特許文献1の内刃は、10数個のスパイラル刃と、スパイラル刃を支持する内刃支持軸と、内刃支持軸に固定される内刃軸とで構成するので、内刃の全体構造が複雑で、製造コストが高く付く。その点、特許文献2の内刃(回転刃)は、内刃支持軸の周面にシート状の内刃体を接着して構成するので、内刃の部品点数が少なくて済み、製造コストを削減できる。しかし、シート状の内刃体を内刃支持軸の周面に接着固定するので、内刃体が内刃支持軸から分離するおそれがあり、内刃体の接着強度に不安が残る。
本出願人が先に提案した回転刃によれば、刃本体を刃受部の周面に溶接するので、刃本体の構造強度を問題なく向上できる。しかし、丸棒状のステンレス鋼材に旋削加工を施して刃支持体を形成するので、刃支持体のコストが大幅に嵩む難点がある。そこで本発明者は十分な構造強度を備えていながら、加工コストが少なくて済む回転軸体(刃支持体)の構造を模索した。その結果、軸本体に複数のディスクを固定して回転軸体を構成すると、回転軸体のコストを著しく削減できることを見出し、本発明を提案するに至った。
本発明の目的は、十分な構造強度を備えていながら、加工コストが少なくて済む回転軸体と、その製造方法を提供することにある。
本発明の目的は、スパイラル刃を切断要素とする回転刃に比べて構造が簡単で製造コストを削減できる回転軸体を含む回転刃と、回転軸体を含む回転刃の製造方法を提供することにある。
本発明に係る回転軸体2は、軸本体4に複数のディスク5を固定して構成する。ディスク5の中央に、軸本体4に挿通される装填穴7を形成する。ディスク5を軸本体4に挿通してディスク5を圧嵌姿勢に保持し、ディスク5と軸本体4を相対移動させて、軸本体4の周面に設けた複数のかしめ突起6と装填穴7とを互いに圧嵌することによりディスク5を軸本体4に固定する。
軸本体4の周面に、ディスク5の固定位置に対応して複数のかしめ突起6を形成する。ディスク5の中央に、軸本体4に挿通される装填穴7と、かしめ突起6に対応して装填穴7の内面に設けられる逃げ溝8とを形成する。中心軸方向に隣接するかしめ突起6の間でディスク5を回転させて、その逃げ溝8が軸本体4の軸周面と対向する圧嵌姿勢に保持する。圧嵌姿勢に保持したディスク5と軸本体4を、図4(b)に示すように中心軸方向へ相対移動させて、ディスク5を軸本体4に圧嵌固定する。
かしめ突起6は、軸本体4の中心軸方向に長いリブ状に形成する。ディスク5の中央に、軸本体4に挿通される装填穴7と、かしめ突起6に対応して装填穴7の内面に設けられる逃げ溝8とを形成する。ディスク5を固定位置まで挿通して、逃げ溝8とかしめ突起6とが嵌まり合う状態で、図10(b)に示すようにディスク5と軸本体4を周方向へ相対回転させて、ディスク5を軸本体4に圧嵌固定する。
軸本体4はマルテンサイト系のステンレス鋼材で形成する。ディスク5はオーステナイト系のステンレス鋼材で形成する。ディスク5を軸本体4に固定した後、焼入れ処理を施す。
本発明に係る回転軸体の製造方法は、軸本体4に複数のディスク5が固定してある回転軸体2の製造方法に係り、以下の各工程により回転軸体2を構成する。ディスク5の固定位置に対応して、軸本体4の周面に複数のかしめ突起6を形成する工程。ディスク5の中央に、軸本体4に挿通される装填穴7と、前記かしめ突起6に対応して装填穴7の内面に設けられる逃げ溝8とを形成する工程。ディスク5を軸本体4に挿通して、ディスク5を圧嵌姿勢に保持する工程。圧嵌姿勢に保持したディスク5と軸本体4を相対移動させて、かしめ突起6と装填穴7とを互いに圧嵌固定する工程とである。なお、軸本体4にかしめ突起6を形成する工程と、ディスク5に装填穴7と逃げ溝8を形成する工程とは、いずれも機械加工の工程であるので、記載順に加工を施す必要はない。
上記の回転軸体2の製造方法においては、以下の形態で回転軸体2を形成することができる。かしめ突起6を形成する工程において、かしめ突起6を、軸本体4の中心軸方向の複数個所に断続する状態で形成する。ディスク5を圧嵌姿勢に保持する工程において、図4(b)に示すように、中心軸方向に隣接するかしめ突起6の間でディスク5を回転させて、その逃げ溝8を軸本体4の軸周面と対向する圧嵌姿勢に保持する。さらに、かしめ突起6を圧潰する工程において、圧嵌姿勢に保持したディスク5と軸本体4を中心軸方向へ相対移動させて、ディスク5を軸本体4に圧嵌固定する。
上記の回転軸体2の製造方法においては、以下の形態で回転軸体2を形成することができる。かしめ突起6を形成する工程において、かしめ突起6を、軸本体4の中心軸方向に長いリブ状に形成する。ディスク5を圧嵌姿勢に保持する工程において、図10(b)に示すように、ディスク5を軸本体4の固定位置まで挿通して、逃げ溝8とかしめ突起6とが嵌まり合う状態で圧嵌姿勢に保持する。かしめ突起6を圧潰する工程において、圧嵌姿勢に保持したディスク5と軸本体4を周方向へ相対回転させて、ディスク5を軸本体4に圧嵌固定する。
ディスク5と軸本体4を周方向へ相対回転させて圧嵌固定する上記の回転軸体2の製造方法においては、以下の形態で回転軸体2を形成することができる。かしめ突起6を圧潰する工程において、ディスク5と軸本体4を周方向へ相対回転するときの回転変位量を、かしめ突起6の周方向長さより大きくして、ディスク5を軸本体4に圧嵌固定する。
さらに、かしめ突起6を圧潰する工程において、ディスク5と軸本体4を相対回転した後のかしめ位置を、図12に示すように、周方向に隣接するかしめ突起6の中央位置Pを越えない位置で、中央位置Pの近傍に位置させる。
本発明に係る回転軸体を含む回転刃は、軸本体4と、軸本体4に圧嵌固定される複数のディスク5とからなる回転軸体2と、回転軸体2のディスク5に固定される切断刃3とを備えている。各ディスク5は、その中央に設けた装填穴7を、軸本体4の周面に設けた複数のかしめ突起6に圧嵌して軸本体4に固定する。切断刃3の前段体である切断刃ブランク18は、切刃39を備えた金属製のシート状ブランク17に塑性加工を施して形成する。切断刃ブランク18を回転軸体2に外接し、複数のディスク5の周面に溶接して回転刃1を構成する。
軸本体4はマルテンサイト系のステンレス鋼材で形成し、ディスク5はオーステナイト系のステンレス鋼材で形成し、切断刃3はマルテンサイト系のステンレス鋼材で形成する。回転軸体2に切断刃ブランク18を溶接して得られる回転刃ブランク19に焼入れ処理を施し、焼入れ後のブランクに研削処理を施して回転刃1を構成する。
