図1は、送信デバイスTDを示している。送信デバイスTDは、以下のようなデータ値のシーケンスvを受信する。
v=[v(1),…,v(K)]、インデックスk=1、…、K
マッピングステップMAPにおいて、L個の連続するデータ値からなる組が、PSKコンステレーション図のデータシンボルs(m)上にマッピングされ、それによって、以下のようなデータシンボルのシーケンスsが生成される。
s=[s(1),…,s(M)]、インデックスm=1、…、M、ただし、M=K/L。
各データシンボルs(m)は、以下のようなデータ値の部分シーケンスを表す。
s(m)=[v(L(m−1)+1),…,v(Lm)]
差動符号化ステップDECにおいて、データシンボルのシーケンスsが、以下のような差動符号化データシンボルのシーケンスsdに差動符号化される。
sd=[sd(1),…,sd(M)]、インデックスm=1、…、M
差動符号化データシンボルのシーケンスsdは、以下のような差動符号化データ値のシーケンスvdを表す。
vd=[vd(1),…,vd(K)]、インデックスk=1、…、K
各差動符号化データシンボルsd(m)は、以下のような差動符号化データ値vd(k)の部分シーケンスを表す。
sd(m)=[vd(L(m−1)+1),…,vd(Lm)]
差動符号化データシンボルsd(m)が取り得る値は、以下でさらに詳細に説明するように、光データ送信のために使用されるPSKコンステレーション図のコンステレーション点によって表される。
変調ステップMODにおいて、送信デバイスTDは、差動符号化データシンボルsdに応じて、またPSKコンステレーション図に従って、光搬送波信号ocs(t)の位相を変調することによって光送信信号ots(t)を生成する。光搬送波信号ocs(t)の位相は、差動符号化データシンボルsdを表すコンステレーション点のシンボル位相値に対応するように変調される。
差動符号化位相変調光信号ots(t)は、光送信チャネルOTCを介して送信される。送信中、光送信信号ots(t)は、光送信チャネルOTCによって引き起こされる位相変化にさらされることがある。
送信信号ots(t)が、受信デバイスRDにおいて受信される。位相推定ステップPESにおいて、受信信号ots(t)から、位相誤差PEが推定される。位相補正ステップPCにおいて、受信信号ots(t)の位相が、推定位相誤差PEだけ補正され、それによって、補正された光信号os(t)が生成される。補正された光信号os(t)は、位相スリップを生じている可能性がある。
図2a、図2b、図2c、および図2dに関して、位相スリップの影響を詳細に説明する。図2aは、BPSKコンステレーション図CDを示しており、CDにおいて、位相値がπであるコンステレーション点SY0は、データシンボル「0」を表し、位相値が0であるコンステレーション点SY1は、データシンボル「1」を表す。隣接コンステレーション点を隔てる分離角の絶対値は、πである。一例として、受信光信号の位相および振幅は、図2aにおいて円で示され、位相値がPRSYで表される、受信データシンボルRSYに対応するようなものとすることができる。
「1」に等しいデータシンボルSY1が送信された場合、光通信チャネルによって引き起こされる位相オフセットPO1は、PRSYの位相値に等しい。位相オフセットは、例えば、位相値PRSYにほとんど等しい値PEであると推定されることがある。位相差PDOは、このケースでは、推定位相オフセットPEと実際の位相オフセットPO1との間の絶対誤差である。シンボルSY1が送信された場合に、推定位相オフセットPEだけ位相補正を行った結果が、図2bに示されている。補正シンボルCRSYの補正位相は、残存位相誤差RPE1だけ、データシンボルSY1の位相値から異なり、残存位相誤差RPE1は、推定誤差PDOの絶対値に等しい。補正位相値CRSYは、データシンボルSY1の送信を高い信頼性で検出するために、後で使用することができる。
しかし、「0」に等しいデータシンボルのSY0が実際には送信された場合もあり得、その場合、図2aに示される位相オフセットPO0が、光通信チャネルによって引き起こされた。この場合も、推定誤差のせいで、推定位相オフセットが値PEに等しいと推定されるならば、推定位相オフセットPEと、送信チャネルによって引き起こされた実際の位相オフセットPO0との間には、大きな相違が存在する。
図2cは、シンボルSY0が送信された場合に、推定位相オフセットPEだけ位相補正を行った結果を示している。そのような補正は、この場合も、補正受信シンボル位相値CRSYをもたらす。残存位相誤差RPE2は、この場合、πマイナス位相差PDOの値に等しい。図2cから明らかなように、この場合は、さらなる仮定がなされない限り、実際に送信されたシンボルSY0の送信を高い信頼性で検出するために、補正受信シンボル位相値CRSYを使用することはできない。しかし、図2dに示されるように、分離角πだけのコンステレーション図の回転を引き起こす位相スリップの発生が仮定される場合、補正受信シンボル位相値CRSYは、残存位相誤差RPE2’だけ、送信シンボルSY0から異なり、残存位相誤差RPE2’は、位相差PDOの値に等しい。したがって、位相スリップに起因するコンステレーション図の回転の可能性を許すことによって、検出データシンボルのより高い信頼性が、したがって、導出データ値のより高い信頼性も、達成することができる。
図1に戻ると、推定ステップES内において、推定アルゴリズムEAを使用して、
差動復号データ値
v’=[v’(1),…,v’(K)]、インデックスk=1、…、K
が、補正された光信号os(t)から導出される。推定アルゴリズムEAは、送信側において差動符号化位相シフトキーイング変調光信号ots(t)を生成するために使用される、差動符号化規則を考慮した推定アルゴリズムである。
推定アルゴリズムEAは、インデックスがtの各時間インスタンスに関して、異なる状態Stiを規定し、ここで、iは、状態インデックスである。BPSKコンステレーション図を例とした場合の、状態インデックス値i=1、2、3、4が、推定アルゴリズムEAの左端に示されている。N個のコンステレーション点を有するPSKコンステレーション図の場合、規定される状態の数は、N2に等しい。
推定アルゴリズムEAは、インデックスがt=1である時間インスタンスに関して、送信された可能性がある差動符号化データシンボルsd(t=1)が「0」であることを表す仮説的な状態S11と、送信された可能性がある差動符号化データシンボルsd(t=1)が「1」であることを表す仮説的な状態S12とを規定する。状態S11およびS12のどちらの場合も、位相スリップはまだ発生していないと仮定される。
アルゴリズムEAは、インデックスがt=2である時間インスタンスに関しても、送信された可能性がある差動符号化データシンボルsd(t=2)が「0」であることを表す仮説的な状態S21と、送信された可能性がある差動符号化データシンボルsd(t=2)が「1」であることを表す仮説的な状態S22とを規定する。状態S21およびS22のどちらの場合も、時間インスタンスt=1から時間インスタンスt=2までの間に、位相スリップはまだ発生していないと仮定される。
さらに、アルゴリズムEAは、時間インスタンスt=2に関して、送信された可能性がある差動符号化データシンボルsd(t=2)が「0」であることを表す仮説的な状態S23と、送信された可能性がある差動符号化データシンボルsd(t=2)が「1」であることを表す仮説的な状態S24とを規定する。状態S23およびS24のどちらの場合も、時間インスタンスt=1から時間インスタンスt=2までの間に、位相スリップが発生したと仮定される。
さらに、遷移T111、…、T241が規定される。遷移Tijtは、インデックスijtを有し、このインデックスは、遷移が第iの状態から開始して、遷移が第jの状態に到ること、また遷移が時間インデックスtにおいて開始することを示す。
位相スリップが発生しなかったと仮定される、状態S11、S12、S21、S22間の遷移T111、T121、T211、T221が規定される。位相スリップが発生しなかった場合の、状態S11、S12から状態S21、S22に到る各遷移T111、T121、T211、T221に対して、それぞれの差動復号データシンボルs(t=2)が関連付けられ、これによって、アルゴリズムは、送信側において使用された差動符号化規則を考慮する。後で詳細に説明するように、遷移T111、T121、T211、T221に対して、それぞれの遷移確率が、受信光信号の振幅値から導出される。
さらに、位相スリップが発生した場合に発生する、状態S11、S12、S23、S24間の遷移T131、T231、T141、T241が規定される。位相スリップが発生した場合の、状態S11、S12から状態S22、S23に到る各遷移T131、T231、T141、T241に対して、差動復号データシンボルs(t=2)が関連付けられ、これによって、アルゴリズムは、送信側において使用された差動符号化規則を考慮する。後で詳細に説明するように、遷移T111、T121、T211、T221に対して、それぞれの遷移確率が、受信光信号の振幅値から導出される。
位相スリップが発生した場合に状態S11、S12と状態S23、S24間を移る遷移T131、T231、T141、T241の遷移確率は、所定の位相スリップ確率値P_slipを使用して重み付けされる。
さらに、図1には示されていないが、位相スリップが発生しなかった場合および位相スリップが発生した場合の差動符号化データシンボルを表す状態を、さらなる時間インスタンスt=3、4、…に関して規定することができる。
