<DIWの供給位置とパーティクル除去率との関係>
従来の凍結洗浄技術では融解液としてDIWを回転している基板の回転中心部に供給することで、基板Wの回転に伴う遠心力を作用して基板表面全体にDIWを供給し、DIWなどの凝固対象液を凝固させてなる凝固膜(凝固体)を融解除去している。例えば基板の代表例としてベア状態(全くパターンが形成されていない状態)のSiウエハ(ウエハ径:300mm)を用意し、パーティクルとしてSi屑によってウエハ表面を汚染した後、従来の凍結洗浄技術、つまりDIWの供給位置をウエハ表面の中心部に固定して融解除去を行うと、次のような結果が得られる。一方、DIWの供給位置を複数箇所設けて供給タイミングを制御しながら融解除去を行うと、除去率の改善が見られた。以下、この実験内容および実験結果について、図1を参照しつつ説明する。
図1はDIWの供給位置とパーティクル除去率との関係を検証するための実験内容および実験結果を示す図である。この実験では、まず最初に、枚葉式の基板処理装置(大日本スクリーン製造社製、スピンプロセッサSS−3000)を用いてウエハを強制的に汚染させる。具体的には、ウエハを回転させながら、ウエハと対向配置されたノズルよりパーティクル(粒径が0.08μm以上のSi屑)を分散させた分散液をウエハに供給する。ここでは、ウエハ表面に付着するパーティクルの数が約10000個となるように、分散液の液量、ウエハ回転数および処理時間を適宜調整する。その後、ウエハ表面に付着しているパーティクルの数(初期値)を測定する。なお、パーティクル数の測定はKLA−Tencor社製のウエハ検査装置SP1を用いて、ウエハの外周から3mmまでの周縁領域を除去(エッジカット)として残余の領域にて評価を行っている。
次に、各ウエハに対して以下の洗浄処理を行う。まず、150rpmで回転するウエハに、0.5℃に温度調節されたDIWを6秒間吐出してウエハを冷却する。その後、DIWの吐出を停止して2秒間その回転数を維持し、余剰のDIWを振りきって液膜を形成する。液膜形成後、ウエハ回転数を50rpmに減速し、その回転数を維持しながらスキャンノズルにより温度−190℃の窒素ガスを流量90[L/min]でウエハ表面に対し吐出して液膜を凝固して凝固膜を形成する。
上記の冷却が終了した後、一群のウエハに対しては第1の融解除去処理を行う一方、別群のウエハに対しては第2の融解除去処理を行う。この第1の融解除去処理は、図1(a)に示しように、ウエハWの回転数を500rpmとし、ウエハ表面Wfの回転中心部の上方に固定配置されたDIW吐出ノズル8から25℃に温度調節されたDIWを4.0[L/min]の流量で2秒間吐出してウエハ表面Wfの回転中心部に常温のDIWを供給する。これにより、まずウエハ表面Wfの回転中心部から半径約50[mm]の凝固膜範囲が融解された後、凝固膜FFの融解部分が広がってウエハ表面Wf上の凝固膜FF全体が融解除去される。それに続いて、リンス液として25℃のDIWを1.5[L/min]の流量で30秒間供給し、ウエハWのリンス処理を行う。その後ウエハWを高速回転してスピンドライする。こうして、図1(a)に示す融解除去処理を含む洗浄処理を施したウエハWの表面Wfに付着しているパーティクル数を測定する。それから、凍結洗浄後のパーティクル数と先に測定した初期(凍結洗浄処理前)のパーティクル数とを対比することで除去率を算出している。こうして得られたデータをプロットしたものが図1(c)中の「供給態様(a)」に示すグラフである。
また、第2の融解除去処理は、図1(b)に示しように、ウエハWの回転数を500rpmとし、ウエハ表面Wfの回転中心部の上方に固定配置されたDIW吐出ノズル8aから25℃に温度調節されたDIWを4.0[L/min]の流量で0.5秒間吐出する。これにより、ウエハ表面Wfの回転中心部から半径約50[mm]の凝固膜範囲が融解される。それに続いて、DIW吐出ノズル8aからのDIWの吐出を停止するとともに、ウエハ表面Wfの回転中心部から120[mm]だけ離れた位置の上方に配置されたDIW吐出ノズル8bから25℃に温度調節されたDIWを4.0[L/min]の流量で1.5秒間吐出する。これにより、凝固膜FFの融解部分MPが外周縁部に広がってウエハ表面Wf上の凝固膜FF全体が融解除去される。それに続いて、図1(a)に示す融解除去を行った場合と同様にしてリンス処理およびスピンドライ処理を行った後、図1(b)に示す融解除去処理を含む洗浄処理を施したウエハWの表面Wfに付着しているパーティクル数を測定する。それから、凍結洗浄後のパーティクル数と先に測定した初期(凍結洗浄処理前)のパーティクル数とを対比することで除去率を算出している。こうして得られたデータをプロットしたものが図1(c)中の「供給態様(b)」に示すグラフである。
同図(c)から明らかなように、融解液(DIW)の供給位置を固定したまま融解除去処理を行った場合には、ウエハ表面Wfの回転中心部では比較的高いパーティクル除去率が得られるのに対し、ウエハWの外周縁部に行くにしたがってパーティクル除去率が低下しており、ウエハ表面Wfの面内において除去率は不均一となっている。これに対し、融解液(DIW)の供給位置を変位させながら融解除去処理を行った場合には、ウエハ表面Wfの回転中心部のみならず、外周縁部においても比較的高いパーティクル除去率が得られ、ウエハ表面Wfの面内において除去率は均一となる、つまり優れた面内均一性が得られる。
このように融解液の供給位置を変位させることで外周縁部でのパーティクル除去率が改善される主たる理由は、外周縁部での融解液の流速が高められていることにあると考えられる。例えばノズル8aからウエハ表面Wfの回転中心部に融解液を供給した場合、ウエハ表面での融解液の流速をシミュレーションすると、図2に示すように、流速は融解液の供給位置で最も速く、それ以外の位置では供給位置に比べて大幅に低下している。この傾向は、図1(c)中の供給態様(a)の傾向と一致している。また、図1(b)に示す供給態様で融解液を供給する場合、つまり回転中心部以外でノズル8bから融解液を供給すると、外周縁部での融解液の流速が高められ、その結果、外周縁部でのパーティクル除去率が引き上げられて面内均一性が改善されている。
