(第1実施例) 図1ないし図11は、本発明に係る回転刃をロータリー式の電気かみそりの内刃に適用した実施例を示す。図2において電気かみそりは、本体部1と、本体部1で支持されるヘッド部2と、本体部1に装着される外枠3と、本体部1の後面側に配置されるきわ剃りユニット(図示していない)などで構成する。外枠3は電気かみそりの装飾性を向上するために設けてあり、本体部1と協同してグリップを構成する。外枠3の一側上部には、モーター12への通電状態をオン・オフするスイッチボタン4が設けてある。本体部1の内部には、2次電池5や回路基板6が組み込んである。回路基板6には、先のスイッチボタン4で切り換えられるスイッチや表示灯7用のLED、および制御回路や電源回路を構成する電子部品などが実装してある。
ヘッド部2には、外刃10と、横軸まわりの一方向に回転する内刃(回転刃)11とからなるメイン刃が設けてあり、さらに内刃11を回転駆動するモーター12と、モーター12の回転動力を内刃11に伝動する駆動構造などが設けてある。モーター12はヘッドフレーム15の下面に固定されて、本体部1の上部内面に収容してある。駆動構造は一群のギヤトレイン13で構成されて、モーター12の縦軸周りの回転動力を横軸周りの回転動力に変換して内刃11に伝動する。内刃11は図3において矢印で示す向き(反時計回転方向)に回転駆動される。外刃10は、エッチング法あるいは電鋳法で形成されるシート状の網刃からなり、その前後縁が外刃ホルダー14で支持されて、逆U字状に保形してある(図3参照)。図3には、電鋳法で形成した外刃10を示しており、符号17は外刃10の切刃である。ヘッド部2は、本体部1で上下に移動可能に支持されており、両者1・2の間は防水パッキンでシールしてある。
外刃ホルダー14は、ヘッドフレーム15に対して着脱自在に装着されて、図示していないロック構造で分離不能にロック保持してある。ヘッドフレーム15に設けた左右一対のロック解除ボタン16を同時に押し込み操作すると、ロック構造による係合が解除されて、外刃ホルダー14をヘッドフレーム15から取り外して、内刃11を露出させることができる。この状態で、ヘッドフレーム15の上面や、内刃11に付着した毛屑を水洗い清掃できる。
図3および図4において内刃11は、3個の刃本体20と、刃本体20を支持する刃支持体21と、内刃軸(回転軸)22とで円筒籠状に構成する。刃本体20は、基本的にステンレス板材(金属板材)にエッチング加工を施し、さらにプレス加工を施して断面を部分円弧状に形成するが、その詳細については後述する。図4に示すように刃本体20は、内刃11の回転中心に沿う長辺部23と、内刃11の周方向に沿う短辺部24とを備えた長方形状に形成されており、短辺部24の側が部分円弧状に折り曲げてある。
図5に示すように、刃本体20の面壁には第1小刃(小刃)25の一群と、第2小刃(小刃)26の一群と、両小刃25・26で囲まれる菱形の刃穴27の一群と、これらの周囲を囲む周枠とが形成してある。長辺部23側の周枠を符号28で、短辺部24側の周枠を符号29で示している。長辺部23側の周枠28の幅h1を0.55mmとするとき、短辺部24側の周枠29の幅h2を0.45mmとして、不等式(h1>=h2、好ましくはh1>h2)を満足できるようにした。第1小刃25の一群と、第2小刃26の一群とは、それぞれ内刃11の回転中心に対して互いに逆向きに傾斜する状態で形成してあり、これにより刃本体20の全体がエキスパンドメタル状の外観を呈している。第1小刃25および第2小刃26の隣接ピッチは概ね2.5mmとした。
第1小刃25の傾斜角度θ1が内刃11の回転中心を基準にして13.4度傾けてあるのに対して、第2小刃26の傾斜角度θ2は内刃11の回転中心を基準にして23.4度傾けてあり、各小刃25・26の周囲端部は各周枠28・29に連続している。第1小刃25は直線リブ状に連続して形成する。第2小刃26は隣接する第1小刃25どうしを階段状に繋ぐように交差配置してあり、これにより第2小刃26の第1小刃25との交差部分は全て三叉路状となる(図5参照)。因みに、第2小刃26を第1小刃25と同様に直線リブ状に配置する場合には、両小刃25・26の交差部分は四叉路状となる。
上記のように、刃本体20のシート面に第1小刃25の一群と、第2小刃26の一群をエキスパンドメタル状に設けると、スパイラル刃を切断要素とする従来の内刃に比べて、切刃の合計長さを増強でき、しかも傾斜方向が異なる両小刃25・26でくせ毛を起しながら交互に切断できる。さらに、網刃構造の従来の内刃に比べて、刃穴27の開口面積が格段に大きくなるので、スパイラル刃を切断要素とする内刃と同様に、ひげを効果的に導入してひげ切断を効果的に行なうことができる。
図4において刃支持体21は、5個の円盤状の刃受部31と、刃受部31の周面より回転中心側へ凹む毛屑受面32とを交互に設け、両側端の刃受部31の側面中央部から横向きに突設される内刃軸22とを一体に備えたステンレス製(金属製)の旋削品からなる。毛屑受面32は、部分円弧を回転中心の回りに回転して得られる凹曲面で形成されており、その外縁が刃受部31の円形周縁に連続している。刃本体20を刃支持体21の刃受部31に固定した状態において、刃本体20と毛屑受面32との間には毛屑受容空間33が周回状に形成される(図1参照)。刃受部31および内刃軸22の周面は滑らかに仕上げてあり、内刃軸22の一方の軸端には、ギヤトレイン13の終段ギヤと噛み合う内刃ギヤ34が固定される(図2参照)。
図1に示すように、刃受部31の直径をD1(9.5mm)とし、毛屑受面32の最小直径をD2(5.0mm)とし、内刃軸22の直径をD3(2.0mm)とするとき、三者の関係は不等式(D1>D2>D3)を満足するように設定する。刃受部31の幅h3(図1参照)は1.0mmとして、先の周枠29の幅h2との関係が、不等式(h2<=h3、好ましくはh2<h3)を満足できるようにしてある。
