JP5736566B2 - 液体シンチレーションによる放射能絶対測定方法、および、放射能測定装置の校正方法 - Google Patents

液体シンチレーションによる放射能絶対測定方法、および、放射能測定装置の校正方法 Download PDF

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Description

本発明は、液体シンチレーションによる放射能絶対測定方法、および、放射能測定装置の校正方法に係り、特に、放射能絶対測定の測定不確かさ、および、放射能測定装置校正の校正不確かさを向上することが可能な、液体シンチレーションによる放射能絶対測定方法、および、放射能測定装置の校正方法に関する。
3Hや14C等、β線崩壊する核種、或いは、55Fe等、軌道電子捕獲崩壊を起こす核種の放射能絶対測定法として、液体シンチレーション計測法の一種であるTriple to Double Coincidence Ratio(TDCR)法がある(非特許文献1〜3参照)。この方法は、測定する核種を液体シンチレータと混合して放射線源とし、これを3本の光電子増倍管等の光検出器(今後、代表的光検出器として光電子増倍管と記載する)で測定するものである。放射性核種の崩壊により放出される放射線で液体シンチレータが発光するが、この光に対する、2本の光電子増倍管による同時計数率と、3本の光電子増倍管による同時計数率を用いて放射能絶対測定を行う。
従来からの放射能絶対測定の方法は以下のとおりである。図1のような装置を用いて、放射線源10から放出される光を計数する。ここで、1は検出装置であり、光を検出する3本の光電子増倍管20、30、40を備えているとともに、放射線による発光が生じる放射線源10を装荷することができる。100は計数装置であり、AND回路110〜140と、OR回路150と、計数記録部160と、タイマー170と、を備えている。前記計数記録部160では、2本の光電子増倍管の計数率と3本の光電子増倍管の計数率が記録される。また、図2のように、計数装置100に計算機200を接続し、該計算機200により、放射能絶対値を算出する。ここで、1は検出装置、210は入出力装置、220は表示装置である。
このような測定システムを用いて、放射能絶対測定値は以下のように求められる。
3本の光電子増倍管の検出効率が同じと考えられる場合には、実験的に得られる、2本同時計数率をND、3本同時計数率をNTとし、2本同時計数の計数効率をεD、3本同時計数の計数効率をεT、見かけの崩壊率(放射能)をN0、TDCR値をκとすると、以下の式が得られる。
Figure 0005736566
ここで、N(E)は規格化されたβ線スペクトル、ηは光電子数であり、
η=η0Q(E)W(E)E (3)
で表される。η0は光電子変換率、Q(E)はクエンチ関数、W(E)はβ線散逸率、Eはβ線エネルギーであり、Emaxは最大β線エネルギー、Iexcは液体シンチレータの平均励起エネルギーである。
光減衰フィルタ等により、計数効率εを変化させながらND、NTを複数組測定し、これらをND,i exp、NT,i expとし、(2)式によりκi expを求める。
理論計算により
Figure 0005736566
が最小となるようなεD,i th、εT,i th、κi thを求め、それらに応じた見かけの放射能を次の(1’)式より求める。
Figure 0005736566
図3に例示するように、N0をκexpの関数としてフィッティングを行い、κexp=1に外挿したとき、即ち、εD=εT=1のときのN0を放射能絶対値Aとする。
具体的には、同一の放射線源に対して、条件を変えながら測定し、複数のTDCR値κexpと計数率ND expの組の実験データを得る。計数効率を理論的に計算するのに必要なパラメータである、クエンチ関数Q(E)に関わるkB値を実験的に決定することは困難であるので、いくつかのkB値を経験的に用いて、実験点ごとに、実験TDCR値κexpと理論TDCR値κthが等しくなるように、理論TDCR値κthと理論検出効率εD thの組を計算する。理論検出効率εD thと実験計数値ND expを用いて、各々の実験点において、放射能を求める。このときkB値によって、各々の実験点での放射能は変わってくるが、TDCR値に依らず放射能がほぼ一定になるようなkB値を採用して、実験点での放射能をTDCR値について外挿して、TDCR値が1になるときの放射能を放射能絶対値としていた。
尚、以上は3本の光電子増倍管の検出効率が等しいと考えられるときに成り立つ。3本の光電子増倍管の検出効率が互いに異なる場合には、以下のような方法がある。
