まず、比較例による半導体紫外線受光素子について説明する。
図12Aは、比較例による受光素子の概略断面図である。比較例の受光素子では、半導体層の成長方法として分子線エピタキシ(MBE)を用いる。
Alが添加されたn型Zn面ZnO(0001)基板101上に、Znビーム及びOラジカルビームを同時照射して、ZnOバッファー層102を厚さ30nm成長させる。ZnOバッファー層102の成長条件は、例えば、成長温度300℃、Znフラックス0.02nm/s、OソースガンのO2流量2sccm/RFパワー300Wとする。ZnOバッファー層102の成長後、900℃でアニールを行い、結晶性及び表面平坦性の改善を行う。
ZnOバッファー層102上に、Znビーム及びOラジカルビームを同時照射して、アンドープZnO層103を厚さ500nm成長させる。アンドープZnO層103の成長条件は、例えば成長温度900℃、Znフラックス0.02nm/s、OソースガンのO2流量2sccm/RFパワー300Wとする。
n型ZnO基板101のキャリア濃度は、例えば2.0×1017cm−3である。アンドープZnOエピ層103は、n型ZnO基板101に比べて高抵抗のn型導電性を示し、キャリア濃度は例えば3.9×1015cm−3である。
次に、アンドープZnO層103上に、導電性ポリマーによる有機物電極104を形成する。具体的には、有機物電極104の材料として、例えばPEDOT:PSSが用いられる。PEDOT:PSSは、キャリアドーパント兼水分散剤としてポリスチレンスルホン酸(PSS)を含んだ、ポリチオフェン誘導体のポリ3,4‐エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)である。PEDOT:PSSに、導電率増加剤として例えばジメチルスルホキシド(DMSO)を添加して使用することができる。なお、後述の実施例の有機物電極形成材料も、比較例のものと同様である。
まず、アンドープZnO層103上に、有機物電極104形成のためのリフトオフ用のパターンを、レジストにより形成する。その後、紫外線(UV)オゾン洗浄を行う。そして、導電率増加剤を添加したPEDOT:PSSを、スピンコートにより(加熱処理後の厚さで)例えば厚さ30nm塗布し、リフトオフにより有機物電極104を形成する。リフトオフ後、ホットプレートにより例えば200℃、20分の加熱処理を施す。
有機物電極104は、アンドープZnO層103に対してショットキー電極を形成するとともに、紫外線透過性である。有機物電極104を透過してアンドープZnO層103に入射した紫外線により、光起電力が生じる。なお、このような半導体紫外線受光素子では、ショットキー電極を用いることにより、n型半導体層に比べて形成が難しいp型半導体を形成しなくてすむ。
有機物電極104上に、ワイヤーボンディング用金属電極105の形成領域に開口を有する金属マスクを用い、電子ビーム(EB)蒸着により例えば厚さ100nmのAu層を堆積して、ワイヤーボンディング用金属電極105を形成する。
ZnO基板101の裏面上に、例えば厚さ10nmのTi層106aを形成し、Ti層106a上に例えば厚さ500nmのAu層106bを積層して、オーミック電極106を形成する。このようにして、比較例の受光素子が作製される。
その後、ダイボンディング及びワイヤーボンディングにより、比較例の受光素子をステム上に接合して、比較例の受光装置を作製する。
図12Bは、ワイヤーボンディング時における比較例の受光素子を示す概略断面図である。ワイヤーボンディング用金属電極105に、Auボール111を介してAuワイヤー112がボンディングされる。
しかし、比較例の受光素子は、ワイヤーボンディング用金属電極105と有機物電極104との密着性が悪く、ワイヤーボンディング用金属電極105が有機物電極104から剥離しやすい。
図12Cは、比較例の受光素子の、ワイヤーボンディング用金属電極105が剥離した後の表面写真を示す。ワイヤーボンディング用金属電極105の一部が剥離して、剥離部105Pが生じている。
本願発明者らは、以下に説明するように、ワイヤーボンディング用金属電極の有機物電極からの剥離が抑制された半導体紫外線受光素子を提案する。
次に、第1実施例による半導体紫外線受光素子について説明する。第1実施例でも、比較例と同様に、半導体層の成長方法としてMBEを用いる。図1A〜図1Dは、第1実施例の受光素子の主要な製造工程を示す概略断面図である。
