JP3922772B2 - 受光素子、紫外線受光素子の製造方法及び受光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、第1導電型の半導体層と、その半導体層とは導電型の異なる第2導電型の半導体層とが厚さ方向に並べて積層された構成を有し、光に対する感度を有する受光部を備え、前記第1導電型の半導体層と前記第2導電型の半導体層とに亙って通電されるように一対の電極が形成されて構成されている受光素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
このような受光素子の代表例として、300nm近傍以下の波長領域に感度を有するように構成される半導体火炎センサ(紫外線受光素子の一種)を例に取って以下説明する。かかる半導体火炎センサは、火炎が放射する光を300nm近傍以下の波長領域において検出することで、他の光(雑音光(太陽光及び室内光等))と区別した状態で火炎を検出することができる。
このような半導体火炎センサとしては、その構成として第1導電型(例えばp型)の半導体層と第2導電型(例えばn型)の半導体層とを厚さ方向に並べて積層して、いわゆるPN接合型,PIN接合型あるいはAPD(アバランシェフォトダイオード)等のフォトダイオードとして構成したものがある。さらに、近似した構成のものとして、所謂、FET方式のものも、現今、発明者らにより提案されている。
ここで、このような半導体層を形成しようとする場合は、所定の不純物を含む材料からなる層を一旦形成しておき、この層の形成後、これを熱処理することにより、半導体層の活性化を図り、良好な状態の半導体層を得ることができる。
【0003】
一方、このような火炎センサを考える場合、PN接合、PIN及びAPDのMesa界面の逆方向バイアス時の漏れ電流、FETのゲート周辺から迂回するピンチオフ時のソースドレイン間の漏れ電流が大きいと、微弱な光に対応する信号が、漏れ電流に埋もれたり、S/Nの低い信号しか得られないこととなりやすい。特に、火炎センサでは、温度の高い使用環境で、1nW/cm2以下の光を検出することが必要条件であることから、これは大きな問題となる。
そこで、PN接合、Mesa界面や、FET構造のゲート周辺の特定部位の高抵抗化処理を目的として、窒素、酸素、フッ素、水素、ヘリウム等をイオン注入して、このイオン注入領域を高抵抗化部として形成することを発明者らは提案する。
このような高抵抗化部の形成処理は、イオン注入工程と、このイオン注入領域を含む素子全体を所定の高温状態とする熱処理工程との組み合わせからなり、この熱処理は、概略、700℃〜1100℃の温度範囲内で、1分から15分の加熱処理をおこなうこととなる。
【0004】
従って、受光素子の熱処理を考えた場合、現行の手法を踏襲すると、熱処理を伴った半導体層の形成をした後、高抵抗化領域の形成を目的として、イオン注入をおこない、さらに、高抵抗化のための熱処理をおこなうこととなる。この工程を図1(ロ)に示した。さらに、このような目的を異にする熱処理の温度領域の関係を図1(ハ)に示した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、発明者らの実験では、このような高抵抗化処理を目的とした熱処理をおこなうと、高抵抗化処理を必要としない部分までも若干高抵抗となる現象が観測された。
この現象は、半導体層をなす単結晶成長膜の結晶の粒界が熱処理に広がったことと、結晶成長した時点で、既に存在していた結晶中の欠陥が深い準位の生成に寄与したためと発明者らは考えている。即ち、高抵抗化処理に伴った通常の半導体層の劣化が発生する場合があることが確認された。
しがって、本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、イオン注入、熱処理を伴った高抵抗化部の形成にあたっても、通常の半導体層の劣化を発生にくい受光素子の製造方法を得ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明による、第1導電型の半導体層と、その半導体層とは導電型の異なる第2導電型の半導体層とが厚さ方向に並べて積層された構成で、光に対する感度を有する受光部を備え、前記第1導電型の半導体層と前記第2導電型の半導体層とに亙って通電されるように一対の電極が形成されて成る受光素子の製造方法の特徴手段は、
