JP5737936B2 - Msc成長調節用の低剛性ゲル - Google Patents

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Description

本発明は、柔らかいゲルを用いて幹細胞の進展を調節する方法を提供するものである。具体的には、本発明は、最適化した粘弾性特性を有するゲルを用いて幹細胞の進展を調節するための方法、組成物および装置を提供するものである。
成人間葉系幹細胞には、自己複製して間葉系組織の複数の細胞系統に分化する能力がある。このため、損傷組織の代替や抗癌剤の運搬体など、これらの細胞を臨床応用することが検討されている。それにもかかわらず、現時点での成人間葉系幹細胞の応用例は前臨床段階に限られている。1つには、これらの細胞が体外では急激に老化してしまい、その増殖とエンジニアリングに制約が生じることがその理由である。テロメラーゼを導入して間葉系幹細胞を不死化することで、老化の加速に関する課題が解決されると報告されている。しかしながら、間葉系幹細胞を組織に移植すると、この細胞が持つ無制限の自己複製能がゆえに成長の制御がきかなくなる場合がある。実際、in vitroでの環境において、テロメラーゼ導入間葉系幹細胞の形質転換が観察された。
よって、成人間葉系幹細胞の成長を調節することが、これらの細胞を臨床応用する上での重要な段階の1つである。
本発明は、柔らかいゲルを用いて幹細胞の進展を調節する方法を提供するものである。具体的には、本発明は、最適化した粘弾性特性を有するゲルを用いて幹細胞の進展を調節するための方法、組成物および装置を提供するものである。
別の実施形態では、本発明は、フィブリンまたはフィブリノゲンタンパク質を含む組成物を重合することで、前記フィブリンまたはフィブリノゲンタンパク質の濃度が1〜20mg/mlの柔らかいフィブリンマトリックスを生成する工程と、接着タンパク質を含む組成物を前記柔らかいフィブリンマトリックスにコーティングする工程と、を含む、剛性(rigidity)が0.1〜2.5kPaの範囲にあるフィブリンマトリックスを製造する方法を提供するものである。
別の実施形態では、本発明は、前記間葉系幹細胞集団を剛性が0.1〜2.5kPaの範囲にあるゲルマトリックスにて培養する工程を含む、間葉系幹細胞集団を保存する方法を提供するものである。
別の実施形態では、本発明は、剛性が150〜750Paの範囲にあるゲルマトリックスと、脂肪細胞誘導培地と、を含み、前記ゲルまたはマトリックスが、1型コラーゲン、フィブロネクチンまたはこれらの組み合わせでコーティングされている、間葉系幹細胞の成長を調節するための装置を提供するものである。
別の実施形態では、本発明は、ゲル化剤と、アクリルアミド−ビスアクリルアミド混合物とを含むゲルマトリックスであって、1型コラーゲン、フィブロネクチンまたはこれらの組み合わせでコーティングされ、剛性が150〜750Paの範囲にある、ゲルマトリックスを提供するものである。
一実施形態では、本発明は、ゲル化剤を含むゲルマトリックスであって、1型コラーゲン、フィブロネクチンまたはこれらの組み合わせでコーティングされ、かつ、所定の剛性で維持されたゲルマトリックス中に、間葉系幹細胞を懸濁させる工程と、ゲルマトリックスを成長調節因子に曝露する工程と、を含む、間葉系幹細胞の進展を調節する方法を提供するものである。
別の実施形態では、本発明は、体性幹細胞の膜上のインテグリンと結合する細胞外物質を含むゲルマトリックスであって、体内で同じタイプの体性幹細胞の体内生物学的微環境の弾性と実質的に類似の弾性を有するゲルマトリックスに体性幹細胞を接触させ、体性幹細胞の生物活性を体外で持続させるための栄養物質を体性幹細胞に与えることを含む、体外で体性幹細胞に休眠状態を誘導または維持し、生物活性を持続させるための方法を提供するものである。
図面の簡単な説明
A.ポリアクリルアミド支持体の機械的特性。アクリルアミド(データ線付近のパーセントで表示)とビスアクリルアミド(架橋剤として表示)との割合を変えてポリアクリルアミドゲルの剛性率を測定した。ポリマーの質量が一定であるとき、架橋剤が増えるにつれて剛性率(G’)(単位はパスカル)も増加する。アクリルアミドの濃度を3から12%に高めた場合も、硬さに10から50,000Paの大きな範囲が生じる。実線は、それぞれの架橋が弾性的に有効な場合のゴム状ネットワークの理論的な硬さを示す。B.硬いマトリックスまたは柔らかいマトリックスでのhMSCの細胞形状とF−アクチン構造。C.柔らかいゲルおよびガラスでのhMSCの細胞形状とF−アクチン構造。 hMSCへのBrdU取り込み。 マトリックスの剛性が脂肪細胞分化に対しておよぼす影響。A.陽性細胞の百分率を示すグラフ。各々の組で、1本目の棒がオイルレッドO染色を示し、2本目の棒はPPARγ2染色を示す。 硬いゲルまたは柔らかいゲルに播種したアストロサイトのF−アクチン構造。 柔らかいゲルから硬いゲルへのRho活性増大の定量化。さまざまな硬さのポリアクリルアミドゲルにアストロサイトを播種した。RhoのGTP装填(GPT-loading)レベルを定量化した。 硬いマトリックスのほうが黒色腫細胞により広がりがある。面積の代表的な図表 同じ効率で柔らかいゲルと硬いゲルに接着した黒色腫細胞。 硬いゲルでの大きめの黒色腫細胞の集団 本発明のさまざまな実施形態による弾性の異なるいくつかの支持体上のヒトMSCの画像を示す。 本発明のさまざまな実施形態によるさまざまな弾性の支持体でのヒトMSCへのブロモデオキシウリジン(BrdU)取り込み量を示す。 本発明のさまざまな実施形態による準3D環境が幹細胞の形状および増殖に対しておよぼす影響を示す図である。 本発明のさまざまな実施形態による脂肪生成誘導培地に対するヒトMSCの応答を示す。 本発明のさまざまな実施形態による骨誘導培地を用いてのヒトMSCの刺激後にアリザリンレッドSで可視化したカルシウム沈着。 本発明のさまざまな実施形態による、成人幹細胞で休眠状態、分化、増殖を誘導するための系を調製するための流れ図を示す。 本発明による系の実施形態の概略図を示す。
発明の詳細な説明
本発明は、剛性が0.01〜50kPaの範囲にあるゲルおよびマトリックス、その製造方法ならびに、これを含む間葉系幹細胞集団を保存する方法または間葉系幹細胞集団について研究する方法を提供するものである。
別の実施形態では、フィブリンまたはフィブリノゲンタンパク質を含む組成物を重合することで、フィブリンまたはフィブリノゲンタンパク質の濃度が3〜10mg/mLの柔らかいフィブリンマトリックスを生成する工程と、接着タンパク質を含む組成物を柔らかいフィブリンマトリックスにコーティングすることで、剛性が150〜750Paの範囲にあるフィブリンマトリックスを製造する工程と、を含む、剛性が150〜750Paの範囲にあるフィブリンマトリックスを製造する方法が得られる。
別の実施形態では、本発明のゲルまたはマトリックスにて形質転換細胞を培養することで、形質転換細胞の休眠状態を誘導する工程を含む、形質転換細胞の休眠状態を誘導する方法が得られる。別の実施形態では、形質転換細胞が癌細胞である。別の実施形態では、形質転換細胞が腫瘍細胞である。別の実施形態では、形質転換細胞が当該技術分野において周知の他のタイプの形質転換細胞である。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
本発明による方法および組成物の別の実施形態では、間葉系幹細胞集団のテロメラーゼの長さを維持する。「維持する」とは、別の実施形態では、長さに実質的な変化がないことを示す。別の実施形態では、この表現は、長さに測定可能な変化がないことを示す。別の実施形態では、この表現は、長さの点で増殖能に影響するだけの十分な変化がないことを示す。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
本発明による方法および組成物の別の実施形態では、間葉系幹細胞集団を休眠期に維持する。「休眠」とは、別の実施形態では、有意な複製がないことを示す別の実施形態では、この表現は、大部分の細胞が細胞周期を停止していることを示す。別の実施形態では、細胞がG1期で停止している。別の実施形態では、細胞がG2期で停止している。別の実施形態では、「休眠」とは、この表現に対して当該技術分野において認められた他の定義を示す。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
一実施形態では、幹細胞が骨髄由来のヒト間葉系細胞である場合、細胞外マトリックス(ECM)は弾性が約250Paであり、コラーゲンとフィブロネクチンとの混合物を含む。別の実施形態では、コラーゲンがラット尾コラーゲンであり、フィブロネクチンがヒトフィブロネクチンである。コラーゲンとフィブロネクチンとの比は可変であり、一実施形態では、コラーゲン対フィブロネクチンの比が5:1前後である。コラーゲンとフィブロネクチンに上記以外の比を用いてもよい。コラーゲンならびにフィブロネクチンを他のソースから得ることも可能であり、コラーゲンとフィブロネクチン以外の物質を用いて弾性を持たせるとともに、細胞の休眠状態が誘導されるよう細胞膜表面にあるインテグリンと結合させてもよいことは、当業者には自明であろう。
本発明の実施形態によれば、細胞外物質(ECM)と接触している幹細胞が支持体の弾性を検知するようにECMを支持体と結合することによって、適切な明らかな弾性をECMに持たせる。これと対応して、支持体は、ECMと結合されたときの弾性が、ECMと接触している幹細胞に検知される材料であってもよい。いくつかの実施形態では、支持体がガラスである。他の実施形態では、支持体が、弾性250Paのゲルまたは弾性7500Paのゲルである。これらのゲルはポリアクリルアミドゲルであってもよく、当業者間で周知のように、ポリアクリルアミドゲルの弾性は、ゲル配合物中のアクリルアミドとビスアクリルアミドの濃度を変えるなどの方法で変更できるものである。本発明の方法で使用できる、さまざまな弾性を有するゲルの製造は、本明細書を踏まえたうえで当業者には自明であろう。
幹細胞周辺の体内環境から生理的な状態の組織の試料を抽出した後、その組織試料の剛性率を測定することで、幹細胞の体内生物環境の弾性を判断することができる。ラット組織およびウシ組織の弾性を調製および測定するための例示としての手法が、本明細書に記載されている。以下の表1に、さまざまなタイプの組織の弾性をあげておく。
Figure 0005737936
一実施形態では、250Paのゲル上のヒトMSCは、自らの運命を判断する更なるシグナルを待つ休眠期にある。一実施形態では、hMSCには脂肪細胞分化(化学的因子によって誘導)が生じ、他の実施形態では、細胞周期に戻る(細胞が硬い表面に結合することで誘導)か、あるいは骨分化(化学的誘導と硬い支持体の両方が必要であるように見える)する。脂肪細胞分化因子を用いて柔らかいゲルで培養した細胞を刺激すると、一実施形態では、非常に多くの細胞内に脂質滴が蓄積される。一実施形態では、骨芽細胞分化に化学的誘導が必要である。機械的刺激と化学的刺激との同調の必要性は、一実施形態では、ヒトMSCがいかにして骨髄などの対応する組織に区分けされながらも自発的分化に耐えることができるのかを説明するものである。
別の実施形態では、マトリックスの弾性と同様に、どの細胞外リガンドを選択するかということもヒトMSCの接着と分化に大きく影響する。コラーゲン1型は、骨や脂肪をはじめとするさまざまな組織に見られ、細胞接着実験用の支持体として日常的に用いられている。一実施形態では、250Paのゲルで、コラーゲン単独では多数の細胞の効率的な接着を保証できない。一実施形態では、コラーゲンI型とフィブロネクチンとの10:1の比の混合物を用いることで、分化の潜在性に影響することなく250Paのゲルに対する細胞の最適な接着が得られる。
ヒトMSCには、マトリックスメタロプロテアーゼの発現を変えることで自らの微環境を再構築する能力があり、一実施形態では、これが初期の強い接着を達成した後に効率的な分化を促進するのに役立つ。
一実施形態では、柔らかいゲルでヒトMSCを培養すると、丸い表現型が発生してヒトMSCでのDNA合成が劇的に減少する。これは、NIH 3T3線維芽細胞、ウシ大動脈内皮細胞、NRK上皮細胞などの他の増殖細胞型(いずれも柔らかいゲルで培養した場合に分裂を続ける)とは対照的である。このように、250Paのゲルでの幹細胞の休眠状態は、通常の細胞質分裂の形状誘導に失敗した結果ではなく、むしろ支持体コンプライアンスに対してこれらの細胞が持つ特定の感度である。したがって、一実施形態では、G’が250Paのフィブロネクチン/コラーゲンゲルに幹細胞を懸濁させることを含む、細胞を休眠期に維持する方法が得られる。
一実施形態では、非増殖性ヒトMSCにタンパク質ゲルマトリックス被覆ガラス支持体を提示すると、これらの細胞は紡錘体の形を発生させて、再び細胞周期に入る。別の実施形態では、硬い支持体の存在が、柔軟なマトリックスからの物理的な合図に優先する。一実施形態では、化学的誘導のない250Paの柔らかいゲルには、神経突起状の隆起を持つニューロンの表現型を呈する有意な細胞集団が存在しない。
一実施形態では、特定の表現型を有する細胞分化が、支持体の弾性に応じて調節される。別の実施形態では、機械的特性だけでは幹細胞の分化には至らない。これは、体内の複数の組織が同様の弾性を有するためである。たとえば、脳、脂肪、骨髄組織はすべて貯蔵弾性率が200Pa前後であるが、いずれも特有の細胞集団を維持している。別の実施形態では、体内でのヒトMSCは数十年間にわたって個々の骨髄に貯蔵され、それでもなお多分化能を保持している。一実施形態では、ヒトMSCを硬い組織培養プラスチック上にて体外で培養し、数継代にわたって多分化能を保持する。一実施形態では、細胞によって機械的な刺激と化学的な刺激の両方が統合され、その応答が判断される。別の実施形態では、化学的な刺激が支持体の力学による影響に優先し得るが、他の実施形態では、不適切な機械的環境によって化学的アゴニストに対する正常な細胞応答が妨害される。一実施形態では、休眠状態の細胞は、その物理的環境と化学的環境の両方が骨形成を刺激するものに変化した場合にのみ骨芽細胞に分化する。したがって、一実施形態では、適切な弾性を有するマトリックスには、増殖と分化を促進する機械的な刺激と化学的な刺激の両方に対して応答する多能性骨髄間葉系幹細胞の休眠状態の集団を維持する機能がある。
本発明のさまざまな実施形態による、体性幹細胞で休眠状態、分化、増殖を誘導するための系の実施形態を調製するための流れ図を図14に示す。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)にて、総容量が500μlになるようにアクリルアミドとビスアクリルアミドの溶液を調製する。一実施形態では、アクリルアミドとビスアクリルアミドの濃度を調節することで、広範囲にわたる剛性が得られる。TEMED(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)と過硫酸アンモニウムを用いて重合を開始し、ゲルを形成する。工程601の「アクリルアミド/ビスアクリルアミド(ポリアクリルアミド)溶液」では、重合したゲルの滴(たとえば、約200μl)を、事前に3−アミノプロピルトリメトキシシランおよびグルタルアルデヒドで修飾したガラス製カバーガラスに載せる。工程602の「N−ヒドロキシスクシンイミドのトルエン溶液での重層」では、2%アクリル酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルのトルエン溶液15μl前後を工程601の溶液に適用し、工程603の「上側のカバーガラス」では、クロロシラン処理したカバーガラスを滴の上に載せる。工程604の「カバーガラスの除去」では、重合完了後に上側のカバーガラスを取り除き、任意選択により10〜15分ほどゲルに紫外線を照射する(図示せず)。工程605の「ECMリガンド」では、ゲル上のN−スクシンイミドアクリレートを、細胞外マトリックスリガンド(一実施形態ではコラーゲン1型0.1mg/mlとフィブロネクチン0.02mg/mlの混合物)と反応させる。以後の工程(図示せず)で、ゲルをPBSで3回洗浄し、幹細胞を細胞に播種する工程606の「ゲル上の細胞」までPBS中に残しておく。この材料に骨髄由来間葉系幹細胞を播種すると、増殖または分化を引き起こす化学的な刺激の存在下であっても細胞は休眠状態になる。
したがって、一実施形態では、体性幹細胞の膜上のインテグリンと結合する細胞外物質を含むゲルマトリックスであって、体内で同じタイプの体性幹細胞の体内生物学的微環境の弾性と実質的に類似の弾性を有するゲルマトリックスに体性幹細胞を接触させ、体性幹細胞の生物活性を体外で持続させるための栄養物質を体性幹細胞に与えることを含む、体外で体性幹細胞に休眠状態を誘導または維持し、生物活性を持続させるための方法が得られる。
本発明の方法では、さまざまな方法で幹細胞を適当なECMと接触させることができる。たとえば、本明細書で説明するように、支持体に結合された層をECMで形成してもよく、このECM上に幹細胞を載せてもよい。あるいは、適切な明らかな弾性を幹細胞に与える支持体とECMを結合している構造を細胞に載せるなどの方法で、支持体に結合されたECMに細胞を載せた上で、細胞上のECMと接触させてもよい。
別の実施形態では、栄養物質を含むものであっても含まないものであってもよい、支持体に結合された第1の配合物と、栄養物質を含み、かつ支持体に結合されていない第2の配合物という2種類のECM配合物があってもよい。幹細胞を適当なECM(支持体と、任意選択により、支持体とECMとを連結するための連結材料を含む)と接触させるための構造および構成については、図6などを含めて本明細書で説明しており、本明細書を踏まえたうえで当業者には自明である。
本発明による方法の実施形態では、細胞に休眠状態が誘導され、非休眠期から休眠期に遷移するように、休眠期にない幹細胞を本発明の方法に基づいてECMと接触させる。他の実施形態では、細胞で休眠状態が維持され、休眠期から遷移しないように、休眠状態の幹細胞を本発明の方法に基づいてECMと接触させる。
したがって、一実施形態では、ゲル化剤を含むゲルマトリックスであって、1型コラーゲン、フィブロネクチンまたはこれらの組み合わせでコーティングされ、かつ、所定の剛性で維持されたゲルマトリックス中に、間葉系幹細胞を懸濁させる工程と、ゲルマトリックスを成長調節因子に曝露する工程と、を含むことにより、化学的因子または物理的因子への曝露が、間葉系幹細胞が分化しようとしている微環境でのECMの剛性に合わせたゲルマトリックスの剛性増大につながる、間葉系幹細胞の進展を調節する方法が得られる。