図1Aを参照する。例えば比較例と同様な条件で、Alが添加されたn型Zn面ZnO(0001)基板1上に、ZnOバッファー層2を成長させアニールを行い、ZnOバッファー層2上に、アンドープZnO層3を成長させる。ただし、第1実施例では、アンドープZnO層3の厚さを例えば約1.5μmとする。n型ZnO基板1及びZnOエピ層3のキャリア濃度は、それぞれ例えば、2.0×1017cm−3及び3.9×1015cm−3である。
なお、受光素子として適したショットキー接合を良好に形成するために、有機物電極と接触する半導体層のキャリア濃度は、例えば1×1016cm−3以下と低くすることが好ましい。Zn面(+c面)でZnO系半導体層を成長させることにより、キャリア濃度の低い半導体層を安定して形成しやすい。
図1Bを参照する。アンドープZnO層3の全面上に、例えば、SiO2をスパッタリングで厚さ300nm堆積して、絶縁層4を形成する。絶縁層4上に、有機物電極5の形成領域を露出する開口を有するレジストパターンRP1を形成する。レジストパターンRP1をマスクとして、例えばバッファードフッ酸により絶縁層4をエッチングして、レジスト開口内にアンドープZnO層3を露出させる。
レジストパターンRP1を残した状態で、UVオゾン洗浄を行った後、導電率増加剤を添加したPEDOT:PSSを、スピンコートにより(加熱処理後の厚さで)例えば厚さ30nm塗布する。そして、レジストパターンRP1とともに不要部のPEDOT:PSSを除去するリフトオフにより、有機物電極5を残す。このようにして、絶縁層4の形成されていない部分のアンドープZnO層3上に、有機物電極5が形成される。リフトオフ後、ホットプレートにより例えば200℃、20分の加熱処理を施す。なお、有機物電極5の加熱処理には、真空乾燥炉、クリーンオーブン等を用いてもよい。
図1Cを参照する。絶縁層4及び有機物電極5上に、ワイヤーボンディング用金属電極6を形成する。ワイヤーボンディング用金属電極6は、有機物電極5上から絶縁層4上に延在するように配置され、透光領域を確保するため有機物電極5の一部上を覆い、絶縁層4の上方部分に、ワイヤーボンディング領域となる程度の広い面積を確保する。
ワイヤーボンディング用金属電極6の形成領域に開口を有する金属マスクを用い、EB蒸着により、例えば厚さ10nmのTi層6aを形成し、Ti層6a上に例えば厚さ500nmのAu層6bを積層して、ワイヤーボンディング用金属電極6を形成する。Ti層6aが、絶縁層4との密着層として働く。
ZnO基板1の裏面上に、例えば厚さ10nmのTi層7aを形成し、Ti層7a上に例えば厚さ500nmのAu層7bを積層して、オーミック電極7を形成する。このようにして、第1実施例の受光素子が作製される。
なお、ワイヤーボンディング用金属電極の形成工程とオーミック電極の形成工程とは、どちらを先に行うこともできる。
その後、ダイボンディング及びワイヤーボンディングにより、第1実施例の受光素子をステム上に接合して、第1実施例の受光装置を作製する。
図1Dは、ワイヤーボンディング時における第1実施例の受光素子を示す概略断面図である。
図2は、第1実施例の受光装置の全体構造を示す概略断面図である。受光素子のオーミック電極7が、ステム21の一方の電極21a上に銀ペースト22を介してダイボンディングされている。受光素子のワイヤーボンディング用金属電極6(の上層であるAu層6b)と、ステム21の他方の電極21bとが、Auボール11、13を介してAuワイヤー12でワイヤーボンディングされている。Auボール11が、絶縁層4の上方部分のワイヤーボンディング用金属電極6上に配置されている。受光素子の上方が、紫外線透過窓24の形成された容器23で覆われている。
図3は、ワイヤーボンディングの施された第1実施例の受光素子の、ワイヤーボンディング用金属電極6近傍を示す写真である。ワイヤーボンディング用金属電極6が、有機物電極5から剥離することなく、ワイヤーボンディングが良好に行われていることがわかる。
第1実施例の受光素子の電気的特性について説明する。ZnO基板1側(ダイボンディング側)がカソード、ショットキー電極である有機物電極5側(ワイヤーボンディング側)がアノードであるので、ワイヤーボンディング側をプラス、ダイボンディング側をマイナスにして電圧印加するのが順バイアス、その逆が逆バイアスである。逆バイアスまたは印加電圧0Vとして、受光素子が使用される。
