JP5727913B2 - 金型位置決め機構 - Google Patents
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Description
この種の鋳造機において、上型及び下型のみでは鋳造できない複雑な形状の製品を鋳造する場合には、スライドコアが用いられる。スライドコアを用いる鋳造機として、例えば特許文献2に開示された技術がある。特許文献2に開示された技術では、下型の四隅に設置され上型の型締め時の高さ方向の位置決めを行う4本のコーナポストを用い、スライドコアを、各コーナポストの側壁に移動自在に遊嵌し、型締め位置と型開き位置との間で往復動できるようにしている。このスライドコアは、型締め時に、その下部が下型に密接し、その側部が隣のスライドコアに密接する。
ここで、鋳造機内部はるつぼの設けられた下側の方が高温となり易いので、下型がスライドコアよりも高温になり易い。このように温度差が生じ、仮に、1つのスライドコアに密接する下型の温度が500℃、同様に密接する両側2つのスライドコアの温度が300℃であるとすると、型締め時に当該スライドコアは熱膨張の大きい下型に密接し下型で位置拘束され、両側2つのスライドコアとは密接することなくスライドコア同士の間に隙間を生じる。このとき、スライドコアの上部が位置拘束されず、スライドコアの下部のみが位置拘束される状態になり、スライドコアは鋳造機中心部に押し込まれて倒れることがある。
また、スライドコア同士も温度差が生じることがあり、1つのスライドコアに対する隣の両側2つのスライドコアの温度差による熱膨張の違いから当該スライドコアと隣の両側2つのスライドコアのそれぞれとの間の隙間に差が生じる場合がある。この場合、隣り合うスライドコア同士の間の隙間が大きい側において、型締め時に隣り合うスライドコア同士が正しく密接せずにスライドコアの左右がバランス悪く鋳造機中心部に押し込まれ、スライドコアが水平方向に傾くことがある。
これにより、型締め時に、スライドコアの上部が位置拘束されず、スライドコアの下部のみが下型で位置拘束される状態を防止でき、スライドコアが鋳造機中心部に押し込まれて倒れることはない。
また、これにより隣り合うスライドコア同士を密接させる必要がない。このため、隣り合うスライドコア同士の間に十分な隙間を設けておくことができ、型締め時に、隣り合うスライドコア同士が正しく密接せずにスライドコアの左右がバランス悪く鋳造機中心部に押し込まれる状態を防止でき、スライドコアが水平方向に傾くことはない。
したがって、スライドコアが、型締め時に、倒れも水平方向の傾きもなく予め設定された所定の位置に正しく配置されるので、金型が鋳造しようとする製品形状部に対応するキャビティ形状の変形や中子位置のずれが生じることがなく、鋳造した製品における偏肉、位置ずれ等の品質悪化やバリ発生を防止でき、安定生産が可能になる。特に砂中子を用いた鋳造のとき、スライドコアの倒れや傾きに起因する砂中子の位置ずれによる製品のバリ発生及び砂中子の破損を防止できる。
これにより、型締め時に、スライドコアの上部が位置拘束されずスライドコアの下部のみが熱膨張した下型で位置拘束される状態を確実に防止でき、スライドコアが鋳造機中心部に押し込まれて倒れることはない。
また、これにより隣り合うスライドコア同士は熱膨張しても当接しない。このため、型締め時に、隣り合うスライドコア同士が意図せず接触してスライドコアの左右がバランス悪く鋳造機中心部に押し込まれる状態を確実に防止でき、スライドコアが水平方向に傾くことはない。
したがって、スライドコアが、型締め時に、倒れも水平方向の傾きもなく予め設定された所定の位置に確実に正しく配置されるので、金型が鋳造しようとする製品形状部に対応するキャビティ形状の変形や中子位置のずれが生じることがなく、鋳造した製品の偏肉、位置ずれ等の品質悪化やバリ発生を防止でき、安定生産が可能になる。特に砂中子を用いた鋳造のとき、スライドコアの倒れや傾きに起因する砂中子の位置ずれによる製品のバリ発生及び砂中子の破損を確実に防止できる。
[鋳造機]
図1は、本実施形態に係る鋳造機1の主要構成部である金型2を示し、(a)は金型2の上型26を除いた上面図であり、(b)は金型2のスライドコア25を除いた側面図である。