3本の光電子増倍管をA、B、Cとして、実験的に求められるAとBの同時計数率をNAB、BとCの同時計数率をNBC、CとAの同時計数率をNCA、2本同時計数率をND、3本同時計数率をNTとし、AとBの同時計数の計数効率をεAB、BとCの同時計数の計数効率をεBC、CとAの同時計数の計数効率をεCA、2本同時計数の計数効率をεD、3本同時計数の計数効率をεT、見かけの崩壊率(放射能)をN0、TDCR値をκとする。N0とκは、前出(1)式および(2)式により定義される。また、AとBに関するTDCR値をκAB、BとCに関するTDCR値をκBC、BとCに関するTDCR値をκCAとし、以下の式のように表す。
Figure 0005736566
光減衰フィルタ等により、計数効率εを変化させながらNAB、NBC、NCA、ND、NTを複数組測定し、これらをNAB,i exp、NBC,i exp、NCA,i exp、ND,i exp、NT,i expとし、(2)式および(5)〜(7)式によりκAB,i exp、κBC,i exp、κCA,i exp、κi expを求める。
理論計算により
Figure 0005736566
が最小となるようなεAB,i th、εBC,i th、εCA,i th、εD,i th、εT,i th、κAB,i th、κBC,i th、κCA,i th、κi thを求め、それらに応じた見掛けの放射能を前出(1’)式より求める。
0をκexpの関数としてフィッティングを行い、κexp=1のときのN0を放射能絶対値Aとする。
R.Broda, A review of the triple-to-double coincidence ratio (TDCR) method for standardizing radionuclides, Applied Radiation and Isotopes, 58 (2003) 585-594 D. Rodrigues, et. al., General data analysis code for TDCR liquid scintillation counting, Applied Radiation and Isotopes, 66 (2008) 1049-1054 L. Mo et al., Activity measurements of 3H using the TDCR method and observation of source stability, Applied Radiation and Isotopes, 68 (2010) 1540-1542
前記方法において、理論計算により計数効率を求めるにあたっては、放射線のエネルギースペクトル等、先験的な量が必要であるが、このうち、放射線の運動エネルギーからシンチレータに付与されるエネルギーを算出する過程で必要とされる、クエンチングの度合いを表すkB値については、確たる値を決めることが難しく、おおよその値が用いられてきた。また、理論計算値(以下、単に理論値とも称する)と実験計数値(以下、単に実験値とも称する)の整合性を表す指標であるR値(前出(4)式又は(8)式参照)は、TDCR値にのみ1次元的に依存するものであるが、TDCR法の定義である、TDCR値を1に外挿して放射能を得ることを鑑みれば、TDCR値と計数効率(あるいは計数率)の2次元的な量について考慮すべきと考えられる。さらに、見かけの放射能をTDCR値でフィッティングして外挿していたが、フィッティング関数に関しては理論的根拠が薄弱であった。
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、クエンチングの度合いを表すパラメータ(kB値)を実験的に求めるとともに、見かけの放射能のフィッティングを排除して、放射能絶対値の測定不確かさを向上することを第一の課題とする。
これに加え、この方法で得られた放射能絶対値を用いて、PET装置やウェルカウンタ等の放射能測定装置の校正を行い、校正不確かさを向上することを、第二の課題とする。
本発明は、測定する核種を液体シンチレータと混合して放射線源とし、これを3つの光検出器で測定する、液体シンチレーションによる放射能絶対測定方法において、一方の軸を計数効率、他方の軸をTDCR値とする(計数効率、TDCR値)平面上で、理論計算値と実験計数値の整合性を表す評価指標を設定し、該評価指標を用いて、理論計算値と実験計数値の差異を最小にする、クエンチングの度合いを示すパラメータと放射能絶対値を繰り返し計算により求めることにより、前記課題を解決したものである。
