JP5734456B2 - ペリレンを基礎とする半導体、並びにそれらの製造及び使用方法 - Google Patents

ペリレンを基礎とする半導体、並びにそれらの製造及び使用方法 Download PDF

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Description

背景
有機発光ダイオード(OLED)、有機光電装置(OPV)、及び有機電界効果トランジスタ(OFET)における近年の開発は、有機エレクトロニクスの分野において多くの機会が開かれている。この分野における1つの挑戦は、高い移動度を有する環境的に安定な電子輸送(n−タイプ)有機半導体を有する薄膜装置を開発することである。有機n−タイプ材料の性能及び安定性は、それらのp−タイプの片方より著しく遅れる。有機n−タイプ材料の技術を高めるためのいくつかの挑戦は、周囲条件(例えば空気)に対するそれらのバルネラビリティ及び溶液処理可能性を含む。例えば、それは、通常の溶液中で溶解されるべきこれらの材料のために望ましく、安価な印刷方法のためのインク中に形成されうる。
ほとんど通常の空気安定n−タイプ有機半導体は、銅フタロシアニン(CuF16Pc)、フルオロアシルオリゴチオフェン(例えばDFCO−4TCO)、N,N’−フルオロカーボン置換したナフタレンジイミド(例えばNDI−F、NDI−XF)、シアノ置換したペリレンビス(ジカルボキシミド)(例えばPDI−FCN2)、及びシアノ置換したナフタレンビス(ジカルボキシミド)(例えばNDI−8CN2)を含む。例えばBao et al. (1998), J. Am. Chem. Soc., 120: 207-208; de Oteyza et al. (2005), Appl. Phys. Lett., 87: 183504; Schoen et al. (2000), Adv Mater. 12: 1539-1542; Ye et al. (2005), Appl. Phys. Lett., 86: 253505; Yoon et al. (2006), J. Am. Chem. Soc., 128: 12851 -12869; Tong et al. (2006), J. Phys. Chem. B., 110: 17406-17413; Yuan et al. (2004), Thin Solid Films, 450: 316-319; Yoon et al. (2005), J. Am. Chem. Soc., 127: 1348-1349; Katz et al. (2000), J. Am. Chem. Soc., 122: 7787-7792; Katz et al. (2000), Nature (London), 404: 478-481 ; Katz et al (2001), Chem. Phys. Chem., 3: 167-172; Jung et al. (2006), Appl. Phys. Lett., 88: 183102; Yoo et al. (2006), IEEE Electron Device Lett., 27: 737-739; Jones et al. (2004), Angew. Chem., Int. Ed. Engl., 43: 6363-6366;及びJones et al. (2007), J. Am. Chem. Soc., 129: 15259-15278を参照。リレンビス(ジカルボキシミド)は、特に、その強固な性質、順応性のある分子軌道エネルギー、及び優れた電荷輸送特性のために魅力的である。しかしながら、PDI−FCN2及びNDI−Fを含む高い移動度のリレン化合物は、乏しい溶解度を有する。一方で、可溶性リレン化合物は、乏しい電荷輸送特性を有する。
従って、高いスループットのリール・ツー・リール製造によって製造されてよい安価な広範囲有機エレクトロニクスにおいて与えられた潜在的適用を考慮すれば、新たな有機半導体材料、特にそれらの加工所望特性、例えば空気安定性、高い電荷輸送効率、及び通常の溶剤における良好な溶解度が望まれる。
要約
前記を考慮して、本発明の教示は、それらの概説された前記を含む、技術水準の種々の不足及び欠点を扱うことができる、有機半導体及び関連した組成物、複合材、及び/又はデバイスを提供する。
より詳述すれば、本発明は、窒素で官能化したリレンビス(ジカルボキシミド)化合物の鏡像異性的に富化した混合物から製造された有機半導体を提供する。特に、化合物のそれぞれの2つのイミド窒素原子の置換基は、不斉中心を含み、かつ(R)−又は(S)−配置を有する。驚くべきことに、(R,R)−立体異性体と(S,S)−立体異性体との比(又はその逆)が約0.8:0.2〜約0.98:0.2である鏡像異性的に富化した混合物は、(R,R)−立体異性体及び(S,S)−立体異性体の1:1の混合物(又はラセミ混合物)と比較した場合に、高く改良された電子特性を導きうることが見出された。特に、薄膜トランジスタにおける半導体として導入される場合に、本発明の鏡像異性的に富化した混合物は、同一の化合物のラセミ混合物よりも、少なくとも2倍、及びある場合において、6倍と同等である移動度を呈することができる。さらに、驚くべきことに、本発明の鏡像異性的に富化した混合物は、光学的に純な異性体のどちらかと比較して、実質的に類似し、及びある場合において、より良好な電子特性を有する。
前記と同様に本発明の他の特徴及び利点は、続く図面、明細書及び特許請求の範囲からより完全に理解される。
以下に記載された図面は、単に例示的な目的であることを理解すべきである。図面は、必ずしも尺度通りではなく、一般に、強調は、本発明の原理を例示するためにおかれる。図面は、あらゆる方法で本発明の範囲を制限すると意図すべきでない。
図1は、薄膜トランジスタの4つの異なる配置:ボトムゲートトップコンタクト(トップレフト)、ボトムゲートボトムコンタクト(トップライト)、トップゲートボトムコンタクト(ボトムレフト)、及びトップゲートトップコンタクト(ボトムライト)を示す;それぞれ本発明のポリマーを導入するために使用されてよい。 図2は、本発明による鏡像異性的に富化したビス(ジカルボキシミド)で得られた薄膜トランジスタの移動度と、ラセミ混合物及びビス(ジカルボキシミド)の光学的に純な鏡像異性体で得られた移動度とを比較する。鏡像異性的に富化したビス(ジカルボキシミド)混合物を立体異性アミンから製造した。 図3は、本発明による鏡像異性的に富化したビス(ジカルボキシミド)で得られた薄膜トランジスタの移動度と、ラセミ混合物及びビス(ジカルボキシミド)の光学的に純な鏡像異性体で得られた移動度とを比較する。鏡像異性的に富化したビス(ジカルボキシミド)混合物を鏡像異性的に富化したアミン混合物から製造した。
発明の詳細な説明
本明細書にわたって、組成物が、特定の成分を有する、含む、又は含有するとして記載され、又は方法が、特定の方法工程を有する、含む、又は含有するとして記載される場合に、本発明の組成物は、実質的に列挙された成分からなり、又は列挙された成分からなり、かつ本発明の方法は、実質的に列挙された方法工程からなり、又は列挙された方法工程からなることが企図される。
明細書において、要素又は成分が、列挙された要素又は成分のリストに含まれる、及び/又はそれらのリストから選択されることが言われる場合に、要素又は成分は、列挙された要素又は成分のいずれか1つであってよく、又は要素又は成分は、列挙された要素又は成分の2つ以上からなる群から選択されてよいことが理解されるべきである。さらに、組成物、装置、又は本明細書において記載されている方法の要素及び/又は特徴は、本明細書における明示又は暗示かどうか、本発明の趣旨及び範囲から逸脱しない種々の方法において組み合わせられてよいことを理解すべきである。
"含む(include)"、"含む(includes)"、"含んでいる(including)"、"有する(have)"、"有する(has)"又は"有している(having)"の用語の使用は、一般に、特に述べられない限り、制限されず、かつ限定されないと理解されるべきである。
本明細書において単数形の使用は、特に述べられない限り、複数形を含む(及び逆も同じ)。さらに、"約"の用語の使用は、量的値の前にあり、特に述べられない限り、それ自体特定の量的値も含む。本明細書において使用されるように、指示又は推測されない限り、 "約"の用語は、公称値から±10%の変動をいう。
工程のオーダー又はある作用を実施するためのオーダーは、本発明が実施可能のままである限り、重要でない。さらに、2つ以上の工程及び作用は、同時に実施されてよい。
本明細書において使用されるように、"p−タイプ半導体材料"又は"ドナー"材料は、多数電流又は電荷キャリヤーとして正孔を有する半導体材料、例えば有機半導体材料をいう。ある実施態様において、p−タイプ半導体材料が基材上に堆積される場合に、それは、約10-5cm2/Vsの過剰量で正孔移動度を提供することができる。電界効果装置の場合において、p−タイプ半導体は、約10よりも大きい電流オン/オフ率を呈することもできる。