ところで、上記のように融解液の供給位置を変位させる場合、凝固体を融解した際に融け残った小塊、例えばDIWの液膜を凝固させた場合では氷塊が融解液とともに流動してウエハなどの基板の表面上に形成されるパターンに衝突してダメージを与えるおそれがある。そこで、融解除去処理を開始した後で融解液の供給位置を変位させる場合、融解液の供給位置が融解範囲内、つまり未融解範囲よりも基板の回転中心側となるように制御するのが望ましい。すなわち、後で図7に基づき詳述するように融解範囲で発生した氷塊が外周縁部側に移動する際、基板の径方向において融解範囲の外側が凝固したままの未融解状態であると、氷塊の移動経路にパターンが存在していたとしても、当該パターンは凝固膜の未融解領域により保護されて氷塊の衝突を受けない。その結果、パターンのダメージを確実に防止することができる。したがって、次の実験結果から融解液の温度は常温以下の温度に調節するのがより好ましい。
図3は融解液の温度と融解範囲との関係を求めるための実験内容と実験結果を示す図である。ここでは、同図(a)に示すように、ノズル8から供給する融解液(DIW)の温度を多段階で変更しながらウエハ表面Wfの回転中心部に供給し、その供給から0.5[秒]経過した時点で融解されている範囲、つまり凝固膜FFと融解部分MPとの固液界面IFの位置を計測した。そして、計測された結果をプロットしたものが図3(b)である。なお、同図における「固液界面の位置」はウエハ表面Wfの回転中心から距離[mm]で表している。
同図(b)からわかるように、融解液の温度(液温)が比較的高温であると、融解液の供給から極短時間(1秒以内)で融解範囲がウエハWの外周縁部に達してしまう。この場合、融解液の供給位置の変位が間に合わず、ノズルからウエハ表面に融解液を供給する位置を変位させた時点で、既に凝固膜全体が融解されてしまっている可能性がある。したがって、固液界面の位置を妥当な範囲、例えば基板が直径300[mm]のウエハであるときに融解部分MPの半径が50[mm]以内となるように制御するためには、凝固対象液の凝固点よりも高く、しかも25℃程度以下、より好ましくは凝固対象液の凝固点より3℃程度高い温度以下に、融解液の温度を調節するのが望ましい。
そこで、以下の実施形態では、凍結洗浄処理において、常温以下に温度調節された融解液を用意するとともに、当該融解液の基板への供給位置を変位させながら融解液により凝固体を融解して除去することで、上記目的を達成している。以下、実施形態について図面を参照しつつ詳述する。
<第1実施形態>
図4はこの発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。また、図5は図4の基板処理装置における窒素ガスおよびDIWの供給態様を示す図である。さらに、図6は図4の基板処理装置におけるアームの動作態様を示す図である。この装置は半導体ウエハ等の基板Wの表面Wfに付着しているパーティクル等の汚染物質を除去するための基板洗浄処理を実行可能な枚葉式の基板処理装置である。より具体的には、微細パターンが形成された基板表面Wfについて、その表面Wfに液膜を形成してそれを凍結させて凝固膜(凝固体)を形成した後、該凝固膜を解凍除去することで凝固膜とともにパーティクル等を基板表面から除去する凍結洗浄処理を実行する基板処理装置である。凍結洗浄技術については上記特許文献1を始めとして多くの公知文献があるので、この明細書では詳しい説明を省略する。
この基板処理装置は処理チャンバ1を有しており、当該処理チャンバ1内部において基板Wの表面Wfを上方に向けて略水平姿勢に保持した状態で、基板Wを回転させるためのスピンチャック2を有している。このスピンチャック2の中心軸21の上端部には、図5に示すように、円板状のスピンベース23がネジなどの締結部品によって固定されている。この中心軸21はモータを含むチャック回転機構22の回転軸に連結されている。そして、装置全体を制御する制御ユニット4からの動作指令に応じてチャック回転機構22が駆動されると、中心軸21に固定されたスピンベース23が回転中心AOを中心に回転する。
また、スピンベース23の周縁部付近には、基板Wの外周縁部を把持するための複数個のチャックピン24が立設されている。チャックピン24は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース23の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。各チャックピン24のそれぞれは、基板Wの外周縁部を下方から支持する基板支持部と、基板支持部に支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持部とを備えている。また、各チャックピン24は、基板保持部が基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板保持部が基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。
そして、スピンベース23に対して基板Wが受渡しされる際には、各チャックピン24を解放状態とし、基板Wに対して洗浄処理を行う際には、各チャックピン24を押圧状態とする。各チャックピン24を押圧状態とすると、各チャックピン24は基板Wの外周縁部を把持して、基板Wがスピンベース23から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持されることとなる。これにより、基板Wは、その表面Wfを上方に向け、裏面Wbを下方に向けた状態で保持される。
また、上記のように構成されたスピンチャック2の上方には遮断部材9が配置されている。この遮断部材9は、中心部に開口を有する円板状に形成されている。また、遮断部材9の下面は、基板Wの表面Wfと略平行に対向する基板対向面となっており、基板Wの直径と同等以上の大きさに形成されている。この遮断部材9は支持軸91の下端部に略水平に取り付けられている。この支持軸91は、水平方向に延びるアーム92により、基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転可能に保持されている。また、アーム92には、遮断部材昇降・回転機構93が接続されている。