ここで、実験的に、計数効率を変えながら、放射線源を測定し、複数の、同時計数効率とTDCR値の測定データの組を得る一方、理論計算に於いて、クエンチングの度合いと放射能値をパラメータとして、同時計数効率をTDCR値の関数として求め、これと実験による同時計数効率とTDCR値の測定データの組との差異を評価指標として、この差異が極小値となるように、クエンチングの度合いを固定し放射能値をパラメータとして、理論計算を繰り返し、差異が極小値となったときの放射能値を、あるクエンチングの度合いにおける放射能値とし、さらに、クエンチングの度合いを変化させ、あるクエンチングの度合いにおける実験計数値と理論計算値の差異が、放射能値をパラメータとして極小値をとるように、理論計算を繰り返し、差異が極小値となるときの放射能値をクエンチングの度合いの関数として、極小値をとるとき、この放射能値を、放射能絶対値とすることができる。
又、前記評価指標を、実験値由来の計数効率と理論計算由来の計数効率の差と、TDCR値の実験値と理論計算値の差の自乗和とすることができる。
同様に、計数効率は計数率を放射能絶対値で割った値であるため、一方の軸を計数率、他方の軸をTDCR値とする(計数率、TDCR値)平面上で、理論計算値と実験計数値の整合性を表す評価指標を設定し、該評価指標を用いて、理論計算値と実験計数値の差異を最小にする、クエンチングの度合いを示すパラメータと放射能絶対値を繰り返し計算により求めることにより、前記課題を解決することもできる。
本発明は、又、放射能測定装置によって測定された放射線源、放射能測定装置によって測定された放射線源から調製された線源、放射能測定装置によって測定された放射線源のもとである線源から調整された線源に対して、上記のいずれかの方法で前記放射能絶対測定を行い、得られた放射能絶対値、あるいは、該放射能絶対値により導かれる放射能濃度を用いて、前記放射能測定装置を校正することを特徴とする放射能測定装置の校正方法を提供するものである。
ここで、前記放射能測定装置がPET装置である場合、放射性溶液が入っているPET用ファントムを、該PET装置で測定する一方、上記のいずれかの方法を用いた前記放射能絶対測定によって、前記ファントムから取り出した抽出溶液の中の放射能濃度を得て、該抽出溶液の中の放射能濃度から換算した前記ファントムの中の放射能濃度と前記PET装置により得られる画像の画素の強度を結びつけることで校正を行うことができる。
あるいは、前記放射能測定装置がウェルカウンタである場合、放射線源を該ウェルカウンタで測定する一方、上記のいずれかの方法を用いた前記放射能絶対測定によって前記放射線源の放射能絶対値を得て、該放射能絶対値と前記ウェルカウンタの測定値を結びつけることで校正を行うことができる。
あるいは、前記放射能測定装置がウェルカウンタであり、放射線源から放射性溶液を取り出して複数の抽出溶液とし、該抽出溶液の一方をウェルカウンタで測定する一方、上記のいずれかの方法を用いた前記放射能絶対測定によって前記抽出溶液の他方の放射能絶対値を得て、該放射能絶対値とウェルカウンタの測定値を結びつけることで校正を行うことができる。
あるいは、前記放射能測定装置が電離箱である場合、放射線源をシリンジ等の容器に入れ、これを電離箱で測定し、その後、放射線源を希釈する等調製して、上記のいずれかの方法を用いた前記放射能絶対測定によって前記放射線源の放射能絶対値を得て、該放射能絶対値と前記電離箱の測定値を結びつけることで校正を行うことができる。この場合、希釈された放射線源として、PET用ファントムを用いることができる。
本発明によれば、図4のようにTDCR値と計数効率の2次元的な量で、理論計算値と実験計数値を整合させることで、放射能絶対値A、及び、従来、実験的に求めることのできなかった計算パラメータであるkB値を、実験的に決定することができるようになり、見かけの放射能のフィッティングを排除して、放射能絶対値の測定不確かさを向上することができる。これにより、β崩壊核種や軌道電子捕獲崩壊核種の放射能絶対値の測定精度を向上できる。
更に、PET用ファントムに注入された放射性溶液、或いは、ウェルカウンタ、電離箱の校正のための放射線源等の放射能絶対値を、この方法に基づいて求めることにより、PET装置やウェルカウンタ等の校正を行うことができ、放射能絶対値に基づくことで、校正不確かさを向上することができる。従って、放射能測定装置の校正において、より精度の高い校正が行えるようになる。また、放射能測定の応用例としては、14Cを用いたバイオエタノール度の測定の高精度化、18Fや22Na等、核医学診断用核種の放射能の測定精度の向上による診断精度の向上、89Sr等、癌治療用核種の放射能の測定精度の向上による、より正確な放射性薬剤の投与と治癒効果の向上等が期待できる。
