しかしながら、上記方法では、金属板表面にレジスト印刷 → エッチング → エッチング液洗浄除去 → レジスト除去 → 洗浄 → 乾燥などの工程を順次行う必要があるため、製造コスト高の要因となる。
さらに、上記方法では、金属板とセラミック板との間の接合界面にろう材層が形成されるため接合界面の接合信頼性を損なう恐れがある。例えば、Al板とセラミック板との接合を行うためには、接合界面にAl−Si合金のろう材層が形成されるが、Al−Si合金はAl板のAlよりも硬いため、高温−低温の冷熱サイクルに伴う接合界面に働く応力が非常に大きなものとなる。その結果、界面付近で材料破壊が発生してAl板とセラミック板とが剥離する。
本発明は上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、金属板とセラミック板との間の界面剥離を防止することができ、更に、製造コストの低減を図ることができる積層材および該積層材の製造方法を提供することにある。
本発明は以下の手段を提供する。
[1] 複数枚の第1金属板と少なくとも1枚のセラミック板とが、少なくとも1枚の第1金属板とセラミック板とが隣接するように積層されるとともに、隣り合う第1金属板とセラミック板とが放電プラズマ焼結法により接合されており、セラミック板と隣接する全ての第1金属板の融点の差が140℃以内であり、
セラミック板における第1金属板と接合された側の面の外周縁よりも内側に、第1金属板のセラミック板との接合面が位置していることを特徴とする積層材。
[2] 第1金属板は3枚以上であり、
これらの第1金属板のうち2枚の第1金属板と1枚のセラミック板とが、セラミック板と各第1金属板とが隣接するように、且つ、セラミック板が両第1金属板間に位置するように積層されている前項1記載の積層材。
[3] 前記2枚の第1金属板のうち少なくともいずれか一方の第1金属板におけるセラミック板と接合された面とは反対側の面に、放電プラズマ焼結法の加熱時の加熱温度では溶融しない材料からなる第2金属板が、放電プラズマ焼結法により積層状に接合されている前項2記載の積層材。
[4] 1枚の第1金属板と1枚または2枚のセラミック板とが、第1金属板とセラミック板とが隣接するように積層されるとともに、隣り合う第1金属板とセラミック板とが放電プラズマ焼結法により接合されており、
少なくとも1枚のセラミック板における第1金属板と接合された側の面の外周縁よりも内側に、第1金属板のセラミック板との接合面が位置していることを特徴とする積層材。
[5] 2枚の第1金属板と1枚のセラミック板とが、セラミック板と各第1金属板とが隣接するように、且つ、セラミック板が両第1金属板間に位置するように積層されるとともに、隣り合う第1金属板とセラミック板とが放電プラズマ焼結法により接合されており、両第1金属板の融点の差が140℃以内であり、
セラミック板における第1金属板と接合された側の面の外周縁よりも内側に、第1金属板のセラミック板との接合面が位置していることを特徴とする積層材。
[6] 両第1金属板のうち少なくとも一方の第1金属板におけるセラミック板と接合された面とは反対側の面に、放電プラズマ焼結法の加熱時の加熱温度では溶融しない材料からなる第2金属板が、放電プラズマ焼結法により積層状に接合されている前項5記載の積層材。
[7] 1枚の第1金属板と1枚のセラミック板とが隣接するように積層されるとともに、第1金属板とセラミック板とが放電プラズマ焼結法により接合されており、
セラミック板における第1金属板と接合された側の面の外周縁よりも内側に、第1金属板のセラミック板との接合面が位置していることを特徴とする積層材。
[8] 第1金属板におけるセラミック板と接合された面とは反対側の面に、放電プラズマ焼結法の加熱時の加熱温度では溶融しない材料からなる第2金属板が、放電プラズマ焼結法により積層状に接合されている前項7記載の積層材。
[9] セラミック板と、セラミック板の両側にそれぞれ配置された第1金属板とが、セラミック板と各第1金属板とが隣接するように積層されるとともに、隣り合う板どうしが放電プラズマ焼結法により接合されており、両第1金属板の融点の差が140℃以内であり、
セラミック板における第1金属板と接合された側の面の外周縁よりも内側に、第1金属板のセラミック板との接合面が位置していることを特徴とする積層材。
[10] 両第1金属板のうち少なくとも一方の第1金属板のセラミック板配置側とは反対側に、放電プラズマ焼結法の加熱時の加熱温度では溶融しない材料からなる第2金属板が配置されるとともに、第2金属板が第1金属板に放電プラズマ焼結法により積層状に接合されている前項9記載の積層材。
[11] セラミック板と、セラミック板の片側に配置された第1金属板とが隣接するように積層されるとともに、隣り合う板どうしが放電プラズマ焼結法により接合されており、
セラミック板における第1金属板と接合された側の面の外周縁よりも内側に、第1金属板のセラミック板との接合面が位置していることを特徴とする積層材。
[12]
第1金属板のセラミック板配置側とは反対側に、放電プラズマ焼結法の加熱時の加熱温度では溶融しない材料からなる第2金属板が配置されるとともに、第2金属板が第1金属板に放電プラズマ焼結法により積層状に接合されている前項11記載の積層材。
[13] 第1金属板が、Al、Cu、Ag、Au、Ni、Ti、Al合金、Cu合金、Ag合金、Au合金、Ni合金およびTi合金よりなる群から選ばれた1種の材料からなる前項1、2、4、5、7、9又は11記載の積層材。
[14] 第2金属板が、Al、Cu、Ag、Au、Ni、Ti、Al合金、Cu合金、Ag合金、Au合金、Ni合金およびTi合金よりなる群から選ばれた1種の材料からなる前項3、6、8、10又は12記載の積層材。
[15] セラミック板が、AlN、Al2O3、Si3N4、SiC、Y2O3、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料からなる前項1〜14のうちのいずれかに記載の積層材。
[16] 上下両面の平面度が100μm以下である前項1〜15のうちのいずれかに記載の積層材。
[17] 前項1記載の積層材の製造方法であって、
複数枚の第1金属板と、少なくとも1枚のセラミック板とを、少なくとも1枚の第1金属板とセラミック板とが隣接するように、且つ、セラミック板における第1金属板との隣接面の外周縁よりも内側に第1金属板のセラミック板との接合予定面が位置するように積層するとともに、セラミック板における第1金属板との隣接面の外周縁部に、セラミック板の隣接面における第1金属板の接合予定面の位置を決める位置決め治具を第1金属板の接合予定面の周りを囲うように配置する積層工程と、
第1金属板とセラミック板との積層体を1対の放電プラズマ焼結用電極間に配置する積層体配置工程と、
両電極間の導通を確保した状態で、両電極間にパルス電流を通電することにより隣り合う第1金属板とセラミック板とを接合する接合工程と、を含み、
積層工程においてセラミック板と隣接するように積層される全ての第1金属板の融点の差が140℃以内であることを特徴とする積層材の製造方法。
[18] 接合工程では、セラミック板と隣接するように積層される全ての第1金属板のうち最も高融点の第1金属板の融点よりも150℃低い温度と、最も低融点の第1金属板の融点よりも10℃低い温度との間の温度に加熱することにより、接合を行う前項17記載の積層材の製造方法。
[19] 前項4記載の積層材の製造方法であって、
1枚の第1金属板と1枚または2枚のセラミック板とを、第1金属板とセラミック板とが隣接するように、且つ、セラミック板における第1金属板との隣接面の外周縁よりも内側に第1金属板のセラミック板との接合予定面が位置するように積層するとともに、セラミック板における第1金属板との隣接面の外周縁部に、セラミック板の隣接面における第1金属板の接合予定面の位置を決める位置決め治具を第1金属板の接合予定面の周りを囲うように配置する積層工程と、
第1金属板とセラミック板との積層体を1対の放電プラズマ焼結用電極間に配置する積層体配置工程と、
両電極間の導通を確保した状態で、両電極間にパルス電流を通電することにより隣り合う第1金属板とセラミック板とを接合する接合工程と、を含むことを特徴とする積層材の製造方法。
[20] 接合工程では、第1金属板の融点よりも10〜150℃低い温度に加熱することにより、接合を行う前項19記載の積層材の製造方法。
[21] 前項5記載の積層材の製造方法であって、
融点の差が140℃以内の2枚の第1金属板と、1枚のセラミック板とを、セラミック板と各第1金属板とが隣接するように、且つ、セラミック板が両第1金属板間に位置するように、更に、セラミック板における第1金属板との隣接面の外周縁よりも内側に第1金属板のセラミック板との接合予定面が位置するように積層するとともに、セラミック板における第1金属板との隣接面の外周縁部に、セラミック板の隣接面における第1金属板の接合予定面の位置を決める位置決め治具を第1金属板の接合予定面の周りを囲うように配置する積層工程と、
第1金属板とセラミック板との積層体を1対の放電プラズマ焼結用電極間に配置する積層体配置工程と、
両電極間の導通を確保した状態で、両電極間にパルス電流を通電することにより、隣り合う第1金属板とセラミック板とを接合する接合工程と、を含むことを特徴とする積層材の製造方法。
[22] 前項6記載の積層材の製造方法であって、
融点の差が140℃以内の2枚の第1金属板と、1枚のセラミック板と、放電プラズマ焼結法の加熱時の加熱温度では溶融しない材料からなる第2金属板とを、セラミック板と各第1金属板とが隣接するように、且つ、セラミック板が両第1金属板間に位置するように、且つ、セラミック板における第1金属板との隣接面の外周縁よりも内側に第1金属板のセラミック板との接合予定面が位置するように、更に、第2金属板が第1金属板におけるセラミック板との隣接面とは反対側の面側に位置するように、積層するとともに、セラミック板における第1金属板との隣接面の外周縁部に、セラミック板の隣接面における第1金属板の接合予定面の位置を決める位置決め治具を第1金属板の接合予定面の周りを囲うように配置する積層工程と、
第1金属板とセラミック板と第2金属板との積層体を1対の放電プラズマ焼結用電極間に配置する積層体配置工程と、
両電極間の導通を確保した状態で、両電極間にパルス電流を通電することにより、隣り合う第1金属板とセラミック板と、および、第1金属板と第2金属板とを同時に接合する接合工程と、を含むことを特徴とする積層材の製造方法。
[23] 接合工程では、両第1金属板のうち高融点の第1金属板の融点よりも150℃低い温度と、低融点の第1金属板の融点よりも10℃低い温度との間の温度に加熱することにより、接合を行う前項22記載の積層材の製造方法。
[24] 前項7記載の積層材の製造方法であって、
1枚の第1金属板と、1枚のセラミック板とを、第1金属板とセラミック板とが隣接するように、且つ、セラミック板における第1金属板との隣接面の外周縁よりも内側に第1金属板のセラミック板との接合予定面が位置するように積層するとともに、セラミック板における第1金属板との隣接面の外周縁部に、セラミック板の隣接面における第1金属板の接合予定面の位置を決める位置決め治具を第1金属板の接合予定面の周りを囲うように配置する積層工程と、
第1金属板とセラミック板との積層体を1対の放電プラズマ焼結用電極間に配置する積層体配置工程と、