図4Aは、第1実施例の受光素子の電流−電圧特性(I‐V特性)を示すグラフである。横軸は印加電圧であり、縦軸は電流の絶対値でlog表示である。暗電流を破線で示し、光電流を実線で示す。光電流測定時の光源には、波長365nmのLED(0.035μW)を使用した。なお、I‐V特性を示すグラフの表示方法、光電流測定時の光源は、後述の第2実施例及び第4実施例のI−V特性についても同様である。
受光素子として使用する逆バイアスでの特性をみると、光を照射しない暗状態での暗電流は、電圧−4Vまで印加した時に、数nAである。光照射時の光電流は、電圧−4Vまで印加した時に、約1μAとなっている。
第1実施例の受光素子の光入射時(オン時)と遮光時(オフ時)の応答特性について説明する。
図4Bは、光応答特性測定回路を概略的に示す回路図である。受光素子がダイオードで示され、有機物電極側の端子と接地電位との間に抵抗R(91kΩ)が接続されている。受光素子のZnO基板側の端子と接地電位との間に直流電圧源Vias(0V)が接続されている。受光素子に光hνが入射される。
紫外線レーザー光をチョッパーによりオンオフし、受光素子への印加電圧0Vにおける抵抗Rの出力電圧Vを、光応答電圧としてオシロスコープで測定した。紫外線レーザーとして、波長325nmのHe‐Cdレーザー(1μW)を使用した。
図4Cは、第1実施例の受光素子の光応答特性を示すグラフである。出力電圧の大きさを、矢印で示す。出力電圧22mVが得られた。受光感度に換算すると、約240mA/Wが得られたことになる。
上記の測定結果より、第1実施例のZnO系半導体素子は、紫外線受光素子として機能することが確認された。
次に、第2実施例による半導体紫外線受光素子について説明する。第2実施例では、第1実施例と異なり、半導体層の成長方法として有機金属化学気相堆積(MOCVD)を用いる。
図1Aを再び参照する。第2実施例でも第1実施例と同様に、成長基板として、Alが添加されたn型Zn面ZnO(0001)基板1を用いる。ただし、第2実施例では、ZnOバッファー層2が省略される。
ZnO基板1上に、例えば、成長温度775℃で、Zn源としてDMZnを10μmol/min供給し、酸素源としてH2Oを800μmol/min供給して、80kPaの圧力で、アンドープZnO層3を厚さ1000nm成長する。ZnO基板1及びZnOエピ層3のキャリア濃度は、それぞれ例えば、2.0×1017cm−3、1.5×1015cm−3である。
その後は、第1実施例で図1B、図1Cを参照して説明した工程と同様にして、アンドープZnO層3上方に絶縁層4、有機物電極5、及びワイヤーボンディング用金属電極6を形成し、ZnO基板1の裏面上にオーミック電極7を形成して、第2実施例の受光素子を作製する。そして、第1実施例で図1D、図2を参照して説明した工程と同様にして、ワイヤーボンディング用金属電極6にワイヤーボンディングを施して、第2実施例の受光装置を作製する。
図5は、第2実施例の受光素子のI‐V特性を示すグラフである。逆バイアスでの特性をみると、電圧−4Vまで印加した時の暗電流は、数nA以下である。電圧−4Vまで印加した時の光電流は、約10μAとなっている。
第1実施例と第2実施例のI−V特性を比較すると、第2実施例では、暗電流が低下するとともに光電流が増加している。暗電流に対する光電流の比を比べると、第2実施例では第1実施例よりも2桁近く大きくなっている。
このことより、受光素子の感度向上の観点で、第1実施例よりも第2実施例の方が好ましく思われる。第1実施例と第2実施例のI−V特性に顕著な差が生じた理由は明らかでないが、第2実施例と第1実施例の主な差は、第2実施例ではMOCVDで、第1実施例ではMBEで受光半導体層を形成したことである。従って、半導体層の形成方法の違いがI−V特性の差に反映されている可能性もある。
次に、第3実施例による半導体紫外線受光素子について説明する。第3実施例では、第1実施例と同様に、半導体層の成長方法としてMBEを用いる。ただし、絶縁性の成長基板を用いた。図6A〜図6Fは、第3実施例の受光素子の主要な製造工程を示す概略断面図である。
