以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の輸液ポンプの一例を示す概略構成図である。なお、図1では扉12を開放した状態を示している。
この例の輸液ポンプ1は、ペリスタルティックフィンガ式の輸液ポンプであって、ケーシング11と、このケーシング11の前面側を閉鎖する扉12とを備えている。扉12はヒンジ13,13を介してケーシング11に揺動自在に支持されており、ケーシング11の前面側を完全に閉鎖する位置から完全開放位置(例えば、180°開く位置)までの間において揺動可能となっている。なお、ケーシング11及び扉12には、扉12を閉めたときに、その閉塞状態を保持するための扉ロック機構(例えば、図1に示すドアレバー121及びフック113によって構成されるロック機構)が設けられている。
ケーシング11の中央部(幅方向の中央部)にはチューブ装着ガイド(ガイド溝)111が設けられている。チューブ装着ガイド111は、輸液送り方向の上流側から順に、上流側ガイド部111a、この上流側ガイド部111aから矩形状に拡大したポンプ部111b、及び、下流側ガイド部111cを備えている。ポンプ部111bには、後述するポンプ機構2のポンプ用フィンガ21・・21の先端部、及び、加圧機構3の加圧用フィンガ31・・31の先端部が臨んでいる。加圧機構3はポンプ機構2の輸液送り方向の上流側)に配置されている。
チューブ装着ガイド111の上流側ガイド部111aは、横方向に湾曲した形状(曲り形状)に形成されている。また、ポンプ部111bの下流側の下流側ガイド部111cは上下方向に直線状に延びる形状に形成されている。上流側ガイド部111aの溝幅及び下流側の下流側ガイド部111cの溝幅は、それぞれ、薬液バッグに接続される輸液チューブ(例えば、ポリ塩化ビニルやポリブタジエン製)Tの外径に対応する大きさとなっており、これら上流側ガイド部111a及び下流側ガイド部111cに輸液チューブTを嵌め込むことによって、輸液ポンプ1に輸液チューブTを装着することができる。
上流側ガイド部111aのチューブ入口部111eにはチューブクランプ112が設けられている。チューブクランプ112は、輸液ポンプ1へのチューブ装着時に、輸液チューブTを一時的に保持する部材であり、チューブ装着後に扉12を閉じた際に自動的にクランプが解除されるようになっている。なお、チューブクランプ112の近傍には、クランプレバー(図示せず)が設けられており、輸液チューブTの装着の際に、そのクランクレバーを操作することによりチューブクランプ112を開放状態にすることができる。
また、下流側ガイド部111cには、輸液チューブT内に混入した気泡を検出する気泡センサ(例えば、超音波センサ)6が配置されている。気泡センサ6の出力信号は制御部5(図2参照)に入力される。制御部5は、気泡センサ6の出力信号に基づいて、例えば輸液チューブT内に混入した気泡の長さを認識し、その気泡長さが所定値以上の気泡が存在する場合には、ブザー等の警報装置(図示せず)を作動するとともに、気泡混入の旨を扉12に設置の表示部(図示せず)に表示する。
一方、扉12の内面側にはポンプ用押圧板24が設けられている。ポンプ用押圧板24は、扉12を閉じた状態で上記ポンプ機構2の複数のポンプ用フィンガ21・・21の先端部に所定の間隔(輸液チューブTの外径に対応する間隔)をあけて対向するようになっている。さらに、扉12には、ポンプ用押圧板24の上部に加圧用押圧板34が設けられている。この加圧用押圧板34についても、同様に、扉12を閉じた状態で上記加圧機構3の複数の加圧用フィンガ31・・31の先端部に所定の間隔(輸液チューブTの外径に対応する間隔)をあけて対向するようになっている。なお、加圧用押圧板34の構成については後述する。
また、扉12には、ポンプ用押圧板24の下方側に扉閉塞センサ7が配置されており、この扉閉塞センサ7の出力信号は制御部5(図2参照)に入力される。制御部5は、扉閉塞センサ7の出力信号に基づいて、例えば、扉12が確実に閉じているか否かの情報を、扉12に設置の表示部(図示せず)に表示する。
そして、以上の輸液ポンプ1に輸液チューブTをセットする際には、扉12を開き、薬液バッグに接続された輸液チューブTを、[上流側ガイド部111aのチューブ入口部111e]→[チューブクランプ112]→[ポンプ部111b]→[下流側ガイド部111c]の順に嵌め込むことによって輸液チューブTを装着する。このようなチューブ装着が終了した後に扉12を閉め、扉ロック機構にて扉12をロックすることにより、輸液チューブTのセッティングを完了する。なお、この例では、上述したように、扉12を閉塞した状態では、上流側ガイド部111aのチューブクランプ112は開放される。また、輸液完了後などにおいて、扉12を開いたときには、チューブクランプ112によって輸液チューブTが閉塞され、いわゆるフリーフローが防止される。
[実施形態1]
次に、ポンプ機構2及び加圧機構3の具体的な例について説明する。
−ポンプ機構−
まず、ポンプ機構2について図2〜図4を参照して説明する。なお、図2、図4及び後述する図5〜図7などにおいて、偏心カム22、駆動カム32については切断しないで表記している。
ポンプ機構2は、一方向(上記チューブ装着ガイド111に装着した輸液チューブTに沿う方向)に沿って配列された複数(図2に示す例では9個)のポンプ用フィンガ21・・21、その各ポンプ用フィンガ21をそれぞれ個別に進退駆動するための偏心カム22・・22、各偏芯カム22を回転するカム軸23、上記したポンプ用押圧板24、及び、保持フレーム20などによって構成されている。なお、このポンプ機構2のカム軸23と後述する加圧機構3のカム軸33とは同一(1本)の回転軸200で構成されている。また、保持フレーム20についても加圧機構3との共通部材となっている。
保持フレーム20の前面側には開口部20aが設けられており、この開口部20aを通じてポンプ用フィンガ21・・21の先端部が保持フレーム20の前面側(輸液チューブT側)に臨んでいる。また、これら複数のポンプ用フィンガ21・・21の軸方向(カム軸23の軸心方向)の移動は保持フレーム20によって規制されている。なお、各ポンプ用フィンガ21は板状の部材であって、相互に摺動しながら個別に移動(進退移動)可能となっている。
各ポンプ用フィンガ21にはそれぞれカム穴21aが形成されている。その各カム穴21aには、それぞれ円板状の偏心カム(カム山が1つのカム)22が嵌め込まれている。各偏心カム22はカム穴21a内において回転可能であり、これら偏心カム22・・22は上記カム軸23(回転軸200)に回転一体に取り付けられている。
各偏心カム22は、その円板の中心がカム軸23に対して偏心しており、図4(A)に示すように、カム軸23(回転軸200)が1回転(360°回転)すると、ポンプ用フィンガ21の先端部が最前進位置(チューブ閉塞位置)と最後退位置(チューブ完全開放位置)との間を1回往復するようになっている。そして、これらの複数の偏心カム22は相互に所定の位相差(カム軸23の回転方向の位相差)をもってカム軸23に取り付けられている。具体的には、偏心カム22・・22は、カム軸23の軸方向に並ぶ複数のポンプ用フィンガ21・・21の先端部が略正弦波に沿うような位相差(360°/偏心カム22の数)でカム軸23に取り付けられている。なお、図4(A)及び(B)には、カム軸23(回転軸200)が90°回転するごとのポンプ用フィンガ21の位置、及び、後述する加圧用フィンガ31の位置を示している。
