本発明は、円柱状の外形を有する発熱体の外周側と、発熱体を収容するケースの内周側との間に流路を形成する構成において、流路における発熱体の軸方向に沿う流れを規制することにより、流速を高め、発熱体と水の間の熱伝達を向上させ、発熱体の表面温度を下げ、沸騰音を低減しようとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の第一実施形態について、図1および図2を用いて説明する。本実施形態に係る熱交換器1は、水を温めて温水とするものであり、例えば便器等に設置されて人体の局部を洗浄する衛生洗浄装置に備えられ、洗浄水を温水とするために用いられる。
図1および図2に示すように、熱交換器1は、発熱体としてのヒータ2と、ヒータ2を収容するケース3とを備える。熱交換器1は、ヒータ2により形成される入水口4と、ケース3により形成される吐水口5とを有する。つまり、熱交換器1においては、入水口4から流入した水が、ヒータ2によって温められ、温水となって吐水口5から流出する。
ヒータ2は、円柱状の外形を有し、水を加熱する。ヒータ2は、パイプ状に構成されることで、円柱状の外形を有する。ヒータ2は、軸方向(図1における左右方向、以下「ヒータ軸方向」という。)からケース3内に挿入されることで、ケース3に組み付けられる。ヒータ2は、ヒータ軸方向の中途部に、パイプ状のヒータ2を部分的に拡径させるフランジ部2aを有する。ヒータ2は、ヒータ軸方向でフランジ部2aよりも一側(図1において右側)の部分がケース3に挿入された状態で収容される。
ヒータ2は、いわゆるセラミックパイプヒータであり、内周面(以下「ヒータ内周面」という。)2bおよび外周面(以下「ヒータ外周面」という。)2cからの発熱によって、ヒータ2の内周側および外周側を通過する水を加熱する。ヒータ2においては、セラミックによって形成される外装部分の内部に、タングステン等からなる帯状のヒータパターンが印刷等によってヒータ軸方向に沿って形成される。パイプ状に構成されるヒータ2のケース3に挿入される側と反対側の端部の開口部により、熱交換器1の入水口4が形成される。
ケース3は、樹脂や金属等により構成され、全体として略直方体状の外形を有するとともに、略円周面として形成される内周面部を有する。ケース3は、ヒータ2を収容する空間を形成するケース本体3aと、ケース本体3aの一端側に形成される開口部を覆う蓋体3bとを有する。
ケース本体3aは、略直方体状の外形を有し、長手方向の両端側が開口する略筒状の部材である。ケース本体3aの一方の開口部が、蓋体3bにより塞がれる。蓋体3bは、ケース本体3aの外形に沿う形状を有する板状の部材であり、ケース本体3aの開口端面にボルト等によって固定されることで、ケース本体3aと一体的にケース3を構成する。蓋体3bは、ケース本体3aの開口端面と蓋体3bとの間に介装されるOリング6により、ケース本体3aの内部空間に対して水密に固定される。
ヒータ2は、ケース本体3aの蓋体3bにより塞がれる側と反対側の開口部から、ケース3に挿入されて組み付けられる。ヒータ2は、フランジ部2aがケース3を構成するケース本体3aの開口端面にボルト等の締結具によって固定されることで、ケース3に組み付けられる。フランジ部2aは、ケース3の外形形状に対応して略矩形板状に形成される。フランジ部2aの四隅には、ケース本体3aへの固定のための締結具を貫通させる孔部2dが形成されている。ヒータ2は、フランジ部2aとケース本体3aの開口端面との間に介装されるOリング7により、ケース3の内部空間に対して水密に固定される。
ヒータ2がフランジ部2aによってケース3に組み付けられた状態においては、ヒータ2の先端と蓋体3bの内側の面との間に隙間が存在する。つまり、ヒータ2のケース3に収容される側の開口部は、蓋体3bによって塞がれることなく、ケース3内において開口する。
このように、ケース3は、ヒータ2のフランジ部2aよりもケース3に対する挿入側の部分を挿入させた状態で、ヒータ2の外周を覆う。熱交換器1が有する吐水口5は、ケース3を構成するケース本体3aの周壁部に形成される。吐水口5は、ケース本体3aの蓋体3bが取り付けられる側と反対側の開口端の近傍に設けられる。本実施形態では、吐水口5は、ケース本体3aの内部空間を上側に開口させる。
ケース3は、ヒータ外周面2cとの間にヒータ2により加熱する水の流路を形成する。以下では、ヒータ外周面2cとケース3との間に形成される流路を「外周側流路」とする。ヒータ外周面2cは、ヒータ2の円柱状の外形における外周面である。また、ヒータ2が挿入されるケース3は、略円周面として形成される内周面部を有する。そこで、互いに対向するヒータ外周面2cとケース3の内周面部との間に、外周側流路が形成される。
以上のような構成を備える熱交換器1においては、入水口4から流入した水が、ヒータ内周面2bにより形成されるヒータ2の内部流路内を加熱されながら流れ(図1、矢印A1参照)、ヒータ2の内部流路の開口端部からケース3の内部空間内に吐出される。そして、ヒータ2の内部流路からケース3の内部空間内に吐出された水は、ヒータ外周面2cによって加熱されながら外周側流路によってヒータ軸方向で反対側に運ばれ、吐水口5から吐出される。
そして、本実施形態の熱交換器1は、外周側流路をヒータ軸方向視でヒータ2の周方向(以下「ヒータ周方向」という。)に沿う方向に仕切るとともに、外周側流路におけるヒータ軸方向の流れを規制する水流規制手段を備える。
熱交換器1においては、外周側流路は、螺旋状に、あるいはヒータ軸方向に対して垂直方向に仕切られることで、ヒータ周方向に沿う方向に水を流す流路として形成される。つまり、水流規制手段について、外周側流路をヒータ周方向に沿う方向に仕切ることには、外周側流路を螺旋状に仕切ること、および外周側流路をヒータ軸方向に対して垂直方向に仕切ることが含まれる。ただし、外周側流路は、ヒータ軸方向視でヒータ周方向に沿う方向に仕切られればよく、その仕切り方は特に限定されない。
水流規制手段は、前記のとおり、外周側流路をヒータ周方向に沿う方向に仕切ることにより、外周側流路において、例えば螺旋状の流れ等、ヒータ周方向に沿う方向の流れを形成する。したがって、水流規制手段によって外周側流路が仕切られることでヒータ周方向に沿う方向の流れが形成される構成においては、ヒータ周方向に沿う方向の流れが保持される限り、ヒータ軸方向に沿う方向の流れは規制される。
そこで、水流規制手段は、ヒータ周方向に沿う方向の流れを保持することで、外周側流路におけるヒータ軸方向の流れを規制する。具体的には、水流規制手段は、外周側流路において、内周側については、ヒータ外周面2cとの間に隙間を介することなく、また、外周側については、ケース3の内周面部との間に隙間を介することなく設けられることで、ヒータ周方向に沿う方向の流れを保持する。つまり、水流規制手段は、外周側流路において、ヒータ軸方向視で、外周側流路を貫通して向こう側が見えないように、ヒータ周方向に沿う方向の流れを形成する。
このように、熱交換器1が、外周側流路をヒータ軸方向視でヒータ周方向に沿う方向に仕切るとともに、外周側流路におけるヒータ軸方向の流れを規制する水流規制手段を備えることにより、外周側流路を流れる水の流速を速くすることによって発熱体と水の間の熱伝達を向上させてヒータ2の表面温度を下げることができ、沸騰音を低減することができる。以下、水流規制手段の具体的な形態について説明する。
図1および図2に示すように、本実施形態の熱交換器1は、水流規制手段として、ヒータ2に外嵌されるバネ11と、ケース3の内周部に設けられる螺旋部12とを有する。
バネ11は、巻きバネとして螺旋状に形成される線材である。バネ11としては、比較的細い線径(例えば線径が0.8mm程度)のバネが用いられる。バネ11は、ケース3内に挿入されているヒータ2の部分の略全体にわたって装着された状態で設けられる。
バネ11は、ヒータ外周面2cに対して密着した状態で、ヒータ2に外嵌される。具体的には、バネ11としては、内径がヒータ2の外径よりも小さいものが用いられる。そして、バネ11をヒータ2に装着する際には、バネ11をその螺旋方向と逆方向にねじることにより、バネ11の内径を拡大させ、その状態でバネ11をヒータ2に被せ、バネ11のねじりを解放することで、バネ11が弾性により戻ってヒータ外周面2cに密着する。ここで、バネ11の線径が小さい方が、より確実にヒータ外周面2cに密着する。
このように、本実施形態の熱交換器1においては、バネ11がヒータ外周面2cに密着した状態でヒータ2に装着されることにより、ヒータ外周面2cに沿って螺旋状に突出するように設けられる第一の規制部が構成される。つまり、本実施形態では、ヒータ2に装着されるバネ11によって、水流規制手段が有する第一の規制部が構成される。そして、バネ11は、ヒータ2の外周側に巻き付いた状態で弾性力によりヒータ2に固定される。
螺旋部12は、ケース3の内周面部において、ヒータ軸方向を旋回方向の中心軸方向とする螺旋状の溝部12aを形成する。言い換えると、螺旋部12は、ケース3の内周面部において、ヒータ軸方向を旋回方向の中心軸方向とする螺旋状の突部12bを形成する。したがって、螺旋部12は、図1に示すようなヒータ2の中心軸を通る方向の断面視で、複数の歯状の部分として表れる。
螺旋部12は、その螺旋形状の巻き数およびピッチがバネ11の巻き数と略同じとなるように形成される。そして、螺旋部12は、ヒータ2に巻き付けられた状態のバネ11に螺旋状の溝部12aを沿わせるように形成される。また、螺旋部12は、螺旋状の溝部12aの幅がバネ11の線径よりも広くなるように形成される。螺旋部12とヒータ2に巻き付けられたバネ11とにより、外周側流路が螺旋状に仕切られ、螺旋状の流路が形成される。
このように、本実施形態の熱交換器1においては、ケース3の内周面部に形成される螺旋部12により、ケース3の内周面に沿って螺旋状に突出するように設けられ、バネ11とともに螺旋状の流路を形成する第二の規制部が構成される。つまり、本実施形態では、ケース3の内周側に形成される螺旋部12によって、水流規制手段が有する第二の規制部が構成される。
そして、望ましくは、水流規制手段を構成するバネ11と螺旋部12とは、ヒータ軸方向視で少なくとも一部がオーバーラップしている。具体的には、図3に示すように、螺旋部12を形成する螺旋状の突部12bは、ヒータ外周面2cに対してクリアランス(寸法B1)を有する。一方、ヒータ外周面2cに密着した状態で設けられるバネ11の線径B2は、螺旋状の突部12bとヒータ外周面2cとの間のクリアランス(B1)よりも大きい。
このため、バネ11と螺旋部12とは、バネ11の外周端が螺旋状の突部12bの内側の端面よりも外側(図3において上側)に位置する分、ヒータ軸方向視で、ヒータ軸方向にオーバーラップする部分を有する。つまり、バネ11と螺旋部12とは、螺旋状の突部12bの端面の位置からバネ11の外周端の位置までのヒータ2の径方向の長さ(B3=B2−B1)分、ヒータ軸方向にオーバーラップする部分を有する。
以上のような構成を備える本実施形態の熱交換器1によれば、バネ11と螺旋部12とにより構成される水流規制手段によって、ヒータ周方向に沿う方向の螺旋状の流れが保持され、外周側流路におけるヒータ軸方向の流れが確実に規制される。
具体的には、外周側流路に設けられる水流規制手段において、内周側については、バネ11がヒータ外周面2cに密着していることから隙間が存在しない。また、外周側については、螺旋部12は、ケース3に一体に形成される部分であることから隙間が存在しない。そして、バネ11と螺旋部12とは、上述のとおり互いにオーバーラップする部分を有することから、バネ11と螺旋部12との間にもヒータ軸方向視での隙間が存在しない。