本明細書において使用されるように、"n−タイプ半導体材料"又は"アクセプタ"材料は、多数電流又は電荷キャリヤーとして電子を有する半導体材料、例えば有機半導体材料をいう。ある実施態様において、n−タイプ半導体材料が基材上に堆積される場合に、それは、約10-5cm2/Vsの過剰量で電子移動度を提供することができる。電界効果装置の場合において、n−タイプ半導体は、約10よりも大きい電流オン/オフ率を呈することもできる。
本明細書において使用されるように、"移動度"は、電荷キャリヤー、例えばp−タイプ半導体材料の場合における正孔(又は正の電荷の単位)及びn−タイプ半導体材料の場合における電子(又は負の電荷の単位)が、電場の影響下で材料を進む速度の測定をいう。装置の構造に依存するこのパラメータは、電界効果装置又は空間電荷制限電流測定を使用して測定されてよい。
本明細書において使用されるように、化合物は、その半導体材料として化合物を導入するトランジスタが、化合物が周囲条件、例えば空気、周囲温度、及び湿度に、経時的に曝される場合に、およそその当初の測定で維持されているキャリヤー移動度を呈する場合に、"周囲安定"又は"周囲条件で安定"と考えられる。例えば、化合物は、その化合物を導入するトランジスタが、空気、湿度及び温度を含む周囲条件に、3日、5日又は10日間にわたって曝された後に、その当初の値から20%より多く、又は10%より多く変動しないキャリヤー移動度を示す場合に、周囲安定と記載されてよい。
本明細書において使用されるように、"溶液処理可能"は、スピンコーティング、印刷(インクジェット印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等)、スプレーコーティング、電子スプレーコーティング、ドロップ鋳込成形、ディップコーティング、及びブレードコーティングを含む種々の溶液−相プロセスにおいて使用されてよい化合物(例えばポリマー)、材料又は組成物をいう。
本明細書において使用されるように、"ハロ"又は"ハロゲン"は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードをいう。
本明細書において使用されるように、"オキソ"は、二重結合酸素(すなわち=O)をいう。
本明細書において使用されるように、"アルキル"は、直鎖又は分枝鎖の飽和炭化水素基をいう。アルキル基の例は、メチル(Me)基、エチル(Et)基、プロピル(例えばn−プロピル及びイソプロピル)基、ブチル(例えばn−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル)基、ペンチル(例えばn−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)基、及びヘキシル基等である。種々の実施態様において、アルキル基は、炭素原子1〜40個(すなわちC1-40アルキル基)、例えば炭素原子1〜20個(C1-20アルキル基)を有してよい。ある実施態様において、アルキル基は、炭素原子1〜6個を有し、かつ"低級アルキル基"と言われてよい。低級アルキル基の例は、メチル基、エチル基、プロピル(例えばn−プロピル及びイソプロピル)基、ブチル(例えばn−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル)基である。ある実施態様において、アルキル基は、本明細書において記載されたように置換されてよい。アルキル基は、一般に、他のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基で置換されない。
本明細書において使用されるように、"ハロアルキル"は、1つ以上のハロゲン置換基を有するアルキル基をいう。種々の実施態様において、ハロアルキル基は、炭素原子1〜40個(すなわちC1-40ハロアルキル基)、例えば炭素原子1〜20個(C1-20ハロアルキル基)を有してよい。ハロアルキル基の例は、CF3、C25、CHF2、CH2F、CCl3、CHCl2、CH2Cl、C2Cl5等を含む。ペルハロアルキル基、すなわち全ての水素原子がハロゲン原子で置換されているアルキル基(例えばCF3及びC25)は、"ハロアルキル"の定義の範囲内で含まれる。例えば、C1-40ハロアルキル基は、式−Cs2s+1-t0 t[式中、X0は、それぞれの場合に、F、Cl、Br又はIであり、sは1〜40の範囲の整数であり、かつtは1〜81の範囲の整数であり、但し2s+1以下である]を有してよい。ペルハロアルキル基ではないハロアルキル基は、本明細書において記載されたように置換されてよい。
本明細書において使用されるように、"アルコキシ"は、−O−アルキル基をいう。アルコキシ基の例は、制限されることなく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ(例えばn−プロポキシ及びイソプロポキシ)基、t−ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基等を含む。−O−アルキル基におけるアルキル基は、本明細書において記載されたように置換されてよい。
本明細書において使用されるように、"アルキルチオ"は、−S−アルキル基(ある場合において、−S(O)w−アルキル基(式中wは0である)として表されてよい)をいう。アルキルチオの例は、制限されることなく、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ(例えばn−プロピルチオ及びイソプロピルチオ)基、t−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基等を含む。−S−アルキル基におけるアルキル基は、本明細書において記載されたように置換されてよい。
本明細書において使用されるように、"アルケニル"は、1つ以上の炭素−炭素二重結合を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基をいう。アルケニル基の例は、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ブタジエニル基、ペンタジエニル基、ヘキサジエニル基等を含む。1つ以上の炭素−炭素二重結合は、内側(例えば2−ブテン中で)又は末端(例えば1−ブテニル中で)であってよい。種々の実施態様において、アルケニル基は、炭素原子2〜40個(すなわちC2-40アルケニル基)、例えば炭素原子2〜20個(C2-20アルケニル基)を有してよい。ある実施態様において、アルケニル基は、本明細書において記載されたように置換されてよい。アルケニル基は、一般に、他のアルケニル基、アルキル基又はアルキニル基で置換されない。
本明細書において使用されるように、"アルキニル"は、1つ以上の三重炭素−炭素結合を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基をいう。アルキニル基の例は、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等を含む。1つ以上の三重炭素−炭素結合は、内側(例えば2−ブチン中で)又は末端(例えば1−ブチン中で)であってよい。種々の実施態様において、アルキニル基は、炭素原子2〜40個(すなわちC2-40アルキニル基)、例えば炭素原子2〜20個(C2-20アルキニル基)を有してよい。ある実施態様において、アルキニル基は、本明細書において記載されたように置換されてよい。アルキニル基は、一般に、他のアルキニル基、アルキル基、又はアルケニル基で置換されない。
本明細書において使用されるように、"環状部分"は、1つ以上の(例えば1〜6個の)環状炭素又は複素環を含んでよい。環状部分は、それぞれ例えば3〜24個の環原子を含むシクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基(飽和結合のみを含んでよく、又は芳香族性にかかわらず1つ以上の不飽和結合を含んでよい)であってよく、かつ場合により本明細書において記載されているように置換されてよい。環状部分が"単環部分"である場合の実施態様において、単環部分は、3〜14員環の芳香族又は非芳香族、環状炭素又は複素環である。単環部分は、例えばフェニル基又は5もしくは6員環のヘテロアリール基を含んでよく、それぞれ場合により本明細書において記載されているように置換されてよい。環状部分が"多環部分"である場合の実施態様において、"多環部分"は、スピロ原子によって、1つ以上の架橋された原子と互いに融合した(すなわち通常の結合を共有する)及び/又は互いに連結した2つ以上の環を含んでよい。多環部分は、8〜24員環の芳香族又は非芳香族、環状炭素又は複素環、例えばC8-24アリール基又は8〜24員環のヘテロアリール基を含み、それぞれ場合により本明細書において記載されているように置換されてよい。