別の実施形態では、80%を超える細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、少なくとも80%の細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、70%を超える細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、少なくとも70%の細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、75%を超える細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、少なくとも75%の細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、82%を超える細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、少なくとも82%の細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、85%を超える細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、少なくとも85%の細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、87%を超える細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、少なくとも87%の細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、90%を超える細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、少なくとも90%の細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、92%を超える細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、少なくとも92%の細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、93%を超える細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、少なくとも93%の細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、94%を超える細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、少なくとも94%の細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、95%を超える細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、少なくとも95%の細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、96%を超える細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、少なくとも96%の細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、97%を超える細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、少なくとも97%の細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、98%を超える細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、少なくとも98%の細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、99%を超える細胞が細胞周期を停止している。別の実施形態では、少なくとも99%の細胞が細胞周期を停止している。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、複製が組織培養皿での複製に比して50%減少する。別の実施形態では、複製が組織培養皿に比して60%減少する。別の実施形態では、複製が組織培養皿に比して65%減少する。別の実施形態では、複製が組織培養皿に比して70%減少する。別の実施形態では、複製が組織培養皿に比して75%減少する。別の実施形態では、複製が組織培養皿に比して80%減少する。別の実施形態では、複製が組織培養皿に比して85%減少する。別の実施形態では、複製が組織培養皿に比して90%減少する。別の実施形態では、複製が組織培養皿に比して95%減少する。別の実施形態では、複製が組織培養皿に比して97%減少する。別の実施形態では、複製が組織培養皿に比して97%を超えて減少する。別の実施形態では、複製が組織培養皿に比して98%を超えて減少する。別の実施形態では、複製が組織培養皿に比して99%を超えて減少する。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、本発明の方法は、組織培養装置において後で(本発明のゲルまたはマトリックスの存在下での培養後など)間葉系幹細胞集団を蒔く工程をさらに含む。別の実施形態では、組織培養装置が誘導培地を含む。別の実施形態では、後で蒔く工程が化学的誘導を用いて実施される。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、剛性が150〜750Paの範囲にあるゲルまたはマトリックスで間葉系幹細胞を培養することで、間葉系幹細胞の増殖または分化について研究する工程を含む、間葉系幹細胞の増殖または分化について研究する方法が得られる。
本発明による方法および組成物の脂肪細胞集団は、別の実施形態では脂肪細胞を含む集団である。別の実施形態では、集団には脂肪細胞が豊富に含まれる。別の実施形態では、集団が部分的に精製された脂肪細胞集団である。別の実施形態では、脂肪細胞を生物学的ソース(biological source)から単離した後に、精製または濃縮工程が続く。別の実施形態では、生物学的ソースからの単離後に培養が続く。別の実施形態では、生物学的ソースからの単離後に培養および精製または濃縮工程が続く。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、本発明による方法および組成物の細胞集団を、本発明による方法および組成物のゲルまたはマトリックスの存在下で培養する。別の実施形態では、ゲルまたはマトリックス中で細胞集団を培養する。別の実施形態では、ゲルまたはマトリックス上で細胞集団を培養する。別の実施形態では、ゲルまたはマトリックスの入った組織培養装置にて細胞集団を培養する。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
「間葉系幹細胞集団」とは、別の実施形態では、間葉系幹細胞(MSC)を含む集団を示す。別の実施形態では、この集団にはMSCが豊富に含まれる。別の実施形態では、集団が部分的に精製されたMSC集団である。別の実施形態では、MSCを生物学的ソースから単離した後に、精製または濃縮(enrichment)工程が続く。別の実施形態では、生物学的ソースからの単離後に培養が続く。別の実施形態では、生物学的ソースからの単離後に培養および精製または濃縮工程が続く。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
本発明による方法および組成物の「間葉系」細胞は、別の実施形態では、骨髄から単離または精製される。別の実施形態では、細胞が骨髄由来間葉系幹細胞である。別の実施形態では、細胞が脂肪組織から単離または精製される。別の実施形態では、細胞が軟骨から単離または精製される。別の実施形態では、細胞が当該技術分野において周知の他の任意の組織から単離または精製される。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、本発明による方法および組成物のゲルまたはマトリックスは、硬さが150〜750パスカル(Pa)である。別の実施形態では、本発明による方法および組成物のゲルまたはマトリックスは、剛性率が150〜750Paである。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、本発明による方法および組成物のゲルまたはマトリックスは、硬さが生体組織と同等である。別の実施形態では、生体組織が骨髄である。別の実施形態では、生体組織が脂肪組織である。別の実施形態では、生体組織が当該技術分野において周知の他の任意の生体組織である。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
一実施形態では、本明細書に記載のゲルマトリックスは、その構造および濃度に応じてさまざまな強度のゲルを形成でき、別の実施形態では、さらにイオン強度やpH、温度などの環境要因にも応じてさまざまな強度のゲルを形成できる。一実施形態では、加振力が材料の動きに対しておよぼす影響を判断することで、粘度とゲルの挙動の組み合わせ(これを「粘弾性」と呼ぶ)について検討する。別の実施形態では、弾性係数(G’)、粘性係数(G’’)、複素粘度(η)が、本明細書に記載の方法を用いて変更する対象となるパラメータであり、別の実施形態では、いずれも応力またはひずみのどちらかを経時的に変更することで分析される(表1)。これらのパラメータは、最大応力と最大ひずみとの比である複素弾性率(G)と、応力と歪みの位相が異なる角度である位相角(ω)とから導かれる。
Figure 0005737936
一実施形態では、本明細書に記載のゲルマトリックスにおいて、剪断応力によって生じる変形の中には、弾性であって力を取り除くとゼロに戻るものがある。一実施形態での溶媒による鎖のすべり変位(sliding displacement)によって生じる変形など、弾性以外の変形は、力を取り除いてもゼロに戻らない。一定の力の下では、一実施形態での弾性変位も一定に維持されるのに対し、すべり変位が続くため、増加する。
一実施形態では、「弾性の」または「弾性」という表現やこれと似たような用語は、本明細書に記載のゲルマトリックスの物性すなわち、機械力下でのゲルの変形しやすさと、変形力を取り除いたときにゲルマトリックスがもとの形状を保つ機能を示す。別の実施形態では、「弾性係数」とはヤング率を示し、(a)材料の一軸応力と(b)これに付随する、その軸に沿った通常のひずみとの比を示す尺度である。
剛性率(ひずみの変化に起因)は、剪断応力と剪断ひずみの比である。剛性率も上記と同様で、
=G’+iG’’
という複素関係にある。
式中、Gは複素剛性率であり、G’は同位相の貯蔵弾性率、iは材料関連の要因、G’’は同様の方向での位相が異なる損失弾性率である。;G=E(G’2+G’’2)。これらのパラメータ同士が交差する周波数は材料に特異の緩和時間(τ)に相当する。
一実施形態では、小さな振幅かつ可変の角周波数を用いる振動剪断流での測定によって、本明細書に記載のゲルマトリックスの線形粘弾性特性を判断する。ここでのG’とG’’の値は、かなりの部分が水溶液中のセルロース誘導体の濃度と代表的な粘度値の大きさによって決まる。したがって、下記では角周波数ωを大きくした場合のG’とG’’の相対的な動きのみ考慮する。別の実施形態では、水溶液中のセルロース誘導体の濃度1.5〜2%(w/w)、温度20℃前後で、セルロース誘導体に対するG’およびG’’の挙動は、低角周波数(ω)では貯蔵弾性率G’のほうが損失弾性率G’’よりも小さいが、角周波数が大きくなるにつれてG’がG’’よりも大幅に増加するような挙動となる。別の実施形態では、特定の角周波数を超えるG’が最終的にG’’より大きくなり、よって、角周波数の値が大きい溶液のほうが優勢に弾性反応をする。この挙動を、本明細書に記載の調節方法で減弱または変化させる。
別の実施形態では、「弾性」という用語は、変形が可逆性であるか否かを問わず、応力による材料の変形しやすさを決める物性を示す。本明細書で使用する場合、弾性と剛性は反比例するが、この材料の弾性(剛性)については、Rheometrics, Piscataway, NJから入手可能なRFS III fluids spectrometer rheometerを用いて、振動剪断ひずみ2%、周波数10ラジアン/秒で測定できる。細胞および他の生理学的組織の弾性と他の10のレオロジー特性を、当業者間で周知の多岐にわたる方法で測定可能である。このような方法は、一例としてレオメータまたは原子間力顕微鏡の使用を伴うものであってもよい。(たとえば、Engler AJ, Rehfeldt F, Sen S, Discher DE, "Microtissue elasticity: measurements by atomic force microscopy and its influence on cell differentiation," Methods Cell Biol. 2007;83:521-45、15 Yeung T, Georges PC, Flanagan LA, Marg B, Ortiz M, Funaki M, Zahir N, Ming W, Weaver V, Janmey PA, "Effects of substrate stiffness on cell morphology, cytoskeletal structure, and adhesion, " Cell Motil Cytoskeleton. 2005 Jan;60(l):24-34を参照のこと)。
一実施形態では、「固有粘度([η])」という用語は、還元粘度の範囲を濃度ゼロに外挿したものを示す。還元粘度と同様に、固有粘度も濃度の逆数の単位(mLg−1など)を有する。
一実施形態では、剛性または硬さが、観察または測定されるG’値を示す。
別の実施形態では、本発明による方法および組成物のゲルまたはマトリックスに、接着タンパク質を含む溶液をコーティングする。別の実施形態では、接着タンパク質がコラーゲンである。別の実施形態では、接着タンパク質が1型コラーゲンである。別の実施形態では、接着タンパク質がフィブロネクチンである。別の実施形態では、接着タンパク質が当該技術分野において周知の他の任意の接着タンパク質である。別の実施形態では、ゲルまたはマトリックスに、接着タンパク質の組み合わせを含む溶液をコーティングする。別の実施形態では、ゲルまたはマトリックスに、コラーゲンおよびフィブロネクチンを含む溶液をコーティングする。別の実施形態では、ゲルまたはマトリックスに、I型コラーゲンおよびフィブロネクチンを含む溶液をコーティングする。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、本発明による方法および組成物のコラーゲンが組換えコラーゲンである。別の実施形態では、コラーゲンが生物学的ソースから精製される。別の実施形態では、コラーゲンが1型コラーゲンである。別の実施形態では、コラーゲンが、当該技術分野において周知の他の任意のタイプのコラーゲンである。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、本発明による方法および組成物のフィブロネクチンが組換えフィブロネクチンである。別の実施形態では、フィブロネクチンが生物学的ソースから精製される。別の実施形態では、フィブロネクチンが1型フィブロネクチンである。別の実施形態では、フィブロネクチンが、当該技術分野において周知の他の任意のタイプのフィブロネクチンである。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
本発明による方法および組成物のゲル化剤が、別の実施形態では、アクリルアミドである。別の実施形態では、ゲル化剤がアクリルアミド−ビスアクリルアミド混合物である。別の実施形態では、ゲル化剤がアクリルアミドを含む。別の実施形態では、ゲル化剤がアクリルアミド−ビスアクリルアミド混合物を含む。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、本発明による方法および組成物のアクリルアミドゲルのアクリルアミド:ビスアクリルアミド比が100:1から30:1の間である。別の実施形態では、アクリルアミド:ビスアクリルアミド比が100:1から30:1の間にある溶液から、アクリルアミドゲルを調製する。別の実施形態では、当該比が100:1から20:1の間である。別の実施形態では、アクリルアミド:ビスアクリルアミド当該比が100:1から40:1の間である。別の実施形態では、当該比が100:1から50:1の間である。別の実施形態では、当該比が100:1から60:1の間である。別の実施形態では、当該比が100:1から70:1の間である。別の実施形態では、当該比が120:1から30:1の間である。別の実施形態では、当該比が120:1から40:1の間である。別の実施形態では、当該比が120:1から50:1の間である。別の実施形態では、当該比が120:1から60:1の間である。別の実施形態では、当該比が120:1から70:1の間である。別の実施形態では、当該比が90:1から20:1の間である。別の実施形態では、当該比が90:1から30:1の間である。別の実施形態では、当該比が90:1から40:1の間である。別の実施形態では、当該比が90:1から50:1の間である。別の実施形態では、当該比が90:1から60:1の間である。別の実施形態では、当該比が80:1から20:1の間である。別の実施形態では、当該比が80:1から30:1の間である。別の実施形態では、当該比が80:1から40:1の間である。別の実施形態では、当該比が80:1から50:1の間である。
別の実施形態では、当該比が30:1である。別の実施形態では、当該比が20:1である。別の実施形態では、当該比が25:1である。別の実施形態では、当該比が35:1である。別の実施形態では、当該比が40:1である。別の実施形態では、当該比が45:1である。別の実施形態では、当該比が50:1である。別の実施形態では、当該比が55:1である。別の実施形態では、当該比が60:1である。別の実施形態では、当該比が65:1である。別の実施形態では、当該比が70:1である。別の実施形態では、当該比が75:1である。別の実施形態では、当該比が80:1である。別の実施形態では、当該比が85:1である。別の実施形態では、当該比が90:1である。別の実施形態では、当該比が95:1である。別の実施形態では、当該比が100:1である。