図6Aを参照する。c面サファイア基板31上に、MgビームとOラジカルビームを同時照射して、MgO層32を厚さ約10nm成長させる。MgO層32の成長条件は、例えば、成長温度650℃、Mgフラックス0.05nm/s、OソースガンのO2流量2sccm/RFパワー300Wとする。
MgO層32は、その上に成長させるZnO系半導体層をZn極性面(+c面)で成長させる極性制御層となる。なお、無極性単結晶基板上方に成長させるZnO系半導体層の極性を、MgO層を介して制御する技術については、特開2005‐197410号公報の「発明を実施するための最良の形態」の欄に説明されている。
MgO層32上に、Znビーム及びOラジカルビームを同時照射して、ZnOバッファー層33を厚さ約30nm成長させる。ZnOバッファー層33の成長条件は、例えば、成長温度300℃、Znフラックス0.1nm/s、OソースガンのO2流量2sccm/RFパワー300Wとする。ZnOバッファー層33の成長後、結晶性及び表面平坦性改善のため、900℃、30分のアニールを施す。
ZnOバッファー層33上に、Znビーム、Oラジカルビーム、及びGaビームを同時照射して、Gaドープn型ZnO層34を厚さ約2.0μm成長させる。n型ZnO層34の成長条件は、例えば、成長温度900℃、Znフラックス0.05nm/s、OソースガンのO2流量2sccm/RFパワー300W、Gaフラックス0.01nm/sとする。
n型ZnO層34上に、Znビーム及びOラジカルビームを同時照射して、アンドープZnO層35を厚さ約1.5μm成長させる。アンドープZnO層35の成長条件は、例えば、成長温度900℃、Znフラックス0.05nm/s、OソースガンのO2流量2sccm/RFパワー300Wとする。
n型ZnOエピ層34及びアンドープZnOエピ層35のキャリア濃度は、それぞれ例えば、1.0×1018cm−3、7.0×1015cm−3である。
アンドープZnO層35上に、レジストパターンRP31を形成する。レジストパターンRP31は、後の工程で有機物電極38が形成される領域を覆う。例えば、SiO2を全面にスパッタリングで厚さ300nm堆積し、レジストパターンRP31とともに不要部のSiO2を除去するリフトオフにより、絶縁層36を形成する。
図6Bを参照する。絶縁層36上及びアンドープZnO層35上に、レジストパターンRP32を形成する。レジストパターンRP32は、後の工程でオーミック電極37が配置される領域を露出する開口を有する。
レジストパターンRP32をマスクとして、例えばバッファードフッ酸により絶縁層36をエッチングし、さらに、例えば塩酸でアンドープZnO層35をエッチングして、n型ZnO層34を露出させる。レジストパターンRP32を除去して洗浄を行う。
図6Cを参照する。図6Bの工程で露出したn型ZnO層34の一部上に、オーミック電極37を形成する。オーミック電極37の形成領域に開口を有する金属マスクを用い、EB蒸着により、例えば厚さ50nmのTi層37aを形成し、Ti層37a上に例えば厚さ500nmのAu層37bを積層して、オーミック電極37を形成する。
図6Dを参照する。レジストパターンRP33を形成する。レジストパターンRP33は、図6Aの工程で絶縁層36が除去された領域のアンドープZnO層35を露出する開口を有する。この実施例では、レジストパターンRP33の縁が、図6Aの工程で絶縁層36が除去された領域の縁と整合している。
UVオゾン洗浄を行った後、導電率増加剤を添加したPEDOT:PSSを、スピンコートにより(加熱処理後の厚さで)例えば厚さ30nm塗布する。レジストパターンRP33とともに不要部のPEDOT:PSSを除去するリフトオフにより、有機物電極38を形成する。リフトオフ後、ホットプレートにより例えば200℃、20分の加熱処理を施す。
図6Eを参照する。ワイヤーボンディング用金属電極39を形成する。ワイヤーボンディング用金属電極39は、第1実施例と同様に、絶縁層36と有機物電極38とにまたがるように配置される。
ワイヤーボンディング用金属電極39の形成領域に開口を有する金属マスクを用い、EB蒸着により、例えば厚さ50nmのTi層39aを形成し、Ti層39a上に例えば厚さ500nmのAu層39bを積層して、ワイヤーボンディング用金属電極39を形成する。このようにして、第3実施例の受光素子が作製される。
