JP5714856B2 - 紙の製造方法 - Google Patents
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[2]前記填料が炭酸カルシウムを含む。
[3]前記紙料が歩留剤として重量平均分子量が1000万〜3000万のカチオン性ポリマーを含む。
[4]前記填料のレーザー回折散乱法による平均粒径が0.8〜10μmである。
[5]前記紙料のpHが6.0〜9.0である。
[6]前記紙料が脱墨パルプを含み、その含有量が全パルプの50質量%以上である。
[8]前記紙が新聞用紙である。
[9]前記紙の紙中灰分は、5〜40質量%である。
(1)紙料
1)固形分濃度
固形分濃度とは紙料中に存在する固形分の濃度であり、本発明においてはJIS P8225:2009により求めた乾燥固形分の質量を測定に用いた紙料の質量で除した値である。本発明で用いる紙料の固形分濃度は1.3〜2.5質量%であり、一般に紙料の固形分濃度とされる1質量%よりも高い。よって、本発明は水の使用量を低減でき、かつ抄紙された紙の脱水・乾燥に使用するエネルギーを低減できる。さらに紙料の固形分濃度が高いと抄紙工程に紙料を供給する際の流量を低減できるので、ポンプ等の供給手段の電力等を削減できる。この点、紙料の固形分濃度が1.3質量%未満であると抄紙に要するエネルギーや資源を十分に低減することができない。以上から、本発明で用いる紙料の固形分濃度は1.3質量%以上であることを必須とする。固形分濃度の下限は、抄紙作業性と地合のバランスの観点から、1.5質量%以上が好ましい。
固形分濃度の上限は制限されないが、固形分濃度が高くなりすぎると繊維のフロックが生じて得られる紙の地合が低下する。特に高濃度の領域においては、0.1%ほどの僅かな濃度の差がフロックの発生に顕著に影響する。よって、本発明で用いる紙料の固形分濃度の上限は2.5質量%以下であることが好適であり、2.3質量%以下がより好ましく、2.0質量%以下がよりさらに好ましい。
本発明で用いる紙料は、固形分中の灰分濃度が25〜60質量%である。この灰分濃度は、紙料中の乾燥固形分をJIS P8225:2009により求め、続いてその固形分をJIS P 8251:2003に従って525℃で灰化し質量を測定して求められる。紙料の固形分中の灰分濃度が25質量%未満であると、大部分を紙中に留めなければ目標とする紙中灰分にすることができないため、製造が困難となる。よって、本発明で用いる紙料の固形分中の灰分濃度の下限は25質量%以上であり、28質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。また、本発明で用いる紙料の固形分中の灰分濃度の上限は制限されないが、灰分濃度が高すぎると歩留りが低下するため、系内が汚れて操業が不安定になる。よって、本発明で用いる紙料の固形分中の灰分濃度の上限は、60質量%以下であることが好適であり、55質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
本発明で用いる紙料は任意の方法で準備してよいが、パルプを水に分散させたパルプスラリーを調製して、このパルプスラリーに填料およびその他の添加剤(以下「填料等」ともいう)を分散させて得ることが好ましい。特に、パルプの濃度が3.0〜4.5質量%程度のパルプスラリーを調製し、これに填料等を添加して高濃度の紙料を得てから、固形分濃度が、1.3〜2.5質量%の範囲であって、固形分中の灰分濃度が25〜60質量%となるように白水等で希釈して紙料を得ることが好ましい。このようにして得た紙料のパルプの濃度は1.3〜2.5%と高いが、灰分濃度も25〜60%と高い。そのため、相対的にパルプの割合は低くなり、パルプの絡み合いが抑制される。よって、このように調製された希釈前紙料を希釈して得られる紙料は、フロックが低減された紙料となる。
本発明においては、固形分濃度が1.3〜2.5質量%であって固形分中の灰分濃度が25〜60質量%である抄紙に供される紙料を「本発明で用いる紙料」といい、希釈することにより本発明で用いる紙料とできる比較的固形分濃度が高い紙料を特に「希釈前紙料」という。
通常、紙料におけるパルプ濃度が高いと、繊維同士の絡み合いが生じて繊維や填料等が均一に分散しにくく、また繊維のフロックが発生し、得られる紙の地合が低下したり、操業性が低下したりする。しかし、前述のとおり、填料を高い割合で含む本発明で用いる紙料は、繊維同士の絡み合いが少なく、繊維を均一に分散できる。その結果、得られる紙の地合は良好となる。
1)パルプ
パルプとは木材または植物由来のセルロース繊維の集合体である。本発明では公知のパルプを用いてよく、その例には、ケミカルパルプ(CP)、砕木パルプ(GP)、ケミグラウンドパルプ(CGP)、リファイナーグラウンドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、セミケミカルパルプ(SCP)、およびこれらの晒または未晒パルプ、さらには脱墨パルプ(DIP)が含まれる。