本発明に係る回転軸体を含む回転刃の製造方法は、軸本体4と、軸本体4にかしめ固定される複数のディスク5とからなる回転軸体2と、回転軸体2のディスク5に固定される切断刃3とを備えている回転刃1の製造方法に係り、以下の各工程により回転刃1を構成する。ディスク5を軸本体4に挿通した後、ディスク5と軸本体4を相対移動させて、軸本体4に形成したかしめ突起6とディスク5に設けた装填穴7とを互いに圧嵌して回転軸体2を構成する工程。切刃39を備えた金属製のシート状ブランク17に塑性加工を施して、切断刃ブランク18を形成する工程。切断刃ブランク18を回転軸体2に外接し、ディスク5に溶接して回転刃ブランク19を形成する工程。得られた回転刃ブランク19に焼入れ処理を施す工程。焼入れ後のブランクに研削処理を施す工程とである。
本発明に係る回転軸体においては、ディスク5を軸本体4に挿通してディスク5を圧嵌姿勢に保持し、両者4・5を相対移動させ、軸本体4の周面に設けた複数のかしめ突起6と装填穴7とを圧嵌することによりディスク5を軸本体4に固定した。このように、かしめ突起6と装填穴7とを互いに圧嵌するディスク5の固定構造によれば、ディスク5を軸本体4に対して、より少ない手間で強固に、しかも精度よく固定できる。また、ディスク5を軸本体4に溶接する場合に比べて、1回の圧嵌作業で複数のディスク5を軸本体4に簡便に固定でき、より少ないコストで回転軸体2を構成できる。とくに、丸棒状のステンレス鋼材に旋削加工を施して回転軸体を構成する場合に比べて、回転軸体2の製造に要するコストを大幅に削減できる。
圧嵌姿勢に保持したディスク5と軸本体4を中心軸方向へ相対移動させて、両者4・5を圧嵌固定する回転軸体2によれば、軸本体4またはディスク5を中心軸方向へ移動するだけの簡単な動作で両者4・5を圧嵌できるので、圧嵌作業を簡便にしかも安定した状態で適確に行える。また、軸本体4と装填穴7とが嵌合する状態のままで圧嵌加工を行うので、ディスク5の軸本体4に対する直交度や同心度を十分に確保できる。
逃げ溝8とかしめ突起6とが嵌まり合う状態で、ディスク5と軸本体4を周方向へ相対回転させて、両者4・5を圧嵌固定する回転軸体2によれば、ディスク5の厚みに相当するかしめ突起6を圧潰すればよいので、圧嵌作業をさらに簡便に行うことができる。とくに、リブ状に形成したかしめ突起6の長手方向の中途部でかしめ突起6を圧潰する場合には、装填穴7の周縁壁が分断されたかしめ突起6で受止められるので、ディスク5が中心軸方向へ移動するのを確実に規制できる。また、軸本体4と装填穴7、および逃げ溝8とかしめ突起6とが嵌合する状態のままで圧嵌加工を行うので、ディスク5の軸本体4に対する直交度や同心度を十分に確保できる。
軸本体4をマルテンサイト系のステンレス鋼材で形成し、ディスク5をオーステナイト系のステンレス鋼材で形成すると、ディスク5の軸本体4に対する圧嵌作業を容易に行なうことができる。マルテンサイト系のステンレス鋼材と、オーステナイト系のステンレス鋼材とは、焼入れ前の状態においては前者鋼材の硬度が後者鋼材の硬度より小さいので、ディスク5によるかしめ突起6の圧潰を容易に行なえるからである。さらに、焼入れ処理を施すことにより軸本体4の表面硬度を向上して、軸本体4の構造強度を向上できる。因みにディスク5は、焼入れ処理による表面硬化作用が得られない。上記の圧嵌作業とは異なり、予め軸本体4に焼入れ処理を施したのち、ディスク5を軸本体4に圧嵌することができる。その場合には、軸本体4の硬度がディスク5の硬度より大きくなるので、軸本体4に対する圧嵌作業を容易に行うことができる。
本発明に係る回転軸体の製造方法では、軸本体4にかしめ突起6を形成する工程と、ディスク5に装填穴7と逃げ溝8とを形成する工程と、ディスク5を圧嵌姿勢に保持する工程と、かしめ突起6と装填穴7とを互いに圧嵌固定する工程を経て回転軸体2を構成する。このように、かしめ突起6と装填穴7とを互いに圧嵌固定して、ディスク5を軸本体4に固定する回転軸体の製造方法によれば、ディスク5を軸本体4に対して、より少ない手間で強固に、しかも精度よく固定できる。例えば、ディスク5を軸本体4に溶接する場合に比べて、1回の圧嵌作業で複数のディスク5を軸本体4に簡便に固定でき、より少ないコストで回転軸体2を構成できる。丸棒状のステンレス鋼材に旋削加工を施して回転軸体を構成する場合に比べて、回転軸体2の製造に要するコストを大幅に削減できる。
圧嵌姿勢に保持したディスク5と軸本体4を中心軸方向へ相対移動させて、ディスク5を軸本体4に圧嵌固定する回転軸体2の製造方法によれば、軸本体4またはディスク5を中心軸方向へ移動するだけの簡単な動作で両者4・5を圧嵌できるので、圧嵌作業を簡便にしかも安定した状態で適確に行える。また、軸本体4と装填穴7とが嵌合する状態のままで圧嵌加工を行うので、ディスク5の軸本体4に対する直交度や同心度を十分に確保できる。
逃げ溝8とかしめ突起6とが嵌まり合う状態で、ディスク5と軸本体4を周方向へ相対回転させて、両者4・5を圧嵌固定する回転軸体2の製造方法によれば、ディスク5の厚みに相当するかしめ突起6を圧潰すればよいので、圧嵌作業をさらに簡便に行うことができる。とくに、リブ状に形成したかしめ突起6の長手方向の中途部でかしめ突起6を圧潰する場合には、装填穴7の周縁壁が分断されたかしめ突起6で受止められるので、ディスク5が中心軸方向へ移動するのを確実に規制できる。また、軸本体4と装填穴7、および逃げ溝8とかしめ突起6とが嵌合する状態のままで圧嵌加工を行うので、ディスク5の軸本体4に対する直交度や同心度を十分に確保できる。
ディスク5と軸本体4を周方向へ相対回転させて、両者4・5を圧嵌固定する回転軸体2の製造方法において、ディスク5と軸本体4の相対的な回転変位量をかしめ突起6の周方向長さより大きくすると、かしめ突起6の断面領域の全体を確実に圧潰した状態で圧嵌できる。したがって、圧嵌後の軸本体4とディスク5との結合強度を十分なものとして、回転軸体2の構造強度を向上できる。
ディスク5と軸本体4を圧嵌した後のかしめ位置を、周方向に隣接するかしめ突起6の中央位置Pを越えない位置で、中央位置Pの近傍に位置させるようにすると、圧嵌後のかしめ突起6と装填穴7との密着面積を大きくできる。圧嵌加工を行うことにより、かしめ突起6の断面領域の全体が圧潰されるのに加えて、装填穴7の一部が圧潰し、あるいはかしめ突起6の圧潰片が装填穴7に密着して、軸本体4の周面と装填穴7との隙間を埋めるからである。したがって、圧嵌後の軸本体4とディスク5との結合強度をさらに向上して、回転軸体2の構造強度を強化できる。