その後、ダイボンディング及びワイヤーボンディングにより、第3実施例の受光素子をステム上に接合して、第3実施例の受光装置を作製する。
図6Fは、ワイヤーボンディング時における第3実施例の受光素子を示す概略断面図である。第1実施例と異なり、ダイボンディングされる基板31の裏面側には電極が配置されていない。第3実施例の受光素子は、有機物電極38に接続されたワイヤーボンディング用金属電極39が、Auボール41を介してAuワイヤー42でステムの一方の電極にワイヤーボンディングされるとともに、オーミック電極37が、Auボール43を介してAuワイヤー44でステムの他方の電極にワイヤーボンディングされる。
以上、第1〜第3実施例に沿って説明したように、半導体紫外線受光素子において、ショットキー電極として用いる有機物電極上に形成するワイヤーボンディング用金属電極を、有機物電極上と、その外側に配置された絶縁層上とにまたがって形成することにより、ワイヤーボンディング用金属電極の有機物電極からの剥離を抑制できる。
図7は、第3実施例の変形例による半導体紫外線受光素子の、ワイヤーボンディング用電極39近傍を示す概略断面図である。この変形例では、有機物電極38が絶縁層36の縁部に乗り上げるように形成されており、有機物電極38が絶縁層36の縁部に乗り上げた部分の上に、ワイヤーボンディング用電極39が形成されている。
有機物電極38形成のリフトオフで用いるレジストパターンRP33(図6D参照)を、絶縁層36の縁部が露出するように形成して、このような有機物電極構造を形成することができる。
絶縁層36と有機物電極38とは、ワイヤーボンディング用金属電極39とアンドープZnO層35とが短絡するような隙間ができないように形成されることが好ましい。そのような短絡抑制の観点からは、絶縁層36の縁部に乗り上げた有機物電極38は好ましいといえる。
なお、第1実施例(及び第2実施例)では、絶縁膜4のエッチングマスクが、有機物電極5を形成するリフトオフのレジストパターンを兼ねる。これにより、絶縁膜4の縁と有機物電極5の縁を整合させることが容易である。
なお、第1実施例(及び第2実施例)でも、絶縁層4の縁部に乗り上げた構造の有機物電極5としてもよい。その場合は、図1Bの工程において、絶縁層4のエッチング後にレジストパターンRP1を除去し、新たに、絶縁層4の縁部を露出するような、有機物電極5のリフトオフ用のレジストパターンを形成すればよい。
図8A〜図8Eは、受光素子上の絶縁層IL、有機物電極OE、及びワイヤーボンディング用金属電極WEの種々の配置例を示す概略平面図である。
図8Aは、受光素子の隅部に正方形状の絶縁層ILが配置され、他の部分は有機物電極OEが覆っており、絶縁層IL上に配置された円形状のワイヤーボンディング用金属電極WEが、絶縁層ILからはみ出し有機物電極OE上に重なっている。
図8Bは、受光素子の中央部に正方形状の絶縁層ILが配置され、その周りは有機物電極OEが覆っており、絶縁層IL上に配置された円形状のワイヤーボンディング用金属電極WEが、絶縁層ILからはみ出し有機物電極OE上に重なっている。
図8Cは、受光素子の中央部に円形状の絶縁層ILが配置され、その周りは有機物電極OEが覆っており、絶縁層IL上に、絶縁層ILより半径の大きな円形状のワイヤーボンディング用金属電極WEが配置されている。
図8Dは、受光素子の隅部に正方形状の絶縁層ILが配置され、他の部分は有機物電極OEが覆っており、ワイヤーボンディング用金属電極WEは、絶縁層IL内に収まる円形部分と、円形部分から縦方向と横方向に延びて有機物電極OE上に延在する棒状部分とを有する。
図8Eは、受光素子の内部に正方形状の絶縁層ILが配置され、その周りは有機物電極OEが覆っており、ワイヤーボンディング用金属電極WEは、絶縁層IL内に収まる円形部分と、円形部分から上下方向と左右方向に延びて有機物電極OE上に延在する棒状部分とを有する。
第1〜第3実施例では、受光半導体層としてZnOを用いたが、受光半導体層としてMgZnOを用いることもできる。Mg組成xを明示したMgxZn1−xOは、0≦x<0.6のときはウルツ鉱構造となり、0.6≦x≦1のときは岩塩構造となる。なお、Mg組成xが0のMgxZn1−xOはZnOを表す。