遮断部材昇降・回転機構93は、制御ユニット4からの動作指令に応じて、支持軸91を基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転させる。また、制御ユニット4は、遮断部材昇降・回転機構93の動作を制御して、スピンチャック2に保持された基板Wの回転に応じて基板Wと同じ回転方向でかつ略同じ回転速度で遮断部材9を回転させる。また、遮断部材昇降・回転機構93は、制御ユニット4からの動作指令に応じて、遮断部材9をスピンベース23に近接させたり、逆に離間させる。具体的には、制御ユニット4は、遮断部材昇降・回転機構93の動作を制御して、基板処理装置に対して基板Wを搬入出させる際には遮断部材9をスピンチャック2の上方の離間位置(図4に示す位置)に上昇させる一方、基板Wに対して所定の処理を施す際には遮断部材9をスピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定された対向位置まで下降させる。
図5に示すように、遮断部材9の支持軸91は中空になっており、その内部に、遮断部材9の下面(基板対向面)で開口するガス供給管95が挿通されている。このガス供給管95は乾燥ガス供給ユニット61に接続されている。この乾燥ガス供給ユニット61は、窒素ガス供給源(図示省略)から供給される窒素ガスを基板Wに供給するもので、マスフローコントローラ(MFC)611と、開閉バルブ612とを有している。このマスフローコントローラ611は制御ユニット4からの流量指令に応じて窒素ガスの流量を高精度に調整可能となっている。また、開閉バルブ612は制御ユニット4からの開閉指令に応じて開閉してマスフローコントローラ611で流量調整された窒素ガスの供給/停止を切り替える。このため、制御ユニット4が乾燥ガス供給ユニット61を制御することで、流量調整された窒素ガスが基板Wを乾燥させるための乾燥ガスとして適当なタイミングで遮断部材9と基板Wの表面Wfとの間に形成される空間に向けてガス供給管95から供給される。なお、この実施形態では、乾燥ガス供給ユニット61からの乾燥ガスとして窒素ガスを供給しているが、空気や他の不活性ガスなどを供給するようにしてもよい。
ガス供給管95の内部には、液体供給管96が挿通されている。この液体供給管96の下方端部は遮断部材9の下面で開口しており、その先端に液体吐出ノズル97が設けられている。一方、液体供給管96の上方端部はDIW供給ユニット62に接続されている。このDIW供給ユニット62はDIW供給源(図示省略)から供給される常温のDIWをリンス液として基板Wに供給するもので、配管経路に流量調整弁621と開閉バルブ622とが介挿されている。この流量調整弁621は制御ユニット4からの流量指令に応じて常温DIWの流量を高精度に調整可能となっている。また、開閉バルブ622は制御ユニット4からの開閉指令に応じて開閉して流量調整弁621で流量調整された常温DIWの供給/停止を切り替える。
また、スピンチャック2の中心軸21は円筒状の空洞を有する中空になっており、中心軸21の内部には、基板Wの裏面Wbにリンス液を供給するための円筒状の液供給管25が挿通されている。液供給管25は、スピンチャック2に保持された基板Wの下面側である裏面Wbに近接する位置まで延びており、その先端に基板Wの下面の回転中心部に向けてリンス液を吐出する液吐出ノズル27が設けられている。液供給管25は、上記したDIW供給ユニット62に接続されており、基板Wの裏面Wbに向けてDIWをリンス液として供給する。
また、中心軸21の内壁面と液供給管25の外壁面との隙間は、横断面リング状のガス供給路29になっている。このガス供給路29は乾燥ガス供給ユニット61に接続されており、乾燥ガス供給ユニット61からガス供給路29を介してスピンベース23と基板Wの裏面Wbとの間に形成される空間に窒素ガスが供給される。
また、図4に示すように、この実施形態では、スピンチャック2の周囲にスプラッシュガード51が、スピンチャック2に水平姿勢で保持されている基板Wの周囲を包囲するようにスピンチャック2の回転軸に対して昇降自在に設けられている。このスプラッシュガード51は回転軸に対して略回転対称な形状を有している。そして、ガード昇降機構52の駆動によりスプラッシュガード51を段階的に昇降させることで、回転する基板Wから飛散する液膜形成用DIW、融解用DIW、リンス液やその他の用途のために基板Wに供給される処理液などを分別して処理チャンバ1内から図示を省略する排液処理ユニットへ排出することが可能となっている。
また、この処理チャンバ1の底面部には複数の排気口11が設けられ、これらの排気口11を介して処理チャンバ1の内部空間は排気ユニット63に接続されている。この排気ユニット63は排気ダンパーと排気ポンプとを有しており、排気ダンパーの開閉度合いを制御することで排気ユニット63による排気量を調整可能となっている。そして、制御ユニット4は排気ダンパーの開閉量に関する指令を排気ユニット63に与えることで処理チャンバ1からの排気量を調整して内部空間における温度や湿度などを制御する。
この基板処理装置では、冷却ガス吐出ノズル7がスピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて液膜凍結用冷却ガスを吐出可能に設けられている。すなわち、冷却ガス吐出ノズル7は次のように構成された冷却ガス供給ユニット64に接続されている。この冷却ガス供給ユニット64は、図5に示すように、熱交換器641を有している。この熱交換器641の容器642は内部に液体窒素を貯留するタンク状となっており、液体窒素温度に耐えうる材料、例えば、ガラス、石英またはHDPE(高密度ポリエチレン:High Density Polyethylene)により形成されている。なお、容器642を断熱容器で覆う二重構造を採用してもよい。この場合、外部容器は、処理チャンバ外部の雰囲気と容器642との間での熱移動を抑制するために、断熱性の高い材料、例えば発泡性樹脂やPVC(ポリ塩化ビニル樹脂:polyvinyl chloride)などにより形成するのが好適である。