本発明に係る回転刃においては、軸本体4およびディスク5からなる回転軸体2と、ディスク5に溶接される切断刃ブランク18とで回転刃1を構成するので、スパイラル刃を切断要素とする従来の回転刃に比べて、回転刃1の構成部品点数を削減できる。また、複数のディスク5を軸本体4に圧嵌固定して回転軸体2を構成するので、構造強度に優れた回転軸体2をより少ない手間で形成でき、全体として回転刃1の製造に要するコストを削減できる。
軸本体4をマルテンサイト系のステンレス鋼材で形成し、ディスク5をオーステナイト系のステンレス鋼材で形成すると、ディスク5の軸本体4に対する圧嵌作業を容易に行なうことができる。これは、先に説明したように、軸本体4およびディスク5を形成するステンレス鋼材の違いに基づく硬度差によって、ディスク5によるかしめ突起6の圧潰を容易に行なえるからである。先に説明したように、ディスク5と軸本体4との圧嵌作業は、予め軸本体4に焼入れ処理を施したのち、ディスク5を軸本体4に圧嵌してもよく、この場合にも同様に圧嵌作業を容易に行うことができる。回転刃ブランク19に焼入れ処理を施すことにより、マルテンサイト系のステンレス鋼材で形成した軸本体4および回転刃ブランク19の表面を硬化して回転刃1の強度を向上できる。なお、オーステナイト系のステンレス鋼材で形成したディスク5は、焼入れしても表面が硬化せず、熱膨張が少ない。そのため、切断刃ブランク18をディスク5に溶接するときに、溶接面に熱負荷がかかりにくく、溶接歪が少なくてすむ。焼入れ後のブランクに研削処理を施すことにより、回転刃1の外周面の直径寸法と、真円度と、表面粗さとを所定の状態に仕上げることができる。
本発明に係る回転刃の製造方法においては、軸本体4とディスク5とを圧嵌して回転軸体2を形成する工程と、切断刃ブランク18を形成する工程と、切断刃ブランク18をディスク5に溶接する工程と、焼入れ工程と、研削工程を経て回転刃を構成する。このような一連の工程を経て回転刃1を形成すると、回転軸体2および切断刃ブランク18をより少ない手間で形成できる。また、回転刃1の前段体である回転刃ブランク19に焼入れ処理と研削処理を施すことにより、外周面の直径寸法と、真円度と、表面粗さとが所定の状態に仕上げられ、さらに表面が硬化されて強度が向上された回転刃1を、ばらつきのない状態で安定して製造できる。
(実施例1) 図1ないし図9は、本発明に係る回転軸体を含む回転刃の実施例を示す。図1および図2において回転刃1は、回転軸体2と、回転軸体2に固定される切断刃3とで構成する。回転軸体2は、軸本体4と、軸本体4に圧嵌固定される5個のディスク5とで構成する。軸本体4は、マルテンサイト系のステンレス鋼材に旋削加工を施して丸軸状に形成してあり、ディスク5は、オーステナイト系のステンレス鋼材に旋削加工を施して円盤状に形成してある。
ディスク5を軸本体4に圧嵌固定(かしめ固定)するために、軸本体4の周面に、各ディスク5の固定位置に対応して複数のかしめ突起6を形成する。かしめ突起6は、軸本体4の周面にステーキング加工を施して形成してあり、この実施例では各ディスク5の固定位置ごとに、周方向の4個所にリブ状のかしめ突起6を形成した。図2に示すように、かしめ突起6は、軸本体4の中心軸方向の5個所に断続する状態で形成してあり、かしめ突起6の中心軸方向の長さは、ディスク5の厚み寸法の2.5倍とした。ステーキング加工の詳細については後述する。
円盤状のディスク5の中央には、軸本体4に挿通される装填穴7が形成してあり、装填穴7の内面にかしめ突起6に対応する4個の逃げ溝8がコ字状に形成してある。ディスク5の周面の円形の刃受面9には位置決め溝10が形成してあり、この刃受面9の周面に切断刃3が溶接される。
切断刃3は、マルテンサイト系のステンレス板材にエッチング加工を施し、さらにロール加工(塑性加工)を施して円筒状に形成するが、加工の詳細については後述する。図7に示すようにエッチング加工を施したシート状ブランク17には、第1小刃11の一群と、第2小刃12の一群と、両小刃11・12で囲まれる菱形の刃穴13の一群と、これらの周囲を囲む周枠とが形成してある。第1小刃11の一群と、第2小刃12の一群とは、それぞれ回転軸体2の中心軸に対して互いに逆向きに傾斜する状態で形成してあり、これにより展開状態のシート状ブランク17の全体はエキスパンドメタル状の外観を呈している。
上記のように、シート状ブランク17をエキスパンドメタル状に構成すると、スパイラル刃を切断要素とする従来の回転刃に比べて、切刃39の合計長さを増加でき、しかも傾斜方向が異なる両小刃11・12で切断対象を交互に切断できる。さらに、刃穴13の開口面積が格段に大きくなるので、スパイラル刃を切断要素とする内刃と同様に、切断対象を効果的に刃穴13に導入して能率よく切断できる。
次に回転刃の製造方法の詳細を説明する。回転刃1は、回転軸体2を形成する工程と、切断刃ブランク18を形成して回転軸体2に固定する工程に大別される。回転軸体2を形成する工程は、軸本体4の周面にかしめ突起6を形成する工程と、ディスク5に装填穴7と逃げ溝8を形成する工程と、ディスク5を軸本体4に挿通して圧嵌姿勢に保持する工程と、ディスク5と軸本体4を相対移動させてかしめ突起6を圧嵌する工程とからなる。
切断刃ブランク18を形成する工程は、図7に示すようにステンレス板材16にエッチングを施して、シート状ブランク17を形成する工程と、図8に示すようにシート状ブランク17にロール加工(塑性加工)を施して円筒状の切断刃ブランク18を形成する工程とからなる。こののち、切断刃ブランク18を回転軸体2に溶接する工程を経て回転刃ブランク19を構成し、回転刃ブランク19に焼き入れ工程と研削工程を経て回転刃1を完成する。切断刃ブランク18は、ステンレス板材に打抜き加工を施して形成してあってもよい。
(かしめ突起を形成する工程)