上記ポンプ機構2のカム軸23つまり回転軸200は、図2に示すように、上下方向(複数のポンプフィンガ21・・21の配列方向)に沿って設けられている。回転軸200の下端部は、保持フレーム20に設けられたベアリング26によって回転自在に支持されている。回転軸200の上側部分は、保持フレーム20の壁体を貫通して上方に突出している。その回転軸200の貫通部分にはベアリング25が設けられており、そのベアリング25によって回転軸200の上側部分が回転自在に支持されている。
回転軸200の上端部にはタイミングプーリ(従動プーリ)201が回転一体に取り付けられている。この回転軸200のタイミングプーリ201と、電動モータ(例えばステッピングモータ)4の回転軸41に回転一体に取り付けられたタイミングプーリ(駆動プーリ)202との間にタイミングベルト203が巻き掛けられており、その電動モータ4の駆動により、回転軸200(ポンプ機構2のカム軸23及び後述する加圧機構3のカム軸33)が回転する。電動モータ4は制御部5によって駆動制御(回転数制御)される。なお、この例において、電動モータ4には、輸液ポンプ1に内蔵の電池または商用電源からの電力が供給されるようになっている。
そして、電動モータ4の駆動によりカム軸23(回転軸200)が回転すると、各偏心カム22がポンプ用フィンガ21のカム穴21a内で回転する。この偏心カム22の偏心回転に伴って、各ポンプ用フィンガ21が上流側(輸液送り方向の上流側)から下流側にかけて順次前進・後退していく。つまり、ポンプ用フィンガ21の先端部が上流側から下流側に蠕動波状に移動していく(図5及び図6参照)。そして、このようなポンプ用フィンガ21・・21の進退移動(往復移動)によって、これらポンプ用フィンガ21・・21の先端部とポンプ用押圧板24との間に配置された輸液チューブTに蠕動運動が付与され、当該輸液チューブT内の輸液が上流側から下流側へと送り出されていく。なお、この例では、輸液チューブTがポンプ用フィンガ21・・21から受ける過負荷を軽減するために、ポンプ用押圧板24とベース板14との間に緩衝シート24aが設けられている。
ここで、この例において、制御部5は、マイクロコンピュータ等を主体として構成されている。制御部5は、例えば扉12に設置の操作パネル(図示せず)の操作にて設定された輸液流量(単位時間当たりの輸液の送り量)の設定値に応じて、電動モータ4の回転数を制御することにより輸液流量を可変に調整することが可能であり、例えば輸液流量を1mL/h〜1200mL/hの範囲内において、[1mL/h]単位で設定することができる。また、制御部5は、扉12に設置の表示部(図示せず)に、「輸液流量(注入量)」や「注入積算時間」などの動作情報を表示し、また、上述した「気泡混入異常」や「扉閉塞不良」などを含む各種警告を表示するように構成されている。
−加圧機構−
次に、加圧機構3について図2〜図4を参照して説明する。
加圧機構3は、輸液チューブT内の圧力を陽圧にするための機構であって、上記ポンプ機構2の輸液送り方向の上流側に配置されている。
加圧機構3は、上記したポンプ機構2と同様に、一方向(上記チューブ装着ガイド111に装着した輸液チューブTに沿う方向)に沿って配列された複数(図2に示す例では9個)の加圧用フィンガ31・・31、その各加圧用フィンガ31をそれぞれ個別に進退駆動するための駆動カム32・・32、各駆動カム32を回転するカム軸33、上記した加圧用押圧板34、及び、保持フレーム20などによって構成されている。なお、上述したように、この加圧機構3のカム軸33と上記ポンプ機構2のカム軸23とは同一の回転軸200で構成されている。また、保持フレーム20についてもポンプ機構2との共通部材となっている。
保持フレーム20の前面には開口部20bが設けられており、この開口部20bを通じて加圧用フィンガ31・・31の先端部が保持フレーム20の前面側(輸液チューブT側)に臨んでいる。また、これら複数の加圧用フィンガ31・・31の軸方向(カム軸33の軸心方向)の移動は保持フレーム20によって規制されている。ここで、各加圧用フィンガ31は、上記したポンプ用フィンガ21と同様に板状の部材であって、相互に摺動しながら個別に移動(進退移動)可能となっている。また、各加圧用フィンガ31の厚さは上記ポンプ用フィンガ21と同じであり、それら加圧用フィンガ31・・31の個数及び配列ピッチについても、ポンプ用フィンガ21・・21の個数及び配列ピッチと同じである。
各加圧用フィンガ31にはそれぞれカム穴31aが形成されている。その各カム穴31aには駆動カム32がそれぞれ嵌め込まれている。各駆動カム32はカム穴31a内において回転可能であり、これら駆動カム32・・32は上記カム軸33(回転軸200)に回転一体に取り付けられている。
加圧機構3の駆動カム32は、上記したポンプ機構2の偏心カム22(カム山が1つのカム)とはカム形状が異なっている。具体的には、加圧機構3の駆動カム32は、2山のカム山(カムノーズ)を有する板カムであって、図4(B)に示すように、カム軸33(回転軸200)が1回転(360°回転)すると、加圧用フィンガ31の先端部が最前進位置(チューブ閉塞位置)と最後退位置(チューブ完全開放位置)との間を2回往復するようになっている。また、これらの複数の駆動カム32・・32は、相互に所定の位相差(カム軸33の回転方向の位相差)をもってカム軸33に取り付けられている。具体的には、これら複数の駆動カム32・・32は、カム軸33の軸方向に並ぶ複数の加圧用フィンガ31・・31の先端部が略正弦波に沿うような位相差(360°/偏心カム32の数)でカム軸33に取り付けられている。なお、この例の加圧機構3において、各加圧用フィンガ31は輸液チューブTを押圧した後、その輸液チューブTの弾性力で後退する。
そして、この加圧機構3においても、電動モータ4の駆動により、カム軸33(回転軸200)が回転すると、各駆動カム32が加圧用フィンガ31のカム穴31a内で回転する。この駆動カム32の回転に伴って、各加圧用フィンガ31が上流側(輸液送り方向の上流側)から下流側にかけて順次前進・後退していく。つまり、加圧用フィンガ31・・31の先端部が上流側から下流側に蠕動波状に移動していく(図5及び図6参照)。このような加圧用フィンガ31・・31の進退運動により、これら加圧用フィンガ31・・31の先端部と加圧用押圧板34との間に配置された輸液チューブTに蠕動運動が付与されて、輸液チューブT内の輸液が上流側から下流側(ポンプ機構2側)へと送られるが、この加圧機構3の駆動カム32は2山のカムノーズを備えているので、この加圧機構3にて輸液チューブTに与えられる蠕動運動の周期は、上記ポンプ機構2での蠕動運動の周期の1/2の周期となり、加圧機構3において送り出す輸液の流量は、ポンプ機構2の輸液流量よりも多くなる(約2倍程度)。
そして、このように加圧機構3が送り出す輸液の流量をポンプ機構2の輸液流量よりも多くすることにより、ポンプ機構2の複数のポンプ用フィンガ21・・21のうち、最前進位置にあるポンプ用フィンガ21(輸液チューブTを閉塞しているポンプ用フィンガ21)の上流側の輸液チューブT内の圧力を陽圧にすることができ、後述するように、チューブ開放時の輸液チューブTの断面形状を正常な形状(断面略真円形状)に維持することができる。この場合、輸液チューブTに付与する陽圧の大きさは、輸液チューブTを正常な形状(断面略真円形状)に維持する点を考慮すると、例えば[大気圧+(100mmHg〜300mmHg)]程度が好ましい。