本明細書において使用されるように、"シクロアルキル"は、環化したアルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基を含む非芳香族単環基をいう。種々の実施態様において、シクロアルキル基は、炭素原子3〜24個、例えば炭素原子3〜20個(すなわちC3-14シクロアルキル基)を有してよい。シクロアルキル基は、単環(シクロヘキシル)又は多環(例えば融合、架橋及び/又はスピロ環系を含む)であってよく、その際炭素原子は、環系の内側又は外側に配置される。シクロアルキル基の任意の適した環の位置は、定義された化学構造に共有的に結合されてよい。シクロアルキル基の例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロヘプタトリエニル基、ノルボニル基、ノルピニル基、ノルカリル基、アダマンチル基、及びスピロ[4.5]デカニル基、並びにそれらの同族体、異性体等を含む。ある実施態様において、シクロアルキル基は、本明細書において記載されたように置換されてよい。
本発明において使用されるように、"ヘテロ原子"は、炭素又は水素以外のあらゆる元素の原子をいい、かつ例えば窒素、酸素、ケイ素、硫黄、リン及びセレンを含む。
本発明において使用されるように、"シクロへテロアルキル"は、O、S、Se、N、P及びSi(例えばO、S及びN)から選択される少なくとも1つの環ヘテロ原子を含み、かつ場合により1つ以上の二重又は三重結合を含む非芳香族シクロアルキル基をいう。シクロへテロアルキル基は、3〜24個の環原子、例えば3〜20個の環原子(例えば3〜14員環のシクロヘテロアルキル基)を有してよい。シクロへテロアルキル環における1つ以上のN、P、S又はSe原子(例えばN又はS)は、酸化されてよい(例えばモルホリンN−オキシド、チオモルホリンS−オキシド、チオモルホリンS,S−ジオキシド)。いくつかの実施態様において、シクロへテロアルキル基の窒素又はリン原子は、置換基、例えば水素原子、アルキル基、又は本明細書において記載されている他の置換基を有してよい。シクロへテロアルキル基は、1つ以上のオキソ基、例えばオキソピペリジル、オキソオキサゾリジル、ジオキソ−(1H,3H)−ピリミジル、オキソ2(1H)−ピリジル等を含んでもよい。シクロへテロアルキル基の例は、特に、モルホリニル、チオモルホリニル、ピラニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、オキサゾリジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピロロリジニル、ピロロリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピペリジニル、ピペラジニル等を含む。ある実施態様において、シクロへテロアルキル基は、本明細書において記載されたように置換されてよい。
本明細書において使用されるように、"アリール"は、2つ以上の芳香族炭化水素環が、共に融合(すなわち共有の結合を有する)され、又は少なくとも1つの芳香族単環炭化水素環が、1つ以上のシクロアルキル及び/又はシクロへテロアルキル環に融合される、芳香族単環炭化水素環系又は多環系をいう。アリール基は、多数の融合環を含んでよい、その環系において炭素原子6〜24個を有してよい(C6-20アリール基)。ある実施態様において、多環アリール基は、炭素原子8〜24個を有する。アリール基の任意の適した環の位置は、定義された化学構造に共有的に結合されてよい。芳香族炭素環のみを有するアリール基の例は、フェニル、1−ナフチル(二環)、2−ナフチル(二環)、アントラセニル(三環)、フェナントレニル(三環)、ペンタセニル(五環)等を含む。少なくとも1つの芳香族炭素環が1つ以上のシクロアルキル及び/又はシクロへテロアルキル環に融合されている多環系の例は、特に、シクロペンタン(すなわち5,6−二環シクロアルキル/芳香族環系である、インダニル基)、シクロヘキサン(すなわち6,6−二環シクロアルキル/芳香族環系である、インダニル基)、イミダゾリン(すなわち、5,6−二環シクロヘテロアルキル/芳香族環系である、ベンジミダゾリニル基)、及びピラン(すなわち、6,6−二環シクロヘテロアルキル/芳香族環系である、クロメニル基)のベンゾ誘導体を含む。アリール基の他の例は、ベンゾジオキサニル基、ベンゾジオキソールイル基、クロマニル基、インドリニル基等を含む。ある実施態様において、アリール基は、本明細書において記載されたように置換されてよい。ある実施態様において、アリール基は、1つ以上のハロゲン置換基を有してよく、かつ"ハロアリール基"と言われてよい。ペルハロアリール基、すなわち全ての水素原子がハロゲン原子で置換されているアリール基(例えば−C65)は、"ハロアリール"の定義の範囲内で含まれる。ある実施態様において、アリール基は、他のアリール基で置換され、かつビアリール基と言われてよい。ビアリール基におけるそれぞれのアリール基は、本明細書において記載されたように置換されてよい。
本明細書において使用されるように、"ヘテロアリール"は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、ケイ素(Si)、及びセレン(Se)から選択される少なくとも1つの環ヘテロ原子、又は環系において存在する少なくとも1つの環が芳香族であり、かつ少なくとも1つの環ヘテロ原子を含む多環環系を含む、芳香族単環系をいう。多環ヘテロアリール基は、共に融合した2つ以上のヘテロアリール環を有し、及び1つ以上の芳香族炭素環、非芳香族炭素環及び/又は非芳香族シクロへテロアルキル環に融合した少なくとも1つの単環ヘテロアリール環を有するものを含む。ヘテロアリール基は、全体として、例えば5〜24個の原子を有し、かつ1〜5個のヘテロ原子を含む(5〜20員環のヘテロアリール基)。ヘテロアリール基は、安定な構造をもたらすあらゆるヘテロ原子又は炭素原子で定義された化学構造に付着されてよい。一般に、ヘテロアリール環は、O−O、S−S又はS−O結合を含まない。しかしながら、ヘテロアリール基における1つ以上のN又はS原子は、酸化されてよい(ピリジンN−オキシド、チオフェンS−オキシド、チオフェンS,S−ジオキシド)。ヘテロアリール基の例は、例えば5員環又は6員環の単環系及び5〜6二環系を含み、以下で示される:
Figure 0005734456
[式中、TはO、S、NH、N−アルキル、N−アリール、N−(アリールアルキル)(例えばN−ベンジル)、SiH2、SiH(アルキル)、Si(アルキル)2、SiH(アリールアルキル)、Si(アリールアルキル)2、又はSi(アルキル)(アリールアルキル)である]。かかるヘテロアリール環の例は、ピロールイル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、トリアゾールイル基、テトラゾールイル基、ピラゾールイル基、イミダゾールイル基、イソチアゾールイル基、チアゾールイル基、チアジアゾールイル基、イソキサゾールイル基、オキサゾールイル基、オキサジアゾールイル基、インドールイル基、イソインドールイル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノールイル基、2−メチルキノールイル基、イソキノールイル基、キノキサルイル基、キナゾールイル基、ベンゾトリアゾールイル基、ベンズイミダゾールイル基、ベンゾチアゾールイル基、ベンズイソチアゾールイル基、ベンズイソキサゾールイル基、ベンゾキサジアゾールイル基、ベンゾキサゾールイル基、シンノリニル基、1H−インダゾールイル基、2H−インダゾールイル基、インドリジニル基、イソベンゾフリル基、ナフチリジニル基、フタラジニル基、プタリジニル基、プリニル基、オキサゾールピリジニル基、チアゾロピリジニル基、イミダゾピリジニル基、フロピリジニル基、チエノピリジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピリドピリダジニル基、チエノチアゾールイル基、エイエノキサゾールイル基、チエノイミダゾールイル基等を含む。ヘテロアリール基の他の例は、4,5,6,7−テトラヒドロインドールイル基、テトラヒドロキノールイニル基、ベンゾチエノピリジニル基、ベンゾフロピリジニル基等を含む。ある実施態様において、ヘテロアリール基は、本明細書において記載されたように置換されてよい。
本発明において使用されるように、"アリールアルキル"は、−アルキル−アリール基をいい、アリールアルキル基は、アルキル基によって定義された化学構造に共有的に結合される。アリールアルキル基は、−Y−C6-14アリール基[式中Yは本発明において定義される]の定義の範囲内である。アリールアルキル基の例は、ベンジル基(−CH2−C65)である。アリールアルキル基は、場合により置換されてよく、すなわちアリール基及び/又はアルキル基は、本明細書において記載されたように置換されてよい。