図3に示すように、かしめ突起6を形成する工程では、定置されたステーキング加工用の固定型20と、固定型20に向かって下降し、あるいは上昇するステーキング加工用の可動型21とで、軸本体4の周面に中心軸方向に長いリブ状のかしめ突起6を形成する。図3(b)に示すように、固定型20および可動型21の対向面の前後には、それぞれ鋭角の切刃22・23が形成してある。固定型20の切刃22で軸本体4を支持し、固定型20の側端に設けた位置決め枠24で軸本体4を位置決めした状態で、可動型21を軸本体4の周面に食い込ませることにより、図3(c)に示すように、軸本体4の周方向の4個所に逆V字状に突出するリブ状のかしめ突起6を形成できる。かしめ突起6は、各ディスク5の固定位置ごとに、軸本体4の中心軸方向に沿って一定間隔おきに断続的に形成するが、各ディスク5の固定位置における個々のかしめ突起6の位相位置は一定位置に揃えてある。かしめ突起6を形成するのと同時に、切刃22・23の食込み跡27が形成される。
(装填穴と逃げ溝を形成する工程)
この工程では、ステンレス製の丸棒に切削加工を施して所定の直径値の旋削ブランクを形成し、得られた旋削ブランクの中央に旋削加工あるいはドリル加工を施して装填穴7を形成する。さらに得られた2次ブランクにスロッター加工あるいはブローチ加工を施して逃げ溝8と、位置決め溝10を形成する。得られた長尺のブランクを突っ切りバイトで所定の幅に切断してディスク5を形成する。ディスク5は、ステンレス板材に打抜き加工を施して形成することができ、あるいはステンレス板材にエッチングを施して形成することもできる。
(圧嵌姿勢に保持する工程)
この工程では、図4(a)に示すように、ディスク5を軸本体4に挿通して仮組みする。さらに、中心軸方向に隣接するかしめ突起6・6の間でディスクを回転させて、図4(b)に示すように、その逃げ溝8が軸本体4の軸周面と対向する圧嵌姿勢に保持する。ディスク5を軸本体4に仮組みする過程では、逃げ溝8の位相位置とかしめ突起6の位相位置を一致させておくことにより、ディスク5を固定対象のかしめ突起6の近傍まで、円滑に挿通することができる。図4(b)に示すように、圧嵌姿勢に保持した状態における逃げ溝8は、周方向に隣接するかしめ突起6・6の中央位置P(図6参照)に位置させて、位置決め溝10を利用して位置決めしてある。ディスク5を圧嵌姿勢に保持した状態における、ディスク5と軸本体4の相対回転角度は45度となる。
(かしめ突起を圧嵌する工程)
この工程では、圧嵌姿勢に保持したディスク5と軸本体4を中心軸方向へ相対移動させて、かしめ突起6と装填穴7を互いに圧嵌する。例えば、各ディスク5を固定金具で移動不能に受止めた状態で、軸本体4を押し込んで、図5に示すようにかしめ突起6をディスク5で同時に圧潰し変形させる。このとき、5個のディスク5は軸本体4に対して同時に圧嵌される。
かしめ突起6と装填穴7を圧嵌することにより、装填穴7が通過した部分のかしめ突起6の殆どが装填穴7によって削り取られ、あるいは逆に装填穴7の一部が、残ったかしめ突起6の基部側の圧潰面30で削り取られて両者7・30が互いに密着する。また、かしめ突起6の塑性変形部31が装填穴7の周縁壁を受止めて、それ以上ディスク5が中心軸方向へ移動するのを規制している。ディスク5と軸本体4とは、どちらか一方を移動操作すればよく、必要があれば両者4・5を同時に移動操作してもよい。図5および図6に示すように、軸本体4に固定されたディスク5は、その逃げ溝8が周方向に隣接するかしめ突起6の中央位置Pで、ディスク5の厚み中心がかしめ突起6の中心軸方向の中央に位置している。
(切断刃を形成する工程)
この工程では、図7に示すようにステンレス板材16にエッチングを施して、切断刃3のシート状ブランク17を形成する。具体的には、厚みが0.3mmのステンレス板材16の表裏両面にエッチング処理を施して、第1小刃11や第2小刃12などを形成する。エッチング工程においては、図9に示すようにステンレス板材16の表裏両面にレジスト膜33を形成したのち露光し、露光部を除去して、非露光部に囲まれる板材表面をエッチング液で蝕刻する。このとき、多数個のシート状ブランク17を同時に形成して、その辺部に設けられた橋絡部34(図7参照)を切断して、ステンレス板材16から分離する。
エッチング処理を施すことにより、図9に示す断面形状の第1小刃11および第2小刃12が形成される。第1小刃11および第2小刃12は、外面の切断面35と、内面のベース面36と、これら両者35・36の端縁間に形成される第1抉り面37、および第2抉り面38とで、5個の隅部を備えた異形断面状に形成される。第1抉り面37は、切断面35とベース面3との端縁間を抉る1個の内凹み面で形成してあり、切断面35と第1抉り面37とによって、矢印で示す切断面35の回転方向上手側に切刃39が形成される。また、切断面35と第2抉り面38とによって切断面35の回転方向下手側に逃縁40が形成される。第2抉り面38は二つの凹曲面でく字状に形成してある。
(切断刃ブランクを形成する工程)
この工程では、図8(a)・(b)に示すように、シート状ブランク17にロール加工(塑性加工)を施して、円筒状の切断刃ブランク18を形成する。ロール加工は、下側に配置した2個のベースローラー42と、両ベースローラー42の間の上方に配置される加圧ローラー43とで行ない、両ローラー42・43の間にシート状ブランク17を通すことにより、円筒状の切断刃ブランク18を形成する。切断刃ブランク18は、不完全円状に曲げられている。
(切断刃ブランクを溶接する工程)
この工程では、回転軸体2のディスク5の周面に切断刃3の切断刃ブランク18を溶接する。詳しくは、円筒状の切断刃ブランク18をディスク5に外嵌し、断面が半円状の治具で切断刃ブランク18を抱持してディスク5の刃受面9に密着させる。この状態で、切断刃ブランク18をレーザー溶接機でディスク5に溶接することにより、図1に示すような円筒籠状の回転刃ブランク19が得られる。
(熱処理工程)
熱処理工程においては、回転刃ブランク19を約1000℃にまで加熱し、その状態を所定時間維持したのち、水および加熱された油で順に冷却して焼き入れを行なう。これにより、切断刃3および軸本体4の金属組織をマルテンサイト化してその表面硬度を増強できる。回転刃ブランク19を加熱する過程では、レーザー溶接時に溶接部の周辺部で生じた熱による内部歪みを除去できる。必要に応じて焼き戻しを行う。
(研削工程)