なお、上記加圧機構3は、輸液チューブTに陽圧を付与できる輸液流量を確保できる機能さえあればよく、送り出す輸液の流量精度は問われないので、この加圧機構3の加圧用フィンガ31・・31が接触する部分の断面形状が扁平状となっても、上記輸液流量を確保できるのであれば問題はない。
ここで、この例においては、加圧機構3で送り出す輸液の流量がポンプ機構2の輸液流量の2倍程度になるので、輸液チューブTが過度に加圧される可能性がある。これを防止するために、この例では加圧機構3にリリーフ機能をもたせている。
具体的には、図2に示すように、加圧用押圧板34を圧縮コイルばね35,35を介してベース板14に支持するという構成を採用している。このように、加圧用押圧板34の背面側に圧縮コイルばね35,35を設けておくと、各加圧用フィンガ31・・31で輸液チューブTを順次押圧していく過程において、その加圧用フィンガ31(最前進位置にある加圧用フィンガ31)の下流側の輸液チューブTの内圧が高くなって、圧縮コイルばね35,35のばね力よりも大きくなった場合には、例えば図7に示すように、加圧用押圧板34がベース板14側に後退し、輸液チューブT内の輸液が、最前進位置にある加圧用フィンガ31の上流側に逃げるようになるので、輸液チューブT内の圧力(陽圧)がリリーフ圧(圧縮コイルばね35,35のばね力に相当する圧力)以下に保持され、輸液チューブTが過加圧されることを防止できる。
なお、このようなリリーフ機構において、上記加圧機構3の加圧により輸液チューブT内の圧力が、所定値(例えば[大気圧+300mmHg])を超えたときに、上記加圧用押圧板34がベース板14側に後退するように、圧縮コイルばね35,35のばね力(弾性力)を設定すればよい。
−動作説明−
次に、この例の輸液ポンプ1の動作について図2〜図7を参照して説明する。
まず、輸液ポンプ1への輸液チューブTのセッティングについて説明する。
図1に示すように、輸液ポンプ1の扉12を開いた状態で、ケーシング11のチューブ装着ガイド111に装着する。具体的には、上述したように、薬液バッグに接続された輸液チューブTを、[上流側ガイド部111aのチューブ入口部111e]→[チューブクランプ112]→[ポンプ部111b]→[下流側ガイド部111c]の順に嵌め込むことによって輸液チューブTを装着する。このようなチューブ装着が終了した後に扉12を閉め、上記扉ロック機構にて扉12をロックすることにより、輸液チューブTのセッティングを完了する。
以上のセッティングにより、ポンプ機構2のポンプ用フィンガ21・・21の先端部とポンプ用押圧板24との間、及び、加圧機構3の加圧用フィンガ31・・31と加圧用押圧板34との間に輸液チューブTを配置することができる。
次に、ポンプ機構2及び加圧機構3の動作について図5及び図6を参照して説明する。
まず、電動モータ4を駆動する。このモータ駆動により、例えば図5(A)に示す状態になると、ポンプ機構2の複数のポンプ用フィンガ21・・21のうち、輸液送り方向の最上流のポンプ用フィンガ21と最下流のポンプ用フィンガ21とが最前進位置(図4(A)参照)となり、これら2つのポンプ用フィンガ21,21にて輸液チューブTが閉塞される。また、加圧機構3についても、複数の加圧用フィンガ31・・31のうち、輸液送り方向の最上流の加圧用フィンガ31と最下流の加圧用フィンガ31とが最前進位置となり(図4(B)参照)、これら2つの加圧用フィンガ31,31にて輸液チューブTが閉塞される。
次に、図5(A)の状態から、回転軸200(ポンプ機構2のカム軸23及び加圧機構3のカム軸33)が更に回転すると、最前進位置となるポンプ用フィンガ21が下流側に進んでいき、輸液チューブT内の輸液が下流側に送られる。また、加圧機構3においても最前進位置となる加圧用フィンガ31が下流側に進んでいき、輸液チューブT内の輸液が下流側(ポンプ機構2側)に送られる。
図5(B)は、図5(A)の状態から回転軸200が90°回転(1/4回転)した状態を示しており、この図5(B)に示すように、ポンプ機構2においては最前進位置となるポンプ用フィンガ21が図5(A)の状態から下流側に[1/4周期]だけ進む(蠕動運動が[1/4周期]分進む)のに対し、加圧機構3では最前進位置となる加圧用フィンガ31が図5(A)の状態から下流側に[1/2周期]だけ進む(蠕動運動が[1/2周期]分進む)ので、加圧機構3にて送り出される輸液の流量がポンプ機構2の輸液流量よりも大きくなる。これによって、ポンプ機構2の最前進位置のポンプ用フィンガ21と、加圧機構3の最前進位置の加圧用フィンガ31との間の輸液チューブT内の圧力が陽圧になる。
次に、図5(B)の状態から回転軸200が90°回転すると(図5(A)の状態に対して、回転軸200が180°回転(1/2回転)すると)、図6(A)に示す状態となる。つまり、ポンプ機構2の蠕動運動が[1/2周期]分だけ下流側に進むのに対し、加圧機構3では1周期分の蠕動運動が完了しているので、最前進位置のポンプ用フィンガ21と最前進位置の加圧用フィンガ31との間の輸液チューブTの陽圧状態が継続される。これによりポンプ機構2の最後退位置にあるポンプ用フィンガ21が対向する部分の輸液チューブTの断面形状(チューブ開放時の断面形状)を略真円形状に維持することができる。
この後、図6(A)の状態から回転軸200が90°回転すると(図5(A)の状態に対して回転軸200が270°回転(3/4回転)すると)、図6(B)に示すように、ポンプ機構2の蠕動運動が[3/4周期]分だけ下流側に進むのに対し、加圧機構3では2回目の蠕動運動の半周期分が完了する。そして、回転軸200が更に90°回転した時点で図5(A)の状態に戻る。
ここで、以上のような加圧機構3による加圧過程において、ポンプ機構2の最前進位置のポンプ用フィンガ21と、加圧機構3の最前進位置の加圧用フィンガ31との間の輸液チューブTの内圧が高くなりすぎた場合には、例えば図7に示すように、加圧機構3の加圧用押圧板34が後退して、最前進位置の加圧用フィンガ31の上流側に輸液が逃げるので、輸液チューブTの内圧(陽圧)を上記したリリーフ圧以下に維持することができる。
以上のように、この例の輸液ポンプ1によれば、ポンプ機構2の輸液送り方向の上流側に加圧機構3を設けているので、ポンプ機構2にて輸液チューブT内の輸液を送り出していく過程において、輸液チューブTを閉塞しているポンプ用フィンガ21(最前進位置のポンプ用フィンガ21)の上流側の輸液チューブT内の圧力を陽圧にすることができる。これにより輸液ポンプ1を長時間使用しても、チューブ開放時の輸液チューブTの断面形状を略真円形状に維持することができ、輸液流量の変動を抑制することができる。
これによって、例えば、従来行われていたチューブ装着位置の変更作業、つまり、一定時間経過ごとに輸液ポンプへの輸液チューブの装着位置(ポンプ機構の位置)をずらす、といった煩雑な作業をなくすこと(もしくは作業頻度を大幅に少なくすること)が可能になるので、看護士等の医療従事者の負担を軽減することができる。