本発明の化合物は、2つの他の部分と共有結合を形成する事ができる結合基として本発明において定義された"二価の基"を含んでよい。例えば、本発明の化合物は、二価のC1-20アルキル基(例えばメチレン基)、二価のC2-20アルケニル基(例えばビニルイル基)、二価のC2-20アルキニル基(例えばエチニルイル基)、二価のC6-14アリール基(例えばフェニルイル基)、二価の3〜14員環シクロへテロアルキル基(例えばピロリジイル基)、及び/又は二価の5〜14員環ヘテロアリール基(例えばチエニルイル基)を含んでよい。一般に化学基(例えば−Ar−)は、その基の前後に2つの結合の包含によって二価であると理解される。
本明細書において使用されるように、"可溶性基"は、分子中で同様の位置を占めている場合に、(同様の分子−溶媒の組合せで)水素原子よりも、少なくとも1つの通常の有機溶媒中でより可溶性な分子を結果として生じる官能基をいう。可溶性基の例は、アルキル基(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、イソブチル、sec−ブチル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、20メチルヘキシル、オクチル、3,7−ジメチルオクチル、デシル、デオデシル、テトラデシル、ヘキサデシル)、アルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、n−プロポキシ、イソブチルオキシ、sec−ブチルオキシ、n−ブチルオキシ、ヘキシルオキシ、2−メチルヘキシルオキシ、オクチルオキシ、3,7−ジメチルオクチルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、テトラデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ)、チオアルキル基(例えばチオオクチル)、アルキエーテル及びチオエーテルを含む。
本明細書において使用されるように、"脱離基"("LG")は、例えば置換又は脱離反応の結果として安定種として置き換えられる荷電した又は未荷電の原子(又は原子の群)をいう。脱離基の例は、制限されずに、ハロゲン(例えばCl、Br、I)、アジド(N3)、チオシアネート(SCN)、ニトロ(NO2)、シアネート(CN)、水(H2O)、アンモニア(NH3)、及びスルホネート基(OSO2−R、[式中、RはC1-10アルキル基又はC6-14アリール基であってよく、それぞれ場合により独立してC1-10アルキル基及び電子求引性基から選択される1〜4個の基で置換されている])、例えばトシレート(トルエンスルホネート、OTs)、メシレート(メタンスルホネート、OMs)、ブロシレート(p−ブロモベンゼンスルホネート、OBs)、ノシレート(4−ニトロベンゼンスルホネート、ONs)、及びトリフレート(トリフルオロメタンスルホネート、OTf)を含む。
本明細書において使用されるように、"シアネート剤"は、LiCN、NaCN、KCN、CuCN、AgCN、トリメチルシリルシアニド(TMSCN)、又は当業者に公知の任意の他のシアネート剤であってよい。
全ての通常の置換基の分類を表す、数百の最も通常の置換基の電子供与性又は電子求引性は、定義され、定量され、かつ公表されている。電子供与性及び電子求引性の最も通常の定量化は、Hammett σ値に関する。水素は、ゼロのHammett σ値を有し、一方他の置換基は、それらの電子求引性又は電子供与性に直接関係して正又は負に増加するHammett σ値を有する。負のHammett σ値を有する置換基は、電子供与性と考えられ、一方で正のHammett σ値を有するものは、電子求引性と考えられる。多数の一般に遭遇する置換基についてのHammett σ値を挙げている、Lange's Handbook of Chemistry, 12th ed., McGraw Hill, 1979, Table 3-12, pp. 3-134 to 3-138を参照(参照をもって本明細書に組み込まれたものとする)。
"電子受容基"は、本明細書において、"電子受容体"及び"電子求引基"と同義に使用されてよい。特に、"電子求引基"("EWG")又は"電子受容基"又は"電子受容体"は、分子において同様の位置を占める場合に、水素原子よりも、それ自体電子を引き寄せる官能基をいう。電子求引基の例は、制限されることなく、ハロゲン又はハロ(例えばF、Cl、Br、I)、−NO2、−CN、−NC、−S(R02 +、−N(R03 +、−SO3H、−SO20、−SO30、−SO2NHR0、−SO2N(R02、−COOH、−COR0、−COOR0、−CONHR0、−CON(R02、C1-40ハロアルキル基、C6-14アリール基、及び5〜14員環電子が乏しいヘテロアリール基を含み、その際R0は、C1-20アルキル基、C2-20アルケニル基、C2-20アルキニル基、C1-20ハロアルキル基、C1-20アルコキシ基、C6-14アリール基、C3-14シクロアルキル基、3〜14員環のシクロへテロアルキル基、及び5〜14員環のヘテロアリール基であり、それぞれ場合により本明細書において記載されているように置換されてよい。例えば、それぞれのC1-20アルキル基、C2-20アルケニル基、C2-20アルキニル基、C1-20ハロアルキル基、C1-20アルコキシ基、C6-14アリール基、C3-14シクロアルキル基、3〜14員環のシクロへテロアルキル基、及び5〜14員環のヘテロアリール基は、場合により、1〜5個の小さい電子求引基、例えばF、Cl、Br、−NO2、−CN、−NC、−S(R02 +、−N(R03 +、−SO3H、−SO20、−SO30、−SO2NHR0、−SO2N(R02、−COOH、−COR0、−COOR0、−CONHR0、及び−CON(R02で置換されてよい。
"電子供与基"は、本明細書において、"電子供与体"と同義に使用されてよい。特に、"電子供与基"又は"電子供与体"は、分子において同様の位置を占める場合に、水素原子よりも、隣接する原子に電子を供与する官能基をいう。電子供与基の例は、−OH、−OR0、−NH2、−NGR0、−N(R02、及び5〜14員環の電子が豊富なヘテロアリール基を含み、その際R0は、C1-20アルキル基、C2-20アルケニル基、C2-20アルキニル基、C6-14アリール基、又はC3-14シクロアルキル基である。
種々の非置換のヘテロアリール基は、電子が豊富(又はπ−過剰)又は電子が乏しい(又はπ−欠乏)として記載されてよい。かかる分類は、ベンゼンにおける炭素原子の平均密度と比較した、それぞれの環原子に対する平均電子密度に基づく。電子が豊富な系の例は、1つのヘテロ原子、例えばフラン、ピロール及びチオフェン、並びにそれらのベンゾ縮合した片方、例えばベンゾフラン、ベンゾピロール及びベンゾチオフェンを有する5員環ヘテロアリール基を含む。電子が乏しい系の例は、1つ以上のヘテロ原子、例えばピリジン、ピラジン、ピリダジン及びピリミジン、並びにそれらのベンゾ縮合した片方、例えばキノリン、イソキノリン、キノキサリン、シンノリン、フタラジン、ナフチリジン、キナゾリン、フェナントリジン、アシリジン及びプリンを有する6員環のヘテロアリール基を含む。混合したヘテロ芳香族環は、環における1つ以上のヘテロ原子のタイプ、数、及び位置に依存してそれらの分類に属してよい。Katritzky, A.R and Lagowski, J.M., Heterocyclic Chemistry (John Wiley & Sons, New York, 1960)を参照。
本発明の明細書における種々の位置で、置換基は、群で又は範囲で開示されている。その記載は、それぞれ及び全て、かかる群及び範囲の数の個々の副結合を含むことが特に意図される。例えば、"C1-6アルキル"の用語は、個々に、C1アルキル、C2アルキル、C3アルキル、C4アルキル、C5アルキル、C6アルキル、C1〜C6アルキル、C1〜C5アルキル、C1〜C4アルキル、C1〜C3アルキル、C1〜C2アルキル、C2〜C6アルキル、C2〜C5アルキル、C2〜C4アルキル、C2〜C3アルキル、C3〜C6アルキル、C3〜C5アルキル、C3〜C4アルキル、C4〜C6アルキル、C4〜C5アルキル、及びC5〜C6アルキルを開示していると特に意図される。他の例に関して、0〜40の範囲の整数は、個々に、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、及び40を開示していると特に意図され、1〜20の範囲の整数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、及び20を開示していると特に意図される。さらなる例は、"場合により1〜5個の置換基で置換された"の語句が、0個、1個、2個、3個、4個、5個、0〜5個、0〜4個、0〜3個、0〜2個、0〜1個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、2〜5個、2〜4個、2〜3個、3〜5個、3〜4個、及び4〜5個の置換基を含んでよい化学基を個々に開示していると特に意図されることを含む。
明細書をとおして、構造は、化学名で示されてよく、又は示されなくてよい。あらゆる疑問が命名法に関して生じる場合に、構造が勝る。
一般に、本発明は、式I:
