JP5713789B2 - ファスナ、航空機組立品、航空機組立品の製造方法、および治具 - Google Patents
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また、この他にも翼内部や胴体部で、翼面パネル以外の構造部材や装備品の固定用の部材もファスナ部材によって締結・固定されている。
これらの場合、ファスナ部材は、ピン状のファスナ本体を、互いに固定される部材の双方に形成された貫通孔の双方を貫通するように挿入し、その先端部を締結部材(カラー)で固定することで双方の部材を締結する。
なお、固定される翼面パネルまたは部材は2つに限らない。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、低コストでありながら防爆性能を確保できるファスナ、航空機組立品、航空機組立品の製造方法、および製造に用いられる治具を提供することを目的とする。
かかる目的のもと、航空機の機体を構成する少なくとも2つの部材どうしを締結する本発明のファスナは、すべての部材に形成された孔を貫通しているファスナ本体と、ファスナ本体の部材から突出した先端部に装着される締結部材と、シーラント材料から形成された成形体からなり、ファスナ本体の先端部および締結部材を内包する開口を有する絶縁性のキャップと、キャップの開口の内側に充填されるシーラント材と、を備え、キャップは、開口の周縁部が他の部位と比較して厚肉に形成され、キャップの開口の周縁部は、部材に対向する位置での外径が外周側に向けて拡径することで形成された脚部を備えることを特徴とする。
この発明によれば、開口の周縁部の最外周部と部材との間がシールされることによって、部材へのキャップの密着力を強化することができる。
また、キャップと、開口の周縁部の少なくとも最外周部を覆うシーラント材とを熱膨張率が近似する同種のシーラント材とすれば、これらが温度変化時に剥離することを防止できるので、部材へのキャップの密着力を維持できる。
すなわち、開口の周縁部の少なくとも最外周部を覆うシーラント材の熱膨張率と、キャップのシーラント材料の熱膨張率とが近似することが好ましい。
この発明によれば、キャップ内に充填されたシーラント材の一部を接合材としてキャップが部材に固定されるため、キャップの固定のためだけに用いられる接着剤、ねじ部材等の別部材を不要にできる。また、キャップによりファスナ本体および締結部材を覆う際にキャップの開口からシーラント材をはみ出させることによってキャップの固定が終了するので、別途、キャップを部材に固定する工程を不要にできる。すなわち、接着剤やねじ締めを必要とする構成に比べて、工程数が減少し、別部材のコストが掛からないので、よりコストダウンを図れる。
つまり、脚部の形成により厚肉化する。
そして、開口の周縁部とはみ出したシーラント材とが、キャップによりファスナ本体の先端部および締結部材を覆うときに一体に成形されることが好ましい。
治具等を用いることにより、はみ出したシーラント材を開口の周縁部周辺に留め、そのシーラント材によって開口の周縁部を部材に対してより確実に密着させることができる。
また、本発明においては、キャップが、ファスナ本体の先端部に対向する平坦な底面部を有することが好ましい。
さらに、キャップの底面部には、ファスナの寸法を含む情報を示すマーキングが施されていることが好ましい。
このような治具が用いられることにより、はみ出したシーラント材を開口の周縁部の周辺に溜めて、そのシーラント材によって開口の周縁部を部材に確実に密着させることが可能となる。また、キャップの部材への押さえ力が一定となり、シーラント材のはみ出し量も一定となるので、はみ出したシーラント材の寸法や形状のバラツキを防止できる。さらに、はみ出したシーラント材の寸法および形状がキャップの全周に亘り均一となるので、開口の周縁部と部材との間の密着力を大きくできる。
加えて、治具によってキャップを部材に突き当てるだけでキャップが部材に固定されるので、工程数および部材コストの削減が可能となってコストダウンできる。
図1に示すように、航空機の機体を構成する部材11,12は、多数のファスナ1によって多数の箇所で締結されている。部材11は、例えば翼面パネルであり、部材12は、例えば翼内部の構造部材である。なお、ファスナ1によって締結される部材の数には制限がなく、3つ以上の部材がファスナ1によって締結されていてもよい。
先端部15Bと締結部材17とは、充填シーラント材30およびキャップ20によって覆われている。これにより、先端部15Bと締結部材17との締結界面157に生じたアークがキャップ20内に封止される。
さらに、脚部25の最外周部25A(図3)と部材12との間が充填シーラント材30Aによってシールされるので、キャップ20の部材12への密着力を強化できる。
その上、脚部25が充填シーラント材30Aによって部材12に保持されていることにより、キャップ20の部材12への密着力をより一層強化できる。
以上の通り、本実施形態のファスナ1によれば、低コストでありながら、航空機の部材12へのキャップ20の密着力を確保できるので、防爆性能の確保と航空機の軽量化とを実現できる。