本発明が適用されるTDCR装置の基本的な構成を示すブロック図 TDCR装置による測定システムのブロック図 従来法による見掛けの放射能のフィッティングを示す図 本発明法における(計数効率、TDCR値)平面でのTDCR値と計数効率による実験値と理論値の整合を示す図 本発明法における放射能絶対測定のアルゴリズムを示す流れ図 本発明法におけるPET装置の校正を示す図 本発明法におけるウェルカウンタの校正の一例を示す図 本発明法におけるウェルカウンタの校正の他の例を示す図 本発明法における電離箱の校正を示す図
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図5は、本発明に係る放射能絶対測定法の実施形態のアルゴリズムを示す流れ図である。このようなアルゴリズムを計数装置あるいは計算機に実装することにより、放射能絶対値を計算できる。
図5のステップ300では、図1、図2のような装置を用いて、実験的に計数値NAB,i exp、NBC,i exp、NCA,i exp、ND,i exp、NT,i expを取得し、それらから(2)式および(5)〜(7)式により実験的TDCR値κAB,i exp、κBC,i exp、κCA,i exp、κi expを求める。
次いで、ステップ310では、最初に先験的kB値を用いて、従来法により放射能近似値N0を求める。このkB値とN0を初期値とする。
次いで、ステップ320では、先験的kB値を参考にして、kB値に関する繰り返し計算を行うためのkB値の範囲を決める。
次いで、ステップ340では、放射能近似値N0を参考にして、N0値に関する繰り返し計算を行うためのN0値の範囲を決める。
次いで、ステップ360では、理論計算によりεAB th、εBC th、εCA th、εD th、εT th、κAB th、κBC th、κCA th、κthを求める。これらは、それぞれ光電子増倍管で増倍される光電子の個数の関数となっている。具体的には、図4に例示したような(計数効率、TDCR値)平面上に於いて
Figure 0005736566
が最小となるような、εAB,i th、εBC,i th、εCA,i th、εD,i th、εT,i th、κAB,i th、κBC,i th、κCA,i th、κi thを求め、RDの最小値をRD minとする。ここで、Wε,i、Wκ,iは重みであり、εD,i exp、κi expの不確かさ等を用いることができる。
同様に(計数率、TDCR値)平面上で、RD
Figure 0005736566
として、RDが最小となるような、εAB,i th、εBC,i th、εCA,i th、εD,i th、εT,i th、κAB,i th、κBC,i th、κCA,i th、κi thを求め、RDの最小値をRD minとしてもよい。ここで、WND,i、Wκ,iは重みであり、ND,i、κi expの不確かさ等を用いることができる。
次いで、ステップ370では、N0値をステップ340で決めただけ変化させてRD minをN0値の関数として求めたか、判別する。
ステップ370の判別結果が「はい」であった場合、ステップ380に進み、RD minに極小値があるか、判別する。
ステップ380の判別結果が「はい」であった場合、ステップ390へ進み、RD minのN0値に関する極小値をRD min_Noとする。
次いで、ステップ400では、kB値をステップ320で決めただけ変化させてRD min_NoをkB値の関数として求めたか、判別する。
ステップ400の判別結果が「はい」の場合、ステップ410に進み、RD min_Noの極小値が得られたか、判別する。
ステップ410の判別結果が、「はい」の場合、ステップ420に進み、RD min_Noの極小値をRD min_No_kBとする。
次いで、ステップ430に進み、RD min_No_kBが得られるときのN0値を放射能絶対値Aとする。
一方、ステップ370の判定結果が「いいえ」の場合、ステップ360に戻る。ステップ380の判定結果が「いいえ」の場合、ステップ350に進み、N0値の範囲を決めなおして、ステップ360に進む。ステップ400の判定結果が「いいえ」の場合、ステップ340に戻る。ステップ410の判定結果が「いいえ」の場合、ステップ330に進み、kB値の範囲を決めなおして、ステップ340に進む。
上記方法の場合、kB値を固定してN0値を変化させ、然る後にkB値を変化させて、kB値を変化させる都度、N0値を変化させ、放射能絶対値Aを求めていたが、逆に、N0値を固定してkB値を変化させ、然る後にN0値を変化させて、N0値を変化させる都度、kB値を変化させ、放射能絶対値Aを求めることも可能である。