規定された状態および規定された遷移確率を使用して、差動復号データ値のシーケンスv’を導出するために、アルゴリズムEAを使用することができる。
アルゴリズムEAは、送信された可能性のある差動符号化データシンボルのシーケンスに関して、確率を最大化するのに適したアルゴリズムとすることができる。代替として、アルゴリズムEAは、導出された差動復号データシンボル関して、それぞれの確率の最大化を達成するのに適したアルゴリズムとすることができ、この最大化のために、アルゴリズムに加えて、追加のステップが実行されることがある。アルゴリズムEAに関するこれらのオプションについては後で詳細に説明する。
図3は、規定された状態および規定された状態遷移確率を定義するための基礎として採用されたモデルを説明するブロック図BDを示している。モデルは、送信側における差動符号化時間離散データシンボルs(t)のための差動符号化規則DERの他に、受信機における位相補償によってもたらされる、位相スリップ確率P_slipを有する起こりうる位相スリップも含む。この説明は、BPSKを例にして行われる。
差動符号化データシンボルsd(t)は、遅延要素DEを含む線形フィードバックシフトレジスタを使用して、導出される。導出された差動符号化データシンボルsd(t)は、式
は、モジュロ加算を示す。BPSKの場合、データシンボルs(t)は、データ値v(t)に等しく、差動符号化データシンボルs(t)は、差動符号化データ値vd(t)に等しい。
起こりうる位相スリップPSは、コンステレーション図の分離角だけのコンステレーション図の回転としてモデル化される。位相スリップは、所定の位相スリップ確率P_slipを有し、これは、例えば、10−3の値に設定することができる。BPSKの場合、分離角はπであり、したがって、BPSKコンステレーション図の回転は、シンボル値「0」と「1」との交換に等しく、それは、位相スリップの発生時における、差動符号化データシンボルsd(t)のビット反転に等しい。BPSKの場合、これは、差動符号化データ値vd(t)のビット反転にも等しい。
起こりうる位相スリップから影響を受けた可能性のある差動符号化データシンボルは、sd’(t)として与えられ、BPSKの場合、影響を受けた可能性のある差動符号化データ値vd’(t)は、影響を受けた可能性のある差動符号化データシンボルsd’(t)に等しい。
位相スリップが発生しない場合、影響を受けた可能性のある差動符号化データシンボルsd’(t)は、差動符号化規則DERによって提供される送信された可能性のある差動符号化データシンボルsd(t)に等しい。位相スリップが発生せず、さらなる送信歪みも発生しない場合、影響を受けた可能性のある差動符号化データシンボルsd’(t)は、送信された可能性のある差動符号化データシンボルsd(t)に等しい。
図4は、すでに図1に示された推定アルゴリズムEAを、状態S11、…、S24および遷移T111、…、T241と一緒に、より詳細に示している。
次に、アルゴリズムEAが差動符号化規則をどのように考慮するかについて詳細に説明する。先に述べたように、状態S11、…、S24は、送信された可能性のある対応する差動符号化データシンボルを表す。
状態S11、S12、S21、S22については、位相スリップが発生しなかったと仮定されるので、送信された可能性のある差動符号化データシンボルsd(t)に等しい差動符号化データシンボルsd’(t)が、これらの状態S11、S12、S21、S22に関連付けられる。
状態S23、S24は、位相スリップが発生した場合の、差動符号化データシンボルsd(t)を表す。したがって、これらの状態S23、S24に対しては、関連付けられた差動符号化データシンボルsd(t)に等しくない、対応する影響を受けた可能性のある差動符号化データシンボルsd’(t)が関連付けられる。
時間インスタンスt=1において、図3の差動符号化器DERは、sd(t=1)=0の状態にあると仮定する。
次の連続するデータシンボルs(t=2)が「0」に等しく、位相スリップが発生しない場合、差動符号化器DERは、状態S21によって表されるsd(t=2)=0の状態に遷移する。差動復号データシンボルとしての次の連続するデータシンボルs(t=2)=0は、対応する状態遷移T111に関連付けられる。
次の連続するデータ値s(t=2)が「1」に等しく、位相スリップが発生しない場合、差動符号化器DERは、状態S22によって表されるsd(t=2)=1の状態に遷移する。差動復号データシンボルとしての次の連続するデータシンボルs(t=2)=1は、対応する状態遷移T121に関連付けられる。
次の連続するデータシンボルs(t=2)が「0」に等しく、位相スリップが発生する場合、差動符号化器DERは、sd(t=2)=0の状態に遷移する。これは、状態S23によって表され、sd’(t=2)=1の影響を受けた可能性のある差動符号化データシンボルにも関連付けられる。差動復号データシンボルとしての次の連続するデータシンボルs(t=2)=0は、対応する状態遷移T131に関連付けられる。
次の連続するデータシンボルs(t=2)が「1」に等しく、位相スリップが発生する場合、差動符号化器DERは、sd(t=2)=1の状態に遷移する。これは、状態S24によって表され、sd’(t=2)=0の影響を受けた可能性のある差動符号化データシンボルにも関連付けられる。差動復号データシンボルとしての次の連続するデータシンボルs(t=2)=1は、対応する状態遷移T141に関連付けられる。
上では、差動符号化データシンボルがsd(t=1)=0である場合に関して、差動復号データシンボルs(t)が、位相スリップが発生しない場合に、状態遷移T111、T121によってどのように表されるか、また差動復号データシンボルs(t)が、位相スリップが発生する場合に、状態遷移T131、T141によってどのように表されるかについて詳細に説明した。時間t=1における差動符号化データシンボルがsd(t=1)=1である場合に関しては、位相スリップが発生しない場合の差動復号データシンボルs(t=2)は、状態遷移T211、T221によって表され、一方、位相スリップが発生する場合の差動復号データシンボルs(t=2)は、状態遷移T141、T241によって表される。
差動復号データシンボルs(t)を表す状態遷移T111、…、T241は、対応する遷移確率γ111、…、γ241を有する。この例では、遷移確率γ111、…、γ241は、対数領域で与えられるが、これは、必ずしもそうである必要はなく、代わりに、遷移確率は、線形領域で与えることもできる。遷移確率γ111、…、γ241は、時間t=2における受信光信号から対数値として導出される確率値Lsd’(t=2)を使用して、初期化される。正規化を理由として、確率値Lsd’には、係数
を乗算することができ、ここで、Nは、PSKコンステレーション図のコンステレーション点の数である。
確率値Lsd’(t=2)は、時間t=2における光信号から導出され、影響を受けた可能性のある差動復号データシンボルsd’(t)が「0」に等しいか、それとも「1」に等しいかについての確率を示す。影響を受けた可能性のある差動符号化データシンボルsd’(t)が「1」に等しい確率が高い場合、値Lsd’(t=2)は、大きな正の値を取る。影響を受けた可能性のある差動符号化データシンボルsd’(t)が「0」に等しい確率が高い場合、値Lsd’(t=2)は、大きな負の値を取る。値Lsd’(t=2)を受信光信号からどのように導出できるかについては、図5a、図5b、および図5cに関して、後で詳細に説明される。
遷移確率γ111は、状態S11から状態S21に遷移する確率を示す。状態S11は、送信された可能性のある差動符号化データシンボルがsd(t=1)=0であることを表す。状態S21は、位相スリップが発生しない場合に、送信されたと仮定された差動符号化データシンボルがsd(t=2)=0であることを表し、影響を受けた可能性のある差動符号化データシンボルがsd’(t=2)=0であることも表す。確率値Lsd’(t=2)を使用して、遷移確率γ111が初期化される。影響を受けた可能性のある差動符号化データシンボルsd’(t=2)が、sd’(t=2)=0のように、0に等しい確率が高い場合、確率値Lsd’(t=2)は、大きな負の値を取る。したがって、遷移確率γ111は、確率値Lsd’(t=2)に−1を乗算した値で初期化される。
遷移確率γ121は、状態S11から状態S22に遷移する確率を示す。状態S11は、送信された可能性のある差動符号化データシンボルがsd(t=1)=0であることを表す。状態S22は、位相スリップが発生しない場合に、送信されたと仮定された差動符号化データシンボルがsd(t=2)=1であることを表し、影響を受けた可能性のある差動符号化データシンボルがsd’(t=2)=1であることも表す。確率値Lsd’(t=2)を使用して、遷移確率γ111が初期化される。影響を受けた可能性のある差動符号化データシンボルsd’(t=2)が、sd’(t=2)=1のように、1に等しい確率が高い場合、確率値Lsd’(t=2)は、大きな正の値を取る。したがって、遷移確率γ111は、確率値Lsd’(t=2)に+1を乗算した値で初期化される。
遷移T211、T221、T131、T141、T231、T241のさらなる遷移確率γ211、γ221、γ131、γ141、γ231、γ241も、確率値Lsd’(t=2)を使用して、類似の方法で初期化される。この初期化のために使用される符号は、それぞれの遷移T211、T221、T131、T141、T231、T241が到る状態によって表される、送信されたと仮定された差動符号化データシンボルsd(t=2)および影響を受けた可能性のある差動復号データシンボルがsd’(t=2)に応じて、+または−に選択される。