両電極間の導通を確保した状態で、両電極間にパルス電流を通電することにより第1金属板とセラミック板とを接合する接合工程と、を含むことを特徴とする積層材の製造方法。
[25] 接合工程では、第1金属板の融点よりも10〜150℃低い温度に加熱することにより、接合を行う前項24記載の積層材の製造方法。
[26] 前項8記載の積層材の製造方法であって、
1枚の第1金属板と、1枚のセラミック板と、放電プラズマ焼結法の加熱時の加熱温度では溶融しない材料からなる第2金属板とを、セラミック板と第1金属板とが隣接するように、且つ、セラミック板における第1金属板との隣接面の外周縁よりも内側に第1金属板のセラミック板との接合予定部が位置するように、更に、第2金属板が第1金属板におけるセラミック板との隣接面とは反対側の面側に位置するように積層するとともに、セラミック板における第1金属板との隣接面の外周縁部に、セラミック板の隣接面における第1金属板の接合予定面の位置を決める位置決め治具を第1金属板の接合予定面の周りを囲うように配置する積層工程と、
第1金属板とセラミック板と第2金属板との積層体を1対の放電プラズマ焼結用電極間に配置する積層体配置工程と、
両電極間の導通を確保した状態で、両電極間にパルス電流を通電することにより、第1金属板とセラミック板と、および、第1金属板と第2金属板とを同時に接合する接合工程と、を含むことを特徴とする積層材の製造方法。
[27] 接合工程では、第1金属板の融点よりも10〜150℃低い温度に加熱することにより、接合を行う前項26記載の積層材の製造方法。
[28] 前項9記載の積層材の製造方法であって、
セラミック板と、セラミック板の両側にそれぞれ配置される第1金属板とを、セラミック板と各第1金属板とが隣接するように、且つ、セラミック板における第1金属板との隣接面の外周縁よりも内側に第1金属板のセラミック板との接合予定面が位置するように積層するとともに、セラミック板における第1金属板との隣接面の外周縁部に、セラミック板の隣接面における第1金属板の接合予定面の位置を決める位置決め治具を第1金属板の接合予定面の周りを囲うように配置する積層工程と、
第1金属板とセラミック板との積層体を1対の放電プラズマ焼結用電極間に配置する積層体配置工程と、
両電極間の導通を確保した状態で、両電極間にパルス電流を通電することにより、隣り合う板どうしを接合する接合工程と、を含み、
両第1金属板の融点の差が140℃以内であることを特徴とする積層材の製造方法。
[29] 接合工程では、両第1金属板のうち高融点の第1金属板の融点よりも150℃低い温度と、低融点の第1金属板の融点よりも10℃低い温度との間の温度に加熱することにより、接合を行う前項28記載の積層材の製造方法。
[30] 前項10記載の積層材の製造方法であって、
セラミック板と、セラミック板の両側にそれぞれ配置される第1金属板と、第1金属板のセラミック板配置側とは反対側に配置されるとともに放電プラズマ焼結法の加熱時の加熱温度では溶融しない材料からなる第2金属板とを、セラミック板と各第1金属板とが隣接するように、且つ、セラミック板における第1金属板との隣接面の外周縁よりも内側に第1金属板のセラミック板との接合予定面が位置するように積層するとともに、セラミック板における第1金属板との隣接面の外周縁部に、セラミック板の隣接面における第1金属板の接合予定面の位置を決める位置決め治具を第1金属板の接合予定面の周りを囲うように配置する積層工程と、
第1金属板とセラミック板と第2金属板との積層体を1対の放電プラズマ焼結用電極間に配置する積層体配置工程と、
両電極間の導通を確保した状態で、両電極間にパルス電流を通電することにより、隣り合う板どうしを接合する接合工程と、を含み、
両第1金属板の融点の差が140℃以内であることを特徴とする積層材の製造方法。
[31] 接合工程では、両第1金属板のうち高融点の第1金属板の融点よりも150℃低い温度と、低融点の第1金属板の融点よりも10℃低い温度との間の温度に加熱することにより、接合を行う前項30記載の積層材の製造方法。
[32] 前項11記載の積層材の製造方法であって、
セラミック板と、セラミック板の片側に配置される第1金属板とを、セラミック板と第1金属板とが隣接するように、且つ、セラミック板における第1金属板との隣接面の外周縁よりも内側に第1金属板のセラミック板との接合予定面が位置するように積層するとともに、セラミック板における第1金属板との隣接面の外周縁部に、セラミック板の隣接面における第1金属板の接合予定面の位置を決める位置決め治具を第1金属板の接合予定面の周りを囲うように配置する積層工程と、
第1金属板とセラミック板との積層体を1対の放電プラズマ焼結用電極間に配置する積層体配置工程と、
両電極間の導通を確保した状態で、両電極間にパルス電流を通電することにより、隣り合う板どうしを同時に接合する接合工程と、を含むことを特徴とする積層材の製造方法。
[33] 接合工程では、第1金属板の融点よりも10〜150℃低い温度に加熱することにより、接合を行う前項32記載の積層材の製造方法。
[34] 前項12記載の積層材の製造方法であって、
セラミック板と、セラミック板の片側に配置される第1金属板と、第1金属板のセラミック板配置側とは反対側に配置されるとともに放電プラズマ焼結法の加熱時の加熱温度では溶融しない材料からなる第2金属板とを、セラミック板と第1金属板とが隣接するように、且つ、セラミック板における第1金属板との隣接面の外周縁よりも内側に第1金属板のセラミック板との接合予定面が位置するように積層するとともに、セラミック板における第1金属板との隣接面の外周縁部に、セラミック板の隣接面における第1金属板の接合予定面の位置を決める位置決め治具を第1金属板の接合予定面の周りを囲うように配置する積層工程と、
第1金属板とセラミック板と第2金属板との積層体を1対の放電プラズマ焼結用電極間に配置する積層体配置工程と、
両電極間の導通を確保した状態で、両電極間にパルス電流を通電することにより、隣り合う板どうしを接合する接合工程と、を含むことを特徴とする積層材の製造方法。
[35] 接合工程では、第1金属板の融点よりも10〜150℃低い温度に加熱することにより、接合を行う前項34記載の積層材の製造方法。
[36] 第1金属板が、Al、Cu、Ag、Au、Ni、Ti、Al合金、Cu合金、Ag合金、Au合金、Ni合金およびTi合金よりなる群から選ばれた1種の材料からなる前項17、18、19、20、21、24、25、28、29、32又は33記載の積層材の製造方法。
[37] 第2金属板が、Al、Cu、Ag、Au、Ni、Ti、Al合金、Cu合金、Ag合金、Au合金、Ni合金およびTi合金よりなる群から選ばれた1種の材料からなる前項22、23、26、27、30、31、34又は35記載の積層材の製造方法。
[38] セラミック板が、AlN、Al2O3、Si3N4、SiC、Y2O3、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料からなる前項17〜37のうちのいずれかに記載の積層材の製造方法。
[39] 第1金属板の表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で1.0μm以下である前項17〜38のうちのいずれかに記載の積層材の製造方法。
[40] セラミック板の表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で1.5μm以下である前項17〜39のうちのいずれかに記載の積層材の製造方法。
[41] 接合工程では、接合を、積層体の両側から10〜100MPaで加圧しながら行う前項17〜40のうちのいずれかに記載の積層材の製造方法。
[42] 接合工程では、接合を、不活性ガス雰囲気中または真空雰囲気中で行う前項17〜41のうちのいずれかに記載の積層材の製造方法。
本発明は以下の効果を奏する。
上記[1]の積層材では、セラミック板における第1金属板と接合された側の面の外周縁よりも内側に、第1金属板の接合面が位置しているので、第1金属板とセラミック板との接合を行うだけで、例えば半導体素子が実装される熱伝導性絶縁基板として利用可能な積層材を製造することができる。そのため、第1金属板の不要部分を除去するエッチング工程を無くすることができ、これにより積層材の製造コストの低減を図ることができる。さらに、第1金属板の外周縁部からの漏電も防止することができる。
さらに、放電プラズマ焼結法により隣り合う第1金属板とセラミック板とが接合されているので、第1金属板とセラミック板とを直接接合することができる。そのため、第1金属板とセラミック板との間の界面にろう材を配置する必要がない。その結果、冷熱サイクルに伴う第1金属板とセラミック板との間の界面剥離が抑制され、もって接合信頼性が向上する。さらに、ろう材を使用しないので、積層材の製造コストの更なる低減を図ることができる。
一方、従来の積層材では、第1金属板とセラミック板とがろう付けにより接合されているので、金属板とセラミック板との間の接合界面に内部応力が蓄積されており、そのため、セラミック板を複数個に分割した際にその分割破面に割れ(クラック)が生じるという欠点があった。これに対して、上記[1]の積層材では、第1金属板とセラミック板とがろう付けにより接合されているのではなく直接接合されているので、そのような割れの発生を抑制することができ、もって積層材の品質が安定する。
さらに、セラミック板と隣接する全ての第1金属板の融点の差が140℃以内であるから、1回の放電プラズマ焼結工程によって確実にセラミック板とこれに隣接する全ての第1金属板とを接合させることができるとともに、放電プラズマ焼結時に、融点が低い第1金属板の部分的な溶融などによる変形を防止することができる。
上記[2]の積層材において、例えば、第1金属板を配線層または電導層として利用することができるし、セラミック板を電気絶縁層として利用することができる。詳述すると、例えば、もしセラミック板に隣接する第1金属板がAl、Cu、Ag、Au、Ni、Ti、Al合金、Cu合金、Ag合金、Au合金、Ni合金およびTi合金よりなる群から選ばれた1種の材料からなるとともに、セラミック板がAlN、Al2O3、Si3N4、SiC、Y2O3、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料からなる場合には、第1金属板を配線層または電導層として利用することができるし、セラミック板を電気絶縁層として利用することができる。
上記[3]の積層材において、例えば、第2金属板を配線層として利用することができるし、セラミック板を電気絶縁層として利用することができる。詳述すると、例えば、もし第2金属板がNi又はNi合金からなるとともに、セラミック板がAlN、Al2O3、Si3N4、SiC、Y2O3、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料からなる場合には、第2金属板を配線層として利用することができるし、セラミック板を電気絶縁層として利用することができる。
上記[4]の積層材では、上記[1]の積層材と同様の効果が得られる。
上記[5]の積層材では、上記[1]の積層材と同様の効果が得られる。また、上記[5]の積層材において、例えば、第1金属板を配線層または電導層として利用することができるし、セラミック板を電気絶縁層として利用することができる。詳述すると、例えば、もし第1金属板がAl、Cu、Ag、Au、Ni、Ti、Al合金、Cu合金、Ag合金、Au合金、Ni合金およびTi合金よりなる群から選ばれた1種の材料からなるとともに、セラミック板がAlN、Al2O3、Si3N4、SiC、Y2O3、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料からなる場合には、第1金属板を配線層または電導層として利用することができるし、セラミック板を電気絶縁層として利用することができる。
