以下、図1乃至14を用いて、本発明の実施形態の一例について説明する。本実施形態の粒子の製造方法は、圧縮性流体と、結晶性ポリエステル樹脂とを接触させて、結晶性ポリエステル樹脂の溶融体を作製する溶融工程と、この溶融体を、振動させた貫通孔から吐出させて粒状とする造粒工程と、を有する
<結晶性ポリエステル樹脂>
まず、本実施形態の粒子の製造方法に用いられる結晶性ポリエステル樹脂について説明する。ここで、ポリエステル樹脂の結晶性はDSC(Differential scanning calorimetry)測定において融点が存在することで確認できる。融点の測定法を以下に示す。
装置:DSC(TAインスツルメンツ社製、Q2000)
試料5〜10mgをアルミ製の簡易密閉パンに充填したものを以下の測定フローに供した。
1st Heating:30℃〜220℃、5℃/min.、220℃到達後1分保持
冷却: 温度制御なしで−20℃までクエンチ、−20℃到達後1分保持
2nd Heating:−20℃〜180℃、5℃/min.
この2度目の昇温過程での−20℃〜180℃の範囲におけるDSC曲線の最大の吸熱ピークを、結晶性ポリエステルの融点とした。
この結晶性ポリエステル樹脂としては、アルコール成分及びこれらの誘導体と酸成分及びこれらの誘導体とを用いて合成される結晶性ポリエステル樹脂が挙げられる。このアルコール成分としては、炭素数2〜6のジオール化合物、特に、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及びこれらの誘導体の含有量が80モル%以上、好ましくは85〜100モル%含有するものが好適に用いられる。酸成分としては、フマル酸、二重結合(C=C結合)を有するカルボン酸等が挙げられる。ここで結晶性ポリエステル樹脂の構造式は、下記一般式(1)で表されるものであることが好ましい。
(ここで、nは、繰り返し単位数であり、繰り返し単位の数である。lは1〜3の整数である。R
1、R
2は水素原子又は炭化水素基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
結晶性ポリエステル樹脂の結晶性および軟化点を制御する方法としては、ポリエステル樹脂のアルコール成分に3価以上の多価アルコールや、酸成分に3価以上の多価カルボン酸を用いて縮重合を行い、非線状ポリエステルとする方法等が挙げられる。ここで、3価以上の多価アルコールとしては、グリセリン等が挙げられる。3価以上の多価カルボン酸としては、無水トリメリット酸等が挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液や固体による核磁気共鳴(NMR)測定の他、X線回折、ガスクロマトグラフ(GC/MS)、液体クロマトグラフ(LC/MS)、赤外吸収(IR)測定等により確認される。特に、分子構造はIRスペクトルによって分子構造は簡便に測定される。この場合、一例として、965±10cm−1もしくは990±10cm−1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有する結晶性ポリエステル樹脂が好適に用いられる。
結晶性ポリエステル樹脂の分子量は、鋭意検討した結果、低温定着性に優れるという観点から、分子量分布がシャープで低分子量のものが好ましい。この場合、オルトジクロロベンゼンの可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量(M)分布の測定においてで、横軸をlog(M)、縦軸を質量%で表した分子量分布図のピーク位置が3.5〜4.0の範囲にあり、ピークの半値幅が1.5以下であり、重量平均分子量(Mw)が1000〜30000、数平均分子量(Mn)が500〜6000、Mw/Mnが2〜8であることが好ましい。分子量がこれより小さいとバインダー樹脂としての性質が十分に得られず、また、分子量がこれより大きかったり、分子量分布が広いとシャープメルト性が悪化するため、良好な定着性が得られなくなる場合がある。
結晶性ポリエステル樹脂の融解温度およびF1/2温度については耐熱保存性が悪化しない範囲で低いことが望ましく、好ましくはDSC吸熱ピーク温度が50〜150℃である。ここで、F1/2温度は、高架式フローテスターCFT−500(島津製作所製)を用い、ダイス径1mm、加圧10kg/cm2、昇温速度3℃/minの条件下で1cm2の試料を溶融流出させた時の流出開始点から流出終了点までの1/2に相当する温度により測定される。融解温度およびF1/2温度が50℃以下の場合は耐熱保存性が悪化し、現像装置内部の熱でブロッキングが発生しやすくなる。融解温度およびF1/2温度が150℃以上の場合には定着下限温度が高くなるため低温定着性が得られなくなる。
結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、紙と樹脂との親和性の観点から、目的とする低温定着性を達成するために、5mgKOH/g以上が好ましく、10mgKOH/g以上がより好ましい。また、結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、ホットオフセット性を向上させるために、45mgKOH/g以下が好ましい。更に、結晶性ポリエステル樹脂の水酸基価については、低温定着性を達成し、かつ良好な帯電特性を達成するためには0KOH/g以上50mgKOH/g以下が好ましく、5KOH/g以上50mgKOH/g以下がより好ましい。
本実施形態において、結晶性ポリエステルは圧可塑性材料であることが好ましい。本実施形態において、圧可塑性材料とは、圧力を加えることによりガラス転移温度(Tg)が低下する性質を有する材料であり、より具体的には、熱を加えなくても圧力を加えることにより可塑化する材料を意味する。圧可塑性材料は、例えば、圧縮性流体と接触させることによって圧力を加えると、この圧可塑性材料の大気圧でのガラス転移温度より低い温度で可塑化する。
圧可塑性材料について図1を用いてより詳細に説明する。図1は、圧可塑性材料のガラス転移温度(縦軸)と、圧縮性流体である二酸化炭素の存在下での圧力(横軸)の関係を示す図である。図1に示すように、圧可塑性材料のガラス転移温度と、圧力とは、相関関係があり、その傾きは負である。このように、ある材料についてガラス転移温度と圧力との関係を示すグラフの傾きが負である場合に、この材料が圧可塑性材料と言うことができる。この傾きは、圧可塑性材料の種類、組成、分子量等によって異なる。例えば、本実施形態で用いられる結晶性ポリエステルの場合、この傾きは−2℃/MPaであった。この傾きとしては、−1℃/MPa以下であることが好ましく、−5℃/MPa以下であることがより好ましく、この傾きの下限に制限はない。また、この傾きが−1℃/MPaより大きい場合には、圧力を付加しても圧可塑性材料の可塑化が不充分となり、低粘度化できないため、造粒できないといった不具合が発生することがある。
<<圧縮性流体>>
次に、図2及び図3を用いて本実施形態の粒子の製造方法で用いられる圧縮性流体について説明する。図2は、温度と圧力に対する物質の状態を示す一般的な相図である。図3は、本実施形態において圧縮性流体の範囲を定義するための相図である。
本実施形態において、圧縮性流体とは、物質が、図2で表される相図の中で、図3に示す(1)、(2)、(3)の何れかの領域に存在するときの状態を意味する。このような領域においては、物質はその密度が非常に高い状態となり、常温常圧時とは異なる挙動を示すことが知られている。なお、物質が(1)の領域に存在する場合には超臨界流体となる。超臨界流体とは、気体と液体とが共存できる限界(臨界点)を超えた温度・圧力領域において非凝縮性高密度流体として存在し、圧縮しても凝縮を起こさず、臨界温度以上かつ臨界圧力(Pc)以上の状態にある流体のことである。また、物質が(2)の領域に存在する場合には液体となるが、本実施形態においては、常温(25℃)、常圧(1気圧)において気体状態である物質を圧縮して得られた液化ガスを表す。また、物質が(3)の領域に存在する場合には気体状態であるが、本実施形態においては、圧力が1/2Pc以上の高圧ガスを表す。尚、圧縮性流体が二酸化炭素の場合には、3.7MPa以上の圧力が必要であり、5MPa以上が好ましく、より好ましくは臨界圧力の7.4MPa以上である。
圧縮性流体としては、圧力を付与した状態で流体となるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、超臨界流体、亜臨界流体、液化流体等が挙げられる。具体的には、超臨界二酸化炭素、液化二酸化炭素、メタンガス、超臨界メタン、エタンガス、超臨界エタン、超臨界プロパン、液化プロパン、プロパンガス、超臨界ブタン、液化ブタン、ブタンガスなどを例に挙げることができる。中でも、二酸化炭素を含むもの、例えば、超臨界二酸化炭素、亜臨界二酸化炭素、液化二酸化炭素、などが好ましい。また、これら群から選ばれる1種以上のものを混合した高圧ガス、超臨界流体であってもよい。
本実施形態において、超臨界流体とは、気体と液体の中間的な性質を持ち、物質移動や熱移動が早く、粘度が低いなどの性質を有すると共に、温度、圧力を変化させことによって、その密度、誘電率、溶解度パラメータ、自由体積などを連続的に大きく変化させることができる流体を意味する。この超臨界流体は、有機溶媒と比べて極めて界面張力が小さいため、微少な起伏(表面)であっても追随し、超臨界流体で濡らすことができる。
また、超臨界流体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、臨界温度、臨界圧力が低いものが好ましい。また、上記の亜臨界流体としては、臨界点近傍の温度及び圧力領域において高圧液体や高圧ガスとして存在する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
このような超臨界流体又は亜臨界流体としては、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化二窒素、アンモニア、窒素、メタン、エタン、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソブタン、クロロトリフロロメタン、などが挙げられる。これらの中でも、二酸化炭素は、臨界圧力7.3MPa、臨界温度31℃と容易に超臨界状態をつくり出せると共に、不燃性で安全性が高く、後述するトナーの製造方法において、非水系溶媒なので疎水性表面のトナーが得られ、また常圧に戻すだけでガス化するため回収再利用も容易であり、得られた粒子について乾燥が不要であり、廃液も発生せず、残留モノマーも含有しない点から好ましい。
このような超臨界流体又は亜臨界流体としては、1種単独で単体として使用してもよいし、2種以上を併用して混合物として使用してもよい。また、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等の有機溶媒をエントレーナー(助溶剤)として添加して用いてもよい。
上記の液化流体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液化二酸化炭素、液化メタン、液化エタン、液化プロパン、液化ブタンなどが挙げられる。これらの中でも、液化二酸化炭素が、不燃性で安全性が高い点から好ましい。この液化流体は、1種単独で単体として使用しても良いし、2種以上を併用して混合物として使用しても良い。
これらの圧縮性流体は、目的生成物との分離も容易であり、回収再利用ができることから、圧縮性流体を用いることにより、従来の水や有機溶媒を使用しない低環境負荷の画期的な粒子の製造方法を実現できる。
<<粒子製造装置>>
続いて、本実施形態の粒子の製造方法に用いられる粒子製造装置について説明する。図4は、本実施形態の粒子の製造方法に用いられる粒子製造装置1の一例を示す模式図である。粒子製造装置1は、圧縮性流体と圧可塑性材料とを接触させて作製された圧可塑性材料の溶融体を供給するための溶融体供給手段16と、この溶融体を吐出するための吐出装置31と、吐出装置31から吐出した溶融体が粒状化するための空間を有する粒状体形成部331と、を備える。溶融体供給手段16には、超高圧管等によって接続されて第1の経路を構成するボンベ11、ポンプ12a、12b、バルブ13a、温度調節器付き高圧セル14、及び背圧弁15が設けられている。また、粒状体形成部331には、超高圧管等によって接続されて第2の経路を構成する圧力制御手段26(ボンベ21、ポンプ22、バルブ23、供給部24)が設けられている。また、吐出装置31には、信号発生装置320、貫通孔317が設けられている。
次に、溶融体供給手段16について説明する。第1の経路上に設置された、ボンベ11は温度調節器付き高圧セル14(以後、「高圧セル14」という。)内で圧縮性流体となる物質(二酸化炭素等)を貯蔵し供給するための耐圧容器である。尚、貯蔵される物質は、高圧セル14内で温調されて圧縮性流体となるものであれば気体や液体等の状態であっても良い。また、ボンベ11に貯蔵される物質としては、コスト、安全性の理由により、空気、窒素、二酸化炭素が好ましく、二酸化炭素がより好ましい。ポンプ12aは、ボンベ11に貯蔵された物質に圧力を加えて送り出す装置である。バルブ13aは、ポンプ12aと高圧セル14との間の経路を開閉して流量を調整したり遮断したりするための装置である。
高圧セル14は、バルブ13aを介して供給された物質を加熱して圧縮性流体に変えたり、この圧縮性流体と別途供給された圧可塑性材料とを接触させて、圧可塑性材料の溶融体を作製するための装置である。高圧セル14には背圧弁15が取り付けられており、これを開閉することにより高圧セル14内の圧力を調整することができる。また、高圧セル14には攪拌装置が取り付けられていても良く、これにより圧縮性流体と可塑化された圧可塑性材料とを攪拌して混合することができる。
ポンプ12bは、高圧セル14内の溶融体に圧力を加えて送り出す装置である。バルブ13bは、ポンプ12bと吐出装置31との間の経路を開閉して溶融体の流量を調整したり遮断したりするための装置である。貫通孔317は第1の経路から送り込まれた溶融体を吐出するための貫通した空間である。
粒子製造装置1の第2の経路上に設置された、ボンベ21は気体、液体等の第2の圧縮性流体を貯蔵し供給するための耐圧容器である。ボンベ21に貯蔵される圧縮性流体としては、コスト、安全性の理由により、空気、窒素、二酸化炭素が好ましく、二酸化炭素がより好ましい。ポンプ22は、ボンベ21に貯蔵された圧縮性流体に圧力を加えて送り出す装置である。バルブ23は、ポンプ22と吐出装置37との間の圧縮性流体の経路を開閉して流量を調整したり遮断したりするための装置である。尚、第2の経路から供給される圧縮性流体は、ジュール・トムソン効果により吐出装置31内で冷却されることになることから、ヒータ等により充分に加熱されて超臨界流体の状態となっていることが好ましい。