研削工程では、回転刃ブランク19の周面に粗研削加工と仕上げ研削加工とを順に施して、切断刃3の周面の真円度を向上し、さらに切刃39をシャープに仕上げる。粗研削加工では、溶接部の膨出表面を除去し、同時に切断刃3の周面を研削する。また、仕上げ研削加工では、切断刃3の周面の表面荒さが小さくなるように仕上げ研削を行なって、回転刃1の外周面の直径寸法と、真円度と、表面粗さとを所定の状態に仕上げる。粗研削加工では、腐食しやすい溶接部の膨出表面を除去するので、溶接部の腐食や割れなどを一掃して切断刃3の耐久性を向上できる。なお、回転刃1の真円度に対する要求仕様が低い場合には、研削工程は省略することができる。
(実施例2) 図10および図11は回転軸体2の別の実施例を示す。そこでは、先に説明した実施例と同様に、リブ状のかしめ突起26を軸本体4の中心軸方向に沿って一定間隔おきに断続的に形成するが、ディスク5の軸本体4に対する圧嵌形態が異なる。図10(a)に示すようにディスク5を軸本体4に挿通して仮組みし、図10(b)に示すようにディスク5を圧嵌対象のかしめ突起6に挿通し、逃げ溝8とかしめ突起6とが嵌まり合う状態で圧嵌姿勢に保持する。この状態で、図10(b)に矢印で示すようにディスク5を回転操作し、装填穴7とかしめ突起6とを互いに圧嵌することにより、ディスク5と軸本体4を一体化する。このときディスク5の周面の4個所に設けた位置決め溝10で、各ディスク5を固定保持でき、あるいは各ディスク5を回転操作することができる。この実施例においても、5個のディスク5を軸本体4に対して同時に圧嵌することができる。
各ディスク5と軸本体4との相対的な回転変位量は、かしめ突起6の周方向長さより大きくする。好ましくは、図12に示すように、ディスク5と軸本体4を相対回転した後の圧嵌位置を、周方向に隣接するかしめ突起6・6の中央位置Pを越えない位置で、中央位置Pの近傍に位置させる。この実施例では、ディスク5と軸本体4の圧嵌位置までの相対回転角度を40度とした。
以上のように、ディスク5と軸本体4を周方向へ相対回転して、ディスク5を軸本体4に固定すると、図11に示すように、かしめ突起6の軸方向の中央部分が装填穴7で分断されて、圧潰されたかしめ突起6の基部側の圧潰面30と装填穴7とが互いに密着する。また、隣接する逃げ溝8の間の装填穴7の周縁壁を、圧潰されなかったかしめ突起6の分断面32で受止めて、ディスク5が軸本体4の中心軸方向へ移動するのを防止する。以後は、先に説明した実施例と同様にして、回転軸体2に切断刃ブランク18を溶接して回転刃ブランク19を構成し、これに焼き入れ処理と研削処理とを施して回転刃1を完成する。
(実施例3) 図13ないし図17は、回転軸体2のさらに別の実施例を示す。そこでは、実施例1と同様に、回転軸体2と、回転軸体2に固定される切断刃3とで回転刃1を構成する。回転軸体2は、軸本体4と、軸本体4に圧嵌固定される5個のディスク5とで構成する。円盤状のディスク5の中央には、軸本体4に挿通される装填穴7のみが形成してあり、先の実施例における逃げ溝8は省略してある。ディスク5は、ステンレス板材に打抜き加工を施して形成することができ、あるいはステンレス板材にエッチング加工を施して形成することができる。軸本体4はマルテンサイト系のステンレス鋼材で形成し、ディスク5はオーステナイト系のステンレス鋼材で形成する。
ディスク5は、先の実施例と同様に軸本体4に圧嵌固定するが、その過程が先の実施例とは異なる。回転軸体2を形成する工程は、旋削加工が施された軸本体4に焼き入れ処理を施す前段熱処理工程と、ディスク5に装填穴7を形成する工程と、ディスク5を軸本体4に挿通して仮組みする工程と、ディスク5を仮組みした状態のままで、軸本体4の周面にかしめ突起6を形成する工程と、ディスク5と軸本体4を相対移動させてかしめ突起6を圧嵌する工程とからなる。
(かしめ突起を形成する工程)
図14に示すように、かしめ突起6を形成する工程では、定置されたステーキング加工用の固定型20と、固定型20に向かって下降し、あるいは上昇するステーキング加工用の可動型21とで、軸本体4の周面に中心軸方向に長いリブ状のかしめ突起6を形成する。図14(a)に示すように、ディスク5が仮組みされた軸本体4を、固定型20の前後の切刃22に載置して、各ディスク5を隣接する切刃22の間に位置させておく。この状態で可動型21を軸本体4の周面に食い込ませることにより、図14(c)に示すように、軸本体4の周方向の4個所に逆V字状に突出するリブ状のかしめ突起6を形成できる。かしめ突起6は、各ディスク5の固定位置ごとに、軸本体4の中心軸方向に沿って一定間隔おきに断続的に形成する。各ディスク5の固定位置における個々のかしめ突起6の位相位置は一定位置に揃えてある。かしめ突起6を形成するのと同時に、切刃22・23の食込み跡27が形成される。
(かしめ突起を圧嵌する工程)
この工程では、図15に示すように、軸本体4に仮組みした状態のディスク5を治具80の支持壁81で支持する。この状態で、軸本体4を中心軸に沿って下向きに押し込んで、その下端面を治具80の下端のストッパー82に外接させることにより、かしめ突起6と装填穴7を互いに圧嵌する。
図16および図17に示すように、かしめ突起6と装填穴7を圧嵌することにより、装填穴7が通過した部分のかしめ突起6の殆どが装填穴7によって削り取られ、あるいは逆に装填穴7の一部が、残ったかしめ突起6の基部側の圧潰面30で削り取られて両者7・30が互いに密着する。また、かしめ突起6の塑性変形部31が装填穴7の周縁壁を受止めて、それ以上ディスク5が中心軸方向へ移動するのを規制できる。他は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
以上のように構成した回転軸体2は、次の形態で実施できる。
ディスク5の中央に、軸本体4に挿通される装填穴7を形成する。ディスク5を軸本体4に挿通した状態で、隣接するディスク5の間の軸本体4の周面に複数のかしめ突起6を形成する。ディスク5と軸本体4を中心軸方向へ相対移動させて、ディスク5を軸本体4に圧嵌固定する。
以上のように、ディスク5を軸本体4に仮組みした状態でかしめ突起6を形成すると、予めかしめ突起6が形成してある軸本体4にディスク5を組付ける場合に比べて、軸本体4に対するディスク5の仮組みを、かしめ突起6に邪魔されることもなく簡便に行える。また、ディスク5に逃げ溝8を形成する必要がないので、その分だけ回転軸体2の製造コストを削減できる。