上記[6]の積層材において、例えば、第2金属板を配線層として利用することができるし、セラミック板を電気絶縁層として利用することができる。詳述すると、例えば、もし第2金属板がNi又はNi合金からなるとともに、セラミック板がAlN、Al2O3、Si3N4、SiC、Y2O3、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料からなる場合には、第2金属板を配線層として利用することができるし、セラミック板を電気絶縁層として利用することができる。
上記[7]の積層材では、上記[1]の積層材と同様の効果が得られる。また、上記[7]の積層材において、例えば、第1金属板を配線層または電導層として利用することができるし、セラミック板を電気絶縁層として利用することができる。詳述すると、例えば、もし第1金属板がAl、Cu、Ag、Au、Ni、Ti、Al合金、Cu合金、Ag合金、Au合金、Ni合金およびTi合金よりなる群から選ばれた1種の材料からなるとともに、セラミック板がAlN、Al2O3、Si3N4、SiC、Y2O3、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料からなる場合には、第1金属板を配線層または電導層として利用することができるし、セラミック板を電気絶縁層として利用することができる。
上記[8]の積層材において、例えば、第2金属板を配線層として利用することができるし、セラミック板を電気絶縁層として利用することができる。詳述すると、例えば、もし第2金属板がNi又はNi合金からなるとともに、セラミック板がAlN、Al2O3、Si3N4、SiC、Y2O3、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料からなる場合には、第2金属板を配線層として利用することができるし、セラミック板を電気絶縁層として利用することができる。
上記[9]の積層材では、上記[1]の積層材と同様の効果が得られる。また、上記[9]の積層材において、例えば、第1金属板を配線層または電導層として利用することができるし、セラミック板を電気絶縁層として利用することができる。詳述すると、例えば、もし第1金属板がAl、Cu、Ag、Au、Ni、Ti、Al合金、Cu合金、Ag合金、Au合金、Ni合金およびTi合金よりなる群から選ばれた1種の材料からなるとともに、セラミック板がAlN、Al2O3、Si3N4、SiC、Y2O3、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料からなる場合には、第1金属板を配線層または電導層として利用することができるし、セラミック板を電気絶縁層として利用することができる。
上記[10]の積層材において、例えば、第2金属板を配線層として利用することができるし、セラミック板を電気絶縁層として利用することができる。詳述すると、例えば、もし第2金属板がNi又はNi合金からなるとともに、セラミック板がAlN、Al2O3、Si3N4、SiC、Y2O3、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料からなる場合には、第2金属板を配線層として利用することができるし、セラミック板を電気絶縁層として利用することができる。
上記[11]の積層材では、上記[1]の積層材と同様の効果が得られる。また、上記[11]の積層材において、例えば、第1金属板を配線層または電導層として利用することができるし、セラミック板を電気絶縁層として利用することができる。詳述すると、例えば、もし第1金属板がAl、Cu、Ag、Au、Ni、Ti、Al合金、Cu合金、Ag合金、Au合金、Ni合金およびTi合金よりなる群から選ばれた1種の材料からなるとともに、セラミック板がAlN、Al2O3、Si3N4、SiC、Y2O3、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料からなる場合には、第1金属板を配線層または電導層として利用することができるし、セラミック板を電気絶縁層として利用することができる。
上記[12]の積層材において、例えば、第2金属板を配線層として利用することができるし、セラミック板を電気絶縁層として利用することができる。詳述すると、例えば、もし第2金属板がNi又はNi合金からなるとともに、セラミック板がAlN、Al2O3、Si3N4、SiC、Y2O3、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料からなる場合には、第2金属板を配線層として利用することができるし、セラミック板を電気絶縁層として利用することができる。
さらに、上記[1]〜[16]の積層材によれば、第1金属板とセラミック板とが、第1金属板とセラミック板とが隣接するように積層されるとともに、隣り合う第1金属板とセラミック板とが放電プラズマ焼結法により接合されているので、製造の際に第1金属板の寸法変化は少なく、第1金属板の厚み方向の寸法精度を比較的簡単に向上させることが可能になる。したがって、生産性が優れたものになる。しかも、積層材の上下両面の平面度を、たとえば100μm以下とすることができる。そのため、積層材の上下両面の平面度が向上し、研磨などのサイジング工程による仕上げ処理が不要になる。
上記[15]の積層材によれば、セラミック板を高い電気絶縁性を有する電気絶縁層として利用することができる。
上記[17]の積層材の製造方法によれば、上記[1]の積層材を確実に製造することができる。
上記[18]の積層材の製造方法によれば、隣り合う第1金属板とセラミック板とを確実に接合することができる。
上記[19]の積層材の製造方法によれば、上記[4]の積層材を確実に製造することができる。
上記[20]の積層材の製造方法によれば、隣り合う第1金属板とセラミック板とを確実に接合することができる。
上記[21]の積層材の製造方法によれば、上記[5]の積層材を確実に製造することができる。
上記[22]の積層材の製造方法によれば、上記[6]の積層材を確実に製造することができる。
上記[23]の積層材の製造方法によれば、隣り合う第1金属板とセラミック板、および第1金属板と第2金属板とを確実に同時に接合することができる。
上記[24]の積層材の製造方法によれば、上記[7]の積層材を確実に製造することができる。
上記[25]の積層材の製造方法によれば、第1金属板とセラミック板とを確実に接合することができる。
上記[26]の積層材の製造方法によれば、上記[8]の積層材を確実に製造することができる。
上記[27]の積層材の製造方法によれば、第1金属板とセラミック板、および第1金属板と第2金属板とを確実に同時に接合することができる。
上記[28]の積層材の製造方法によれば、上記[9]の積層材を確実に製造することができる。
上記[29]の積層材の製造方法によれば、隣り合う板どうしを確実に同時に接合することができる。
上記[30]の積層材の製造方法によれば、上記[10]の積層材を確実に製造することができる。
上記[31]の積層材の製造方法によれば、隣り合う板どうしを確実に同時に接合することができる。
上記[32]の積層材の製造方法によれば、上記[11]の積層材を確実に製造することができる。
上記[33]の積層材の製造方法によれば、隣り合う板どうしを確実に同時に接合することができる。
上記[34]の積層材の製造方法によれば、上記[12]の積層材を確実に製造することができる。
上記[35]の積層材の製造方法によれば、隣り合う板どうしを確実に同時に接合することができる。
さらに、上記[17]〜[35]の積層材の製造方法によれば、セラミック板における第1金属板との隣接面の外周縁部に、位置決め治具を第1金属板のセラミック板との接合予定面の周りを囲うように配置しているので、セラミック板の隣接面に対して第1金属板の接合予定面を確実に且つ容易に位置決めすることができる。これにより、積層材を容易に製造することができる。
上記[38]の積層材の製造方法によれば、セラミック板を高い電気絶縁性を有する電気絶縁層として利用することができる。
上記[39]および[40]の積層材の製造方法によれば、第1金属板とセラミック板との接触面積が増大し、第1金属板とセラミック板との間に接合欠陥が発生することを効果的に抑制することができる。
上記[41]の積層材の製造方法によれば、第1金属板とセラミック板との間での接合欠陥の発生を効果的に防止することができる。
上記[42]の積層材の製造方法によれば、第1金属板とセラミック板との間での接合欠陥の発生を効果的に防止することができる。
以下、この発明の幾つかの実施形態を、図面を参照して説明する。これらの実施形態は、積層材が、半導体素子(例:パワーデバイス)が実装される絶縁基板として利用可能なものである場合について示している。
なお、以下の説明において、各図面の上下を上下というものとする。また、全図面を通じて同一部分および同一物には同一符号を付して重複する説明を省略する。
実施形態1
図1A〜2Bは、本発明の実施形態1を説明する図である。図1Aおよび1Bは本発明の実施形態1の積層材を示し、図2Aは図1Aの積層材の製造方法を示す。図2Bは図2Aの方法を実施する際の加熱温度の範囲を示す。
図1Aおよび1Bにおいて、積層材(1)は、複数枚の金属板(2)(3)と少なくとも1枚のセラミック板(4)とが、セラミック板(4)と各金属板(2)(3)とが隣接するように積層されるとともに、隣り合う金属板(2)(3)とセラミック板(4)とが放電プラズマ焼結法により接合されたものである。ここでは、積層材(1)は、上下2枚の金属板(2)(3)と1枚のセラミック板(4)とが、セラミック板(4)が両金属板(2)(3)間に位置するように積層されるとともに、両金属板(2)(3)とセラミック板(4)とが放電プラズマ焼結法により接合されたものである。すなわち、この積層材(1)は三層構造である。積層材(1)の上下両金属板(2)(3)は、水平状に配置されたセラミック板(4)の厚さ方向両側(即ち上下両側)にそれぞれ配置されている。
なお、金属板(2)(3)は「第1金属板」に相当する。
図1Aおよび1Bに示すように、セラミック板(4)の形状は、平面視で四角形状である。各金属板(2)(3)の形状も同じく、平面視で四角形状である。さらに、セラミック板(4)の上面(4a)および下面(4a)の外形寸法は、各金属板(2)(3)の上面および下面の外形寸法よりも少し大きくなっている。すなわち、セラミック板(4)の上面(4a)の外形寸法は、上側金属板(2)の下面の外形寸法よりも少し大きくなっており、セラミック板(4)の下面(4a)の外形寸法は、下側金属板(3)の上面の外形寸法よりも少し大きくなっている。
そして、セラミック板(4)における上側金属板(2)と接合された側の面(即ち、セラミック板(4)の上面(4a))の外周縁(4z)よりも内側に、上側金属板(2)のセラミック板(4)との接合面(2a)(即ち、上側金属板(2)の下面)が位置している。さらに、セラミック板(4)における下側金属板(3)と接合された側の面(即ち、セラミック板(4)の下面(4a))の外周縁(4z)よりも内側に、下側金属板(3)のセラミック板(4)との接合面(3a)(即ち、下側金属板(3)の上面)が位置している。したがって、セラミック板(4)の外周縁部がその全周に亘って各金属板(2)(3)の外周縁よりも外側に突出した状態になっている。