しかも、この例の輸液ポンプ1では、ポンプ機構2のカム軸23と加圧機構3のカム軸33とを同一の回転軸200で構成しているので、ポンプ機構2のカム軸23と加圧機構3のカム軸33との軸合わせが不要になる。また、ポンプ機構2のカム軸23と加圧機構3のカム軸33とをそれぞれ個別の回転軸とし、その各回転軸をベアリングで支持する場合と比較して、ベアリングの個数を少なくすることができる。
なお、以上の例では、ポンプ機構2のポンプ用フィンガ21の数と、加圧機構3の加圧用フィンガ31の数とを同じとしているが、これに限られることなく、上記した輸液チューブTの陽圧を確保することが可能な範囲で、加圧機構3の加圧用フィンガ31の数をポンプ機構2のポンプ用フィンガ21の数よりも少なくしてもよい。例えば、ポンプ機構2による輸液の送り出し量(輸液流量)に対して、例えば120%〜130%の輸液流量を確保できる程度に、加圧機構3の加圧用フィンガ31の数を少なくしてもよい。このように加圧機構3の加圧用フィンガ31の数を少なくすることにより、加圧機構3の軸方向(輸液チューブTに沿う方向)の長さを短くすることができるので、加圧機構3を備えた輸液ポンプ1のコンパクト化を図ることができる。
以上の例では、ポンプ機構2のポンプ用フィンガ21の数を9個としているが、これに限られることなく、輸液チューブTの蠕動運動を与えることが可能であれば、そのポンプ用フィンガ21の個数についても任意である。
以上の例では、加圧機構3の最下流の加圧用フィンガ31と、ポンプ機構2の最上流のポンプ用フィンガ21との間に間隔をあけているが、その間隔は必ずしも設ける必要はなく、それら最下流の加圧用フィンガ31と最上流のポンプ用フィンガ21とが相互に摺動するような構成を採用しても、上記した輸液チューブTへの陽圧付与を実現することができる。
以上の例では、図2及び図5(A)に示すように、ポンプ機構2の最上流のポンプ用フィンガ21及び最下流のポンプ用フィンガ21が最前進位置(チューブ閉塞位置)であるときに、加圧機構3の最上流の加圧用フィンガ31及び最下流の加圧用フィンガ31が最前進位置(チューブ閉塞位置)となるように設定しているが、これに限られることなく、ポンプ機構2の最上流のポンプ用フィンガ21及び最下流のポンプ用フィンガ21が最前進位置にあるときに、加圧機構3の状態が例えば図5(B)に示す状態となるように設定してもよい。
以上の例では、電動モータ4の回転力を回転軸200(ポンプ機構2のカム軸23及び加圧機構3のカム軸33)に伝達する機構にタイミングベルトを用いているが、これに替えて、平ベルトやVベルトを用いてもよい。また、このようなプーリとベルトにて構成される動力伝達機構に替えて、歯車機構などの他の動力伝達手段にて電動モータ4の回転力を回転軸200に伝達するようにしてもよい。
以上の例では、加圧機構3の駆動カム32として、2山のカム山(カムノーズ)を有するカムを用いているが、これに限られることなく、例えばカム山が3つの正三角形状のカムなどを用いてもよい。
[実施形態2]
次に、輸液ポンプの他の例の要部構造について図8を参照して説明する。なお、図8及び後述する図10〜図13などにおいて、偏心カム22,302については切断しないで表記している。
この例の輸液ポンプにおいても、ポンプ機構2の輸液送り方向の上流側に、輸液チューブT内の圧力を陽圧にするための加圧機構300を設けている。なお、この例の輸液ポンプにおいて、以下に説明する構成以外については、上記した[実施形態1]と同様な構成であるので、その具体的な説明は省略する。
ポンプ機構2は、上記した[実施形態1]のポンプ機構と同じ構造であって、一方向(上記チューブ装着ガイド111に装着した輸液チューブTに沿う方向)に沿って配列された複数(図8に示す例では9個)のポンプ用フィンガ21・・21、その各ポンプ用フィンガ21のカム穴21a内に配置され、この各ポンプ用フィンガ21をそれぞれ個別に進退駆動するための偏心カム22・・22、各偏心カム22を回転するカム軸23、ポンプ用押圧板24、及び、保持フレーム20などを備えている。ただし、この例のポンプ機構2のカム軸23は、加圧機構300のカム軸303とは個別の回転軸となっている。
加圧機構300は、上記ポンプ機構2と基本的に同じ構成であり、一方向(上記チューブ装着ガイド111に装着した輸液チューブTに沿う方向)に沿って配列された複数(図8に示す例では9個)の加圧用フィンガ301・・301、その各加圧用フィンガ301をそれぞれ個別に進退駆動するための偏心カム302・・302、各偏心カム302を回転するカム軸303、上記した加圧用押圧板34、及び、保持フレーム20などを備えている。なお、保持フレーム20については、上記[実施形態1]と同様にポンプ機構2との共通部材となっている。
加圧機構300の各加圧用フィンガ301の形状寸法(厚さ等)は上記ポンプ用フィンガ21と同じであり、それら加圧用フィンガ301・・301の個数及び配列ピッチについても、ポンプ用フィンガ21・・21の個数及び配列ピッチと同じである。
各加圧用フィンガ301には、上記ポンプ用フィンガ21と同様にカム穴301aが形成されている。その各カム穴301aには、それぞれ、円板状の偏心カム(カム山が1つのカム)302が回転可能に嵌め込まれている。各偏心カム302は、図4(A)に示す偏心カム22と同様に、カム軸303(偏心カム302)が1回転(360°回転)すると、加圧用フィンガ301の先端部が最前進位置(チューブ閉塞位置)と最後退位置(チューブ完全開放位置)との間を1回往復するようになっている。そして、これらの複数の偏心カム302・・302は、相互に所定の位相差(上記ポンプ機構2の偏芯カム3と同じ位相差)をもってカム軸303に取り付けられており、複数の加圧用フィンガ301・・301の先端部が略正弦波に沿うように配置されている。
上記加圧機構300のカム軸303の上端部にはタイミングプーリ(従動プーリ)201が回転一体に取り付けられている。この回転軸200のタイミングプーリ201と、電動モータ4の回転軸41に回転一体に取り付けられたタイミングプーリ(駆動プーリ)202との間にタイミングベルト203が巻き掛けられており、その電動モータ4の駆動により加圧機構300のカム軸303が回転する。
なお、上記[実施形態1]と同様に、電動モータ4は、制御部5によって駆動制御(回転数制御)される。また、電動モータ4には、輸液ポンプ1に内蔵の電池または商用電源からの電力が供給されるようになっている。
そして、この例では、上記加圧機構300のカム軸303とポンプ機構2のカム軸23とが遊星歯車機構8を介して連結されており、加圧機構300のカム軸303がポンプ機構2のカム軸23よりも速く回転するように構成されている。
遊星歯車機構8は、図9に示すように、外歯歯車のサンギヤ81と、このサンギヤ81と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ82と、上記サンギヤ81に噛み合うとともに、リングギヤ82に噛み合う複数のピニオンギヤ83と、この複数のピニオンギヤ83を自転かつ公転自在に保持するキャリア84とを備え、それらサンギヤ81、リングギヤ82及びキャリア84を回転要素とする公知の歯車機構であって、サンギヤ81に上記加圧機構300のカム軸303が連結されており、キャリア84に上記ポンプ機構2のカム軸23が連結されている。また、リングギヤ82はギヤケース80に固定されている。