なお、上記の望ましい形態として、バネ11と螺旋部12との間にヒータ軸方向視での隙間が存在しないように、つまりバネ11と螺旋部12とがヒータ軸方向視でオーバーラップするように構成したが、バネ11と螺旋部12との間は、ヒータ軸方向の流れを規制できる微少隙間(例えば、B1≒B2)であれば問題ない。
以上より、バネ11と螺旋部12とにより構成される水流規制手段によれば、ヒータ軸方向の流れをより確実に規制することができるので、螺旋状の流れが保持され、螺旋状の流路を形成することによって流路面積を狭くするという作用を十分に得ることができ、流速を速くすることが可能となる。結果として、熱伝達の効率を十分に高めることができ、効果的にヒータ2の表面温度を下げることができ、沸騰音の低減効果を高めることができる。
また、本実施形態の熱交換器1は、次のような利点を有する。水流規制手段を構成するバネ11の線径を細くすることにより、ヒータ2に曲がりが存在する場合であっても、その曲がりに追従してヒータ2に密着させやすくすることができる。また、同じくバネ11の線径を細くすることにより、バネ11をその巻き方向と逆方向にねじることで内径を容易に広げることができ、バネ11をスムーズにヒータ2にかぶせることができ、また、逆方向へのねじりを解放することで、バネ11をヒータ2に容易に密着させることができる。つまり、バネ11の線径を細くすることにより、バネ11の弾性変形によって容易にバネ11をヒータ2に密着させることができる。
また、バネ11の線径を細くすることにより、バネ11の断面二次モーメントを小さくすることができるので、ヒータ2が熱変形する場合であっても、バネ11をヒータ2の熱変形に容易に追従させることができ、ヒータ2の割れや破壊等を防止することができる。さらに、バネ11は、広く一般に流通している線材によって容易に作製できるものであるため、水流規制手段を安価に作製することが可能となる。バネ11としては、円柱状の外形を有するヒータ2との関係において、ヒータ2の外径よりも十分に小さい線径(大きくてもヒータ2の外径の1/10程度)のものが好適に用いられる。
また、水流規制手段を構成する螺旋部12をケース3の一部として形成することにより、螺旋部12とケース3との間に隙間が生じることを確実に防止することができる。また、同じく螺旋部12をケース3の一部として形成することにより、バネ11と螺旋部12との螺旋のピッチを略同じにしておくことで、バネ11を装着した状態のヒータ2を、螺旋部12を有するケース3に対してネジのように組み付けることが可能となり、生産性を向上させることができる。
また、本実施形態の熱交換器1においては、ヒータ2に密着するバネ11を通して、ヒータ2の熱を水に伝えることができるので、ヒータ2の温度を効果的に下げることができる。つまり、ヒータ2に密着するバネ11によってヒータ2の伝熱面積を広くすることができ、熱交換器1の熱伝達を向上させることができる。したがって、バネ11を構成する材料としては、銅やステンレス鋼やアルミニウム等、比較的熱伝導率の高い材料が採用される。
また、本実施形態の熱交換器1においては、バネ11と螺旋部12とのオーバーラップする部分は、互いに接触していることが好ましい。本実施形態では、バネ11と螺旋部12とがオーバーラップする部分は、バネ11を構成する線材が螺旋状の溝部12a内に入る部分である。
図3に示すように、バネ11は、断面形状が略円形状であり、ヒータ外周面2cの表面に密着する。したがって、バネ11の線径(B2)が、螺旋状の突部12bとヒータ外周面2cとの間のクリアランスの寸法B1よりも大きいことにより、バネ11を構成する線材を螺旋部12に接触させることができる。本実施形態では、バネ11は、螺旋状の溝部12aに対してヒータ軸方向において蓋体3bと反対側に接触している。
このように、バネ11と螺旋部12とのオーバーラップする部分が互いに接触することにより、バネ11と螺旋部12とにより形成される螺旋状の流路を確実に保持することができる。これにより、螺旋状の流路を形成することによって流路面積を狭くするという作用を確実に得ることができ、流速を速くすることが可能となる。結果として、より効果的に沸騰音を低減することができる。
また、互いに接触するバネ11と螺旋部12との接触の態様としては、本実施形態の熱交換器1のように、バネ11は、螺旋部12に対して、外周側流路における下流側で接触していることが好ましい。本実施形態では、上記のとおり螺旋状の溝部12aに対してヒータ軸方向において蓋体3bと反対側に接触するバネ11は、螺旋部12に対して外周側流路における下流側で接触している。
具体的には、本実施形態の熱交換器1において、外周側流路における水の流れの方向は、ヒータ軸方向に沿う方向であり、図1および図3における左右方向に対応する。そして、このヒータ軸方向において、外周側流路における上流側は、両端に開口を有するケース本体3aが蓋体3bにより塞がれる側(図1、図3において右側)であり、外周側流路における下流側は、上流側の反対側、つまりケース本体3aがヒータ2のフランジ部2aにより塞がれる側(図1、図3において左側)である。しがって、バネ11が螺旋部12に対して外周側流路における下流側で接触するということは、バネ11が、螺旋部12に対して、ヒータ軸方向視において蓋体3bと反対側であるフランジ部2a側で接触するということである。
詳細には、図3に示すように、螺旋部12において形成される溝部12aは、外周側流路における上流側の面である上流側壁面12cと、外周側流路における下流側の面である下流側壁面12dとを有する。つまり、図3に示すように、螺旋状の溝部12aが有する上流側壁面12cおよび下流側壁面12dは、上記のとおり螺旋状の突部12bが複数の歯状の部分として表れる、ヒータ2の中心軸を通る方向の断面視で、互いに隣り合う歯状の部分間でヒータ軸方向に対向する壁面として表れる。
螺旋部12を構成する螺旋状の突部12bに着目した場合、上流側壁面12cは、外周側流路における下流側の面となり、下流側壁面12dは、外周側流路における上流側の面となる。また、螺旋状の突部12bにおいて形成される上流側壁面12cを、ヒータ軸方向における一方の側の面とした場合、下流側壁面12dは、ヒータ軸方向における他方の側の面となる。
このように上流側壁面12cと下流側壁面12dとを有する螺旋部12に対して、バネ11は、下流側壁面12dに接触した状態で設けられることが好ましい。線材により構成されるバネ11は、その線径B2が螺旋部12における溝部12aの幅寸法、つまり互いに対向する上流側壁面12cと下流側壁面12dとの間の間隔B4よりも小さい。したがって、上述のとおり螺旋状の溝部12a内に入る部分を有するバネ11は、螺旋部12に対して、ヒータ軸方向について、上流側壁面12cに接触する位置から下流側壁面12dに接触する位置までの範囲で位置することができる。
このようにバネ11が螺旋部12に対してヒータ軸方向で所定の範囲内で異なる位置に位置することができる構成において、バネ11は、螺旋部12に対して、外周側流路における下流側で接触すること、つまりヒータ軸方向について螺旋部12の下流側壁面12dに接触する位置に設けられることが好ましい。言い換えると、バネ11は、螺旋部12の突部12bに対して、突部12bの上流側の面となる下流側壁面12dに接触した状態で設けられることが好ましい。
このように、バネ11が螺旋部12に対して外周側流路における下流側で接触することにより、バネ11と螺旋部12とにより形成される螺旋状の流路内の水がバネ11に接触しやすくなり、水がバネ11を通じてヒータ外周面2cから熱を奪いやすくなる。また、螺旋状の流路内の水がバネ11に接触しやすくなることで、螺旋状の流路内で乱流が発生しやすくなり、流路内の水がヒータ外周面2cの熱を奪いやすくなる。これらのことから、ヒータ2と水との間の熱伝達の効率を効果的に向上させることができる。これにより、ヒータ2の表面温度をより効果的に下げることができ、沸騰音の低減効果を高めることができる。
バネ11の螺旋部12に対するヒータ軸方向における相対的な位置に関し、本実施形態の熱交換器1のようにバネ11が螺旋部12に対して外周側流路における下流側で接触する位置が好ましいことについて、本実施形態の場合の例(「本実施例」とする。)に対する比較例を挙げて説明する。
ここでは、図3に示す本実施例に対する比較例として、図4(a)に示すように、バネ11が螺旋部12に対して外周側流路における上流側で接触する位置にある場合(「第一比較例」とする。)と、同図(b)に示すように、バネ11が螺旋部12の溝部12aに対してヒータ軸方向の中央の位置にある場合(「第二比較例」とする。)とを挙げる。つまり、第一比較例では、バネ11は、螺旋部12の上流側壁面12cに接触した状態で設けられ、第二比較例では、バネ11は、螺旋部12の上流側壁面12cおよび下流側壁面12dのいずれにも接触せず、これらの上流側壁面12cおよび下流側壁面12dの間の中央位置にある状態で設けられる。
図5は、本実施例、第一比較例、および第二比較例について、同一の条件の下でのヒータ外周面2cの温度(ヒータ表面温度)[℃]の測定結果の一例を示す。つまり、図5に示すグラフG1は、バネ11の螺旋部12に対するヒータ軸方向における相対的な位置(バネ位置)と、ヒータ表面温度との関係を表す。
図5に示すように、第一比較例、第二比較例、本実施例の順に、ヒータ表面温度は下がっている。本測定結果の場合、第一比較例では、ヒータ表面温度は約140℃であり(測定点P1参照)、第二比較例では、ヒータ表面温度は約130℃である(測定点P2参照)。そして、これらの比較例に対し、本実施例では、ヒータ表面温度は約126℃と低い。
このように、本実施例のヒータ表面温度が比較例に対して低いことから、上述したようにヒータ2の表面温度を効果的に下げることができるという効果が得られるという観点に基づくと、本実施例の方が、比較例よりも、螺旋状の流路内の水がバネ11に接触しやすく、乱流が発生しやすいと言える。そして、図5のグラフG1から、ヒータ表面温度は、バネ位置が外周側流路におけるより上流側の位置である第一比較例の方が、第二比較例よりも高い。したがって、螺旋状の流路内の水がバネ11に接触しやすく、乱流が発生しやすいという作用は、バネ位置が、外周側流路におけるより下流側に位置するほど得やすいということが言える。
以上のように、比較例を用いたヒータ表面温度の測定結果から、バネ位置に関して、本実施形態の熱交換器1のようにバネ11が螺旋部12に対して外周側流路における下流側で接触する位置が好ましいということが実証されている。
さらに、本実施形態の熱交換器1においては、好ましくは次のような構成が採用される。ヒータ2は、ケース3に対して螺旋状の流路の旋回中心の方向と平行なヒータ軸方向に挿入されることで、ケース3に組み付けられる。このようなヒータ2とケース3との組付け構成において、ヒータ2とは別体として構成される巻きバネであるバネ11の螺旋のピッチが、螺旋部12の螺旋のピッチよりも広く構成される。言い換えると、螺旋の巻き数が略同じとされるバネ11と螺旋部12との関係において、バネ11の自然長が螺旋部12のヒータ軸方向の長さよりも長くなるようにバネ11の長さが設定される。つまりこの場合、バネ11が圧縮バネとして機能する。
このように、バネ11が圧縮バネとして機能する構成において、ヒータ2がケース3に組み付けられる際に、バネ11が螺旋部12に押し付けられてピッチが整いながら(螺旋部12の螺旋のピッチに揃いながら)、ヒータ2がケース3に挿入される。したがって、ヒータ2がケース3に組み付けられることにより、バネ11が、螺旋部12によってヒータ軸方向に圧縮され、螺旋部12とオーバーラップする部分で、バネ11の弾性により、螺旋部12に押し付けられた状態で保持される。
ここで、バネ11と螺旋部12とはヒータ軸方向にオーバーラップする部分を有することから、ヒータ2のケース3に対する組付けに際しては、バネ11が装着された状態のヒータ2が、ケース3に対してネジのように回転させられながら挿入される。
