JP5738574B2 - オゾン水による金属表面の改質方法 - Google Patents
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Description
水晶基板上の耐蝕膜は、例えばスパッタや蒸着によりAu/Crの積層膜として形成されている。また、周波数調整部は、所定の形状にパターニングされた耐蝕膜上に耐蝕膜のAu膜を負極としてAuメッキで形成され、電極部は電極パターンとなる領域の耐蝕膜をエッチングにより除去し、Ti/Pdなどの蒸着膜で形成されている(例えば、特許文献1参照。)
たとえば、レジストの塗りむらが生じて、レジストの薄い層が、後の工程で問題となる場合がある。たとえば、エッチング工程でレジストの薄い層の部分も同時にエッチングされてしまう場合がある。
また、レジスト塗布の工程が一見問題なく行われたと考えられる場合でも、そのあとの工程、たとえば、耐蝕膜のAu層を負極にして、その上にメッキする工程で、フォトレジストに被覆された耐蝕膜にメッキ液が浸透してAu層が正に帯電し、Auの溶けだしが発生するため、所定の形状にパターンが形成されないという問題が生じることもある。
この問題は、Au層が疎水性を有するため、フォトレジストの密着性が悪いことが原因である。したがって、耐蝕膜のAu層表面のぬれ性を大きくする、すなわち、親水性を付与することが課題とされていた。
金属表面のぬれ性を大きくする方法としては、金属表面のプラズマ処理や紫外線照射下にオゾンと接触させる方法なども提案されているが、これらの方法をメッキ工程の前工程に入れることは、処理時間が長いことや装置構成が複雑、もしくは、装置が大型になることなどの問題から、実用的ではない。現状では、レジストを多く塗ることが対策として行われているが、それでも十分な効果は得られていない。また、この方法には、レジストの使用量が増加するという問題もある。
そこで、本発明の目的は、例えば、水晶デバイスを製造する工程において、レジスト塗布前の基板上に形成されたAu/Cr耐蝕膜のAu層を短時間のオゾン水による処理を施すことにより、金属表面を改質し、これによって金属表面に対するレジストの付着性を向上させるとともに生産性を向上させたオゾン水による金属表面の改質方法を提供することを目的とする。
本発明によってぬれ性を改善可能なAu表面は、100%Auのものに限定されるものではなく、耐蝕層として用いられるAu合金からなる層の表面も含まれる。また、Au/Cr耐蝕膜のように、2種類以上の金属からなる2層以上の層の表面も含まれる。
特に、本発明の適したAu層としては、蒸着又はスパッタリングにより水晶基板上にCr層を介して形成されたAu層、すなわち、Au/Cr耐蝕膜が挙げられる。
本発明において、表面を改質する金属は、Au、Pt等の、通常は酸化物を形成しない貴金属であり、特にAuに対して効果的である。
オゾン水とAu表面との接触は、流水状態で行うことが好ましい。流水状態で接触させる方法としては、Au層の形成された基板をオゾン濃度が100ppm以上、好ましくは120ppm以上の炭酸を含む50℃以上のオゾン水の流水中に浸漬したり、被処理面を上向きにして配置した基板上に前記オゾン水を流下させる方法を挙げることができる。
(基板試料)
図1に示すように、43mm×38mmの水晶(SiO2)基板1の両面にCr層(厚さ20nm)とAu層(厚さ120nm)とを順にスパッタリングで形成した最外層にAu層を有する耐蝕層付き水晶基板を基板試料とした。
高温高濃度オゾン水製造装置(野村マイクロ・サイエンス社製 ノムクレン(商品名))を用いて所定の濃度のオゾン水を生成した。オゾンガスの生成は、無声放電式のオゾン発生機を用いた。
(オゾン水への炭酸の添加)
流量5L/分のオゾン流水中に、25℃で飽和させた炭酸水を0.05〜0.1L/分で注下して均一に混合させた。
200mLのガラスビーカーの底に予め水に対する接触角を測定した基板試料の測定面を上にして水平に置き、この中にオゾン濃度を120ppm、温度50℃に調整した炭酸水を含むオゾン水を0.5L/分でオーバーフローさせ、3分後、5分後に基板試料を取り出して乾燥させた。乾燥はクリーンエアーを吹きかけることで行った。
乾燥した基板試料のオゾン水処理時上側とした面の中心部、左右両側の3点に水を滴下し、接触角計測機(PG−X マツボー社製商品名)で水滴の基板面に対する接触角を測定することにより行った。なお、測定は、25℃の恒温室内で行った。
オゾン水のオゾン濃度を120ppm、炭酸を含むオゾン水の温度を50℃とした。炭酸を含むオゾン水は図1に示したように、基板1を水平にした状態で基板表面近傍の上部のオゾン水給水配管2より炭酸を含むオゾン水3を矢印方向に5分間又は10分間流して処理を行った。他の処理条件は、実施例1と同じ条件である。
なお、図1中、符号4はAu層、符号5はCr層、6は水晶基板である。
処理後乾燥した基板試料表面の接触角の測定結果を表2に示す。
この実施例から、明らかなように、処理温度50℃では、オゾン濃度が100ppm以上では、Au表面と炭酸を含むオゾン水との接触方法にかかわらず、接触角が初期値の1/2以下となり、したがって、ぬれ性が格段に改善されていることがわかる。