各々のアクリルアミド:ビスアクリルアミド比が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、本発明による方法および組成物のアクリルアミドゲルの合計アクリルアミド濃度が3〜5%である。別の実施形態では、合計アクリルアミド濃度が3〜5%である溶液から、アクリルアミドゲルを調製する。別の実施形態では、合計アクリルアミド濃度が2%である。別の実施形態では、当該濃度が2.5%である。別の実施形態では、当該濃度が3%である。別の実施形態では、当該濃度が3.5%である。別の実施形態では、当該濃度が4%である。別の実施形態では、当該濃度が4.5%である。別の実施形態では、当該濃度が5%である。別の実施形態では、当該濃度が5.5%である。別の実施形態では、当該濃度が6%である。別の実施形態では、当該濃度が2〜5%である。別の実施形態では、当該濃度が2.5〜5%である。別の実施形態では、当該濃度が3.5〜5%である。別の実施形態では、当該濃度が2〜4%である。別の実施形態では、当該濃度が2〜4.5%である。別の実施形態では、当該濃度が2〜5%である。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、本発明による方法および組成物のゲル化剤がフィブリンタンパク質である。別の実施形態では、ゲル化剤がフィブリノゲンタンパク質である。別の実施形態では、フィブリノゲンが凝固因子の枯渇したものである。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、本発明による方法および組成物のゲルまたはマトリックスにおける組換えフィブリンまたはフィブリノゲンタンパク質の当該濃度が3〜10mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が3〜12mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が3〜9mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が3〜8mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が3〜7mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が3〜6mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が2〜12mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が2〜10mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が2〜9mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が2〜8mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が2〜7mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が2〜6mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が4〜12mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が4〜10mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が4〜9mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が4〜8mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が4〜7mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が5〜12mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が5〜10mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が5〜9mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が5〜8mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が2mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が2.5mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が3mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が3.5mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が4mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が4.5mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が5mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が6mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が7mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が8mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が9mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が10mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が11mg/mLである。別の実施形態では、当該濃度が12mg/mLである。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、本発明による方法および組成物のフィブリンまたはフィブリノゲンタンパク質が、変温動物のフィブリンまたはフィブリノゲンタンパク質である。別の実施形態では、フィブリンまたはフィブリノゲンタンパク質が、恒温動物のフィブリンまたはフィブリノゲンタンパク質である。別の実施形態では、フィブリンまたはフィブリノゲンが魚由来のものである。別の実施形態では、フィブリンまたはフィブリノゲンがサケ由来のものである。別の実施形態では、フィブリンまたはフィブリノゲンが、当該技術分野において周知の他の任意の魚由来のものである。別の実施形態では、フィブリンまたはフィブリノゲンが、当該技術分野において周知の他の任意の変温動物由来のものである。別の実施形態では、フィブリンまたはフィブリノゲンが哺乳動物由来のものである。別の実施形態では、フィブリンまたはフィブリノゲンが、ヒトフィブリンまたはフィブリノゲンである。別の実施形態では、フィブリンまたはフィブリノゲンが、ウシフィブリンまたはフィブリノゲンである。別の実施形態では、フィブリンまたはフィブリノゲンが、当該技術分野において周知の他の任意の哺乳動物由来のものである。別の実施形態では、フィブリンまたはフィブリノゲンが、当該技術分野において周知の他の任意の恒温動物由来のものである。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、ゲル化剤がアガロースである。別の実施形態では、ゲル化剤が寒天である。別の実施形態では、ゲル化剤がグリコサミノグリカンである。別の実施形態では、ゲル化剤がコラーゲンである。別の実施形態では、ゲル化剤がカラギーンである。別の実施形態では、ゲル化剤がカラギーナンである。別の実施形態では、ゲル化剤がローカストビーンガムである。別の実施形態では、ゲル化剤がグリセリンである。別の実施形態では、本発明による方法および組成物のゲル化剤が、当該技術分野において周知の他の任意のゲル化剤である。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
本発明による方法および組成物のゲルまたはマトリックスが、別の実施形態では、2次元ゲルまたはマトリックスである。別の実施形態では、ゲルまたはマトリックスが、3次元ゲルまたはマトリックスである。別の実施形態では、ゲルまたはマトリックスが、当該技術分野において周知の他の任意のタイプのゲルまたはマトリックスである。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、本発明による方法および組成物のゲルまたはマトリックスが、動物血清をさらに含む。別の実施形態では、動物血清がウシ胎仔血清である。別の実施形態では、動物血清が仔ウシ血清である。別の実施形態では、動物血清がウマ血清である。別の実施形態では、動物血清が、当該技術分野において周知の他の任意のタイプの成長因子含有動物血清である。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、本発明による方法および組成物のゲルまたはマトリックスが、プロテアーゼ阻害剤をさらに含む。
別の実施形態では、本発明による方法および組成物のプロテアーゼ阻害剤が、ペプチダーゼの機能を阻害する。別の実施形態では、プロテアーゼ阻害剤がタンパク質である。いくつかの実施形態では、プロテアーゼ阻害剤が、システインプロテアーゼ阻害剤、セリンプロテアーゼ阻害剤(セルピン)、トリプシン阻害剤、トレオニンプロテアーゼ阻害剤、アスパラギン酸プロテアーゼ阻害剤またはメタロプロテアーゼ阻害剤である。別の実施形態では、プロテアーゼ阻害剤が、自殺阻害剤、遷移状態阻害剤またはキレート化剤である。
別の実施形態では、プロテアーゼ阻害剤が、大豆トリプシン阻害剤(SBTI)である。別の実施形態では、プロテアーゼ阻害剤がAEBSF−HClである。別の実施形態では、阻害剤がε−アミノカプロン酸である。別の実施形態では、阻害剤がα1−抗キモトリプシンである。別の実施形態では、阻害剤が抗トロンビンIIIである。別の実施形態では、阻害剤がα1−抗トリプシン(α1−プロテイナーゼ阻害剤)である。別の実施形態では、阻害剤がAPMSF−HCl(4−アミジノフェニル−メタンスルホニル−フルオリド)である。別の実施形態では、阻害剤がアプロチニンである。別の実施形態では、阻害剤がベンズアミジン−HClである。別の実施形態では、阻害剤がキモスタチンである。別の実施形態では、阻害剤がDFP(ジイソプロピルフルオロホスフェート)である。別の実施形態では、阻害剤がロイペプチンである。別の実施形態では、阻害剤がPEFABLOC(登録商標) SC(4−(2−アミノエチル)−ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩)である。別の実施形態では、阻害剤がPMSF(フェニルメチルスルホニルフルオリド)である。別の実施形態では、阻害剤がTLCK(1−クロロ−3−トシルアミド−7−アミノ−2−ヘプタノンHCl)である。別の実施形態では、阻害剤がTPCK(1−クロロ−3−トシルアミド−4−フェニル−2−ブタノン)である。別の実施形態では、阻害剤が卵白(オボムコイド)由来のトリプシン阻害剤である。別の実施形態では、阻害剤が大豆由来のトリプシン阻害剤である。別の実施形態では、阻害剤がアプロチニンである。別の実施形態では、阻害剤がイセチオン酸ペンタミジンである。別の実施形態では、阻害剤がペプスタチンである。別の実施形態では、阻害剤がグアニジウムである。別の実施形態では、阻害剤がα2−マクログロブリンである。別の実施形態では、阻害剤が亜鉛のキレート化剤である。別の実施形態では、阻害剤がヨード酢酸である。別の実施形態では、阻害剤が亜鉛である。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、本発明による方法および組成物で用いるプロテアーゼ阻害剤の量が、0.1mg/リットルである。別の実施形態では、プロテアーゼ阻害剤の量が0.2mg/リットルである。別の実施形態では、この量が0.3mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が0.4mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が0.6mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が0.8mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が1mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が1.5mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が2mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が2.5mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が3mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が5mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が7mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が10mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が12mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が15mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が20mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が30mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が50mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が70mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が100mg/リットルである。
別の実施形態では、プロテアーゼ阻害剤の量が0.1〜1mg/リットルである。別の実施形態では、プロテアーゼ阻害剤の量が0.2〜1mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が0.3〜1mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が0.5〜1mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が0.1〜2mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が0.2〜2mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が0.3〜2mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が0.5〜2mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が1〜2mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が1〜10mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が2〜10mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が3〜10mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が5〜10mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が1〜20mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が2〜20mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が3〜20mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が5〜20mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が10〜20mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が10〜100mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が20〜100mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が30〜100mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が50〜100mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が10〜200mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が20〜200mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が30〜200mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が50〜200mg/リットルである。別の実施形態では、当該量が100〜200mg/リットルである。
別の実施形態では、本発明による方法および組成物で用いるプロテアーゼ阻害剤の量が、1000k.i.u.(カリクレイン不活性化単位)/リットルである。別の実施形態では、当該量が10k.i.u./リットルである。別の実施形態では、当該量が12k.i.u./リットルである。別の実施形態では、当該量が15k.i.u./リットルである。別の実施形態では、当該量が20k.i.u./リットルである。別の実施形態では、当該量が30k.i.u./リットルである。別の実施形態では、当該量が40k.i.u./リットルである。別の実施形態では、当該量が50k.i.u./リットルである。別の実施形態では、当該量が70k.i.u./リットルである。別の実施形態では、当該量が100k.i.u./リットルである。別の実施形態では、当該量が150k.i.u./リットルである。別の実施形態では、当該量が200k.i.u./リットルである。別の実施形態では、当該量が300k.i.u./リットルである。別の実施形態では、当該量が500k.i.u./リットルである。別の実施形態では、当該量が700k.i.u./リットルである。別の実施形態では、当該量が1500k.i.u./リットルである。別の実施形態では、当該量が3000k.i.u./リットルである。別の実施形態では、当該量が4000k.i.u./リットルである。別の実施形態では、当該量が5000k.i.u./リットルである。
プロテアーゼ阻害剤の各々の量が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、本発明による方法および組成物のプロテアーゼ阻害剤で標的されるプロテアーゼが、セリンプロテアーゼである。別の実施形態では、プロテアーゼがトリプシンである。別の実施形態では、プロテアーゼがキモトリプシンである。別の実施形態では、プロテアーゼがカルボキシペプチダーゼである。別の実施形態では、プロテアーゼがアミノペプチダーゼである。別の実施形態では、プロテアーゼが、十二指腸または小腸で機能する他の任意のプロテアーゼである。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