このように、バネ11を圧縮バネとしてバネ11の弾性によってバネ11を螺旋部12に押し付けた状態で設けることにより、バネ11が外周側流路内の水圧によってヒータ外周面2c上にてずれることが防止され、螺旋状の流速を確保することができる。
本発明の第二実施形態について、図6を用いて説明する。なお、以下に説明する各実施形態においては、第一実施形態と共通する構成については、同一の符号を用いて適宜説明を省略する。本実施形態の熱交換器20は、第一実施形態の熱交換器1との比較において、パイプ状のヒータ2の内部流路にも、外周側流路に設けられる水流規制手段と同様の機能を果たす構成が設けられる点で異なる。
具体的には、図6に示すように、本実施形態の熱交換器20は、ヒータ2のケース3に対する挿入側の開口部からヒータ2の内部にヒータ軸方向に沿って挿入された状態で設けられる円柱状の軸部21を有する。軸部21は、一端側が蓋体3bの内側の面に固定されることで、ヒータ2と同軸心配置された状態で支持される。
軸部21の外周面には、第一バネ22が装着される。これに対向するように、ヒータ内周面2bには、第二バネ23が装着される。第一バネ22および第二バネ23は、いずれも巻きバネであり、巻き数およびピッチが略同じとされる。
第一バネ22および第二バネ23は、それぞれ軸部21の外周面およびヒータ内周面2bに密着した状態で設けられる。具体的には、第一バネ22としては、内径が軸部21の外径よりも小さいものが用いられる。そして、第一バネ22を軸部21に装着する際には、第一バネ22をその螺旋方向と逆方向にねじることにより、第一バネ22の内径を拡大させ、その状態で第一バネ22を軸部21に被せ、第一バネ22のねじりを解放することで、第一バネ22が弾性により戻って軸部21の外周面に密着する。
ここで、軸部21と第一バネ22の双方を金属製や樹脂製とすることにより、寸法公差や曲がりを少なく作製することができるので、第一バネ22をねじる等の工程を行わなくても、軸部21と第一バネ22との間に隙間を生じさせることなく、軸部21と第一バネ22とを組み付けることも可能である。
また、第二バネ23としては、外径がヒータ2の内径よりも大きいものが用いられる。そして、第二バネ23をヒータ2に装着する際には、第二バネ23をその螺旋方向と逆方向にねじることにより、第二バネ23の外径を縮小させ、その状態で第二バネ23をヒータ2内に挿入し、第二バネ23のねじりを解放することで、第二バネ23が弾性により戻ってヒータ内周面2bに密着する。
そして、望ましくは、第一バネ22と第二バネ23とは、各バネの線径の選択等により、ヒータ軸方向視で少なくとも一部がオーバーラップするように設けられる。本実施形態では、軸部21側に設けられる第一バネ22の線径よりも、ヒータ2側に設けられる第二バネ23の線径の方が小さい。ここで、ヒータ内周面2bの表面に沿う水の流速が低下することを防止する観点から、ヒータ2側に設けられる第二バネ23をヒータ内周面2bに密着させることが好ましいので、第二バネ23としてはヒータ内周面2bに密着させやすい線径の比較的細いものが用いられる。
以上のように、本実施形態の熱交換器20においては、軸部21の外周面とヒータ内周面2bとにより形成される流路が、第一バネ22と第二バネ23とにより螺旋状に仕切られ、螺旋状の流路が形成される。すなわち、熱交換器20において軸部21、第一バネ22、および第二バネ23を含む構成は、外周側流路に設けられる水流規制手段と同様に、流路をヒータ軸方向視で螺旋状に仕切るとともに、流路におけるヒータ軸方向の流れを規制する。
このように、ヒータ2の内部にも水流規制手段を備えることにより、ヒータ2の内部流路についても流速を速くすることによって発熱体と水の間の熱伝達を向上させることができる。なお、本実施形態では、ヒータ2の内部に螺旋状の流路を構成するために、軸部21またはヒータ2とは別体の部材としての第一バネ22および第二バネ23が用いられているが、これに限定されない。つまり、ヒータ2の内部に構成される螺旋状の流路は、軸部21またはヒータ2と一体に設けられる部分によって形成されてもよい。
本発明の第三実施形態について、図7を用いて説明する。本実施形態の熱交換器30は、第一実施形態の熱交換器1との比較において、外周側流路にて螺旋状の流路を形成する第一の規制部を構成するバネ31として、角断面のバネが用いられている点で異なる。
図7に示すように、本実施形態の熱交換器30は、ヒータ外周面2cに装着される角断面のバネ31と、ケース3の内周面部に形成される螺旋部12とにより、外周側流路において螺旋状の流路を形成する。バネ31を構成する螺旋状の部材は、ヒータ軸方向を板厚方向とする板状となる形状を有する。
したがって、図7に示すように、バネ31については、ヒータ2の中心軸を通る方向の断面視での形状が、ヒータ2の径方向を長手方向とする矩形状となる。また、バネ31の板厚の寸法は、螺旋部12を形成する螺旋状の溝部12aの幅寸法よりも小さい。
このように、第一の規制部を構成する部材として角断面のバネ31を用いることにより、バネ31の角断面の径方向の長さを長くすることで、バネ31と螺旋部12との重ね代を大きくとることができる。これにより、ヒータ2のケース3に対する組付け時にヒータ2がケース3に対して傾いた場合や、ヒータ2自体に曲がりが存在する場合であっても、バネ31と螺旋部12との間のオーバーラップ部分を容易に確保することができる。
また、角断面のバネ31は、例えば第一実施形態のバネ11のように円断面のバネとの比較において、径方向の寸法が同等の場合、円断面のバネよりも断面二次モーメントが小さくなるので、曲げやすく、弾性変形させながらのヒータ2への装着が容易となる。また、同じく円断面との比較において、角断面のバネ31は、表面積を広くとることが容易となるので、ヒータ2に密着するバネ31によってヒータ2の伝熱面積を広くすることができ、熱交換器30の熱伝達を向上させることができる。
本発明の第四実施形態について、図8を用いて説明する。本実施形態の熱交換器40は、第一実施形態の熱交換器1との比較において、外周側流路にて螺旋状の流路を形成する第一の規制部を構成するバネ41として、断面形状がL字型となるバネが用いられている点で異なる。
図8に示すように、本実施形態の熱交換器40は、ヒータ外周面2cに装着されるL字断面のバネ41と、ケース3の内周面部に形成される螺旋部12とにより、外周側流路において螺旋状の流路を形成する。バネ41を構成する螺旋状の部材は、ヒータ外周面2cに沿うように板状に形成される周壁部41aと、周壁部41aの一端側(図6においては右端側)から径方向外側に突出形成されるフランジ部41bとを有し、断面形状がL字状となるように形成される。
したがって、図8に示すように、L字断面のバネ41は、ヒータ2に装着された状態において、周壁部41aの部分をヒータ外周面2cに接触させるとともに、フランジ部41bをヒータ2の径方向外側に向けて鍔状に突出させる。また、螺旋部12の溝部12a内に一部突出するバネ41のフランジ部41bの板厚の寸法は、螺旋部12の溝部12aの幅寸法よりも小さい。
このように、第一の規制部を構成する部材としてL字断面のバネ41を用いることにより、ヒータ2からの伝熱面積を広げることができ、熱交換器40の熱伝達を向上させることができる。特に、ヒータ外周面2cに接触する部分である周壁部41aの幅(ヒータ軸方向の寸法)を長くすることにより、効率的に伝熱面積を広げることができる。
本発明の第五実施形態について、図9および図10を用いて説明する。本実施形態の熱交換器50は、第一実施形態の熱交換器1との比較において、外周側流路にて螺旋状の流路を形成する第一の規制部を構成するバネ51として、断面形状がヒータ外周面2cに対して接触する斜め方向の薄板形状となるバネが用いられている点で異なる。
図9および図10に示すように、本実施形態の熱交換器50は、ヒータ外周面2cに装着される斜め巻きのバネ51と、ケース3の内周面部に形成される螺旋部12とにより、外周側流路において螺旋状の流路を形成する。バネ51を構成する螺旋状の部材は、薄板状の部材であり、螺旋形状における各周回部分(螺旋形状における一回転分)が縮径方向の揃った略円錐の一部形状となるように形成される。
したがって、図9および図10に示すように、斜め巻きのバネ51は、ヒータ2に装着された状態において、螺旋形状における各周回部分の略円錐の一部形状の縮径側の先端を、ヒータ外周面2cに接触させる。なお、図9は、ヒータ2およびバネ51を含む部分が断面で示されている点で図10と異なる。
このように、第一の規制部を構成する部材として斜め巻きのバネ51を用いることにより、例えば第三実施形態の角断面のバネ31や第四実施形態のL字断面のバネ41等と比べて、断面二次モーメントを小さくすることができる。また、断面二次モーメントが大きいと、ヒータ2への装着のためにヒータ2の最大外径以上にバネの内径を広げた際に、許容曲げ応力を超えやすくなる。そこで、本実施形態に係る斜め巻きのバネ51によれば、断面二次モーメントを小さくすることができ、ヒータ2への装着の際等、容易に内径を変化させることが可能となる。
なお、上述の第二〜四実施形態、および本実施形態においては、第一実施形態の場合と同様に、螺旋状の流路を構成するバネの螺旋のピッチを螺旋部12の螺旋のピッチよりも広くし、バネ31,41,51を圧縮バネとする構成を適用することができる。これにより、ヒータ2がケース3に組み付けられることにより、バネが、螺旋部12によってヒータ軸方向に圧縮され、螺旋部12とオーバーラップする部分で、バネの弾性により、螺旋部12に押し付けられた状態で保持される。
本発明の第六実施形態について、図11を用いて説明する。本実施形態の熱交換器60は、第一実施形態の熱交換器1との比較において、第一の規制部を構成する部分が、ヒータ2と一体に形成されている点で異なる。つまり、上述した実施形態では、第一の規制部がヒータ2とは別部材のバネ11等により構成されているのに対し、本実施形態では、ヒータ2の一部分により、第一の規制部が構成されている。
図11に示すように、本実施形態の熱交換器60においては、ヒータ外周面2cに、螺旋状の突起部分である螺旋突部61が形成されている。螺旋突部61は、ヒータ2の径方向に板状に突出する。螺旋突部61は、螺旋部12との関係において、螺旋の巻き数およびピッチが略同じとされる。また、螺旋突部61の幅寸法(板厚の寸法)は、螺旋部12を形成する螺旋状の溝部12aの幅寸法よりも小さい。
螺旋突部61は、例えば、螺旋状に形成されるセラミック製のシート状の部材をヒータ2の本体に巻き付け、焼結させることで形成することができる。ただし、ヒータ2に螺旋突部61を形成する方法は、特に限定されない。
このように、螺旋部12とともに螺旋状の流路を形成する第一の規制部が、ヒータ2と一体の螺旋突部61として設けられることにより、水流規制手段を構成するための部品を省略することができるので、構造を簡単にすることができ、熱交換器の組立てを短時間で容易に行うことができる。つまり、第一の規制部がバネ11等のようにヒータ2とは別の部材により構成される場合、熱交換器の組立て工程において、バネ11をヒータ2に装着する工程が必要となるが、本実施形態の熱交換器60によれば、第一の規制部がヒータ2と一体であるため、工程を省略することができ、熱交換器の組立ての時間を短縮することができる。
本発明の第七実施形態について、図12を用いて説明する。本実施形態の熱交換器70は、第一実施形態の熱交換器1との比較において、第二の規制部を構成する部分が、ヒータ2を収容するケースとは別体の部材により形成されている点で異なる。つまり、上述した実施形態では、第二の規制部がケース3の一部である螺旋部12として設けられているのに対し、本実施形態では、ヒータ2を収容するケースとは別部材により、第二の規制部が構成されている。
