JP5731493B2 - 紙の作製方法 - Google Patents

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Description

本発明は、製紙技術に関し、紙の調製において使用されるセルロースパルプの処理に関する。より詳細には、本発明は、パルプの機械的処理に関する。
様々なセルロース系繊維が、製紙プロセスにおいて使用されている。繊維の長さは、製造した紙の性質に強い影響を及ぼす。
当技術分野では、長い繊維は、製造した紙に嵩および強度を与えると考えられており、一方、より短い繊維は、不透明性、平滑性、および良好な地合を与える。広葉樹パルプは、繊維長が短く、通常約1mmであり、印刷用紙、筆記用紙、およびコピー用紙のような滑らかな用紙の製造に特に適している。針葉樹パルプは、一般に2〜3mmの長さの、より長い繊維を有し、したがって、雑誌用用紙およびライナーボードの製造に適している。
木質繊維種の入手しやすさおよび価格は、経時的に変わり、このことはパルプ製造者に不確実さをもたらす。さらに、原材料を交換する必要なしに、パルプの性質を所望の紙質に適応させることは望ましい。
パルプは、製紙プロセスに入る前に、リファイニングなどの機械的作用をしばしば受ける。リファイニング(または叩解)では、パルプを粉砕して、繊維構造を改変する。衝撃力または切削力は回避に努められている。リファイニング中、フィブリル化が生じ、保水性が増大し、濾水度が減少する。強度は、リファイニング中に常時増大する。
少なくとも低コンシステンシー(consistency)リファイニングは、繊維をいくらか短くすることが知られている。米国特許第6361650号は、TMPの平均繊維長を10〜25%低減させるリファイニングプロセスを記載している。濾水度は急進的に減少し(CSFが90mlから30ml)、引張強度は極めて本質的に増大した(40N/mから52N/m)。
乾燥パルプまたは紙の乾燥離解は、離解パルプの製紙性に悪影響を及ぼすことが分かっている。これをさらに研究するために、乾燥させた化学的針葉樹パルプ、化学的針葉樹および広葉樹パルプの混合物、ならびにCTMPをハンマーミルで離解する研究が行なわれた(Yli-Viitala P.ら、Appita、2006年、75〜80頁)。この研究の目的は、繊維長および強度特性を維持しながら、乾燥パルプを離解することであった(乾燥内容量約95%)。化学的パルプのリファイニングでは、繊維長および引張強度は影響を受けなかったが、引裂強度はいくらか減少した。CTMP繊維は、2.25mmから1.75mmに短くされ(すなわち、約22%)、その結果、パルプの引張強度および引裂強度は減少した。他のパルプに関して、繊維の本質的な短縮は観察されなかった。スクリーン(ミルの底部に位置する)開口サイズは、繊維長に影響を及ぼさず、混合針葉樹パルプに関しては少なくとも影響を及ぼさなかった。研究の結論の1つは、不良なパルプ性質が繊維の切断によって引き起こされると考えられるというものであった。
乾燥状態におけるパルプのフィブリル化も研究されている(Grandmaison E. W.およびGupta A.、Tappi Journal、1986年8月、110〜113頁)。前記研究では乾燥成形品が検討対象とされたので、目的はパルプの繊維長および十分な強度を維持することであった。この研究から、基準パルプより15%だけ短い繊維を有する、フィブリル化された針葉樹パルプの生成が可能なことが示された。研究されたフィブリル化システムは、広葉樹パルプに関しては繊維長が非常に減少(約50%)したことから、広葉樹パルプには適していなかった。
EP979895A1は、押出機タイプの装置を、繊維を短くするのに使用する、繊維のリファイニング方法を記載している。
当技術分野では、セルロース系繊維パルプも様々な目的のために微粉砕されている。こうした微粉砕されたパルプは、例えば、紙中の添加剤として使用されているか、または使用を提案されている。こうした添加剤の量は、多くとも紙の数重量%である。
今回、独立クレームに従う、紙または板紙の作製方法、紙または板紙、パルプ、およびカットパルプの使用を発明した。本発明の幾つかの好ましい実施形態を従属クレームにおいて示す。
本発明の基本的な考えは、紙または板紙においてウェブ形成用原材料としてカット繊維パルプを使用することである。
本発明によるカットパルプは、少なくとも25%のコンシステンシーの下で切断することによって基本パルプから調製され、その結果、その平均繊維長は25%を超えて減少し、カットパルプのSR数は基本パルプのSR数より多くとも20%までで高くなる。
紙および板紙の製造者は、本発明によって繊維を所望の繊維長に短くすることができる。この技術は、紙および板紙製品の品質を向上させ、製造をより効果的にし、原材料依存性を減少させる可能性を提供する。