容器642には、液体窒素を取り入れる液体窒素導入口643が設けられている。この液体窒素導入口643は開閉バルブ644を介して液体窒素供給源(図示省略)と接続されており、制御ユニット4からの開指令に応じて開閉バルブ644が開くと、液体窒素供給源から送出される液体窒素が容器642内に導入される。また、容器642内には液面センサ(図示省略)が設けられており、この液面センサによる検出結果が制御ユニット4に入力され、制御ユニット4によるフィードバック制御により開閉バルブ644の開閉が制御されて容器642内の液体窒素の液面レベルを高精度に制御可能となっている。なお、この第1実施形態では、液体窒素の液面レベルが一定となるようにフィードバック制御し、これによって冷却ガスの温度の安定化を図っている。
また、容器642の内部には、ステンレス、銅などの金属管で形成されたコイル状の熱交換パイプ645がガス通送路として設けられている。熱交換パイプ645は容器642に貯留された液体窒素に浸漬されており、その一方端がマスフローコントローラ(MFC)646を介して窒素ガス供給源(図示省略)と接続されており、窒素ガス供給源から窒素ガスが供給される。これにより、窒素ガスが熱交換器641内で液体窒素によりDIWの凝固点よりも低い温度に冷やされて冷却ガスとして熱交換パイプ645の他方端から開閉バルブ647を介して冷却ガス吐出ノズル7に送出される。
こうして作成された冷却ガスの送り先である冷却ガス吐出ノズル7は、図4に示すように、水平に延設された第1アーム71の先端部に取り付けられている。この第1アーム71は、処理チャンバ1の天井部より垂下する回転軸72により後端部が回転中心軸J1周りに回転自在に支持されている。そして、回転軸72に対して第1アーム昇降・回転機構73が連結されており、制御ユニット4からの動作指令に応じて回転軸72が回転中心軸J1周りに回転駆動され、また上下方向に昇降駆動され、その結果、第1アーム71の先端部に取り付けられた冷却ガス吐出ノズル7が図6に示すように基板表面Wfの上方側で移動する。
また本実施形態では、冷却ガス吐出ノズル7と同様にして、冷水吐出ノズル8が基板表面Wfの上方側で移動可能に構成されている。この冷水吐出ノズル8は、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて液膜を構成する液体(本発明の「凝固対象液」に相当)および融解液として常温よりも低い、例えば凝固点より3℃高い温度以下に調節された冷水(低温のDIW)を供給するものである。すなわち、冷水吐出ノズル8は冷水供給ユニット65に接続され、冷水供給ユニット65によって常温のDIWを例えば0.5℃程度にまで冷却した上で冷水吐出ノズル8に送り出す。なお、この冷水供給ユニット65は、図5に示すように、流量調整弁651、冷却器652および開閉バルブ653を有している。この流量調整弁651は制御ユニット4からの流量指令に応じて常温DIWの流量を高精度に調整して冷却器652に送り込む。そして、冷却器652は送り込まれた常温DIWを0.5℃程度にまで冷却し、その冷水(低温のDIW)が開閉バルブ653を介して送り出される。
このように冷水供給を受けるノズル8を回転中心軸J2周りに回転し、また上下方向に昇降移動させるために、水平に延設された第2アーム81の後端部が回転軸82により回転中心軸J2周りに回転自在に支持されている。一方、第2アーム81の先端部には、冷水吐出ノズル8が下方に吐出口(図示省略)を向けた状態で取り付けられている。さらに、回転軸82に対して第2アーム昇降・回転機構83が連結されており、制御ユニット4からの動作指令に応じて回転軸82が回転中心軸J2周りに回転駆動され、また上下方向に昇降駆動され、その結果、第2アーム81の先端部に取り付けられた冷水吐出ノズル8が以下のように基板表面Wfの上方側で移動する。
冷却ガス吐出ノズル7および冷水吐出ノズル8はそれぞれ独立して基板Wに対して相対的に移動することが可能となっている。すなわち、図6に示すように、制御ユニット4からの動作指令に基づき第1アーム昇降・回転機構73が駆動されて第1アーム71が回転中心軸J1周りに揺動すると、第1アーム71に取り付けられた冷却ガス吐出ノズル7は、スピンベース23の回転中心上に相当する回転中心位置Pcと基板Wの対向位置から側方に退避した待機位置Ps1との間を移動軌跡T1に沿って水平移動する。すなわち、第1アーム昇降・回転機構73は、冷却ガス吐出ノズル7を基板Wの表面Wfに沿って基板Wに対して相対移動させる。
また、制御ユニット4からの動作指令に基づき第2アーム昇降・回転機構83が駆動されて第2アーム81が回転中心軸J2周りに揺動すると、第2アーム81に取り付けられた冷水吐出ノズル8は第1アーム71の待機位置Ps1と異なる別の待機位置Ps2と、回転中心位置Pcとの間を移動軌跡T2に沿って水平移動する。すなわち、第2アーム昇降・回転機構83は、冷水吐出ノズル8を基板Wの表面Wfに沿って基板Wに対して相対移動させる。
図7は図4の基板処理装置の動作を模式的に示す図である。この装置では、未処理の基板Wが装置内に搬入されると、制御ユニット4が装置各部を制御して該基板Wに対して一連の洗浄処理が実行される。ここでは、予め基板Wが表面Wfを上方に向けた状態で基板Wが処理チャンバ1内に搬入されてスピンチャック2に保持される一方、図4に示すように遮断部材9がその下面を対向させたままアーム71、81と干渉しない上方位置まで待避している。
基板Wの搬入後、制御ユニット4はチャック回転機構22を駆動させてスピンチャック2を回転させるとともに、第2アーム昇降・回転機構83を駆動させて第2アーム81を回転中心位置Pcに移動して位置決めする。これによって、冷水吐出ノズル8は基板表面Wfの回転中心部の上方に位置する。そして、制御ユニット4は冷水供給ユニット65の開閉バルブ653を開いて冷水吐出ノズル8から冷水(低温のDIW)を基板表面Wfに供給する。基板表面Wfに供給されたDIWには、基板Wの回転に伴う遠心力が作用し、基板Wの径方向外向きに均一に広げられ、その一部が基板外に振り切られる。これによって、基板表面Wfの全面にわたって液膜の厚みを均一にコントロールして、基板表面Wfの全体に所定の厚みを有する液膜(水膜)が形成される。なお、液膜形成に際して、上記のように基板表面Wfに供給されたDIWの一部を振り切ることは必須の要件ではない。例えば、基板Wの回転を停止させた状態あるいは基板Wを比較的低速で回転させた状態で基板WからDIWを振り切ることなく基板表面Wfに液膜を形成してもよい。