Figure 0005734456
[式中、R1及びR2は、組成的に同一又は実質的に同一の、不斉中心を含む分枝鎖状有機基である]の化合物の鏡像異性的に富化した混合物を含む薄膜半導体に関する。式Iが種々の可能な位置異性体を含むことが意図されるが、式Iは、最低でも、式Iの種々の可能な位置異性体の中で最も動力学的に安定であると公知である異性体:
Figure 0005734456
を包含することが意図される。
より詳述すれば、ある実施態様において、R1及びR2は、同一であり、かつ分枝鎖状C4-40アルキル基、分枝鎖状C4-40アルケニル基及び分枝鎖状C4-40ハロアルキル基から選択されてよく、その際分枝鎖状C4-40アルキル基、分枝鎖状C4-40アルケニル基及び分枝鎖状C4-40ハロアルキル基は、
Figure 0005734456
[式中、R’は、C1-20アルキル又はハロアルキル基であり、かつR"は、R’とは異なり、C1-20アルキル基、C2-20アルケニル基及びC1-20ハロアルキル基から選択される]から選択される式を有してよい。アスタリスク*は、不斉中心を示し、R1及びR2が、(R)−又は(S)−配置を有する。混合物は、鏡像異性的に富化され、すなわち混合物は、(R,R)−立体異性体(R1及びR2の双方が(R)−配置を有する)又は、(S,S)−立体異性体(R1及びR2の双方が(S)−配置を有する)の過剰量を含む。より詳述すれば、鏡像異性的に富化した混合物における(R,R)−立体異性体:(S,S)−立体異性体の比、又は(S,S)−立体異性体:(R,R)−立体異性体の比は、約0.8:0.2〜約0.98:0.02である。
ある実施態様において、R1及びR2は、同一の不斉中心を含む実質的に同一な分枝鎖状基であってよく、かつ独立して、C4-40アルキル基、分枝鎖状C4-40アルケニル基又は及び分枝鎖状C4-40ハロアルキル基であってよい。R1及びR2が"実質的に同一"と記載されている場合の実施態様において、双方のR1及びR2が、式
Figure 0005734456
の1つによって示されるような不斉中心を含む同様の分枝鎖パターンを有する一方で、R’及びR"の1つは、例えば炭素原子の数(例えばわずか2個の炭素原子の違い)に関して、飽和の程度、又はハロゲン基での置換が異なってよい。説明のために、R1及びR2は、R1及びR2が式
Figure 0005734456
[式中、R’は、R1及びR2の双方において同一であるが、しかしR1におけるR"は、R2におけるR"と異なる]の分子鎖基である場合に、実質的に同一であると考えられてよい。例えば、R1におけるR"は、n−ヘキシル基であってよいが、しかしR2におけるR"は、n−ペンチル基、n−ヘプチル基、ヘキセニル基、又はフルオロ置換されたヘキシル基(例えば(CH25CF3)であってよい。
ある実施態様において、鏡像異性的に富化された混合物は、
Figure 0005734456
[式中、R’及びR"は、本明細書において定義されている]から選択される対の鏡像異性体を含んでよく、かつそれぞれの対における2つの鏡像異性体の相対比は、約0.8:0.2〜約0.98:0.02である。特定の実施態様において、それぞれの対における2つの鏡像異性体の相対比は、約0.90:0.10〜約0.95:0.05である。
特定の実施態様において、R’は、炭素原子1〜6個を有する低級アルキル又はハロアルキル基(例えば、CH3、CF3、C25、C25、CH2CF3、C37、C37、及びCH2CH2CF3)であってよく、R"は、R’とは異なり、少なくとも3個の炭素原子を有する。例えば、R"は、C3-20アルキル基、C3-20アルケニル基及びC3-20ハロアルキル基から選択されてよい。種々の実施態様において、双方のR’及びR"は直鎖基であってよい。
さらに説明するために、本発明の鏡像異性的に富化された混合物は、
Figure 0005734456
Figure 0005734456
から選択される対の鏡像異性体を含んでよく、それぞれの対における2つの鏡像異性体の相対比は、約0.8:0.2〜約0.98:0.02である。特定の実施態様において、それぞれの対における2つの鏡像異性体の相対比は、約0.90:0.10〜約0.95:0.05である。
本発明の鏡像異性的に富化した混合物は、種々の方法によって得られる。式Iの化合物は、典型的に、第一級アミンと、式II
Figure 0005734456
の二水和物とを反応し、そして得られたビス(ジカルボキシミド)とシアネート剤とを反応して、シアノ基を有する脱離基(LG)を置き換えることによって合成されてよい。第一級アミンは、
Figure 0005734456
[式中、R’及びR"は本明細書において定義されている]から選択される式を有してよく、かつ以下の式1において説明された方法にしたがって製造されてよい。
Figure 0005734456
式1に関して、ケトキシム2は、ケトン1をヒドロキシルアミンヒドロクロリドとメタノール中で混合し、続いて還流温度で酢酸ナトリウムを添加することによって製造されてよい。ケトキシムをアミン3に還元するために、ケトキシム2のジエチルエーテル中での溶液を、水酸化リチウムアルミニウムの乾燥ジエチルエーテル中での懸濁液に0℃で滴加してよく、そして16時間還流まで加熱して、アミン3のラセミ混合物を提供する。
種々の方法を、アミン3の光学的に純な鏡像異性体を単離するために使用してよい。例えば、キラル分離、ジアステレオマー塩形成、又は速度論的分割を使用することができる。特に、酵素触媒化アシル転移によるラセミ体の速度論的分割は、非常に高い鏡像異性体の過剰量を導くことができる(>99.0%)。緑膿菌リパーゼ及びカンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)のリパーゼを含む種々の酵素は、キラルアミンの速度論的分割においてそれらの効率について研究されている。例えばDavis et al. (2001), Syn. Comm., 31 (4): 569-578を参照。
従って、ある実施態様において、本発明の鏡像異性的に富化した混合物は、立体特異性第一級アミンを使用することによって得られてよい。例えば、式Iの(R,R)−立体異性体は、(R)−アミンと式IIの二水和物との反応によって得られてよく、そして適した比で、類似の方法で得られた(S,S)−立体異性体と合し、式Iの化合物の鏡像異性的に富化した混合物を提供する。
ある実施態様において、本発明の鏡像異性的に富化した混合物は、第一級アミンの鏡像異性的に富化した混合物から製造されてよい。式IIの二水和物と第一級アミンの鏡像異性的に富化した混合物(立体特異性第一級アミンと対立して)との反応は、式Iの化合物のいくつかのメソ異性体を導く一方で、本発明のメソ異性体は、全体として鏡像異性的に富化した混合物の半導体特性に対するわずかな効果を有することが見出された。
代わりの実施態様において、式IIの二水和物は、(R,R)−立体異性体、(S,S)−立体異性体、及びアキラルメソ−(R,S)−立体異性体の混合物を導く、第一級アミンのラセミ混合物と反応されてよい。(R,R)−立体異性体、及び同様に(S,S)−立体異性体は、標準の分離方法を使用して単離され、そして続いて、他の鏡像異性体と特定の比で合されて、本発明の鏡像異性的に富化した混合物を提供してよい。当業者に公知の標準の分離方法は、例えば、カラムクロマトグラフィー、薄膜クロマトグラフィー、擬似移動床クロマトグラフィー、及び高性能液体クロマトグラフィーを含み、場合によりキラル固定相を有する。
本発明の鏡像異性的に富化した混合物は、順に、製造、構成及び装置の種々の物品を二次加工するために使用されてよい、半導体材料(例えば組成物及び複合材)を製造するために使用されてよい。ある実施態様において、本発明の鏡像異性的に富化した混合物を導入する半導体材料は、n−タイプ半導体活性を呈してよい。驚くべきことに、本発明による式Iの化合物の鏡像異性的に富化した混合物は、ラセミ体と比較した場合に、高く改良された電子特性を呈することができる。特に、薄膜トランジスタにおける半導体として導入される場合に、本発明の技術の鏡像異性的に富化した混合物は、ラセミ体よりも、少なくとも2倍、及びある場合において、6倍と同等である移動度を呈する。さらに、驚くべきことに、本発明の技術の鏡像異性的に富化した混合物は、実質的に純な形(すなわち99%以上の光学純度)での(R,R)−立体異性体又は(S,S)−立体異性体と比較して、実質的に類似し、及びある場合において、より良好な電子特性を有する。