鋳造機1は、自動車用のエンジンのシリンダヘッドを低圧鋳造法によって鋳造するものである。鋳造機1は、金型2の下方に図示しないるつぼを有し、このるつぼに貯留された溶湯を加圧してストークと湯口カップとを通して押し上げ、下型21の湯口に供給する。
ここで、この凸部21a、21b、21c及び21dの配列方向をY方向と、Y方向に直交する水平方向をX方向と、XY方向平面に垂直な方向をZ方向と、それぞれ定義する。
また、後述の通り、下型21上には、鋳造工程において、型開きのとき、排気ポート形状の砂中子91a、91b、91c及び91d及び吸気ポート形状の砂中子92a、92b、92c及び92dが載置される。
スライドコア22、23、24及び25は、コア本体22a、23a、24a及び25aと、コア本体22a、23a、24a及び25aをそれぞれ保持する基部としてのプラテン22b、23b、24b及び25bと、によって、それぞれ一体に構成されている。
スライドコア22は、X方向に移動可能に設けられ、コア本体22aにシリンダヘッドの排気側の側壁面形状に対応した表面形状の表面22sを有する。スライドコア23は、同様に、X方向に移動可能に設けられ、コア本体23aにシリンダヘッドの吸気側の側壁面形状に対応した表面形状の表面23sを有する。スライドコア24は、Y方向に移動可能に設けられ、コア本体24aにシリンダヘッドの排気側から見て右側(図1(a)の紙面上側)の側壁面形状に対応した表面形状の表面24sを有する。スライドコア25は、同様に、Y方向に移動可能に設けられ、コア本体25aにシリンダヘッドの排気側から見て左側(図1(a)の紙面下側)の側壁面形状に対応した表面形状の表面25sを有する。
プラテン22b、23b、24b及び25bは、それぞれレール51、52、53及び54に係合し、それぞれレール51、52、53及び54の延出方向に沿って移動可能に保持されている。
各駆動手段は、図示しない鋳造機制御手段によって制御され、それぞれ所定のタイミングで作動するように構成されている。
したがって、スライドコア22は、所定のタイミングでレール51上をX方向に往復動する。同様に、スライドコア23は、所定のタイミングでレール52上をX方向に往復動し、スライドコア24は、所定のタイミングでレール53上をY方向に往復動し、スライドコア25は、所定のタイミングでレール54上をY方向に往復動する。
ここで、各スライドコア22、23、24及び25が型締めのために移動する方向(金型2の内側方向)を型締め方向といい、各スライドコア22、23、24及び25が型開きのために移動する方向(金型2の外側方向)を型開き方向という。
このため、スライドコア22、23、24及び25は、それぞれ型締め時の位置決めのために下型21や他のスライドコア(例えば、スライドコア22の場合、スライドコア24及び25)と当接する必要がなく、下型21とコア本体22a、23a、24a及び25aとの間及びコア本体22a、23a、24a及び25a同士の間にそれぞれ隙間を設けられている。この隙間により、下型21及びコア本体22a、23a、24a及び25aの各部材の熱膨張による接触を避けることができる。
また同様にコーナポスト41、42、43及び44には、型締め時に上型26に当接する上面の当接箇所に、それぞれプレート71、72、73及び74が配置されている。
これらのプレート61、62、63、64、65、66、67、68、71、72、73及び74は、それぞれボルトで固定されており、それぞれ交換可能に構成されている。
このため、プレート61、62、63、64、65、66、67及び68は、厚みをそれぞれ変更したり、上下に分割し分割したプレートの厚みをそれぞれ変更することもできる。
プレート61は、スライドコア22のプラテン22bが当接するコーナポスト41の側面の当接箇所に設けられた凹部に半分埋め込まれた状態で位置決めされ、ボルト81及び82で2箇所固定されている。このようにプレート61、62、63、64、65、66、67及び68は、コーナポスト41、42、43及び44の側面の当接箇所に設けられた凹部に半分埋め込まれた状態で位置決めされるので、ずれがなくしっかりと固定される。
また、プレート71は、上型26が当接するコーナポスト41の上面の当接箇所に載置された状態で位置決めされ、ボルトで3箇所固定されている。