このようにして得られた放射能絶対値Aを、PET装置やウェルカウンタ、電離箱等の校正に用いることができる。PET装置の場合、図6のように、PET用ファントム502の中に18F等を含む放射性溶液を入れて、PET装置501で測定し、該PET装置501により得られる画像の画素の強度とファントム502の中の放射能濃度を結びつけることで校正を行う。このファントム502の中の放射能濃度は、ファントム502をPET装置501で測定した後に、ファントムの中から適量放射性溶液を取り出して抽出溶液503とし、該抽出溶液503の重さを測定した後、本発明の方法によりTDCR装置504を用いて放射能絶対値を得て、放射能絶対値を重さで割り、さらに既知の抽出溶液の密度をかけることにより、求めることができる。
同様に、ウェルカウンタの場合、図7のように、18F等の放射線源601を、ウェルカウンタ602で測定し、その後で、本発明の方法によりTDCR装置603を用いて放射線源601の放射能絶対値を得て、該放射能絶対値とウェルカウンタ602の測定値を結びつけることで、校正を行うことができる。
又、ウェルカウンタの場合、図8のように、18F等の放射線源651から、適量の放射性溶液を取り出して、複数の抽出溶液652、653とし、該抽出溶液の一方652をウェルカウンタ654で測定し、本発明の方法によりTDCR装置655を用いて前記抽出溶液の他方653の放射能絶対値を得て、該放射能絶対値とウェルカウンタ654の測定値を結びつけることで、校正を行うこともできる。
同様に、電離箱の場合、図9のように、シリンジ等の容器に入った18F等の線源溶液701の放射能を電離箱702で測定すると共に、線源溶液の重さを測定する。その後、線源溶液701を希釈して、希釈線源703とし、希釈倍率を求めておく。該希釈線源703から、適量放射性溶液を取り出して、抽出溶液704とする。該抽出溶液704の重さを測定した後、本発明の方法によりTDCR装置705を用いて放射能絶対値を得て、放射能絶対値を重さで割ることで、希釈線源703の放射能濃度を算出できる。線源溶液701と希釈線源703の希釈倍率に基づいて、線源溶液701の放射能絶対値に基づいた放射能が求まるので、電離箱702に表示された放射能と放射能絶対値に基づいた放射能を結びつけることで、校正を行うことができる。ここで、希釈線源703はPET用ファントムでも良い。
図1および図2の構成で、放射線源10として14C線源を用いた。光電子増倍管(20、30、40)に対して所定の位置に放射線源10を設置した。光電子増倍管(20、30、40)から出力される信号を、計数装置100で計数するとともに、計算機200に計数と測定時間が送られた。計算機200に実装された図5のアルゴリズムにより、14C線源の放射能絶対値が求められた。従来法では、kB値由来の放射能不確かさが0.35%程度であったが、本発明法では0.02%と10分の1以下に改善できた。
図1および図2の構成で、放射線源10として18F線源を用いた。光電子増倍管(20、30、40)に対して所定の位置に放射線源10を設置した。光電子増倍管(20、30、40)から出力される信号を、計数装置100で計数するとともに、計算機200に計数と測定時間が送られた。計算機200に実装された図5のアルゴリズムにより、18F線源の放射能絶対値が求められた。
図6の構成で、ファントム502に18Fを注入した。ファントム502の画像をPET装置501で撮像し、その後、ファントム502から抽出溶液503を取り出し、抽出溶液503の重さを量った後、TDCR装置504により放射能絶対値を得た。重さと既知の抽出溶液の密度、放射能絶対値から放射能濃度が得られ、PET装置501で撮像して得られた画像の画素の強度を放射能濃度で関連付けることで、校正が行えた。
図7の構成で、18F放射線源601をウェルカウンタ602で測定し、その後、TDCR装置603で放射線源601の放射能絶対値を求めた。得られた放射能絶対値とウェルカウンタ602で測定値を関連付けることで、ウェルカウンタ602の校正が行えた。
図9の構成で、放射線源である、シリンジに入れた18F線源溶液701の放射能を電離箱702で測定すると共に、該線源溶液701の重さを電子天秤で測定した。その後、線源溶液701を希釈して、希釈線源703とし、希釈倍率を求めた。該希釈線源703から、適量放射性溶液を取り出して、抽出溶液704とし、これの重さを電子天秤で測定した後、TDCR装置705を用いて放射能絶対値を得た。この放射能絶対値による線源溶液701の放射能と電離箱702に表示された放射能を関連付けることで、校正を行えた。
なお、前記実施形態においては、光検出器として、検出効率が互いに異なる光電子増倍管が用いられていたが、検出効率が同じ光電子増倍管を用いても良い。又、光電子増倍管を、他の光検出器に置き換えてもかまわない。更に、放射線源や放射線の種類も、前記実施形態に限定されない。
本発明は、放射能絶対測定に用いられる。また、医療用放射能測定装置等、放射線測定装置の校正に利用できる。
1…検出装置
10、601、651…放射線源
20、30、40…光電子増倍管