図12に示すように、本実施形態の熱交換器70は、ヒータ2を収容するケース73を備える。ケース73は、内周面73cを有する略筒状のケース本体73aと、ケース本体73aの一端側の開口部を塞ぐ蓋体73bとを有する。そして、本実施形態の熱交換器70は、第二の規制部を構成する部材として、螺旋筒71を備える。つまり、本実施形態の熱交換器70においては、ヒータ外周面2cに装着されるバネ11と、螺旋筒71とにより、外周側流路において螺旋状の流路が形成される。
本実施形態の熱交換器70は、第一実施形態の熱交換器1においてケース3の内周面部に設けられる螺旋部12の部分を(図1参照)、ケース73を構成するケース本体73aとは別体の螺旋筒71として備える。言い換えると、本実施形態の熱交換器70は、第一実施形態の熱交換器1における螺旋部12の部分が、略筒状の部材である螺旋筒71としてケース本体73aから分離された構成を有する。
したがって、螺旋筒71は、内周側に、上述した実施形態における螺旋部12と同様の螺旋部72を有する。すなわち、螺旋部72は、螺旋筒71の内周面部において、ヒータ軸方向を旋回方向の中心軸方向とする螺旋状の溝部72aおよび突部72bを形成する。したがって、螺旋部72は、図12に示すようなヒータ2の中心軸を通る方向の断面視で、複数の歯状の部分として表れる。螺旋部72と、ヒータ2に巻き付けられたバネ11とにより、外周側流路が螺旋状に仕切られ、螺旋状の流路が形成される。
螺旋筒71は、ケース73を構成する略筒状のケース本体73aとの関係において、互いの筒軸方向を一致させた状態での相対的な近接離間方向(図12における左右方向)の移動により、ケース本体73aに対する抜き差しができる形状を有する。螺旋筒71は、ケース本体73aに対して、抜き差しされる方向に相対的に移動可能に嵌合した状態で収納される。つまり、螺旋筒71の外周面71aが、ケース本体73aの内周面73cに対する摺動面となる。
したがって、螺旋筒71の外周面71aと、ケース本体73aの内周面73cとは、筒軸方向視での形状を共通にする。これにより、螺旋筒71は、ケース本体73aに挿入された状態で、筒軸方向に対する垂直な面方向について位置決めされる。
例えば、螺旋筒71の外周面71aの形状が、四角柱の外周面のように筒軸方向視で矩形形状である場合、ケース本体73aの内周面73cの形状も、螺旋筒71の外周面71aの形状および大きさに合うように、筒軸方向視で矩形形状とされる。また、螺旋筒71の外周面71aの形状が、円柱の外周面のように筒軸方向視で円形状である場合、ケース本体73aの内周面73cの形状も、螺旋筒71の外周面71aの形状および大きさに合うように、筒軸方向視で円形状とされる。
また、螺旋筒71は、螺旋部72とバネ11とにより形成される螺旋状の流路をケース73が有する吐水口5に連通させるための出口孔部75を有する。出口孔部75は、螺旋筒71がケース73に収容された状態で吐水口5に連通するように設けられる。出口孔部75は、例えば吐水口5と同径の孔を形成する部分である。
本実施形態の熱交換器70は、ヒータ2に巻き付けられたバネ11とともに螺旋状の流路を形成する部分がケース73とは別体である点を除き、第一実施形態の熱交換器1と同様の構成を備える。このため、第一実施形態の熱交換器1と共通する部分については説明を省略する。
本実施形態の熱交換器70のように、バネ11とともに螺旋状の流路を形成する螺旋部72を有する螺旋筒71をケース73とは別体で備えることにより、熱交換器70の組立て性を向上させることができる。また、螺旋筒71をケース73から取り出すことができるので、螺旋状の流路を形成する螺旋部72等のメンテナンスを容易に行うことができる。
なお、上述の第二〜六実施形態、および本実施形態においては、第一実施形態の場合と同様に、第一の規制部を構成する部分と螺旋部12とのオーバーラップする部分を互いに接触させる構成を適用することで、上述したように効果的に沸騰音を低減することができる。また、第一実施形態の場合と同様に、バネ11等の第一の規制部を構成する部材が、第二の規制部に対して外周側流路における下流側で接触する構成を適用することで、流路内の水がヒータ外周面2cの熱を奪いやすくなり、ヒータ2と水との間の熱伝達の効率を効果的に向上させることができるので、ヒータ2の表面温度をより効果的に下げることができ、沸騰音の低減効果を高めることができる。
本実施形態の熱交換器70の製造方法の一例について、バネ11の好ましい構成とともに説明する。図13に、バネ11の構成の一例を示す。なお、図13(b)は、同図(a)におけるE1矢視図であり、同図(c)は、同図(a)におけるE2矢視図である。
上述したように、バネ11は、巻きバネとして螺旋状に形成される線材である。図13(a)、(b)に示すように、バネ11は、一端側の端部に、固定部11aを有する。固定部11aは、バネ11を形成する線材の端部が、バネ11の円筒形状の外形において径方向に沿うように内側に曲げられた直線状の部分である。
また、図13(a)、(c)に示すように、バネ11は、他端側の端部、つまり固定部11aが設けられる側と反対側の端部に、引掛け部11bを有する。引掛け部11bは、バネ11を形成する線材の端部が、バネ11の円筒形状の外形において接線方向に延び出た部分である。
このような構成のバネ11を備える熱交換器70の製造方法の一例について、図14を用いて説明する。熱交換器70の製造方法では、まず、図14(a)に示すように、バネ11がヒータ2に装着される。バネ11をヒータ2に装着するに際しては、所定の治具により、バネ11の径が広げられる。
具体的には、バネ11は、所定の治具に装着され、径が広がるような力を受ける。治具に装着された状態のバネ11は、固定部11a(図13参照)により固定される。つまり、治具において、固定部11aの部分が挟まれたり引っ掛けられたりして固定されることで、バネ11の一端側が固定される。治具においてバネ11が固定された状態で、引掛け部11b(図13参照)により、バネ11がその巻き方向(螺旋方向)と逆方向に回転させられることで、バネ11の径が広げられる。図13に示す例では、同図(c)において時計方向に引掛け部11bが回転させられることで、バネ11の径が広げられる。バネ11は、治具において径が広げられた状態で保持される。
このように治具によって径が広げられた状態のバネ11に対して、ヒータ2が挿入される。すなわち、ヒータ2のフランジ部2aよりもケース73内に挿入される側の部分が、広がった状態のバネ11に挿入される。ヒータ2がバネ11に挿入された後、バネ11が、治具により広げられた状態から解放される。つまり、バネ11が巻き方向と逆方向に回転した状態が戻される。これにより、図14(a)に示すように、バネ11が弾性により戻ってヒータ2に巻き付き、ヒータ外周面2cに密着する。そして、バネ11が装着されたヒータ2が、治具から取り外される。
次に、図14(b)に示すように、バネ11が装着されたヒータ2に、螺旋筒71がセットされる。バネ11と螺旋部72とは、ヒータ軸方向視でオーバーラップするか、あるいはバネ11の外周端と螺旋部72の内周端とが略同じ位置となるように構成される。このため、バネ11と螺旋部72との関係としては、バネ11の外径よりも螺旋部72の突部72bの内径の方が小さいか、あるいは、バネ11の外周端と螺旋部72の突部72bの突出側の端面とが接触する。
このため、螺旋筒71は、バネ11が装着されたヒータ2に対して、ヒータ2を挿入させるとともに、中心軸方向(直線F1)を回転軸方向として回転しながら装着される(矢印F2,F3参照)。螺旋筒71の回転にともなって、バネ11が螺旋部72の溝部72aに入った状態で、螺旋筒71がヒータ2を挿入させていく。このように、螺旋筒71が回転しながらヒータ2に装着されることで、バネ11がヒータ2に装着された時点ではバネ11のピッチが多少ばらついていた場合であっても、バネ11が螺旋部72の溝部72aに入っていくことで、バネ11のピッチが螺旋部72の螺旋形状に沿ってある程度修正される。
図14(c)に示すように、螺旋筒71は、その端面71bがヒータ2のフランジ部2aに接触した状態で、ヒータ2に装着される。螺旋筒71は、ヒータ2のフランジ部2aに接触した状態から、さらに半回転程度回転させられる。つまり、螺旋筒71は、端面71bをフランジ部2aに接触させた状態で、半回転程度空回しされる。
この螺旋筒71の空回しにより、螺旋部72の突部72bがバネ11を迎えに行き、螺旋部72の溝部72a内におけるバネ位置が、ヒータ2のフランジ部2a側となる。つまり、図14(d)に示すように、バネ11が外周側流路における下流側で螺旋部72の突部72bに接触した状態となる。
詳細には、螺旋筒71の端面71bがヒータ2のフランジ部2aに接触した際には、螺旋部72の溝部72a内におけるバネ位置が中心位置や外周側流路における上流側(ヒータ2の先端側)の位置にあっても、螺旋筒71の空回しを行うことで、螺旋部72の突部72bがバネ11を迎えに行き、螺旋部72の溝部72a内におけるバネ位置が外周側流路における下流側(フランジ部2a側)に移動する。上述したような螺旋筒71が回転しながらヒータ2に装着される過程におけるバネ11のピッチの修正は、バネ11が螺旋部72の溝部72aの中に収まる程度のピッチ修正であるが、上述のような螺旋筒71の空回しを行うことで、バネ11の大半の部分が、螺旋部72に対して、溝部72aにおける外周側流路の下流側(フランジ部2a側)に押し付けられたような格好となり、バネ11のピッチがさらに修正される。
このような螺旋筒71の空回しを行う際には、螺旋筒71がケース73に収容された状態で出口孔部75が吐水口5に連通する位置となるように、ヒータ2と螺旋筒71との回転方向についての相対的な位置が確認される。つまり、螺旋筒71がケース73に挿入されることで吐水口5が螺旋筒71の周壁により塞がれないように、ヒータ2と螺旋筒71との回転方向における相対的な位置が調整される。
このように螺旋筒71のヒータ2に対する空回しが行われた後、図14(e)に示すように、ヒータ2と螺旋筒71との組付け体が、ケース73内に差し込まれる。すなわち、上述したように互いの筒軸方向を一致させた状態での相対的な近接離間方向の移動により抜き差しができる螺旋筒71とケース本体73aとの関係において、ヒータ2と螺旋筒71との組付け体が、ケース本体73aの蓋体83bにより塞がれる側と反対側の開口に対して、螺旋筒71側から差し込まれる(矢印F4参照)。
ヒータ2と螺旋筒71との組付け体は、ケース73に差し込まれた後、ヒータ2のフランジ部2aがケース73のケース本体73aの開口端面にボルト等の締結具によって固定されることで、ケース73に組み付けられる。これにより、図14(f)に示すように、熱交換器70が完成する。
なお、ヒータ2とケース3との間は、フランジ部2aとケース本体73aの開口端面との間に介装されるOリング7によりシールされる。このため、螺旋筒71は、その外径がヒータ2のフランジ部2aの外径よりも小さくなるように構成される。つまり、ヒータ2と螺旋筒71との組付け体は、螺旋筒71をケース73内に差し込みつつ、フランジ部2aをケース本体73aとの間にOリング7を挟む部分として用いることから、上述したようにケース本体73aの内周面73cに対する摺動面となる外周面71aを形成する螺旋筒71の外径寸法は、フランジ部2aの外径寸法よりも小さくされる。
以上のような製造方法を行うことができる本実施形態の熱交換器70によれば、組立てを容易に行うことができる。熱交換器70においては、例えば、ケース73には温度ヒューズ等の他部品が組み付けられ、ヒータ2にはワイヤハーネス等の他部品が取り付けられる。このため、熱交換器70の組立てに際し、ケース73やヒータ2を回転させることは行いにくく、作業性の低下を招く。この点、本実施形態の熱交換器70のように、バネ11とともに螺旋状の流路を形成する部分がケース73とは別体の螺旋筒71として備えられることで、ケース73やヒータ2を回転させることなく、螺旋筒71をヒータ2に対して回転させる等の単純な作業により、部品同士の組付けを行うことが可能となり、熱交換器70が組み立てやすくなる。
