以下、添付図面を参照して、測定装置の実施の形態について説明する。
測定装置1は、図1に示すように、電圧測定端子2、電流測定端子3、共通端子4、電池5、中間電圧生成部6、定電流供給部7、第1スイッチ8、電流検出抵抗9、第2スイッチ10、差動増幅部11、A/D変換部12、操作部13、処理部14および表示部15を備えている。この測定装置1は、電池5から供給される電池電圧Vccで作動して、電圧測定モードのときには電圧測定装置として機能して、電圧測定端子2および共通端子4間に入力される測定対象電圧Vの電圧値Vobを測定し、電流測定モードのときには電流測定装置として機能して、電流測定端子3および共通端子4間に入力される測定対象電流Iの電流値Iobを測定し、抵抗測定モードのときには抵抗測定装置として機能して、電圧測定端子2および共通端子4間に接続される測定対象体21の抵抗値Robを測定する。
電圧測定端子2、電流測定端子3および共通端子4は、不図示の測定プローブを接続可能に構成されている。電池5は、測定装置1内に、一例として交換可能に内蔵されている。本例では、一例として、電池5は、2つの乾電池が直列に接続されて構成されて、約3Vの電池電圧Vccを出力する。
中間電圧生成部6は、電池電圧Vccの1/2の電圧(中間電圧:Vcc/2)をフローティング電圧Vfとして生成して共通端子4に出力する。本例では一例として、中間電圧生成部6は、電池電圧Vccを1/2に分圧する分圧回路と、分圧回路から出力される電圧(Vcc/2)を1倍の増幅率で増幅してフローティング電圧Vfとして出力するバッファ回路(いずれも図示せず)とを備えて構成されている。
定電流供給部7は、一例として定電流生成回路7aおよびスイッチング回路7bを備えて構成されて、抵抗測定モードのときに作動すると共に、複数(n個。nは2以上の自然数)の測定レンジ(抵抗測定レンジ)に対応して、異なる電流値の直流定電流I1を生成する。また、定電流供給部7は、生成した直流定電流I1を第1スイッチ8を介して電圧測定端子2に出力する。
定電流生成回路7aは、電池電圧Vccで作動する可変定電流源として構成されて、処理部14によって制御されることにより、選択された抵抗測定レンジに対応する電流値の連続定電流(連続的に一定電流値である連続直流定電流)I1aを生成する。具体的には、定電流生成回路7aは、n個の抵抗測定レンジのうちの抵抗値の最も低い測定レンジ側からm個目(mは、1以上n未満の自然数)までの抵抗測定レンジについては、抵抗値の大きな抵抗測定レンジ程、小さい電流値となるように電流値を段階的に変化させて、連続定電流I1aを生成する。これにより、m個目の抵抗測定レンジに対応する連続定電流I1aの電流値Imが最も小さくなるが、この最も小さい連続定電流I1aの電流値Imは、定電流生成回路7aが高価な回路構成を採用することなく(安価な回路構成で)、安定して高精度で直流定電流を生成可能な範囲内(基準電流値Iref(一例としてDC1μA)以上)の電流値(本例では基準電流値Irefと同じDC1μA)に規定されている。
また、定電流生成回路7aは、n個の抵抗測定レンジのうちの上記したm個目以降の抵抗測定レンジ((m+1)個目の抵抗測定レンジから抵抗値の最も高いn個目の抵抗測定レンジまで)については、m個目までの抵抗測定レンジに対応して生成する連続定電流I1aのうちの電流値が最も安定する電流値の連続定電流I1aを生成する。本例では一例として、定電流生成回路7aは、電流値がIm(DC1μA)の連続定電流I1a(m個目の抵抗測定レンジに対応する連続定電流I1a)を最も安定して高精度で生成可能なため、(m+1)個目の抵抗測定レンジからn個目の抵抗測定レンジまでは、電流値Im(DC1μA)の連続定電流I1aを生成するものとする。