驚くべきことに、本発明によるカット繊維を含むパルプは、非カットパルプと比較して、脱水がより良好となり、嵩がより高くなることが示された。
繊維の構造を示す光透過式顕微鏡写真である。 嵩−引張剛性指数の関係を示すグラフである。 SRE−WRVの関係を示すグラフである。 SRE−嵩の関係を示すグラフである。 SRE−散乱係数の関係を示すグラフである。
本発明において出発材料として使用されるパルプは、基本パルプとも称され、好ましくは木材パルプである。基本パルプは、クラフトパルプなどの化学パルプでも、サーモメカニカルパルプまたはケミサーモメカニカルパルプなどの機械パルプでも、それらの混合物でもよい。基本パルプは、バージン繊維を含有するパルプでも、機械損紙、乾燥損紙、および/またはコート損紙などのミル損紙から作製されたパルプでも、再製繊維から作製されたパルプでもよい。
本発明によるパルプの平均繊維長は、25%を超えて、例えば50%を超えてなど、通常、30%を超えて減少する。平均繊維長は、好ましくは90%以下で、より好ましくは80%以下で減少する。好ましくは、本発明によるカット繊維の平均繊維長は、0.2mmを超える。
切断されるパルプのコンシステンシーは、少なくとも25%である。好ましくは、コンシステンシーは、少なくとも40%、より好ましくは、少なくとも60%、さらにより好ましくは、少なくとも80%、最も好ましくは、85〜95%である。乾燥繊維は堅く脆弱であり、それにより効率的かつ軽微なフィブリル化で繊維を切断することが可能になる。繊維の切断に必要とされるエネルギー消費量は、中程度をやや下回る。
湿潤パルプリファイニングと異なり、本発明による切断は、嵩を減少させない、または保水性を増加させないことが分かった。さらに、切断では、光学的性質、例えば、光散乱への影響は、湿潤リファイニングと比較して、少なくとも著しく小さい。
本発明による方法では、パルプは、その平均繊維長が減少するように切断プロセスで切断される。切断プロセスでは、切断装置を使用する。こうした装置は、繊維を切断する1枚または複数の切断刃を有する。好ましくは、切断において比較的高い衝撃力を使用する。切断において繊維の粉砕を避ける。装置は、内面上に逆刃を有するチャンバーに囲まれた切断刃を備えたローターを含むことができる。
パルプの強度は、通常、切断プロセスにおいて減少する。
カットパルプの濾水度値は、好ましくは、基本パルプの濾水度値と実質上同じである。濾水度が切断プロセスにおいて減少する場合、その減少は、好ましくは、多くとも10%まで、より好ましくは多くとも5%までである。
同様に、SR数とも呼ばれるショッパー−リーグラー数は、切断において、増加しないか、増加してもできる限り少ないことが好ましい。SR数の増加は、多くとも20%まで、より好ましくは多くとも10%まで、最も好ましくは多くとも5%までである。
パルプの保水値は、好ましくは、切断において減少する。保水値の減少は、好ましくは、少なくとも5%、より好ましくは、少なくとも8%である。
カットパルプの嵩は、好ましくは、基本パルプの嵩と実質上同じまたはより高くなる。
カットパルプの繊維のフィブリル化度は、好ましくは、基本パルプのフィブリル化度と実質上同じである。
化学物質、例えば、切断プロセスにおいてパルプの流動を向上させるものを、所望の場合、使用することができる。しかし、架橋剤などの改変用化学物質は、好ましくは使用しない。
カットパルプの量は、紙または板紙中のパルプの総量の、好ましくは、少なくとも5重量%、より好ましくは、少なくとも10重量%、最も好ましくは、少なくとも20重量%である。
本発明の好ましい一実施形態では、カットパルプは、ストックの調製において原材料として使用され、ウェブは、湿潤ウェブ形成プロセスによってストックから形成される。
カットパルプは、切断後にリファイニングすることができる。
本発明の主要な利点の1つは、あるパルプ材料から、より短い繊維長を有するが、その他の点では紙または板紙での使用にいっそう適している改変パルプ材料を得ることができることである。
カット針葉樹パルプの平均繊維長は、例えば、0.2〜1.8mm、カット広葉樹パルプでは、例えば、0.2〜0.8mmである。
本発明は、他のパルプ性質に悪影響を及ぼさずに、従来の方法ではまったく得ることができない繊維長を有する使用可能なパルプを得ることを可能にする。さらに、所定の繊維長分布を有するパルプを得ることも可能である。本発明による繊維の切断は、例えば、より狭い繊維長分布を得ることを可能にする。これらの新規なタイプのパルプは、紙の発展に新たな可能性を提供する。
切断プロセスで得られる平均繊維長は、例えば、スクリーニングにおけるスクリーンのスロットサイズを選択することによって容易に制御することができる。このようにして、パルプ製造業者は、ある単一の原材料から様々な繊維長を有するパルプグレードを容易に製造することができる。