従って、本発明は、本明細書において記載された鏡像異性的に富化した混合物を含む電子デバイス、光学デバイス及び電気光学デバイスを提供する。かかる電子デバイス、光学デバイス及び電気工学デバイスの例は、薄膜半導体、薄膜トランジスタ(例えば電界効果トランジスタ)、光電装置、光検出器、有機発光デバイス、例えば有機発光ダイオード(OLED)及び有機発光トランジスタ(OLET)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、相補型インバータ、ダイオード、キャパシタ、センサー、Dフリップフロップ、整流器、及びリング発振器を含む。ある実施態様において、本発明は、本明細書において記載されている鏡像異性的に富化した混合物を含む薄膜半導体、及び薄膜半導体を含む電界効果トランジスタデバイスを提供する。特に、電界効果トランジスタデバイスは、トップゲートボトムコンタクト構造、ボトムゲートトップコンタクト構造、トップゲートトップコンタクト構造、及びボトムゲートボトムコンタクト構造から選択される構造を有する。ある実施態様において、電界効果トランジスタデバイスは、誘電材料を含み、その際誘電材料は、有機誘電材料、無機誘電材料、又は混成有機/無機誘電材料を含む。他の実施態様において、本発明は、本明細書において記載される鏡像異性的に富化した混合物を含む薄膜半導体を導入する光電装置デバイス及び有機発光デバイスを提供する。
式Iの化合物は、一般に、種々の通常のよう在中で良好な溶解度を有する。従って、本発明の鏡像異性的に富化した混合物は、安価な溶液−相技術によって、種々の電子デバイス、光学デバイス及び電気光学デバイスに加工されてよい。本明細書において使用されるように、化合物は、少なくとも1mgの化合物が溶剤1ml中で溶解されてよい場合に、溶剤中で可溶性であると考えられてよい。通常の有機溶剤の例は、石油エーテル、アセトニトリル、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレン及びメシチレン、ケトン、例えばアセトン及びメチルエチルケトン、エーテル、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル及びt−ブチルメチルエーテル、アルコール、例えばメタノール、エタノール、ブタノール及びイソプロピルアルコール、脂肪族炭化水素、例えばヘキサン、アセテート、例えばメチルアセテート、エチルアセテート、メチルホルメート、エチルホルメート、イソプロピルアセテート及びブチルアセテート、アミド、例えばジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド、スルホキシド、例えばジメチルスルホキシド、ハロゲン化脂肪族及び芳香族炭化水素、例えばジクロロメタン、クロロホルム、塩化エチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン及びトリクロロベンゼン、並びに環状溶剤、例えばシクロペンタノン、シクロヘキサノン及び2−メチルピロリドンを含む。通常の無機溶剤の例は、水及びイオン性液体を含む。
従って、本発明は、さらに、液体媒体、例えば有機溶剤、無機溶剤、又はそれらの組合せ(例えば有機溶剤、無機溶剤、又は有機及び無機溶剤の混合物)中で溶解又は分散された、本発明において記載された鏡像異性的に富化した混合物を含む組成物を提供する。ある実施態様において、組成物は、洗剤、分散剤、結合剤、相溶化剤、硬化剤、開始剤、保湿剤、消泡剤、湿潤剤、pH調整剤、殺生剤、及び静菌剤から独立して選択される1つ以上の添加剤を含んでよい。例えば、界面活性剤及び/又は他のポリマー(例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリ−アルファ−メチルスチレン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート等)が、分散剤、結合剤、相溶化剤及び/又は消泡剤として含まれてよい。
種々の溶液加工技術を含む種々の堆積技術は、有機エレクトロニクスで使用されている。例えば、印刷されたエレクトロニクス技術の多くは、インクジェット印刷に集中しており、それというのも主にこの技術が特徴位置及び多層表示のより大きな制御を提供するからである。インクジェット印刷は、実施されるマスター(接触印刷技術と比較して)、及びインク放出のデジタル制御を要求せず、それによってドロップオンデマンド印刷を提供する利益を提供する、非接触方法である。しかしながら、接触印刷技術は、非常に早いロールツーロール加工によく適している鍵となる利点を有する。接触印刷技術の例は、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷及びミクロ接触印刷を含む。他の溶液加工技術は、例えば、スピンコーティング、ドロップ鋳込形成、ゾーン鋳込形成、ディップコーティング及びブレードコーティングを含む。
本発明の鏡像異性的に富化した混合物は、それらの加工において融通性を呈することができる。本発明の鏡像異性的に富化した混合物を含む調合物は、例えば、それらの上にピンホールを有さない誘電フィルムを形成すること、及び結果として全て印刷されたデバイスの製造を可能にする、滑らかで均一なフィルムを提供する、グラビア印刷、フレキソ印刷及びインクジェット印刷を含む種々のタイプの印刷技術によって印刷可能であってよい。
従って、本発明は、さらに、半導体材料を製造するための方法を提供する。その方法は、液体媒体、例えば溶剤又は溶剤の混合物中で溶解又は分散された、本発明において開示された本発明の鏡像異性的に富化した混合物を含む組成物を製造すること、該組成物を基材上に堆積して半導体材料前駆体を提供すること、並びに半導体前駆体を加工(例えば加熱)して、本発明において開示された鏡像異性的に富化した混合物を含む半導体材料(例えば薄膜半導体)を提供することを含んでよい。ある実施態様において、堆積工程は、インクジェット印刷及び種々の接触印刷技術(例えばスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、パッド印刷、石版捺染、フレキソ印刷、及びミクロ接触印刷)を含む印刷によって実施されてよい。他の実施態様において、堆積工程は、スピンコーティング、ドロップ鋳込形成、ゾーン鋳込形成、ディップコーティング、ブレードコーティング、又は噴霧によって実施されてよい。より高価な方法、例えば蒸着も使用できる。
本発明は、さらに、製品、例えば本発明の薄膜半導体及び基材部品及び/又は誘電部品を含む複合材を提供する。基材部品は、ドープしたシリコン、酸化インジウムスズ(ITO)、ITOで被覆したガラス、ITOで被覆したポリイミド又は他のプラスチック、アルミニウム又は他の金属のみ、又はポリマーもしくは他の基材上で被覆したアルミニウム又は他の金属、ドープしたポリチオフェン等から選択されてよい。誘電部品は、誘電材料、例えば種々の酸化物(例えばSiO2、Al23、HfO2)、有機誘電材料、例えば種々のポリマー材料(例えばポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリハロエチレン、ポリアクリレート)、自己組織化超格子/自己組織化ナノ誘電体(SAS/SAND)材料(例えばYoon, M-H. et al., PNAS, 102 (13): 4678-4682 (2005)(参照をもって本明細書に全て開示されたものとする)において記載されている)、及び混成有機/無機誘電材料(例えば米国特許第7,678,463号(参照をもって本明細書に全て開示されたものとする)において記載されている)から製造されてよい。ある実施態様において、誘電材料は、米国特許第7,605,394号(参照をもって本明細書に全て開示されたものとする)において記載された架橋されたポリマーブレンドを含んでよい。複合材は、1つ以上の電気接触も含んでよい。ソース、ドレイン及びゲート電極に適した材料は、金属(例えばAu、Al、Ni、Cu)、透過導電性酸化物(例えばITO、IZO、ZITO、GZO、GIO、GITO)、及び導電性ポリマー(例えばポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)、ポリアニリン(PANI)、ポリピロール(PPy))を含む。本明細書において記載されている1つ以上の複合材は、種々の有機エレクトロニクスデバイス、光学デバイス及びオプトエレクトロニクスデバイス、例えば有機薄膜トランジスタ(OTFT)、特に有機電界効果トランジスタ(OFET)、及びセンサー、キャパシタ、単極回路、相補回路(例えばノット回路)等の範囲内で包含してよい。
従って、本発明の側面は、本発明の半導体材料を導入する有機電界効果トランジスタを製造する方法に関する。本発明の半導体材料は、トップゲートトップコンタクトキャパシタ構造、トップゲートボトムコンタクトキャパシタ構造、ボトムゲートトップコンタクトキャパシタ構造、及びボトムゲートボトムコンタクトキャパシタ構造を含む種々のタイプの有機電界効果トランジスタ製造するために使用されてよい。
図1は、4つの通常のタイプのOFET構造:(左上)ボトムゲートトップコンタクト構造、(右上)ボトムゲートボトムコンタクト構造、(左下)トップゲートボトムコンタクト構造、及び(右下)トップゲートトップコンタクト構造を示す。図1において示されるように、OFETは、ゲート誘電部品(例えば8、8’、8"、及び8"’として示される)、半導体部品又は半導体層(例えば6、6’、6"、及び6"’として示される)、ゲート電極又はコンタクト(例えば10、10’、10"、及び10"’として示される)、基材(例えば12、12’、12"、及び12"’として示される)、並びにソース及びドレイン電極又はコンタクト(例えば2、2’、2"、2"’、4、4’、4"、及び4"’として示される)を含んでよい。示されているように、それぞれの配置において、半導体部品は、ソース及びドレイン電極と接触し、かつゲート誘電部品は、片方で半導体部品と、及び他方でゲート電極と接触する。