位相スリップが発生する場合の、時間t=2における差動復号データシンボルs(t)を表す、状態遷移T131、T231、T141、T241の遷移確率γ131、γ141、γ141、γ241は、所定の位相スリップ確率P_slipを使用して重み付けされる。この重み付けは、遷移確率γ131、γ141、γ141、γ241に対数項log(P_slip)を加算することによって実行される。
明瞭にするため、本出願において与えられる例では、logと記される対数は、底がeである自然対数を示す。これは非限定的な例である。
好ましくは、正規化を理由として、位相スリップが発生しない場合の、差動復号データシンボルs(t)を表す、状態遷移T111、T121、T211、T221の遷移確率γ111、γ121、γ211、γ221は、所定の位相スリップ確率P_slipを使用して重み付けされる。この重み付けは、遷移確率γ111、γ121、γ211、γ221に対数項log(1−P_slip)である正規化項を加算することによって実行される。
次に、図5a、図5b、および図5cに関して、影響を受けた可能性のある差動復号データシンボルが、t=2において、「0」に等しいか、それとも「1」に等しいかについての確率を示す確率値Lsd’(t=2)を、受信光信号からどのように導出できるかについて詳細に説明する。
図5aは、受信光信号ots(t)から1つまたは複数の確率値Lsd’(t)を導出するための方法のステップを示している。混合ステップMIXにおいて、受信光信号ots(t)は、基本的には搬送波周波数を有する光位相コヒーレント搬送波信号cs(t)と混合される。以下のように、光位相コヒーレント搬送波信号cs(t)の位相φcsは、送信側において使用される光搬送波信号の位相φocsに、PSK分離角φSEP−PSKの整数倍をプラス/マイナスした位相
φcs=φocs±N・φSEP−PSK、N=0、1、2、…
に等しい。
この混合の結果、光ベースバンド信号obs(t)が得られる。光ベースバンド信号obs(t)は、アナログ−デジタル変換ADCを介して、サンプリングされた電気信号ebs(t)に変換される。位相オフセット推定ステップPESにおいて、送信チャネルによって引き起こされた位相オフセットPEが、サンプリングされた電気信号ebs(t)から推定される。この推定位相オフセットPEは、位相補正ステップCORRに提供される。位相補正ステップCORRにおいて、サンプリングされた電気信号ebs(t)の位相が、推定位相オフセットPEだけ変更される。結果の電気的にフィルタリングされた信号efs(t)は、その後、分析ステップASにおいて、1つまたは複数の確率値Lsd’を導出するために使用される。
図5bは、この例では、BPSK変調方式のための、PSKコンステレーション図CDを示している。位相位置φ=0におけるコンステレーション点SY1は、値がsd=1の差動符号化データシンボルを表す。位相位置φ=0におけるコンステレーション点SY1は、+1の信号振幅に等しい。位相位置φ=πにおけるコンステレーション点SY0は、値がsd=0の差動符号化データシンボルを表す。位相位置φ=πにおけるコンステレーション点SY0は、−1の信号振幅に等しい。
非限定的な例として、時間インスタンスt=2に関して、補正受信シンボル値CRSYが、電気的にフィルタリングされた信号efs(t)から導出されることを仮定する。位相補正と組み合わされる送信チャネルは、位相スリップを発生させることがある送信歪みばかりでなく、加法的平均白色ガウス雑音(AWGN)信号の形式を取る送信歪みのせいで、コンステレーション点SY0、SY1からの補正受信シンボル値CRSYの偏差も引き起こすと仮定される。
受信差動符号化データシンボルsd’(t=2)が「0」に等しいか、それとも「1」に等しいかを示す確率値が決定される。これのため、対数尤度比
が、対数領域において確率値として計算される。本明細書では、P(sd’(t)=1)は、sd’が「1」に等しい確率であり、一方、P(sd’(t)=0)は、sd’が「0」に等しい確率である。
分散が
である加法的AWGN雑音信号を仮定すると、対数尤度比Lsd’(t)は、
として容易に決定できることを示すことができ、ここで、yは、コンステレーション点SY0およびSY1がそれに沿って配置される実軸上の補正受信シンボルCRSYの振幅である。仮定されるAWGN雑音の分散
図5cは、確率P(sd’(t)=0)=1およびP(sd’(t)=1)=1に関して、Lsd’(t)の取りうる値のグラフを示している。P(sd’(t)=1)の確率が高いほど、確率値Lsd’(t)は、大きな正の値を取り、P(sd’(t)=0)の確率が高いほど、確率値Lsd’(t)は、大きな負の値を取ることが明らかである。
時間インスタンスt=2に関して、確率値Lsd’(t=2)が補正受信シンボル値CRSYからどのように導出できるかが詳細に示された。補正受信シンボル値CRSYは、受信光信号の位相コヒーレント混合と、推定位相オフセット分の位相補正とによって獲得された。さらなる時間インスタンスに関して、さらなる補正受信シンボル値を獲得することによって、それぞれの時間インスタンスに関して、受信差動符号化シンボルsd’(t)が「1」に等しいか、それとも「0」に等しいかを示す、確率値Lsd’(t=2)を導出することができる。
図5aに戻ると、位相オフセットPEを推定するステップPESは、「Viterbi,A.J.、Viterbi,A.M.:『Nonlinear estimation of PSK−modulated carrier phase with application to burst digital transmission』、IEEE Transaction on Information Theory、1983、29、543−551ページ」において提案された方法に依存して、または代替として、「Pfau,T.、Hoffmann,S.、Noe,R.、『Hardware−Efficient Coherent Digital Receiver Concept With Feedforward Carrier Recovery for M−QAM Constellations』、Journal of Lightwave Technology、第27巻、989−999ページ、2009」において提案された方法に依存して、実行することができる。
さらに、送信側において使用される光搬送波信号の周波数が、コヒーレント混合MIXのために使用される光信号cs(t)の周波数から外れることがある場合、図5aには明示的に示されていない周波数オフセット推定のステップにおいて、周波数オフセットを受信光信号ots(t)から推定することができる。その後、図5aには明示的に示されていない周波数補償のステップにおいて、搬送波信号cs(t)のこの周波数を、推定周波数オフセットだけ変化させることができる。周波数オフセットの推定は、「Andreas Leven、Noriaki Kaneda、Ut−Va Koc、Young−Kai Chen、『Frequency Estimation in Intradyne Reception』 Photonics Technology Letters、IEEE、第19巻、2007、366−368ページ」において提案される方法に従って、また代替として、「A.D’Amico、A.D’Andrea、R.Regiannini、『Efficient non−data−aided carrier and clock recovery for satellite DVB at very low signal−to−noise ratios』 Selected Areas in Communications、IEEE Journal on、第19巻、2001、2320−2330ページ」において提案される方法に依存して、実行することができる。
位相スリップが発生しない場合および位相スリップが発生する場合において、送信されたと仮定された差動符号化データシンボルsd(t=2)および受信された影響を受けた可能性のある差動復号データシンボルsd’(t=2)をモデル化するために、時間インスタンスt=1およびt=2に関して、状態および遷移確率をどのように定めるかについて、図4に関して詳細に説明した。
位相スリップが発生しなかったと仮定して、t=2に関して、送信された可能性のある差動符号化データシンボルsd(t)を表す状態S21、S22と、さらに、位相スリップが発生したと仮定して、t=2に関して、送信された可能性のある差動符号化データシンボルsd(t)を表す状態S23、S24とをどのように規定するかについて詳細に要点を説明した。
さらに、位相スリップが発生しなかったと仮定した場合の、状態S11、S12から状態S21、S22への遷移T111、T121、T211、T221の遷移確率γ111、γ121、γ211、γ221をどのように規定するかについて詳細に要点を説明した。導出された確率値Lsd’(t=2)および所定の位相スリップ確率P_slipに応じた、これらの遷移確率γ111、γ121、γ211、γ221の値の決定についても要点を説明した。
さらに、位相スリップが発生したと仮定した場合の、状態S11、S12から状態S23、S24への遷移T131、T141、T231、T241の遷移確率γ131、γ141、γ231、γ241をどのように規定するかについて詳細に要点を説明した。導出された確率値Lsd’(t=2)および所定の位相スリップ確率P_slipに応じた、これらの遷移確率γ131、γ141、γ231、γ241の値の決定についても要点を説明した。
