルム用ポリマーの作成>
ナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジメチル100部、およびエチレングリコール60部を、エステル交換触媒として酢酸マンガン四水塩0.03部を使用し、150℃から238℃に徐々に昇温させながら120分間エステル交換反応を行なった。途中反応温度が170℃に達した時点で三酸化アンチモン0.024部を添加し、エステル交換反応終了後、リン酸トリメチル(エチレングリコール中で135℃、5時間0.11〜0.16MPaの加圧下で加熱処理した溶液:リン酸トリメチル換算量で0.023部)を添加した。その後反応生成物を重合反応器に移し、290℃まで昇温し、27Pa以下の高真空下にて重縮合反応を行って、固有粘度が0.62dl/gの、実質的に粒子を含有しない、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを得た。
ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのペレットを170℃で6時間乾燥後、押出機ホッパーに供給し、溶融温度305℃で溶融し、平均目開きが17μmのステンレス鋼細線フィルターで濾過した後、3mmのスリット状ダイを通して表面温度60℃の回転冷却ドラム上に押出し、急冷して未延伸フィルムを得た。このようにして得られた未延伸フィルムを120℃にて予熱し、さらに低速、高速のロール間で15mm上方より850℃のIRヒーターにて加熱して縦方向に3.2倍に延伸した。
続いてテンターに供給し、140℃にて横方向に3.3倍に延伸した。得られた二軸配向フィルムを244℃の温度で5秒間熱固定し、固有粘度が0.58dl/g、厚み125μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。200℃、10分で処理した際のポリエステルフィルムの長手方向の熱収縮率は0.58%、幅方向の熱収縮率は0.12%、長手方向と幅方向の熱収縮率の差は0.46%であった。
こうして得られた二軸配向ポリエステルフィルム上の反射率最小値は718nmであり、550nmの光線透過率は89.6%であった。
酸化アルミニウムターゲットを用いた直流マグネトロンスパッタリング法により、二軸配向ポリエステルフィルム上に反射防止層を形成した。反射防止層のスパッタリング法による形成は、プラズマの放電前にチャンバー内を6×10−4Paまで排気した後、チャンバー内にアルゴンを導入して圧力を5×10−4Paとし、ターゲットに500Wの電力を印加して行った。
こうして得られた反射防止層の屈折率は1.76であり、反射防止層の厚みは75nmであった。また表面粗さは2nm、軟化温度は100℃以上であった。
主として酸化インジウムからなり酸化スズが10重量%添加されたITOターゲットを用いた直流マグネトロンスパッタリング法により、反射防止層上に透明導電層を設置した。透明導電層のスパッタリング法による形成は、プラズマの放電前にチャンバー内を6×10−4Paまで排気した後、チャンバー内にアルゴンを導入して圧力を5×10−4Paとし、ターゲットに150Wの電力を印加して行った。
こうして得られた透明導電層付フィルムの平均光反射率は14.5%、表面抵抗45.5Ω/□、水蒸気透過率が0.03g/m2/dayであり、反射防止層を設けない比較例1に較べて反射率が小さくなり反射損失が低減された。またガスバリア性が向上し、耐溶剤試験による表面抵抗の変化が30%以下と小さく、外観変化もみられず、色素増感太陽電池や有機薄膜太陽電池の部材に求められる特性に優れていた。
反射防止層を形成する無機成分の種類(ターゲット)、および反射防止層厚みを表1の通り変更した以外は実施例1と同じ方法を用いて二軸配向ポリエステルフィルム上に反射防止層および透明導電層がこの順で積層されたフィルムを作成した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
反射防止層を用いない以外は実施例1と同じ方法を用いて作成した。
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル66部、イソフタル酸ジメチル47部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル8部、エチレングリコール54部、ジエチレングリコール62部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで反応系の温度を徐々に255℃まで上昇させ系内を1mmHgの減圧にして重縮合反応を行い、ポリエステルを得た。このポリエステル25部をテトラヒドロフラン75部に溶解させ、得られた溶液に10000回転/分の高速攪拌下で水75部を滴下して乳白色の分散体を得、次いでこの分散体を20mmHgの減圧下で蒸留し、テトラヒドロフランを留去し、固形分が25重量%のポリエステルの水分散体を得た。このポリエステル水分散体0.5重量部と酸化チタン成分を1.7wt%含む酸化チタンゾル(PTAsol 吉川総合開発製)35.3g、及び界面活性剤(フタージエント250 株式会社ネオス製)0.014g及びエタノール4.7gからなる塗液を作成した。この塗液をポリエステルフィルム上にバーコーターにより塗布し乾燥した。こうして作成した反射防止層の厚みは80nmであり屈折率は1.87であった。本比較例の反射防止層は有機成分量が40重量%であり、反射損失は低減されたものの耐溶剤試験後の表面抵抗の変化が大きく、外観変化も認められた。
Claims (5)
- 二軸配向ポリエステルフィルム、反射防止層および透明導電層がかかる順に直接積層され、該反射防止層の屈折率が1.75以上2.00以下かつ反射防止層の厚みが25nm以上110nm以下であり、該反射防止層が無機成分のみで構成されるかまたは無機成分と有機成分とを含んでなり、該有機成分の含有量が反射防止層の重量を基準として2重量%以下であり、色素増感太陽電池の部材として用いられることを特徴とする反射防止機能付導電性フィルム。
- 反射防止機能付導電性フィルムの水蒸気透過率が0.5g/m2/day以下である請求項1記載の反射防止機能付導電性フィルム。
- 該反射防止層の軟化温度が100℃以上である請求項1または2に記載の反射防止機能付導電性フィルム。
- 該反射防止層の中心面平均表面粗さRaが30nm以下である請求項1〜3いずれかに記載の反射防止機能付導電性フィルム。
- 透明導電層が導電性の金属酸化物で構成されてなる請求項1〜4のいずれかに記載の反射防止機能付導電性フィルム。
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