ある実施態様において、OTFTデバイスは、誘電体としてSiO2を使用して、トップコンタクト幾何学で、ドープしたシリコン基材上で本発明の鏡像異性的に富化した混合物で製造されてよい。特定の実施態様において、本発明の鏡像異性的に富化した混合物を導入する活性半導体層は、室温で又は高温で堆積されてよい。他の実施態様において、本発明の鏡像異性的に富化した混合物を導入する活性半導体層は、スピンコーティング又は本明細書において記載された印刷によって適用さてよい。トップコンタクトデバイスのために、金属製コンタクトが、シャドーマスクを使用するフィルムの頂部でパターン化されてよい。
ある実施態様において、OTFTデバイスは、誘電体としてポリマーを使用して、トップゲートボトムコンタクト幾何学で、プラスチック箔上で本発明の鏡像異性的に富化した混合物で製造されてよい。特定の実施態様において、本発明の鏡像異性的に富化した混合物を導入する活性半導体層は、室温で又は高温で堆積されてよい。他の実施態様において、本発明の鏡像異性的に富化した混合物を導入する活性半導体層は、スピンコーティング又は本明細書において記載された印刷によって適用さてよい。ゲート及びソース/ドレインコンタクトは、Au、他の金属、又は導電性ポリマーから製造されてよく、又は蒸着及び/又は印刷によって堆積されてよい。
種々の実施態様において、本発明の鏡像異性的に富化した混合物を導入する半導体部品は、n−タイプ半導体活性、例えば、10-4cm2/V−秒以上の電子移動度、及び/又は103以上の電流オン/オフ比(Iオン/Iオフ)を呈することができる。
本発明の鏡像異性的に富化した混合物が有用な他の製品は、光電装置又は太陽電池である。本発明の鏡像異性的に富化した混合物は、広い光学吸収及び/又は同調したレドックス特性及びバルクキャリヤー移動度を呈することができる。従って、本明細書において記載された本発明の鏡像異性的に富化した混合物は、例えば、p−n接合を形成するために、隣接するp−タイプ半導体を含む、光電装置設計におけるn−タイプ半導体として使用されることができる。本発明の鏡像異性的に富化した混合物は、薄膜半導体、又は基材上に堆積させた薄膜半導体を含む複合材の形であってよい。
次の実施例は、さらに例示するため、及び本発明の理解を説明するために提供され、あらゆる場合において、本発明を制限することを意図しない。
特に明記されない限り、全ての試薬は、市販されており、かつさらなる精製なしに使用した。いくつかの試薬を、公知の方法によって合成した。無水テトラヒドロフラン(THF)を、ナトリウム/ベンゾフェノンから蒸留した。反応を、特に明記されない限り、窒素下で実施した。UV−Visスペクトルを、Cary Model 1 UV−vis分光光度計で記録した。NMRスペクトルを、Varian Unity Plus 500分光計で記録した(1H、500MHz;13C、125MHz)。エレクトロスプレー質量分析を、Thermo Finnegan model LCQ Advantage質量分析で実施した。
実施例1:N,N’−ビス((R)−置換)−1,7(又は1,6)−ジシアノペリレン−3,4:9,10−ビス(ジカルボキシミド)((R)−PDI−CN2)の製造
1,4−ジオキサン(30ml)中でPDA−Br2(1.83g、3.33mmol)及び(R)−(−)−アミン(式IIIa、IIIb、又はIIIc)(1.05g、10.4mmol)の混合物を、165℃で2時間、封をしたフラスコ中で撹拌した。室温まで冷却して、その反応混合物を、真空下で濃縮した。残留物を、溶出剤としてクロロホルムを使用して、シリカゲル上でカラムクロマトグラフィーを受けさせて、N,N’−ビス((R)−置換)−1,7(又は1,6)−ジブロモペリレン−3,4:9,10−ビス(ジカルボキシミド)((R)−PDI−Br2)を得た(1.55g、65.1%)。
DMF(7ml)中で((R)−PDI−Br2)(0.35g、0.49mmol)及びCuCN(0.26g、2.9mmol)の混合物を150℃で1時間撹拌した。室温まで冷却し、その反応混合物を濾過して、不溶性材料を採取し、メタノールで完全に洗浄した。この材料を、溶出液としてクロロホルム(クロロホルム:酢酸エチル=100:1まで、ゆっくりと100:4、v/v)を使用して、シリカゲル上でカラムクロマトグラフィーによって精製して、(R)−PDI−CN2を得た(0.18g、61%)。
実施例2:N,N’−ビス((S)−置換)−1,7(又は1,6)−ジシアノペリレン−3,4:9,10−ビス(ジカルボキシミド)((S)−PDI−CN2)の製造
1,4−ジオキサン(180ml)中でPDA−Br2(12.0g、21.8mmol)及び(S)−(+)−アミン(式IIIa、IIIb、又はIIIc)(6.2ml、45.8mmol)の混合物を、165℃で1時間、封をしたフラスコ中で撹拌した。室温まで冷却後に、その溶剤を真空下で除去した。固体残留物を、溶出剤としてクロロホルムを使用してカラムクロマトグラフィーによって精製し、N,N’−ビス((S)−置換)−1,7(又は1,6)−ジブロモペリレン−3,4:9,10−ビス(ジカルボキシミド)((S)−PDI−Br2)を得た(9.52g、61.0%)。
DMF(160ml)中で((S)−PDI−Br2)(9.86g、13.76mmol)及びCuCN(7.26g、81.06mmol)の混合物を150℃で1時間撹拌した。室温まで冷却後に、その反応混合物を濾過して、不溶性材料を採取し、メタノールで完全に洗浄した。この粗生成物を、溶出液としてクロロホルム(ゆっくりとクロロホルム:酢酸エチル=100:4まで、v/v)を使用して、シリカゲル上でカラムクロマトグラフィーを受けさせて、(S)−PDI−CN2を得た(6.34g、75.7%)。
実施例3:ラセミN,N’−ビス−置換−1,7(又は1,6)−ジシアノペリレン−3,4:9,10−ビス(ジカルボキシミド)(PDI−CN2)の製造
ヒドロキシルアミンヒドロクロリド(23.2g、0.33mol)を、ケトン1(16.3g、0.16mol)及びメタノール(250ml)の混合物に添加し、続いて酢酸ナトリウム(34.2g、0.42mol)を添加した。この懸濁液を激しく撹拌し、そして2時間還流した。室温まで冷却後に、ほとんどの溶剤を、真空で除去し、そしてその残留物を水(400ml)に注いだ。この混合物を、Et2O(300ml×2)で抽出した。合した有機層を水、飽和したNaHCO3及び塩水で洗浄しNa2SO4上で乾燥し、そして回転蒸発器で濃縮して、ケトキシム2(17.6g、94%)を導き、さらなる精製なしに次の工程に直接使用した。
乾燥Et2O(70ml)中で粗ケトキシム2(17.6g、0.15mol)の溶液を、0℃で、乾燥Et2O(110ml)中でLiAlH4(11.0g、0.28mol)の懸濁液に滴加した。添加後に、その混合物を16時間還流し、その前に氷/水浴によって0℃まで冷却した。水(15ml)を、その反応混合物にゆっくりと添加し、続いてNaOH(15%、15mol)及び水(15ml)の水溶液を順に添加した。その反応混合物を濾過し、そして濾過物を、Na2SO4上で乾燥し、そして回転蒸発器で濃縮した。その残留物を蒸留して、ラセミ体としてアミン3を産出した(8.3g、54.2%)。
1,4−ジオキサン(30ml)中でPDA−Br2(1.80g、3.27mmol)及びアミン3(ラセミ体)(1.0g、9.9mmol)の混合物を、165℃で1.5時間、封をしたフラスコ中で撹拌した。室温まで冷却して、その反応混合物を、真空下で濃縮した。その残留物を、溶出剤としてクロロホルムを使用して、シリカゲル上でカラムクロマトグラフィーを受けさせて、N,N’−ビス−置換−1,7(又は1,6)−ジブロモペリレン−3,4:9,10−ビス(ジカルボキシミド)(PDI−Br2)のラセミ混合物を得た(1.70g、72.6%)。
DMF(20ml)中でラセミPDI−Br2(0.99g、1.39mmol)及びCuCN(0.75g、8.37mmol)の混合物を150℃で1時間撹拌した。室温まで冷却し、その反応混合物を濾過して、不溶性材料を採取し、メタノールで完全に洗浄した。この材料を、溶出剤としてクロロホルム(クロロホルム:酢酸エチル=100:1まで、ゆっくりと100:4、v/v)を使用して、シリカゲル上でカラムクロマトグラフィーによって精製して、N,N’−ビス−置換−1,7(又は1,6)−ジシアノペリレン−3,4:9,10−ビス(ジカルボキシミド)(PDI−CN2)のラセミ混合物を得た(0.74g、87.5%)。
実施例4:デバイス製造及び測定