次に内刃11の製造方法の詳細を説明する。内刃11は、熱処理(焼入れ)が施されていない生材であるステンレス板材(金属板材)にエッチングや打ち抜きなどの孔開け加工、本実施例ではエッチングによる孔開け加工を施して、刃本体20となる第1ブランク37を形成する工程(エッチング工程)と、第1ブランク37にプレス加工を施して、部分円弧状に折り曲げられた第2ブランク38を形成する工程(プレス工程)と、その後も依然として熱処理(焼入れ)が施されていない生材状態である第2ブランク38を、これもまた熱処理(焼入れ)が施されていない生材である刃支持体21に溶接して、内刃11となる第3ブランク39を形成する工程(溶接工程)と、この第3ブランク39に熱処理を施す工程(熱処理工程)と、熱処理が済んだ第3ブランク39に研削加工を施して切刃47を形成する工程(研削工程)とを経て形成する。各工程の詳細を以下に説明する。
(エッチング工程)
エッチング工程では、厚みが0.3mmのステンレス板材36の表裏両面にエッチング処理を施して、第1小刃25や第2小刃26などを形成する。詳しくは、図9に示すようにステンレス板材36の表裏両面にレジスト膜40を形成したのち露光し、露光部を除去して、非露光部に囲まれる板材表面をエッチング液で蝕刻する。図6に示すように、エッチング工程においては、多数個の第1ブランク37を同時に形成して、その短辺部24に設けられた橋絡部49を切断して、ステンレス板材36から分離する。
エッチング処理を施すことにより、図10に示す断面形状の第1小刃25および第2小刃26が形成される。第1小刃25および第2小刃26は、外面の切断面43と、内面のベース面44と、これら両者43・44の端縁間に形成される第1抉り面45、および第2抉り面46とで、5個の隅部を備えた異形断面状に形成してある。第1抉り面45は、切断面43とベース面44との端縁間を抉る1個の内凹み面で形成してあり、切断面43と第1抉り面45とによって、切断面43の回転方向上手側に切刃47が形成される。また、切断面43と第2抉り面46とによって切断面43の回転方向下手側に逃げ縁48が形成される。第1抉り面45は、回転方向上手側にあり、第2抉り面46は回転方向下手側にあることになる。
切刃47の切刃角度をより小さくするために、ベース面44の形成位置を、切断面43の形成位置よりも回転方向下手側へ大きくずらしている。この実施例では、刃本体20の周方向における位相位置を想定するとき、ベース面44の回転方向上手側の前縁59の位相位置と、逃げ縁48の位相位置とが略一致するように、ベース面44の形成位置を、切断面43の形成位置に対して回転方向下手側へずらすようにした。なお、ベース面44の回転方向上手側の前縁59の位相位置より回転方向下手側に、逃げ縁48の位相位置を設定することもできる。こうすれば切刃47側(刃先側)の強度は向上する。この実施例については後述する。第2抉り面46は、逃げ縁48から回転下手側へ向かって内凹み状に下り傾斜する切断物(毛屑)落下用の傾斜面46aと、傾斜面46aとベース面44の端縁58との間を繋ぐ回転刃の径方向の内側にある内凹み状の凹み面46bとで、回転方向上手側への傾斜姿勢(前傾姿勢)の逆く字状(反対方向からみればく字状)に形成してある。このように、二つの凹曲面で第2抉り面46を形成することにより、小刃(刃部)25・26における切刃47側(外側)の断面積に比べベース面44側(内側)の断面積を十分に確保して小刃強度を向上できる。つまり、傾斜面46aを設けることにより、第1抉り面45と傾斜面46aとの間の最小の肉厚t3を、第1抉り面45と凹み面46bとの間の最小の肉厚t4、言い換えればベース面44側の肉厚t4より小さくしている。これにより、小刃強度の向上とともに切断面43および切刃47を含む切断部分にばね性を付与できる。なお、第1抉り面45と傾斜面46aとの間の最小の肉厚t3は、全厚Tや、切断面43の幅b1や、ベース面44の幅b2よりも小さく設定されている。また、傾斜面46aと凹み面46bが交差する部分は鋭角の交差部53となっており、交差部53よりベース面44の端縁58が回転方向上手側に設けられている。交差部53から回転方向上手側へ向かって内凹み状となりながら端縁58に繋がって凹み面46bが形成されている。凹み面46bを内凹み状に形成しているので、交差部53から落下した切断物(電気かみそりであればひげ屑)が切断面43側(外方)に向けて戻り難い。さらに、傾斜面46aと凹み面46bが交差する部分は鋭角の交差部53となっており、交差部53よりベース面44の端縁58が回転方向上手側に設けられているため、交差部53から落下した切断物(電気かみそりであればひげ屑)が切断面43側(外方)に向けてより一層戻り難い。
上記のように形成した第1小刃25および第2小刃26は、全厚Tを0.3mmとするとき、両小刃25・26の全幅Bは0.6mm、切断面43の幅b1は0.25mm、ベース面44の幅b2は0.35mmとして、不等式(b1<=b2、好ましくはb1<b2)を満足するようにした。また、切断面43側の傾斜面46aの厚みt1を0.15mmとし、ベース面44側の下凹み面46bの厚みt2を0.15mmとし、第1抉り面45と傾斜面46aとの間の肉厚t3を0.2mmとして、不等式(T>t3)、(t1<=t2、好ましくはt1<t2)を満足するようにした。第1抉り面45と傾斜面46aとの間の肉厚t3を0.2mmとし、第1抉り面45と凹み面46bとの間の肉厚t4を0.33mmとして、不等式(t3<t4)を満足するようにした。また、小刃25・26の全幅Bと全厚Tの設定は、不等式(T<=B、好ましくはT<B)として、切断物を切断するときに小刃25・26に切断負荷がかかっても、小刃25・26が変形しにくくなるように回転方向に長い形態としている。なお、小刃25・26が、外面の切断面43と、内面のベース面44と、これら両者43・44の端縁間に形成される第1抉り面45、および第2抉り面46とを有しているものにおいて、小刃25・26の全幅Bと全厚Tの設定を、不等式(T<=B、好ましくはT<B)として、切断負荷時の変形を防止でいる構造であれば、必ずしも傾斜面46aが形成される必要はない。