本発明による方法および組成物の間葉系幹細胞集団が、別の実施形態では、成人間葉系幹細胞集団である。別の実施形態では、間葉系幹細胞集団が若年間葉系幹細胞集団である。別の実施形態では、間葉系幹細胞集団が乳児間葉系幹細胞集団である。別の実施形態では、間葉系幹細胞集団が胎児間葉系幹細胞集団である。別の実施形態では、間葉系幹細胞集団がヒト間葉系幹細胞集団である。別の実施形態では、間葉系幹細胞集団が、当該技術分野において周知の任意の動物由来のものである。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、目的の細胞型が幹細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が造血幹細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が脂肪細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が内皮前駆細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が神経幹細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が成人組織内に存在する前駆細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が成人組織内に存在する膵前駆細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が再生ネイティブβ細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が胃腸幹細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が肝膵上皮幹細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が表皮幹細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が腸上皮幹細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型がレチナール幹細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型がニューロン上皮幹細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が筋肉幹細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が内皮幹細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が末梢血幹細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が、当該技術分野において周知の他の任意のタイプの幹細胞である。
別の実施形態では、目的の細胞型が前駆細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が軟骨前駆細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が脂肪前駆細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が骨髄間質前駆細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が筋原前駆細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が骨原前駆細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が腱前駆細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が、当該技術分野において周知の他の任意のタイプの前駆細胞である。
別の実施形態では、目的の細胞型が後代細胞型である。別の実施形態では、目的の細胞型が軟骨細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が間質細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が筋管細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が骨細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が腱細胞である。別の実施形態では、目的の細胞型が、当該技術分野において周知の他の任意の後代細胞型である。
別の実施形態では、本発明の方法が、誘導培地で間葉系幹細胞をインキュベートする工程をさらに含む。別の実施形態では、誘導培地が幹細胞誘導培地である。別の実施形態では、誘導培地が骨芽細胞誘導培地である。別の実施形態では、誘導培地が造血幹細胞誘導培地である。別の実施形態では、誘導培地が脂肪細胞誘導培地である。別の実施形態では、誘導培地が内皮前駆細胞誘導培地である。別の実施形態では、誘導培地が神経幹細胞誘導培地である。別の実施形態では、誘導培地が成人組織内に存在する前駆細胞誘導培地である。別の実施形態では、誘導培地が成人組織内に存在する膵前駆細胞誘導培地である。別の実施形態では、誘導培地が再生ネイティブβ細胞誘導培地である。別の実施形態では、誘導培地が胃腸幹細胞誘導培地である。別の実施形態では、誘導培地が肝膵上皮幹細胞誘導培地である。別の実施形態では、誘導培地が表皮幹細胞誘導培地である。別の実施形態では、誘導培地が腸上皮幹細胞誘導培地である。別の実施形態では、誘導培地がレチナール幹細胞誘導培地である。別の実施形態では、誘導培地がニューロン上皮幹細胞誘導培地である。別の実施形態では、誘導培地が筋幹細胞誘導培地である。別の実施形態では、誘導培地が内皮幹細胞誘導培地である。別の実施形態では、誘導培地が末梢血幹細胞誘導培地である。別の実施形態では、誘導培地が当該技術分野において周知の他の任意のタイプの誘導培地である。
別の実施形態では、誘導培地が前駆細胞誘導培地である。別の実施形態では、誘導培地が軟骨前駆細胞誘導培地である。別の実施形態では、誘導培地が脂肪前駆細胞誘導培地である。別の実施形態では、誘導培地が骨髄間質前駆細胞誘導培地である。別の実施形態では、誘導培地が筋原前駆細胞誘導培地である。別の実施形態では、誘導培地が骨原前駆細胞誘導培地である。別の実施形態では、誘導培地が腱前駆細胞誘導培地である。別の実施形態では、誘導培地が、当該技術分野において周知の他の任意のタイプの前駆細胞である。
別の実施形態では、誘導培地が当該技術分野において周知の他の任意のタイプの誘導培地である。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
本発明による方法および組成物の培養する工程を、別の実施形態では、少なくとも5日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を少なくとも4日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を少なくとも6日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を少なくとも7日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を少なくとも8日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を少なくとも10日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を少なくとも12日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を少なくとも15日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を少なくとも20日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を少なくとも25日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を少なくとも30日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を少なくとも35日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を少なくとも40日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を少なくとも50日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を少なくとも60日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を、4日間を超えて実施する。別の実施形態では、培養する工程を、6日間を超えて実施する。別の実施形態では、培養する工程を、7日間を超えて実施する。別の実施形態では、培養する工程を、8日間を超えて実施する。別の実施形態では、培養する工程を、10日間を超えて実施する。別の実施形態では、培養する工程を、12日間を超えて実施する。別の実施形態では、培養する工程を、15日間を超えて実施する。別の実施形態では、培養する工程を、20日間を超えて実施する。別の実施形態では、培養する工程を、25日間を超えて実施する。別の実施形態では、培養する工程を、30日間を超えて実施する。別の実施形態では、培養する工程を、35日間を超えて実施する。別の実施形態では、培養する工程を、40日間を超えて実施する。別の実施形態では、培養する工程を、50日間を超えて実施する。別の実施形態では、培養する工程を、60日間を超えて実施する。別の実施形態では、培養する工程を4日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を6日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を7日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を8日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を10日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を12日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を15日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を20日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を25日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を30日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を35日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を40日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を50日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を60日間実施する。別の実施形態では、培養する工程を、60日間を超えて実施する。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、本発明のゲルまたはマトリックスで間葉系幹細胞集団を培養する工程の前に、組織培養装置にて間葉系幹細胞を培養する工程を実施する。別の実施形態では、組織培養装置が皿である。別の実施形態では、組織培養装置がプレートである。別の実施形態では、組織培養装置がフラスコである。別の実施形態では、組織培養装置が瓶である。別の実施形態では、組織培養装置が管である。別の実施形態では、組織培養装置が、当該技術分野において周知の他の任意のタイプの組織培養装置である。別の実施形態では、培養する工程の前に、たとえば本発明のゲルまたはマトリックスの非存在下で、組織培養液にて間葉系幹細胞を培養する工程を実施する。別の実施形態では、組織培養装置または組織培養液にて細胞を培養する工程を、生体試料からの間葉系幹細胞集団の単離後に実施する。別の実施形態では、生体試料からの間葉系幹細胞集団の精製後に培養する工程を実施する。別の実施形態では、生体試料での間葉系幹細胞集団の濃縮後に培養する工程を実施する。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、本発明のゲルまたはマトリックスにて間葉系幹細胞集団を培養する工程を、生体試料からの間葉系幹細胞集団の単離直後に実施する。別の実施形態では、生体試料からの間葉系幹細胞集団の精製直後に培養する工程を実施する。別の実施形態では、生体試料での間葉系幹細胞集団の濃縮直後に培養する工程を実施する。「直」は、別の実施形態では、先に組織培養装置で培養することのない培養工程を示す。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
本発明による方法および組成物の前駆細胞集団が、別の実施形態では、造血幹細胞集団である。別の実施形態では、前駆細胞集団が内皮細胞前駆体集団である。別の実施形態では、前駆細胞集団が衛星細胞集団(筋細胞前駆体など)である。別の実施形態では、前駆細胞集団が吻側細胞移動路の一過性増殖神経前駆細胞の集団である。別の実施形態では、前駆細胞集団が骨髄幹細胞集団である。別の実施形態では、前駆細胞集団が当該技術分野において周知の他の任意の前駆細胞集団である。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
「前駆細胞集団」とは、別の実施形態では、前駆細胞を含む集団を示す。別の実施形態では、集団には前駆細胞が豊富に含まれる。別の実施形態では、集団が部分的に精製された前駆細胞集団である。別の実施形態では、前駆細胞を生物学的ソースから単離した後に、精製または濃縮工程が続く。別の実施形態では、生物学的ソースからの単離後に培養が続く。別の実施形態では、生物学的ソースからの単離後に培養および精製または濃縮工程が続く。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、本発明のゲルまたはマトリックスにて形質転換細胞を培養することで、形質転換細胞を分化細胞型に分化させる工程を含む、形質転換細胞を分化細胞型に分化させる方法が得られる。別の実施形態では、分化細胞型が前駆細胞である。別の実施形態では、分化細胞型が後代細胞型である。別の実施形態では、分化細胞型が組織細胞型である。別の実施形態では、分化細胞型が上記の細胞型のうちの1つである。別の実施形態では、分化細胞型が当該技術分野において周知の他の任意のタイプの分化細胞型である。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、本発明の方法で調製される細胞または細胞集団を被検体での損傷組織の代替に使用する。別の実施形態では、本発明の方法で調製される細胞または細胞集団を抗癌剤の運搬体として使用する(Kassem M, Ann N Y Acad Sci. 2006 May, 1067:436-42)。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
間葉系幹細胞の増殖能および分化能を判断するための方法は当該技術分野において周知であり、たとえば、Baxter MA et al (Study of telomere length reveals rapid aging of human marrow stromal cells following in vitro expansion. Stem Cells. 2004;22(5):675-82)、Liu L et al (Telomerase deficiency impairs differentiation of mesenchymal stem cells. Exp Cell Res. 2004 Mar 10;294(1):1-8)、Bonab MM et al (Aging of mesenchymal stem cell in vitro. BMC Cell Biol. 2006 Mar 10:7:14)に記載されている。各々の可能性が、本発明による別の実施形態を表す。
別の実施形態では、本発明による方法および組成物には、間葉系幹細胞の不死化がないという利点がある。別の実施形態では、間葉系幹細胞集団からの癌細胞の発生がないという利点がある。別の実施形態では、標的細胞が複数の細胞型に分化する能力が保持されるという利点がある。別の実施形態では、細胞の増殖能が保持されるという利点がある。別の実施形態では、細胞が造血細胞の成長を支援する能力が保持されるという利点がある。別の実施形態では、接触阻害を必要とすることなく標的細胞が分化できるという利点がある。別の実施形態では、分化は増殖阻害の結果である。各々の可能性が、本発明による別の実施形態を表す。
一実施形態では、休眠状態の体性幹細胞の増殖を誘導するための方法が得られる。同じタイプの幹細胞の体内で自然に生じる微細環境の弾性よりも弾性の低い物質に幹細胞を接触させることが、幹細胞の増殖を誘導する上で効果的であることが見いだされている。よって、本発明の実施形態は、細胞膜表面のインテグリンと結合する化合物を含み、かつ、体性幹細胞と同じタイプの体内体性幹細胞の生物学的微環境における物質の弾性より小さい、幹細胞にとって明らかな弾性を有する物質に体性幹細胞を接触させることを含む。たとえば、剛性が1ギガパスカル(ヒトまたは動物のほとんどの組織タイプよりもはるかに低い弾性)を超え、細胞のインテグリンと接触している材料でコーティングされたスライドガラスに休眠状態の幹細胞を載せることで、休眠状態の幹細胞の増殖を誘導できる。他の実施形態では幹細胞の体内での自然な微細環境における弾性の0.1未満の細胞にとって明らかな弾性を有する物質に細胞を接触させることで、幹細胞の増殖を誘導できる。他の実施形態では、幹細胞の体内での自然な微細環境における弾性の約0.5倍未満(約0.4から約0.5倍など)である幹細胞にとって明らかな弾性を有する物質に幹細胞を接触させることで、増殖を誘導できる。
実施形態では、体外で幹細胞およびそれに由来する細胞の増殖を促進し、生物活性を持続させるための成長因子や血清などを含む栄養成長物質を細胞に与えてもよい。特定の細胞型向けの栄養成長物質の配合物が当業者間で周知であり、本発明のこの態様を実施するにあたって特定タイプの幹細胞向けの周知の栄養成長物質を変える必要はない。