薄膜トランジスタ(TFT)デバイス(50〜100μmチャネル長さ(L)及び1.0〜4.0mmチャネル幅(W))を、半導体フィルムとして導入された式Iの化合物の立体異性体の種々の混合物で、トップゲートボトムコンタクト配置を使用して製造した。半導体フィルムを、塩素化溶剤(2〜10mg/ml)の溶液から、Au電極/ガラス基材の頂部でスピンコートした。次に、ゲート誘電層をスピンコートした。ゲート誘電の例は、PMMA、PS、PVA、PTBSであり、かつ300〜1500nmの厚さを有する。デバイスを、ゲートコンタクトの堆積によって完成した。全ての電気的測定を、周囲大気中で実施した。以下に報告したデータは、半導体フィルム上の種々の位置で試験した少なくとも3つのデバイスから測定された平均値である。
他の有機FET、移動度(μ)を比較するために、標準電界効果トランジスタの式によって算出した。従来の金属誘電体半導体FET(MISFET)において、典型的に、直線であり、種々のVGにおけるIDS対VDS曲線における飽和した領域である(その際IDSはソース−ドレイン飽和電流であり、VDSはソースとドレインとの間のポテンシャルであり、かつVGはゲート電圧である)。大きいVDSで、電流飽和は、
Figure 0005734456
[数式中、L及びWは、デバイスチャネルの長さ及び幅であり、それぞれCiはゲート誘電体の電気容量であり、かつVtは閾値電圧である]によって得られる。
移動度(μ)は、公式(1)
Figure 0005734456
を整理することによって飽和領域において算出された。
閾値電圧(Vt)は、VG対(IDS1/2のプロットの直線部分のx切片として判断されうる。
表1は、以下に示されたモル比でIの(S,S)−立体異性体と(R,R)−立体異性体との混合によって得られた式Iの化合物の種々の立体異性体混合物を記載する。
Figure 0005734456
図2は、表1における種々の半導体混合物を導入するTFTの移動度を比較する。
表2は、以下で与えられたモル比で、式IIの無水物を、S−アミン及びR−アミンの混合物でシアネート化することによって製造された式Iの化合物の種々の立体異性体混合物を記載する。
Figure 0005734456
図3は、表2における種々の半導体混合物を導入するTFTの移動度を比較する。
図2及び3に関して、本発明による鏡像異性的に富化した混合物は、(R,R)−立体異性体:(S,S)−立体異性体(又はその逆)が、約0.8:0.2〜約0.98:0.02(CZH−V−154A、CZH−V−154B、又はCZH−V−141A)である場合に、ラセミ体(例えばCZH−V−154E又はCZH−V−93M)よりも少なくとも2倍高い移動度を呈した。さらに、これらの鏡像異性的に富化した混合物から測定された移動度は、光学的に純な鏡像異性体(例えばCZH−V−107又はJB1.18)で製造されたデバイスと比較して統計学的に差異がなかった。
本発明は、それらの趣旨又は本質的な特徴から逸脱しない他の特異的な形での実施態様を包含する。前記実施態様は、従って、本明細書に記載された本発明に制限されず全て例示に関して考えられるべきである。本発明の範囲は、従って、前記記載によってではなく、付属の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と同等の意味及び範囲内で行う全ての試行錯誤は、それらに含まれるべきであると意図される。

Claims (18)

  1. 式I
    Figure 0005734456
    [式中、
    1及びR2は、同一であり、かつ分枝鎖状C4-40アルキル基、分枝鎖状C4-40アルケニル基及び分枝鎖状C4-40ハロアルキル基から選択されてよく、その際分枝鎖状C4-40アルキル基、分枝鎖状C4-40アルケニル基又は分枝鎖状C4-40ハロアルキル基は、
    Figure 0005734456
    [式中、R’は、C1-20アルキル基又はC1-20ハロアルキル基であり、R”は、R’とは異なり、C1-20アルキル基、C2-20アルケニル基及びC1-20ハロアルキル基から選択され、かつアスタリスク(*)は不斉中心を示し、R1及びR2はR−又はS−配置を有する]から選択される式を有する]の化合物の鏡像異性的に富化した混合物を含む薄膜半導体であって、鏡像異性的に富化した混合物における式Iの化合物の(R,R)−立体異性体:(S,S)−立体異性体の比、又は(S,S)−立体異性体:(R,R)−立体異性体の比が、0.8:0.2〜0.98:0.02である、薄膜半導体。
  2. 前記鏡像異性的に富化した混合物が、立体異性体
    Figure 0005734456
    [式中、R’は、C1-6アルキル基又はC1-6ハロアルキル基であり、かつR”は、R’とは異なり、C3-20アルキル基、C3-20アルケニル基及びC3-20ハロアルキル基から選択される]を含み、2つの立体異性体の相対比が、0.8:0.2〜0.98:0.02である、請求項1に記載の薄膜半導体。
  3. 前記鏡像異性的に富化した混合物が、立体異性体
    Figure 0005734456
    [式中、R’は、C1-6アルキル基又はC1-6ハロアルキル基であり、かつR”は、R’とは異なり、C3-20アルキル基、C3-20アルケニル基及びC3-20ハロアルキル基から選択される]を含み、2つの立体異性体の相対比が、0.8:0.2〜0.98:0.02である、請求項1に記載の薄膜半導体。
  4. 前記鏡像異性的に富化した混合物が、立体異性体
    Figure 0005734456
    [式中、R’は、C1-6アルキル基又はC1-6ハロアルキル基であり、かつR”は、R’とは異なり、C3-20アルキル基、C3-20アルケニル基及びC3-20ハロアルキル基から選択される]を含み、2つの立体異性体の相対比が、0.8:0.2〜0.98:0.02である、請求項1に記載の薄膜半導体。
  5. 前記R’が、CH3、CF3、C25、CH2CF3、及びC25から選択される、請求項2から4までのいずれか1項に記載の薄膜半導体。
  6. 前記鏡像異性的に富化した混合物が、立体異性体
    Figure 0005734456
    を含み、2つの立体異性体の相対比が、0.8:0.2〜0.98:0.02である、請求項1に記載の薄膜半導体。
  7. 前記鏡像異性的に富化した混合物が、立体異性体
    Figure 0005734456
    を含み、2つの立体異性体の相対比が、0.8:0.2〜0.98:0.02である、請求項1に記載の薄膜半導体。
  8. 前記鏡像異性的に富化した混合物が、立体異性体
    Figure 0005734456
    を含み、2つの立体異性体の相対比が、0.8:0.2〜0.98:0.02である、請求項1に記載の薄膜半導体。
  9. 前記鏡像異性的に富化した混合物が、立体異性体
    Figure 0005734456
    を含み、2つの立体異性体の相対比が、0.8:0.2〜0.98:0.02である、請求項1に記載の薄膜半導体。
  10. 前記鏡像異性的に富化した混合物が、立体異性体
    Figure 0005734456
    を含み、2つの立体異性体の相対比が、0.8:0.2〜0.98:0.02である、請求項1に記載の薄膜半導体。
  11. 前記混合物における(R,R)−立体異性体:(S,S)−立体異性体の比、又は(S,S)−立体異性体:(R,R)−立体異性体の比が、0.90:0.10〜0.95:0.05である、請求項1から10までのいずれか1項に記載の薄膜半導体。
  12. 基材、及び該基材上に堆積させた請求項1から11までいずれか1項に記載の薄膜半導体を含む複合材。
  13. 請求項1から11までいずれか1項に記載の薄膜半導体を含む、電子デバイス、光学デバイス、又は電気光学デバイス。
  14. 請求項12に記載の複合材を含む、電子デバイス、光学デバイス、又は電気光学デバイス。
  15. 誘電材料と接触して、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、及び請求項1から11までいずれか1項に記載の薄膜半導体を含む電界効果トランジスタデバイス。
  16. 前記電界効果トランジスタが、トップゲートボトムコンタクト構造、ボトムゲートトップコンタクト構造、トップゲートトップコンタクト構造、及びボトムゲートボトムコンタクト構造から選択される構造を有する、請求項15に記載の電界効果トランジスタデバイス。
  17. 前記誘電材料が、有機誘電材料、無機誘電材料、又は混成有機/無機誘電材料を含む、請求項15又は16に記載の電界効果トランジスタデバイス。
  18. 前記電界効果トランジスタデバイスが、式Iの化合物の(R,R)−立体異性体と(S,S)−立体異性体との1:1の混合物を含む薄膜半導体を含む同一の電界効果トランジスタデバイスよりも少なくとも2倍高い電界効果移動度を呈する、請求項15から17までのいずれか1項に記載の電界効果トランジスタデバイス。
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