(プレス工程)
図7に示すように、プレス工程では、第1ブランク37を固定金型51と可動金型52を用いて、部分円弧状に折り曲げて第2ブランク38を形成する。得られた第2ブランク38は、図8に示すように、短辺部24の側の内面の半径R1が、刃受部31の円形周面の半径R2より僅かに小さく設定してある。長辺部23の長さは、両側端の刃受部31の左右長さに一致している。先に説明したように、短辺部24側の周枠29の幅h2は、長辺部23側の周枠28の幅h1より小さく設定してあるので、プレス加工を行なうときの周枠29の変形応力を小さくできる。したがって、第2ブランク38を正確に部分円弧状に形成することができる。また、熱処理されていない柔らかな第1ブランク37をプレス加工するので、熱処理された素材において避けられないスプリングバックによる形状のばらつき幅を小さくして、第2ブランク38の曲げ加工を簡便に、しかも確実に行なえる。
(溶接工程)
溶接工程においては、図8(a)に示すように、3個の第2ブランク38をステンレス材(金属材)からなる刃支持体21の刃受部31にあてがって位置決めする。具体的には、3個の第2ブランク38の周面を3分割された部分円弧状の治具55で抱持して弾性変形させ、図8(b)に示すように第2ブランク38の内面を刃受部31の周面に密着保持する。この状態で、第2ブランク38の各周枠28・29をレーザー溶接機56で溶接する。
上記のように、第2ブランク38をその変形応力に抗して刃受部31の周面に密着させた状態で溶接を行なうと、プレス工程における第2ブランク38の形状のばらつきに影響されることなく、溶接時の第2ブランク38の内面全体を刃受部31の周面に密着できる。したがって、溶接後の第3ブランク39における、刃本体20の真円度のばらつきの幅を小さなものとすることができる。また、真円度のばらつきが小さい分だけ、後述する研削加工に要する手間と時間を節約して、回転刃の加工コストを削減できる。
レーザー溶接機56で溶接を行なうことにより、ごく短い時間ではあるが溶接部57は2000℃まで加熱されて溶融し、図11(a)に示すように、溶融部分は刃受部31の肉壁内にまで達する。また、刃本体20の周面には、外膨らみ状に盛り上がる溶接部57が形成される。このとき、一群の溶接部57を図5に符号w1からw10で示すように、長辺部23の中央部から円弧辺部(短辺部)24の側へ向かって順に形成することにより、刃本体20が溶接時の内部応力によって刃受部31の周面から浮き離れるのを防止して、刃本体20を刃受部31に密着させることができる。また、直線辺部(長辺部)23上に溶接部57の溶接位置(w1〜w8)を設けた場合は、この後の熱処理工程の際に刃本体20の直線辺部(長辺部)23が歪んで波打つ状態となっていた。そこで本実施例では、円弧辺部(短辺部)24における溶接部57の溶接位置(w5・w6・w9・w10)を、直線辺部(長辺部)23における溶接部57の溶接位置(w1〜w4、w7〜w8)よりも、円弧辺部(短辺部)24の幅方向中央寄りに位置させることにより、この後の熱処理工程の際の刃本体20の歪みを防止できる円筒籠状の第3ブランク39を形成することができる。
一群の溶接部57を、直線辺部23の中央部から円弧辺部(短辺部)24の側へ向かって順に形成する溶接パターンは、上記の溶接パターンに限定するものではなく、以下の溶接パターン2、および溶接パターン3で行なうことができる。図5に示す溶接位置符号を(w1〜w10)を引用すると、溶接パターン2では、w1・w3・w5・w7・w9・w2・w4・w6・w8・w10の順に溶接部57を形成する。また、溶接パターン3では、w1・w3・w5・w2・w4・w6・w7・w9・w8・w10の順に溶接部57を形成する。溶接パターンは、溶接部57の総数の変化によっても変更すべきであるので、溶接パターン1〜3以外の溶接パターンを採用することもある。要は、刃本体20が溶接時の内部応力によって刃受部31の周面から浮き離れるのを防止できる溶接パターンであればよい。
(熱処理工程)
熱処理工程においては、円筒籠状の第3ブランク39を約1000℃にまで加熱し、その状態を所定時間維持したのち、水および加熱された油で順に冷却して焼き入れを行なう。これにより、刃本体20の金属組織をマルテンサイト化してその硬度を増強できる。第3ブランク39を加熱する過程では、レーザー溶接時に溶接部57の周辺部で生じた熱による内部歪みを除去できる。
(研削工程)
研削工程では、円筒籠状の第3ブランク39の周面に粗研削加工と仕上げ研削加工とを順に施して、刃本体20の周面の真円度を向上し、さらに切刃47をシャープに仕上げる。粗研削加工では、図11(b)に示すように、溶接部57の膨出表面を除去し、同時に刃本体20の周面を研削する。また、仕上げ研削加工では、刃本体20の周面の表面荒さが小さくなるように仕上げ研削を行なって、内刃11の外周面の直径寸法と、真円度と、表面粗さとを所定の状態に仕上げる。このように、腐食しやすい溶接部57の膨出表面を除去すると、溶接部57の腐食や割れなどを一掃して刃物の耐久性を向上できる。なお、内刃11の真円度に対する要求仕様が低い場合には、研削工程は省略することができる。
このように、プレス加工後に熱処理(焼入れ)を行なうことにより、熱処理されていない柔らかな状態の第1ブランク37をプレス加工できるので、第2ブランク38の加工を簡便にしかも正確に行なえる。また、依然として熱処理(焼入れ)が施されていない第2ブランクと、同じく熱処理が施されていない刃支持体21とを溶接して一体化した第3ブランク39に対して熱処理を施すことにより、硬度を増強しながら溶接部分の応力腐食や割れを防止でき、刃物の耐久性を向上できる。