この状態では、基板Wの表面Wfに所定厚さのパドル状液膜LFが形成されている。こうして、液膜形成が終了すると、制御ユニット4はノズル8からのDIWの吐出を停止するとともに、第2アーム昇降・回転機構83を駆動させて第2アーム81を待機位置Ps2に移動する。また、第2アーム81の移動後または移動に連動して制御ユニット4は第1アーム昇降・回転機構73を駆動させて第1アーム81を回転中心位置Pcに移動して位置決めする。そして、回転する基板Wの表面Wfに向けて冷却ガス吐出ノズル7から冷却ガスを吐出させながら、冷却ガス吐出ノズル7を徐々に基板Wの外周端部側に向けて移動させていく。これにより、基板表面Wfの表面領域に形成された液膜LFが冷やされて部分的に凍結し、凝固体FR(凝固膜FFの一部)が基板表面Wfの回転中心部に形成される。なお、このように液膜LFを凍結させる際には、制御ユニット4は冷却ガス供給ユニット64のマスフローコントローラ646を制御して冷却ガスの流量(つまり単位時間当たりの冷却ガス量)を液膜LFの凍結に適した値に抑えている。このように冷却ガスの流量を抑制することで、基板表面Wfが部分的に乾いて露出してしまうという問題や風圧で膜厚分布が不均一となって処理の均一性が担保されないという問題が発生するのを防止している。
そして、ノズル7のスキャンによって凍結領域、つまり凝固体FRは基板表面Wfの回転中心部から外周縁部へと広げられ、基板表面Wfの液膜全面が凍結して凝固膜FFが形成される。こうして凝固膜(凝固体)FFの形成が完了すると、制御ユニット4はノズル7からの冷却ガスの吐出を停止し、第1アーム71を待機位置Ps1に移動させて基板表面Wfからノズル7を待避させる。
これに続いて、基板Wを回転させたまま、ノズル8からの低温DIWの供給により凝固膜FFを融解除去する。すなわち、図7(a)に示すように、制御ユニット4は第2アーム昇降・回転機構83を駆動させて第2アーム81を回転中心位置Pcに移動して位置決し、冷水吐出ノズル8を基板表面Wfの回転中心部の上方に位置させる。そして、制御ユニット4は冷水供給ユニット65の開閉バルブ653を開いて冷水吐出ノズル8から冷水を吐出して基板表面Wfに供給する。この基板表面Wfの回転中心位置へのDIW供給により凝固膜FFの回転中心部が融解される。なお、このように基板Wの回転中心位置の上方に配置したノズル8から冷水を供給したとしても、直ちに凝固膜FFの回転中心部を融解することは難しいので、本実施形態では所定時間(例えば0.5秒)だけノズル8を基板Wの回転中心位置の上方に停止させている。
そして、所定時間が経過すると、同図(b)に示すように、ノズル8からのDIWの吐出を継続させたままノズル8を方向Dに移動させる、つまり基板Wの外周縁部側に向けて移動させていく。これにより、融解された領域、つまり融解部分MPが回転中心部から基板Wの外周縁縁側に広げられる。つまり、凝固膜FFと融解部分MPとの固液界面IFが基板Wの回転中心側から外周縁部側に移動する。なお、本実施形態では、固液界面IFが基板の外周縁部側に広がるのに追随してノズル8を基板Wの外周縁部側に移動させる。このため、次のような作用効果が得られる。
融解部分MPでは凝固膜FFを融解した際に融け残った氷塊IPが発生することがある。この氷塊IPは、同図(b)の拡大図に示すように、水膜WF中をDIWとともに基板Wの外周縁部側に流動する。このとき、上記のようにノズル移動を固液界面IFの移動に追随させており、融解液(DIW)の供給位置が融解部分MP内、つまり未融解範囲よりも基板Wの回転中心側となるように制御しているので、融解部分MPで発生した氷塊IPが外周縁部側に移動する際、基板Wの径方向において融解部分MPの外側が凝固したままの未融解状態となっているため、氷塊IPの移動経路にパターン(図示省略)が存在していたとしても、当該パターンは凝固膜FFにより保護されて氷塊IPの衝突を受けない。その結果、パターンにダメージが与えられるのを確実に防止することができる。また、本実施形態では、融解液として低温のDIWを用いているため、DIWの供給位置と上記界面IFとを比較的短い距離に保つことができるため、優れたパターン保護機能を有している。
このようにパターンを保護しながら凝固膜FFの融解除去を行い、同図(c)に示すように、凝固膜全体の融解除去が完了すると、制御ユニット4はノズル8からのDIWの吐出を停止するとともに、第2アーム昇降・回転機構83を駆動させて第2アーム81を待機位置Ps2に移動する。その後、遮断部材9を基板表面Wfに近接配置し、リンス液として常温のDIWを基板表面Wfに供給し、基板Wのリンス処理を行う。
ここまでの処理が実行された時点では、基板Wが遮断部材9とスピンベース23との間に挟まれながら回転する状態で、基板Wの表面にDIWが供給されている。ここで、基板表面Wfへの常温DIWの供給と並行して、ノズル27からも常温DIWを供給してもよい(この点に関しては、後で説明する実施形態においても同様である)。続いて基板WへのDIWの供給を停止し、基板Wを高速回転により乾燥させるスピン乾燥処理を行う。すなわち、遮断部材9に設けられたガス供給管95およびスピンベース23に設けられたガス供給路29から乾燥ガス供給ユニット61により供給される乾燥用の窒素ガスを吐出させながら基板Wを高速度で回転させることにより、基板Wに残留するDIWを振り切り基板Wを乾燥させる。こうして乾燥処理が終了すると、処理済みの基板Wを搬出することによって1枚の基板に対する処理が完了する。
以上のように、本実施形態によれば、基板W上に形成されたDIWの凝固膜FFに対して凝固対象液(本実施形態ではDIWを使用)の凝固点よりも高い温度を有する融解液を局部的に供給するとともに、当該融解液を吐出するノズル8を基板表面Wfに沿ってスキャン移動させて基板Wへの融解液の供給位置を変位させている。このため、基板W表面の複数位置で融解液の流速が速くなり、基板W表面の各部で高い除去率が得られるとともに、除去率の面内均一性も向上している。