ここで、図9に示す遊星歯車機構8において、サンギヤ81の歯数をZs、リングギヤ82の歯数をZrとすると、[キャリア84の回転数(出力回転数)/サンギヤ81の回転数(入力回転数)]=[Zs/(Zs+Zr)]となるので、サンギヤ81(加圧機構300のカム軸303)の回転速度に対して、キャリア84(ポンプ機構2のカム軸23)の回転速度を減速することができる。つまり、加圧機構300のカム軸301をポンプ機構2のカム軸23よりも速く回転させることができ、加圧機構300が送り出す輸液の流量を上記ポンプ機構2の輸液流量よりも大きくすることができる。この例では、加圧機構300が送り出す輸液の流量が、ポンプ機構2が送り出す輸液の流量の例えば1.2〜1.3倍程度となるように遊星歯車機構8の変速比が設定されている。
なお、この例においても、加圧機構300に上記したリリーフ機能をもたせるために、加圧用押圧板34とベース板14との間に圧縮コイルばね35,35を設けている。
−動作説明−
次に、この例のポンプ機構2及び加圧機構300の動作について図8、図10〜図12を参照して説明する。
まず、上記[実施形態1]と同様な要領で輸液チューブTを輸液ポンプにセットして、ポンプ機構2のポンプ用フィンガ21・・21の先端部とポンプ用押圧板24との間、及び、加圧機構300の加圧用フィンガ301・・301と加圧用押圧板34との間に輸液チューブTを配置した状態で電動ポンプ4を駆動する。
この電動ポンプ4の駆動により、例えば図10(A)に示す状態になると、ポンプ機構2の複数のポンプ用フィンガ21・・21のうち、輸液送り方向の最上流のポンプ用フィンガ21と最下流のポンプ用フィンガ21とが最前進位置となり、これら2つのポンプ用フィンガ21,21にて輸液チューブTが閉塞される。また、加圧機構300においても複数の加圧用フィンガ301・・301のうち、輸液送り方向の最上流の加圧用フィンガ301と最下流の加圧用フィンガ301とが最前進位置となり、これら2つの加圧用フィンガ301,301にて輸液チューブTが閉塞される。
次に、図10(A)の状態から、ポンプ機構2のカム軸23と加圧機構300のカム軸303とが更に回転すると、ポンプ機構2において最前進位置となるポンプ用フィンガ21が下流側に進んでいき、輸液チューブT内の輸液が下流側に送られる。また、加圧機構300においても、最前進位置となる加圧用フィンガ301が下流側に進んでいき、輸液チューブT内の輸液が下流側(ポンプ機構2側)に送られる。
このとき、加圧機構300のカム軸303の回転数がポンプ機構2のカム軸23の回転数よりも大きいので、図10(B)に示すように、加圧機構300の加圧用フィンガ301(最前進位置となる加圧用フィンガ301)は、ポンプ機構2のポンプ用フィンガ21(最前進位置となるポンプ用フィンガ21)よりも下流側に進む。これによって、加圧機構300にて送られる輸液の流量がポンプ機構2の輸液流量よりも大きくなるので、ポンプ機構2の最前進位置のポンプ用フィンガ21と、加圧機構300の最前進位置の加圧用フィンガ301との間の輸液チューブT内の圧力が陽圧になる。
次に、図10(B)の状態から、ポンプ機構2のカム軸23と加圧機構300のカム軸303とが更に回転すると、図11(A)に示すように、加圧機構300の加圧用フィンガ301(最前進位置となる加圧用フィンガ301)は、ポンプ機構2のポンプ用フィンガ21(最前進位置となるポンプ用フィンガ21)よりも更に下流側に進むので、ポンプ機構2の最前進位置のポンプ用フィンガ21と加圧機構300の最前進位置の加圧用フィンガ301との間の輸液チューブTの陽圧状態が継続される。これにより、ポンプ機構2の最後退位置にあるポンプ用フィンガ21が対向する部分の輸液チューブTの断面形状(チューブ開放時の断面形状)を略真円形状に維持することができる。
この後、ポンプ機構2のカム軸23と加圧機構300のカム軸303とが更に回転すると図11(B)の状態となり、これらカム軸23,303が更に回転して、ポンプ機構2のカム軸23が1回転(360°回転)すると、図12に示すように、ポンプ機構2において1周期分の蠕動運動が完了する。このとき、加圧機構300では2周期目の蠕動運動が開始されている。
なお、この例においても、以上のような加圧機構300による加圧過程において、ポンプ機構2の最前進位置のポンプ用フィンガ21と、加圧機構300の最前進位置の加圧用フィンガ301との間の輸液チューブTの内圧が高くなりすぎた場合には、加圧機構300の加圧用押圧板34が後退して最前進位置の加圧用フィンガ301の上流側に輸液が逃げるので(図7と同様な動作)、輸液チューブTの内圧(陽圧)を上記したリリーフ圧以下に維持することができる。
以上のように、この例の輸液ポンプにおいても、ポンプ機構2の輸液送り方向の上流側に加圧機構300を設けているので、ポンプ機構2にて輸液チューブT内の輸液を送り出していく過程において、輸液チューブTを閉塞しているポンプ用フィンガ21(最前進位置のポンプ用フィンガ21)の上流側の輸液チューブT内の圧力を陽圧にすることができる。これにより輸液ポンプを長時間使用しても、チューブ開放時の輸液チューブTの断面形状を略真円形状に維持することができ、輸液流量の変動を抑制することができる。
これによって、例えば、従来行われていたチューブ装着位置の変更作業、つまり、一定時間経過ごとに輸液ポンプへの輸液チューブの装着位置(ポンプ機構の位置)をずらす、といった煩雑な作業をなくすこと(もしくは作業頻度を大幅に少なくすること)が可能になるので、看護士等の医療従事者の負担を軽減することができる。
また、この例では、ポンプ機構2のカム軸23と加圧機構300のカム軸303とが個別の軸になるものの、ポンプ機構2のポンプ用フィンガ21及び偏心カム22と、加圧機構300の加圧用フィンガ301及び偏心カム302とが同じ構造であり、それらの各部品を共用品とすることができるので、加圧機構用のフィンガ及びカムの設計等が不要になるという利点がある。
なお、以上の図8に示す例では、ポンプ機構2のポンプ用フィンガ21の数と、加圧機構300の加圧用フィンガ301の数とを同じとしているが、これに限られることなく、上記した輸液チューブTの陽圧を確保することが可能な範囲で、加圧機構300の加圧用フィンガ301の数を、ポンプ機構2のポンプ用フィンガ21の数よりも少なくしてもよい。また、ポンプ機構2のポンプ用フィンガ21の数を9個としているが、これに限られることなく、輸液チューブTの蠕動運動を与えることが可能であれば、そのポンプ用フィンガ21の個数についても任意である。
以上の図8に示す例では、遊星歯車機構8を用いて、加圧機構300のカム軸303の回転数がポンプ機構2のカム軸23の回転数よりも大きくなるように構成しているが、本発明はこれに限定されない。
例えば、図13に示すように、ポンプ機構2のカム軸23の上端部にタイミングプーリ(従動プーリ)401を回転一体に取り付けるとともに、そのタイミングプーリ401と電動モータ4の回転軸41に回転一体に取り付けたタイミングプーリ(駆動プーリ)402との間にタイミングベルト403を巻き掛ける。また、加圧機構300のカム軸303の下端部にタイミングプーリ(従動プーリ)411を回転一体に取り付けるとともに、そのタイミングプーリ411と電動モータ4の回転軸41に回転一体に取り付けたタイミングプーリ(駆動プーリ)412との間にタイミングベルト413を巻き掛ける。そして、電動モータ4側の2つのタイミングプーリ402とタイミングプーリ412とのプーリ径を同じとし、加圧機構300側のタイミングプーリ411のプーリ径をポンプ機構2側のタイミングプーリ401のプーリ径よりも小さくすることにより、ポンプ機構2のカム軸23の回転数に対して加圧機構300のカム軸303の回転数を大きくするという構成を採用してもよい。