スイッチング回路7bは、一例として、オン・オフ状態が処理部14によって制御されるトランジスタなどの半導体スイッチ、およびこの半導体スイッチの駆動回路(いずれも図示せず)で構成されている。具体的には、スイッチング回路7bは、n個の抵抗測定レンジのうちの抵抗値の最も低い測定レンジ側からm個目までの抵抗測定レンジでは、処理部14によってオン状態(デューティ比が1の状態)に制御されることにより、定電流生成回路7aにおいて生成された連続定電流I1aをそのまま直流定電流I1として出力する。したがって、定電流供給部7は、m個目までの抵抗測定レンジでは、振幅が連続して抵抗測定レンジに対応する電流値(選択された電流値)となる連続定電流を直流定電流I1として出力する。
一方、スイッチング回路7bは、n個の抵抗測定レンジのうちのm個目以降の抵抗測定レンジでは、定電流生成回路7aによって生成されている電流値Imの連続定電流I1aをスイッチングすることにより、図2に一例を示すように、連続定電流I1aを抵抗測定レンジに対応したデューティ比(ton/T)のパルス定電流に変換して直流定電流I1として出力する。この場合、スイッチング回路7bは、抵抗値の大きな抵抗測定レンジ程、直流定電流I1の平均電流値Iaveが小さくなるように連続定電流I1aに対するデューティ比を段階的に小さい値となるように変化させて、パルス定電流に変換する。この構成により、定電流供給部7は、m個目以降の抵抗測定レンジでは、定電流生成回路7aが安定して高精度で連続定電流I1a(本例では、電流値Imの連続定電流I1a)を生成し、スイッチング回路7bがこの連続定電流I1aを抵抗測定レンジ毎にデューティ比を段階的に変化させつつスイッチングすることで、振幅が基準電流値Iref以上(本例では、電流値Im)で、かつ平均電流値Iaveが抵抗測定レンジに対応する電流値(選択された電流値)となるパルス定電流を直流定電流I1として出力する。
この測定装置1では、一例として、抵抗測定レンジが以下のように5(=n)つ規定され、かつ差動増幅部11の入力電圧範囲が以下のように規定されている。具体的には、測定レンジは、第1抵抗測定レンジ(500Ω以上5kΩ未満)、第2抵抗測定レンジ(5kΩ以上50kΩ未満)、第3抵抗測定レンジ(50kΩ以上500kΩ未満)、第4抵抗測定レンジ(500kΩ以上5MΩ未満)、および第5抵抗測定レンジ(5MΩ以上50MΩ未満)の5個規定され、差動増幅部11の入力電圧範囲は−0.5V以上+0.5V以下(抵抗測定のときには、測定対象体21に直流定電流I1を供給するため、実質的に0V以上+0.5V以下)に規定されている。
したがって、各抵抗測定レンジにおいて差動増幅部11に入力される後述の入力電圧V1が最大となる直流定電流I1の電流値は、第1抵抗測定レンジではDC100μA(=0.5V/5kΩ)、第2抵抗測定レンジではDC10μA(=0.5V/50k)、第3抵抗測定レンジではDC1μA(=0.5V/500kΩ)、第4抵抗測定レンジではDC0.1μA(=0.5V/5MΩ)、第5抵抗測定レンジではDC0.01μA(=0.5V/50MΩ)となる。
ここで、上記したように第1抵抗測定レンジから第3抵抗測定レンジまでの直流定電流I1の電流値が基準電流値Iref以上となり、第4抵抗測定レンジおよび第5抵抗測定レンジの直流定電流I1の電流値が基準電流値Iref未満となることから、第3抵抗測定レンジが上記したm番目の抵抗測定レンジとなる。このため、定電流供給部7では、定電流生成回路7aは、第1抵抗測定レンジではDC100μA、第2抵抗測定レンジではDC10μA、第3抵抗測定レンジではDC1μAというように、抵抗値の大きな抵抗測定レンジ程、小さい電流値となるように電流値を段階的に変化させて、連続定電流I1aを生成する。また、第1から第3抵抗測定レンジまでは、スイッチング回路7bはオン状態に制御されるため、スイッチング回路7bは定電流生成回路7aにおいて生成された連続定電流I1aを入力すると共に、そのまま直流定電流I1として出力する。
また、第3抵抗測定レンジよりも抵抗値の大きな第4抵抗測定レンジおよび第5抵抗測定レンジでは、定電流生成回路7aは、最も安定して高精度で生成可能な電流値Im(本例では、基準電流値Irefと同じDC1μA)の連続定電流I1aを生成する。また、スイッチング回路7bは、この電流値Im(DC1μA)の連続定電流I1aを第4抵抗測定レンジではデューティ比0.1に、第5抵抗測定レンジではデューティ比0.01に、というように段階的に変化させてスイッチングすることにより、第4抵抗測定レンジでは電流値(平均電流値Iave)がDC0.1μAとなるパルス定電流を、また第5抵抗測定レンジでは電流値(平均電流値Iave)がDC0.01μAとなるパルス定電流をそれぞれ直流定電流I1として出力する。