本発明の特定の一使用は、針葉樹パルプを切断し、広葉樹パルプが通常使用される製品の製造において広葉樹パルプの代わりにこうしたカットパルプを使用することである。したがって、例えば、上質な紙および板紙において、カバまたはユーカリのパルプをカットパルプと交換することができる。
次の実施例において、パルプを実験室規模のWileyミル(型式番号2)で切断した。ミルは、鋭い6枚逆刃を備えたチャンバーに囲まれた鋭い4枚刃を備えたローターを有する。各刃の間隙は、約0.1〜0.3mmである。チャンバーの直径は20cm、長さは7.5cmである。回転速度は、850rpmである。材料は上から入れ、スクリーンを通って下から出てくる。ミルの内部では、刃が、パルプシートを砕き、繊維を切断する。カット繊維は、ミルの底部に位置するスクリーンを通って出て行く。スクリーンのスロットサイズを選択することによって、平均繊維長を制御することができる。
平均繊維長は、Kajaani FS300装置(Metso Automation)で測定した。
カットパルプを、ディスクフィリングを備えたVoith Sulzerリファイナーにおいてリファイニングした。
ハンドシートを標準ISO5269−1に従ってリファイニング済みパルプから作製した。
実施例1:針葉樹パルプの切断
乾燥針葉樹(SW)パルプ(主にマツからの、平均繊維長2.25mmのミル乾燥パルプ)を、スロット寸法6mmおよび2mmを使用して、それぞれ1.0mmおよび0.6mmの平均繊維長に切断した。パルプを2回処理した。カットパルプを、比エッジ負荷0.5J/mで広葉樹パルプのようにリファイニングした。
繊維の構造は、光透過式顕微鏡を用いて研究した。写真を図1に示す。画像1は未処理繊維、画像2はリファイニング済み非カット繊維、画像3はカット繊維を示す。
図1に示すように、リファイニング済み繊維の繊維形は、リファイニングしていない繊維とは明らかに異なっている(崩壊、変形など)。外部フィブリル化は、繊維表面に明らかに見ることができる(1)。比較的鋭い切断(2)が発生した。切断は繊維をフィブリル化していなかった。
繊維長2.25mmの基準SWパルプと比較して、カットSWパルプは、保水値がより低く(脱水の向上)、嵩がより高い(図3および4)。図5に見ることができるように、光学的性質(光散乱および不透明性)は、リファイニングにおいて向上し、明らかに引き続き良好である。
カバのパルプと比較して、同じ繊維長のカットSWパルプは、あるリファイニングレベルにおいて脱水が明らかにより良好であり(WRVがより低い)、嵩がより高くなる(図3および4)。強度特性(例えば、引張剛性指数(tensile stiffness index))は、初めはより低いが、強度が必要な場合、より強力なリファイニングによって、部分的に、さらには完全に補うことができる(図2)。より強力なリファイニングは、より良好な脱水および光学的性質を可能にする。したがって、カバパルプをカットSWパルプと交換し、上質な紙および板紙製品の品質および抄紙機脱水を向上させることが可能である。
実施例2:ユーカリパルプの切断
乾燥ユーカリ(euca)パルプ(平均繊維長0.85mmのミル乾燥パルプ)を、スロット寸法2mmおよび1mmを使用して、それぞれ0.5mmおよび0.35mmの平均繊維長に切断した。パルプは1回処理した。基準パルプとカットパルプのどちらも、比エッジ負荷0.4J/mでリファイニングした。カットユーカリパルプは、より良好な脱水(WRVおよびSR数がより低い)およびより高い嵩を明らかに有する(図4)。光学的性質(光散乱、不透明性、および輝度)は、基準パルプと違って、リファイニングにおいて減少しない(図5)。強度特性(例えば、引張剛性指数)は、カットパルプに関してはより低いが、必要な場合、より強力なリファイニングによって、部分的に補うことができる。通常のユーカリパルプの代わりにカットユーカリパルプを使用することによって、いくつかの紙製品の品質を向上させ、抄紙機の脱水を向上させることが可能である。
実施例3:カット繊維とリファイニング済みSW繊維との間の比較
Figure 0005731493
表1は、従来のLCリファイニングおよび高衝撃LCリファイニングと比較して、本発明による切断プロセスのパルプ品質への影響を示している。
SWパルプの繊維長は、従来のLCリファイニングを用いると約1.2mmに減少させることができる。しかし、従来のLCリファイニングでは、SR数が増加し(少なくとも25%)、嵩が減少する(少なくとも9%)。パルプの従来のリファイニングでの繊維長を減少させる場合のさらなる問題は、リファイナープレートが速くすり減り、プロセスの制御が難しいことである。本発明に従って繊維長を減少させることにより、これらの問題、ならびにパルプ品質への悪影響を避けることができる。