また、基板試料を単にオゾン水に浸漬した場合と比較して、流下させて接触させた場合の方が接触角を小さくする効果が大きいことがわかる。
オゾン水の温度を50℃とした以外は、比較例1と同じ条件で処理を行った。
処理前及び処理後の金属被覆水晶基板の中心部、左右両側の3点に水を滴下し水滴の基板面に対する接触角を測定した。
測定結果を表4に示す。
オゾン水の濃度を100ppmとした以外は、比較例1と同じ条件で処理を行った。
処理前及び処理後の金属被覆水晶基板の中心部、左右両側の3点に水を滴下し水滴の基板面に対する接触角を測定した。
測定結果を表5に示す。なお、5分以上処理しても、接触角は殆ど変わらなかった。
以上の実施例、比較例の結果を図3に示す。なお、図中の( )内の値は、処理時間5分の場合の接触角の値である。
比較例1と比較例2の接触角の値を比較すると、温度のみを上げた場合では、接触角の向上はしないことがわかる。また、比較例1と比較例3の接触角の値を比較すると、オゾン濃度のみを上げた場合では、接触角は向上しないことがわかる。一方、比較例1と実施例1の接触角の値を比較すると、オゾン濃度、および、温度を上げる場合には、接触角に改善が見られることがわかる。
図3において、接触角が60°程度となる領域2はオゾン水のは表面の有機物を除去する効果も寄与しているものと考えられるが、接触角が概ね25°程度となる領域1の効果は、有機物の分解による効果からは予測し得ない結果であり、この領域では、次のようなメカニズムによるAu表面の改質が起きているものと推測される。
2Au+3H2O=Au2O3+6e− EAu=1.467−0.0591×pH…1)
(Marcel Poubaix Atlas of Electrochemical Equeous Solutions による)
また、次式に示すオゾン水の酸化剤としての酸化還元電位(EO3)は、EO3=2.07Vである(新版オゾン利用の新技術(三▲秀▼書房、平成5年出版、p74)による)。ただしこの値は理想値である。
O3+H2O+2e−=O2+2OH− EO3=2.07V …2)
すなわち、実測値を用いても、EO3>EAuとなっていることが確認された。これは、オゾンが存在すると、1)式が進行する可能性を強く示唆するものである。
ただし、一般的にAuは酸化物を作らない物質であり、この反応が進行するのは、実際にはごく限られた条件でのみ進行するものと推測される。
図3において、著しく小さい接触角の値が得られた領域では、このような反応が表面で少なくとも一時的に進行していると考えられる。その結果表面の状態が改質され、最終的に接触角が小さい値になったと推測される。
要するに、本発明は、オゾン水の酸化反応を利用したAu表面の改質効果を見出し、Au表面に吸着された有機物の酸化分解だけでは得られないような、親水性を得ることにより、水晶デバイス等の製造における問題点の改善に至ったものである。
これは、上記メカニズムから説明できる。炭酸を使用しない場合には、pH=7なので、この値を1)式に代入すると、EAu=1.05Vが得られ、EAu<EO3となってしまう。したがって、炭酸をしない場合には、効果が得られなかったのである。
接触角30°未満のAu表面は、レジストの接触角が3°程度となり、レジストの使用量が1割以上減少できるとともに、塗りむら不良が2%以上改善された。
2……オゾン水供給配管
3……オゾン水
4……Au層
5……Cr層
6……水晶基板
Claims (7)
- 基板の表面に形成された貴金属表面のぬれ性を改善する方法であって、
レジスト塗布前の前記貴金属表面を、オゾン濃度が100ppm以上の炭酸を含む50℃以上のオゾン水と接触させることを特徴とするオゾン水による金属表面の改質方法。 - 前記貴金属表面は、密着層を介して前記基板上に形成された貴金属層からなることを特徴とする請求項1記載のオゾン水による金属表面の改質方法。
- 前記貴金属層は、水晶基板上にCr層を介して形成された貴金属層からなることを特徴とする請求項1又は2記載のオゾン水による金属表面の改質方法。
- 前記貴金属層は、蒸着又はスパッタリングにより、水晶基板上に形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のオゾン水による金属表面の改質方法。
- 前記オゾン水は、前記貴金属表面に流水状態で接触することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のオゾン水による金属表面の改質方法。
- 前記オゾン水は、前記貴金属表面に3分間以上接触させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のオゾン水による金属表面の改質方法。
- 前記貴金属は金である請求項1乃至6のいずれか1項記載のオゾン水による金属表面の改質方法。
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