本実施形態1の積層材(1)では、セラミック板(4)における上側金属板(2)と接合された側の面は、セラミック板(4)の上面(4a)である。セラミック板(4)における下側金属板(3)と接合された側の面は、セラミック板(4)の下面(4a)である。さらに、セラミック板(4)の上面(4a)は上側金属板(2)との隣接面でもあり、またセラミック板(4)の下面(4a)は下側金属板(3)との隣接面でもある。また、上側金属板(2)のセラミック板(4)との接合面(2a)は、上側金属板(2)の下面である。下側金属板(3)のセラミック板(4)との接合面(3a)は、下側金属板(3)の上面である。
図1Bに示すように、セラミック板(4)の上面(4a)の外周縁(4z)から上側金属板(2)の接合面(2a)までの距離dは、0.5mm以上であることが望ましく、また同じく、セラミック板(4)の下面(4a)の外周縁(4z)から下側金属板(3)の接合面(3a)までの距離dは、0.5mm以上であることが望ましい。こうすることにより、金属板(2)(3)の外周縁部からの漏電を確実に防止することができる。なお、距離dの上限は特に限定されるものではなく、通常2.0mm位である。
ここで本発明では、セラミック板(4)と金属板(2)(3)は平面視で互いに相似形でも良いし異形形状でも良い。また、それらの形状は、多角形でも良い、円形状、楕円形状、または任意の曲線で囲まれた形状でも良い。例えば、セラミック板(4)と金属板(2)(3)が平面視で互いに相似形の四角形である場合は、金属板(2)(3)はセラミック板(4)よりも各一辺の長さが1mm以上小さいものであることが望ましい。さらに、金属板(2)(3)の重心位置とセラミック板(4)の重心位置とが平面視において一致していることが望ましい。
積層材(1)の上下両面、すなわち上側金属板(2)の上面および下側金属板(3)の下面における平面度は、それぞれ100μm以下である。
上下両金属板(2)(3)は、それぞれAl、Cu、Ag、Au、Ni、Ti、Al合金、Cu合金、Ag合金、Au合金、Ni合金およびTi合金よりなる群から選ばれた1種の材料からなる。そして、上下両金属板(2)(3)を構成する材料は、これらの材料の中から、上側金属板(2)の融点と下側金属板(3)の融点との差が140℃以内となるように、適当に選択される。因みに、上下両金属板(2)(3)を構成する材料の融点は、Al:660℃、Cu:1083℃、Ag:961℃、Au:1063℃、Ni:14553℃、Ti:1727℃であり、またAl合金、Cu合金、Ag合金、Au合金、Ni合金およびTi合金の融点は、通常それぞれAl、Cu、Ag、Au、NiおよびTiの融点よりも低い。上下両金属板(2)(3)は同一の材料から形成されていてもよいし、異なった材料で形成されていてもよい。また、上下両金属板(2)(3)の厚みは3mm以下であることが好ましい。上下両金属板(2)(3)は、公知の適当な方法で形成される。
セラミック板(4)は、AlN、Al2O3、Si3N4、SiC、Y2O3、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の電気絶縁性材料からなる。セラミック板(4)の厚みは1mm以下であることが好ましい。セラミック板(4)は、たとえばAlN、Al2O3、Si3N4、SiC、Y2O3、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料の粉末を、適当な焼結助剤を用いて放電プラズマ焼結法により焼結することにより形成される。また、セラミック板(4)は、AlN、Al2O3、Si3N4、SiC、Y2O3、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料の粉末を用いて熱間静水圧プレス(HIP)することにより形成されていてもよい。
ここで、各セラミック材料の融点または分解点は、AlN:2200℃、Al2O3:2050℃、Si3N4:1900℃、SiC:2000℃、Y2O3:2400℃、CaO:2570℃、BN:3000℃、BeO:2570℃であり、上下両金属板(2)(3)を構成する材料の融点よりも高くなっている。
次に、積層材(1)の製造方法について、図2Aおよび2Bを参照して説明する。この積層材(1)の製造方法は、積層工程と積層体配置工程と接合工程とを含む放電プラズマ焼結工程を具備している。積層材(1)の製造方法は次のとおりである。
すなわち、Al、Cu、Ag、Au、Ni、Ti、Al合金、Cu合金、Ag合金、Au合金、Ni合金及びTi合金よりなる群から選ばれた1種の材料からなり、かつ一般的な製法で作製された2枚の金属板(2)(3)と、AlN、Al2O3、Si3N4、SiC、Y2O3、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料からなり、かつ一般的な製法で作製された1枚のセラミック板(4)とを用意する。
ここで、2枚の金属板(2)(3)の融点の差が140℃以内となるように、両金属板(2)(3)を構成する材料を上記材料の中から適宜選択する。なお、両金属板(2)(3)の融点の差が140℃以内とは、両金属板(2)(3)の融点が等しい場合、即ち融点の差が0℃の場合も含む。また、金属板(2)(3)の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で1.0μm以下であることが好ましく、金属板(2)(3)の厚みは3mm以下であることが好ましい。セラミック板(4)の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で1.5μm以下であることが好ましく、セラミック板(4)の厚みは1mm以下であることが好ましい。
また、セラミック板(4)の上面(4a)における上側金属板(2)の位置を決める上側位置決め治具(50)と、セラミック板(4)の下面(4a)における下側金属板(3)の位置を決める下側位置決め治(50)とを用意する。両位置決め治具(50)(50)は、詳述すると、セラミック板(4)の上面(4a)または下面(4a)の外周縁(4z)(4z)よりも内側に、それぞれ上側金属板(2)の下面からなる接合予定面(2b)および下側金属板(3)の上面からなる接合予定面(3b)を位置させるためのものである。更に詳述すると、上側位置決め治具(50)は、セラミック板(4)の上面(4a)における外周縁(4z)と上側金属板(2)の接合予定面(2b)の外周縁との間の領域に配置され、下側位置決め部材(50)は、セラミック板(4)の下面(4a)における外周縁(4z)と下側金属板(3)の接合予定面(3b)の外周縁との間の領域に配置される。このように両位置決め部材(50)(50)が配置されることにより、両金属板(2)(3)の接合予定面(2b)(3b)の位置が決められる。各位置決め治具(50)は四角枠状である。
位置決め治具(50)は、放電プラズマ焼結法によりセラミック板(4)および金属板(2)(3)と接合しない材料製である。具体的には、位置決め治具(50)の材質はカーボン(例:黒鉛)、金属、セラミックなどである。
ついで、放電プラズマ焼結装置の導電性を有する筒状の黒鉛製焼結用ダイ(10)内に、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)を、セラミック板(4)と各金属板(2)(3)とが隣接するように、且つ、セラミック板(4)が両金属板(2)(3)間に位置するように、更に、セラミック板(4)の上面(4a)および下面(4a)における外周縁(4z)(4z)よりも内側にそれぞれ上側金属板(2)の下面からなる接合予定面(2b)および下側金属板(3)の上面からなる接合予定面(3b)が位置するように積層して配置する。このように、これらの板(2)(3)(4)が配置されることで積層体(60)が形成される。互いに隣り合う板どうし(2,4)(4,3)は面接触している。さらに、セラミック板(4)の上面(4a)および下面(4a)の外周縁部(4y)上に、それぞれ、位置決め治具(50)を上側金属板(2)の接合予定面(2b)および下側金属板(3)の接合予定面(3b)の周りを囲うように配置する。このように上下両位置決め治具(50)(50)が配置されることにより、セラミック板(4)の上面(4a)における上側金属板(2)の接合予定面(2b)の位置が決定されるとともに、セラミック板(4)の下面(4a)における下側金属板(3)の接合予定面(3b)の位置が決定される。この工程が「積層工程」に相当する。
ダイ(10)の上下方向の高さは、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)の厚みの合計よりも高くなっており、ダイ(10)の上下両端部は、上下両金属板(2)(3)よりも上下方向外側に突出している。
ついで、ダイ(10)内における上側金属板(2)、セラミック板(4)および下側金属板(3)からなる積層体(60)の上下両側にそれぞれ黒鉛製パンチ(11)(12)を配置するとともに、上パンチ(11)の上面および下パンチ(12)の下面にそれぞれ電極(13)(14)を電気的に接触させる。この状態では、両パンチ(11)(12)およびダイ(10)によって両電極(13)(14)間の導通が確保される。この工程が「積層体配置工程」に相当する。
位置決め治具(50)は上述したように四角枠状のものである。位置決め治具(50)の外形寸法(外周寸法)は、セラミック板(4)の外形寸法(外周寸法)と同じである。位置決め治具(50)の内形寸法(内周寸法)は、対応する金属板(2)(3)の外形寸法(外周寸法)と同じか若干大きい。位置決め治具(50)の厚さは、対応する金属板(2)(3)の厚さと同じである。そして、位置決め治具(50)は、その内側空間に、対応する金属板(2)(3)が挿入配置されることにより、対応する金属板(2)(3)の接合予定面(2b)(3b)の周りを囲い得るように構成されている。
位置決め治具(50)の外周面とその内周面との間の幅(即ち、位置決め治具(50)の肉厚)は0.5mm以上であるのが好ましい。また、位置決め治具(50)の内側空間に対応する金属板(2)(3)が配置された状態において、常温下では位置決め治具(50)の内周面と金属板(2)(3)との間にクリアランスを有するとともに、放電プラズマ焼結による接合時に金属板(2)(3)が熱膨張したときに金属板(2)(3)が位置決め治具(50)の内周面に接触することが好ましい。
図2Aでは、下パンチ(12)の上に下側位置決め治具(50)を配置し、その内側空間に下側金属板(3)を挿入配置し、その上にセラミック板(4)を配置し、さらにその上に上側位置決め治具(50)を配置し、その内側空間に上側金属板(2)を挿入配置し、そして上パンチ(11)でこれら部材を下パンチ(12)との間において挟み付けている。
特に、セラミック板(4)の上面(4a)または下面(4a)の外周縁(4z)(4z)から各金属板(2)(3)の接合予定面(2b)(3b)までの距離d(図1B参照)は、上述したように0.5mm以上であることが望ましい。