前記第1導電型の半導体層及び前記第2導電型の半導体層を、不純物を含むIny Alx Ga1-x-y N(x≧0,y≧0)系の材料から形成するとともに、
前記第1導電型の半導体層あるいは前記第2導電型の半導体層の特定部位に、イオン注入によりイオン注入領域を形成し、
前記不純物を含む半導体層の活性化処理が可能で、且つ、前記イオン注入領域を高抵抗化できる熱処理温度で熱処理をおこない、
前記半導体層の活性化処理と前記イオン注入領域の高抵抗化処理を同時におこなうことにある。
すなわち、Iny Alx Ga1-x-y N(x≧0,y≧0)系の材料にて受光素子を構成することで、例えば、 III族元素の組成比(x,y)を適当に選択して、特定波長領域に光感度を有する素子を形成することができる。
さらに、PN接合、Mesa界面や、FET構造のゲート周辺等に高抵抗化部を形成することにより、所謂、漏れ電流を低減化することができる。
さて、このようにして、半導体層と高抵抗化部の形成とをおこなう場合に、工程順として、1 不純物を含む半導体層の形成、2 活性化処理を目的とした熱処理、3 イオン注入、4 高抵抗化処理を目的とした熱処理の順で行われる処理工程を、1 不純物を含む半導体層の形成、2 イオン注入、3 熱処理とすることで、半導体層の活性化と特定領域の高抵抗化を達成しながら、工程を簡略化して素子に対する熱のダメージを最小限に留めることができる。このような工程順の変更状態を、図1(イ)(ロ)に対比して示した。
この工程の変更は、活性化処理を目的とした熱処理の温度域と、高抵抗化処理を目的とした温度域に重複する温度範囲があり、このような温度範囲を選択して、この温度範囲内で一気に熱処理をおこなう方が、素子に対するダメージが少ないことを、発明者らが見出したことによる。図1(ハ)にこのような温度範囲を示した。
【0007】
このような熱処理温度範囲は、700℃〜850℃の範囲であり、この範囲より、処理温度が低いと高抵抗化処理を充分にできない場合がある。一方、処理温度が高いと、通常の半導体層部位に劣化を発生するおそれがある。
このような処理温度範囲内での処理時間としては、5分〜15分の範囲内の時間が好ましい。
このような工程を経ることで、半導体層の劣化を防止した状態で、所定特定部位に高抵抗化部を形成できるため、量子効率が良く応答速度の早い素子を製造することができる。
【0008】
さて、p型半導体層の形成にあたっては、前記不純物としては、Mg、Ca、Cから選択される一種以上を使用可能であり、高抵抗化処理をおこなう場合のイオンとしては、窒素、酸素、フッ素、水素、ヘリウムの1種以上を使用することが好ましい。
この場合、特にMgが取扱いやすく、打ち込み用のイオンとしては、水素を使用する場合は、深い位置までイオンの打ち込みが可能である。
さて、n型半導体層の形成にあたっては、前記不純物としては、Siを使用可能であり、高抵抗化処理をおこなう場合のイオンとしては、窒素、酸素、フッ素、水素、ヘリウムの1種以上を使用することが好ましい。
この場合も打ち込み用のイオンとしては、水素を使用する場合は、深い位置までイオンの打ち込みが可能である。
【0009】
即ち、請求項1〜4のいずれか1項に記載の受光素子の製造方法に従って受光素子を製造することにより、半導体層において劣化が少なく、高抵抗化部においてその抵抗が高い受光素子を得ることができる。
【0010】
さて、これまでの説明にあたっては、特定材料(Iny Alx Ga1-x-y N(x≧0,y≧0)系の材料)からなる受光素子の形成に関する説明をおこなったが、紫外線受光素子として素子を構成し、外乱光を除去した状態で火炎光を検出したい場合にあっては、これまで説明してきた受光素子の製造方法に従って、300nm近傍以下の波長領域に感度を有する前記受光部を形成して、半導体火炎センサを得ることが好ましい。
ここで、300nm近傍とは、300nm自体を含むとともに、これより低い280程度までの短波長側の範囲を含んでいる。
【0011】
さて、火炎の存在を検出するについては、火炎から発する光を検出することによってその存否等を検出できるが、この場合、火炎以外の光源からの光を検出してしまうと火炎を誤検出してしまうことになる。このような誤検出の原因となる光としては一般的に太陽光と蛍光灯とが考えられる。
ここで、図6に示すように、検出対象とする火炎のスペクトルと、太陽光及び蛍光灯(図6においては「室内光」として示す)のスペクトルとを比較すると、300nm近傍以下では、火炎のスペクトルがある程度の強度があるのに対し、太陽光及び蛍光灯は十分に小さい相対強度となっている。