本発明の他の態様と同様に、この増殖誘導態様の実施形態は、MSCをはじめとする幹細胞を用いて実施できるものである。MSCは、本明細書で説明するように生体組織から収集したものであってもよいし、in vitro培養および低温で冷凍した(cryogenically frozen)幹細胞などの他のソース由来のものであってもよい。このような細胞は、天然に生じる休眠期にあってもよいし、人工的に誘導した休眠期であってもよく、たとえば、本発明の方法を用いて休眠状態を誘導または維持した細胞を含むものであってもよい。したがって、本発明の方法で増殖を誘導できる細胞としては、骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)、腎幹細胞、肝幹細胞、骨格筋由来幹細胞、骨由来幹細胞、歯髄MSC、心筋由来MSC、滑液由来MSC、臍帯MSC、当業者が本明細書を踏まえたうえで同定可能な他のタイプの細胞があげられる。
本発明による幹細胞の増殖は可逆性であり、細胞に休眠状態と増殖状態を交互に誘導できるものである。たとえば、本発明の方法を用いて、細胞表面のインテグリンと結合する化合物を含み、細胞の体内での微環境の弾性とほぼ同じ細胞にとっての弾性を有する材料に幹細胞を接触させるなどの方法で、幹細胞で休眠状態を誘導および維持してもよい。次に、インテグリンと結合する化合物を含み、細胞の体内での微環境の弾性よりも細胞にとっての弾性が実質的に低い材料に細胞を接触させることで、細胞で増殖を誘導すればよい。その上で、得られる娘細胞を、インテグリン結合化合物を含み、細胞の体内での微環境とほぼ同じ細胞にとっての弾性を有する材料と接触させることで、休眠状態を誘導および維持してもよい。
別の実施形態では、本発明の方法で増殖幹細胞を休眠期に誘導する。その上で、上述したようにこれらの休眠状態の細胞の増殖を誘導することができる。
本発明はさらに、本発明の方法で生物活性が持続され、休眠状態が誘導された状態または維持される、体性幹細胞の分化を誘導するための方法を提供するものである。本発明のこの態様の実施形態は、このような細胞を、所定の細胞型への細胞の分化を刺激するよう選択された化学的な刺激を含む分化材料と接触させる工程と、分化刺激細胞の生物活性を持続させるための分化細胞栄養物質を細胞に与える工程とを含む。いくつかの実施形態では、弾性が意図した分化の標的細胞の自然な微環境の弾性よりも低い材料と幹細胞を接触させることで、たとえば体外で体性幹細胞の増殖を誘導する(または可能にする)ことを含む工程を、接触させる工程の前に加えてもよい。
本発明によって生物活性が持続された休眠状態の幹細胞または増殖幹細胞に、周知の方法または本明細書を踏まえた上で当業者らには自明の方法を用いて、分化を誘導してもよい。たとえば、本明細書で詳細に説明するように、幹細胞がヒト骨髄由来間葉系幹細胞の場合、弾性が250Pa前後の支持体で(実施例1で説明するような)脂肪生成培地と細胞を接触させることで脂肪細胞への細胞の分化を実施してもよい。さまざまな組織タイプのレオロジーならびに、幹細胞を誘導してさまざまなタイプの細胞に分化させるのに用いる分化培地に関して本明細書から得られる情報あるいは本明細書に記載されたような情報を使用すれば、本発明の方法を用いて、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞から少なくとも以下の細胞型のうちの1つまたは複数への分化を誘導できることは、当業者であれば自明であろう。骨芽細胞、軟骨細胞、筋細胞、脂肪細胞、膵島β細胞、ニューロン細胞。一般に、さまざまな組織タイプのレオロジーならびにさまざまな幹細胞型からさまざまなタイプの細胞への分化を誘導するのに用いられる分化培地に関する情報を使用すれば、本明細書にて識別する幹細胞型のいずれにおいても、骨芽細胞、軟骨細胞、筋細胞、脂肪細胞、膵島β細胞、ニューロン細胞または別の細胞型のうちの1つまたは複数への分化を誘導することについて、当業者には容易に分かるであろう。
本発明のこの態様の実施形態では、細胞の生物活性を持続させるための栄養を含む培地と分化細胞を接触させる。たとえば、本発明の方法を用いてヒト骨髄由来間葉系幹細胞から脂肪細胞への分化を誘導する場合、得られる脂肪細胞を、その生物活性を維持するために栄養培地と接触させてもよい。栄養培地には、DMEM(低ブドウ糖)、ウシ胎仔血清、インスリンを含むものを使用できる。他の栄養培地ならびに、これと分化細胞を接触させるための方法は、当業者であれば本明細書を踏まえたうえで自明であろう。
本発明は、体性幹細胞の休眠状態および持続可能な生物活性を誘導または維持するための人工系をさらに提供するものである。実施形態では、この系は、幹細胞を接触させるための細胞外物質(ECM)リガンド物質、ECMリガンド物質と結合した支持体材料、幹細胞に栄養を与えてその生物活性を持続させるための培地を含む。ECMリガンド物質は、支持体材料に結合すると、同じタイプの体内幹細胞の生物学的微環境における体内材料の弾性と同じような弾性を有する。この系の実施形態は、本明細書に記載の本発明の方法によって休眠状態が誘導され、どのような細胞型でも休眠状態を誘導できるものであってもよい。たとえば、系の実施形態は、体性幹細胞または胚性幹細胞、ヒト幹細胞または動物幹細胞、間葉系体性幹細胞(MSC)、骨髄由来MSC、腎幹細胞、肝由来幹細胞、骨格筋由来MSC、骨由来MSC、歯髄MSC、心筋由来MSC、滑液由来MSCまたは臍帯MSCで休眠状態を誘導できるものであってもよい。
実施形態では、ECMリガンド物質が支持体に結合して幹細胞と接触すると、本明細書において詳細に説明するように、幹細胞が休眠状態に入るよう誘導する方法でECM材料が幹細胞表面のインテグリンと結合する。
本発明のこのような系の実施形態では、ECMリガンド材料を支持体材料と結合させる結合材料があってもよい。たとえば、支持体材料がポリアクリルアミドゲルを含み、ECMがコラーゲン−フィブロネクチン混合物を含む場合、結合材料は、具体的にはアクリル酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルを含むNHSであってもよい。支持体材料および細胞外物質の性質に応じて、当業者であれば結合材料を容易に確定できるであろう。これは本発明の系のさまざまな実施形態で支持体材料とECMとを結合させるのに用いられる架橋剤として特徴付けられるものであってもよい。
本発明の実施形態では、ECMリガンド層を支持体に結合すると、ECMリガンド層は、ECMリガンド層と接触している幹細胞と同じタイプの体内幹細胞の生物学的微環境における物質の弾性と実質的に類似の幹細胞にとって明らかな弾性を有する。ECMリガンド層のこの明らかな弾性は、支持体の弾性とは独立したものであってもよいし、ほぼ独立したものであっても、支持体の弾性に左右されるものであってもよい。実施形態では、支持体の弾性が、ECMリガンド層に接触している幹細胞と同じタイプの体内幹細胞の生物学的微環境における物質の弾性と実質的に類似であり、ECMリガンド層によって、幹細胞は、自らが結合する支持体の弾性と実質的に同じ弾性を得られる。
本発明の人工系は、多岐にわたる構造を用いて実現できるものである。実施形態では、支持体材料がマトリックスを形成し、ECMがマトリックスに分散される。実施形態では、支持体マトリックスの材料をECMと結合するための結合材料も支持体マトリックスに分散できるものである。たとえば、一実施形態によれば、ラット尾由来のコラーゲン(0.5mg/ml)とヒト由来のフィブロネクチン(0.1mg/ml)との5:1混合物ならびに、アクリル酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)架橋剤を、ポリアクリルアミドゲルに分散させる。ゲルについては、構造の弾性が約250Paになるように配合する。骨髄由来MSCをポリアクリルアミド−NHS−フィブロネクチン−コラーゲン構造と接触させると、これらの細胞は休眠状態に入るよう誘導される。構造と接触しているMSCに好適な栄養物質が供給されると、休眠期におけるその生物活性が維持される。
実施形態では、支持体材料が層を形成し、ECMが支持体層と直接または間接的に結合される層を形成する。他の実施形態では、結合材料が、ECMリガンド層と支持体層とを結合させる結合層を形成する。結合層は、支持体の弾性をECMリガンド層に、ECMリガンド層がその弾性を休眠状態が誘導される幹細胞に提示できるような方法で提示する機能を果たすものであってもよい。一実施形態では、結合層が、これらの機能を果たす適切な架橋用組成物ならびに他の材料を含む。たとえば、カップリング層が、NHSを含むものであってもよく、特定の実施形態では、アクリル酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルを含むものであってもよい。
実施形態では、支持体材料がポリアクリルアミドゲルである。当該技術分野において周知のように、ゲル中のアクリルアミドおよびビスアクリルアミドの濃度を変えることで、ポリアクリルアミドゲルの弾性を調節してもよい。本発明の系で用いられるポリアクリルアミドまたは他のゲルまたは支持体材料をどのように生成するかについては、本明細書を踏まえたうえで当業者には自明であろう。
本明細書を踏まえたうえでいずれ分かるように、実施形態では他の構造を利用してもよい。たとえば、上述したようなECM層に幹細胞を播種し、細胞を含む系を培地に沈めることでこの細胞をECM層に定着させ、実施例1でさらに説明するような適切な明らかな弾性を有する別のECM層を細胞の上に載せることで、準3D構造を作製してもよい。
別の実施形態では、本発明による方法および組成物の利点に、マトリックスまたはゲルのタンパク質分解に対する耐性がある。別の実施形態では、細胞による活発な再構築に対する耐性が利点である。別の実施形態では、哺乳類(ヒトまたはウシなど)のフィブリンと比較して、哺乳類のニューロンによって分泌されるプロテアーゼに対する変温動物(サケなど)のフィブリンの耐性が利点である。別の実施形態では、哺乳類(ヒトまたはウシなど)のフィブリンと比較して、変温動物(サケなど)のフィブリンからの感染症の出現率が低いという利点がある。各々の可能性が、本発明による別の実施形態を表す。
別の実施形態では、本発明による方法および組成物の標的細胞が不死化したMSCである。
別の実施形態では、不死化したMSCを本発明のゲルまたはマトリックスで培養することで、不死化したMSCの成長停止を誘導する工程を含む、不死化MSCの成長停止を誘導する方法が得られる。別の実施形態では、不死化したMSCを本発明のゲルまたはマトリックスで培養することで、不死化したMSC集団の成長を阻害する工程を含む、不死化したMSC集団の成長を阻害する方法が得られる。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、本発明による方法および組成物の標的細胞が形質転換細胞である。別の実施形態では、形質転換細胞が黒色腫細胞である。別の実施形態では、形質転換細胞が、当該技術分野において周知の他の任意のタイプの形質転換細胞である。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
本明細書で提供する場合、M2細胞は、硬い支持体ほど大きなサイズと大きめの細胞集団を呈する。別の実施形態では、細胞集団の増加が、硬い支持体での細胞成長が増加した結果である。別の実施形態では、集団の増加が、柔らかい支持体での細胞死が増加したことによるものである。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、形質転換細胞を本発明のゲルまたはマトリックスで培養することで、形質転換細胞の成長停止を誘導する工程を含む、形質転換細胞の成長停止を誘導する方法が得られる。別の実施形態では、形質転換細胞を本発明のゲルまたはマトリックスで培養することで、形質転換細胞集団の成長を阻害する工程を含む、形質転換細胞集団の成長を阻害する方法が得られる。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、本発明による方法および組成物の柔らかい支持体が、標的細胞におけるGTPタンパク質の不活性GDP結合形態の増加につながる。別の実施形態では、GTPタンパク質がRhoである。別の実施形態では、GTPタンパク質がRacである。別の実施形態では、GTPタンパク質がCdc42である。別の実施形態では、GTPタンパク質が、当該技術分野において周知の他の任意のGTPタンパク質である。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、Rhoファミリメンバが、接着斑の形成によってシグナルを伝達する。別の実施形態では、Rhoの活性化がp21WAF1/clp1の発現を阻害する。別の実施形態では、p21の阻害がサイクリン依存性キナーゼ(CDK)を活性化する。別の実施形態では、Rhoの活性化が、別のCDK阻害剤であるp27Klp1発現抑制と分解を誘導する。別の実施形態では、Rhoの活性化がROCKを誘導し、Ras−Raf−MEK−ERK経路が活性化される。別の実施形態では、この経路が、RasによるサイクリンD1転写を誘導する。別の実施形態では、これが、G1期の進行を誘導する。一緒に、Rhoの活性化もG1期の進行につながることが分かった。別の実施形態では、RacまたはCdc42の活性化がサイクリンElおよびサイクリンDlを発現促進し、G1期の進行につながる。別の実施形態では、Rhoファミリの低分子量GTP結合タンパク質の活性化が、細胞周期の進行を促進するシグナル形質導入につながる。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、本発明方法および本発明の組成物の柔らかい支持体が、標的細胞のアクトミオシン系の収縮性を減少させる。別の実施形態では、これは、標的細胞を誘導して増殖を中止させる。別の実施形態では、これは、増殖を再開するためのさらなる刺激に適するものになるよう標的細胞を誘導する。別の実施形態では、これは、最終分化を開始するためのさらなる刺激に適するものになるよう標的細胞を誘導する。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、本発明による方法および組成物の柔らかい支持体がアクトミオシンの活性化を誘導する。別の実施形態では、柔らかい支持体が、Rhoによって調節されるアクトミオシンを誘導する。別の実施形態では、柔らかい支持体がミオシンIIを誘導する。別の実施形態では、柔らかい支持体が、Rhoによって調節されるミオシンIIを誘導する。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、本発明による方法の組成物および組成物が、Rhoファミリメンバの活性化因子をさらに含む。別の実施形態では、組成物が、Rhoファミリメンバの阻害剤をさらに含む。別の実施形態では、RhoファミリメンバがRhoである。別の実施形態では、RhoファミリメンバがRacである。別の実施形態では、RhoファミリメンバがCdc42である。別の実施形態では、Rhoファミリメンバが当該技術分野において周知の他の任意のRhoファミリメンバである。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。別の実施形態では、組成物がアクトミオシンの活性化因子をさらに含む。別の実施形態では、組成物がアクトミオシンの阻害剤をさらに含む。別の実施形態では、組成物がミオシンIIの活性化因子をさらに含む。別の実施形態では、組成物がミオシンIIの阻害剤をさらに含む。各々の可能性が、本発明による別個の実施形態を表す。
アクリルアミドゲルを重合するための方法が、当該技術分野において周知である。別の実施形態では、TEMED(FisherBiotech CAS No.110189)1.5μlと10%過硫酸アンモニウム5μlを、適量のHOと一緒に加えて最終容量を1,000μlにし、この溶液をピペットでカバーガラスに滴下し、上側のカバーガラスを溶液の上に載せ、続いて10分後に剥がす。各々の方法が、本発明による別個の実施形態を表す。
別の実施形態では、接着タンパク質をゲルまたはマトリックスに架橋させるために、ヘテロ二官能性架橋剤を利用する。別の実施形態では、ヘテロ二官能性架橋剤がスルホ−SANPAH(スルホスクシンイミジル6(4’−アジド−2’−ニトロフェニル−アミノ)ヘキサノエート、Pierce No.22589)である。別の実施形態では、ヘテロ二官能性架橋剤が、当該技術分野において周知の他の任意のヘテロ二官能性架橋剤である。別の実施形態では、スルホ−SANPAHを以下のように使用する。1mg/mlのスルホ−SANPAHをHOに溶解し、この溶液200μlをピペットでゲル表面に滴下する。続いて、ポリアクリルアミドゲルを紫外線ランプの6インチ下に配置し、10分間照射する。次に、これを200mMのHEPES(pH8.6)3mLずつで3回洗浄する。最後のHEPES溶液を吸引した後、0.14mg/mlの魚フィブロネクチン溶液(Sea Run Holdings, South Freeport, ME)または0.14mg/mlのI型コラーゲンを200μlピペットでポリアクリルアミドゲルの上に滴下する。次に、ゲルを入れたマルチウェルプレートを5℃で4時間インキュベートする。各々の方法が、本発明による別個の実施形態を表す。
本発明の別の態様では、上述したような系をアセンブルするあるいは、本発明の方法を実施するために、構成要素のキットを提供してもよい。一実施形態では、このようなキットは、別々の構成要素として、(1)支持体または支持体を作製するための材料と、(2)任意選択により、カップリング層を形成および/または適用するための材料と、(3)ECMリガンド材料を生成および/または適用してECMリガンド層を形成するための材料とを含む。支持体の構成要素は、たとえば、所定の弾性のポリアクリルアミドゲル、ゲルの弾性を所定の弾性または弾性の範囲に調節するための材料を含むポリアクリルアミドゲル、あるいは所望の弾性を有するゲルまたは他の好適な支持体を作製するための材料を含むものであってもよい。実施形態では、キットは、ECMリガンド層と、任意選択により支持体をECMリガンド層に結合するためのカップリング層の適用を容易にする目的で、ゲルを実装または保持するための装置を含む。当業者であれば本明細書を踏まえたうえで明らかなように、保管、輸送およびアセンブリを容易にする目的で、本発明のキットのさまざまな構成要素を組み合わせてもよい。
また、このようなキットの実施形態は、ECMリガンド層を形成および/または適用するための材料を含むものであってもよい。たとえば、キットは、支持体への直接塗布用のECMリガンド材料を含むものであってもよい。他の実施形態では、キットは、ECMリガンド層の材料の個々の構成要素または成分を、これを形成してキットの他の構成要素に適用するための指示と一緒に含むものであってもよい。任意選択により、キットは、ECMリガンド層に支持体を結合するためのカップリング層をアセンブルして適用するための材料および指示を含むものであってもよい。特定の実施形態では、ヒト骨髄由来MSCで休眠状態を誘導するための本発明による系のキットは、
(a)ガラス製ペトリ皿(または支持体を支えて残りの構成要素を保持するための他の装置)と、
(b)適量のアクリルアミドおよびビスアクリルアミドをはじめとして、支持体として機能する硬度約250Paのポリアクリルアミドゲルを形成するための材料と、