ついで、1〜10Paの真空雰囲気中、または窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中において、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)からなる積層体(60)を、上下両パンチ(11)(12)または両電極(13)(14)により上下両方向から、すなわち両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)の積層方向の両側から加圧しつつ、両電極(13)(14)間にパルス電流を通電することにより、設定温度に加熱昇温するとともに、当該温度に所定時間保持し、これにより、両金属板(2)(3)とセラミック板(4)とを接合する。ここで、両金属板(2)(3)の融点が同じ場合には、両金属板(2)(3)の融点よりも10〜150℃低い温度に加熱する。また、両金属板(2)(3)の融点が異なる場合には、両金属板(2)(3)のうち高融点の金属板の融点よりも150℃低い温度と、低融点の金属板の融点よりも10℃低い温度との間の温度に加熱する。すなわち、図2Bに示すように、高融点の金属板の融点をT1℃、低融点の金属板の融点をT2℃とした場合、高融点の金属板をセラミック板(4)に放電プラズマ焼結法により接合しうる加熱温度は、(T1−150)〜(T1−10)℃の範囲内であり、低融点の金属板をセラミック板(4)に放電プラズマ焼結法により接合しうる加熱温度は、(T2−150)〜(T2−10)℃の範囲内であるから、加熱温度がTWで示す(T2−150)〜(T2−10)℃の範囲内であれば、低融点の金属板が溶融することなく、両金属板(2)(3)を同時にセラミック板(4)に接合することが可能になる。なお、(T1−150)℃と(T2−10)℃が同じ温度の場合がある。この工程が「接合工程」に相当する。接合が終了したら、冷却後、位置決め治具(50)を取り外す。こうして、積層材(1)が製造される。
なお、各金属板(2)(3)とセラミック板(4)とが接合されることで、各金属板(2)(3)の接合予定面(2b)(3b)がそれぞれセラミック板(4)との接合面(2a)(3a)となる。
上述した方法での接合条件は、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)の材料や寸法に応じて異なるが、たとえば通電するパルス電流1000〜30000A、加圧力10〜100MPa、接合温度保持時間1〜30minである。
なお、両金属板(2)(3)とセラミック板(4)とが接合されるメカニズムは明確ではないが、次の通りであると考えられる。
すなわち、金属板(2)(3)とセラミック板(4)とからなる積層体(60)を積層方向の両側から加圧すると、金属板(2)(3)が降伏することにより、金属板(2)(3)を構成する材料がセラミック板(4)表面の微小な凹部に入り込み、金属板(2)(3)とセラミック板(4)との接触面積が大きくなる。この状態で、放電プラズマ焼結装置の両電極(13)(14)を導通されるとともに両電極(13)(14)間にパルス電流を通電し、最も高融点の金属板の融点よりも150℃低い温度と、最も低融点の金属板の融点よりも10℃低い温度との間の温度に加熱すると、金属板(2)(3)が軟化して金属板(2)(3)とセラミック板(4)との接触面積が一層大きくなる。このとき、金属板(2)(3)表面とセラミック板(4)表面との接触部付近において放電プラズマが放射されると、金属板(2)(3)表面の酸化皮膜が破壊、除去されるので、活性な表面が露出する。この金属板(2)(3)の活性面がセラミック板(4)の表面と接触すると、物質拡散により金属板(2)(3)とセラミック板(4)とが接合されると考えられる。
図3〜図6は、積層材(1)を製造する方法の幾つかの変形例を示す。
図3に示す方法の場合、放電プラズマ焼結装置の上下両電極(13)(14)と上下両金属板(2)(3)との間にはパンチは配置されていない。また、導電性を有する黒鉛製焼結用ダイ(20)の高さは、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)の厚みの合計よりも若干高くなっており、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)からなる積層体(60)を、上下両電極(13)(14)により上下両方から加圧した際に、上下両電極(13)(14)がダイ(20)と上下両金属板(2)(3)とに接するようになっている。したがって、加圧状態において、ダイ(20)によって両電極(13)(14)間の導通が確保される。
その他は、図2Aに示す方法と同様にして積層材(1)が製造される。
図4に示す方法の場合、放電プラズマ焼結装置の上下両電極(13)(14)と上下両金属板(2)(3)との間にはパンチは配置されていない。また、導電性を有する黒鉛製焼結用ダイ(25)の高さは、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)の厚みの合計よりも低く、かつセラミック板(4)の厚みよりも高くなっている。両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)からなる積層体(60)を、上下両電極(13)(14)により上下両方向から加圧した際に、ダイ(25)が両電極(13)(14)とは接触せず、上下両金属板(2)(3)または上下両位置決め治具(50)(50)に跨った位置に来るようになっている。さらに、上下両位置決め治具(50)(50)は導電性を有する材料(例:黒鉛)から製作されている。したがって、加圧状態において、上下両金属板(2)(3)およびダイ(25)によって両電極(13)(14)間の通電が確保されるか、あるいは、上下両金属板(2)(3)、上下両位置決め治具(50)(50)およびダイ(25)によって両電極(13)(14)間の導通が確保される。
図4においては、上側金属板(2)は、その下面の中央部に下方突出状に凸部が一体形成されている。そして、この凸部の突端面が接合予定部(2b)となされている。そして、この接合予定面(2b)がセラミック板(4)の上面(4a)の外周縁(4z)よりも内側に上面(4a)と接触して配置されている。下側金属板(3)は、その上面の中央部に上方突出状に凸部が一体形成されている。そして、この凸部の突端面が接合予定部(3b)となされている。そして、この接合予定面(3b)がセラミック板(4)の下面(4a)の外周縁(4z)よりも内側に下面(4a)と接触して配置されている。
上側金属板(2)の凸部と下側金属板(3)の凸部は、それぞれ対応する位置決め治具(50)の内側空間に挿入配置されており、これにより、上下両金属板(2)(3)の接合予定面(2b)(3b)の周りが対応する位置決め治具(50)で囲まれている。
位置決め治具(50)の厚さは、対応する金属板(2)(3)の凸部の突出高さに対して等しいか、または0.05mm程度小さく設定されている。
図4では、下電極(14)の上に下側金属板(3)を配置し、その上に下側位置決め治具(50)をその内側空間に下側金属板(3)の凸部が挿入されるように配置し、その上にセラミック板(4)を配置し、さらにその上に上側位置決め治具(50)を配置し、その内側空間内に金属板(2)の凸部が挿入されるように金属板(2)を配置し、そして上電極(13)でこれら部材を下電極(14)との間において挟み込んでいる。
その他は、図2Aに示す方法と同様にして積層材(1)が製造される。
図5に示す方法の場合、図3に示す方法に用いられる放電プラズマ焼結装置において、上下両電極(13)(14)と上下両金属板(2)(3)との間に、それぞれ導電性を有する黒鉛製スペーサ(26)(27)が配置されている。スペーサ(26)(27)の大きさはダイ(20)の上下両端開口よりも大きい。また、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)からなる積層体(60)を、上下両電極(13)(14)によりスペーサ(26)(27)を介して上下両方向から加圧した際に、上下両スペーサ(26)(27)がダイ(20)上と下両金属板(2)(3)とに接するようになっている。したがって、加圧状態において、スペーサ(26)(27)およびダイ(20)によって両電極(13)(14)間の導通が確保される。その他は、図3に示す方法と同様にして積層材(1)が製造される。
図6に示す方法の場合、図4に示す方法に用いられる放電プラズマ焼結装置において、上下両電極(13)(14)と上下両金属板(2)(3)との間に、それぞれ黒鉛製スペーサ(26)(27)が配置されている。スペーサ(26)(27)の大きさはダイ(25)の上下両端開口よりも大きい。また、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)からなる積層体(60)を、上下両電極(13)(14)によりスペーサ(26)(27)を介して上下両方向から加圧した際に、ダイ(25)が両電極(13)(14)とは接触せず、上下両金属板(2)(3)または上下両位置決め治具(50)(50)に跨った位置に来るようになっている。さらに、上下両位置決め治具(50)(50)は導電性を有する材料(例:黒鉛)から製作されている。したがって、加圧状態において、上下両スペーサ(26)(27)、上下両金属板(2)(3)およびダイ(25)によって両電極(13)(14)間の導通が確保されるか、あるいは、上下両スぺーサ(26)(27)、上下両金属板(2)(3)、上下両位置決め治具(50)(50)およびダイ(25)によって両電極(13)(14)間の導通が確保される。その他は、図4に示す方法と同様にして積層材(1)が製造される。
実施形態2
図7Aおよび7Bは、本発明の実施形態2を説明する図である。図7Aは本発明の実施形態2の積層材(30A)を示し、図7Bは図7Aの積層材(30A)の製造方法を示す。この積層材(30A)は四層構造のものである。
図7Aにおいて、積層材(30A)は、実施形態1の積層材(1)における上下両金属板(2)(3)のうちの少なくともいずれか一方の金属板(2)(3)におけるセラミック板(4)と接合された面とは反対側の面、ここでは下側金属板(3)の下面に、高融点金属材(31)が放電プラズマ焼結法により積層状に接合されている。すなわち、高融点金属材(31)は、下側金属板(3)のセラミック板(4)配置側とは反対側に配置されている。
なお、高融点金属板(31)は「第2金属板」に相当する。
高融点金属材(31)は、積層材(30A)を製造する際の放電プラズマ焼結法の加熱時の加熱温度では溶融しない材料からなるものである。すなわち、両金属板(2)(3)が同じ融点を有する材料からなる場合には、高融点金属板(31)は両金属板(2)(3)の融点以上の融点を有する材料からなり、両金属板(2)(3)の融点が異なる場合には、高融点金属板(31)は融点が低い方の金属板の融点よりも高い融点を有する材料からなる。たとえば、両金属板(2)(3)がAlまたはAl合金からなる場合、高融点金属板(31)は、Cu、Ag、Au、Ni、Ti、Cu合金、Ag合金、Au合金、Ni合金およびTi合金よりなる群から選ばれた1種の材料で形成されるのが望ましい。
高融点金属板(31)の形状は、セラミック板(4)および両金属板(2)(3)の形状と同じく、平面視で四角形状である。さらに、高融点金属材(31)の上面および下面の外形寸法は、各金属板(2)(3)の上面および下面の外形寸法よりも少し大きくなっており、同図ではセラミック板(4)の上面および下面の外形寸法と同じになっている。すなわち、高融点金属板(31)の上面の外形寸法は、下側金属板(3)の下面の外形寸法よりも少し大きくなっている。