次に、図5を用いて吐出装置31及び粒状体形成部331について説明する。図5は、吐出装置31及び粒状体形成部331の一例を示す模式図である。尚、ここでは、結晶性ポリエステル樹脂を吐出する装置の一例としての吐出装置31について説明するが、結晶性ポリエステル樹脂粒子を吐出可能な装置であれば、特に制限はなく、適宜選択して使用することができる。吐出装置31は、少なくとも結晶性ポリエステル樹脂の溶融体を貯留するための貯留部311と、貯留部311を構成する壁の一部に形成された1以上の貫通孔317と、貫通孔317に振動を付与するために貯留部311に接するように配置された振動手段312と、振動手段312と導電線321で接続された信号発生装置320と、振動手段312を保持する支持手段313と、を有する。これにより、吐出装置31は、図4に示すバルブ13bを介して貯留部311へ定量的に供給された結晶性ポリエステル樹脂の溶融体が、所定の貫通孔より粒状体形成部331に定量的に吐出する。また、吐出装置31には、1つの振動手段312に対して、貫通孔317が1以上配置されている。振動手段312は、貫通孔317に振動を付与するために貯留部311に接するように配置されている。このような装置構成にすることで、振動手段312を常圧環境下に設置したままで、外部から貯留部311、貫通孔317を励振することができる。即ち、特別な振動手段を用いることなく高圧流体を粒状体に分裂させることができる。
好ましい吐出装置31としては、例えば、図5に示すように、貫通孔317より吐出される結晶性ポリエステル樹脂の溶融体を貯留部311へ定量的に供給するための溶融体供給手段16を有する装置が挙げられる。以下、各部手段についてさらに詳述する。
(貯留部)
貯留部311や貯留部311に接続する配管は、溶融体を高圧に加圧された状態において保持する必要があるため、SUS(ステンレス鋼)などの金属部材からなり、耐圧性が少なくとも30MPa程度であることが望ましい。貯留部311は、溶融体を供給する配管318で接続され、貫通孔317を有する板を保持する機構319を設けた構造が望ましい。また、貯留部311全体を振動させる振動手段312が、貯留部311には接している。振動手段312には信号発生装置320と導電線321によって接続され、信号発生装置320が発生させた信号により振動が制御される形態が望ましい。内部の圧力を調整するため、貯留部311には開放弁322が設けられていることが柱状の溶融体(柱状体)の安定形成を行う上で好ましい。
(振動手段)
振動付与の均一性の点から、貫通孔317を含む貯留部311の全体は一つの振動手段312により、励振されることが好ましい。貯留部311に振動を与える振動手段312としては、確実な振動を、好ましくは一定の振動数(周波数とも言う)で与えることができるものであれば特に制限はなく、適宜選択して使用することができる。振動手段312としては、上述の観点から好ましくは、伸縮によって貫通孔を一定の周波数で振動させるため、圧電体が好ましい。
この圧電体は、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換する機能を有する。具体的には、電圧を印加することにより、伸縮し、この伸縮により、貫通孔を振動させることができる。圧電体の種類としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスが挙げられるが、一般に変位量が小さい為、積層して使用されることが多い。この他にも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電高分子や、水晶、LiNbO3、LiTaO3、KNbO3、等の単結晶、等が挙げられる。
圧電体に与える信号の周波数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20kHz乃至10MHzが好ましく、極めて均一な粒子径を有する微小の溶融体粒子(「粒状体」という)を発生させる観点から、50kHz乃至1MHzがより好ましい。20KHz以下では生産性が低下する傾向があり、1MHz以上では粒径制御性が低下する傾向がある。
振動手段312は、貯留部311と接し、この貯留部311には貫通孔317を有する板が保持されている。振動手段312と貫通孔317が形成された貯留部311の構成壁とは、貫通孔317から吐出される柱状体に振動を均一に与える観点から、平行に配置されていることが最も好ましく、振動の過程における変形が起こっても、その関係は傾きが10°以内に保たれることが望ましい。また、更なる生産性の向上の観点から、振動手段312を有する貯留部311も複数設けることが、より好ましい。
支持手段313は、吐出装置31に貯留部311及び振動手段312を固定するために設けられており、材質に限定は特に無いが、金属などの剛体であればよい。必要によっては余分な共振による貯留部の振動の乱れを発生させないために、振動緩和材としてのゴム材、樹脂材などが一部に設けられていても良い。
(貫通孔)
貫通孔317は第1の経路から送り込まれた溶融体を柱状に吐出するための貫通した空間である。貫通孔317の形成される部材の材質としては、特に制限はないが、ステンレス(SUS)、ニッケル、銅、アルミニウム、鉄、チタン等が挙げられ、特に耐腐食性の点において、ステンレス(SUS)及びニッケルが好ましい。貫通孔317の形成される部材の厚みとしては、特に制限はないが、5μm以上100μm以下が例示される。この厚みが100μmよりも大きいと上記部材を加工して貫通孔317を形成することが困難な場合があり、5μmよりも小さいと貯留部311と粒状体形成部331との圧力差により上記部材が破断する場合がある。但し、上記部材の材質に応じ、貫通孔317の加工が可能で十分な耐久性が得られれば、厚みは上記の範囲に限定されない。
貫通孔317の開口径としては、吐出時の圧力を一定に維持できれば、特に制限はない。一方、貫通孔の径が小さすぎる場合には、溶融体が貫通孔317で詰まり易くなり、狙いとする微粒子を得ることが困難になる可能性がある。よって、貫通孔の径には上限がなく、下限として、2μm以上であることが好ましく、より好ましくは、5μm以上であり、8μm以上であれば特に好ましい。これにより、トナー材料に含まれる1μm以下の微粒子分散物を閉塞させることなく、かつ設定した周波数で極めて均一な粒子径を有する微小な粒状体を発生させることを両立させることができる。これは、以下に説明するに安定的に粒状物を得ることが可能な周波数領域が、実質上貫通孔の直径が大きくなるにつれて減少するためである。なお、開口径は、貫通孔317が真円であれば直径を意味し、楕円であればその短径を意味する。
貫通孔317は、1個のみ設けても粒子の製造は可能であるが、極めて均一な粒子径を有する粒子を効率よく発生させる観点から、複数個設けられていることが好ましい。また、一個の振動手段312により振動させる一個の貯留部311に付随する貫通孔317の個数としては、生産性と制御性の観点から、10乃至10,000であるのが好ましく、極めて均一な粒子径を有する微小な粒状体をより確実に発生させるために、10乃至1,000であることがより好ましい。この場合、トナー粒子1003の生産性は、単位時間あたりに発生する溶体粒状物の個数(周波数)と、振動手段の数と、1つの振動手段312により作用する貫通孔の数の積で決定される。尚、操作性の観点から、可能な限り1つの振動手段312により作用する貫通孔317の数、つまり1つの貯留部312の有する貫通孔317の数が多ければよいが、無制限に多いと、粒子径の均一性を保てない場合がある。
ここで、吐出される溶融体が振動によって粒子化する現象について図6を用いて説明する。図6は、粒子化現象を説明するための説明図である。溶融体を貫通孔から比較的小さな圧力差を用いて、吐出すれば、吐出直後は溶体が柱状に吐出し、それが分裂し溶融体の粒状物になる。しかしながら、このような方法では、粒状物の大きさはランダムとなるため、一般的に幅広い粒度分布を有してしまう。そこで本実施形態では、均一な粒子を得るために、柱状体に適当な一定周期の振動λを付与する。これにより柱状体に周期的なくびれが発生し、溶融体はくびれ状態を経て粒状化される。
液柱の均一液滴化現象としてはレイリー分裂が知られている。レイリー分裂では、液柱の最も不安定になる波長条件λが、液滴直径dを用いて次の(1)式で表される。
λ=4.5d・・・(1)
ここで、発生する擾乱現象の周波数fは、液柱の速度をvとした場合、次の(2)式で表される。
f=v/λ ・・・(2)
また、実験的に均一粒子を形成する条件も知られており、下記式(3)の条件において安定的に均一粒子を形成することが可能である、としている。
3.5<λ/d(jet)<7.0・・・(3)
(1)式から(3)式の条件は、本実施形態の粒子の製造方法における柱状体の均一粒状化においても全て成立することが確認されており。目的の粒子を得る条件を推定するためにも極めて有効である。
(粒状体形成部)
粒状体形成部331は、貫通孔317から吐出した溶融体に所定の圧力を加えるための空間を有し、溶融体を柱状から括れ状態を経て粒状化させる部材である。このため、粒状体形成部331は、貫通孔317から吐出した溶融体が、柱状から括れ状態を経て粒状化するように上記の空間と貯留部311内の圧力差を制御するための圧力制御手段26をさらに備える。溶融体を貫通孔317から吐出するためには、貯留部311内圧力が貫通孔吐出部近傍の圧力より高く、その圧力差により貫通孔から溶体が吐出する必要がある。しかしながら、溶融体は柱状から一定振動により括れ状態を経て粒状に分裂しなければならないことから、粒状化するまでの間、柱状を維持しなければならない。したがって、貫通孔317の外側付近(貫通孔317付近の粒状体形成部331)の圧力は、貯留部311内部と大きな差があってはならない。この差が大きいと、溶融体は貫通孔から吐出し圧力が開放されると同時に、急激に圧縮性流体が蒸発し括れを形成する前に固化してしまい目的の粒状体にならない。更に圧力差が大きくなると、圧力差により貫通孔317が破断してしまうといった問題が生じる。
従って、適切な圧力差を、貯留部311と、貫通孔317の吐出部の近傍即ち粒状体形成部331との間で生じさせる構成であれば、吐出装置31の構成は特に限定されない。このような吐出装置31の構成例としては、貯留部311全体を粒状物形成部で完全に覆い、二重管とする構成などが挙げられる。一方、耐圧を考慮し、SUS(ステンレス鋼)で肉厚にせざるを得ない場合は、軽量化の為に、図5に示すように貯留部311の先に同径の粒状体形成部331を設け、そこに第2の圧縮性流体を、供給部24を通じて導入する構成がより望ましい。ところで、支持手段313により、例えば天板に取り付けられた吐出装置31は振動手段312により、貯留部311、貫通孔317、粒状体形成部331、溶融体を含むトナー材料を同時に縦方向に励振させる。従って、第1の経路の供給部318、第2の経路の供給部24も、振動手段312からの振動を阻害しないように、ある程度自由に可動できるように配管を行う。貯留部311内に過剰に供給された溶融体を含むトナー材料は、開放弁322を通して還流させることができ、同時にバルブを設けて圧力調整を行うこともできる。また、供給量と吐出量が同じ場合は開放弁322のバルブを閉じる。
<<溶融工程>>
続いて、本実施形態の粒子の製造方法における溶融工程について説明する。ここでは、図1の粒子製造装置1を用いた一例について説明する。本実施形態の粒子の製造方法における溶融工程は、第1の圧縮性流体を結晶性ポリエステル樹脂に溶融させて結晶性ポリエステル樹脂の溶融体を作製する工程である。なお、本実施形態において「結晶性ポリエステル樹脂の溶融体」とは、結晶性ポリエステル樹脂が圧縮性流体と接触することで、膨潤しつつ可塑化、液状化した状態を意味する。ところで、急速膨張法のなかでもRESS(Rapid Expansion of Supercritical Solutions)法として知られる方法で用いられる吐出対象は、圧縮性流体中に溶質となる材料を溶解させたもので、当該流体と材料は均一状態で相溶している。これに対し、本実施形態の急速膨張法(PGSS法)における吐出対象である溶融体は、上記のとおり、圧縮性流体を結晶性ポリエステル樹脂内に接触、湿潤させることで、当該樹脂の粘度を低下させて得られるものなので、当該流体と溶融体との間には界面が存在する状態となる。つまり、前者の吐出対象は、圧縮性流体−固体平衡状態の相であるのに対し、後者は、いわば気体−液体平衡状態の相ということになり、同じ急速膨張法であっても吐出対象の膨張前の相状態は異なる。
この溶融工程では、先ず、圧可塑性材料や、製造される粒子がトナーである場合には着色剤等の原料が高圧セル14内に入れられる。この場合、粒子の原料が複数の材料を含むときには、これらの材料を予めミキサー等で混合し、ロールミル等で溶融混練させておいても良い。次に、高圧セル14を密閉し、攪拌機によって原料を攪拌すると共に、ボンベ11から供給された圧縮性流体(第1の圧縮性流体。例えば、二酸化炭素等)を、ポンプ12aにより加圧させてバルブ13aを介して高圧セル14内に供給する。高圧セル14内の温度は温度調節器によって所定の温度に調整され、圧力はポンプ12a、背圧弁15等を調整することにより所定の圧力に調整される。これにより、圧縮性流体と結晶性ポリエステル樹脂を含む原料とを接触させることができる。この場合、圧縮性流体が結晶性ポリエステル樹脂に溶融することにより、結晶性ポリエステル樹脂が低粘度化する。上記の攪拌は、溶融体の溶融液粘度が一定になるまで実行される。溶融体の粘度は、貫通孔317によって吐出することのできる粘度であれば特に限定されないが、低ければ低いほど吐出時の微粒子化が容易であることから、20mPa・s以下であることが好ましい。溶融体の粘度が20mPa・sより大きい場合には、粒子化が困難になったり、粗大粒子、繊維状物、発泡、合着などが発生したりする可能性がある。また、生成物がトナーである場合には必要とされる4〜8μmサイズの均一な微粒子を作製することが困難になる場合がある。
本実施形態の粒子の製造方法の溶融工程において、圧縮性流体に付与される圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1MPa以上が好ましく、2MPa以上200MPa以下がより好ましく、5MPa以上100MPa以下が特に好ましい。圧縮性流体に付与される圧力が、1MPaより小さいと、樹脂が流動化しても造粒できる程の可塑化効果が得られないことがある。圧力はいくら高くても問題はないが、高圧になるほど装置が重厚になり設備コストは高くなる。
本実施形態の粒子の製造方法の溶融工程において、結晶性ポリエステル樹脂を可塑化させる際の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、大気圧下での結晶性ポリエステル樹脂の熱分解温度以下であることが好ましく、融点温度以下がより好ましい。ここで、熱分解温度は、熱分析装置(TGA:Thermo Gravimetry Analyzer)の測定において試料の熱分解に伴う重量減少が開始する温度を意味する。