軸本体4はマルテンサイト系の鋼材で形成し、ディスク5はオーステナイト系の鋼材で形成する。焼き入れ処理が施された軸本体4にディスク5を挿通した状態で、隣接するディスク5の間の軸本体4の周面に複数のかしめ突起6を形成する。ディスク5と軸本体4を中心軸方向へ相対移動させて、ディスク5を軸本体4に圧嵌固定する。
上記のように、焼き入れ処理が施された軸本体4にディスク5を仮組みすると、軸本体4の表面の硬度を高めて信頼性に優れた回転軸体2を形成できる。また、表面硬度が高められたマルテンサイト系の軸本体4に対して、軸本体4より硬度が低いオーステナイト系のディスク5を圧嵌するので、両者4・5を圧嵌する際に各ディスク5を所定位置に確実に固定できる。
かしめ突起6はステーキング加工で形成する。かしめ突起6は転造加工や切削加工で形成することができるが、ステーキング加工を施して形成すると、一群のかしめ突起6を一度の加工で同時に形成できるので、回転軸体2をより低コストで形成することができる。
以上の説明から理解できるように、軸本体4に複数のディスク5が固定してある回転軸体2の製造方法においては、以下の工程を経て回転軸体2を形成することができる。
ディスク5の中央に、軸本体4に挿通される装填穴7を形成する工程。ディスク5を軸本体4に挿通して仮組みする工程。隣接するディスク5の間の軸本体4の周面に複数のかしめ突起6を形成する工程。ディスク5と軸本体4を相対移動させてかしめ突起6を圧嵌する工程。
以上のように、かしめ突起6と装填穴7とを互いに圧嵌固定して、ディスク5を軸本体4に固定する回転軸体の製造方法によれば、ディスク5を軸本体4に対して、より少ない手間で強固に、しかも精度よく固定できる。例えば、ディスク5を軸本体4に溶接する場合に比べて、1回の圧嵌作業で複数のディスク5を軸本体4に簡便に固定でき、より少ないコストで回転軸体2を構成できる。また、丸棒状のステンレス鋼材に旋削加工を施して回転軸体を構成する場合に比べて、回転軸体2の製造に要するコストを大幅に削減できる。
上記の回転軸体の製造方法において、軸本体4はマルテンサイト系の鋼材で形成し、ディスク5はオーステナイト系の鋼材で形成する。ディスク5を軸本体4に挿通して仮組みする工程において、予め焼き入れ処理が施された軸本体4にディスク5を挿通して仮組みを行う。
上記のように、焼き入れ処理が施された軸本体4にディスク5を仮組みすると、軸本体4の表面の硬度を高めて信頼性に優れた回転軸体2を形成できる。また、表面硬度が高められたマルテンサイト系の軸本体4に対して、軸本体4より硬度が低いオーステナイト系のディスク5を圧嵌するので、両者4・5を圧嵌する際に各ディスク5を所定位置に確実に固定できる。
上記の回転軸体の製造方法において、かしめ突起6を形成する工程では、かしめ突起6をステーキング加工で形成する。このように、ステーキング加工でかしめ突起6を形成すると、かしめ突起6を転造加工や切削加工で形成する場合に比べて、一群のかしめ突起6を一度の加工で同時に形成できるので、回転軸体2をより低コストで形成することができる。
上記の回転軸体2を利用して回転刃1を構成することができる。具体的には、軸本体4と、軸本体4に圧嵌固定される複数のディスク5とからなる回転軸体2と、ディスク5に固定される切断刃3とを備えている回転刃1であって、ディスク5の中央に、軸本体4に挿通される装填穴7を形成する。ディスク5を軸本体4に挿通した状態で、隣接するディスク5の間の軸本体4の周面に複数のかしめ突起6を形成する。ディスク5と軸本体4を中心軸方向へ相対移動させて、ディスク5を軸本体4に圧嵌固定する。切刃39を備えた金属製のシート状ブランク17に塑性加工を施して、切断刃ブランク18を形成する。切断刃ブランク18を回転軸体2に外接し、複数のディスク5の周面に溶接して回転刃を構成する。
上記のように、軸本体4およびディスク5からなる回転軸体2と、ディスク5に溶接される切断刃ブランク18とで回転刃1を構成すると、スパイラル刃を切断要素とする従来の回転刃に比べて、回転刃1の構成部品点数を削減できる。また、複数のディスク5を軸本体4に圧嵌固定して回転軸体2を構成するので、構造強度に優れた回転軸体2をより少ない手間で形成でき、全体として回転刃1の製造に要するコストを削減できる。
上記の回転刃1においては、切刃39を備えた金属製のシート状ブランク17にロール加工を施して、切断刃ブランク18を円筒状に形成し、切断刃ブランク18を回転軸体2に外嵌し、複数のディスク5の周面に溶接して回転刃ブランク19を構成することができる。このように、切断刃ブランク18を1個の円筒体で構成すると、回転刃の構成部品点数を減らすことができ、回転刃1の製造に要するコストをさらに削減できる。
上記の回転刃において、軸本体4はマルテンサイト系の鋼材で形成し、ディスク5はオーステナイト系の鋼材で形成する。予め焼き入れ処理が施された軸本体4にディスク5を挿通して仮組みし、隣接するディスク5の間の軸本体4の周面に複数のかしめ突起6を形成する。得られた回転刃ブランク19に焼き入れ処理を施す。
上記のように、焼き入れ処理が施された軸本体4にディスク5を仮組みすると、軸本体4の表面の硬度を高めて信頼性に優れた回転軸体2を形成できる。また、軸本体4は2度焼き入れ処理されるので、その表面の硬度をさらに高めることができる。さらに、表面硬度が高められたマルテンサイト系の軸本体4に対して、軸本体4より硬度が低いオーステナイト系のディスク5を圧嵌するので、両者4・5を圧嵌する際に各ディスク5を所定位置に確実に固定できる。回転刃ブランク19の全体に焼き入れ処理を施すので、切断刃3の強度を向上できる。オーステナイト系のステンレス鋼材で形成したディスク5は、焼入れしても表面が硬化せず、熱膨張が少ない。そのため、切断刃ブランク18をディスク5に溶接するときのディスク5の熱膨張を小さくでき、切断刃3とディスク5との溶接面に熱負荷がかかりにくく、溶接歪が少なくてすむ。溶接後に再度熱処理を施すので、溶接時の内部ひずみを緩和できる。
上記の回転刃において、焼き入れ処理が施された回転刃ブランク19に研削処理を施して回転刃1を構成する。このように、焼入れ後の回転刃ブランク19に研削処理を施すことにより、回転刃1の外周面の直径寸法と、真円度と、表面粗さとを所定の状態に仕上げることができる。
軸本体4と、軸本体4に固定される複数のディスク5からなる回転軸体2と、ディスク5に固定される切断刃3とを備えている回転刃1の製造方法においては、以下の工程を経て回転刃1を形成することができる。