高融点金属板(31)は、下側金属板(3)よりも各一辺の長さが0.5mm以上大きくなっている。さらに、高融点金属板(31)の重心位置とセラミック板(4)の重心位置とが平面視において一致していることが望ましい。なお、高融点金属板(31)の形状は、その他に、円形状、楕円形状、または任意の曲線で囲まれた形状でも良い。
次に、積層材(30A)の製造方法について、図7Bを参照して説明する。
すなわち、実施形態1の積層材(1)を製造するのに用いられる2枚の金属板(2)(3)と、1枚のセラミック板(4)と、2個の位置決め治具(50)(50)とを用意する。さらに、もし両金属板(2)(3)がAlまたはAl合金からなる場合、たとえばCu、Ag、Au、Ni、Ti、Cu合金、Ag合金、Au合金、Ni合金およびTi合金よりなる群から選ばれた1種の材料からなる高融点金属板(31)を用意する。
ここで、高融点金属板(31)の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で1.0μm以下であることが好ましく、厚みは3mm以下であることが好ましい。
ついで、放電プラズマ焼結装置の導電性を有する黒鉛製焼結用ダイ(32)内に、両金属板(2)(3)、セラミック板(4)および高融点金属板(31)を、セラミック板(4)と各金属板(2)(3)とが隣接するように、且つ、セラミック板(4)が両金属板(2)(3)間に位置するように、更に、セラミック板(4)の上面(4a)および下面(4a)における外周縁(4z)(4z)よりも内側にそれぞれ上側金属板(2)の接合予定面(2b)および下側金属板(3)の接合予定面(3b)が位置するように、更に、高融点金属板(31)が下側金属板(3)の下側に位置するように積層して配置する。こうして、これらの板(2)(3)(4)(31)が積層されることで積層体(60)が形成される。互いに隣り合う板どうし(2,4)(4,3)(3,31)は面接触している。さらに、セラミック板(4)の上面(4a)および下面(4a)の外周縁部(4y)上に、それぞれ、位置決め治具(50)を上側金属板(2)の接合予定面(2b)および下側金属板(3)の接合予定面(3b)の周りを囲うように配置する。このように上下両位置決め治具(50)(50)が配置されることにより、セラミック板(4)の上面(4a)における上側金属板(2)の接合予定面(2b)の位置が決定されるとともに、セラミック板(4)の下面(4a)における下側金属板(3)の接合予定面(3b)の位置が決定される。
ダイ(32)の上下方向の高さは、両金属板(2)(3)、セラミック板(4)および高融点金属板(31)の厚みの合計よりも高くなっており、ダイ(32)の上下両端部は、上下両金属板(2)(3)よりも上下方向外側に突出している。ついで、ダイ(32)内における両金属板(2)(3)、セラミック板(4)および高融点金属板(31)からなる積層体(60)の上下両側に黒鉛製パンチ(11)(12)を配置するとともに、上パンチ(11)の上面および下パンチ(12)の下面にそれぞれ電極(13)(14)を電気的に接触させる。この状態では、両パンチ(11)(12)およびダイ(32)によって両電極(13)(14)間の導通が確保される。
ついで、1〜10Paの真空雰囲気中、または窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中において、両金属板(2)(3)、セラミック板(4)および高融点金属板(31)からなる積層体(60)を、上下両パンチ(11)(12)または両電極(13)(14)により上下両方、すなわち両金属板(2)(3)、セラミック板(4)および高融点金属板(31)の積層方向の両側から加圧しつつ、両電極(13)(14)間にパルス電流を通電することにより、両金属板(2)(3)の融点が同じ場合には、両金属板(2)(3)の融点よりも10〜150℃低い温度に加熱昇温し、両金属板(2)(3)の融点が異なる場合には、両金属板(2)(3)のうち高融点の金属板の融点よりも150℃低い温度と、低融点の金属板の融点よりも10℃低い温度との間の温度に加熱昇温し、当該温度に所定時間保持し、これにより、両金属板(2)(3)とセラミック板(4)、および、下側金属板(3)と高融点金属板(31)とを同時に接合する。次いで、冷却をした後、位置決め治具(50)を取り外す。こうして、積層材(30A)が製造される。
上述した方法での両金属板(2)(3)とセラミック板(4)、および下側金属板(3)と高融点金属板(31)との接合条件は、両金属板(2)(3)、セラミック板(4)および高融点金属板(31)の材料や寸法に応じて異なるが、たとえば通電するパルス電流1000〜30000A、加圧力10〜100MPa、接合温度保持時間1〜30minである。
実施形態3
図8Aおよび8Bは、本発明の実施形態3を説明する図である。図8Aは本発明の実施形態3の積層材(30B)を示し、図8Bは図8Aの積層材(30B)の製造方法を示す。この積層材(30B)は四層構造のものである。
この積層材(30B)およびその製造方法を、図7Aに示した上記実施形態2の積層材(30A)およびその製造方法とは異なる点を中心に以下に説明する。
図8Aの積層材(30B)の高融点金属板(31)は、その大きさが図7Aの積層材(30A)の高融点金属材(31)の大きさよりも小さいものである。すなわち、図8Aの積層材(30B)の高融点金属材(31)の上面および下面の寸法は、下側金属板(3)の下面の寸法に対して等しくなっている。図8Aの積層材(30B)のその他の構成は、図7Aの積層材(30A)と同じである。
次に、積層材(30B)の製造方法について、図8Bを参照して説明する。
この積層材(30B)の製造方法では、下側位置決め治具(50)の厚みは、高融点金属板(31)および下側金属板(3)の厚みの合計と同じかまたは若干小さくなっている。そして、高融点金属板(31)および下側金属板(3)が下側位置決め治具(50)の内側空間に挿入配置されている。この積層材(30B)の製造方法のその他の構成および条件は、図7Bの積層材(30A)の製造方法と同じである。
実施形態4
図9Aおよび9Bは、本発明の実施形態4を説明する図である。図9Aは本発明の実施形態4の積層材(30C)を示し、図9Bは図9Aの積層材(30C)の製造方法を示す。この積層材(30C)は四層構造のものである。
図9Aにおいて、積層材(30C)は、図8Aの積層材(30B)を上下反転した構成のものである。すなわち、この積層材(30C)は、実施形態1の積層材(1)における上下両金属板(2)(3)のうちの少なくとも一方の金属板(2)におけるセラミック板(4)と接合された面とは反対側の面、ここでは上側金属板(2)の上面に、積層材(30C)を製造する際の放電プラズマ焼結法の加熱時の加熱温度では溶融しない材料からなる高融点金属板(36)が、放電プラズマ焼結法により積層状に接合されている。
両金属板(2)(3)はたとえばAlまたはAl合金で形成されている。この場合、高融点金属板(36)はたとえばCu、Ag、Au、Ni、Ti、Cu合金、Ag合金、Au合金、Ni合金およびTi合金よりなる群から選ばれた1種の材料で形成されており、これらの材料は、高熱伝導性を有するとともに、はんだ付け性が優れている。
図示は省略したが、積層材(30C)は、以下に述べるようにして、半導体モジュール用ベースとしてパワーモジュール用ベースに用いられる。
高融点金属板(36)の表面をマスキングしてエッチングを施すことにより上側金属板(2)を部分的に露出させ、上側金属板(2)の露出した部分にさらにエッチングを施すことによって回路を形成し、これにより、上側金属板(2)を、表面に高融点金属板(36)を備えた配線層とする。また、Al、Al合金、Cu、Cu合金などの高熱伝導性材料からなるヒートシンクなどの放熱材と、Al、Al合金、Cu、Cu合金などの高熱伝導性材料からなり、且つ応力吸収空間を有する応力緩和部材とを用意する。応力緩和部材としては、たとえば複数の貫通穴が形成されたAlまたはAl合金からなり、貫通穴が応力吸収空間となっているものが用いられる。
そして、放熱材上に、応力緩和部材を介して積層材(30C)を置き、下側金属板(3)と応力緩和部材、および応力緩和部材と放熱板とを同時にろう付けする。こうして、半導体モジュール用ベースとしてパワーモジュール用ベースが構成される。
なお、放熱材は、たとえば内部に冷却流体通路を有する中空体の上壁からなることがある。冷却流体としては、液体および気体のいずれを用いてもよい。また、放熱材は、応力緩和部材が接合された面とは反対側の面に放熱フィンが設けられた放熱板からなることがある。
パワーモジュール用ベースの積層材(30C)の上側金属板(2)の表面に接合された高融点金属板(36)に、半導体素子としてのパワーデバイスがはんだ付けにより実装されてパワーモジュールが構成される。ここで、高融点金属板(36)は、はんだ付け性に優れた材料からなるので、上側金属板(2)の表面に、はんだの濡れ性を向上させるNiメッキなどを施す処理工程が不要となり、製造コストを低減させることができる。
当該パワーモジュールにおいて、パワーデバイスから発せられた熱は、高融点金属板(36)、上側金属板(2)、セラミック板(4)、下側金属板(3)および応力緩和部材を経て放熱材に伝えられ、放熱材から放熱される。
なお、実施形態4の積層材(30C)の下側金属板(3)の下面に、実施形態2や3の場合と同様な材料からなる高融点金属板(31)が積層状に接合されていてもよい。
実施形態4の積層材(30C)は、図9Bに示すように、実施形態3の積層材(30B)の製造方法と同じにようにして製造される。
実施形態5
図10および11は、本発明の実施形態5を説明する図である。図10は本発明の実施形態5の積層材(40A)を示し、図11は図10の積層材(40A)の製造方法を示す。
図10において、積層材(40A)は、1枚の金属板(41)が1枚のセラミック板(42)の上面(4a)に放電プラズマ焼結法によって積層状に接合されたものであり、すなわち1枚の金属板(41)と1枚のセラミック板(42)とが、金属板(41)がセラミック板(42)の上側に位置するように金属板(41)とセラミック板(42)とが隣接して積層されるとともに、金属板(41)とセラミック板(42)とが放電プラズマ焼結法により接合されたものである。したがって、セラミック板(42)における金属板(41)と接合された側の面は、セラミック板(42)の上面(4a)である。さらに、セラミック板(42)の上面(4a)は金属板(41)との隣接面でもある。金属板(41)のセラミック板(42)との接合面(2a)は、金属板(41)の下面である。
この積層材(40A)では、金属板(41)のセラミック板(42)との接合面(2a)は、セラミック板(42)の上面(4a)の外周縁(4z)よりも内側に位置している。
なお、金属板(41)は「第1金属板」に相当する。
セラミック板(42)の形状は、平面視で四角形状である。金属板(41)の形状も同じく、平面視で四角形状である。さらに、セラミック板(42)の上面(4a)の寸法は、金属板(41)の下面の寸法よりも少し大きくなっている。
セラミック板(42)の上面(4a)の外周縁(4z)から金属板(41)の接合面(2a)までの距離dは、0.5mm以上であることが望ましい。
ここで、セラミック板(42)と金属板(41)は相似形でも良いし異形形状でも良い。また、それらの形状は、多角形でも良い、円形状、楕円形状、または任意の曲線で囲まれた形状でも良い。