従って、可視光の領域では感度を有さず紫外線領域に感度を有する受光素子を用いて火炎センサを構成することで、太陽光や蛍光灯等の外乱光を除外して火炎の存否を検出できるものとなる。この場合、蛍光灯の影響を主に考えるべき室内では、300nm以下とすることが好ましく、太陽光を考えるべき室外を対象とする場合は、280nm以下とすることが好ましい。
この場合も、外乱光の影響を抑制しながら、火炎の検出を行える紫外線受光素子を、量子効率が良く応答速度の早い状態に製造することができる。
【0012】
即ち、各半導体層の材料組成として、受光部に於ける感度領域が300nm近傍以下となる組成のものを選択して、各半導体層を形成し、さらに、半導体体層の積層部の所定特定部位に高抵抗化部を、本願の方法に従って形成することにより、得られた火炎センサは、感度の点で量子効率が高く、その光に対する応答速度が早いものとできる。この場合も、300nm以下、あるいは280nm以下とすることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の受光素子(紫外線受光素子)の一例である半導体火炎センサの実施の形態を図面に基づいて説明する。
半導体火炎センサPSは、図2に示すように、単結晶基板であるサファイヤ基板1上にAlN緩衝層2、n+ Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜3、n- Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜4、高抵抗のIny Alx Ga1-x-y N単結晶膜5、p- Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜6、p+ Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜7を積層し、n+ Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜3上とp+ Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜7上とに一対の電極8a,8bが形成され、更に、上記各層の周部に高抵抗領域HRが形成されて構成される。
【0014】
すなわち、第1導電型の半導体層FLとしてのn+ Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜3及びn- Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜4と、第2導電型の半導体層SLとしてのp- Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜6及びp+ Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜7との間に、高抵抗のIny Alx Ga1-x-y N単結晶膜5を形成して受光部PRが構成され、第1導電型の半導体層FLと第2導電型の半導体層SLとの間に通電されるように一対の電極8a,8bが形成されている。又、導電型の表記からも明らかなように、第1導電型の半導体層FL及び第2導電型の半導体層SLの何れにおいても、キャリア濃度の異なる2層にて構成され、高抵抗のIny Alx Ga1-x-y N単結晶膜5に近い層ほどキャリア濃度が低いものとなるように構成されている。このような素子構成においては、受光部PRを構成する各層のうち、主に高抵抗のIny Alx Ga1-x-y N単結晶膜5が入射光による電子正孔対の発生に寄与する。
尚、半導体火炎センサPSは、いわゆるPIN型受光素子として構成される場合と、いわゆるAPDとして構成される場合とがあるが、素子の構成として両者で異なるのは、上記の高抵抗のIny Alx Ga1-x-y N単結晶膜5の層厚のみである。
【0015】
上記構成の受光部PRによる分光感度は、受光部PRを構成するIny Alx Ga1-x-y N単結晶の III族元素の組成比によって規定される。
具体的には、図3に示すInを含まないAlx Ga1-x NのバンドギャップとAl混晶比xとの関係のように、Al混晶比が大きくなるほどバンドギャップが広くなって光吸収端が短波長側に移動する。
Alx Ga1-x NのAlの一部がInに置き代わる関係となるIny Alx Ga1-x-y Nの場合では、Inが、Al又はGaに置き変わる割合が大きくなるにつれてバンドギャップが狭くなり光吸収端が長波長側に移動する。