一連の製造工程を経て得られた内刃11を図1に示す。内刃11は、一群の小刃25・26を備えた刃本体20と、刃支持体21とで、全体として円筒籠状になっている。このように、内刃11を円筒籠状に構成すると、十数個のスパイラル刃を切断要素とする従来の内刃に比べて、内刃11の全体構造を簡素化してその製造コストを削減できる。また、リブ状の第1・第2の両小刃25・26の一群を切断要素とするので、切刃47の合計長さを増加しながら、両小刃25・26の周囲に形成される刃穴27内へひげを効果的に導入して効率よくひげを切断できる。スパイラル刃を切断要素とする従来の内刃と同様に、ひげをシャープに引き切りできる利点もある。
隣接する刃受部31の間に双曲面状の毛屑受面32を設けて、刃本体20の内部に周回状の毛屑受容空間33を形成するので、毛屑が堆積しやすい内隅部が毛屑受容空間33に形成されるのを解消できる。また、毛屑受面32に付着した毛屑を毛屑受面32の大径縁側へ案内して、大径縁に臨む刃穴27から排出でき、籠構造の内刃11でありながら、切断された毛屑が内刃11の内部に堆積するのを防止できる。
とくに、水洗い洗浄時には、開口面積が大きな刃穴27から洗浄水を抵抗なく導入して、刃本体20の内部に入り込んだ毛屑を洗浄水と共に洗い出すことができる。したがって、毛屑が毛屑受面32や刃本体20の内面に残留するのを解消して、内刃11の内部を衛生的な状態に維持できる。また、両側端の毛屑受容空間33においては、円弧辺部(短辺部)24側の周枠29の幅h2を刃受部31の幅h3より小さくするので、毛屑受面32で反転した洗浄水が周枠29の内縁で受け止められるのを防止して、毛屑を洗浄水と共に確実に洗い流すことができる。洗浄水が毛屑受容空間33へ流入するとき、円弧辺部(短辺部)24側の周枠29が邪魔になることもない。
双曲面状の毛屑受面32で刃受部31を支持し、刃支持体21の全体を中実構造とするので、刃支持体21の構造強度を向上できるうえ、ひげ切断時には大きな回転慣性力を発揮して、負荷の変動に伴なう内刃11の回転変動を抑止できる。また、刃支持体21に固定した刃本体20の両側端面を、刃支持体21の両側端に位置する刃受部31の側端面と面一状に配置するので、刃受部31の側端面での毛屑の堆積を解消できる。たとえば、刃受部31の側端面が刃受部31の側端面より側外方へ突出している場合には、突出縁と刃受部31の側端面とで形成される内隅部に毛屑が堆積するのを避けられないが、こうした事態を回避できる。
つまりその実施形態は、断面が円弧状に折り曲げられた刃本体20と、刃本体20を支持する刃支持体21と、回転軸22とを備えている円筒籠状の回転刃であって、刃本体20にはリブ状の小刃25・26と、小刃25・26間に形成される刃穴27とが設けられており、刃支持体21の周面には、刃本体20を受け止める刃受部31と、刃受部31の周面より回転中心側へ凹む切断物(毛屑)の受面32とが交互に設けられており、刃支持体21に固定した刃本体20と受面32との間に、受容空間33が周回状に形成してあることを特徴とする回転刃である。その効果としては、小刃25・26を備えた刃本体20と刃支持体21とで、回転刃11を全体として円筒籠状に形成するので、十数個のスパイラル刃を切断要素とする従来の内刃に比べて、回転刃11の全体構造を簡素化してその製造コストを削減できる。また、刃支持体21に刃受部31と、刃受部31より回転中心側へ凹む受面32とを交互に設けて、刃本体20が固定される刃受部31を受面32で支持するので、刃受部31の構造強度を増強しながら、刃支持体21の強度を向上できる。さらに、回転中心側へ凹む受面32を設けることによって、刃本体20と受面32との間に周回状の受容空間33を形成するので、切断された毛屑が小刃25・26の切刃47の近傍に付着し、あるいは堆積するのを確実に防止できる。
その他の実施形態としては、受面32が凹曲面で形成されており、受面32の外縁が円形の刃受部31の円形周縁に連続している回転刃である。これにより、受面32を凹曲面で形成し、その外縁を刃受部31の円形周縁に連続させると、毛屑が堆積しやすい内隅部が受容空間33に形成されるのを一掃して、刃本体20の内面や受面32の周面における毛屑の堆積を解消できる。また、受面32に付着した毛屑を毛屑受面32の大径縁側へ案内して、大径縁に臨む刃穴27から排出できるので、籠構造の回転刃11でありながら、切断された毛屑が回転刃11の内部に堆積するのを防止できる。とくに、回転刃11を水洗い洗浄可能とする場合には、刃穴27から導入した洗浄水で毛屑を洗い流すことができるので、円筒籠状の回転刃11の内部の清掃を効果的に行なうことができる。また、刃受部31の直径をD1、毛屑受面32の最小直径をD2、回転軸22の直径をD3とするとき、刃受部31と受面32と回転軸22との三者が、不等式D1>D2>D3を満足するように構成してある回転刃である。これにより、刃受部31と受面32と回転軸22との三者の関係寸法が不等式D1>D2>D3を満足するように構成してあると、刃支持体21の全体の強度を十分に確保しながら、回転刃11が駆動されるときの回転慣性力を大きくできる。とくに、刃支持体21が金属材で形成してある場合には、回転刃11の回転慣性力を大きくでき、したがって、使用状態における切断負荷の変動に伴なう回転刃11の回転変動を抑止して、切断動作を円滑化できる。また、回転軸22に比べて、直径D2が大きな受面32における周速度を増加できるので、受面32に付着する毛屑を効果的に振り払いながら回転刃11の外へ排出できる。
また、刃本体20の両側端に位置する周枠29の幅h2が、刃支持体21の両側端に位置する刃受部31の幅h3より小さく設定してある回転刃である。これにより、刃本体20の両側端に位置する周枠29の幅h2を、刃支持体21の両側端に位置する刃受部31の幅h3より小さく設定すると、回転刃11の水洗い洗浄を簡便に、しかも手早く行なえる。これは、刃穴27から流入した洗浄水が受面32で反転したのち、周枠29の内縁で受け止められるのを防止して、毛屑を洗浄水と共に確実に洗い流すことができるからである。洗浄水が受容空間33へ流入するとき、短辺部24側の周枠29が邪魔になることもない。また、刃本体20の両側端面が、刃支持体21の両側端に位置する刃受部31の側端面と面一になっている回転刃である。これにより、刃本体20の両側端面を、刃支持体21の両側端に位置する刃受部31の側端面と面一にすると、刃受部31の側端面に毛屑が堆積しやすい内隅部が形成されるのを避けて、刃支持体21の側端における毛屑の堆積を解消できる。