また、融解液により融解された領域(融解部分MP)と融解されていない領域(凝固膜FF)との界面IFが基板Wの外周縁部側に広がるのに追随してノズル8を基板Wの外周縁部側に移動させているので、上記した理由により融解部分MPで発生した氷塊による基板ダメージを効果的に防止することができる。特に、本実施形態では冷水(低温のDIW)を融解液として用いているため、例えば図3の実験結果から容易に推測されるように界面IFの移動速度は比較的遅く、界面IFの移動に対してノズルスキャンを高精度に追随させることができ、基板ダメージを確実に防止することができる。
このように本実施形態では、スピンチャック2が本発明の「基板保持手段」として機能している。また、冷却ガス吐出ノズル7と冷却ガス供給ユニット64とが本発明の「凝固手段」に相当し、冷水吐出ノズル8と冷水供給ユニット65とが本発明の「融解液供給手段」に相当している。さらに、制御ユニット4が本発明の「制御手段」として機能している。
<第2実施形態>
ところで、上記第1実施形態では、冷水を用いて凝固膜(凝固体)FFを融解する際、まずノズル8を基板Wの回転中心位置の上方に位置決めし、凝固膜FFの回転中心部を最初に融解しているが、ノズル8の初期位置についてはこれに限定されるものではない。例えば図8(a)に示すように、基板Wの回転中心位置近傍の上方をノズル8の初期位置としてもよい。すなわち、融解液の供給により最初に融解される領域、つまり初期融解部分はある程度の広がりを持っているため、この初期融解部分が回転中心位置を含む限りにおいてはノズル8の初期位置を回転中心からずらしてもよい。これを利用したものが第2実施形態である。なお、ノズル8の初期位置が相違する点を除き、第2実施形態は第1実施形態と同一の構成を有し、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
<第3実施形態>
図9はこの発明にかかる基板処理装置の第3実施形態を示す図である。この第3実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、冷水吐出ノズルが2本設けられており、凝固膜FFを融解させる際にノズルスキャンを行う代わりに、これら冷水吐出ノズルから融解液として冷水(低温のDIW)を吐出するタイミングを異ならせている点であり、その他の構成は基本的に同一である。したがって、以下においては、相違点を中心に説明し、同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
この第3実施形態では、第2アーム81に対して2本の冷水吐出ノズル8a、8bが互いに異なる位置に取り付けられている。また、冷水吐出ノズル8a、8bは互いに独立した配管経路を介して冷水供給ユニット65の冷却器652に接続されている。また、これらの配管経路には、開閉バルブ653a、653bがそれぞれ介挿されており、開閉バルブ653aの開閉制御によりノズル8aからの冷水吐出/停止が制御され、また開閉バルブ653bの開閉制御によりノズル8bからの冷水吐出/停止が制御される。
このように構成された基板処理装置では、第1実施形態と同様に、未処理の基板Wが表面Wfを上方に向けた状態で基板Wが処理チャンバ1内に搬入されてスピンチャック2に保持されると、制御ユニット4はチャック回転機構22を駆動させてスピンチャック2を回転させる。また、制御ユニット4は第2アーム昇降・回転機構83を駆動させて第2アーム81を回転中心位置Pcに移動して位置決めすることで、2つの冷水吐出ノズルのうち先端側冷水吐出ノズル8aを基板表面Wfの回転中心部の上方に位置させる。そして、第1実施形態と同様にして基板表面Wfに液膜を形成する。また、第1実施形態と同様にして基板表面Wfの液膜全面を凍結して凝固膜FFを形成する。その後、制御ユニット4はノズル7からの冷却ガスの吐出を停止し、第1アーム71を待機位置Ps1に移動させて基板表面Wfからノズル7を待避させる。
これに続いて、基板Wを回転させたまま、ノズル8a、8bから冷水(低温DIW)を順番に供給することで凝固膜FFを融解除去する。以下、図9を参照しつつ第3実施形態における融解除去処理について詳述する。この実施形態では、制御ユニット4は第2アーム昇降・回転機構83を駆動させて第2アーム81を回転中心位置Pcに移動して位置決し、冷水吐出ノズル8aを基板表面Wfの回転中心部の上方に位置させる。このとき、もう一方の冷水吐出ノズル8bはノズル8aよりも基板Wの外周縁部側に位置している。そして、制御ユニット4は冷水供給ユニット65の開閉バルブ653aを開いて冷水吐出ノズル8aから冷水を吐出して基板表面Wfに供給する(同図(a))。このとき、開閉バルブ653bは閉じており、冷水吐出ノズル8bからの冷水の吐出は停止されている。
このようにして基板表面Wfの回転中心位置へのDIW供給により凝固膜FFの回転中心部が融解される。そして、時間経過とともに融解された領域、つまり融解部分MPが回転中心部から基板Wの外周縁縁側に広げられる。つまり、凝固膜FFと融解部分MPとの固液界面IFが基板Wの回転中心側から外周縁部側に移動する。そして、固液界面IFがもう一方のノズル8bの直下位置に達する、または過ぎると、制御ユニット4は冷水供給ユニット65の開閉バルブ653aを閉じて冷水吐出ノズル8aから冷水の吐出を停止させる一方、開閉バルブ653bを開いて冷水吐出ノズル8bから冷水を吐出して基板表面Wfに供給する(同図(b))。このよう本実施形態では、固液界面IFが基板の外周縁部側に広がるのに追随してノズルからの融解液(低温のDIW)の供給位置を変位させているため、第1実施形態と同様に、融解部分MPで発生した氷塊が外周縁部側に移動する際、基板Wの径方向において融解部分MPの外側が凝固したままの未融解状態となっているため、氷塊の移動経路にパターン(図示省略)が存在していたとしても、当該パターンは凝固膜FFにより保護されて氷塊の衝突を受けない。その結果、パターンにダメージが与えられるのを確実に防止することができる。