次に、位相スリップが発生しない場合および位相スリップが発生する場合において、送信された可能性のある差動符号化データシンボルsd(t=3)を差動復号データシンボルs’(t=3)と一緒にモデル化するために、時間インスタンスt=2およびt=3に関して、状態および遷移確率をどのように定めるかについて、図6に関して要点を説明する。
図6は、図4にすでに示されたアルゴリズムEAの拡張EA2を示している。
図6は、図4にすでに示された状態S21、S22、S23、S24を示している。さらに、状態S31、S32、S33、S34が示されており、それらは、それぞれ、対応する送信されたと仮定された差動符号化データシンボルsd(t=3)および対応する影響を受けた可能性のある差動符号化データシンボルsd’(t=3)を表す。
t=1からt=2までの間に位相スリップが発生しなかったと仮定すると、アルゴリズムEA2は、状態S21または状態S22にある。これらの状態S21、S22から状態S31、S32への状態遷移T112、T122、T122、T222が示されている。これらの状態遷移T112、T121、T122、T222は、図6に示されるように、t=2からt=3までの間に、位相スリップが発生しなかったと仮定した場合の、対応する差動復号データシンボルs(t=3)を表す。したがって、遷移確率γ111、γ121、γ211、γ221は、t=2の例で先に詳細に説明したように、導出された確率値Lsd’(t=3)を重み項のlog(1−P_slip)と一緒に使用して決定される。
t=1からt=2までの間に位相スリップが発生したと仮定すると、アルゴリズムEA2は、状態S23または状態S24にある。これらの状態S23、S24から状態S33、S34への状態遷移T332、T342、T432、T442が示されている。これらの状態遷移T332、T341、T432、T442は、図6に示されるように、t=2からt=3までの間に、位相スリップが発生しなかったと仮定した場合の、対応する差動復号データシンボルs(t=3)を表す。したがって、遷移確率γ332、γ342、γ432、γ442は、t=2の例で先に詳細に説明したように、導出された確率値Lsd’(t=3)を重み項のlog(1−P_slip)と一緒に使用して決定される。
アルゴリズムEA2が状態S23またはS24の一方にあるように、t=1からt=2までの間に位相スリップが発生したと仮定し、さらに、t=2からt=3までの間にも位相スリップが発生したと仮定すると、これが、t=2からt=3までの間に、コンステレーション図のさらなる回転を引き起こす。これは、状態S23またはS24の一方から他の状態S31またはS32の一方への遷移によってモデル化される。t=2からt=3までの間の位相スリップをモデル化した状態遷移は、図6に示されるように、これらの状態S23、S24から状態S33、S34への状態遷移T312、T322、T412、T422である。対応する遷移確率γ312、γ322、γ412、γ422は、t=2の例で先に詳細に説明したように、導出された確率値Lsd’(t=3)を重み項のlog(P_slip)と一緒に使用して決定される。
t=1からt=2までの間に位相スリップが発生しなかったと仮定すると、アルゴリズムEA2は、状態S21または状態S22にある。t=2からt=3までの間に、位相スリップが発生しなかったと仮定した場合の、対応する差動復号データシンボルs(t=3)を表すために、これらの状態S21、S22から状態S33、S34への状態遷移T132、T142、T232、T242を定めることができる。これらの状態遷移T132、T142、T232、T242は、提示が煩雑になるので、図6には示されていない。対応する遷移確率γ111、γ121、γ211、γ221は、t=2の例で先に詳細に説明したように、導出された確率値Lsd’(t=3)を重み項のlog(1−P_slip)と一緒に使用して決定される。
図4に関して、位相スリップが発生しない場合および位相スリップが発生する場合において、送信された可能性のある差動符号化データシンボルsd(t=2)を差動復号データシンボルs(t=2)と一緒にモデル化するために、推定アルゴリズムEAにおいて、時間インスタンスt=1およびt=2に関して、状態および遷移確率をどのように定めるかについて詳細に説明した。次に、図6に関して、位相スリップが発生しない場合および位相スリップが発生する場合において、送信された可能性のある差動符号化データシンボルsd(t=3)を差動復号データシンボルs(t=3)と一緒にモデル化するために、推定アルゴリズムの拡張EA2において、時間インスタンスt=2およびt=3に関して、状態および遷移確率をどのように定めるかについて詳細に説明した。当業者は、図4に示されたアルゴリズムEAを図6に示されたアルゴリズム拡張EA2と組み合わせ、位相スリップが発生しない場合および位相スリップが発生する場合において、さらなる連続する時間インスタンスt=1、…、Tに関して、送信された可能性のある差動符号化データシンボルsd(t)を差動復号データシンボルs(t)と一緒にモデル化するために、この組み合わされたアルゴリズムを、これらの時間インスタンスt=1、…、Tに関して、より多くの状態および遷移によって拡張することができる。
先に述べたように、差動復号データ値のシーケンスを導出するために使用できる代替推定アルゴリズムが少なくとも2つ存在する。図7は、差動復号データ値のシーケンスを導出するための第1の代替推定アルゴリズムを使用するステップを示している。
図7は、ビタビ推定アルゴリズム(Viterbi estimation algorithm)V−EAを示している。アルゴリズムには、対数領域における確率値Lsd’(t)、t=1、…、Tと、位相スリップの確率P_slipが提供される。アルゴリズムV−EAは、規定ステップSTSにおいて、図4および図6に関して先に詳細に説明したように、状態Sitおよび遷移Tijtを対応する遷移確率γijtと一緒に規定する。詳細を思い起こすと、Sitは、時間tにおけるインデックスがiの状態である。さらに詳細を思い起こすと、Tijtは、時間t−1におけるインデックスがiの状態から時間tにおけるインデックスがjの状態への遷移である。
計算ステップCAL1において、ビタビ推定アルゴリズムV−EAは、t=1からt=Tまでの間の差動符号化データシンボルsd(t)を表す、状態Sitのシーケンスsd_estのうち、このシーケンスsd_estの全体的な確率が最も高くなるものを見出す。言い換えると、ビタビ推定アルゴリズムV−EAは、決定されたシーケンスsd_estが、まさに、実際に送信された差動符号化データシンボルのシーケンスである確率を最大化する。
最も可能性が高い状態を求めるステップCAL1に関する、ビタビアルゴリズムについての詳細な説明は、「A.J Viterbi、『Error bounds for convolutional codes and an asymptotically optimal decoding algorithm』、IEEE Transactions on Information Theory、第IT−13巻、260−269ページ、1967年4月」、または代替として、「Lawrence R.Rabiner、『A Tutorial on Hidden Markov Models and Selected Applications in Speech Recognition』、IEEE Proceedings、第77巻、第2号、1989年2月」に見出すことができる。これらの文献では、確率の表記が線形領域において与えられることがあるが、遷移確率γijtは対数領域において提供されることに留意されたい。
差動復号のステップDDECにおいて、差動復号データシンボルの推定シーケンスs_est=[s_est(1),…,s_est(T)]を見出すために、ビタビ推定アルゴリズムV−EAによって提供された、最も可能性が高い状態シーケンスsd_est=[sd_est(1),…,sd_est(T)]を、図4および図6に示されたような、先に規定された状態Sitおよび状態遷移Tijtと一緒に使用することができる。これは、規定された状態に到る最も可能性が高い推定された状態シーケンスsd_est=[sd_est(1),…,sd_est(T)]に従うことによって、また最も可能性が高い状態シーケンスsd_estの状態Sitを接続する状態遷移Tijtに関連付けられた差動復号データ値s(t)として、シーケンスs_est=[s(1),…,s(T)]を記録することによって、実行することができる。
デマッピングステップDMにおいて、使用されるPSDコンステレーション図に従って、シーケンスs_est=[s_est(1),…,s_est(T)]のデータシンボルをデマッピングすることによって、推定差動復号データ値v_est(K)のシーケンスv_est=[v_est(1),…,v_est(K)]を導出することができる。
図8は、差動復号データ値のシーケンスを導出するための第2の代替推定アルゴリズムを使用するステップを示している。
図8は、BCJR推定アルゴリズムBCJR−EAを示している。アルゴリズムには、対数領域における確率値Lsd’(t)、t=1、…、Tと、位相スリップの確率P_slipが提供される。アルゴリズムV−EAは、規定ステップSTSにおいて、図7に関して先に詳細に説明したように、状態Sitおよび遷移Tijtを対応する遷移確率γijtと一緒に規定する。