例えば、キャップ20に脚部25が形成されておらず、キャップ20の全体が薄肉に形成されている場合でも、キャップ20の開口からはみ出した充填シーラント材30Aによってキャップ20の縁が部材に保持されていればよい。上述の治具40は、このような脚部25を持たないキャップの固定にも用いることができる。すなわち、治具40の凹部41に脚部25無しのキャップを収容し、治具40によってキャップを部材12に突き当てることにより、キャップの開口からはみ出した充填シーラント材30Aが拡径部41Aに溜まり、このシーラント材30Aがキャップの縁に一体に成形される。そのはみ出したシーラント材30Aによってキャップの縁が部材12に密着することで、キャップが部材12に固定される。
さらに、キャップ20の開口からはみ出した充填シーラント材30Aが脚部25と部材12との界面の隙間にのみ設けられていてもよい。この場合にも、はみ出した充填シーラント材30Aによって脚部25が部材12に密着した状態に保持される。
要するに、キャップ20の開口21から意図的にはみ出させた充填シーラント材30Aを拭き取ることなくキャップ20の固定に利用するファスナ、航空機組立品、その製造方法、およびその製造に用いられる治具40は本発明に含まれる。
11,12 部材(航空機を構成する部材)
11A,12A 孔
15 ファスナ本体
15A 頭部
15B 先端部
17 締結部材
18 ワッシャー
19 スペーサー
20 キャップ
21 開口
21A 開口周縁
22 底面部
23 側面部
24 マーキング
25 脚部
25A 最外周部
30 充填シーラント材(シーラント材)
30A 充填シーラント材(はみ出した部分)
40 治具
41 凹部
41A 拡開部
100 航空機組立品
157 締結界面
Claims (13)
- 航空機の機体を構成する少なくとも2つの部材どうしを締結するファスナであって、
すべての前記部材に形成された孔を貫通しているファスナ本体と、
前記ファスナ本体の前記部材から突出した先端部に装着される締結部材と、
シーラント材料から形成された成形体からなり、前記ファスナ本体の前記先端部および前記締結部材を内包する開口を有する絶縁性のキャップと、
前記開口の内側に充填されるシーラント材と、を備え、
前記キャップは、前記開口の周縁部が他の部位と比較して厚肉に形成され、
前記キャップの開口の周縁部は、前記部材に対向する位置での外径が外周側に向けて拡径することで形成された脚部を備える、ことを特徴とするファスナ。 - 前記開口の周縁部の少なくとも最外周部が、シーラント材によって覆われている、請求項1に記載のファスナ。
- 前記開口の周縁部の少なくとも前記最外周部を覆う前記シーラント材の熱膨張率と、前記キャップの前記シーラント材料の熱膨張率とが近似する、請求項2に記載のファスナ。
- 前記開口の周縁部の少なくとも前記最外周部を覆う前記シーラント材は、前記キャップにより前記ファスナ本体の前記先端部および前記締結部材を覆うときに前記キャップの開口の内側に充填された前記シーラント材が前記キャップの開口の外側にはみ出したものである、請求項2または3に記載のファスナ。
- 前記開口の周縁部が、前記はみ出したシーラント材によって前記部材に保持されている、請求項4に記載のファスナ。
- 前記脚部と前記はみ出したシーラント材とが、前記キャップにより前記ファスナ本体の前記先端部および前記締結部材を覆うときに一体に成形される、請求項4または5に記載のファスナ。
- 前記キャップは、前記ファスナ本体の前記先端部に対向する平坦な底面部を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のファスナ。
- 前記底面部には、前記ファスナの寸法を含む情報を示すマーキングが施されている、請求項7に記載のファスナ。
- 航空機の機体を構成する少なくとも2つの部材と、
前記少なくとも2つの部材を締結する請求項1から8のいずれか一項に記載のファスナと、を備えることを特徴とする航空機組立品。 - 請求項9に記載の航空機組立品の製造方法であって、
前記ファスナ本体の前記部材から突出した先端部に前記締結部材を装着する締結部材装着工程と、
前記開口の内側に前記シーラント材が充填された前記キャップによって前記ファスナ本体の前記先端部および前記締結部材を覆い、前記開口の周縁部を前記部材に突き当てるキャップ装着工程と、を実施することを特徴とする航空機組立品の製造方法。 - 前記キャップ装着工程にて、前記開口の周縁部を前記部材に突き当てたときに、前記キャップの開口の外側に前記シーラント材をはみ出させて前記周縁部の少なくとも最外周部をシーラント材によって覆う、請求項10に記載の航空機組立品の製造方法。
- その周縁に拡径部が形成された凹部を有する治具を使用し、
前記シーラント材が充填された前記キャップが前記凹部に収容された状態とし、前記治具によって前記キャップを前記部材に向けて突き当てることにより、前記キャップの開口からはみ出して前記拡径部内に溜まった前記シーラント材を成形する、請求項11に記載の航空機組立品の製造方法。 - 航空機の機体を構成する少なくとも2つの部材と、これらの部材どうしを締結するファスナとを備えた航空機組立品の製造に用いられる治具であって、
前記ファスナが、すべての前記部材に形成された孔を貫通しているファスナ本体と、前記ファスナ本体の前記部材から突出した先端部に装着される締結部材と、シーラント材料から形成された成形体からなり、前記ファスナ本体の前記先端部および前記締結部材を内包する開口を有する絶縁性のキャップと、を備えるものであり、
前記キャップを収容する凹部を有し、
前記凹部の周縁には、前記キャップの開口内に充填されたシーラント材の前記開口からはみ出した一部を溜める拡径部が形成されていることを特徴とする治具。
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