また、上述したような熱交換器70の製造方法においては、バネ11を螺旋筒71に組み付けた状態で、バネ11の固定部11aを所定の治具に固定し、引掛け部11bによりバネ11を巻き方向(螺旋方向)と逆方向に回転させてバネ11の径を広げてから、ヒータ2をバネ11に挿入してもよい。このように、あらかじめバネ11を螺旋筒71に組み付けた状態(バネ11が螺旋筒71の溝部72aに1:1で収まった状態)でバネ11の径を広げることで、バネ11の径を広げる際のバネ11のピッチの変形(ばらつき)を防止することができ、バネ11のピッチを保ったままでヒータ2を組み付けることができる。つまり、あらかじめバネ11を螺旋筒71に組み付けてからヒータ2をバネ11に挿入することで、螺旋筒71の溝部72aによってバネ11のピッチの変化が規制され、螺旋筒71の溝部72aにおいてバネ11が嵌らない部分や2巻き分が重複して入る部分等が生じる事態を回避することができる。
本発明の第八実施形態について、図15および図16を用いて説明する。本実施形態の熱交換器80は、第七実施形態と同様に、第二の規制部を構成する部分が、ヒータ2を収容するケースとは別体の部材により形成されている。
図15および図16に示すように、本実施形態の熱交換器80は、ヒータ2を収容するケース83を備える。ケース83は、内周面83cを有する略筒状のケース本体83aと、ケース本体83aの一端側の開口部を塞ぐ蓋体83bとを有する。そして、本実施形態の熱交換器80は、第二の規制部を構成する部材として、巻きバネ81を備える。つまり、本実施形態の熱交換器80は、ヒータ外周面2cに装着されるバネ11と、巻きバネ81とにより、外周側流路が螺旋状に仕切られ、螺旋状の流路が形成される。
巻きバネ81は、螺旋状の部材であり、ごく薄い板状の巻きバネである。巻きバネ81は、その中心軸方向がヒータ軸方向に一致するように設けられる。つまり、図15に示すように、巻きバネ81は、その内部に、ヒータ2のうちのケース83内に位置する部分を挿入させ、バネ11が装着されるヒータ外周面2cの外側に設けられる。
図15および図16に示すように、巻きバネ81は、ヒータ2の中心軸を通る方向の断面視での形状が、ヒータ2の径方向を長手方向とする矩形状となるように、板状の部材により構成される。巻きバネ81は、螺旋状の流路を形成する部材として必要な強度を有する限り、なるべく薄い方が好ましい。図16に示すように、巻きバネ81の板厚の寸法K1は、例えば、ヒータ外周面2cに装着されるバネ11の線径B2(図3参照)よりも小さい。
巻きバネ81は、例えば、ケース83の内周面部に装着された状態で設けられる。この場合、具体的には、巻きバネ81として、自然状態での外径がケース83の内周面83cの内径よりも大きいものが採用される。そして、巻きバネ81をその螺旋方向と逆方向にねじることにより、巻きバネ81の外径を縮小させ、その状態で巻きバネ81をケース83の内部に挿入する。その後、巻きバネ81のねじりを解放することで、巻きバネ81が弾性により戻ってケース83の内周面83cに密着し、ケース83の内周面部に装着される。
また、図15および図16に示すように、本実施形態の熱交換器80においては、ケース83の内周面部に、ガイド部82が設けられている。ガイド部82は、ケース83とは別体の巻きバネ81のピッチを一定に保つためのガイド部分である。
具体的には、ガイド部82は、ケース83の内周面83cに形成される部分であり、ヒータ軸方向を旋回方向の中心軸方向とする螺旋状の突部である。したがって、ガイド部82は、図15に示すようなヒータ2の中心軸を通る方向の断面視で、複数の歯状の部分として表れる。
ガイド部82は、その螺旋形状の巻き数およびピッチがバネ11の巻き数と略同じとなるように形成される。そして、ガイド部82は、螺旋状の部材である巻きバネ81の、外周側流路における下流側(図15および図16において左側)への移動を規制することで、巻きバネ81をガイドする。
図16に示すように、ガイド部82により巻きバネ81がガイドされた状態では、ヒータ軸方向でガイド部82の外周側流路における上流側の面であるガイド面82aに、板状の巻きバネ81の一方の板面81aが接触する。つまり、巻きバネ81は、一方の板面81aをガイド部82のガイド面82aに接触させることで、ガイド部82の螺旋形状に沿って螺旋のピッチが略一定に保たれた状態で設けられる。
本実施形態の熱交換器80のように、バネ11等とともに螺旋状の流路を形成する第二の規制部を、ケース83とは別体の部材である巻きバネ81により構成することにより、螺旋状の突出部分である第二の規制部の幅寸法(ヒータ軸方向の寸法)を容易に小さくすることができる。第二の規制部の幅寸法が小さいことは、次のような観点から好ましい。
螺旋状の流路を形成する第二の規制部は、バネ11等とともに外周側流路におけるヒータ軸方向の流れを規制するための構成であること等から、ヒータ外周面2cに対してわずかな隙間を有するように設けられる。このため、第二の規制部の幅寸法が大きいと、第二の規制部とヒータ外周面2cとの間に、発熱により生じるスケールや水中のゴミ等が詰まりやすくなる。
例えば、図3に示す第一実施形態の熱交換器1においては、第二の規制部である螺旋部12を構成する突部12bの幅寸法B5が大きいほど、突部12bのヒータ外周面2cに対向する端面12eとヒータ外周面2cとの間の隙間部分(符号H1で示す破線楕円部分参照)に、スケールやゴミ等が詰まりやすい。突部12bの端面12eとヒータ外周面2cとの間の隙間部分においてスケールやゴミ等が詰まった部分には、水が通らないため、ヒータ外周面2c付近で熱がこもる。
このようにヒータ外周面2c付近において部分的に熱がこもると、その熱がこもる部分と、例えばヒータ2の内部等の他の部分とで、水の温度差が生じる。このようなヒータ2周りにおける水の温度差は、ヒータ2の割れを誘発する熱衝撃を発生させる原因となる。
このような観点から、螺旋部12を構成する突部12bの幅寸法は小さい方が好ましい。つまり、突部12bの幅寸法が小さいと、突部12bの端面12eとヒータ外周面2cとの間の隙間部分においてスケールやゴミ等が詰まりにくくなり、ヒータ2周りにおける温度差が生じにくくなる。
そして、第二の規制部の幅寸法を小さくするためには、本実施形態の熱交換器80のように、第二の規制部をケース83とは別部材の巻きバネ81とする構成が好適に採用される。すなわち、本実施形態の熱交換器80によれば、巻きバネ81の板厚(図16、寸法K1参照)がそのまま第二の規制部の幅寸法となるので、巻きバネ81の板厚を薄くすることにより、第二の規制部の幅寸法を容易に小さくすることができる。
また、本実施形態の熱交換器80のように、第二の規制部を構成する部材としてケース83とは別体の巻きバネ81を備える構成において、巻きバネ81をガイドするガイド部82が設けられることで、巻きバネ81のピッチを一定に保つことができる。これにより、螺旋状の流路において、螺旋に沿う水の流れを安定させることができ、熱効率の向上を図ることができる。ただし、ガイド部82に関し、上述したようなヒータ2の外周部でのスケールやゴミ等の詰まりを防止する観点から、ガイド部82は、ヒータ外周面2cとの間に十分な隙間が開くように、巻きバネ81の断面形状である矩形状の長手方向(図16における上下方向)の寸法との比較において、ケース83の内周面83cからわずかに突出する部分として形成される。
なお、本実施形態においては、第一実施形態の場合と同様に、第一の規制部を構成するバネ11と巻きバネ81とのオーバーラップする部分を互いに接触させる構成を適用することで、上述したように効果的に沸騰音を低減することができる。また、第一実施形態の場合と同様に、第一の規制部を構成するバネ11が、第二の規制部を構成する巻きバネ81に対して外周側流路における下流側で接触する構成を適用することで、流路内の水がヒータ外周面2cの熱を奪いやすくなり、ヒータ2と水との間の熱伝達の効率を効果的に向上させることができるので、ヒータ2の表面温度をより効果的に下げることができ、沸騰音の低減効果を高めることができる。
例えば、本実施形態の熱交換器80においては、図16に示すように、バネ11は、巻きバネ81に対して、外周側流路における下流側で接触すること、つまりヒータ軸方向について巻きバネ81の他方の板面81bに接触する位置に設けられることが好ましい。言い換えると、バネ11は、巻きバネ81に対して、上流側の面となる板面81bに接触した状態で設けられることが好ましい。
また、本実施形態の熱交換器80においては、ケース83の内周面部に設けられるガイド部82を、第七実施形態の熱交換器70が備える螺旋筒71のように、ケース83とは別部材により構成することができる。かかる構成を採用することにより、熱交換器80は、例えば次のような製造方法によって製造される。なお、以下では、ケース83とは別部材としてガイド部82を構成する部材を「螺旋ガイド部材」という。螺旋ガイド部材は、略筒状に構成される部材であり、内周側に、上述した実施形態におけるガイド部82を有する。
熱交換器80の製造方法では、螺旋ガイド部材に、巻きバネ81が回転させられながら挿入されることで、螺旋ガイド部材と巻きバネ81とが組み立てられる。ここでは、例えば、上述したように、巻きバネ81として外径がケース83の内周面83cの内径よりも大きいものが採用され、巻きバネ81が、弾性によってケース83の内周面83cに密着した状態で、ケース83の内周面部に装着される。
そして、本実施形態の熱交換器80の製造方法としては、上述した第七実施形態の熱交換器70の製造方法において、螺旋筒71が、螺旋ガイド部材と巻きバネ81との組立て体で置き換えられたものが採用される。すなわち、本実施形態の熱交換器80の製造方法においては、バネ11が装着されたヒータ2に、螺旋ガイド部材と巻きバネ81との組立て体がセットされ、空回しが行われる。そして、ヒータ2と螺旋ガイド部材および巻きバネ81との組付け体は、ケース83に差し込まれ、固定されることで、ケース83に組み付けられる。これにより、本実施形態の熱交換器80が完成する。
以上のような構成および製造方法を本実施形態の熱交換器80において採用することで、第七実施形態の場合と同様に、組立てを容易に行うことができる。また、螺旋ガイド部材をケース83から取り出すことができるので、螺旋ガイド部材が有するガイド部82等のメンテナンスを容易に行うことができる。
本発明の第九実施形態について、図17を用いて説明する。本実施形態の熱交換器90は、第一実施形態の熱交換器1との比較において、ヒータ2を収容するケースの内周部を用いずに螺旋状の流路を形成する点で異なる。つまり、上述した実施形態では、水流規制手段を構成する第二の規制部として、ケース3の内周面部に形成される螺旋部12が用いられるのに対し、本実施形態では、ヒータ2側に設けられる構成のみによって水流規制手段が構成される。
具体的には、図17に示すように、本実施形態の熱交換器90が備えるケース93は、内周面93cを有するケース本体93aと、ケース本体93aの一端側の開口部を塞ぐ蓋体93bとを有する。そして、本実施形態の熱交換器90は、ヒータ2に装着される螺旋部材91により、螺旋状の流路を形成する。つまり、本実施形態の熱交換器90においては、水流規制手段が、ヒータ外周面2cに沿うように螺旋状に形成され、ヒータ2に巻き付いた状態で設けられる螺旋部材91により構成される。