計算ステップCAL11において、推定アルゴリズムBCJR−EAは、定められた各状態Sitに対して、前方パスメッセージ(forward pass−message)αj,tを計算し、ここで、jは、状態インデックスであり、tは、時間インデックスである。時間t=1における状態Si1に対して、前方パスメッセージαj,1は、j=1、…、Iとする場合、値
に初期化され、ここで、Iは、時間インスタンスにおける異なる状態の数である。
さらなる時間インスタンスt=2、…、Tに関して、前方パスメッセージαj,tは、j=1、…、Iとする場合、
と計算され、ここで、α
i,t−1は、直前の時間インスタンスt−1における第iの状態の前方パスメッセージであり、γ
i,j,tは、時間t−1における第iの状態から時間tにおける第jの状態への遷移確率である。
総和演算子Σ[+]は、「ボックスプラス(box−plus)」演算子[+]としても知られている規則
に従った、加数の総和を表す。このボックスプラス演算子の代数規則は、詳細には、「J.Hagenauer、E.Offer、L.Papke、『Iterative Decoding of Binary Block and Convolutional Codes』、IEEE Transactions on Information Theory、第42巻、第2号、1996年3月」に見出すことができる。
さらに、計算ステップCAL11において、推定アルゴリズムBCJR−EAは、規定された各状態Sitに対して、後方パスメッセージ(backward pass−message)βi,tを計算し、ここで、iは、状態インデックスであり、tは、時間インデックスである。時間t=Tにおける状態SiTに対して、後方パスメッセージβi,Tは、i=1、…、Iとする場合、値
に初期化され、ここで、Iは、時間インスタンスにおける異なる状態の数である。
さらなる時間インスタンスt=T−1、T−2、…、2、1に関して、後方パスメッセージβi,tは、i=1、…、Iとする場合、
と計算され、ここで、β
j,t+1は、直前の時間インスタンスt+1における第jの状態の後方パスメッセージであり、γ
i,j,tは、時間tにおける第iの状態から時間t+1における第jの状態への遷移確率である。やはり、ここでも、総和演算子Σ[+]は、先に述べたボックスプラス総和を表す。
先に詳細に要点を説明したように、規定された状態Sitの各々は、送信された可能性のある差動符号化データシンボルsd(t)を表し、規定された遷移Tijtの各々には、対応する差動復号データシンボルs(t)が関連付けられる。各差動復号データシンボルs(t)は、1組のL個の差動復号データシンボル値sv(l,t)から成る。
s(t)=[sv((t−1)L+1),…,sv((t−1)L+l),…,sv((t−1)L+L)]
ここで、インデックスl=1、…、Lである。
これらのL個の差動復号データシンボル値sv(l,t)は、1組のL個の差動復号データ値v(l,t)に等しく、差動復号データシンボルs(t)は、
s(t)=[v((t−1)L+1),…,v((t−1)L+l),…,v((t−1)L+L)]
と表される。
したがって、差動復号データシンボルのシーケンス
s=[s(1),…,s(T)]
は、T=M、L=K/Mである場合、先に最初に導入されたように、
sv=[sv(1),…,sv(k),…,sv(K)]、インデックスk=1、…、K
としてK個の差動復号データシンボル値のシーケンスsvを表し、これは、
v=[v(1),…,v(k),…,v(K)]、インデックスk=1、…、K
としてK個の差動復号データ値のシーケンスvに等しい。
次の計算ステップCAL12において、推定アルゴリズムBCJR−EAは、K個の差動復号データシンボル値のシーケンスsvに対して、確率値Lsv(k)のシーケンス
Lsv=[Lsv(1),…,Lsv(K)]、インデックスk=1、…、K
を決定する。これらの確率値Lsv(k)は、対数領域における対数尤度値であり、確率値Lsv(k)は、対応する差動復号データシンボル値sv(k)が「1」に等しいか、それとも「0」に等しいかについての確率を示す。詳細を思い起こすと、P(sv(k)=1)の確率が高いほど、確率値Lsv(k)は、大きな正の値を取り、P(sv(k)=0)の確率が高いほど、確率値Lsv(k)は、大きな負の値を取る。
K個の差動復号データシンボル値sv(k)のシーケンスsvは、K個の差動復号データ値のシーケンスvに等しいので、確率値Lsv(k)のシーケンスLsvは、確率値Lv(k)からなるシーケンス
Lv=[Lv(1),…,Lv(K)]、インデックスk=1、…、K
と見なすことができ、確率値Lv(k)は、対応する差動復号データ値v(k)が「1」に等しいか、それとも「0」に等しいかについての確率を示す。
ステップCAL12におけるシーケンスLsvを決定するために、推定アルゴリズムBCJR−EAは、計算された前方パスメッセージαj,tおよび計算された後方パスメッセージβi,tを使用する。
確率値のシーケンスLsv=[Lsv(1),…,Lsv(K)]を決定するステップCAL12に関する、BCJRアルゴリズムについての詳細な説明は、「L.Bahl、J.Cocke、F.Jelinek、J.Raviv、『Optimal Decoding of Linear Codes for minimizing symbol error rate』、IEEE Transactions on Information Theory、第IT−20(2)巻、284−287ページ、1974年3月」、および「David J.C.MacKay、『Information Theory, Inference, and Learning Algorithms』、Cambridge University Press、第7.2版、3月28日、20052003、第25章、324−333ページ」に見出すことができる。これらの文献では、確率の表記が線形領域において与えられることがあるが、遷移確率γijtは対数領域において提供されることに留意されたい。
BCJR推定アルゴリズムBCJR−EAによって決定された確率値のシーケンスLsvは、その後、シーケンスLvとして、硬判定ステップHDに提供される。確率値Lv(k)が正である場合、対応する差動復号データ値v(k)は「1」に等しいと判定される。確率値Lv(k)が負である場合、対応する差動復号データ値v(k)は「0」に等しいと判定される。これによって、硬判定ステップHDは、推定差動復号データ値v_est(k)からなる推定シーケンスv_est=[v_est(1),…,v_est(K)]を導出する。推定シーケンスv_est=[v_est(1),…,v_est(K)]を導出するために事後確率値Lv(k)に対して行われる最後の硬判定ステップHDが、シーケンス要素v_est(k)の個々の確率を最大化する。
図9は、代替的な解決策による、図8に示された方法のさらなるステップを示している。この解決策によれば、送信デバイスTDにおいて光送信信号ots(t)を生成するために使用される、図1に示された、データ値のシーケンスvは、前方誤り訂正(FEC)データ値のシーケンスであると仮定される。データ値のFECシーケンスvは、情報データ値のシーケンスu
u=[u(1),…,u(R)]、インデックスr=1、…、R
を符号化することによって生成されたと仮定され、ここで、RはKよりも小さな数であり、システマティックFEC符号(systematic FEC code)が使用される。FEC符号は、必ずしもシステマティック符号である必要はないが、提示の理由で、詳細に説明される例は、システマティック符号に基づく。
使用できるFEC符号の第1の例は、ターボ符号である。使用できるFEC符号の第2の例は、低密度パリティチェック(LDPC)符号である。使用できるFEC符号の第3の例は、畳み込み符号である。
この例では、FEC符号はシステマティック符号であるので、結果のデータ値のFECシーケンス
v=[v(1),…,v(R),…,v(K)]、インデックスk=1、…、K
は、
v=[u(1),…,u(R),v(R+1)…,v(K)]
として、最初のR個のデータ値v(k)では、情報データ値u(R)から成る。
図9によれば、分析ステップASにおいて、電気的にフィルタリングされた信号efs(t)が、図5aおよび図5bに関してすでに詳細に説明されたように、確率値Lsd’のシーケンスを導出するために使用される。
確率値Lsd’(t)および位相スリップ確率P_slipが、推定ステップES’に提供される。推定ステップES’のサブステップBCJR−EAにおいて、反復ステップb=1、…、Bを介して、図9ではシーケンスLv_BCJRbとして示される、図8に関して先に詳細に説明されたような、確率値Lvのシーケンスを決定するために、BCJRアルゴリズムが使用される。
対数尤度確率値のシーケンスLv_BCJRbは、FEC復号アルゴリズムFEC−DECに提供され、FEC−DECは、提供された対数尤度確率値のシーケンスLv_BCJRbから、更新された対数尤度確率値のシーケンスLv_FECbを導出するのに適している。
FEC復号アルゴリズムのステップFEC−DECのサブステップST1、ST2が、LDPC符号に関するFEC符号化アルゴリズムを例として、図10に示されている。ステップFEC−DECにおいて、対数尤度確率値のシーケンスLv_BCJRbが受け取られる。