結晶性ポリエステル樹脂を可塑化させる際の温度がこの結晶性ポリエステル樹脂の大気圧での熱分解温度を超えると、結晶性ポリエステル樹脂が劣化して耐久性が低下したり、結晶性ポリエステル樹脂の分子鎖が切断されて分子量が低下したり、結晶性ポリエステル樹脂の酸化により変色又は透明性の低下が生じたり、結晶性ポリエステル樹脂を含むトナーの定着特性が低下したり、結晶性ポリエステル樹脂を含むトナーの耐熱保存性が低下したり、結晶性ポリエステル樹脂を含むトナーの帯電性能が低下したり、加熱処理によるエネルギーの消費が大きくなることがある。
<<造粒工程>>
続いて、本実施形態の粒子の製造方法における造粒工程について説明する。この造粒工程は、溶融工程で作製された溶融体を、振動させた貫通孔から吐出させて粒状とする工程である。
まず、ボンベ21から供給された圧縮性流体(第2の圧縮性流体。例えば、二酸化炭素等)を、ポンプ22により加圧してバルブ23、供給部24等を介して供給し開口部332から吐出する。このとき、ヒータにより圧縮性流体を加熱して、この圧縮性流体が一定の温度、圧力を維持するように運転条件を調整する。次に、高圧セル14内で混合されて得られた圧縮性流体を結晶性ポリエステル樹脂に溶融させた溶融体をポンプ12bで送液し、バルブ13bを介して貫通孔317から圧力差を利用して吐出する。このとき、高圧セル14内の温度及び圧力が一定に維持されるよう、ポンプ12a、背圧弁15、温度調節器等が制御される。この場合、高圧セル内の圧力は、特に限定されないが、第2の経路から供給される結晶性ポリエステル樹脂の圧力と等圧とすることができる。
上記のように、貯留部311の溶融体は、貫通孔317から吐出された直後の溶融体が柱状体を充分に形成しうる状態に圧力が保持された粒状体形成部331の空間に吐出される。その後、貯留部311を介した振動により柱状体に括れが生じ、この括れ部から柱状体がレイリー分裂することにより、粒状体33となる。
粒状体形成部331の空間の圧力は、吐出される溶融体の粘度や吐出圧力等を考慮して適宜決定すればよく、一義的には溶融体が貫通孔317より吐出できる条件でさえあれば、特に限定はされないが、例えば、溶融体の粘度が3mPa・sの場合、貯留部311が65MPa程度となることから、粒状体形成部331の圧力は65MPa未満となる。
また、吐出速度を考慮すると、貯留部311内の圧力と溶融体の粒状体形成部331上部の圧力差は500Kpa以下であり、好ましくは200KPa以下である。貯留部311内の圧力と粒状体形成部331近傍の圧力差を、この差圧に保持するには、第1の経路から供給される溶融体の圧力と、第2の経路から供給された第2の圧縮性流体の圧力を各々制御することにより達成できる。この条件は、粒状体形成部331の全長と、吐出装置31の底部に設けた開口部332の開口径によっても大きく異なる。例えば、第1の経路から供給される溶融体の圧力と、第2の経路から供給された第2の圧縮性流体の圧力を等しくした場合でも、粒状形成部内の圧力は開口部332を通して大気圧に開放されるために圧力が下がり、貯留部311内の圧力より低下することになる。従って、装置構成によって極端にこれらに圧力差が生じる場合は、むしろ第2の経路から供給された第2の圧縮性流体の圧力を、第1の経路から供給される溶融体の圧力より上げることにより、最適な差圧が得られるように圧力制御を行う。経時による圧力変動は殆どないことから、一定の圧力条件で運転を継続することができる。
また、液滴形成部の圧力をモニターし、これをフィードバック制御する方法も装置保全の点において有効である。粒状体形成部331で形成された粒状体は、急激な圧力低下により、粒状形成部底部あるいは大気開放後には完全に固化し、粒子同士が合体することを防止できる。更に、開口部332から圧力差により急速に吐出され、自由空間に開放されることで完全な粒子を形成する。柱状物からのレイリー分裂により粒径制御性と単一性に優れ、急速な固化により溶融体粒状物の合体を効果的に防止することによって、極めてシャープな粒径分布を有する粒子を得ることが可能になる。
<<<トナー>>>
本実施形態のトナーは上記の粒子の製造方法により製造された結晶性ポリエステル樹脂粒子を含有する。本実施形態のトナーは、この粒子の分散液を含むトナー原料(以後、「トナー組成物」ともいう。)を気相中で液滴化して造粒する方法又は液相中で造粒する方法によって製造される。以下、これらの方法を順に説明する。
<<気相中で造粒する方法>>
まず、気相中での液滴化により造粒する方法について説明する。まず、本方法で用いられる材料について説明する。
<トナー組成物>
気相中で液滴化して造粒する方法で用いられるトナー組成物としては、上記の結晶性ポリエステル粒子の分散液の他、従来の電子写真用トナーと同様のものを使用できる。すなわち、トナー組成物は、スチレンアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂、エポキシ系樹脂、等のバインダー樹脂、着色剤、離型剤を含有する。また、トナー組成物は、必要に応じて、帯電制御剤、磁性体、流動性向上剤、滑剤、クリーニング助剤、抵抗調整剤等のその他の成分を含有する。本方法では、これらの材料を有機溶媒等の溶媒に溶解又は分散させてトナー組成液とし、このトナー組成液を貫通孔から吐出して液滴化してトナー粒子を製造する。目的とするトナー粒子は、吐出されたトナー組成液を気相中で微小な液滴とし乾燥固化させることで製造される。また、これらのトナー材料を熱溶融混練し得られた混練物を各種溶媒に一度溶解又は分散した液を、気相中で微小な液滴とし乾燥固化させることで、目的とするトナーを製造することもできる。以下、各トナー材料について詳細に説明する。
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができる。バインダー樹脂の具体例としては、例えば、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等からなるビニル重合体、これらの単量体又は2種類以上からなる共重合体、ポリエステル系重合体、ポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂、等が挙げられる。
上記のスチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フエニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−アミルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−へキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロロスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン等のスチレン、又はその誘導体、等が挙げられる。
上記のアクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸、あるいはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ドデシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸、又はそのエステル類、等が挙げられる。
上記のメタクリル系単量体としては、例えば、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸又はそのエステル類、等が挙げられる。
上記のビニル重合体、又は共重合体を形成する他のモノマーの例としては、以下の(1)〜(18)が挙げられる。
(1)エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のモノオレフイン類;(2)ブタジエン、イソプレン等のポリエン類;(3)塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;(4)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;(5)ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;(6)ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;(7)N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;(8)、ビニルナフタリン類;(9)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体等;(10)マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸、等の不飽和二塩基酸;(11)マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物、等の不飽和二塩基酸無水物;(12)マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、アルケニルコハク酸モノメチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、メサコン酸モノメチルエステルの如き不飽和二塩基酸のモノエステル;(13)ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;(14)クロトン酸、ケイヒ酸、等のα,β−不飽和酸;(15)クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物、等のα,β−不飽和酸無水物;(16)これらのα,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物、アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマー;(17)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;(18)4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルへキシル)スチレン、等のヒドロキシ基を有するモノマー。
これらのバインダー樹脂のビニル重合体、又は共重合体は、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよい。この場合に用いられる架橋剤としては、芳香族ジビニル化合物として、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、等が挙げられる。アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、等が挙げられる。エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの、等が挙げられる。その他のジアクリレート化合物類としては、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物、ジメタクリレート化合物も挙げられる。ポリエステル型ジアクリレート類として、例えば、商品名MANDA(日本化薬社製)が挙げられる。
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
これらの架橋剤の含有量は、上記のビニル重合体又は共重合体を形成する他のモノマー100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.03〜5質量部がより好ましい。これらの架橋性モノマーのうち、定着性、耐オフセット性の点から、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を1つ含む結合鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が好適に用いられる。これらの中でも、スチレン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体となるようなモノマーの組合せが好ましい。
バインダー樹脂のビニル重合体又は共重合体の製造に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロへキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2’,4’−ジメチル−4’−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパ−オキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロへキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジークミルパーオキサイド、α−(tert−ブチルパーオキシ)イソプロピルべンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルへキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−エトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロへキシルスルホニルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサレート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチル−オキシベンゾエ−ト、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキアリルカーボネート、イソアミルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキシへキサハイドロテレフタレート、tert−ブチルパーオキシアゼレート、等が挙げられる。
バインダー樹脂がスチレン−アクリル系樹脂の場合、樹脂成分のテトラヒドロフラン(THF)に可溶分のGPCによる分子量分布で、分子量3,000〜50,000(数平均分子量換算)の領域に少なくとも1つのピークが存在し、分子量100,000以上の領域に少なくとも1つのピークが存在する樹脂が、定着性、オフセット性、保存性の点で好ましい。また、THF可溶分としては、分子量分布100,000以下の成分が50〜90%となるようなバインダー樹脂が好ましく、分子量5,000〜30,000の領域にメインピークを有するバインダー樹脂がより好ましく、5,000〜20,000の領域にメインピークを有するバインダー樹脂が最も好ましい。