図13は、(ウルツ鉱構造の)MgxZn1−xOのエネルギーギャップとMg組成xとの関係を示すグラフである。ウルツ鉱構造のMgxZn1−xOにおいて、Mg組成xを0から0.6まで大きくすると、エネルギーギャップは3.3eV(波長376nm)から4.4eV(波長282nm)まで大きくなる。また、岩塩構造のMgxZn1−xOにおいて、Mg組成xを0.6から1.0まで大きくすると、エネルギーギャップは5.4eV(波長230nm)から7.8eV(波長159nm)まで大きくなる。エネルギーギャップが大きくなることにより、受光感度波長が短波長側へシフトする。これを利用することにより波長選択が可能となる。
太陽光の紫外線は、UV−A(320〜400nm)、UV‐B(280〜320nm)、及びUV−C(280nm以下)に分類されるが、UV−Cはオゾン層で吸収されて地表まで届かないので、通常の紫外線は、実質的にUV−AとUV‐Bである。UV−Cは、例えば火炎等のみに含まれることになる。
エネルギーギャップの大きな岩塩構造のMgxZn1−xOを使用することにより、短波長のUV−C(280nm以下)だけを検知する事が可能となる。従って、例えば、UV−Cを含む炎を検知するための火炎センサーとして使用可能となる。
なお、岩塩構造のMgxZn1−xOを成長させる場合は、成長基板として、同じ岩塩構造のMgO基板を使用するのが好ましい。
次に、第4実施例による半導体紫外線受光素子について説明する。第1〜第3実施例では、受光半導体層としてII族酸化物半導体を用いたZnO系半導体紫外線受光素子を作製した。第4実施例では、受光半導体層としてIII族窒化物半導体を用いたGaN系半導体紫外線受光素子を作製する。
図9は、第4実施例の受光素子を示す概略断面図である。ワイヤーボンディング時の断面図を示す。c面サファイア基板51上に、MOCVD法により、GaNバッファー層52、n型GaN層53(例えば厚さ3μm)、及びアンドープGaN層54(例えば厚さ2μm)を成長させる。n型GaN層53とアンドープGaN層54のキャリア濃度は、それぞれ例えば、2.0×1018cm−3、1.6×1016cm−3である。
第3実施例で図6Aを参照して説明した工程と同様にして、アンドープGaN層54上に、リフトオフにより絶縁層55を形成する。
第3実施例で図6Bを参照して説明した工程と同様にして、オーミック電極56の配置領域を確保するため、絶縁層55及びアンドープGaN層54をエッチングして、n型GaN層53を露出させる。絶縁層55は例えばバッファードフッ酸でエッチングし、アンドープGaN層54は例えば反応性イオンエッチング(RIE)でエッチングする。
第3実施例で図6Cを参照して説明した工程と同様にして、オーミック電極56の形成領域の開口を有する金属マスクを用い、EB蒸着により、例えば厚さ50nmのTi層56aを形成し、Ti層56a上に例えば厚さ100nmのPt層56bを積層し、Pt層56b上に例えば厚さ500nmのAu層56cを積層して、オーミック電極56を形成する。
さらに、第3実施例で図6Dを参照して説明した工程と同様にして、有機物電極57を形成し、図6Eを参照して説明した工程と同様にして、ワイヤーボンディング用金属電極58を形成する。このようにして、第4実施例の受光素子が作製される。その後、第3実施例で図6Fを参照して説明した工程と同様にして、ステム上へのボンディングを行い、第4実施例の受光装置を作製する。
第4実施例の受光素子でも、ワイヤーボンディング用金属電極58が、有機物電極57上と、それに隣接して配置された絶縁層55上とにまたがって形成されていることにより、ワイヤーボンディング用金属電極58の有機物電極57からの剥離が抑制されている。
図10Aは、第4実施例の受光素子のI‐V特性を示すグラフである。逆バイアスでの特性をみると、電圧−4Vまで印加した時の暗電流は、0.1nA以下である。電圧−4Vまで印加した時の光電流は、数10nAとなっている。
図10Bは、第4実施例の受光素子の光応答特性を示すグラフである。測定回路等は、第1実施例で図4Bを参照して説明したものと同様である。出力電圧の大きさを、矢印で示す。素子への印加電圧0Vの時の抵抗Rの出力電圧をオシロスコープで測定し、出力電圧22mVが得られた。受光感度に換算すると、約240mA/Wが得られたことになる。
上記の測定結果より、第4実施例のGaN系半導体素子も、紫外線受光素子として機能することが確認された。