填料とは紙に配合される粉末状の添加剤である。本発明では公知の填料を用いてよいが、その好ましい例には、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、カオリン、クレー、およびシリカ−炭酸カルシウム複合体、再生填料が含まれる。中でも白色度に優れ、入手の容易性や以下に述べるような地合の向上効果が高いこと、さらには中性抄紙に適していることから、炭酸カルシウムが好ましい。
本発明で用いる紙料は、抄紙工程におけるパルプや填料の歩留りを向上させるための歩留剤を含むことが好ましい。歩留剤は公知のものであれば限定されないが、その例としては、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、両性ポリマー、非イオン性ポリマー等が挙げられる。本発明においてはカチオン性ポリマーを用いることが好ましい。カチオン性ポリマーとは分子内に陽イオン化された部位を有するポリマーである。カチオン性ポリマーの分子量は、極限粘度法による重量平均分子量にして1000万〜3000万、より好ましくは1000万〜2500万程度であることが好ましい。ポリマー構造は直鎖状または分枝状が好ましく、製品の形態としてはエマルション型もしくはディスパージョン型が好ましい。
エマルション型歩留剤とは、油性媒体中、乳化剤の存在下で重合して得たカチオン性ポリマーの油系分散液を水で希釈して得られる歩留剤である。当該歩留剤においては、このようにして得たカチオン性ポリマーと油性媒体との混合物、またはカチオン性ポリマーが油性媒体に溶解した溶液が、分散質として水系の分散媒に微分散して乳化している。一方、ディスパージョン型歩留剤とは、水性媒体中で重合して得たカチオン性ポリマーの水分散液を、さらに水で希釈して得られる歩留剤である。当該歩留剤においては、このようにして得たカチオン性ポリマーが水性媒体に微分散している。
本発明の紙料は、上記の他に公知の添加剤を含んでいてもよい。添加剤の例には、ロジン、AKD、ASA等の合成サイズ剤、硫酸バンド、各種澱粉類、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、凝結剤、およびpH調整剤等が含まれる。
(1)抄紙機
本工程では、前記工程で準備された紙料を抄紙する。抄紙は公知の方法によって行えばよい。例えば、ツインワイヤー抄紙機、長網抄紙機、ヤンキー抄紙機、円網抄紙機等を用いて行うことができる。中でも、生産効率に優れるためツインワイヤー抄紙機が好ましい。紙料はヘッドボックス等の噴射装置からワイヤー上に噴射される。抄紙速度は限定されないが、100〜2000m/分が好ましい。特に本発明は操業性に優れるため、本発明には1000m/分以上さらには1500m/分以上の高速抄紙を使用できる。また、各種用途に求められるような坪量を達成できるように抄紙されればよく、新聞用紙の場合は30〜60g/m2となるように抄紙されることが好ましい。ワイヤー上に噴射された紙料は、定法に従って、脱水・乾燥されて紙が製造される。また、本発明では、顔料を含有する塗工層を設ける工程をさらに含んでもよい。
本発明は中性抄紙に特に適している。中性抄紙における紙料のpHは6.0〜9.0が好ましく、6.5〜8.5がより好ましい。一般に、酸性抄紙においては、紙料中の微細パルプ繊維や填料等の微細粒子の歩留りを向上するために、酸性の無機凝結剤である硫酸バンド(硫酸アルミニウム)が多用されている。しかし、ここに填料として炭酸カルシウムを使用すると、硫酸バンドと炭酸カルシウムが反応して硫酸カルシウムが生成し、抄紙系内で析出して系内の汚れや、穴等の紙面欠陥を生じ、断紙の原因となる。また、酸性抄紙の場合、脱墨パルプに含まれる灰分のうち炭酸カルシウムが溶解してしまい、灰分の低下を招く。これに対し、中性抄紙では、脱墨パルプおよび炭酸カルシウムを高配合することが可能である。特に近年、紙の低坪量化や光白色度化、中性抄紙化が進んでいるが、本発明によれは填料高配合の紙を効率よく製造できる。
本工程における紙料歩留りは、30〜80%が好ましく40〜60%がより好ましい。また、灰分歩留りは、10〜50%が好ましく15〜40%がより好ましい。歩留りは、抄紙に供した紙料とワイヤー下に抜け落ちた白水(以下「ワイヤー下白水」ともいう)について、それぞれ固形分濃度と固形分中の灰分濃度を測定し、次式(i)、(ii)を用いて計算される。具体的にこの灰分濃度は、紙料とワイヤー下白水について、その固形分をJIS P 8251:2003に従って525℃で灰化し質量を測定して求められる。
A:紙料の固形分濃度(質量%)
B:ワイヤー下白水の固形分濃度(質量%)
灰分歩留り=100×[(C×A)−(D×B)]/(C×A)・・・式(ii)
C:紙料の固形分中の灰分濃度(質量%)
D:ワイヤー下白水の固形分中の灰分濃度(質量%)
(1)地合