また、刃本体20が、回転刃11の回転中心に沿う長辺部23と、回転刃11の周方向に沿う短辺部24とを備えた長方形状に形成されており、短辺部24側の周枠29の幅h2が、長辺部23側の周枠28の幅h1より小さく設定してある回転刃である。これにより、刃本体20を長方形状に形成し、その周方向に沿う短辺部24側の周枠29の幅h2を、長辺部23側の周枠28の幅h1より小さく設定すると、プレス加工を行なうときの周枠29の変形応力を小さくすることができる。したがって、円弧状に形成される刃本体20の曲げ加工を容易にしかも正確に行なうことができる。また、刃本体20に、回転刃11の回転中心に対して傾斜する第1小刃25と、第1小刃25と交差する第2小刃26が設けられており、第2小刃26が、回転中心に対して第1小刃25とは逆向きに傾斜されて、第1小刃25の補強機能とひげ切断機能とを同時に発揮できる回転刃である。これにより、刃本体20に傾斜する第1小刃25を設け、さらに第1小刃25とは逆向きに傾斜する第2小刃26を設けると、切刃47の合計長さをさらに増強して、ひげや毛玉の切断を両小刃25・26によって効率よく行なえる。また、第2小刃26を第1小刃25と交差配置することにより、第1小刃25を第2小刃26で補強して刃本体20の構造強度を向上でき、全体として、切断効率が高く、頑丈な刃本体20を備えた回転刃11が得られる。
さらに、第1小刃25の回転中心に対する傾斜角度θ1と、第2小刃26の回転中心に対する傾斜角度θ2とが異ならせてあり、第2小刃26が、直線リブ状に配置した第1小刃25に対して、第1小刃25との交差部分が三叉路状になる状態で交差配置してある回転刃である。これにより、第1小刃25の傾斜角度θ1と第2小刃26の傾斜角度θ2とが異ならせてあると、各小刃25・26ごとに、異なる方向へ向いているひげや毛を捕捉して切断できる。たとえば、第1小刃25で捕捉できなかったひげや毛を、第2小刃26で捕捉して切断することができる。また、第2小刃26を、第1小刃25との交差部分が三叉路状になる状態で交差配置することにより、両小刃25・26の周方向の隣接間隔や、各小刃25・26出現度合を多様に変化させることができる。したがって、ひげや毛を両小刃25・26で的確に捕捉して効果的に切断できる。
上記したエッチング工程は、プレス工程に変更できる。すなわち、図20(a)〜(c)に示すように、熱処理(焼入れ)が施されていない生材であるステンレス板材(金属板材)82に対して打ち抜きによる孔開け加工を施して、図20(b)に示すようにブランク83を形成する。ブランク83には、刃穴27と四角形断面状の小刃25の前段体84とが形成してある。次に、ブランク83に塑性加工を施して、図20(c)に示すように、前段体84を、外面の切断面43と、内面の非切断面44と、これら両者43・44の端縁間に形成される第1抉り面45、および第2抉り面46により断面杯状に形成して、鋭角の切刃47と逃げ縁48を備えた小刃25を形成する。これにより複数の小刃25を備えた第1ブランク37が得られる。次に、図20(d)に示すように第1ブランク37にプレス加工を施して、全体が外突湾曲状(周方向の曲率が同じ断面円弧状)に塑性変形された第2ブランク38を形成する。非切断面44の幅中心は切断面43の幅中心より第2抉り面46側に寸法Lだけ偏っている。つまり、非切断面44の幅中心を切断面43の幅中心より回転方向下手側にずらして、切刃47の切刃角度θ1を逃げ縁48のエッジ角度θ2より小さく形成するので、切刃48の切れ味をシャープにできる。以下、上記と同じように、その後も依然として熱処理(焼入れ)が施されていない生材状態である第2ブランク38を、これもまた熱処理(焼入れ)が施されていない生材である刃支持体21に溶接して、内刃11となる第3ブランク39を形成する工程(溶接工程)と、この第3ブランク39に熱処理を施す工程(熱処理工程)と、熱処理が済んだ第3ブランク39に研削加工を施して切刃47を形成する工程(研削工程)とを経て形成する。寸法表示していないが、本実施例においても小刃25・26の全幅Bと全厚Tの設定は、不等式(T<=B、好ましくはT<B)に設定されている。
このプレス工程の実施例においても、エッチング工程のときと同様に、多数個の第1ブランク37を同時に形成して、その短辺部に設けられた橋絡部49を切断して、ステンレス板材から分離することができる。
図10に示す断面形状の第1小刃25および第2小刃26を備えた内刃(回転刃)11は、次の形態で実施することができる。
回転刃11は、断面が円弧状に折り曲げられた刃本体20と、刃本体20を支持する刃支持体21とで円筒籠状に構成する。刃本体20はエッチング或いは打ち抜きによる孔開け加工により、リブ状の小刃(刃部)25・26の一群と、刃穴27の一群とを備えている。小刃25・26は、外面の切断面43と、内面のベース面44と、これら両者43・44の間に形成される第1抉り面45および第2抉り面46と、切断面43の回転方向上手側に形成される切刃47と、切断面43の回転方向下手側に形成される逃げ縁48とを備えている。切刃47は鋭角に形成されており、逃げ縁48は鈍角に形成されている。ベース面44を切断面43よりも回転方向下手側に配置して、切刃47の切刃角度をさらに先鋭化している。また、切断面43の幅b1をベース面44の幅b2と同じかそれより小さく設定する。第1抉り面45は、切刃47から回転方向下手側へ凹む1個の内凹み面で形成する。