なお、第4実施例では受光半導体層としてGaNを使用したが、受光半導体層としてAlzGa1‐zN (0≦z≦1)を用いることもできる。Al組成zを大きくすることにより、エネルギーギャップが大きくなり、受光感度波長が短波長側へシフトする。これを利用することにより波長選択が可能となる。
次に、第5実施例による半導体紫外線受光素子について説明する。第5実施例の受光素子は、受光感度波長帯域の異なる2つの受光半導体層を有する。例えば、受光半導体層としてウルツ鉱構造のZnO系半導体を用い、半導体層の成長方法としてMBEを用いる。図11A〜図11Eは、第5実施例の受光素子の主要な製造工程を示す概略断面図である。
図11Aを参照する。Alが添加されたn型Zn面ZnO(0001)基板61上に、例えば第1実施例と同様な条件で、ZnOバッファー層62を成長させアニールを行い、ZnOバッファー層62上に、アンドープZnO層63を成長させる。アンドープZnO層63のエネルギーギャップは3.3eV(波長としては376nm)となる。
アンドープZnO層63上に、Znビーム、Mgビーム、及びOラジカルビームを同時照射して、ウルツ鉱構造のMgZnO層64を例えば厚さ約1.5μm成長させる。MgZnO層64の成長条件は、例えば、成長温度900℃、Znフラックス0.2nm/s、Mgフラックス0.04nm/s、OソースガンのO2流量2sccm/RFパワー300Wとする。この例では、アンドープMgZnO層64のMg組成が0.37で、このときエネルギーギャップは4eV(波長としては310nm)となる。
キャリア濃度は、例えば、ZnO基板51が2.0×1017cm−3、アンドープZnOエピ層63が3.9×1015cm−3、アンドープMgZnOエピ層64が1.3×1015cm−3である。
アンドープMgZnO層64上に、レジストパターンRP61を形成する。レジストパターンRP61は、受光半導体層としてアンドープMgZnO層64を用いる領域を覆い、受光半導体層としてアンドープZnO層63を用いる領域を露出する。
レジストパターンRP61をマスクとして、アンドープMgZnO層64を酸でエッチングして、アンドープZnO層63を露出させる。このエッチングは、ケミカルエッチングでもよいし、ドライエッチングでもよい。その後、レジストパターンRP61を除去する。
図11Bを参照する。アンドープMgZnO層64及び露出したアンドープZnO層63上に、レジストパターンRP62を形成する。レジストパターンRP62は、後の工程で、アンドープZnO層63上に配置される有機物電極66Aの形成領域、及びアンドープMgZnO層64上に配置される有機物電極66Bの形成領域を覆う。例えば、SiO2を全面にスパッタリングで厚さ300nm堆積し、レジストパターンRP62とともに不要部のSiO2を除去するリフトオフにより、絶縁層65を形成する。
図11Cを参照する。レジストパターンRP63を形成する。レジストパターンRP63は、アンドープZnO層63上の有機物電極66Aの形成領域、及び、アンドープMgZnO層64上の有機物電極66Bの形成領域をそれぞれ露出する開口を有する。
UVオゾン洗浄を行った後、導電率増加剤を添加したPEDOT:PSSを、スピンコートにより(加熱処理後の厚さで)例えば厚さ30nm塗布する。レジストパターンRP63とともに不要部のPEDOT:PSSを除去するリフトオフにより、アンドープZnO層63上に有機物電極66Aを、アンドープMgZnO層64上に有機物電極66Bを形成する。リフトオフ後、ホットプレートにより例えば200℃、20分の加熱処理を施す。
図11Dを参照する。アンドープZnO層63上方にワイヤーボンディング用金属電極67Aを形成するとともに、アンドープMgZnO層64上方にワイヤーボンディング用金属電極67Bを形成する。
ワイヤーボンディング用金属電極67Aは、絶縁層65と有機物電極66Aとにまたがるように配置され、ワイヤーボンディング用金属電極67Bは、絶縁層65と有機物電極66Bとにまたがるように配置される。これにより、第1実施例等と同様に、ワイヤーボンディング用金属電極67Aと有機物電極66Aとの剥離や、ワイヤーボンディング用金属電極67Bと有機物電極66Bとの剥離が抑制される。
ワイヤーボンディング用金属電極67Aの形成領域、及びワイヤーボンディング用金属電極67Bの形成領域に開口を有する金属マスクを用い、EB蒸着により、例えば厚さ50nmのTi層67aを形成し、Ti層67a上に例えば厚さ500nmのAu層67bを積層して、ワイヤーボンディング用金属電極67A及び67Bを形成する。