サブステップST1において、LDPC変数ノード復号器(VND)が、シーケンスLv_BCJRbを受け取る。図10には示されていない、事前定義されたLDPC符号のパリティチェック行列に応じて、LDPC−VNDは、サブ反復ステップz=1において、対数尤度値llv1(z=1)を、サブステップST2のLDPCチェックノード復号器(CND)に渡す。さらに、このサブ反復ステップz=1において、LDPC−CNDは、特定の事前定義されたLDPC符号のチェック行列に応じて、対数尤度値llv2(z=1)を、LDPC−VNDに返す。サブステップST1とサブステップST2の間で、インデックスがzのサブ反復を2回以上実行することができる。サブステップST1およびST2の間で往復のサブ反復をZ回行った後、LDPC−VNDは、結果の対数尤度確率値のシーケンスを、FEC復号アルゴリズムのステップFEC−DECの出力に渡す。LDPC−VNDおよびLDPC−CNDを使用して、入力された対数尤度確率値のシーケンスLv_BCJRbから結果の対数尤度確率値のシーケンスLv_FECbを導出することについての詳細な説明は、「Frank R.Kschischang、Brendan J.Frey、Hans−Andrea Loeliger、『Factor graphs and the sum−product algorithm』、IEEE TRANSACTIONS ON INFORMATION THEORY、第47巻、第2号、2001年2月」に見出すことができる。
図10に戻ると、FEC符号化アルゴリズムがターボ符号または畳み込み符号に関する場合、対数尤度確率値のシーケンスLv_BCJRbからの対数尤度確率値のシーケンスLv_FECbの導出は、「J.Hagenauer、E.Offer、L.Papke、『Iterative Decoding of Binary Block and Convolutional Codes』、IEEE TRANSACTIONS ON INFORMATION THEORY、第42巻、第2号、1996年3月」に概説されているように、ステップFEC−DECにおいて実行することができる。
次の判定ステップDSにおいて、導出された対数尤度確率値のシーケンスLv_FECbを、情報データ値の推定差動復号シーケンスu_estを決定するために使用するかどうか、それとも導出された対数尤度確率値のシーケンスLv_FECbを、インデックスがb=1、2、…、Bであるさらなる反復ステップにおいて使用するかどうかが判定される。
次の反復ステップb=2において、導出された対数尤度確率値のシーケンスLv_FECbが、推定アルゴリズムBCJR−EAの遷移確率を更新するために使用される。導出された対数尤度確率値シーケンス
Lv_FECb=[Lv_FECb(1),…,Lv_FECb(K)]
の要素Lv_FECb(k)は、対応するシーケンス
v=[v(1),…,v(K)]
の差動復号データ値v(k)の確率を表す。差動復号データシンボルs(t)は、1組のL個の差動復号データ値v(k)によって表されるので、長さがT=M、K/L=Mである対数尤度確率値シーケンス
Ls_FECb=[Ls_FECb(1),…,Ls_FECb(T)]
は、対数尤度確率値シーケンスLv_FECbから導出することができる。これは、第tの対数尤度確率値Ls_FECb(t)を
と決定することによって達成される。BPSKを例とする場合、Lは1に等しく、K=Tであるので、Ls_FEC
b(t)の値は、対応する値Lv_FEC
b(t)に等しい。
導出された対数尤度確率値Ls_FECb(t)は、対応する差動復号データシンボルs(t)の確率を表す。
図11は、更新された推定アルゴリズムEA_UDの更新された遷移確率γ111’、…、γ241’を示しており、このアルゴリズムは、更新された遷移確率γ111’、…、γ241’は別として、図4に先に示された推定アルゴリズムEAに等しい。
遷移確率γ111’、…、γ241’は、導出された対数尤度確率値Ls_FECb(t)によって更新される。詳細には、時間t=1から時間t=2までの遷移確率γ111’、…、γ241’は、導出された対数尤度確率値Ls_FECb(t=2)に基づいて、それらに重みを付けることによって更新される。
s(2)=1である差動復号データシンボルを仮定する遷移確率の場合、更新は、それらに、値
+Ls_FECb(t=2)
を加算することによって実行される。s(2)=0である差動復号データシンボルを仮定する遷移確率の場合、更新は、それらに、値
−Ls_FECb(t=2)
を加算することによって実行される。これは、図10に詳細に示されている。
図6に先に示された推定アルゴリズム拡張EA2の更新された遷移確率が、更新された推定アルゴリズム拡張EA2_UPのために、図12に詳細に示されている。この更新された推定アルゴリズム拡張EA2_UPでは、t=2からt=3までの遷移確率は、導出された対数尤度確率値Ls_FECb(t=3)を使用して更新される。
s(3)=1である差動復号データシンボルを仮定する遷移確率の場合、更新は、それらに、値
+Ls_FECb(t=3)
を加算することによって実行される。s(3)=0である差動復号データシンボルを仮定する遷移確率の場合、更新は、それらに、値
−Ls_FECb(t=3)
を加算することによって実行される。これは、図11に詳細に示されている。
図10に戻ると、対数尤度確率値の新しいシーケンスLv_BCJRbが、更新されたBCJRアルゴリズムBCJR−EAおよび初期導出された対数尤度確率値Lsd’のシーケンスを使用して、反復ステップb=2において決定される。
インデックスがbのさらなる反復を推定ステップES’において実行することができ、各反復には、サブインデックスがzの前方誤り復号ステップFEC−DECの1つまたは複数のサブ反復が含まれる。
B回の反復後、結果の対数尤度確率値のシーケンスLv_FECBが、硬判定ステップHDに提供される。使用されるFEC符号はシステマティックFEC符号であるので、硬判定ステップHDは、R個の差動復号情報データ値の推定シーケンスu_estを
u_est=[v_est(1),…,v_est(R)]
として導出するために、
Lv_cut=[Lv_FECB(1),…,Lv_FECB(R)]
のように、シーケンスLv_FECbの最初のR個の対数尤度確率値からなるシーケンスLv_cutを使用する。硬判定検出ステップHDは、図8に関して先に詳細に説明された。
位相スリップが発生しない場合および位相スリップが発生する場合について、規定された状態および遷移確率と組み合わせて、差動復号データシンボルs(t)の導出された対数尤度値Ls_FECb(t)を使用して、推定アルゴリズムBCJR−EAの遷移確率を更新する利点は、後で詳細に説明される、図18、図19、および図20に示されたシミュレーション結果によって示される。
図9、図10、および図11に関して与えられた説明を要約すると:
受信光データ信号は、FEC符号化アルゴリズムによって符号化された信号でもある。
推定アルゴリズムBCJR−EAは、差動復号データ値に関する1つまたは複数の確率を最大化するのに適している。受信光信号から、それぞれの受信差動符号化データシンボルの確率を表す確率値が導出される。推定アルゴリズムは、それぞれの受信データシンボルの導出された確率値から、それぞれの差動復号データ値の確率を表す確率値を決定する。それぞれの差動復号データ値の確率を表す決定された確率値は、FEC符号化アルゴリズムを考慮した適切なアルゴリズムを使用して、修正および更新される。
一連の反復において、それぞれの差動復号データ値の確率を表す変更された確率値を使用して、規定された遷移確率を重み付けることによって、規定された遷移確率の更新を実行することができる。
好ましくは、FEC符号化アルゴリズムは、LDPCアルゴリズムである。これの利点は、光送信チャネルの伝送特性にLDPCアルゴリズムを容易に適応させ得ることである。2つの光ネットワークノード間の光ネットワークリンクは、個々の伝送特性を、したがって、個々の位相スリップ確率を有することがある。アウターLDPCコーディングおよびインナー差動コーディングから成る組み合わせコーディングシステムは、これら2つの光ネットワークノード間で、個々の光ネットワークリンクの個々の位相スリップ確率に適応させることができる。この適応は、提供された位相スリップ確率に応じて、LDPC符号を変更することによって実行される。1組の与えられた位相スリップ確率に対して、1組のそれぞれのLDPC符号発生器行列と、1組のそれぞれのLDPC符号パリティチェック行列とを提供することができる。個々の光ネットワークリンクの位相スリップ確率が知られている場合、LDPC符号は、LDPCパリティチェック行列のビットエントリを変更することによって、また提供されたLDPC行列に対応してLDPC発生器行列のビットエントリも変更することによって、きわめて柔軟に変更することができる。
位相スリップが発生しない場合および位相スリップが発生しない場合について、状態および遷移確率の規定をどのように実行できるかについて、BPSKの例に関して詳細に説明した。BPSKの場合、2つの可能なデータシンボルを表す2つの指定された位相値のみが使用される。ここで、位相スリップが発生しない場合および位相スリップが発生しない場合について、状態および遷移確率を規定する提案された原理を、3つ以上の指定された2つの位相値を使用するPSKの解決策に対して、どのように適応させ得るかについて説明する。次に、4つの指定された位相値と4つの可能なデータシンボルとを有するQPSKを例として、これを説明する。