(c)カップリング層を形成する目的でゲルに適用するための(c)アクリル酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)架橋剤と、
(d)1:5フィブロネクチン−コラーゲン細胞外物質を生成するための実施例1で特定する材料をはじめとして、ECMリガンド層を形成するための材料と、を含む。
実施形態では、本発明のキットは、指定タイプの幹細胞に休眠状態を誘導するための弾性を持たせて配合されたポリアクリルアミドゲルと、ゲルへの適用向けに架橋用組成物を含む溶液と、指定タイプの細胞の表面におけるインテグリンと結合するよう配合された細胞外物質と、任意選択により、細胞を休眠状態に誘導するのに好適な栄養物質(利用者が調製してもよい)と、を含む。
キットのいくつかの実施形態では、キットは、弾性とECMリガンドの両方を提供する材料からなる1つの層を含む。別の実施形態では、キットは、以下の材料からなる3つの層を含むものであってもよい。
a)系に弾性を与えるゲル支持体、
b)ECMリガンド、
c)ECMリガンドを支持体に結合するための架橋剤。
本発明のキットの実施形態では、キットの構成要素を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)の入った袋またはプラスチックパッケージなどの容器に入れる。いくつかの実施形態では、容器には、アジ化ナトリウムなどの保存剤も含むようにしてもよい。保管時などに構成要素をキット内で水和させておいてもよい。いくつかの実施形態では、容器を適当なスキャフォルド(scaffold)で密封および/または保護し、系の損傷を回避する。キットを約2℃から約8℃などの低温で輸送してもよい。
本発明によるキットの実施形態では、利用者は容器を開いてキットの構成要素を組織培養プレートなどの適当な物質に載せることができる。また、利用者は、構成要素の上にある硬質の材料を除去してECMリガンドを曝露し、PBSなどの緩衝液で構成要素を洗浄することができる。これによって利用者は、細胞と、培地と、必要に応じて血清とを含む細胞懸濁液を用いて、系に細胞を播種することができる。
本発明の系および方法は、体内ならびに体外で実施できるものである。このような系は、たとえば、幹細胞を体内で休眠状態に維持するための特定の組織または循環系への挿入用の多孔性構造を含むものであってもよい。たとえば、幹細胞、対応するECMならびに任意選択により結合材料を、休眠状態を誘導または維持するために幹細胞にとっての適当な弾性を有し、かつ、体内での栄養が細胞に達することができ、細胞によって発現されるタンパク質および他の因子がマトリックスに残れるようにするだけの十分な多孔性を有するポリマーマトリックスに分散させてもよい。他の実施形態は、幹細胞の休眠状態を誘導または維持し、宿主に移植できるカセットまたは他の装置を含むものであってもよい。
本発明の別の態様は、体外で生物活性が持続させた休眠状態の幹細胞を包含する。このような幹細胞の例として、体性幹細胞または胚性幹細胞、ヒト幹細胞または動物幹細胞、間葉系幹細胞(MSC)、骨髄由来MSC、腎幹細胞、肝由来幹細胞、骨格筋由来MSC、骨由来MSC、歯髄MSC、心筋由来MSC、滑液由来MSCまたは臍帯MSCがあげられる。実施形態では、本発明の系または方法を用いて、幹細胞を休眠期に誘導または維持し、このような休眠状態の幹細胞の生物活性を持続させる。
したがって、一実施形態では、剛性が150〜750Paの範囲にあるゲルマトリックスと、脂肪細胞誘導培地と、を含み、前記ゲルまたはマトリックスが、1型コラーゲン、フィブロネクチンまたはこれらの組み合わせでコーティングされる、間葉系幹細胞の成長を調節するための装置が得られる。
他の実施形態では、上述したいずれかの方法のゲルおよびマトリックスは、本発明の組成物のゲルまたはマトリックスの特徴のいずれかを有する。各々の特徴が、本発明による別個の実施形態を表す。
実験の詳細について
実施例1:さまざまな組織の剛性の測定と、組織の剛性に近いポリアクリルアミドゲルの調製
材料および実験方法
ポリアクリルアミドゲルの調製
硬さを変化させるために、ポリマー質量を一定の7.5%とし、ビスアクリルアミド濃度を0.01%、0.03%または0.3%に変化させて、アクリルアミドおよびビスアクリルアミド(Fisher Biotech, Loughborough, Leicestershire, UK)溶液を調製した。0.5%アクリル酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(Sigma, St. Louis, MS)を含有するトルエンの非水性層下のアクリルアミド、ビスアクリルアミド、過硫酸アンモニウム、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)を、以下のようにして化学修飾した2枚のカバーガラス間で重合した:0.1NのNaOHを200μlのピペットで滴下し、直径25mmのガラス製カバーガラス(Fisherbrandカタログ番号12−545−102;Fisher Scientific, Pittsburgh, PA)の表面を5分間覆った。NaOH溶液を吸引し、3−APTMS(3−アミノプロピルトリメトキシシラン、Sigma社のNo.28-1778、Sigma, St. Louis, MO)200μlを3分間適用した。このガラス製カバーガラスを脱イオン水で十分にすすいで残っている3−APTMS溶液を洗い流し、0.5%vグルタルアルデヒド(Sigma社のNo.G7651)水溶液200μlを20分間カバーガラスに加えた。このガラス製カバーガラスを水ですすぎ、直径18mmのガラス製カバーガラスを組織培養皿内のパラフィルムの上に載せ、10容量%のSurfasilをクロロホルムに入れた溶液(Pierce社のNo.42800、Pierce, Rockford, IL)数滴をカバーガラスのそばでパラフィルムにピペットで滴下した。蓋を半分閉じた組織培養皿を減圧デシケーター内に10分間おいた。
ゲルの表面で取り込まれたN−スクシンイミジルアクリレートを0.2mg/mlのラミニン(Collaborative Biomedical, Bedford, MA)と反応させ、接着リガンドの均一なコーティングを生成した。HEPES緩衝液で洗浄して微量の未重合溶媒を除去した後、ポリアクリルアミド(PA)ゲルの入ったウェルを培養液で満たし、37℃で一晩平衡させた。
材料スキャフォルドの粘弾性の特性決定
ひずみ制御型rheometrics fluids spectrometer III(Rheometrics, Piscataway, NJ)でゲルの動的剛性率を測定した。2枚の鋼板の間で500μLの試料を重合し、振動(1rad/s)剪断ひずみ2%で、同位相の剪断応力から弾性抵抗を表す値である剛性率G’(ω)を計算で求めた。組織の動的剛性率についても同様にして測定した。ステンレスパンチを使用して、直径8mmの試料を切り出し、プレート間に配置した。ひずみ2%で振動させて短期G’(ω)を測定した。また、定常ひずみ10%を適用し、試料を30秒間弛緩させて、長期剛性率G(t)を測定した。
結果
ポリアクリルアミドゲルを調製し、I型コラーゲン0.14mg/mlと魚のフィブロネクチン0.14mg/mlの混合物をコーティングした。アクリルアミドとビスアクリルアミドの濃度を調節して、広範囲にわたる剛性を達成した(図1A)。ポリアクリルアミドゲルの剛性は、ゲル上の細胞外マトリックスの量と分布には影響しない。in vitro流量計も使用して、間葉系幹細胞と関連のある組織の弾性特性を判断した(表1)。G’が200Pa(本明細書では「柔らかいゲル」の一例として使用し、そのように称する)または7500Pa(本明細書では「硬いゲル」の一例として使用し、そのように称する)のポリアクリルアミドゲルを調製した。柔らかいゲルは、骨髄と脂肪組織の剛性を模している。
Figure 0005737936
このようにして、生体組織の剛性を模すポリアクリルアミドゲルを調製した。
実施例2:柔らかいゲルおよび硬いゲル上でのhMSCの細胞の形状とF−アクチン構造
材料および実験方法
コラーゲン1型およびフィブロネクチンでコーティングした硬いゲルまたは柔らかいゲルのいずれかに、hMSCを低密度で播種した。細胞をDMEM+10%ウシ胎仔血清中にて24時間インキュベートし、固定し、Alexa Fluor 488ファロイジンで染色した。
結果
細胞外マトリックスの剛性がhMSC(ヒト間葉系幹細胞)の形状とF−アクチン構造におよぼす影響を調査した。さまざまな剛性のマトリックス上にて血清の存在下で細胞を24時間インキュベートし、接着および拡散できるようにした。硬いゲルまたはガラスに播種したhMSCは、(Alexa Fluor 488ファロイジン染色で示されるように)紡錘形になり、ストレスファイバと皮質のF−アクチンが認められたのに対し、柔らかいゲルに播種した細胞は見た目が丸く、ストレスファイバは存在せず、F−アクチン凝集体(図1B〜図1C)が含まれていた。
このように、hMSCは、その形状とF−アクチン構造に影響する細胞外マトリックスの剛性を検知する。
実施例3:柔らかいゲルでのhMSC増殖の阻害
材料および実験方法
hMSCをBrdU(Invitrogen, Carlsbad, CA)と一緒に血清の存在下にて一晩インキュベートした。細胞を固定し、BrdU(Invitrogen)で免疫染色した。無作為に選択した視野において50個を超える細胞を3回カウントした。
結果
細胞周期の進行を示すマーカーとして、hMSCでの5−ブロモ−2’−デオキシウリジン5’−トリホスフェート(BrdU)取り込みを測定した(図2)。柔らかいゲル、硬いゲルまたはガラスの表面(本発明者らは、そのすべての表面にコラーゲン1型およびフィブロネクチンをコーティングした)に、細胞を低密度で播種した。対照として、ガラス表面の集密細胞も調製した。予想どおり、ガラス表面に低密度で播種したhMSCがBrdUを効率よく取り込んだことから、増殖レベルが高いことが分かる。ガラス表面で細胞が集密していた場合は、接触阻害が原因で極めてわずかなhMSCしかBrdUを取り込まなかった。硬いゲル上ではhMSCの42%がBrdUを取り込んだことから、大きな細胞集団が増殖していることが分かるが、これはガラス表面に低密度で播種した細胞と比較すると有意に低かった。一方、柔らかいゲル上では、トリパンブルー染色が認められないことから評価し細胞が生存可能であったにもかかわらず、hMSCによるBrdUの取り込みはなされなかった。さらに、マトリックス上に低密度で播種したhMSCのインキュベーションを継続するとマトリックスの剛性に応じてなる細胞密度が得られ、より硬いマトリックス上でより高い細胞密度が得られた。
このように、柔らかいマトリックスは、血清の存在下であってもhMSCの増殖を阻害する。
実施例4:柔らかいゲル上のhMSCには脂肪細胞に分化できる能力がある
材料および実験方法
脂肪細胞の分化研究
コラーゲン1型+フィブロネクチンをコーティングした96ウェルの組織培養プレートに、3.5×10個/ウェルの密度で、細胞懸濁液からのhMSCを播種した。10%FCS(成長培地、「GM」)を含有するDMEM中にて細胞を24時間インキュベートした後、Adipogenic Induction Medium(AIM)(GM、デキサメタソン1μM、インドメタシン200μM、インスリン10μg/ml、メチルイソブチルキサンチン0.5mM)で3日間(3 for days)(2細胞周期)インキュベートし、続いてAdipogenic Maintenance Medium(GM、10μg/mlのインスリン)に維持して、この細胞から脂肪細胞への分化を誘導した。AIMに切り替えた8日後、オイルレッドO染色(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)または抗PPARγ2抗体を用いるPPARγ2での免疫染色のいずれかによって、脂肪細胞分化を評価した。無作為に選択した視野で50個を超える細胞を3回カウントした。抗PPARy2抗体については、Dr. Mitchell A. Lazar, University of Pennsylvaniaから提供を受けた。
結果
柔らかいゲルでのhMSCの生存度を確認するために、これらの細胞が脂肪細胞に分化する能力を、(a)脂肪生成の重要な転写因子の1つであるペルオキシソーム増殖剤活性化受容体γ2(PPARγ2)の免疫染色、(b)脂質の蓄積を測定するためのオイルレッドO染色という2通りの方法で測定した。ウシ胎仔血清含有培地にてデキサメタソン、インドメタシン、3−イソブチル−1−メチル−キサンチン、インスリンの混合物によって、ガラス表面の集密なhMSCの脂肪細胞への分化を誘導すると、40%前後の細胞で脂肪細胞の表現型(図3A)が認められた。対照的に、柔らかいゲルでは、誘導ありの場合に分化率が80%を超え、ガラスでの場合よりも有意に高かったが、誘導なしでは脂肪細胞分化が観察されなかった。さらに、ガラスに低密度で播種したhMSCでは高レベルの増殖が認められ(図2)、脂肪細胞には分化しなかった(図3B)。これらの結果は、hMSCが最終分化の要件として細胞周期から逸脱する必要があろうことをさらに示すものである。
このように、柔らかいゲルに低密度で播種したhMSCは十分に生存可能であり、脂肪細胞分化に適している。
実施例5:硬いゲルまたは柔らかいゲルのいずれかに播種したアストロサイトのF−アクチン構造
マトリックスの剛性に対する細胞の応答をさらに特徴付けて定量化するために、細胞外マトリックスの硬さがF−アクチン構造に対しておよぼす影響をアストロサイトでも試験した。Sprague-Dawleyラット胚から、以下のようにして初代アストロサイトを単離した。時期調節して妊娠させた(timed-pregnant)Sprague-Dawleyラットから帝王切開で胚(E17〜E19)を取り出し、皮質を除去した。組織をトリプシン/DNase中にて37℃で消化し、遠心処理(1000g×5分間)し、濾過して細胞懸濁液を得た。ニューロンとグリア細胞の両方を含む培養では、細胞を支持体に直接載せた。頻回トリプシン処理する培養下で初代アストロサイト培養を14日間維持し、ニューロンを除去した。実験に用いた培養は、GFAP免疫細胞化学で求めた場合のアストロサイトが98%を超えていた。Ham’s F12(Sigma)および5%ウシ胎仔血清(Hyclone, Logan, UT)を加えたダルベッコ変法イーグル培地(BioWhittaker, East Rutherford, NJ)にて、37℃で5%COのインキュベーターで細胞を7日間成長させた後、同じく5%ウシ胎仔血清、l−グルタミン2mM、ストレプトマイシン50mcg/mL、ペニシリン50単位/mLを加えたNeurobasal(Gibco, Carlsbad, CA)でさらに5日間培養した。
硬い(11kPa)または柔らかい(150Pa)ポリアクリルアミドゲル上にて血清の存在下で細胞を48時間インキュベートし、接着および拡散できるようにした。細胞を固定し、F−アクチン構造をファロイジンで可視化した。図4に示されるように、硬いゲルに載せたアストロサイトでストレスファイバと皮質のF−アクチンが観察された。対照的に、柔らかいゲルに載せたアストロサイトでは、ストレスファイバは存在せず、皮質のアクチンシェルだけが観察された。このように、柔らかいゲル上のアストロサイトはマトリックスの可撓性を検知し、結果としてストレスファイバを呈さなかった。
実施例6:柔らかいゲル上のアストロサイトにおける低レベルのRHO GTP装填
材料および実験方法
Rhotekinプルダウンアッセイ
細胞を氷冷Tris緩衝生理食塩水で洗浄し、RIPA緩衝液(50mMのTris、pH7.2、1%Triton X-100、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS、500mMのNaCl、10mMのMgCl、各10μg/mlのロイペプチンおよびアプロチニン、1mMのPMSF)に溶解した。細胞可溶化物を4℃で10分間13000×gで遠心処理して清澄化し、同容量の可溶化物をGST−RBD(20μg)ビーズと一緒に4℃で45分間インキュベートした。ビーズを緩衝液B(1%Triton X-100、150mMのNaCl、10mMのMgCl、各10μg/mlのロイペプチンおよびアプロチニン、0.1mMのPMSFを含有するTris緩衝液)で4回洗浄した。結合したRhoタンパク質を、RhoAに対するモノクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology)を用いるウェスタンブロットで検出した。AlphaImager(商標)システム(Alpha Innotech)を用いてデンシトメトリー分析を実施した。異なる試料のRho活性(GTP結合Rhoの濃度)を比較できるよう、RBD結合Rhoの量を細胞可溶化物中のRhoの総量で正規化した。
結果
アストロサイトにおける柔らかいゲルで誘導したストレスファイバの喪失がRhoの失活と関連するのか否かを判断するために、さまざまな剛性のポリアクリルアミドゲルにアストロサイトを播種し、血清の存在下で48時間インキュベートした。細胞可溶化物を調製し、精製GST-RhotekinおよびRhotekinプルダウンアッセイを用いてRhoのGTP装填をアッセイした。GTP結合vs.総Rhoの比を計算した。柔らかいゲル上のアストロサイトではGTP結合Rhoが低レベルであった(図5)ことから、柔らかいマトリックスでアストロサイトのRho活性が減弱することで、この細胞でのストレスファイバの欠如につながることが分かる。
実施例7:黒色腫細胞は細胞外マトリックスの剛性に基づいて拡散を調節する
材料および実験方法
コラーゲン1型とフィブロネクチンの混合物でコーティングしたさまざまな剛性のマトリックスに、M2細胞を低密度で播種した。24時間のインキュベーション後、細胞の境界を追跡して細胞面積を測定した。無作為に選択した視野で30個を超える細胞を3回カウントした。
結果
形質転換細胞が細胞外マトリックスの剛性の度合いに応じて自己の挙動を調節するのか否かを試験するために、M2細胞と呼ばれるヒト黒色腫細胞系で、剛性が細胞拡散に対しておよぼす影響を測定した。図6に示されるように、M2細胞は硬い支持体ほど大きなサイズになった。このように、形質転換M2細胞には、マトリックスの機械的特性に応じて自己の挙動(細胞拡散など)を調節する能力がある。
実施例8:柔らかいゲルでの黒色腫細胞の減量
マトリックスの剛性がM2細胞集団のサイズに対しておよぼす影響を判断するために、柔らかいゲルまたは硬いゲルにM2細胞を播種(各々同数)し、1型コラーゲンとフィブロネクチンの混合物でコーティングした。血清の存在下で24時間のインキュベーション後、両方のゲルでM2細胞が完全に接着および拡散した時点で、各々の支持体に対する細胞接着効率を評価した。図7に示されるように、柔らかいゲルと硬いゲルとで接着細胞数に有意な差はなかったことから、マトリックスの剛性はM2細胞の接着に影響しないことが分かる。72時間のインキュベーション後、同数の細胞が各々の支持体に接着した(図7)が、インキュベーションが48時間延びたことで、硬いゲルに有意に大きな細胞集団が生じた(図8)。72時間のインキュベーション後、柔らかいゲルと硬いゲルとの間で培地に浮遊している細胞の数に顕著な差は認められなかった。