第1スイッチ8は、オン・オフスイッチで構成されると共に処理部14によって制御されて、定電流供給部7と電圧測定端子2とを、接続状態および非接続状態(切り離し状態)のいずれか一方に移行させる。
電流検出抵抗9は、予め規定された抵抗値に規定されて、電流測定端子3と共通端子4との間に接続されている。第2スイッチ10は、一例として、1回路2接点のスイッチで構成されて、電圧測定端子2および電流測定端子3と、差動増幅部11における一方の入力端子との間に配設されている。また、第2スイッチ10は、処理部14によって制御されて、電圧測定端子2および電流測定端子3のうちのいずれか一方を差動増幅部11の一方の入力端子に選択的に接続する。
差動増幅部11は、電池電圧Vccで作動する。また、差動増幅部11は、他方の入力端子が共通端子4に接続されることにより、第2スイッチ10によって電圧測定端子2が一方の入力端子に接続されたときには、電圧測定端子2および共通端子4間に入力される電圧(電圧測定端子2および共通端子4間の端子間電圧)を入力電圧V1として入力すると共に増幅して、増幅電圧V2として出力する。一方、差動増幅部11は、第2スイッチ10によって電流測定端子3が一方の入力端子に接続されたときには、電流測定端子3と共通端子4との間に接続された電流検出抵抗9の両端間に発生する両端電圧(電流測定端子3および共通端子4間の端子間電圧)を入力電圧V1として入力すると共に増幅して、増幅電圧V2として出力する。A/D変換部12は、電池電圧Vccで作動して、入力した増幅電圧V2をデジタルデータDv(増幅電圧V2の瞬時値を示すデータ)に変換して出力する。これにより、差動増幅部11およびA/D変換部12は、電圧検出部として機能して、電圧測定端子2および共通端子4間に発生する端子間電圧(抵抗測定モードのときには、電圧測定端子2および共通端子4間に接続される測定対象体21の両端間に発生する両端電圧)、または電流測定端子3および共通端子4間に発生する端子間電圧を検出する。
なお、この差動増幅部11での入力電圧V1に対する増幅率を変更することにより、電圧測定モードおよび電流測定モードのうちの少なくとも一方においても、複数の測定レンジを規定することも可能であるが、本例では、発明の理解を容易にするため、上記したように抵抗測定モードにのみ複数の測定レンジが規定され、他の測定モードでは測定レンジは1つだけ規定されているものとする。
操作部13は、一例として測定モード選択用の第1ロータリースイッチ、抵抗測定レンジ選択用の第2ロータリースイッチ、およびコード生成回路(いずれも図示せず)を備えると共に電池電圧Vccで作動して、第1ロータリースイッチの操作によって選択されている電圧測定モード、抵抗測定モードおよび電流測定モードのうちの1つの測定モードを示すモードデータDm、および第2ロータリースイッチの操作によって選択されている抵抗測定レンジを示すレンジデータDrを処理部14に出力する。
処理部14は、一例として、電池電圧Vccで作動するCPUおよびメモリ(いずれも図示せず)を備え、操作部13から出力されるモードデータDmで示される測定モードおよびレンジデータDrで示される抵抗測定レンジに応じて、定電流供給部7、第1スイッチ8および第2スイッチ10に対する制御処理、およびA/D変換部12からのデジタルデータDvに基づく測定処理を実行する。また、処理部14は、測定処理において算出した測定値Ddを表示部15に表示させる表示処理を実行する。表示部15は、電池電圧Vccで作動する表示装置(一例としてLCD)で構成されて、測定値Ddを画面上に表示する。
次に、測定装置1の動作について、図1を参照して説明する。