バインダー樹脂がスチレン−アクリル系樹脂等のビニル重合体の場合、その酸価としては、0.1mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましく、0.1mgKOH/g以上70mgKOH/g以下であることがより好ましく、0.1mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることが最も好ましい。
バインダー樹脂のポリエステル系重合体を構成する2価のアルコールのモノマーとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、又は、ビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオール、等が挙げられる。
ポリエステル樹脂を架橋させるためには、3価以上の多価アルコールを併用することが好ましい。この多価アルコールとしては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、例えば、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、等が挙げられる。
ポリエステル系重合体を構成する酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のべンゼンジカルボン酸類又はその無水物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物、等があげられる。また、3価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメット酸、ピロメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、又はこれらの無水物、部分低級アルキルエステル、等が挙げられる。
バインダー樹脂がポリエステル系重合体の場合は、樹脂成分のTHF可溶成分の分子量分布で、分子量3千〜5万の領域に少なくとも1つのピークが存在するのが、トナーの定着性、耐オフセット性の点で好ましい。また、ポリエステル系重合体のTHF可溶分としては、分子量10万以下の成分が60〜100%となることが好ましく、分子量5千〜2万の領域に少なくとも1つのピークが存在することがより好ましい。本実施形態において、バインダー重合体の分子量分布は、THFを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
バインダー樹脂のポリエステル重合体の酸価としては、0.1mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましく、0.1mgKOH/g以上70mgKOH/g以下であることがより好ましく、0.1mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることが最も好ましい。
バインダー樹脂としては、ビニル重合体成分及びポリエステル系重合体の少なくともいずれか中に、これらの両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含む樹脂も用いられる。ポリエステル系樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物、等が挙げられる。ビニル重合体成分を構成するモノマーとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸若しくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
また、ポリエステル系重合体、ビニル重合体とその他のバインダー樹脂を併用する場合、酸価が0.1以上50mgKOH/g以下を有する樹脂を全体のバインダー樹脂の60質量%以上有することが好ましい。
バインダー樹脂及びバインダー樹脂を含む組成物は、トナー保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が35以上80℃以下であることが好ましく、40以上75℃以下であることがより好ましい。Tgが35℃より低いと高温雰囲気下でトナーが劣化しやすく、また定着時にオフセットが発生しやすくなることがある。また、Tgが80℃を超えると、定着性が低下することがある。
(着色剤)
上記の着色剤としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができ、例えば、液相中で造粒する方法で用いられるものと同様の着色剤を使用することができる。
また、分散剤は、着色剤の分散性の点で、バインダー樹脂との相溶性が高いことが好ましい。分散剤の具体的な市販品としては、「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」(味の素ファインテクノ社製)、「Disperbyk−2001」(ビックケミー社製)、「EFKA−4010」(EFKA社製)、等が挙げられる。分散剤は、トナー中で、着色剤に対して0.1〜10質量%の割合で含有させることが好ましい。含有量が0.1質量%未満であると、着色剤の分散性が不十分となることがあり、10質量%より多いと、高湿下での帯電性が低下することがある。
分散剤の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるスチレン換算質量での、メインピークの極大値の分子量で、500以上100,000以下が好ましく、顔料分散性の観点から、3,000以上100,000以下がより好ましく、5,000以上50,000以下が更に好ましく、5,000以上30,000以下が最も好ましい。分子量が500未満であると、極性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがあり、分子量が100,000を超えると、溶剤との親和性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがある。
分散剤の添加量は、着色剤100質量部に対して1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、5質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。添加量が1質量部未満であると分散能が低くなることがあり、50質量部を超えると帯電性が低下することがある。
(離型剤)
本方法により製造されたトナーは離型剤を含有することにより、耐オフセット性が向上する。また、この離型剤によって、トナーの再凝集することを防止でき分散粒径を微小化できるので、製造時の貫通孔の詰まりを防止することができる。この離型剤としてはワックス類が好適に用いられる。
ワックス類としては、特に制限はなく、通常トナー用離型剤として使用されるものを適宜選択して使用することができる。例として、上記の液相中で造粒する方法で使用されるものと同様の離型剤が使用される。
(帯電制御剤)
本実施形態のトナーは、必要に応じて帯電制御剤を含有してもよい。この場合、帯電制御剤としては公知のものを使用できる。例として、液相中で造粒する方法で使用されるものと同様の帯電制御剤が使用される。
(流動性向上剤)
本方法により製造されたトナーは、流動性向上剤を含有することにより、流動性が改善する(流動しやすくなる)。流動性向上剤としては、例えば、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末、等のフッ素系樹脂粉末、湿式製法シリカ、乾式製法シリカ、等の微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナ、それらにシランカップリング剤、チタンカップリング剤若しくはシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカ、処理酸化チタン、処理アルミナ、等が挙げられる。これらの中でも、微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナが好ましい。また、これらにシランカップリング剤やシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカが更に好ましい。ここで微粉末シリカは、ケイ素ハロゲン化含物の気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。
ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば、AEROSIL(日本アエロジル社商品名、以下同じ)−130、−300、−380、−TT600、−MOX170、−MOX80、−COK84:Ca−O−SiL(CABOT社商品名)−M−5、−MS−7、−MS−75、−HS−5、−EH−5、Wacker HDK(WACKER−CHEMIEGMBH社商品名)−N20 V15、−N20E、−T30、−T40:D−CFineSi1ica(ダウコーニング社商品名):Franso1(Fransi1社商品名)、等が挙げられる。
更には、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を疎水化処理した処理シリカ微粉体がより好ましい。処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が好ましくは30〜80%の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化は、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的あるいは物理的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する方法が挙げられる。
有機ケイ素化合物としては、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジビニルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、へキサメチルジシラン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、α−クロルエチルトリクロロシラン、β−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し、末端に位置する単位にそれぞれSiに結合した水酸基を0〜1個含有するジメチルポリシロキサン等がある。更に、他の例としてはジメチルシリコーンオイル、等のシリコーンオイルが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
流動性向上剤の粒径としては、平均一次粒径として、0.001μm以上2μm以下であることが好ましく、0.002μm以上0.2μm以下であることがより好ましい。流動性向上剤の個数平均粒径としては、5nm以上100nm以下であることが好ましく、5nm以上50nm以下がより好ましい。流動性向上剤のBET法で測定した窒素吸着による比表面積としては、30m2/g以上が好ましく、60m2/g以上400m2/g以下がより好ましい。表面処理された流動性向上剤の微粉体の比表面積としては、20m2/g以上が好ましく、40m2/g以上300m2/g以下がより好ましい。これらの微粉体の含有量としては、トナー粒子100質量部に対して0.03質量部以上8質量部以下が好ましい。
(クリーニング性向上剤)
記録紙等にトナーを転写した後、静電潜像担持体や一次転写媒体に残存するトナーの除去性を向上させるためのクリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合によって製造されたポリマー微粒子、等を挙げることかできる。このポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01μm以上1μm以下のものが好ましい。
これらの流動性向上剤やクリーニング性向上剤等はトナーの表面に付着又は固定化させて用いられるため、外添剤とも呼ばれており、トナーに外添する方法としては各種の粉体混合機等が用いられる。例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、等が挙げられ、固定化も行う場合はハイブリタイザー、メカノフュージョン、Qミキサー等が挙げられる。
(溶媒)
本方法において上記の各トナー組成物を溶解又は分散させるための溶媒としては、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、特に限定されないが、除去が容易であることから、沸点が150℃未満である有機溶媒が好適に用いられる。このような有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。これらの溶媒は、二種以上併用してもよい。これらの中でも、ポリエステル樹脂の溶解性に優れることから、有機溶媒は、溶解度パラメータが8(cal/cm3)1/2以上9.8(cal/cm3)1/2以下であることが好ましく、8.5(cal/cm3)1/2以上9.5(cal/cm3)1/2以下がさらに好ましい。特に、離型剤の変性基との相互作用性が大きく、離型剤の結晶成長を効果的に抑制することができるため、溶媒としては、エステル系溶媒及びケトン系溶媒が好ましく、除去が容易であることから、酢酸エチル、メチルエチルケトンが好ましい。
<トナー製造装置>
気相中で造粒する方法で使用される装置(以下、「トナー製造装置」ともいう。)は、樹脂、着色剤、離型剤等を含有するトナー組成物の溶解又は分散液であるトナー組成液を、機械的振動手段によって振動させた膜(例えば薄膜)の貫通孔から放出させる機構を有する。これにより、均一粒径のトナー組成液の液滴を生成させることができる。
機械的振動手段は、貫通孔を有する薄膜に対して垂直方向に振動させるものであればどのように配置してもよいが、本実施形態においては次の二通りの方式が用いられる。一つは、貫通孔を有する薄膜に対して平行な振動面を有し、振動面が垂直方向に縦振動する機械的手段(機械的縦振動手段)を用いる方式(以下単に「ホーン型」ともいう)であり、他の一つは、薄膜の貫通孔を設けた領域の周囲に円環状に形成された機械的振動手段(円環状機械的振動手段)を設ける方式(以下、単に「リング型」ともいう)である。以下、円環状機械的振動手段を用いた場合の例について説明する。
(機械的縦振動手段)
まず、機械的縦振動手段を設けたトナー製造装置について図7を用いて説明する。図7はトナー製造装置の一例を示す模式的構成図である。トナー製造装置1000は、トナー組成液1001を収容する原料収容部1010と、原料収容部1010内から液滴噴射ユニット1040に対してトナー組成液1001を送液する配管(送液管)1030と、送液時等にトナー組成液1001を圧送供給するためのポンプ1020と、トナー組成液1001を液滴化して吐出する液滴化手段としての液滴噴射ユニット1040と、液滴噴射ユニット1040から吐出される液滴化されたトナー組成液1001の液滴1002を固化してトナー粒子1003を形成する粒子化手段としての粒子形成部1050と、粒子形成部1050で形成されたトナー粒子1003を捕集するトナー捕集部1060と、トナー捕集部1060で捕集されたトナー粒子1003がチューブ1070を介して移送され、移送されたトナー粒子1003を貯留するトナー貯留手段としてのトナー貯留部1080と、を備えている。