本発明で得られる紙は地合に優れる。地合とは、紙の中における繊維の分布の均一性である。地合は光透過光変動法により測定できる。光透過光変動法は、サンプルの透過光量の面内分布を測定する方法である。具体的に地合は、1)サンプルに光を照射し、その透過光により得られた像を得て、2)その画像をいくつかのセルに分割して各セルのグレーレベルを測定し、4)グレーレベルの標準偏差を算出し、5)標準偏差から求めた地合指数により評価されることが好ましい。地合指数とは、地合の良さを表すパラメータであり、その値が低いほど地合が良好であることを示す。本発明で得られる紙は、この方法で求めた地合指数が5.6〜6.0であることが好ましく、5.5以下であることがより好ましい。
本発明で得られる紙の紙中灰分は、5〜40質量%であることが好ましい。紙中灰分とは、紙を焼いて残った灰の重さを、元の紙の重さで除して得られる値であり、JIS P 8251:2003により測定される。中でも新聞用紙の場合の紙中灰分は、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。また、新聞用紙の場合の紙中灰分は、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、18質量%以下がさらに好ましい。灰分が前記範囲にある紙は優れた地合を有する。一般に、紙の高灰分化は歩留りの低下を招き、これに伴って操業性が悪化することがある。しかし、本発明によれば紙料の固形分濃度を高くするので歩留りが向上し、高灰分化による前記問題を解消できる。
パルプ、填料および水を含み、紙料中の固形分濃度および当該固形分中の灰分濃度が表1の値となるような紙料を調製した。B型粘度計を用いて25℃におけるこの紙料の粘度を測定した。結果を表1に示す。
脱墨パルプ(DIP、濾水度200ml)75質量部、サーモメカニカルパルプ(TMP、濾水度100ml)15質量部、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP、濾水度500ml)10質量部を混合した。このときのパルプスラリーの濃度は4.0質量%であった。次に、このパルプスラリーに、填料として軽質炭酸カルシウムをパルプに対して10質量%、内添紙力増強剤としてカチオン性ポリアクリルアミドをパルプに対して0.2質量%、硫酸バンドをパルプに対して2質量%添加して紙料を調製した。濾水度とはカナダ標準濾水度(CSF)を意味する。この紙料に、極限粘度法による重量平均分子量が2000万のエマルジョン型カチオン性ポリアクリルアミド系歩留剤(ソマール株式会社製リアライザーR300)を紙料中の固形分に対して300ppm添加した。この紙料を濃度希釈型ヘッドボックスに充填し、ヘッドボックスにおける紙料の固形分濃度が1.3質量%となるよう希釈白水を添加して希釈した。この希釈後の紙料のpHは7.2であった。また、この希釈後の紙料の粘度を前述した方法により測定した。続いてヘッドボックスからツインワイヤー型の抄紙ワイヤー上に紙料を噴射して、抄紙速度1300m/分で、坪量43g/m2となるように中性抄紙を行った。このようにして新聞用紙を製造した。
地合の良さ 地合指数
◎ :5.5以下
○ :5.6〜6.0
△ :6.1〜6.4
× :6.5以上
固形分濃度を表2に示すような値とした以外は、実施例1と同様にして新聞用紙を製造し、評価した。
重量平均分子量が2000万のエマルジョン型カチオン性ポリアクリルアミド系歩留剤(ソマール株式会社製リアライザーR300)に代えて、重量平均分子量が1500万のディスパージョン型カチオン性ポリアクリルアミド系歩留剤(ハイモ株式会社製ND300)を使用した以外は、実施例1と同様にして新聞用紙を製造し、評価した。
固形分濃度を表2に示すような値とした以外は、実施例と同様にして新聞用紙を製造し、評価した。また、比較例における清水原単位改善率、蒸気費改善率を表3に示した。
以上から、固形分濃度が1.3〜2.5質量%、好ましくは1.5〜2.3質量%、より好ましくは1.5〜2.0質量%であり、かつ固形分中の灰分濃度が25〜60質量%である紙料を用いると、製造に要するエネルギーや資源を低減させつつ、地合の良好な印刷用紙が得られることが明らかである。
Claims (4)
- パルプ、填料、歩留剤としての重量平均分子量1500万〜3000万のカチオン性ポリマー、および水を含む紙料であって、前記紙料中の固形分濃度が1.3〜2.5質量%であり、かつ前記固形分中の灰分濃度が25〜60質量%である紙料を準備する工程、ならびに
前記紙料を抄紙する工程を含み、
紙の坪量が30〜60g/m 2 である、紙の製造方法。 - 前記紙料の、B型粘度計による25℃における粘度が30〜300mPa・sである、請求項1記載の製造方法。
- 前記紙が新聞用紙である、請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記抄紙工程における抄紙速度が1000m/s以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
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