まず、操作部13の第1ロータリースイッチが操作されて、電圧測定モードが選択された場合の測定装置1の動作について説明する。なお、この電圧測定モードでは、電圧測定端子2および共通端子4に測定プローブ(不図示)がそれぞれ接続されているものとする。
測定装置1では、電圧測定モードが選択されると、操作部13が、電圧測定モードを示すモードデータDmを処理部14に出力する。処理部14は、このモードデータDmを入力したときには、まず、制御処理を実行する。
この制御処理では、処理部14は、第1スイッチ8に対する制御を実行して、第1スイッチ8をオフ状態に移行させることにより、電圧測定端子2と定電流供給部7とを切り離す。また、処理部14は、第2スイッチ10に対する制御を実行して、差動増幅部11の一方の入力端子に電圧測定端子2を接続する。また、処理部14は、中間電圧生成部6に対する制御を実行して、フローティング電圧Vfを出力させる。これにより、制御処理が完了する。
次いで、処理部14は、測定処理を開始する。この状態において、両測定プローブ間に測定対象電圧Vが入力されると、差動増幅部11は、電圧測定端子2および第2スイッチ10と、共通端子4とを介してこの測定対象電圧Vを入力電圧V1として入力すると共に増幅して、増幅電圧V2として出力する。この測定対象電圧Vが直流電圧のときには、差動増幅部11における一方の入力端子の電位は、フローティング電圧Vfが印加(供給)されている他方の入力端子の電位(共通端子4の電位)に対して常に正電圧側において変動する。一方、この測定対象電圧Vが交流電圧のときには、差動増幅部11における一方の入力端子の電位は、フローティング電圧Vfが印加(供給)されている他方の入力端子の電位(共通端子4の電位)を基準として、正電圧側(フローティング電圧Vfよりも高電圧側)および負電圧側(フローティング電圧Vfよりも低電圧側)において同じ電圧幅で変動する。
本例の電圧測定モードでは、上記したようにフローティング電圧Vfが電池電圧Vcc(3V)の1/2の電圧(1.5V)に規定されているため、差動増幅部11での正電圧側および負電圧側の各入力電圧範囲が同一となるように規定されている。これにより、差動増幅部11は、測定対象電圧Vが直流電圧のときには、正電圧側の入力電圧範囲内である限りにおいて、測定対象電圧Vを歪ませることなく増幅して増幅電圧V2として出力する。また、差動増幅部11は、測定対象電圧Vが交流電圧のときには、この測定対象電圧Vに対する入力電圧範囲を最大にした状態で、測定対象電圧Vを歪ませることなく増幅して増幅電圧V2として出力する。
A/D変換部12は、この増幅電圧V2をデジタルデータDvに変換して処理部14に出力する。測定処理を開始している処理部14は、このデジタルデータDvを所定の周期で入力すると共に、デジタルデータDvを入力する都度、このデジタルデータDvに基づいて測定対象電圧Vの電圧値Vob(電圧測定端子2および共通端子4間の端子間電圧)を算出する。また、処理部14は、電圧値Vobを算出する都度、表示処理を実行して、算出した電圧値Vobを表示部15に測定値Ddとして更新しつつ表示させる。これにより、測定対象電圧Vの電圧値Vobが表示部15に測定値Ddとして表示されるため、測定装置1を使用した測定対象電圧Vの測定が可能となる。
次に、操作部13の第1ロータリースイッチが操作されて、電流測定モードが選択された場合の測定装置1の動作について説明する。なお、この電流測定モードでは、電流測定端子3および共通端子4に測定プローブ(不図示)がそれぞれ接続されているものとする。
測定装置1では、電流測定モードが選択されると、操作部13が、電流測定モードを示すモードデータDmを処理部14に出力する。処理部14は、このモードデータDmを入力したときには、まず、制御処理を実行する。
この制御処理では、処理部14は、第2スイッチ10に対する制御を実行して、差動増幅部11の一方の入力端子に電流測定端子3を接続するという制御を除く他の制御については、上記した電圧測定モードの制御処理と同様の制御を各構成要素に対して実行する。