ディスク5の中央に、軸本体4に挿通される装填穴7を形成する工程。ディスク5を軸本体4に挿通して仮組みする工程。隣接するディスク5の間の軸本体4の周面に複数のかしめ突起6を形成する工程。ディスク5と軸本体4を相対移動させてかしめ突起6を圧嵌する工程。切刃39を備えた金属製のシート状ブランク17に曲げ加工を施して切断刃ブランク18を形成する工程。切断刃ブランク18を回転軸体2に外接し、ディスク5に溶接して回転刃ブランク19を形成する工程。
上記のように、軸本体4にディスク5を圧嵌して回転軸体2を構成し、その外面に曲げ加工が施された切断刃ブランク18を溶接する回転刃の製造方法によれば、スパイラル刃を切断要素とする従来の回転刃に比べて、回転刃1の構成部品点数を削減できる。また、複数のディスク5を軸本体4に圧嵌固定して回転軸体2を構成するので、構造強度に優れた回転軸体2をより少ない手間で形成でき、全体として回転刃1の製造に要するコストを削減できる。
上記の回転刃の製造方法において、切断刃ブランク18を形成する工程では、切刃39を備えた金属製のシート状ブランク17にロール加工を施して切断刃ブランク18を円筒状に形成することができる。また、回転刃ブランク19を形成する工程では、切断刃ブランク18を回転軸体2に外嵌し、ディスク5に溶接することができる。このように、切断刃ブランク18を1個の円筒体で構成すると、回転刃の構成部品点数を減らすことができ、回転刃1の製造に要するコストをさらに削減できる。
上記の回転刃の製造方法においては、軸本体4はマルテンサイト系の鋼材で形成し、ディスク5はオーステナイト系の鋼材で形成し、切断刃ブランク18はマルテンサイト系の鋼材で形成することができる。仮組み工程よりも以前に、軸本体4に焼き入れ処理を施しておき、焼き入れされた軸本体4にディスク5を挿通して仮組みを行う。さらに、回転刃ブランク19に焼入れ処理を施す工程を付加する。
上記のように、焼き入れ処理が施された軸本体4にディスク5を仮組みすると、軸本体4の表面の硬度を高めて信頼性に優れた回転軸体2を形成できる。また、軸本体4は2度焼き入れ処理されるので、その表面の硬度をさらに高めることができる。さらに、表面硬度が高められたマルテンサイト系の軸本体4に対して、軸本体4より硬度が低いオーステナイト系のディスク5を圧嵌するので、両者4・5を圧嵌する際に各ディスク5を所定位置に確実に固定できる。回転刃ブランク19の全体に焼き入れ処理を施すので、切断刃3の強度を向上できる。オーステナイト系のステンレス鋼材で形成したディスク5は、焼入れしても表面が硬化せず、熱膨張が少ない。そのため、切断刃ブランク18をディスク5に溶接するときのディスク5の熱膨張を小さくでき、切断刃3とディスク5との溶接面に熱負荷がかかりにくく、溶接歪が少なくてすむ。溶接後に再度熱処理を施すので、溶接時の内部ひずみを緩和できる。
上記の回転刃の製造方法においては、焼き入れ処理が施された回転刃ブランク19に研削処理を施して仕上げる工程を付加することができる。このように、焼入れ後の回転刃ブランク19に研削処理を施すと、回転刃1の外周面の直径寸法と、真円度と、表面粗さとを所定の状態に仕上げることができる。
図18および図19は、かしめ突起6の構造を変更した別の実施例を示す。図18においては、かしめ突起6を、中心軸方向に分離形成した5個の突起要素6aで構成した。また、図19においては、かしめ突起6を、中心軸方向に連続する長いリブ状の突起でかしめ突起6を形成した。この場合には、ディスク5を固定位置まで挿通して、逃げ溝8とかしめ突起6とが嵌まり合う状態のままで、ディスク5と軸本体4を周方向へ相対回転させて両者4・5を一体化する。
図20および図21は、かしめ突起6の形成法を変更した別の実施例を示す。図20においては、可動型21に設けた直角の切刃23を軸本体4の周面に食い込ませて、かしめ突起6を食込み跡27の両側に形成するようにした。この場合のディスク5の逃げ溝8の周方向の長さは、想像線で示すように一対のかしめ突起6を同時に挿通できる大きさにすることができる。図21においては、可動型21に設けた楔状の一対の切刃23を、軸本体4の周面に同時に食い込ませて、かしめ突起6を一対の食込み跡27の外側方と、一対の食込み跡27の間の3個所に形成するようにした。この場合のディスク5の逃げ溝8の周方向の長さは、想像線で示すように一対のかしめ突起6を同時に挿通できる大きさにすることができる。
以上のように構成した回転刃1を、ロータリー式の電気かみそりの内刃に適用した実施例を図22および図23に示す。図22において電気かみそりは、本体部51と、本体部51で支持されるヘッド部52と、本体部51に装着される外枠53と、本体部51の後面側に配置されるきわ剃りユニット(図示していない)などで構成する。外枠53は電気かみそりの装飾性を向上するために設けてあり、本体部51と協同してグリップを構成する。外枠53の一側上部には、モーター62への通電状態をオン・オフするスイッチボタン54が設けてある。本体部51の内部には、2次電池55や回路基板56が組み込んである。回路基板56には、先のスイッチボタン54で切り換えられるスイッチや表示灯57用のLED、および制御回路や電源回路を構成する電子部品などが実装してある。
ヘッド部52には、外刃60と回転刃(内刃)1とからなるメイン刃が設けてあり、さらに回転刃1を回転駆動するモーター62と、モーター62の回転動力を回転刃1に伝動する駆動構造などが設けてある。モーター62はヘッドフレーム65の下面に固定されて、本体部51の上部内面に収容してある。駆動構造は一群のギヤトレイン63で構成してあり、モーター62の縦軸周りの回転動力を横軸周りの回転動力に変換して回転刃1に伝動する。回転刃1は図23において矢印で示す向き(反時計回転方向)に回転駆動される。外刃60は、エッチング法あるいは電鋳法で形成されるシート状の網刃からなり、その前後縁が外刃ホルダー64で支持されて、逆U字状に保形してある。図23には、電鋳法で形成した外刃60を示しており、符号67は外刃60の切刃である。ヘッド部52は、本体部51で上下に移動可能に支持されており、両者1・2の間は防水パッキンでシールしてある。
外刃ホルダー64は、ヘッドフレーム65に対して着脱自在に装着されて、図示していないロック構造で分離不能にロック保持してある。ヘッドフレーム65に設けた左右一対のロック解除ボタン66を同時に押し込み操作すると、ロック構造がロック解除されて、外刃ホルダー64をヘッドフレーム65から取り外して、回転刃1を露出させることができる。この状態で、ヘッドフレーム65の上面や、回転刃1に付着した毛屑を水洗い清掃できる。