本発明では、半導体火炎センサPSを火炎センサとして用いるものとしており、上述のように、図6に「ガスの火炎の光」として示すガスの炎から発する光のスペクトルを、同様に図6に示す雑音光として作用する太陽光や室内光(蛍光灯の光)の影響を除外した状態で検出できるのが望ましい。
【0016】
このため、吸収スペクトルの長波長端が300nm近傍以下となるようにするのが好適である。
具体的には、y=0としてInを含まないAlx Ga1-x Nの場合では、Al混晶比を0.42乃至0.45の範囲で選択すれば、バンドギャップが概ね4.5eVとなり、吸収スペクトルの長波長端はおよそ275nmとなる。
y>0としてInを成分に含める場合は、それに応じてAl混晶比xを大きくし、ガリウムの割合を減じることで、上記のバンドギャップとすることができる。但し、y≧0.5の範囲では、Alの割合を最大にしても吸収スペクトルの長波長端が長波長側へ移動し過ぎるものとなり、現実には、0≦y<0.5の範囲が望ましい。又、Al混晶比xを大とし過ぎると、図6に示す「ガスの火炎の光」に対する感度も低下し、火炎センサとしての利用が困難となるので、0≦x≦0.6の範囲とするのが望ましい。
尚、太陽光が完全に遮光された室内で使用されることが前提であれば、バンドギャップが概ね4.3eVとなるようにして、吸収端を若干長波長側へ移動させてもほぼ同等の性能が得られる。
【0017】
次に、上記構成の半導体火炎センサPSの製造方法について説明する。
半導体火炎センサPSを構成する各層は、ウェハ状態のサファイヤ基板1上に、MOCVD装置にて積層される。MOCVD装置は、反応室(成膜室)が常圧付近となる常圧型のものを使用する。
上記各層の積層は、ウェハ状態のサファイヤ基板1を反応室(成膜室) にセットした状態で、サファイヤ基板1を加熱し、各構成元素の材料ガスの供給状態を順次切換えることにより、順次積層される。尚、サファイヤ基板1の基板温度は、AIN緩衝層2の成長時は400℃〜600℃とし、AIN緩衝層2上への上記各層の成長時は900℃〜1100℃(最も好ましくは1050℃)とする。
材料ガスとしては、In,Al,Ga及びNの各構成元素は、夫々、TMIn(トリメチルインジウム),TMAl(トリメチルアルミニウム),TMGa(トリメチルガリウム)及びNH3 (アンモニア)として供給され、又、n型不純物としてSi,p型不純物としてMgが、夫々、SiH4 (シラン),CP2 Mg(シクロペンタンマグネシウム)として適宜供給される。尚、p型不純物としてCaを用いる場合は、いわゆるイオニンプランテーションを用いる。
【0018】
上記各層の積層において、AlN緩衝層2は約200Åの層厚に成長させ、n+ Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜3はSiH4 ガスを流しながらキャリア濃度が約1×1018cm-3で約3μmの層厚に成長させ、n- Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜4はSiH4 ガスを流しながらキャリア濃度が約1×1017cm-3 で約0.1μmの層厚に成長させる。これらの層の積層における他の成膜条件は公知の方法と同様である。尚、n+ Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜3の層厚は2μm以上とすることが望ましく、本実施形態では上述の如く3μmとしいる。
【0019】
上記高抵抗のIny Alx Ga1-x-y N単結晶膜5を積層する際においては、TMIn,TMAl,TMGa及びNH3 の材料供給量を、夫々、a(mol/sec),b(mol/sec),c(mol/sec)及びX(mol/sec)とすると、V族元素の III族元素に対する材料供給比率、すなわち、X/(a+b+c)が、5000以上となるように設定して成膜する。
このような条件で成膜することにより、Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜5は、キャリア濃度が1×1015cm-3以下の高抵抗の単結晶膜が得られ、具体例としては、x=0,y=0としてGaN単結晶膜を成膜した場合には、5×1013cm-3以下のキャリア濃度のものが得られる。尚、高抵抗のIny Alx Ga1-x-y N単結晶膜5を成膜する場合にも、必要に応じて、Si,Mg,C又はCaを不純物としてドーピングしてキャリア濃度を調整しても良い。