次いで、処理部14は、測定処理を開始する。この状態において、測定装置1が、両測定プローブを介して、測定対象電流Iの電流経路に接続(電流経路の一部を構成するように接続)されたときには、電流測定端子3および共通端子4間に接続された電流検出抵抗9に測定対象電流Iが流れることにより、電流検出抵抗9の両端間に両端電圧(電流測定端子3および共通端子4間の端子間電圧でもある)が発生する。差動増幅部11は、この両端電圧を入力電圧V1として入力すると共に増幅して、増幅電圧V2として出力する。この場合、フローティング電圧Vfが共通端子4に供給されているため、測定対象電流Iが交流電流のときであっても、差動増幅部11は、上記した測定対象電圧Vが交流電圧であるときと同様にして、交流の両端電圧を、歪ませることなく増幅して増幅電圧V2として出力する。
A/D変換部12は、この増幅電圧V2をデジタルデータDvに変換して処理部14に出力する。測定処理を開始している処理部14は、このデジタルデータDvを所定の周期で入力すると共に、デジタルデータDvを入力する都度、このデジタルデータDvおよび電流検出抵抗9の抵抗値(既知)に基づいて測定対象電流Iの電流値Iobを算出する。また、処理部14は、電流値Iobを算出する都度、表示処理を実行して、算出した電流値Iobを表示部15に測定値Ddとして更新しつつ表示させる。これにより、測定対象電流Iの電流値Iobが表示部15に測定値Ddとして表示されるため、測定装置1を使用した測定対象電流Iの測定が可能となる。
次に、操作部13の第1ロータリースイッチが操作されて、抵抗測定モードが選択された場合の測定装置1の動作について説明する。なお、この抵抗測定モードでは、電圧測定端子2および共通端子4に測定プローブ(不図示)がそれぞれ接続されているものとする。
測定装置1では、抵抗測定モードが選択されると、操作部13が、抵抗測定モードを示すモードデータDm、および第2ロータリースイッチで選択されている抵抗測定レンジを示すレンジデータDrを処理部14に出力する。処理部14は、このモードデータDmおよびレンジデータDrを入力したときには、まず、制御処理を実行する。
この制御処理では、モードデータDmに基づいて、処理部14は、第1スイッチ8に対する制御を実行して、第1スイッチ8をオン状態に移行させることにより、電圧測定端子2と定電流供給部7とを接続する。また、処理部14は、第2スイッチ10に対する制御を実行して、差動増幅部11の一方の入力端子に電圧測定端子2を接続する。
また、処理部14は、レンジデータDrに基づいて、定電流供給部7に対する制御を実行して、レンジデータDrで示される抵抗測定レンジに対応して規定された連続定電流I1aを定電流生成回路7aに対して生成させると共に、レンジデータDrで示される抵抗測定レンジに対応して規定されたデューティ比でスイッチング回路7bを作動させる。これにより、定電流供給部7は、レンジデータDrで示される抵抗測定レンジに対応する電流値の直流定電流I1を出力する。
一例として、レンジデータDrで示される抵抗測定レンジが第1抵抗測定レンジから第3抵抗測定レンジのときは、定電流供給部7から出力される直流定電流I1の電流値は基準電流値Iref(本例ではDC1μA)以上であることから、処理部14は、定電流生成回路7aに対して、抵抗測定レンジに対応して予め規定された電流値の連続定電流I1aを出力させると共に、スイッチング回路7bに対して、常時オン状態(デューティ比:1)となるようにスイッチング動作を制御することにより、連続定電流I1aをそのまま直流定電流I1として出力させる。
これにより、定電流供給部7は、第1抵抗測定レンジのときにはDC100μA、第2抵抗測定レンジのときにはDC10μA、第3抵抗測定レンジのときにはDC1μAという電流値の連続定電流を直流定電流I1として出力する。