また、原料収容部1010からのトナー組成液1001は、液滴噴射ユニット1040による液滴化現象により自給的に液滴噴射ユニット1040に供給されるが、装置稼働時等には上述したように補助的にポンプ1020を用いて液供給を行う構成としている。なお、トナー組成液1001として、ここでは、樹脂、着色剤及び離型剤を含有するトナー組成物を溶媒に溶解又は分散した溶液、分散液を用いている。
(円環状機械的振動手段)
次に、リング式の液滴噴射ユニット1040について図8〜図12を用いて説明する。なお、図8は液滴噴射ユニット1040の一例を示す断面説明図、図9は図8を下側から見た要部底面説明図、図10は液滴化手段の一例を示す概略断面説明図である。図11は、液滴噴射ユニット1040による液滴化の動作原理の説明に供する薄膜1042の模式的断面図である。図12は、基本振動モードの説明に供する説明図である。この液滴噴射ユニット1040は、少なくとも樹脂、着色剤及び離型剤を含有するトナー組成液1001を液滴化して放出させる液滴化手段1046と、この液滴化手段1046にトナー組成液1001を供給する液流路1044を形成した流路部材1045とを備えている。
液滴化手段1046は、複数の貫通孔1041が形成された薄膜1042と、この薄膜1042を振動させる円環状の振動発生手段(電気機械変換手段)1047とで構成されている。ここで、薄膜1042は、最外周部(図9の斜線を施して示す領域)をハンダ又はトナー組成液1001に溶解しない樹脂バインダー材料によって流路部材1045に接合固定している。振動発生手段1047は、この薄膜1042の変形可能領域1046A(流路部材1045に固定されていない領域)内の周囲に配されている。振動発生手段1047にはリード線1048を通じて駆動回路(駆動信号発生源)1049から所要周波数の駆動電圧(駆動信号)が印加されることで、例えば撓み振動を発生する。
液滴化手段1046は、液流路1044に臨む複数の貫通孔1041を有する薄膜1042の変形可能領域1046A内の周囲に円環状の振動発生手段1047が配されていることによって、相対的に薄膜1042の変位量が大きくなり、この大きな変位量が得られる比較的大面積(φ1mm以上)の領域に複数の貫通孔1041を配置することができ、これにより一度に多くの液滴1002を安定的に形成して放出することができるようになる。
図7では、液滴噴射ユニット1040が1個配置されている例で図示しているが、好ましくは、複数、例えば制御性の観点からは100〜1,000個の液滴噴射ユニット1040を、粒子形成部1050の天面部に並べて配置し、各液滴噴射ユニット1040には配管1030を原料収容部1010(共通液溜め)に通じさせてトナー組成液1001を供給するようにする。これによって、一度により多くの液滴1002を放出させることができて、生産効率の向上を図ることができる。
(液滴形成メカニズム)
次に、この液滴化手段としての液滴噴射ユニット1040による液滴形成のメカニズムについて説明する。上述したように液滴噴射ユニット1040は、液流路1044に臨む複数の貫通孔1041を有する薄膜1042に、機械的振動手段である振動手段1047によって発生した振動を伝播させて、薄膜1042を周期的に振動させ、比較的大面積(φ1mm以上)の領域に複数の貫通孔1041を配置し、それら複数の貫通孔1041より液滴1002を安定的に形成して放出することができるようになる。
図11に示すような単純円形薄膜1042の周辺部1042Aを固定した場合、基本振動は周辺が節になり、図12に示すように、薄膜の中心Oで変位ΔLが最大(ΔLmax)となる断面形状となり、振動方向に周期的に上下振動する。
円形薄膜の振動により、円形薄膜各所に設けられた貫通孔近傍の液体には、薄膜の振動速度Vmに比例した音圧Pacが発生する。音圧は、媒質(トナー組成液)の放射インピーダンスZrの反作用として生じることが知られており、音圧は、放射インピーダンスと薄膜の振動速度Vmの積で下記式(1)の方程式を用いて表される。
Pac(r,t)=Zr・Vm(r,t) (1)
薄膜の振動速度Vmは時間とともに周期的に変動しているため時間(t)の関数であり、例えばサイン波形、矩形波形等、様々な周期変動を形成することが可能である。また、上記のとおり、薄膜の各所で振動方向の振動変位は異なっており、Vmは、薄膜上の位置座標の関数でもある。本発明で用いられる薄膜の振動形態は、上述のとおり軸対象である。したがって、実質的には半径座標(r)の関数となる。
以上のように、分布を持った薄膜の振動変位速度に対して、それに比例する音圧が発生し、音圧の周期的変化に対応してトナー組成液1001が、気相へ吐出される。気相へ周期的に排出されたトナー組成液は、液相と気相との表面張力差によって球体を形成するため、液滴化が周期的に発生する。
液滴化を可能とする薄膜の振動周波数としては20kHz以上2.0MHz以下の領域が用いられ、50kHz以上500kHz以下の範囲がより好適に用いられる。20kHz以上の振動周期であれば、液体の励振によって、トナー組成液中の顔料やワックス等の微粒子の分散が促進される。更には、前記音圧の変位量が、10kPa以上となることによって、上述の微粒子分散促進作用がより好適に発生する。
ここで、形成される液滴1002の直径は、薄膜の貫通孔近傍における振動変位が大きいほど大きくなる傾向にあり、振動変位が小さい場合、小滴が形成されるか、または液滴化しない。このような、各貫通孔部位における液滴サイズのばらつきを低減するためには、貫通孔配置を、膜振動変位の最適な位置に規定することが必要である。
本実施形態においては、図12で説明されるように、機械的振動手段により発生する貫通孔近傍における薄膜の振動方向変位ΔLの最大値ΔLmaxと最小値ΔLmimの比R(=ΔLmax/ΔLmin)が、2.0以内である部位に貫通孔が配置することにより、上記液滴サイズのばらつきを、高画質な画像を提供することのできるトナー微粒子として必要な領域に保てることを見出した。
トナー組成液1001の条件を変更し、粘度20mPa・s以下、表面張力20乃至75mN/mの領域においてサテライトの発生開始領域が同様であったことから、音圧の変位量は500kPa以下であることが必要であり、更に好適には、100kPa以下である。ここで、サテライトとは、トナー組成液1001を液流路1044に送液する際に発生する脈動により瞬間的圧力変動に起因して発生する、目的とするトナー粒子1003の粒径よりも非常に微細な粒子を意味する。
(薄膜)
貫通孔1041を有する薄膜は、先にも述べたように、トナー組成物の溶解乃至分散液を、吐出させて液滴1002とする部材である。この薄膜1042の材質、貫通孔1041の形状としては、特に制限はなく、適宜選択した形状とすることができる。極めて均一な粒子径を有する微小液滴を発生させる観点から、例えば、薄膜1042は厚み5μm以上500μm以下の金属板で形成され、かつ、貫通孔1041の開口径が1μm以上40μm以下であることが好ましく、3μm以上35μm以下であることがより好ましい。なお、貫通孔1041の開口径は、真円であれば直径を意味し、楕円であれば短径を意味する。また、複数の貫通孔1041の個数は、2乃至3000個が好ましい。
(乾燥)
液滴1002から溶媒を除去する乾燥工程は、加熱した乾燥窒素等の気体中に液滴を放出し行われる。必要であれば、さらに流動床乾燥や真空乾燥といった二次乾燥が行われる。
<<液相中で造粒する方法>>
次に、液相中で造粒する方法について説明する。方法としては、溶解懸濁法等の湿式製法のような公知のトナー製造方法であればいずれの製法でも利用できる。以下に本実施形態におけるトナーの製造方法について、乳化凝集法、溶解懸濁法、懸濁造粒法、懸濁重合法やエステル伸長法等を用いた場合を例としてより詳細に説明する。
<乳化凝集法>
乳化凝集法の場合、ステップ1の凝集工程と、ステップ2の付着工程と、ステップ3の融合工程を含む方法により製造される。この場合、結着樹脂粒子は一般に乳化重合などにより製造される。
(凝集工程)
ステップ1の凝集工程では、結着樹脂粒子を調製する段階で重合性単量体により結着樹脂粒子を調製し、結着樹脂粒子をイオン性界面活性剤により溶媒中に分散させる。続いて、これと反対極性イオン性界面活性剤で分散された本実施形態の粒子の製造方法で製造された結晶性ポリエステル樹脂粒子、着色剤等のその他のトナー構成材料を混合してヘテロ凝集を生じさせて凝集粒子を形成する。
(付着工程)
ステップ2の付着工程では、必要に応じて、樹脂粒子が形成された溶液に更に樹脂粒子を添加して、凝集粒子表面に付着させて、凝集粒子表面を被覆する被覆層を形成する。これによりコアシェル構造を有するトナーを得ることができる。
(融合工程)
ステップ3の融合工程では、凝集工程あるいは付着工程を経た後の凝集粒子を、これに含まれる結着樹脂のうち最も高いガラス転移点あるいは融点を有する樹脂の当該ガラス転移点あるいは融点以上に加熱することにより凝集粒子を融合する。そして、その後、洗浄、乾燥を経てトナーを得る。
なお、プロセスは上述したように、各種のトナー原料を分散させた分散液を一括で混合し、凝集するものであってもよいが、付着工程を設けてもよい。後者の場合、凝集工程において、初期に各極性のイオン性分散剤の量のバランスを予めずらしておき、例えば硝酸カルシウム等の無機金属塩、もしくはポリ塩化アルミニウム等の無機金属塩の重合体を用いてこれをイオン的に中和し、結着樹脂のガラス転移点あるいは融点以下で凝集粒子(コア層を形成するコア粒子)を形成し、安定化させる。続いて、付着工程でバランスのずれを補填するような極性、量の分散剤で処理された樹脂粒子分散液を追添加して、コア粒子表面に樹脂粒子を付着させる。さらに必要に応じコア粒子または追添加される樹脂粒子分散液に含まれる結着樹脂のガラス転移点以下でわずかに加熱して、より高い温度で安定化させたのち、追添加される樹脂粒子分散液に含まれる結着樹脂のガラス転移点以上に加熱することにより融合させたものでも良い。更にこの付着工程は複数回、繰り返してもよい。
<溶解懸濁法>
溶解懸濁法の場合、結着樹脂、本実施形態の粒子の製造方法で製造された結晶性ポリエステル樹脂粒子、着色剤、及び、必要に応じて用いられる離型剤等のその他の成分を、一旦、たとえば、酢酸エチルの如きこれを溶解する有機溶剤に溶解し、ついでこれを溶解しないたとえば水系溶媒中に燐酸カルシウムの如き無機微粒子や、ポリビニルアルコールやポリアクリル酸ナトリウムの如き有機の分散剤とともに、たとえばTKホモミキサー如きホモジナイザーにより、機械的せん断力を与えて、分散させる。
ついで、得られた分散液をたとえば1M塩酸水溶液中に添加し、分散剤成分を溶解、除去した後、ろ紙を用いてヌッチェなどによって固液分離した後に、粒子中に残存する溶媒成分を留去する工程を経てトナーを得る。
<溶解乳化法>
溶解乳化法の場合は、結着樹脂成分を溶解するたとえば酢酸エチルの如き溶媒中に溶解したのち、これをイオン性界面活性剤の存在下、たとえばTKホモミキサーの如きホモジナイザーによる機械的せん断力とたとえばアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のイオン性界面活性剤の界面活性力によって乳化樹脂粒子を得た後、減圧蒸留等によって残存する溶媒分を留去することで、樹脂粒子分散液を得る。続いてこれ以降は、この樹脂粒子分散液を用いて乳化凝集法と同様にしてトナーを得る。
<懸濁造粒法>
懸濁造粒法の場合、重合性単量体をあらかじめ予備重合させGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定から求められる重量平均分子量Mwが3000から15000の予備重合体を含む重合体溶液を調製後、この溶液に本実施形態の粒子の製造方法で製造された結晶性ポリエステル樹脂粒子、着色剤、重合性単量体、重合開始剤、さらに必要に応じて離型剤等のその他の成分を加え、続いて、これを無機分散剤あるいは有機分散剤の存在下において、機械的せん断力を与え懸濁させた後、攪拌せん断を与えながら、熱エネルギーを付与することによって重合体粒子を得ることもできる。
この場合、基本的には懸濁重合法と同様であるが、予備重合体の重量平均分子量Mwを3000から15000の範囲内に調整することで、定着、造粒に適した粘度が得られるばかりでなく、生成されるトナーに含まれる結着樹脂の重量平均分子量Mwを連鎖移動剤なしに制御することができる。
<懸濁重合法>
懸濁重合法の場合、本実施形態の粒子の製造方法で製造された結晶性ポリエステル樹脂粒子、重合性単量体、重合開始剤、着色剤、離型剤等を含有する重合性混合物を、懸濁安定剤を含有する水系媒体中に投入し、撹拌することで重合粒子を形成することで製造することができる。更に好ましくは、本実施形態の粒子の製造方法で製造された結晶性ポリエステル樹脂粒子、重合性単量体、重合開始剤、着色剤、離型剤、カチオン性重合体、を含有する重合性混合物、アニオン性分散剤を添加した水性分散媒系中に投入し、撹拌下に造粒する懸濁重合法が望ましい。このように造粒されたトナーは、離型剤が懸濁粒子中に内包され、定着性や耐オフセット性が顕著に改善される。
<エステル伸長法>
エステル伸長法の場合、本実施形態の粒子の製造方法で製造された結晶性ポリエステル樹脂粒子、結着樹脂、着色剤、及び、必要に応じて用いられる離型剤等の成分を溶媒中に分散し、油相を作製する。また、粒径制御剤および界面活性剤を水中に分散させ、水相を作製する。油相および水相を混合・乳化し、ワックスおよびポリエステル樹脂、顔料などが含まれる油滴を作り、その油滴を収斂させてシャープな粒度分布のトナー油滴を作製する。この過程で同時に伸長反応させて、トナー油滴中に高分子量の樹脂成分が形成される。続いてこれ以降は、この樹脂粒子分散液を用いて溶解懸濁法と同様にしてトナーを得る。
<トナーの物性>
本実施形態のトナーは、その形状、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、以下のような、画像濃度、平均円形度、質量平均粒径、質量平均粒径と個数平均粒径との比(質量平均粒径/個数平均粒径)等を有していることが好ましい。
上記の画像濃度は、分光計(X−ライト社製、938 スペクトロデンシトメータ)を用いて測定した濃度値が、1.90以上が好ましく、2.00以上がより好ましく、2.10以上が特に好ましい。画像濃度が、1.90未満であると画像濃度が低く、高画質が得られないことがある。ここで、画像濃度は、例えば、imagio Neo 450(株式会社リコー製)を用いて、複写紙(TYPE6000<70W>、株式会社リコー製)に現像剤の付着量が1.00±0.05mg/cm2のベタ画像を定着ローラの表面温度が160±2℃で形成し、得られたベタ画像における任意の6箇所の画像濃度を、上記分光計を用いて測定し、その平均値を算出することにより、測定することができる。