なお、このようなプーリとベルトにて構成される動力伝達機構に替えて、歯車機構などの他の動力伝達手段を用いて、ポンプ機構2のカム軸23の回転数に対して加圧機構300のカム軸303の回転数を大きくするように構成してもよい。
[実施形態3]
次に、輸液ポンプの別の例の要部構造について図14を参照して説明する。なお、図14及び後述する図15、図16などにおいて、偏心カム22,502については切断しないで表記している。
この例の輸液ポンプにおいても、ポンプ機構2の輸液送り方向の上流側に、輸液チューブT内の圧力を陽圧にするための加圧機構500を設けている。なお、この例の輸液ポンプにおいて、以下に説明する構成以外については、上記した[実施形態1]と同様な構成であるので、その具体的な説明は省略する。
ポンプ機構2は、上記[実施形態1]のポンプ機構と同じ構造であって、一方向(上記チューブ装着ガイド111に装着した輸液チューブTに沿う方向)に沿って配列された複数(図14に示す例では9個)のポンプ用フィンガ21・・21、その各ポンプ用フィンガ21のカム穴21a内に配置され、この各ポンプ用フィンガ21をそれぞれ個別に進退駆動するための偏心カム22・・22、各偏心カム22を回転するカム軸23、ポンプ用押圧板24、及び、保持フレーム20などを備えている。なお、このポンプ機構2のカム軸23と、後述する加圧機構500のカム軸503とは同一の回転軸600で構成されている。また、保持フレーム20についても加圧機構500との共通部材となっている。
加圧機構500は、一方向(上記チューブ装着ガイド111に装着した輸液チューブTに沿う方向)に沿って配列された複数(図8に示す例では13個)の加圧用フィンガ501・・501、その各加圧用フィンガ301をそれぞれ個別に進退駆動するための偏心カム502・・502、各偏心カム502を回転するカム軸503、上記した加圧用押圧板34、及び、保持フレーム20などを備えている。なお、上述したように、この加圧機構500のカム軸503と上記ポンプ機構2のカム軸23とは同一の回転軸600で構成されている。また、保持フレーム20についてもポンプ機構2との共通部材となっている。
そして、この例では、加圧機構500の各加圧用フィンガ501の厚さを、上記ポンプ用フィンガ21よりも薄くしており(断面形状はポンプ用フィンガ21(図4(A)参照)と同じ)、それら加圧用フィンガ501・・501の配列ピッチを、ポンプ用フィンガ21・・21の配列ピッチよりも小さくしている(例えば、ポンプ用フィンガ21の配列ピッチの約0.8倍としている)。
また、加圧用フィンガ501・・501の個数(図14の例では13個)を、ポンプ用フィンガ21・・21の個数(図14の例では9個)よりも多くしており、加圧機構500の加圧フィンガ301の最上流の加圧用フィンガ501と最下流の加圧用フィンガ502との間の距離(中心間距離)を、ポンプ機構2の最上流のポンプ用フィンガ21と最下流のポンプ用フィンガ21との間の距離(中心間距離)よりも長くしている。
上記各加圧用フィンガ501には、上記ポンプ用フィンガ21と同様にカム穴501aが形成されている。その各カム穴501aには、それぞれ、円板状の偏心カム(カム山が1つのカム)502が回転可能に嵌め込まれている。偏心カム502のカム形状は上記ポンプ機構2の偏心カム22と同じであるが、この加圧機構550の偏心カム502の厚さは、加圧用フィンガ501の厚さに対応して、上記ポンプ機構2の偏心カム22よりも薄くしている。これらの複数の偏心カム502・・502は、カム軸503の軸方向に並ぶ複数の加圧用フィンガ501・・501の先端部が略正弦波に沿うような位相差で取り付けられている。ただし、加圧機構500の各偏芯カム502間のカム軸回転方向における位相差(360°/偏心カム502の数)は、上記ポンプ機構2の各偏芯カム22間の位相差よりも小さくなるように設定されている。
そして、上記加圧機構500のカム軸503つまり回転軸600の上端部にはタイミングプーリ(従動プーリ)201が回転一体に取り付けられている。この回転軸600のタイミングプーリ201と、電動モータ4の回転軸41に回転一体に取り付けられたタイミングプーリ(駆動プーリ)202との間にタイミングベルト203が巻き掛けられており、その電動モータ4の駆動により、回転軸600(加圧機構500のカム軸503及びポンプ機構2の回転軸23)が回転する。
なお、上記[実施形態1]と同様に、電動モータ4は、制御部5によって駆動制御(回転数制御)される。また、電動モータ4には、輸液ポンプ1に内蔵の電池または商用電源からの電力が供給されるようになっている。
そして、この例の加圧機構500においても、電動モータ4の駆動によりカム軸503(回転軸600)が回転すると、各偏心カム502が加圧用フィンガ501のカム穴501a内で回転する。この偏心カム502の回転に伴って、各加圧用フィンガ501が上流側(輸液送り方向の上流側)から下流側にかけて順次前進・後退していく。つまり、加圧用フィンガ501・・501の先端部が上流側から下流側に蠕動波状に移動していく(図15及び図16参照)。このような加圧用フィンガ501・・501の進退移動(往復移動)により、これら加圧用フィンガ501・・501の先端部と加圧用押圧板34との間に配置された輸液チューブTに蠕動運動が付与され、当該輸液チューブT内の輸液が上流側から下流側(ポンプ機構2側)へと送られる。
−動作説明−
次に、この例のポンプ機構2及び加圧機構500の動作について図14〜図16を参照して説明する。
まず、上記[実施形態1]と同様な要領で輸液チューブTを輸液ポンプにセットして、ポンプ機構2のポンプ用フィンガ21・・21の先端部とポンプ用押圧板24との間、及び、加圧機構500の加圧用フィンガ501・・501の先端部と加圧用押圧板34との間に輸液チューブTを配置した状態で電動ポンプ4を駆動する。この電動ポンプ4の駆動により、例えば図15(A)に示す状態になると、ポンプ機構2の複数のポンプ用フィンガ21・・21のうち、輸液送り方向の最上流のポンプ用フィンガ21と最下流のポンプ用フィンガ21とが最前進位置となり、これら2つのポンプ用フィンガ21,21にて輸液チューブTが閉塞される。また、加圧機構500においても、複数の加圧用フィンガ501・・501のうち、輸液送り方向の最上流の加圧用フィンガ501と最下流の加圧用フィンガ501とが最前進位置となり、これら2つの加圧用フィンガ501,501にて輸液チューブTが閉塞される。