また、レンジデータDrで示される抵抗測定レンジが第3抵抗測定レンジよりも大きな抵抗測定レンジ(第4抵抗測定レンジおよび第5抵抗測定レンジ)のときは、定電流供給部7から出力される直流定電流I1の電流値は基準電流値Iref(本例ではDC1μA)未満であることから、処理部14は、定電流生成回路7aに対して、抵抗測定レンジに対応して予め規定された電流値(本例ではDC1μA)の連続定電流I1aを出力させると共に、スイッチング回路7bに対して、抵抗測定レンジに対応して予め規定されたデューティ比となるようにスイッチング動作を制御することにより、連続定電流I1aをパルス定電流に変換して直流定電流I1として出力させる。
これにより、第4抵抗測定レンジのときには、定電流供給部7は、スイッチング回路7bがデューティ比0.1で連続定電流I1a(DC1μA)をスイッチング動作することにより、電流値(平均電流値Iave)がDC0.1μAとなるパルス定電流を直流定電流I1として出力する。また、第5抵抗測定レンジのときには、定電流供給部7は、スイッチング回路7bがデューティ比0.01で連続定電流I1a(DC1μA)をスイッチング動作することにより、電流値(平均電流値Iave)がDC0.01μAとなるパルス定電流を直流定電流I1として出力する。
このように、定電流供給部7では、定電流生成回路7aが、高価な回路構成を採用することなく(安価な回路構成で)、安定して高精度で生成可能な範囲内(基準電流値Iref以上)の一定の電流値(例えば、DC1μA)で連続定電流I1aを生成する。また、スイッチング回路7bが、処理部14によって制御されて、この連続定電流I1aを抵抗測定レンジに対応するデューティ比でスイッチングする。この場合、スイッチング回路7bは、一例として、上記したようにトランジスタなどの半導体スイッチ、およびこの半導体スイッチをオン・オフ駆動する駆動回路で構成することができる結果、半導体スイッチおよび駆動回路共に安価に構成することができる。また、処理部14によるスイッチング回路7bに対する上記の制御を実現する方法としては、処理部14がスイッチング回路7bに対する駆動パルス(不図示)をデジタル処理によって上記のデューティ比で生成して出力する方法が一般的であるが、この方法によれば、処理部14が、安定して高精度な駆動パルスを簡単に生成できる結果、スイッチング回路7bが、この駆動パルスに基づいて安定して高精度でスイッチング動作することが可能となる。したがって、定電流供給部7は、基準電流値Iref(本例ではDC1μA)未満の電流値の直流定電流I1についても、安価でしかも安定して高精度で生成して出力する。
次いで、処理部14は、測定処理を開始する。この状態において、両測定プローブ間に測定対象体21が接続されると、定電流供給部7から、第1スイッチ8、電圧測定端子2、測定対象体21および共通端子4を介してフローティング電圧Vf(=Vcc/2)に至る電流経路が形成される。これにより、定電流供給部7によるこの電流経路への直流定電流I1の出力(供給)が開始されるため、測定対象体21の両端間、すなわち電圧測定端子2および共通端子4間に、測定対象体21の抵抗値Robに直流定電流I1を乗算して得られる電圧が発生する。
差動増幅部11は、この電圧測定端子2および共通端子4間に発生する電圧(測定対象体21の両端間に発生する両端電圧)を入力電圧V1として入力すると共に増幅して、増幅電圧V2として出力する。A/D変換部12は、この増幅電圧V2をデジタルデータDv(測定対象体21の両端間に発生する両端電圧を示すデータ)に変換して処理部14に出力する。
測定処理を開始している処理部14は、このデジタルデータDvを所定の周期(定電流供給部7からパルス定電流として出力される直流定電流I1のスイッチングの周期に比べて十分に早い周期(例えば、直流定電流I1のスイッチングの1周期に対して1/100以下の短い周期))で入力すると共に、この直流定電流I1のスイッチングの1周期に比べて十分に長い平均区間(例えば、直流定電流I1の1周期に対して10倍以上の長い周期)で平均化する。処理部14は、このようにして平均したデジタルデータDv(測定対象体21の両端間に発生する両端電圧の平均電圧値)および直流定電流I1の電流値(直流定電流I1がパルス定電流のときには平均電流値Iave。いずれも既知)に基づいて測定対象体21の抵抗値Robを算出する。また、処理部14は、抵抗値Robを算出する都度、表示処理を実行して、算出した抵抗値Robを表示部15に測定値Ddとして更新しつつ表示させる。これにより、測定対象体21の抵抗値Robが表示部15に測定値Ddとして表示されるため、測定装置1を使用した測定対象体21の抵抗測定が可能となる。