図13は、対応するデータシンボルsの指定されたコンステレーション点SY11、SY12、SY13、SY14と一緒に、QPSKコンステレーション図CD11を示している。各データシンボルsは、1組のL=2個のデータ値を表し、データ値は、この例では、ビットである。第1のビットは、最上位ビット(MSB)と呼ばれることがあり、第2のビットは、最下位ビット(LSB)と呼ばれることがある。好ましくは、グレーラべリング(gray labelling)の原理が適用され、隣接するコンステレーション点SY11、SY12は、ただ1ビットが異なる。代替として、いわゆる反グレーラべリングを適用することができる。虚軸Imにおいて正の値を有するデータシンボルのコンステレーション点SY11、SY12は、虚軸Imにおいて負の値を有するデータシンボルのコンステレーション点SY13、SY14とMSBだけが異なる。実軸Reにおいて正の値を有するデータシンボルのコンステレーション点SY11、SY14は、実軸Reにおいて負の値を有するデータシンボルのコンステレーション点SY12、SY13とLSBだけが異なる。隣接するコンステレーション点は、π/2の分離角SAだけ隔たっている。
図13に示されるデータシンボルの差動符号化は、図14に示されるコンステレーション図に従って、差動符号化データシンボルsdを生成することによって実行される。
差動符号化データシンボルsdは、コンステレーション点SYD11、SYD12、SYD13、SYD14に配置され、これらのコンステレーション点は、図13のコンステレーション点SY11、SY12、SY13、SY14と等価である。1つの時間インスタンスtの差動符号化データシンボルsd(t)から次の時間インスタンスt+1の差動符号化データシンボルsd(t+1)への変化は、時間インスタンスtの差動符号化データシンボルsd(t)および次の時間インスタンスt+1のデータシンボルs(st+1)に応じて実行される。
例えば、時間インスタンスtにおいて、差動符号化データシンボルsd(t)が、sd=11に等しい場合、これは、コンステレーション点SYD11によって表される。
次の時間インスタンスt+1のデータシンボルs(st+1)が、s(t+1)=「00」である場合、0だけの位相の変化が実行され、これは、次の時間インスタンスt+1の差動符号化データシンボルsd(t+1)が、sd(t+1)=「11」であることを意味する。
次の時間インスタンスt+1のデータシンボルs(st+1)が、s(t+1)=「01」である場合、
だけ位相の変化が実行され、これは、次の時間インスタンスt+1の差動符号化データシンボルsd(t+1)が、sd(t+1)=「10」であることを意味する。
次の時間インスタンスt+1のデータシンボルs(st+1)が、s(t+1)=「11」である場合、πだけの位相の変化が実行され、これは、次の時間インスタンスt+1の差動符号化データシンボルsd(t+1)が、sd(t+1)=「00」であることを意味する。
次の時間インスタンスt+1のデータシンボルs(st+1)が、s(t+1)=「10」である場合、
だけ位相の変化が実行され、これは、次の時間インスタンスt+1の差動符号化データシンボルsd(t+1)が、sd(t+1)=「01」であることを意味する。
言い換えると、連続する時間インスタンスの差動符号化データシンボルsd間の位相変化Δφは、次の時間インスタンスt+1のシンボルs(st+1)に応じて実行される。したがって、次の時間インスタンスt+1の差動符号化データシンボルsd(t+1)は、時間インスタンスtの差動符号化データシンボルsd(t)と、次の時間インスタンスのデータシンボルs(t)とに依存する。
時間インスタンスtの差動符号化データシンボルsd(t)が「10」、「00」、または「01」に等しい場合の、連続する時間インスタンスの差動符号化データシンボルsd間の対応する遷移は、図14に示される原理に類似した方法で導出することができる。
異なる位相スリップが発生し得ると仮定する。位相スリップは、分離角
の整数倍だけコンステレーション図が回転できるように、発生することができる。1つの位相スリップは、位相
だけコンステレーション図CD12の回転とすることができる。別の位相スリップは、位相πだけのコンステレーション図CD12の回転とすることができる。別の位相スリップは、位相
だけコンステレーション図CD12の回転とすることができる。これらの異なる起こりうる位相スリップについては、図16および図17に関して後で詳細に考察する。
図15は、補正された受信差動符号化データシンボルCRSYと一緒に、差動符号化データシンボルsdのコンステレーション点を有する、コンステレーション図CD12を示している。ビットMSBおよびLSBの各々について、補正された受信差動符号化データシンボルのMSBまたはLSBが「1」であるか、それとも「0」であるかについての確率を示す値として、別個の対数尤度値L_sd’_MSB、L_sd’_LSBが導出される。
MSBの対数尤度値L_sd’_MSBは、補正された受信差動符号化データシンボルCRSYの虚軸Imにおける振幅xを取り、対数尤度値L_sd’_MSBを
と設定することによって導出される。LSBの対数尤度値L_sd’_LSBは、補正された受信差動符号化データシンボルCRSYの実軸Reにおける振幅yを取り、対数尤度値L_sd’_LSBを
図16は、推定アルゴリズムEA−Qについて、対応する位相スリップによって引き起こされる、連続するデータシンボル間での、QPSKコンステレーション図の可能な回転に対する状態および遷移を示しており、取りうる回転角φROTは、
である。図16では、インデックスtを有する時間インスタンスに関して、第iの状態は、インデックスSitを有する。可能な各回転角について、対応する所定の位相スリップ確率P_slipは、
可能な各回転角φROTについて、送信された可能性のある差動符号化データシンボルsdを表す、1組の4つの状態が規定される。
時間インスタンスt=1において、差動符号化データシンボルがsd=11であると仮定され、これは、状態インデックスがi=1、時間インデックスがt=1の、状態Sit=S11によって表される。
次の差動復号データシンボルs(t=2)がs(t=2)=「00」であり、位相スリップが発生しなかった場合、sd(t=2)=「11」を表す、状態S12への遷移T121が発生する。遷移確率γ121は、φ121=+L_sd’_MSB+L_sd’_LSBに初期化される。状態S12の根底にある受信された補正差動符号化データシンボルsd’(t=2)は、sd’(t=2)=「11」に等しいので、対数尤度値L_sd’_MSB、L_sd’_LSBはともに、+1が乗算されると見なされる。遷移確率γ121は、さらに、回転がφROT=0である場合の位相スリップ確率P_slip_normの対数値によって重み付けされる。
次の差動復号データシンボルs(t=2)がs(t=2)=「00」であり、
の位相スリップが発生した場合、sd(t=2)=「11」と、sd’(t=2)=「10」も表す、状態S52への遷移T151が発生する。遷移確率γ
151は、φ
151=+L_sd’_MSB−L_sd’_LSBに初期化される。状態S52の根底にある受信された補正差動符号化データシンボルsd’(t=2)は、sd’(t=2)=「10」に等しいので、対数尤度値L_sd’_MSBは、+1が乗算されると見なされ、一方、対数尤度値L_sd’_LSBは、−1が乗算されると見なされる。遷移確率γ
151は、さらに、回転が、位相スリップ確率
次の差動復号データシンボルs(t=2)がs(t=2)=「00」であり、φROT=πの位相スリップが発生した場合、sd(t=2)=「11」と、sd’(t=2)=「00」も表す、状態S92への遷移T191が発生する。遷移確率γ191は、φ191=−L_sd’_MSB−L_sd’_LSBに初期化される。状態S92の根底にある受信された補正差動符号化データシンボルsd’(t=2)は、sd’(t=2)=「00」に等しいので、対数尤度値L_sd’_MSBは、−1が乗算されると見なされ、対数尤度値L_sd’_LSBも、−1が乗算されると見なされる。遷移確率γ191は、さらに、回転が、φROT=πである場合の位相スリップ確率P_slipπの対数値によって重み付けされる。
次の差動復号データシンボルs(t=2)がs(t=2)=「00」であり、
の位相スリップが発生した場合、sd(t=2)=「11」と、sd’(t=2)=「01」も表す、状態S132への遷移T1131が発生する。遷移確率γ
191は、φ
191=−L_sd’_MSB−L_sd’_LSBに初期化される。状態S132の根底にある受信された補正差動符号化データシンボルsd’(t=2)は、sd’(t=2)=「01」に等しいので、対数尤度値L_sd’_MSBは、−1が乗算されると見なされ、一方、対数尤度値L_sd’_LSBは、+1が乗算されると見なされる。遷移確率γ
1131は、さらに、回転が、位相スリップ確率
さらに、差動復号データシンボルsの異なる値および異なる回転角φROTに対しても、図16に関して説明された原理に従うことによって、遷移および遷移確率を導出することができる。
図17は、より抽象的なレベルにおける図16の推定アルゴリズムEA−Qを示している。
連続的な時間インスタンスt=1、2、3、4、5に関して、対応する回転角
に関連付けられた、状態間の遷移の遷移確率を、先に言及された所定の位相スリップ確率
によって、どのように重み付けできるかが示されている。
図15、図16、および図17に関して、QPSKシステムの場合に、位相スリップを考慮して、状態および遷移確率をどのように規定できるかについて詳細に説明された。その後、規定された状態および遷移確率は、図7−図12に関して先に説明したように、差動復号データ値を、またおそらくはFEC復号データ値をも導出するために、推定アルゴリズム内で使用することができる。