螺旋部材91は、ヒータ2の径方向に沿って形成される板状の径方向部91aと、径方向部91aの外周側端部に設けられ、ヒータ周方向に沿って形成される板状の周方向部91bとを有し、断面形状がL字状となるように形成される。径方向部91aは、ヒータ軸方向を板厚方向とする板状の部分である。周方向部91bは、径方向部91aの外周側端部から、径方向部91aに対して垂直方向(ヒータ軸方向)に突出するように形成される板状の部分である。
そして、螺旋部材91は、L字状となる断面形状の径方向部91a側の端部をヒータ外周面2cに接触させるとともに、L字状となる断面形状の周方向部91b側の端部を、ヒータ軸方向の一側(図17においては左側)に位置する隣の周回部分の径方向部91aの背面側(周方向部91bが突出する側と反対側、図17において右側)に接触させる。すなわち、図17に示すように、螺旋部材91は、径方向部91aの内周端面91cをヒータ外周面2cに接触させるとともに、周方向部91bの端面91dを、ヒータ軸方向に隣り合う周回部分に接触させることで、外周側流路をヒータ外周面2cに沿う螺旋状に仕切る。
つまり、螺旋状の螺旋部材91は、径方向部91aによってヒータ外周面2cに接触するとともに、周方向部91bによってヒータ軸方向に隣り合う周回部分に接触した状態(螺旋形状における回転方向の同じ角度の部分同士が接触した状態)で設けられる。ここで、螺旋部材91は、第一実施形態のバネ11等と同様に、内径がヒータ2の外径よりも小さなものとされ、弾性変形によって拡径させられることでヒータ外周面2cに対して密着した状態で設けられる。
これにより、ヒータ外周面2cと、径方向部91aの周方向部91bが突出する側の面91eと、周方向部91bの内周側の面91fと、周方向部91bの端面91dが接触する隣の周回部分の径方向部91aの背面91gとによって螺旋状の閉空間が形成される。このように、本実施形態では、螺旋部材91により、外周側流路がヒータ軸方向視でヒータ周方向に沿う方向に仕切られ、外周側流路におけるヒータ軸方向の流れが規制される。
なお、螺旋部材91の外周側とケース93の内周面93cとの間には、螺旋部材91の外側とケース93の内周面93cとの間の水の流れ(外抜け)を防止するためのOリング92が設けられる。
本実施形態の熱交換器90によれば、螺旋部材91のみでヒータ2の周りに螺旋状の閉空間を形成することができるので、構造を簡単にすることができる。また、螺旋部材91の巻き具合によって、螺旋部材91を容易にヒータ外周面2cに密着させることができるので、ヒータ2の曲がりや寸法公差を容易に吸収することができる。また、外周側流路において螺旋状の流路を形成するためにケース93の一部を用いないことにより、ヒータ2の曲がりや寸法公差の影響をケース93に与えることなく、流路を形成することができる。このように、本実施形態の熱交換器90によれば、少ない部品点数で、ヒータ2が有する曲がりや寸法公差を吸収することができるので、ヒータ2の曲がりや寸法公差にかかわらず、簡単な構造により確実に流路を形成することができる。
さらに、本実施形態の熱交換器90においては、螺旋部材91をヒータ2に巻き付けた後、螺旋部材91の外周側をゴム等のシートを巻くことで覆ったり、ケース93とは別のケースに収容したりすることにより、螺旋部材91において互いに接触する周回部分同士の間(線と線の間)から水が漏れることを防止することができる。
本発明の第十実施形態について、図18および図19を用いて説明する。なお、第十実施形態と共通する構成については、同一の符号を用いて適宜説明を省略する。本実施形態の熱交換器100においては、図18に示すように、水流規制手段が、ヒータ2の径方向に突出するように、ヒータ軸方向に間隔を隔てて設けられる複数の円環状の板部材である金属輪101により構成される。
金属輪101は、例えば、銅やステンレス鋼やアルミニウム等、比較的熱伝導率の高い材料により構成される。図19(a)に示すように、金属輪101は、ドーナツ型の板状部材であり、ヒータ2を貫通させた状態で、ヒータ2に保持される。図18に示すように、複数の金属輪101がヒータ2に装着されることにより、ヒータ外周面2cからヒータ2の径方向に突出する複数の鍔状の部分が形成される。図18においては、ヒータ軸方向に略等間隔を隔てて十枚の金属輪101がヒータ2に装着されている。
金属輪101は、弾性変形することにより、ヒータ外周面2cに密着する。図19に示すように、本実施形態の金属輪101は、弾性変形することによりヒータ外周面2cに密着する部分として、複数の歯部101aを有する。歯部101aは、金属輪101の内径側から径方向の外側に向けて複数箇所に切込み部101bが形成されることにより、金属輪101の内周側の縁端部が切り出されることで形成される。本実施形態では、金属輪101の周方向に五箇所に切込み部101bが設けられることで、五枚の歯部101aが形成されている。
図19(b)に示すように、歯部101aは、金属輪101の板厚方向の一側(図19(b)において上側)に向けて折り曲げられた状態とされる。歯部101aは、金属輪101の内径がヒータ2の外径よりも若干小さくなる程度に折り曲げられる。したがって、金属輪101に対して歯部101aが折れ曲がる側と反対側からヒータ2が差し込まれることにともない、折れ曲った状態の歯部101aが弾性によってさらに折れ曲がる方向に変形する。これにより、金属輪101がヒータ2に装着された状態においては、歯部101aが弾性によってヒータ外周面2cに押し付けられて密着した状態となる。ここで、あらかじめ曲げられた状態とされる歯部101aの曲げ具合は、例えば、金属輪101がヒータ2に装着されることによってヒータ外周面2cに傷が付かない程度とされる。
このように、金属輪101が弾性変形することによりヒータ外周面2cに密着する部分として有する歯部101aは、金属輪101の円環状の外形における内周縁部に、円周方向に沿って複数設けられ、ヒータ軸方向に向けて折れ曲がった状態で、弾性によりヒータ外周面2cに押し付けられる。
金属輪101は、外周端が筒状のケース93の内周面93cに接触するように形成される。つまり、金属輪101の外径寸法は、ケース93の内径寸法と略同じとなるように設定される。このように、ヒータ2に対してヒータ軸方向に間隔を隔てて複数装着される金属輪101が、ケース93の内周面93cに接触するように設けられることにより、ヒータ外周面2cとケース93の内周面93cとの間に形成される外周側流路が、ヒータ軸方向に対して垂直方向に複数に仕切られる。つまり、ヒータ外周面2cと、ケース93の内周面93cと、ヒータ軸方向に隣り合う一対の金属輪101とによって複数の円環状の空間が形成される。
そして、金属輪101は、外周側流路における通水を確保するための切欠部101cを有する。本実施形態では、切欠部101cは、金属輪101の外周側に、金属輪101の周方向について一箇所に形成される。切欠部101cにより、ヒータ2に装着された状態の金属輪101が筒状のケース93の内周面93cに接触した状態で複数の円環状の空間が形成される構成において、金属輪101によって仕切られる空間同士の通水が確保される。つまり、切欠部101cは、ケース93の内周面93cとともに金属輪101による仕切りにおける開口部を形成し、金属輪101によって仕切られる空間内に存在する水は、切欠部101cによって形成される開口部を介して隣の(図18において左隣の)空間部分に流れ込む。
複数の金属輪101がヒータ2に装着される構成において、各金属輪101が有する切欠部101cの位相(円周方向の位置)は特に限定されないが、ヒータ軸方向に隣り合う金属輪101間では、各金属輪101の切欠部101cが互いに周方向にずれた位置に存在することが好ましい。つまり、ヒータ軸方向に隣り合う各金属輪101の切欠部101c同士がヒータ軸方向に重なる部分を有しないことが好ましい。
このように、複数の金属輪101は、ヒータ軸方向に隣り合う金属輪101間で、切欠部101cがヒータ軸方向視で重ならないように設けられている。これにより、隣り合う金属輪101が有する切欠部101cが周方向にずれた位置に配置されるので、水が複数の金属輪101それぞれが有する切欠部101cを連続的に通って水がヒータ軸方向に抜けてしまうことを防止することができる。これにより、ヒータ軸方向の流れを規制することができ、流速を確保することができる。
また、各金属輪101が有する切欠部101cの位相については、隣り合う金属輪101間で180°ずれていることが好ましい。この場合、例えばある金属輪101の切欠部101cが上側に位置する場合、その金属輪101の隣の金属輪101が有する切欠部101cは下側に位置するように配置される。このような切欠部101cの位置関係が用いられることで、ヒータ外周面2cとケース93の内周面93cとの間において水を万遍なくヒータ外周面2cに沿わせることができる。
このように、複数の金属輪101が、隣り合う金属輪101間で切欠部101cの位相が180°ずれた状態となるように設けられる場合において、金属輪101により仕切られる空間部分の水の流れは次のとおりである。図18に示すように、金属輪101をヒータ軸方向に沿って通過しようとする水は、切欠部101cの部分から通過する(矢印C1参照)。切欠部101cを通過した水は、ヒータ外周面2cの周囲に沿って反対側の位相まで流れる(矢印C2参照)。そして、直前に通過した切欠部101cとは逆位相にある切欠部101cを通過することで、金属輪101を通過して次の空間部分へと流れ込む(矢印C3参照)。このような互いに反対位相にある切欠部101cを金属輪101ごとに交互に通過する流れが、外周側流路において吐水口5まで繰り返される。
本実施形態の熱交換器100によれば、複数の金属輪101がヒータ軸方向に連続して設けられる構成であるため、ヒータ2とケース93との間の流路を仕切るための構造を、ヒータ2の曲がりや寸法公差等に追従させることが容易となる。これにより、ヒータ2に曲がりや寸法公差等があっても、金属輪101をヒータ2に密着させることができ、確実に流れを規制することができる。また、金属輪101は、複数の歯部101aによってしっかりとヒータ外周面2cの表面に密着することから、熱交換器100の運搬中や施工中等に金属輪101がずれることを防止することができる。
また、本実施形態の熱交換器100においては、次のようなメリットを得ることができる。本実施形態の熱交換器100においては、金属輪101の切欠部101cの位相を一段ごとに変えることにより、水がヒータ2の周りを万遍なく流れる構成にすることができる。また、歯部101aを形成するための切込み部101bの位相を、隣り合う金属輪101間でずらすことにより、ヒータ外周面2cに沿うヒータ軸方向の流れを確実に規制することができる。したがって、上述のとおり切欠部101cを180°ずらして交互に配置する構成を採用する場合は、周方向に等間隔に設けられる切込み部101bの数は、奇数個であることが好ましい。これにより、隣り合う金属輪101間において、切込み部101bの位相が自動的にずれることとなる。
また、歯部101aによって金属輪101のヒータ外周面2cに対する接触面積を増やすことができることから、熱伝達の効率を高めることができる。また、金属輪101は、比較的公差を小さく作ることが可能であるため、金属輪101とケース93との間に隙間を生じさせにくい。これにより、金属輪101の外周側を通過するヒータ軸方向の流れ(外抜け)を効果的に防止することができる。さらに、金属輪101にヒータ軸方向に沿う突出部分(足)を形成することで、複数の金属輪101についてヒータ軸方向の位置決め(ピッチ決め)を行うことが可能となる。このような位置決めのための突出部分は、本実施形態に係る金属輪101が有する切込み部101bで兼用することができる。
なお、本実施形態では、円環状の板部材として、金属製の金属輪101が採用されているが、円環状の板部材としては、樹脂製等、他の材料により構成されるものであってもよい。