このようにパターンを保護しながら凝固膜FFの融解除去を行い、同図(c)に示すように、凝固膜全体の融解除去が完了すると、制御ユニット4は開閉バルブ653bを閉じて冷水吐出ノズル8bから冷水の吐出を停止させるとともに、第2アーム昇降・回転機構83を駆動させて第2アーム81を待機位置Ps2に移動する。その後、遮断部材9を基板表面Wfに近接配置し、リンス液として常温のDIWを基板表面Wfに供給し、基板Wのリンス処理を行う。
これに続いて、基板WへのDIWの供給を停止し、基板Wを高速回転により乾燥させるスピン乾燥処理を行う。すなわち、遮断部材9に設けられたノズル97およびスピンベース23に設けられた下面ノズル27から乾燥ガス供給ユニット61により供給される乾燥用の窒素ガスを吐出させながら基板Wを高速度で回転させることにより、基板Wに残留するDIWを振り切り基板Wを乾燥させる。こうして乾燥処理が終了すると、処理済みの基板Wを搬出することによって1枚の基板に対する処理が完了する。
以上のように、第3実施形態によれば、ノズル8をスキャン移動させる代わりに、互いに異なる位置に配置されるノズル8a、8bから互いに異なるタイミングで融解液(本実施形態ではDIWを使用)を吐出し、基板Wへの融解液の供給位置を変位させている。このため、第1実施形態と同様に、基板W表面の複数位置で融解液の流速が速くなり、基板W表面の各部で高い除去率が得られるとともに、除去率の面内均一性も向上している。
また、融解液により融解された領域(融解部分MP)と融解されていない領域(凝固膜FF)との界面IFが基板Wの外周縁部側に広がるのに追随してノズル8a、8bからの融解液の吐出を制御しているため、上記した理由により融解部分MPで発生した氷塊による基板ダメージを効果的に防止することができる。さらに、本実施形態においても冷水(低温のDIW)を融解液として用いているため、界面IFの移動速度は比較的遅く、界面IFの移動に対してノズル8a、8bの開閉切替を高精度に追随させることができ、基板ダメージを確実に防止することができる。
<第4実施形態>
図10はこの発明にかかる基板処理装置の第4実施形態を示す図である。この第4実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、冷却ガス吐出ノズル7と冷水吐出ノズル8とが共通のアームARMに取り付けられている点であり、その他の構成は基本的に同一である。したがって、以下においては、相違点を中心に説明し、同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
この第4実施形態では、アームARMの先端部に冷水吐出ノズル8が取り付けられる一方、冷水吐出ノズル8よりも後端部側(図10の右手側)に冷却ガス吐出ノズル7が取り付けられている。なお、アームARMは、第1アーム71や第2アーム81と同様に、処理チャンバ1の天井部より垂下する回転軸(図示省略)により後端部が回転自在に支持されている。そして、回転軸に対して共通アーム昇降・回転機構(図示省略)が連結されており、制御ユニット4からの動作指令に応じて回転軸が回転駆動され、また上下方向に昇降駆動され、その結果、アームARMに取り付けられた冷却ガス吐出ノズル7および冷水吐出ノズル8が図10に示すように基板表面Wfの上方側で移動する。なお、その他の構成は基本的に第1実施形態と同一であるため、ここでは同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
このように構成された基板処理装置では、第1実施形態と同様に、未処理の基板Wが表面Wfを上方に向けた状態で基板Wが処理チャンバ1内に搬入されてスピンチャック2に保持されると、制御ユニット4はチャック回転機構22を駆動させてスピンチャック2を回転させる。また、制御ユニット4は共通アーム昇降・回転機構を駆動させてアームARMを移動して2つのノズル7、8のうち冷水吐出ノズル8を基板表面Wfの回転中心部の上方に位置させる。そして、第1実施形態と同様にして基板表面Wfに液膜LFを形成する(図10(a))。
それに続いて、制御ユニット4は共通アーム昇降・回転機構を駆動させてアームARMを移動して2つのノズル7、8のうち冷却ガス吐出ノズル7を基板表面Wfの回転中心部の上方に位置させる。そして、制御ユニット4は回転する基板Wの表面Wfに向けて冷却ガス吐出ノズル7から冷却ガスを吐出させながら、冷却ガス吐出ノズル7を徐々に基板Wの外周端部側に向けて移動させていく。これにより、基板表面Wfの表面領域に形成された液膜LFが冷やされて部分的に凍結し、凝固体FR(凝固膜FFの一部)が基板表面Wfの回転中心部に形成される(同図(b))。なお、この段階では冷水吐出ノズル8からの冷水(低温のDIW)の吐出は停止されている。
冷却ガス吐出ノズル7からの冷却ガスの吐出開始から所定時間が経過すると、制御ユニット4は共通アーム昇降・回転機構を駆動させてアームARMを移動させることでノズル7をスキャンさせる。これにより、凍結領域、つまり凝固体FRが基板表面Wfの回転中心部から外周縁部へと広がる。このようにアームARMを移動させることでノズル7が基板Wの回転中心部の上方位置から離れるのと入れ替わって冷水吐出ノズル8が基板Wの回転中心部の上方位置に移動してくる(同図(c))。このタイミングで制御ユニット4は開閉バルブ653を開いてノズル8から融解液として冷水を吐出して基板Wの回転中心部に供給する。これにより、凝固膜FFの回転中心部が融解される。このように、第4実施形態では、ノズル7、8を一体的にスキャンさせながら凝固処理と融解除去処理とを並行して実行する。
そして、冷却ガス吐出ノズル7が先に基板Wの上方位置から外れて凝固処理が完了する。また、それに遅れて冷水吐出ノズル8が基板Wの上方位置から外れて融解除去処理が完了する。このように本実施形態では、凝固処理と融解除去処理とを一部並行して行っており、融解部分MPの外側は直前に冷却ガスの供給を受けて凝固されているため、第1実施形態と同様に、融解部分MPで発生した氷塊が外周縁部側に移動したとしても、基板Wの表面Wfは凝固膜FFで保護されているため、パターン(図示省略)のダメージを確実に防止することができる。