他のプレートも同様に固定されていてよい。
また、スライドコア22、23、24及び25は、スライドコア22、23、24及び25のそれぞれの型締め時の位置決めを、下型21や他のスライドコア(例えば、スライドコア22の場合、スライドコア24及び25)に影響を受けずに、独立して調整することができる。
次に、図1〜図3に基づき、以上のように構成された金型2による鋳造工程について説明する。
まず型開き工程では、型開きされ、前の鋳造工程で製造された製品、すなわちシリンダヘッドが排出された後、下型21上に、排気ポート形状の砂中子91a、91b、91c及び91d及び吸気ポート形状の砂中子92a、92b、92c及び92dが載置される。
排気ポート形状の砂中子91a、91b、91c及び91dは、一体に構成されていて、1回で所定の位置に載置できるものであることが好ましい。また、吸気ポート形状の砂中子92a、92b、92c、92dも、同様に一体に構成されていて、1回で所定の位置に載置できるものであることが好ましい。
型締め時において、スライドコア22、23、24及び25が、それぞれ設定された型締め位置に、倒れも水平方向の傾きもなく正しく固定されるので、排気ポート形状の砂中子91aは、(a)、(b)に示すように、下型21の凸部21aの当接面29e及び29fに対し排気ポート形状の砂中子91aの端面98e及び98fを、位置ずれも隙間もなく密接して固定される。他の排気ポート形状の砂中子91b、91c及び91dも同様に固定される。
また、同様に、吸気ポート形状の砂中子92aは、下型21の凸部21aの当接面29g及び29hに対し吸気ポート形状の砂中子92aの端面99g及び99hを、位置ずれも隙間もなく密接して固定される。他の吸気ポート形状の砂中子92b、92c及び92dも同様に固定される。
次に溶湯注入工程に移ると、基台3の下部に配置された図示しないるつぼから溶湯が湯口を通してキャビティ9に供給される。これにより、キャビティ9に溶湯が充填され、製品形状、すなわちシリンダヘッドが鋳造される。
特に排気ポート形状の砂中子91a、91b、91c及び91dは、下型21の凸部21a、21b、21c及び21dのそれぞれの当接面(例えば、凸部21aの当接面29e及び29f)に対し排気ポート形状の砂中子91a、91b、91c及び91dの端面(例えば、砂中子91aの端面98e及び98f)を、位置ずれも隙間もなく密接して固定されるので、シリンダヘッドの排気ポートの燃焼室頂部空間への開口部の位置ずれ及びバリ発生を防止できる。
吸気ポート形状の砂中子92a、92b、92c及び92dも同様に、下型21の凸部21a、21b、21c及び21dのそれぞれの当接面(例えば、凸部21aでは当接面29g及び29h)に対し吸気ポート形状の砂中子92a、92b、92c及び92dの端面(例えば、砂中子92aでは端面99g及び99h)を、位置ずれも隙間もなく密接して固定されるので、シリンダヘッドの吸気ポートの燃焼室頂部空間への開口部の位置ずれ及びバリ発生を防止できる。
以下、本実施形態に係る鋳造機1の特徴を、図4〜図7の模式図を用いて従来の鋳造機と対比させて説明する。
図4は、従来の金型のモデルを示す模式図である。図5は、スライドコアの倒れを示す模式図である。図6は、スライドコアの傾きを示す模式図である。図7は、本実施形態に係る金型のモデルを示す模式図である。
このとき、スライドコア122は、図5に示すように、上部が位置拘束されず下部のみが位置拘束される状態になり、鋳造機中心部に押し込まれ、倒れることがある。
この場合、図6に示すように、隣り合うスライドコア122及び123との間の隙間が大きい側(この場合スライドコア122側の隙間)において、型締め時に隣り合うスライドコア122及び125同士が正しく密接せずにスライドコア125の左右がバランス悪く鋳造機中心部に押し込まれ、スライドコア125が水平方向に傾くことがある。
特に砂中子を用いた鋳造のとき、スライドコアの倒れや傾きによって、砂中子が所定の位置に正しく配置されず製品に位置ずれやバリを発生させる。
例えば図3(c)に示すように排気ポート形状の砂中子191aの端面198eと凸部121aの当接表面129eとの間に隙間を生じさせ、製品としてのシリンダヘッドの排気ポートの燃焼室頂部空間への開口部にバリが発生する場合がある。