このように、この測定装置1では、抵抗測定モードの場合、定電流供給部7が、選択された抵抗測定レンジに対応する電流値(選択された電流値)が予め規定された基準電流値Iref(本例ではDC1μA)以上のときには、振幅が連続してこの選択された電流値となる連続定電流I1aをそのまま直流定電流I1として出力し、選択された抵抗測定レンジに対応する電流値(選択された電流値)が基準電流値Iref(DC1μA)未満のときには、振幅が基準電流値Iref以上の電流値Im(本例では、基準電流値Irefと同じ(DC1μA))で、かつ平均電流値Iaveがこの選択された抵抗測定レンジに対応する電流値となるパルス定電流を生成して直流定電流I1として出力する。
したがって、この測定装置1によれば、選択された抵抗測定レンジに対応する電流値が基準電流値Iref未満の微小な直流定電流I1を定電流供給部7から出力させる場合であっても、定電流供給部7において、高価な回路構成を採用することなく(安価な回路構成で)、安定して高精度で生成可能な範囲内(基準電流値Iref以上)の一定の電流値Im(本例では基準電流値Irefと同じ)で連続定電流I1aを生成させ、この連続定電流I1aを選択された抵抗測定レンジに対応するデューティ比でスイッチングさせてパルス定電流とすることにより、電流値が基準電流値Iref未満の微小な直流定電流I1を、安価でしかも安定して高精度で生成させることができる。これにより、この測定装置1によれば、装置コストの上昇を抑えつつ、微小な直流定電流I1を供給する必要がある高い抵抗値の測定対象体21について、高精度でその抵抗値を測定することができる。
また、この測定装置1によれば、抵抗測定モードのときに、測定対象体21の両端間に発生する両端電圧を示すデジタルデータDvを直流定電流I1がパルス定電流として出力されるときの1周期に比べて十分に長い平均区間で平均することによって測定対象体21の両端間に発生する両端電圧の平均電圧値を算出するため、測定対象体21に対してパルス状の直流定電流I1を出力する構成においても、測定対象体21の両端間に発生する両端電圧を正確に算出することができ、ひいては、この算出した両端電圧を使用して、測定対象体21の抵抗値を正確に測定(算出)することができる。また、後述する平滑回路を設ける構成と比較して、部品点数を削減することができるため、装置コストのさらなる低減を図ることができる。
なお、上記の測定装置1では、選択された抵抗測定レンジに対応する電流値が基準電流値Iref(DC1μA)未満の微小な電流値のときに、定電流供給部7からパルス定電流として直流定電流I1を出力させる構成を採用しているが、この構成に限られない。例えば、定電流供給部7の内部または外部にパルス定電流としての直流定電流I1を平滑する平滑回路(図示せず)を設け、パルス定電流としての直流定電流I1を平滑して測定対象体21に供給する構成を採用することもできる。この構成によれば、部品点数が増加するものの、測定対象体21にパルス状の定電流が供給され、これに伴い、測定対象体21の両端間にパルス状の両端電圧が発生することに起因したノイズの発生を低減することができる。また、直流定電流I1の振幅がほぼ一定となるように平滑されているときには、処理部14が入力したデジタルデータDvを平均化する上記の処理を不要にすることができる。
また、上記の測定装置1では、電圧測定モード、電流測定モードおよび抵抗測定モードの3つの測定モードから任意の1つを選択して測定できる構成を採用しているが、電流測定モードおよび電圧測定モードのうちの少なくとも1つを省く構成を採用することもできる。また、上記の測定装置1では、電池5を電源して作動する携帯型の測定装置に構成しているが、商用電源で作動する測定装置にも適用することもできる。