1つまたは複数の位相スリップが発生する場合のPSKコンステレーション図の位相回転に対する状態および遷移確率を規定する一般的な原理は、図15、図16、および図17に関して概説された。上述のことを要約すると、推定アルゴリズムは、PSKコンステレーション図のそれぞれの位相回転角に対して、それぞれ1組の仮説的な状態を規定する。各組の仮説的な状態は、それぞれの組のそれぞれの位相回転角に対して、送信された可能性のある差動符号化データシンボルを表す。第1の時間インスタンスにおける第1の組の状態と第2の時間インスタンスにおける第2の組の状態との間の遷移確率は、第1および第2の組の位相回転角の差に関連する所定の位相スリップ確率値に基づいて重み付けされる。
図18は、「Stephan ten Brink 『Convergence of iterative decoding』、Electronics Letters、35(10):806−808、1999年5月」において説明されるような、外部情報交換(EXIT:extrinsic information exchange)チャートを示している。図18のEXITチャートは、図12に示されるような推定アルゴリズムを使用するが、位相スリップが発生しない場合または位相スリップが発生する場合について、別個の状態および別個の遷移確率を規定しない場合の、FEC符号がLDPC符号である、図9に示された、FEC復号ステップFEC−DECの内部情報出力I_Aのフィードバックに対する、BCJRアルゴリズムBCJR−EAの外部情報出力I_Eを示している。第1の曲線C1は、位相スリップ確率が0である場合の外部情報交換を示しており、第2の曲線C2は、位相スリップ確率が1/500である場合の外部情報交換を示しており、第3の曲線C3は、位相スリップ確率が1/200である場合の外部情報交換を示している。ビット当たりエネルギー対雑音電力スペクトル密度比Eb/N0は、2dBに等しく、符号レートが1/2のLDPC符号が使用される。
位相スリップ確率が0である場合、BCJRアルゴリズムによって提供される確率値からデータ値を導出することを何回か反復した後、データ値誤りの残数は0に近づき、残数0は、I_E=1およびI_A=1の点に相当する。しかし、明らかなように、位相スリップ確率が1/200である場合、復号アルゴリズムは、データ値誤りの数が0に到達し得る、I_E=1およびI_A=1の点に収束せず、何回かの反復の後、外部情報が再び低下さえし、これは、誤りの残数が増えさえすることを意味する。
図19は、図12に示されるような推定アルゴリズムを使用し、位相スリップが発生しない場合および位相スリップが発生する場合について、別個の状態および別個の遷移確率を規定する場合の、FEC符号がLDPC符号である、図9に示された、FEC復号ステップFEC−DECの内部情報出力I_Aのフィードバックに対する、BCJRアルゴリズムBCJR−EAの外部情報出力I_Eを示している。曲線C11、C12、C13は、位相スリップ確率がそれぞれ0、1/500、1/200、および1/100である場合の外部情報出力を示している。ここでも、ビット当たりエネルギー対雑音電力スペクトル密度比Eb/N0は、2dBに等しく、符号レートが1/2のLDPC符号が使用される。
明らかなように、ゼロよりも大きく、図18においてすでに考察された、すべての位相スリップ確率において、外部情報交換出力は、位相スリップが発生する場合に状態および遷移確率を規定しない同等のアルゴリズムと比較して、同数の反復で、より高い値に到達する。さらに、アルゴリズムは、I_E=1およびI_A=1の点に向かってより速く収束する。さらに、反復回数が多くなるにつれて、外部情報出力は、決して低下することなく、増加していく。
図20には、それぞれの位相スリップ確率が0、1/1000、1/100である場合の、符号レートが5/6のLDPC符号およびQPSKを差動符号化とともに使用した、ビット当たりエネルギー対雑音電力スペクトル密度比Eb/N0に対する、それぞれのビット誤り率の曲線C21、C22、C23が示されている。使用されるアルゴリズムは、位相スリップが発生しない場合および位相スリップが発生する場合について、状態および遷移確率を規定する。アルゴリズムの性能は、位相スリップ確率が1/100の場合であっても、約0.5dBのペナルティしか存在しない事実によって明らかに分かる。さらに、これらのシミュレーションのいずれについても、10−6よりも大きなエラーフロアを観測することはできない。
図21は、光データ信号を復号するための提案されたデバイスDEVを示している。
デバイスDEVは、光インタフェースOIFを含み、光インタフェースOIFは、差動符号化位相シフトキーイング変調光信号ots(t)を受信するように構成される。光インタフェースOIFは、受信信号ots(t)を光混合ユニットMIXUに提供し、光混合ユニットMIXUは、受信信号ots(t)を位相コヒーレント光搬送波信号cs(t)と混合する。搬送波信号cs(t)は、基本的に、送信側において使用される光搬送波信号の搬送波周波数を有する。光位相コヒーレント搬送波信号cs(t)の位相φcsは、以下のように、送信側において使用される光搬送波信号の位相φocsに、PSK分離角φSEP−PSKの整数倍をプラス/マイナスした位相
φcs=φocs±N・φSEP−PSK、N=0、1、2、…
に等しい。
受信信号ots(t)と位相コヒーレント搬送波信号cs(t)との混合から、光ベースバンド信号obs(t)が得られる。光ベースバンド信号obs(t)は、混合ユニットMIXUによってアナログ−デジタル変換ユニットADCに提供される。
アナログ−デジタル変換ユニットADCは、光ベースバンド信号obs(t)を時間離散電気ベースバンド信号ebs(t)に変換し、電気ベースバンド信号ebs(t)を信号処理ユニットSPUに提供する。
位相推定ステップPESにおいて、信号処理ユニットSPUは、電気ベースバンド信号ebs(t)から位相オフセットPEを推定する。推定位相オフセットPEは、補正ステップCORRに提供される。
補正ステップCORRにおいて、信号処理ユニットSPUは、電気ベースバンド信号ebs(t)の位相を推定位相オフセットPEだけ変化させる。この補正の結果は、フィルタリングされた電気信号efs(t)である。
フィルタリングされた電気信号efs(t)は、推定ステップESに提供される。推定ステップESにおいて、推定差動復号データ値v_estが導出される。それを行うために、推定ステップESは、推定アルゴリズムEAを使用する。
推定アルゴリズムEAは、受信した差動符号化位相シフトキーイング変調光信号ots(t)を差動符号化するために使用された差動符号化規則を考慮する。
推定アルゴリズムEAは、送信された可能性のある差動符号化データシンボルに関する確率を最大化するのに、あるいは導出された差動復号データ値に関する1つまたは複数の確率を最大化するのに適している。
推定アルゴリズムEAは、位相スリップが発生しなかったと仮定して、送信された可能性のある差動符号化データシンボルを表す、第1の仮説的な状態と、位相スリップが発生したと仮定して、送信された可能性のある差動符号化データシンボルを表す、第2の仮説的な状態との間の遷移確率を規定する。その後、第1の状態と第2の状態の間の遷移確率は、所定の位相スリップ確率値に基づいて重み付けされる。
さらに、デバイスDEVは、本特許出願において説明される1つまたは複数の方法のさらなるステップを実行するように構成される。計算ステップのために、デバイスDEVは、信号処理ユニットSPUおよび/または図21には明示的に示されていない他のユニットに依存することができる。
本明細書および図面は、本発明の原理を説明するにすぎない。したがって、本明細書において明示的に説明または示されていなくても、本発明の原理を具現化し、本発明の主旨および範囲内に含まれる様々な構成を、当業者が考案できることが理解されよう。さらに、本明細書で列挙されたすべての例は、本発明の原理および発明者らがもたらした当技術分野の発展に資する概念に対する理解を助けるという明らかに教育的目的のみを主に意図しており、具体的に述べられた例および条件に限定されないと解釈されるべきである。さらに、本発明の原理、態様、および実施形態、ならびに本発明の特定の例について述べるすべての言明は、それらの均等物を包含することが意図されている。
「デバイス」、「ユニット」、または「処理ユニット」とラベル付けされた任意の機能ブロックを含む、図1、図2、および図3に示された様々な要素の機能は、専用ハードウェア、および適切なソフトウェアに関連付けられたソフトウェア実行可能ハードウェアの使用を通して提供することができる。プロセッサによって提供される場合、機能は、単一の専用プロセッサによって、単一の共有プロセッサによって、またはいくつかは共有されてもよい複数の個別プロセッサによって、提供することができる。さらに、「処理ユニット」、「デバイス」、または「ユニット」という用語が明示的に使用されても、ソフトウェア実行可能ハードウェアに排他的に言及していると解釈すべきではなく、限定することなく、デジタル信号プロセッサ(DSP)ハードウェア、ネットワークプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ソフトウェアを記憶するためのリードオンリメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、および不揮発性ストレージを暗黙的に含むことができる。従来型および/またはカスタム型の他のハードウェアも含むことができる。本明細書のブロック図はいずれも、本発明の原理を具現化する説明的な回路の概念図を表すことを当業者は理解されたい。