第2抉り面46は、逃げ縁48から回転下手側へ向かって内凹み状に下り傾斜する切断物(毛屑)落下用の傾斜面46aと、傾斜面46aとベース面44の端縁58との間を繋ぐ同じく内凹み状の凹み面46bとで回転方向上手側への傾斜姿勢(前傾姿勢)の逆く字状(反対方向からみればく字状)に形成する。この内凹み状に下り傾斜する傾斜面46aを形成することにより、逃げ縁48が鈍角となっている。さらに、切断面43の逃げ縁48の位置を、ベース面44の前縁59の位置と略同じに設定している。傾斜面46aと凹み面46bが交差する部分は鋭角の交差部53となっており、交差部53よりベース面44の端縁58が回転方向上手側に設けられている。傾斜面46aにより、切断された切断物を傾斜面46aに落下することができ、切断物の飛散を防止できる。さらに、切断面43に切断物(ひげ屑等)が残り難いため切れ味の低下を防止できる。第2抉り面46を、逃げ縁48から回転方向下手側へ向かって内凹み状に下り傾斜する傾斜面46aと、傾斜面46aとベース面44の端縁58との間を繋ぐ内凹み状の凹み面46bとで逆く字状に形成したことにより、傾斜面46aと凹み面46bとの交差部分(交差部53)を境にして切断された切断物を明確に分けることができるため、傾斜面46aから交差部分を乗り越えてさらに内方に落下した切断物が上方(外方)に戻り難く、より一層切断物の飛散を防止できる。
例えば、従来のように刃先側(外側)の断面積と刃先から離れた内側の断面積が略同じであれば、刃部における刃先側(外側)の強度と内側の強度が略同じとなる。切断面の摺動抵抗を減らすため刃部全体において断面積を小さくすれば、それにしたがって内側部分の強度が弱くなり、さらに全体の慣性力も弱まって切断性能に影響を来たすことになる。そこで、上記の回転刃11によれば、切刃47の切刃角度を先鋭化するとともに、小刃25・26におけるベース面44側(内側)部分の断面積を増加或いは維持でき、つまり小刃25・26におけるベース面44側(内側)部分の機械的強度を増強或いは維持しながら、切断面43の幅b1をベース面44の幅b2と同じかそれより小さく設定して、第1・第2の両小刃25・26の外刃10に対する摺接抵抗を小さくするので、回転駆動時の回転刃11の摩擦を軽減して駆動効率を向上できる。つまり、例えば、本実施例のように外刃10に摺動する回転式の内刃11であれば、外刃10との摺動面積を小さくして、内刃11を回転駆動するモーター12の負荷を減少できる。或いはその摺動抵抗により電力が余計に消費されることはなく、モーター12に電力を供給する2次電池5の容量が早期に減少することを防止できる。さらに、小刃25・26における内側部分の質量が増加或いは維持できるので、慣性力の極端な減少を可及的に防止できる。また、第2抉り面46を傾斜面46aと凹み面46bとで逆く字状に形成して、ベース面44側(内側)の断面積を十分に確保しながら、切刃47の切刃角度を先鋭化するので、シャープな切れ味を発揮できるにもかかわらず、第1・第2の両小刃25・26に作用する切断反力に対抗する小刃強度を得ることができる。しかも、第2抉り面46を逆く字状に形成することにより、第1抉り面45を形成する内凹み面と傾斜面46aとの間の肉厚t3をベース面44側の肉厚t4より小さくするので、切断面43および切刃47を含む切断部分にばね性を付与できる。つまり、十分な小刃強度を備えているにもかかわらず、しなやかな弾性を発揮できる小刃25・26を備えた回転刃(内刃)11を得ることができる。また、凹み面46bを内凹み状に形成しているので、交差部53から落下した切断物(電気かみそりであればひげ屑)が切断面43側(外方)に向けて戻り難い。さらに、傾斜面46aと凹み面46bが交差する部分は鋭角の交差部53となっており、交差部53よりベース面44の端縁58が回転方向上手側に設けられているため、交差部53から落下した切断物(電気かみそりであればひげ屑)が切断面43側(外方)に向けてより一層戻り難い。
第2抉り面46における傾斜面46aの厚みをt1、凹み面46bの厚みをt2とするとき、傾斜面46aおよび凹み面46bは、不等式(t1<=t2、好ましくはt1<t2)を満足するように形成する。傾斜面46aは、逃げ縁48から回転下手側へ向かって内凹み状に下り傾斜させる。
刃本体20の全厚の約半分かそれより上方の部分に、下り傾斜状の傾斜面46aを形成できるので、刃全体の強度を確保した状態のもとに、各小刃25・26で切断された切断物(毛屑等)を、傾斜面46aに沿って案内して、刃支持体21側へ確実に落下させることができる。
図12は本発明に係る回転刃11の別実施例を示す。図12(a)においては、回転刃11を半円状に折り曲げられた2個の刃本体20と、刃支持体21とで円筒籠状に構成するようにした。また、図12(b)においては、回転刃11を1個の刃本体20と、刃支持体21とで円筒籠状に構成するようにした。いずれの場合にも、回転刃11はステンレス板材を素材にして、先に説明した内刃と同様の加工工程を経て形成することができる。ただし、図12(b)に示す刃本体20は、エッチング処理した第1ブランク37を、ロール成形機で円筒状に成形して第2ブランク38を形成する。他は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の実施例においても同じとする。
刃支持体21は、図13(a)〜(d)に示すように構成することができる。図13(a)に示す刃支持体21は、毛屑受面32を丸軸部60と、丸軸部60から刃受部31へ向かって拡径するテーパー部61とで台形状に形成した。
図13(b)においては、刃支持体21の全体をプラスチック材を射出成形して形成し、その中心部分に、軸周面に回り止め突起63が形成してある金属製の内刃軸22をインサート固定した。この場合の刃本体20は、刃受部31に対して接着固定し、あるいは熱溶着により固定する。刃支持体21は、金属フィラーを多く含む比重の大きなプラスチック材で形成することができ、その場合には、金属製の刃支持体21と同様に、大きな回転慣性力を発揮できる。