本実施例では、アンドープZnO層63とアンドープMgZnO層64とにまたがって形成された部分の絶縁層65a上に、ワイヤーボンディング用金属電極67A及び67Bを配置している。
ZnO基板61の裏面上に、例えば厚さ10nmのTi層68aを形成し、Ti層68a上に例えば厚さ500nmのAu層68bを積層して、オーミック電極68を形成する。このようにして、第5実施例の受光素子が作製される。
第5実施例の受光素子は、受光半導体層をアンドープZnO層63とする受光素子部分LSAと、受光半導体層をアンドープMgZnO層64とする受光素子部分LSBとを含む。
ワイヤーボンディング用金属電極67Aが、有機物電極66Aを介して、アンドープZnO層63に電気的に接続され、ワイヤーボンディング用金属電極67Bが、有機物電極66Bを介して、アンドープMgZnO層64に電気的に接続されている。オーミック電極68が、アンドープZnO層63とアンドープMgZnO層64の両方に電気的に接続されて、両受光素子部分LSA及びLSBで共通である。
その後、ダイボンディング及びワイヤーボンディングにより、第5実施例の受光素子をステム上に接合して、第5実施例の受光装置を作製する。
図11Eは、ワイヤーボンディング時における第5実施例の受光素子を示す概略断面図である。オーミック電極68が、ステムの両受光素子LSA及びLSBに共通な電極上にダイボンディングされる。ワイヤーボンディング用金属電極67Aが、Auボール71Aを介してAuワイヤー72Aで、ステムの受光素子LSA側の電極に接続され、ワイヤーボンディング用金属電極67Bが、Auボール71Bを介してAuワイヤー72Bで、ステムの受光素子LSB側の電極に接続される。
第5実施例の受光素子は、例えば、日焼け対策のために太陽光の紫外線を測定する測定器に利用できる。上述のように、太陽光の紫外線は、実質的にUV−A(320〜400nm)とUV‐B(280〜320nm)である。
受光半導体層をZnO層63とする受光素子部分LSAは、波長376nm以下の紫外線に受光感度があるので、UV−A(320〜400nm)及びUV‐B(280〜320nm)の測定に適する。
一方、受光半導体層をMgZnO層64とする受光素子部分LSBは、例えばMg組成を0.37として波長310nm以下(また例えばMg組成を0.31として波長320nm以下)の紫外線に受光感度があるので、UV‐B(280〜320nm)の測定に適する。受光素子部分LSAで測定された光電流から、受光素子部分LSBで測定された光電流を差し引くことにより、UV−Aの強さも見積もることができる。
なお、第5実施例では、ZnO層上側にMgZnO層を形成したが、MgZnO層上側にZnO層を形成することもできる。なお、第3実施例の変形例のような、有機物電極と絶縁層の構造とすることもできる。
このように、ある受光半導体層の一部上に、この受光半導体層と同一結晶構造でエネルギーギャップの異なる他の受光半導体層をエピタキシャル成長させることにより、同一基板上に、受光感度波長帯域の異なる複数の受光素子部分を作ることができる。
以上説明した実施例では、有機物電極(PEDOT:PSS)の導電率増加剤として、ジメチルスルホキシド(DMSO)を添加して使用したが、エチレングリコールや1‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)などの非プロトン性極性溶媒を使用してもよい。
また、有機物電極形成において、スピンコートによりPEDOT:PSSを塗布し、リフトオフしてパターン形成したが、スクリーン印刷用の導電性ポリマーを使用して、スクリーン印刷により直接パターン形成してもよい。スクリーン印刷用の導電性ポリマーもポリチオフェン誘導体から形成されている。
また、ワイヤーボンディング用金属電極の形成される絶縁層として、SiO2を使用したが、例えば、SiON、Si3N4、Al2O3、MgOを使用してもよい。絶縁層形成方法として、スパッタリングを使用したが、例えば熱化学気相堆積(CVD)、プラズマCVD、低圧(LP)CVD等を用いてもよい。
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。