上記の平均円形度は、トナーの形状と投影面積の等しい相当円の周囲長を実在粒子の周囲長で除した値であり、例えば、0.900〜0.980が好ましく、0.950〜0.975がより好ましい。尚、平均円形度が0.94未満の粒子が15%以下であるものが好ましい。平均円形度が0.900未満であると、満足できる転写性やチリのない高画質画像が得られないことがある。また、平均円形度が0.980を超えると、ブレードクリーニング等を採用している画像形成システムでは、感光体上及び転写ベルト等でクリーニング不良が発生し、画像上の汚れ、例えば、写真画像等の画像面積率の高い画像形成の場合において、給紙不良等で未転写の画像を形成したトナーが感光体上に転写残トナーとなって蓄積した画像の地汚れが発生してしまうことがあり、あるいは、感光体を接触帯電させる帯電ローラ等を汚染してしまい、本来の帯電能力を発揮できなくなってしまうことがある。
ここで、平均円形度は、フロー式粒子像分析装置(Flow Particle Image Analyzer)、例えば東亜医用電子社(株)製フロー式粒子像分析装置FPIA−2000を用いて測定することができる。この場合、フィルターに通して微細なごみを取り除き、その結果として10−3cm3の水中に測定範囲(例えば、円相当径0.60μm以上、159.21μm未満)の粒子数が20個以下に調整された水を用意する。次に、この水10ml中にノニオン系界面活性剤(好ましくは和光純薬株式会社製コンタミノンN)を数滴加え、更に、測定試料を5mg加え、超音波分散器(SMT社製、UH−50)で20kHz,50W/10cm3の条件で1分間分散処理を行い、更に、合計5分間の分散処理を行う。分散処理によって得られる測定試料の粒子濃度が4,000個/10−3cm3〜8,000個/10−3cm3(測定円相当径範囲の粒子を対象として)の試料分散液を用いて、0.60μm以上、159.21μm未満の円相当径を有する粒子の粒度分布を測定する。
平均円形度の測定は、試料分散液をフラットで偏平な透明フローセル(厚み約200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させることにより行われる。ここでフローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するために、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着される。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射される。その結果、それぞれの粒子は、フローセルに平行一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径が円相当径として算出される。
これにより約1分間で、1,200個以上の粒子の円相当径が測定され、円相当径分布に基づく数及び規定された円相当径を有する粒子の割合(個数%)が算出される。結果(頻度%及び累積%)は、0.06μm〜400μmの範囲を226チャンネル(1オクターブに対し30チャンネルに分割)に分割して得ることができる。実際の測定では、円相当径が0.60μm以上、159.21μm未満の範囲で粒子の測定を行う。
上記のトナーの質量平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3μm〜10μmが好ましく、3μm〜8μmがより好ましい。質量平均粒径が、3μm未満であると、二成分現像剤では現像装置における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させることがあり、また、一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するため、ブレード等の部材へのトナー融着が発生し易くなることがある。また、質量平均粒径が10μmを超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
上記のトナーにおける質量平均粒径と個数平均粒径との比(質量平均粒径/個数平均粒径)としては、1.00〜1.25が好ましく、1.00〜1.10がより好ましい。質量平均粒径と個数平均粒径との比(質量平均粒径/個数平均粒径)が、1.25を超えると、二成分現像剤では、現像装置における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させることがある。また、質量平均粒径と個数平均粒径との比(質量平均粒径/個数平均粒径)が、1.25を超えると、一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーが薄層化し、ブレード等の部材へのトナー融着が発生し易くなることがあり、また、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
質量平均粒径、及び、前記質量平均粒径と個数平均粒子径との比(質量平均粒径/個数平均粒径)は、例えば、コールターエレクトロニクス社製の粒度測定器「コールターカウンターTAII」等を用いて測定することができる。
<<<現像剤>>>
本実施形態の現像剤は、本実施形態のトナーを少なくとも含有する。本実施形態の現像剤はキャリアを使用しない1成分系の磁性トナー或いは非磁性トナーとして用いることができるが、磁性キャリアと混合して2成分系現像剤として用いることもできる。2成分系現像剤に用いる場合には、現像剤中のキャリアとトナーの含有比は、キャリア100質量部に対してトナー1質量部以上10質量部以下が好ましい。
(キャリア)
上記のキャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、磁性キャリアからなる芯材と、この芯材を被覆する被覆材料とを有するものが好ましい。この磁性キャリアとしては、粒子径20〜200μm程度の鉄粉、フェライト粉、マグネタイト粉、磁性樹脂キャリア等従来から公知のものが使用できる。また、被覆材料としては、アミノ系樹脂、例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。また、他の例としては、ポリビニルおよびポリビニリデン系樹脂、例えばアクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂およびスチレンアクリル共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、フッ化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、およびシリコーン樹脂等が使用される。
また必要に応じて、導電粉等を被覆材料に含有させてもよい。この導電粉としては、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等が使用できる。これらの導電粉は、平均粒子径1μm以下のものが好ましい。平均粒子径が1μmよりも大きくなると、電気抵抗の制御が困難になる。樹脂を被覆する方法としては、公知の方法が用いられ、例えば、樹脂層の原料を溶剤に溶解させて塗布溶液を調製した後、この塗布溶液を芯材の表面に公知の塗布方法により均一に塗布し、乾燥した後、焼付を行う方法が挙げられる。 上記の樹脂層のキャリアにおける量としては、0.01質量%〜5.0質量%が好ましい。この量が0.01質量%未満であると、芯材の表面に均一な樹脂層を形成することができないことがあり、5.0質量%を超えると、樹脂層が厚くなり過ぎてキャリア同士の造粒が発生し、均一なキャリア粒子が得られないことがある。
本実施形態の現像剤は、磁性一成分現像方法、非磁性一成分現像方法、二成分現像方法等の公知の各種電子写真法による画像形成に好適に用いることができる。本実施形態の現像剤は、本実施形態のトナーを含有しているので、画像形成時において、帯電性能に優れ、高画質な画像を安定に形成することができる。
<<<プロセスカートリッジ>>>
本実施形態のプロセスカートリッジは、静電潜像を担持する静電潜像担持体と、静電潜像担持体上に担持された静電潜像を、本実施形態のトナーを用いて現像し可視像を形成する現像手段とを有してなり、更に必要に応じて適宜選択されるその他の手段を有してなる。
本実施形態のプロセスカートリッジは、画像形成装置本体に着脱可能であり、利便性に優れたものである。上記の現像手段としては、本実施形態のトナー又は現像剤を収容する現像剤収容器と、この現像剤収容器内に収容されたトナー又は現像剤を担持しかつ搬送する現像剤担持体とを有してなり、更に、担持させるトナー層厚を規制するための層厚規制部材等を有していてもよい。
ここで、本実施形態のプロセスカートリッジについて図13を用いてより詳細に説明する。図13は、本実施形態のプロセスカートリッジの一例を示す概略説明図である。図13によって示されるプロセスカートリッジは、静電潜像担持体101を内蔵し、帯電手段102、現像手段104、転写手段108、クリーニング手段107を含み、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。図13中、103は露光手段による露光、105は記録媒体をそれぞれ示す。
次に、図13によって示されるプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについて説明する。静電潜像担持体101は、矢印方向に回転しながら、帯電手段102による帯電、露光手段(不図示)による露光103により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像手段104で現像され、得られた可視像は転写手段108により、記録媒体105に転写される。次いで、像転写後の静電潜像担持体表面は、クリーニング手段107によりクリーニングされ、更に除電手段(不図示)により除電されて、再び、以上の操作を繰り返すものである。
<<<画像形成方法及び画像形成装置>>>
本実施形態の画像形成方法は、静電潜像形成工程と、現像工程と、転写工程と、定着工程とを含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程、制御工程等を含む。
本実施形態の画像形成装置は、静電潜像担持体と、静電潜像形成手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。
<静電潜像形成工程及び静電潜像形成手段>
上記の静電潜像形成工程は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程である。この静電潜像担持体(以下、「電子写真感光体」、「感光体」と称することがある)としては、その材質、形状、構造、大きさ、等について特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、その形状としてはドラム状が好適に挙げられ、その材質としては、例えばアモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体、等が挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点でアモルファスシリコン等が好ましい。
ここで、静電潜像の形成は、例えば、前記静電潜像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、静電潜像形成手段により行うことができる。この静電潜像形成手段は、例えば、静電潜像担持体の表面を一様に帯電させる帯電器と、前記静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光器とを少なくとも備える。
上記の帯電器は静電潜像担持体の表面に電圧を印加することに静電潜像担持体の表面を一様に帯電させる。このような帯電器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器等が挙げられる。
露光器を用いて前記静電潜像担持体の表面を像様に露光する。このような露光器としては、帯電器により帯電された静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系、等の各種露光器が挙げられる。なお、本発明においては、静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
<現像工程及び現像手段>
上記の現像工程は、静電潜像を、本実施形態のトナー又は現像剤を用いて現像して可視像を形成する工程である。この可視像の形成は、例えば、静電潜像を本実施形態のトナー又は現像剤を用いて現像することにより行うことができ、上記の現像手段により行うことができる。
この現像手段は、例えば、本実施形態のトナー又は現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、本実施形態のトナー又は現像剤を収容し、静電潜像にこのトナー又は現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられ、トナー入り容器を備えた現像器等がより好ましい。
この現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよい。このような現像器としては、例えば、本実施形態のトナー又は現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌機と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの等が好適に挙げられる。
この現像器内では、例えば、トナーとキャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。このマグネットローラは、静電潜像担持体(感光体)近傍に配置されているため、マグネットローラの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって静電潜像担持体(感光体)の表面に移動する。その結果、静電潜像がトナーにより現像されて静電潜像担持体(感光体)の表面に該トナーによる可視像が形成される。
この現像器に収容させる現像剤は、本実施形態のトナーを含む現像剤であるが、現像剤としては一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよい。
<転写工程及び転写手段>