図13(c)においては、刃支持体21を、ステンレス製の5個の支持ブロック65で構成し、各支持ブロック65に内刃軸22を挿通固定した。各支持ブロック65には刃受部31が形成してあり、隣接する支持ブロック65によって双曲面状の毛屑受面32を形成するようにした。両端の支持ブロック65が、刃受部31の一側に限って毛屑受面32を形成するのに対し、間に位置する支持ブロック65は、刃受部31の両側に毛屑受面32が形成してある。
図13(d)においては、円板状の刃受部31と丸筒状の筒軸体66を交互に隣接配置し、刃受部31および筒軸体66に内刃軸22を挿通固定して刃支持体21を構成した。筒軸体66は、金属フィラーを多く含む比重の大きなプラスチック材で形成してあり、この場合の毛屑受面32はコ字状の外郭形状となる。
図14は、本発明に係る第1小刃25および第2小刃26の断面形状の変形例を示す。そこでは、ベース面44の形成位置を、切断面43の形成位置に対して回転方向下手側へずらすようにした。また、第2抉り面46は、逃げ縁48から回転下手側へ向かって内凹み状に下り傾斜する切断物(毛屑)落下用の傾斜面46aと、傾斜面46aとベース面44の端縁58との間を繋ぐ回転刃の径方向の内側にある内凹み状の凹み面46bとで、回転方向上手側への傾斜姿勢(前傾姿勢)の逆く字状(反対方向からみればく字状)に形成してある。交差部53から回転方向上手側へ向かって内凹み状となりながら端縁58に繋がって凹み面46bが形成されている。さらに、切断面43の逃げ縁48の位置を、ベース面44の前縁59よりも回転方向下手側に位置させた。このように、ベース面44の回転方向上手側の前縁59の位相位置より回転方向下手側に、逃げ縁48の位相位置を設定したことにより、切刃47側(刃先側)の強度は第1実施例に比べて向上する。また、下凹み面46bの厚みt2を0.2mmとし、傾斜面46aの厚みt1を0.1mmとして、不等式(t1<=t2、好ましくはt1<t2)を満足するようにした。全厚Tが0.3mmであるとき、第1抉り面45と傾斜面46aとの間の肉厚t3を0.25mmとして、不等式(T>t3)を満足するようにした。断面形状と逃げ縁48の位置の変更に伴ない、両小刃25・26の全幅Bは0.55mmとなり、そのときの切断面43の幅b1は0.35mm、ベース面44の幅b2は0.35mmとして、不等式(b1<=b2、好ましくはb1<b2)を満足するようにした。第1抉り面45と傾斜面46aとの間の肉厚t3を0.25mmとし、第1抉り面45と凹み面46bとの間の肉厚t4を0.34mmとして、不等式(t3<t4)を満足するようにした。また、小刃25・26の全幅Bと全厚Tの設定は、不等式(T<=B、好ましくはT<B)として、切断物を切断するときに小刃25・26に切断負荷がかかっても、小刃25・26が変形しにくくなるように回転方向に長い形態としている。しかも本実施例では、不等式(t1<t2)であるため、リブ状の小刃(刃部)25・26の全体強度は第1実施例よりも向上している。
本実施例も、小刃25・26におけるベース面44側(内側)部分の質量が増加或いは維持できるので、慣性力の極端な減少を可及的に防止できる。また、第2抉り面46を傾斜面46aと凹み面46bとで逆く字状に形成して、ベース面44側(内側)の断面積を十分に確保しながら、切刃47の切刃角度を先鋭化するので、シャープな切れ味を発揮できるにもかかわらず、第1・第2の両小刃25・26に作用する切断反力に対抗する小刃強度を向上できる。また、凹み面46bを内凹み状に形成しているので、交差部53の突端から落下した切断物(電気かみそりであればひげ屑)が切断面43側(外方)に向けて戻り難い。さらに、傾斜面46aと凹み面46bが交差する部分は鋭角の交差部53となっており、交差部53よりベース面44の端縁58が回転方向上手側に設けられているため、交差部53から落下した切断物(電気かみそりであればひげ屑)が切断面43側(外方)に向けてより一層戻り難い。
図15は、本発明に係る刃本体20の変形例を示す。そこでは、第2小刃26を省略して、直線リブ状の第1小刃25のみで切断対象を切断するようにした。
図16は電気かみそりの別の実施例を示す。そこでは、回転刃11の周囲に、回転刃11の食い込み量を規制するガード体67を設けて、これら両者11・67をモーター動力で回転駆動するようにした。ガード体67はコイルばね状に形成してあり、コイル部を回転刃11の周面に巻き付けて、その両端が回転刃11に固定してある。このように、本発明の回転刃11は、外刃を備えていない電気かみそりにも適用できる。本実施例の場合は、小刃25・26におけるベース面44側(内側)部分の断面積を増加或いは維持でき、つまり小刃25・26におけるベース面44側(内側)部分の機械的強度を増強或いは維持しながら、切断面43の回転方向の幅を小さく設定して、小刃25・26の肌に対する摺接面積を小さくするので、回転駆動時の回転刃11の摩擦を軽減でき、回転刃11を駆動するモーターの負荷を軽減できる。
図17ないし図19は、回転刃11を電気かみそり以外の小型電気機器に適用した実施例を示す。図17は、回転刃11を爪切りに適用した実施例である。爪切りは、グリップを兼ねる本体部68の一端に円筒状のヘッド部69を設け、その内部にヘッド部69の筒軸心の回りに回転する回転刃11を配置して、本体部68に収容したモーター70で回転刃11を回転駆動するようにした。符号72は2次電池、符号73はモーター70を起動し、あるいは停止するためのスイッチボタンである。ヘッド部69の筒周壁には半円状の切断窓71が開口してあり、この窓71を介して回転刃11がヘッド部69の外面に露出させてある。爪を切断する場合には、回転駆動している回転刃11を爪の先端に押し付けて、爪を少しずつ削りとる。