実施例4:板の上層のカバパルプとカットSWパルプとの交換
動的シート成形機で作製したシートを用いて、三層板を模擬試験した。基準シートでは、上層は、70%のカバパルプおよび30%のSWパルプを含んでいた。カバパルプを比リファイニングエネルギー15kWh/tでリファイニングして、SR数を約20にした。さらに、上層のカバパルプを0.6mmの平均繊維長を有するカットSWパルプと交換したシートを作製した。カット針葉樹パルプをカバパルプより高い比リファイニングエネルギー(100kWh/t)でリファイニングして、カバパルプに近い強度特性を得た。
Figure 0005731493
結果(表2)によれば、板の上層のカバパルプをカットSWパルプと交換することは可能であるように思われる。結果の差は、ほとんど測定の標準偏差内にあった。基準板の基本重量が、上層にカットSWパルプを含む板と比較して3%高かったことは注目に値する。

Claims (14)

  1. セルロース系繊維パルプを含むストックを調製し、該ストックからウェブを形成する、紙または板紙を作製する方法であって、カットパルプが、基本セルロース系繊維パルプを少なくとも25%のコンシステンシーで切断することによって調製され、その結果、前記基本パルプの平均繊維長が25%を超えて減少し、前記カットパルプのSR数が前記基本パルプのSR数より多くとも20%までで高くなることと、前記カットパルプが、前記ストックの調製において原材料として使用されることとを特徴とする、方法。
  2. 前記カットパルプの量が、前記ストック中のセルロース系繊維パルプの総量の少なくとも5重量%である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ウェブが、湿潤形成プロセスによって形成される、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記カットパルプが、前記ストックの調製前にリファイニングされる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  5. セルロース系繊維パルプを含む紙または板紙であって、該紙または板紙が、カットパルプを含み、該カットパルプが、基本セルロース系繊維パルプを少なくとも25%のコンシステンシーで切断することによって調製されており、その結果、前記基本パルプの平均繊維長が25%を超えて減少し、前記カットパルプのSR数が前記基本パルプのSR数より多くとも20%までで高くなるようになることを特徴とする、紙または板紙。
  6. カットパルプが、基本セルロース系繊維パルプを少なくとも25%のコンシステンシーで切断することによって調製され、その結果、前記基本パルプの平均繊維長が25%を超えて減少し、前記カットパルプのSR数が前記基本パルプのSR数より多くとも20%までで高くなるようになることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法において使用するための、または請求項5に記載の紙または板紙において使用するためのパルプ。
  7. 前記基本パルプを少なくとも40%のコンシステンシーで切断する、請求項6に記載のパルプ。
  8. 前記カットパルプの濾水度値が、基本パルプの濾水度値と同じである、請求項6または7に記載のパルプ。
  9. 前記カットパルプのSR数が、前記基本パルプのSR数より多くとも10%までで高い、請求項6から8のいずれか一項に記載のパルプ。
  10. 前記カットパルプの保水値が、前記基本パルプの保水値と同じまたはより低い、請求項6から9のいずれか一項に記載のパルプ。
  11. 前記カットパルプの嵩が、前記基本パルプの嵩と同じまたはより高い、請求項6から10のいずれか一項に記載のパルプ。
  12. 前記カットパルプの繊維のフィブリル化度が、前記基本パルプの繊維のフィブリル化度と同じである、請求項6から11のいずれか一項に記載のパルプ。
  13. 前記基本パルプが針葉樹パルプであり、そのカットパルプの平均繊維長が0.2〜1.8mmであるか、または前記基本パルプが広葉樹パルプであり、そのカットパルプの平均繊維長が0.2〜0.8mmであるか、または前記基本パルプが針葉樹パルプと広葉樹パルプの混合物である、請求項6から12のいずれか一項に記載のパルプ。
  14. 前記基本パルプがバージン繊維パルプを含有しているパルプであるか、または前記基本パルプが損紙パルプである、請求項6から13のいずれか一項に記載のパルプ。
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