本発明の第十一実施形態について、図20、図21および図22を用いて説明する。なお、第九実施形態と共通する構成については、同一の符号を用いて適宜説明を省略する。図20に示すように、本実施形態の熱交換器110は、第十実施形態と同様に、水流規制手段が、ヒータ2の径方向に突出するように、ヒータ軸方向に間隔を隔てて設けられる複数の円環状の板部材である金属輪111により構成される。そして、図21に示すように、金属輪111が、円環状における周方向の一部が切り欠かれた切欠部111aを有する略C字状の板状部材である。
金属輪111は、切欠部111aを利用して周方向に弾性変形することにより、ヒータ外周面2cに密着する。つまり、金属輪111の内径は、ヒータ2の外径よりも小さく設定され、金属輪111がヒータ2に装着される際には、切欠部111aの間隔が広がるように弾性変形させられる(矢印D1参照)。また、金属輪111が有する切欠部111aにより、外周側流路における通水が確保される。また、第十実施形態の場合と同様に、各金属輪111が有する切欠部111aの位相については、隣り合う金属輪111間で180°ずれていることが好ましい。
本実施形態の熱交換器110によれば、金属輪111の切欠部111aにより、通水を確保する機能と、ヒータ2の曲がりや寸法公差等を吸収するための機能とを兼ねることができる。また、金属輪111は、ヒータ2の外径公差に対しても比較的広範囲で追従することができ、金属輪111をヒータ2にしっかり取り付けることができる。
図22に、金属輪111の変形例を示す。図22に示すように、本例に係る金属輪111は、複数の曲げ部111bを有する。曲げ部111bは、板状の部分が曲がることによって金属輪111の略径方向に沿うように筋状に形成される突部(反対側の面から見ると溝部)である。曲げ部111bは、金属輪111の周方向に複数形成される。本例では、図22に示すように、曲げ部111bは、金属輪111の周方向に略等間隔を隔てて五箇所に形成されている。このように、金属輪111は、曲げ部111bを有することによってより弾性変形しやすくなり、金属輪111のヒータ2への装着が容易となる。
本発明の第十二実施形態について、図23を用いて説明する。なお、第十一実施形態と共通する構成については、同一の符号を用いて適宜説明を省略する。図23に示すように、本実施形態の熱交換器120は、複数の金属輪111の外周側を覆う筒状のシート部材121を有する。
シート部材121は、ゴムや樹脂等の弾性体により構成される。シート部材121は、ヒータ2に装着される複数の金属輪111の外周端に接触するように形成される。つまり、シート部材121の内径は、金属輪111の外径と略同じ寸法とされる。シート部材121は、ヒータ2に装着される全ての金属輪111を外周側から覆うことができる長さを有する。シート部材121は、例えば、ケース93の内周面93cのヒータ軸方向の長さと略同じ長さを有する。シート部材121には、シート部材121によって囲まれる内部空間を吐水口5に連通させるための開口部121aが形成されている。
このように、本実施形態の熱交換器120においては、水流規制手段が、弾性体により構成され複数の金属輪111の外周端に密着する筒状のシート部材121を有する。本実施形態の熱交換器120によれば、シート部材121によって、金属輪111の外周端とケース93の内周面93cとの間の隙間を発生させることなく、金属輪111の外周側を通過するヒータ軸方向の流れ(外抜け)を効果的に防止することができる。なお、シート部材121の外周側とケース93の内周面93cとの間には、シート部材121の外側とケース93の内周面93cとの間の水の流れを防止するためのOリングを設けてもよい。また、ヒータ2の傾きがシート部材121の弾性変形によって吸収されることから、ヒータ2がケース73内において傾いている場合であっても、金属輪111の外周側に隙間を生じさせることがない。
本発明の第十三実施形態について、図24および図25を用いて説明する。図24に示すように、本実施形態の熱交換器130においては、水流規制手段が、ヒータ2の径方向に突出するように、ヒータ軸方向に間隔を隔てて設けられる複数の円環状の板部材であるブッシュ131により構成される。
図25に示すように、ブッシュ131は、ヒータ軸方向を中心軸の方向とする筒状の筒部131aと、この筒部131aの一端側から径方向外側に突出するフランジ部131bとを有する。図25(a)に示すように、ブッシュ131は、円環状における周方向の一部が切り欠かれた切欠部131cを有する略C字状の部材である。ブッシュ131は、例えば深絞り加工等によって作製することができる。
図25(b)に示すように、ブッシュ131は、隣り合うブッシュ131との関係において周方向についての相対的な位置決めのため、ヒータ軸方向の一端部に、係止突部131dを有し、ヒータ軸方向の他端部に、係止凹部131eを有する。係止突部131dは、ヒータ軸方向の一方側の隣り合うブッシュ131と係合することで、一方側の隣り合うブッシュ131に対する周方向の相対回転を規制する。そして、係止凹部131eは、ヒータ軸方向の他方側の隣り合うブッシュ131が有する係止突部131dを嵌合させ、他方側の隣り合うブッシュ131に対する周方向の相対回転を規制する。
係止突部131dは、三角形状の突部として形成され、係止凹部131eは、係止突部131dがヒータ軸方向に沿って嵌合可能な三角形状の凹部として形成される。ただし、係止突部131dおよび係止凹部131eについては、形状や設けられる数や位置等については特に限定されない。また、上述したように、隣り合うブッシュ131間で切欠部131cの位相を180°ずらす構成を採用する場合、係止突部131dおよび係止凹部131eについては、それぞれ切欠部131cから周方向の両側に略90°ずれた二箇所の位置に設けられることが好ましい。これにより、切欠部131cの位相を180°ずらす構成において、切欠部131cがいずれの位相にあるかにかかわらず、係止突部131dおよび係止凹部131eを共用することができ、複数種類のブッシュ131を準備する必要がない。
本実施形態の熱交換器130によれば、ブッシュ131の周方向の位置決めが容易となり、切欠部131cの位相を一段ずつずらす作業が容易となる。また、ブッシュ131の筒部131aの長さを規定することで、ブッシュ131をヒータ2上で重ねていくだけで、複数のブッシュ131間において自動的に一定のピッチを得ることができ、組立てが容易である。なお、本実施形態においても、第十二実施形態と同様に、シート部材121を備える構成を採用することができる。
本発明の第十四実施形態について説明する。本実施形態は、発熱体に折り返し部を設け、その折り返し部の周囲に形成される外周側流路に、発熱体の軸方向の流れを規制する水流規制手段を設けた点で、他の実施形態と異なる。
図26に示すように、本実施形態の熱交換器140は、発熱体としてのシーズヒータ142と、シーズヒータ142を収容するケース143とを備える。熱交換器140は、互いに略平行に形成される直線部140a・140aと、これら直線部140a・140a同士を繋ぐ円弧状に湾曲する半円状の曲線部140bとを有し、全体として略U字状に構成される。
熱交換器140は、一方の(図26において上側の)直線部140aの曲線部140bに繋がる側と反対側の端部を入水口144とし、他方の(図26において下側の)直線部140aの曲線部140bに繋がる側と反対側の端部を吐水口145とする。つまり、熱交換器140においては、入水口144から流入した水が、シーズヒータ142によって温められ、温水となって吐水口145から流出する。
シーズヒータ142は、金属管の内部に螺旋状の発熱線をMgO(酸化マグネシウム)等の熱伝導性の良い絶縁材とともに封入した管状のヒータであり、両端に端子(図示略)を有する。シーズヒータ142は、折曲げ加工等によって略U字状に形成され、直線部140a・140aと曲線部140bとを有する熱交換器140の形状に沿う形状を有する。つまり、シーズヒータ142は、熱交換器140の各直線部140a・140aの部分を構成する直線部142a・142aと、熱交換器140の曲線部140bの部分を構成する曲線部142bとを有する。シーズヒータ142は、外周面(以下「ヒータ外周面」という。)142cからの発熱によって、シーズヒータ142の外周側を通過する水を加熱する。
ケース143は、全体として略U字状に構成される熱交換器140の外装を形成する部分であり、略U字状の外形を有するシーズヒータ142の形状に対応して、樹脂や金属等により略U字形状のパイプ状に構成される。ケース143は、略U字状のシーズヒータ142の形状に沿って、シーズヒータ142を収容する略U字状の空間を形成する。したがって、ケース143は、シーズヒータ142の各直線部142a・142aを収容する直線部143a・143aと、シーズヒータ142の曲線部142bを収容する曲線部143bとを有する。
パイプ状のケース143は、その略中心(軸心)部にシーズヒータ142が位置するように、シーズヒータ142を収容する。このため、熱交換器140の直線部140a・140aおよび曲線部140bの各部において、シーズヒータ142の周方向の全周にわたって、ヒータ外周面142cとケース143との間に空間が形成される。かかる空間が、外周側流路として用いられる。
すなわち、ケース143は、シーズヒータ142の外周を覆い、ヒータ外周面142cとの間に、シーズヒータ142により加熱する水の流路(外周側流路)を形成する。具体的には、本実施形態では、ヒータ外周面142cは、直線部142a・142aおよび曲線部142bを含むシーズヒータ142全体の外周面である。また、シーズヒータ142が収容されるケース143は、直線部143a・143aおよび曲線部143bの各部において略円周面として形成される内周面部を有する。そこで、熱交換器140の直線部140a・140aおよび曲線部140bの各部において、互いに対向するヒータ外周面142cとケース143の内周面部との間に、外周側流路が形成される。
このように、本実施形態の熱交換器140においては、外周側流路は、直線状に形成される直線部と、湾曲状に形成される曲線部とを有する。詳細には、外周側流路の直線部は、シーズヒータ142の直線部142a・142aとケース143の直線部143a・143aとにより形成され、外周側流路の曲線部は、シーズヒータ142の曲線部142bとケース143の曲線部143bとにより形成される。そして、熱交換器140の両端部において、ヒータ外周面142cとケース143の内周面部とにより形成される円環状の開口部が、外周側流路に対する入水口144または吐水口145である。
以上のような構成を備える熱交換器140においては、入水口144から流入した水が、一方の直線部140aにおける外周側流路をシーズヒータ142の直線部142aによって加熱されながら流れ(矢印J1参照)、熱交換器140の曲線部140bにおける外周側流路に流れ込む。曲線部140bの外周側流路に流れ込んだ水は、シーズヒータ142の曲線部142bによって加熱されながら曲線部140bの外周側流路によって熱交換器140の他方の直線部140aにおける外周側流路まで運ばれる。この直線部140aの外周側流路をシーズヒータ142の直線部142aによって加熱されながら流れ(矢印J2参照)、吐水口145から吐出される。
そして、本実施形態の熱交換器140は、曲線部140bにおいて、外周側流路をシーズヒータ142の軸方向視でシーズヒータ142の周方向(以下「ヒータ周方向」という。)に沿う方向に仕切るとともに、外周側流路におけるシーズヒータ142の軸方向(以下「ヒータ軸方向」という。)の流れを規制する水流規制手段を有する。