図18は、回転刃11を毛玉取り器に適用した実施例である。毛玉取り器は、グリップを兼ねる本体部68の一端に円筒状のヘッド部69を設け、その内部にヘッド部69の筒軸心の回りに回転する回転刃11を配置して、本体部68に収容したモーター70で回転刃11を回転駆動するようにした。符号72は2次電池、符号73はモーター70を起動し、あるいは停止するためのスイッチボタンである。ヘッド部69の筒周壁には部分円弧状の切断窓71が開口してあり、この窓71を介して外刃10がヘッド部69の外面に露出させてある。毛玉は外刃10の刃穴から導入されて、外刃10の内面に摺接する回転刃11で切断される。この場合の外刃10および回転刃11は、爪切りの回転刃11に比べて軸心方向の長さが充分に大きくしてあり、したがって、回転刃11のニット生地に対する接触面積をより大きくして、毛玉を効果的に除去できる。
図19は、回転刃11を角質除去器に適用した実施例である。角質除去器は、グリップを兼ねる本体部68の一端にアーチ状のヘッド部69を設け、その内部に本体部68の機体中心軸と直交する軸回りに回転する回転刃11を配置して、本体部68に収容したモーター70で回転刃11を回転駆動するようにした。符号72は2次電池、符号73はモーター70を起動し、あるいは停止するためのスイッチボタンである。ヘッド部69の周壁には切断窓71が切り欠き形成してあり、この窓71を介して回転刃11がヘッド部69の外面に露出させてある。角質を除去する場合には、回転駆動した状態の回転刃11を、かかとなどの角質部分に押し付けて角質を少しずつ削りとる。このように、本発明の回転刃11は、電気かみそり以外の小型電気機器にも適用できる。
上記の実施例以外に、第1小刃25および第2小刃26は直線状に形成する必要はなく、蛇行状あるいは稲妻状に形成することができる。内刃11を複数個の刃本体20と刃支持体21で構成する場合に、各刃本体20の周方向の長さは必ずしも同じである必要はない。毛屑受面32は、放物線を回転中心の回りに回転して形成される双曲面で形成することができる。
ここで、電気かみそり用回転刃(内刃)の外観(意匠)を図示する。図21〜図22は、第1形態の回転刃を示しており、図21(a)は正面図、図21(b)は平面図、図21(c)は底面図、図21(d)は右側面図、図21(e)は左側面図、図21(f)は背面図を示している。また、図22(a)は図21(a)におけるA―A断面図、図22(b)は図21(a)におけるB−B断面図を示している。また、図23〜図24は、第2形態の回転刃を示しており、図23(a)は正面図、図23(b)は平面図、図23(c)は底面図、図23(d)は右側面図、図23(e)は左側面図、図23(f)は背面図を示している。また、図24(a)は図23(a)におけるA―A断面図、図22(b)は図23(b)におけるB−B断面図を示している。回転刃11は、3個の刃本体20と、刃本体20を支持する刃支持体21と、回転軸22とで円筒籠状に構成している。刃本体20には、第1小刃25の一群と、第2小刃26の一群とを含み、それぞれ回転刃11の回転中心に対して互いに逆向きに傾斜する状態で形成してあり、これにより刃本体20の全体がエキスパンドメタル状の外観を呈している。第1形態の回転刃と第2形態の回転刃は類似する形態である。
図24に示す回転刃11は上記第1実施例の製造方法、構造と同じであるが、小刃25・26において傾斜面46aを有しない点、つまり第2抉り面46が1個である点で相違する。よって、上記第1実施例の回転刃11の製造方法、構造や適用する小型電気機器、電気かみそりも基本的に同じであるため、回転刃11の全体構造及び適用する小型電気機器、電気かみそりの説明は省略する。
図24に示す断面形状の小刃25・26を備えた回転刃11は、次の形態で実施することができる。
回転刃11は、断面が円弧状に折り曲げられた刃本体20と、刃本体20を支持する刃支持体21とで円筒籠状に構成する。刃本体20はエッチング或いは図20のような打ち抜きによる孔開け加工により、リブ状の小刃(刃部)25・26の一群と、刃穴27の一群とを備えている。小刃25・26は、外面の切断面43と、内面のベース面44と、これら両者43・44の間に形成される第1抉り面45および第2抉り面46と、切断面43の回転方向上手側に形成される切刃47と、切断面43の回転方向下手側に形成される逃げ縁48とを備えている。切刃47は鋭角に形成されており、逃げ縁48はそれよりも大きな角度で形成されている。ベース面44を切断面43よりも寸法Lだけ回転方向下手側にずらして配置して、切刃47の切刃角度を先鋭化している。第1抉り面45は、切刃47から回転方向下手側へ凹む1個の内凹み面で形成する。この凹み面により切刃47が鋭角に形成され、シャープな切れ味を発揮できる。第2抉り面46は、逃げ縁48から回転上手側へ凹む1個の内凹み面で形成する。ベース面44の端縁58を、切断面43の逃げ縁48よりも回転方向下手側へ突出しているので、切断物(電気かみそりであればひげ屑)が回転刃11の内方から外方へ飛び出るのをよく防止できる。一方、切断面43の切刃47を、ベース面44の前縁59よりも回転方向上手側へ突出しているので、より一層切刃47が鋭角に形成され、シャープな切れ味を発揮できるものである。つまり全幅Bの幅を稼ぐことができ切断物の飛散を効果的に防止できる。しかも切断面43の回転方向の幅に変化はないので、ひげ導入を効果的に行える。また、小刃25・26の全幅Bと全厚Tの設定は、不等式(T<=B、好ましくはT<B)として、切断物を切断するときに小刃25・26に切断負荷がかかっても、小刃25・26が変形しにくくなるように回転方向に長い形態としている。逃げ縁48はベース面44の前縁59と端縁58との間に位置している。また、この回転刃を第1実施例の電気かみそりに適用すれば、回転刃をモーター12で回転駆動して切断対象を切断する電気かみそりとなる。本実施例において、切断面43の中央にはハーフエッチングによって凹部を形成し、外刃或いは肌との摺動抵抗を小さくすることもできる。或いは第1実施例のように傾斜面46aを形成することもできる。