以上のように、本発明に係る回転刃1をメイン刃の内刃として適用すると、十数個のスパイラル刃を切断要素とする従来の内刃に比べて、回転刃1の加工に要する手間を省いて、全体構造を簡素化しコストを削減できる。また、リブ状の第1・第2の両小刃11・12の一群を切断要素とするので、切刃39の合計長さを増加しながら、両小刃11・12の周囲に形成される刃穴13内へひげを効果的に導入して効率よくひげを切断できる。スパイラル刃を切断要素とする従来の内刃と同様に、ひげをシャープに引き切りできる利点もある。水洗い洗浄時には、開口面積が大きな刃穴13から洗浄水を抵抗なく導入して、切断刃3の内部に入り込んだ毛屑を洗浄水と共に洗い出すことができる。したがって、毛屑が切断刃3の内面に残留するのを解消して、回転刃1の内部を衛生的な状態に維持できる。
図24は回転刃の別の実施例を示す。そこでは、3個の切断刃ブランク18を回転軸体2に溶接して回転刃ブランク19を構成する。切断刃ブランク18は、ステンレス板材にエッチング加工を施してシート状ブランク17を形成し、このシート状ブランク17にロール加工(塑性加工)を施して、断面が部分円弧状となるように形成してある。3個の切断刃ブランク18を回転軸体2に外接し、断面が半円状の治具で切断刃ブランク18を抱持してディスク5の刃受面9に密着させる。この状態で、切断刃ブランク18をレーザー溶接機でディスク5に溶接することにより、円筒籠状の回転刃ブランク19が得られる。
図25は回転刃の別の実施例を示す。そこでは、ステンレス板材に打抜き加工を施して、図25(b)に示すように一群の刃穴85を備えた1次ブランク86を形成する。次ぎに、1次ブランク86に塑性加工を施して、断面がY字状の小刃87の一群を備えた2次ブランク88を形成する。小刃87の外面には鋭角の切刃89と逃縁90とが形成される。得られた2次ブランク88にロール加工(塑性加工)を施して、円筒状の切断刃ブランク18、あるいは図24で説明した部分円弧状の切断刃ブランク18を形成する。以後は、切断刃ブランク18を回転軸体2に外接して、先に説明したのと同様にして溶接する。
図26は回転刃1を適用した電気かみそりの別の実施例を示す。そこでは、回転刃1の周囲に、回転刃1の食い込み量を規制するガード体70を設けて、これら両者1・70をモーター動力で回転駆動するようにした。ガード体70はコイルばね状に形成してあり、コイル部を回転刃1の周面に巻き付けて、その両端が回転刃1に固定してある。このように、本発明の回転刃1は、外刃を備えていない電気かみそりにも適用できる。
図27ないし図29は、回転刃1を電気かみそり以外の小型電気機器に適用した実施例を示す。図27は、回転刃1を爪切りに適用した実施例である。爪切りは、グリップを兼ねる本体部71の一端に円筒状のヘッド部72を設け、その内部にヘッド部72の筒軸心の回りに回転する回転刃1を配置して、本体部71に収容したモーター73で回転刃1を回転駆動するようにした。符号74は2次電池、符号75はモーター73を起動し、あるいは停止するためのスイッチボタンである。ヘッド部72の筒周壁には半円状の切断窓76が開口してあり、この窓76を介して回転刃1がヘッド部72の外面に露出させてある。爪を切断する場合には、回転駆動している回転刃1を爪の先端に押し付けて、爪を少しずつ削りとる。
図28は、回転刃1を毛玉取り器に適用した実施例である。毛玉取り器は、グリップを兼ねる本体部71の一端に円筒状のヘッド部72を設け、その内部にヘッド部72の筒軸心の回りに回転する回転刃1を配置して、本体部71に収容したモーター73で回転刃1を回転駆動するようにした。符号74は2次電池、符号75はモーター73を起動し、あるいは停止するためのスイッチボタンである。ヘッド部72の筒周壁には部分円弧状の切断窓76が開口してあり、この窓76を介して外刃60がヘッド部72の外面に露出させてある。毛玉は外刃60の刃穴から導入されて、外刃60の内面に摺接する回転刃1で切断される。この場合の外刃60および回転刃1は、爪切りの回転刃1に比べて軸心方向の長さが充分に大きくしてあり、したがって、回転刃1のニット生地に対する接触面積をより大きくして、毛玉を効果的に除去できる。
図29は、回転刃1を角質除去器に適用した実施例である。角質除去器は、グリップを兼ねる本体部71の一端にアーチ状のヘッド部72を設け、その内部に本体部71の機体中心軸と直交する軸回りに回転する回転刃1を配置して、本体部71に収容したモーター73で回転刃1を回転駆動するようにした。符号74は2次電池、符号75はモーター73を起動し、あるいは停止するためのスイッチボタンである。ヘッド部72の周壁には切断窓76が切り欠き形成してあり、この窓71を介して回転刃1がヘッド部72の外面に露出させてある。角質を除去する場合には、回転駆動した状態の回転刃1を、かかとなどの角質部分に押し付けて角質を少しずつ削りとる。
上記の実施例以外に、回転刃1は、断面が部分円弧状の複数個の切断刃ブランク18を回転軸体2のディスク5に溶接して構成することができる。また、回転軸体2は、軸本体4と、その両端寄りに固定した少なくとも2個のディスク5とで構成することができる。かしめ突起6は、軸本体4の周面にステーキング加工を施して形成するのがコストが少なくて済む点で好ましいが、その必要はなく、転造加工や切削加工で形成することができる。
ディスク5と軸本体4を中心軸方向へ相対移動させて、かしめ突起6と装填穴7を圧嵌する回転軸体2においては、軸本体4を丸軸で形成する必要はなく、例えば多角形断面状の軸や、楕円状の軸体で軸本体4を形成することができる。ディスク5は軸本体4に対して1個ずつ圧嵌固定することができ、その場合には、ディスク5を中心軸方向と周方向へ交互に移動させて軸本体4に固定することができる。
本発明に係る回転軸体2は、回転刃以外に適用できる。例えば、周面にギヤ歯が形成してある複数のディスク5を軸本体4に圧嵌固定して回転軸体2を構成し、回転軸体2で回転動力を伝動することができる。さらに、周囲にカム面を備えた複数のディスク5を軸本体4に圧嵌固定して回転軸体2を構成し、回転軸体2を回転駆動してカムフォロアを往復操作することができる。