上記の転写工程は、可視像を記録媒体に転写する工程であるが、中間転写体を用いこの中間転写体上に可視像を一次転写した後、可視像を記録媒体上に二次転写する態様が好ましい。また、トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、この複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。
この転写は、例えば、可視像を転写帯電器を用いて前記静電潜像担持体(感光体)を帯電することにより行うことができ、転写手段により行うことができる。この転写手段としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、この複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。尚、この中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
上記の転写手段(第一次転写手段、第二次転写手段)は、静電潜像担持体(感光体)上に形成された可視像を記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。この転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。この転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、等が挙げられる。
尚、記録媒体としては、特に制限はなく、公知の記録媒体(記録紙)の中から適宜選択することができる。
<定着工程及び定着手段>
上記の定着工程は、記録媒体に転写された可視像を定着装置によって定着させる工程であり、各色のトナーに対し記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。この定着装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。この加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組合せ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組合せ等が挙げられる。この加熱加圧手段における加熱は、通常、80℃〜200℃が好ましい。尚、本実施形態においては、目的に応じて、定着工程及び定着手段と共にあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
<除電工程及び除電手段>
上記の除電工程は、静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。この除電手段としては、特に制限はなく、静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
<クリーニング工程及びクリーニング手段>
上記のクリーニング工程は、静電潜像担持体上に残留するトナーを除去する工程であり、クリーニング手段により好適に行うことができる。このクリーニング手段としては、特に制限はなく、静電潜像担持体上に残留する電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができる。このようなクリーニング手段としては、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
<リサイクル工程及びリサイクル手段>
上記のリサイクル工程は、クリーニング工程により除去されたトナーを現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段により好適に行うことができる。このリサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
<制御工程及び制御手段>
上記の制御工程は、各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。この制御手段としては、上記の各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
次に、本実施形態の画像形成装置により画像を形成する方法の一例について、図14を用いて説明する。図14は、本実施形態の画像形成方法に用いられる画像形成装置の一例を示す概略説明図である。図14によって示される画像形成装置100は、静電潜像担持体としての感光体ドラム10(感光体10)と、帯電手段としての帯電ローラ20と、露光手段としての露光装置30と、現像手段としての現像装置40と、中間転写体50と、クリーニングブレードを有するクリーニング手段としてのクリーニング装置60と、除電手段としての除電ランプ70とを備える。
中間転写体50は無端ベルトであり、その内側に配置されこれを張架する3個のローラ51によって、図中矢印方向に移動可能に設計されている。3個のローラ51の一部は、中間転写体50へ所定の転写バイアス(一次転写バイアス)を印加可能な転写バイアスローラとしても機能する。中間転写体50には、その近傍に中間転写体用クリーニングブレード90が配置されており、また、記録媒体95に可視像(トナー像)を転写(二次転写)するための転写バイアスを印加可能な前記転写手段としての転写ローラ80が対向して配置されている。中間転写体50の周囲には、この中間転写体50上の可視像に電荷を付与するためのコロナ帯電器58が、中間転写体50の回転方向において、静電潜像担持体10と中間転写体50との接触部と、中間転写体50と記録媒体95との接触部との間に配置されている。
現像装置40は、現像剤担持体としての現像ベルト41と、この現像ベルト41の周囲に併設したブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M、及びシアン現像ユニット45Cとから構成されている。なお、ブラック現像ユニット45Kは、現像剤収容部42Kと現像剤供給ローラ43Kと現像ローラ44Kとを備えている。イエロー現像ユニット45Yは、現像剤収容部42Yと現像剤供給ローラ43Yと現像ローラ44Yとを備えている。マゼンタ現像ユニット45Mは、現像剤収容部42Mと現像剤供給ローラ43Mと現像ローラ44Mとを備えている。シアン現像ユニット45Cは、現像剤収容部42Cと現像剤供給ローラ43Cと現像ローラ44Cとを備えている。また、現像ベルト41は、無端ベルトであり、複数のベルトローラにより回転可能に張架され、一部が静電潜像担持体10と接触している。
図14によって示される画像形成装置100において、例えば、帯電ローラ20が感光体ドラム10を一様に帯電させる。露光装置30が感光ドラム10上に像様に露光を行い、静電潜像を形成する。静電潜像担持体10上に形成された静電潜像を、現像装置40からトナーを供給して現像して可視像(トナー像)を形成する。この可視像(トナー像)が、ローラ51から印加された電圧により中間転写体50上に転写(一次転写)され、更に転写紙95上に転写(二次転写)される。その結果、転写紙95上には転写像が形成される。なお、静電潜像担持体10上の残存トナーは、クリーニング装置60により除去され、静電潜像担持体10における帯電は除電ランプ70により一旦、除去される。
本実施形態の画像形成方法及び画像形成装置では、シャープな粒度分布を有し、帯電性、環境性、経時安定性等のトナー特性が良好である本実施形態のトナーを用いているので、高画質画像を形成することができる。
<<実施形態の補足>>
上記実施形態では、粒子の製造方法に用いられる製造装置が図1に示される粒子製造装置1である場合について説明したが、これに限るものではない。この場合、PGSS(Particles from Gas Saturated Solutions)法で用いられる一般的な吐出装置を使用することができる。
上記実施形態では、貫通孔1041を有する薄膜1042を機械的振動手段によって振動させることにより、トナー組成液1001を薄膜1042の各貫通孔から放出することにより、トナー組成液1001を気相中で液滴化したが、これに限るものではない。この場合、トナー組成液を加圧して貫通孔から噴霧したり、トナー組成液と圧縮気体とを混合して噴霧したり、回転する円盤を用いてトナー組成液を遠心力により液滴化しても良い。
上記実施形態では、トナー製造装置の機械的振動手段がリング型である場合について説明したが、これに限るものではない。この場合、特開平2009−116049に記載されるようなホーン型の機械的振動手段を用いても良い。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施
例に制限されるものではない。なお、実施例中、部はすべて質量部を表す。
−結晶性ポリエステル樹脂の合成−
合成例1
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5リットルの四つ口フラスコに1,4−ブタンジオール25モル、フマル酸23.75モル、無水トリメリット酸1.65モル、ハイドロキノン5.3gを入れ、160℃で5時間反応させた後、200℃に昇温して1時間反応させ、さらに8.3KPaにて1時間反応させ[結晶性ポリエステル樹脂1]を得た。[結晶性ポリエステル樹脂1]の融点、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、酸価、水酸基価の測定結果を表1に示す。なお、これらの測定方法を以下に示す。
(酸価の測定)
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン溶液:フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95vol%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mlとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
水酸化カリウム溶液:特級水酸化カリウム7gを5mlの水に溶かし、エチルアルコール(95vol%)を加えて1リットルとする。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/リットル塩酸25mlを三角フラスコに取り、フェノールフタレイン溶液を数滴加え、水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。なお、0.1モル/リットル塩酸は、JIS K 8001−1998に準じて作成されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕したポリエステル試料2.0gを200mlの三角フラスコに精秤し、溶剤(ジエチルエーテルとエタノール(99.5)を体積比で1:1又は2:1で混合したもの)を100ml加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として上記のフェノールフタレイン溶液を数滴加え、上記の水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。尚、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちジエチルエーテルとエタノールの混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C−B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。
<水酸基価の測定>
水酸基価とは,試料1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数である。具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
アセチル化試薬:特級無水酢酸25gをメスフラスコ100mlに入れ、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分に振りまぜてアセチル化試薬を得る。得られたアセチル化試薬は、湿気、炭酸ガス等に触れないように、褐色びんにて保存する。
フェノールフタレイン溶液:フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95vol%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mlとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
水酸化カリウム溶液:特級水酸化カリウム35gを20mlの水に溶かし、エチルアルコール(95vol%)を加えて1リットルとする。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。水酸化カリウム溶液のファクターは、0.5モル/リットル塩酸25mlを三角フラスコに取り、上記のフェノールフタレイン溶液を数滴加え、上記の水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。なお、0.5モル/リットル塩酸は、JIS K 8001−1998に準じて作成されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕したポリエステル試料1.0gを200ml丸底フラスコに精秤し、これに上記ののアセチル化試薬5.0mlをホールピペットを用いて正確に加える。この場合、試料がアセチル化試薬に溶解しにくいときは、特級トルエンを少量加えて溶解する。フラスコの口に小さな漏斗をのせ、約97℃のグリセリン浴中にフラスコ底部約1cmを浸して加熱する。このときフラスコの首の温度が浴の熱を受けて上昇するのを防ぐため、丸い穴をあけた厚紙をフラスコの首の付根にかぶせることが好ましい。1時間後、グリセリン浴からフラスコを取り出して放冷する。放冷後、漏斗から水1mlを加えて振り動かして無水酢酸を加水分解する。さらに完全に加水分解するため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱する。放冷後、エチルアルコール5mlで漏斗およびフラスコの壁を洗う。指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定する。尚、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
空試験ワックスの試料を用いない以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、水酸基価を算出する。
A=[{(B−C)×28.05×f}/S]+D
ここで、A:水酸基価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)、D:ポリエステルの酸価(mgKOH/g)である。
<分子量(Mn,Mw)の測定>
装置:GPC(東ソー(株)製)、検出器:RI、測定温度:40℃、
移動相:テトラヒドロフラン、流量:0.45mL/min.