このように基板表面Wfの全体に対し、凝固膜FFの形成に追随して凝固膜FFの融解除去を行って凝固処理と融解除去処理とが完了すると、制御ユニット4は開閉バルブ653を閉じて冷水吐出ノズル8から冷水の吐出を停止させるとともに、共通アーム昇降・回転機構を駆動させてアームARMを待機位置(図示省略)に移動させる。その後、遮断部材9を基板表面Wfに近接配置し、リンス液として常温のDIWを基板表面Wfに供給し、基板Wのリンス処理を行う。
これに続いて、基板WへのDIWの供給を停止し、基板Wを高速回転により乾燥させるスピン乾燥処理を行う。すなわち、遮断部材9に設けられたノズル97およびスピンベース23に設けられた下面ノズル27から乾燥ガス供給ユニット61により供給される乾燥用の窒素ガスを吐出させながら基板Wを高速度で回転させることにより、基板Wに残留するDIWを振り切り基板Wを乾燥させる。こうして乾燥処理が終了すると、処理済みの基板Wを搬出することによって1枚の基板に対する処理が完了する。
以上のように、第4実施形態によれば、第1実施形態と同様に、融解液を吐出するノズル8を基板表面Wfに沿ってスキャン移動させて基板Wへの融解液の供給位置を変位させているため、基板W表面の複数位置で融解液の流速が速くなり、基板W表面の各部で高い除去率が得られるとともに、除去率の面内均一性も向上している。また、融解液により融解された領域(融解部分MP)と融解されていない領域(凝固膜FF)との界面IFが基板Wの外周縁部側に広がるのに追随してノズル8を基板Wの外周縁部側に移動させているので、上記した理由により融解部分MPで発生した氷塊による基板ダメージを効果的に防止することができる。特に、本実施形態では冷水(低温のDIW)を融解液として用いているため、当該融解液により融解された領域、つまり融解部分MPは大幅に広がらず、これ融解液の供給と並行してノズル7から冷却ガスを受けている基板Wの表面領域に達するのを防止することができる。したがって、凝固処理が融解除去処理に干渉されるのを防止することができ、凝固処理と融解除去処理とを安定的に並行して行うことができる。
また、上記第4実施形態では、凝固処理と融解除去処理とを一部並行して行っているため、スループットが第1実施形態よりも向上している。
<第5実施形態>
ところで、上記実施形態では、液膜を形成するための冷水をそのまま融解液としても用いている、つまり液膜形成用DIWと融解用DIWとを同一温度に設定しているが、融解用DIWの温度を液膜形成用DIWと相違させてもよい。例えば図11に示すように、DIW供給ユニット62にリンス用配管経路と融解用配管経路との2系統を設け、融解用配管経路をDIW吐出ノズル8に接続してもよい。これら2系統のうちリンス用配管経路は第1実施形態などで採用されているものと全く同一であるのに対し、融解用配管経路は新たに追加されたものであり、当該融解用配管経路には流量調整弁623と開閉バルブ624とが介挿されている。この流量調整弁623は制御ユニット4からの流量指令に応じて融解用常温DIWの流量を高精度に調整可能となっている。また、開閉バルブ624は制御ユニット4からの開閉指令に応じて開閉して流量調整弁623で流量調整された常温DIWのDIW吐出ノズル8への供給/停止を切り替える。
<第6実施形態>
また、上記実施形態では、凝固対象液と融解液とを同一組成のものを用いているが、融解液を凝固対象液と相違させてもよく、例えば図12に示すように、冷却したSC1溶液(アンモニア水と過酸化水素水との混合水溶液)を供給するための冷却SC1供給ユニット66を設けるとともに、冷却SC1供給ユニット66からノズル8にSC1溶液を融解液として与え、ノズル8から吐出させるように構成してもよい。これによりDIWを融解液として用いた場合に比べてパーティクル除去率を高めることができる。もちろん、SC1溶液以外の薬液を融解液として用いてもよい。
<その他>
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記第1実施形態などでは、冷却した融解液を用いているが、融解液の供給を停止している間にノズル8と冷水供給ユニット65とを接続する配管温度や当該配管内の滞留している融解液の温度が上昇して初期吐出段階で融解液の温度が十分に低下していないことがある。このような問題を解消するために、ノズル8から基板Wに供給される融解液の流量よりも小さな微小流量で融解液を配管から流出させるスローリーク処理を行うようにしてもよく、これにより融解液の温度上昇を抑えて初期吐出段階より所望の融解除去処理を行うことができる。このスローリーク処理自体については、例えば特開2009−254965号公報に記載されているため、ここではスローリーク処理の説明については省略する。
また、融解液を吐出するためにノズル8、8a、8bを設けているが、当該ノズルとして融解液の液滴を供給する二流体ノズルを用いるのが望ましく、二流体ノズルを用いることでパーティクル除去率を高めることができる。なお、二流体ノズルとして、例えば融解液と窒素ガスとを空中(ノズル外部)で衝突させて融解液の液滴を生成する、いわゆる外部混合型の二流体ノズルを用いることができる。
また、第3実施形態では、開閉バルブ653a、653bの開閉切替により融解液の吐出タイミングを相違させているが、タイミング制御手段についてはこれに限定されるものではなく、例えば冷水供給ユニット65からノズル8a、8bへの配管長さを相違させて吐出タイミングを相違させるように構成してもよい。また、2本のノズル8a、8bを用いて融解液を離散的に基板Wに供給しているが、ノズル本数はこれに限定されるものではなく、3本以上のノズルを互いに異なる位置に設け、互いに異なるタイミングで融解液を吐出するように構成してもよい。
また、上記実施形態の基板処理装置は、窒素ガス供給源およびDIW供給源をいずれも装置内部に内蔵しているが、これらの供給源については装置の外部に設けられてもよく、例えば工場内に既設の供給源を利用するようにしてもよい。
さらに、上記実施形態の基板処理装置は、基板Wの上方に近接配置される遮断部材9を有するものであるが、本発明は遮断部材を有しない装置にも適用可能である。また、この実施形態の装置は基板Wをその周縁部に当接するチャックピン24によって保持するものであるが、基板の保持方法はこれに限定されるものではなく、他の方法で基板を保持する装置にも、本発明を適用することが可能である。