積層材(40A)の上下両面、すなわち金属板(41)の上面およびセラミック板(42)の下面の平面度は、それぞれ100μm以下である。
金属板(41)およびセラミック板(42)としては、それぞれ実施形態1の積層材(1)における両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)と同様な材料からなるものが用いられる。この実施形態5の場合、金属板(41)の融点を考慮する必要はない。
次に、積層材(40A)の製造方法について、図11を参照して説明する。
すなわち、実施形態1の積層材(1)を製造するのに用いられる上下のいずれかの金属板(2)(3)およびセラミック板(4)と同様の材料からなる1枚の金属板(41)および1枚のセラミック板(42)を用意する。
ついで、放電プラズマ焼結装置の導電性を有する黒鉛製焼結用ダイ(45)内に、金属板(41)およびセラミック板(42)を、セラミック板(42)と金属板(41)とが隣接するように、且つ、セラミック板(42)の上面(4a)における外周縁(4z)よりも内側に金属板(41)の下面からなる接合予定面(2b)が位置するように積層して配置する。こうして、これらの板(41)(42)が積層されることで積層体(60)が形成される。互いに隣り合う板どうし(41,42)は面接触している。さらに、セラミック板(42)の上面(4a)の外周縁部(4y)上に位置決め治具(50)を金属板(41)の接合予定面(2b)の周りを囲うように配置する。このように位置決め治具(50)が配置されることにより、セラミック板(42)の上面(4a)における金属板(41)の接合予定面(2b)の位置が決定される。
ダイ(45)の上下方向の高さは、セラミック板(42)の厚みよりも高くかつ金属板(41)およびセラミック板(42)の厚みの合計よりも低くなっており、金属板(41)の一部がダイ(45)から上方に突出している。位置決め治具(50)は導電性を有する材料(例:黒鉛)から製作されている。
ついで、金属板(41)およびセラミック板(42)からなる積層体(60)の上下両側にそれぞれ電極(13)(14)を配置するとともに、両電極(13)(14)を金属板(41)およびセラミック板(42)に接触させる。この状態では、金属板(41)、位置決め治具(50)およびダイ(45)によって両電極(13)(14)間の導通が確保される。
ついで、1〜10Paの真空雰囲気中、または窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中において、金属板(41)およびセラミック板(42)からなる積層体(60)を、上下両電極(13)(14)により上下両方向から加圧しつつ、両電極(13)(14)間にパルス電流を通電することにより、金属板(41)の融点よりも10〜150℃低い温度に加熱昇温するとともに、当該温度に所定時間保持し、金属板(41)とセラミック板(42)とを接合する。次いで、位置決め治具(50)を取り外す。こうして、積層材(40A)が製造される。
上述した方法での金属板(41)とセラミック板(42)との接合条件は、金属板(41)およびセラミック板(42)の材料や寸法に応じて異なるが、たとえば通電するパルス電流1000〜30000A、加圧力10〜100MPa、接合温度保持時間1〜30minである。
実施形態6
図12および13は、本発明の実施形態6を説明する図である。図12は本発明の実施形態6の積層材(40B)を示し、図13は図12の積層材(40B)の製造方法を示す。
この積層材(40B)では、上述した実施形態5の積層材(40A)の第1金属板としての金属板(41)の上面に、第2金属板としての高融点金属板(43)が、放電プラズマ焼結法により積層状に接合されている。高融点金属板(43)は、積層材(30C)を製造する際の放電プラズマ焼結法の加熱時の温度では溶融しない材料からなるものである。金属板(41)がAlまたはAl合金からなる場合、高融点金属板(43)は、Cu、Ag、Au、Ni、Ti、Cu合金、Ag合金、Au合金、Ni合金およびTi合金よりなる群から選ばれた1種の材料で形成されるのが望ましい。このような積層材(40B)は例えば以下のように製造される。
図13に示すように、放電プラズマ焼結装置のダイ(45)内に、1枚の金属板(41)と、1枚のセラミック板(42)と、1枚の高融点金属板(43)とを、セラミック板(42)と金属板(41)とが隣接するように、且つ、セラミック板(42)の上面(4a)における外周縁(4z)よりも内側に金属板(41)の下面からなる接合予定面(2b)が位置するように、更に、高融点金属板(43)が金属板(41)の上側に位置するように積層して配置する。こうして、これらの板(41)(42)(43)が積層されることで積層体(60)が形成される。互いに隣り合う板どうし(43,41)(41,42)は面接触している。さらに、セラミック板(42)の上面(4a)の外周縁部(4y)上に位置決め治具(50)を金属板(41)の接合予定面(2b)の周りを囲うように配置する。このように位置決め治具(50)が配置されることにより、セラミック板(42)の上面(4a)における金属板(41)の接合予定面(2b)の位置が決定される。
次いで、金属板(41)とセラミック板(42)と高融点金属板(43)とからなる積層体(60)の上下両側にそれぞれ電極(13)(14)を配置するとともに、両電極(13)(14)を高融点金属板(43)およびセラミック板(42)に接触させる。この状態では、ダイ(45)によって両電極(13)(14)間の導通が確保される。
次いで、1〜10Paの真空雰囲気中、または窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中において、高融点金属材、金属板(41)およびセラミック板(42)からなる積層体(60)を、上下両電極(13)(14)により上下両方向から加圧しつつ、両電極(13)(14)間にパルス電流を通電することにより、金属板(41)の融点よりも10〜150℃低い温度に加熱昇温するとともに、当該温度に所定時間保持し、金属板(41)とセラミック板(42)、および、金属板(41)と高融点金属板(43)とを同時に接合する。次いで、冷却をした後、位置決め治具(50)を取り外す。こうして、所望する積層材(40B)が製造される。
なお、上述した実施形態2〜6において、金属板とセラミック板とが接合されるメカニズムは、実施形態1の場合と同様であると考えられる。
以上で本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、様々に変更可能である。
上述した幾つかの実施形態の積層材(1)(30A)(30B)(30C)(40A)(40B)の一応用例(適用例)について、パワーモジュールに用いられる絶縁基板を例にして以下に説明する。
積層材(1)(30A)(30B)(30C)(40A)(40B)は、例えば、電気鉄道車両などの電動機の電力変換装置に使用されるMOSFETやダイオードおよびIGBTなどの半導体素子が実装される熱伝導性絶縁基板として特に好適に用いられる。実装された半導体素子の熱は、積層材を介して放熱材としての放熱部材や冷却部材に伝わる。
具体的に例示すると、積層材の一方の片側の最外側に配置された金属板の表面には、放熱材としてアルミニウムや銅などで構成された空冷もしくは液冷式ヒートシンクが熱伝導性グリースなどによる接着、または、はんだやろう材などによる金属的接合によって貼り付けられる。積層材の他方の片側の最外側に配置された金属板の表面には、パワーデバイスなどの半導体素子がはんだ付けなどにより金属的に接合される。半導体素子から発せられた熱は、積層材の金属板およびセラミック板を介してヒートシンクに伝わる。これにより、半導体素子が冷却される。
また本発明では、第1金属板や第2金属板(高融点金属板)は、C、SiC等との金属基複合材料から形成されていても良い。
以下、本発明による積層材の具体的実施例について、比較例とともに説明する。
[参考例1〜9]
この参考例1〜9は、金属板とセラミック板とを放電プラズマ焼結法により接合する際の加熱温度を調べるために行ったものである。この参考例1〜9の積層材は、図1に示した実施形態1の積層材(1)と同様の三層構造のものである。
純度99.99質量%のAlからなり、縦34mm、横28mm、厚み1.0mmの2枚のAl製金属板(2)(3)と、縦34mm、横28mm、厚み0.635mmの1枚のAlN製セラミック板(4)(5質量%程度のY2O3を含む)とを用意した。そして、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)の表面に、有機溶剤を用いて脱脂処理を施した。なお、酸化皮膜の除去処理は施していない。各金属板(2)(3)の両面の表面粗さは、算術平均粗さでRa0.3μm、セラミック板(4)の両面の表面粗さは、算術平均粗さでRa0.8μmである。なお、Raは、JIS(日本工業規格) B 0601:1994に準拠して測定した。
ついで、図2Aに示すように、焼結用ダイ(10)内に、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)を、セラミック板(4)と各金属板(2)(3)とが隣接するように、且つ、セラミック板(4)が両金属板(2)(3)間に位置するように積層して配置した。そして、ダイ(10)内における両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)からなる積層体(60)の上下両側にそれぞれ黒鉛製パンチ(11)(12)を配置するとともに、上パンチ(11)の上面および下パンチ(12)の下面にそれぞれ電極(13)(14)を電気的に接触させた。
ついで、1〜10Paの真空雰囲気中において、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)からなる積層体(60)を上下両方向から20MPaの圧力で加圧しつつ、両電極(13)(14)間に最大2000Aのパルス電流を通電することにより両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)を、室温から5分間かけて種々の温度まで加熱するとともに、当該温度で5分間保持し、これにより両金属板(2)(3)とセラミック板(4)とを接合した。ついで、両電極(13)(14)間の通電を停止した後、冷却し、三層構造の積層材(1)を製造した。なお、金属板(2)(3)を形成する純度99.99質量%のAlの融点は660℃である。
製造された積層材(1)を観察したところ、参考例2〜8においては、両金属板(2)(3)は溶融することなく、全面的にセラミック板(4)に接合されていた。これに対し、参考例1においては、両金属板(2)(3)とセラミック板(4)との接合面積は小さく、両金属板(2)(3)とセラミック板(4)とは簡単に剥離した。参考例9においては、両金属板(2)(3)が溶融した。
加熱温度および接合状態を表1に示す。