これらの結果は、柔らかい支持体に対するhMSCの応答を定量化する方法をさらに実証するものである。
実施例9:生存度と自己複製を減弱させることなくhMSCを長期にわたって保つ目的での柔らかいゲルの使用
材料および実験方法
1型コラーゲンとフィブロネクチンの混合物でコーティングした、G’が200Pa前後の柔らかいポリアクリルアミドゲルを、実施例1で説明したようにしてカバーガラスで調製した。ポリアクリルアミドゲルまたはガラス製カバーガラスの外での細胞接着を防止するために1%アガロースゲルで覆った6ウェルのプレートに、ポリアクリルアミドゲルを入れる。5×10 の2継代目のhMSCを、柔らかいポリアクリルアミドゲルに播種するか、1型コラーゲン+フィブロネクチンでコーティングした6ウェルの組織培養プレートに直接播種し、10%ウシ胎仔血清(FCS)加DMEMにてインキュベートする。同じhMSC試料を、10%FCSと10%ジメチルスルホキシド(DMSO)を含有するDMEMに懸濁させ、従来のプロトコールに従って液体窒素蒸気下で凍結状態に保った(Gordon SL et al, Cryobiology. 2001 Sep;43(2):182-7)。集密度90%に達した後、組織培養プレートに直接蒔いた細胞をトリプシン処理し、新しい6ウェルの組織培養プレートにて細胞5×10個/ウェルの密度で継代培養する。組織培養プレートの細胞が10継代に達するまで、これらの細胞を維持する。柔らかいポリアクリルアミドゲルに蒔いた細胞に、7日間で2回、10%FCSを加えた新鮮なDMEMを供給しなおす。組織培養プレートに維持したhMSCが10継代に達したら、液体窒素蒸気中で保存したhMSCを解凍して、細胞懸濁液を生成する。
結果
柔らかいゲルにて休眠期での長期保存対象としたhMSCの生存度を判断するために、組織培養プレートに維持したhMSCが10継代に達するまで、hMSCを柔らかいゲルで保存する。これらの細胞の生存度を液体窒素蒸気中で保存した細胞と比較する。柔らかいゲルまたは組織培養プレートのいずれかに接着した細胞をトリプシン処理する一方、液体窒素中で保存した細胞を解凍して、細胞懸濁液を生成する。細胞懸濁液のトリパンブルー染色によって生存度を判断する。このように、柔らかいゲルでの保存は、hMSCの生存度を維持する効果的な手段なのである。
柔らかいゲルでのhMSC保存長期インキュベーションの増殖能を測定するために、柔らかいゲルに維持した細胞、組織培養プレートに維持した細胞または液体窒素蒸気中で凍結状態に維持した細胞を調製し、1型コラーゲン+フィブロネクチンでコーティングした組織培養プレートに各ソースの細胞を蒔きなおし、血清およびBrdUの存在下で12時間インキュベートして、BrdU取り込みアッセイを実施する。細胞を固定し、細胞を抗BrdU抗体(Invitrogen)と一緒にインキュベートすることによってBrdUで免疫染色する。
実施例10:分化を減弱させることなくhMSCを長期にわたって保つ目的での柔らかいゲルの使用
材料および実験方法
骨芽細胞分化アッセイ
コラーゲン1型+フィブロネクチンでコーティングした96ウェルの組織培養プレートに、10継代のhMSC懸濁液を細胞10個/ウェルの密度で播種する。細胞をGMにて24時間インキュベートした後、培地を骨形成誘導培地(OIM)(GM、アスコルビン酸−2−ホスフェート50μM、p−グリセロリン酸塩10mM、デキサメタソン100nM)に切り替え、3週間にわたって3日ごとに培地を交換することで、細胞の骨芽細胞への分化を誘導する。アセトン/クエン酸塩で細胞を固定し、Fast Blue RR/ナフトール(Sigma-Aldorich、キット番号85)でアルカリホスファターゼ活性染色して、骨芽細胞分化を評価する。
結果
次に、柔らかいゲルにて休眠期での長期保存対象としたhMSCの分化能を測定する。柔らかいゲルまたは組織培養プレートで保存したhMSCをトリプシン処理し、生成(generated)懸濁液を生成する。これと平行して、液体窒素中で保持したhMSCを解凍することで、細胞懸濁液を調製する。実施例4で説明したようにして、脂肪細胞分化を評価する。
付随研究で、事前に組織培養皿に蒔いてトリプシン処理することなく、柔らかいゲルで直接hMSCをインキュベートした後、脂肪細胞の生成を測定する。
付随研究で、柔らかいゲル、組織培養プレートまたは凍結保存したものから調製した細胞懸濁液で、破骨細胞の生成を測定する。
付随研究で、事前に組織培養皿に蒔いてトリプシン処理することなく、柔らかいゲルで直接hMSCをインキュベートした後、破骨細胞の生成を測定する。
実施例11:マトリックス剛性による幹細胞成長の調節へのRhoファミリ低分子量GTP結合タンパク質およびアクトミオシン系の関与
材料および実験方法
Rhoファミリアッセイ
G’が200Pa前後のポリアクリルアミドゲル(柔らかいゲル)とG’が7500Pa前後のポリアクリルアミドゲル(硬いゲル)をカバーガラスで調製し、このゲルとカバーガラスを1型コラーゲンとフィブロネクチンの混合物でコーティングする。ポリアクリルアミドゲルまたはカバーガラスの外での細胞接着を防止するために1%アガロースゲルで覆った6ウェルのプレートに、ポリアクリルアミドゲルまたはカバーガラスを入れる。5×10個のhMSCをポリアクリルアミドゲルまたはカバーガラスに播種した後、血清の存在下で24時間インキュベートする。細胞のプルダウンアッセイを実施して、Rho、RacおよびCdc42のGTP装填レベルを調査する(それぞれの活性化アッセイキット(Upstate Biotech, Charlottesville, VA)を使用)。
優性阻害型または恒常的活性化型Rhoでの細胞のトランスフェクション
候補Rho GTPaseのcDNAをラット肝臓cDNAライブラリからクローニングし、Rhoタンパク質のD/N形態またはC/A形態を生成する変異(Qui RG et al, Proc Natl Acad Sci U S A. 1995 Dec 5 ;92(25):11781-5、Lu X et al, Curr Biol. 1996 Dec 1;6(12): 1677-84)を導入し、各々のcDNAにmyc tagコード配列を加える。変異体のRhoファミリタンパク質を発現している組換えアデノウイルスを作製し、これを用いてhMSCで変異体タンパク質を過発現させる。
結果
細胞外マトリックスに関する情報を伝達する上でのRhoファミリタンパク質の役割をさらに研究するために、柔らかいゲルまたは硬いゲルで成長させたMSCでRhoファミリタンパク質の活性をアッセイする。これらのシグナルの伝達に関与している、さらに他のRhoファミリタンパク質を同定する。
追加実験で、目的のRhoファミリタンパク質の優性阻害(D/N)または恒常的活性化(C/A)をhMSCで過発現させる。LacZを発現している組換えアデノウイルスを負の対照として利用する。柔らかいゲル、硬いゲルまたはカバーガラスからのhMSCを調製し、24時間インキュベートした後、LacZまたはRhoファミリタンパク質の変異体形態を発現するアデノウイルスに未感染または感染した状態にする。36時間のインキュベーション後、BrdUを培地に加え、血清含有培地で細胞をさらに12時間インキュベートした後、固定して、抗myc抗体(Cell Signaling Technology, Danvers, MA)および抗BrdU抗体(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いてmyc−tagおよびBrdUの両方で免疫染色する。未感染の細胞とLacZアデノウイルスに感染した細胞との間でのBrdU染色陽性の細胞数を比較することで、アデノウイルス感染自体はhMSCの成長に何ら影響しないことを確認する。BrdU取り込み陽性の細胞数をmyc−tag染色陽性の数と比較する。Rhoファミリタンパク質のC/AおよびD/Nそれぞれによって、柔らかいマトリックスで誘導した成長停止の抑制または硬いマトリックスで誘導した成長促進の抑制から、過発現したRhoファミリタンパク質がマトリックス剛性によるhMSCの成長調節に関与していることが分かる。
実施例12:マトリックス剛性による幹細胞成長の調節におけるアクトミオシンの役割を判断
特定の細胞系統に傾倒する前に柔らかいゲルでのhMSC成長を調節する上でのアクトミオシンの役割について研究するために、コラーゲン1型とフィブロネクチンの混合物でコーティングしたカバーガラスにhMSCを24時間播種した後、2,3−ブタンジオンモノオキシム(BDM)20mM、ブレビスタチン100μMまたはサイトカラシンD(CD)0.25μM/mlの存在下または非存在下にて、BrdUと一緒にさらに12時間インキュベートする。実験の間、細胞を血清の存在下にてインキュベートする。インキュベーション後、細胞を固定し、BrdUで免疫染色する。ミオシンIIをBDMまたはブレビスタチンによって阻害することあるいは、アクチン線維をCDによって破壊することがhMSCの成長に対しておよぼす影響を評価する。
実施例13:柔らかい3次元フィブリンゲルでのhMSCの成長と分化
材料および実験方法
フィブリンゲルの調製と播種
サケフィブリノゲン(Searun Holdings, Freeport, ME)をHOで再水和し、50mMのTris、150mMのNaCl、pH7.4にて3mg/mL(柔らかいゲルの場合)または18mg/mL(硬いゲルの場合)まで希釈し、400マイクロリットル(μl)のアリコートを組織培養ウェルにて2単位/mLの魚トロンビン(Searun Holdings)で重合する。3mg/mLと18mg/mLのフィブリノゲンから調製したサケフィブリンゲルの剛性は、それぞれ250Paと2150Paである。10個のhMSCを重合前に10%FCS含有DMEM中でフィブリノゲン溶液と混合し、そこで細胞を24時間インキュベートする。
結果
細胞を血清およびBrdUの存在下でさらに12時間インキュベートした後、固定してBrdU取り込みを免疫染色することで、柔らかいフィブリンゲルと硬いフィブリンゲルでのMSCの増殖解析結果を評価する。
フィブリンゲルでのhMSCの分化能を脂肪細胞分化の効率で評価する。培地を3日間Adipogenic Induction Medium(「AIM」DMEM+10%FBS、デキサメタソン1マイクロモル(mcM)、インドメタシン200mcM、インスリン10マイクログラム(mcg)/ml、メチルイソブチルキサンチン0.5mM)に切り替えた後、この細胞をAdipogenic Maintenance Medium(GM、インスリン10mg/ml)に維持することで、フィブリンゲルのMSCから脂肪細胞への分化を誘導する。Adipogenic Induction Mediumに切り替えた8日後、オイルレッドO染色または抗PPARγ2免疫染色のいずれかによって、脂肪細胞分化を評価する。オイルレッドO染色陽性またはPPARγ2染色陽性の細胞の比率を柔らかいフィブリンゲルと硬いフィブリンゲルとで比較する。
他の実験では、プロテアーゼ阻害剤をマトリックスに加えて、タンパク質分解または細胞による他の活発な再構築を防止または阻害する。
実施例14:造血幹細胞の生存度を維持する目的での本発明のhMSCの使用
コラーゲン1型+フィブロネクチンでコーティングした96ウェルの組織培養プレートに、10継代のMSC懸濁液を細胞10個/ウェルの密度で播種する。細胞をGMにて24時間インキュベートした後、上記の実施例で説明したようにして、柔らかいゲルまたはマトリックスの存在下で細胞を培養する。次に、得られる間葉系幹細胞培養を造血幹細胞培養に加え、造血幹細胞の生存度を維持する。
付随研究で、事前に組織培養皿に蒔いてトリプシン処理することなく、柔らかいゲルで直接hMSCをインキュベートする。
実施例15:ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)
概要:250Paのポリアクリルアミドゲルに1型コラーゲンとフィブロネクチンの混合物をコーティングした。コラーゲンとフィブロネクチンでコーティングされたゲルの弾性は、骨髄および脂肪組織の弾性と同等であった。これらのゲルに低密度で播種すると、血清が存在するにもかかわらずヒトMSCは細胞周期の進行を停止した。しかしながら、硬い支持体に結合すると、これらの非増殖性ヒトMSCが細胞周期に再進入した。
250Paのゲル上の非増殖性ヒトMSCも、脂肪細胞誘導培地で培養すると脂肪細胞に分化でき、硬い支持体に移して骨芽細胞誘導培地と一緒にインキュベートしたところ、骨芽細胞に分化することができた。これらの結果から、250Paのゲル上のヒトMSCは休眠状態であるが、適当な刺激を受けると増殖を再開または分化を開始する能力があることが分かる。
材料および方法
材料
骨髄由来ヒト間葉系幹細胞をCambrex(Walkersville, MD)から購入した。アクリルアミドおよびビスアクリルアミド粉末をFisher Scientific(Pittsburgh, PA)から購入した。ラット尾コラーゲン1型をBD Bioscience(San Jose, CA)から購入した。ヒトフィブロネクチンについては、当該技術分野において周知の手法で精製した。(Williams EC, Janmey PA, Ferry JD, et al., "Conformational states of fibronectin. Effects of pH, ionic strength, and collagen binding," J Biol Chem. 1982;257:14973-14978)。オイルレッドO(ORO)をSigma(St. Louis, MO)から入手した。Alizarin Red SをAlfa Aesar(Ward Hill, MA)から入手した。BrdU標識試薬をZymed(San Francisco, CA)から入手した。抗BrdU抗体およびDAPIをInvitrogen(Carlsbad, CA)から入手した。この実施例1で使用した他の化学物質はいずれも、分析グレードであった。
細胞培養
ゲルへの播種前に、組織培養プラスチックにて、D−グルコース1g/L(低グルコースDMEM)、L−グルタミン0.3mg/ml、ピルビン酸ナトリウム100mg/Lおよび10%熱失活ウシ胎仔血清を含有するダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を含む成長培地(GM)で、骨髄由来ヒト間葉系幹細胞(MSC)を維持した。脂肪細胞分化のために、脂肪細胞誘導培地(GM、デキサメタソン1μM、インドメタシン200μM、インスリン10μg/ml、3−イソブチル−1−メチルキサンチン0.5mM)で3日間、脂肪細胞維持培地(GM、インスリン10μg/ml)で1日間からなる2通りの化学的誘導サイクルに細胞を曝露した。未分化細胞をGMに維持し、3日ごとに供給しなおす。骨芽細胞分化のために、細胞を骨芽細胞誘導培地(GM、アスコルビン酸−2−ホスフェート50μm、β−グリセロリン酸10mM、デキサメタソン100nM)と一緒に24日間インキュベートした。このとき、3〜4日ごとに培地を交換した。細胞をゲル上に4.9cmあたり5×10個の密度またはガラス上に4.9cmあたり1×10個(集密)または4.9cmあたり1×10個(低密度)で蒔いた。
ゲルの調製と特性決定
当該技術分野において周知の手法を、Pelham, et al. (Pelham RJ, Jr., Wang Y., "Cell locomotion and focal adhesions are regulated by substrate flexibility," Proc Natl Acad Sci U S A. 1997;94:13661-13665)に記載されているようにして若干改変して、250Paおよび7500Paのポリアクリルアミドゲルを調製した。3.0%アクリルアミドと0.2%ビスアクリルアミドの溶液(250Paのゲル用)または7.5%アクリルアミドと0.5%ビスアクリルアミドの溶液(7500Paのゲル)を、リン酸緩衝液生理食塩水(PBS)(pH7.4)で総容量が500μlになるように調製した。N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンおよび過硫酸アンモニウムを用いて重合を開始した。150μlの滴を、事前に3−アミノプロピルトリメトキシシランおよびグルタルアルデヒドで修飾した25mmのカバーガラスに載せた。2%アクリル酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルのトルエン溶液15μlを滴に適用し、クロロシラン処理した25mmのカバーガラスを滴の上に載せ、重合完了後にこれを取り除き、得られたゲルに10〜15分ほど紫外線を照射した。このゲルを6ウェルのポリスチレン組織培養プレートに入れ、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した。6ウェルのプレートについては、ゲルまたはカバーガラスの外での細胞接着を防止するために1%アガロースゲルで事前にコーティングしておいた。ゲル上のN−スクシンイミドアクリレートを、ラット尾コラーゲン1型0.1mg/mlとヒトフィブロネクチン0.02mg/mlとの混合物と1時間反応させた。続いて、ゲルをPBSで3回洗浄し、24時間以内に細胞を播種するまでPBS中に残しておいた。カバーガラスをラット尾コラーゲン1型+ヒトフィブロネクチン溶液に1時間浸し、その表面を細胞外マトリックスリガンドでコーティングした。
レオロジー測定
ポリアクリルアミドゲルの動的剛性率(G’)を測定するために、水和チャンバにて25mmの2枚の平行鋼板間でモノマー溶液500μlを重合した。ひずみ制御型RFS III流体スペクトロメータレオメータ(Rheometrics, Piscataway, NJ)にて、振動剪断ひずみ2%、周波数10ラジアン/秒で、同位相の剪断応力から剛性率を計算した。関連の動物組織の動的剛性率(G’)についても測定した。ラットを解剖して組織を取得し、測定前の1時間未満の間、PBS中にて水和状態に保った。ウシ組織を屠殺業者から購入し、氷の上に運び、水和し、37℃まで温めた上で、測定を実施した。直径8mmで厚さ2mmのラット組織由来の水和試料と、直径25mmで厚さ2mmのウシ組織由来の水和試料の動的剛性率(G’)を、試料に合う幾何学的形状のパラレルプレートを用いて、振動剪断ひずみ2%、周波数10ラジアン/秒で、37℃で測定した。各組織について3つの試料を測定した。
準3Dゲルシステム
Beningoらに記載されている方法を、後述するように、支持体の弾性、ECM層の組成、細胞をカバーガラスに近接させるために用いるおもりを変更するために改変して用いて、細胞の三次元環境を模するように設計された支持体サンドイッチを作製した。(Beningo KA, Dembo M, Wang YL, "Responses of fibroblasts to anchorage of dorsal extracellular matrix receptors," Proc Natl Acad Sci U S A. 2004; 101: 18024-18029)。25mmのゲルに細胞を播種し、48時間かけて定着させた。余分な培地を除去し、播種したゲルの上に第2のカバーガラス(底側に250Paのポリアクリルアミドゲルを用いる場合と用いない場合)を載せた。第2のカバーガラスの底側に、上述したコラーゲン1型とフィブロネクチンの混合物をコーティングした。細胞を第2のカバーガラスと近接させるために、滅菌した35グラムのおもりをサンドイッチの上に30秒間載せた。おもりを除去した後、培地を再導入し、細胞を2日間サンドイッチに保った。上側のカバーガラスを適用する前と2日後とに、細胞をすみやかに画像化した。