図26に示すように、本実施形態の熱交換器140は、水流規制手段として、シーズヒータ142の曲線部142bに外嵌されるバネ151と、ケース143の曲線部143bの内周部に設けられる螺旋部152とを有する。
バネ151は、巻きバネとして螺旋状に形成される線材である。バネ151としては、比較的細い線径(例えば線径が0.8mm程度)のバネが用いられる。バネ151は、ケース143内に挿入されているシーズヒータ142の曲線部142bの略全体にわたって装着された状態で設けられる。
バネ151は、シーズヒータ142の曲線部142bのヒータ外周面142cに対して密着した状態で、シーズヒータ142に外嵌される。具体的には、バネ151としては、内径がシーズヒータ142の曲線部142bの外径よりも小さいものが用いられる。そして、バネ151をシーズヒータ142に装着する際には、バネ151をその螺旋方向と逆方向にねじることにより、バネ151の内径を拡大させ、その状態でバネ151をシーズヒータ142の曲線部142bに被せ、バネ151のねじりを解放することで、バネ151が弾性により戻ってヒータ外周面142cに密着する。ここで、バネ151の線径が小さい方が、より確実にヒータ外周面142cに密着する。
このように、本実施形態の熱交換器140においては、バネ151がヒータ外周面142cに密着した状態でシーズヒータ142の曲線部142bに装着されることにより、ヒータ外周面142cに沿って螺旋状に突出するように設けられる第一の規制部が構成される。つまり、本実施形態では、シーズヒータ142の曲線部142bに装着されるバネ151によって、水流規制手段が有する第一の規制部が構成される。そして、バネ151は、シーズヒータ142の曲線部142bの外周側に巻き付いた状態で弾性力によりシーズヒータ142に固定される。
螺旋部152は、ケース143の曲線部143bの内周面部において、ヒータ軸方向を旋回方向の中心軸方向とする螺旋状の溝部152aを形成する。言い換えると、螺旋部152は、ケース143の曲線部143bの内周面部において、ヒータ軸方向を旋回方向の中心軸方向とする螺旋状の突部152bを形成する。したがって、螺旋部152は、図26に示すような断面視で、複数の歯状の部分として表れる。
螺旋部152は、その螺旋形状の巻き数およびピッチがバネ151の巻き数と略同じとなるように形成される。そして、螺旋部152は、シーズヒータ142の曲線部142bに巻き付けられた状態のバネ151に螺旋状の溝部152aを沿わせるように形成される。また、螺旋部152は、螺旋状の溝部152aの幅がバネ151の線径よりも広くなるように形成される。螺旋部152とシーズヒータ142の曲線部142bに巻き付けられたバネ151とにより、外周側流路が螺旋状に仕切られ、螺旋状の流路が形成される。
このように、本実施形態の熱交換器140においては、ケース143の曲線部143bの内周面部に形成される螺旋部152により、ケース143の内周面に沿って螺旋状に突出するように設けられ、バネ151とともに螺旋状の流路を形成する第二の規制部が構成される。つまり、本実施形態では、ケース143の曲線部143bの内周側に形成される螺旋部152によって、水流規制手段が有する第二の規制部が構成される。
以上のように、本実施形態の熱交換器140においては、水を加熱する発熱体として、直線部142a・142aおよび曲線部142bを有する略U字状のシーズヒータ142が用いられている。そして、シーズヒータ142とケース143との間に形成される外周側流路は、直線状に形成される直線部と、湾曲状に形成される曲線部とを有し、少なくとも曲線部に、バネ151と螺旋部152とにより構成される水流規制手段を有する。
以上のような構成を備える本実施形態の熱交換器140によれば、バネ151と螺旋部152とにより構成される水流規制手段によって、ヒータ周方向に沿う方向の螺旋状の流れが保持され、外周側流路におけるヒータ軸方向の流れが確実に規制される。そして、バネ151と螺旋部152とにより構成される水流規制手段によれば、ヒータ軸方向の流れをより確実に規制することができるので、螺旋状の流れが保持され、螺旋状の流路を形成することによって流路面積を狭くするという作用を十分に得ることができ、流速を速くすることが可能となる。結果として、熱伝達の効率を十分に高めることができ、効果的にシーズヒータ142の表面温度を下げることができ、沸騰音の低減効果を高めることができ
る。
また、曲線部140bを有する本実施形態の熱交換器140においては、次のような作用・効果が得られる。仮に、熱交換器140が曲線部140bにおいて水流規制手段を備えない場合、曲線部140bの外周側流路では、その湾曲形状における内周側と外周側とで、水がシーズヒータ142と接触する流路の長さ(外周側流路の長さ)が異なることから、熱伝達が一様に行われない。このことは、外周側流路での突沸や沸騰音の発生等、温度特性に悪影響を及ぼす。
そこで、本実施形態の熱交換器140のように、曲線部140bに水流規制手段が設けられることにより、曲線部140bの外周側流路において、シーズヒータ142とケース143との間に形成される外周側流路を流れる水の流速を速くすることができ、シーズヒータ142と水の間の熱伝達の効率を向上させることができる。これにより、シーズヒータ142の表面温度を下げることができ、突沸の発生を抑制し、沸騰音を低減することができる。
さらに、シーズヒータ142が曲線部142bを有することは、シーズヒータ142が直線部142aのみを有する場合との比較において、熱交換器140の小型化に有利である。つまり、本実施形態の熱交換器140によれば、シーズヒータ142に曲線部142bを設けることで熱交換器140の小型化を図るに際し、曲線部140bにおいて外周側流路での突沸や沸騰音の発生等を効果的に抑制することができる。
また、水を加熱する発熱体としてシーズヒータ142を採用することにより、一般的にシーズヒータが有する特性を利点として得ることができる。シーズヒータの特性としては、例えば、振動・衝撃に強く長寿命であること、加工が容易であり様々な形状に対応可能であること、電気的な絶縁性により直接的な加熱を安全に行えること、量産性に優れ安価であること等が挙げられる。
なお、本実施形態の熱交換器140においては、水流規制手段は、曲線部140bのみに設けられているが、直線部140aに設けられてもよい。この場合、例えば図27に示すように、熱交換器140の直線部140aにおいて、シーズヒータ142の直線部142aに外嵌されるバネ151Aと、ケース143の直線部143aの内周部に設けられる螺旋部152Aとにより、水流規制手段が構成される。なお、シーズヒータ142の直線部142aに外嵌されるバネ151Aは、シーズヒータ142の曲線部142bに外嵌されるバネ151と一体のバネであってもよい。このように熱交換器140の直線部140aにおいてバネ151Aと螺旋部152Aとにより構成される水流規制手段によれば、上述した第一実施形態の熱交換器1においてバネ11と螺旋部12とにより構成される水流規制手段と同様の作用・効果を得ることができる。
また、本実施形態の熱交換器140では、水流規制手段として、第一実施形態の熱交換器1のバネ11および螺旋部12と同様に、シーズヒータ142に外嵌されるバネ151と、ケース143の内周部に設けられる螺旋部152とを有する構成が採用されていることから、上述したようなバネ11および螺旋部12についての好ましい構成を適宜採用することができる。したがって、例えば、熱交換器140においては、望ましくは、バネ151と螺旋部152とは、ヒータ軸方向視で少なくとも一部がオーバーラップしている。また、バネ151と螺旋部152とのオーバーラップする部分は、互いに接触していることが好ましい。
また、本実施形態の熱交換器140では、水流規制手段として、第一実施形態の熱交換器1と同様にバネ151と螺旋部152とを有する構成が採用されているが、上述した他の実施形態の熱交換器が水流規制手段として備える構成を採用することができる。すなわち、本実施形態の熱交換器140では、バネ151として、角断面のバネ(第三実施形態参照)や、断面形状がL字型となるバネ(第四実施形態参照)や、断面形状がヒータ外周面142cに対して接触する斜め方向の薄板形状となるバネ(第五実施形態参照)が用いられてもよい。また、本実施形態の熱交換器140では、シーズヒータ142の一部分により、水流規制手段の第一の規制部が構成されたり(第六実施形態参照)、ケース143とは別部材により、水流規制手段の第二の規制部が構成されたり(第七、第八実施形態参照)、シーズヒータ142側に設けられる構成のみによって水流規制手段が構成されたり(第九実施形態参照)してもよい。さらに、本実施形態の熱交換器140では、水流規制手段が、シーズヒータ142の径方向に突出するように、ヒータ軸方向に間隔を隔てて設けられる複数の円環状の板部材により構成されたり(第十、第十一、第十三実施形態参照)、その複数の円環状の板部材の外周側を覆う筒状のシート部材を有する構成が採用されたり(第十二実施形態参照)てもよい。
なお、以上説明したような各実施形態に例示した水流規制手段は、ケース3(ケース143)内に形成される流路を流れる水の流速を速くすることによって熱伝達を向上させてヒータ2(シーズヒータ142)の表面温度を下げるものである。このため、水流規制手段によれば、水の流速が速くなることから、ヒータ2(シーズヒータ142)の表面等に発生するスケールの生成を抑制することができ、また、ヒータ2(シーズヒータ142)の表面に生じたスケールを剥離する効果も期待できる。さらに、スケールと同様にヒータ2(シーズヒータ142)の表面に存在することでヒータ2(シーズヒータ142)と水との熱伝達を低下させる要因となる気泡についても、水流規制手段による流速が速くなる作用によって、ヒータ2(シーズヒータ142)の表面から剥離する効果を規定することができる。このように、水流規制手段によれば、流速が速くなることによってヒータ2(シーズヒータ142)の表面に生じるスケールや気泡を取り除く効果を期待することができ、熱伝達の低下を効果的に抑制することができる。
以下では、上述したような各実施形態に係る熱交換器を備える衛生洗浄装置の一例について、図28および図29を用いて説明する。図28に示すように、本実施形態に係る衛生洗浄装置200は、トイレ装置300において、洋式腰掛便器301の上に設置された状態で設けられる。
衛生洗浄装置200は、本体部201と、本体部201に対して開閉自在に軸支された便座202及び便蓋203と、ノズル204とを備える。ノズル204は、トイレ装置300の使用者によるスイッチ操作等に応じて、本体部201から洋式腰掛便器301のボウル内に対して進退可能に設けられる。衛生洗浄装置200は、ノズル204を洋式腰掛便器301のボウル内に伸び出した状態で、ノズル204の先端部に設けられる吐水口から洗浄水を噴射する。ノズル204から噴射された洗浄水は、人体の局部を洗浄する。
図29に示すように、衛生洗浄装置200は、水道や貯水タンクなどの給水源205から給水される水を、バルブユニット206を介して熱交換器1に供給する。そして、熱交換器1において、供給された水が温められた温水とされ、洗浄水としてノズル204に供給される。バルブユニット206は、止水弁としての機能を有する電磁開閉弁や調圧弁等の弁機構を有する。
以上のように、本実施形態に係る衛生洗浄装置200は、第一実施形態に係る熱交換器1を備え、熱交換器1により生成した温水を洗浄水とし、この洗浄水をノズル204から吐出することで、人体の局部を洗浄する。このように、本実施形態に係る熱交換器1を備える衛生洗浄装置200によれば、局部の洗浄を受ける使用者にとって不快な熱交換器における沸騰音を低減することができる。なお、衛生洗浄装置200においては、第一実施形態の熱交換器1に限らず、他の実施形態の熱交換器であっても同様に適用可能である。