尚、常圧型のMOCVD装置によって、上記の成膜条件として成膜することで極めて良好な特性のものが得られるのであるが、必ずしも常圧型に限られず、いわゆる減圧型のMOCVD装置を用いても良い。減圧型のVOCVD装置において、Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜5の成膜時の圧力を1/3〜1/2気圧程度とすると、V族元素のIII 族元素に対する材料供給比率を上述のように高い値に容易に設定できる。
【0020】
高抵抗のIny Alx Ga1-x-y N単結晶膜5の層厚は、半導体火炎センサPSをPIN型受光素子とする場合は0.1μm、半導体火炎センサPSをAPDとする場合は0.5μmとする。APDの場合に層厚を厚くしているのは、APDに高電圧を印加したときに、膜内の電界強度が過度に大きくならないようにするためである。但し、高抵抗のIny Alx Ga1-x-y N単結晶膜5の層厚を厚くし過ぎると、応答速度が低下するので留意する必要があるが、0.5μm程度では実用上十分な応答速度が得られる。
【0021】
高抵抗のIny Alx Ga1-x-y N単結晶膜5の成膜後に、p- Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜6はCP2 Mgを流しながらキャリア濃度が約1×1017cm-3 で約0.1μmの層厚に成長させ、p+ Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜7はCP2 Mgを流しながらキャリア濃度が約1×1018cm-3で約0.3μmの層厚に成長させる。これまでの処理により、活性化処理を経ていない半導体層が多層状に積層された受光部を原始的に形成することができる。
次に、高抵抗化領域の形成を目的としたイオン注入処理に進む。この処理は、水素イオンを利用したイオン注入により行い、ウェハーの厚さ方向視の図面である図4において斜線で示す領域IPに、ウェハーの厚さ方向に水素イオンを打ち込む。イオンの加速電圧は、打ち込み深さが、図2に示すように、n- Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜4に達する深さかあるいはそれより深いものとなるように設定する。
【0022】
このようにして、半導体層の形成及び素子特定部位に対するイオン注入処理を終えた後、本願の特徴となる半導体層の活性化処理、高抵抗化処理の一部を担う処理を、同時におこなう。この処理は、700〜850℃(具体的には820℃)で、5〜15分(具体的には10分)の処理である。
【0023】
この後、図5に示すように、水素イオンを打ち込んだ部分をn+ Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜3が露出する深さまで帯状にフォトエッチング処理を行い、その帯状にエッチングした部分に個々の半導体火炎センサPSに対応する状態で電極8bを形成すると共に、水素イオンを打ち込んでいない部分に電極8aを形成する。尚、図5において破線BLは、水素イオンを打ち込んだ領域と打ち込んでいない領域の境界を示している。
電極8aはNiとAuの2層構成で、p+ Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜7側をNiとし、一方、電極8bはTiとAlの2層構成で、n+ Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜3側をTiとして、夫々例えば電子ビーム蒸着等により積層した後、リフトオフ法や化学的エッチング等により、電極8aをメッシュ状に形成し、電極8bを矩形形状に形成する。
電極8a,8bの形成後、図5において一点鎖線CLにて示す素子分離線に沿ってダイシング等により個々の素子に素子分離する。電極8a,8bの形成後により確実なオーミックコンタクトをとるために加熱処理を行っても良いが、この場合は、打ち込んだ水素イオンが加熱処理によって離脱することを考慮して、水素イオンの打ち込み量を多めに設定しておくことが望ましい。
このように素子分離を行うことによって、図2に示すように、第1導電型の半導体層FL及び第2導電型の半導体層SLが露出する側面部分に、第1導電型の半導体層FLと第2導電型の半導体層SLとに亘る状態で、イオン注入により高抵抗化された高抵抗領域HRが備えられることになる。