このように、セラミック板(4)と隣接する全ての金属板(2)(3)を構成する材料が同じ場合、すなわち両金属板(2)(3)の融点が等しい場合には、両金属板(2)(3)の融点(660℃)よりも150℃低い温度(510℃)と10℃低い温度(650℃)との間の温度に加熱すれば、1回の放電プラズマ焼結工程によって確実にセラミック板(4)とこれに隣接する両金属板(2)(3)とを接合させることができるとともに、放電プラズマ焼結法による接合時に金属板(2)(3)の部分的な溶融などによる変形を防止することができることを確認し得た。さらにこの参考例から、セラミック板(4)と隣接する全ての金属板を構成する材料が異なる場合、即ち両金属板(2)(3)の融点が異なる場合でも、これらの金属板のうち最も高融点の金属板の融点よりも150℃低い温度と、最も低融点の金属板の融点よりも10℃低い温度との間の温度に加熱すれば、1回の放電プラズマ焼結工程によって確実にセラミック板(4)とこれに隣接する全ての金属板(2)(3)とを接合させることができるとともに、放電プラズマ焼結法による接合時に金属板(2)(3)の部分的な溶融などによる変形を防止できることを容易に理解できるであろう(後述する実施例3参照)。
[実施例1]
この実施例1の積層材は、図1Aおよび1Bに示した実施形態1の積層材(1)である。
純度99.99質量%のAlからなり、縦33mm、横27mm、厚み0.6mmの2枚のAl製金属板(2)(3)と、縦34mm、横28mm、厚み0.635mmの1枚のAlN製セラミック板(4)とを用意した。そして、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)の表面に、有機溶剤を用いて脱脂処理を施した。なお、酸化皮膜の除去処理は施していない。各金属板(2)(3)の両面の表面粗さは、算術平均粗さでRa0.3μm、セラミック板(4)の両面の表面粗さは、算術平均粗さでRa0.8μmである。なお、Raは、JIS B 0601:1994に準拠して測定した。
ついで、図2に示すように、焼結用ダイ(10)内に、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)を、セラミック板(4)と各金属板(2)(3)とが隣接するように、且つ、セラミック板(4)が両金属板(2)(3)間に位置するように、更に、セラミック板(4)の上面(4a)および下面(4a)における外周縁(4z)(4z)よりも内側にそれぞれ上側金属板(2)の接合予定面(2b)および下側金属板(3)の接合予定面(3b)が位置するように積層して配置した。さらに、セラミック板(4)の上面(4a)および下面(4a)の外周縁部(4y)上に、それぞれ、位置決め治具(50)を上側金属板(2)の接合予定面(2b)および下側金属板(3)の接合予定面(3b)の周りを囲うように配置した。位置決め治具(50)は、黒鉛(カーボン)製であり、その形状は四角枠状である。
ここで、セラミック板(4)の上面(4a)の外周縁(4z)から上側金属板(2)の接合予定面(2b)までの距離dは、0.5mmに設定した。また同じく、セラミック板(4)の下面(4a)の外周縁(4z)から下側金属板(3)の接合予定面(3b)までの距離dは、0.5mmに設定した。
そして、ダイ(10)内における両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)からなる積層体(60)の上下両側にそれぞれ黒鉛製パンチ(11)(12)を配置するとともに、上パンチ(11)の上面および下パンチ(12)の下面にそれぞれ電極(13)(14)を電気的に接触させた。
ついで、1〜10Paの真空雰囲気中において、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)からなる積層体(60)を上下両パンチ(11)(12)を介して両電極(13)(14)により上下両方向から20MPaの圧力で加圧しつつ、両電極(13)(14)間に最大1500Aのパルス電流を通電することにより両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)を、室温から15分間かけて575℃まで加熱するとともに、575℃で5分間保持し、これにより両金属板(2)(3)とセラミック板(4)とを接合した。接合のための加熱温度である575℃は、金属板(2)(3)を形成する純度99.99質量%のAlの融点660℃よりも10〜150℃低い温度である。ついで、両電極(13)(14)間の通電を停止した後、冷却し、その後、位置決め治具(50)を破壊して取り外すことにより、三層構造の積層材(1)を製造した。
製造された積層材(1)の両面の平面度を測定したところ、44μmであった。また、製造された積層材(1)における両金属板(2)(3)とセラミック板(4)との接合状態を確認するために、積層材(1)の断面観察を実施したところ、セラミック板(4)と各金属板(2)(3)との間の接合界面には欠陥が見られず、良好な接合が行われていた。
また、製造された積層材(1)について、−40℃⇔125℃、1000サイクルという試験条件の冷熱サイクル試験を行った。そして、セラミック板(4)と各金属板(2)(3)との間の接合界面の剥離の有無と、セラミック板の割れの有無とを調べた。その結果を表2に示す。
[実施例2]
両電極(13)(14)間でのパルス電流の通電を窒素からなる不活性ガス雰囲気中で行ったことを除いて、実施例1と同様にして三層構造の積層材(1)を製造した。
製造された積層材(1)の両面の平面度を測定したところ、53μmであった。また、製造された積層材(1)における両金属板(2)(3)とセラミック板(4)との接合状態を確認するために、積層材(1)の断面観察を実施したところ、セラミック板(4)と各金属板(2)(3)との間の接合界面には欠陥が見られず、良好な接合が行われていた。
また、製造された積層材(1)について、実施例1の冷熱サイクル試験と同じ試験条件で冷熱サイクル試験を行った。そして、セラミック板(4)と各金属板(2)(3)との間の接合界面の剥離の有無と、セラミック板の割れの有無とを調べた。その結果を表2に示す。
[比較例1]
三層構造の積層材を従来方法に従って次のように製造した。
純度99.99質量%のAlからなり、縦68mm、横56mm、厚み0.6mmの2枚のAl製金属板と、縦68mm、横56mm、厚み0.635mmの1枚のAlN製セラミック板とを用意した。
次いで、両金属板とセラミック板とを、セラミック板が両金属板間に位置するように積層した。さらに、各金属板とアルミニウム板との間の界面に、Al−Si合金のろう材箔を配置した。そして、この積層体を真空中で600℃に加熱することにより、セラミック板に各金属板をろう付けにより接合した。
次いで、金属板の不要部分を塩化第二鉄を用いたエッチングにより除去し、これにより、図14に示すように各金属板(101)を4つの金属島(101a)に分けた。各金属島(101a)のサイズは縦33mm、横27mmである。
その後、セラミック板(104)を縦34mm、横28mmのサイズに分割線Lに沿って4分割することで、実施例1の積層材(1)と同様な形状の積層材(101)を製造した。
また、製造された積層材(101)について、実施例1の冷熱サイクル試験と同じ試験条件で冷熱サイクル試験を行った。そして、セラミック板(104)と各金属島(102a)との間の接合界面の剥離の有無と、セラミック板(104)の割れの有無とを調べた。その結果を表2に示す。
表2に示すように、比較例1の積層材(101)では、冷熱サイクル試験によりセラミック板(104)と各金属島(102a)との間の接合界面に剥離が発生した。さらに、セラミック板(104)と各金属島(102a)との接合をろう付けにより行ったので、セラミック板(104)に内部応力が蓄積され、その結果、セラミック板(104)の分割破面に割れが発生した。
これに対して、実施例1および2の積層材(1)では、冷熱サイクル試験による接合界面の剥離が発生しなかった。さらに、セラミック板(4)に割れは発生しなかった。
[実施例3]
この実施例3の積層材は、図1に示した実施形態1の積層材(1)である。
純度99.99質量%のAlからなり且つ縦33mm、横27mm、厚み0.6mmの1枚のAl製金属板(2)と、Si:10質量%を含み残部Alおよび不可避不純物からなり且つ縦33mm、横27mm、厚み1.0mmの1枚のAl−Si合金製金属板(3)と、縦34mm、横28mm、厚み0.635mmの1枚のAlN製セラミック板(4)とを用意した。そして、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)の表面に、有機溶剤を用いて脱脂処理を施した。なお、酸化皮膜の除去処理は施していない。各金属板(2)(3)の両面の表面粗さは、算術平均粗さでRa0.3μm、セラミック板(4)の両面の表面粗さは、算術平均粗さでRa0.8μmである。
ついで、図2Aに示すように、焼結用ダイ(10)内に、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)を、セラミック板(4)と各金属板(2)(3)とが隣接するように、且つ、セラミック板(4)が両金属板(2)(3)間に位置するように、且つ、セラミック板(4)の上面(4a)および下面(4a)における外周縁(4z)(4z)よりも内側にそれぞれ上側金属板(2)の接合予定面(2b)および下側金属板(3)の接合予定面(3b)が位置するように積層して配置した。さらに、セラミック板(4)の上面(4a)および下面(4a)の外周縁部(4y)上に、それぞれ、位置決め治具(50)を上側金属板(2)の接合予定面(2b)および下側金属板(3)の接合予定面(3b)の周りを囲うように配置した。位置決め治具(50)は、黒鉛(カーボン)製であり、その形状は四角枠状である。
ここで、セラミック板(4)の上面(4a)の外周縁(4z)から上側金属板(2)の接合予定面(2b)までの距離dは、0.5mmに設定した。また同じく、セラミック板(4)の下面(4a)の外周縁(4z)から下側金属板(3)の接合予定面(3b)までの距離dは、0.5mmに設定した。
そして、ダイ(10)内における両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)からなる積層体(60)の上下両側にそれぞれ黒鉛製パンチ(11)(12)を配置するとともに、上パンチ(11)の上面および下パンチ(12)の下面にそれぞれ電極(13)(14)を電気的に接触させた。
ついで、1〜10Paの真空雰囲気中において、両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)からなる積層体(60)を上下両パンチ(11)(12)を介して両電極(13)(14)により上下両方向から20MPaの圧力で加圧しつつ、両電極(13)(14)間に最大2000Aのパルス電流を通電することにより両金属板(2)(3)およびセラミック板(4)を、10分間かけて540℃まで加熱するとともに、540℃で3分間保持し、これにより両金属板(2)(3)とセラミック板(4)とを接合した。接合のための加熱温度である540℃は、上側金属板(2)(即ちAl製金属板)を形成する純度99.99質量%のAlの融点660℃よりも150℃低い510℃と、下側金属板(3)(即ちAl−Si合金製金属板)を形成するAl−Si合金の融点577℃よりも10℃低い567℃との間の温度である。ついで、両電極(13)(14)間の通電を停止した後、冷却し、その後、位置決め治具(50)を破壊して取り外すことにより、三層構造の積層材(1)を製造した。
得られた積層材(1)の接合界面の状態を断面観察により確認したところ、Al製金属板(2)とセラミック板(4)、およびAl−Si合金製金属板(3)とセラミック板(4)とは、それぞれ確実に接合されていた。