またこの他にも、砂中子191aの端面198eと凸部121aの当接表面129eとの間に、干渉やずれ、押し込み等の弊害を生じ、製品としてのシリンダヘッドの排気ポートの燃焼室頂部空間への開口部に寸法精度の悪化を招く場合がある。また砂中子を破損させる場合もある。
これに対して、本実施形態では、前述の通り、コーナポスト41、42、43及び44が、スライドコア22、23、24及び25のプラテン22b、23b、24b及び25bに当接してスライドコア22、23、24及び25の型締め時の位置を規定するようにしている。このため、スライドコア22、23、24及び25は、予め設定された型締め位置に、倒れも水平方向の傾きもなく正しく固定される。
本実施形態に係る鋳造機1によると以下の効果を奏する。
(1)スライドコア22、23、24及び25は、コーナポスト41、42、43及び44に当接してスライドコア22、23、24及び25の型締め時の位置が規定される。よって、スライドコア22、23、24及び25のコア本体22a、23a、24a及び25aは型締め時の位置決めのために下型21や他のコア本体22a、23a、24a及び25aと密接する必要がない。
これにより、型締め時に、コア本体22a、23a、24a及び25aは、上部が位置拘束されず下部のみが下型21で位置拘束される状態を防止でき、鋳造機1の中心部に押し込まれて図5に示すように倒れることはない。
また、これにより隣り合うコア本体22a、23a、24a及び25a同士の間に十分な隙間を設けており、型締め時に隣り合うコア本体22a、23a、24a及び25a同士が正しく密接せずにコア本体22a、23a、24a及び25aの左右がバランス悪く鋳造機1の中心部に押し込まれる状態を防止でき、スライドコア22、23、24及び25が図6に示すように水平方向に傾くことはない。
したがって、スライドコア22、23、24及び25が、型締め時に、倒れも水平方向の傾きもなく予め設定された所定の位置に正しく配置されるので、金型2が鋳造しようとする製品形状部に対応するキャビティ形状の変形や中子位置のずれが生じることがなく、鋳造機1で鋳造した製品における偏肉、位置ずれ等の品質悪化やバリ発生を防止でき、安定生産が可能になる。特に砂中子を用いた鋳造のとき、スライドコア22、23、24及び25の倒れや傾きに起因する砂中子の位置ずれによる製品のバリ発生及び砂中子の破損を防止できる。
本実施形態では、交換可能なプレートをコーナポストに配置したが、交換可能なプレートをスライドコアに配置してもよい。
2…金型
3…基台
21…下型
21s、22s、23s、24s、25s、26s…表面
22、23、24、25…スライドコア
22a、23a、24a、25a…コア本体
22b、23b、24b、25b…プラテン
26…上型
41、42、43、44…コーナポスト(支柱)
51、52、53、54…レール
61、62、63、64、65、66、67、68…プレート
71、72、73、74…プレート
81、82…ボルト
Claims (2)
- 基台上に固定され、鋳造しようとする製品形状部の下側形状に対応した表面形状の表面を有する下型と、
前記下型上を移動可能に設けられ前記製品形状部の側面形状の少なくとも一部に対応した表面形状の表面を有するコア本体と前記コア本体を保持する基部とによって構成されるスライドコアと、
前記下型に対して上下動可能に設けられ前記製品形状部の上側形状に対応した表面形状の表面を有する上型と、
前記基台上に設けられ前記上型に当接して前記上型の型締め時の高さ位置を規定する支柱と、を備え、
前記支柱は、前記スライドコアの前記基部に当接して前記スライドコアの型締め時の位置を規定するように構成され、前記型締め時には前記下型と前記コア本体との間及び前記コア本体同士の間にそれぞれ隙間が設けられることを特徴とする低圧鋳造の金型位置決め機構。 - 型締め時に前記支柱と前記スライドコアとが当接する当接箇所に、交換可能なプレートを配置することを特徴とする請求項1に記載の低圧鋳造の金型位置決め機構。
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