【0024】
以上のようにして作製された半導体火炎センサPSは、有効受光面積を1cm2 に換算した場合に、暗電流が約10nA程度のものが得られる。尚、上記高抵抗領域HRを備えずに、他の条件を同一条件とした場合は、暗電流が約1nA以上となり、暗電流が大幅に改善されている。
さらに、図1(ロ)に示す工程を経る場合と、図1(イ)に示す工程をへる場合とにあっては、本願の工程である図1(イ)の工程を取る方が、素子の光に対する応答速度を早くすることができた。さらに、その量子効率も、%オーダーで向上した。
【0025】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
(1) 上記実施の形態では、半導体火炎センサをPIN接合型フォトダイオード又はAPDとして構成する場合を例示しているが、上記実施の形態における受光部PRの積層構成において、高抵抗のIny Alx Ga1-x-y N単結晶膜5を備えない積層構成として、PN接合型フォトダイオードとして構成しても良い。
上記構成とした場合の半導体火炎センサPSは、上記実施の形態における半導体火炎センサPSの製造方法において、高抵抗のIny Alx Ga1-x-y N単結晶膜5を成膜しないものとする以外は同一工程によって製造でき、有効受光面積を1cm2 に換算した場合に、暗電流が約10pA程度のものが得られる。
この場合も、図1(ロ)に示す工程を経る場合と、図1(イ)に示す工程をへる場合とにあっては、本願の工程である図1(イ)の工程を取る方が、素子の光に対する応答速度を早くすることができた。さらに、その量子効率も、%オーダーで向上した。
また、本願手法は、FET構造を取る場合のゲート周辺の高抵抗化の場合にあっも、適用することができる。
【0026】
(2) 上記実施の形態では、高抵抗領域HRを形成するために水素イオンを打ち込む場合を例示しているが、例えば、N,O,F,He,Cl,等の他のイオンを打ち込んで高抵抗化するものとしても良い。この場合、Nイオン等のように同一加速電圧での打ち込み深さが水素イオンに較べて浅いものは、それに応じて加速電圧を高くするか、又は、受光部PRを構成する各層の層厚を薄くする必要がある。
(3) 上記実施の形態では、図4に示すように、ウェハー状態でイオン注入を行うものとしているが、ウェハー状態から素子分離を行った後に、第1導電型の半導体層FL及び第2導電型の半導体層SLが露出する側面部分に向けて、側方又は斜め上方からイオン注入を行っても良い。
【0027】
(4) 電極8aをいわゆる透明電極として構成しても良い。透明電極とすると、電極8aを受光面の全面に形成することが可能である。透明電極の具体例としては例えば、Pdを50Å程度の膜厚で積層すれば良い。
(5) 上記実施の形態では、被検出光はメッシュ状の電極8aの開口部分を通過してp+ Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜7に入射する構成としているが、p+ Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜7の上に実効的に1/4波長に相当する層厚のAlN反射防止膜を形成しても良い。このように反射防止膜の材質をバンドギャップの広いAlNとすることで、反射防止膜での被検出光の吸収を抑制できるとともに、MOCVDによる一回の成長プロセスで反射防止膜まで含めて形成することが可能となる。
【0028】
(6) 上記実施の形態では、単結晶基板1上にAlN緩衝層2を積層しているが、このAlN緩衝層2の代わりに、AlGaNを緩衝層として用いても良い。
このようにAlGaNを緩衝層として用いても、基板側との格子定数のミスマッチを緩和することができる。この場合、n+ Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜3、n- Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜4、高抵抗のIny Alx Ga1-x-y N単結晶膜5、p- Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜6、p+ Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜7のAl混晶比と、AlGaN緩衝層のAl混晶比との差を0.1以下とすれば、高抵抗のIny Alx Ga1-x-y N単結晶膜5等の結晶性を一層良好なものとできる。