分子量Mn、Mw、分子量分布Mw/Mnは、夫々、分子量既知のポリスチレン試料によって作成した検量線を標準としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて測定される数平均分子量、重量平均分子量、分子量分布である。
<融点の測定>
装置:DSC(TAインスツルメンツ社製、Q2000)
試料5〜10mgをアルミ製の簡易密閉パンに充填したものを以下の測定フローに供した。
1st Heating:30℃〜220℃、5℃/min.、220℃到達後1分保持
冷却: 温度制御なしで−20℃までクエンチ、−20℃到達後1分保持
2nd Heating:−20℃〜180℃、5℃/min.
この2度目の昇温過程での−20℃〜180℃の範囲におけるDSC曲線の最大の吸熱ピークを、結晶性ポリエステルの融点とした。
合成例2〜7
原料を下記のものに変更した以外は、合成例1と同様にして、[結晶性ポリエステル樹脂2〜7]を得た。[結晶性ポリエステル樹脂2〜7]の融点、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、酸価、水酸基価の測定結果を表1に示す。
結晶性ポリエステル2
1,4−ブタンジオール 25モル
フマル酸 21.25モル
無水トリメリット酸 5モル
ハイドロキノン 5.7g
結晶性ポリエステル3
1,4−ブタンジオール 23.75モル
エチレングリコール 1.25モル
フマル酸 22.75モル
無水トリメリット酸 1.65モル
ハイドロキノン 4.8g
結晶性ポリエステル4
1,4−ブタンジオール 22.5モル
エチレングリコール 5モル
フマル酸 23.75モル
無水トリメリット酸 5モル
ハイドロキノン 5.8g
結晶性ポリエステル5
1,4−ブタンジオール 25モル
フマル酸 22.5モル
コハク酸 1.25モル
無水トリメリット酸 1.65モル
ハイドロキノン 5.3g
結晶性ポリエステル6
1,4−ブタンジオール 23.75モル
1,6−ヘキサンジオール 1.25モル
フマル酸 23モル
マレイン酸 0.75モル
無水トリメリット酸 1.65モル
ハイドロキノン 5.2g
結晶性ポリエステル7
1,4−ブタンジオール 25モル
セバシン酸 23.75モル
無水トリメリット酸 1.65モル
ハイドロキノン 5.3g
−結晶性ポリエステル樹脂分散液の作製−
トナー原料となる結晶性ポリエステル樹脂分散液1〜13を、実施例1〜11および比較例1、2の方法により作製した。
(実施例1)
結晶性ポリエステル樹脂1を図4及び図5で示される粒子製造装置1の高圧セル14に投入し、超臨界流体として二酸化炭素を温度60℃、圧力40MPaになるように導入し、1時間攪拌を行った。このときの得られた溶融体(トナー溶融物)の粘度は、3mPa・sであった。尚、溶融体の粘度の測定には、ケンブリッジ・ビスコシティー社製粘度測定装置(VISCOlab PVT)を使用した。測定は測定部にサンプルをセットし、温度、圧力を制御し、粘度が一定になったところをその温度、圧力における粘度とした。次にバルブ23を開き、ポンプ22と不図示のヒータとを使用し、60℃、40MPaを維持するようにし、吐出装置31の粒状体形成部331に導入した。この状態でバルブ13bを開き、ポンプ12bを作動させ、結晶性ポリエステル樹脂1の溶融体を、吐出装置31の貯留部311に導入した。更に、信号発生装置320により交流周波数320KHzの正弦波を、積層PZTで構成された振動手段312に与え、吐出装置31を励振することにより、粒状体を形成し、これを大気圧に戻し酢酸エチル中に吐出することで樹脂分散液1を得た。この場合、吐出された溶融体が柱状から括れ状態を経て粒状化されることを下記に示す顕微ストロボ法により確認した。貫通孔317は厚さ50μmのSUS(ステンレス鋼)に直径8.0μmで、千鳥格子状に100個設けたものを使用した。このとき、ポンプ12aと背圧弁15を調整することにより高圧セル14内は、温度130℃、圧力65MPaを一定に維持するようにした。また、開放弁322のバルブを調整し、貯留部311内の圧力と粒状体形成部331上部の圧力差は80±50Kpaに制御した。
(実施例2〜10)
結晶性ポリエステル樹脂1を表2に示される結晶性ポリエステル樹脂に変更し、吐出時の高圧セル内の処理温度、処理圧力を表2で示される値に変更する以外は、製造例1と同様に操作して、樹脂分散液2〜10を得た。
(実施例11)
吐出時の高圧セル内の処理温度、処理圧力を表2で示される値に変更し、溶融物を吐出する際に、酢酸エチル中ではなく窒素雰囲気下で吐出を行い、粒子11を得た。この粒子11(320g)を酢酸エチル中に分散させ、樹脂分散液11を得た。
(比較例1)
金属製2L容器に結晶性ポリエステル樹脂1を100g、ペンタエリスリトールテトラベヘネートを100g、酢酸エチル400gを採り、79℃で加熱溶解させた後、氷水浴中で27℃/分の速度で急冷し、体積平均粒径が4μmの粗分散液を得た。これにガラスビーズ(3mmφ)500mlを加え、バッチ式サンドミル装置(カンペハピオ社製)で4時間粉砕を行い、体積平均粒径が0.4μmの樹脂分散液12を得た。
(比較例2)
使用する結晶性ポリエステル樹脂1を結晶性ポリエステル樹脂2に変更した以外は製造例12と同様の手順により、樹脂分散液13を得た。
<トナーの製造>
(実施例12)
−非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の調製−
加熱乾燥した二口フラスコに、アジピン酸ジメチル74部、テレフタル酸ジメチル192部、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物216部、エチレングリコール38部と、触媒としてテトラブトキシチタネート0.037部とを入れ、容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち昇温した後、150〜230℃で約12時間共縮重合反応させ、その後、210〜250℃で徐々に減圧して、非晶性ポリエステル樹脂を合成した。
次いで、この非晶性ポリエステル樹脂115部と、脱イオン水180部と、アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンR)5部とを混合して120℃に加熱した後、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理を1時間行うことにより、非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液(樹脂粒子濃度:40重量%)を調製した。
−トナー1の製造−
結晶性ポリエステル樹脂分散液1を105部と、非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を336部と、黒着色剤分散液45部と、離型剤分散液115部と、脱イオン水402部とを丸型ステンレス製フラスコ中に入れて、ウルトラタラックスT50で十分に混合・分散した。
次いで、これにポリ塩化アルミニウム0.37部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。さらに加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら52℃まで加熱した。これを52℃で3時間保持した後、ここに非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液1を緩やかに175部追加した。
その後、0.5N水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを8.5にした後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて攪拌を継続しながら90℃まで加熱し、3時間保持した。
反応終了後、冷却し、濾過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。これを更に40℃のイオン交換水3Lに再分散し、15分間、300rpmで攪拌・洗浄した。
これを更に5回繰り返し、濾液のpHが7.00、電気伝導度8.7μS/cm、表面張力が7.08Nmとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo.5Aろ紙を用いて固液分離を行い、次いで真空乾燥を12時間実施し、トナー母粒子Aを得た。
次にトナー母粒子Aの100重量部に対し、疎水性シリカ(キャボット製、TS720)を1.5重量部添加し、ヘンシェルミキサーにて3000rpmで5分間ブレンドしてトナー1を得た。
(実施例13〜22、比較例3〜4)
−トナー2〜13の製造−
使用する樹脂分散液を表2に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様に操作してトナー2〜13を得た。
このようにして得られた[トナー1]5質量%とシリコーン樹脂を被覆した平均粒子径が40μmの銅−亜鉛フェライトキャリア95質量%とを容器が転動して攪拌される型式のターブラーミキサーを用いて均一混合し帯電させて、現像剤1を調製した。また、使用するトナーをトナー2〜13に変更した以外は、上記と同様の手順により、現像剤2〜13を得た。
得られた現像剤1〜13について、画像形成装置(株式会社リコー製、IPSio Color 8100を使用)に装填し、画像を出力して、以下のようにして評価した。結果を表4に示す。
<画像濃度>
普通紙の転写紙(株式会社リコー製、タイプ6200)に0.3±0.1mg/cm2の付着量でベタ画像出力後、画像濃度をX−Rite(X−Rite社製)により測定し、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
◎:1.4以上
○:1.35以上1.4未満
△:1.3以上1.35未満
×:1.3未満
<クリーニング性>
画像面積率95%チャートを1000枚出力後の清掃工程を通過した感光体上の転写残トナーをスコッチテープ(住友スリーエム株式会社製)で白紙に移し、それをマクベス反射濃度計RD514型で測定し、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
◎:ブランクとの差が0.005未満である。
○:ブランクとの差が0.005〜0.010である。
△:ブランクとの差が0.011〜0.02である。
×:ブランクとの差が0.02を超える。
<帯電安定性>
各トナーを用いて、画像面積率12%の文字画像パターンを用いて、連続10万枚出力耐久試験を実施し、そのときの帯電量の変化を評価した。スリーブ上から現像剤を少量採取し、ブローオフ法により帯電量変化を求め、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
○:帯電量の変化が5μc/g未満である。
△:帯電量の変化が5μc/g以上10μc/g以下である。
×:帯電量の変化が10μc/gを超える。
<フィルミング性>
画像面積率100%、75%、及び50%の帯チャートを1000枚出力後の現像ローラ、及び感光体上のフィルミングを観察し、下記基準で評価した。
〔評価基準〕
◎:まったくフィルミングが発生していない。
○:うっすらとフィルミングの発生を確認できる。
△:スジ状にフィルミングが発生している。
×:全面にフィルミングが発生している。
<定着性>
定着ローラとしてテフロン(登録商標)ローラを用いた電子写真方式の複写機(MF−200、リコー社製)の定着部を改造した装置を用い、定着ベルトの温度を変化させて、普通紙と厚紙の転写紙タイプ6200(リコー社製)及び複写印刷用紙<135>(NBSリコー社製)に、トナーの付着量が0.85±0.1mg/cm2のベタ画像を形成した。このとき、普通紙でホットオフセットの発生しない上限温度を定着上限温度とした。また、厚紙でベタ画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる下限温度を定着下限温度とした。◎〜△が合格基準である。
〔定着上限温度の評価基準〕
◎:190℃以上
○:180℃以上190℃未満
△:170℃以上180℃未満
×:170℃未満
〔定着下限温度の評価基準〕
◎:135℃未満
○:135℃以上145℃未満
△:145℃以上155℃未満
×:155℃以上