画像化
当該技術分野において周知の手法で免疫染色を実施した。(Funaki M, Randhawa P, Janmey PA, "Separation of insulin signaling into distinct GLUT4 translocation and activation steps," Mol Cell Biol. 2004;24:7567-7577)。ShaoおよびLazar(Shao D, Lazar MA, "Peroxisome proliferator activated receptor gamma, CCAAT/enhancer-binding protein alpha, and cell cycle status regulate the commitment to adipocyte differentiation," J Biol Chem. 1997;272:21473-21478)に記載されているようにして、2サイクルの脂肪生成誘導後または成長培地で8日間経過後に、脂肪酸を豊富に含むベシクルをOROで染色した。骨芽細胞誘導培地で24日経過後に、カルシウムを豊富に含む細胞外マトリックスを、製造業者の指示に従ってアリザリンレッドSで染色した。細胞をBrdU含有培地で一晩インキュベートして、BrdU取り込みを測定した。細胞を固定し、製造業者の指示に従ってBrdUおよびDAPIの両方で染色した。いずれの場合も、Hamamatsu ORCAカメラ(浜松、日本)を用いてLeica DM-IRBE顕微鏡(Wetzlar, Germany)で細胞を画像化した。
投影された細胞面積を、ファロイジン染色の画像を用いて測定した。画像を8ビットに変換し、閾値処理した(thresholded)。Image Jソフトウェア(NIH, Bethesda, MD)を用いて粒度を分析した。細胞をDAPIでも染色し、その細胞がオーバーラップしていないことを確認した。単離した細胞だけをカウントした。
骨髄でレオロジー試験を実施し、休眠状態のヒトMSCの蓄積を維持する上での支持体コンプライアンスの役割を研究するのに適したゲルの弾性を判断した。以下の表3に示されるように、ウシ骨髄の振動貯蔵弾性率(G’)は220Paであった。脂肪組織のG’も測定し、ヒトMSCの脂肪生成において支持体の硬さが果たす役割について調査した。ラット脂肪組織のG’は若干低めで、150Pa前後であった。ラットの内臓脂肪と皮下脂肪のG’間に統計差は認められなかった。3.0%アクリルアミドおよび0.1%ビスアクリルアミドのポリアクリルアミド支持体溶液を採用し、細胞の自然な環境の弾性を模した。このポリアクリルアミド溶液は、重合後のG’が250±25Paであるが、これはラットおよびウシの組織での実測G’値に近い。実験によっては、貯蔵弾性率が7500±250Pa(筋肉組織のものに近い)の第2の支持体を対照として用いた。(Engler AJ, Griffin MA, Sen S, et al., "Myotubes differentiate optimally on substrates with tissue-like stiffness: pathological implications for soft or stiff microenvironments," J Cell Biol. 2004; 166:877-887)。
Figure 0005737936
図9A〜図9Iは、250Pa(図9、図9D、図9H)、7500Pa(図9B、図9E、図9I)、ガラス(図9C、9Fおよび9J)の支持体での初期プレーティング密度2000個/cmでのヒトMSCの画像を示す。図9A〜9Cに示されるように、コラーゲンI型およびフィブロネクチンでコーティングした支持体に細胞を蒔き、成長培地(GM)での24時間のインキュベーション後に同位相コントラストモードで画像化した。矢印は細胞の場所を示す。図9D〜図1Fは、GMにて7日間のインキュベーション後の同じ場所での画像を示す。画像化時には、細胞を37℃に保った。2つの独立した実験で得られた代表的な画像を示す。図9H〜図9Jに示されるように、播種の2日後にヒトMSCのF−アクチンをフルオレセインイソチオシアネート(FITC)ファロイジンで標識した。また、平均投影面積±標準偏差についても報告する。条件ごとに、無作為に選択した7視野で少なくとも40個の細胞をカウントした。図9A〜図9Fの目盛り線は900μmであり、図9G〜図9Iの目盛り線は20μmである。
フィブロネクチンとコラーゲンIの混合物でコーティングした250Paゲルで2日間経過後、図9Aおよび図9Gに示されるように、ヒトMSCは乱れたF−アクチン細胞骨格を持つ比較的小さな丸い形態を有していた。ヒトMSCは平均投影細胞面積がわずか650±250μmであり、同じ接着タンパク質をコーティングしたガラスで測定された拡散面積3500±1100μmよりも有意に小さかった。250Paのゲル上の線維芽細胞、内皮細胞、アストロサイトでも同様の表現型が観察された。(Yeung T, Georges PC, Flanagan LA, et al., "Effects of substrate stiffness on cell morphology, cytoskeletal structure, and adhesion," Cell Motil Cytoskeleton. 2005;60:24-34;Pelham RJ, Jr., Wang Y, "Cell locomotion and focal adhesions are regulated by substrate flexibility," Proc Natl Acad Sci U S A. 1997;94: 13661-13665;Georges PC, Miller WJ, Meaney DF, et al., "Matrices with compliance comparable to that of brain tissue select neuronal over glial growth in mixed cortical cultures," Biophysical Journal. 2006;90:3012-3018)。培養時間を7日間まで延長すると、対応するマトリックスへの接着を強めて拡散しはじめた細胞があった。しかしながら、図1Dに示されるように、細胞数が目に見えて増加することはなかった。このように、柔らかいゲルによって骨髄由来ヒトMSCの丸い形状が誘導され、F−アクチンと細胞周期の停止を乱された。
対照的に、2日間にわたって7500Paのゲル上に維持されたヒトMSCは部分的に拡散し、投影細胞面積は2600±1500μmであった。図9Bおよび図9Eに示されるように、ヒトMSCではいくらかのアクチン構築が認められるが、ストレスファイバはわずかしかなかった。7日後、ヒトMSCの数が明らかに増加した。図9Hに示されるように、細胞同士の接触時にますます拡散するようになった。図9C、図9F、図9Iに示されるように、ガラス上のヒトMSCは拡散の形態を呈し、ストレスファイバが豊富で、短時間で増殖した。
ヒトMSCの増殖挙動をマトリックスの弾性によって変えることができるか否かを調査するために、図10に示されるようにさまざまな支持体上で培養した細胞で5−ブロモ−2’−デオキシウリジン5’−トリホスフェート(BrdU)取り込みアッセイを実施した。図10は、試験でのBrdU取り込みが陽性であった細胞(多様なコンプライアンスの支持体でBrdUを用いてのインキュベーション期間中に増殖した細胞である)の比率を示している。細胞を48時間かけて支持体に蒔いた上で、この細胞をBrdU含有培地にて一晩インキュベートした。血清を24時間で欠乏させた上で無血清培地にBrdUを加えたガラス(集密)以外は、期間中をとおして細胞を血清含有培地に保った。細胞の核を抗BrdUで染色し、核を4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)で対比染色した。各々の支持体で少なくとも50個のDAPI陽性細胞のBrdU染色を調べ、データを3回の独立した実験の平均+SE(標準誤差)で表したところ、p<0.01で統計的有意性が確認された。
BrdUを用いて一晩のインキュベーション後、250Paのゲルに接着しているヒトMSCには事実上BrdUが取り込まれなかった。このように、血清が存在するにもかかわらず、DNA複製が抑制された。(DNAの複製は、ヒトMSCの細胞分裂での必要な工程である)。7500Paのゲルで、細胞の半分前後が24時間以内に自己のDNAを複製した。ガラスに低密度で播種すると、80%を超える細胞に核BrdU染色が認められた。これらの結果は、支持体コンプライアンスがヒトMSCでの細胞周期の進行に有意に影響し得ることを暗に意味するものである。
柔らかい支持体でのヒトMSCの生存度に害がおよんだことは、血清が存在するにもかかわらず、250Paのゲルで細胞が寄せ集まって増殖を中断したという観察結果を説明し得るものである。しかしながら、250PaのゲルではヒトMSCにトリパンブルーが取り込まれなかったことから、これらの細胞が死んでいないことが分かる。柔らかいゲルで誘導した細胞周期の停止が可逆性であるか否かを判断するために、図11A〜図11Dに示されるように、細胞を準3D環境においた。図11A〜図11Dは、準3D環境が幹細胞の形状および増殖に対しておよぼす影響を示すものである。細胞を250Paのゲルに播種し、血清含有培地に2日間経過後に画像化した(図11Aおよび図11B)。2日目に、別の250Paのゲル(図11C)またはカバーガラス(図11D)のいずれかの上側の支持体を用いて、細胞を準3D環境に挟んだ。2日後、同じ場所で細胞を再度画像化した。図11A〜図11Dにおいて、目盛り線は100μmである。
底側のゲルと同じマトリックスリガンドで各々をコーティングした250Paのゲルまたはカバーガラスを、250Paのゲルにて丸い非増殖ヒトMSCの上に載せた。250Paの2つのゲルに挟まれた細胞は、丸いまま残るか若干拡散した。図11Cに示されるように、これらの細胞数のはっきりとした増加は観察されなかった。他方、図11Dに示されるように、一番上でガラス製のカバーガラスと対向している細胞は増殖し、紡錘形になった。ヒトMSCは、上側のガラス表面にしっかりと接着されると、柔らかい支持体から剥がれた。このように、250Paのゲル上のヒトMSCは、これよりも硬い支持体からの機械的な信号を受けたときに増殖を再開できるだけの能力があった。
250PaのゲルにおけるヒトMSCの一時的な成長停止は、これらの細胞が分化できるのか否かという問題を提起するものである。分化は、細胞系統が制限された表現型の発現や成長停止を含めて、非常によく調整された一連のイベントによって達成される。ヒトMSCの分化する系統が支持体の弾性によって特定されることが報告されている。(Engler AJ, Sen S, Sweeney HL, Discher DE, "Matrix elasticity directs stem cell lineage specification," Cell. 2006 Aug 25;126(4):677-89)。脂肪組織の弾性に匹敵する弾性250Paのゲルで、ヒトMSCの脂肪細胞の分化を試験した。
さまざまな硬さのマトリックス上の細胞を脂肪細胞分化培地で処理すると、自らの核にBrdUを取り込んだ細胞の比率と、ORO染色で検出される脂質滴の蓄積が生じた細胞の比率との間に、反比例の関係があった。
図12Aおよび図12Bは、脂肪生成誘導培地に対するヒトMSCの応答を示すものである。図12Aは、ヒトMSCでの脂質の蓄積に対するオイルレッドO(ORO)染色を示す。250Pa、7500Paまたはガラス製の支持体の上に細胞を播種し、成長培地で8日間おく(−)か、あるいは脂肪生成誘導を2サイクル(+)実施した。図12Bは、250Paのゲル(●)またはガラス(■)での化学的分化因子に対するヒトMSCの用量応答を示す。細胞をゲルには2,000個/cmの密度、ガラスには20,000個/cmの密度で播種した。各々の支持体で少なくとも50個の細胞をカウントした。図12Aおよび図12Bのデータを、3回の独立した実験の平均±SEとして表したところ、統計的に有意である(p<0.02)。実験AおよびBを異なるバッチのヒトMSCで実施した。
図12Aに示されるように、250Paのゲルに低密度で播種した細胞の75%前後で脂質滴が蓄積されたのに対し、7500Paのゲルに低密度で播種した細胞では20%前後しかなく、カバーガラスに低密度で播種した細胞の2%が脂質滴を蓄積して脂肪細胞分化培地に応答した。特に、250Paのゲル上のヒトMSCは、脂肪細胞分化培地でのインキュベーションがなければ脂質滴を蓄積しなかった。これらの結果から、柔らかいマトリックスがヒトMSCの脂肪細胞分化を促進することが分かる。
ヒトMSCの脂肪細胞分化は一般に、ガラス上に集密な単層膜培養を誘導することで達成される。しかしながら、誘導培地で8日経過後、ガラス上の集密細胞よりも柔らかいゲルで誘導した低密度の細胞のほうで高い比率の分化が観察された。柔らかいゲルからの機械的なシグナルが化学的に誘導した脂肪生成をどのようにして促進するのかをさらに判断するために、(1)250Paのゲルに低密度で播種、(2)ガラス製カバースリップに密に播種するという2通りの環境で成長停止を誘導することで、250Paのゲルでの脂肪細胞分化培地に対するヒトMSCの感度を試験した。化学的誘導因子の濃度減少に応じた2通りの条件での脂肪細胞分化率を比較した。図12Bに示されるように、脂肪生成因子の濃度が低下するにつれて、250Paのゲル上のヒトMSCがガラス製カバースリップ上のヒトMSCの応答と同様の応答を呈した。250Paのゲルで培養することで、低密度で播種したヒトMSCが脂肪細胞分化できるようになったが、この環境は、脂肪細胞分化培地に対するヒトMSCの感度には影響しなかった。
250Paのゲルでの成長を停止したヒトMSCの効率的な脂肪細胞分化は、これらの非増殖細胞が休眠状態の幹細胞のままでいるのではなく、前脂肪細胞に分化して脂肪生成系統を開始できる可能性を高めるものである。これらの細胞が休眠状態の幹細胞であるか分化した前脂肪細胞であるかを判断するために、ヒトMSCを柔らかいゲルに2日間低密度で播種し、上述した準3Dの方法を用いてガラス製カバースリップに移し、最後に骨芽細胞誘導培地で24日間培養した。(上述したように、接触時に硬い支持体に移った250Paのゲル上の細胞は増殖を再開し、組織培養プラスチックでのヒトMSCに典型的な紡錘状の表現型を得た)。
図13Aおよび図13Bは、骨誘導培地での刺激後にアリザリンレッドSで可視化したカルシウム沈着を示す。図13Aに示されるように、細胞を柔らかいゲルで2日間培養した後、準3Dの方法を用いてガラス製カバースリップに移し、さらに骨誘導培地で24日間インキュベートした。図13Bに示されるように、ヒトMSCをガラス製カバースリップ上で骨誘導培地にて24日間培養した。図13Aおよび図13Bにおいて、目盛り線は200μmである。
骨芽細胞誘導培地で24日間経過後、カルシウムを豊富に含む細胞外マトリックスは培養皿で明らかに目に見え、図13Aに示されるようにアリザリンレッドS陽性に染色された。マトリックスのミネラル化が後期の骨芽細胞分化マーカーである(Kundu AK, Putnam AJ, "Vitronectin and collagen I differentially regulate osteogenesis in mesenchymal stem cells," Biochem Biophys Res Commun 2006,347 347-357)。
比較のために、柔らかいゲルで一度も培養しなかった細胞をガラス製カバースリップに播種し、骨芽細胞誘導培地で同じ長さの時間をかけて処理した。予想どおり、これらの支持体も図13Bに示されるようにカルシウム沈着では陽性に染色された。骨芽細胞誘導培地での刺激をせずにおくと、どちらの条件でもアリザリンレッドSで染色される細胞外マトリックスは得られなかった。これらの結果から、250Paのゲル上のヒトMSCが自己の多分化能力を維持していることが分かる。したがって、これらの結果から、柔らかいゲルに播種したヒトMSCは分化せずに幹細胞として休眠状態のまま残ることが確認される。

Claims (8)

  1. 体外で体性幹細胞における休眠状態を誘導又は維持するための方法であって、
    体性幹細胞の膜上にあるインテグリンに結合する接着分子でコーティングされたゲル又はゲルマトリックスであって、200〜250Paの範囲にある剛性を有するゲル又はゲルマトリックスに、前記体性幹細胞を接触させる工程と、
    前記体性幹細胞に栄養物質を与える工程とを含む、体外で体性幹細胞における休眠状態を誘導又は維持するための方法。
  2. 前記ゲル又はゲルマトリックスが、2次元又は3次元である、請求項に記載の方法。
  3. 前記体性幹細胞が、間葉系幹細胞(MSC)である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記接触工程前に前記体性幹細胞が休眠状態にない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 体外で体性幹細胞に増殖を誘導するための方法であって、
    請求項に記載の方法を実施して、休眠状態が誘導又は維持され体性幹細胞を得る工程と、
    体性幹細胞の表面のインテグリンに接着する接着分子でコーティングされたゲル又はゲルマトリックスであって、7500Paの剛性を有するゲル又はゲルマトリックスを含む増殖誘導材料に、前記体性幹細胞を体外で接触させる工程と、
    細胞増殖を促進するために栄養・成長物質を供給する工程と、を含む、体外で体性幹細胞に増殖を誘導するための方法。
  6. 体外で体性幹細胞に分化を誘導するための方法であって、
    請求項に記載の方法を実施して、休眠状態が誘導又は維持され体性幹細胞を得る工程又は請求項に記載の方法を実施して、増殖している体性幹細胞を得る工程と、
    脂肪細胞誘導培地、骨形成誘導培地又はガラスと前記体性幹細胞とを接触させる工程と、
    前記分化細胞に分化細胞用栄養物質を供給する工程と、を含む、方法。
  7. 前記体性幹細胞が、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞であり、前記分化細胞が、骨芽細胞又は脂肪細胞である、請求項に記載の方法。
  8. 前記体性幹細胞が、骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)、腎幹細胞、肝幹細胞、骨格筋由来幹細胞、骨由来幹細胞、
    歯髄MSC、心筋由来MSC、滑液由来MSC、臍帯MSC、
    及び脂肪由来MSCからなる群から選択される、請求項に記載の方法。
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