【0029】
(7) 上記実施の形態では、単結晶基板1としてサファイヤ基板を用いているが、例えば、サファイヤ基板の代わりにSiC単結晶基板を用いても良い。
(8) 上記実施の形態では、第1導電型の半導体層FL及び第2導電型の半導体層SLの夫々をキャリア濃度が異なる2層構成としているが、夫々単層にて構成しても良い。すなわち、上記実施の形態において、n- Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜4及びp- Iny Alx Ga1-x-y N単結晶膜6を省略しても良い。
又、逆に、3層以上にて構成して、高抵抗のIny Alx Ga1-x-y N単結晶膜5の近い層ほどキャリア濃度が低くなるように構成しても良い。
(9) 上記実施の形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型として説明しているが、これは説明の便宜のために対応付けており、第1導電型をp型、第2導電型をn型として説明することもできる。
又、上記実施の形態では、単結晶基板1に近い側にn型の半導体層を配置してPIN型に構成しているが、単結晶基板1に近い側にp型の半導体層を配置してPIN型に構成しても良い。
(10)上記実施の形態では、MOCVD装置によって結晶成長する場合を例示しているが、例えばいわゆるMBE装置によって各層を結晶成長するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】半導体火炎センサの製造工程と熱処理温度との説明図
【図2】本発明の実施の形態にかかる半導体火炎センサの断面図
【図3】本発明の実施の形態にかかる組成比とバンドギャップとの関係を示す図
【図4】本発明の実施の形態にかかる半導体火炎センサの製造工程の一部を概略的に示す平面図
【図5】本発明の実施の形態にかかる半導体火炎センサの製造工程の一部を概略的に示す平面図
【図6】ガス光等の分光スペクトルを示す図
【符号の説明】
1 単結晶基板
2 AlN緩衝層
5 高抵抗のIny Alx Ga1-x-y N単結晶膜
8a,8b 一対の電極
HR 高抵抗領域
FL 第1導電型の半導体層
PR 受光部
SL 第2導電型の半導体層
Claims (7)
- 第1導電型の半導体層と、その半導体層とは導電型の異なる第2導電型の半導体層とが厚さ方向に並べて積層されて構成され、光に対する感度を有する受光部を備え、
前記第1導電型の半導体層と前記第2導電型の半導体層とに亙って通電されるように一対の電極が形成されて成る受光素子の製造方法であって、
前記第1導電型の半導体層及び前記第2導電型の半導体層を、不純物を含むIny Alx Ga1-x-y N(x≧0,y≧0)系の材料から形成するとともに、
前記第1導電型の半導体層あるいは前記第2導電型の半導体層の特定部位に、イオン注入によりイオン注入領域を形成し、
前記不純物を含む半導体層の活性化処理が可能で、且つ、前記イオン注入領域を高抵抗化できる熱処理温度で熱処理をおこない、
前記半導体層の活性化処理と前記イオン注入領域の高抵抗化処理を同時におこなう受光素子の製造方法。 - 前記不純物がMg、Ca、Cから選択される一種以上であり、前記イオンが窒素、酸素、フッ素、水素、ヘリウムの1種以上である請求項1記載の受光素子の製造方法。
- 前記不純物がSiであり、前記イオンが窒素、酸素、フッ素、水素、ヘリウムの1種以上である請求項1記載の受光素子の製造方法。
- 前記熱処理温度を700℃から850℃の範囲内の温度とする請求項1〜3のいずれか1項記載の受光素子の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の受光素子の製造方法に従って製造される受光素子。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の受光素子の製造方法に従って製造され、前記受光部が300nm近傍以下の波長領域に感度を有する紫外線受光素子を得る紫外線受光素子の製造方法。
- 請求項6記載の紫外線受光素子の製造方法に従って製造され、前記受光部が300nm近傍以下の波長領域に感度を有する紫外線受光素子である火炎センサ。
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