次に、図15(A)の状態から、回転軸600(ポンプ機構2のカム軸23及び加圧機構500のカム軸503)が更に回転すると、ポンプ機構2において、最前進位置となるポンプ用フィンガ21が下流側に進んでいき、輸液チューブT内の輸液が下流側に送られる。また、加圧機構500においても、最前進位置となる加圧用フィンガ501が下流側に進んでいき、輸液チューブT内の輸液が下流側(ポンプ機構2側)に送られるが、この例では、加圧機構500の各偏芯カム502間の位相差が、ポンプ機構2の各偏芯カム502間の位相差よりも小さいので、図15(B)に示すように、加圧機構500の加圧用フィンガ501(最前進位置となる加圧用フィンガ501)は、ポンプ機構2のポンプ用フィンガ21(最前進位置となるポンプ用フィンガ21)よりも下流側に進む。つまり、図5(B)の状態では、ポンプ機構2の場合は最上流側から3番目のポンプ用フィンガ21が最前進位置(チューブ閉塞位置)となるのに対し、加圧機構500では最上流側から4番目の加圧用フィンガ501が最前進位置(チューブ閉塞位置)となるので、蠕動運動が進む距離は加圧機構500の方が大きくなる。これによって、加圧機構500が押し出す輸液の流量がポンプ機構2の輸液流量よりも大きくなり、最前進位置のポンプ用フィンガ21と最前進位置の加圧用フィンガ501との間の輸液チューブT内の圧力が陽圧になる。
次に、図15(B)の状態から、回転軸600が更に回転すると、図16(A)に示すように、加圧機構500の加圧用フィンガ501(最前進位置となる加圧用フィンガ301)は、ポンプ機構2のポンプ用フィンガ21(最前進位置となるポンプ用フィンガ21)よりも更に下流側に進むので、最前進位置のポンプ用フィンガ21と最前進位置の加圧用フィンガ501との間の輸液チューブTの陽圧状態が継続される。これにより、ポンプ機構2の最後退位置にあるポンプ用フィンガ21が対向する部分の輸液チューブTの断面形状(チューブ開放時の断面形状)を略真円形状に維持することができる。この後、回転軸300が更に回転すると図16(B)の状態となる。そして、回転軸600が更に回転し、回転軸600が1回転(360°回転)した時点で図16(A)の状態に戻る。
なお、この例においても、以上のような加圧機構500による加圧過程において、ポンプ機構2の最前進位置のポンプ用フィンガ21と、加圧機構500の最前進位置の加圧用フィンガ501との間の輸液チューブTの内圧が高くなりすぎた場合には、加圧機構500の加圧用押圧板34が後退して最前進位置の加圧用フィンガ501の上流側に輸液が逃げるので(図7と同様な動作)、輸液チューブTの内圧(陽圧)を上記したリリーフ圧以下に維持することができる。
以上のように、この例の輸液ポンプにおいても、ポンプ機構2の輸液送り方向の上流側に加圧機構500を設けているので、ポンプ機構2にて輸液チューブT内の輸液を送り出していく過程において、輸液チューブTを閉塞しているポンプ用フィンガ21(最前進位置のポンプ用フィンガ21)の上流側の輸液チューブT内の圧力を陽圧にすることができる。これにより輸液ポンプを長時間使用しても、チューブ開放時の輸液チューブTの断面形状を略真円形状に維持することができ、輸液流量の変動を抑制することができる。
これによって、例えば、従来行われていたチューブ装着位置の変更作業、つまり、一定時間経過ごとに輸液ポンプへの輸液チューブの装着位置(ポンプ機構の位置)をずらすといった煩雑な作業をなくすこと(もしくは作業頻度を大幅に少なくすること)が可能になるので、看護士等の医療従事者の負担を軽減することができる。
しかも、この例の輸液ポンプでは、ポンプ機構2のカム軸23と加圧機構500のカム軸503とを同一の回転軸600で構成しているので、ポンプ機構2のカム軸23と加圧機構500のカム軸503との軸合わせが不要になる。また、ポンプ機構2のカム軸23と加圧機構500のカム軸503とをそれぞれ個別の回転軸とし、その各回転軸をベアリングで支持する場合と比較して、ベアリングの個数を少なくすることができる。
なお、以上の図14に示す例では、ポンプ機構2のポンプ用フィンガ21の数を9個としているが、これに限られることなく、輸液チューブTの蠕動運動を与えることが可能であれば、そのポンプ用フィンガ21の個数は任意である。また、加圧機構500の加圧用フィンガ501についても、上記した輸液チューブTへの陽圧付与が可能であれば、その加圧用フィンガ501の個数は任意である。
以上の例では、加圧機構500の最下流の加圧用フィンガ501と、ポンプ機構2の最上流のポンプ用フィンガ21との間に間隔をあけているが、その間隔は必ずしも設ける必要はなく、それら最下流の加圧用フィンガ501と最上流のポンプ用フィンガ21とが相互に摺動するような構成を採用しても、上記した輸液チューブTへの陽圧付与を実現することができる。
以上の図14に示す例では、図14及び図15(A)に示すように、ポンプ機構2の最上流のポンプ用フィンガ21及び最下流のポンプ用フィンガ21が最前進位置(チューブ閉塞位置)であるときに、加圧機構500の最上流の加圧用フィンガ501及び最下流の加圧用フィンガ501が最前進位置(チューブ閉塞位置)となるように設定しているが、これに限られることなく、ポンプ機構2の最上流のポンプ用フィンガ21及び最下流のポンプ用フィンガ21が最前進位置にあるときに、加圧機構500の状態が例えば図16(A)に示す状態となるように設定してもよい。
以上の図14に示す例では、加圧機構500の加圧用フィンガ501の厚さを、ポンプ機構2のポンプ用フィンガ21の厚さよりも薄くしているが、その加圧用フィンガ501の厚さをポンプ用フィンガ21と同じとしてもよい。この場合も、加圧機構500の各偏芯カム502間の位相差を、ポンプ機構2の各偏芯カム22間の位相差よりも小さく設定して加圧用フィンガ502の数をポンプ用フィンガ22の数を多くすることにより、加圧機構500が送り出す輸液の流量がポンプ機構2の輸液流量よりも大きくなるように構成すればよい。
以上の図14に示す例では、プーリとベルトにて構成される動力伝達機構にて電動モータ4の回転力を回転軸600(ポンプ機構2のカム軸23及び加圧機構500のカム軸503)に伝達しているが、これに替えて、歯車機構などの他の動力伝達手段にて電動モータ4の回転力を回転軸600に伝達するようにしてもよい。
[実施形態4]
次に、輸液ポンプの別の例の要部構造について図17を参照して説明する。なお、図17において、偏心カム22については切断しないで表記している。
この例の輸液ポンプでは、ポンプ機構2の輸液送り方向の上流側に、輸液チューブT内の圧力を陽圧にするためのローラポンプ700(加圧手段)を設けている。
−ポンプ機構−
まず、ポンプ機構2について、図17及び上記した図3、図4を参照して説明する。
ポンプ機構2は、一方向(上記チューブ装着ガイド111に装着した輸液チューブTに沿う方向)に沿って配列された複数(図17に示す例では9個)のポンプ用フィンガ21・・21、その各ポンプ用フィンガ21をそれぞれ個別に進退駆動するための偏心カム22・・22、各偏芯カム22を回転するカム軸23、ポンプ用押圧板24、及び、保持フレーム20などによって構成されている。
保持フレーム20の前面側には開口部20aが設けられており、この開口部20aを通じてポンプ用フィンガ21・・21の先端部が保持フレーム20の前面側(輸液チューブT側)に臨んでいる。また、これら複数のポンプ用フィンガ21・・21の軸方向(カム軸23の軸心方向)の移動は保持フレーム20によって規制されている。なお、各ポンプ用フィンガ21は板状の部材であって、相互に摺動しながら個別に移動(進退移動)可能となっている。
各ポンプ用フィンガ21にはそれぞれカム穴21aが形成されている。その各カム穴21aには、それぞれ円板状の偏心カム(カム山が1つのカム)22が嵌め込まれている。各偏心カム22はカム穴21a内において回転可能であり、これら偏心カム22・・22は上記カム軸23に回転一体に取り付けられている。