100…計数装置
110、120、130、140…AND回路
150…OR回路
160…計数記録部
170…タイマー
200…計算機
210…入出力装置
220…表示装置
501…PET装置
502…ファントム
503、652、653、704…抽出溶液
504、603、655、705…TDCR装置
602、654…ウェルカウンタ
701…線源溶液(放射線源)
702…電離箱
703…希釈線源

Claims (8)

  1. 測定する核種を液体シンチレータと混合して放射線源とし、これを3つの光検出器で測定する、液体シンチレーションによる放射能絶対測定方法において、
    一方の軸を計数効率又は計数率、他方の軸をTDCR値とする(計数効率又は計数率、TDCR値)平面上で、理論計算値と実験計数値の整合性を表す評価指標を設定し、
    該評価指標を用いて、理論計算値と実験計数値の差異を最小にする、クエンチングの度合いを示すパラメータと放射能絶対値を繰り返し計算により求めることを特徴とする放射能絶対測定方法。
  2. 実験的に、計数効率を変えながら、放射線源を測定し、複数の、同時計数効率又は計数率とTDCR値の測定データの組を得る一方、理論計算に於いて、クエンチングの度合いと放射能値をパラメータとして、同時計数効率又は計数率をTDCR値の関数として求め、
    これと実験による同時計数効率又は計数率とTDCR値の測定データの組との差異を評価指標として、この差異が極小値となるように、クエンチングの度合いを固定し放射能値をパラメータとして、理論計算を繰り返し、
    差異が極小値となったときの放射能値を、あるクエンチングの度合いにおける放射能値とし、
    さらに、クエンチングの度合いを変化させ、あるクエンチングの度合いにおける実験計数値と理論計算値の差異が、放射能値をパラメータとして極小値をとるように、理論計算を繰り返し、
    差異が極小値となるときの放射能値をクエンチングの度合いの関数として、極小値をとるとき、この放射能値を、放射能絶対値とすることを特徴とする請求項1に記載の放射能絶対測定方法。
  3. 前記評価指標が、実験値由来の計数効率と理論計算由来の計数効率の差と、TDCR値の実験値と理論計算値の差の自乗和であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射能絶対測定方法。
  4. 放射能測定装置によって測定された放射線源、放射能測定装置によって測定された放射線源から調製された線源、放射能測定装置によって測定された放射線源のもとである線源から調整された線源に対して、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法で前記放射能絶対測定を行い、
    得られた放射能絶対値、あるいは、該放射能絶対値により導かれる放射能濃度を用いて、前記放射能測定装置を校正することを特徴とする放射能測定装置の校正方法。
  5. 前記放射能測定装置がPET装置であり、
    放射性溶液が入っているPET用ファントムを、該PET装置で測定する一方、
    前記放射能絶対測定によって、前記ファントムから取り出した抽出溶液の中の放射能濃度を得て、
    該抽出溶液の中の放射能濃度から換算した前記ファントムの中の放射能濃度と前記PET装置により得られる画像の画素の強度を結びつけることで校正を行うことを特徴とする請求項4に記載の放射能測定装置の校正方法。
  6. 前記放射能測定装置がウェルカウンタであり、
    放射線源を該ウェルカウンタで測定する一方、
    前記放射能絶対測定によって前記放射線源の放射能絶対値を得て、
    該放射能絶対値と前記ウェルカウンタの測定値とを結びつけることで校正を行うことを特徴とする請求項4に記載の放射能測定装置の校正方法。
  7. 前記放射能測定装置がウェルカウンタであり、
    放射線源から放射性溶液を取り出して複数の抽出溶液とし、
    該抽出溶液の一方をウェルカウンタで測定する一方、
    前記放射能絶対測定によって前記抽出溶液の他方の放射能絶対値を得て、
    該放射能絶対値とウェルカウンタの測定値を結びつけることで校正を行うことを特徴とする請求項4に記載の放射能測定装置の校正方法。
  8. 前記放射能測定装置が電離箱であり、
    放射線源を該電離箱で測定する一方、
    前記放射能絶対測定によって前記放射線源を希釈した放射線源の放射能絶対値を得て、
    該放射能絶対値と前記電離箱の測定値とを結びつけることで校正を行うことを特徴とする請求項4に記載の放射能測定装置の校正方法。
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