各偏心カム22は、その円板の中心がカム軸23に対して偏心しており、上記図4(A)に示すように、カム軸23が1回転(360°回転)すると、ポンプ用フィンガ21の先端部が最前進位置(チューブ閉塞位置)と最後退位置(チューブ完全開放位置)との間を1回往復するようになっている。そして、これらの複数の偏心カム22は相互に所定の位相差(カム軸23の回転方向の位相差)をもってカム軸23に取り付けられている。具体的には、偏心カム22・・22は、カム軸23の軸方向に並ぶ複数のポンプ用フィンガ21・・21の先端部が略正弦波に沿うような位相差(360°/偏心カム22の数)でカム軸23に取り付けられている。
上記ポンプ機構2のカム軸23は、図17の上下方向(複数のポンプフィンガ21・・21の配列方向)に沿って設けられている。カム軸23の下端部は、保持フレーム20に設けられたベアリング26によって回転自在に支持されている。カム軸23の上側部分は保持フレーム20の壁体を貫通して上方に突出している。そのカム軸23の貫通部分にはベアリング25が設けられており、そのベアリング25によってカム軸23の上側部分が回転自在に支持されている。
カム軸23の上端部にはタイミングプーリ(従動プーリ)201が回転一体に取り付けられている。このカム軸23のタイミングプーリ201と、電動モータ(例えばステッピングモータ)4の回転軸41に回転一体に取り付けられたタイミングプーリ(駆動プーリ)202との間にタイミングベルト203が巻き掛けられており、その電動モータ4の駆動により、カム軸23が回転する。電動モータ4は制御部5によって駆動制御(回転数制御)される。この例において、電動モータ4には、輸液ポンプ1に内蔵の電池または商用電源からの電力が供給されるようになっている。なお、制御部5の構成・動作等については、上記した[実施形態1]と基本的に同じであるので、その詳細な説明は省略する。
そして、電動モータ4の駆動によりカム軸23が回転すると、各偏心カム22がポンプ用フィンガ21のカム穴21a内で回転する。この偏心カム22の偏心回転に伴って、各ポンプ用フィンガ21が上流側(輸液送り方向の上流側)から下流側にかけて順次前進・後退していく。つまり、ポンプ用フィンガ21の先端部が上流側から下流側に蠕動波状に移動していく(上記した図5及び図6参照)。このようなポンプ用フィンガ21・・21の進退移動(往復移動)によって、これらポンプ用フィンガ21・・21の先端部とポンプ用押圧板24との間に配置された輸液チューブTに蠕動運動が付与され、当該輸液チューブT内の輸液が上流側から下流側へと送り出されていく。なお、この例では、輸液チューブTがポンプ用フィンガ21・・21から受ける過負荷を軽減するために、ポンプ用押圧板24とベース板14との間に緩衝シート24aが設けられている。
−ローラポンプ−
次に、ローラポンプ700について図17を参照して説明する。
ローラポンプ700は、医療分野などにおいて一般に用いられている送液ポンプであって、ロータ701、3個のローラ702・・702、及び、ポンプヘッド703などを備えている。このローラポンプ700及びポンプ機構2は上記したケーシング11内に収容される。なお、この例では加圧手段をローラポンプ700としているので、上記した加圧用押圧板34は不要である。
ロータ701は、正面形状が正三角形状の部材であって、回転軸711に取り付けられている。ロータ701の中心は回転軸711の中心に一致しており、その回転軸711を中心としてロータ701が回転するようになっている。回転軸711は、上記ポンプ機構2のカム軸23と直交する軸であって、図示しない電動モータによって、図17に示す太矢印の向きの回転が与えられる。
ロータ701の3つの頂部にはそれぞれローラ702が配置されている。各ローラ702はピン721を介してロータ701に回転自在に支持されている。それら3つのローラ702・・702の回転中心は、ロータ701の回転中心を中心とする同一の円周上にあり、ロータ701の回転により各ローラ702の中心が上記円周上に沿って移動する(各ローラ702が公転する)。
ポンプヘッド703はロータ701の側方に配置されている。ポンプヘッド703には円弧状のガイド面731が形成されている。このガイド面731は、ローラ702・・702の移動軌跡(公転軌跡)に沿うように形成されている。
以上の構造のローラポンプ700において、ポンプヘッド703の円弧状のガイド面731に沿って輸液チューブTを装着した状態で、モータの駆動によりロータ701が図17の太矢印の向きに回転すると、ローラ702が、輸液チューブTをガイド面731に押圧しつつ、当該ローラ702の公転に伴って輸液チューブTを回転方向にしごいていく。これによって、輸液チューブT内の輸液が上流側から下流側へと送り出されていく。ここで、輸液チューブTの断面積はほぼ一定であるので、ローラポンプ700が送り出す輸液の流量は、ロータ701(電動モータ)の回転速度(回転数)を制御することによって調整することができる。
そして、この例では、加圧手段であるローラポンプ700が送り出す輸液の流量が上記したポンプ機構2の輸液流量よりも大きくなるように設定している。例えば、ローラポンプ700が送り出す輸液の流量が、ポンプ機構2が送り出す輸液の流量の1.2〜1.3倍程度となるように設定しており、これによってポンプ機構2の複数のポンプ用フィンガ21・・21のうち、最前進位置にあるポンプ用フィンガ21(輸液チューブTを閉塞しているポンプ用フィンガ21)の上流側の輸液チューブT内の圧力を陽圧にすることができる。
以上のように、この例の輸液ポンプにおいても、ポンプ機構2の輸液送り方向の上流側に加圧手段としてのローラポンプ700を設けているので、ポンプ機構2にて輸液チューブT内の輸液を送り出していく過程において、輸液チューブTを閉塞しているポンプ用フィンガ21(最前進位置のポンプ用フィンガ21)の上流側の輸液チューブT内の圧力を陽圧にすることができる。これにより輸液ポンプを長時間使用しても、チューブ開放時の輸液チューブTの断面形状を略真円形状に維持することができ、輸液流量の変動を抑制することができる。
これによって、例えば、従来行われていたチューブ装着位置の変更作業、つまり、一定時間経過ごとに輸液ポンプへの輸液チューブの装着位置(ポンプ機構の位置)をずらすといった煩雑な作業をなくすこと(もしくは作業頻度を大幅に少なくすること)が可能になるので、看護士等の医療従事者の負担を軽減することができる。
なお、この例において、ローラポンプ700を駆動する電動モータは、ポンプ機構2を駆動する電動モータと個別に設けておいてもよいし、1台の電動モータと伝達機構等と組み合わせて、1台の電動モータでローラポンプ700及びポンプ機構2の双方を駆動するようにしてもよい。
また、図17に示す例では、ローラポンプ700のローラ702の数を3個としているが、そのローラの数は2個もしくは4個以上であってもよい。
−他の実施形態−
以上の各例では、輸液チューブ内の圧力を陽圧にするための手段として、フィンガ式の加圧機構やローラポンプを用いているが、これに限定されることなく、輸液チューブ内の輸液をポンプ機構に向けて送り出すことが可能な機構であれば、各種方式の加圧手段を用いることができる。例えば、特開2010−136853号公報に開示されているようなV字構造有機アクチュエータモジュールを備えたポンプなど、他の方式の送液ポンプを加圧手段として用いてもよい。